(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132464
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】非常に強力な糖質コルチコイドの構造およびデザインのための機構
(51)【国際特許分類】
C07J 71/00 20060101AFI20220901BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20220901BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220901BHJP
A61P 5/44 20060101ALI20220901BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220901BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220901BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220901BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C07J71/00 CSP
A61K31/58
A61P1/04
A61P5/44
A61P11/06
A61P13/12
A61P17/00
A61P19/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022113322
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2019520039の分割
【原出願日】2017-10-13
(31)【優先権主張番号】62/408,314
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505298467
【氏名又は名称】ヴァン アンデル リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フアチアン エリック シュー
(72)【発明者】
【氏名】ユアンゼン ヘ
(57)【要約】
【課題】 新規糖質コルチコイド化合物を提供すること
【解決手段】 本発明は、新規糖質コルチコイド化合物に関する。本発明は、これらの化合物を使用する方法、これらの化合物の合成、ならびに糖質コルチコイド化合物を含む組成物および製剤、ならびにそれらの使用にも関する。プレドニゾン、デキサメタゾン(DEX)およびブデソニドなどの糖質コルチコイドは、非常に有効な抗炎症薬である。これらは、炎症および自己免疫疾患(例えば、喘息、関節炎、狼瘡およびクローン病)を処置するために広く使用されている(1、2)。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の資金援助
本発明は、国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所/アメリカ国立衛生研究所により与えられた、DK066202およびDK071662の下で、政府の支援を得てなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、新規糖質コルチコイド化合物に関する。本発明は、これらの化合物を使用する方法、これらの化合物の合成、ならびに糖質コルチコイド化合物を含む組成物および製剤、ならびにそれらの使用にも関する。
【0003】
関連出願の引用
本願は、米国仮出願第62/408,314号(2016年10月14日出願)に対する優先権を主張する。この米国仮出願の開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
プレドニゾン、デキサメタゾン(DEX)およびブデソニドなどの糖質コルチコイドは、非常に有効な抗炎症薬である。これらは、炎症および自己免疫疾患(例えば、喘息、関節炎、狼瘡およびクローン病)を処置するために広く使用されている(1、2)。これらの薬物は、核内レセプタースーパーファミリーのリガンド活性化転写因子である糖質コルチコイドレセプター(GR)への結合を介して生理学的役割を発揮する。GRは、糖質コルチコイドの非存在下では、細胞質に存在し、hsp90およびhsp70などのシャペロンタンパク質と会合している。ホルモンが結合すると、GRの立体構造変化が引き起こされ、核に移動して、核で転写調節活性である活性化(トランス活性化)または抑制(トランス抑制)を発揮する。トランス活性化では、GRは、二量体化し、特異的な糖質コルチコイド応答エレメントに直接結合し、次いで、コアクチベーターをリクルートして、転写を活性化する。トランス抑制では、一般的なモデルは、GRが、他の転写因子(例えば、NF-κB、AP-1)に結合して、タンパク質間相互作用を介してそれらの結合部位に間接的に繋ぎ止められるようになるというものである。GRは、標的プロモーターの近くに繋ぎ止められると、下流の遺伝子発現を抑制する(3)。一般的に、トランス抑制は、GRの二量体化を必要としないと考えられている(4、5)。
【0005】
トランス抑制は、糖質コルチコイドが抗炎症剤として作用する主要な機構である(6)。GRがNF-κB/AP-1プロモーターに繋ぎ止められると、下流の主要な炎症促進性因子(炎症促進性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1βおよびIL-6)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL19)および炎症の発生に関連する酵素(例えば、COX2、MMP13およびホスホリパーゼA2)を含む)の転写抑制がもたらされる(2)。それらの迅速な作用および持続可能な効果のおかげで、依然として糖質コルチコイドが炎症性疾患を処置するための第1候補である。しかしながら、糖質コルチコイドの特に高用量での長期使用は、真性糖尿病/グルコース不耐性、高血圧症、肥満症および骨粗鬆症をはじめとした多くの有害事象をもたらす(7、8)。これらの有害事象のほとんどが、GRのトランス活性化に起因する。例えば、糖質コルチコイドは、肝臓における糖新生経路の律速酵素であるグルコース-6-ホスファターゼおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子を誘導する(9、10)ので、グルコースのデノボ合成を増大させ、最終的には体重増加または糖尿病に至る。糖質コルチコイドは、
骨発生の重要な制御遺伝子であるDickkopf-1(DKK1)も誘導し、そのアップレギュレーションは、骨粗鬆症および骨減少に至る(11)。糖質コルチコイドの副作用の多くは、糖質コルチコイドの高用量での使用に関連すると広く観察されている(12~14)。例えば、プレドニゾンを使用した場合に「閾値パターン」が観察され、1日あたり7.5mgで、それは緑内障、うつおよび高血圧を引き起こす(12)。これらの副作用は、GRのトランス活性化、ならびに鉱質コルチコイドレセプター(MR)などの他のレセプターの非標的活性化(その活性化は高血圧を引き起こす)によって引き起こされる(15)。したがって、望まれない副作用を減少させるために、非常に強力かつ選択的な糖質コルチコイドを開発することが重要である。
【0006】
効力および有効性が、糖質コルチコイドの重要な2つの薬物動態パラメータである。有効性は、所与の薬物が通常は最高濃度で到達し得る最大活性であり、効力は、最大半量の活性(EC50)に達するために必要な所与の薬物の濃度である。同じ有効性を有する2つの糖質コルチコイドの場合、効力が高い方の糖質コルチコイドは、同じ処置効果を達成するために、より低い用量を必要とする(14、15)。重要なことに、糖質コルチコイドは、トランス活性化とトランス抑制とに対して異なる効力を有することがあり;例えば、DEXを介したGRによる遺伝子誘導は、遺伝子抑制よりも5~6倍高い糖質コルチコイド濃度を必要とする(16~18)。この応答の差によって、トランス活性化の活性および副作用が最小でありつつ炎症シグナルの完全な抑制を達成するために低用量で使用できる非常に強力な糖質コルチコイドを開発する機会が提供される。最後に、一般的な炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチおよび炎症性腸疾患)の処置において、糖質コルチコイド治療への非感受性および抵抗性の発生は、大きな問題である(19)。糖質コルチコイド抵抗性は、白血球のがん、特に、小児急性白血病に対する未解決の問題でもある(20)。キナーゼ経路の変化、補因子の変化およびレセプターの喪失または変異をはじめとした、糖質コルチコイド抵抗性のいくつかの機構が、特定または提案されている(19、21)。共通する観察結果の1つは、レセプターに対するリガンドの親和性が、糖質コルチコイド抵抗性患者において低下している点である。非常に強力な糖質コルチコイドで処置されたそのような患者は、改善を示したが、その効果は徐々に低下した(22)。ゆえに、新世代のより強力な糖質コルチコイドを開発する差し迫った必要がある。
【0007】
コルチゾールは、副腎によって産生される内因性糖質コルチコイドである。コルチゾールは、DEXなどの最もよく使用される合成糖質コルチコイドと比べて低い効力およびレセプター結合能を有する(23)。他方で、フロ酸モメタゾン(MF)は、炎症性皮膚障害(Elocon)、喘息(Asmanex)および副鼻腔炎症(Nasonex)を処置するために使用される強力な糖質コルチコイドである(24、25)。MFは、ステロイドD環のC17α位に親油性フロ酸エステルを有し、それが、高い効力の源であると考えられている(26)。ここで、本発明者らは、MFおよびコルチゾールに結合したGR
LBDの結晶構造を明らかにし、これにより、MFとコルチゾールとの間でリガンドの効力を隔てる、根底にある機構が明らかになった。次いで、本発明者らは、観察された構造機構を用いて、炎症性疾患を処置するための治療薬の開発のための出発リードとして役立ち得る、効力および有効性がかなり改善されたいくつかの新規糖質コルチコイドをデザインした。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
有益な抗炎症効果を維持しつつ、望まれない副作用を減少させたいという要求が、糖質コルチコイド薬の進化を推進した。多くの望ましくない副作用が高用量に関連するので、効力が、この進化の非常に重要な面である。それらの副作用は、より低用量で同じ処置効
果を達成する非常に強力な糖質コルチコイドによって最小限に抑えることができる。この要求が、糖質コルチコイドを低効力から高効力への進化を推進した。コルチゾールは、比較的効力が低い内因性の糖質コルチコイドであり、フロ酸モメタゾン(MF)は、多くの炎症疾患の処置において使用されている非常に強力な合成糖質コルチコイドである。糖質コルチコイドの進化を推進する、根底にある機構を理解するために、本発明者らは、コルチゾールおよびMFに結合した糖質コルチコイドレセプター(GR)のリガンド結合ドメイン(LBD)のX線構造を決定した。コルチゾールに結合したGR LBDは、ステロイドA環における1,2単結合の柔軟性が主にGRへのコルチゾールの低親和性に関与していることを明らかにした。一方、MFに結合したGR LBDは、MFの高い効力が、リガンド結合ポケットを完全に満たすので高親和性結合に対するさらなるアンカーの接触を提供する17αフロ酸基によって達成されることを明らかにした。リガンド結合ポケットにおける単一のアミノ酸Q642が、リガンド効力においてMFとコルチゾールとの間で差別的な役割を果たす。構造に基づくデザインによって、効力がかなり改善されたいくつかの新規糖質コルチコイドが合成された。これらの結果をまとめると、糖質コルチコイドの効力の重要な構造的機構が明らかになり、非常に強力な糖質コルチコイドの開発のための合理的根拠が提供される。
【0009】
1つの態様において、本発明は、式Iの化合物
【化1】
またはその薬学的に許容され得る塩を提供し、式中、Xは、-O-または-S-であり;
【化2】
は、結合であるか、または存在せず;R
1は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、そのいずれもが、必要に応じて置換されており;R
2は、-L-R’-であり、Lは、結合または-C(O)-であり、R’は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、R’は、必要に応じて置換されており;R
3は、水素または必要に応じて置換されているC
1-6アルキルであり;各R
4は、独立して、C
1-6アルキル、-OH、ハロ、ハロアルキル、-CN、-NO
2、-C(O)(C
1-6アルキル)、-NHC(O)(C
1-6アルキル)、-OC(O)(C
1-6アルキル)、-C(O)NH(C
1-6アルキル)、-C(O)O(C
1-6アルキル)、-SO
2(C
1-6アルキル)または-SO
2NH(C
1-6アルキル)であり、R
4のアルキルは、必要に応じて置換されており;R
5およびR
6の各々は、独立して、水素、ハロまたはC
1-4アルキルから選択され;nは、0、1、2、3、4または5である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コルチゾールに結合したGR LBDおよびMFに結合したGR LBDの全体構造。(A)コルチゾールに結合したGR LBDおよびMFに結合したGR LBDのアーキテクチャ。(B)DEXに結合したGR LBDとMFに結合したGR-LBDとの構造比較。矢印は、それらの2つの相違点を示しており、1:ヘリックス1の前のループ領域;2:ヘリックス5からヘリックス7の前のループ領域;3:AF2ヘリックスのC末端の配向。(C)GR LBDのリガンド結合ポケットにおけるコルチゾールおよびMFの電子密度マップ。
【0011】
【
図2-1】コルチゾール、DEXおよびMFの効力。(A)コルチゾール、DEXおよびMFの化学構造。ステロイド環(A~D)が示されている。重要な原子の番号付けが、正しい位置の近くに小さい文字で記されている。DEXとコルチゾールとの相違点が、DEX構造に示されている。MFのフロ酸基が示されている。(B~C)AD293細胞における、誘導レポーターMMTV-Lucおよび抑制レポーターAP1-Lucに対するコルチゾール、DEXおよびMFの用量応答曲線。RLU:相対的ルシフェラーゼ単位。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。(D)MF、DEXおよびコルチゾールに対するインビトロGR結合アッセイ。CPM:毎秒カウント数。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。
【
図2-2】コルチゾール、DEXおよびMFの効力。(A)コルチゾール、DEXおよびMFの化学構造。ステロイド環(A~D)が示されている。重要な原子の番号付けが、正しい位置の近くに小さい文字で記されている。DEXとコルチゾールとの相違点が、DEX構造に示されている。MFのフロ酸基が示されている。(B~C)AD293細胞における、誘導レポーターMMTV-Lucおよび抑制レポーターAP1-Lucに対するコルチゾール、DEXおよびMFの用量応答曲線。RLU:相対的ルシフェラーゼ単位。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。(D)MF、DEXおよびコルチゾールに対するインビトロGR結合アッセイ。CPM:毎秒カウント数。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。
【0012】
【
図3】1,2単結合の柔軟性はコルチゾールの低親和性に寄与する。(A)GR LBDのリガンド結合ポケットにおけるコルチゾールおよびDEXの水素結合ネットワーク。(B)AD293細胞におけるMMTV-Lucに対するGRトランス活性化についてのコルチゾール、プレドニゾロンおよびDEXの用量応答曲線。プレドニゾロンは、1,2二重結合だけがコルチゾールと異なる。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。
【0013】
【
図4】GRリガンド結合ポケットにおける17αフロ酸基の完全な占有。(A、B)DEXおよびMFの3次元構造。(C)GR LBDのリガンド結合ポケットにおけるDEXおよびMFのアラインメント。MFの17αフロ酸基は、GRリガンド結合ポケットを広げ、ステロイドD環の上の疎水性空洞を完全に占有する。(D)GR LBDリガンド結合ポケットの疎水性空洞における残基と17αフロ酸基の詳細な疎水性相互作用。
【0014】
【
図5】Q642は、異なる効力のリガンドの認識において極めて重要な役割を果たす。(A)種々のリガンドとQ642の詳細な相互作用:DEXに結合したGR-LBDおよびMFに結合したGR-LBD。(B)ステロイドの不飽和濃度(DEX 10nM;MF 1nM)におけるQ642変異のトランス活性化の活性。エラーバーは、標準偏差を表す。n≧3。(C)AD293細胞におけるMMTV-Lucに対する野生型(WT)GRおよびQ642N変異体のMF、DEXおよびコルチゾールに対する用量応答曲線。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。
【0015】
【
図6-1】-O-または-S-エステル化合物のデザインおよびその後の肝臓加水分解。
【
図6-2】-O-または-S-エステル化合物のデザインおよびその後の肝臓加水分解。
【0016】
【
図7】溶解性の変異および結晶化の変異の位置。上のパネル:GR LBDを可溶化する変異の位置;下のパネル:GR LBDの結晶化を促進する表面の変異。
【0017】
【
図8】選択されたGR LBD変異のタンパク質の発現および精製。GR LBD変異体を、10μMコルチゾールの存在下において発現させ、精製した。
【0018】
【
図9】コルチゾールおよびMFに結合したGR LBDのタンパク質の結晶および回折マップ。(A)コルチゾールに結合したGR LBD。(B)MFに結合したGR LBD。
【0019】
【
図10】GR AYVTI変異の転写活性。(A)AD293細胞におけるMMTV-Lucに対するGR AYVTI変異のトランス活性化の活性。DEX、100nM。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。(B)AD293細胞におけるAP1-Lucに対するGR AYVTI変異のトランス抑制の活性。DEX、100nM。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。
【0020】
【
図11】GR LBDのリガンド結合ポケットにおけるDEXおよびコルチゾールのステロイドC-9α基およびC-16基の詳細な構造比較。(A)DEXのC-9α位におけるF原子は、GR LBDのリガンド結合ポケットにおいてF623、L563およびM646と密接に接触する。(B)DEXのC-16メチル基は、GR LBDのリガンド結合ポケットにおいてY735、L732、M646およびQ642と密接に接触する。
【0021】
【
図12】F623およびM639変異は、MFの活性とDEXの活性を分けられない。(A)AD293細胞におけるMMTV-Lucに対するF623変異のトランス活性化の活性。DEX 10nM、MF 1nM。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。(B)AD293細胞におけるMMTV-Lucに対するM639変異のトランス活性化の活性。DEX 10nM、MF 1nM。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。
【0022】
【
図13-1】GR Q642A変異体タンパク質のインビトロ結合アッセイ。(A)野生型GRまたはQ642A変異体GRを発現したAD293細胞由来のサイトゾルを用いるインビトロリガンド結合実験。CPM:毎分カウント数。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。(B)MMTV-LucレポーターアッセイにおけるWT GRおよびQ642A GRのDEX用量応答曲線。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。(C)GR Q642Aリガンド競合アッセイ。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。
【
図13-2】GR Q642A変異体タンパク質のインビトロ結合アッセイ。(A)野生型GRまたはQ642A変異体GRを発現したAD293細胞由来のサイトゾルを用いるインビトロリガンド結合実験。CPM:毎分カウント数。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。(B)MMTV-LucレポーターアッセイにおけるWT GRおよびQ642A GRのDEX用量応答曲線。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。(C)GR Q642Aリガンド競合アッセイ。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。
【
図13-3】GR Q642A変異体タンパク質のインビトロ結合アッセイ。(A)野生型GRまたはQ642A変異体GRを発現したAD293細胞由来のサイトゾルを用いるインビトロリガンド結合実験。CPM:毎分カウント数。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。(B)MMTV-LucレポーターアッセイにおけるWT GRおよびQ642A GRのDEX用量応答曲線。エラーバーは、標準偏差を表す。n=3。(C)GR Q642Aリガンド競合アッセイ。エラーバーは、標準偏差を表す。n=2。
【0023】
【
図14】相対的ルシフェラーゼ単位として提供されている、本発明の化合物の活性の棒グラフ。
【0024】
【
図15】フロ酸フルチカゾン(FF)と比べて化合物4の効力の8倍増加を示す折れ線グラフ。
【0025】
【
図16】(A)レポーターシステムにおける候補化合物の効力を提供する折れ線グラフ。(B)OVA誘発マウス喘息モデルを用いた肺の炎症の抑制における候補化合物の効果の評価を提供する折れ線グラフ。
【0026】
前述の図面は、例示目的で提供されているのであって、決して限定することを意味していない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
糖質コルチコイドは、ほぼ60年間にわたって使用されており、依然として多くの炎症性疾患および自己免疫疾患を処置するための第1選択である。しかしながら、糖質コルチコイドの長期使用は、多くの有害作用を引き起こし得る。GRの活性化および抑制の構造基盤を理解することが、より副作用が少ない新規糖質コルチコイドの開発にとって非常に重要である。しかしながら、細菌系における、特に低親和性リガンドに対するGRの発現レベルが低いせいで、この重要な細胞制御因子の構造研究は妨げてられていた。本発明者らは、ステロイドレセプターファミリー内の保存残基を比較することによって、レセプターの生理機能に影響せずにレセプターの発現を促進し得るアミノ酸変異の特定に成功した。この方法は、特に、次世代の糖質コルチコイドの将来を担う可能性がある、非ステロイドリガンドなどの低親和性リガンドに対するGRの構造研究を加速させる。
【0028】
非常に強力な糖質コルチコイドの開発は、2つのタイプの緊急性によって促され、一方は、高用量での使用によって引き起こされる糖質コルチコイドの副作用であり、他方は、糖質コルチコイド抵抗性の臨床症候である。リガンドの親和性は、効力の決定要因であるが、それは唯一のものではない。細胞補因子も、リガンド結合によって引き起こされる表面の差異を認識することによって重大な役割を果たし、異なるリガンドの結合によって誘導されるわずかな変化が、補因子の選択性に対して甚大な影響を及ぼし得る。堅いコルチゾール骨格を改変して効力を高めるために、異なるストラテジーが適用され、DEXの開発につながった。コルチゾールに結合したGR LBDおよびDEXに結合したGR LBDの構造比較は、それらの改変のうち、Δ1二重結合が、R611と重要な水素結合を形成するC3ケトンを最適に位置づけるために極めて重要であることを示している。続いて、研究者らは、C-17α位のアルキルエステルまたはプロピオン酸エステル(26)などの親油性エステル基が、糖質コルチコイドの活性を大幅に増大させ得ることを見出した。最もよく使用される喘息薬の1つであるプロピオン酸フルチカゾン(FP)は、C-17α位のヒドロキシル基をプロピオン酸エステルで置き換えることによって作製された。これらのデータから、リガンド結合ポケットにおいてステロイドD環の上に疎水性空洞が存在することが示唆された。プロピオン酸エステルを置き換えるためにフロ酸エステル基を用いるFPのさらなる最適化によって、非常に強力な糖質コルチコイドであるフロ酸フルチカゾン(FF)が作製されたことから、フロ酸基が、その空洞に最もフィットし得ることが示された。FFに結合したGR LBDの構造は解明されたが(35)、MFの高効力の構造的機構は明らかになっていなかった。ここで、本発明者らは、MFの高効力が、完全なリガンド結合ポケットを占有しているC-17αフロ酸基と、リガンド結合によって引き起こされる表面立体配座の変化との両方に起因し得ることを発見した。本発明者らは、変異誘発を用いて、単一のアミノ酸残基であるQ642が、C-17αフロ酸基の認識および他のアミノ酸側鎖の位置決定の調整において重大な役割を果たすことを実証した。Q642Nは、野生型タンパク質とただ1つのメチル基だけしか異ならないが、MF、DEXおよびコルチゾールの活性を完全に分けるのに十分であることから、レセプター活性がどれほど正確に制御されているかが示される。
【0029】
本発明者らは、C-17αフロ酸基が、低親和性リガンドを正確かつ堅固にリガンド結合ポケットに位置づける「アンカー」ポイントとして役立ち得ることを実証した。高い解離特性のためにデザインされたDAC誘導体の改変における成功は、解離した治療的な糖質コルチコイド、糖質コルチコイド抵抗性の臨床症候が低減した糖質コルチコイド、または非ステロイド糖質コルチコイド化合物(これらの化合物は、一般にレセプターに対して乏しい親和性を示す)をデザインするための頑強なストラテジーを説明する。要約すれば、本発明者らは、生理学的リガンドであり低効力の糖質コルチコイドであるコルチゾールに結合したGR LBDの第1の結晶構造、および臨床上重要な高効力の合成リガンドであるMFに結合したLBDの構造を解明した。本発明者らは、生化学的解析および変異解析と組み合わせて、糖質コルチコイドの親和性および効力の極めて重要な決定基を構造的に特定し、非常に強力な糖質コルチコイドの、構造に基づくデザインおよび合成を介してこれらの決定基を確認した。
【0030】
I.定義
【0031】
本発明の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って特定される。さらに、有機化学の一般原理は、“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausolito:1999および“March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001(これらの全内容が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0032】
本発明の目的のために、式Iの化合物に対する炭素のナンバリングは、ステロイド構造に対して一般に認められた慣習のものである。したがって、式Iの化合物は、以下のとおりナンバリングされる。
【化3】
【0033】
本明細書中に記載されるように、本発明の化合物は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、上記で広く例証されたものまたは本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例示されるもの)で必要に応じて置換され得る。
【0034】
本明細書中に記載されるように、「保護基」とは、その後の化学反応において化学選択性を得るために、官能基の化学修飾によって分子に導入される部分または官能性のことを指す。標準的な保護基は、Wuts and Greene:“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”4th
Ed,Wuts,P.G.M.and Greene,T.W.,Wiley-Interscience,New York:2006(参照により本明細書中に援用される
)に提供されている。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」とは、-OH部分のことを指す。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、用語「脂肪族」は、用語アルキル、アルケニル、アルキニル(それらの各々は、下記に示されるように必要に応じて置換される)を包含する。
【0037】
本明細書中で使用されるとき、「アルキル」基とは、1~12個(例えば、1~8、1~6または1~4個)の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素基のことを指す。アルキル基は、直鎖状または分枝状であり得る。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチルまたは2-エチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ
アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルまたはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノまたはヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはヒドロキシ)で置換され得る(すなわち、必要に応じて置換され得る)。限定されないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキルおよびアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキルまたはハロアルキルが挙げられる。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6または2~4個)の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族炭素基のことを指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直鎖状または分枝状であり得る。アルケニル基の例としては、アリル、1-または2-イソプロペニル、2-ブテニルおよび2-ヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリー
ルアミノカルボニルまたはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノまたは脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO2-、脂環式-SO2-またはアリール-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはヒドロキシ)で必要に応じて置換され得る。限定されないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニルまたはハロアルケニルが挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用されるとき、「アルキニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6または2~4個)の炭素原子を含み、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基のことを指す。アルキニル基は、直鎖状または分枝状であり得る。アルキニル基の例としては、プロパルギルおよびブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニルまたは脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニルまたは脂環式スルフィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-、脂肪族アミノ-SO2-または脂環式-SO2-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノまたはヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシまたは(ヘテロアリール)アルコキシ)で必要に応じて置換され得る。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、「アミド」は、「アミノカルボニル」と「カルボニルアミノ」の両方を包含する。これらの用語は、単独でまたは別の基と接続して使用されるとき、アミド基(例えば、末端に使用されるとき、-N(RX)-C(O)-RYまたは-C(O)-N(RX)2、および内部で使用されるとき、-C(O)-N(RX)-または-N(RX)-C(O)-)のことを指し、ここで、RXおよびRYは、水素、脂肪族、脂環式、アリール、芳香脂肪族(araliphatic)、ヘテロ脂環式、ヘテロアリールまたはヘテロ芳香脂肪族であり得る。アミド基の例としては、アルキルアミド(例えば、アルキルカルボニルアミノまたはアルキルアミノカルボニル)、(ヘテロ脂環式)アミド、(ヘテロアラルキル)アミド、(ヘテロアリール)アミド、(ヘテロシクロアルキル)アルキルアミド、アリールアミド、アラルキルアミド、(シクロアルキル)アルキルアミドまたはシクロアルキルアミド)が挙げられる。
【0041】
本明細書中で使用されるとき、「アミノ」基とは、-NRXRYのことを指し、ここで、RXおよびRYの各々は、独立して、水素、脂肪族、脂環式、(脂環式)脂肪族、アリール、芳香脂肪族、ヘテロ脂環式、(ヘテロ脂環式)脂肪族、ヘテロアリール、カルボキ
シ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、((脂環式)脂肪族)カルボニル、アリールカルボニル、(芳香脂肪族)カルボニル、(ヘテロ脂環式)カルボニル、((ヘテロ脂環式)脂肪族)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニルまたは(ヘテロ芳香脂肪族)カルボニルであり、これらの各々は、本明細書中で定義され、必要に応じて置換される。アミノ基の例としては、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアリールアミノが挙げられる。用語「アミノ」が、末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではないとき、それは、-NRX-によって表され、ここで、RXは、上で定義された意味と同じ意味を有する。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようにより大きな部分の一部として使用される「アリール」基とは、単環式(例えば、フェニル);二環式(例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル);および三環式(例えば、フルオレニル テトラヒドロフルオレニルまたはテトラヒドロアントラセニル、アントラセニル)環系のことを指し、ここで、その単環式環系は、芳香族であるか、またはその二環式もしくは三環式環系における環の少なくとも1つは、芳香族である。二環式および三環式基は、ベンゾ縮合2~3員炭素環を含む。例えば、ベンゾ縮合基としては、2つまたはそれを超えるC4-8炭素環式部分と縮合したフェニルが挙げられる。アリールは、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニルまたはアルキニル];脂環式;(脂環式)脂肪族;ヘテロ脂環式;(ヘテロ脂環式)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(脂環式)オキシ;(ヘテロ脂環式)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(芳香脂肪族)オキシ;(ヘテロ芳香脂肪族)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;オキソ(ベンゾ縮合二環式または三環式アリールの非芳香族炭素環上で);ニトロ;カルボキシ;アミド;アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル;(脂環式)カルボニル;((脂環式)脂肪族)カルボニル;(芳香脂肪族)カルボニル;(ヘテロ脂環式)カルボニル;((ヘテロ脂環式)脂肪族)カルボニル;または(ヘテロ芳香脂肪族)カルボニル];スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-またはアミノ-SO2-];スルフィニル[例えば、脂肪族-S(O)-または脂環式-S(O)-];スルファニル[例えば、脂肪族-S-];シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホキシ;尿素;チオ尿素;スルファモイル;スルファミド;またはカルバモイルを含む1つまたはそれを超える置換基で必要に応じて置換される。あるいは、アリールは、非置換であり得る。
【0043】
置換アリールの非限定的な例としては、ハロアリール[例えば、モノ-、ジ(例えば、p,m-ジハロアリール)および(トリハロ)アリール];(カルボキシ)アリール[例えば、(アルコキシカルボニル)アリール、((アラルキル)カルボニルオキシ)アリールおよび(アルコキシカルボニル)アリール];(アミド)アリール[例えば、(アミノカルボニル)アリール、(((アルキルアミノ)アルキル)アミノカルボニル)アリール、(アルキルカルボニル)アミノアリール、(アリールアミノカルボニル)アリールおよび(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)アリール];アミノアリール[例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)アリールまたは((ジアルキル)アミノ)アリール];(シアノアルキル)アリール;(アルコキシ)アリール;(スルファモイル)アリール[例えば、(アミノスルホニル)アリール];(アルキルスルホニル)アリール;(シアノ)アリール;(ヒドロキシアルキル)アリール;((アルコキシ)アルキル)アリール;(ヒドロキシ)アリール、((カルボキシ)アルキル)アリール;(((ジアルキル)アミノ)アルキル)アリール;(ニトロアルキル)アリール;(((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)アリール;((ヘテロ脂環式)カルボニル)アリール;((アルキルスルホニル)アルキル)アリール;(シアノアルキル)アリール;(ヒドロキシアルキル)アリール;(アルキルカルボニル)アリール;アルキルアリール;(トリハロアルキル)アリール;p-アミノ-m-アルコキシカルボニルアリール;p-アミノ-m-シアノアリール;p-ハロ-m-アミノアリール;または(m-(ヘテロ脂環式)-o-(ア
ルキル))アリールが挙げられる。
【0044】
本明細書中で使用されるとき、「アラルキル」基などの「芳香脂肪族」とは、アリール基で置換された脂肪族基(例えば、C1-4アルキル基)のことを指す。「脂肪族」、「アルキル」および「アリール」は、本明細書中で定義されている。アラルキル基などの芳香脂肪族の例は、ベンジルである。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、「アラルキル」基とは、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、C1-4アルキル基)のことを指す。「アルキル」と「アリール」の両方が、上で定義されたものである。アラルキル基の例は、ベンジルである。アラルキルは、1つまたはそれを超える置換基(例えば、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニルまたはアルキニル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキルまたはハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)を含む)]、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノまたはヘテロアラルキルカルボニルアミノ]、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソまたはカルバモイル)で必要に応じて置換される。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、「二環式環系」は、2つの環を形成する6~12(例えば、8~12または9、10もしくは11)員の構造を含み、ここで、それらの2つの環は、少なくとも1つの原子を共通して(例えば、2つの原子を共通して)有する。二環式環系には、ビシクロ脂肪族(例えば、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニル)、ビシクロヘテロ脂肪族、二環式アリールおよび二環式ヘテロアリールが含まれる。
【0047】
本明細書中で使用されるとき、「脂環式」基は、「シクロアルキル」基および「シクロアルケニル」基を包含し、その各々は、下記に示されるように必要に応じて置換される。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、「シクロアルキル」基とは、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式の単環式または二環式(縮合または架橋)環のことを指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュビル(cubyl)、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチルまたは((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0049】
「シクロアルケニル」基は、本明細書中で使用されるとき、1つまたはそれを超える二重結合を有する3~10個(例えば、4~8個)の炭素原子の非芳香族炭素環のことを指す。シクロアルケニル基の例としては、シクロペンテニル、1,4-シクロヘキサ-ジ-エニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、ヘキサヒドロ-インデニル、オクタヒドロ-ナフチル、シクロヘキセニル、ビシクロ[2.2.2]オクテニルまたはビシクロ[3.3.1]ノネニルが挙げられる。
【0050】
シクロアルキルまたはシクロアルケニル基は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、ホスホ、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニルまたはアルキニル]、脂環式、(脂環式)脂肪族、ヘテロ脂環式、(ヘテロ脂環式)脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(芳香脂肪族)オキシ、(ヘテロ芳香脂肪族)オキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、アミド[例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(脂環式)カルボニルアミノ、((脂環式)脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミノ、(芳香脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロ脂環式)カルボニルアミノ、((ヘテロ脂環式)脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノまたは(ヘテロ芳香脂肪族)カルボニルアミノ]、ニトロ、カルボキシ[例えば、HOOC-、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシ]、アシル[例えば、(脂環式)カルボニル、((脂環式)脂肪族)カルボニル、(芳香脂肪族)カルボニル、(ヘテロ脂環式)カルボニル、((ヘテロ脂環式)脂肪族)カルボニルまたは(ヘテロ芳香脂肪族)カルボニル]、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、スルホニル[例えば、アルキル-SO2-およびアリール-SO2-]、スルフィニル[例えば、アルキル-S(O)-]、スルファニル[例えば、アルキル-S-]、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソまたはカルバモイル)で必要に応じて置換され得る。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、用語「ヘテロ脂環式」は、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロシクロアルケニル基を包含し、それらの各々は、下記に示されるように必要に応じて置換される。
【0052】
本明細書中で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」基とは、3~10員単環式または二環式(縮合または架橋)(例えば、5~10員単環式または二環式)飽和環構造のことを指し、ここで、1つまたはそれを超える環原子は、ヘテロ原子(例えば、N、O、Sまたはそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェンイル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチルおよび2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニルが挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、フェニル部分と縮合して、ヘテロアリールとして分類されるテトラヒドロイソキノリンなどの構造を形成し得る。
【0053】
「ヘテロシクロアルケニル」基は、本明細書中で使用されるとき、1つまたはそれを超える二重結合を有する単環式または二環式(例えば、5~10員単環式または二環式)非芳香族環構造のことを指し、ここで、1つまたはそれを超える環原子は、ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)である。単環式および二環式ヘテロ脂環式は、標準的な化学命名法に従ってナンバリングされる。
【0054】
ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル基は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、ホスホ、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニルまたはアルキニル]、脂環式、(脂環式)脂肪族、ヘテロ脂環式、(ヘテロ脂環式)脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(芳香脂肪族)オキシ、(ヘテロ芳香脂肪族)オキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、アミド[例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(脂環式)カルボニルアミノ、((脂環式)脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミ
ノ、(芳香脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロ脂環式)カルボニルアミノ、((ヘテロ脂環式)脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノまたは(ヘテロ芳香脂肪族)カルボニルアミノ]、ニトロ、カルボキシ[例えば、HOOC-、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシ]、アシル[例えば、(脂環式)カルボニル、((脂環式)脂肪族)カルボニル、(芳香脂肪族)カルボニル、(ヘテロ脂環式)カルボニル、((ヘテロ脂環式)脂肪族)カルボニルまたは(ヘテロ芳香脂肪族)カルボニル]、ニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、スルホニル[例えば、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル]、スルフィニル[例えば、アルキルスルフィニル]、スルファニル[例えば、アルキルスルファニル]、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソまたはカルバモイル)で必要に応じて置換され得る。
【0055】
「ヘテロアリール」基は、本明細書中で使用されるとき、4~15個の環原子を有する単環式、二環式または三環式環系のことを指し、ここで、1つまたはそれを超える環原子は、ヘテロ原子(例えば、N、O、Sまたはそれらの組み合わせ)であり、その単環式環系は、芳香族であるか、またはその二環式もしくは三環式環系における環の少なくとも1つは、芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3個の環を有するベンゾ縮合環系を含む。例えば、ベンゾ縮合基としては、1つまたは2つの4~8員ヘテロ脂環式部分と縮合したベンゾ(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェン-イル、キノリニルまたはイソキノリニル)が挙げられる。ヘテロアリールのいくつかの例は、アゼチジニル、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾリルまたは1,8-ナフチリジルである。
【0056】
限定されないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェン-イル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル(thazolyl)、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-ピラニル(pranyl)、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジルまたは1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従ってナンバリングされる。
【0057】
限定されないが、二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジルまたはプテリジルが挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従ってナンバリングされる。
【0058】
ヘテロアリールは、1つまたはそれを超える置換基(例えば、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニルまたはアルキニル];脂環式;(脂環式)脂肪族;ヘテロ脂環式;(ヘテロ脂環式)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(脂環式)オキシ;(ヘテロ脂環式)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(芳香脂肪族)オキシ;(ヘテロ芳香脂肪族)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;オキソ(二環式または三環式ヘテロアリールの非芳香族炭素環式または複素環式環上で);カルボキシ;アミド
;アシル[例えば、脂肪族カルボニル;(脂環式)カルボニル;((脂環式)脂肪族)カルボニル;(芳香脂肪族)カルボニル;(ヘテロ脂環式)カルボニル;((ヘテロ脂環式)脂肪族)カルボニル;または(ヘテロ芳香脂肪族)カルボニル];スルホニル[例えば、脂肪族スルホニルまたはアミノスルホニル];スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニル];スルファニル[例えば、脂肪族スルファニル];ニトロ;シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホキシ;尿素;チオ尿素;スルファモイル;スルファミド;またはカルバモイル)で必要に応じて置換される。あるいは、ヘテロアリールは、非置換であり得る。
【0059】
置換ヘテロアリールの非限定的な例としては、(ハロ)ヘテロアリール[例えば、モノ-およびジ-(ハロ)ヘテロアリール];(カルボキシ)ヘテロアリール[例えば、(アルコキシカルボニル)ヘテロアリール];シアノヘテロアリール;アミノヘテロアリール[例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)ヘテロアリールおよび((ジアルキル)アミノ)ヘテロアリール];(アミド)ヘテロアリール[例えば、アミノカルボニルヘテロアリール、((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール、((((アルキル)アミノ)アルキル)アミノカルボニル)ヘテロアリール、(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)ヘテロアリール、((ヘテロ脂環式)カルボニル)ヘテロアリールおよび((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール];(シアノアルキル)ヘテロアリール;(アルコキシ)ヘテロアリール;(スルファモイル)ヘテロアリール[例えば、(アミノスルホニル)ヘテロアリール];(スルホニル)ヘテロアリール[例えば、(アルキルスルホニル)ヘテロアリール];(ヒドロキシアルキル)ヘテロアリール;(アルコキシアルキル)ヘテロアリール;(ヒドロキシ)ヘテロアリール;((カルボキシ)アルキル)ヘテロアリール;(((ジアルキル)アミノ)アルキル]ヘテロアリール;(ヘテロ脂環式)ヘテロアリール;(脂環式)ヘテロアリール;(ニトロアルキル)ヘテロアリール;(((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)ヘテロアリール;((アルキルスルホニル)アルキル)ヘテロアリール;(シアノアルキル)ヘテロアリール;(アシル)ヘテロアリール[例えば、(アルキルカルボニル)ヘテロアリール];(アルキル)ヘテロアリール;または(ハロアルキル)ヘテロアリール[例えば、トリハロアルキルヘテロアリール]が挙げられる。
【0060】
「ヘテロ芳香脂肪族(例えば、ヘテロアラルキル基)は、本明細書中で使用されるとき、ヘテロアリール基で置換された脂肪族基(例えば、C1-4アルキル基)のことを指す。「脂肪族」、「アルキル」および「ヘテロアリール」は、上で定義されたものである。
【0061】
「ヘテロアラルキル」基は、本明細書中で使用されるとき、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基(例えば、C1-4アルキル基)のことを指す。「アルキル」と「ヘテロアリール」の両方が、上で定義されたものである。ヘテロアラルキルは、1つまたはそれを超える置換基(例えば、アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキルおよびハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソまたはカルバモイル)で必要に応じて置換される。
【0062】
本明細書中で使用されるとき、「環式部分」および「環式基」とは、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールを含む単環式、二環式および三環式環系のことを指し、それらの各々は、先に定義されたものである。
【0063】
本明細書中で使用されるとき、「架橋二環式環系」とは、環が架橋されている、二環式のヘテロ脂環式(heterocyclicalipahtic)環系または二環式の脂環式環系のことを指す。架橋二環式環系の例としては、アダマンタニル、ノルボルナニル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2]デシル、2-オキサビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザビシクロ[3.2.1]オクチルおよび2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニルが挙げられるが、これらに限定されない。架橋二環式環系は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキルおよびハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソまたはカルバモイル)で必要に応じて置換され得る。
【0064】
本明細書中で使用されるとき、「アシル」基とは、ホルミル基またはRX-C(O)-(例えば、「アルキルカルボニル」とも称されるアルキル-C(O)-)のことを指し、ここで、RXおよび「アルキル」は、先に定義されたものである。アセチルおよびピバロイルは、アシル基の例である。
【0065】
本明細書中で使用されるとき、「アロイル」または「ヘテロアロイル」とは、アリール-C(O)-またはヘテロアリール-C(O)-のことを指す。アロイルまたはヘテロアロイルのアリールおよびヘテロアリール部分は、先に定義されたように必要に応じて置換される。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、「アルコキシ」基とは、アルキル-O-基のことを指し、ここで、「アルキル」は、先に定義されたものである。
【0067】
本明細書中で使用されるとき、「カルバモイル」基とは、構造-O-CO-NRXRYまたは-NRX-CO-O-RZを有する基のことを指し、ここで、RXおよびRYは、上で定義されたものであり、RZは、脂肪族、アリール、芳香脂肪族、ヘテロ脂環式、ヘテロアリールまたはヘテロ芳香脂肪族であり得る。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、「カルボキシ」基とは、末端基として使用されるとき、-COOH、-COORX、-OC(O)H、-OC(O)RX;または内部基として使用されるとき、-OC(O)-もしくは-C(O)O-のことを指す。
【0069】
本明細書中で使用されるとき、「ハロ脂肪族」基とは、1~3個のハロゲンで置換され
た脂肪族基のことを指す。例えば、用語ハロアルキルは、基-CF3、-CHF2、および-CH2Fを含む。
【0070】
本明細書中で使用されるとき、「メルカプト」基とは、-SHのことを指す。
【0071】
本明細書中で使用されるとき、「スルホ」基とは、末端に使用されるとき、-SO3Hもしくは-SO3RX、または内部で使用されるとき、-S(O)3-のことを指す。
【0072】
本明細書中で使用されるとき、「スルファミド」基とは、末端に使用されるとき、構造-NRX-S(O)2-NRYRZ、および内部で使用されるとき、-NRX-S(O)2-NRY-のことを指し、ここで、RX、RYおよびRZは、上で定義されたものである。
【0073】
本明細書中で使用されるとき、「スルファモイル」基とは、構造-O-S(O)2-NRYRZのことを指し、ここで、RYおよびRZは、上で定義されたものである。
【0074】
本明細書中で使用されるとき、「スルホンアミド」基とは、末端に使用されるとき、構造-S(O)2-NRXRYもしくは-NRX-S(O)2-RZ;または内部で使用されるとき、-S(O)2-NRX-もしくは-NRX-S(O)2-のことを指し、ここで、RX、RYおよびRZは、上で定義されている。
【0075】
本明細書中で使用されるとき、「スルファニル」基とは、末端に使用されるとき、-S-RX、および内部で使用されるとき、-S-のことを指し、ここで、RXは、上で定義されたものである。スルファニルの例としては、脂肪族-S-、脂環式-S-、アリール-S-などが挙げられる。
【0076】
本明細書中で使用されるとき、「スルフィニル」基とは、末端に使用されるとき、-S(O)-RX、および内部で使用されるとき、-S(O)-のことを指し、ここで、RXは、上で定義されたものである。例示的なスルフィニル基としては、脂肪族-S(O)-、アリール-S(O)-、(脂環式(脂肪族))-S(O)-、シクロアルキル-S(O)-、ヘテロ脂環式-S(O)-、ヘテロアリール-S(O)-などが挙げられる。
【0077】
本明細書中で使用されるとき、「スルホニル」基とは、末端に使用されるとき、-S(O)2-RX、および内部で使用されるとき、-S(O)2-のことを指し、ここで、RXは、上で定義されたものである。例示的なスルホニル基としては、脂肪族-S(O)2-、アリール-S(O)2-、(脂環式(脂肪族))-S(O)2-、脂環式-S(O)2-、ヘテロ脂環式-S(O)2-、ヘテロアリール-S(O)2-、(脂環式(アミド(脂肪族)))-S(O)2-などが挙げられる。
【0078】
本明細書中で使用されるとき、「スルホキシ」基とは、末端に使用されるとき、-O-S(O)-RXまたは-S(O)-O-RX、および内部で使用されるとき、-O-S(O)-または-S(O)-O-のことを指し、ここで、RXは、上で定義されたものである。
【0079】
本明細書中で使用されるとき、「ハロゲン」または「ハロ」基とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のことを指す。
【0080】
本明細書中で使用されるとき、単独でまたは別の基と接続して使用される、用語カルボキシによって包含される「アルコキシカルボニル」とは、アルキル-O-C(O)-などの基のことを指す。
【0081】
本明細書中で使用されるとき、「アルコキシアルキル」とは、アルキル-O-アルキル-などのアルキル基のことを指し、ここで、アルキルは、上で定義されたものである。
【0082】
本明細書中で使用されるとき、「カルボニル」とは、-C(O)-のことを指す。
【0083】
本明細書中で使用されるとき、「オキソ」とは、=Oのことを指す。
【0084】
本明細書中で使用されるとき、用語「ホスホ」とは、ホスフィネートおよびホスホネートのことを指す。ホスフィネートおよびホスホネートの例としては、-P(O)(RP)2が挙げられ、ここで、RPは、脂肪族、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ アリール、ヘテロアリール、脂環式またはアミノである。
【0085】
本明細書中で使用されるとき、「アミノアルキル」とは、構造(RX)2N-アルキル-のことを指す。
【0086】
本明細書中で使用されるとき、「シアノアルキル」とは、構造(NC)-アルキル-のことを指す。
【0087】
本明細書中で使用されるとき、「尿素」基とは、構造-NRX-CO-NRYRZのことを指し、「チオ尿素」基とは、末端に使用されるとき、構造-NRX-CS-NRYRZ、および内部で使用されるとき、-NRX-CO-NRY-または-NRX-CS-NRY-のことを指し、ここで、RX、RYおよびRZは、上で定義されたものである。
【0088】
本明細書中で使用されるとき、「グアニジン」基とは、構造-N=C(N(RXRY))N(RXRY)または-NRX-C(=NRX)NRXRYのことを指し、ここで、RXおよびRYは、上で定義されたものである。
【0089】
本明細書中で使用されるとき、用語「アミジノ」基とは、構造-C=(NRX)N(RXRY)のことを指し、ここで、RXおよびRYは、上で定義されたものである。
【0090】
一般に、用語「ビシナル」とは、2つまたはそれを超える炭素原子を含む基上の置換基の配置のことを指し、ここで、それらの置換基は、隣接する炭素原子に結合されている。
【0091】
一般に、用語「ジェミナル」とは、2つまたはそれを超える炭素原子を含む基上の置換基の配置のことを指し、ここで、それらの置換基は、同じ炭素原子に結合されている。
【0092】
用語「末端に」および「内部で」とは、置換基内の基の位置のことを指す。ある基が、化学構造の残部にさらに結合されない置換基の末端に存在するとき、その基は、末端基である。カルボキシアルキル、すなわち、RXO(O)C-アルキルは、末端に使用されるカルボキシ基の例である。ある基が、化学構造の置換基の中央に存在するとき、その基は、内部基である。アルキルカルボキシ(例えば、アルキル-C(O)O-またはアルキル-OC(O)-)およびアルキルカルボキシアリール(例えば、アルキル-C(O)O-アリール-またはアルキル-O(CO)-アリール-)は、内部で使用されるカルボキシ基の例である。
【0093】
本明細書中で使用されるとき、「脂肪族鎖」とは、分枝状または直鎖状の脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基)のことを指す。いくつかの例において、直鎖状の脂肪族鎖は、構造-[CH2]v-を有し、ここで、vは、1~12であ
る。分枝状の脂肪族鎖は、1つまたはそれを超える脂肪族基で置換された直鎖状の脂肪族鎖である。いくつかの例において、分枝状の脂肪族鎖は、構造-[CQQ]v-を有し、ここで、Qは、独立して、水素または脂肪族基であるが;しかしながら、Qは、少なくとも1つの場合において脂肪族基である。脂肪族鎖という用語は、アルキル鎖、アルケニル鎖およびアルキニル鎖を含み、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、上で定義されている。
【0094】
句「必要に応じて置換されている」は、句「置換されているまたは非置換である」と交換可能に使用される。本明細書中に記載されるように、本発明の化合物は、1つまたはそれを超える置換基(例えば、上記で広く例示されたものまたは本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例証されるもの)で必要に応じて置換され得る。本明細書中に記載されるように、可変部R1、R2、R3、R4、R5、R6およびXならびに本明細書中に記載される式に含まれる他の可変部は、特定の基(例えば、アルキルおよびアリール)を含む。別段述べられない限り、それらの可変部に対する特定の基の各々は、本明細書中に記載される1つまたはそれを超える置換基で必要に応じて置換され得る。特定の基の各置換基はさらに、ハロ、シアノ、オキソ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、脂環式、ヘテロ脂環式、ヘテロアリール、ハロアルキルおよびアルキルのうちの1~3つで必要に応じて置換されている。例えば、アルキル基は、アルキルスルファニルで置換され得、そのアルキルスルファニルは、ハロ、シアノ、オキソ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、ハロアルキルおよびアルキルのうちの1~3つで必要に応じて置換され得る。さらなる一例として、(シクロアルキル)カルボニルアミノのシクロアルキル部分は、ハロ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキルおよびアルキルのうちの1~3つで必要に応じて置換され得る。2つのアルコキシ基が、同じ原子または隣接する原子に結合しているとき、それらの2つのアルコキシ(alkxoy)基は、それらが結合している原子(単数または複数)と一体となって、環を形成し得る。
【0095】
一般に、用語「置換されている」は、用語「必要に応じて」が前に置かれるか否かを問わず、特定される置換基のラジカルによる、所与の構造における水素ラジカルの置き換えのことを指す。特定の置換基は、上記の定義および下記の化合物の説明およびその実施例に記載される。別段示されない限り、必要に応じて置換される基は、その基の置換可能な各位置に置換基を有し得、任意の所与の構造における1つより多い位置が、特定の基から選択される1つより多い置換基で置換され得るとき、その置換基は、すべての位置において同じであり得るかまたは異なり得る。ヘテロシクロアルキルなどの環置換基は、シクロアルキルなどの別の環に結合されて、スピロ二環式環系を形成し得、例えば、両方の環が、1つの共通の原子を共有する。当業者が認識するように、本発明が想定する置換基の組み合わせは、安定した化合物または化学的にあり得る化合物の形成をもたらす組み合わせである。
【0096】
別段述べられない限り、本明細書中に描かれる構造は、その構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオ異性体および幾何異性体(または配座異性体));例えば、各不斉中心に対するRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)配座異性体を含むとも意味される。ゆえに、本化合物の単一の立体化学異性体、ならびに鏡像異性体混合物、ジアステレオ異性体混合物および幾何異性体(または配座異性体)混合物が、本発明の範囲内である。
【0097】
さらに、別段述べられない限り、本明細書中に描かれる構造は、1つまたはそれを超える同位体的に富化された原子の存在だけが異なる化合物を含むとも意味される。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の置き換え、または13Cもしくは14Cに富化された炭素による炭素の置き換え以外は本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そ
のような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおけるプローブもしくは分析ツールとして、または治療剤として有用である。
【0098】
II.化合物
【0099】
1つの態様において、本発明は、式Iの化合物
【化4】
またはその薬学的に許容され得る塩を提供し、式中、
Xは、-O-または-S-であり;
【化5】
は、結合であるか、または存在せず;
R
1は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、そのいずれもが、必要に応じて置換されており;
R
2は、-L-R’-であり、Lは、結合または-C(O)-であり、R’は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、R’は、必要に応じて置換されており;
R
3は、水素または必要に応じて置換されているC
1-6アルキルであり;
各R
4は、独立して、水素、C
1-6アルキル、-OH、ハロ、ハロアルキル、-CN、-NO
2、-C(O)(C
1-6アルキル)、-NHC(O)(C
1-6アルキル)、-OC(O)(C
1-6アルキル)、-C(O)NH(C
1-6アルキル)、-C(O)O(C
1-6アルキル)、-SO
2(C
1-6アルキル)または-SO
2NH(C
1-6アルキル)から選択され、R
4は、必要に応じて置換されており;
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素、ハロまたはC
1-4アルキルであり;
nは、0、1、2、3、4または5である。
[00100]
いくつかの実施形態において、R
1は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、該アルキル、シクロアルキルまたはアリールは、必要に応じて置換されている。例えば、R
1は、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、そのいずれもが、ハロで必要に応じて置換されている。他の例において、R
1は、水素またはC
1-6アルキルであり、該C
1-6アルキルは、1~3つのハロで必要に応じて置換されている。そして、いくつかの例において、R
1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルであり、そのいずれもが、1~3つのハロで必要に応じて置換されている。例えば、R
1は、フルオロメチルである。他の例において、R
1は、非置換C
1-6アルキルである。例えば、R
1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルである。いくつかの場合、R
1は、エチルである。いくつかの場合、R
1は、イソプロピルである。いくつかの場合、R
1は、tert-ブチルである。いくつかの場合、R
1は、水素である。いくつ
かの実施形態において、R
1は、必要に応じて置換されている3~7員のシクロアルキル、フェニルまたはナフチルであり、そのいずれもが、必要に応じて置換されている。
【0100】
いくつかの実施形態において、Lは、-C(O)-であり、R’は、水素、C
1-6アルキル、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり、R
2は、ハロ、CN、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている。例えば、Lは、-C(O)-であり、R
2は、ヘテロアリールである。他の例において、R
2は、
【化6】
である。
【0101】
いくつかの実施形態において、R3は、必要に応じて置換されているC1-6アルキルである。例えば、R3は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルであり、そのいずれもが、必要に応じて置換されている。他の例において、R3は、水素である。
【0102】
いくつかの実施形態において、各R4は、独立して、水素、C1-6アルキル、-OH、ハロ、-CN、-NO2、-C(O)(C1-6アルキル)、-NHC(O)(C1-6アルキル)、-OC(O)(C1-6アルキル)、-C(O)NH(C1-6アルキル)または-C(O)O(C1-6アルキル)から選択され、R4のアルキル基は、ハロ、-CN、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている。いくつかの例において、各R4は、独立して、水素、C1-6アルキル、ハロ、-CN、-NO2、-C(O)(C1-6アルキル)、-C(O)NH(C1-6アルキル)または-C(O)O(C1-6アルキル)から選択され、ここで、R4のアルキル基は、ハロ、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている。いくつかの例において、各R4は、独立して、水素、C1-6アルキルまたはハロである。他の例において、各R4は、水素である。
【0103】
いくつかの実施形態において、R4は、水素であり、R1は、水素、C1-6アルキルまたはハロアルキルである。
【0104】
いくつかの実施形態において、nは、0、1または2である。例えば、nは、0である。
【0105】
いくつかの実施形態において、Xは、-O-である。
【0106】
いくつかの実施形態において、Xは、-S-である。
【0107】
いくつかの実施形態において、
【化7】
は、結合である。
【0108】
いくつかの実施形態において、
【化8】
は、存在しない。
【0109】
いくつかの実施形態において、R5およびR6は、各々独立して、水素またはハロであ
る。例えば、R5およびR6は、両方とも-Fである。
【0110】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、下記の表1中の化合物から選択される。
【0111】
【0112】
III.薬学的に許容され得る組成物
【0113】
本発明の1つの態様において、薬学的に許容され得る組成物が提供され、ここで、これらの組成物は、本明細書中に記載されるような化合物のいずれかを含み、必要に応じて、薬学的に許容され得るキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含む。ある特定の実施形態において、これらの組成物は、必要に応じて1つまたはそれを超えるさらなる治療薬をさらに含む。
【0114】
本発明のある特定の化合物が、処置のために遊離型で、または適切な場合にはその薬学的に許容され得る誘導体もしくはプロドラッグとして存在し得ることも認識される。本発明によれば、薬学的に許容され得る誘導体またはプロドラッグには、薬学的に許容され得
る塩、エステル、そのようなエステルの塩、あるいはそれらを必要とする患者に投与したとき、本明細書中に別途記載されるような化合物またはその代謝産物もしくは残基を直接または間接的に提供することができる他の任意の付加物または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得る塩」とは、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応など無くヒトおよび下等動物の組織との接触において使用するために適切であり、そして合理的な利益/危険比に釣り合う、塩のことを指す。「薬学的に許容され得る塩」は、レシピエントに投与したとき、本発明の化合物またはその阻害的に活性な代謝産物もしくは残基を直接または間接的に提供することができる、本発明の化合物の任意の無毒性の塩またはエステルの塩を意味する。
【0116】
薬学的に許容され得る塩は、当該分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19(参照により本明細書中に援用される)に、薬学的に許容され得る塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容され得る塩には、好適な無機および有機の酸および塩基から得られる塩が含まれる。薬学的に許容され得る無毒性の酸付加塩の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸)もしくは有機酸(例えば、酢酸(acetic cit))と形成されるか、またはイオン交換などの当該分野において使用され
る他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。
【0117】
他の薬学的に許容され得る塩としては、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビスルフェート、ボレート、ブチレート、カンホレート、ショウノウスルホネート、シトレート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エディシレート(edisylate)(エタンジスルホネート)、エタンスルホネート、ホルメート、フマレート、グルコヘプトネート、グリセロホスフェート、グルコネート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシ-エタンスルホネート、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリルスルフェート、マレート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2-ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ペクチネート、ペルスルフェート、3-フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ステアレート、スクシネート、スルフェート、タルトレート、チオシアネート、p-トルエンスルホネート、ウンデカノエート、バレレート塩などが挙げられる。適切な塩基から得られる塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN+(C1-4アルキル)4塩が挙げられる。本発明は、本明細書中に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。そのような四級化によって、水溶性もしくは油溶性または水分散性もしくは油分散性の生成物が得られる場合がある。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに薬学的に許容され得る塩としては、適切な場合、対イオンを用いて形成される無毒性のアンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンカチオン(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネートおよびアリールスルホネート)が挙げられる。
【0118】
上に記載されたように、本発明の薬学的に許容され得る組成物は、化合物、および薬学的に許容され得るキャリア、佐剤またはビヒクルを含み、これらは、本明細書中で使用されるとき、所望の特定の剤形にふさわしい任意のおよびすべての溶媒、希釈剤または他の液状のビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む。Remington’s Pharmaceu
tical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)には、薬学的に許容され得る組成物を製剤化する際に使用される様々なキャリア、およびそれを調製するための公知の手法が開示されている。任意の従来のキャリア媒体が、本発明の化合物と適合しない場合を除いて(例えば、任意の望ましくない生物学的作用をもたらすことによって、またはそうでなければ、薬学的に許容され得る組成物の他の任意の構成要素(単数または複数)と有害な様式で相互作用することによって)、その使用は、本発明の範囲内であると企図される。薬学的に許容され得るキャリアとして機能し得る材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);トラガント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオバターおよび坐剤ろう);油(例えば、落花生油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール;例えば、(such a)プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコールおよびホスフェート緩衝液、ならびに他の無毒性で適合性の滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)が挙げられるが、これらに限定されず、ならびに着色剤、放出剤(releasing agents)、コーティング剤、甘味料、香味料および芳香料、保存剤および酸化防止剤もまた、配合者の判断に従って組成物中に存在してもよい。
【0119】
IV.化合物の使用および投与
【0120】
別の態様において、本発明は、被験体において炎症を処置するかまたはその重症度を低下させる方法を提供し、その方法は、有効量の、式Iの化合物を含む組成物を、それを必要とする被験体、好ましくは哺乳動物に投与する工程を含む。本発明は、被験体において炎症性疾患を処置するかまたはその重症度を低下させる方法も提供し、その方法は、有効量の、式Iの化合物を含む組成物を、それを必要とする被験体、好ましくは哺乳動物に投与する工程を含む。
【0121】
なおも別の態様において、本発明は、糖質コルチコイドレセプターに関係する症状、疾患または障害を処置するかまたはその重症度を低下させる方法を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、糖質コルチコイドレセプターの活性の欠如に関係する症状、疾患または障害を処置する方法を提供し、その方法は、有効量の、式Iの化合物を含む組成物を、それを必要とする被験体、好ましくは哺乳動物に投与する工程を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、被験体において炎症状態、炎症疾患または炎症障害を処置する方法を提供し、ここで、その被験体は、正常な糖質コルチコイドレセプター活性を有し、その方法は、有効量の、式Iの化合物を含む組成物を、それを必要とする被験体、好ましくは哺乳動物に投与する工程を含む。
【0122】
別の態様において、本発明は、糖質コルチコイドレセプターに関係する症状、疾患または障害を処置するかまたはその重症度を低下させる方法を提供し、ここで、その症状、疾
患または障害は、喘息、関節炎、狼瘡、クローン病、炎症性腸疾患、セリアック病(Coeliac disease)、糸球体腎炎、尋常性ざ瘡、白血病および膵がんから選択される。
【0123】
本発明によれば、化合物または薬学的に許容され得る組成物の「有効量」は、上記に列挙されたような疾患、障害または症状のうちの1つまたはそれより多くを処置するためまたはその重症度を低下させるために有効な量である。
【0124】
それらの化合物および組成物は、本発明の方法に従って、上記に列挙されたような疾患、障害または症状のうちの1つまたはそれより多くを処置するためまたはその重症度を低下させるために有効な任意の量および任意の投与経路を用いて投与され得る。
【0125】
必要とされる正確な量は、被験体の種、齢および全般的な状態、感染の重症度、特定の薬剤、投与様式などに応じて被験体ごとに異なる。本発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にするためおよび投与量を均一にするために投薬単位形態(dosage unit form)で製剤化される。表現「投薬単位形態」は、本明細書中で使用されるとき、処置される患者にとって適切な薬剤の物理的に不連続な単位のことを指す。しかしながら、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。任意の特定の患者または生物のための具体的な有効用量レベルは、処置されている障害およびその障害の重症度;使用されている具体的な化合物の活性;使用されている具体的な組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;使用されている具体的な化合物の投与時間、投与経路および排出速度;処置の期間;使用されている具体的な化合物と併用してまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む種々の因子に依存する。用語「患者」は、本明細書中で使用されるとき、動物、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0126】
本発明の薬学的に許容され得る組成物は、処置される感染症の重症度に応じて、ヒトおよび他の動物に、経口的に、直腸に、非経口的に、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(散剤、軟膏剤、液滴またはパッチによって)、頬側に(bucally)、経口スプレー剤または点鼻薬などとして、投与され得る。ある特定の実施形態において、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日あたり約0.01mg/kg~約50mg/kg、好ましくは、約0.5mg/kg~約25mg/kg被験体体重という投与量レベルで、1日に1回またはそれを超える回数で経口的または非経口的に投与され得る。
【0127】
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容され得る乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。液体剤形は、有効な化合物に加えて、当該分野において通常使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含み得る。経口組成物は、不活性な希釈剤のほかに、佐剤(例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、香味料および芳香料)も含み得る。
【0128】
注射可能な調製物、例えば、滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌された注射可能な調製物は、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌さ
れた注射可能な液剤、懸濁剤または乳剤、例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤でもあり得る。使用され得る許容され得るビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液,U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌された固定油が、溶媒または懸濁媒として従来法で使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む任意の非刺激性の固定油が、使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能物の調製において使用される。
【0129】
注射可能な製剤は、使用前に、例えば、細菌保持フィルターで濾過することによって、または滅菌水もしくは他の滅菌された注射可能な媒体に溶解され得るかもしくは分散され得る滅菌された固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
【0130】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅らせることが望ましいことが多い。これは、水溶性に乏しい結晶性材料または非晶質材料の液体懸濁剤を使用することによって達成され得る。化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、さらにその溶解速度は、結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口的に投与される化合物の形態の吸収の遅延は、その化合物を油性ビヒクルに溶解するかまたは懸濁することによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中にその化合物のマイクロカプセルマトリックス(microencapsule matrices)を形成することによって作製される。化合物とポリマーとの比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。注射可能なデポー製剤は、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョンの中に化合物を封入することによっても調製される。
【0131】
直腸投与用または膣投与用の組成物は、好ましくは、周囲温度において固体であるが体温では液体であるがゆえに直腸または膣腔において融解して有効な化合物を放出する好適な非刺激性の賦形剤またはキャリア(例えば、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ろう)と本発明の化合物を混合することによって調製され得る坐剤である。
【0132】
経口投与用の固形剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が挙げられる。そのような固形剤形では、有効な化合物は、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容され得る賦形剤もしくはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム)ならびに/またはa)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシア)、c)保水剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)、およびi)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物)と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、その剤形は、緩衝剤も含み得る。
【0133】
類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する軟および硬ゼラチンカプセルにおいて充填剤としても使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形剤形は、コーティングおよびシェル(例えば、腸溶コーティングおよび製剤配合の分野において周知の他のコーティング)を用いて調製され得る。それらは、必要に応じて不透明化剤を含むこと
があり、ある特定の腸管部分において、必要に応じて遅延様式で、有効成分(単数または複数)だけを放出するかまたは有効成分(単数または複数)を優先的に放出する組成物でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレン(polethylene)グリコールなどのような賦形剤を使用する軟および硬ゼラチンカプセルにおいて充填剤としても使用され得る。
【0134】
有効な化合物は、上で述べたような1つまたはそれを超える賦形剤を有するマイクロカプセル化された形態でもあり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形剤形は、コーティングおよびシェル(例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび製剤配合の分野において周知の他のコーティング)を用いて調製され得る。そのような固形剤形において、有効な化合物は、少なくとも1つの不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプン)と混和され得る。そのような剤形は、通常の慣行のように、不活性な希釈剤以外のさらなる物質、例えば、打錠滑沢剤および他の打錠助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース)も含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、それらの剤形は、緩衝剤も含み得る。それらは、必要に応じて不透明化剤を含むことがあり、ある特定の腸管部分において、必要に応じて遅延様式で、有効成分(単数または複数)だけを放出するかまたは有効成分(単数または複数)を優先的に放出する組成物でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。
【0135】
本発明の化合物の局所的投与用または経皮的投与用の剤形としては、軟膏剤、ペースト、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤または貼付剤が挙げられる。有効な構成要素は、必要とされ得るとき、薬学的に許容され得るキャリアおよび任意の必要とされる保存剤または緩衝剤と、滅菌された条件下において混和される。眼科用製剤、点耳剤および点眼剤もまた、本発明の範囲内であると企図される。さらに、本発明は、化合物を身体に制御して送達するという追加の利点を有する経皮貼付剤の使用を企図する。そのような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解するかまたは分散することによって作製される。吸収促進剤もまた、皮膚を越える化合物の流入を増加させるために使用され得る。その速度は、速度制御された膜を提供することによって、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散することによって、制御され得る。
【0136】
糖質コルチコイドレセプターの調節因子として本発明において使用される化合物の活性は、当該分野において広く説明されている方法および本明細書中の実施例に説明されている方法に従ってアッセイされ得る。
【実施例0137】
V.実施例
【0138】
本明細書中に提供される実施例は、本発明がより十分に理解され得るように提供されるものであって、決して限定することを意味していない。
【0139】
一般的合成スキーム
【0140】
【0141】
【0142】
スキーム1および2は、商業的に入手可能なコルチゾールからの式1-Gの化合物の一般的合成スキーム(general synthetic syntheses)を提供しており、スキーム中、R
1、R
4およびR’は、上記で定義されている。スキーム1から、過ヨウ素酸などの試薬を用いてコルチゾールを酸化することにより、式1-Aのカルボン酸が提供され、このカルボン酸は、この合成の後半段階においてさらに官能化することができる。1-Aを塩基およびアルデヒド試薬で処理すること(例えば、NaH/ギ酸メチル条件)により、式1-Bの化合物が提供される。1-Bを、必要に応じて置換されているフェニルヒドラジンで処理する(スキーム1および2は、例としてメタ位に置換基を示している)ことにより、式1-Cの化合物が提供される。構造
【化11】
の塩化アシルを用いた17αヒドロキシル置換基の官能化によって、式1-Dの化合物が
提供される。
【0143】
スキーム2は、式1-Dの化合物のカルボン酸部分の官能化に関する一般的合成を提供している。エステルを得るために、式1-Dの化合物を塩基および式R1-LGの化合物(式中、LGは脱離基である)で処理して、式1-Eを提供することができる。1-Dのチオエステルは、N,N-ジメチルチオカルバモイルクロリドなどの好適な試薬による、カルボン酸部分から式1-Fのチオカルボン酸への第1の変換によって得ることができ、そのチオカルボン酸は、式R1-LGの化合物(式中、LGは脱離基である)とさらに反応することにより、式1-Gの化合物を提供することができる。
【0144】
【0145】
【0146】
式2-Iの化合物は、上記のスキーム3および4に従って、2-Aなどの出発化合物から合成することができる。用いられる反応工程、それらの工程の順序および試薬は、例証的であると意味されているのであって、決して本発明を限定すると意味されていない。
【0147】
スキーム3によれば、2-Bを得るための2-Aのα-ヒドロキシアセチル基のヒドロキシルメチル基の酸化的切断は、過ヨウ素酸を用いて達成することができる。例えば、水素ガスおよびPd/C触媒を用いて、2-Bのオレフィン部分を還元することにより、飽和生成物2-Cが提供される。例えば分子の臭素を用いた、その後の臭素化によって、ビス-α,α’臭化物化合物2-Dが提供される。炭酸カルシウムなどの塩基および臭化リチウムなどの触媒を用いた2つの臭化物置換基の脱離によって、2-Eが提供される。水素化ナトリウムなどの塩基を用いて、2-Eのエノラートの生成が達成でき、その後、ギ酸メチルの求核付加によって、化合物2-Fを提供することができる。必要に応じて置換されているフェニルヒドラジンによって2-Fを処理する(スキーム3および4は、例としてメタ位に置換基を示している)ことによって、ピラジン化合物2-Gを提供することができる。その後、式R’-C(O)-X(式中、Xは塩化物などの脱離基である)の活性化カルボニル化合物を用いた2-Gの遊離ヒドロキシル基のエステル化によって、式2-Hの化合物を提供することができる。
【0148】
スキーム4は、式2-Hの化合物のカルボン酸部分の官能化に関する一般的合成を提供している。エステルを得るために、式2-Hの化合物を、塩基およびハロアルキルなどの好適な求電子剤で処理することにより、式2-Iを提供することができる。2-Hのチオエステルは、N,N-ジメチルチオカルバモイルクロリドなどの好適な試薬による、カルボン酸部分から式2-Jのチオカルボン酸への第1の変換によって得ることができ、そのチオカルボン酸は、式R1-LGの化合物(式中、LG脱離基である)とさらに反応することにより、式2-Kを提供することができる。
【0149】
合成実施例
【0150】
【0151】
商業的に入手可能な化合物2-A(4.1g,10mmol)をメタノール(60ml)に溶解し、次いで、過ヨウ素酸(60mlの水中4.5g,20mmol)を0℃で滴下した。その混合物を室温で2時間撹拌した。メタノールを濃縮し、H2O(100ml)を加えた。沈殿物を濾過し、水で洗浄し(15×3ml)、風乾して、化合物2-B(3.2g)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 12.47 (s, 1H), 7.26 (dd, J = 10.2, 1.2 Hz, 1H), 6.28 (dd, J = 10.2, 1.9 Hz, 1H), 6.09 (s, 1H), 5.63 (ddd, J = 48.5, 9.6, 6.7 Hz, 1H), 5.33 (dd,
J = 3.8, 1.7 Hz, 1H), 4.71 (s, 1H), 4.17 - 4.09 (m, 1H), 3.34 (s, 1H), 2.84 (ddd, J = 11.1, 7.1, 4.1 Hz, 1H), 2.26 - 2.16 (m, 1H), 1.49 (s, 3H), 0.99 (s, 3H), 0.86 (d, J = 7.1 Hz, 3H). LR-M
ass(ESI)m/z:397.1[M+H]+。
【0152】
【0153】
化合物2-B(1.9g,5mmol)をメタノール(200ml)に溶解し、Pb/C(200mg)を加えた。H2下、室温で1日間、撹拌した後、その溶液をセライトのパッドで濾過し、次いで、減圧下で濃縮して、精製なしでさらに使用するための2-C(1.8g)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 5.20 - 4.99 (m, 1H), 4.93 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 4.21 (m, 1H), 2.89 - 2.77 (m, 1H), 2.56 (m, J = 15.9 Hz, 1H), 1.24 (s, 3H), 0.93 (s, 3H), 0.86 (d, J = 7.1 Hz, 3H). LR-Mass(ESI)m/z:401.2[M+H]+。
【0154】
【0155】
酢酸(40ml)中の化合物2-C(1.6g)を、酢酸中の6.6M臭化水素(1.6ml)および酢酸中の臭素の溶液(4.5ml)で連続的に処理した。室温で40分間
撹拌した後、水で希釈することにより、粗2-Dを得た(2.1g)。1H NMR (300 MHz, DMSO) δ: 5.32 - 4.96 (m, 3H), 4.69 (m, 2H), 4.18 (m, 1H), 3.07 (m, 1H), 2.95 (m, 1H), 2.81 (s, 1H), 1.31 (s, 3H), 0.88 (s, 3H),
0.84 (d, J = 7.1 Hz, 3H). LR-Mass(ESI)m/z:559.1[
M+H]+。
【0156】
【0157】
化合物2-D(2.0g)を、窒素下において100℃で維持されたジメチルアセトアミド(17ml)中の、炭酸カルシウム(1.1g)および無水臭化リチウム(0.8g)の激しく撹拌した懸濁液に加えた。3時間後、冷却した混合物を過剰な希塩酸に注ぎ込み、その混合物をEtOAcで抽出し、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をクロマトグラフィによって精製して、化合物2-Eを白色固体として得て、固体を得た(0.6g,43%)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 5.85 (s, 1H), 5.62 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 5.27 - 5.19 (m, 1H), 4.74 (m, 1H), 4.11 (m, 1H), 3.07 - 2.78 (m, 3H), 2.70 - 2.58 (m, 1H), 2.42 - 2.03
(m, 6H), 1.45 (s, 3H), 1.03 (s, 3H), 0.89 (d, J = 7.1 Hz, 3H). LR-Mass(ESI)m/z:397.1[M+H]+。
【0158】
【0159】
化合物2-E(0.5g)を、乾燥トルエン(15ml)およびギ酸メチル(2ml)に溶解した。次いで、NaH(900mg,20mmol,鉱油中60%分散物)を加えた。室温で4時間撹拌した後、1N HCl(120ml)を加え、その混合物をEtOAcで数回抽出した。溶媒を乾燥させ、除去して、0.6gの2-Fを、精製なしでさらに使用するための黄色泡沫状物として得た。LR-Mass(ESI)m/z:425.3[M+H]+。
【0160】
【0161】
化合物2-F(0.50g)をAcOH(15ml)およびH2O(3ml)に溶解し、フェニルヒドラジン(0.14g)を加えた。その混合物を室温で4時間撹拌した。冷水(100ml)を加え、沈殿物を濾過し、H2Oで洗浄し(10×3ml)、風乾して、化合物2-G-1(0.44g)を黄色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO)
δ: 7.61 (s, 1H), 7.58 - 7.49 (m, 4H), 7.42 (m, 1H), 6.54 (s, 1H), 5.33 - 5.20 (m, 2H), 4.16 (s, 1H), 2.38 - 2.29 (m, 1H), 2.10 (d, J = 14.1 Hz, 1H), 1.71 (q, J = 11.5 Hz, 1H), 1.53 (d, J = 13.7 Hz, 1H), 1.26 (s, 3H), 1.05 (s, 3H), 0.87 (d, J = 7.1 Hz, 3H).
LR-Mass(ESI)m/z:497.3[M+H]+。
【0162】
【0163】
乾燥DCM(10mL)中の化合物2-G-1(400mg,TEA(300mL)の溶液に、N2下、0℃においてα-フロイルクロリド(200mg)を加えた。その混合物を室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させて、粗生成物を得て、それを、DCM:MeOH(50:1)を用いるクロマトグラフィによって精製して、化合物1を白色固体として得た(82%)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 8.01 - 7.98 (m,
1H), 7.64 (s, 1H), 7.60 - 7.51 (m, 5H), 7.45 (m, 1H), 7.16 (dd, J = 3.5, 0.6 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 3.5, 1.7 Hz, 1H), 6.59 (s, 1H), 5.38 (dd, J = 21.7, 8.8 Hz, 2H), 4.26 (s, 1H), 1.29 (s, 3H), 1.23 (s, 2H), 1.11 (s, 3H), 0.92 (d, J = 7.1 Hz, 3H). LR-Mas
s(ESI)m/z:591.2[M+H]+。
【0164】
【0165】
化合物1(50mg)を、DMF(2mL)中の、炭酸カリウム(30mg)およびヨードエタン(20mg)の激しく撹拌した懸濁液に加え、得られた混合物を50℃で3時間撹拌した。その反応溶液を水(30mL)に注ぎ込み、EtOAcで抽出し(20mL×3)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をPrep-TLCによって精製して、化合物2を白色固体として得た(41mg,79%)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 8.00 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.61 - 7.51 (m, 4H), 7.45 (m, 1H), 7.19 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 6.71 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1H), 6.58 (s, 1H), 5.47 - 5.28 (m, 2H), 4.27 (s, 1H), 4.23 - 4.06 (m, 2H), 1.20 (t, 3H). LC-MS(ESI)m/z:619.3[M+H]+。
【0166】
【0167】
化合物1(50mg)を、DMF(2mL)中の、炭酸カリウム(30mg)および2-ブロモプロパン(15mg)の激しく撹拌した懸濁液に加え、得られた混合物を50℃で3時間撹拌した。その反応溶液を水(30mL)に注ぎ込み、EtOAcで抽出し(20mL×3)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をPrep-TLCによって精製して、化合物3を白色固体として得た(39mg,73%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.58 (s, 1H), 7.54 - 7.47 (m, 6H), 7.38 (m, 1H), 7.15 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 6.75 (s, 1H), 6.48 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1H), 5.25 - 5.08 (m, 2H), 4.45 (s, 1H), 1.31
(d, 3H), 1.23 (d, 3H). LC-MS(ESI)m/z:633.3[M+H]+。
【0168】
【0169】
化合物1(50mg)を、DMF(2mL)中の、炭酸カリウム(30mg)およびフルオロ-ヨード-メタン(15mg)の激しく撹拌した懸濁液に加え、得られた混合物を50℃で3時間撹拌した。その反応溶液を水(30mL)に注ぎ込み、EtOAcで抽出し(20mL×3)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をPrep-TLCによって精製して、化合物4を白色固体として得た(38mg,72%)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 8.02 (s, 1H), 7.65 (s, 1H),
7.63 - 7.50 (m, 4H), 7.45 (m, 1H), 7.25 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 6.73 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1H), 6.60 (s, 1H), 5.84 (d, J = 112.4 Hz, 1H), 5.83 (d, 1H), 5.54 (d, 1H), 5.37 (d, 1H), 4.28 (s, 1H). LC-MS(ESI)m/z:623.2[M+H]+。
【0170】
【0171】
パートI:2-ブタノン(5mL)中の化合物1(200mg)の撹拌溶液に、N,N-ジメチルチオカルバモイルクロリド(83mg)、トリエチルアミン(100mg)およびヨウ化ナトリウム(5mg)を加えた。その混合物を75℃で2時間撹拌し、次いで、真空中で濃縮した。得られた残渣を水で洗浄し、乾燥させて、0.2gの生成物を得た。得られた化合物をモルホリン(3mL)に加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、10~15℃の水および酢酸エチルの混合物を、上記の反応溶液に加えた。最後に、氷酢酸(0.5mL)を滴下により添加して、pHをpH5~7に調整した。沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、170mgの(1R,2R,10aS,10bR,11S,12aS)-5,10b-ジフルオロ-1-((フラン-2-カルボニル)オキシ)-11-ヒドロキシ-2,10a,12a-トリメチル-7-フェニル-1,2,3,3a,3b,7,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロシクロペンタ[5,6]ナフト[1,2-f]インダゾール-1-カルボチオS-酸(化合物2-J-1)を得て、それを次の工程で直接使用した。
【0172】
パートII:化合物2-J-1(50mg)を、DMF(2mL)中の、炭酸カリウム(30mg)およびフルオロ-ヨード-メタン(15mg)の激しく撹拌した懸濁液に加
え、得られた混合物を50℃で3時間撹拌した。次いで、得られた溶液を水(30mL)に注ぎ込み、EtOAcで抽出し(20mL×3)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、次いで濃縮し、そしてPrep-TLCによって精製して、化合物5を白色固体として得た(35mg,66%)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 8.05 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.61 - 7.51 (m, 4H), 7.45 (m, 1H), 7.25 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 6.74 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1H), 6.60 (s, 1H), 6.04 (s, 1H), 5.92 (s, 1H), 5.54 (s, 1H), 5.39-5.31 (m, 1H), 4.28 (s, 1H). LR-Mass(ESI)m/z:639.2[M+H]+。
【0173】
【0174】
化合物1(180mg)を、DMF(5mL)中の、炭酸カリウム(200mg)および2-ブロモ-2-メチルプロパン(10mL)の激しく撹拌した懸濁液に加え、得られた混合物を室温で8日間撹拌した。その反応溶液を水(30mL)に注ぎ込み、EtOAcで抽出し(20mL×3)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をPrep-TLCによって精製して、化合物6を白色固体として得た(11mg,5.6%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.58 (s, 1H), 7.54
- 7.46 (m, 6H), 7.38 (m, 1H), 7.13 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.75 (s, 1H), 6.48 (dd, J = 3.2, 1.6 Hz, 1H), 5.22 (d, H), 4.45 (s, 1H),
1.50 (s, 9H). LC-MS(ESI)m/z:647.3[M+H]+。
【0175】
方法および材料
【0176】
実施例7A:タンパク質の発現および精製。フロ酸モメタゾンに対する変異F602A、C622Y、T668V、S674T、V675I、K699AおよびK703Aならびにコルチゾールに対する変異F602A、C622Y、T668V、S674T、V675I、E684AおよびE688Aを含むGR LBD(残基525~777)を、6xHis-GST融合タンパク質として発現ベクターpET24a(Novagen)から発現させた。改変された融合タンパク質は、N末端にHis6-タグ(MKKGHHHHHHG)、およびGSTとGR LBDとの間にトロンビンプロテアーゼ部位を含む。それらの発現プラスミドで形質転換されたBL21DE3細胞を、OD600が約1になるまで16℃のLBブロス中で生育し、0.1mM IPTGおよび50μMフロ酸モメタゾンまたはコルチゾールで誘導した。細胞を回収し、12リットルの細胞あたり200mlの抽出緩衝液(50mM Tris[pH8]、150mM NaCl、2M尿素、10%グリセロール+1μMリガンド)に再懸濁し、1000Paに設定された圧力でフレンチプレスに3回通した。溶解産物を20,000rpmで30分間遠心し、上清を25mlのニッケルカラムにロードした。そのカラムを700mlの抽出緩衝液で洗浄し、300mlの50%緩衝液B(25mM Tris[pH8]、500mMイミダゾール(Imizadole)、10%グリセロール、1μMリガンド)で溶出した。GR LBDを、20mM Tris[pH8]、500mM NaCl、10%グリセロール、
1μMリガンドに対して透析しつつ、トロンビンで1:1000のプロテアーゼ/タンパク質比にて低温室において一晩切断した。H6GSTタグを、Ni-NTAニッケルカラムへの結合によって除去した。フロースルーをゲル濾過(20mM Tris[pH8]、500mM NaCl、1mM DTT、1mM EDTA、10%グリセロール、1μMリガンド)によってさらに精製した。フロ酸モメタゾンに結合したタンパク質を、より長いバージョンのSRC2-3ペプチド:SPKKKENALLRYLLDKDDTKDと複合体化し、6mg/mlまで濾過濃縮した。コルチゾールGR LBDを、より短いバージョンのSRC2-3:KENALLRYLLDKDDおよび0.2%B-オクチルグルコシドと複合体化し、7mg/mlまで濾過濃縮した。
【0177】
実施例7B:結晶化。フロ酸モメタゾンGR結晶を、1μlの、GP2ペプチドと複合体化したタンパク質、ならびに0.1Mクエン酸ナトリウム[pH6]および2.2M塩化ナトリウムを含む2μlのウェル溶液を含む懸滴において室温で成長させた。コルチゾールGR結晶を、1μlのタンパク質複合体、および0.1MイミダゾールpH6.5、1M酢酸ナトリウム三水和物を含む1μlのウェル溶液を含む懸滴において室温で成長させた。その両方に対してウェル緩衝液中の30%スクロースを凍結保護物質として使用した。
【0178】
実施例7C:構造決定。CCP4プログラムPHASERを、GR LBD/デキサメタゾン構造(PDBコード:1M2Z)(27)を検索モデルとして用いて、分子置換(36)のために使用した。最初のモデルを手作業で復元し、CNS(37)およびCCP4プログラムREFMAC5(38)を用いて洗練させた。すべての構造の図を、PyMOL(The PyMOL Molecular Graphics System,Version 1.3,Schroedinger LLC)を用いて作成した。
【0179】
実施例7D:細胞トランスフェクションおよびレポーターアッセイ。AD293細胞を、トランスフェクションの前日に、24ウェルプレートにおいて20,000/ウェルで分割した。トランス活性化の場合、1ウェルあたり100ngのpHHLuc(MMTV-Luc)プラスミド、0.1ngのpRShGRを、5ngのphRGtkRenillaとともに、X-tremeGENE 9(Roche)によってAD293細胞にトランスフェクトした。トランス抑制の場合、1ウェルあたり10ngのAP1-Luc、100ngのpRShGRおよび5ngのphRGtkRenillaを、AD293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの翌日、細胞を異なる処置(ステロイドまたはビヒクル)によって一晩16時間、誘導した。細胞を1×受動溶解緩衝液(Promega)によって回収し、ルシフェラーゼ活性をDual-Gloルシフェラーゼシステム(Promega)によってアッセイした。データを、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)としてルシフェラーゼ値/Renilla値によってプロットした。
【0180】
実施例7E:インビトロGRリガンド結合アッセイ。インビトロGR結合アッセイは、以前に記載されたもの(39)と似ている。放射標識リガンド[3H]DEXを25nMで固定し、TAPS緩衝液(ph8.8)中の5%GRサイトゾル+20mMモリブデン酸ナトリウムとともにインキュベートし、コールドリガンド(0.1nM~10μMで変動)を加えることにより、ホットリガンド結合を競合させた。データをGraphPad
Prism 5によって標準的な競合曲線としてプロットした。
【0181】
生物学的実施例
【0182】
実施例8:コルチゾールおよびMFに結合したGR LBDの全体構造。
【0183】
GR LBDの結晶化は、溶解性の問題のために常に難題であった。元のGR LBD
構造は、タンパク質の溶解性を改善するF602S変異を有するGR LBDに結合した高親和性リガンドDEXを用いて決定された(27)。しかしながら、コルチゾールは、DEXよりもかなり弱いリガンドであり、内因性ホルモンであるコルチゾールに結合したGR LBDを安定化させるためには、F602S変異では十分ではない(
図8、レーン1)。全体構造に影響せずにGR LBDの溶解度を高め得るアミノ酸を特定するために、本発明者らは、ステロイドホルモンファミリーの最も近いメンバーであるMR、アンドロゲンレセプター(AR)およびプロゲステロンレセプター(PR)(これらはGRよりもかなり可溶性である)とGRをアラインメントした。F602に加えて、残基C622、T668、S674およびV675が、このファミリーの保存配列を区別するので、本発明者らは、それらのアミノ酸を保存残基に復帰変異させた(F602A、C622Y、T668V、S674TおよびV675I、AYVTIと呼ばれる)。これらの残基のほとんどがタンパク質の内側に見られ、PR残基は、PR LBD構造によりうまく充填されている(28)。実際に、AVYTI GR LBDは、コルチゾールに結合したとき、F602S LBDよりもかなり良い溶解度を有する(
図8、レーン2)。変異GR LBDは、1リットルあたり5mgを超える収量で、発現させ、精製することができる。しかしながら、本発明者らは、このコルチゾールまたはMFに結合した変異GR LBDの結晶を得ることができなかった。このGR LBDは、そのヘリックスH9(その長い側鎖が結晶化に影響し得る)にいくつかのリジン残基およびグルタミン酸残基を有する。表面エントロピー低下変異としてこれらの残基のアラニン変異(MFの場合、K669A/K703A、およびコルチゾールの場合、E684A/E688A)を有するGR LBDは、可溶性のままであり(
図8、レーン3および4)、これによって、MFおよびコルチゾールに結合したGR LBDの結晶を得ることが可能であった(
図9)。これらの変異のすべてが、リガンド結合ポケットから遠く離れており、リガンド媒介性のGRトランス活性化機能またはトランス抑制機能を変化させない(
図10)。
【0184】
MFおよびコルチゾールに結合したGR LBDの全体構造(
図1A)は、DEXに結合したGR LBDと似ており、11個のヘリックスが3層のヘリックスサンドイッチバンドルに充填され、リガンドに結合する空洞がそのバンドルの下部に埋もれている。データ収集および洗練の統計結果を表S1に要約する。コルチゾールに結合したGR LBDの全体アーキテクチャは、DEXに結合したGR LBDとほぼ同一であるのに対して、MFに結合したGR LBDとDEXに結合したGR LBDとの間に顕著な相違点がいくつか存在し、その相違点としては、ヘリックス1の前のループの配向(
図1Bにおいて「1」とラベル);ヘリックス5と6との間のループ領域の拡大(
図1Bにおいて「2」とラベル);およびAF-2ヘリックスのC末端の配向の変化(
図1Bにおいて「3」とラベル)が挙げられる。コルチゾールおよびMFのリガンド結合様式は、結合したリガンドおよび周囲のポケット残基の明確な電子密度マップによって十分に定義されている(
図1C)。
【0185】
【表2】
Rmsdは、タンパク質の理想的な幾何学からの根平均2乗偏差である。
【0186】
実施例9:コルチゾール、DEXおよびMFの効力、親和性。
【0187】
コルチゾール、DEXおよびMFの化学構造の変化(
図2A)は、単純から複雑へのおよび1つのレベルから複数のレベルへの糖質コルチコイドの進化を映し出す。コルチゾールの構造は、基本的な4環ステロイド骨格を提供し;そしてDEXは、1,2二重結合(double bone)、16メチル化および9αハロゲン化を加え(
図2A);MFは、22においてさらに塩化物になり、より重要なことには、17αにおいて親油性フロ酸エステル基を加え(
図2A)、DEXおよびコルチゾールのヒドロキシル基を置換している。GRの効力に対するそれらの化学的変化の影響を試験するために、本発明者らは、GRのトランス活性化とトランス抑制との両方に対するMF、DEXおよびコルチゾール
の活性を完全な用量応答曲線の形式で並行して比較した。トランス活性化の場合、本発明者らは、MMTVによって駆動されるルシフェラーゼレポーターシステムを使用した(
図2B)。MFおよびDEXは、飽和濃度(1μM)においてほぼ同じ有効性(最大活性)を示したのに対して、コルチゾールは、飽和濃度(10μM)において、DEXの80%の有効性しか有しなかった。DEXと比べて、MFの用量応答曲線は、大きく左にシフトしたことから、MFが、DEXよりも20倍強力であることが示される。他方で、コルチゾールの曲線は、大きく右にシフトしたことから、DEXよりも10倍弱いことが示されている。トランス活性化におけるMF、DEXおよびコルチゾールに対するEC50値は、それぞれ0.33nM、6.7nMおよび70nMであった。
【0188】
トランス抑制の場合、AP1によって駆動されるルシフェラーゼレポーターを使用した(
図2C)。MF、DEXおよびコルチゾールは、それらの飽和濃度において同様の有効性を示した。また、MFは、DEXよりもかなり高い(60倍)効力を示し、コルチゾールは、DEXよりもかなり弱く;トランス抑制におけるMF、DEXおよびコルチゾールに対するEC
50値は、それぞれ0.005nM、0.32nMおよび2.7nMであった。誘導には、より高いステロイド濃度が必要であるという頻繁な観察結果と一致して、誘導効力は、各化合物について抑制効力よりも少なくとも10倍低かった。この差異のおかげで、非常に低用量の糖質コルチコイドを使用することによってトランス活性化とトランス抑制とを区別する機会が提供される。例えば、0.1nMでは、MFは、トランス抑制有効性の95%に到達するが、トランス活性化有効性の25%にしか到達しない(
図2Bおよび2C)。
【0189】
一般に、高効力は、レセプターに対する高親和性によって決定されるが、細胞補因子も重要な役割を果たす。GRに対するMFの親和性を試験するために、本発明者らは、MF、DEXおよびコルチゾールについてのインビトロGRリガンド結合競合アッセイを行ったところ(
図2D)、GR結合親和性の順序がMF>DEX>コルチゾールであることが示された。MF、DEXおよびコルチゾールについてのKi値は、それぞれ0.7nM、8nMおよび91nMであった。この結果は、効力に関する本発明者らの結果と一致した。しかしながら、MFとDEXとの間のインビトロ結合IC50の差は、たった約10倍しかなかったが、効力の差は、それよりかなり大きかった:誘導に対して20倍および抑制に対して60倍(
図2Bおよび2C)。効力の差の他の構成要素は、異なるリガンドの結合によって引き起こされる表面の立体構造変化を認識する細胞因子との相互作用が原因であるはずである。
【0190】
実施例10:1,2単結合の柔軟性はGRへのコルチゾールの低親和性に寄与した。
【0191】
コルチゾールの低親和性の根底にある機構を理解するために、本発明者らは、コルチゾールに結合したGR LBDおよびDEXに結合したGR LBDの構造比較を行った。コルチゾールに結合したGR LBDの全体構造は、DEXに結合したGR LBDとほぼまったく同じであり、顕著な立体配座の変化はない。次いで、本発明者らは、リガンド結合の詳細を調べた。上で述べたように、DEXは、1,2二重結合、9αハロゲン化および16メチル化だけがコルチゾールと異なる(
図2A)。DEXのC1-C2二重結合は、ステロイドA環およびC3-ケトン基が平面になるようにするので、C3-ケトンがR611およびQ570と容易に相互作用できるようになる(
図3A)。対照的に、コルチゾールのC1-C2単結合の柔軟性が理由で、ステロイドA環は、R611およびQ570と水素結合を形成するために曲がる必要がある。また、未結合のコルチゾールのC1-C2単結合は、2つの立体配座(A環平面の上と下)の間で動くので、リガンドを適切な位置に保持するための水素結合ネットワークを形成するために水分子が必要である。これらの観察結果によって、GRに対するコルチゾールの比較的低い親和性が説明された。C1-C2二重結合の重要性を確かめるために、本発明者らは、C1-C2二重結合の追
加(
図3B、茶色)だけがコルチゾールと異なるプレドニゾロンの効力をトランス活性化アッセイにおいて計測した。実際に、プレドニゾロンのC1-C2二重結合は、コルチゾール用量応答曲線を約5倍、左にシフトさせた(
図3B)ので、DEXによってもたらされる左への総シフトの半分超を説明し得る。効力の残りの増加は、おそらくC-9αハロゲン化およびC-16メチル化に起因し、この両方が、レセプターポケット内の相互作用表面を増大させる(
図11)。
【0192】
実施例11:17αフロ酸がMFの高親和性を決定した。
【0193】
DEXの化学構造は、ほぼ平らな2次元表面を形成する(
図4A)が、MFでは、17αフロ酸エステルが、その表面から環の面に対してほぼ90°で突き出て、このリガンドを3次元の物体にしている(
図4B)。DEXに結合したGR LBDでは、ステロイドD環の上に、ヘリックス3、ヘリックス5、β3-β4ターンおよびヘリックス6-7によって形成される疎水性空洞である何もない空間が存在する(
図4C)。MFに結合したGR LBD構造では、突き出ている17αフロ酸が、リガンド結合ポケットをわずかに広げ、その空洞のほとんどの空間をふさいでいる。親油性の17αフロ酸は、ソケット継手内にしっかり嵌った球によく似て、その疎水性空洞にうまくフィットし、周囲のF623、I629、M639、C643、I559およびL563アミノ酸との広範な疎水性相互作用をもたらすので(
図4D)、なぜDEXよりもMFがGRに対する10倍高い親和性を有するかが説明される。
【0194】
実施例12:Q642は異なる効力の糖質コルチコイドの認識において重要な役割を果たす。
【0195】
GR LBDによる糖質コルチコイドの基本的な認識は報告されている(27、31、32)。DEXに結合したGR LBDにおけるように、Q570およびR611は、ステロイドA環のC-3ケト基と相互作用し、N564は、ステロイドC環のC-11ヒドロキシル基と相互作用し、T739は、側鎖C-21カルボニル基と相互作用する(
図3A)。これらの4対の重要な水素結合は、ステロイド骨格を適切な位置に堅固に保持する。DEXおよびコルチゾールに結合したGR LBDと比べて、MFの貫入C-17αフロ酸基が、リガンド結合ポケットの内側のただ1つの大きな変化(その大きな変化は、ヘリックス7におけるQ642の移動である)を引き起こす(
図5A)。DEXに結合したGR LBD構造において、Q642は、ヘリックス7の軸に対して直角であり、DEXのC-17αヒドロキシル基と水素結合を形成する。MFの結合の際、C-17αフロ酸基は、Q642を押しのけて、それをほぼ90°曲げて、ヘリックス7の軸と平行な位置にする(
図5A)。
【0196】
Q642の配向が、MFの結合の際におけるリガンド結合ポケットの唯一の大きな変化であるので、本発明者らは、Q642を変異させて、それをより小さくするか(Q642A)、より大きくするか(Q642F)、疎水性にするか(Q642L)、もしくは帯電させるか(Q642E、Q642K)、またはほんのわずかに変化させた(Q642N)。本発明者らは、飽和未満の濃度(MF、1nM;DEX、10nM)でMFまたはDEXを用いてそれらの変異を試験した。興味深いことに、1つの変異(Q642N)について、DEX活性は、ほぼ消滅したが、MF活性は、最大のままであった(
図5B)。したがって、単一の変異が、MFの活性をDEXの活性と完全に分けることができた。他の変異は、DEXとMFとの両方に対する活性のほとんどを喪失させ;例外であるQ642Lは、MFとの活性を2分の1にしたが、DEXとの活性がないかまたは非常に低かった。MFの17αフロ酸は、M560およびM639の周囲の立体配座もわずかに変化させたが、それらの残基の変異は、Q642N変異と同じ効果を有しなかった(
図12)。
【0197】
異なる効力のリガンドを認識する際のQ642の卓越した役割を解析するために、本発明者らは、GRトランス活性化アッセイにおいてQ642Nへの結合における、MF、DEXおよびコルチゾール(それぞれ高い、中程度のおよび低い効力を表す)についての完全な用量応答曲線を測定した(
図5C)。MFの場合、Q642Nの用量応答曲線は、野生型の用量応答曲線と区別できなかった。野生型と比べてDEXの場合、Q642Nは、曲線を大きく右にシフトさせ、EC50は、7.5nMから40nMに変化し、効力が5倍低下した。コルチゾールの場合、Q642Nレセプターバリアントは、飽和濃度であっても不活性であった。したがって、単一の変異であるQ642Nが、高い、中程度のおよび低い効力のリガンドを完全に区別する能力を有することから、Q642が、異なる効力のリガンドを認識するセンサーとして役立つことが示唆される。Q642は、中程度のまたは低い効力の糖質コルチコイド(例えば、DEXまたはコルチゾール)に結合すると、17αヒドロキシル基と水素結合を形成して、結合したリガンドをリガンド結合ポケット内の適切な位置に繋ぎ止める。Q642は、MFなどの非常に強力なリガンドに結合すると、17α親油性基によって押しのけられる。この変化は、リガンド結合によって引き起こされる他の小さな変化と協調して、ヘリックス6、6および7を乱し、ヘリックス5とヘリックス6との間のループを拡大させ、AF2ヘリックスのC末端の配向を変化させ(
図1B)、高効力の特徴をもたらす。
【0198】
種々のリガンドの結合におけるQ642の正確な役割を調べるために、本発明者らは、DEXが単一の不飽和濃度においてトランス活性化の活性をほとんど有しないGR Q642Aのリガンド結合能を試験した(
図5B)。野生型GRまたはGR Q642Aを発現するAD293細胞由来のサイトゾルを用いるインビトロ結合アッセイにおいて、Q642A変異体は、野生型GRと比べて、DEXに対する結合親和性の実質的な喪失を示した(Kd(WT)=5.2nMに対してKd(Q642A)=22.3nM)が、高いリガンド濃度では、なおもいくらかの親和性を保持した(
図13A)。他方で、Q642Aは、レポーターアッセイにおいて、DEXの飽和濃度であってもトランス活性化の活性をほとんど示さなかった(
図13B)。これらのデータは、GR Q642AのDEXトランス活性化の喪失が、リガンド親和性の低下と、GR活性化を阻害する立体配座の変化との両方に起因することを示している。Q642は、DEXおよびコルチゾールとは異なって、MFと水素結合を形成しない。Q642AがなおもMFに結合する能力を有するかを判定するために、本発明者らは、GR Q642A変異体タンパク質を用いて競合結合実験を行った(
図13C)。MFとコルチゾールとの両方が、GR Q642Aへの
3H-DEXの結合と競合することができたが、親和性が大幅に低下した(MFおよびコルチゾールに対するKiは、それぞれ0.7nMおよび91nMという野生型GRのKiに対して、それぞれ9nMおよび250nMであった)。まとめると、これらの結果は、Q642が、C-17αフロ酸基を有するリガンドを押しのけつつ、C-17αヒドロキシル基含有リガンドと水素結合を形成することによってヘリックス7の突起部を支える柱として作用することを示唆している。Q642をアラニンのような小さい残基で置換することにより、ヘリックス7の突起部がもたらされ、すべてのトランス活性化が崩れるがゆえに失われることがある。
【0199】
実施例13:誘導活性の測定。
【0200】
AD293細胞を、24ウェルプレートにおいて1ウェルあたり0.1ngのpRShGR、100ngのMMTV-Lucレポーターおよび10ngのTK-Renilla内部標準でトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、10nmまたは1umの濃度の候補化合物によって細胞を誘導した(
図14を参照のこと)。細胞を回収し、Promega Dual Luciferacseキットによって、ルシフェラーゼ活性を計測した。化合物1は、10nM濃度において、他のすべての候補化合物ならびにVSGC12と比べてかなり低い誘導活性を示す。Yuanzheng He, Jing
jing Shi, Wei Yiら、Discovery of a highly potent glucocorticoid for asthma treatment, Cell Discovery (2015)1, 15035に報告されているように、VSGC12は、以下の化学構造を有する。
【化26】
【0201】
実施例14:抗炎症効果の決定。
【0202】
OVA誘発マウス喘息モデルを用いて、候補化合物の抗炎症効果を調べた。7~9週齢のBalb/cマウスを、OVA(オボアルブミン)で一次免疫した。1回目の免疫化の3週間後、マウスを鼻腔内OVAに曝露し、その間に、異なる処置(エタノール、または10nMもしくは1000nMの、以下:DEX、化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、VSGC12もしくはFFのうちの1つの投与)を行った。アセチルコリンに応答する関連肺(RL)機能を、FlexiVentシステム(SCIREQ)を用いた強制振動法によって計測した。FFと化合物4(CMPD4としてラベルされている)との並列比較である
図15は、化合物4が、マウス喘息モデルにおいて肺の炎症の抑制においてかなり強力であることを示している。
【0203】
実施例15:効力および肺炎症抑制の決定。
【0204】
レポーターシステムにおいて候補化合物の効力を評価するために、MMTV-ルシフェラーゼレポーターを使用した。効力を、
図16Aに示されているような0.01nM~1000nMの様々な用量における候補化合物の完全な用量応答曲線によって計測した(RLU:相対的ルシフェラーゼ単位)。化合物4は、VSGC12とDEXとの両方より高い効力を示す。
【0205】
肺炎症の抑制における候補化合物の効果を評価するために、OVA誘発マウス喘息モデルを使用した(RL:相対的肺機能)。0.125mg/kgという同じ低用量において、化合物4は、
図16Bに提供されているように、肺炎症の抑制においてVSGC12よりもかなり高い抑制活性を示す。
【0206】
【0207】
他の実施形態
【0208】
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されているが、前述の説明は、本発明の範囲を例証することを意図しているのであって、限定することを意図しておらず、本発明の範囲は、添付の請求項の範囲によって定義されることが理解されるべきである。他の態様、利点および変更が、請求項の範囲内である。
【0209】
参考文献
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
(項目1) 式Iの化合物
【化27】
またはその薬学的に許容され得る塩であって、式中、
Xは、-O-または-S-であり;
【化28】
は、結合であるか、または存在せず;
R
1は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、そのいずれもが、必要に応じて置換されており;
R
2は、-L-R’-であり、Lは、結合または-C(O)-であり、R’は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、R’は、必要に応じて置換されており;
R
3は、水素または必要に応じて置換されているC
1-6アルキルであり;
各R
4は、独立して、水素、C
1-6アルキル、-OH、ハロ、ハロアルキル、-CN、-NO
2、-C(O)(C
1-6アルキル)、-NHC(O)(C
1-6アルキル)、-
OC(O)(C
1-6アルキル)、-C(O)NH(C
1-6アルキル)、-C(O)O(C
1-6アルキル)、-SO
2(C
1-6アルキル)または-SO
2NH(C
1-6アルキル)から選択され、R
4は、必要に応じて置換されており;
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素、ハロまたはC
1-4アルキルであり;
nは、0、1、2、3、4または5である、
化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
(項目2) R
1が、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、該アルキル、シクロアルキルまたはアリールは、必要に応じて置換されている、項目1に記載の化合物。
(項目3) R
1が、水素またはC
1-6アルキルであり、該C
1-6アルキルが、1~3つのハロで必要に応じて置換されている、項目2に記載の化合物。
(項目4) R
1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルであり、そのいずれもが、1~3つのハロで必要に応じて置換されている、項目3に記載の化合物。
(項目5) R
1が、フルオロメチルである、項目4に記載の化合物。
(項目6) R
1が、非置換C
1-6アルキルである、項目3に記載の化合物。
(項目7) R
1が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルである、項目6に記載の化合物。
(項目8) R
1が、エチルである、項目7に記載の化合物。
(項目9) R
1が、イソプロピルである、項目7に記載の化合物。
(項目10) R
1が、tert-ブチルである、項目7に記載の化合物。
(項目11) R
1が、水素である、項目3に記載の化合物。
(項目12) R
1が、必要に応じて置換されている3~7員のシクロアルキル、フェニルまたはナフチルであり、そのいずれもが、必要に応じて置換されている、項目2に記載の化合物。
(項目13) Lが、-C(O)-であり、R’が、水素、C
1-6アルキル、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから選択され、R’は、ハロ、CN、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている、項目1に記載の化合物。
(項目14) R’が、ヘテロアリールである、項目13に記載の化合物。
(項目15) R
2が、
【化29】
である、項目14に記載の化合物。
(項目16) R
3が、必要に応じて置換されているC
1-6アルキルである、項目1に記載の化合物。
(項目17) R
3が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルであり、そのいずれもが、必要に応じて置換されている、項目16に記載の化合物。
(項目18) R
3が、水素である、項目1に記載の化合物。
(項目19) 各R
4が、独立して、水素、C
1-6アルキル、-OH、ハロ、-CN、-NO
2、-C(O)(C
1-6アルキル)、-NHC(O)(C
1-6アルキル)、-OC(O)(C
1-6アルキル)、-C(O)NH(C
1-6アルキル)または-C(O)O(C
1-6アルキル)から選択され、R
4のアルキル基は、ハロ、-CN、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている、項目1に記載の化合物。
(項目20) 各R
4が、独立して、水素、C
1-6アルキル、ハロ、-CN、-NO
2、-C(O)(C
1-6アルキル)、-C(O)NH(C
1-6アルキル)または-C(O)O(C
1-6アルキル)から選択され、ここで、R
4のアルキル基は、ハロ、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている、項目19に記載の化合物。
(項目21) 各R
4が、独立して、水素、C
1-6アルキルまたはハロである、項目20に記載の化合物。
(項目22) R
4が、水素である、項目21に記載の化合物。
(項目23) R
4が、水素であり、R
1が、水素、C
1-6アルキルまたはハロアルキルである、項目1に記載の化合物。
(項目24) nが、0、1または2である、項目1に記載の化合物。
(項目25) nが、0である、項目24に記載の化合物。
(項目26) Xが、-O-である、項目1に記載の化合物。
(項目27) Xが、-S-である、項目1に記載の化合物。
(項目28)
【化30】
が、結合である、項目1に記載の化合物。
(項目29)
【化31】
が、存在しない、項目1に記載の化合物。
(項目30) R
5およびR
6が、各々独立して、水素またはハロである、項目1に記載の化合物。
(項目31) R
5およびR
6が、両方とも-Fである、項目30に記載の化合物。
(項目32) 前記式Iの化合物が、
【化32】
【化33】
から選択される、項目1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
(項目33) 式Iの化合物
【化34】
またはその薬学的に許容され得る塩であって、式中、
Xは、-O-または-S-であり;
【化35】
は、結合であるか、または存在せず;
R
1は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、そのいずれもが、必要に応じて置換されており;
R
2は、-L-R’-であり、Lは、結合または-C(O)-であり、R’は、水素、C
1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、R’は、必要に応じて置換されており;
R
3は、水素または必要に応じて置換されているC
1-6アルキルであり;
各R
4は、独立して、水素、C
1-6アルキル、-OH、ハロ、ハロアルキル、-CN、-NO
2、-C(O)(C
1-6アルキル)、-NHC(O)(C
1-6アルキル)、-OC(O)(C
1-6アルキル)、-C(O)NH(C
1-6アルキル)、-C(O)O(C
1-6アルキル)、-SO
2(C
1-6アルキル)または-SO
2NH(C
1-6アルキル)から選択され、R
4は、必要に応じて置換されており;
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素、ハロまたはC
1-4アルキルであり;
nは、0、1、2、3、4または5である、
化合物またはその薬学的に許容され得る塩、
および薬学的に許容され得るキャリアまたはアジュバント
を含む、薬学的組成物。
(項目34) 生物学的サンプル中の糖質コルチコイドレセプターの活性を調節する方法であって、該糖質コルチコイドレセプターを項目1に記載の化合物または項目33に記載の薬学的組成物と接触させる工程を含む、方法。
(項目35) 患者において炎症性疾患を処置するかまたはその重症度を低下させる方法であって、有効量の項目1に記載の化合物または項目33に記載の薬学的組成物を該患者に投与する工程を含む、方法。
(項目36) 前記疾患が、喘息、関節炎、狼瘡、クローン病、炎症性腸疾患、セリアック病、糸球体腎炎、尋常性ざ瘡、白血病および膵がんから選択される、項目35に記載の方法。
(項目37) 前記疾患が、喘息および関節炎から選択される、項目36に記載の方法。
【0210】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
式Iの化合物
【化36】
またはその薬学的に許容され得る塩であって、式中、
Xは、-O-または-S-であり;
【化37】
は、結合であるか、または存在せず;
R
1
は、C
1-6
アルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、そのいずれもが、必要に応じて置換されており;
R
2
は、-L-R’-であり、Lは、結合または-C(O)-であり、R’は、水素、C
1-6
アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、R’は、必要に応じて置換されており;
R
3
は、水素または必要に応じて置換されているC
1-6
アルキルであり;
各R
4
は、独立して、水素、C
1-6
アルキル、-OH、ハロ、ハロアルキル、-CN、-NO
2
、-C(O)(C
1-6
アルキル)、-NHC(O)(C
1-6
アルキル)、-OC(O)(C
1-6
アルキル)、-C(O)NH(C
1-6
アルキル)、-C(O)O(C
1-6
アルキル)、-SO
2
(C
1-6
アルキル)または-SO
2
NH(C
1-6
アルキル)から選択され、R
4
は、必要に応じて置換されており;
R
5
およびR
6
の各々は、独立して、水素、ハロまたはC
1-4
アルキルであり;
nは、0、1、2、3、4または5である、
化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
(項2)
R
1
が、C
1-6
アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、該アルキル、シクロアルキルまたはは、必要に応じて置換されている、上記項1に記載の化合物。
(項3)
R
1
が、C
1-6
アルキルであり、該C
1-6
アルキルが、1~3つのハロで必要に応じて置換されている、上記項2に記載の化合物。
(項4)
R
1
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルであり、そのいずれもが、1~3つのハロで必要に応じて置換されている、上記項3に記載の化合物。
(項5)
R
1
が、フルオロメチルである、上記項4に記載の化合物。
(項6)
R
1
が、非置換C
1-6
アルキルである、上記項3に記載の化合物。
(項7)
R
1
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルである、上記項6に記載の化合物。
(項8)
R
1
が、エチルである、上記項7に記載の化合物。
(項9)
R
1
が、イソプロピルである、上記項7に記載の化合物。
(項10)
R
1
が、tert-ブチルである、上記項7に記載の化合物。
(項11)
R
1
が、必要に応じて置換されている3~7員のシクロアルキル、フェニルまたはナフチルであり、そのいずれもが、必要に応じて置換されている、上記項2に記載の化合物。
(項12)
Lが、-C(O)-であり、R’が、水素、C
1-6
アルキル、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルから選択され、R’は、ハロ、CN、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている、上記項1に記載の化合物。
(項13)
R’が、ヘテロアリールである、上記項12に記載の化合物。
(項14)
R
2
が、
【化38】
である、上記項13に記載の化合物。
(項15)
R
3
が、必要に応じて置換されているC
1-6
アルキルである、上記項1に記載の化合物。
(項16)
R
3
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルであり、そのいずれもが、必要に応じて置換されている、上記項15に記載の化合物。
(項17)
R
3
が、水素である、上記項1に記載の化合物。
(項18)
各R
4
が、独立して、水素、C
1-6
アルキル、-OH、ハロ、-CN、-NO
2
、-C(O)(C
1-6
アルキル)、-NHC(O)(C
1-6
アルキル)、-OC(O)(C
1-6
アルキル)、-C(O)NH(C
1-6
アルキル)または-C(O)O(C
1-6
アルキル)から選択され、R
4
のアルキル基は、ハロ、-CN、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている、上記項1に記載の化合物。
(項19)
各R
4
が、独立して、水素、C
1-6
アルキル、ハロ、-CN、-NO
2
、-C(O)(C
1-6
アルキル)、-C(O)NH(C
1-6
アルキル)または-C(O)O(C
1-6
アルキル)から選択され、ここで、R
4
のアルキル基は、ハロ、カルボキシルまたはオキソで必要に応じて置換されている、上記項18に記載の化合物。
(項20)
各R
4
が、独立して、水素、C
1-6
アルキルまたはハロである、上記項19に記載の化合物。
(項21)
R
4
が、水素である、上記項20に記載の化合物。
(項22)
R
4
が、水素であり、R
1
が、水素、C
1-6
アルキルまたはハロアルキルである、上記項1に記載の化合物。
(項23)
nが、0、1または2である、上記項1に記載の化合物。
(項24)
nが、0である、上記項23に記載の化合物。
(項25)
Xが、-O-である、上記項1に記載の化合物。
(項26)
Xが、-S-である、上記項1に記載の化合物。
(項27)
【化39】
が、結合である、上記項1に記載の化合物。
(項28)
【化40】
が、存在しない、上記項1に記載の化合物。
(項29)
R
5
およびR
6
が、各々独立して、水素またはハロである、上記項1に記載の化合物。
(項30)
R
5
およびR
6
が、両方とも-Fである、上記項29に記載の化合物。
(項31)
前記式Iの化合物が、
【化41】
【化42】
から選択される、上記項1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
(項32)
式Iの化合物
【化43】
またはその薬学的に許容され得る塩であって、式中、
Xは、-O-または-S-であり;
【化44】
は、結合であるか、または存在せず;
R
1
は、C
1-6
アルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、そのいずれもが、必要に応じて置換されており;
R
2
は、-L-R’-であり、Lは、結合または-C(O)-であり、R’は、水素、C
1-6
アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクロアルキルから選択され、R’は、必要に応じて置換されており;
R
3
は、水素または必要に応じて置換されているC
1-6
アルキルであり;
各R
4
は、独立して、水素、C
1-6
アルキル、-OH、ハロ、ハロアルキル、-CN、-NO
2
、-C(O)(C
1-6
アルキル)、-NHC(O)(C
1-6
アルキル)、-OC(O)(C
1-6
アルキル)、-C(O)NH(C
1-6
アルキル)、-C(O)O(C
1-6
アルキル)、-SO
2
(C
1-6
アルキル)または-SO
2
NH(C
1-6
アルキル)から選択され、R
4
は、必要に応じて置換されており;
R
5
およびR
6
の各々は、独立して、水素、ハロまたはC
1-4
アルキルであり;
nは、0、1、2、3、4または5である、
化合物またはその薬学的に許容され得る塩、
および薬学的に許容され得るキャリアまたはアジュバント
を含む、薬学的組成物。
(項33)
生物学的サンプル中の糖質コルチコイドレセプターの活性を調節する方法であって、該糖質コルチコイドレセプターを上記項1に記載の化合物または上記項32に記載の薬学的組成物と接触させる工程を含む、方法。
(項34)
患者において炎症性疾患を処置するかまたはその重症度を低下させる方法であって、有効量の上記項1に記載の化合物または上記項32に記載の薬学的組成物を該患者に投与する工程を含む、方法。
(項35)
前記疾患が、喘息、関節炎、狼瘡、クローン病、炎症性腸疾患、セリアック病、糸球体腎炎、尋常性ざ瘡、白血病および膵がんから選択される、上記項34に記載の方法。
(項36)
前記疾患が、喘息および関節炎から選択される、上記項35に記載の方法。