IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-判定回路および電源装置 図1
  • 特開-判定回路および電源装置 図2
  • 特開-判定回路および電源装置 図3
  • 特開-判定回路および電源装置 図4
  • 特開-判定回路および電源装置 図5
  • 特開-判定回路および電源装置 図6
  • 特開-判定回路および電源装置 図7
  • 特開-判定回路および電源装置 図8
  • 特開-判定回路および電源装置 図9
  • 特開-判定回路および電源装置 図10
  • 特開-判定回路および電源装置 図11
  • 特開-判定回路および電源装置 図12
  • 特開-判定回路および電源装置 図13
  • 特開-判定回路および電源装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132499
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】判定回路および電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20220901BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20220901BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/155 C
H02M3/28 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114354
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2018179839の分割
【原出願日】2018-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 悠介
(72)【発明者】
【氏名】辻本 健悟
(57)【要約】
【課題】故障解析をしやすくすることができる判定回路を得る。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る判定回路は、直流電圧を生成可能な電力変換回路と負荷とを接続する電力供給経路において過電圧が生じたことを検出可能な検出部と、過電圧が生じた場合に、電力変換回路への入力電流または電力変換回路の出力電流に基づいて電力変換回路または負荷のうちのどちらに起因して過電圧が生じたかを判定する判定動作を行うことが可能な判定部とを備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を生成可能な電力変換回路と負荷とを接続する電力供給経路において過電圧が生じたことを検出可能な検出部と、
前記過電圧が生じた場合に、前記電力変換回路への入力電流または前記電力変換回路の出力電流に基づいて前記電力変換回路または前記負荷のうちのどちらに起因して前記過電圧が生じたかを判定する判定動作を行うことが可能な判定部と
を備えた判定回路。
【請求項2】
前記判定部は、前記出力電流に基づいて前記判定動作を行うことが可能であり、
前記判定動作は、前記出力電流が所定の電流範囲の上限よりも大きい場合には、前記電力変換回路に起因して前記過電圧が生じたと判定することと、前記出力電流が前記所定の電流範囲の下限より小さい場合には、前記負荷に起因して前記過電圧が生じたと判定することとを含む
請求項1に記載の判定回路。
【請求項3】
前記判定部は、前記入力電流に基づいて前記判定動作を行うことが可能であり、
前記判定動作は、前記入力電流が所定の電流範囲の上限よりも大きい場合には、前記電力変換回路に起因して前記過電圧が生じたと判定することと、前記入力電流が前記所定の電流範囲の下限より小さい場合には、前記負荷に起因して前記過電圧が生じたと判定することとを含む
請求項1に記載の判定回路。
【請求項4】
直流電圧を生成可能な電力変換回路と、
前記電力変換回路と負荷とを接続する電力供給経路において過電圧が生じたことを検出可能な検出部と、
前記過電圧が生じた場合に、前記電力変換回路への入力電流または前記電力変換回路の出力電流に基づいて前記電力変換回路または前記負荷のうちのどちらに起因して前記過電圧が生じたかを判定する判定動作を行うことが可能な判定部と
を備えた電源装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記出力電流に基づいて前記判定動作を行うことが可能であり、
前記判定動作は、前記出力電流が所定の電流範囲の上限よりも大きい場合には、前記電力変換回路に起因して前記過電圧が生じたと判定することと、前記出力電流が前記所定の電流範囲の下限より小さい場合には、前記負荷に起因して前記過電圧が生じたと判定することとを含む
請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記入力電流に基づいて前記判定動作を行うことが可能であり、
前記判定動作は、前記入力電流が所定の電流範囲の上限よりも大きい場合には、前記電力変換回路に起因して前記過電圧が生じたと判定することと、前記入力電流が前記所定の電流範囲の下限より小さい場合には、前記負荷に起因して前記過電圧が生じたと判定することとを含む
請求項4に記載の電源装置。
【請求項7】
スイッチング動作を行うスイッチング部を有し、直流電圧を生成可能な電力変換回路と、
前記電力変換回路と負荷とを接続する電力供給経路において過電圧が生じたことを検出可能な検出部と、
前記過電圧が生じた場合に、前記スイッチング動作に基づいて前記電力変換回路または前記負荷のうちのどちらに起因して前記過電圧が生じたかを判定する判定動作を行うことが可能な判定部と
を備えた電源装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記スイッチング動作に基づいて前記電力供給経路における電圧を算出可能であり、前記スイッチング動作に基づいて前記電力変換回路の間欠発振を検出可能であり、
前記判定動作は、算出された前記電圧が所定の電圧範囲の上限より大きい場合には、前記電力変換回路に起因して前記過電圧が生じたと判定することと、前記間欠発振を検出した場合には、前記負荷に起因して前記過電圧が生じたと判定することとを含む
請求項7に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定回路、および判定回路を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置では、出力電圧に過電圧が生じる場合がある。例えば、特許文献1には、DC/DCコンバータの出力電圧に過電圧が生じたときに、DC/DCコンバータと負荷との間に設けられたスイッチをオフにする過電圧保護回路が開示されている。特許文献2には、過電圧が生じたときにスイッチング動作を停止する電源装置が開示されている。特許文献3には、並列接続された複数の電源装置のうちのいずれかに、出力電圧が過電圧になる故障が生じた場合に、その電源装置を停止する電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-284994号公報
【特許文献2】特開平10-4677号公報
【特許文献3】特開2005-86883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器では、故障解析がしやすいことが望まれており、電源装置においても、故障解析がしやすいことが期待されている。
【0005】
故障解析をしやすくすることができる判定回路および電源装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の判定回路は、検出部と、判定部とを備えている。検出部は、直流電圧を生成可能な電力変換回路と負荷とを接続する電力供給経路において過電圧が生じたことを検出可能に構成される。判定部は、過電圧が生じた場合に、電力変換回路への入力電流または電力変換回路の出力電流に基づいて電力変換回路または負荷のうちのどちらに起因して過電圧が生じたかを判定する判定動作を行うことが可能に構成される。
【0007】
本発明の第1の電源装置は、電力変換回路と、検出部と、判定部とを備える。電力変換回路は、直流電圧を生成可能に構成される。検出部は、電力変換回路と負荷とを接続する電力供給経路において過電圧が生じたことを検出可能に構成される。判定部は、過電圧が生じた場合に、電力変換回路への入力電流または電力変換回路の出力電流に基づいて電力変換回路または負荷のうちのどちらに起因して過電圧が生じたかを判定する判定動作を行うことが可能に構成される。
【0008】
本発明の第2の電源装置は、電力変換回路と、検出部と、判定部とを備える。電力変換回路は、スイッチング動作を行うスイッチング部を有し、直流電圧を生成可能に構成される。検出部は、電力変換回路と負荷とを接続する電力供給経路において過電圧が生じたことを検出可能に構成される。判定部は、過電圧が生じた場合に、スイッチング動作に基づいて電力変換回路または負荷のうちのどちらに起因して過電圧が生じたかを判定する判定動作を行うことが可能に構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の判定回路および第1の電源装置によれば、電力変換回路への入力電流または電力変換回路の出力電流に基づいて判定動作を行うようにしたので、故障解析をしやすくすることができる。
【0010】
本発明の第2の電源装置によれば、スイッチング動作に基づいて判定動作を行うようにしたので、故障解析をしやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の参考例に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
図2図1に示したスイッチの一構成例を表す回路図である。
図3図1に示した電源装置の一動作例を表すフローチャートである。
図4】第1の参考例の変形例に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
図5図4に示した電源装置の一動作例を表すフローチャートである。
図6】第2の参考例に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
図7図6に示した電源装置の一動作例を表すフローチャートである。
図8】第2の参考例の変形例に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
図9】第1の実施の形態に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
図10図9に示した電源装置の一動作例を表すフローチャートである。
図11】第1の実施の形態の変形例に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
図12】第2の実施の形態に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
図13図12に示した電源装置の一動作例を表すフローチャートである。
図14】第2の実施の形態の変形例に係る電源装置の一構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の参考例(負荷への電力供給を遮断して判定動作を行う例)
2.第2の参考例(負荷への電力供給を遮断して判定動作を行う例)
3.第1の実施の形態(負荷への電力供給を行いつつ判定動作を行う例)
4.第2の実施の形態(負荷への電力供給を行いつつ判定動作を行う例)
【0013】
<1.第1の参考例>
[構成例]
図1は、本発明の第1の参考例に係る電源装置(電源装置1)の一構成例を表すものである。なお、本発明の参考例に係る判定回路は、本参考例により具現化されるので、併せて説明する。
【0014】
電源装置1は、端子T11,T12と、端子T21,T22とを備えている。端子T11,T12には、バッテリB1が接続される。端子T21,T22には、負荷装置100およびバッテリB2を含む負荷LDが接続される。電源装置1は、バッテリB1から供給された電圧を昇圧または降圧することにより電力を変換し、変換された電力を負荷LDに供給するようになっている。なお、バッテリB1の代わりに電源を用いてもよい。
【0015】
電源装置1は、DC/DCコンバータ10と、出力電圧センサ12と、スイッチ14と、ドライバ15と、出力電圧センサ16と、制御部20とを備えている。
【0016】
DC/DCコンバータ10は、バッテリB1から供給された直流の電圧V1を直流の電圧V2に変換する電力変換回路である。DC/DCコンバータ10は、端子T11,T12を介してバッテリB1に接続されるとともに、電圧線L1、基準電圧線L2、および端子T21,T22を介して負荷LDに接続される。DC/DCコンバータ10は、例えば、非絶縁型のDC/DCコンバータであってもよいし、絶縁型のDC/DCコンバータであってもよい。DC/DCコンバータ10は、スイッチング部11を有している。スイッチング部11は、制御部20から供給されたスイッチング制御信号に基づいてスイッチング動作を行うように構成される。スイッチング部11は、1または複数のスイッチングトランジスタを用いて構成される。スイッチング部11は、例えば、フルブリッジ型の回路を用いることができる。DC/DCコンバータ10は、例えば、パルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)を用いて電力変換を行うようになっている。なお、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、パルス周波数変調(PFM;Pulse Frequency Modulation)を用いて電力変換を行うようにしてもよい。
【0017】
出力電圧センサ12は、電圧線L1における電圧を検出するように構成される。電圧線L1は、電圧線L11,L12を含む。電圧線L11は、電圧線L1のうちのDC/DCコンバータ10とスイッチ14との間の部分であり、電圧線L12は、電圧線L1のうちのスイッチ14と端子T21との間の部分である。出力電圧センサ12の一端は電圧線L11に接続され、他端は基準電圧線L2に接続される。出力電圧センサ12は、基準電圧線L2での電圧を基準とした電圧線L1(電圧線L11)での電圧を、電圧Vout1として検出する。そして、出力電圧センサ12は、検出した電圧Vout1に応じた電圧を制御部20に供給するようになっている。
【0018】
スイッチ14は、DC/DCコンバータ10が生成した直流電力を負荷LDへ供給し、あるいは直流電力の負荷LDへの供給を遮断することができるように構成される。スイッチ14は、電圧線L1に設けられ、一端は電圧線L11を介してDC/DCコンバータ10に接続され、他端は電圧線L12を介して端子T21に接続される。スイッチ14は、ドライバ15から供給された制御信号に基づいてオンオフするようになっている。
【0019】
ドライバ15は、制御部20から供給された制御信号に基づいて、スイッチ14を駆動するように構成される。
【0020】
図2は、スイッチ14およびドライバ15の一構成例を表すものである。スイッチ14は、2つのトランジスタ14A,14Bを有している。ドライバ15は、2つのドライバ15A,15Bを有している。2つのトランジスタ14A,14Bのそれぞれは、例えばN型のパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を用いて構成される。トランジスタ14Aのドレインは電圧線L11に接続され、ソースはトランジスタ14Bのソースに接続され、ゲートはドライバ15Aの出力端子に接続される。トランジスタ14Aは、バッテリB2の陽極端子および陰極端子が誤って逆に接続された場合に、DC/DCコンバータ10と負荷LDとの間の接続を切断することができるようにするために設けられている。トランジスタ14Bのドレインは電圧線L12に接続され、ソースはトランジスタ14Aのソースに接続され、ゲートはドライバ15Bの出力端子に接続される。トランジスタ14Bは、負荷LDからDC/DCコンバータ10に向かって電流が流れる場合に、DC/DCコンバータ10と負荷LDとの間の接続を切断することができるようにするために設けられている。ドライバ15Aの入力端子には制御部20から制御信号が供給され、出力端子はトランジスタ14Aのゲートに接続される。ドライバ15Bの入力端子には制御部20から制御信号が供給され、出力端子はトランジスタ14Bのゲートに接続される。
【0021】
出力電圧センサ16は、電圧線L1における電圧を検出するように構成される。出力電圧センサ16の一端は電圧線L12に接続され、他端は基準電圧線L2に接続される。出力電圧センサ16は、基準電圧線L2での電圧を基準とした電圧線L1(電圧線L12)での電圧を、電圧Vout2として検出する。そして、出力電圧センサ16は、検出した電圧Vout2に応じた電圧を制御部20に供給するようになっている。
【0022】
制御部20は、外部のコントローラ(図示せず)から供給された制御情報INF1に基づいて、電源装置1の動作を制御するように構成される。具体的には、制御部20は、スイッチング部11にスイッチング制御信号を供給することにより、スイッチング部11にスイッチング動作を行わせる。制御部20は、例えば、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて、DC/DCコンバータ10が生成する電圧V2が、制御情報INF1に含まれる目標電圧情報が示す目標電圧Vtargetの付近になるように、スイッチング部11の動作を制御する。また、制御部20は、電源装置1の動作状態に基づいて、スイッチ14の動作を制御する。また、制御部20は、電圧線L1における電圧に過電圧が生じた場合には、トランジスタ14A,14Bをオフ状態にするとともに、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2に基づいて、その過電圧の発生原因を判定する。そして、制御部20は、その判定結果を、通知情報INF2を用いて外部のコントローラに通知するようになっている。制御部20は、例えば、マイクロコントローラを用いて構成される。制御部20は、過電圧検出部21と、スイッチ制御部22と、判定部23とを有している。
【0023】
過電圧検出部21は、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたかどうかを検出するように構成される。具体的には、過電圧検出部21は、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2が、目標電圧Vtargetよりも高く設定されたしきい値電圧を上回った場合に、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたことを検出するようになっている。
【0024】
スイッチ制御部22は、スイッチ14の動作を制御するように構成される。具体的には、スイッチ制御部22は、例えば、負荷LDからDC/DCコンバータ10に向かって電流が流れる場合に、トランジスタ14Bをオフ状態にする。また、スイッチ制御部22は、例えば、バッテリB2の陽極端子および陰極端子が誤って逆に接続された場合に、トランジスタ14Aをオフ状態にする。また、スイッチ制御部22は、例えば、電圧線L1における電圧に過電圧が生じた場合に、トランジスタ14A,14Bをオフ状態にするようになっている。
【0025】
判定部23は、電圧線L1における電圧に過電圧が生じた場合に、その過電圧の発生原因を判定するように構成される。具体的には、判定部23は、トランジスタ14A,14Bがオフ状態である期間において出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2に基づいて、その過電圧の発生原因を判定するようになっている。
【0026】
この構成により、電源装置1は、制御情報INF1に含まれる目標電圧情報が示す目標電圧Vtargetに基づいて、バッテリB1から供給された電圧V1を変換することにより電圧V2を生成し、この電圧V2を負荷LDに供給する。そして、電源装置1は、例えば、電圧線L1における電圧に過電圧が生じた場合には、トランジスタ14A,14Bをオフ状態にするとともに、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2に基づいて、その過電圧の発生原因を判定する。そして、電源装置1は、その判定結果を、通知情報INF2を用いて外部のコントローラに通知するようになっている。
【0027】
[動作および作用]
続いて、本参考例の電源装置1の動作および作用について説明する。
【0028】
(全体動作概要)
まず、図1を参照して、電源装置1の全体動作概要を説明する。DC/DCコンバータ10は、バッテリB1から供給された直流の電圧V1を変換することにより直流の電圧V2を生成する。出力電圧センサ12は、電圧線L1(電圧線L11)における電圧を電圧Vout1として検出し、検出した電圧Vout1に応じた電圧を制御部20に供給する。ドライバ15は、制御部20から供給された制御信号に基づいて、スイッチ14を駆動する。スイッチ14は、DC/DCコンバータ10が生成した直流電力を負荷LDへ供給し、あるいは直流電力の負荷LDへの供給を遮断する。出力電圧センサ16は、電圧線L1(電圧線L12)における電圧を電圧Vout2として検出し、検出した電圧Vout2に応じた電圧を制御部20に供給する。制御部20は、外部のコントローラ(図示せず)から供給された制御情報INF1に基づいて、電源装置1の動作を制御する。
【0029】
(詳細動作)
電源装置1は、制御情報INF1に含まれる目標電圧情報が示す目標電圧Vtargetに基づいて、バッテリB1から供給された電圧V1を変換することにより電圧V2を生成し、この電圧V2を負荷LDに供給する。そして、電源装置1は、例えば、電圧線L1における電圧に過電圧が生じた場合には、トランジスタ14A,14Bをオフ状態にするとともに、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2に基づいて、その過電圧の発生原因を判定する。そして、電源装置1は、その判定結果を、通知情報INF2を用いて外部のコントローラに通知する。以下に、この動作について詳細に説明する。
【0030】
図3は、過電圧の発生原因を判定する動作の一例を表すものである。まず、制御部20の過電圧検出部21は、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2に基づいて、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたかどうかを確認する(ステップS101)。具体的には、過電圧検出部21は、電圧Vout2が、目標電圧Vtargetよりも高く設定されたしきい値電圧を上回った場合に、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたことを検出する。過電圧が生じていない場合(ステップS101において“N”)には、過電圧が生じるまで、このステップS101を繰り返す。
【0031】
ステップS101において過電圧が生じた場合(ステップS101において“Y”)には、制御部20のスイッチ制御部22は、トランジスタ14A,14Bをオフ状態にすることにより、スイッチ14をオフ状態にする(ステップS102)。
【0032】
次に、制御部20の判定部23は、トランジスタ14A,14Bがオフ状態である期間において出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2が正常電圧範囲の範囲内であるかどうかを確認する(ステップS103)。ここで、正常電圧範囲は、例えば、目標電圧Vtargetを中心電圧とする、所定の電圧幅を有する電圧範囲である。
【0033】
ステップS103において、電圧Vout2が正常電圧範囲の範囲内である場合(ステップS103において“Y”)には、判定部23は、生じた過電圧がDC/DCコンバータ10に起因していると判定する(ステップS104)。すなわち、スイッチ14がオフ状態であるので、過電圧がDC/DCコンバータ10に起因している場合には、その過電圧が負荷LDに影響を与えることはないため、電圧Vout2は正常電圧範囲の範囲内に収まることが期待される。よって、判定部23は、電圧Vout2が正常電圧範囲の範囲内である場合には、過電圧がDC/DCコンバータ10に起因している判定する。そして、このフローは終了する。
【0034】
ステップS103において、電圧Vout2が正常電圧範囲の範囲内ではない場合(ステップS103において“N”)には、判定部23は、電圧Vout2が正常電圧範囲の上限よりも大きいかどうかを確認する(ステップS105)。電圧Vout2が正常電圧範囲の上限より大きくない場合(ステップS105において“N”)には、このフローは終了する。
【0035】
ステップS105において、電圧Vout2が正常電圧範囲の上限よりも大きい場合(ステップS105において“Y”)には、判定部23は、生じた過電圧が負荷LDに起因していると判定する(ステップS106)。すなわち、スイッチ14がオフ状態であるので、電圧Vout2が正常電圧範囲の上限よりも大きいことは、過電圧が負荷LDに起因していることを示す。そして、このフローは終了する。
【0036】
そして、電源装置1は、過電圧がDC/DCコンバータ10および負荷LDのうちのどちらに起因して生じたかについての情報を、通知情報INF2を用いて外部のコントローラに通知する。そして、電源装置1は、例えば、スイッチング部11の動作を停止させる。これにより、DC/DCコンバータ10は、電圧V2の生成を停止する。
【0037】
外部のコントローラは、この通知情報INF2に基づいて、過電圧がDC/DCコンバータ10および負荷LDのうちのどちらに起因して生じたかについての情報を把握する。そして、例えば、過電圧がDC/DCコンバータ10に起因して生じた場合には、電源装置1は、外部のコントローラから例えばリセット指示等を含む制御情報INF1を受け取ったときにのみ、動作を再開する。また、例えば、過電圧が負荷LDに起因して生じた場合には、電源装置1は、負荷LDにおける異常が解消されたときに、動作を再開する。
【0038】
以上のように、電源装置1では、過電圧の発生原因を判定するようにした。具体的には、電源装置1では、過電圧がDC/DCコンバータ10および負荷LDのうちのどちらに起因して生じたかを判定するようにした。これにより、電源装置1を備えたシステムに故障が生じた場合に、故障解析をしやすくすることができる。また、電源装置1のメーカにとっては、故障の原因が自社製品に起因するのか否かを容易に判定することができるので、業務を効率的に遂行することができる。
【0039】
また、電源装置1では、過電圧の発生原因を判定した後に、スイッチング部11の動作を停止させるようにしたので、速やかにDC/DCコンバータ10の動作を停止させることができるので、安全性を高めることができる。
【0040】
また、電源装置1では、電圧線L1にスイッチ14を設け、スイッチ14をオフ状態にしたときの、このスイッチ14と負荷LDとを接続する電圧線L12における電圧に基づいて、過電圧がDC/DCコンバータ10および負荷LDのうちのどちらに起因して生じたかを判定するようにした。これにより、電源装置1では、シンプルな方法で、過電圧の発生原因を判定することができる。
【0041】
[効果]
以上のように本参考例では、過電圧の発生原因を判定するようにしたので、故障解析をしやすくすることができる。
【0042】
本参考例では、過電圧の発生原因を判定した後に、スイッチング部の動作を停止させるようにしたので、安全性を高めることができる。
【0043】
本参考例では、スイッチを設け、スイッチをオフ状態にしたときの、このスイッチと負荷とを接続する高電圧線における電圧に基づいて、過電圧がDC/DCコンバータおよび負荷のうちのどちらに起因して生じたかを判定するようにしたので、シンプルな方法で、過電圧の発生原因を判定することができる。
【0044】
[変形例1-1]
上記参考例では、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2に基づいて過電圧の発生原因を判定したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて過電圧の発生原因を判定してもよい。以下に、本変形例に係る電源装置1Aについて詳細に説明する。
【0045】
図4は、電源装置1Aの一構成例を表すものである。電源装置1Aは、DC/DCコンバータ10と、出力電圧センサ12と、スイッチ14と、ドライバ15と、制御部20Aとを備えている。すなわち、電源装置1Aでは、上記参考例に係る電源装置1(図1)において、出力電圧センサ16を省くとともに、制御部20を制御部20Aに置き換えている。
【0046】
制御部20Aは、過電圧検出部21Aと、判定部23Aとを有している。過電圧検出部21Aは、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1が、目標電圧Vtargetよりも高く設定されたしきい値電圧を上回った場合に、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたことを検出するように構成される。判定部23Aは、トランジスタ14A,14Bがオフ状態である期間において出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて、その過電圧の発生原因を判定するように構成される。
【0047】
図5は、過電圧の発生原因を判定する動作の一例を表すものである。まず、過電圧検出部21Aは、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたかどうかを確認する(ステップS111)。過電圧が生じた場合には、スイッチ制御部22は、トランジスタ14A,14Bをオフ状態にすることにより、スイッチ14をオフ状態にする(ステップS102)。
【0048】
次に、判定部23Aは、トランジスタ14A,14Bがオフ状態である期間において出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1が正常電圧範囲の範囲内であるかどうかを確認する(ステップS113)。
【0049】
ステップS113において、電圧Vout1が正常電圧範囲の範囲内である場合(ステップS113において“Y”)には、判定部23Aは、生じた過電圧が負荷LDに起因していると判定する(ステップS114)。すなわち、スイッチ14がオフ状態であるので、過電圧が負荷LDに起因している場合には、その過電圧がDC/DCコンバータ10に影響を与えることはないため、電圧Vout1は正常電圧範囲の範囲内に収まることが期待される。よって、判定部23Aは、電圧Vout1が正常電圧範囲の範囲内である場合には、過電圧が負荷LDに起因している判定する。そして、このフローは終了する。
【0050】
ステップS113において、電圧Vout1が正常電圧範囲の範囲内ではない場合(ステップS113において“N”)には、判定部23Aは、電圧Vout1が正常電圧範囲の上限よりも大きいかどうかを確認する(ステップS115)。電圧Vout1が正常電圧範囲の上限より大きくない場合(ステップS115において“N”)には、このフローは終了する。
【0051】
ステップS115において、電圧Vout1が正常電圧範囲の上限よりも大きい場合(ステップS115において“Y”)には、判定部23Aは、生じた過電圧がDC/DCコンバータ10に起因していると判定する(ステップS116)。すなわち、スイッチ14がオフ状態であるので、電圧Vout1が正常電圧範囲の上限よりも大きいことは、過電圧がDC/DCコンバータ10に起因していることを示す。そして、このフローは終了する。
【0052】
なお、この例では、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて過電圧の発生原因を判定したが、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1および出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2の両方に基づいて過電圧の発生原因を判定してもよい。
【0053】
[変形例1-2]
上記参考例では、スイッチ14に2つのトランジスタ14A,14Bを設けたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、トランジスタ14Aを省いてもよい。この場合には、ドライバ15は、1つのドライバ15Bを用いて構成される。トランジスタ14Bのドレインは電圧線L12に接続され、ソースは電圧線L11に接続され、ゲートはドライバ15Bの出力端子に接続される。この場合には、本変形例に係る電源装置は、変形例1-1に係る電源装置1Aと同様(図3)に、例えば、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて過電圧の発生原因を判定することができる。
【0054】
<2.第2の参考例>
次に、第2の参考例に係る電源装置2について説明する。電源装置2は、DC/DCコンバータにおけるスイッチング動作に基づいて、DC/DCコンバータが生成する電圧V2の電圧値を推定し、その推定した電圧値に基づいて過電圧の発生原因を判定するように構成される。なお、上記第1の参考例に係る電源装置1と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
図6は、電源装置2の一構成例を表すものである。電源装置2は、入力電圧センサ18と、DC/DCコンバータ30と、デューティ比検出回路33と、軽負荷回路34と、制御部40とを備えている。
【0056】
入力電圧センサ18は、DC/DCコンバータ30に入力される電圧V1を検出するように構成される。入力電圧センサ18の一端は端子T11に接続され、他端は端子T12に接続される。入力電圧センサ18は、端子T12での電圧を基準とした端子T11での電圧を、電圧Vinとして検出する。そして、入力電圧センサ18は、検出した電圧Vinに応じた電圧を制御部40に供給するようになっている。
【0057】
DC/DCコンバータ30は、バッテリB1から供給された直流の電圧V1を変換することにより直流の電圧V2を生成する電力変換回路である。DC/DCコンバータ30は、絶縁型のDC/DCコンバータであり、スイッチング部11と、トランス32とを有している。トランス32は、1次側巻線と、2次側巻線とを含んでいる。スイッチング部11は、トランス32の1次側巻線に接続される。DC/DCコンバータ30は、パルス幅変調を用いて電力変換を行うようになっている。
【0058】
デューティ比検出回路33は、DC/DCコンバータ30のスイッチング部11におけるスイッチング動作のデューティ比DRを検出するように構成される。具体的には、デューティ比検出回路33は、例えば、トランス32の2次側巻線から出力される矩形波信号に基づいて、デューティ比DRを検出するように構成することができる。そして、デューティ比検出回路33は、検出したデューティ比DRについての情報を制御部40に供給するようになっている。
【0059】
軽負荷回路34は、DC/DCコンバータ30の負荷として動作可能に構成される。軽負荷回路34の一端は電圧線L11に接続され、他端は基準電圧線L2に接続される。軽負荷回路34は、抵抗素子35と、負荷スイッチ36とを有している。抵抗素子35の一端は電圧線L11に接続され、他端は負荷スイッチ36の一端に接続される。負荷スイッチ36の一端は抵抗素子35の他端に接続され、他端は基準電圧線L2に接続される。負荷スイッチ36は、例えば、N型のFET(Field effect transistor)を用いて構成される。軽負荷回路34は、負荷スイッチ36をオン状態にすることにより、DC/DCコンバータ30の軽い負荷として機能するようになっている。
【0060】
電源装置2では、スイッチ14がオフ状態になったときに、負荷スイッチ36をオン状態にすることにより、軽負荷回路34をDC/DCコンバータ30の軽い負荷として機能させる。これにより、電源装置2では、DC/DCコンバータ30において、いわゆる間欠発振が生じるおそれを低減することができるようになっている。
【0061】
制御部40は、判定部43を有している。判定部43は、トランス32における1次側巻線と2次側巻線の巻線比WR、入力電圧センサ18により検出された電圧Vin、およびデューティ比検出回路33により検出されたデューティ比DRに基づいて、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値を、電圧Vocalとして算出する。そして、判定部43は、この電圧Vocalに基づいて、過電圧の発生原因を判定するようになっている。
【0062】
図7は、過電圧の発生原因を判定する動作の一例を表すものである。まず、制御部40の過電圧検出部21は、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2に基づいて、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたかどうかを確認する(ステップS201)。過電圧が生じた場合には、制御部40のスイッチ制御部22は、トランジスタ14A,14Bをオフ状態にすることにより、スイッチ14をオフ状態にする(ステップS202)。
【0063】
次に、制御部40は、負荷スイッチ36をオン状態にする(ステップS203)。これにより、軽負荷回路34が、DC/DCコンバータ30の軽い負荷として機能する。
【0064】
次に、制御部40の判定部43は、トランジスタ14A,14Bがオフ状態である期間においてデューティ比検出回路33により検出されたデューティ比DRおよび入力電圧センサ18により検出された電圧Vinと、トランス32における巻線比WRとに基づいて、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値である電圧Vocalを算出する(ステップS204)。このとき、軽負荷回路34が、DC/DCコンバータ30の軽い負荷として機能しているので、DC/DCコンバータ30では、間欠発振が生じるおそれを低減することができるため、所望のデューティ比DRを得ることができる。これにより、電源装置2では、電圧Vocalの算出精度を高めることができる。
【0065】
次に、判定部43は、電圧Vocalが正常電圧範囲の範囲内であるかどうかを確認する(ステップS205)。電圧Vocalが正常電圧範囲の範囲内である場合(ステップS205において“Y”)には、判定部43は、第1の参考例の変形例に係る判定部23A(図5におけるステップS114)と同様に、生じた過電圧が負荷LDに起因していると判定する(ステップS206)。そして、このフローは終了する。
【0066】
ステップS205において、電圧Vocalが正常電圧範囲の範囲内ではない場合(ステップS205において“N”)には、判定部43は、電圧Vocalが正常電圧範囲の上限よりも大きいかどうかを確認する(ステップS207)。電圧Vocalが正常電圧範囲の上限より大きくない場合(ステップS207において“N”)には、このフローは終了する。
【0067】
ステップS207において、電圧Vocalが正常電圧範囲の上限よりも大きい場合(ステップS207において“Y”)には、判定部43は、第1の参考例に係る判定部23A(図5におけるステップS116)と同様に、生じた過電圧がDC/DCコンバータ30に起因していると判定する(ステップS208)。そして、このフローは終了する。
【0068】
そして、電源装置2は、過電圧がDC/DCコンバータ30および負荷LDのうちのどちらに起因して生じたかについての情報を、例えば通知情報INF2を用いて外部のコントローラに通知する。そして、電源装置2は、例えば、スイッチング部11の動作を停止させる。これにより、DC/DCコンバータ30は、電圧V2の生成を停止する。
【0069】
以上のように、電源装置2では、DC/DCコンバータ30におけるスイッチング動作に基づいて、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の電圧値を推定するようにした。具体的には、電源装置2では、スイッチング動作のデューティ比DRに基づいて、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値である電圧Vocalを算出した。そして、電源装置2は、この電圧Vocalに基づいて過電圧の発生原因を判定するようにした。これにより、電源装置2では、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2を用いずに、過電圧の発生原因を判定することができる。
【0070】
以上のように本参考例では、DC/DCコンバータにおけるスイッチング動作に基づいて、DC/DCコンバータが生成する電圧の電圧値を推定し、この推定した電圧に基づいて過電圧の発生原因を判定するようにした。これにより、出力電圧センサ16により検出された電圧Vout2を用いずに、過電圧の発生原因を判定することができる。その他の効果は、上記第1の参考例の場合と同様である。
【0071】
[変形例2-1]
上記参考例では、出力電圧センサ16を設けたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、この出力電圧センサ16を省いてもよい。この場合には、ステップS201において、過電圧検出部21は、例えば、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたかどうかを確認することができる。
【0072】
[変形例2-2]
上記参考例では、パルス幅変調を用いて電力変換を行うDC/DCコンバータ30を設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図8に示す電源装置2Aのように、パルス周波数変調を用いて電力変換を行うDC/DCコンバータを設けてもよい。電源装置2Aは、DC/DCコンバータ30Aと、スイッチング周波数検出回路33Aと、制御部40Aとを備えている。
【0073】
DC/DCコンバータ30Aは、絶縁型のDC/DCコンバータであり、スイッチング部11と、トランス32とを有している。DC/DCコンバータ30Aは、パルス周波数変調を用いて電力変換を行うようになっている。
【0074】
スイッチング周波数検出回路33Aは、DC/DCコンバータ30Aのスイッチング部11におけるスイッチング動作のスイッチング周波数FSWを検出するように構成される。具体的には、スイッチング周波数検出回路33Aは、例えば、トランス32の2次側巻線から出力される矩形波信号におけるパルスの数をカウントすることにより、スイッチング周波数FSWを検出するように構成することができる。そして、スイッチング周波数検出回路33Aは、検出したスイッチング周波数FSWについての情報を制御部40Aに供給するようになっている。
【0075】
制御部40Aは、判定部43Aを有している。判定部43Aは、トランス32における巻線比WR、入力電圧センサ18により検出された電圧Vin、およびスイッチング周波数検出回路33Aにより検出されたスイッチング周波数FSWに基づいて、DC/DCコンバータ30Aが生成する電圧V2の推定値を、電圧Vocalとして算出する。そして、判定部43Aは、この電圧Vocalに基づいて、過電圧の発生原因を判定するようになっている。
【0076】
電源装置2Aにおける過電圧の発生原因を判定する動作は、ステップS204を除き、上記第2の参考例に係る電源装置2の場合(図7)と同様である。電源装置2Aの判定部43Aは、このステップS204において、トランジスタ14A,14Bがオフ状態である期間においてスイッチング周波数検出回路33Aにより検出されたスイッチング周波数FSWおよび入力電圧センサ18により検出された電圧Vinと、トランス32における巻線比WRとに基づいて、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値である電圧Vocalを算出する。
【0077】
<3.第1の実施の形態>
次に、第1の実施の形態に係る電源装置3について説明する。電源装置3は、スイッチ14を省き、DC/DCコンバータが生成した電圧V2を負荷LDに供給しつつ、過電圧の発生原因を判定するように構成される。なお、上記第2の参考例に係る電源装置2と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0078】
図9は、電源装置3の一構成例を表すものである。電源装置3は、入力電圧センサ18と、DC/DCコンバータ30と、デューティ比検出回路33と、出力電圧センサ12と、制御部40とを備えている。
【0079】
制御部50は、過電圧検出部21Aと、判定部53とを有している。過電圧検出部21Aは、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1が、目標電圧Vtargetよりも高く設定されたしきい値電圧を上回った場合に、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたことを検出するように構成される。判定部53は、デューティ比検出回路33により検出されたデューティ比DRに基づいて、DC/DCコンバータ30において、いわゆる間欠発振が生じているかどうかを確認することにより、過電圧が負荷LDに起因しているかどうかを判定する。また、判定部53は、トランス32における巻線比WR、入力電圧センサ18により検出された電圧Vin、およびデューティ比検出回路33により検出されたデューティ比DRに基づいて、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値を、電圧Vocalとして算出する。そして、判定部53は、この電圧Vocalに基づいて、過電圧がDC/DCコンバータ30に起因しているかどうかを判定するようになっている。
【0080】
ここで、過電圧検出部21Aは、本開示における「検出部」の一具体例に対応する。判定部53は、本開示における「判定部」の一具体例に対応する。DC/DCコンバータ30は、本開示における「電力変換回路」の一具体例に対応する。電圧線L1は、本開示における「電力供給経路」の一具体例に対応する。
【0081】
図10は、過電圧の発生原因を判定する動作の一例を表すものである。まず、制御部50の過電圧検出部21Aは、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたかどうかを確認する(ステップS301)。
【0082】
ステップS301において、過電圧が生じた場合には、制御部50の判定部53は、デューティ比検出回路33により検出されたデューティ比DRに基づいて、DC/DCコンバータ30において、間欠発振が生じているかどうかを確認する(ステップS302)。
【0083】
ステップS302において、DC/DCコンバータ30において間欠発振が生じている場合(ステップS302において“Y”)には、判定部53は、生じた過電圧が負荷LDに起因していると判定する(ステップS303)。すなわち、負荷LDに起因して過電圧が生じた場合には、例えば、負荷LDからDC/DCコンバータ30に向かって電流が流れる。このような状態では、DC/DCコンバータ30から見た負荷は軽いので、DC/DCコンバータ30において、間欠発振が生じることとなる。よって、判定部53は、DC/DCコンバータ30において間欠発振が生じている場合には、生じた過電圧が負荷LDに起因していると判定する。そして、このフローは終了する。
【0084】
ステップS302において、DC/DCコンバータ30において間欠発振が生じていない場合(ステップS302において“N”)には、判定部53は、デューティ比検出回路33により検出されたデューティ比DR、入力電圧センサ18により検出された電圧Vin、およびトランス32における巻線比WRに基づいて、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値である電圧Vocalを算出する(ステップS304)。
【0085】
次に、判定部53は、電圧Vocalが正常電圧範囲の上限よりも大きいかどうかを確認する(ステップS305)。電圧Vocalが正常電圧範囲の上限より大きくない場合(ステップS305において“N”)には、このフローは終了する。
【0086】
ステップS305において、電圧Vocalが正常電圧範囲の上限よりも大きい場合(ステップS305において“Y”)には、判定部53は、第2の参考例に係る判定部43(図7におけるステップS208)と同様に、生じた過電圧がDC/DCコンバータ30に起因していると判定する(ステップS208)。そして、このフローは終了する。
【0087】
そして、電源装置3は、過電圧がDC/DCコンバータ30および負荷LDのうちのどちらに起因して生じたかについての情報を、例えば通知情報INF2を用いて外部のコントローラに通知する。そして、電源装置3は、例えば、スイッチング部11の動作を停止させる。これにより、DC/DCコンバータ30は、電圧V2の生成を停止する。
【0088】
以上のように、電源装置3では、上記第2の参考例に係る電源装置2(図6)と異なり、スイッチ14を省くようにした。これにより、電源装置3では、構成をシンプルにすることができる。
【0089】
また、電源装置3では、DC/DCコンバータ30における間欠発振の有無、およびDC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値である電圧Vocalに基づいて、過電圧の発生原因を判定するようにした。具体的には、電源装置3では、DC/DCコンバータ30における間欠発振の有無に基づいて、過電圧が負荷LDに起因しているかどうかを判定するとともに、DC/DCコンバータ30が生成する電圧V2の推定値である電圧Vocalに基づいて、過電圧がDC/DCコンバータ30に起因しているかどうかを判定するようにした。これにより、電源装置3では、DC/DCコンバータ30が生成した電圧V2を負荷LDに供給しつつ、過電圧の発生原因を判定することができる。
【0090】
以上のように本実施の形態では、スイッチ14を省くようにしたので、構成をシンプルにすることができる。
【0091】
本実施の形態では、DC/DCコンバータにおける間欠発振の有無、およびDC/DCコンバータが生成する電圧の推定値に基づいて、過電圧の発生原因を判定するようにしたので、DC/DCコンバータが生成した電圧を負荷に供給しつつ、過電圧の発生原因を判定することができる。
【0092】
その他の効果は、上記第2の参考例の場合と同様である。
【0093】
[変形例3-1]
上記実施の形態では、パルス幅変調を用いて電力変換を行うDC/DCコンバータ30を設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、図11に示す電源装置3Aのように、第2の参考例の変形例に係る電源装置2A(図8)と同様に、例えばパルス周波数変調を用いて電力変換を行うDC/DCコンバータを設けてもよい。この電源装置3Aは、DC/DCコンバータ30Aと、スイッチング周波数検出回路33Aと、制御部50Aとを備えている。
【0094】
制御部50Aは、判定部53Aを有している。判定部53Aは、スイッチング周波数検出回路33Aにより検出されたスイッチング周波数FSWに基づいて、DC/DCコンバータ30Aにおいて間欠発振が生じているかどうかを確認することにより、過電圧が負荷LDに起因しているかどうかを判定する。また、判定部53Aは、トランス32における巻線比WR、入力電圧センサ18により検出された電圧Vin、およびスイッチング周波数検出回路33Aにより検出されたスイッチング周波数FSWに基づいて、DC/DCコンバータ30Aが生成する電圧V2の推定値を、電圧Vocalとして算出する。そして、判定部53Aは、この電圧Vocalに基づいて、過電圧がDC/DCコンバータ30Aに起因しているかどうかを判定するようになっている。
【0095】
電源装置3Aにおける過電圧の発生原因を判定する動作は、ステップS304を除き、上記第1の実施の形態に係る電源装置3の場合(図10)と同様である。電源装置3Aの判定部53Aは、ステップS304において、スイッチング周波数検出回路33Aにより検出されたスイッチング周波数FSW、入力電圧センサ18により検出された電圧Vin、およびトランス32における巻線比WRに基づいて、DC/DCコンバータ30Aが生成する電圧V2の推定値である電圧Vocalを算出する。
【0096】
<4.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る電源装置4について説明する。電源装置4は、スイッチ14を省き、DC/DCコンバータが生成した電圧V2を負荷LDに供給しつつ、DC/DCコンバータの出力電流に基づいて過電圧の発生原因を判定するように構成される。なお、上記第1の実施の形態に係る電源装置3と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0097】
図12は、電源装置4の一構成例を表すものである。電源装置4は、入力電圧センサ18と、DC/DCコンバータ10と、出力電圧センサ12と、出力電流センサ61と、制御部70とを備えている。
【0098】
出力電流センサ61は、電圧線L1に流れるDC/DCコンバータ10の出力電流を検出するように構成される。出力電流センサ61の一端はDC/DCコンバータ10に接続され、他端は端子T21に接続される。出力電流センサ61は、DC/DCコンバータ10から端子T21に向かって流れる電流を、電流Ioutとして検出する。そして、出力電流センサ61は、検出した電流Ioutに応じた電圧を制御部70に供給するようになっている。
【0099】
制御部70は、判定部73を有している。判定部73は、出力電流センサ61により検出された電流Ioutに基づいて、過電圧の発生原因を判定するようになっている。
【0100】
ここで、過電圧検出部21Aは、本開示における「検出部」の一具体例に対応する。判定部73は、本開示における「判定部」の一具体例に対応する。DC/DCコンバータ10は、本開示における「電力変換回路」の一具体例に対応する。電圧線L1は、本開示における「電力供給経路」の一具体例に対応する。
【0101】
図13は、過電圧の発生原因を判定する動作の一例を表すものである。まず、制御部70の過電圧検出部21Aは、出力電圧センサ12により検出された電圧Vout1に基づいて、電圧線L1における電圧に過電圧が生じたかどうかを確認する(ステップS401)。
【0102】
ステップS401において、過電圧が生じた場合には、制御部70の判定部73は、出力電流センサ61により検出された電流Ioutが、所定の正常電流範囲の上限よりも大きいかどうかを確認する(ステップS402)。この正常電流範囲は、電源装置4において過電流が生じていない場合における、DC/DCコンバータ10の出力電流範囲である。正常電流範囲の上限は、過電圧がDC/DCコンバータ10に起因しているかどうかを判断するためのしきい値であり、正常電流範囲の下限は、過電流が負荷LDに起因しているかどうかを判断するためのしきい値である。
【0103】
ステップS402において、電流Ioutが所定の正常電流範囲の上限よりも大きい場合(ステップS402において“Y”)には、判定部73は、生じた過電圧がDC/DCコンバータ10に起因していると判定する(ステップS403)。以上でこのフローは終了する。
【0104】
ステップS402において、電流Ioutが所定の正常電流範囲の上限よりも大きくない場合(ステップS402において“Y”)には、判定部73は、電流Ioutが所定の正常電流範囲の下限よりも小さいかどうかを確認する(ステップS404)。電流Ioutが所定の正常電流範囲の下限よりも小さくない場合(ステップS404において“N”)には、このフローは終了する。
【0105】
ステップS404において、電流Ioutが所定の正常電流範囲の下限よりも小さい場合(ステップS404において“Y”)には、判定部73は、生じた過電圧が負荷LDに起因していると判定する(ステップS405)。以上でこのフローは終了する。
【0106】
そして、電源装置4は、過電圧がDC/DCコンバータ10および負荷LDのうちのどちらに起因して生じたかについての情報を、例えば通知情報INF2を用いて外部のコントローラに通知する。そして、電源装置4は、例えば、スイッチング部11の動作を停止させる。これにより、DC/DCコンバータ10は、電圧V2の生成を停止する。
【0107】
以上のように、電源装置4では、DC/DCコンバータ10の出力電流に基づいて過電圧の発生原因を判定するようにしたので、上記第1の実施の形態に係る電源装置3(図9)と異なり、デューティ比検出回路33を省くことができるため、構成をシンプルにすることができる。
【0108】
以上のように本実施の形態では、DC/DCコンバータの出力電流に基づいて過電圧の発生原因を判定するようにしたので、構成をシンプルにすることができる。その他の効果は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0109】
[変形例4-1]
上記実施の形態では、DC/DCコンバータ10の出力電流に基づいて過電圧の発生原因を判定するようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図14に示す電源装置4Aのように、DC/DCコンバータ10の入力電流に基づいて過電圧の発生原因を判定するようにしてもよい。電源装置4Aは、入力電流センサ61Aと、制御部70Aとを備えている。
【0110】
入力電流センサ61Aは、DC/DCコンバータ10の入力電流を検出するように構成される。入力電流センサ61Aの一端は端子T11に接続され、他端はDC/DCコンバータ10に接続される。入力電流センサ61Aは、端子T11からDC/DCコンバータ10に向かって流れる電流を、電流Iinとして検出する。そして、入力電流センサ61Aは、検出した電流Iinに応じた電圧を制御部70Aに供給するようになっている。
【0111】
制御部70Aは、判定部73Aを有している。判定部73Aは、入力電流センサ61Aにより検出された電流Iinに基づいて、過電圧の発生原因を判定するようになっている。
【0112】
電源装置4Aにおける過電圧の発生原因を判定する動作は、ステップS402,S403を除き、上記第2の実施の形態に係る電源装置4の場合(図13)と同様である。電源装置4Aの判定部73Aは、ステップS402において、入力電流センサ61Aにより検出された電流Iinが、所定の正常電流範囲の上限よりも大きいかどうかを確認する。この正常電流範囲は、電源装置4Aにおいて過電流が生じていない場合における、DC/DCコンバータ10の入力電流範囲である。正常電流範囲の上限は、過電圧がDC/DCコンバータ10に起因しているかどうかを判断するためのしきい値であり、正常電流範囲の下限は、過電流が負荷LDに起因しているかどうかを判断するためのしきい値である。また、判定部73Aは、ステップS404において、電流Iinが所定の正常電流範囲の下限よりも小さいかどうかを確認する。
【0113】
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0114】
例えば、上記の各参考例および各実施の形態等では、DC/DCコンバータを用いて電源装置1~4を構成したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、AC/DCコンバータなどの他の電力変換回路を用いて電源装置1~4を構成してもよい。
【符号の説明】
【0115】
1~4,1A,2A,3A,4A…電源装置、10,30,30A…DC/DCコンバータ、11…スイッチング部、12…出力電圧センサ、14…スイッチ、14A,14B…トランジスタ、15…ドライバ、15A,15B…ドライバ、16…出力電圧センサ、18…入力電圧センサ、20,20A,40,40A,50,50A,70,70A…制御部、21,21A…過電圧検出部、22…スイッチ制御部、23,23A,43,43A,53,53A,73,73A…判定部、32…トランス、33…デューティ比検出回路、33A…スイッチング周波数検出回路、34…軽負荷回路、35…抵抗素子、36…負荷スイッチ、61…出力電流センサ、61A…入力電流センサ、100…負荷装置、B1,B2…バッテリ、DR…デューティ比、FSW…スイッチング周波数、L1,L11,L12…電圧線、L2…基準電圧線、INF1…制御情報、Iin,Iout…電流、INF2…通知情報、LD…負荷、T11,T12,T21,T22…端子、Vin,Vocal,Vout1,Vout2…電圧。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14