(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132526
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ターゲット装置および測量方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220901BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G01C15/06 T
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114842
(22)【出願日】2022-07-19
(62)【分割の表示】P 2017237836の分割
【原出願日】2017-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(57)【要約】
【課題】レーザー光を用いて測量対象物の姿勢を計測できる技術を得る。
【解決手段】螺旋状の凹凸構造を表面に備えた螺旋ターゲット120と、前記螺旋ターゲット120の螺旋軸上に配置された反射プリズム110とを備え、特定の方向から見た前記螺旋状の凹凸構造の特定の部分の位置と前記反射プリズム110の反射中心の位置との間の距離をL、前記螺旋ターゲットの前記螺旋軸の周りにおける基準回転位置に対する回転角度をθとして、前記Lと前記θの関係は予め取得されているターゲット装置130。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の凹凸構造を表面に備えた螺旋ターゲットと、
前記螺旋ターゲットの螺旋軸上に配置された反射プリズムと
を備え、
特定の方向から見た前記螺旋状の凹凸構造の特定の部分の位置と前記反射プリズムの反射中心の位置との間の距離をL、前記螺旋ターゲットの前記螺旋軸の周りにおける基準回転位置に対する回転角度をθとして、
前記Lと前記θの関係が予め取得されているターゲット装置。
【請求項2】
螺旋状の凹凸構造を表面に備えた螺旋ターゲットと、
前記螺旋ターゲットの螺旋軸上に配置された反射プリズムと
を備えたターゲット装置を測量装置により測量する測量方法であって、
前記測量装置は、測距光を用いた測位を行う機能部とレーザースキャンを行うレーザースキャナ部を備え、
特定の方向から見た前記螺旋状の凹凸構造の特定の部分の位置と前記反射プリズムの反射中心の位置との間の距離をL、前記螺旋ターゲットの前記螺旋軸の周りにおける基準回転位置に対する回転角度をθとして、
前記Lと前記θの関係は予め取得されており、
前記測量装置の前記測距光を用いて測位により、前記反射プリズムの位置を測定し、
前記測量装置の前記レーザースキャナ部を用いたレーザースキャンにより、前記特定の部分の位置を測定し、
前記測定された前記反射プリズムの位置と前記測定された前記特定の部分の位置との間の距離を算出し、
前記算出された距離と、前記予め取得されている前記Lと前記θの前記関係に基づき、前記ターゲット装置の前記螺旋軸周りの前記基準回転位置に対する回転角を求める測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットの向きの検出を行う測量技術に関する。
【背景技術】
【0002】
TS(トータルステーション)を用いた測量では、反射プリズムを備えた棒状の部材を備えたターゲット装置が用いられる(例えば、特許文献1を参照)。このターゲット装置を用いた測量では、垂直にした棒状の部材の先端を地上に接触させた状態で、反射プリズムを対象にTSによる測位を行い、それにより棒状の部材の先端を接触させた位置の座標を取得する。そして、測量対象となる土地の各所においてこの作業を行うことで、当該土地の測量が行われる。
【0003】
上記の作業では、作業員がターゲット装置を手に持ち、歩いて移動しながら複数の位置における測量が行われる。この際、当該作業員が手にする端末等を用いて、TS側から次の測量位置への誘導が行われる。この際、TSに対するターゲット装置の水平角(水平面における方向)が判ると便利である。通常は、磁気センサやジャイロセンサを用いて上記の水平角の検出が行われている。また、GPSを用いて方位の検出を行う技術も公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気センサによる水平角の検出では、金属構造物の影響を受ける。例えば、橋梁の近くでは、コンクリート中の鉄筋や鉄骨の影響を受ける。また、地盤を補強するために波型の鋼材を地中に打ち込む技術があるが、この地中の鋼材の影響を受け、磁気センサの精度が低下する場合がある。また、ジャイロセンサは、出力のドリフトの問題がある。この点を改良したジャイロセンサもあるが高価、且つ、大型となる。GPSは、航法衛星の見えない場所(谷間、橋梁の下、トンネル内、屋内、地下、森林等)では使用できない(あるいは利用できても精度が低下する)。
【0006】
以上の問題は、TSに対するUAV(Unmanned aerial vehicle)の向きを知りたい場合にも生じる。例えば、TSによりUAVを追跡する技術が知られている(US2014/0210663)。この技術では、TSに対するUAVの姿勢を知ることが重要となるが、上記の方位センサ、ジャイロセンサ、GPSを用いた姿勢の検出では、上述したのと同様な問題が生じる。
【0007】
このような背景において、本発明は、レーザー光を用いて測量対象物の姿勢を計測できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、螺旋状の凹凸構造を表面に備えた螺旋ターゲットと、前記螺旋ターゲットの螺旋軸上に配置された反射プリズムとを備え、特定の方向から見た前記螺旋状の凹凸構造の特定の部分の位置と前記反射プリズムの反射中心の位置との間の距離をL、前記螺旋ターゲットの前記螺旋軸の周りにおける基準回転位置に対する回転角度をθとして、前記Lと前記θの関係が予め取得されているターゲット装置である。
【0009】
本発明は、螺旋状の凹凸構造を表面に備えた螺旋ターゲットと、前記螺旋ターゲットの螺旋軸上に配置された反射プリズムとを備えたターゲット装置を測量装置により測量する測量方法であって、前記測量装置は、測距光を用いた測位を行う機能部とレーザースキャンを行うレーザースキャナ部を備え、特定の方向から見た前記螺旋状の凹凸構造の特定の部分の位置と前記反射プリズムの反射中心の位置との間の距離をL、前記螺旋ターゲットの前記螺旋軸の周りにおける基準回転位置に対する回転角度をθとして、前記Lと前記θの関係は予め取得されており、前記測量装置の前記測距光を用いて測位により、前記反射プリズムの位置を測定し、前記測量装置の前記レーザースキャナ部を用いたレーザースキャンにより、前記特定の部分の位置を測定し、前記測定された前記反射プリズムの位置と前記測定された前記特定の部分の位置との間の距離を算出し、前記算出された距離と、前記予め取得されている前記Lと前記θの前記関係に基づき、前記ターゲット装置の前記螺旋軸周りの前記基準回転位置に対する回転角を求める測量方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザー光を用いて測量対象物の姿勢を計測できる技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】螺旋ターゲットの水平角を計測する仕組みを示す原理図である。
【
図5】水平角(横軸)と、螺旋ターゲットの谷の位置と全周反射プリズムの反射中心の位置との距離L(縦軸)の関係を示すグラフである。
【
図6】絶対座標系におけるターゲット装置の水平角を求める方法を説明する図である。
【
図7】螺旋ターゲットの谷の位置を求める方法を示す図である。
【
図9】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】螺旋ターゲットの断面形状の波形のパターンを示す図である。
【
図15】TS機能部の測距光の光軸とレーザースキャン方向との関係を示す図である。
【
図16】螺旋ターゲットの水平角を計測する仕組みを示す原理図である。
【
図17】螺旋ターゲットの水平角を計測する仕組みを示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施形態
(概要)
図1には、実施形態の概要が示されている。
図1には、レーザー測位される第1のターゲットである全周反射プリズム110と、全周反射プリズム110との位置関係が特定され、螺旋構造の表面を備えた第2のターゲットである螺旋ターゲット120とを備え、全周反射プリズム110の位置と前記螺旋構造における凹凸構造の位置関係に基づき、前記螺旋構造の軸回りの回転位置の検出が行われるターゲット装置130が示されている。
【0013】
図1において、測量機400により、ターゲット装置130の位置と水平角(水平方向における向き)が測定される。ここで、測量機400は、絶対座標系で座標が既知の位置に水平に設置され、また絶対座標系における水平方向における方位が確定されている。これは、通常のTS等の測量機の場合と同じである。
【0014】
絶対座標系というのは、GNSSで用いられる座標系である。絶対座標系では、経度、緯度、平均海面からの高度で座標が特定される。なお、座標系としてその場で定めたローカル座標系を用いることもできる。
【0015】
(測量機)
以下、測量機400について説明する。測量機400は、TS機能部200とレーザースキャナ部300とを複合化した構成を有する。TS機能部200は、TS(トータルステーション)としての機能を発揮する。TSについては、例えば特開2009-229192号公報、特開2012―202821号公報に記載されている。
【0016】
レーザースキャナ部300は、レーザースキャン点群を得る処理(レーザースキャン)を行う。レーザースキャナに係る技術については、例えば特開2010-151682号公報、特開2008-268004号公報、米国特許第8767190号公報等に記載されている。また、レーザースキャナとして、米国公開公報US2015/0293224号公報に記載されているようなスキャンを電子式に行う形態も採用可能である。
【0017】
以下、
図2、
図3を参照して測量機400について説明する。測量機400は、水平回転部11を有している。水平回転部11は、台座12上に水平回転が可能な状態で保持されている。台座12は図示しない三脚の上部に固定される。水平回転部11は、上方に向かって延在する2つの延在部を有する略コの字形状を有し、この2つの延在部の間に鉛直回転部13が高低角(仰角および俯角)の制御が可能な状態で保持されている。
【0018】
水平回転部11は、台座12に対して電動で水平回転する。鉛直回転部13は、モータにより鉛直面内で回転する。水平回転部11の水平面内における角度制御は、水平回転部11に内蔵された水平回転駆動部207(
図8参照)で行われる。鉛直回転部13の鉛直面内における角度制御は、水平回転部11に内蔵された鉛直回転駆動部208(
図8参照)により行われる。
【0019】
水平回転部11には、水平回転角制御ダイヤル14aと高低角制御ダイヤル14bが配置されている。水平回転角制御ダイヤル14aを操作することで、水平回転部11の水平回転角の調整が行なわれ、高低角制御ダイヤル14bを操作することで、鉛直回転部13の鉛直面内での高低角(仰角および俯角)の調整が行なわれる。
【0020】
鉛直回転部13の上部には、大凡の照準を付ける照準器15aが配置されている。また、鉛直回転部13には、照準器15aよりも視野が狭い光学式の照準器15b(
図3参照)と、より精密な視準が可能な望遠鏡16が配置されている。
【0021】
鉛直回転部13の内部には、照準器15bと望遠鏡16が捉えた像を接眼部17に導く光学系が収納されている。照準器15bと望遠鏡16が捉えた像は、接眼部17を覗くことで視認できる。望遠鏡16が捉えた像は、鉛直回転部13の内部に配置されたカメラ211(
図8参照)によって撮像可能である。
【0022】
望遠鏡16は、測距用のレーザー光と測距対象(例えばターゲットとなる専用の反射プリズム)を追尾および捕捉するための追尾光の光学系を兼ねている。測距光と追尾光の光軸は、望遠鏡16の光軸と一致するように光学系の設計が行なわれている。この部分の構造は、市販されているTSと同じである。
【0023】
水平回転部11には、ディスプレイ18と19が取り付けられている。ディスプレイ18は、操作部210と一体化されている。操作部210には、テンキーや十字操作ボタン等が配され、測量機400に係る各種の操作やデータの入力が行なわれる。ディスプレイ18と19には、測量機400の操作に必要な各種の情報や測量データ等が表示される。前後に2つディスプレイがあるのは、水平回転部11を回転させなくても前後のいずれの側からでもディスプレイを視認できるようにするためである。
【0024】
水平回転部11の上部には、レーザースキャナ部300が固定されている。レーザースキャナ部300は、第1の塔部301と第2の塔部302を有している。第1の塔部301と第2の塔部302は、結合部303で結合され、結合部の上方の空間(第1の塔部301と第2の塔部302の間の空間)は、スキャンレーザー光を透過する部材で構成された保護ケース304で覆われている。保護ケース304の内側には、第1の塔部301から水平方向に突出した柱状の回転部305が配置されている。回転部305の先端は、斜めに切り落とされた形状を有し、その先端部には、斜めミラー306が固定されている。
【0025】
回転部305は、第1の塔部301に納められたモータにより駆動され、その延在方向(水平方向)を回転軸として回転する。第1の塔部301には、上記のモータに加え、このモータを駆動する駆動回路と、その制御回路、回転部305の回転角を検出するセンサ、該センサの周辺回路が納められている。
【0026】
第2の塔部302の内部には、レーザースキャン光を発光するための発光部、対象物から反射してきたレーザースキャン光を受光する受光部、発光部と受光部に関係する光学系、スキャン点までの距離を算出する距離算出部が納められている。また、レーザースキャナ部300は、回転部305の回転角度、水平回転部11の水平回転角およびスキャン点までの距離に基づきスキャン点の三次元座標を算出するスキャン点位置算出部を備えている。
【0027】
レーザースキャン光は、1条であり、第2の塔部302の内部から斜めミラー306に向けて照射され、そこで反射され、透明なケース304を介して外部に照射される。レーザースキャン光は、数kHz~数百kHzの繰り返し周波数で発光部からパルス発光され、それが回転する回転部305先端の斜めミラー306に水平方向から照射され、そこで直角に反射される。回転部305が水平軸回りに回転することで、レーザースキャン光は、鉛直面に沿ってスキャンされつつ放射状に点々とパルス照射される。
【0028】
測量機400では、レーザースキャナ部300からの放射状のレーザースキャンを鉛直面に対して行った場合、鉛直線に沿ってレーザースキャンが行われる(
図15参照)。つまり、レーザースキャナ部300からの放射状のレーザースキャン光は、当該鉛直面に鉛直線上に分布する輝点(反射点)の集合を形成する。
図15に示すように、このレーザースキャナ部300によるレーザースキャン光の輝点により形成される鉛直線と望遠鏡16の光軸が交わるように、TS機能部200とレーザースキャナ部300の位置関係が設定されている。
【0029】
つまり、測量機400は、レーザースキャナ部300からのレーザースキャンが行われる扇形のスキャン面(スキャンレーザー光にとって掃引される面)に、望遠極16の光軸が含まれるように設定されている。この構成では、レーザースキャナ部300の高低角方向におけるスキャンの方向が水平方向に対して直交し、スキャン光の水平角(水平方向における方向)と望遠鏡16の光軸の水平角(TS機能部200の水平角)が一致する。
【0030】
また、上記のレーザースキャンを、水平回転部11を水平回転させながら行うことで、必要とする範囲でのレーザースキャンが行われる。
【0031】
対象物から反射したスキャン光は、照射光と逆の経路を辿り、第2の塔部302内部の受光部で受光される。スキャン光の発光タイミングと受光タイミング、さらにその際の回転部305の角度位置(高低角:仰角または俯角)と水平回転部11の水平回転角により、スキャン点(スキャン光の反射点)の測位が行なわれる。測位の原理は、後述する測距部202と同じである。
【0032】
ターゲット装置130は、土木工事現場等における位置決めの作業に利用される。この作業の際、全周反射プリズム110をターゲットとしたTS機能部200による測位が行われる。ターゲット装置130は、支持部材となる棒状の部材131、棒状の部材131の上部に固定された全周反射プリズム110、全周反射プリズム110の上部に固定された螺旋ターゲット120、螺旋ターゲット120の上部に支持材を介して固定された端末132を備えている。
【0033】
全周反射プリズム110は、入射した光を180°向きを変えて反射する。全周反射プリズム110は、TSを用いた測量に用いられる通常の製品が採用される。ここで、全周反射プリズム110の反射中心Pが螺旋ターゲット120の螺旋軸上にくるように調整されている。全周反射型でない反射プリズムを用いることもできるが、対応できる角度範囲に制限が生じる。螺旋ターゲット120については後述する。
【0034】
端末132は、液晶ディスプレイ等の画像表示装置を備える。この画像表示装置には、ターゲット装置130を扱う作業者に全周反射プリズム110を用いた位置決め作業の位置を案内するガイド表示が行われる。このガイド表示については後述する。端末132としては、タブレットやスマートフォンが利用される。端末132として、専用の端末を用意してもよい。
【0035】
例えば、杭打ち作業の場合を説明する。杭打ち作業というのは、建築作業現場や土木工事現場において、図面上で予め定めておいた位置を実際の現場で特定し、そこに目印の杭を打つ(あるいは何らかの目印を付ける)作業のことである。この作業では、杭打ち点の探索→その特定→その位置への杭打ち、の作業が複数の杭打ち候補位置に対して行われる。この際、杭打ち点の特定にターゲット装置130が用いられる。
【0036】
例えば、作業者が棒状の部材131を手で持った状態で、徒歩で移動して杭打ち予定位置に移動する。この際、端末132のガイド表示を利用して作業者は目的位置に移動する。この際、螺旋ターゲット120を用いて求めたターゲット装置130の水平方向における方向(姿勢)の情報を利用してガイド表示が作成される。このガイド表示に係る技術については後述する。
【0037】
杭打ち点の特定は、棒状の部材131の先端を地表に接触させて、そこでターゲット装置100を立て、TS機能部200による全集反射プリズム110の測位を行うことで行われる。この作業は、TSを用いた通常の測量作業と同じである。
【0038】
(螺旋ターゲット)
図4には、全周反射プリズム110とその上部に固定された螺旋ターゲット120により構成されたターゲット装置130を側面(螺旋軸に垂直な方向)から見た状態が示されている。ターゲット装置130は、図示しない水準器を備え、この水準器を用いて螺旋ターゲット120の螺旋軸(
図4のZ軸)が鉛直方向となるように設置される。
【0039】
螺旋軸とは、螺旋構造の軸のことであり、例えばネジの回転軸が螺旋軸の一例である。ターゲット装置130は、支持部材となる棒状の部材の上部に固定されるが、
図4では棒状の部材は図示省略されている。また、端末132およびその支持構造も図示省略されている。
【0040】
螺旋ターゲット120は、棒状の部材131の延在方向に延在する螺旋軸を有する。螺旋の構造は、軸回りの1回転で位相が1周期(位相差2π)進む設定とされている。つまり、螺旋を螺旋軸の周りで1回転させると、側面から見た同じ形状部分が螺旋軸方向に位相差2π移動する構造とされている。螺旋の構造は、これに限定されないが、この構造は最もシンプルである。
【0041】
螺旋表面の凹凸断面の形状は、三角形状が繰り返し連続する三角波形状である。螺旋ターゲット120の表面は、レーザースキャン光の反射面となる。螺旋ターゲット120の表面は、レーザースキャン光を適切な反射状態で反射する材質や状態が選択されている。
【0042】
いま、(A)の状態を基準状態として考える。ここで、螺旋ターゲット120の螺旋軸は鉛直であるとする。(A)の下部には、鉛直上方から見た視点の方向が概念的に示されている。
【0043】
ここで、(A)の状態からターゲット装置130(螺旋ターゲット120)を鉛直上方から見て1/4右回転(時計回りの方向に90°回転)させた場合を考える。この場合、螺旋構造が位相差π/2上方(Z軸正の方向)に進んだ状態が見える。すなわち、見た目の状態が(A)から(B)に移行する。
【0044】
この場合、TS機能部200の光軸を含む鉛直線上における螺旋ターゲット120の谷の位置(BTM)は、(A)の状態から(B)の状態に移動する。この際の移動量は、螺旋の周期で考えて1/4周期分となる。この螺旋の回転によって谷の位置(BTM)が進む現象は、ネジが回転することで、ネジ山の谷の部分が進むのと同じ原理である。
【0045】
ここで、回転の方向を逆にすれば、谷の位置(BTM)は、逆方向(Z軸の負の方向)に移動する。このように、TS機能部200の光軸と交差する鉛直線上における谷の位置(BTM)は、螺旋ターゲット120の回転によって螺旋軸上(Z軸上)を移動する。
【0046】
つまり、螺旋軸上における螺旋構造の谷の位置(BTM)と、全周反射ターゲット110の反射中心との間の距離Lは、螺旋ターゲット120の回転によって変化する。
図4には、(A)の状態でL=L1であったものが、螺旋ターゲット120を1/4回転させることで、L=L2(L1<L2)となった状態が示されている。
【0047】
ここで、
図4(A)の状態が螺旋ターゲット120の正面を測量機400から見た状態であり、測量機400に対する螺旋ターゲット120の水平回転角Dmが0°の場合であるとする。そして、
図4(A)の状態から、鉛直上方向から見て右回り方向を+回転、その逆回転方向を-回転とすると、上記の距離Lと水平回転角Dmの間には、
図5の関係がある。
【0048】
ところで、後述する原理により、螺旋ターゲット120の螺旋軸上における谷の位置、すなわち鉛直方向における高さV1はレーザースキャンによって特定することができる。他方で、全周反射ターゲット110の反射中心Pの螺旋軸上の位置(高さV2)は、TS機能部200により特定できる。よって、
図4のLの値は、V1-V2から計算できる。
【0049】
そこで、
図5の関係を予め取得しておく。そして、螺旋ターゲット120のレーザースキャンから得た谷(BTM)の鉛直方向における位置とTS機能部200により求めた全周反射ターゲット110の反射中心Pの鉛直方向における位置との差からLの値を求め、このLの値を
図5の関係に当てはめることで、測量機400に対する螺旋ターゲット120(ターゲット装置130)の水平方向における向きである水平角Dm(
図6参照)が得られる。
【0050】
TS機能部200の基準方位(例えば北の方向)に対する水平角Hmは、測量機400の設置時に取得されており、既知である。よって、
図6の関係からターゲット装置130の絶対座標系における水平角Htが求まる。
【0051】
以下、Htの算出方法について説明する。まず、TS機能部200の水平角Hmは、北を基準とした時計回り方向における角度として計測されるとする。測量機400は、その設置時に水平角の基準を定める校正が行われるので、水平角Hmは水平角検出部205の出力から得られる。
【0052】
Dmは、ターゲット装置130の水平角の基準方向(この場合は正面の方向)とTS機能部200の光軸とがなす角度である。Dmは、
図4の谷の位置BTMと全周反射プリズム110の反射中心Pとの間の鉛直方向における距離Lを求めることで、
図5の関係から得られる。
【0053】
ここで、Htは北を基準とする時計回り方向で計った角度として、水平角HmとDmとから
図6に示す計算式で算出される。こうして、ターゲット装置130の絶対座標系における水平角Ht(水平方向における向き)が算出される。
【0054】
図4に示されるのは、全周反射プリズム110の反射中心Pに対する螺旋の位相の違いに基づき、螺旋ターゲット120(ターゲット装置130)の水平角を求める方法と捉えることができる。すなわち、
図4(A)と
図4(B)では、全周反射プリズム110の反射中心Pの鉛直線上における位置に対する螺旋の凹凸構造(三角波の構造)の位相の状態が異なっている。具体的にいうと、(A)の状態に対して、(B)の状態は、反射中心Pに対する螺旋の位相(三角波の位相)が1/4周期(π/2)進んでいる。この位相の状態の違いと螺旋ターゲット120の回転位置(水平角)とは、一義的な関係がある。この一義的な関係が
図5に示されている。
【0055】
すなわち、
図4の例は、上記螺旋構造の位相状態の違いを谷の位置BTMの違いとして検出し、具体的なパラメータとしてLを利用している。この位相の違いは、谷以外にも螺旋構造の凹凸の波形を特徴付けるパラメータで把握することが可能である。この技術によれば、螺旋構造の凹凸の形状と水平回転角の関係を予め取得しておくことで、螺旋ターゲットを螺旋軸に直交する方向から見た螺旋構造の凹凸形状から、螺旋ターゲットの水平回転位置を求めることができる。
【0056】
(谷の位置の求め方)
図4における螺旋ターゲット120の谷の位置(TS機能部200の光軸と交わる鉛直直線上における谷の位置)を求める方法について説明する。谷の位置の算出に係る処理は、測量機400内の特定の部分の位置算出部217で行なわれる。
【0057】
図7には、螺旋の谷の位置を特定する処理の原理が記載されている。この技術では、TS機能部200の光軸と交わる鉛直線に沿った線状のレーザースキャンをレーザースキャナ部300により行う。
図7(A)には、螺旋ターゲット120が示され、
図7(B)には、第1の回転角度における螺旋構造表面でのレーザースキャン点の分布が示され、
図7(C)には、第2の回転角度における螺旋構造表面でのレーザースキャン点の分布が示されている。
【0058】
この例では、螺旋の山の斜面として平面が採用されている。そこで、螺旋の表面に沿った複数のスキャン点から斜面に沿った線の方程式を求め、鉛直方向で隣接する2つの線の交点から谷の三次元位置を求め、更にその鉛直方向における座標を求める。こうして谷の位置(BTM)が求められる。谷の位置(BTM)の求め方として、谷部を挟む2つの山の頂部の位置を求め、その中間値を求める方法も可能である。
【0059】
そして、鉛直方向における上記谷の位置(BTM)と全周反射プリズム110の反射中心Pとの間の距離Lを算出し、さらに
図5の関係からターゲット装置130のTS機能部200(測量機400)に対する水平回転角(
図6のDm)が求められる。
【0060】
以上述べたように、螺旋ターゲットにおける螺旋構造の軸方向における周期性を用いて螺旋ターゲットの螺旋軸回りにおける回転位置を特定する。
【0061】
(TS/レーザースキャナ複合型測量装置)
図1の測量装置400の内部の構成について説明する。
図8に測量装置400のブロック図(構成図)を示す。
【0062】
TS機能部200は、記憶部201、測距部202、追尾光送光部203、追尾光受光部204、水平角検出部205、高低角検出部206、水平回転駆動部207、鉛直回転駆動部208、ディスプレイ18,19、操作部210、カメラ211、演算制御部212、通信部216、特定の部分の位置算出部217を備えている。また、演算制御部212内には、測位演算部213、スキャン密度設定部214、水平角算出部215が含まれている。測位演算部213、スキャン密度設定部214、水平角算出部215の少なくとも一つを演算制御部212と別構成とすることも可能である。
【0063】
記憶部201は、半導体メモリ回路等のデータ記憶装置により構成されている。記憶部209は、測量装置400の動作に必要なデータ、動作プログラム、動作で得られたデータを記憶する。
【0064】
測距部202は、測量機400と測距対象物(全周反射プリズム110)との間の距離を計測する。測距の原点は、測距部202の発光部の位置や望遠鏡16内の結像位置等の予め定めた位置が採用される。
【0065】
測距部202は、測距光を発光する発光素子(レーザーダイオード等)、発光素子の周辺回路、測距対象物(全周反射プリズム110)から反射した測距光を受光する受光素子(フォトダイオード等)、受光素子の周辺回路、受光素子の出力に基づき測距対象物までの距離を計算する演算回路を含む。
【0066】
測距部202における測位の処理は以下のようにして行われる。発光素子からの測距光は、ハーフミラー等の光学系で2分され、一方が測位対象物に照射され、他方が図示しない基準光路に導かれる。基準光路は光路長が既知であり、基準光路を伝わった測距光は基準測距光として受光素子に導かれる。受光素子では、測位対象物から反射した測距光と基準光路を伝わった基準測距光とが受光される。
【0067】
測位対象物で反射した測距光と基準光路からの基準測距光とは、受光素子に到達するタイミングが異なるので、両者の受光素子での出力信号(検出信号)には、位相差が生じる。この位相差から測位対象物までの距離が算出される。この距離の算出が、測距部202内の演算回路で行われる。
【0068】
追尾光送光部203は、測位対象物であるターゲット(全周反射プリズム110)を追尾する追尾光を発光する。追尾光受光部204は、ターゲットから反射した追尾光を受光する。追尾光受光部204はCCDやCMOSイメージセンサで構成される。追尾光のターゲットからの反射光が視野の中心となるように測距部202の光軸の水平角と高低角の制御が行われる。光軸の水平角と高低角の制御は、演算制御部212で生成される制御信号に基づき、水平回転駆動部207および鉛直回転駆動208で行われる。
【0069】
水平角検出部205は、水平回転部11(
図1参照)の水平角を検出する。水平角の検出は、ロータリーエンコーダで行われる。水平角検出部205は、レーザースキャナ部300の水平回転角の検出も行う。高低角検出部206は、鉛直回転部13の高低角(仰角および俯角)を検出する。鉛直角の検出は、ロータリーエンコーダで行われる。
【0070】
水平回転駆動部207は、水平回動部11の水平回転の駆動を行う。駆動はモータにより行われる。水平回転部207は、レーザースキャナ部300の水平回転も行う。鉛直回転駆動部208は、鉛直回動部13の鉛直回転(仰角および俯角動作)の駆動を行う。駆動はモータにより行われる。
【0071】
ディスプレイ18,19は、測量機400の操作に必要な各種の画像情報や測量結果の画像情報を表示する。ディスプレイ18,19としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが採用される。操作部210は、測量機400の操作を行うための各種のボタン等を備えた操作インターフェースである。カメラ211は、望遠鏡16が捉えた画像を撮影する。
【0072】
演算制御部212は、CPU、メモリ、各種のインターフェースを備えたコンピュータとしての機能を有し、測量機400の動作全般の制御を行う。演算制御部212における演算の一部をFPGA等の専用のICで行う形態も可能である。これは、特定の部分の位置算出部217についても同じである。演算制御部212は、測位演算部213、スキャン密度設定部214、水平角算出部215を備える。
【0073】
測位演算部213は、測距部202が測距した対象物(例えば、全周反射プリズム110)の測位(測量機400に対する対象物の位置の測位)に係る演算を行う。測位演算部213における対象物の測位に係る演算は、以下のようにして行われる。この処理では、測距部202で得られる対象物の測距データ、水平角検出部205および高低角検出部206で得られる測距光の光軸の方向に基づいて、測距部202で測距した対象物(全周反射ターゲット110)の位置を算出する。すなわち、距離と方向とから測量機400に対する対象物の位置(三次元座標)を算出する。
【0074】
スキャン密度設定部214は、測距部202が測距した測量機400から全周反射プリズム110までの距離に応じて螺旋ターゲット120に対するレーザースキャナ部300によるレーザースキャンのスキャン密度の設定を行う。この設定では、距離が遠くなってもスキャン密度が疎にならないようにスキャン速度を調整し、特定の密度以上のスキャン密度が得られるようにする。具体的なスキャン密度は、螺旋ターゲットの谷の部分の算出精度によって決まるが、必要な精度が得られるように予め実験的に求めておくことが好ましい。目安として、螺旋を構成する斜面において3点以上のスキャン点が得られるようにスキャン密度を設定する。
【0075】
水平角算出部215は、螺旋ターゲット120の谷と全周反射プリズム110の反射中心Pとの間の距離Lの算出、
図5の関係に基づくTS機能部200に対する水平方向における角度Dm(
図6参照)の算出を行い、更に
図6の原理に基づきHtの算出を行う。通信部216は、
図1の端末132等の外部の機器との通信を行う。特定の部分の位置算出部217は、
図7の原理により、螺旋ターゲット120の螺旋構造の螺旋軸方向における特定の部分の位置を算出する。この例では、この特定の部分として螺旋構造の谷の部分が利用される。谷の位置の求め方については
図7に関連して前述している。レーザースキャナ部300については、既に
図1に関連して説明してあるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
(端末132での処理の一例)
端末132は、ターゲット装置130の位置のデータと、
図6のDmおよびHtのデータを測量機400から取得する。そして、端末132は、例えば
図10の画像を作成し、それを自身のディスプレイに表示する。この画像を参考に作業員は、杭打ちを行う位置や測量を行う位置にターゲット装置130を移動させる。以下、
図10の画像の作成方法について説明する。
【0077】
図10には、上の方向をターゲット装置130の正面とした画面表示の一例が示されている。まず、絶対座標系におけるターゲット装置130の現在位置は、TS機能部200により精密に測定され、そのデータは、測量機400から取得している。また、目標位置(杭を打つ位置)は、予め図面上で特定されており、そのデータも取得されている。また、ターゲット装置130の絶対座標系における正面の方向Ht(
図6参照)は、測量機400の側で計算されている。
【0078】
よって、ターゲット装置130の現在位置、目標位置、絶対座標系におけるターゲット装置130の正面の方向を地図ソフト上に落とし込み、Htに基づき、上が正面となるように表示画面を回転させ、Dmに基づき、測量機400の方向を表示させることで、
図10の画面が得られる。
【0079】
図10におけるDmは、磁気センサ、ジャイロセンサ、GPSセンサから得られたものでないので、課題の欄で言及した精度低下の問題が回避される。
【0080】
図11(A)および(B)には、杭打ち作業時における端末132のディスプレイ上へのガイド表示の他の例を示す。
【0081】
(処理の一例)
以下、測量機400を用いた測量処理の一例を説明する。
図9は、当該処理の手順を示すフローチャートである。
図9の処理に係る動作プログラムは、記憶部210に記憶され、
図8の演算制御部212により実行される。当該動作プログラムを適当な記憶領域や記憶媒体に記憶する形態も可能である。また外部サーバ等にこの動作プログラムを記憶させ、そこから提供される形態も可能である。
【0082】
ここでは、
図1を参照し、土木施工現場で杭打ち作業を行う場合における処理の手順の一例を説明する。まず、ある場所(初期位置)に作業員がターゲット装置130を垂直に配置する(ステップS101)。ここで、ターゲット装置130には水準器が配置され、作業員はそれを用いて、ターゲット装置130を鉛直にした状態で、棒状の部材131の先端を地面に接触させる。
【0083】
次に、全周反射プリズム110をTS機能部200のターゲット自動追尾機能を用いて追尾し、更にTS機能部200による全周反射プリズム110の測位を行う(ステップS102)。次に、レーザースキャナ部300を用い、TS機能部200の測距光の光軸と交差する鉛直線上におけるレーザースキャンを行う(ステップS103)。この際、螺旋ターゲット120の螺旋軸に沿って特定以上のスキャン密度が得られるようにスキャン条件を設定する。
【0084】
次に、
図7の原理により螺旋ターゲット120の螺旋構造の谷の鉛直線上における位置を特定する(ステップS104)。この処理は、螺旋構造の螺旋軸方向における特定の部分の位置の算出を行う特定の部分の位置算出部217で行なわれる。次に、ステップS102で得た鉛直線上における全周反射プリズム110の反射中心の位置PとステップS104で得た谷の位置との差Lを求め、
図5の関係から絶対座標系におけるターゲット装置130の測量機400に対する水平角Dmを算出する(ステップS105)。また、この際、Htも算出する。ステップS104とS105の処理は、水平角算出部215で行われる。
【0085】
DmとHtを得たら、それを端末132に送信する。DmとHtの情報を受け付けた端末132は、例えば
図10の表示内容を作成し、それを端末132のディスプレイに表示させる(ステップS106)。作業者は
図10の表示を見て、ターゲット装置130を目標位置に移動させる。
【0086】
2.第2の実施形態
図12には、位置決め位置にプロジェクタから画像を投影する技術(例えば、特許登録6130078号公報)に本発明を適用した例が示されている。この場合、投影する画像の大きさと向きを適切にする上で、プロジェタの投影面(例えば床面)からの高さとプロジェクタの水平方向における向きの情報が必要である。
【0087】
図12の場合、既知の位置に設置され、更に基準方位が確定された測量機400による全周反射プリズム110の測位により、通信機を備えたプロジェクタ520の三次元位置(水平位置と高さ)が特定される。他方で、TS機能部200により測位された全周反射プリズム110の位置と、螺旋ターゲット120をレーザースキャナ部300からレーザースキャンすることで得た螺旋の谷の位置との関係から、プロジェクタ520の水平方向における向きが特定される。
【0088】
プロジェクタ520の三次元位置と水平方向における向きの情報は、測量機520で計算され、プロジェクタ520に送られる。この情報を受け、プロジェクタ520は、投影する画像、その投影位置、投影画像の縮尺と向きを調整する。
【0089】
3.第3の実施形態
例えば、移動体の水平方向における方向を特定する技術に本発明を利用することもできる。この場合、全周反射プリズム110と螺旋ターゲット120を鉛直方向で結合したターゲットを移動体に固定する。この際、螺旋軸が鉛直になるように移動体に当該ターゲットを固定する。例えば、ジンバル機構を用い、移動体が傾いても当該ターゲットの螺旋軸が常に鉛直となるようにする。なお、当該ターゲットが移動体と共に傾く構造の場合、移動体のヨー軸回りの回転が検出される。
【0090】
図13にUAV(Unmanned Aerial Vehicle)500に、ジンバル機構501を介して、全周反射プリズム110と螺旋ターゲット120を結合させたターゲット装置510を取り付け、それを測量機400で追尾しつつ、UAV500の水平方向における向きを検出する場合が示されている。
【0091】
この場合、測量機400は、絶対座標系で座標が既知の位置に水平に設置され、また絶対座標系における水平方向における方位が確定されている。そして、飛行するUAV500における全周反射プリズム110がTS機能部200により追尾され、且つ、測位される。また、レーザースキャナ部300による螺旋ターゲット120の螺旋軸方向におけるレーザースキャンにより、第1の実施形態で説明した原理によるUAV500の測量機400に対する水平角(
図6のDmに対応)が得られる。また、
図6の原理により、絶対座標系におけるUAV500の水平角Htが得られる。
【0092】
4.第4の実施形態
螺旋ターゲットを用いた方向の検出は、水平方向におけるものに限定されない。例えば、
図1の測量機400を90°横に倒して用いる。この場合、ターゲット装置130も90°横に倒して水平にして用いる。この場合、ターゲット装置130の水平軸回りの角度(高低角)が測定できる。
【0093】
5.第5の実施形態
反射プリズムを使用しないで螺旋ターゲットだけで回転角の検出を行う形態も可能である。
図16に螺旋ターゲット120を示す。この場合、螺旋ターゲット120の螺旋軸を狙った高低角方向のレーザースキャンを行うことで、
図7の原理により螺旋の山谷および平坦な部分(円筒または円柱の外周面の部分)の点群データを取得する。
【0094】
そして、この点群データに基づき、
図16のL(L1)を取得する。Lの起点は、BTMと識別でき、且つ、螺旋ターゲット120を回転させても螺旋軸上の位置が変化しない構造部分を選択する。
図16の例では、Lの起点は、螺旋構造と螺旋構造でない部分の境界の部分であり、そこから螺旋構造の谷の位置(BTM)までの距離がLの計測値となる。
【0095】
Lは、螺旋ターゲット120の回転角Dmに依存するので、Lを求めることで、Dmが得られる。この例は、螺旋構造の谷の位置を定量的に評価するための基準が、螺旋ターゲット120の下端部分となった場合と捉えることができる。
【0096】
螺旋構造の山谷の部分ではなく、山谷の部分と識別できる平坦な部分のレーザースキャンデータから平坦な部分の螺旋軸方向の距離Laを取得する方法も可能である。LaとDmは、
図5のような比例関係があるので、Laを求めることで、Dmを得ることができる。
【0097】
図17には、螺旋ターゲット120の端部に環状の突起部121を設けた場合が示されている。環状の突起部121は、螺旋構造ではなく、螺旋ターゲット120を回転させてもその山の螺旋軸方向における位置は変化しない。また、環状の突起部121の山の高さは、螺旋構造の山の高さと違う値に設定されており、レーザースキャンにより螺旋構造部分と識別できるようにされている。
【0098】
ここで、螺旋ターゲット120が回転すると、環状の突起部121の山の頂上位置と螺旋構造の谷の底の位置BTMとの間の距離Lが変化する。この場合と
図5の場合と同様に、螺旋ターゲット120の回転角DmとLには、特定の関係(この場合も比例関係)がある。よって、以下の手順により、Dmを計測することができる。まず、DmとLの関係を予め取得しておく。計測に当たっては、螺旋ターゲット120の螺旋軸を狙った高低角方向のレーザースキャンを行い、
図7に示す原理により、環状の突起部121の山の頂上位置と螺旋構造の谷の底の位置BTMと求める。そして、環状の突起部121の山の頂上位置と螺旋構造の谷の底の位置BTMとの螺旋軸方向における距離(この場合は、鉛直方向における距離)Lを算出し、
図5の関係からDmを得る。
【0099】
(その他1)
螺旋ターゲットの断面構造(螺旋軸を含む平面で切断した断面の構造)が示す波形として、
図14に示す波形の形状が挙げられる。いずれの場合も波形の位相の状態と螺螺旋軸回りの回転角度との関係は予め取得され既知であることが必要である。波形としては、
図4の例の場合のような三角波形の他に、正弦波形、鋸波形、矩形波形等が挙げられる。
【0100】
螺旋構造の周期性が特定の周波数構造を有し、レーザースキャン点の分布を周波数解析により求める形態も可能である。例えば、螺旋構造が異なる複数の周波数を合成した波形を有する場合が採用可能である。この場合、周波数解析の結果と螺旋構造の回転角の間には特定の関係があり、それは予め取得されている。そして、周波数解析の結果から螺旋ターゲットの水平角が得られる。
【0101】
図5には、Lと螺旋ターゲットの水平角の関係が線形である場合が示されているが、この関係が線形でなく非線形である場合も可能である。重要なのは、Lと螺旋ターゲットの水平角の関係が予め特定され、既知の情報であることである。
【0102】
(その他2)
図4には、螺旋構造の谷の位置に着目する例が示されているが、山の頂上の部分に着目する形態も可能である。この場合、螺旋ターゲット120の山の頂上の位置と全周反射プリズム110の反射中心の位置との間の距離Lが利用される。
【0103】
(その他3)
レーザースキャナ部300として、水平方向(横方向)に扇状に複数条のスキャンビーム光を同時に照射する形態のものを利用することもできる。この場合、そのうち一つのレーザースキャン光が望遠鏡16の光軸(測距光の光軸)を含む鉛直面内で照射されるようにする。
【0104】
この例では、鉛直面に沿ったレーザースキャン(高低方向へのレーザースキャン)が1条でなく、左右の斜め方向へも同時に行なわれる。
【0105】
たとえば、あるタイミングで測量機400から水平に照射されるレーザースキャン光(高低角0°のレーザースキャン光)を考える。ここで、測量機400から見た水平角が、正面を基準(0°)として右方向を+、左方向を-として計測されるものとする。そして、同時に2°の間隔で7条のレーザースキャン光を同時に照射する形態であるとする。この場合、同時に、水平角-6°,-4°,-2°,0°,+2°,+4°,+6°の扇状の範囲の方向に7条のレーザースキャン光が同時に照射される。なお、これは一例であり、同時に照射されるレーザースキャン光の数とその角度関係は、上記の場合に限定されない。
【0106】
(その他4)
TS機能部200を利用しない形態も可能である。この場合、レーザースキャナ部300により全周反射プリズム110の測位が行われる。以下、レーザースキャナ部300による全周反射プリズム110の測位について説明する。
【0107】
この場合、まず全周反射プリズム110を含む領域を対象としたレーザースキャンを行う。全周反射プリズム110からの反射光は、相対的に強いので、得られたスキャン点の中から相対的に最も強い反射光が得られたスキャン点を抽出し、そのスキャン点を全周反射プリズム110の反射中心として特定する。
【0108】
なお、レーザースキャンの際、全周反射プリズム110からの反射光が強すぎ、レーザースキャナ部の受光素子の耐入力オーバーとなる場合は、減光フィルタを介したレーザースキャンやスキャン光の発光強度を落とすことで対応する。
【0109】
(その他5)
図4のLとしてPとBTMの三次元空間上での離間距離を採用することもできる。この場合、BTMの座標を(x
1,y
1,z
1)、Pの座標を(x
2,y
2,z
2)として、L=((x
1-x
2)
2+(y
1-y
2)
2+(z
1-z
2)
2)
1/2でLを算出する。
【0110】
(その他6)
螺旋ターゲット120は、外周に螺旋構造が付与された円筒または円柱形状であるが、螺旋軸に垂直な方向で切断した断面形状は、円形に限定されず楕円、多角形、角を丸めた多角形等とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、対象物の姿勢を計測する技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
11…水平回転部、12…台座、13…鉛直回転部、14a…水平回転角制御ダイヤル、14b…高低角制御ダイヤル、15a…照準器、15b…照準器15b、16…望遠鏡、17…接眼部、18,19…ディスプレイ、110…全周反射プリズム、120…螺旋ターゲット、130…ターゲット装置、131…棒状の部材、132…端末、200…TS機能部、300…レーザースキャナ部、301…第1の塔部、302…第2の塔部、303…結合部、304…保護ケース、305…回転部、306…斜めミラー、400…測量機、500…UAV501…ジンバル機構、510…ターゲット装置。