(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132547
(43)【公開日】2022-09-08
(54)【発明の名称】低層建物用高所消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
A62C27/00 506
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115387
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2018094324の分割
【原出願日】2018-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛則
(72)【発明者】
【氏名】福井 良幸
(72)【発明者】
【氏名】玉田 将吾
(57)【要約】
【課題】建物が密集し、かつ道路狭隘の市街地で発生した火災の消火に好適な、簡易かつ小型の低層建物用高所消火装置を提供する。
【解決手段】標準積載量が3トン以下の車両10に積載され、略垂直状態となって、水ポンプ12から供給される水を下から上へ通過させることが可能な送水管20と、送水管20の上側に設けられ、閉じた状態となって、送水管20を通過する水の流れを止めることが可能なストップバルブ30と、送水管20の上側に設けられ、送水管20を通過した水を外部に放出することが可能な放水銃70と、を備え、送水管20は、入れ子式に摺動して伸縮する二以上のパイプ21、22で構成され、ストップバルブ30が閉じた状態のときに、パイプ21、22内に供給される水の圧力を受けて伸びた状態になり、放水銃70は、車両10に積載された放水銃操作盤113によって、垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略垂直状態となって、供給される水を下から上へ通過させることが可能な送水管と、
前記送水管の上側に設けられ、閉じた状態となって、前記送水管を通過する水の流れを止めることが可能なバルブと、
前記送水管の上側に設けられ、前記送水管を通過した水を外部に放出することが可能な放水銃と、を備え、
前記送水管は、入れ子式に摺動して伸縮する二以上のパイプで構成され、前記バルブが閉じた状態のときに、前記パイプ内に供給される水の圧力を受けて伸びた状態になり、
前記放水銃は、放水銃操作盤によって、垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能である、ことを特徴とする低層建物用高所消火装置。
【請求項2】
前記低層建物用高所消火装置が、ポンプを積載した車両を含み、
前記送水管が、前記車両に積載され、略垂直状態となって、前記ポンプから供給される水を下から上へ通過させる請求項1に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項3】
前記車両の標準積載量が3トン以下である請求項2に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項4】
前記車両の天井の上に設置され、垂直方向に回動可能な可倒機構をさらに備え、前記可倒機構に前記送水管の下側が結合され、前記車両の天井の上で、前記送水管が倒れた状態及び起きた状態になる請求項2又は3のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項5】
前記送水管を倒れた状態及び起きた状態にするための油圧シリンダをさらに備えた請求項4に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項6】
前記送水管の伸びた状態の長さが10m以下である請求項4又は5に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項7】
二以上の前記パイプのうち、前記送水管の先端を構成する前記パイプの摺動を任意の位置で停止させるブレーキ機構をさらに備えた請求項1~6のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項8】
動画の撮影が可能なカメラと、前記カメラで撮影した画像を表示するディスプレイと、をさらに備え、前記カメラは、その光軸が前記放水銃の銃口と平行になるように、前記放水銃に取り付けられ、前記ディスプレイは、前記放水銃操作盤に設けられ、前記カメラで撮影した動画を見ながら、前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能である請求項1~7のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項9】
物体から放射される赤外線を可視化することが可能な赤外線カメラをさらに備えた請求項1~8のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項10】
前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記赤外線カメラの測定結果に基づいて、最も温度の高い場所に前記放水銃を向けて水を放出させる請求項9に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項11】
前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を制御する制御部を備え、前記制御部は、プログラムに従って、少なくとも水平方向に自動首振りし、所定の範囲に水を放出させる請求項1~10のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的高所から放水可能な可搬式の低層建物用高所消火装置に関し、特に、建物が密集し、かつ道路狭隘の市街地で発生した火災の消火に好適な小型の低層建物用高所消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平成28年12月22日に新潟県糸魚川市で発生した火災は、昭和51年の酒田市における大火以来40年ぶりの市街地における大規模火災となった。糸魚川市を管轄する消防本部及び消防団が消火活動にあたり、近隣の消防本部が消火活動に協力した。消防本部の主力装備は、普通消防ポンプ自動車であり、消防団の主力装備は、可搬消防ポンプ積載車であった。火災発生から鎮火まで約30時間を要し、焼失面積は約40,000m2に及んだ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-355326号公報
【特許文献2】特開2002-360724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
<普通消防ポンプ自動車及び可搬消防ポンプ積載車の問題点>
糸魚川市の被災エリアは、木造建物が密集し、かつ道路狭隘であった。強風の下で発生した火災は、火元建物から飛散した火の粉や燃えさしが、周辺建物の屋根や上部に飛び火することにより同時多発的に延焼した。主力装備である普通消防ポンプ自動車や可搬消防ポンプ積載車は、水ポンプに押し出された水を手持ちのホースから放水する構成であるため、消防士や消防団員が近づけない高い場所に火点がある場合は、地上から火点に向かって直接放水することができない。直接放水とは、拡散されていない棒状の放水を直に燃焼物に掛ける方法をいい、火災に対する最も効果的な水の使い方である。
【0005】
したがって、火点が建物の2階以上の高さにあり、熱気や障害物等によって消防士や消防団員が近づけない場合は、火点に直接放水することができない。このような場合は、地上から火点に間接放水するしかない。間接放水とは、例えば、火災室内の壁や天井に放水し、跳ね返された水を間接的に燃焼物に掛ける方法、又は火災室内に噴霧放水し、燃焼物周囲の熱環境を改善させる方法をいう。しかし、地上からの間接消火では、建物の2階以上の高さにある火点を効率よく消火することが困難であり、従来の普通消防ポンプ自動車や可搬消防ポンプ積載車では、建物が密集し、かつ道路狭隘の市街地で発生した火災の延焼拡大を効果的に阻止することができない。
【0006】
<高所放水車の問題点>
一方、石油コンビナートなどの大規模火災には、高所放水車が用いられる(特許文献1、2を参照)。高所放水車は、標準積載量8トン~10トンの大型車両をベースにしており、20m以上の高所から毎分3000リットルを超える大量の水を放出する能力を備える。しかし、高所放水車は、建物が密集し、かつ道路狭隘の市街地に乗り入れることができない。その理由として、大型の高所放水車は、車体からアウトリガーを外向きに張り出してジャッキで接地する必要があり、道幅5m以上の道路でなければ進入することができない。また、20m以上の高さの放水塔、及び毎分3000リットル超の放水量は、商店や住宅などの一般的な建物の火災を消火するには過剰性能であり、小規模の消防本部や消防団が装備するのは現実的でない。
【0007】
<発明の目的>
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、建物が密集し、かつ道路狭隘の市街地で発生した火災の消火に好適な、簡易かつ小型の低層建物用高所消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明の低層建物用高所消火装置は、略垂直状態となって、供給される水を下から上へ通過させることが可能な送水管と、前記送水管の上側に設けられ、閉じた状態となって、前記送水管を通過する水の流れを止めることが可能なバルブと、前記送水管の上側に設けられ、前記送水管を通過した水を外部に放出することが可能な放水銃と、を備え、前記送水管は、入れ子式に摺動して伸縮する二以上のパイプで構成され、前記バルブが閉じた状態のときに、前記パイプ内に供給される水の圧力を受けて伸びた状態になり、前記放水銃は、放水銃操作盤によって、垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能な構成とする。
【0009】
(2)好ましくは、上記(1)の低層建物用高所消火装置において、前記低層建物用高所消火装置が、ポンプを積載した車両を含み、前記送水管が、前記車両に積載され、略垂直状態となって、前記ポンプから供給される水を下から上へ通過させる構成とする。
【0010】
(3)好ましくは、上記(2)の低層建物用高所消火装置において、前記車両の標準積載量が3トン以下である構成とする。
【0011】
(4)好ましくは、上記(2)又は(3)の低層建物用高所消火装置において、前記車両の天井の上に設置され、垂直方向に回動可能な可倒機構をさらに備え、前記可倒機構に前記送水管の下側が結合され、前記車両の天井の上で、前記送水管が倒れた状態及び起きた状態になる構成とする。
【0012】
(5)好ましくは、上記(4)の低層建物用高所消火装置において、前記送水管を倒れた状態及び起きた状態にするための油圧シリンダをさらに備えた構成とする。
【0013】
(6)好ましくは、上記(4)又は(5)の低層建物用高所消火装置において、前記送水管の伸びた状態の長さを10m以下とする。
【0014】
(7)好ましくは、上記(1)~(6)のいずれかの低層建物用高所消火装置において、二以上の前記パイプのうち、前記送水管の先端を構成する前記パイプの摺動を任意の位置で停止させるブレーキ機構をさらに備えた構成とする。
【0015】
(8)好ましくは、上記(1)~(7)のいずれかの低層建物用高所消火装置において、動画の撮影が可能なカメラと、前記カメラで撮影した画像を表示するディスプレイと、をさらに備え、前記カメラは、その光軸が前記放水銃の銃口と平行になるように、前記放水銃に取り付けられ、前記ディスプレイは、前記放水銃操作盤に設けられ、前記カメラで撮影した動画を見ながら、前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能な構成とする。
【0016】
(9)好ましくは、上記(1)~(8)のいずれかの低層建物用高所消火装置において、物体から放射される赤外線を可視化することが可能な赤外線カメラをさらに備えた構成とする。
【0017】
(10)好ましくは、上記(9)の低層建物用高所消火装置において、前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記赤外線カメラの測定結果に基づいて、最も温度の高い場所に前記放水銃を向けて水を放出させる構成とする。
【0018】
(11)好ましくは、上記(1)~(10)のいずれかの低層建物用高所消火装置において、前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を制御する制御部を備え、前記制御部は、プログラムに従って、少なくとも水平方向に自動首振りし、所定の範囲に水を放出させる構成とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の低層建物用高所消火装置は、消火に用いられる水の圧力によって送水管が伸びた状態になる、極めて簡易な構成となっている。簡易な低層建物用高所消火装置は、標準積載量が3トン以下の小型車両に積載することができ、建物が密集し、かつ道路狭隘の市街地に乗り入れて、建物の2階以上の高さにある火点に直接放水することを可能とする。このような本発明の低層建物用高所消火装置によれば、建物の屋根や上部の飛び火延焼を効果的に阻止することができる。また、本発明の低層建物用高所消火装置は、標準積載量が3トン以下の普通消防ポンプ自動車や可搬消防ポンプ積載車をベースにして製造することができ、市街地で発生した火災の消火に適合する放水性能を備える。したがって、本発明の低層建物用高所消火装置は、地方自治体の消防本部や消防団にとって有効な主力装備となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る低層建物用高所消火装置の左側面図であり、
図1(a)は送水管の縮んだ状態、
図1(b)は送水管の伸びた状態を示す。
【
図2】上記低層建物用高所消火装置の右側面図であり、
図2(a)は送水管が縮んだ状態、
図2(b)は送水管が伸びた状態を示す。
【
図3】上記低層建物用高所消火装置の平面図であり、
図3(a)は送水管が縮んだ状態、
図3(b)は送水管が伸びた状態を示す。
【
図4】上記低層建物用高所消火装置の正面図であり、
図4(a)は送水管が縮んだ状態、
図4(b)は送水管が伸びた状態を示す。
【
図5】上記低層建物用高所消火装置の背面図であり、
図5(a)は送水管が縮んだ状態、
図5(b)は送水管が伸びた状態を示す。
【
図6】上記低層建物用高所消火装置の背面を示す部分拡大図である。
【
図7】上記送水管を構成する一段目及び二段目パイプを示すものであり、
図7(a)は一段目及び二段目パイプの長さを省略した拡大断面図、
図7(b)は一段目及び二段目パイプの長さを省略していない断面図、
図7(c)は二段目パイプの後端部分の拡大断面図である。
【
図8】上記送水管の上端に取り付けられたストップバルブの断面図であり、
図8(a)はボールディスクの閉状態、
図8(b)はボールディスクの開状態を示す。
【
図9】上記送水管の上端に取り付けられた放水銃を示すものであり、
図9(a)は右側面図、
図9(b)は平面図である。
【
図10】上記低層建物用高所消火装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る低層建物用高所消火装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る低層建物用高所消火装置について、
図1~
図10を参照しつつ説明する。
【0022】
<<低層建物用高所消火装置の概要>>
第1実施形態に係る低層建物用高所消火装置の外観を
図1~
図5に示す。低層建物用高所消火装置1は、主として、車両10のボディ天井に送水管20を積載し、送水管20の上端に放水銃70を設けた構成となっている。
【0023】
車両10のボディ内部には、水ポンプ12及び真空ポンプ12a(
図10を参照)が積載されている。真空ポンプ12aは、水ポンプ12内及び吸管内から空気を吸い出し、自然水利の水を吸引して水ポンプ12内に流入させる。その後、真空ポンプ12aは停止する。水ポンプ12は、内部に流入した水を図示しない羽根車で連続的に外部へ押し出す。水ポンプ12によって連続的に押し出される水は、ボディ天井の送水管20の内部に供給される。
【0024】
送水管20は、車両10のボディ天井に設けられた油圧シリンダ60によって、水平に倒れた状態から垂直に起きた状態となる。送水管20は、入れ子式に摺動して伸縮する一段目及び二段目パイプ21、22で構成されている。二段目パイプ22は、水ポンプ12から供給される水の圧力を受けて上方に摺動する。これにより、送水管20全体が伸びた状態になる。
【0025】
送水管20を通過した水は、放水銃70から外部に放出される。
図5に示すように、車両10の背面110には、放水銃操作盤113が設けられている。放水銃操作盤113によって、放水銃70の垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能である。
【0026】
<<車両>>
低層建物用高所消火装置1のベースとなる車両10は、標準積載量が3トン以下であれば、特に限定されるものではない。本実施形態の車両10は、標準積載量2トンの普通消防ポンプ自動車「CD-I型」であり、B-1級又はA-2級の水ポンプ12(
図10を参照)を積載している。水ポンプ12の規格放水量は、毎分1500リットル以上2800リットル未満である。このような水ポンプ12は、車両10の原動力であるエンジン11(
図10を参照)によって駆動される。エンジン11の動力は、PTO軸13(
図10を参照)から水ポンプ12に伝達される。水ポンプ12の放水流量及び放水圧力は、エンジン11の回転数に比例して増減する。水ポンプ12によって押し出された水は、車両10のボディ天井に設けられた給水パイプ14(
図3を参照)から放出される。
【0027】
図5に示すように、車両10の背面110には、放水を制御するための操作部及び各種ボールコックが集中して設けられている。
図6に背面110の部分拡大図を示す。
【0028】
図6に示すエンジンスロットル111は、エンジン11の回転数を増減させるための操作部である。エンジン11の回転数を増減させることにより、水ポンプ12の運転状態が変化する。すなわち、エンジンスロットル111を操作することにより、放水流量及び放水圧力を制御することができる。
【0029】
図6に示す水ポンプ操作盤112は、
図10に示す制御部112a、ディスプレイ112b及び各種スイッチ112cを備えている。制御部112aは、各種スイッチ112cの操作に基づいて、真空ポンプ12aの作動、及び水ポンプ12の運転状態を制御する。また、制御部112aは、ボールコックである吸水口114、中継吸口115、放水口116及び混合吐出口117の開閉状態を検出する。制御部112aは、水ポンプ12、真空ポンプ12a及び各ボールコックに関する情報をディスプレイ112bに表示させる。
【0030】
ディスプレイ112bには、例えば、現在の水の流れが模式図で表示され、水ポンプ12の回転数、放水圧力、放水流量の数値がデジタル表示される。また、ディスプレイ112bには、上述した吸水口114、中継吸口115、放水口116及び混合吐出口117の開閉状態も表示される。消火活動にあたる消防士又は消防団員は、ディスプレイ112bに表示される情報に基づいて、水ポンプ12の運転状態を監視することができる。
【0031】
図6に示す放水銃操作盤113は、
図10に示す制御部113a、ディスプレイ113b、ジョイスティック113c及び各種スイッチ113dを備えている。制御部113aは、送水管20及び放水銃70の動作を制御する。制御部113aは、各種スイッチ113cの操作に基づいて、送水管20に設けられたストップバルブ30、ブレーキ機構40及び油圧シリンダ60のON/OFFを制御する。また、制御部113aは、ジョイスティック113cの操作に基づいて、放水銃70に内蔵された第1及び第2モータ73、76を動作させ、放水銃70の垂直方向及び水平方向の角度を制御する。さらに、制御部113aは、メモリに記憶された動作プログラムに基づいて、放水銃70を水平方向に首振り動作させることが可能である。
【0032】
ディスプレイ113bには、放水銃70のノズル77に取り付けられたビデオカメラ80で撮影した画像が表示される。上述したように、放水銃70の垂直方向及び水平方向の角度は、ジョイスティック113cによって操作することが可能である。消火活動にあたる消防士又は消防団員は、ディスプレイ113bに表示される画像を見ながらジョイスティック113cを操作し、放水銃70を目的の場所(例えば、火点)に正確に向けることができる。
【0033】
各種スイッチ113dには、例えば、ストップバルブ30の開閉スイッチ、ブレーキ機構40のON/OFFスイッチ、油圧シリンダ60のON/OFFスイッチ、放水銃70のON/OFFスイッチ、放水銃70の首振り動作のON/OFFスイッチなどが含まれる。
【0034】
図6に示す吸水口114は、自然水利から水ポンプ12に給水するためのボールコックであり、図示しないホースが接続される。自然水利の水は、吸水口114に接続されたホースから水ポンプ12に供給される。水ポンプ12によって押し出された水は、車両10のボディ天井に設けられた給水パイプ14、又は後述する放水口116から放出される。
【0035】
図6に示す中継吸口115には、図示しないホースを介して、消火栓や小型ポンプなどを接続することが可能である。消火栓や小型ポンプから供給される有圧水は、中継吸口115を介して水ポンプ12に供給される。
【0036】
図6に示す放水口116には、従来の普通消防ポンプ自動車と同様に、手持ちのホースを接続することが可能である。消防士又は消防団員が手持ちのホースで消火活動にあたる場合は、放水口116のボールコックを開状態にすると、水ポンプ12に押し出された水が放水口116から放出される。
【0037】
図6に示す混合吐出口117は、図示しない混合装置で生成された混合液を吐出するためのボールコックである。混合装置は、泡消火薬剤と水とを混合させ、混合液を生成する。この混合液は、混合吐出口117に接続されたホースに供給される。
【0038】
<<送水管>>
図1~
図5に示すように、送水管20は、車両10のボディ天井に設置された可倒機構50に結合されている。可倒機構50は、主として、連結管51と、連結管51の両側に位置する一対の軸受ユニット52とで構成されている。連結管51は、一対の軸受ユニット52の間に、垂直方向に回動自在に支持されている。送水管20の下端は、連結管51の一端に結合されている。連結管51の他端は、一方の軸受ユニット52を貫通し、車両10のボディ天井に設けられた給水パイプ14に結合されている。水ポンプ12によって押し出された水は、給水パイプ14から放出され、連結管51を介して、送水管20の下側から内部に供給される。また、送水管20は、車両10のボディ天井に設けられた油圧シリンダ60によって0°~90°の範囲で垂直方向に回動される。
【0039】
送水管20の構成について、
図7(a)~(c)を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明の便宜上、送水管20の上下左右の方向を
図7中に定義する。
【0040】
図7(a)、(b)に示すように、送水管20は、主として、一段目パイプ21と二段目パイプ22とで構成されている。一段目パイプ21の内径は、二段目パイプ22の外径とほぼ等しく、二段目パイプ22が一段目パイプ21に対して入れ子式に摺動し、送水管20が長手方向に伸縮するようになっている。
【0041】
図7(a)に示すように、一段目パイプ21の下端の外周面には、一段目フランジ21Aが設けられている。一段目フランジ21Aは、上述した可倒機構50の連結管51の一端に結合される(
図1~
図3を参照)。
【0042】
一段目パイプ21の上端側の外周面には、ハウジング210が装着されている。ハウジング210は、一段目パイプ21の上端を超えて、更に上方へ延びている。ハウジング210の内周面と二段目パイプ22の外周面との間には、複数のVパッキン211が重なって装着されている。複数のVパッキン211は、二段目パイプ22に対する封止面を形成する。互いに重なり合う複数のVパッキン211の中間には、ランタンリング212が組み込まれている。これらのVパッキン211及びランタンリング212は、雌アダプタ213と雄アダプタ214とによって上下方向から挟まれている。雌アダプタ213は、ハウジング210の内周面と二段目パイプ22の外周面との間に挿入されたホルダ215によって保持される。さらに、ホルダ215は、ハウジング210の上端に螺合されたキャップ216の内側に保持される。
【0043】
ハウジング210の側壁におけるランタンリング212に対応する位置には、左右対称に二つの貫通孔が設けられている。一の貫通孔には、エアー抜きニップル217が取り付けられ、他の貫通孔には、グリスニップル218が取り付けられている。エアー抜きニップル217は、二段目パイプ22が上方に摺動したときに、一段目パイプ21の内周面と二段目パイプ22の外周面との隙間にある空気をハウジング210の外部へ放出させる。グリスニップル218は、ランタンリング212を介して、Vパッキン211によって形成される封止面にグリスを注入するためのものである。
【0044】
一方、二段目パイプ22の上端の外周面には、二段目フランジ22Aが設けられている。また、二段目パイプ22の外周面における二段目フランジ22Aの直下には、二段目中間フランジ22Bが設けられている。二段目フランジ22Aは、
図1~
図5に示すストップバルブ30の流入口に結合される。二段目中間フランジ22Bは、二段目パイプ22が下方に摺動して送水管20が縮んだ状態となったときに、一段目パイプ21のキャップ216に当接してストッパの役割を果たす。
【0045】
図7(c)に示すように、二段目パイプ22の下端には、リング221を備えたパイプエンド222が嵌合されている。リング221は、二段目パイプ22の下端の外周面を覆い、一段目パイプ21の内周面に対する封止面を形成する。パイプエンド222は、二段目パイプ22の内周面に強固に嵌合され、リング221の脱落を防止する。
【0046】
ここで、本実施形態の送水装置1は、日本の一般的な住宅の消火を目的としている。このため、送水管20の伸びた状態の長さは、最大で10mあれば十分と考える。日本の建築基準法においては、第1種及び第2種低層住居専用地域内では、建物の絶対高さが、10m又は12m以下に制限されている。したがって、車両10、可倒機構50、ストップバルブ30及び放水銃70の合計高さ(例えば、約3m)を考慮すると、送水管20の伸びた状態の長さは、4m超10m以下の範囲内とすることができる。
【0047】
<<ストップバルブ>>
図1~
図5に示すように、ストップバルブ30の流入口は、送水管20の二段目パイプ22の二段目フランジ22Aに結合され、ストップバルブ30の流出口は、放水銃70に結合される。ストップバルブ30の構成について、
図8(a)、(b)を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明の便宜上、ストップバルブ30の上下左右の方向を
図8中に定義する。
【0048】
図8(a)において、ストップバルブ30のボディ31内部には、下から順に、流入口31a、弁室31c及び流出口31bが形成されている。流入口31aの外周面には、第1フランジ31eが設けられている。また、流出口31bの外周面には、第2フランジ31fが設けられている。第1フランジ31eは、上述した送水管20の二段目パイプ22の二段目フランジ22Aに結合される。また、第2フランジ31fは、上述した放水銃70に結合される。
【0049】
弁室31cは、流入口31aと流出口31bとの間に位置し、その内部にボールディスク32が収容されている。ボールディスク32は、球の一部の形状をした弁体であり、その中心にボア32aが貫通している。
図8(a)に示すように、ボールディスク32の球面の直径は、流入口31a及び流出口31bの直径よりも大きい。また、
図8(b)に示すように、ボールディスク32のボア32aの直径は、流入口31a及び流出口31bの直径とほぼ等しい。
【0050】
一方、弁室31cと流入口31aとの境界、及び弁室31cと流出口31bとの境界には、それぞれシートリング34が取り付けられている。シートリング34は、ボールディスク32に対応する弁座であり、流入口31a及び流出口31bの直径とほぼ等しい内径を有し、ボールディスク32の球面、又はボア32aの開口の外周縁に圧接する。
【0051】
ボールディスク32は、ステム33を中心に上下方向に90°回動可能となっており、
図8(a)の閉状態、又は(b)の開状態になる。
図8(a)の閉状態では、ボールディスク32の球面が、流入口31a及び流出口31bの両方を塞ぎ、流入口31aから流出口31bへの送水を遮断する。一方、
図8(b)の開状態では、ボールディスク32のボア32aが、流入口31a及び流出口31bを連通させ、流入口31aから流出口31bへの送水を可能とする。
【0052】
図10に示すように、ストップバルブ30は、放水銃操作盤113からの信号に基づいて開閉動作する。ストップバルブ30が閉じた状態のとき、送水管20は、水ポンプ12から一段目及び二段目パイプ21、22内に供給される水の圧力を受けて伸びた状態になる。一方、ストップバルブ30が開いた状態になると、送水管20を通過した水が放水銃70に供給される。
【0053】
ここで、
図8(a)、(b)に示すように、弁室31cの壁部には、ドレンポート31dが設けられている。ドレンポート31dには、電磁弁35が接続されている。ドレンポート31d及び電磁弁35は、弁室31c内に溜まった水を外部に排水するためのものである。
図10に示すように、電磁弁35は、放水銃操作盤113からの信号に基づいて開閉動作する。電磁弁35を開状態にすると、弁室31c内に溜まった水が外部に排出される。また、電磁弁35を閉状態にすると、弁室31c内が外部から閉鎖される。後述するように、ドレンポート31d及び電磁弁35は、送水管20を伸びた状態にするときに、送水管20内の空気を外部に排出することにも用いられる。
【0054】
<<ブレーキ機構>>
図1(b)及び
図2(b)に示すように、送水管20には、ブレーキ機構40が設けられている。ブレーキ機構40は、主として、パイプ41、ロッド42及びブレーキ43で構成されている。ロッド42は、パイプ41に対して入れ子式に摺動し、ブレーキ機構40が長手方向に伸縮するようになっている。ブレーキ43は、パイプ41の上端に取り付けられ、ロッド42の外径よりも若干大きい内径の円筒状のハウジングを有する。この円筒状のハウジング内には、図示しないクランプを備えている。ブレーキ43の円筒状のハウジングには、ロッド42が挿通される。
【0055】
このようなブレーキ機構40は、送水管20に対して平行に取り付けられている。具体的に、パイプ41の下端は、送水管20の一段目パイプ21の下端に結合される。ロッド42の上端は、送水管20の二段目パイプ22の上端に結合される。また、
図1(b)及び
図2(b)に示すように、油圧シリンダ60のピストンロッドの先端は、パイプ41の下端側に回動自在に結合されている。この構成により、ブレーキ機構40は、送水管20とともに0°~90°の範囲で垂直方向に回動される。また、ロッド42は、送水管20の二段目パイプ22とともに上下方向に摺動する。
【0056】
図10に示すように、ブレーキ機構40は、放水銃操作盤113からの信号に基づいてON/OFF動作する。ブレーキ機構40は、ONのときにロッド42の外周面をクランプする。これにより、送水管20の二段目パイプ22が任意の突出量でロックされる。このようなブレーキ機構40によって、二段目パイプ22の突出量の範囲内で、放水銃70を任意の高さに位置させることが可能である。
【0057】
<<放水銃>>
図9(a)、(b)に示すように、放水銃70は、主として、第1パイプ71、第1回動部72、第1モータ73、第2パイプ74、第2回動部75、第2モータ76及びノズル77で構成されている。上述したように、放水銃70は、ストップバルブ30の流出口に結合される。ストップバルブ30が開いた状態になると、送水管20を通過した水は、第1及び第2パイプ71、74に供給され、ノズル77から外部に放出される。
【0058】
第1パイプ71の一端側は、第1回動部72に結合される。第1回動部72は、第1モータ73によって駆動され、水平方向に回動可能となっている。第1パイプ71の他端側は、第2回動部75に結合される。第2回動部75には、第2パイプ74の一端側が結合される。第2回動部75は、第2モータ76によって駆動され、垂直方向に回動可能となっている。第2パイプ74の他端側には、ノズル77が結合される。
【0059】
図10に示すように、第1及び第2モータ73、76は、ジョイスティック113cの操作に基づいて動作し、第1及び第2回動部72、75を駆動させる。
図9(b)に示すように、第1回動部72を駆動させることによって、放水銃70のノズル77は、左方向に165°及び右方向に165°、合計で水平方向に330°回動することが可能である。一方、
図9(a)に示すように、第2回動部75を駆動させることによって、放水銃70のノズル77は、上方向に90°及び下方向に30°、合計で垂直方向に120°回動することが可能である。
【0060】
<<ビデオカメラ>>
ここで、
図9(a)、(b)に示すように、放水銃70のノズル77には、ビデオカメラ80が取り付けてある。ビデオカメラ80は、ノズル77と同じ方向を向き、ノズル77とともに垂直方向及び水平方向に回動する。
図10に示すように、ノズル77が撮影した画像データは、放水銃操作盤113に入力され、制御部113aによって処理される。制御部113aは、ビデオカメラ80によって撮影された画像をディスプレイ113bに表示させる。上述したように、消火活動にあたる消防士又は消防団員は、ディスプレイ113bに表示される画像を見ながらジョイスティック113cを操作し、放水銃70のノズル77を目的の場所(例えば、火点)に正確に向けることができる。
【0061】
<<送水管の伸長制御の詳細>>
上述した送水管20の伸長制御について、
図10を参照しつつ詳細に説明する。送水管20は、消火活動にあたる消防士又は消防団員が、
図10に示す放水銃操作盤113の各種スイッチ113dを操作することで、縮んだ状態から伸びた状態になる。
【0062】
図10において、水ポンプ12と送水管20との間には、電動バルブ15が接続されている。電動バルブ15は、水ポンプ12から送水管20内への水の供給を制御する。消防士又は消防団員は、放水銃操作盤113の各種スイッチ113dを操作して、電動バルブ15を開閉動作させる。すなわち、各種スイッチ113dが操作されると、放水銃操作盤113の制御部113aが信号を出力し、電動バルブ15を開閉動作させる。電動バルブ15が開状態になると、水ポンプ12によって押し出された水が、車両10のボディ天井に設けられた給水パイプ14(
図3を参照)から放出され、可倒機構50の連結管51を通じて、縮んだ状態の送水管20内に供給される。
【0063】
ここで、消防士又は消防団員は、電動バルブ15を開状態にすると同時に、放水銃操作盤113の各種スイッチ113dを操作して、ストップバルブ50の電磁弁35を開状態にする。これにより、縮んだ状態の送水管20内に水が供給されるとともに、送水管20内の空気が、ストップバルブ30のドレンポート31dから外部に排出される(
図8(a)の灰色矢印を参照)。この結果、縮んだ状態の送水管20内が、供給された水によって徐々に満たされる。
【0064】
その後、送水管20内の空気が全て外部に排出されると、ストップバルブ30のドレンポート31dから、送水管20内に供給された水が流出するようになる。そこで、消防士又は消防団員は、放水銃操作盤113の各種スイッチ113dを操作して、ストップバルブ50の電磁弁35を閉状態にする。
【0065】
このまま、縮んだ状態の送水管20内に水を供給し続けると、送水管20を構成する二段目パイプ22(
図7(b)を参照)が、パイプ内に供給される水の圧力を受けて上方に摺動する。これにより、送水管20全体が伸びた状態になる。
【0066】
消防士又は消防団員は、送水管20が完全に伸びた状態になったとき、又は送水管20が任意の高さまで伸びた状態になったときに、放水銃操作盤113の各種スイッチ113dを操作して、ブレーキ機構40を動作させる。ブレーキ機構40によって、送水管20の二段目パイプ22が固定され、送水管20全体が伸びた状態で維持される。
【0067】
次いで、消防士又は消防団員は、放水銃操作盤113のディスプレイ113bに表示される画像を見ながらジョイスティック113cを操作し、放水銃70のノズル77を目的の場所(例えば、火点)に向ける。その後、消防士又は消防団員は、放水銃操作盤113の各種スイッチ113dを操作して、ストップバルブ50のボールディスク32を開状態にする(
図8(b)を参照)。これにより、放水銃70のノズル77から目的の場所に、大量の水が直接放水される。
【0068】
<第2実施形態>
図11に示すように、低層建物用高所消火装置1には、オプションとして赤外線カメラ90を追加することができる。赤外線カメラ90は、物体から放射される赤外線量の変化を可視化した画像(サーモグラフィー)を撮影する。赤外線カメラ90は、ビデオカメラ80と同様に、放水銃70のノズル77に取り付けられる。赤外線カメラ90が撮影した画像データは、放水銃操作盤113に入力され、制御部113aによって処理される。赤外線カメラ90によって撮影された画像をディスプレイ113bに表示させる。消火活動にあたる消防士又は消防団員は、ディスプレイ113bに表示される画像を見ながらジョイスティック113cを操作し、放水銃70のノズル77を最も温度の高い場所(例えば、火点)に正確に向けることができる。
【0069】
さらに、放水銃操作盤113の制御部113aが、赤外線カメラ90によって撮影された画像データに基づいて、放水銃70のノズル77の向きを自動制御する構成としてもよい。すなわち、制御部113aは、赤外線カメラ90によって撮影された画像データを解析し、最も温度の高い場所のxy座標を特定する。次いで、制御部113aは、ノズル77が最も温度の高い場所のxy座標を向くように、第1及び第2モータ73、76を駆動させる。
【0070】
<作用効果>
本実施形態の低層建物用高所消火装置1は、標準積載量が3トン以下の小型車両10、この小型車両10に積載可能な水ポンプ12、送水管20、ストップバルブ30及び放水銃70を備えている。送水管20は、放水銃70から放出される水の圧力で伸びた状態になる、極めて簡易な構成となっている。簡易かつ小型の低層建物用高所消火装置1は、建物が密集し、かつ道路狭隘の市街地に乗り入れることができ、建物の2階以上の高さにある火点をビデオカメラ80又は赤外線カメラ90で捕え、直接放水することを可能とする。このような本実施形態の低層建物用高所消火装置1によれば、建物の屋根や上部の飛び火延焼を効果的に阻止することができる。また、本実施形態の低層建物用高所消火装置1は、標準積載量が3トン以下の普通消防ポンプ自動車や可搬消防ポンプ積載車をベースにして製造することができ、市街地で発生した火災の消火に適合する放水性能を備える。したがって、本実施形態の低層建物用高所消火装置1は、地方自治体の消防本部や消防団にとって有効な主力装備となり得る。
【0071】
<その他の変更>
本発明の低層建物用高所消火装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の低層建物用高所消火装置が適用される車両は、普通消防ポンプ自動車に限らず、可搬消防ポンプ積載車であってもよい。可搬消防ポンプ積載車の場合、送水管に水を供給するためのポンプは、車両から積み下ろし可能な可搬型ポンプであってもよい。
【0072】
また、本発明の低層建物用高所消火装置が適用される車両は、消防本部や消防団が装備している既存車両であってもよい。すなわち、本発明の低層建物用高所消火装置を製造するにあたり、必ずしも新規車両を用意する必要はない。本発明の低層建物用高所消火装置は、消防本部や消防団が装備している既存の普通消防ポンプ自動車又は可搬消防ポンプ積載車に、送水管、ストップバルブ及び放水銃等を増設することによって製造することが可能である。
【0073】
なお、本発明の低層建物用高所消火装置を構成する送水管について「略垂直状態」及び「垂直に起きた状態」とは、理論上は、送水管が水平面に対して90°になることであるが、厳密な「垂直(90°)」に限定されるものではない。例えば、製造誤差、水圧及び風圧などによる送水管の傾きを考慮すると、送水管について「略垂直状態」及び「垂直に起きた状態」とは、送水管が水平面に対して約80°~100°になることを含む。
【符号の説明】
【0074】
1 低層建物用高所消火装置
10 車両(CD-I)
11 エンジン
12 水ポンプ
12a 真空ポンプ
13 PTO軸
14 給水パイプ
15 電動バルブ
110 背面
111 エンジンスロットル
112 ポンプ操作盤
112a 制御部
112b ディスプレイ
112c 各種スイッチ
113 放水銃操作盤
113a 制御部
113b ディスプレイ
113c ジョイスティック
113d 各種スイッチ
114 吸水口
115 中継吸口
116 放水口
117 混合吐出口
20 送水管
21 一段目パイプ
21A 一段目フランジ
22 二段目パイプ
22A 二段目フランジ
22B 二段目中間フランジ
210 ハウジング
211 Vパッキン
212 ランタンリング
213 雌アダプタ
214 雄アダプタ
215 ホルダ
216 キャップ
217 エアー抜きニップル
218 グリスニップル
221 リング
222 パイプエンド
30 ストップバルブ
31 ボディ
31a 流入口
31b 流出口
31c 弁室
31d ドレンポート
31e 第1フランジ
31f 第2フランジ
32 ボールディスク
32a ボア
33 ステム
34 シートリング
35 電磁弁
40 ブレーキ機構
41 パイプ
42 ロッド
43 ブレーキ
50 可倒機構
51 連結管
52 軸受ユニット
60 油圧シリンダ
70 放水銃
71 第1パイプ
72 第1回動部
73 第1モータ
74 第2パイプ
75 第2回動部
76 第2モータ
77 ノズル
80 ビデオカメラ
90 赤外線カメラ
【手続補正書】
【提出日】2022-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略垂直状態となって、供給される水を下から上へ通過させることが可能な送水管と、
前記送水管の上側に設けられ、閉じた状態となって、前記送水管を通過する水の流れを止めることが可能なバルブと、
前記送水管の上側に設けられ、前記バルブが開いた状態となったときに、前記送水管を通過した水を外部に放出することが可能な放水銃と、を備え、
前記送水管は、入れ子式に摺動して伸縮する二以上のパイプで構成され、前記バルブが閉じた状態のときに、前記パイプ内に供給される水の圧力を受けて伸びた状態になり、
前記バルブは、二以上の前記パイプのうち、前記送水管の上端を構成する前記パイプに設けられ、
前記放水銃は、放水銃操作盤によって、垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能である、ことを特徴とする低層建物用高所消火装置。
【請求項2】
前記低層建物用高所消火装置が、ポンプを積載した車両を含み、
前記送水管が、前記車両に積載され、略垂直状態となって、前記ポンプから供給される水を下から上へ通過させる請求項1に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項3】
前記車両の標準積載量が3トン以下である請求項2に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項4】
前記車両の天井の上に設置され、垂直方向に回動可能な可倒機構をさらに備え、前記可倒機構に前記送水管の下側が結合され、前記車両の天井の上で、前記送水管が倒れた状態及び起きた状態になる請求項2又は3のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項5】
前記送水管を倒れた状態及び起きた状態にするための油圧シリンダをさらに備えた請求項4に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項6】
前記送水管の伸びた状態の長さが10m以下である請求項4又は5に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項7】
二以上の前記パイプのうち、前記送水管の先端を構成する前記パイプの摺動を任意の位置で停止させるブレーキ機構をさらに備えた請求項1~6のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項8】
動画の撮影が可能なカメラと、前記カメラで撮影した画像を表示するディスプレイと、をさらに備え、前記カメラは、その光軸が前記放水銃の銃口と平行になるように、前記放水銃に取り付けられ、前記ディスプレイは、前記放水銃操作盤に設けられ、前記カメラで撮影した動画を見ながら、前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を遠隔操作することが可能である請求項1~7のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項9】
物体から放射される赤外線を可視化することが可能な赤外線カメラをさらに備えた請求項1~8のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項10】
前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記赤外線カメラの測定結果に基づいて、最も温度の高い場所に前記放水銃を向けて水を放出させる請求項9に記載の低層建物用高所消火装置。
【請求項11】
前記放水銃の垂直方向及び水平方向の角度を制御する制御部を備え、前記制御部は、プログラムに従って、少なくとも水平方向に自動首振りし、所定の範囲に水を放出させる請求項1~10のいずれか1項に記載の低層建物用高所消火装置。