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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013265
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】光沢面印刷の品質検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20220111BHJP
   B41F 17/22 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G01N21/892 Z
B41F17/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115701
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000109200
【氏名又は名称】ダックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】松井 真人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光直
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 友都
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】氷上 好孝
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA21
2G051AA32
2G051AA37
2G051AB02
2G051AB07
2G051AB11
2G051BA01
2G051BB01
2G051BB05
2G051BC01
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051EA08
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】光沢面印刷において印刷機械やインク濃度の調整などを効率よく適切に行うことが可能となる品質検査装置を提供せんとする。
【解決手段】撮像手段11および照明手段12A,12Bにより、撮像面の明視野画像と暗視野画像とを取得する画像取得手段31aと、明視野画像および暗視野画像の各画像の濃度レベルを分析し、それぞれ明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルとして濃度レベル記憶手段32bに記憶する濃度レベル分析手段31bと、明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて、撮像面の品質を判定する判定手段31dとを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢表面上に印刷された印刷面を照明する照明手段と、
前記照明手段により照明された印刷面からの反射光レベルを取得する反射光取得手段と、
前記反射光取得手段で得られる反射光レベル情報に基づき、前記印刷面の品質を判定する判定手段とを備える光沢面印刷の品質検査装置であって、
前記照明手段および反射光取得手段により、前記印刷面の明視野反射光レベルと暗視野反射光レベルとを取得する反射光レベル取得手段と、
前記明視野反射光レベルおよび暗視野反射光レベルの各レベルに基づき、前記撮像面の品質を判定する判定手段と、
を備える光沢面印刷の品質検査装置。
【請求項2】
前記判定手段が、前記明視野反射光レベルおよび暗視野反射光レベルの各レベルから濃度レベルを分析し、それぞれ明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルとして濃度レベル記憶手段に記憶する濃度レベル分析手段を備え、前記明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて、前記印刷面の品質を判定する、請求項1記載の品質検査装置。
【請求項3】
前記判定手段が、前記明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて所定の計算式により算出される算出値に基づき、前記印刷面の品質を判定する、
請求項2記載の品質検査装置。
【請求項4】
前記計算式が、前記明視野濃度レベルと前記暗視野濃度レベルの和を少なくとも含む計算式である、請求項3記載の品質検査装置。
【請求項5】
光非透過性の所定のインクによる印刷領域の前記明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルの各濃度レベルを比較し、インク表面のグロスによる濃度値を算出するグロス分析手段と、
前記グロス分析手段により算出されたグロスの濃度値を記憶するグロス濃度記憶手段とを備え、
前記判定手段は、前記グロスの濃度の影響を差し引いて前記印刷面の品質を判定する、請求項2~4のいずれか1項に記載の品質検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢表面上に印刷された印刷面のインク濃度等の品質を判定する品質検査装置に係り、印刷機械やインク濃度の調整などを効率よく適切に行うことが可能となる品質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷面のインク濃度の良否や掠れその他の欠陥の有無などを判定する品質検査装置としては、例えば印刷物の被検査面を照明で照らしつつカメラで撮像した被検査画像について、基準となるマスター画像のエリア画像の色濃度レベルと当該エリア画像に対応する被検査画像のエリア画像の色濃度レベルとを比較し、色濃度のレベル差が予め設定した許容値以上となった箇所を欠陥と判定する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
カメラで撮像される被検査画像やマスター画像は、紙ベースの印刷面の場合には、比較的安定した画像が得られる。しかしながら、飲料缶などの金属表面の印刷面の場合は、照明光の金属表面からの反射要素が影響するため、画像が安定せず、精度のよい品質判定ができない。これに対し、金属面などの光沢表面上に印刷された印刷面の検査において、明視野用照明光と暗視野用照明光とを印刷欠陥(検出対象)の種類に応じて選択的に又は併用して使用し、品質判定の精度を高めることも提案されている(特許文献2参照)が、金属などの光沢表面からの反射要素による影響は、インクの種類、状態、厚み、照明の種類、強さ等の複数の要因によっても大きく変わることから、画像の安定化には限界があり、且つその不安定化の要因も分析できず、光沢面印刷において機械やインク濃度の調整を適切に行うことができる品質検査装置は実現できていない。
【0004】
このようなことから、光沢面印刷の品質検査は、作業者が抜き取りで目視により品質を確認する手法、すなわち人の感覚と経験に基づく判定に頼っているのが現状である。そもそも「色」は、「光」と「視覚」(色の感じ方)の2つの要素からなり、作業者が被検査対象を手に持って印刷面を確認する方法では、印刷面と人の目との間の距離や角度、照明との位置関係、強弱のばらつきによって「光」が一定でなくなるうえ、「視覚」にも個人差があり、検査方法としては曖昧な結果にならざるをえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-201611号公報
【特許文献2】特開平11-108637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、光沢面印刷において印刷機械やインク濃度の調整などを効率よく適切に行うことが可能となる品質検査装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はかかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、作業者が目で見て判定する際には、定点カメラで画像取得する場合と異なり、右目と左目とで異なる画像を取得(通常は、効き目側が照明の正反射の画像(明視野画像)、他方の目が乱反射の画像(暗視野画像)を取得すると考えられる。)し、これら異なる画像に基づいて脳内で総合判断していることをヒントに、定点カメラで画像取得する場合にも、同じ領域(撮像面)について明視野画像と暗視野画像の2つの画像を取得し、各画像に基づいて得られる情報を総合して判定することを着想し、これにより、光沢面印刷において品質に関するより詳細な情報が得られ、精度よく品質検査を行うことができること、画像ではなくセンサー単位でその明視野、暗視野の各反射レベルから品質を判定することも可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 光沢表面上に印刷された印刷面を照明する照明手段と、前記照明手段により照明された印刷面からの反射光レベルを取得する反射光取得手段と、前記反射光取得手段で得られる反射光レベル情報に基づき、前記印刷面の品質を判定する判定手段とを備える光沢面印刷の品質検査装置であって、前記照明手段および反射光取得手段により、前記印刷面の明視野反射光レベルと暗視野反射光レベルとを取得する反射光レベル取得手段と、前記明視野反射光レベルおよび暗視野反射光レベルの各レベルに基づき、前記撮像面の品質を判定する判定手段とを備える光沢面印刷の品質検査装置。
【0009】
(2) 前記判定手段が、前記明視野反射光レベルおよび暗視野反射光レベルの各レベルから濃度レベルを分析し、それぞれ明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルとして濃度レベル記憶手段に記憶する濃度レベル分析手段を備え、前記明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて、前記印刷面の品質を判定する、(1)記載の品質検査装置。
【0010】
(3) 前記判定手段が、前記明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて所定の計算式により算出される算出値に基づき、前記印刷面の品質を判定する、(2)記載の品質検査装置。
(4) 前記計算式が、前記明視野濃度レベルと前記暗視野濃度レベルの和を少なくとも含む計算式である、(3)記載の品質検査装置。
【0011】
(5) 光非透過性の所定のインクによる印刷領域の前記明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルの各濃度レベルを比較し、インク表面のグロスによる濃度値を算出するグロス分析手段と、前記グロス分析手段により算出されたグロスの濃度値を記憶するグロス濃度記憶手段とを備え、前記判定手段は、前記グロスの濃度の影響を差し引いて前記印刷面の品質を判定する、(2)~(4)のいずれかに記載の品質検査装置。
【発明の効果】
【0012】
以上にしてなる本願発明に係る光沢面印刷の品質検査装置は、印刷面の同じ領域の明視野反射光レベルと暗視野反射レベルの各レベルを個別に取得し、たとえばさらに濃度レベルを分析し、取得される明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて当該印刷面の品質を判定するので、従来と比べて、明視野画像と暗視野画像の各画像について安定した画像を得るとともに、明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルの各レベルも安定した、より正確な情報を得ることができ、マスター画像の情報についても、同様に正確で安定した情報が得られ、比較することにより精度の良い品質判定が可能となる。
【0013】
また、明視野濃度レベルには、インクの散乱成分に加えて、インク表面の光沢である「グロス」による反射光成分や印刷下地である光沢表面からの反射要素が付加されるのに対し、暗視野濃度レベルは、インクの散乱成分がほとんどとなる。また、下地である光沢表面からの反射要素は、インクの種類によって異なる透過率により大きく異なる。したがって、本願発明のように撮像面の明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを個別に取得すれば、異なるインクの画像領域のものを比較するなどして、インク表面のグロスの反射光成分や下地の光沢表面からの反射光成分などを分析することもでき、精度の高い品質判定が可能となる。
【0014】
判定手段は、たとえば明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて所定の計算式により算出される算出値に基づき、前記撮像面の品質を判定することができ、とくに前記計算式が、前記明視野濃度レベルと前記暗視野濃度レベルの和を少なくとも含む計算式であることで、作業者が目で見て判定する場合と同じように、明視野濃度レベルと暗視野濃度レベルを総合することができ、かつ精度良く品質判定することができる。
【0015】
また、光非透過性の所定のインクによる印刷領域の撮像面の前記明視野画像および暗視野画像の各画像の濃度レベルを比較し、インク表面のグロスによる濃度値を算出するグロス分析手段と、グロス分析手段により算出されたグロスの濃度値を記憶するグロス濃度記憶手段とを備え、判定手段は、グロスの濃度の影響を差し引いて前記撮像面の品質を判定するようにすれば、より正確な品質判定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の品質検査装置を備える光沢面印刷システムの代表的実施形態を示す説明図。
図2】同じく品質検査装置による撮像の様子を示す説明図。
図3】同じく品質検査装置による撮像の様子を示す説明図。
図4】同じく品質検査装置の制御装置その他の構成を示すブロック図。
図5】同じく品質検査装置の変形例を示す説明図。
図6】同じく品質検査装置による処理手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明の品質検査装置1は、図1に示すように、金属表面などの光沢表面上に印刷された印刷面91を撮像する撮像手段11と、撮像手段11による撮像面110を照明する照明手段12A,12Bと、撮像手段11で得られる画像情報に基づき、品質を判定する判定手段としての判定処理部31dとを備えている。尚、以下の実施形態では、反射光取得手段が、印刷面を撮像する撮像手段11であり、且つ、反射光レベル取得手段が、撮像手段11および照明手段12A,12Bにより、印刷面の明視野画像と暗視野画像とを取得する画像取得手段である例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像ではなくセンサ(イメージセンサ)単位で明視野の反射光レベル、暗視野の反射光レベルをそれぞれ取得し、各レベルに基づいて品質を判定するものであってもよい。
【0019】
検査対象である印刷面91は、飲料缶などの光沢表面上に印刷された印刷面である。光沢表面としては、上記飲料缶のような母材が金属の金属表面であること以外に、金属フィルム、その他、紙やフィルム等の母材表面に積層された金属箔や金属膜の金属表面なども含まれる。また、金属表面以外の一般的な光沢面(鏡面など)が広く含まれる。以下の本実施形態では、飲料缶であるワーク9の表面に印刷された印刷面91を検査する場合を例に挙げる。品質検査装置1は、印刷機5の後工程にインラインで設置される場合を例示するが、本発明にかかる品質検査装置の設定形態は、このような例に何ら限定されるものではない。印刷機の内部に設けたものや印刷ラインとは別にオフラインで設けたもの等、種々の形態が可能である。
【0020】
品質検査装置1が判定する印刷面の品質としては、インク濃度の異常や掠れ、印刷ズレ、下地である光沢表面の欠陥、その他の印刷面の欠陥の有無を判定する。そして、異常と判定された品質データのうち、とくに印刷に関する品質データは印刷機の制御部にフィードバックされ、適正な値に制御される。たとえば、インク濃度の異常については、フィードバックされるインク濃度値に基づき、印刷機の制御部が各色ごとに対応するインクローラ等を制御してインク濃度を調整することができる。また、印刷ズレについては、同じくフィードバックされたズレ量のデータに基づき、印刷機の制御部が自動見当合わせ装置によって版胴の位置を調整することができる。
【0021】
飲料缶であるワーク9は、軸を縦方向に垂直に立てた状態で、印刷機5から品質検査装置1に搬送され、撮像位置にて図示しない回転装置により回転される。このようなワーク9の搬送および回転動作は、品質検査装置1の制御装置13または印刷システムのサーバコンピュータ等が有するワーク制御部14で動作制御される。
【0022】
撮像手段11は、従来の検査装置に用いられる撮像手段と同様、例えばワーク9の回転軸に平行な縦方向に沿って複数の撮像カメラを設け、高さ方向の全長にわたる領域を撮像するものである。CCDやCMOS撮像素子(センサ)を回転軸に平行な縦方向に複数並設したラインセンサカメラとしてもよい。カメラの数や配置はワーク9の印刷面を撮像できるものであれば特に限定されず、またラインセンサカメラ以外にCCDやCMOS撮像素子を縦横方向に複数並設したエリアセンサカメラを単又は複数設けたものでもよい。
【0023】
照明手段12A,12Bは、本例では縦方向に複数のLEDを並設した照明器である。照明手段12Aは、撮像手段11において明視野となる明視野用照明光を出射する明視野用照明光源であり、照明手段12Bは、撮像手段11において暗視野となる暗視野用照明光を出射する暗視野用照明光源である。縦方向に長い直管状の蛍光ランプやハロゲンランプを設けたものでも勿論よい。ただし、照明手段12A,12Bは、後述のように切り替えて使用されるため、切り替えが瞬時に可能である点でLEDとすることが好ましい。
【0024】
判定手段は、品質検査装置1の制御装置13を構成している処理装置31に設けられている。符号32は処理装置31に接続された記憶手段である。処理装置31は、マイクロプロセッサなどのCPUを主体に構成され、入出力部、バスラインを通じて撮像手段11、照明手段12、記憶手段32、ワーク制御部14および印刷機の制御部51との間でそれぞれ各種情報を送受信する。また、記憶手段32は、処理装置31内外のRAM、ROMなどの記憶メモリやハードディスク等より構成され、処理装置31における各種処理動作の手順を規定するプログラムや処理データが記憶される。
【0025】
処理装置31は、機能的に、撮像手段11および照明手段12により、撮像面の明視野画像と暗視野画像とを取得し、記憶手段32の画像記憶部32aに記憶させる画像取得手段としての画像取得処理部31aと、明視野画像および暗視野画像の各画像の濃度レベルを分析し、それぞれ明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルとして、記憶手段32の濃度レベル記憶部32bに記憶する、判定手段に含まれる濃度レベル分析手段としての濃度レベル分析処理部31bと、明視野濃度レベルおよび暗視野濃度レベルを用いて、撮像面の品質を判定する、同じく判定手段としての判定処理部31dとを少なくとも備えている。
【0026】
これら処理装置31の機能は上記プログラムにより実現される。このように処理装置31の各機能は、コンピュータによるソフトウエア処理で構成できるが、一部又は全部をハードウエア処理回路で構成することもできる。
【0027】
画像取得処理部31aは、ワーク制御部14により制御されるワーク9の動作と連動して、撮像手段11および照明手段12A,12Bを動作させ、上記明視野画像および暗視野画像を取得する。具体的には、照明手段12A、12Bの一方のみ発光させた状態でワーク1回転あたりの画像(照明手段12Aのみ発光させた場合は明視野画像、照明手段12Bのみ発光させた場合は暗視野画像)を撮像手段11で取得した後、他方に発光を切り替え、ワーク1回転あたりの他方の画像を取得する照明切替制御部310を備えている。
【0028】
このようにワークを1回転させるごとに照明手段12A,12Bを切り替えて発光させることにより、ワーク2回転で明視野画像および暗視野画像の双方を共通の撮像手段11で取得することができる。なお、暗視野用の照明手段12Bについては、撮像面110に対して複数の角度位置に複数設けることも好ましい。
【0029】
本例では、明視野用の照明手段12Aと暗視野用の照明手段12Bを別々に設けたが、一つの照明手段で、該照明手段からの照射位置または照射角度を変更する機構を設け、これにより一つの照明手段で明視野用照明光および暗視野照明光を切り替え供給するように構成してもよい。たとえば、当該一つの照明手段の光源位置、光源角度を切り替え変更できる機構を設けることや、位置又は角度を切り替え変更できるミラーを介装する等することで実現できる。
【0030】
このように明視野用照明光および暗視野照明光を切り替えて供給することで、共通の撮像手段11により明視野明視野画像および暗視野画像の双方を取得することができ、高い精度の検査が可能となるが、他の例として、図5に示すように、撮像面110に対して異なる角度位置に2つ以上の撮像手段11A、11Bを設け、一の撮像手段11Aは照明手段12からの照明光により暗視野画像が得られ、他の撮像手段11Bは同じく照明手段12からの照明光により暗視野画像が得られるように構成することも可能である。この例によれば、ワーク1回転で明視野画像および暗視野画像の双方を取得することができ、効率の向上を図ることができる。
【0031】
判定手段としての前記濃度レベル分析処理部31bが測定する濃度レベルは、明視野画像および暗視野画像の各画像について、たとえば画素ごとのRGB成分値を測定して求められる。各画像の中から品質判定に必要な領域を抽出し、該領域についてのみ濃度レベルを測定するものでも勿論よい。また、この領域の抽出は、濃度レベルの測定ではなく判定の段階で行うものでもよい。具体的に判定を行う判定処理部31dは、濃度レベル分析処理部31bで求められた明視野画像/暗視野画像の各画像のRGB成分濃度レベルに基づいて、良否判定に用いる値を算出する判定用レベル算出部311と、算出された値とマスターデータの対応値とを比較して良否判定する比較判定部312と、判定結果を記憶手段32の判定結果記憶部32eに記憶するとともに、印刷機制御部51などに適宜フィードバックする判定結果送信部313とを備えている。
【0032】
判定用レベル算出部311は、濃度レベル分析処理部31bで求められた明視野画像のRGB成分値、および暗視野画像のRGB成分値を、R/G/Bごとに合算し、これを判定用レベル値とする。3成分の平均値を算出して用いてもよい。比較判定部312は、この判定用レベル値と、記憶手段32のマスターデータ記憶部32fから抽出した対応するマスターデータのレベル値とを比較して、レベルの差が予め設定した許容値以上であれば、当該部分を欠陥として検出するとともに、その欠陥の内容を判定する。
【0033】
また、本実施形態の処理装置31は、さらに、光非透過性の所定のインク(黒色や白色のインク)による印刷領域の撮像面の前記明視野画像および暗視野画像の各画像の濃度レベルを比較し、その差分をインク表面のグロスによる濃度値として算出し、記憶手段32のグロス濃度記憶部32cに記憶する、判定手段に含まれるグロス分析手段としてのグロス分析処理部31cを備えている。上記差分がインク表面のグロスによる濃度値であることは、次のとおりである。
【0034】
本発明者がアルミ缶表面の印刷面のうち、光非透過性のインク(黒色インク、白色インク)と、金色インクの3種の単色の領域について、明視野画像および暗視野画像の各画像の濃度レベルを測定した結果、次の表1~表3に示す結果となった。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
表1、表2から分かるように、黒色インクと白色インクの各「明-暗 差」は、ほぼ均一に近い値が得られた(「20」~「32」)。したがって、この差分は、インクに共通している「グロス」と呼ばれるインク表面の光沢成分による濃度値であると考えられる。すなわち、光非透過性の黒色インクや白色インクでは、暗視野画像ではインクの散乱成分の濃度のみが検出され、明視野画像では、インクの散乱成分にインク表面のグロスが加算された濃度が検出されたと考えられる。
【0039】
これに対し、表3から分かるように、金色インクでは、特にR成分とG成分で、黒色インクや白色インクの場合に比べて、「明-暗 差」が大きくなっている(「69」、「57」)。これは、金色インクのような光を透過するインクでは、明視野光により下地である光沢表面からの反射光が捉えられ、その濃度分が寄与しているためと考えられる。すなわち、光透過性の金色インクでは、暗視野画像ではインクの散乱成分の濃度のみが検出され、明視野画像では、インクの散乱成分に上記のインク表面のグロスと、光沢表面からの反射成分(光沢表面の光沢成分)が加算された濃度が検出されたと考えられる。
【0040】
インク表面のグロスは、インクの成分などにより、メーカが変われば大きく変化してしまう可能性がある。したがって、このようなグロスは、判定処理部31dにおける判定を行う際に、除去されていることが好ましい。そこで、グロス分析処理部31cにより所定のインクの領域から求められたグロスによる濃度値を、判定用レベル算出部311で算出された判定用レベル値から差し引く補正を行うことが好ましい例である。この場合、比較対象のマスターデータも、グロスを差し引いたデータ、またはグロスを差し引いて比較することが好ましい。
【0041】
マスターデータは、合格品の画像を分析したものであったり、印刷前からあらかじめ入手されている基準とする印刷物を読み取った画像を分析したものでもよいし、同じく印刷前からあらかじめ入手されている基準とするデザインデータ(DTP(Desk Top Publishing)やCTP(Computer To Plate)で作成されたデジタルデータ)から算出される値であってもよい。
【0042】
以下、図6に基づき、処理手順を具体例とともに示す。
【0043】
まず、画像取得処理部31aが、ワーク9の動作と連動して、撮像手段11および照明手段12A,12Bを動作させ、明視野画像および暗視野画像を取得し、画像記憶部32aに記憶する(S101)。
【0044】
次に、濃度レベル分析処理部31bが、明視野画像および暗視野画像の各画像について、濃度値を求め、濃度レベル記憶部32bに記憶する(S102)。具体的には、表1~表3に示すように、RGBの各成分の濃度値を求める(S102)。
【0045】
次に、グロス分析処理部31cが、濃度レベル分析処理部31bによって、黒色インクや白色インクなどの光非透過性のインクによる単色領域のRGBの各成分の濃度値に基づき、グロスによる濃度値を算出し、グロス濃度記憶部32cに記憶する(S103)。たとえば表1、表2の結果の場合、グロスによる濃度値としては、Rレベル:27.5、Gレベル:27.5、Bレベル:26など、平均的な値を算出することができる。
【0046】
次に、判定用レベル算出部311が、明視野画像/暗視野画像の各画像のRGB成分濃度レベルに基づいて、良否判定に用いる値を算出する。具体的には、明視野画像のRGB成分値、および暗視野画像のRGB成分値を、R/G/Bごとに合算し、これを判定用レベル値とするか(表1の例では、Rレベル:48、Gレベル:45、Bレベル:40、表2の例では、Rレベル:227、Gレベル:226、Bレベル:228、表3の例では、Rレベル:207、Gレベル:159、Bレベル:79)、あるいは、当該合算値から上記グロスによる濃度値を差し引いた値を判定用レベル値として(表1の例では、Rレベル:20.5、Gレベル:17.5、Bレベル:14、表2の例では、Rレベル:199.5、Gレベル:198.5、Bレベル:202、表3の例では、Rレベル:179.5、Gレベル:131.5、Bレベル:53)、判定用レベル値記憶部32dに記憶する(S104)。
【0047】
次に、比較判定部312が、算出された上記判定用レベル値とマスターデータの対応値とを比較して良否判定する(S105)。そして、判定結果送信部313が、判定結果を記憶手段32の判定結果記憶部32eに記憶するとともに、印刷機制御部51などに適宜フィードバックする(S106)。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 品質検査装置
4 サーバ
5 印刷機
9 ワーク
11、11A、11B 撮像手段
12、12A、12B 照明手段
13 制御装置
14 ワーク制御部
31 処理装置
31a 画像取得処理部
31b 濃度レベル分析処理部
31c グロス分析処理部
31d 判定処理部
32 記憶手段
32a 画像記憶部
32b 濃度レベル記憶部
32c グロス濃度記憶部
32d 判定用レベル値記憶部
32e 判定結果記憶部
32f マスターデータ記憶部
51 印刷機制御部
91 印刷面
110 撮像面
310 照明切替制御部
311 判定用レベル算出部
312 比較判定部
313 判定結果送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6