(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132665
(43)【公開日】2022-09-09
(54)【発明の名称】架橋発泡用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20220902BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220902BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20220902BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20220902BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20220902BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20220902BHJP
【FI】
C08J9/06 CER
C08J9/06 CEZ
B29C44/00 C
B29C44/36
A43B13/04 A
B29K101:12
B29K105:04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028438
(22)【出願日】2021-02-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹森 哲弥
【テーマコード(参考)】
4F050
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BA40
4F050HA58
4F050HA60
4F050HA63
4F050HA64
4F050HA73
4F050HA87
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4F074AA17
4F074AA22
4F074AA71B
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4F214AA03
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4F214AH67
4F214AR15
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4F214UB01
4F214UC02
4F214UF01
4F214UF02
4F214UG27
(57)【要約】
【課題】従来の架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、耐熱性に優れる架橋発泡体を得ることができる架橋発泡用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
架橋発泡用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と架橋剤と発泡剤とを含有する架橋発泡用樹脂組成物であって、脂肪酸と脂肪酸エステルとをさらに含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と架橋剤と発泡剤とを含有する架橋発泡用樹脂組成物であって、
脂肪酸と脂肪酸エステルとをさらに含有することを特徴とする架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、及びスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂100質量部に対する前記脂肪酸と前記脂肪酸エステルの含有量の合計が0.5~4.0質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸の含有量が0.25~1.0質量%であることを特徴とする請求項3に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸エステルの含有量が0.25~3.0質量%であることを特徴とする請求項3に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸が、ステアリン酸、ラウリン酸、及びミリスチン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項7】
前記脂肪酸エステルが、多価アルコール脂肪酸エステル及び高級脂肪酸エステルの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
【請求項8】
前記請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の架橋発泡用樹脂組成物により形成された架橋発泡体。
【請求項9】
比重が0.6g/cm3以下であることを特徴とする請求項8に記載の架橋発泡体。
【請求項10】
シューズのミッドソール用であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の架橋発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底に使用される架橋発泡体を形成するため架橋発泡用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツシューズ等のシューズにおいては、歩行感や着用感を向上させて疲労を軽減し、怪我等の発生を防止するために、シューズの中間部(ミッドソール又は中敷)に発泡体を装着することが行われている。
【0003】
このような発泡体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体および/またはポリエチレンと、エチレン・ブテン共重合体とを主成分とするポリマーを用いた靴底用の架橋発泡体が提案されている。そして、このようなポリマーを使用することにより、軽量で衝撃緩衝性に優れ、高い反発性および引張強度に優れた架橋発泡体を得ることができると記載されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、スチレン系熱可塑性エラストマー等のポリマーにより形成された架橋発泡体であって、パルスNMR(23℃)におけるスピン-スピン緩和時間が所定の条件を満たすとともに、動的粘弾性測定において、周波数1Hz、ひずみ0.025%、昇温速度2℃/minの条件下で測定された複素弾性率が所定の条件を満たす架橋発泡体が提案されている。そして、このような構成により、低比重で耐熱性に優れた架橋発泡体を提供することができると記載されている、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-206406号公報
【特許文献2】特許5719980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、スポーツシューズ等は、常温のみならず、高温で使用する場合が想定されるため、耐熱性が要求されるが、上記従来の架橋発泡体においては、耐熱性を向上させるために、ポリマーの組成や配合量等を調整すると、発泡倍率、反発弾性率などに関して所望の物性値が得られなくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、従来の架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、耐熱性に優れる架橋発泡体を得ることができる架橋発泡用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の架橋発泡用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と架橋剤と発泡剤とを含有する架橋発泡用樹脂組成物であって、脂肪酸と脂肪酸エステルとをさらに含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、耐熱性に優れる架橋発泡体を得ることができる架橋発泡用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
本発明の架橋発泡用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と脂肪酸と脂肪酸エステルと架橋剤と発泡剤とを含有するものであり、本発明の架橋発泡用樹脂組成物を架橋及び発泡させた靴底用の発泡体である架橋発泡体を形成するためのものである。
【0012】
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)(スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)等)を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
このうち、架橋発泡体の強度及び反発弾性を適度な範囲に調整しやすいとの観点から、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)及びポリアミド(PA)からなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。
【0014】
また、架橋発泡用樹脂組成物の全体に対する熱可塑性樹脂の含有量は、架橋発泡用樹脂組成物の全体に対して50質量%~99質量%が好ましく、70質量%~97質量%がより好ましい。これは、含有量が50質量%未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物以外の成分が多くなるため粘度が高くなりやすく、発泡不良が生じやすいという不都合が生じる場合があるためであり、99質量%よりも大きい場合は、発泡剤不足による発泡不良が生じやすいという不都合が生じる場合があるためである。
【0015】
<脂肪酸>
本発明の脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、及びミリスチン酸が使用され、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
そして、これらの脂肪酸を使用することにより、架橋剤のイオン分解を生じさせることができ、それにより過剰な架橋反応を抑制できるため、本発明の架橋発泡用樹脂組成物により形成された架橋発泡体の耐熱性を向上させることができる。
【0017】
<脂肪酸エステル>
本発明の脂肪酸エステルとしては、多価アルコール脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸エステルが使用され、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、エスアンドエスジャパン社製のストラクトールWB222等の市販品が挙げられる。また、高級脂肪酸エステルとしては、例えば、エスアンドエスジャパン社製のストラクトールWB212等の市販品が挙げられる。
【0019】
そして、これらの脂肪酸エステルを使用することにより、脂肪酸エステルが過酸化物に化学吸着し、過剰な架橋反応を抑制することができるため、本発明の架橋発泡用樹脂組成物により形成された架橋発泡体の耐熱性を向上させることができる。
【0020】
ここで、本発明の架橋発泡用樹脂組成物においては、従来の架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、耐熱性に優れる架橋発泡体を得るとの観点から、熱可塑性樹脂と架橋剤と発泡剤とを含有する架橋発泡用樹脂組成物において、上述の脂肪酸と脂肪酸エステルとを併用する点に特徴がある。
【0021】
より具体的には、架橋発泡用樹脂組成物において、上述のごとく、脂肪酸を使用することにより耐熱性が向上するが、脂肪酸の含有量が多いと、後述の比較例のごとく、発泡倍率の変化率が大きくなるため、所望の発泡倍率を満たすために架橋剤、発泡剤などの量を調製しなければならず、それにより、熱収縮・引張伸びなどの機械物性に影響が生じるという不都合が生じてしまう。
【0022】
また、同様に、架橋発泡用樹脂組成物において、上述のごとく、脂肪酸エステルを使用することにより耐熱性が向上するが、脂肪酸エステルの含有量が多いと、後述の比較例のごとく、反発弾性率の変化率が過剰に大きくなるという不都合が生じてしまう。
【0023】
そこで、本発明者等は、この点に着目して、熱可塑性樹脂と架橋剤と発泡剤とを含有する架橋発泡用樹脂組成物において、架橋反応を抑制するメカニズムが異なる上述の脂肪酸と脂肪酸エステルとを併用することにより、従来の架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、耐熱性に優れる架橋発泡体を得ることができることを見出した。
【0024】
また、従来の架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、耐熱性に優れる架橋発泡体を確実に得るとの観点から、脂肪酸と脂肪酸エステルの含有量の合計は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5質量%~4.0質量%が好ましい。
【0025】
また、脂肪酸と脂肪酸エステルとを併用する場合、脂肪酸の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.25質量%~1.0質量%が好ましく、脂肪酸エステルの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.25~3.0質量%であることが好ましい。
【0026】
<架橋剤>
架橋剤としては、特に限定する必要はなく、架橋発泡用樹脂組成物用の架橋剤として一般的な硫黄、過酸化物架橋を促進させる有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、架橋発泡用樹脂組成物における架橋剤の含有量は、架橋発泡用樹脂組成物の全体に対して0.1質量%~3.0質量%が好ましく、0.3質量%~1.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%未満の場合は、架橋反応が不十分のため発泡不良が生じ、反発弾性が低下するという不都合が生じる場合があり、また、3.0質量%よりも大きい場合は、過剰に架橋が進むため十分に発泡しない場合があるためである。
【0028】
<発泡剤>
発泡剤としては、加熱により、架橋発泡用樹脂組成物を発泡させるのに必要なガスを発生させるものであれば特に限定されない。より具体的には、例えば、N,N‘ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン(OBSH)等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、架橋発泡用樹脂組成物における発泡剤の含有量は、架橋発泡用樹脂組成物の全体に対して1.0質量%~15質量%が好ましく、1.5質量%~10質量%がより好ましい。これは、1.0質量%未満の場合は、安定して発泡させることができないという不都合が生じる場合があり、また、15質量%よりも大きい場合は、過発泡に起因して表面や内部の発泡セル径がばらつくという不都合が生じる場合があるためである。
【0030】
また、本発明の架橋発泡用樹脂組成物に、架橋助剤、発泡助剤等を添加し、所定の条件下で架橋発泡させることにより、架橋発泡体を得ることができる。
【0031】
<架橋助剤>
架橋助剤としては、特に限定する必要がなく、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリシクロデカンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
また、架橋発泡用樹脂組成物における架橋助剤の含有量は、架橋発泡用樹脂組成物の全体に対して0.01質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~1質量%がより好ましい。これは、0.01質量%未満の場合は、架橋が十分に進行せず反発弾性が低下するという不都合が生じる場合があるためであり、また、5質量%よりも大きい場合は、架橋発泡用樹脂組成物の比重が大きくなるため、製品の軽量化が困難になる場合があるためである。
【0033】
<発泡助剤>
発泡助剤としては、特に限定する必要がなく、例えば、尿素化合物や酸化亜鉛などの亜鉛化合物等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、架橋発泡用樹脂組成物における発泡助剤の含有量は、架橋発泡用樹脂組成物の全体に対して0.1質量%~10質量%が好ましく、0.5質量%~8.5質量%がより好ましい。なお、発泡助剤は発泡剤と等量入れるのが標準であり、発泡剤よりも発泡助剤の添加量が少ない場合、ホルムアルデヒド等が発生する発泡剤もあるため、発泡剤の添加量に応じて適宜調整が必要である。
【0035】
次に、本発明の架橋発泡用樹脂組成物を用いた架橋発泡体の製造方法について説明する。本発明の架橋発泡体の製造方法は、架橋発泡用樹脂組成物を作製する混練工程と、架橋発泡用樹脂組成物を発泡させるとともに所望の形状に成形する発泡成形工程とを備える。
【0036】
(混練工程)
まず、基材である熱可塑性樹脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、架橋剤および発泡剤等の各原料を混練機に投入し、これらの原料を混練することにより、架橋発泡用樹脂組成物を作製する。
【0037】
ここで、混練機としては、ミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いることができる。
【0038】
そして、例えば、所定温度に設定したロール(例えば、表面温度が100~120℃)に、熱可塑性樹脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、架橋助剤、架橋剤、発泡助剤、及び発泡剤をこの順序で投入して混練した後、シーティングやペレタイジング等の予備成形を行う。
【0039】
また、複数の混練機を使用して段階的に実施してもよい。例えば、熱可塑性樹脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び発泡助剤をニーダーに投入して混練した後、混練後の組成物をロールに移動させるとともに、ロール内に架橋剤や発泡剤を投入して混練した後、シーティングやペレタイジング等の予備成形を行う。
【0040】
(発泡成形工程)
次に、混練工程により得られた架橋発泡用樹脂組成物を金型に充填して、加熱処理を行うことにより、発泡剤による発泡を進行させた後、成形処理、及び離型処理を行うことにより、所望の形状を有する架橋発泡用樹脂組成物を作製する。
【0041】
なお、加熱処理における加熱温度は、発泡剤及び発泡助剤の種類により異なるが、使用する発泡剤の分解温度以上の温度(例えば、120~180℃)で加熱処理を行う。また、架橋発泡用樹脂組成物を金型に充填し、加圧した状態で加熱処理を行ってもよく、常圧加熱して、発泡剤の分解を進行させてもよい。
【0042】
以上のようにして、本発明の架橋発泡体を製造することができる。
【0043】
なお、シューズに使用するとの観点から、本発明の架橋発泡体の比重は、0.6g/cm3以下が好ましく、特に、シューズのミッドソールに使用する場合は、0.4g/cm3以下が好ましい。
【実施例0044】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0045】
(実施例1~15及び比較例1~10)
<架橋発泡体の製造>
表1~2に示す組成(数字は、各成分の質量部を示す)を有する実施例1~15、及び比較例1~10の架橋発泡体を、下記の製造方法により製造した。
【0046】
(混練工程)
まず、表1~2に示す熱可塑性樹脂、発泡助剤2(酸化亜鉛)、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び架橋助剤を、160℃に設定されたニーダーに投入し、8~12分間、各原料を混練した。次に、混練後の組成物を10インチオープンロール(温度:100~120℃)に投入した後、表1~2に示す架橋剤、発泡助剤1、及び発泡剤を添加し、10分間、原料を混練することにより、架橋発泡用樹脂組成物を作製した。
【0047】
(発泡成形工程)
まず、作製した架橋発泡用樹脂組成物240gを、金型(縦:175mm、横:145mm、高さ:10mm)に充填し、165℃、20MPaの条件下で、内部まで均一に発泡するまでプレス成形を行い、1次発泡体を得た。次に、1次発泡体を縦200mm×横124mm×高さ16mmに切り出し、切り出した1次発泡体の高さが10mmになるように165℃で圧縮を開始し、直ちに冷却を開始した。そして、圧縮状態を維持したまま、常温(23℃)になるまで冷却プレスをすることにより、2次発泡体を得た。そして、この2次発泡体を実施例1~15、及び比較例1~10の架橋発泡体とした。
【0048】
<比重の測定>
作製した架橋発泡体の比重を、JIS K 7311(水中置換法)に準拠して測定した。より具体的には、発泡体サンプル(縦:20±1mm、横:15±1mm、厚さ:10±1mm)を準備し、電子比重計(ALFA MIRAGE CO,LTD製、商品名:MDS-300)を用いて、測定温度が20±3℃の条件下で、下記の式(1)により、各発泡体サンプルの比重[g/cm3]を算出した。以上の結果を表1~2に示す。
【0049】
[数1]
D[g/cm3]=W1/(W1-W2) (1)
なお、式中、Dは比重、W1は空気中での重量、及びW2は水中での重量を示す。
【0050】
<発泡倍率の測定>
キャビティ内に100mmの間隔で印をつけた金型を使用し、成形直後の寸法(100mm)に対する1日経過後の寸法の百分率を発泡倍率とした。
【0051】
また、下記式(2)により、基準となる比較例1(脂肪酸と脂肪酸エステルを含まない架橋発泡体)の発泡倍率に対する各実施例1~14、及び各比較例2~9の発泡倍率の変化率[%]を算出した。また、実施例15については、下記式(3)により、基準となる比較例10(脂肪酸と脂肪酸エステルを含まない架橋発泡体)の発泡倍率に対する変化率[%]を算出した。以上の結果を表1~2に示す。
【0052】
なお、発泡倍率を維持するとの観点から、発泡倍率の変化率の絶対値が0.5%以下のものを〇、0.5%よりも大きいものを×とした。以上の結果を表1~2に示す。
【0053】
[数2]
発泡倍率の変化率[%]=(((比較例1の発泡倍率)-(各実施例1~14または各比較例2~9の発泡倍率))/(比較例1の発泡倍率))×100 (2)
[数3]
発泡倍率の変化率[%]=(((比較例10の発泡倍率)-(実施例15の発泡倍率))/(比較例10の発泡倍率))×100 (3)
【0054】
<反発弾性率の測定>
作製した架橋発泡体の反発弾性率を、ASTM-D2632法に準拠して測定した。より具体的には、発泡体サンプル(厚さ:10±1mm)を準備し、GOTECH製VERTICAL REBOUND RESILIENCE TESTER_GT-7042-Vを用いて、23℃の条件下で金属プランジャーを5秒ごとに7回落下させ、後半5回における、反発後の金属プランジャーの静止時点(反発高さ)での指針[%]を読み取り、読み取った値の平均値を反発弾性率[%]とした。また、下記式(4)により、基準となる比較例1(脂肪酸と脂肪酸エステルを含まない架橋発泡体)の反発弾性率に対する各実施例1~14、及び各比較例2~9の反発弾性率の変化率[%]を算出した。また、実施例15については、下記式(5)により、基準となる比較例10(脂肪酸と脂肪酸エステルを含まない架橋発泡体)の反発弾性率に対する変化率[%]を算出した。
【0055】
なお、反発弾性率を維持するとの観点から、反発弾性率の変化率の絶対値が5.4%以下のものを〇、5.4%よりも大きいものを×とした。以上の結果を表1~2に示す。
【0056】
[数4]
反発弾性率の変化率[%]=(((比較例1の反発弾性率)-(各実施例1~14または各比較例2~9の反発弾性率))/(比較例1の反発弾性率))×100 (4)
[数5]
反発弾性率の変化率[%]=(((比較例10の反発弾性率)-(実施例15の反発弾性率))/(比較例10の反発弾性率))×100 (5)
【0057】
<耐熱収縮率の測定>
まず、200mm×124mm×10mmの試験片を用意し、この試験片の長辺から内側10mmの位置に長辺と平行な直線を引き、この直線に150mm間隔で点を打った。次に、この試験片を70℃の恒温槽に2時間静置した後、試験片を23度の恒温槽に1時間静置した。次に、試験片に打った点の間隔が150mmから何mmに縮んだか(すなわち、収縮量)を測定し、初期の間隔に対する収縮量の百分率を熱収縮率[%]とした。
【0058】
また、下記式(6)により、基準となる比較例1(脂肪酸と脂肪酸エステルを含まない架橋発泡体)の耐熱収縮率に対する各実施例1~14、及び各比較例2~9の耐熱収縮率の改善率[%]を算出した。また、実施例15については、下記式(7)により、基準となる比較例10(脂肪酸と脂肪酸エステルを含まない架橋発泡体)の耐熱収縮率に対する改善率[%]を算出した。
【0059】
なお、脂肪酸を含有(含有量:0.55質量%)するが、脂肪酸エステルを含有していない比較例7における耐熱収縮率の改善率が41%であるため、実施例1~15においては、脂肪酸と脂肪酸エステルとを併用することにより、耐熱収縮率の改善率が41%よりも向上している場合を、架橋発泡体の耐熱性が向上しているものと判断し、耐熱収縮率の改善率が42%以上のものを〇、42%未満のものを×とした。以上の結果を表1~2に示す。
【0060】
[数6]
耐熱収縮率の改善率[%]=(((比較例1の耐熱収縮率)-(各実施例1~14または各比較例2~9の耐熱収縮率))/(比較例1の耐熱収縮率))×100 (6)
[数7]
耐熱収縮率の改善率[%]=(((比較例10の耐熱収縮率)-(実施例15の耐熱収縮率))/(比較例10の耐熱収縮率))×100 (7)
【0061】
【0062】
【0063】
架橋発泡体の作製に使用した材料を以下に示す。
【0064】
(1)熱可塑性樹脂1:TAFMER DF-810(α-オレフィンコポリマー、MFR(190℃):1.2g/10min、密度:0.885g/cm3、融点:66℃、三井化学(株)製)
(2)熱可塑性樹脂2:INFUSE 9530(α-オレフィンブロックコポリマー、MFR(190℃):5.0g/10min、密度:0.887g/cm3、融点:119℃、DOW Chemical社製)
(3)熱可塑性樹脂3:UE659(エチレン酢酸ビニルコポリマー、MRF(190℃):2.0g/10min、密度:0.947g/cm3、融点:77℃、VA量:25%、EVATHENE社製)
(4)熱可塑性樹脂4:PEBAX 3533 SP01(ポリエーテルブロックアミド、MFR(235℃、1kg):8g/10min、密度:1.00g/cm3、融点:144℃、Arkema社製)
(5)熱可塑性樹脂5:TUFTEC P1083P(スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンの部分水添ブロックコポリマー、MFR(190℃):3.0g/10min、密度:0.89g/cm3、旭化成(株)製)
(6)脂肪酸1:ビーズステアリン酸つばき(ステアリン酸、日油(株)製)
(7)脂肪酸2:NA-142(ラウリン酸、日油(株)製)
(8)脂肪酸3:NA-122(ミリスチン酸、日油(株)製)
(9)脂肪酸エステル1:ストラクトール WB222(多価アルコール脂肪酸エステル、エスアンドエスジャパン(株)製)
(10)脂肪酸エステル2:ストラクトール WB212(高級脂肪酸エステル、エスアンドエスジャパン(株)製)
(11)架橋助剤:TAC/GR70(トリアリルイソシアヌレート、KETTLITZ社製)
(12)架橋剤:パークミルD(ジクミルパーオキサイド、日油(株)製)
(13)発泡剤:セルラーD(N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、永和化成工業(株)製)
(14)発泡助剤1:セルペースト101(尿素、永和化成工業(株)製)
(15)発泡助剤2:活性亜鉛華AZO(酸化亜鉛、正同化学工業(株)製)
【0065】
表1に示すように、実施例1~14の架橋発泡用樹脂組成物においては、脂肪酸と脂肪酸エステルを含有するため、脂肪酸と脂肪酸エステルを含有していない比較例1の架橋発泡用樹脂組成物により形成された架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、架橋発泡体の耐熱性を向上させることができることが分かる。
【0066】
また、熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂1のみを使用した実施例15においても、実施例1~14と同様に、脂肪酸と脂肪酸エステルを含有していない比較例10の架橋発泡用樹脂組成物により形成された架橋発泡体と同等の発泡倍率、及び反発弾性率を維持した状態で、架橋発泡体の耐熱性を向上させることができることが分かる。
【0067】
一方、比較例2~4においては、脂肪酸エステルを含有するが、脂肪酸を含有しておらず、さらに脂肪酸エステルの含有量が少ない(熱可塑性樹脂100質量部に対して3質量部未満である)ため、耐熱収縮改善率が低いことが分かる。
【0068】
また、比較例5においては、脂肪酸エステルを含有するが、脂肪酸を含有しておらず、さらに脂肪酸エステルの含有量が多い(熱可塑性樹脂100質量部に対して3質量部以上である)ため、反発性に乏しいことが分かる。
【0069】
また、比較例6~7においては、脂肪酸を含有するが、脂肪酸エステルを含有しておらず、さらに脂肪酸の含有量が少ない(熱可塑性樹脂100質量部に対して1質量部未満である)ため、耐熱収縮改善率が低いことが分かる。
【0070】
また、比較例8~9においては、脂肪酸を含有するが、脂肪酸エステルを含有しておらず、さらに脂肪酸の含有量が多い(熱可塑性樹脂100質量部に対して1質量部以上である)ため、発泡倍率変化率が大きいことが分かる。
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、及びスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の架橋発泡用樹脂組成物。
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、及びスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の架橋発泡用樹脂組成物。