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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132690
(43)【公開日】2022-09-09
(54)【発明の名称】スクリーンマスク及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/24 20060101AFI20220902BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B41N1/24
B41F15/08 303E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113200
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2020197344の分割
【原出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000176534
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】松本 華奈
(72)【発明者】
【氏名】坪井 恵
(72)【発明者】
【氏名】飯島 芙早子
(72)【発明者】
【氏名】青木 希仁
(72)【発明者】
【氏名】旭 晃一
(57)【要約】
【課題】印刷形状を高精度で容易に形成できるスクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】一形態にかかるスクリーンマスクの製造方法は、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に設けられ、塗布材を保有可能なパターン開口が形成されたマスク膜と、を備え、前記マスク膜の厚さ方向の寸法が部位によって異なり、前記パターン開口の深さ方向の寸法が部位によって異なる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に設けられ、塗布材を保持可能なパターン開口が形成されたマスク膜と、を備え、
前記マスク膜の厚さ方向の寸法が部位によって異なり、前記パターン開口の深さ方向の寸法が部位によって異なる、スクリーンマスク。
【請求項2】
前記パターン開口の少なくとも一部のエッジが印刷面側に突出する突起を有する、請求項1記載のスクリーンマスク。
【請求項3】
請求項1に記載のスクリーンマスクの前記マスク膜に、塗布材を保持させ、前記マスク膜の前記パターン開口から、前記マスク膜の印刷面側に対向配置された印刷媒体に、前記塗布材を塗布して異なる塗布厚さの部位を有する3次元立体パターンを形成する、印刷物の製造方法。
【請求項4】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に設けられ、パターン開口が形成されたマスク膜と、を備え、
前記マスク膜は、印刷面側の開口のエッジ部分において、前記印刷面側に突出する凸部を有し、
前記マスク膜は、前記凸部の前記印刷面側の表面の粗さが、前記凸部の周囲における表面の粗さよりも粗く構成された、スクリーンマスク。
【請求項5】
前記マスク膜の前記凸部の前記印刷面側の表面の粗さRaが、0.5~5umである、請求項4に記載のスクリーンマスク。
【請求項6】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に設けられ、パターン開口が形成されたマスク膜と、を備え、
前記マスク膜は、印刷面とは反対側の開口のエッジ部分において、前記印刷面とは反対側に突出する凸部を有する、スクリーンマスク。
【請求項7】
請求項1,2,4乃至6のいずれかに記載のスクリーンマスクに塗布材を保持させた状態で、印刷面側とは反対側からスキージによって押圧する、印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記凸部は、少なくともいずれかの部位において他の部位よりも幅寸法が大きく構成された補強部を有する、請求項4乃至6のいずれかに記載のスクリーンマスク。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンマスク及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷手法の一つであるスクリーン印刷は、サポート材であるメッシュ上に樹脂組成物で形成された所定のパターン開口が形成されたスクリーンマスクを用い、被印刷物に任意の印刷体を形成する方法である。このスクリーン印刷法は、例えば配線、電極、蛍光材料の印刷等、種々の印刷に用いられ、電子部品等を含む様々な分野で利用されている。
【0003】
近年、電子部品の小型化、高品質化により、スクリーンマスクの高精度化が求められている。
【0004】
例えば、スクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するメッシュと、メッシュに設けられパターン開口を有するマスク膜と、を備える。マスク膜に形成されるパターン開口は、例えば印刷パターンに対応した形状であり、所定の幅を有している。例えばマスク膜を形成する乳剤をメッシュに塗布した後に、露光処理によってパターン開口を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-169783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなスクリーンマスクにおいて、印刷形状を高精度で容易に形成できるスクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一形態にかかるスクリーンマスクの製造方法は、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に設けられ、塗布材を保有可能なパターン開口が形成されたマスク膜と、を備え、前記マスク膜の厚さ方向の寸法が部位によって異なり、前記パターン開口の深さ方向の寸法が部位によって異なる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、印刷形状を高精度で容易に形成できるスクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図。
図2】同実施形態にかかるスクリーンマスクの斜視図。
図3】同スクリーンマスクの断面図。
図4】同スクリーンマスクの一部の構成を示す平面図。
図5】同スクリーンマスクの一部の構成を示す斜視図。
図6】同スクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
図7】同スクリーンマスクの凸部の寸法を示す説明図。
図8】同スクリーンマスクと比較例の形状と印刷形状を示す説明図。
図9】スクリーンマスクの変形例を示す説明図。
図10】スクリーンマスクの変形例を示す説明図。
図11】第2実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図。
図12】同スクリーンマスクの一部の構成を示す説明図。
図13】同スクリーンマスクと比較例にかかるスクリーンマスクの構成と印刷形状を示す説明図。
図14】同スクリーンマスクの粗さの説明図。
図15】同スクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
図16】第3実施形態にかかるスクリーンマスクの一部の構成を示す説明図。
図17】同スクリーンマスクと比較例にかかるスクリーンマスクの構成と印刷形状を示す説明図。
図18】同スクリーンマスクの凸部の寸法を示す説明図。
図19】同スクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
図20】他の実施形態にかかるスクリーンマスクのマスク膜の形状を示す説明図。
図21】他の実施形態にかかるスクリーンマスクのマスク膜の形状を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク20について図1乃至図8を参照して説明する。図1は本実施形態に係るスクリーン印刷装置10を示す説明図である。図2はスクリーンマスク20の斜視図であり、図3はスクリーンマスク20の一部の断面図である。図4はスクリーンマスク20の一部の構成を示す平面図、図5は斜視図である。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク20と、スクリーンマスク20の印刷面側である表面(一方の面)20aに対向して印刷媒体Baを保持する保持部材12と、スクリーンマスク20の印刷面側とは反対の裏面(他方の面)20bに当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動部と、スクリーンマスク20を印刷媒体Baに対向して支持する支持部と、を備える。
【0012】
スクリーン印刷装置10は、印刷媒体Baの表面に、各種印刷材料を所定のパターンで形成する。例えばスクリーン印刷装置10は、チップ部品(コンデンサー、チップ抵抗、インダクター、サーミスター等)、タッチパネル、液晶基板(Liquid crystal display, LCD)シール、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)基板、太陽電池用電極、その他の電子部品等の製造に用いられる。
【0013】
図1及び図2に示すように、スクリーンマスク20は、フレーム21と、フレーム21に張設されたサポート材であるメッシュ22と、メッシュ22に形成されたマスク膜23と、を備える。スクリーンマスク20において、印刷を行う際に印刷媒体Baの表面に対向する側を表面20aとし、その反対側であって塗布材Peが供給される側を裏面20bとする。
【0014】
フレーム21は、互いに平行な2対の縁部を有し、例えば所望のサイズの方形の開口を備える枠状に構成される。フレーム21はメッシュ22の外周縁を支持し、開口にメッシュ22を張設する。本実施形態では一例として、フレーム21の開口部のY方向の寸法は275mm、X方向の寸法は275mm、とした。
【0015】
またフレーム21は、所定量の塗布材Peをマスク膜23の裏面側に保持する枠としても機能する。フレーム21とメッシュ22は、例えば合成ゴム系やシアノアクリレート系の接着剤により接合部で接合されている。
【0016】
メッシュ22は、経糸22aと緯糸22bとが編まれて形成された織物であり、塗布材Peを透過可能に開口した孔部22cを多数有している。経糸22aと緯糸22bは、例えばステンレス等の金属のワイヤ、あるいはポリエステル等の樹脂で構成された繊維である。経糸22aと緯糸22bは、それぞれ例えばスキージ13の移動方向(第1方向)に対して、斜めに延びている。
【0017】
このメッシュ22に、所定のパターン開口23aを有するマスク膜23が形成される。すなわち、メッシュ22によって、フレーム21の開口部分にマスク膜23が保持される。
【0018】
マスク膜23は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。例えば図6に示すように、マスク膜23はベース層23bとカバー層23cが積層されて構成される2層構造である。一例として、カバー層23cはベース層23bよりも柔軟な材料で構成されている。
【0019】
マスク膜23の厚みは例えば10μm~100μmに構成されている。
【0020】
マスク膜23は、メッシュ22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜23には、露光によって、印刷用の所定のパターン開口23aが形成されている。
【0021】
なお、パターン開口23aの最小開口幅、すなわち、パターン開口23aの最も狭い部分における開口の幅寸法は、30μm以下である。ここでは、一例として、マスク膜23の表面、すなわち印刷媒体Baに対向する表面20aにおける寸法を基準とした。
【0022】
パターン開口23aは、印刷パターンに対応する形状のパターン孔であってマスク膜23を厚さ方向(深さ方向)に貫通するスリットを構成する。パターン開口23aは塗布材を保持可能に構成される。印刷パターンの形状は適宜設定可能である。一例として、本実施形態においては複数の同じパターンユニットがマトリクス状に配されたパターン形状とし、各パターンユニットにおいて、は塗布材を厚く印刷する第1パターン部と、薄く印刷する第2パターン部とを含む立体的な印刷パターン形状である。
【0023】
パターン開口23aは、部位によって深さ寸法が異なる。例えばパターン開口23aは、複数の独立した開口を有してもよいし、連続する開口において部位によって厚さが異なるものでもよい。例えば連続するライン状のパターン開口23aにおいて、一部の塗布厚さを増減させてもよいし、異なる塗布厚さの複数のパターン開口23aが形成されていてもよい。例えばパターン開口23aは例えばスリット状のラインパターンや、角形状、円形状、の開口部等種々の形状に設定可能である。
【0024】
マスク膜23は、パターン開口23aにおいて感光性樹脂が存在せず、メッシュ22の孔部を通過して塗布材Peが裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜23のパターン開口23a以外であってメッシュ22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材Peとしてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0025】
本実施形態において、マスク膜23は、部位によって厚さ寸法が異なる。例えば本実施形態においてはマスク膜23の印刷面において、所定の領域が印刷面側に突出する凸部23dを有している。例えばマスク膜23に所定のパターン形状で形成されたパターン開口23aのうち第1の開口部のエッジ部分に、凸部23dが形成され、この凸部23dの有無によってパターン開口23aの深さが規定されている。
【0026】
具体的には、本実施形態において、パターン開口23aのいずれかの領域において、印刷面側の開口のエッジ(縁部分)に印刷面側に突出する凸部23dが形成される。パターン開口23aのうち、凸部23dが形成された領域は凸部23dがない領域と比べて、開口の深さが深く構成されている。つまり、他の部位のパターン開口23aよりも深さが深く、塗布材料の保持量が多くなる。すなわちマスク膜23は、パターン開口23aの部位によって保有する塗布材の量を異ならせ、塗布厚さが部位によって異なる3次元の立体的なパターンにて、塗布材を塗布できるように、塗布材料の保持量を調整可能に構成されている。
【0027】
なお、マスク膜23はベース層23bとカバー層23cの2層構造で構成され、マスク膜23のうち、凸部23dと凸部23dに繋がるパターン開口23aの内壁面の表層部は、カバー層23cで構成されている。
【0028】
図7に示すように、印刷面における凸部23dの厚さ方向の寸法Tは2μm以上であることが好ましい。また、Tは50μm以下であることが好ましい。一方で、隣接するパターン開口23aの距離Lが1mmより大きい場合には、50μmより大きい場合にも良好な印刷形状が得られる。したがって、Lが1mm以上であり、かつ、Tが50μmより大きくすることも好適である。凸部23dの幅寸法Wは例えば20um~100umであることが好ましい。より好ましくは、30um~50um未満である。凸部23dの幅寸法Wは一定としてもよいし、一部が広く、あるいは狭く構成されていてもよい。
【0029】
マスク膜23が形成されたメッシュ22は、例えばスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。マスク膜23のパターン開口23aに塗布材Peが保持された状態で、メッシュ22の弾性変形によりマスク膜23が印刷媒体Baに接離することで、塗布材Peがパターン開口23aから、マスク膜23の印刷面側に対向配置された印刷媒体Baに転写される。
【0030】
スキージ13は例えばウレタンゴム・シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等の材料から、例えば薄い板状に構成される。例えば、スキージ13は先端の厚みが低減するように面取りされている。スキージ13はフレーム21に対して移動可能に構成されている。例えばスキージ13は移動方向と直交する方向においてマスク膜23の領域の全長にわたる長さを有する。スキージ13の先端部分13aがスクリーンマスク20の裏面20bに当接し、表側に押しつけられた状態で、図1中矢印Aに沿う移動方向に移動することで、マスク膜23の全面を押圧し、塗布材Peが予め充填されたパターン開口23aから塗布材Peを表側に押し出す。
【0031】
支持部は、印刷媒体Baに対して所定の間隔を開けて平行に、フレーム21を支持する。移動部は、スキージ13を所定の速度で所定方向に沿って移動させる。
【0032】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク20の製造方法について図6を参照して説明する。図6は、スクリーンマスク20の製造方法を示す説明図である。スクリーンマスク20の製造方法は、第1層形成工程ST1と、第1パターニング工程ST2と、第2層形成工程ST3と、第2パターニング工程ST4と、エッチング工程ST5と、を備える。
【0033】
第1層形成工程ST1において、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤Pm1を塗布して第1の乳剤層を形成する。第1の乳剤Pm1は例えば、光硬化性の樹脂であり、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を包含する液体である。具体的には、まず、フレーム21の枠内にメッシュ22を略平面となるように取り付けた状態で、第1の乳剤Pm1をメッシュ22上に塗布する塗布処理を行うことで、メッシュ22上に、ベース層23bが平板状に形成される。このとき、塗布する回数に応じて厚さが変わるため、必要に応じて複数回塗布を繰り返す。また、乾燥後に膜厚を測定し場合によっては追加で塗布することもある。本実施形態では乾燥後に第1の乳剤層の乳厚5~20μm程度となるように乳剤Pm1の厚さを設定する。
【0034】
次に、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程ST2を行う。例えばST2に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光にて、第1のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の露光パターン領域に、ベース層23bの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤の表面を照らす露光処理を行う。ベース層23bのうち第1の露光処理によって露光される部位である第1露光部位は紫外線によって硬化する第1乳剤硬化部(第1光架橋部)Pa1となる。一方、ベース層23bのうち第1露光部位を除く部位である第1非露光部位は、乳剤が硬化しない未硬化部Pb1となる。第1未硬化部Pb1(第1非露光部位)は、後の工程で除去されることでベース開口を形成する第1除去対象部を構成する。
【0035】
ここで、一例として、第1の露光パターンは、後の工程で積層される第2のパターンとの位置ずれを考慮して、第2の露光パターンにおけるパターン幅よりも広いベース開口を形成するパターンとする。以上によりベース層23bがパターニングされ、後にエッチング工程により除去されてベース開口を構成する第1除去対象部が形成される。なお、これに限らず、変形例1として図9に示すように、第1の露光パターンと第2の露光パターンの開口を同じ大きさとしてもよい。
【0036】
次に、第2層形成工程ST3として、第2の乳剤Pm2をベース層23b上に塗布する塗布処理を行うことで、ベース層23bの印刷面側に第2の乳剤Pm2によりカバー層23cが形成される。このとき、塗布する回数に応じて厚さが変わるため、必要に応じて複数回塗布を繰り返す。また、乾燥後に膜厚を測定し場合によっては追加で塗布することもある。本実施形態では乾燥後にカバー層23cの乳厚が2~50μm程度となるように乳剤Pm2の厚さを設定する。そして、マスクレス露光処理を行う条件下に3時間程度静置をすることにより、枠の温度を1回目のマスクレス露光処理時と同程度とするシーズニング工程を行う。
【0037】
次に、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程ST4を行う。第2パターニング工程ST4において、例えばフォトマスクを用いないマスクレス露光にて、第2のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の第2の露光パターン領域に、乳剤Pm2の表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤Pm2の表面を照らす露光処理を行う。第2の露光処理によって、露光パターン領域の部位に対応して、乳剤Pm2の紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。すなわち、カバー層23cのうち第2の露光処理によって露光される部位である第2露光部位は紫外線によって硬化する第2乳剤硬化部(第2光架橋部)Pa2を形成する。第2乳剤硬化部Pa2の一部は凸部23dを構成し、他の一部はパターン開口23aの内壁を構成する。一方、カバー層23cのうち第2露光部位を除く部位である第2非露光部位は、乳剤が硬化しない第2未硬化部Pb2となる。第2未硬化部Pb2は、後の工程で除去されることでベース開口を含むパターン開口23aを形成する第2除去対象部を含む。
【0038】
第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、第2の露光処理は、第1の露光処理と同方向から、第1の露光処理よりも、幅狭の領域を対象とするパターンで露光することにより、所定範囲を硬化させる。第2パターニング工程において、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光することにより、第1の乳剤層の少なくとも一部と第2の乳剤層の少なくとも一部を含む領域を露光する。すなわち、第1の乳剤層において、第1の露光処理では硬化されなかった第1非露光部位のうち、パターン開口23aの内壁を構成する部位や、第1の露光処理で硬化された第1露光部位の一方側であってパターン開口23aのエッジの凸部23dとなる第2の乳剤層の一部が、第2の露光処理によって硬化する。
【0039】
その後、エッチング処理ST5として、水や溶剤により、マスク膜の少なくとも片側を洗い流す。この処理によって、乳剤Pm1及びPm2の未硬化部Pb1,Pb2が洗い流される厚み方向において表面側から裏面側まで貫通するパターン開口23aが形成されるとともに、パターン開口23aの所定領域のエッジ部に段差となる凸部23dが形成される。
【0040】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物を製造する方法について、図1を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体Baの表面に対向させて配置する。
【0041】
そして、高粘度のペースト状の塗布材Peをスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体Baとは反対側の面から供給し、塗布材Peをパターン開口23a内に充填させる。
【0042】
次に、スクリーンマスク20の裏面20b、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体Baの表側の面に対して所定の角度で傾斜させて配置する。そして、スキージ13をメッシュ22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体Ba側に向けて押しつけながら、所定の速度で移動させる。マスク膜23の裏面全面にわたる領域で、スキージ13がマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体Baに当接する。スキージ13の通過により押圧された塗布材Peがパターン開口23aから印刷媒体Ba側に押し出される。
【0043】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ22が復元するように変形して印刷媒体Baから離れるとともに、一部の塗布材Peが印刷媒体Ba上に転写されて残ることで、印刷媒体Ba上にパターン印刷がなされ、印刷物が完成する。このとき、塗布材Peは裏側の一部がマスク膜23側に残る。なお塗布材Peは、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。塗布材Peの塗布量は、パターン開口23aの深さに応じて調整される。すなわち、パターン開口23aが深く構成された部位23a2においては、塗布高さが高くなり、パターン開口23aが浅く構成された部位23a1において塗布高さは低くなる。したがって、スクリーンマスク20によって厚さの異なる領域を有するパターン形状に印刷でき、3次元の立体的なパターニングが実現できる。
【0044】
以上のように構成されたスクリーンマスク20、スクリーン印刷装置10、及びスクリーン印刷方法によれば、単純な構成で、塗布高さを調整することが可能となる。すなわち、パターン開口23aの深さを調整することで、塗布高さを規定することができる。したがって、塗布材の保有量を調整でき、3次元の立体的なパターンを形成することができる。
例えば高さを高くしたい場所はパターン開口23aの深さを深くすることで塗布量を増やし、塗布膜を薄く形成したい場合にはパターン開口23aの深さを浅くすることで、塗布高さを減らすことができる。
【0045】
図8はスクリーンマスク20を用いた印刷方法と、比較例にかかるスクリーンマスク20A、20B,20C,20Dを用いた印刷方法について、パターン開口の形状と印刷工程と、印刷形状を示す説明図である。比較例として凸部23dがなく、印刷面(P面)側の表面が平面状のスクリーンマスク20A~20Dを示す。例えば図8に示すように凸部23dがなく、パターン開口の深さ寸法が一定に構成されたスクリーンマスクを用いて高さの異なる印刷パターンを形成する場合には、異なる開口パターンを有する複数のスクリーンマスクを用いて複数回に分けて形成して塗布膜を積層する必要がある。例えば、比較例1に示す方法では、厚さの大きい塗布パターンに対応する開口パターンを有するスクリーンマスク20Aと、厚さが小さい塗布パターンに対応する開口パターンを有するスクリーンマスク20Bとを用いて、順番にパターニングすることで、厚さの異なる塗布パターンを形成する。また、比較例2に示す方法では、厚さの小さい塗布パターンに対応するパターン開口を有するスクリーンマスク20Cと、厚さの小さい塗布パターン及び厚さの大きい塗布パターンに対応するパターン開口を有するスクリーンマスク20Dとを用いて、順番にパターニングして厚さの大きいパターンに塗布材を2回積層して形成することで、異なる塗布厚さを有するパターンを形成する。これに対して、上記本実施形態によるスクリーンマスク20によれば、1度で3次元的なパターニングが可能となる。したがって印刷の手順を減らし、コストを低減することができる。さらに、スクリーンマスク20によれば、凸部23dには負荷がかかることで、にじみが防止でき高い印刷精度を確保できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、露光量、露光時間などの条件を異ならせることで凸部23dを有するパターン開口を容易に形成することが可能である。したがって複雑な製造方法や露光装置を用いずに、マスク膜23の形状を立体的に構築することができる。したがって、スクリーンマスクの製造コストを低減することができる。
【0047】
なお、独立した複数のパターンエリアを示したが、連続する開口において、部位によって高さ及び深さを異ならせることも可能である。
【0048】
なお、パターン開口23aの配置は、印刷形状に応じて適宜変更可能であり、高さの設定も設定可能である。図9に変形例2として示すように、マスク膜23に複数配されたパターン開口23aが深く構成された部位23a2の凸部23dが連続して連結凸部23d4を構成してもよいし、図9に変形例3として示すように、凸部23dが開口部位毎に独立して形成されていてもよい。なお、2以上のパターン開口23aにわたって凸部23dが一体に連続して形成される場合には、端部に配されるパターン開口23aのエッジにおける凸部23dの幅寸法Wが20um~5mmであり、より好ましくは30um~1mm未満である。また、上記第1実施形態においてはパターン開口23aの深さが2段階である例を説明したが、図9に変形例4として示すように、パターン開口23aが深く構成された部位23a2よりもさらに厚さが厚くパターン開口23aの深さが深く構成された部位23a3を設け、3段以上の深さに造り分けてもよい。また、図9に変形例5として示すように、パターン開口23aが深く構成された部位23a2に加え、浅く構成された部位23a1のエッジにも、突起23d2を設けてもよい。
【0049】
また、図10に変形例6として示すように、印刷対象物Baにチップ等の電子部品や電極等の突起部Ba2が形成されていてもよい。この場合には、チップ等の突起部Ba2が配される部位に浅い部位23a1を位置づけることで、チップ等に係る負荷を低減することができる。また、基準高さの設定も任意であり、例えば図10に変形例7として示すように、パターン開口23aの一部に、印刷面側の面が印刷面側とは反対側に退避するようにへこむ凹部23d3を設けてもよい。この場合にも、凹部23d3を例えば対象物Ba上の突起部Ba2に配置することで、チップ等の部品や電極などの突起部Ba2に負荷を低減することができる。さらに、深さの異なる複数のパターンエリアのうち少なくともいずれかについて、開口内に段差を設けることで、例えば電極等を三次元的に回り込ませて形成することも可能である。また、1つのパターン開口部位に、2段あるいは3段以上の段差が形成されていてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク120について図11乃至図15を参照して説明する。図11は本実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図であり、図12は同斜視図である。図13は、本実施形態にかかるスクリーンマスク120と比較例にかかるスクリーンマスク20Eの構成と印刷形状を示す説明図である。図14は、スクリーンマスクの粗さの説明図であり、図15は、スクリーンマスク120の製造方法を示す説明図である。
【0051】
本実施形態にかかるスクリーンマスク120は、パターン開口123aの開口エッジに他の領域よりも印刷面側に突出する凸部123dが形成され、凸部123dの印刷面側の表面がマット処理されている。この他の構成は、上記第1実施形態にかかるスクリーンマスク20の構成を同様であるため、共通する説明を省略する。
【0052】
図11及び図12に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク120と、スクリーンマスク120の印刷面側である表面(一方の面)20aに対向して印刷媒体Baを保持する保持部材12と、スクリーンマスク120の印刷面側とは反対の裏面(他方の面)20bに当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動部と、スクリーンマスク120を印刷媒体Baに対向して支持する支持部と、を備える。
【0053】
スクリーンマスク120は、フレーム21と、フレーム21に張設されたサポート材であるメッシュ22と、メッシュ22に形成されたマスク膜123と、を備える。スクリーンマスク120において、印刷を行う際に印刷媒体Baの表面に対向する側を表面120aとし、その反対側であって塗布材Peが供給される側を裏面120bとする。
【0054】
マスク膜123は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。
【0055】
マスク膜123の厚みは例えば10μm~100μmに構成されている。
【0056】
マスク膜123は、メッシュ22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜123には、露光によって、印刷用の所定のパターン開口123aが形成されている。
【0057】
なお、パターン開口123aの最小開口幅、すなわち、パターン開口123aの最も狭い部分における開口の幅寸法は、30μm以下である。ここでは、一例として、マスク膜123の表面、すなわち印刷媒体Baに対向する表面20aにおける寸法を基準とした。
【0058】
パターン開口123aは、印刷パターンに対応する形状のパターン孔であってマスク膜123を厚さ方向(深さ方向)に貫通するスリットを構成する。印刷パターンの形状は適宜設定可能である。一例として、本実施形態においては複数の同じパターンユニットがマトリクス状に配されたパターン形状である。
【0059】
例えばパターン開口123aは例えばスリット状のラインパターンや、角形状、円形状、の開口部等種々の形状に設定可能である。
【0060】
マスク膜123は、パターン開口123aにおいて感光性樹脂が存在せず、メッシュ22の孔部を通過して塗布材Peが裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜123のパターン開口123a以外であってメッシュ22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材Peとしてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0061】
例えば本実施形態においてはマスク膜123の印刷面において、所定の領域が印刷面側に突出する凸部123dを有している。例えばマスク膜23に所定のパターン形状で形成されたパターン開口123aのエッジ部分に、凸部123dが形成されている。
【0062】
なお、マスク膜123はベース層123bとカバー層123cの2層構造で構成され、マスク膜123のうち、凸部123dと凸部123dに繋がるパターン開口123aの内壁面の表層部は、カバー層23cで構成されている。
【0063】
凸部123dの印刷面側の表面は、マット処理され、他の表面部よりも粗さが粗く構成されている。凸部123dの印刷面側の表面は、凸部123dの周囲よりも粗さが粗く構成されている。例えば凸部123dの印刷面は粗さRaが0.5μm以上、5μm以下に構成される。例えば図14に示すように、表面粗さRaが5μmより大きい場合、印刷形状が滲むため、所望の印刷形状が得られない場合がある。一方で、0.5μmより小さい場合には凸部123dの表面が印刷媒体Baに密着することから気泡が混入した場合に、気泡が抜け難く、印刷形状に影響することがある。本実施形態では、高精度の印刷形状が得られ、かつ、気泡が抜けやすい範囲として、例えば凸部123dの印刷面は粗さRaが0.5μm以上、5μm以下とした。
【0064】
図14に示すように、印刷面における凸部23dの厚さ方向の寸法Tは2μm以上であることが好ましい。また、Tは50μm以下であることが好ましい。凸部23dの幅寸法Wは例えば20um~100umであることが好ましい。またより好ましくは、30um~50umである。であることが好ましい。凸部23dの幅寸法Wは一定としてもよいし、一部が広く、あるいは狭く構成されていてもよい。
【0065】
マスク膜23が形成されたメッシュ22は、例えばスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。マスク膜23のパターン開口23aに塗布材Peが保持された状態で、メッシュ22の弾性変形によりマスク膜23が印刷媒体Baに接離することで、塗布材Peがパターン開口23aから印刷媒体Baに転写される。
【0066】
ここで本実施形態において、マスク膜23の凸部123dの表面がマット処理されていることから、印刷媒体Baとの間で空気がある程度抜けるように構成されている。したがって、気泡が溜まり難く、気泡が形成していても、排出されやすく、印刷形状への影響を回避できる。
【0067】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク120の製造方法について図15を参照して説明する。図15は、スクリーンマスク120の製造方法を示す説明図である。スクリーンマスク120の製造方法は、第1層形成工程ST11と、第1パターニング工程ST12と、第2層形成工程ST13と、第2パターニング工程ST14と、エッチング工程S1T5と、を備える。本実施形態では、第2層形成工程ST13において第2の乳剤を塗布した後に、貼付け面の粗さが所定の粗さに形成されたフィルムを凸部23dに貼付けて、剥がすことで、凸部23dの表面の粗さを設定する。その後、第1実施形態と同様に、第2パターニング工程ST14と、エッチング工程S1T5と、を行うことで、所定粗さに構成された凸部123dを有するスクリーンマスク120が形成される。
【0068】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク120を用いたスクリーン印刷方法により印刷物を製造する方法について、図11乃至図14を参照して説明する。まず、スクリーンマスク120の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体Baの表面に対向させて配置する。
【0069】
そして、図11に二点鎖線で示すように、高粘度のペースト状の塗布材Peをスクリーンマスク120の裏面側、すなわち、印刷媒体Baとは反対側の面から供給し、塗布材Peをパターン開口123a内に充填させる。
【0070】
次に、スクリーンマスク120の裏面20b、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体Baの表側の面に対して所定の角度で配置する。そして、スキージ13をメッシュ22及びマスク膜123の裏面において、所定の印圧で印刷媒体Ba側に向けて押しつけながら、所定の速度で移動させる。マスク膜123の裏面全面にわたる領域で、スキージ13がマスク膜123を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜123は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体Baに当接する。スキージ13が通過した塗布材Peがパターン開口23aから印刷媒体Ba側に押し出される。
【0071】
スキージ13が通過した後、マスク膜123及びメッシュ22が復元するように変形して印刷媒体Baから離れるとともに、一部の塗布材Peが印刷媒体Ba上に転写されて残ることで、印刷媒体Ba上にパターン印刷がなされ、印刷物が完成する。このとき、塗布材Peは裏側の一部がマスク膜123側に残る。なお塗布材Peは、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。
【0072】
以上のように構成されたスクリーンマスク120、スクリーン印刷装置10、及びスクリーン印刷方法によれば、パターン開口123aのエッジに凸部を有すことにより、単純な構成で、所望の印圧を得ることで、印刷精度の向上が可能となる。また、スクリーンマスク120において、凸部123dの表面が粗く構成されているため、例えばパターン開口123aに気泡が形成された場合に、気泡が除去されやすく、気泡が印刷形状へ影響を及ぼすことを回避できる。
【0073】
図13はスクリーンマスク120を用いた印刷方法と、比較例3にかかるスクリーンマスク120Aを用いた印刷方法について、パターン開口の形状と印刷工程と、印刷形状を示す説明図である。比較例にかかるスクリーンマスク120Aは凸部123dの表面粗さが細かく構成されている。したがって、印刷時にはエッジの凸部123dに高い負荷がかかる、したがって、気泡が発生・混入した場合に、気泡が留まり、印刷形状に影響を及ぼす。これに対して、本実施形態にかかるスクリーンマスク120によれば、凸部23dには負荷がかかることで、にじみが防止でき高い印刷精度を確保できるが、さらに表面粗さをRa=0.5um~5umとしたことにより、気泡が混入した場合に、パターン開口123aの外側へ排出されやすく、印刷形状への影響を抑制できる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク220について図16乃至図19を参照して説明する。図16は本実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図であり、図17は、本実施形態にかかるスクリーンマスク220と比較例にかかるスクリーンマスク220Aの構成と印刷形状を示す説明図である。図18は、スクリーンマスクの凸部の寸法を示す説明図であり、図19は、スクリーンマスク120の製造方法を示す説明図である。
【0074】
本実施形態にかかるスクリーンマスク220は、パターン開口223aの印刷面とは反対側の開口エッジに、他の領域よりも印刷面とは反対側に突出する凸部223dが形成されている。この他の構成は、上記第1実施形態にかかるスクリーンマスク20の構成と同様であるため、共通する説明を省略する。
【0075】
図16及び図17に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク220と、スクリーンマスク220の印刷面側である表面(一方の面)20aに対向して印刷媒体Baを保持する保持部材12と、スクリーンマスク120の印刷面側とは反対の裏面(他方の面)20bに当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動部と、スクリーンマスク220を印刷媒体Baに対向して支持する支持部と、を備える。
【0076】
スクリーンマスク220は、フレーム21と、フレーム21に張設されたサポート材であるメッシュ22と、メッシュ22に形成されたマスク膜223と、を備える。スクリーンマスク220において、印刷を行う際に印刷媒体Baの表面に対向する側を表面220aとし、その反対側であって塗布材Peが供給される側を裏面220bとする。
【0077】
マスク膜223は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。
【0078】
マスク膜223の厚みは例えば10μm~100μmに構成されている。
【0079】
マスク膜223は、メッシュ22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜223には、露光によって、印刷用の所定のパターン開口223aが形成されている。
【0080】
なお、パターン開口223aの最小開口幅、すなわち、パターン開口223aの最も狭い部分における開口の幅寸法は、30μm以下である。ここでは、一例として、マスク膜123の表面、すなわち印刷媒体Baに対向する表面20aにおける寸法を基準とした。
【0081】
パターン開口223aは、印刷パターンに対応する形状のパターン孔であってマスク膜223を厚さ方向(深さ方向)に貫通するスリットを構成する。印刷パターンの形状は適宜設定可能である。一例として、本実施形態においては複数の同じパターンユニットがマトリクス状に配されたパターン形状である。
【0082】
例えばパターン開口223aは例えばスリット状のラインパターンや、角形状、円形状、の開口部等種々の形状に設定可能である。
【0083】
マスク膜223は、パターン開口223aにおいて感光性樹脂が存在せず、メッシュ22の孔部を通過して塗布材Peが裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜223のパターン開口223a以外であってメッシュ22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材Peとしてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0084】
例えば本実施形態においてはマスク膜223の印刷面とは反対側の面において、所定領域が印刷面とは反対側に突出する凸部223dを有している。例えばマスク膜223に所定のパターン形状で形成されたパターン開口223aのエッジ部分に、凸部223dが形成されている。
【0085】
なお、図19に示すように、マスク膜223はベース層223bとカバー層223cの2層構造で構成され、マスク膜223のうち、凸部223dと凸部223dに繋がるパターン開口223aの内壁面の表層部は、カバー層223cで構成されている。
【0086】
図18に示すように、印刷面とは反対側の面における凸部223dの厚さ方向の寸法Tは2μm以上であることが好ましい。また、Tは2/3Ta以下であることが好ましい。すなわち、Tが2μm以下であると印圧が得られず、印刷形状が滲むため、所望の印刷形状が得られない場合があり、凸部223dの厚さ方向の寸法Tがは2/3Taより大きいと、印刷時にスキージの移動による負荷が大きく凸部223dが破損しやすくなる。このため、凸部223dの厚さ方向の寸法Tは2μm以上2/3Ta以下であることが好ましい。Taはメッシュ及びプリント面側に突出する乳剤部の寸法である。凸部223dの幅寸法は例えば20um~100umであることが好ましい。またより好ましくは、30um~50um未満である。凸部223dの幅寸法Wは一定としてもよいし、一部が広く、あるいは狭く構成されていてもよい。
【0087】
マスク膜223が形成されたメッシュ222は、例えばスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。マスク膜223のパターン開口223aに塗布材Peが保持された状態で、メッシュ22の弾性変形によりマスク膜223が印刷媒体Baに接離することで、塗布材Peがパターン開口223aから印刷媒体Baに転写される。
【0088】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク220の製造方法について図19を参照して説明する。図19は、スクリーンマスク220の製造方法を示す説明図である。スクリーンマスク220の製造方法は、第1層形成工程ST21と、第1パターニング工程ST22と、第2層形成工程ST23と、第2パターニング工程ST24と、エッチング工程ST25と、を備える。本実施形態では、第2層形成工程ST23において第1の乳剤を第1層の印刷面とは反対側から塗布して形成する。さらに第2パターニング工程ST24において、印刷面とは反対側から露光することにより、印刷面とは反対側において凸部223dの形状をパターニングして硬化させる。その後、第1実施形態と同様に、エッチング処理を行うことで、印刷面とは反対側の所定領域に凸部223dを有するスクリーンマスク220が形成される。
【0089】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク220を用いたスクリーン印刷方法により印刷物を製造する方法について、図16及び図17を参照して説明する。まず、スクリーンマスク220の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体Baの表面に対向させて配置する。
【0090】
そして、図16に二点鎖線で示すように、高粘度のペースト状の塗布材Peをスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体Baとは反対側の面から供給し、塗布材Peをパターン開口223a内に充填させる。
【0091】
次に、スクリーンマスク220の裏面20b、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体Baの表側の面に対して所定の角度で配置する。そして、スキージ13をメッシュ22及びマスク膜223の裏面において、所定の印圧で印刷媒体Ba側に向けて押しつけながら、所定の速度で移動させる。マスク膜2123の裏面全面にわたる領域で、スキージ13がマスク膜223を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜223は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体Baに当接する。スキージ13が通過した塗布材Peがパターン開口23aから印刷媒体Ba側に押し出される。
【0092】
スキージ13が通過した後、マスク膜223及びメッシュ22が復元するように変形して印刷媒体Baから離れるとともに、一部の塗布材Peが印刷媒体Ba上に転写されて残ることで、印刷媒体Ba上にパターン印刷がなされ、印刷物が完成する。このとき、塗布材Peは裏側の一部がマスク膜223側に残る。なお塗布材Peは、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。
【0093】
以上のように構成されたスクリーンマスク220、スクリーン印刷装置10、及びスクリーン印刷方法によれば、パターン開口223aのエッジにおいて印刷面とは反対側に突出する凸部223dを有すことにより、単純な構成で、所望の印圧を得ることで、印刷精度の向上が可能となる。
【0094】
図17はスクリーンマスク220を用いた印刷方法と、比較例4にかかるスクリーンマスク220Aを用いた印刷方法について、パターン開口の形状と印刷工程と、印刷形状を示す説明図である。比較例にかかるスクリーンマスク220Aは、印刷面とは反対側に突出する凸部223dを備え、印刷時にエッジに負荷をかけることで、にじみが防止でき高い印刷精度を確保できる。
【0095】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0096】
例えば、上記実施形態においては、凸部23dの幅を一定とした例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図20図21に示すように、部位によって凸部23dの幅が異なっていてもよい。
【0097】
第4実施形態として図20に示すスクリーンマスク320には、パターン開口323aが形成されているとともに、一方側の表面に凸部323dが形成されている。パターン開口323aのうち、コーナー部を形成する部位は、他の部位よりも、凸部323dの幅が広く構成される。例えば図20に示す実施例1,実施例2,実施例3は、隅部に各幅される補強部323d1,323d2,323d3を有している。実施例1にかかる補強部323d1は例えば平面視において扇型に膨らんだ形状を有している。実施例2にかかる補強部323d2は、交差する一対のライン状のパターンの延出方向に対して傾斜する縁部を有している。実施例3にかかる補強部323d3は例えば円弧形状の縁部を有している。
【0098】
例えば第5実施形態として図21に示すスクリーンマスク420には、パターン開口423aに沿って、間欠的あるいは連続的に補強部が設けられている。実施例4にかかる補強部423d1は例えば平面視において半円形状に膨らみ、パターン開口423aの両側のエッジに所定のピッチで並んでいる。実施例5にかかる補強部423d2は例えば平面視において、パターン開口423aのラインと直交する方向に延出する矩形状に構成されパターン開口423aの両側のエッジに所定のピッチで並んでいる。実施例6にかかる補強部423d3は、例えば平面視において三角形状に膨らみ、パターン開口423aの両側のエッジに所定のピッチで並んでいる。実施例7にかかる補強部423d4は、ライン状のパターン開口423aの延出方向に沿って連続するライン状に構成され、両側のエッジにそれぞれ形成されている。
【0099】
なお、上記各実施形態において、第1の乳剤と第2の乳剤を用いる場合において、第1の乳剤と第2の乳剤は異なる材料であってもよいし、同じ材料であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、フレーム21にメッシュ22を接着剤24で貼り付け、フレーム21の開口部全域わたってマスク膜23を形成した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、メッシュは、いわゆるコンビネーション型を用いてもよく、また、メッシュ22の中央部分の一部にのみマスク膜23が形成されていてもよい。また、上述した複数の異なる実施形態における特徴を組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態のマスク膜23の印刷面側の表面を粗く形成してもよい。
【0101】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。素材の寸法比を調整することで、縦横の伸び量の差を低減できるため印刷精度が向上できる。
【符号の説明】
【0102】
10…スクリーン印刷装置、12…保持部材、13…スキージ、20、120、220、320、420…スクリーンマスク、20a…表面、20b…裏面、21…フレーム、22…メッシュ、22a…経糸、22b…緯糸、22c…孔部、23、123,223,323,423…マスク膜、23a,123a,223a,323a、423a…パターン開口、23b…ベース層、23c…カバー層、23d、123d、223d、323d、423d…凸部、24…接着剤、Pa1…第1乳剤硬化部、Pa2…第2乳剤硬化部、Pb1…第1未硬化部、Pb2…第2未硬化部、Pm1…第1乳剤、Pm2…第2乳剤。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21