(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132713
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】被覆構造体、及び膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20220906BHJP
G01B 7/06 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
E04B1/94 E
E04B1/94 R
G01B7/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031319
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
(72)【発明者】
【氏名】軽賀 英人
【テーマコード(参考)】
2E001
2F063
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001GA06
2E001HD11
2F063AA16
2F063BA30
2F063DA01
2F063GA08
(57)【要約】
【課題】目的とする耐熱安定性能を安定的に得ることができる被覆構造体を提供する。
【解決手段】下地に、熱発泡性被覆材層が積層された被覆構造体であって、前記下地は、非金属材料であり、前記下地には、補助部材が固定されており、前記補助部材は、少なくともその上面に金属材料を有するものであり、前記下地上の前記補助部材を覆うように熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に、熱発泡性被覆材層が積層された被覆構造体であって、
前記下地は、非金属材料であり、
前記下地の表面には、補助部材が固定されており、
前記補助部材は、少なくともその上面に金属材料を有するものであり、
前記下地上の前記補助部材を覆うように熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする被覆構造体。
【請求項2】
前記補助部材は、面積が1cm2以上、かつ厚みが0.1μm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の被覆構造体。
【請求項3】
上記請求項1または2に記載の被覆構造体における熱発泡性被覆材層の膜厚測定方法であって、
電磁式あるいは過電流式膜厚計によって、前記熱発泡性被覆材層の表面から前記補助部材までの距離を測定することを特徴とする膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆構造体、及び膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物を構成する鉄骨材料、鋼材等の下地を火災から保護する目的として、火災時等の温度上昇によって発泡し、炭化断熱層を形成する熱発泡性被覆材が種々提案されている。このような熱発泡性被覆材としては、合成樹脂に、発泡剤、炭化剤、難燃剤等を配合したものが知られている。熱発泡性被覆材は、その被膜厚によって、耐熱保護性能が決定されることが多く、目的の耐熱保護性能を得るためには、下地面に所定の被膜厚で均一に被膜を形成することが重要である。一般的に、鉄骨材料、鋼材等の下地面に形成された熱発泡性被覆材層の膜厚は、電磁式あるいは過電流式膜厚計を用いて測定されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
一方、近年では、建造物のさらなる耐熱性保護性能を目的として、鉄骨材料、鋼材等の他に、例えば、コンクリート、モルタル、木材、合成樹脂、繊維質材料等の種々の下地に対して、熱発泡性被覆材層を形成することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-088799号公報
【特許文献2】特開2018-159065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、下地の種類によっては、膜厚を測定できない場合や、膜厚を正確に測れない場合があった。本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、下地の種類に関係なく、熱発泡性被覆材の膜厚が測定可能な被覆構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、下地に、熱発泡性被覆材層が積層された構造体において、下地面に特定の補助部材を固定することにより、下地の種類に関係なく、熱発泡性被覆材の膜厚が測定可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.下地に、熱発泡性被覆材層が積層された被覆構造体であって、
前記下地は、非金属材料であり、
前記下地の表面には、補助部材が固定されており、
前記補助部材は、少なくともその上面に金属材料を有するものであり、
前記下地上の前記補助部材を覆うように熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする被覆構造体。
2.前記頭部は、面積が1cm2以上、かつ厚みが0.1μm以上5mm以下であることを特徴とする1.に記載の被覆構造体。
3.上記1.または2.に記載の被覆構造体における熱発泡性被覆材層の膜厚測定方法であって、
電磁式あるいは過電流式膜厚計によって、前記熱発泡性被覆材層の表面から前記補助部材の頭部までの距離を測定することを特徴とする膜厚測定方法。
5.下地に、熱発泡性被覆材層が積層された被覆構造体の形成方法であって、
前記下地の表面に、補助部材を固定後、熱発泡性被覆材を塗装する工程を含み、
前記下地は、非金属材料であり、
前記補助部材は、少なくともその上面に金属材料を有するものであり、
前記下地上に、前記補助部材を覆うように熱発泡性被覆材を塗付することを特徴とする被覆構造体の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構造体は、下地の種類に関係なく、熱発泡性被覆材の膜厚を安定して測定することができる。これにより、火災時等による温度上昇に際し、目的とする耐熱保護性能を安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【符号の説明】
【0010】
1.下地
2.熱発泡性被覆材層
3.補助部材
31.接着剤
32.止め具
4.基材
41.H型鉄骨
5.膜厚計
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
<被覆構造体>
図1(I)は、本発明の被覆構造体の一例を示す断面図である。
図1(I)では、下地1に、熱発泡性被覆材層2が積層されている。また、下地1の表面には、補助部材3が固定されており、補助部材3を覆うように熱発泡性被覆材層2が積層されている。
【0013】
図1(II)は、本発明の被覆構造体の別の一例を示す断面図である。
図1(II)に示すように、下地1は建造物を構成する鉄骨材料や鋼材等の基材4等が積層されたものであってもよい。具体的に、
図2には、H型鉄骨41上に、下地1が被覆されており、下地1には、補助部材3が固定されており、補助部材3を覆うように熱発泡性被覆材層2が積層されている。
【0014】
(下地)
本発明の下地1は、非金属材料であることを特徴とする。非金属材料としては、例えば、木質材料;軽量モルタル、軽量コンクリート、けい酸カルシウム板、ALC板、サイディングボード、石膏ボード、スレート板、コンクリート、モルタル等の無機系材料;グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボード等の繊維系断熱材や、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等の発泡プラスチック系断熱材等に例示される断熱材等が挙げられる。本発明は、特に、繊維系断熱材や発泡プラスチック系断熱材等の柔軟性のある材料であっても、その表面に形成した熱発泡被覆材層2の厚みを安定して測定することができるため、目的とする耐熱保護性能を安定的に得ることができる。
【0015】
上記下地1の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5~500mm(より好ましくは10~300mm)である。本発明では、下地1が厚みを有する場合であっても、その表面に形成した熱発泡被覆材層の厚みを安定して測定することができるため、目的とする耐熱保護性能を安定的に得ることができる。なお、本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0016】
(熱発泡性被覆材層)
本発明の熱発泡性被覆材層2は、火災等により周囲温度が上昇して被膜温度が所定の発泡温度(好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200~400℃)に達すると発泡し、その温度領域において炭化断熱層を形成する熱発泡性被覆材により形成されるものである。このような熱発泡性被覆材としては、構成成分として樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤を含有するものが好適である。
【0017】
樹脂成分としては、水分散型、水可溶型、NAD型、溶剤可溶型、無溶剤型等が挙げられ、1液タイプ、2液タイプ等特に限定されず、用いることができる。具体的には、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル/エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル/スチレン樹脂共重合樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂等の有機の合成樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用することもできる。
【0018】
本発明の難燃剤は、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、樹脂成分の燃焼を抑制する作用を有するものである。本発明で用いる難燃剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の難燃剤が使用できる。例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β-クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等のホウ素化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、未被覆品を使用することができるが、被覆処理品等を用いることもできる。
【0019】
難燃剤の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは50~1000重量部、より好ましくは100~800重量部、より好ましくは200~600重量部である。本発明では、このように難燃剤が比較的高比率で含まれることにより、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0020】
本発明の発泡剤は、一般に、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していく樹脂成分及び炭化剤を発泡させ、気孔を有する炭化断熱層を形成させる作用を有するものである。発泡剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡剤が使用できる。例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。発泡剤の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは5~500重量部、より好ましくは30~200重量部である。このような範囲であることにより、優れた発泡性を発揮し、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0021】
本発明の炭化剤は、一般に、火災による樹脂成分の炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性に優れた厚みのある炭化断熱層を形成する作用を有するものである。本発明で用いる炭化剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の炭化剤が使用できる。例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。炭化剤の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは5~600重量部、より好ましくは10~400重量部である。このような範囲であることにより、脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用を発揮し、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0022】
本発明の充填剤は、一般に炭化断熱層の強度を維持する作用を有するものである。本発明では、充填剤としては、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、無機繊維等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。充填剤の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは5~600重量部、より好ましくは10~400重量部である。
【0023】
本発明の熱発泡性被覆材には、上記以外の成分として、各種添加剤等を配合することもできる。このような成分としては、例えば顔料、繊維、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。また、膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等の膨張性物質を配合することもできる。
【0024】
本発明の熱発泡性被覆材層2の厚みは、目的の耐熱保護性能によって設定されるものであるが、好ましくは0.2~10mm、より好ましくは0.5~6mm程度である。このような、熱発泡性被覆材層2を積層することにより、火災時等の高温に晒された場合に、優れた耐熱保護性を発揮することができる。
【0025】
(補助部材)
本発明の補助部材3は、下地1に固定されるものであり、下地1に積層された熱発泡性被覆材層2の膜厚を測定するための補助部材である。
【0026】
補助部材3は、少なくともその上面(下地面とは反対側の面)に金属材料を有することを特徴とする。このような補助部材3としては、例えば、金属材料、あるいは樹脂、木材、繊維材料、紙等から選ばれる少なくとも1種の表面に金属材料が積層されたもの等も使用できる。金属材料としては、磁性金属、非磁性金属等が挙げられ、例えば、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用することができる。また、これらの金属材料の表面には、本発明の効果を阻害しない範囲で何らかの表面処理がなされたものであってもよい。このような補助部材3を使用することにより、下地1に積層された熱発泡性被覆材層2の膜厚を電磁式あるいは過電流式膜厚計によって容易に測定することができる。
【0027】
補助部材3は、面積が好ましくは1cm2以上(より好ましくは1cm2以上25cm2以下、さらに好ましくは1cm2以上10cm2以下)、かつ厚みが、好ましくは0.1μm以上5mm以下(より好ましくは0.5μm以上3mm以下)であることを特徴とする。このような場合、膜厚を安定して測定することができる。また、面積及び厚みが上記範囲を満たす場合、下地1へ熱が伝わるのを抑制し、十分な耐熱保護性を確保することができる。
【0028】
補助部材3の上面は平らであることが好ましく、例えば、フィルム状、シート状、板状のものを使用できる。また、その平面形状は、特に限定されないが、例えば、三角形、四角形(長方形、台形、ひし形、等)、多角形、円形、楕円形、等が挙げられ、その角部が丸くなっているものであってもよい。
【0029】
本発明の補助部材3を固定する方法としては、下地1に応じて適宜設定すればよいが、例えば、接着剤、止め具等を使用することができる。
図3は、本発明の被覆構造体の拡大図であり、補助部材3を接着剤31で固定した際の一例を示す。接着剤31で固定する場合には、例えば、下地1及び/または補助部材3下面(下地面側)に接着剤31を塗付し、下地面に補助部材を貼着すればよい。また、予め補助部材3の片面に接着剤31を積層したもの(例えば、金属テープ)を使用することもできる。
【0030】
図4(I)(II)は、本発明の被覆構造体の一例を示す断面図である。
図4では、下地1に、補助部材3が止め具32を用いて固定されており、補助部材3を覆うように熱発泡性被覆材層2が積層されている。また、
図5は、本発明の被覆構造体の拡大図であり、補助部材3を止め具32で固定した際の一例を示す。止め具32で固定するには場合、例えば、補助部材3に設けた穴に止め具32を嵌めて固定する方法、(
図5(I))、あるいは補助部材3と止め具32が予め接合されて一体化した補助部材3で固定する方法(
図5(II))等があげられる。また、止め具32は、2つ以上(複数)で使用してもよい(
図5(III))。さらに、本発明では、接着剤31と止め具32を併用することもできる。
【0031】
止め具32としては、下地1に固定することができるものであれば特に限定されず、複数の止め具32を有することもできる。止め具32は、下地1に突き刺して固定することが好ましく、その形状は、先鋭状であることが好ましい。また、止め具32は、ネジ部を有するものであってもよい。止め具32の長さ(H32)は、好ましくは5~100mm(より好ましくは8~50mm)であり、止め具32の太さは、好ましくは0.5~5mm(より好ましくは1~4mm)である。このような場合、下地1に補助部材3を十分に固定することができる。特に、下地1が柔軟性を有する材料や、経年劣化を生じているような既設材料であっても補助部材3を安定に固定することができる。これにより、本発明の被膜構造体が、火災時等の高温に晒された場合に、熱発泡性被覆材層は安定して発泡し、炭化断熱層を形成することができるとともに、形成された炭化断熱層が下地1から脱落することを抑制することができる。
【0032】
さらに、止め具32の長さ(H32)は、下地1の厚みよりも短いことが好ましい。具体的には、針部32の長さ(H32)は、下地1の厚み(H1)よりも5mm以上(さらに好ましくは8mm以上)短いことが好ましい。このような場合、下地1へ熱が伝わりにくく、目的とする耐熱保護性を十分に得ることができる。
【0033】
止め具32の材質としては、特に限定されず、例えば、金属材料、あるいは樹脂、木材等が挙げられる。本発明では、不燃性のものが好ましく、特に金属材料が好ましい。
【0034】
以下、本発明の被覆構造体の構成について具体的に説明する。
【0035】
(被覆構造体の形成方法)
本発明の被覆構造体は、例えば、下地1に、補助部材3を固定後、熱発泡性被覆材を塗装して熱発泡性被覆材層2を形成することにより得ることができる。
【0036】
補助部材3は、接着剤31及び/または止め具32を用いて下地1の表面に補助部材3が沿うように固定することが好ましい。これにより、下地1に安定して固定することができ、熱発泡性被覆材層の厚みを安定して測定することができる。また、補助部材3は、下地1の形状、大きさに応じて、複数で使用することが好ましい。これにより、均一な厚みの熱発泡性被覆材層を形成することができる。
【0037】
熱発泡性被覆材層2は、上記下地1に補助部材3が固定された状態で熱発泡性被覆材を塗付して形成される。熱発泡性被覆材の塗装においては、スプレーガン、エアレススプレーガン、圧送機等による吹付塗装、コテ塗り、刷毛塗り、ローラー塗り等を採用することができる。塗装時には、希釈溶剤で粘性を適宜調整することもできる。
【0038】
熱発泡性被覆材層2の厚みは、耐熱保護性能、適用部位等に応じて適宜設定できるが、通常0.1~20mm、好ましくは0.3~10mm程度である。熱発泡性被覆材の塗装においては、塗膜が所定の厚みとなるように重ね塗りを行うこともできる。
【0039】
本発明の被覆構造体は、補助部材3のアンカー効果により、火災時等の高温に晒された場合には、熱発泡性被覆材層2は安定して発泡し、炭化断熱層を形成することができるとともに、形成された炭化断熱層が下地1から脱落することを抑制することができる。また、補助部材3の固定部を除く下地1と熱発泡性被覆材層2は、優れた密着性を有し、目的とする耐熱保護性を十分に得ることができる。
【0040】
<膜厚測定方法>
本発明の被覆構造体は、
図6に示すように、下地1に積層された熱発泡性被覆材層2の膜厚を、電磁式あるいは過電流式膜厚計を用いて測定することができる。下地1に、上記補助部材3を固定し、該補助部材3を覆うように熱発泡性被覆材層2が積層されていることにより、前記熱発泡性被覆材層2の表面から前記補助部材3までの距離Xを測定することにより、熱発泡性被覆材層2の膜厚を測定することができる。
【実施例0041】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0042】
(熱発泡性被覆材)
アクリル樹脂溶液(固形分40重量%)250重量部と、希釈溶剤90重量部を投入した後、これをディゾルバーで混合攪拌した。次いで、メラミン100重量部、ジペンタエリスリトール100重量部、ポリリン酸アンモニウム400重量部、及び酸化チタン120重量部を投入し、均一となるまで攪拌して、熱発泡性被覆材を作製した。
【0043】
(試験例1)
図2に示すようにH型鉄骨41(H400×200×8×13mm、長さ1200mm)の表面に厚み25mmの繊維系断熱材が被覆された下地に対し、補助部材として、アルミニウムテープ[1.5cm×1.5cm×厚み80μm(アルミニウム層50μm、粘着剤層30μm)]を貼着して固定した。このとき、H方鉄骨41の長さ方向には、補助部材を300mm間隔で固定した。次いで、熱発泡性被覆材をローラーにて塗装し熱発泡性被覆材層を形成したものを試験体とした。この際、試験体の補助部材を固定した部分において、過電流式膜厚計を用いて膜厚を測定しながら、均一な膜厚(3.7mm)となるように熱発泡性被覆材層を形成した。
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて3時間加熱試験を行った。その結果、炭化断熱層は脱落することなく、ほぼ均一な炭化断熱層が形成され、良好な耐熱性能を示した。
【0044】
(試験例2)
図7に示すようにH型鉄骨41(H400×200×8×13mm、長さ1200mm)の表面に厚み25mmの繊維系断熱材が被覆された下地に対し、止め具が予め接合された補助部材[
図5(II)に示す補助部材(鉄製、長方形板状:1.5cm×1.5cm×厚み0.6mm、面積2.25cm
2、止め具(鉄製、長さ15mm、太さ1.2mm)]を突き刺して固定した。このとき、H方鉄骨41の長さ方向には、補助部材を300mm間隔で固定した。次いで、熱発泡性被覆材をローラーにて塗装し熱発泡性被覆材層を形成したものを試験体とした。この際、試験体の補助部材を固定した部分において、電磁式膜厚計を用いて膜厚を測定しながら、均一な膜厚(3.7mm)となるように熱発泡性被覆材層を形成した。
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて3時間加熱試験を行った。その結果、炭化断熱層は脱落することなく、ほぼ均一な炭化断熱層が形成され、良好な耐熱性能を示した。