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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132728
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 21/36 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
F21V21/36 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031340
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】592112798
【氏名又は名称】株式会社シネマ工房
(74)【代理人】
【識別番号】100077470
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 冨二郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 惠一
(57)【要約】
【課題】照明器具や映像機器等の物品等を天井から引き出す昇降装置において、装置を複雑化、大型化することなしに、昇降動に伴うワイヤーの移動が生じず、ワイヤーの外れ事故も無く、装置も小型化して低コストな昇降装置を提供する。
【解決手段】昇降枠4の昇降をガイドする昇降ガイド機構Aと、昇降体4を昇降動させる昇降駆動機構Bからなり、昇降駆動機構Bは、昇降枠4に一方端を接続したワイヤー13と、外周面に外周に沿った方向に設けられたワイヤー13の幅が収まる幅とワイヤーを重ねて券回して収納できる高さを有する溝18の内部にワイヤー13の他方端が接続された駆動プーリー14と、駆動プーリー14を回動駆動させるモーター15と、駆動プーリ14から引き出されたワイヤー13を上下方向に変換する滑車19とからなる昇降装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降枠の垂直方向への昇降をガイドする昇降ガイド機構と、昇降体を昇降動させる昇降駆動機構からなる昇降装置において、
上記昇降駆動機構は、昇降枠に一方端を接続したワイヤーと、
外周面に外周に沿った方向に設けられたワイヤーを複数回券回して重ねて収納できる程度の幅と深さを有する溝の内部にワイヤーの他方端が接続されている回動軸が水平な駆動プーリーと、
この駆動プーリーを自在に正逆回転駆動させるモーターと、
この駆動プーリーの溝の接線方向に位置し、昇降枠の上側で駆動プーリから引き出されたワイヤーの方向を垂直方向に変換する滑車とからなり、
モーターの正逆駆動によって駆動プーリーを正逆回転させることにより、駆動プーリーからのワイヤーの引き出し、巻き戻しがなされるようにしたことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
上記昇降駆動機構は、モーターによって駆動する同軸の駆動軸に2つの駆動プーリーを設けておき、各駆動プーリには2つの溝が設けられ、一方の溝は溝の下方からワイヤーが導出され、他方の溝は溝の上方からワイヤーが導出され、4本のワイヤーが昇降枠の四隅付近の直上に設けられた滑車を通じて昇降枠の四隅付近に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、会議室、宴会場、体育館、劇場等の屋内、室内において、未使用時は天井付近収納され、使用時に下方に延ばして展開する例えば照明器具、映像装置、その他の機材の昇降装置に関し、特に場所を取らずに省スペース、低コストとなる昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
会議室、宴会場、体育館、劇場等の屋内や比較的大きな室内において、ライト等の照明器具やプロジェクター等の映像機器を使用する場合、天井付近にこれらの機器を固定する方法の他、予め天井の上に機器を収納しておき、照明や映像の必要時に照明器具や映像装置を天井付近から下方に引きだして、照明を当てたり映像を映写し、目的が終了すれば、またこれらの機器を天井付近へ収納し、不要時は照明器具や映像機器を見せずに天井をすっきりさせることも行われている。
【0003】
上記の照明器具や映像機器を使用時に下ろし、未使用時に天井の上に収納するための昇降装置は、各種のものが提案され実用化されているが、特に一般的な構造の昇降装置としては、天井部に設けた開口部に、この開口部と同一形状で底面が天井と同じ模様をした昇降枠の上に照明器具を設置し、この昇降枠を天井部と同一平面から下側一定寸法まで上下に昇降をガイドする昇降ガイド機構により昇降自在としておき、適宜な制御された昇降手段により昇降枠を必要時には天井と同一平面として照明器具を天井裏に収納しておき、必要時には昇降手段により昇降ガイド機構に沿って昇降枠を下降させることで、照明装置や映像機器を天井裏から天井より下に引き出し、照明装置や映像機器を使用するもので、照明装置や映像機器を使用した後、必要がなくなれば、昇降手段により昇降枠を上昇させ、天井付近や天井裏に照明装置や映像機器を収納させるものである(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0004】
ところで、最近は、劇場や講堂で照明装置が大型化する傾向にあり、また、照明器具以外にも、映像プロジェクター等を天井裏に収納しておき、必要に応じて天井下に引き出して使用するなど、照明器具より重量のある機器を使用することもあり、それに伴い昇降枠、昇降ガイド機構、そして昇降装置全体としても大型化、重量化してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-170875号公報
【特許文献2】特開2005-11682号公報
【特許文献3】特開2004-219593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、照明器具や映像装置を昇降させるには、照明器具や映像装置を吊り下げているワイヤーを、モーターによる回転力を巻き取りドラムに伝達し、該巻き取りドラムが正逆回転することによりワイヤーを巻き取ったり引き出したりすることで行っている。
【0007】
ワイヤーを安定して巻き取るためには、この巻き取りドラムは、ドラムに螺旋溝を設け、巻き取りに伴いワイヤーをドラムの横方向に移動させて螺旋状に巻き取る方法があるが、そうすると照明器具を吊り下げるワイヤーが巻き上げに伴い横移動しワイヤーの位置も横移動してしまう。
【0008】
この場合、ワイヤーにより吊り下げた照明装置や映像機器が横に移動しても問題がなければいいが、最近は、機器の大型化や、使用時に揺れをなくすために、これらの機器の昇降を垂直方向にガイドする昇降ガイド機構が設けられており、昇降駆動させるワイヤーの位置が巻き上げに従い変わると、昇降ガイド機構にワイヤーによる斜め方向の力がかかったりして機器が傾いたり、スムーズな昇降が阻害されたりする。
【0009】
そこで、図6に示すように、螺旋溝を設けた巻き取りドラム21から引き出されたワイヤー22を、固定された固定滑車23から吊り下げるようにし、ワイヤー22を固定滑車23とは別の部分(巻き取りドラム21)で巻き上げるようにすると、昇降動に伴うワイヤー22の前後及び左右への移動が生じないという利点がある。
【0010】
しかし、固定滑車23は同じ場所でワイヤー22を掛けて巻き取りドラム21へ送っているのに対し、巻き取りドラム21は前述のようにワイヤー22の巻き取り位置を変化させていくので、巻き取りドラム21のワイヤー22の巻き取り位置によっては、例えば、巻き始め位置のワイヤー22(実線)と巻き終わり位置のワイヤー22(点線)は、固定滑車23から送られてくるワイヤー22の角度が大きく傾斜し、この場合ワイヤー22の角度が付きすぎて、固定滑車23や巻き取りドラム21の螺旋溝から外れることがある。
【0011】
図7図8は従来技術の昇降装置を示すもので、図7は正面図、図8(A)は要部正面図、(B)は要部平面図である。
【0012】
天井24の上側(天井裏)に収納されているプロジェクター等の映像機器25は、巻き取りドラム21の回転によりワイヤー22a、22bが引き出されていき、それに連れて映像機器25は垂直方向に昇降をガイドするパンタグラフ式伸縮機構26にガイドされて、天井24の下に降下する。
【0013】
図8に示すように、2つの巻き取りドラム21、21の夫々からワイヤー22a、22bの2本のワイヤーが引き出されており、ワイヤー22aは固定滑車23aを通じて垂直方向に方向転換し、ワイヤー22bは、固定滑車23aに併設された固定滑車27により反転し、ワイヤー22bに干渉しないように若干下の位置に設けられた固定滑車23bを通じて垂直方向に方向転換され、各ワイヤー22a、22bは映像機器25が設置された場所の四隅付近に接続され、巻き取りドラム21のワイヤー22a、22bの巻き取り、引き出しにより、映像機器25の昇降動を行う。
【0014】
ここで、巻き取りドラム21と固定滑車23の距離を大きく取れば取るほど、図8(B)で示すように、ワイヤー22にあまり角度が付かないので、図6で示したときのように、ワイヤー22の角度が付きすぎて固定滑車23や巻き取りドラム21の螺旋溝から外れることがなくなるが、そうすると巻き取りドラム21と固定滑車23との距離が大きくなり、結果として昇降装置全体の占める場所が大型化してしまう。
【0015】
この発明の目的は、照明器具や映像機器その他の物品等を天井から必要に応じて引き出すための昇降装置における上記のような課題を解決し、装置を複雑化、大型化することなしに、照明器具等の昇降動に伴うワイヤーの移動が生じず、また、ワイヤーの外れ事故も無く、装置も小型化して低コストな昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上の課題を解決するため、請求項1の発明は、昇降枠の垂直方向への昇降をガイドする昇降ガイド機構と、昇降体を昇降動させる昇降駆動機構からなる昇降装置において、
上記昇降駆動機構は、昇降枠に一方端を接続したワイヤーと、外周面に外周に沿った方向に設けられたワイヤーを複数回券回して重ねて収納できる程度の幅と深さを有する溝の内部にワイヤーの他方端が接続されている回動軸が水平な駆動プーリーと、この駆動プーリーを自在に正逆回転駆動させるモーターと、この駆動プーリーの溝の接線方向に位置し、昇降枠の上側で駆動プーリから引き出されたワイヤーの方向を垂直方向に変換する滑車とからなり、
モーターの正逆駆動によって駆動プーリーを正逆回転させることにより、駆動プーリーからのワイヤーの引き出し、巻き戻しがなされるようにした昇降装置である。
【0017】
また請求項2の発明は、上記請求項1に記載の昇降装置において、上記昇降駆動機構は、モーターによって駆動する同軸の駆動軸に2つの駆動プーリーを設けておき、各駆動プーリには2つの溝が設けられ、一方の溝は溝の下方からワイヤーが導出され、他方の溝は溝の上方からワイヤーが導出され、4本のワイヤーが昇降枠の四隅付近の直上に設けられた滑車を通じて昇降枠の四隅付近に接続されている構成を採用したものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、請求項1に記載の発明によると、まず昇降対象物を収納する昇降枠を吊り下げるワイヤーは、ワイヤーの巻き取り量にかかわらず、常に昇降装置の上部枠体に固定された滑車から垂直方向に吊り下がっているので、昇降枠の昇降動、即ち、ワイヤーの引き出し、巻き戻しにおいても、ワイヤーが傾いたりせず、垂直方向に昇降をガイドする昇降ガイド機構に無理な力がかからず、スムーズな昇降が可能となる。
【0019】
また、ワイヤーの引き出しと巻き取りは、水平な回動軸を有し、外周面に外周に沿った方向に設けられた2本の溝の内部に2本のワイヤーの他方端が接続されている駆動プーリーの正逆回転により行うので、ワイヤーの巻き始め時とワイヤーの巻き終わり時では、ワイヤーが駆動プーリーから引き出される位置の溝に対する深さが相違するが、その場合でも、滑車は駆動プーリーの溝の接線方向に位置しており、ワイヤーの滑車への巻き付き角度が変化するだけで、滑車に対してワイヤーが横方向に角度が付く(上から見て傾斜する)ことが無く、ワイヤーが外れる事故が生じにくい。
【0020】
更に、滑車に対してワイヤーが傾斜することなく導かれるため、滑車と駆動プーリーの距離を短く取ることができ、その結果、昇降装置全体を小型化でき、装置のコストダウンに繋がる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によると、請求項1の発明の構成による効果である滑車と駆動プーリーの距離を短くできる点を生かし、昇降駆動機構のモーターや駆動プーリーを昇降ガイド機構の直上に設け、同軸で同期する2つの駆動プーリーの2つの溝から合計4本のワイヤーを滑車により昇降枠の四隅を吊り下げ、昇降枠の安定した昇降を維持しつつ、装置の小型化を達成することができる。
【0022】
更に、ワイヤーの巻き取り、巻き戻しに従い、駆動プーリーと滑車へのワイヤーの巻き付き角度は若干変化するが、駆動プーリーと滑車の溝は直線状で横方向に角度が生じないので、駆動プーリー側の溝の幅について、ワイヤーの幅から大きく余裕を取る必要が無いので、ワイヤーの幅に近い寸法が取れ、ワイヤーを何重にも重ねて券回した際の上下のワイヤーの重なりによる誤差が小さく、各溝における巻き取り半径も均一になり、4本のワイヤーを均一に巻き取り、巻き戻しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)はこの発明の実施形態の昇降装置を斜め上から見た斜視図、(B)は下から見た斜視図である。
図2】この発明の実施形態の昇降装置の分解斜視図である。
図3】この発明の実施形態の昇降駆動機構の要部を示す斜視図である。
図4】この発明の実施形態の昇降駆動機構の底面図である。
図5】この発明の昇降装置の滑車とワイヤーの関係を示す解説図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
図6】従来の昇降装置の滑車とワイヤーの関係を示す解説図である。
図7】従来の昇降装置の正面図である。
図8】従来の昇降装置の(A)は要部正面図、(B)は要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を添付図面を参考にして説明する。
図1及び図4に示すのは、この発明の昇降装置の実施形態の一例であり、図1(A)は上から見た斜視図、図1(B)は下から見た斜視図、図2は分解斜視図、である。
【0025】
まず、屋内にライト等の照明器具やプロジェクター等の映像機器を設置する場所の天井板に、対象となる照明器具や映像機器の平面形状より大きな長方形又は正方形の開口部を予め設けておき、この開口部の天井裏にこの発明の昇降装置が収納される。
【0026】
昇降装置は、まず、天井の開口部と略同一形状の底板1と、底板1の四隅から4箇所に立設された柱状体2が天板3と接続されて構成された昇降枠4が、その天板3を昇降ガイド機構Aの下端に接続されており、昇降板4の底板1の下面は必要に応じて周囲の天井板と同一模様が施され、底板1、4本の柱状体2及び天板3に囲まれた空間内に照明器具や映像装置等が収納されている。図中は例としてプロジェクター等の映像機器Cとする。
【0027】
上記昇降ガイド機構Aは、上部枠体5と下部枠体6の間を、多数のリンク7の両端と中央を別のリンク7と回動自在に接続されて構成された複数の菱形からなるパンタグラフ式伸縮機構8が左右2組設けられ、補強として左右のリンク7を棒状体9で接続固定されている。
【0028】
そして、最下端の一方のリンク7は下部枠体6にリンク7を回動自在に接続した接続軸11で接続され、最下端の他方のリンク7は、下部枠体6に対してリンク7の長さ方向にスライド自在なスライド機能付き接続軸12にて回動自在に接続されている。なお上部枠体5に対するリンク7の接続も図示しないが同様の方式になっている。
【0029】
昇降ガイド機構Aは、上記のような構成になっており、昇降ガイド機構Aの上部枠体5は天井裏内で構造物に接続固定され、下部枠体6は昇降枠4の上面に嵌め込まれ、こうすることにより、下部枠体6に接続された昇降枠4に対し任意の方法で上下方向に昇降する力を制御することで、パンタグラフ式伸縮機構8の伸縮により昇降枠4は傾くこと無く垂直方向に昇降がガイドされることになる。
【0030】
なお、パンタグラフ式伸縮機構8の縮み状態で昇降枠4の底板1は天井板と面一になり、伸び状態で昇降枠4が天井下に下がり昇降枠4内に載置した映像機器Cが使用できる位置になる。
【0031】
上記昇降ガイド機構Aの上部枠体5の中央部には、昇降枠4の昇降動を行う昇降駆動機構Bが設けられている。
【0032】
この昇降駆動機構Bは、図3の斜視図に示すようなものであり、その主要構成部材は、一方端を昇降ガイド機構Aの下部枠体6の四隅に接続した4本のワイヤー13と、この4本のワイヤー13を巻き取る駆動プーリー14と、この駆動プーリー14を駆動するモーター15とからなる。
【0033】
前記駆動プーリー14は、昇降駆動機構Bの筐体16の側面両側に突出する同軸の回動軸17の両側に設けられ、筐体16後方には、この回動軸16と直交する出力軸(図示せず)を有するモーター15が内蔵され、モーター15の出力軸と回動軸17は図示しない傘ギヤ等適宜手段で動力伝達可能に接続され、この回動軸17と一体となっている駆動プーリー14は、モーター15の正転、反転に従って可逆回動する。
【0034】
この両駆動プーリー14の外周面に外周に沿った方向には、ワイヤー13の幅が収まる程度の幅を有する溝18が2本並列に設けられており、これらの溝18はワイヤー13が何重にも重なって収められる深さも有しており、それぞれの駆動プーリー14に設けられている2本の溝18の内部にはそれぞれワイヤー13の端部が接続されて、駆動プーリー14が回転することにより周回を重ねてワイヤー13を券回して収納するようになっている。
【0035】
なお、各溝18の深さは、ワイヤー13を昇降枠4(下部枠体6)に繋ぎ、昇降枠4を最上位置(昇降枠4の底板1が天井と面一になる位置)まで昇動させる分だけ巻き取ってもワイヤー13が溝18からはみ出さない程度の深さとしておく。
【0036】
また、一方の溝18からは駆動プーリー14の中央より上方から、他方の溝18からは駆動プーリー14の中央より下方から、外側にワイヤー13が引き出され、それぞれのワイヤー13は駆動プーリー14に向かって左右反対方向に引き出されている。
【0037】
駆動プーリー14の溝18とワイヤー13の関係は上記のようなものであり、図3で示す駆動プーリー14が左回り回転すると、両ワイヤー13が共にそれぞれの溝18内に巻き取られていき、駆動プーリー14が反転右回り回転すると、両ワイヤー13が共にそれぞれの溝18内から引き出されてゆくことになる。この構成は、他方側の駆動プーリー14でも同様であり、要するに、回動軸17の回動に従い、4本のワイヤー13全てが同期して巻き取り、引き出しがなされるように構成してある。
【0038】
この駆動プーリー14から左右反対方向に引き出されたワイヤー13は、それぞれ上部枠体5の四隅にて溝の長さ方向延長線上にある4つの滑車19に導かれ、ここで滑車19により下方垂直方向に向きを変えられ、ワイヤー13は昇降枠4の天板3の四隅で、前記4つの滑車19の直下位置にてワイヤー13の端部が取り付けられている。
【0039】
これらの4本のワイヤー13と対応する溝18、滑車19をそれぞれ「a、b、c、d」の符号を付けて、図3の斜視図、図4の下から見た底面図にて説明すると、モーター15の駆動により、2つの駆動プーリー14を図3で左回転(図4では駆動プーリー14の下側が図の下から上に向く方向)に回転させると、図3で正面側、図4で最左側のワイヤー13aは、駆動プーリー14に対して下側から溝18aに巻き取られてゆき、図示その隣のワイヤー13bは駆動プーリー14に対して上側から溝18bに巻き取られていく。
【0040】
この際、ワイヤー13a、13bは、それぞれ溝18a、18b内に順次重なった状態で巻き取られてゆくが、その巻き取り半径は両者ほぼ同一に増えてゆくので、両ワイヤー13a、13bは駆動プーリー14の回転に従って同じ長さ分が巻き取られてゆく。
【0041】
また、駆動プーリー14とワイヤー13と滑車19との関係を示す図5(A)の正面図、ワイヤー13aの駆動プーリー14に対する巻き取り位置は、最初は駆動プーリー14の中心に近く(ワイヤー13aの実線)、巻き取られるに従って駆動プーリー14の外周に近づいてゆくが(ワイヤー13aの二点鎖線)、ワイヤー13aは、滑車19aに対して巻き付く角度が当初から若干変化するだけで問題無く巻き取られる。
【0042】
更に、図5(B)の平面図で示すように、滑車19aの溝は、駆動プーリー14の溝18aの接線方向の延長線上にあるので、滑車19aの溝に対するワイヤー13aの供給角度は、巻き取りに従って左右にぶれることがなく直線状に供給され、図6で示した従来例のように、左右に角度が付くことが無いので、ワイヤー13aが滑車19aから外れたりすることが無い。
【0043】
一方、ワイヤー13bについてもワイヤー13aと同様、図5(A)に示すように、駆動プーリー14に対する巻き取り位置は、最初は駆動プーリー14の中心に近く、巻き取られるに従って駆動プーリー14の外周に近づいてゆくが、ワイヤー13bは、滑車19bに対して巻き付く角度が当初から若干変化するだけで問題無く巻き取られる。
【0044】
更に図3中奥側、図4中右側の駆動プーリー14についても、ワイヤー13cと溝18cと滑車19cは、ワイヤー13a、溝18a、滑車19aと同様の作用により、ワイヤー13dと溝18dと滑車19dは、ワイヤー13b、溝18b、滑車19bと同様の作用により、4本のワイヤー13a、13b、13c、13dは均一に巻き取られて、下部枠体6は水平を保ったまま昇降をガイドする昇降ガイド機構Aに無理を与えず上昇する。
【0045】
駆動プーリー14の回転により昇降枠4の底面1が天井板と面一となる最上昇位置まで上昇すると、リミットスイッチが駆動プーリー14の回転数をカウントしておいて所定回転数に達したと判断し、モーター15の駆動を停止し、昇降枠4の上昇が停止し、この状態では、昇降枠4は天井裏に隠れてしまい、昇降枠4内の映像機器Cは室内から見えないよう隠れて収納されていることになる。
【0046】
次に、映像機器Cを使用するために昇降枠1を下降させる場合、モーター15を上昇の時と逆方向に回転させ、駆動プーリー14を図3斜視図での時計方向に回転させることで、ワイヤー13a、13b、13c、13dをそれぞれ駆動プーリー14、14の溝18a、18b、18c、18dから引き出して下降させる。
【0047】
所定の最下降位置や昇降ガイド機構Aが延びきった状態になれば、リミットスイッチが働いてモーター15の駆動を停止し、昇降枠4の下降が停止する。この状態で映像機器Cは天井裏から天井下に出現し、映像機器Cを目的のために適宜使用することができるようになる。
【0048】
ちなみに、映像機器Cのメンテナンス時は、この下降位置から更に昇降駆動機構Bのワイヤー13を繰り出すことで、昇降枠4を昇降ガイド機構Aの下部枠体6から外れて単独で降下させて(図2に示すような状態)、下降位置で映像機器Cを保守することができるようになっている。
【0049】
なお、上昇時、下降時のいずれでも、任意の位置で昇降枠4を停止できるようにモーター15の制御装置(図示せず)により昇降動は制御されるようにしてもよい。
【0050】
以上のように、上記実施形態の昇降装置では、ワイヤー13を固定位置で巻き上げる滑車19と、ワイヤー13を巻き取る駆動プーリー14の間隔が狭くても、各ワイヤー13は上から見て駆動プーリー14の同じ溝18から引き出されて溝18の延長線上の直線状に滑車19に向かうので、ワイヤー13の引き出し量にかかわらず滑車19の溝との間に横方向の角度ができず、ワイヤー13が滑車19から外れることが無いので、駆動プーリー14と滑車19の間隔を狭くすることができ、昇降装置全体をコンパクトにでき、コストダウンに繋がる。
【0051】
なお、ワイヤー13の巻き取り、巻き戻しに従い、駆動プーリー14と滑車19へのワイヤー13の巻き付き角度は若干変化するが、図5(B)で示したように、駆動プーリー14の溝18と滑車19の溝は直線状で横方向に角度が生じないので、駆動プーリー14側の溝18の幅について、ワイヤー13の幅から大きく余裕を取る必要が無く、ワイヤー13の幅に近い寸法が取れ(すなわち、ワイヤー13を溝18内にきっちり並べやすいため)、ワイヤー13を何重にも重ねて券回した際の上下のワイヤー13の重なりによる誤差が小さく、各溝18におけるワイヤー13の巻き取り半径も均一になり、4本のワイヤー13を均一に巻き取り、巻き戻しすることができ、昇降装置に無理がかからない。
【0052】
この発明の昇降装置の実施形態は、上記説明した通りであるが、この発明の昇降装置は、この実施形態のものに限定されるものではなく、昇降対象物も実施形態の映像機器に限られず、照明器具その他の種々の器具装置に適用でき、また、収納場所も天井に限られず、この発明の目的の範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0053】
A 昇降ガイド機構
B 昇降駆動機構
C 映像機器
1 底板
2 柱状体
3 天板
4 昇降枠
5 上部枠体
6 下部枠体
7 リンク
8 パンタグラフ式伸縮機構
9 棒状体
10 接続軸
11 接続軸
12 スライド機能付き接続軸
13 ワイヤー
14 駆動プーリー
15 モーター
16 筐体
17 回動軸
18 溝
19 滑車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8