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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013274
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】液体分配金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/305 20190101AFI20220111BHJP
   D01D 4/08 20060101ALI20220111BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20220111BHJP
【FI】
B29C48/305
D01D4/08 A
B29C48/345
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115715
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】501078915
【氏名又は名称】日本ノズル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】大谷 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】西芝 達哉
【テーマコード(参考)】
4F207
4L045
【Fターム(参考)】
4F207KA01
4F207KL59
4F207KL84
4L045AA05
4L045BA03
4L045CA16
(57)【要約】
【課題】ドリル等で容易に加工でき、軽量化や生産コスト低減が可能であり、且つ、幅の広いシート状樹脂組成物を成形するダイや、或いは幅広く塗料などを塗布するダイにも、連結等することなく容易に対応でき、加工の難化や樹脂の劣化、品質の低下を防止できる分配金型を提供せんとする。
【解決手段】幅方向にわたって延びる中空孔20、外部から前記中空孔の内面側に連通し、当該内面に開口した流入口21aを通じて液体を供給する樹脂供給路21、及び、前記中空孔20の内面側から外部に連通し、当該内面に開口した導入口22aを通じて液体を排出するスリット又は孔列22を有する金型本体2と、中空孔20の内面側に装着され、その外周面30bと中空孔の内周面20bとの間に、流入口21aから供給された液体を、幅方向に広げながら前記スリット又は孔列22への導入口22aに導く分配路4としての隙間を形成する内部金型3とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を幅方向に広がった状態で吐出するダイを構成し、供給される液体を幅方向に広げるための液体分配金型であって、
幅方向にわたって延びる中空孔、外部から前記中空孔の内面側に連通し、当該内面に開口した流入口を通じて液体を供給する液体供給路、及び、前記中空孔の内面側から外部に連通し、当該内面に開口した導入口を通じて液体を排出するスリット又は孔列を有する金型本体と、
前記中空孔の内面側に装着され、その外周面と前記中空孔の内周面との間に、前記流入口から供給された液体を、幅方向に広げながら前記スリット又は孔列への導入口に導く分配路としての隙間を形成する内部金型とを備え、
前記液体供給路の前記流入口が、前記中空孔の内面における少なくとも前記幅方向の両端部にそれぞれ設けられている液体分配金型。
【請求項2】
前記液体供給路の前記流入口が、前記中空孔の内面における前記両端部の間の途中部にも1つ以上設けられている、請求項1記載の液体分配金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融樹脂を吐出して不織布シート、樹脂フィルム、樹脂シートなどのシート状樹脂成形物を製造するダイや、塗料などをシートなどの表面に塗布するコーター用のダイを構成する、液体分配金型に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液体分配金型として、本出願人は既に、不織布シート、樹脂フィルム、樹脂シートなどのシート状樹脂成形物を成形するダイに用いられ、軽量で且つ加工が容易であり、生産コスト低減、品質安定を実現できる樹脂分配金型を提案している(特許文献1参照)。この樹脂分配金型の基本構成は、図10図12に示すように、シート幅方向に延びる貫通孔120が設けられた金型本体102の両端を閉塞部材105で閉塞してなるシンプルな構造であり、溶融樹脂は貫通孔120に通じる樹脂供給路121の流入口121aから供給され、樹脂排出部123に通じる孔列122(ノズル列)から排出される。樹脂供給路121への溶融樹脂の供給については、図示しないが、一般的に広く使われている方法によるもので、押出機で加熱溶融された溶融樹脂をギヤポンプで樹脂供給路121に送り込む方法をとることができる。
【0003】
このシンプルな構造の樹脂分配金型は、樹脂の流動性が極めて高い不織布製造用のダイに特に適している。また、特許文献1では、粘性が高く、比較的流動性が低い樹脂への対応として、ノズル列を複数の領域に分け、各領域でノズル孔の径を変えることで前記幅方向への供給量の均一化を図ることも提案している。
【0004】
更に、特許文献1では、幅広のシートを対象とした場合に上記貫通孔120の長さが長くなるためドリル加工が困難になるという問題(特許文献1の段落0037参照)に対し、貫通孔120の孔径を大きくすると溶融樹脂の滞留時間が長くなり樹脂の劣化が問題になることから、孔加工が容易な長さのブロックを複数連結することも提案している。しかし、このような連結構造は装置が大型化するとともに精度も求められ、コスト上昇の原因になるとともに品質低下を招く原因にもなる。このような問題は、塗料などをシートなどの表面に塗布するコーター用ダイの液体分配金型にも同様に当てはまる課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-59232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、特許文献1と同様、ドリル等で容易に加工でき、軽量化や生産コスト低減が可能であり、且つ、幅の広いシート状樹脂組成物を成形するダイや、或いは幅広く塗料などを塗布するダイにも、連結等することなく容易に対応でき、加工の難化や樹脂の劣化、品質の低下を防止できる液体分配金型を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、先に、図13図16に示すように、幅方向にわたって延びる中空孔20、外部から中空孔20の内面側に連通し、当該内面に開口した流入口21aを通じて液体を供給する樹脂供給路21、及び、前記中空孔20の内面側から外部に連通し、当該内面に開口した導入口22aを通じて液体を排出するスリット又は孔列22を有する金型本体2と、中空孔20の内面側に装着され、その外周面30bと中空孔の内周面20bとの間に、流入口21aから供給された液体を、幅方向に広げながら前記スリット又は孔列22への導入口22aに導く分配路4としての隙間を形成する内部金型3とを備えた分配金型1を提案している(特願2018-242691号:以下、「先行発明」と称す。)。
【0008】
この先行発明によれば、中空孔20をドリル加工しやすい程度の大きさの穴にしつつ内部金型3の外径寸法によって分配路4の大きさを調整できることになり、したがって、幅の広いシート状樹脂組成物を成形するダイや、或いは幅広く塗料などを塗布するダイに適用する場合においても、幅方向に長い中空孔20を加工して、同じく幅方向に長い内部金型3を装着するだけで、容易に対応することができ、加工の難化や樹脂の劣化、連結精度による品質の低下などを抑制しつつ、軽量化や生産コスト低減を図ることが可能となる。
【0009】
ところで、このような分配路4に対して中央の流入口21aから液体を供給する場合、液体の流量が小さく、また液体の粘度が高くなるほど、流入口21aに対応するスリット又は孔列22の中央付近で吐出しやすくなり、幅方向の両端に近づくほど液体が届きにくく吐出させにくくなる。先行発明では、内部金型3の形状を工夫(たとえば内部金型の中央部から両端に向かって径を小さくする等)することで、分配路4としての隙間の大きさを前記幅方向(中空孔や内部金型の軸方向)に変動させてスリット又は孔列22の導入口22aへの液体の均一分配を図ることも提案している。
【0010】
しかしながら、このように分配路を工夫して均一分配を図ったとしても、とくに分配路4の両端部のスリット又は孔列22と反対側の隅部の領域(図13の例では符号R1で示す領域)は、液体の流れが滞りやすく、液体が熱劣化しやすい材料の場合、当該領域での液体の劣化が問題となる。たとえば、溶融樹脂を流す不織布/フィルムの製造装置の場合、条件によっては上記領域で溶融樹脂が停滞することにより、熱劣化が生じ、炭化するなどして不織布やフィルムの両端部が変色し、不良の原因となりえる。また、このように液体の滞留が生じると、スリット又は孔列22の各孔の位置によって吐出される液体の熱履歴(熱に晒された時間)が大きく異なってしまい、上記不織布やフィルムの品質上のばらつきが生じやすくなる。
【0011】
本発明者は、かかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、流入口21aからスリット又は孔列22への導入口22aに至る液体の流通の途中部に、上記領域R1のような「隅部」が存在することで当該隅部に液体の滞留が起きやすいこと、そして、両端部に液体の流入口を設けて中央に向けて分配するように構成すれば、当該中央部で両端部からの液体の流れが合流し、液体の流路の途中部に「隅部」が存在することを回避できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 液体を幅方向に広がった状態で吐出するダイを構成し、供給される液体を幅方向に広げるための液体分配金型であって、幅方向にわたって延びる中空孔、外部から前記中空孔の内面側に連通し、当該内面に開口した流入口を通じて液体を供給する液体供給路、及び、前記中空孔の内面側から外部に連通し、当該内面に開口した導入口を通じて液体を排出するスリット又は孔列を有する金型本体と、前記中空孔の内面側に装着され、その外周面と前記中空孔の内周面との間に、前記流入口から供給された液体を、幅方向に広げながら前記スリット又は孔列への導入口に導く分配路としての隙間を形成する内部金型とを備え、前記液体供給路の前記流入口が、前記中空孔の内面における少なくとも前記幅方向の両端部にそれぞれ設けられている液体分配金型。
【0013】
(2) 前記液体供給路の前記流入口が、前記中空孔の内面における前記両端部の間の途中部にも1つ以上設けられている、(1)記載の液体分配金型。
【0014】
(3) 前記中空孔が断面円形の孔であり、且つ前記内部金型が前記中空孔の内面側に装着される円柱状または円筒状の本体部を有する金型である、(1)又は(2)記載の液体分配金型。ここに、「円柱状」、「円筒状」の本体部とは、その外周面に凹凸や傾斜面が形成され、周方向や軸方向(幅方向)に外径が変動するもの、たとえば図1図6に示すように円錐台を突き合せた形状のものや、図7図8に示すように凹凸又はカット面を設けたもの、これらの組み合わせ等も含むものとする。
【0015】
(4) 前記分配路が、周方向に沿って前記隙間の大きさが均等、または変動する流路とされている、請求項(1)~(3)の何れかに記載の液体分配金型。
【0016】
(5) 前記内部金型の本体部外周面の前記流入口に対応する周方向位置に、軸方向にわたる凹条又はカット面が形成され、これにより前記分配路の前記流入口がある周方向位置の隙間が大きく設定されている、(4)記載の樹脂分配金型。
【0017】
(6) 前記分配路が、軸方向(幅方向)に沿って前記隙間の大きさが均等、又は変動する流路とされている、(1)~(5)の何れかに記載の液体分配金型。
【0018】
(7) 前記分配路が、軸方向(幅方向)に沿って前記隙間の大きさが、前記流入口がある位置から離れるほど大きくなる流路とされている、(6)記載の液体分配金型。
【発明の効果】
【0019】
以上にしてなる本願発明に係る分配金型によれば、幅方向にわたって延びる中空孔に対してその内面側に内部金型を装着し、分配路が中空孔と内部金型との間の隙間に形成されるため、中空孔をドリル加工しやすい程度の大きさの穴にしつつ内部金型の外径寸法によって分配路の大きさを調整できることになり、したがって、幅の広いシート状樹脂組成物を成形するダイや、或いは幅広く塗料などを塗布するダイに適用する場合においても、軸方向に長い中空孔を加工して、同じく軸方向に長い内部金型を装着するだけで、容易に対応することができ、加工の難化や樹脂の劣化、連結精度による品質の低下などを抑制しつつ、軽量化や生産コスト低減を図ることができる。
【0020】
また、とくに、液体供給路の流入口を、中空孔の内面における少なくとも幅方向の両端部にそれぞれ設けたので、液体の流路の途中部に「隅部」が存在しなくなり、液体が熱劣化しやすい材料の場合であっても、液体の劣化や熱履歴の変動が回避され、たとえば、溶融樹脂を流す不織布/フィルムの製造装置の場合も溶融樹脂の熱劣化、これによる変色等の不良発生や品質のばらつきを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態にかかる分配金型を示す縦断面図。
図2図1のA-A横断面図。
図3】同じく分配金型を排出部側からみた底面図。
図4】同じく分配金型に用いる内部金型を示す斜視図。
図5】同じく分配金型に溶融樹脂を供給する樹脂供給管を示す説明図。
図6】本発明の第2実施形態にかかる分配金型を示す縦断面図。
図7】(a)は本発明の第3実施形態にかかる分配金型を示す縦断面図、(b)は(a)のB-B横断面図。
図8】(a)は本発明の第4実施形態にかかる分配金型を示す縦断面図、(b)は(a)のC-C横断面図、(c)は(a)のD-D横断面図。
図9】(a)は内部金型の変形例を示す側面図、(b)は(a)のE-E横断面図、(c)は斜視図。
図10】特許文献1にかかる従来の分配金型を示す縦断面図。
図11】同じく従来の分配金型の横断面図。
図12】同じく従来の分配金型を排出部側からみた底面図。
図13】先行発明にかかる分配金型を示す縦断面図。
図14】同じく先行発明にかかる分配金型の横断面図。
図15】同じく先行発明にかかる分配金型を排出部側からみた底面図。
図16】同じく先行発明にかかる分配金型に用いる内部金型を示す斜視図。
図17】(a)は同じく先行発明にかかる内部金型の他の例を示す斜視図、(b)は横断面図。
図18】(a)は本発明の応用例にかかる分配金型を示す縦断面図、(b)は(a)のF-F横断面図、(c)は内部金型を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、図1図5に基づき、本発明に係る分配金型の第1実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態では、溶融樹脂を吐出してシート状樹脂成形物を成形するダイを構成し、供給される溶融樹脂を幅方向に広げる樹脂分配金型として構成した例について説明するが、本発明を適用できる「液体」としては、このようなシート状樹脂成形物の成形用ダイ以外に、溶融樹脂や塗料などの液体を吐出してシートなどの表面に塗布するコーター用のダイを構成し、供給される液体をシート幅方向に広げる液体分配金型としても広く利用できる。シート状樹脂組成物とは、不織布シート以外に、樹脂フィルム、樹脂シートなどが含まれる。
【0024】
分配金型1は、溶融樹脂を幅方向に広がった状態で吐出するダイを構成し、供給される溶融樹脂を幅方向に広げるための金型であり、図1図3に示すように、金型本体2と、該金型本体2に形成された前記幅方向にわたって延びる中空孔20の内面側に装着される内部金型3とより構成されている。
【0025】
金型本体2には、さらに外部から前記中空孔20の内面側に連通し、当該内面に開口した流入口21aを通じて溶融樹脂を供給する樹脂供給路21と、中空孔20の内面側から外部に連通し、当該内面に開口した導入口22aを通じて溶融樹脂を排出する孔列22と、孔列22の導入口22aと反対側に設けられ、シート幅方向に延びる凹溝からなる排出部23とが設けられている。そして、本発明はとくに、樹脂供給路21は幅方向の両端側にそれぞれ設けられ、これにより樹脂供給路21の流入口21aが中空孔の内面における少なくとも幅方向の両端部にそれぞれ設けられている。
【0026】
本例の孔列22は、中空孔20のシート幅方向に沿った複数の位置から各々分岐して排出部23側に延設された貫通孔より構成されている。排出部23は、図示しないノズル体の開口溝に対応する位置に開口し、溶融樹脂をノズル体に供給するリップ部となる。以下の実施形態ではすべて「孔列22」の例について説明するが、孔列22の代わりにスリットを設けたものでもよいし、孔列とスリットの組み合わせとしてもよい。
【0027】
中空孔20、孔列22はいずれも単一ブロックに対してドリル加工で形成された、断面円形で軸方向に沿って断面積が均一な真っ直ぐなストレート孔であり、樹脂供給路21も同じくドリル加工で形成された断面円形の真っ直ぐなストレート孔とされている。これにより中空孔20、孔列22、及び樹脂供給路21を容易に形成することができる。ドリル加工以外の機械加工で形成しても勿論よい。孔列22ではなくスリットとした場合も同様に機械加工で容易に形成することができる。
【0028】
長手方向に長い中空孔20は、ドリル加工ではなく金型本体2の押出成形時に成形し、この中空孔20に対して、上記の如くドリル加工で孔列22や樹脂供給路21を形成することもできる。少なくとも中空孔20や孔列22が単一ブロックから機械加工で形成できるものが上記のとおり加工の容易性の点で好ましいが、これに更に附属的な別ブロックを組み合わせても勿論よい。
【0029】
そして、内部金型3が前記中空孔20の内面側に装着されることで、その外周面30bと中空孔の内周面20bとの間に、流入口21aから供給された溶融樹脂を幅方向に広げながら前記孔列22の導入口22aへと導く分配路4としての隙間が形成される。本発明では、本例のように樹脂供給路21の流入口21aが両端部にそれぞれ設けられることで、分配路4を流れる途中に液溜りの原因となる「隅部」が存在しなく、液体が熱劣化しやすい材料の場合であっても、液体の劣化や熱履歴の変動が回避され、たとえば、溶融樹脂を流す不織布/フィルムの製造装置の場合も溶融樹脂の熱劣化、これによる変色等の不良発生や品質のばらつきを防止できるのである。
【0030】
分配金型1には、図5に示すように外部の図示しない押出機から押し出されてギヤポンプにより圧送されてきた溶融樹脂が、分岐部70を経て、幅方向両端に向かう各配管71、71を通じて両端の樹脂供給路21、21にそれぞれ供給される。分配金型1は、このように外部から供給される溶融樹脂を、上記分配路4を通じて幅方向(図1の左右横方向、すなわち本例の分配金型1の長手方向)に分配したうえで、排出部23から図示しないノズル体へ当該溶融樹脂を供給するための金型である。金型本体2は図示しないヒータにより所定温度に加熱され、樹脂の溶融状態を維持されている。
【0031】
内部金型3は、図4に示すように、左右のフランジ部31を有し、フランジ部31間の本体部30は、樹脂供給路21の流入口21aに対応する位置である両端位置が太く、中央部に向けて次第に縮径する鼓形状に構成されている。左右のフランジ部31の外周面は、中空孔20の両端部の内周面20bに密着することで、中間の本体部30が浮いた状態に中空孔20内に嵌合されている。
【0032】
そして、さらに両端側からボルトナット50で閉塞部材5を金型本体2に取り付けることにより、前記内部金型3は金型本体2の中空孔20内に固定される。上述の樹脂供給路21の流入口21aは、フランジ部31に隣接する本体部30の端部に対応する位置に開口している。内部金型3には、樹脂供給路21の流入口21aがある図中上側に比較例大きな流体圧が作用するため、寸法等により撓んでしまう虞がある場合は、図9に示すような補強用のリブ34を設け、撓みを防止し、分配路4に設計どおりの隙間を維持することが好ましい。
【0033】
このようにして、本体部30の外周面30bと中空孔の内周面20bとの間に、周方向に沿って均一で且つ軸方向に沿って両端位置から中央位置に向けて次第に隙間の大きくなる分配路4を構成するものである。これにより、樹脂が供給される両端部から出口までの流れの抵抗を大きくし、中央に向かうにつれその抵抗を小さくして、出口からの流れを均一化することが可能となる。このような内部金型3は単純な旋盤加工で加工できるものとして発案したものであり、樹脂が供給される両端部を太く、中央部に向かってそれぞれ円錐面とした形状のものである。
【0034】
内部金型の円錐面は、樹脂の粘度(流動性)に合わせて両端から供給される樹脂がノズル列から均一に吐出されるように調整される。定性的に表現すると中空孔20の内径を一定とすると粘度が高いほど中央部の径を小さくすることになる。この構造により、金型内に滞留点を起こすことなく孔列22から均一に吐出される。
【0035】
中空孔20は、上述のとおりドリル加工された断面円形の孔であり、内部金型3は中空孔20の内面側に装着される鼓形状の本体部30を有する金型とされているが、本発明はこのような形状の中空孔20、本体部30になんら限定されず、多角形その他の形状であってもよい。
【0036】
樹脂供給路21を通じて外部から供給される溶融樹脂は、前記スリット状の分配路4に充満して孔列22から排出部23に吐出される。金型本体2の樹脂排出側には、図示しないシート、フィルム用のスリットや不織布用の微細なノズル孔列が設けられたリップ金型を固定するための固定ボルトが螺合するネジ孔24が開設されている。分配金型1に組み付けられるノズル体やエアリップの構造、組み付け形態は、従来から公知のものを広く適用できる。
【0037】
次に、図6に基づき第2実施形態を説明する。本実施形態は、樹脂供給路21の流入口21aを、両端部に加えて幅方向中間部にも設けたものである。上記第1実施形態では、内部金型3の本体部30両端部にのみ流入口21aが位置している構造であるので、金型の幅方向(長手方向)の寸法が長くなる場合は、孔列22の中央付近から吐出される液体の熱履歴が長くなり、熱劣化しやすい液体の場合、その品質が低下するという問題を引き起こす。そこで、このように金型が長くなる場合には、図6に示すように、中間部に流入口21aを追加し、熱劣化が問題にならないように流路を短くできる方法をとることが好ましい。
【0038】
本実施形態の内部金型3も、左右のフランジ部31を有し、フランジ部31間の本体部30は、流入口21aに対応する位置が太く、隣り合う流入口21a、21a間の中央となる位置に向けて次第に縮径する鼓形状に構成され、本例では隣り合う流入口21a、21a間が2領域あるため、上記鼓形状を2つ軸方向に連結した構造とされている。本実施形態によれば、より幅方向に長い、すなわち、より幅広の不織布や、フィルム・シートなどを形成する場合にも、品質劣化を回避することが可能となる。本例では、流入口21aを一つ追加しているが、一つに限ることなく複数追加することも可能である。
【0039】
次に、図7に基づき第3実施形態を説明する。本実施形態は、内部金型3の外周面30bの周方向における前記流入口21aに対応する上部の位置に、幅方向(長手方向)に沿った凹溝35を設け、内部金型3の外周面30bと中空孔の内周面20bとの間に形成される分配路4における前記凹溝35に対応する上部の位置に、他の位置よりも隙間の大きい流路領域を確保するものである。この凹溝35による流路領域により、流入口21aから供給される液体の幅方向への分配作用を促進させ、流動性の低い液体であっても吐出量を幅方向に均一になるようにできるものである。
【0040】
本実施形態においても、第1実施形態や第2実施形態と同様、内部金型3の本体部30の樹脂供給路21の流入口21aに対応する位置である両端位置が太く、中央部に向けて次第に縮径する鼓形状に構成することが好ましい。凹溝35の寸法や本体部30の形状については、流動解析・試行錯誤によって適宜決定することができる。
【0041】
次に、図8に基づき第4実施形態を説明する。本実施形態は、基本的に円柱形状の内部金型3の外周面30bの周方向における前記流入口21aに対応する上部の位置に、幅方向(長手方向)に沿った平面状のカット面36を設け、内部金型3の外周面30bと中空孔の内周面20bとの間に形成される分配路4における前記カット面36に対応する上部の位置に、他の位置よりも隙間の大きい流路領域を確保するものである。このカット面36による流路領域により、第3実施形態の凹溝35によるものと同様、流入口21aから供給される液体の幅方向への分配作用を促進させ、流動性の低い液体であっても吐出量を幅方向に均一になるようにできる。
【0042】
本実施形態では、カット面36の深さh(カット面の中央部と仮想円柱外周面との差)は、樹脂供給路21の流入口21aに対応する位置である両端位置が浅く、中央部に向けて次第に深くなるように設定され、カット面36は内部金型軸方向に沿って傾斜する平面とされている。すなわち内部金型は、図8に示すように円柱をPQを結ぶ線で示される2平面でカットした形状を有し、本体金型と組み合わせて流入口21aの位置から流入口間の中間位置にかけて次第に広い空間が形成されている。
【0043】
カット面36の内部金型の軸に対する傾斜角や、切込み深さhの程度は、流動解析で推算・決定していくことができる。このような内部金型3も、他の実施形態と同様、旋盤とフライスにより容易に加工することができる。
【0044】
図18は、上記第4実施形態の考え方を、上述の先行発明で開示した、樹脂供給路21および流入口21aを幅方向の中央位置にのみ設けた例に応用した例を示している。先行発明の実施形態のように、液体供給路の流入口21aが中央位置にある場合は、上記第4実施形態のカット面36の深さhは、樹脂供給路21の流入口21aに対応する位置である中央位置が浅く、両端部に向けて次第に深くなるように設定され、カット面36は内部金型軸方向に沿って傾斜する平面とされている。これにより、液体の分配作用を促進させ、流動性の低い液体であっても吐出量を幅方向に均一になるようにできる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明の液体分配金型は、必ずしも幅方向に均一厚みになるように液体を吐出するためのものに限定されない。一般的にシートやフィルムを成形する場合は厚さを均一にするように分配するが、幅方向に厚さを変えるように分配路を構成することも好ましい例である。
【符号の説明】
【0046】
1 分配金型
2 金型本体
3 内部金型
4 分配路
5 閉塞部材
20 中空孔
20b 内周面
21 樹脂供給路
21a 流入口
22 孔列
22a 導入口
23 排出部
24 ネジ孔
30 本体部
30b 外周面
31 フランジ部
32 結合部
33 配線孔
34 リブ
35 凹溝
36 カット面
50 ボルトナット
70 分岐部
71 配管
102 金型本体
105 閉塞部材
120 貫通孔
121 樹脂供給路
121a 流入口
122 孔列
123 樹脂排出部
R1 領域
図1
図2
図3
図4
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図18