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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132751
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】測量情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20220906BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G01C15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031372
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA64
5E555AA79
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555BC12
5E555CA14
5E555CA42
5E555CA44
5E555CA45
5E555CB11
5E555CB65
5E555CB66
5E555CC05
5E555CC16
5E555DA09
5E555DB41
5E555DB56
5E555DC13
5E555DC21
5E555EA22
5E555EA24
5E555FA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定点の三次元位置データ以外の測量情報を、測定点のエビデンスとして管理するための測量情報管理システムを提供する。
【解決手段】測量情報管理システムは、測量機2と、測定点x1付近で使用され、位置センサ、姿勢センサ、通信部及びマーカー操作ボタン群を備える電子マーカーと、作業者の頭部に装着され、ディスプレイ、撮像部、位置センサ、姿勢センサ及び通信部を備えるアイウェア装置と、電子マーカー及びアイウェア装置の位置・姿勢を同期させ、電子マーカーの先端口の座標にマーカー操作ボタン群の操作により書かれた手書きデータを撮像部の画像に合成させた手書きデータ合成画像571をディスプレイに表示させ、手書きデータ合成画像571にOCR処理をかける演算器及び手書きデータ合成画像571とOCR処理で抽出されたテキストデータを、測定点の付加データとして記憶する記憶装置を有する処理装置と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者によって測定点付近で使用され、位置センサ,姿勢センサ,通信部,および手書きデータを入力するためのマーカー操作ボタン群と、を備える電子マーカーと、
前記作業者の頭部に装着され、前記作業者の目を覆うディスプレイ,前記作業者の視線方向を撮像する撮像部,位置センサ,姿勢センサ,および通信部を備えるアイウェア装置と、
前記電子マーカー,および前記アイウェア装置と通信し、前記電子マーカー,および前記アイウェア装置の位置・姿勢を同期させ、前記電子マーカーの先端口の座標に前記マーカー操作ボタン群の操作により書かれた前記手書きデータを前記アイウェア装置の前記撮像部が撮影した画像に合成させた、手書きデータ合成画像を前記ディスプレイに表示させ、前記手書きデータ合成画像にOCR処理をかける演算器と、
前記手書きデータ合成画像と、前記手書きデータ合成画像から前記OCR処理で抽出されたテキストデータを、前記測定点の付加データとして記憶する記憶装置と、
を備えることを特徴とする測量情報管理システム。
【請求項2】
前記測量情報管理システムは、さらに、前記測定点に対して測距光によるノンプリズム測距ができる測距部,前記測距光の光軸方向を撮像する撮像部,前記測距部の向く鉛直角と水平角を測角する測角部,前記測距部の前記鉛直角および前記水平角を設定された角度に駆動する駆動部,および通信部を備える測量機、を備え、
前記測量機は、前記測定点の三次元位置データを取得し、
前記記憶装置は、同一の測定点に関して、前記三次元位置データと前記付加データを、同一の識別IDで関連付けて記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の測量情報管理システム。
【請求項3】
前記測量情報管理システムは、さらに、表示部を備え、前記表示部には、前記測定点の測量情報として、前記三次元位置データと、前記テキストデータと、前記手書きデータ合成画像が、一つの画面上に表示される
ことを特徴とする請求項2に記載の測量情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定点の測量情報を管理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建設に伴う測量作業では、作業者が、ターゲットなどを使用して測定点を指定し、測量機(トータルステーション)が測定点を測量(測距・測角)する。近年の測量機は、測量機が概略測定点のほうを向けば測定点を自動視準するので、作業者は、測定点を移動しながら一人で測量することも可能となっている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-229192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者が測量した測定点の三次元位置データは、通常、作業者とは別の管理者に送られ、管理者による解析やレポート作成などの後処理が行われる。このとき管理者は、三次元位置データだけではなく、測定点を知るために現場の写真を確認したり、作業者によるメモ書きなどを参照することがあるが、これらの情報管理が煩雑である。
【0005】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、測定点の三次元位置データ以外の測量情報を、測定点のエビデンスとして管理するための測量情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測量情報管理システムは、作業者によって測定点付近で使用され、位置センサ,姿勢センサ,通信部,および手書きデータを入力するためのマーカー操作ボタン群と、を備える電子マーカーと、前記作業者の頭部に装着され、前記作業者の目を覆うディスプレイ,前記作業者の視線方向を撮像する撮像部,位置センサ,姿勢センサ,および通信部を備えるアイウェア装置と、前記電子マーカー,および前記アイウェア装置と通信し、前記電子マーカー,および前記アイウェア装置の位置・姿勢を同期させ、前記電子マーカーの先端口の座標に前記マーカー操作ボタン群の操作により書かれた手書きデータを前記アイウェア装置の前記撮像部が撮影した画像に合成させた、手書きデータ合成画像を前記ディスプレイに表示させ、前記手書きデータ合成画像にOCR処理をかける演算器と、前記手書きデータ合成画像と、前記手書きデータ合成画像から前記OCR処理で抽出されたテキストデータを、前記測定点の付加データとして記憶する記憶装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記態様において、さらに、前記測定点に対して測距光によるノンプリズム測距ができる測距部,前記測距光の光軸方向を撮像する撮像部,前記測距部の向く鉛直角と水平角を測角する測角部,前記測距部の前記鉛直角および前記水平角を設定された角度に駆動する駆動部,および通信部を備える測量機、を備え、前記測量機は、前記測定点の三次元位置データを取得し、前記記憶装置は、同一の測定点に関して、前記三次元位置データと前記付加データを、同一の識別IDで関連付けて記憶するのも好ましい。
【0008】
上記態様において、さらに、表示部を備え、前記表示部には、前記測定点の測量情報として、前記三次元位置データと、前記テキストデータと、前記手書きデータ合成画像が、一つの画面上に表示されるのも好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定点の三次元位置データ以外の測量情報をエビデンスとして管理するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る測量情報管理システムの構成ブロック図である。
図2】同管理システムに係る測量機であって、(A)測量機の斜視図、(B)測量機の構成ブロック図である。
図3】同管理システムに係る電子マーカーであって、(A)電子マーカーの斜視図、(B)電子マーカーの構成ブロック図である。
図4】同管理システムに係るアイウェア装置であって、(A)アイウェア装置の斜視図、(B)アイウェア装置の構成ブロック図である。
図5】同管理システムに係る処理装置の構成ブロック図である。
図6】同管理システムを測量現場で使用するイメージであり、(A)三次元位置データを取得する時のイメージ、(B)付加データを取得する時のイメージである。
図7】測量情報データベースの一例を示す図である。
図8】処理装置に表示される管理画面の一例である。
図9】変形例に係同管理システムの構成ブロック図であって、(A)アイウェア装置が備えた場合の構成ブロック図、(B)電子マーカーが備えた場合の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
1.実施の形態
1-1.管理システムの構成
図1は本発明の実施の形態に係る測量情報管理システムの構成ブロック図である。測量情報管理システム1(以下、単に管理システム1と称する)は、測量機2と、処理装置3と、電子マーカー4と、アイウェア装置5を備える。
【0013】
管理システム1において、測量機2,処理装置3,電子マーカー4,およびアイウェア装置5は、相互に無線通信が可能である。処理装置3は、測量機2,電子マーカー4,およびアイウェア装置5を同期させて種々の処理を行う演算器32(後述する)と、測量情報を記憶する記憶装置33(後述する)を備えている。
【0014】
本明細において、測量情報とは、測定点の緯度・経度・標高(三次元位置データ)と、その測定点の測量に関連する付加的な情報(付加データ)のことを意味するものとする。
【0015】
まず、測量機2,処理装置3,電子マーカー4,およびアイウェア装置5の構成について説明する。このうち、付加データの取得には、処理装置3,電子マーカー4,およびアイウェア装置5が使用される。三次元位置データの取得には、測量機2,処理装置3,電子マーカー4,およびアイウェア装置5が使用される。付加データの取得において、測量機2は任意の要素となる。
【0016】
1-2.測量機の構成
測量機2は、測量現場に三脚を用いて据え付けられる。図2Aは測量機2の斜視図、図2Bは測量機2の構成ブロック図である。測量機2は、下方から、整準部、整準部の上に設けられた基盤部、該基盤部上を水平回転する托架部2b、托架部2bの中央で鉛直回転する望遠鏡2aを備える。測量機2は、モータドライブトータルステーションであり、測角部21,22、駆動部23,24、制御部25、記憶部26、撮像部27、測距部28、および通信部29を備える。要素21,22,23,24,25,26,および29は托架部2bに収容され、測距部28と撮像部27は望遠鏡2aに収容されている。また、測量機2は、表示操作部2cも備えている。
【0017】
測角部21と22は、エンコーダである。測角部21は托架部2bの回転の水平角を検出する。測角部22は、望遠鏡2aの回転の鉛直角を検出する。駆動部23と24はモータである。駆動部23は托架部2bを水平回転させ、駆動部24は望遠鏡2aを鉛直回転させる。駆動部23,24の協働により、望遠鏡2aの向きが変更される。
【0018】
測距部28は、送光部と受光部を備え、例えば赤外パルスレーザ等の測距光2´を出射し、内部参照光との位相差から測距する。測距部28は、測距光2´をプリズムに反射させてプリズムを測距する反射プリズム測距と、測距光2´をプリズム以外の対象に照射して対象を測距するノンプリズム測距の両方が可能である。撮像部27は、イメージセンサ(例えばCCDセンサやCMOSセンサ)である。撮像部27は、望遠鏡2a内で測距部28と一体に構成され、測距光2´の光軸方向を撮影する。通信部29は、例えば処理装置3の通信部31(後述する)と同等の通信規格を備える。
【0019】
制御部25は、CPU(Central・Processing・Unit)を備え、制御として、通信部29を介した情報の送受信、駆動部23,24による各回転、測距部28による測距、測角部21,22による測角、撮像部27による撮像を行う。記憶部26は、ROM(Read・Only・Memory)およびRAM(Ramdam・Access・Memory)を備える。ROMには制御部25のためのプログラムが格納され、RAMに読み出されて各制御が実行される。測量機2が測量(測距・測角)した三次元位置データは、後述する処理装置3に記録される。
【0020】
1-3.電子マーカーの構成
電子マーカー4は、作業者により携帯され、測定点の付近で使用される。図3Aは電子マーカー4の斜視図、図3Bは電子マーカー4の構成ブロック図である。電子マーカー4は、作業者が手持ちで取り扱える程度の長さを有するスティック体40と、その先端に先端口4bを備える。電子マーカー4は、通信部41、制御部42、記憶部43、加速度センサ44、ジャイロセンサ45、GPS装置46、レーザ出射部47、距離計48、およびマーカー操作ボタン群49を備える。
【0021】
通信部41は、例えば処理装置3の通信部31(後述する)と同等の通信規格を備える。加速度センサ44は、電子マーカー4の3軸方向の加速度を検出する。ジャイロセンサ45は、電子マーカー4の3軸回りの回転を検出する。加速度センサ44とジャイロセンサ45が、請求項における電子マーカー4の「姿勢センサ」である。GPS装置46は、GPS(Global・ Positioning・System)からの信号で電子マーカー4の位置を検出する。GPS装置46が、請求項における電子マーカー4の「位置センサ」である。GPS装置46は、GNSS、準天頂衛星システム、GALILEO、或いはGLONASによる測位情報を用いるものであってもよい。
【0022】
レーザ出射部47は、三次元位置データの取得の際に使用され、付加データの取得において任意の要素となる。レーザ出射部47は、光源とその発光制御ICを備え、先端口4bから、可視色のレーザ光4´を、電子マーカー4のスティック体40の軸方向(以降、方向を先端口4bに向かう方向に特定して、マーカー軸方向4rとする)に、直線的に発する。
【0023】
距離計48は、三次元位置データの取得の際に使用され、付加データの取得において任意の要素となる。距離計48は、送光部と受光部を備え、例えば赤外パルスレーザ等の測距光(図示略)を送光部から出射し、受光するまでの時間と光速に基づいて、先端口4bから測定点までの距離を測距する。距離計48は、光軸がレーザ光4´の光軸と一致するように収容されている。
【0024】
マーカー操作ボタン群49は、物理的なスイッチとして、例えばマーカー側面に設けられている。マーカー操作ボタン群49は、少なくとも、測量を指示するための測定ボタン491と、“手書きデータ(後述する)”を入力するための筆記ボタン492,消去ボタン493,および編集ボタン494を備える。測定ボタン491を押すと、測量機2、処理装置3、電子マーカー4、およびアイウェア装置5が連携して、測定点の三次元位置データが取得される。作業者は、筆記ボタン492,消去ボタン493,および編集ボタン494を操作して付加データを残す。筆記ボタン492と消去ボタン493はペン機能を担う。編集ボタン494は、ペン機能を編集する機能を備える。
【0025】
制御部42は、CPUを備え、制御として、レーザ光4´の発光、姿勢センサ44,45および位置センサ46からの情報検出、通信部41を介した情報送信、および先端口4bの姿勢と位置の算出を行う(後述する)。記憶部43は、ROMおよびRAMを備え、制御部42の各制御を可能にする。
【0026】
ここで、要素41,42,43,44,45,46,47,48は、集積回路技術を利用して構成された専用のモジュールやICを用いて構成される。電子マーカー4のスティック体40内で、要素44,45,46,48は、マーカー軸方向4r上に配置され、それぞれ、先端口4bとの位置関係(先端口4bとの乖離距離d44,d45,d46,d48)が予め測定され、記憶部43に記憶されている。但し、マーカー軸方向4rとの位置関係が予め測定・記憶されている場合は、マーカー軸方向4rから外れた配置も可能である。
【0027】
1-4.アイウェア装置の構成
アイウェア装置5は、作業者の頭部に装着される眼鏡型の画像表示装置である。図4Aはアイウェア装置5の斜視図、図4Bはアイウェア装置5の構成ブロック図である。アイウェア装置5は、通信部51、制御部52、記憶部53、加速度センサ54、ジャイロセンサ55、GPS装置56、ディスプレイ57、撮像部58、および画像操作ボタン群59を備える。ここで、要素51,52,53,54,55,56は、集積回路技術を利用して構成された専用のモジュールやICを用いて構成され、任意の位置の処理BOX50に収容されている。
【0028】
通信部51は、例えば処理装置3の通信部31(後述する)と同等の通信規格を備える。ディスプレイ57は、液晶や有機EL画面であり、作業者の両目を覆うように配置されている。加速度センサ54、ジャイロセンサ55、およびGPS装置56は、電子マーカー4のものと同等のものを備える。撮像部58は、イメージセンサ(例えばCCDセンサやCMOSセンサ)であり、光学またはデジタル処理によるズーム機能を有する。撮像部58は、ディスプレイ57の上部中央位置に配置され、この中心位置を原点として、作業者の視線方向(符号5´)を、原点の上下方向及び左右方向を広角度で撮像可能である。
【0029】
画像操作ボタン群59は、物理的なスイッチとして、例えばテンプル部分に設けられている。画像操作ボタン群59は、少なくとも、測量の付加データを残すための画像保存ボタン591と、撮像部58のズーム機能を操作するためのズームボタン592を備える。
【0030】
制御部52は、CPUを備え、制御として、姿勢センサ54,55および位置センサ56からの情報検出、通信部51を介した情報の送受信、撮像部58による撮像、およびディスプレイ57へ手書きデータ(後述する)の表示を行う。記憶部53は、ROMおよびRAMを備え、制御部52の各制御を可能にする。
【0031】
1-5.処理装置の構成
処理装置3は、測量現場の任意の場所にあればよい。処理装置3は、汎用パーソナルコンピュータ,PLD(Programmable Logic Device)等による専用ハードウェア,高性能タブレット端末等である。図5は処理装置3の構成ブロック図である。処理装置3は、少なくとも、通信部31、演算器32、記憶装置33、表示部34を備える。
【0032】
通信部31は、測量機2の通信部29、電子マーカー4の通信部41、アイウェア装置5の通信部51と無線通信が可能である。通信は、ブルートゥース(登録商標)、各種の無線LAN規格、赤外線通信、携帯電話回線、その他無線回線等のいずれかまたは組み合わせを用いることができる。
【0033】
演算器32は、高性能CPUを備え、同期部35と画像解析部36がソフトウェア的に構成されている。同期部35は、測量機2の位置・姿勢の情報、電子マーカー4の(先端口4bの)位置・姿勢の情報、およびアイウェア装置5の位置・姿勢の情報、を受信して、測量機2の座標空間と、電子マーカー4の座標空間と、アイウェア装置5の座標空間を同期させる(後述する)。画像解析部36は、三次元位置データを取得するために測量機2とアイウェア装置5から受信した画像に画像解析を行い、付加データを取得するためにアイウェア装置5から受信した“手書きデータ合成画像(後述する)”に画像解析を行う。
【0034】
記憶装置33は、HDD等の大容量の記憶媒体を備え、測量情報を管理する測量情報データベース37を備える。測量情報データベース37は、測定点の三次元位置データを管理する位置情報テーブル371と、付加データを管理する付加情報テーブル372を備える(後述する)。
【0035】
1-6.管理システムの同期
測量を始める前に、管理システム1(測量機2、処理装置3、電子マーカー4、およびアイウェア装置5)の同期をとる。同期は、同一の座標空間で測量機2、電子マーカー4、およびアイウェア装置5の各器械の位置・姿勢が把握できるようにする作業である。以下に好適と考えられる一例を示すが、当業者の知識に基づく手法で同期がとられればよい。
【0036】
まず、管理システム1に対して、測量現場に、基準点と基準方向を設定し、測量機2と処理装置3を同期する。基準点は、既知座標点(座標が既知の点)または現場の任意の点を選択する。基準方向は、基準点とは別の特徴点を任意に選択し、基準点-特徴点の方向とする。そして、基準点と特徴点を含む後方交会等の観測により測量機2の三次元位置を把握し、その情報を処理装置3に送信する。処理装置3の同期部35は、基準点の絶対座標を(x,y,z)=(0,0,0)と認識し、基準方向を水平角0度と認識する。演算器32(同期部35)は、以後、測量機2からの情報に関して、基準点を原点とする座標系で、測量機2の位置・姿勢を把握する。
【0037】
次に、電子マーカー4と処理装置3、およびアイウェア装置5と処理装置3を同期する。電子マーカー4に関して、基準点に電子マーカー4を設置して基準点にGPS装置46のゼロ座標を合わせ、電子マーカー4を水平にした状態で電子マーカー4のレーザ光4´の出射方向を基準方向に向けて、基準方向に電子マーカー4の基準姿勢を合わせる。同様に、アイウェア装置5に関して、基準点にアイウェア装置5を設置して、基準点にGPS装置56のゼロ座標を合わせ、アイウェア装置5を水平にした状態で視線方向5´を基準方向に向けて、基準方向にアイウェア装置5の基準姿勢を合わせる。演算器32(同期部35)は、以後、電子マーカー4およびアイウェア装置5からの情報に関して、基準点を原点とする空間で、それぞれの位置・姿勢を把握する。
【0038】
または、電子マーカー4とアイウェア装置5の同期は、測量機2を利用してもよい。例えば、電子マーカー4とアイウェア装置5を測量機2に近接させて、測量機2の座標にGPS装置46,56のゼロ座標を合わせ、水平な状態で測量機2の測距光2´に電子マーカー4のレーザ光4´の出射方向とアイウェア装置5の視線方向5´を合わせてもよい。
【0039】
1-7.管理方法
次に、管理システム1を使用した測定点の測量情報の管理について説明する。図6は管理システム1を測量現場で使用するイメージであり、図6Aは三次元位置データを取得する時のイメージ、図6Bは付加データを取得する時のイメージである。
【0040】
まず、作業者は、アイウェア装置5を頭部に装着し、電子マーカー4を手に携帯して、測定したい測定点x1のところに移動する。
【0041】
1-7-1.三次元位置データの取得
測定点の三次元位置データを取得するときは、図6Aのように、アイウェア装置5を介して測定点x1を視認しながら電子マーカー4のレーザ光4´を測定点x1に照射して、測定ボタン491を押す。
【0042】
測定ボタン491が押されると、電子マーカー4が先端口4bの位置・姿勢の情報と距離計48の測距値を算出し、アイウェア装置5が測定点x1を含む画像を撮像して、処理装置3に送信する。処理装置3は電子マーカー4からの情報を基にオフセット観測で、測定点x1の概略三次元位置を、基準点を原点とする三次元座標で算出し、測量機2に概略三次元位置の画像を撮像させる。処理装置3は、後述する画像処理によって、レーザ光4´の像の終点位置を基準点を原点とする三次元座標で特定し、測量機2でレーザ光4´の像の終点位置を、ノンプリズム測定(測距・測角)し、測定点x1の三次元位置データ(緯度,経度,標高)を取得する。三次元位置データの取得に関し、処理装置3の画像解析部36は、アイウェア装置5の画像と測量機2の画像を周知の画像マッチング技術によって比較し、レーザ光4´の像の終点位置を特定する。ここで使用されるアイウェア装置5の画像は、測定ボタン491が押された時にアイウェア装置5の撮像部58で撮影された画像か、下記「1-7-2.付加データの取得」で“手書きデータ”が合成されていない撮像部58の画像のどちらかである。
【0043】
ここでは、三次元位置データの取得に関し、測量機2,処理装置3,電子マーカー4,およびアイウェア装置5の連携による自動測定の手法を記載したが、この手法に限るものではない。三次元位置データは、従来通り、ターゲットやプリズム等を使用して測量機2の自動追尾や自動視準により測定されてもよい。
【0044】
1-7-2.付加データの取得
作業者は、測定点の付加データを残したいときは、図6Bのように、アイウェア装置5のディスプレイ57を通した空間に電子マーカー4で“手書きデータ”を書き入れる。
【0045】
電子マーカー4は、加速度センサ44,ジャイロセンサ45から先端口4bの姿勢(マーカー軸方向4r)を算出し、GPS装置46の位置情報をマーカー軸方向4rへ既知の乖離距離d46だけオフセットさせて、先端口4bの三次元位置を算出することができる。電子マーカー4とアイウェア装置5の姿勢と位置は同期されているため、処理装置3の同期部35は、アイウェア装置5のディスプレイ57上で電子マーカー4の先端口4bの座標が特定できる。
【0046】
作業者は、筆記ボタン492を押しながら、電子マーカー4のペン先(先端口4b)を用いて、測定点x1の近傍の空中に、文字や図形を手書きする。アイウェア装置5のディスプレイ57には、筆記ボタン492が押されている間の電子マーカー4の先端口4bの移動の軌跡(座標点列を繋ぐ線)が、撮像部58の撮像画像に合成されて表示される。
【0047】
消去ボタン493が押されると、その直前の軌跡が消去される。編集ボタン494が押されると、表示される軌跡のペン色,太さ,線種などが変更される。また、編集ボタン494から、「1」「2」「3」や「A」「B」「C」や「+」「-」あるいは「!」や「&」などの定型的な文字または円や星などの図形(文字図形データ)が入力されてもよい。これらの、マーカー操作ボタン群49(筆記ボタン492,消去ボタン493,および編集ボタン494)から入力される、座標点列を繋ぐ線および文字図形データを、「手書きデータ」と称する。
【0048】
作業者は、筆記ボタン492,消去ボタン493,編集ボタン494を使用して、測定点x1に関して残したい付加情報を、手書きデータで、ディスプレイ57を通した空間に書き込む。このとき、作業者がアイウェア装置5のズームボタン592を押すと、撮像部58のカメラ中心の画像の倍率が変更され、測定点x1付近が拡大、または縮小されて表示される。電子マーカー4の先端口4bの座標にマーカー操作ボタン群49の操作により書かれた手書きデータを、アイウェア装置5の撮像部58が撮影した画像に合成させたものを「手書きデータ合成画像(図6Bの符号571)」とする。
【0049】
作業者が手書きデータを書き終え、画像保存ボタン591を押すと、アイウェア装置5は、手書きデータ合成画像571の最終形態を、処理装置3に送る。
【0050】
処理装置3の画像解析部36は、手書きデータ合成画像571から、例えば周知のOCR(Optical Character Recognition)処理によって、画像内の文字や記号を認識し抽出する。処理装置3は、抽出された文字や記号のテキストデータを、測定点x1に関する付加データの一つとして取得する。
【0051】
1-7-3.測量情報の管理
図7は測量情報データベースの一例を示す図である。処理装置3は、上記「1-7-1. 三次元位置データの取得」で取得された測定点x1の三次元位置データ(緯度,経度,標高の三次元位置座標)を、測量情報データベース37の位置情報テーブル371に記憶する。また、位置情報テーブル371には、識別IDで関連付けて、三次元位置データの取得に使用した情報(先端口4bの座標、測量機2の画像、アイウェア装置5の画像(手書きデータ合成画像ではないもの)も記憶する。
【0052】
処理装置3は、上記「1-7-2. 付加データの取得」で取得された測定点x1の付加データ(テキストデータ、アイウェア装置5の画像(手書きデータ合成画像571)を、測定点x1の識別IDで関連付けて、付加情報テーブル372に記憶する。
【0053】
1-7-4.測量情報の活用
管理者は、処理装置3で、測量情報管理のための専用ウェブページにログインすると、測量情報データベース37の情報にアクセスすることができる。管理者は、例えば測定点x1に関し、例えば図8のように測量情報が閲覧可能である。図8は処理装置3の表示部34に表示される測定点x1に関する管理画面の一例である。測定点x1に関する管理画面では、測定点x1の位置情報(三次元位置データ:Pos)と、測定点x1に作業者が書き入れた手書きデータ(テキストデータ:Info)と、測定点x1の画像(手書きデータ合成画像571)が、一つの画面上に表示される。
【0054】
(効果)
以上、本形態によれば、管理者は、作業者が測定した測定点に関して、三次元位置データと、その測量に関連する付加データを、まとめて管理することができる。特に、作業者が実際に見た測定点の風景と作業者によるメモ書きを、画像とテキストのデータとして保管できるので、測量後の後処理、エビデンスの管理が容易になる。
【0055】
2.変形例
上記の実施の形態は以下のような変形を加えるのも好適である。
【0056】
2-1.変形例1
上記の実施の形態では、管理システム1は、付加データの取得に関し、処理装置3と、電子マーカー4と、アイウェア装置5の3つの要素を備え、処理装置3が、演算器32と記憶装置33を備えている。しかしながら、電子マーカー4またはアイウェア装置5に、演算器32(同期部35、画像解析部36)と記憶装置33(測量情報データベース37)を備えてもよい。図9Aは、アイウェア装置5の制御部52が演算器32を備え、記憶部53が記憶装置33を備えた場合の構成である。図9Bは、電子マーカー4の制御部42が演算器32を備え、記憶部43が記憶装置33を備えた場合の構成である。または、図示は略するが、電子マーカー4とアイウェア装置5は通信可能であるため、電子マーカー4が演算器32を備え、アイウェア装置5が記憶装置33を備えるような組み合わせがあってよい。このように、管理システム1は、付加データの取得に関しては、電子マーカー4とアイウェア装置5の2つの要素で構成されてもよい。この場合、処理装置3の表示部34でに表示される管理画面は、アイウェア装置5に表示すればよい。
【0057】
以上、管理システム1について、実施の形態および変形例を述べたが、これら以外にも、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 管理システム
2 測量機
2´ 測距光
21,22 測角部
23,24 駆動部
27 撮像部
28 測距部
29 通信部
3 処理装置
31 通信部
32 演算器
33 記憶装置
34 表示部
35 画像解析部
36 同期部
37 測量情報データベース
371 位置情報テーブル
372 付加情報テーブル
4 電子マーカー
4b 先端口
41 通信部
42 制御部
44 加速度センサ(姿勢センサ)
45 ジャイロセンサ(姿勢センサ)
46 GPS装置(位置センサ)
49 マーカー操作ボタン群
5 アイウェア装置
51 通信部
52 制御部
53 記憶部
54 加速度センサ(姿勢センサ)
55 ジャイロセンサ(姿勢センサ)
56 GPS装置(位置センサ)
57 ディスプレイ
58 撮像部
図1
図2
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図7
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