(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132766
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】放射線架橋性ホットメルト接着剤及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20220906BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20220906BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C09J133/14
C08F8/00
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031399
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章滋
(72)【発明者】
【氏名】河田 祐希
【テーマコード(参考)】
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J040DF041
4J040DF061
4J040GA10
4J040HC25
4J040JB01
4J040JB08
4J040KA13
4J040LA01
4J040LA08
4J040PA32
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL10Q
4J100AL11P
4J100BC04Q
4J100BC79Q
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4J100DA04
4J100DA25
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100HA53
4J100HC63
4J100HE22
4J100JA01
4J100JA03
(57)【要約】
【課題】 本発明は、臭気が略抑制されていると共に、塗工時の熱安定性に優れ、光硬化前においてタックを殆ど生じず、作業性に優れた放射線架橋性ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】 本発明の放射線架橋性ホットメルト接着剤は、アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有する(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、トリアジン系開始剤とを含むので、臭気が略抑制されていると共に、塗工時の熱安定性に優れ、光硬化前においてタックを殆ど生じない。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有する(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、
トリアジン系開始剤とを含むことを特徴とする放射線架橋性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、環構成原子として酸素原子を有する環構造を有する(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位を含有することを特徴とする請求項1に記載の放射線架橋性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、重量平均分子量が20000~200000で且つ分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線架橋性ホットメルト接着剤。
【請求項4】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)中における(メタ)アクリル系モノマー(A1)の含有量が70質量%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線架橋性ホットメルト接着剤。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の放射線架橋性ホットメルト接着剤を含むことを特徴とするコーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線架橋性ホットメルト接着剤及びコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウエアラブルデバイスやフレキシブルディスプレイをはじめとした装置の可動部へのコーティングが行なわれている。又、アクリル系ポリマーは、装置の組み立てにおいて接着剤として用いられている。
【0003】
又、近年、コーティング剤において、使用環境の改善を目的として脱溶剤化が求められており、脱溶剤化の一つとしてホットメルト化が提案されている。
【0004】
特許文献1には、所定の化学構造式で表される、ホモポリマ―のガラス転移温度が-30℃以上である(メタ)アクリル酸エステル70~100重量%と、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30~0重量%とからなる単量体の非粘着性重合物を含有する熱接着性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱接着性組成物は、多量の未反応モノマーを含んでいることから、使用環境下において強い臭気が発生し、光反応後も未反応モノマーが残存するため、熱接着性組成物を用いた製品にもモノマー由来の臭気が残るという問題点を有している。
【0007】
又、熱接着性組成物をホットメルト塗工に適用した場合には、高温に晒されることで未反応モノマーが揮発し、熱接着性組成物を用いた製品の物性が損なわれるという問題点を有する。
【0008】
更に、高温溶融により光重合開始剤が反応し、塗工前に熱接着性組成物がゲル化するという問題点も有する。
【0009】
本発明は、臭気が抑制されていると共に、塗工時の熱安定性に優れ、光硬化前においてタックを殆ど生じず、作業性に優れた放射線架橋性ホットメルト接着剤及び放射線架橋製ホットメルト接着剤を含むコーティング剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放射線架橋性ホットメルト接着剤は、
アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有する(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、
トリアジン系開始剤とを含む。
【0011】
[(メタ)アクリル系ポリマー(A)]
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有する(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位(以下、単に「(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位」ということがある)を含む。なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0012】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有する(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位を含む。
【0013】
(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位は、アルキレンオキシド構造を有している。アルキレンオキシド構造とは、下記式(1)で示される構造をいう。
-(O-R1)n- 式(1)
(式中、R1は、アルキレン基を表す。nは、自然数である。)
【0014】
式(1)において、nは、1~24が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がより好ましく、1~5がより好ましく、1~3がより好ましく、1又は2がより好ましく、1がより好ましい。nが24以下であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤の塗工時における熱安定性が向上する。
【0015】
(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位がアルキレンオキシド構造を有していることによって、(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度Tgが低くなり、光硬化後の放射線架橋性ホットメルト接着剤の柔軟性を向上させることができる。
【0016】
R1は、塗工時の熱安定性に優れており、塗工時の熱によるゲル化を抑制することができるので、炭素数が1~8のアルキレン基が好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基が好ましく、炭素数が1~3のアルキレン基がより好ましく、炭素数が1又は2のアルキレン基がより好ましく、エチレン基(-CH2-CH2-)がより好ましい。
【0017】
アルキレンオキシド構造としては、特に限定されず、例えば、メチレンオキシド、エチレンオキシド、1-プロピレンオキシド、2-プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシドなどが挙げられ、エチレンオキシドが好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位は、分子末端に芳香環誘導体を有する。(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位が分子末端に芳香環誘導体を有していると、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、光硬化前後、特に、光硬化前において、タックを殆ど生じないので作業性に優れている。
【0019】
芳香環誘導体は、芳香環を含む官能基、及び、芳香環が複合してなる縮合芳香環を含む官能基を含む。芳香環及び縮合芳香環の水素は置換されていてもよいが、放射線架橋性ホットメルト接着剤が、光硬化前後、特に、光硬化前において、タックを殆ど生じないので、芳香環及び縮合芳香環の水素は置換されていないことが好ましい。即ち、芳香環及び縮合芳香環は置換基を有していないことが好ましい。
【0020】
芳香環誘導体としては、特に限定されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、フェノキシフェニル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系モノマー(A1)は、アルキレンオキシド構造の酸素原子に直接、芳香環誘導体が結合している構造を有していることが好ましい。(メタ)アクリル系モノマー(A1)が、アルキレンオキシド構造の酸素原子に直接、芳香環誘導体が結合してなる構造を有していると、アルキレンオキシド構造に起因して光硬化後の放射線架橋性ホットメルト接着剤の柔軟性をより向上させることができると共に、芳香環誘導体に起因して放射線架橋性ホットメルト接着剤の光硬化前後、特に、光硬化前のタックをより効果的に概ね抑制することができる。
【0022】
(メタ)アクリル系モノマー(A1)におけるアルキレンオキシド及び芳香環誘導体は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の側鎖を構成していることが好ましい。アルキレンオキシドが(メタ)アクリル系ポリマー(A)の側鎖を構成することによって、光硬化後の放射線架橋性ホットメルト接着剤の柔軟性をより向上させることができる。芳香環誘導体が(メタ)アクリル系ポリマー(A)の側鎖末端を構成することによって、放射線架橋性ホットメルト接着剤の光硬化前後、特に、光硬化前のタックをより効果的に概ね抑制することができる。
【0023】
本発明において、側鎖とは、主鎖から分岐(枝分かれ)した分子鎖をいい、主鎖とは、分子中において最も長い分子鎖をいう。分子鎖の長さは、分子鎖を構成している原子数によって判断され、原子数が多いほど分子鎖が長いと判断される。
【0024】
(メタ)アクリル系モノマー(A1)としては、アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有しておれば、特に限定されず、例えば、フェノキシメチルアクリレート、フェノキシメチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ナフトキシメチルアクリレート、ナフトキシメチルメタクリレート、ナフトキシエチルアクリレート、ナフトキシエチルメタクリレートなどが挙げられ、フェノキシメチルアクリレート、フェノキシメチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレートが好ましく、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレートがより好ましい。なお、(メタ)アクリル系モノマー(A1)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0025】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有する(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。アルキレンオキシド構造を含み且つ分子末端に芳香環誘導体を有する(メタ)アクリル系モノマー(A1)単位の含有量が70質量%以上であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤において、光硬化前のタックをより効果的に概ね抑制することができる。
【0026】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、環構成原子として酸素原子を有する環構造を有する(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位(以下、単に「(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位」ということがある)を含有することが好ましい。
【0027】
放射線架橋性ホットメルト接着剤が用いられる被着体の一つとしてポリウレタン系樹脂を含有する被着体が挙げられるが、ポリウレタン系樹脂を含有する被着体は、極性が高いものの、表面が平滑な場合が多く、この表面性状に起因して接着させにくい被着体である。
【0028】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー単位中に、ヒドロキシ基(-OH)及びカルボキシ基(-COOH)などの極性基を含有させることが考えられるが、極性基を含有させると、放射線架橋性ホットメルト接着剤の塗工時における熱安定性が低下して、塗工時の加熱によってゲル化を生じる虞れがある。
【0029】
そこで、放射線架橋性ホットメルト接着剤のポリウレタン系樹脂を含有する被着体に対する接着性を向上させるために、(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、環構成原子として酸素原子を有する環構造を有する(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位を有することが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、環構成原子として酸素原子を有する環構造を有する(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位を有すると、放射線架橋性ホットメルト接着剤の優れた熱安定性を維持しつつ、ポリウレタン系樹脂を含有する被着体に対する接着性(接着性)を向上させることができる。
【0031】
(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位は、環構造を形成している環構成原子として酸素原子を1個又は複数個含有している。環構造は、芳香族性の有無は問われず、芳香環と、脂肪族環の何れも含まれるが、脂肪族環が好ましい。脂肪族環とは、3個以上の原子が環状に結合し且つ芳香族性を有しない環構造をいう。環構造を形成している環構成原子とは、環構造を形成している原子のみを意味し、環構造を形成している原子に結合している原子は含まれない。
【0032】
(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位における環構成原子として酸素原子を有する環構造としては、特に限定されず、例えば、テトラヒドロフルフリル基、オキセタニル基、グリシジル基、モルフォニル基、ジオキサニル基、トリオキサニル基、テトラヒドロピラニル基、フラニル基などが挙げられ、テトラヒドロフルフリル基、オキセタニル基、モルフォニル基が好ましい。
【0033】
環構成原子として酸素原子を有する環構造を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、N-アクリロイルモルフォリン、N-メタクリロイルモルフォリン、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、2-グリシジルアクリレート、2-グリシジルメタクリレートなどが挙げられ、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、N-アクリロイルモルフォリン、N-メタクリロイルモルフォリンが好ましい。なお、(メタ)アクリル系モノマー(A2)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、環構成原子として酸素原子を有する環構造を有する(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位の含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位の含有量が30質量%以下であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤において、光硬化前のタックをより効果的に概ね抑制することができ、作業性に優れている。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)において、環構成原子として酸素原子を有する環構造を有する(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位の含有量は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリル系モノマー(A2)単位の含有量が2質量%以上であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤の優れた熱安定性を維持しつつ、ポリウレタン系樹脂を含有する被着体に対する接着性(密着性)を向上させることができる。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量Mwは、20000以上が好ましく、30000以上がより好ましく、50000以上がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、200000以下が好ましく、180000以下がより好ましく、150000以下がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が20000以上であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤において、光硬化前のタックをより効果的に概ね抑制することができる。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が200000以下であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤の塗工性が向上する。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、2.5以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)の分子量分布(Mw/Mn)が2.5以下であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤におけるポリウレタン系樹脂に対する接着性(密着性)が向上する。
【0038】
本発明において、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。
【0039】
具体的には、(メタ)アクリル系ポリマー(A)0.01gを採取し、採取した(メタ)アクリル系ポリマー(A)を試験管に供給した上で、試験管にTHF(テトラヒドロフラン)を加えて、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を500倍に希釈し、フィルタリングを行って、測定試料を作製する。
上記測定試料を用い、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 Waters社製 ACQUITY APCシステム
測定条件 カラム:Waters社製 HSPgel(TM)HR MB-M
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0040】
[トリアジン系開始剤]
放射線架橋性ホットメルト接着剤は、光ラジカル開始剤としてトリアジン系開始剤を含有している。トリアジン系開始剤を含有していることによって、放射線架橋性ホットメルト接着剤は優れた光硬化性を発現する。放射線架橋性ホットメルト接着剤は、電子線、紫外線、α線、β線及びγ線などの放射線の照射によって光硬化する。特に、トリアジン系開始剤を用いることによって、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、UV-A領域の単一波長の光などの活性の低い放射線によっても十分な光硬化性を発現し、優れた光硬化性を発現する。
【0041】
トリアジン系開始剤は、1,3,5-トリアジンにおいて、2位、4位及び6位の水素の少なくとも1個がトリハロメチル基で置換されてなる化合物をいう。トリハロメチル基とは、メチル基の水素の全てがハロゲン原子によって置換されてなる官能基をいい、例えば、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリヨードメチル基などが挙げられ、トリクロロメチル基が好ましい。
【0042】
トリアジン系開始剤において、トリハロメチル基の数は、1~3個が好ましく、1又は2個がより好ましく、2個がより好ましい。トリアジン系開示剤が、上記個数のトリハロメチル基を有していることによって、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、優れた光硬化性を有していると共に、放射線架橋性ホットメルト接着剤の塗工時における熱安定性が向上する。
【0043】
トリアジン系開始剤は、共役構造を有する置換基を有していることが好ましい。トリアジン系開始剤が共役構造を有する置換基を有していると、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、より優れた光硬化性を有している。
【0044】
共役構造を有する置換基としては、例えば、芳香環、芳香環が複合してなる縮合芳香環などが挙げられる。芳香環としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、フェノキシフェニル基、フラニル基、(フェニルエテニル)フェニル基などが挙げられ、フェニル基、フラニル基が好ましい。縮合芳香環としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基、下記式(2)で示される官能基などが挙げられ、式(2)で示される官能基が好ましい。
【0045】
【0046】
トリアジン系開始剤に放射線を照射すると、トリハロメチル基のハロゲン-炭素間の共有結合が開裂してハロゲンラジカルを生じる。このハロゲンラジカルは活性が非常に高く、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の炭素-水素結合の水素を引き抜き、(メタ)アクリル系ポリマー(A)間に架橋構造が形成され、放射線架橋性ホットメルト接着剤は光硬化する。
【0047】
トリアジン系開始剤としては、特に限定されず、例えば、2-(2,3-ジメトキシフェニル)-4,6-(ビス)トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン、2-[4-(4-エチルフェニル)フェニル]-4,6-(ビス)トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-(ビス)トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(フェニルビニル)フェニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられ、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-(ビス)トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン及び2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンが好ましく、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンがより好ましい。なお、トリアジン系開始剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
放射線架橋性ホットメルト接着剤において、トリアジン系開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がより好ましい。トリアジン系開始剤の含有量が0.05質量部以上であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、より優れた光硬化性を有している。
【0049】
放射線架橋性ホットメルト接着剤において、トリアジン系開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がより好ましい。トリアジン系開始剤の含有量が10質量部以下であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤の塗工時のおける熱安定性が向上する。
【0050】
次に、放射線架橋性ホットメルト接着剤の製造方法を説明する。放射線架橋性ホットメルト接着剤に用いられる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、汎用のラジカル重合の要領によりランダム重合によって製造されればよい。具体的には、(メタ)アクリル系モノマー(A1)に必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー(A2)を含むモノマー組成物を汎用のラジカル重合開始剤の存在下にてラジカル重合させることによって(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造することができる。
【0051】
なお、ラジカル重合開始剤としては、特に制限はされないが、アゾ系のラジカル重合開始剤が好ましく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)などが挙げられ、2,2’-アゾビス-イソブチロニトリルが好ましい。
【0052】
分子量分布の小さい(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造することができ、放射線架橋性ホットメルト接着剤のポリウレタン系樹脂に対する接着性(密着性)が向上すると共に、放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化性が向上するので、(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、リビング重合によって製造することが好ましい。
【0053】
リビング重合は、例えば、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合が挙げられるが、高い汎用性と重合反応の安全性の点からリビングラジカル重合が好ましい。
【0054】
リビングラジカル重合法としては、例えば、イニファーター重合、ニトロキシド介在重合(NMP)、遷移金属触媒による原子移動ラジカル付加重合(ATRP)、可逆的連鎖移動重合(RAFT)、有機テルル化合物による重合(TERP)、有機化合物触媒による可逆移動触媒重合(RTCP)、可逆配位媒介重合(RCMP)などが挙げられる。
【0055】
特に、可逆的連鎖移動重合(RAFT)は、(1)モノマー汎用性が高いこと、(2)酸素及び光に対して極端な反応性低下を生じないこと、(3)極端な低温又は高温でなくても反応が進行することから簡便な重合反応環境で実施可能でき高い生産性を有すること、(4)金属及びハロゲンなどの毒物を使用しないこと、(5)十分な分子量を有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造できることから好ましい。
【0056】
可逆的連鎖移動重合(RAFT)を実施するために用いられるRAFT剤としてはジチオエステル化合物が好ましい。ジチオエステル化合物としては、交換連鎖反応性を有するジチオエステル化合物であれば、特に限定されず、例えば、ジチオベンゾエート化合物、トリチオカーボネート化合物、ジチオカルバメート化合物、キサンテート化合物などが挙げられ、トリチオカーボネート化合物が好ましい。
【0057】
トリチオカーボネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-2-シアノペンタン酸、4-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸などの交換連鎖反応部位を1個のみ有するトリチオカーボネート化合物、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}トリチオカーボネート、1,4-ビス{[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]メチル}ベンゼンなどの交換連鎖反応部位を2個有するトリチオカーボネート化合物など挙げられ、交換連鎖反応部位を1個のみ有するトリチオカーボネート化合物が好ましく、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-2-シアノペンタン酸がより好ましい。
【0058】
可逆的連鎖移動重合(RAFT)の重合形態としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられ、溶液重合が好ましい。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を溶液重合によって製造する場合、(メタ)アクリル系ポリマー(A)をコーティング剤とするためには、系内の溶剤を脱処理する必要がある。
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)中に含まれる残存モノマー量は10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、7質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル系(A)中に含まれている残存モノマー量が10質量%以下であると、放射線架橋性ホットメルト接着剤の臭気が抑制されて好ましい。
【0060】
なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)中に含まれている残存モノマー量は下記の要領で測定された値をいう。即ち、(メタ)アクリル系ポリマー(A)をXg採取して測定試料とする。測定試料を20倍の質量を有する酢酸エチルに供給して130℃に設定したオーブン内に15分間放置する。測定試料を酢酸エチルから取り出して、測定試料を25℃にて5分間冷却した後、測定試料の質量Ygを測定する。下記式に基づいて(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の残存モノマーを算出する。
(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の残存モノマー量(質量%)
=100×(X-Y)/X
【0061】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)とトリアジン系開始剤とを加熱下において溶媒の不存在下にて溶融混練することによって、放射線架橋性ホットメルト接着剤を製造することができる。なお、溶媒とは、(メタ)アクリル系(A)を溶解可能な有機溶媒及び水系溶媒の双方を意味する。有機溶媒とは、ベンゼン、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、アルコールなどの有機化合物をいう。水系溶媒とは、水を50質量%以上含有する溶媒をいう。
【0062】
得られた放射線架橋性ホットメルト接着剤は、コーティング剤として好適に用いることができる。なお、コーティング剤は、その物性を損なわない範囲内において、光酸発生剤、紫外線重合開始剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤及び帯電防止剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0063】
放射線架橋性ホットメルト接着剤は、溶媒を含有していないため、使用環境下において溶媒に起因した臭気は発生せず、環境衛生上、優れている。そして、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、熱安定性に優れているので、塗工時の加熱による溶融粘度の上昇は抑制されており、優れた塗工性を有している。
【0064】
又、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、光硬化前においてもタックを殆ど生じないため、作業性に優れていると共に、塗工後において放射線架橋性ホットメルト接着剤の表面に塵芥などが付着することを防止することができ、光硬化後の硬化物の外観及び物性低下を防止することができる。
【0065】
そして、放射線架橋性ホットメルト接着剤は優れた光硬化性を有しており、放射線架橋性ホットメルト接着剤は、放射線が照射されることによって(メタ)アクリル系ポリマー(A)間に架橋構造が形成されて容易に光硬化し、タックを殆ど有しない硬化物を生成する。放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物は、優れた接着性(密着性)を有している。放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物は、タックを殆ど有しない塗膜を形成することができ、得られる塗膜は、塵芥などが付着し難く、優れた外観及び物性を長期間に亘って維持することができる。
【発明の効果】
【0066】
本発明の放射線架橋性ホットメルト接着剤は、臭気が略抑制されていると共に、塗工時の熱安定性に優れ、光硬化前においてタックを殆ど生じず、作業性に優れていると共に、塵芥などの付着を概ね防止することができ、放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物の外観及び物性低下を抑制することができる。
【0067】
本発明の放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物は、タックを殆ど生じないため、硬化物表面への塵芥の付着などは概ね抑制され、経時的な外観及び物性低下が抑制されており、長期間にわたって優れた物性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0069】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造に下記の化合物を用いた。
[(メタ)アクリル系モノマー(A1)]
・フェノキシエチルアクリレート
・フェノキシエチルメタクリレート
・2-メトキシエチルアクリレート
【0070】
[(メタ)アクリル系モノマー(A2)]
・テトラヒドロフルフリルアクリレート
・N-アクリロイルモルフォリン
・シクロヘキシルアクリレート
【0071】
[分子量調整剤]
・2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸(RAFT剤)
・2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-2-シアノペンタン酸(RAFT剤)
・n-ドデシルメルカプタン
【0072】
[ラジカル重合開始剤]
・2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
【0073】
[溶媒]
・酢酸エチル
【0074】
[光ラジカル開始剤]
・2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン(トリアジン1)
・2-(p-メトキシフェニル)-4,6-(ビス)トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン(トリアジン2)
・2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン(トリアジン3)
・2,4-ジエチルチオキサントン(DETX)
・ベンゾフェノン(BP)
【0075】
なお、2-メトキシエチルアクリレート及びシクロヘキシルアクリレートはそれぞれ、(メタ)アクリル系モノマー(A1)及び(A2)ではないが、(メタ)アクリル系モノマー(A1)及び(A2)の欄に便宜上、記載した。
【0076】
(合成例1~11)
攪拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入口を備えたセパラブルフラスコに、(メタ)アクリル系モノマー(A1)、(メタ)アクリル系モノマー(A2)、分子量調整剤及び溶媒をそれぞれ表1に示した配合量ずつ供給し、攪拌して反応液を作製した。
【0077】
セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換した後、ウォーターバスを用いて反応液を表1記載の反応温度に保持した。次に、セパラブルフラスコ内の反応液にラジカル重合開始剤を表1に示した配合量供給してランダム重合を開始した。反応液を表1に記載の反応温度に表1に記載の反応時間に亘って保持して(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む反応液を得た。
【0078】
得られた(メタ)アクリル系ポリマー(A)について、残存モノマー量、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0079】
得られた(メタ)アクリル系ポリマー(A)について、ガラス転移温度TgをFoxの式に基づいて算出した。
【0080】
(実施例1~14、比較例1~5)
合成例1~11にて作製した(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む反応液を130℃に保持されたオーブン内に放置して2時間に亘って加熱した後、130℃に保持された真空オーブン内に放置して2時間に亘って加熱し、反応液中の酢酸エチルを完全に除去して、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を得た。
【0081】
得られた(メタ)アクリル系ポリマー(A)と光ラジカル開始剤とを表2に示した配合量にて130℃で加熱、混練して、放射線架橋性ホットメルト接着剤を作製した。
【0082】
得られた放射線架橋性ホットメルト接着剤について、塗工性、熱安定性、臭気、タック(硬化前及び硬化後)、ゲル分率及びポリウレタン系樹脂に対する密着性を下記の要領で測定し、その結果を表2に示した。
【0083】
[塗工性]
下記に示した測定器を用意した。硬化前の放射線架橋性ホットメルト接着剤13gを採取し、採取した放射線架橋性ホットメルト接着剤をThermosel内に装着するアルミ筒内に供給した。
測定器:DV-E Viscometer(Brookfield社製)
Thermosel(Brookfield社製)
【0084】
測定器の測定温度を130℃に設定して、放射線架橋性ホットメルト接着剤を溶融した。スピンドル4-29を用いて30分間に亘って、硬化前の放射線架橋性ホットメルト接着剤の溶融粘度の測定を行った。放射線架橋性ホットメルト接着剤における測定開始30分後の溶融粘度を130℃における溶融粘度とした。得られた放射線架橋性ホットメルト接着剤の130℃における溶融粘度に基づいて下記基準にて評価した。
◎:溶融粘度が30Pa・s未満であった。
〇:溶融粘度が30Pa・s以上で且つ60Pa・s未満であった。
×:溶融粘度が60Pa・s以上であった。
【0085】
[熱安定性]
塗工性の測定で用いた測定器を用意した。硬化前の放射線架橋性ホットメルト接着剤13gを採取し、採取した放射線架橋性ホットメルト接着剤をThermosel内に装着するアルミ筒内に供給した。
【0086】
放射線架橋性ホットメルト接着剤を供給したアルミ筒を130℃に設定したオーブン内に3日間に亘って放置して養生させた後に取り出した。養生後の放射線架橋性ホットメルト接着剤について、塗工性の評価と同様の要領で、放射線架橋性ホットメルト接着剤の130℃における溶融粘度を測定した。
【0087】
塗工性の評価にて測定した、放射線架橋性ホットメルト接着剤の130℃における溶融粘度Pと、養生後の放射線架橋性ホットメルト接着剤の130℃における溶融粘度Qとの比(Q/P)を算出し、下記基準に基づいて評価した。
◎:1.3以下であった
〇:1.3より大きく且つ2.0以下であった
×:2.0より大きかった
【0088】
[臭気]
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、硬化前の放射線架橋性ホットメルト接着剤を厚みが20μmとなるように塗工した。塗工された放射線架橋性ホットメルト接着剤を官能試験にて臭気を評価した。
◎:臭気を全く感じなかった
〇:臭気を僅かに感じた
×:明らかな臭気を感じた。
【0089】
[硬化前のタック]
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、硬化前の放射線架橋性ホットメルト接着剤を厚みが20μmとなるように塗工した。塗工された放射線架橋性ホットメルト接着剤の表面を触診し、下記基準に基づいてタックを評価した。
◎:ベタツキ(タック)を全く感じなかった。
〇:ベタツキを僅かに感じた。
×:明らかなベタツキを感じた。
【0090】
[硬化後のタック]
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、硬化前の放射線架橋性ホットメルト接着剤を厚みが20μmとなるように塗工した。塗工された放射線架橋性ホットメルト接着剤に、紫外線照射装置[ヘレウス(旧フュージョンUVシステムズ)社製 商品名「Light Hammer6」(Hバルブ使用)]を用いて、UV-C照射強度:約48mW/cm2、UV-C積算光量:100mJ/cm2にて紫外線(UV-C)を照射して放射線架橋性ホットメルト接着剤を光硬化させた。光硬化した放射線架橋性ホットメルト接着剤の表面を触診し、下記基準に基づいてタックを評価した。
◎:ベタツキ(タック)を全く感じなかった。
〇:ベタツキを僅かに感じた。
×:明らかなベタツキを感じた。
【0091】
[ゲル分率(高圧水銀灯)]
離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、硬化前の放射線架橋性ホットメルト接着剤を厚みが20μmとなるように塗工した。塗工された放射線架橋性ホットメルト接着剤に、紫外線照射装置[ヘレウス(旧フュージョンUVシステムズ)社製 商品名「Light Hammer6」(Hバルブ使用)]を用いて、UV-A照射強度:約500mW/cm2、UV-A積算光量:1000mJ/cm2、UV-C照射強度:約48mW/cm2、UV-C積算光量:100mJ/cm2にて紫外線を照射して放射線架橋性ホットメルト接着剤を光硬化させた。
【0092】
放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物約0.2g採取し、放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物0.2gをガラス瓶に供給した。テトラヒドロフラン30gをガラス瓶に供給し、常温にて24時間放置し、放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物を膨潤させた。
【0093】
膨潤させた放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物を200メッシュの金網でろ過し、80℃に昇温した恒温槽にて、放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物を金網ごと乾燥させた。乾燥後の放射線架橋性ホットメルト接着剤の硬化物の質量Wgを測定し、下記の要領に従ってゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×W/0.2
【0094】
[ゲル分率(365nmLED-UVランプ)]
紫外線照射装置として、365nmの単一波長光を放射するLED-UVランプ(シーシーエス株式会社製 装置本体名「LSS-B10」 照射器名「HLDL-120U6-NWPSC」)を用いて、UV-A照射強度:530mW/cm2、UV-A積算光量:1500mJ/cm2にて紫外線(UV-A)を照射して放射線架橋性ホットメルト接着剤を光硬化させたこと以外は、ゲル分率(高圧水銀灯)と同様の要領でゲル分率を算出した。
【0095】
[ポリウレタン系樹脂に対する密着性]
ヘキサンとアセトンを3:1(質量比)で混合した洗浄溶液を用意した。厚みが2mmのポリウレタン系樹脂板(エンジニアリングテストサービス製)の表面を洗浄溶液で払拭し、ポリウレタン系樹脂板の表面の付着物を除去した。
【0096】
ポリウレタン系樹脂板の表面に、130℃に加熱して溶融させた放射線架橋性ホットメルト接着剤を20μmの厚みに塗工した。ポリウレタン系樹脂板上の放射線架橋性ホットメルト接着剤に、紫外線照射装置[ヘレウス(旧フュージョンUVシステムズ)社製 商品名「Light Hammer6」(Hバルブ使用)]を用いて、UV-C照射強度:約48mW/cm2、UV-C積算光量:100mJ/cm2にて紫外線(UV-C)を照射し、放射線架橋性ホットメルト接着剤を光硬化させて塗膜を形成した。
【0097】
塗膜の一部に粘着テープ(ニチバン社製 商品名「セロテープ(登録商標) No.405(産業用)」)を貼着して 分経過した後、粘着テープを剥離した。塗膜がポリウレタン系樹脂板の表面から剥離しているか否かを目視観察した。塗膜の一部がポリウレタン系樹脂板の表面から剥離している場合は、下記評価「E」とし、下記のクロスハッチ試験は行わなかった。
【0098】
塗膜にJIS K5600-5-6:1999 7.手順に準拠したクロスハッチ試験を実施した。試験後の放射線架橋性ホットメルト接着剤の表層を観察し、下記の基準に基づいて、ポリウレタン系樹脂に対する密着性を評価した。なお、各マス目の半分以上が剥がれたものを剥がれたマス目として計測した。ポリウレタン系樹脂に対する密着性が優れていると、ポリウレタン系樹脂に対する接着性も優れていると判断できる。
A:剥がれたマス目の割合が0%だった(全く剥がれなかった)。
B:剥がれたマス目が存在したが、10%未満であった。
C:剥がれたマス目の割合が10%以上で且つ50%未満であった。
D:剥がれたマス目の割合が50%以上であった。
E:粘着テープによって塗膜の一部が剥離した。
【0099】
【0100】