(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013277
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】非吸着性包装材料及びそれを用いた包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220111BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220111BHJP
C08L 33/18 20060101ALI20220111BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20220111BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B32B27/00 H
C08L101/00
C08L33/18
C08K5/29
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115718
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB15
3E086BB21
3E086BB51
3E086BB62
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA35
4F100AB10B
4F100AH03D
4F100AK01C
4F100AK25D
4F100AK27D
4F100AK41A
4F100AK63C
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA02D
4F100CB03D
4F100EC03
4F100EH46D
4F100EJ86D
4F100JB16C
4F100JD02B
4F100JD14D
4F100JL12D
4F100JN02B
4F100YY00D
4J002AA011
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
4J002BB171
4J002BG042
4J002BG052
4J002BG072
4J002BG092
4J002BG102
4J002ER006
4J002FD342
4J002FD346
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG00
4J002GJ00
(57)【要約】
【課題】内容物の香気成分や薬効成分を吸着しないとともに強固なヒートシール強度を発現する非吸着性包装材料およびそれを用いた包装袋を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、基材層、ガスバリア層、熱可塑性樹脂層および該熱可塑性樹脂層の上に非吸着層形成用コーティング剤が塗工されて形成された非吸着性コート層とを有し、前記非吸着性コート層を内容物収容空間に接するように配置し、周縁部を線状にヒートシールして製袋する、包装材料において、
前記周縁部は、線状にヒートシールされることにより、その熱及び圧力により前記非吸着性コート層が破壊され、非吸着性コート層を挟んだ前記熱可塑性樹脂同士が溶融してシールされることを特徴とする非吸着性包装材料である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、ガスバリア層、熱可塑性樹脂層および該熱可塑性樹脂層の上に非吸着層形成用コーティング剤が塗工されて形成された非吸着性コート層とを有し、前記非吸着性コート層を内容物収容空間に接するように配置し、周縁部を線状にヒートシールして製袋する、包装材料において、
前記周縁部は、線状にヒートシールされることにより、その熱及び圧力により前記非吸着性コート層が破壊され、非吸着性コート層を挟んだ前記熱可塑性樹脂同士が溶融してシールされることを特徴とする非吸着性包装材料。
【請求項2】
前記非吸着層形成用コーティング剤は、重合体からなる主剤と、反応性官能基を有する硬化剤と、分散媒とを含有し、
主剤を構成する重合体は、ニトリル基含有アクリル単量体単位と、前記硬化剤の反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する反応性官能基含有アクリル単量体単位を含み、
前記硬化剤は、反応性官能基がイソシアネート基であるジイソシアネート化合物であり、
前記反応性官能基含有アクリル単量体単位がヒドロキシ基含有アクリル単量体単位であり、
前記主剤における前記ニトリル基含有アクリル単量体単位の含有量が15~40質量%であり、
前記主剤中のヒドロキシ基(A)と前記硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)が2.0以上5.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の非吸着性包装材料。
【請求項3】
前記非吸着層形成用コーティング剤は、重合体からなる主剤と、イソシアネート基を有する硬化剤と、分散媒とを含有し、
主剤を構成する重合体は、ヒドロキシ基を有するアクリル単量体単位を含み、水酸基価が30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、
前記主剤中のヒドロキシ基(C)と前記硬化剤中のイソシアネート基(D)のモル比、(D)/(C)が、0.5以上5.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の非吸着性包装材料。
【請求項4】
請求項1に記載の非吸着性包装材料を、前記非吸着性コート層が内容物を収容する空間と接するように配置した包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香気成分や薬効成分を保持したい物質の包装に最適な非吸着性包装材料及びそれを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年包装袋の一種として、プラスチックフィルムを基材とする単体または積層体から構成されるものが広く普及しており、さまざまな形態のものが、幅広い用途に用いられており、現代生活にとっては不可欠なものとなっている。
【0003】
例えば液体袋としても用いられ、飲料のほかレトルト食品などの食品分野でも広く用いられている。あるいは医薬品や化粧品、日用品やトイレタリーの分野でも、さまざまな商品がスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。液体容器のほかにも、様々な用途展開がなされている。
【0004】
これらの食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料としては、一般に、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の進入を遮断するガスバリア性を有する積層フィルムが用いられている。
【0005】
そして多くの場合、プラスチックフィルムを基材とする単体または積層体から構成される包装袋は、最内層側にシーラント層を設けており、シーラント層同士を対向させて重ねヒートシールして包装袋に製袋する方法が取られている。
【0006】
このようなシーラントフィルムとして、高いシール強度を示すポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、EMMAなどのコポリマー樹脂が用いられている。
【0007】
しかし、これらの樹脂からなるシーラントフィルムは、油脂や香料などの有機化合物からなる成分を吸着しやすいため、シーラントフィルムを内容物と接する最内層としている包装材は、内容物の味覚や香りを変化させやすいという欠点を持っている。また、香気成分・薬効成分等の吸着による内容物の減少が起こってしまう。
【0008】
この対策として、包装袋の内面にポリアクリロニトリル樹脂を用いる方法がある。従来のポリアクリロニトリルフィルムは、押出成形によって成形された厚さ20~30μm程度のフィルムである。このポリアクリロニトリルフィルムは、通常、他のプラスチックフィルムと積層されて包装材として供されている(特許文献1)。
【0009】
しかし、ポリアクリロニトリルは硬く脆い性質を持ち、ポリエチレン樹脂と比較しヒートシール強度も弱い樹脂であるため、フィルムやシートにすると厚み、重みのある物品や立体物の包装袋には不向きであるという問題があった。
【0010】
そこで、ポリアクリロニトリル粒子とポリエステル粒子とを含むコーティング剤を基材に塗工することによって薄い非吸着層を形成し、包装材料を得ることが提案されている(特許文献2)。しかし、フィルム基材上に非吸着層形成用コーティング剤の塗工によって薄い非吸着層を形成させる方法では、非吸着層部分ではコーティング剤がヒートシール性に劣るため、ヒートシールできず包装袋にできないという課題があった。
【0011】
また、非吸着層をヒートシール部分を除いてコートすることも検討したが、完全なパターンコートは技術的に不可能であり、部分的に基材フィルムが内面に露出してしまい、非吸着性が不充分という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8-143452号公報
【特許文献2】特開2012-184357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、内容物の香気成分や薬効成分を吸着しないとともに強固なヒートシール強度を発現する非吸着性包装材料およびそれを用いた包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、少なくとも、基材層、ガスバリア層、熱可塑性樹脂層および該熱可塑性樹脂層の上に非吸着層形成用コーティング剤が塗工されて形成された非吸着性コート層とを有し、前記非吸着性コート層を内容物収容空間に接するように配置し、周縁部を線状にヒートシールして製袋する、包装材料において、
前記周縁部は、線状にヒートシールされることにより、その熱及び圧力により前記非吸着性コート層が破壊され、非吸着性コート層を挟んだ前記熱可塑性樹脂同士が溶融してシールされることを特徴とする非吸着性包装材料である。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記非吸着層形成用コーティング剤は、重合体からなる主剤と、反応性官能基を有する硬化剤と、分散媒とを含有し、
主剤を構成する重合体は、ニトリル基含有アクリル単量体単位と、前記硬化剤の反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する反応性官能基含有アクリル単量体単位を含み、
前記硬化剤は、反応性官能基がイソシアネート基であるジイソシアネート化合物であり、
前記反応性官能基含有アクリル単量体単位がヒドロキシ基含有アクリル単量体単位であり、
前記主剤における前記ニトリル基含有アクリル単量体単位の含有量が15~40質量%であり、
前記主剤中のヒドロキシ基(A)と前記硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)が2.0以上5.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の非吸着性包装材料である。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、前記非吸着層形成用コーティング剤は、重合体からなる主剤と、イソシアネート基を有する硬化剤と、分散媒とを含有し、
主剤を構成する重合体は、ヒドロキシ基を有するアクリル単量体単位を含み、水酸基価が30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、
前記主剤中のヒドロキシ基(C)と前記硬化剤中のイソシアネート基(D)のモル比、(D)/(C)が、0.5以上5.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の非吸着性包装材料である。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の非吸着性包装材料を、前記非吸着性コート層が内容物を収容する空間と接するように配置した包装袋である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内容物の香気成分や薬効成分を吸着しないとともに強固なヒートシール強度を発現する非吸着性包装材料およびそれを用いた包装袋を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る包装材料の層構成について、一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る包装材料を用いた包装袋の正面図である。
【
図3】本発明に係る包装材料が線シールによって熱融着された状態を拡大して示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を、図を用いて以下に詳しく説明する。
図1は、本発明に係る非吸着性包装材料(1)の実施形態を示す概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係る非吸着性包装材料(1)は、基材層(10)、ガスバリア層(11)、熱可塑性樹脂層(12)および非吸着性コート層(13)をこの順に積層したものを基本の構成とする。
【0022】
<基材層>
基材層(10)としては、プラスチックフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムは高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリイミドなどが使用でき、商品や内容物に応じて適宜選択される。
【0023】
包装材料には通常印刷層(14)が形成されるが、外側から見ることのできるように、基材層(10)とガスバリア層(11)との間に形成することが好ましい。必要に応じて商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報を表示、印刷することができる。
【0024】
印刷方法および印刷インキには特に制約を設けるものではないが、既知の印刷方法、印刷インキの中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮すれば適宜選択してよく、たとえばグラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法などを用いることができる。中でもグラビア印刷法はその印刷の仕上がりや、生産性の点で好ましく用いることができる。
【0025】
<ガスバリア層>
また、内容物の保存性を向上させることを目的として、包装材料中にガスバリア層(11)を設けることができる。これにより、外部への内容物のにおい漏れや、外部からの酸素及び水蒸気ガスの浸入を抑え、内容物の変質を防ぐことができる。
【0026】
ガスバリア層(11)として、アルミニウム箔等の金属箔、または金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルムを用いることができ、この場合には、優れたガスバリア性が得られ、また遮光性を有することとなる。
【0027】
また、本発明においては、ガスバリア層(11)上に、コロナ処理を施すことで、より層間接着強度を向上させることができる。またより強固な接着強度を求めるならば、アンカーコート層を設けることもできる。
【0028】
<熱可塑性樹脂層>
熱可塑性樹脂層(12)は、熱可塑性樹脂層同士を加熱、加圧によって互いに融着させてシールすることができる。熱可塑性樹脂層(12)の材質としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。熱可塑性樹脂層(12)の形成には、あらかじめフィルムに製膜した材料を貼りあわせて積層することができる。
【0029】
<非吸着性コート層>
本発明の非吸着性コート層(13)は、上記熱可塑性樹脂層(12)の上に本発明の非吸着層形成用コーティング剤を、塗布・乾燥し硬化させて形成される。また、当該非吸着性コート層(13)は、食品、医薬品、化粧品などの内容物と接する最内層に設けられるものである。
【0030】
本発明の非吸着層形成用コーティング剤(以下「コーティング剤」と略す。)は、包装材料に非吸着性を付与するものであり、主剤と硬化剤と分散媒とを含有する。ここで、非吸着性とは、食品、医薬品、化粧品などに含まれる有効成分を吸着しづらい性質のことである。吸着の抑制が要求される有効成分としては、例えば、揮発性成分ではオレンジジュースなどに含まれるリモネン、医薬品に含まれるサリチル酸メチル、l-メントール、dl-カンファーなどが挙げられる。吸着の抑制が要求される有効成分として、不揮発性成分では消炎鎮痛剤などに用いられる各種薬剤、例えばケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物などが挙げられる。
【0031】
<非吸着層形成用コーティング剤>
[実施形態1]は、コーティング剤の一例であり、[実施形態2]は他の例である。
【0032】
[実施形態1]
(主剤)
前記主剤は、ニトリル基含有アクリル単量体単位と、ニトリル基含有アクリル単量体単位以外の反応性官能基含有アクリル単量体単位とを含む重合体である。反応性官能基含有アクリル単量体単位は、硬化剤の反応性官能基と反応可能な反応性官能基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基等)を有するアクリル単量体単位である。また、主剤は、ニトリル基含有アクリル単量体及び反応性官能基含有アクリル単量体単位以外の他の単量体単位を含んでも構わない。
【0033】
ニトリル基含有アクリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。反応性官能基含有アクリル単量体としては、ヒドロキシ基含有アクリル単量体、カルボキシル基含有アクリル単量体、エポキシ基含有アクリル単量体が挙げられる。反応速度を制御しやすい点では、反応性官能基含有アクリル単量体は、ヒドロキシ基含有アクリル単量体であることが好ましい。
【0034】
ヒドロキシ基含有アクリル単量体としては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。カルボキシル基含有アクリル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。エポキシ基含有アクリル単量体としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。他の単量体としては、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、
アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等)、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等)、芳香族ビニル(例えば、スチレン、ビニルトルエン等)、酢酸ビニル、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0035】
主剤におけるニトリル基含有アクリル単量体単位の含有量は15質量%以上であることが好ましく、15~40質量%であることがさらに好ましい。ニトリル基含有アクリル単量体単位の含有量が前記下限値以上であれば、より高い非吸着性を得ることができ、前記上限値以下であれば、主剤を分散媒に溶解または分散させやすくなり、該コーティング剤を容易に調製できる。
【0036】
(硬化剤)
前記硬化剤は、反応性官能基を有し、主剤の反応性官能基と反応して主剤を架橋させて硬化させるものである。主剤がヒドロキシ基含有アクリル単量体単位を有する場合には、硬化剤は、反応性官能基がイソシアネート基であるジイソシアネート化合物が好ましい。ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系ジイソシアネートが挙げられる。また、これらジイソシアネート化合物の重合体、誘導体または混合物であってもよい。
【0037】
主剤と硬化剤の比率は、主剤中の反応性官能基(A)と硬化剤中の反応性官能基(B)のモル比、(B)/(A)が2.0以上5.0以下であることが好ましい。(B)/(A)が前記下限値以上であれば充分に主剤を硬化させることができ、前記上限値以下であれば非吸着層のブロッキングを防ぐことができる。
【0038】
(分散媒)
分散媒は、主剤及び硬化剤を溶解または分散させる液体である。分散媒としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤、炭化水素系溶剤を使用することができる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アノン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。グリコール系溶剤としては、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0039】
[実施形態2]
実施形態2のコーティング剤は、主剤と硬化剤が下記の点以外は、実施形態1と同様である。
(主剤)
主剤は、ヒドロキシ基を有するアクリル単量体(以下、「ヒドロキシ基含有アクリル単量体」ともいう。)単位を含む重合体である。該重合体のヒドロキシ基は、硬化剤の有するイソシアネート基と反応する。
【0040】
ヒドロキシ基含有アクリル単量体単位を形成するヒドロキシ基含有アクリル単量体としては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられ、1種以上を使用
できる。
【0041】
主剤を構成する重合体は、JIS K0070に基づいて測定される水酸基価が、30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、40mgKOH/g以上90mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価が前記下限値以上であれば、より高い非吸着性を得ることができ、前記上限値以下であれば、架橋に必要な硬化剤の量を少なくでき、コーティング剤により形成された非吸着層のブロッキングを防ぐことができる。主剤を構成する重合体の水酸基価は、該重合体中のヒドロキシ基含有アクリル単量体単位の含有量により、調整できる。
【0042】
主剤を構成する重合体の水酸基価が前記範囲内である限り、該重合体中のヒドロキシ基含有アクリル単量体単位の含有量には特に制限はないが、通常、ヒドロキシ基含有アクリル単量体単位の含有量は、重合体を構成する全体単位100質量%中、3~60質量%であることが好ましく、5~55質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、重合体中の各単量体単位の含有量は、重合体製造時の各単量体の使用量に基づく値であり、重合体の製造に用いた単量体の総量を100質量%とした場合のその単量体の質量割合(%)である。
【0043】
(硬化剤)
硬化剤は、イソシアネート基を有し、主剤のヒドロキシ基と反応して主剤を架橋させて硬化させるものである。硬化剤はジイソシアネート化合物が好ましい。ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系ジイソシアネートが挙げられる。また、これらジイソシアネート化合物の重合体、誘導体または混合物であってもよい。
【0044】
主剤と硬化剤の比率は、主剤中のヒドロキシ基(C)と硬化剤中のイソシアネート基(D)のモル比、(D)/(C)が0.5以上5.0以下であることが好ましく、0.8以上3.5以下であることがより好ましい。(D)/(C)が前記下限値以上であれば充分に主剤を硬化させることができ、前記上限値以下であれば、コーティング剤により形成された非吸着層のブロッキングを防ぐことができる。
【0045】
<非吸着性コート層の形成方法>
非吸着性コート層を形成する方法としては、熱可塑性樹脂(12)の面上に、上記コーティング剤を塗工し、乾燥させる方法が挙げられる。コーティング剤の塗工方法としては特に制限はなく、例えば、ワイヤーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法等を適用できる。
【0046】
コーティング剤の塗工厚さは、乾燥後の非吸着層の厚さで0.05~10μmにすることが好ましく、0.1~5μmにすることがより好ましい。塗工厚さが前記下限値以上であれば、汎用的な塗工装置によって容易に塗工でき、前記上限値以下であれば、塗工量が少なくなるため、充分に低コスト化できる。
【0047】
塗工後の乾燥方法としては、熱風乾燥法、赤外線照射乾燥法等を適用できる。乾燥温度は、40~120℃であることが好ましく、50~100℃であることがより好ましい。乾燥温度が前記下限値以上であれば、乾燥速度を速くでき、前記上限値以下であれば、経済的である。乾燥後には、主剤と硬化剤とを充分に反応させるための加熱処理が施されてもよい。加熱処理の温度は30~100℃であることが好ましく、40~70℃であることがより好ましい。
【0048】
<ヒートシール方法>
包装材料(1)の内容物と接する最内層に、非吸着層形成用コーティング剤の塗工によって、薄い非吸着性コート層を形成することにより、食品、医薬品、化粧品などに含まれる有効成分の吸着が抑制される。しかし、本発明の非吸着層形成用コーティング剤は、ヒートシール性に劣るため、通常のシールバーを用いたヒートシール方法ではシールできず包装袋にできない。
図2および
図3を参照して、本発明のヒートシール方法を詳細に説明する。
【0049】
図2は、本発明の包装材料(1)を用いた包装袋(2)の正面図を示す。本発明の実施形態の1例では、包装袋(2)の外周縁と、外周縁の端部よりやや内側を線シールして4辺をシールし製袋されている。最内層に非吸着層形成用コーティング剤の塗工によって、薄い非吸着性コート層(13)を形成させた積層体を対向させて重ね合わせ、4辺全てをシール幅1mm(=a)の線シール部が2mm(=b)間隔にて平行に配置されヒートシールされている。なお、線シール部の本数(2本)、シール幅(a)、シール間隔(b)に関してはこれに限定するものではない。
【0050】
図3は、線シール(21)によって熱融着された状態を拡大して説明した図であり、薄い非吸着性コート層(13)を形成させた積層体を対向させて重ね合わせたステップ(A)と、非吸着性コート層(13)を挟んでいる熱可塑性樹脂(12)同士が熱シールされたステップ(B)とを含む。
【0051】
線シール(21)が行なわれると、熱及び圧力により積層体の最内層を構成する非吸着性コート層(13)と非吸着性コート層を挟んだ熱可塑性樹脂(12)が溶融し、圧力および熱を調整することで非吸着性コート層(13)だけが破壊されることによって、熱可塑性樹脂(12)同士が短絡し、熱融着によりシールされる。本実施の形態においては、細い線シールによるシール部をより強固にするために、線シールが間隔を空け平行に2回行なわれる。
【0052】
通常のヒートシール方法では、シール幅(7~15mm)に対し、ヒートシール用金型装置を用い、熱(160~180℃)および圧力(0.2MPa)、シール時間1秒をかけて溶融し行うが、本発明の線シールによるヒートシール方法では、シール幅(1mm)に熱(160~180℃)および圧力(0.5MPa)、シール時間1秒の条件で行うことによって、最内層の非吸着性コート層だけが破壊され、熱可塑性樹脂同士の熱融着によりシールすることが可能になる。
【0053】
このようにして、本発明の非吸着性コート層(13)を備える非吸着性包装材料(1)は、非吸着性と共に熱融着性を発揮するため、薬剤や食品を包装するための包装材料として好適に使用できる。本発明の包装材料(1)は、フィルム状のまま使用してもよいし、成形または加工して袋状にしてもよく、また、蓋材などにも使用できる。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
【0055】
<実施例1>
まずコーティング剤を以下のように作製した。
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機、滴下ロート等を備えた反応容器に、酢酸エチル100部、酢酸n-プロピル300部、メチルエチルケトン300部を仕込み、90℃
となるまで加熱し、その温度を保持した。次いで、前記反応容器内を攪拌し続けながら、反応容器に、メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル20部、ベンゾイルパーオキサイド3部を含む混合液を90℃で3時間滴下し、さらに1時間保持した。その後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1.5gをイソプロピルアルコール200gに溶解した開始剤溶液を沸点にて、均一に2時間掛けて滴下し、さらに1時間保持した。これにより、主剤を得た。得られた主剤の固形分濃度は10%、質量平均分子量は32,000(昭和電工社製SHODEX KF-80MによりGPC法で測定、ポリスチレン基準)、水酸基価は86mgKOH/g(JIS K0070に従って測定)、ガラス転移点は94℃(JIS K7121に従って測定)であった。
【0056】
得られた主剤100部に対し、硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体の固形分75%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン工業社製:商品名コロネートHL)を10部添加し、スターラーによって攪拌して、コーティング剤を得た。このとき、主剤中のヒドロキシ基(A)と硬化剤中のイソシアネート基(B)のモル比、(B)/(A)=2.0であった。
【0057】
次に、ポリエステル基材12μm(フタムラ化学株式会社製:FE2001)とアルミ基材7μm(東洋アルミ株式会社製1N30)、直鎖状低密度ポリエチレン基材40μm(フタムラ化学株式会社製:XMTN)を接着剤としてエステル主鎖の主剤(三井化学株式会社製:A525)と硬化剤(三井化学株式会社製:A52)にて貼り合わせた積層体のポリエチレン基材の上に、非吸着材料として上記のように作成したコーティング剤をワイヤーバーを用いて乾燥時の膜厚が2~3μmになるように塗布し、120℃、15分間乾燥することで非吸着性コート層を形成させた。作成した積層体の非吸着層同士を重ね合わせ、3辺をシール幅が1mmとなるようにシールして3方パウチの形とし、その中に内容物として、化粧水を充填し、開口部をシール幅1mmにてヒートシールして封止した(外観は
図2)。
【0058】
ヒートシール強度を株式会社エー・アンド・デイ社製RTF-1250にて引張速度300m/minで測定した(JIS Z1707準拠)。また、40℃湿度フリーの条件下で、1か月保管後取り出し、内容物の化粧水を取り出して液の色(白濁具合)を目視にて確認した。
【0059】
<実施例2>
コーティング剤の作成方法が下記である以外は、実施例1と同様である。
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル100部、酢酸n-プロピル300部、メチルエチルケトン500部を仕込み、90℃となるまで加熱し、その温度を保持した。次いで、前記反応容器内を攪拌し続けながら、反応容器に、メタクリル酸メチル50部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル20部、アクリロニトリル30部、ベンゾイルパーオキサイド3部を含む混合液を90℃で3時間滴下し、さらに8時間保持した。これにより、主剤を得た。得られた主剤の固形分濃度は10%、質量平均分子量は30,000(昭和電工社製SHODEX KF-80MによりGPC法で測定、ポリスチレン基準)、水酸基価は86mgKOH/g(JIS K0070に従って測定)、ガラス転移点は93℃(JIS K7121に従って測定)であった。上記主剤100部に対し、硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体の固形分75%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン工業社製:商品名コロネートHL)を10部添加し、スターラーによって攪拌して、コーティング剤を得た。このとき、主剤中の反応性官能基(C)と硬化剤中の反応性官能基(D)のモル比、(D)/(C)=2.0であった。
【0060】
<比較例1>
包装袋作成時の線シール幅を10mmとした以外は、実施例1と同様である。
【0061】
<比較例2>
直鎖状低密度ポリエチレン基材上に非吸着層を形成させないこと以外は、実施例1と同様である。
【0062】
ヒートシール試験の評価結果を表1に、内容物の外観評価結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
<考察>
実施例1、2の結果より、非吸着性コート層が最内層でも、線シールによって十分なヒートシール強度が得られ、かつ、1か月保存後でも化粧水の液の色(白濁)はそのまま保持され、非吸着性を有することがわかった。比較例1は、ヒートシール強度が低く、包装袋にできなかった。これは通常の広幅シールにしたため、ヒートシールによっても最内層の非吸着性コート層が破壊できず、熱可塑性樹脂層の熱融着によるシールが得られなかったと考えられる。また、比較例2は、熱可塑性樹脂層が最内層になっているので、ヒートシール性は優れるが、非吸着性がなく、化粧水成分内の(薬効)成分が熱可塑性樹脂層に吸着されて透明化した。
【0066】
以上の結果から、本発明の非吸着性包装材料を用いた包装袋は、内容物の香気成分や薬効成分を吸着しないとともに強固なヒートシール強度を発現することがわかった。