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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132784
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】風力発電装置及び液化水素製造船
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20220906BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20220906BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20220906BHJP
   F03D 9/32 20160101ALI20220906BHJP
   F03D 9/19 20160101ALI20220906BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20220906BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20220906BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20220906BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
B63B35/00 T
B63B35/44 C
F03D9/32
F03D9/19
C01B3/00 Z
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031434
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】721000413
【氏名又は名称】日高 修文
(72)【発明者】
【氏名】日高 修文
【テーマコード(参考)】
3H178
4G140
4K021
【Fターム(参考)】
3H178AA18
3H178AA34
3H178AA43
3H178AA51
3H178BB90
3H178CC01
3H178CC21
3H178DD12Z
3H178DD26X
3H178DD70X
4G140AB01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC07
4K021CA09
4K021CA12
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】強風に対応できる風力発電装置を提供する。
【解決手段】風取り入れ窓7と風排出口8のある円筒型のケーシング2の中に、円筒型ケーシング2の中心線を中心として回転するロータ軸4が設置してあり、このロータ軸4には風取り入れ窓7から取り入れられた風の風力を受け止めて該ロータ軸4を回転させるための3枚以上の板状の受風羽根6が固定してある。回転する該ロータ軸4は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシングの中に、円筒型ケーシングの中心線を中心線として回転するロータ軸が設置してあり、このロータ軸には風取り入れ窓から取り入れられた風の風力を受け止めて該ロータ軸を回転させるための3枚以上の板状の受風羽根が固定してあり、該ロータ軸に取り付けられた受風羽根のロータ径は円筒型のケーシングの内径より小さく風取り入れ窓から取り入れられた風の風力により軸の中心線を中心として該ロータ軸は回転し、ロータ軸を回転させた風は排出口より随時排出され、回転する該ロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電することを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
(ア) 円筒型のケーシングの内径は0.5m以上から50mで、長さが0.5mから100mであり、
(イ) 円筒型のケーシングの内部には円筒型のケーシングの中心線とほぼ同じ中心線をもつロータ軸が設けてあり、
(ウ) 該ロータ軸の直径は5cm以上200cm以下であり、ロータ軸は円筒型ケーシングの両端付近に設けた軸受にて受け止められて回転するようになっており、
(エ) ロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにした3枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように固定して風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)があり、
(オ) 該板状の個々の受風羽根の大きさは、風車ランナのロータ径が円筒型のケーシングの内径より小さくなる高さで、長さは10cm以上で円筒型のケーシングの長さより小さく、
(カ) 個々の該受風羽根の形状は長方形又は多角形であり、平らは板状又は曲面のある板状、波状、カップ状などであり、
(キ) ロータ軸に固定される受風羽根はロータ軸の長さ方向に同じ長さで同じ取り付け角度で並列に整然と並べるか、又は異なる長さや異なる取り付け角度で長さ方向に1区画又は複数の区画毎に同じ列で又は異なる列で固定されてあり、
(ク) 風力で回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されている
ことを満足する請求項1の風力発電装置。
【請求項3】
(ア) 風力発電装置が風速10m/秒以上の強い風力を利用した発電装置であり、
(イ) 発電して得た電力を利用して水素を製造するための水の電気分解装置を装備しており、
(ウ) 電気分解により発生させた水素を液化するための冷凍装置を装備しており、
(エ) 船内で製造した液化された水素を貯蔵するために保存タンクを装備しており、
(オ) 時速10km以上の速力で走航可能である
ことを満足する液化水素製造船の甲板上に設置することを満足する請求項1及び請求項2の風力発電装置。
【請求項4】
(ア) 甲板の面積が500平方メートル以上であり、時速10km以上の速力で走航可能である
ことを満足する請求項3の液化水素製造船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自然エネルギーである風力を利用して発電する発電装置に関する。特に、本発明の発電装置は風の力を利用して液化水素を製造する液化水素製造船で利用するとき大きな効果を発揮できる。特に、本発明の発電装置を利用した液化水素製造船は、自然エネルギーである強い風力が無限に、しかも集中して入手可能な、例えば強い風が発生する夏の南太平洋での台風や低気圧などの時期や場所を追跡することで自然エネルギーを効率良く利用でき、それにより発電し、その電気で水を電気分解して水素を作り、その水素を液化することで液化水素を非常に低コストで製造し、一時保管することで製造した液化水素を既存の化石燃料などに代替する燃料として提供することができ、それにより二酸化炭素排出量の削減や地球温暖化防止に寄与するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化が問題となりその主要原因である化石燃料使用により発生する二酸化炭素排出の量の削減が叫ばれている。そのための有力な削減手段として太陽光、風力、波力、地熱などの自然エネルギー(以下、総括的に新エネルギーと称する)を利用した発電の利用が有望視され、その比率は年々高まってきている。しかし、依然としてその利用比率は全発電電力量の10%程度に過ぎない。これは石炭、石油、天然ガス等による火力発電や原子力発電等の既存発電(以下、総括的に既存エネルギーと称する)と比較した場合の新エネルギー発電のコストが非常に高いことが原因である。このため現在、世界的にも新エネルギー発電は既存エネルギー発電の設置が困難な場所や地域での例を除けば、環境対策や温暖化の要因の一つである二酸化炭素排出量の削減のための手段として経済面をある程度犠牲にして政策的に実施されているというのが実情である。令和3年1月9日に放映されたNHKスペシャル 気候大異変という番組によれば「地球シミュレータの警告として世界屈指の計算速度を誇る日本のスーパーコンピューターの地球シミュレータは、私たちの未来に横たわる危機を子細に予測している。100年後、世界のCO2濃度は倍増し、気温は最大4.2度上昇する。東京は奄美大島付近の気温になり、真夏日の日数は100日以上に増加。気温の上昇は世界中で熱波による死者の増加という突然の災害をもたらす」と世界の著名な環境学者達の意見なども含めて報道している。地球温暖化対策は絶対的に必要なことであり、そして何より緊急なことである。そのような緊急問題であるにも関わらず既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる方法が開発されない限り今後とも既存発電を全面的に代替できるとは考えられていない、少なくともその変換速度は遅々たるものとなる、そしてそれは現在の経済学上の正論である。
本発明はかかる課題、特にコストの問題を解決するために鋭意思慮し検討した結果、既存の知識と技術を総合的に俯瞰し、それらを巧妙に組み合わせ、さらには新規な技術を取り入れて応用して総合的システムとして完成させたものである。以下、本発明の効果、用途について、個々に説明する。
【0003】
代表的な従来技術として例えば、太陽光発電が各家庭の家の屋根に取り付けたソーラパネルによる家庭用電源などとして政府の奨励金もありかなり広く普及しているが、全消費エネルギーに対する太陽光発電の全発電量に対する比率は数%程度にすぎず今後ともこの比率が劇的に上がるとは予想されていない。この技術では地球の面積1m2当り1,360W注がれている太陽からのエネルギー(太陽定数)を利用しているが、現在の技術ではこの広く薄く注がれている光エネルギーのわずか数%を電気に変換し発電量として利用しているに過ぎない。太陽光はあまりにもエネルギー密度が小さく、工業用として利用する発電装置を設置しようとすると途方もない敷地を必要とし、それから得られる電力コストも石炭、石油、天然ガス等による火力発電や原子力発電等の既存発電(既存エネルギー)と比較して2倍以上、時には4倍近くなる。太陽光発電そのものは二酸化炭素を排出せず、騒音も出さないが、実は太陽光を電気に変換するための必須設備としての高純度シリコンパネルを製造する過程で多くのエネルギーを使用することが知られており、また太陽光発電は当然光のない夜間や雨天には発電できないため蓄電装置と一体化することが必要であり将来に亘りその用途はコスト問題で限定されると考えられている。
【0004】
一方、世界的には太陽光発電よりも風力発電が普及している。風力も地上に広く小さいエネルギー密度で分布しているが夜間でも風さえあれば発電できるというメリットがあり、大型化により投資当たりの発電効率は太陽光発電より優れているとされており、特に人口密度も小さく環境意識の高い欧州諸国でその比率が高く、広大な住民非住居の土地を持つ中国でもその比率は未だ高くないが量的には採用が相当に進んでいる。一方で、発電装置からの騒音、台風などの強風に対する対策、地震対策、景観などの問題のため人口密度が高い日本ではあまり普及していない。風の力を利用するという意味で陸上でなく洋上でのいわゆる洋上風力発電は四方を海に囲まれた日本に敷地的に向いている側面が多いと考えられている。しかし、洋上風力発電も特に、オランダや英国を中心とする欧州で導入が進んでいるが日本ではその将来的な可能性とは別で未だ実証実験段階である。
【0005】
日本政府は2020年12月15日の官民協議会で2040年までに日本全国で洋上風力設備を最大4500万キロ・ワットとし、発電コストは既存の火力発電よりも安くするというチャレンジングな目標を掲げている。しかし、日本で実際に実行しようとすると環境アセスメントや沿岸での漁業補償の問題、日本の近海は水深が深いという問題、年々巨大化している台風に対する対策、地震や津波に対する対策、洋上発電装置からの陸上への送電と送電ロス対策など多くの未解決課題があり、さらに確立されている既存発電(既存エネルギー)の継続利用やそこでの更なる技術革新の進行があり、新規投資の場合であっても特に天然ガスを利用した最新の既存発電(既存エネルギー)との投資効果比較等から二酸化炭素排出量削減を目的とした政府補助金など政策的に強力な後押しがない限り洋上風力発電は容易に普及しないと思われる。これらは偏に既に確立されている既存エネルギー発電に対して新エネルギー発電がコスト的に優位でないからであり、コスト的に優位でないものを環境保全という大義名分や権力による強制力だけで継続的に早期に普及させることはできない。2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロにするという日本政府の公約を実現するためには結局、今後特段の技術革新が無い限り既存エネルギー発電より割高となる費用を国の予算で、ひいては国民の追加的な負担で補填するということになる可能性が高く、地球が抱える問題からいえばそれも仕方ないことと考えられている。特に、巨大化した台風では今後風速70m/秒以上の強風が高い頻度で日本に来襲することが現実問題として予測されており洋上設備における設備対策費は大きくなる。また欧州と全く異なり日本は地震国であり地震とそれに伴う津波の可能性は単に可能性だけでなく現実に高い確率で起きると多くの学者により予測されておりその対策も検討課題であるが、そもそも巨大津波に対する対策が洋上設備できるかという課題があり、これも結局、そのような事態に対する損害保険をかけることとなる可能性がある。さらに、洋上風力発電の比率が高まるほどかかる災害発生時の日本経済への影響ははかり知れず、致命傷となる可能性もあり、結局石炭、石油、天然ガス等による火力発電や原子力発電等の既存発電(既存エネルギー)もBCP(事業継続計画)保険として設備保全して使用可能な状態で維持することが日本経済の存続のために必須であり、その費用も大きい。
【0006】
即ち、永年の技術開発により確立され、さらに今なお急速に技術的進歩を遂げている既存発電(既存エネルギー)のコスト競争力は強大である。それにコストで勝てる自然エネルギー(新エネルギー)発電は一部の古い水力発電以外には現在は存在しない。従来の自然エネルギー(新エネルギー)は地球上に広く低い密度で存在する太陽光、地上風力、洋上風力、地熱などを利用して広大は面積を使用して発電し、それを既存の送電装置に接続して通常に電気として使用するものであり、当然インフラストラクチャーは巨大となり、結果、投資額も保全などの管理費用も莫大となり、長期的に考えて既存発電(既存エネルギー)に対してコスト的に不利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は既存発電(既存エネルギー)よりも低コストのエネルギーを供給でき、二酸化炭素を排出しないで環境に優しい形で自然エネルギーを利用したシステムを構築することであり、そのための必須手段として自然エネルギーである風力を利用して発電する発電装置を提供することである。特に、既存の風力発電が多くの場合対象としていない強風に対応できる風力発電装置を提供することである。さらに、その風力発電装置を液化水素製造船に取り付けて該発電装置で発電した電気を利用して水を電気分解して、水素を得て、それを輸送、貯蔵が可能な液化水素に変換してエネルギー原料として発電や燃料などとして利用可能化できる液化水素を作り、一時的に保存できる液化水素製造船に供することである。これらの全ての装置は既存の商業化された技術や設備を組み合わせて一つのシステムとして構築することもできるが、このシステムの中で最も重要な設備は風力発電装置であり、その効率により本発明の究極の目的である既存エネルギーよりも低コストにできるかどうかがかかっている。風力発電そのものも商業化された技術であり風力発電装置には多くの種類があるが既存技術として実用化され広範に使用されている。その代表的なものはプロベラ型の受風羽根により2~15m/秒程度(特に、5~10m/秒)の低速の風を固定された位置にて受け身で利用することを目的としたものであり、これらの風力発電装置では莫大は自然エネルギーを持つ台風などの強い風の利用は想定されていないし適しておらず、むしろ例えば25m/秒以上の強風では設備保護のため装置を停止(カットアウト)するようにしている。
【0008】
そこで本発明ではかかる莫大は自然エネルギー源である特に強い風の力を高い効率で電気エネルギーに変換できる発電装置を提供する。特に、地球上に広く低い密度で存在する自然エネルギーを受け身で利用するのではなく、人類が災難、災害とさえ考えてそれから避けることを優先的に考えているが実は巨大なエネルギーをもつ台風などの強風を逆転の発想で、それをむしろ無限の自然エネルギー源としてとらえ積極的に利用するために、それに適した発電装置と提供することである。さらには、この発電装置で発電した電気を利用して水を電気分解して、水素を得て、それを輸送、貯蔵が可能な液化水素に変換してエネルギー原料として発電や燃料などとして利用可能化できる液化水素を作る液化水素製造船に供することである。
【0009】
世界の全体発電量の中での比率は低いが風力発電は既に完成された技術として商業的にも広く普及しており、その比率も今後も大きくなると予想されており、多くの技術文書、解説書等の出版物が出版されている。それらを総括的に言えば、既存の風力発電装置に使用されている風車にはプロペラ型、多翼型、ダリウス型、サボニウス型などがあり、これらの風力発電装置の風車は陸上や洋上に固定されて設置され、その場所に日常的に吹いている2m/秒以上で15m/秒以下の風の利用を想定したもので、2つ又は3つ又は3つ(通常は3つ)のブレードから成るプロペラ型の風車の風力発電装置が圧倒的に主流で支配的であると言える。このプロペラ型の風力発電装置においては1基あたりの発電能力を高めるためにプロベラのブレードもますます巨大化しており、最近ではロータ(回転体)直径の大きさが100m以上のものも建造されている。例えば、GE Renewable Energy社のHalide-13MXという機種ではロータ径が220mで設備の高さは実に260mで定格出力は1基で12000kwとされている。
【0010】
これらの風車は風向きに対してブレードの受風面で風を受けており、ブレードの設計により空気の流れで羽根の周りに揚力を発生させてそれを利用して高い回転を得て、その回転を増速機でさらに高い回転に転換させて効率よく発電している。しかし、風の持つエネルギーである風圧という面で考えたとき、計算上、プロペラ型の風車ではロータ直径から計算できる円の面積に向かって吹いてくる実際の風の量(風力、風圧)の数十分の一の力を利用しているに過ぎない。しかも、装置の利用効率を高めるために巨大すればするほど風車の高さも50~100m以上、時には260m以上となっており、ブレードの長さ方向の長さが100m以上にもなるのであり、風車のブレードが風圧により破壊される危険性は益々高まるので、実際に利用できる風も15m/秒以下となる。機器材質や機械的補強によりより強い風にも耐えるように設計し建造することはある程度可能であるがコスト高となり発電効率も下がるので自ずと限界がある。風のエネルギーは風速の3乗に比例するので台風などの15m/秒以上の強い風は特段に優れたエネルギー源であるにも関わらず、既存の風力発電装置での最適風速は10m/秒程度とされており、設備にもよるが20m/秒程度以上の風のときは設備保護の観点から設備を固定するとかブレードの向きを変えるなどの方法で風を受けないように変化させるなどして運転そのものを停止(カットアウト)させているというのが実情である。そこで、本発明ではかかる莫大で無限な自然エネルギー源であるが既存風力発電装置では利用が避けられてきた特に強い風の力を高い効率で電気エネルギーに変換できる発電装置を提供する。
【0011】
上記したとおり、本発明が解決しようとする究極の課題は既存エネルギーよりも低コストのエネルギーを供給でき、二酸化炭素を排出しないで環境に優しい形で自然エネルギーを利用したシステムを構築することであり、強い風の力を高い効率で電気エネルギーに変換できる発電装置を船に搭載して、該風力発電装置で発電した電気を利用して水を電気分解して、水素を得て、それを輸送、貯蔵が可能な液化水素に変換してエネルギー原料として発電や燃料などとして利用可能化できる液化水素を既存エネルギーに勝る低コストで作れる液化水素製造船に供することを意図している。
【0012】
洋上の風力を利用して発電し、それを利用しようとする船の考えはこれまでも多く提案されている。例えば、特開平6-159224 「風力発電航行船」では船体上に風力発電機を備えたポスト及び高空風力発電装置を持つ繋留索を設置して、風力発電で発生した電力で船舶の推進プロペラを駆動する風力発電航行船」が提案されている。
特開平7-189884 「水面航行風水力発電装置と風力発電装置」では風力発電で水平軸回転風車を駆動して、船を航行させて、この船の航行での水力を手段として水力発電させることが提案されている。
特開2020-6795では「風力発電機搭載型船舶」として従来型の化石燃料のみに頼った水上航行および水上輸送を改善する方法として提案されている。
特開2007-326535「風力発電装置付き船舶」が提案され風力の有効利用を図ることができ、また船内で必要とされる電力の少なくとも一部を賄うことが可能になるとして提案されている。
特開2013-29101では「洋上風力発電施設の輸送据付方法および洋上風力発電施設の輸送据付バージ」が提案されている。
これらは、いずれも洋上での風力を利用してそのエネルギーを主としてその船の動力としてあるいはその動力の一部として利用しようとするものである。洋上の風力の中で台風などの強い風も言及されている。
特開2001-349272「洋上風力発電システム」では風力発電した得た電力を電気自動車用二次電池搭載のトラックに溜めてその電力を溜めたトラックを陸に揚げて利用する方法が提案されている。この場合は、洋上風力発電で得たエネルギーの電力をそのまま蓄電池のまま陸上で利用しようとするものである。
しかし、これらの提案は何れも本発明が目的とする「自然エネルギーを利用して液化水素を作り、しかもその液化水素を石炭や石油や天然ガスなどの化石燃料による火力発電や原子力発電等の既存エネルギーよりも低コストにて作り、該既存エネルギーを代替して、二酸化炭素の排出量削減、ひいては地球温暖化防止に役立てよう」とし、そのためには「自然エネルギーである風が無限にしかも密度高く存在する熱帯低気圧や台風の風を追跡して利用することが必須である」ことを見いだし、システム化した本発明の「自然法則を利用した技術的思想」の産業構造そのものを変えようとするものとは全く異なるものである。
既存の提案も本発明の提案も同じ自然現象や自然法則を利用している。しかし、既存の提案では本発明の目的を達成できないし、そもそも利用目的が異なる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の風力発電装置は、
風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシングの中に、円筒型ケーシングの中心線を中心線として回転するロータ軸が設置してあり、このロータ軸には風取り入れ窓から取り入れられた風の風力を受け止めて該ロータ軸を回転させるための3枚以上の板状の受風羽根が固定してあり、該ロータ軸に取り付けられた受風羽根のロータ径は円筒型のケーシングの内径より小さく風取り入れ窓から取り入れられた風の風力により軸の中心線を中心として該ロータ軸は回転し、ロータ軸を回転させた風は排出口より随時排出され、回転する該ロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電することを特徴とする風力発電装置である。
さらに、かかる風力発電装置が、発電された発電電力を利用して水素を製造するための水の電気分解装置を装備しており、発生させた水素を液化するための冷凍装置を装備しており、船内で製造した液化水素を貯蔵するために保存タンクを装備しており、しかも時速10km以上の速力で走航可能である液化水素製造船に取り付けてある風力発電装置である。
【0014】
即ち、本発明の風力発電装置及びその風力発電装置を取り付けた液化水素製造船は、本発明の目的に鑑みて、人類が災害と考えている台風などによる強風の利用を逆に目的として積極的に利用し、それに既存の知識、技術や設備を巧妙に組み合わせることでそれぞれの従来技術では到底達成できなかった驚くべき量的、質的、経済的効果を達成するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の風力発電装置は、
風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシングの中に、円筒型ケーシングの中心線を中心線として回転するロータ軸が設置してあり、このロータ軸には風取り入れ窓から取り入れられた風の風力を受け止めて該ロータ軸を回転させるための3枚以上の板状の受風羽根が固定してあり、該ロータ軸に取り付けられた受風羽根のロータ径は円筒型のケーシングの内径より小さく風取り入れ窓から取り入れられた風の風力により軸の中心線を中心として該ロータ軸は回転し、ロータ軸を回転させた風は排出口より随時排出され、回転する該ロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電することを特徴とする風力発電装置である。
特に、
(ア) 円筒型のケーシングの内径は0.5m以上から50mで、長さが0.5mから100mであり、
(イ) 円筒型のケーシングの内部には円筒型のケーシングの中心線とほぼ同じ中心線をもつロータ軸が設けてあり、
(ウ) 該ロータ軸の直径は5cm以上200cm以下であり、ロータ軸は円筒型ケーシングの両端付近に設けた軸受にて受け止められて回転するようになっており、
(エ) ロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにした3枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように固定して風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)があり、
(オ) 該板状の個々の受風羽根の大きさは、風車ランナのロータ径が円筒型のケーシングの内径より小さくなる高さで、長さは10cm以上で円筒型のケーシングの長さより小さく、
(カ) 個々の該受風羽根の形状は長方形又は多角形であり、平らは板状又は曲面のある板状、波状、カップ状などであり、
(キ) ロータ軸に固定される受風羽根はロータ軸の長さ方向に同じ長さで同じ取り付け角度で並列に整然と並べるか、又は異なる長さや異なる取り付け角度で長さ方向に1区画又は複数の区画毎に同じ列で又は異なる列で固定されてあり、
(ク) 風力で回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されている
ことを特徴とする風力発電装置である。
【0016】
本発明の風力発電装置及びそれを取り付けた液化水素製造船は利用目的とする台風などの強風のある地球上の位置に移動して発電し、液化水素を作り、それを保管するのであり、風力発電装置が小さ過ぎる場合や数が少ない場合は研究目的や試験目的では使用可能であるが、本来の究極の目的である既存エネルギーよりも低コストのエネルギーを供給することができない。このため本発明の風力発電装置の円筒型のケーシングの好ましい内径は0.5m以上から50mで、特に好ましい内径は5m以上であり、長さは0.5mから100mであり、好ましい長さは5m以上であり、好ましい長さは50m以下である。
【0017】
本発明の風力発電装置の円筒型のケーシングの内部には円筒型のケーシングの中心線とほぼ同じ中心線で回転するロータ軸が設けてあり、このロータ軸は受風羽根で受けた風力により回転するが、本発明では台風などの強風を利用するためにロータ軸には非常に大きい外力がかかることとなるのでロータ軸の機械的強度が重要であり、その強度はロータ軸の材質とその直径で決まる。ロータ軸の材質は水力発電の羽根などに使用されている鋼材や複合樹脂などが適しているが、その直径が重要であり5cm以上、好ましくは10cm以上、さらに20cm以上から200cm以下のものも用いることができる好ましくは15cm以上、200cm以下で好ましくは50cm以下である。ロータ軸の材質が鋼材で直径が大きいときロータ軸の回転慣性により風力の変動が多少吸収されるという効果も期待できる。ロータ軸は円筒型ケーシングの両端付近に設けたロータ軸の直径に応じた抗力の既存の軸受にて受け止められて回転するようになっている。
【0018】
該ロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにしたロータ軸の円周周りに3枚以上、好ましくは12枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように直接又は間接的に固定して風車ランナを形成している。板状の受風羽根の幅(ロータ軸表面からの高さ)はロータ軸の直径と円筒型のケーシングの内径と円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)から自ずと決まる。受風羽根の横方向の最長の長さは円筒型ケーシングの長さより0.1mm以上短い。受風羽根は横方向の長さを円筒型ケーシングの長さの数分の一に短くして、ロータ軸の軸方向に数枚付けることもできる。例えば円筒型のケーシングの長さが20mのとき、受風羽根の横方向の長さは約20mとしてロータ軸の軸方向に1枚とすることも、受風羽根の横方向の長さを約0.5mとしてロータ軸の軸方向を40区画として40枚取り付けることもできる。横方向に区画分けするとき各区画の幅は同じである必要はない、またこのように区画区分した場合、各区画内のロータ軸の円周周りの枚数や取り付け角度を変更させることができ、それによりロータ軸の回転をより円滑にできる場合がある。板状の受風羽根の形状は長方形や多角形や曲線のある板状でもよく、より風を確実に円滑に受けるために適当な湾曲を設けることも可能である。湾曲を付ける別の方法としてロータ軸への受風羽根の取り付けをロータ軸の中心線に平行(これを取り付け角度0度とする)ではなく、取り付け角度を60度以下とすることができる。
【0019】
本発明の風取り入れ窓と風排出口のある円筒型のケーシング、円筒型ケーシングの中心線を中心線として回転するロータ軸、このロータ軸には風取り入れ窓から取り入れられた板状の受風羽根、風が随時排出できる排出口、回転する該ロータ軸、該ロータ軸を直接又は動力伝動装置を介して通常の風力発電装置に連結する設備は通常の発電装置に使用されているような金属やカーボンファイバーとガラス強化繊維(FRP)等の樹脂などを材料として製造することができるが本発明の風力発電装置は台風などの強風の利用を想定しているので、それらの強風に耐えられるように通常の確立されている材料強度の基礎と安全率の考え方に則り設計し建造する。ロータ軸と受風羽根を一体型として鋳物等で工作することも可能であり強度上は好ましい。
【0020】
本発明の風力発電装置では風取り入れ窓(この設置位置を風上側の位置とする)は、円筒型のケーシングの長さ方向に長方形等で円筒型のケーシングの下側(円筒型のケーシングの下側約半分)又は円筒型のケーシングの上側(円筒型のケーシングの上側約半分)等に開いた窓(風取り入れ窓)として取り付けられるが、通常は円筒型のケーシングの下側(円筒型のケーシングの下側約半分)に取り付けられる。この窓を通して風上側からの強い風が風の風取り入れ窓から入り、円筒型のケーシングの中にある複数の受風羽根の内の下側に位置して受風羽根のみに当たりにロータ軸を回転させるエネルギーとして利用するためである(円筒型のケーシングの上側、即ち円筒型のケーシングの上側約半分に設置した場合は上側に位置して受風羽根のみに当たりにロータ軸を回転させる。上側と下側ではロータ軸の回転方向が異なるだけであるので以下の説明は円筒型のケーシングの下側約半分に設置した場合で説明する)。風上側の風は円筒型のケーシングの下側半分のみでなく、上側半分にも吹いてくるのでこの上側半分にも吹いてくる風を多少なりとも取り込むために円筒型のケーシング本体に開ける(風取り入れ窓)は同じ大きさのままで風取り入れ窓よりも大きい風の導入口として円筒型のケーシングの上側にまたがる長方形等の風導入案内口(風導入案内口)を設けることができる。これにより風上側から吹いてきた風は広い面積の風導入案内口より捕らえられて絞り込まれて風取り入れ窓より円筒型のケーシング内に入り受風羽根に当たり、ロータ軸が回転する。風取り入れ窓の形状や寸法その数は任意に変更可能である。
風力で回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されて発電する。
【0021】
本発明の風力発電装置は台風などの強風の利用を意図しているが、自然現象であり風の強さや向きが極端に変化することは当然予想されるので風取り入れ窓及び/又は風導入案内口の前に自動又は手動の風量調整ダンパーを設けることもできる。これにより好ましい風速として例えば15~50m/秒を想定しているとき、例えば70m/秒以上の強烈な風が吹いているとき風力発電装置そのものを停止(カットアウト)することなく風量調整ダンパーで取り入れる風のエネルギーを適当化できる。かかる風量調整ダンパーの一つの変化形態は飛行機に採用されている自動式又は手動式のスプリットフラップのように風取り入れ窓の前で風向を変化させて風量調整を行う方式である。これにより風取り入れ窓に入る風量を調整(増加及び減少)することが可能となり発電装置での風の適用範囲が非常におおきくなりロータ軸への風力を好ましい範囲内に調整できる。これにより安定した発電量を確保し易くなる。また、風取り入れ窓の大きさは円筒型のケーシングの下側半分全体とする必要はなく、それよりも小さく又は大きくすることが可能であり大きくすればより低速の風を束ねて高い風量として利用できる、また、1本の円筒型のケーシングに1個でなく複数の風取り入れ窓とすることができ、その複数の窓の大きさや形状も異なるものとすることができる。
【0022】
本発明の風力発電装置のロータ軸には、ロータ軸の長さ方向に板状の受風羽根が風を受け止める壁となりロータ軸が回転するようにした3枚以上、好ましくは6枚以上、さらに好ましくは12枚以上の受風羽根がロータ軸から立ち上がるように固定してロータ軸が回転する風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には0.1mm以上の隙間(クリアランス)があり、円筒型のケーシングの中で風力を受けて自由に回転できるようになっている。個々の該受風羽根の形状は長方形又は多角形であり、平らは板状又は曲面のある板状、波状、カップ状などであり、1本の円筒型のケーシングの中の受風羽根の形状は様々に異なってもよい。受風羽根のロータ軸の長さ方向の長さは円筒型のケーシングの長さよりは短ければよく、例えば円筒型のケーシングの長さが10mのときに、長さが0.99mのものを10枚同じ方向に並べるごとく、円筒型のケーシングの長さより短いものを1枚又は複数同じ方向に並べることも可能であり、ロータ軸に固定される受風羽根はロータ軸の長さ方向に同じ長さで同じ取り付け角度で並列に整然と並べるか、又は異なる長さや異なる取り付け角度で長さ方向に1区画又は複数の区画毎に同じ列で又は異なる列で固定されている。複数の区画で受風羽根を異なる角度や枚数で取り付けることで風車ランナの回転をより円滑にできる。
【0023】
本発明の風力発電装置では風排出口は風取り入れ窓(風上側の位置)とは反対側(これを風下側の位置という)に円筒型のケーシングの長さ方向に長方形等で円筒型のケーシングの下側(円筒型のケーシングの下側半分)に開いた窓(風排出口窓)として取り付けられる。風排出口窓の大きさは基本的に風取り入れ窓と同じかそれ以上の開口面積として風取り入れ窓から円筒型のケーシングに入った風力が円筒型のケーシングの中で蓄積しないようにする。風排出口窓には排出される風が水平方向又はそれより下側に排出されるようにダクト(風導)を設けることができる。本発明の風力発電装置では台風などの強風の利用を想定しており、風は自然現象で必ずしも風上は常に一定ではなく時には風下側が風上(逆風)となることも、又上方向や下方向の風もあり得るのでダクト(風導)の出口は逆風が円筒型のケーシングに浸入するのを極力阻害するように、出口の向き風を受けにくい下向きにしたり、単純な開口部の先端を小さくしたり、開口部の側面を多孔板にして逃げる風は出やすいが逆方向に入る風は入りにくいようにしたり、風向き調整板や邪魔板を出口付近に設置するなどするのが好ましい。さらに、ロータ軸に取り付ける板状の受風羽根の構造を風取り入れ窓からの風(順風)は効率よく受けるが風排出口窓からの風(逆風)は受け難くすることや、風向き調整板により順風でない風も利用するなどの方法も好ましい方法である。
【0024】
回転するロータ軸は直接又は動力伝動装置を介して発電用モーターに連結されている。発電量は発電装置の軸(回転子)の回転数の2乗に比例するので、本発明の発電装置においては風力により得た回転軸の回転をそのまま発電機で用いるのではなく、その回転をギアなどの回転数増速装置などの動力伝動装置を用いてより高速の回転とすることで高い発電量を得ることが可能である。このとき、1本の円筒型ケーシングに対して1基の発電機とする必要はなく、本発明の風力発電装置を液化水素製造船に設置するとき、液化水素製造船の甲板に複数の円筒型ケーシングを並べて設置するので、複数の円筒型ケーシングで得られる回転運動を動力伝動装置を介して高い発電能力の1基の発電機に連結することが可能であり、このとき高価な発電機の数を大幅に減少して高い発電量を得ることが可能となり、発電コストの低減に繋がる。
【0025】
通常の風力発電装置の主流であるプロペラ型風車では風向きに対してブレードの受風面で風を受けて、ブレードの形状設計により羽根に空気の流れにより揚力が発生するようになっておりその揚力を利用して高い回転を得て、その回転を増速機でより高い回転として発電しており、装置に巨大化によりコスト競争力も高くなっているが、それでも計算上、実際にロータ直径から計算できる円の面積に向かって吹いてくる風の量(風圧)の数十分の一の力を利用しているに過ぎない。しかも、装置を巨大すればするほど風車の高さも50~100m以上、時には260m以上ともなり、長さ方向の長さが100m以上にもなる風車のブレードが破壊される危険性は高まるので、実際に利用できる風も15m/秒以下となる。まして、このような巨大で、高く不安定な装置を移動する船に搭載することは現実的でない。これに対して、本発明の風力発電装置では10m/秒から時には40m/秒、45m/秒を超える強風の利用を想定している。風のエネルギー量は風速の3乗に比例するので、例えば、既存の風力発電装置での利用風速を平均10m/秒とした場合(実際には平均は約6m/秒程度という報告が多い)、本発明での利用風速の平均を20m/秒とした場合(実際は15m/秒から50m/秒、あるいはそれ以上)でも風力としては風のエネルギーは8倍となる計算である。風圧については風速の二乗に比例して強くなるので、風速が平均10m/秒の場合は面積1m2にかかる風圧は61.25[N(ニュートン)] で、風速を20m/秒とした場合は平均240.5[N]と4倍となる計算であり、しかも実際に風を受けるプロペラ型風車のブレード面と、本発明の風力発電装置の受風羽根を同じ大きさで単純に比較すると10倍以上の差があるので羽根が受ける風圧は40倍(4×10)以上となる。しかも、台風などの風は風雨であることが多いが、風圧は空気の密度に比例するので乾いた空気と風雨での密度の差は空気の密度が1.225kg/m3であるのに対して水の密度は1000kg/m3であることを考慮すると雨粒を含む風による風圧は更に大きくなるのである。風力発電装置の実際の発電機の発電量は利用する発電機の(回転子の)回転数に依存するので風力発電装置の回転軸から実際の発電機の(回転子の)回転数に如何に効率よく高い回転数に変換できるかにかかっている。プロペラ型風車からの風圧と本発明の風力発電装置の風圧の差の大凡40倍をそのまま、(回転子の)回転数の差にできると考えることはできないが、例えば2倍にした場合でも発電量は回転数の2乗に比例するので発電量は4倍となるのであり、このことは大きさを4分の一としても同じ発電量が期待できるということである。少なくとも本発明の風力発電装置の大きさを巨大な既存のプロペラ型風車よりも大幅に小型化しても、同じ発電量を得られる。しかも、本発明の風力発電装置は台風などの強い風を追いかけて風量を最適化して好ましい風速の位置を探して運転されるのでカットアウトすることもなく、受け身にて風任せで相対的に弱い風を利用する通常の風力発電装置よりも確実に大きな発電量を得ることが期待できるのである。
【0026】
例えば、現在世界最大といわれるGE Renewable Energy社のHalide-13MXという機種ではロータ径が220mで設備の高さ260mで定格出力は1基で12000kwであるが、このような巨大は設備を例え1基であっても洋上で、しかも船に乗せて移動などできないが、本発明の風力発電装置はコンパクト(巨大は棒や板状のブレードがなく、受風羽根は円筒型のケーシングの中にある)で小型であっても高い発電能力を有しており、例えば円筒型のケーシングの直径を10m、長さを20mとした場合一隻の船に搭載せきる風力発電装置の数は同じ幅でも縦方向に1列でも13倍となり、これを並列や2段、3段等と多段搭載を考えれば100倍以上にもできる。
さらに、固定型の風力発電装置で考えた場合、前の風力発電装置のその後ろに至近距離で別の風力発電装置を設置するなど考えられないが、本発明の風力発電装置は強い風が無限にある海洋上の船上に取り付けた場合そのような配慮はほとんど必要ない。即ち、本発明で想定している台風などの風量に比較すれば本発明の風力発電装置でさえその利用率は数%以下であるからである。
【0027】
本発明の風力発電装置は通常の風力発電装置と同じ要領で単独で陸上、洋上、船上に設置して発電装置として通常の風力発電装置より高効率の発電装置として利用することも可能である。例えば、風向きを捕らえる回転式の風見台座の上に本風力発電装置を取り付ければ風向きに応答して一番適当な風を捕らえて発電することができるので好ましい。しかし、本発明の風力発電装置は装置がコンパクトで特に強い風が利用でき高い発電量が期待できるという特徴から以下に説明する本風力発電装置で発電した電気を利用して水を分解して水素ガスを製造する電気分解装置、発生した水素ガスを直ちに連続して液化するための冷凍装置、そして液化した液化水素を一次的に保管するための保存タンクを備えている液化水素製造船に取り付けて利用するときその高い効果をより発現できる。即ち、本発明で想定する液化水素製造船では熱帯低気圧の10~15m/秒以上の強風や最大風速が34ノット(17.2m/秒)以上である台風の風や最大風速が64ノット(33 m/秒)以上となるハリケーンやサイクロンなどの風、好ましくは10~60m/秒以上の強風、さらに好ましくは10~50m/秒の風、即ち台風や熱帯低気圧の暴風圏内の強風を積極利用することを主として意図しており、又船の甲板上にこれらの風車を複数列、状況により複数段にして、密に配列させることが可能となる。液化水素製造船に取り付ける場合でも該風力発電装置が風向きを捕らえるように回転式の風見台座の上に設置することでより効率高く風を捕らえることができる。
【0028】
本発明の風力発電装置はコンパクト化が可能であり、更に台風の風の場合では通常それは風と雨(風雨)であり通常の陸上や洋上にある風車が受ける乾いた風よりも非常に高い風力であり風力を高速回転に変換する歯車増速装置等の回転速度増速装置を取り付けることが可能となる。船上に載せて建造費等を含めて効率的なサイズとして円筒型のケーシングの直径を更に小さくして10mでその長さを20m(5分の一)とした場合でも、高さ100mの通常の風力発電の1000kwの2~10倍(2000~10000kw/風車1基)に大きくできる。さらに、高く不安定なプロペラ型風車と異なり本発明の風車はコンパクト(径が10mで長さが20mのとき、専有平面の面積は200m2)で強固であり、一隻の船(後述するように甲板の総面積は1、000m2以上が好ましく、さらに好ましくはマンモスタンカー並の20、000m2以上)に設置することのできる風車の数は飛躍的に多くすることが可能(1段配置でも5基から100基、複数段とした場合はその数倍から10倍)となり、船の甲板の広さと風車の大きさや配列方法により異なるが10基から計算上1000基程度に設置することが可能となる。このため、本発明の液化水素製造船一隻当たりの発電能力は10、000kw(1000kw×10基)から計算上は100,000kw(1000kw×100基)も300,000kw(3000kw×100基)も5、000、000kw以上も可能となる。風車の数を増やしても原料となる風がなければその効果を発揮できないが本発明の風力発電装置を装備した船は台風などの無限にある強力な風を利用できる、また幾ら強風があっても効果的に捕らえてそれを電気に変換できる風力発電装置がなければ利用することはできないが本発明の風力発電装置はそれを可能としており、増加した風車の数に単純に比例して発電量を大きくできる。それは風車の効率と、その強い風力を高い回転に変換して高い発電を行うことであり、そのための場の提供として船の甲板の広さが大きいことである。
【0029】
本発明の風力発電装置の利用効率を最大化するために、それを液化水素製造船で利用する場合、強風を最適に利用するためには風車により得た通常の運動エネルギーを風力発電装置のように個別に直接発電するのではなく、本発明の船は多くの風車が非常に近い距離内に位置するという特徴を持っているので運動エネルギーをより大きな回転軸に集約してエネルギーを平均化して巨大タービンを動かす機能方式の採用が可能である。さらに、台風の場合、地球の北半球の台風の風は反時計方向に連続して強力に吹いており本発明の風力発電装置は利用し易い。
【0030】
一方で、通年を通して強風が得られるわけではないので本発明の液化水素製造船では強風を指向した風車と通常の15m/秒以下の洋上風を指向した風車を併設して発電を最大化することも可能である。例えば一隻の船に50基の 本発明の風力発電装置を搭載させた場合、半分は15m/秒以下の風用、半分は50m/秒以下の風用とすることなどが可能となる。これにより一隻の船の年間での利用効率を大幅に高めることが可能となる。台風だけに限定して考えた場合、北西太平洋における台風の発生数は年間25個程度で発生から消滅までの期間は5日程度と報告されており(気象庁のデータ)、台風の強風を利用できるのは最大でも125日/年以下となるためである。もちろん、通常の陸上や洋上に設置される通常の風力発電装置も無風状態や強風、風向き、降雪などのために利用できないことがあり、日本国内の陸上の風力発電は、設備利用率20~30%程度に留まり、洋上風力発電でもそれに10%程度上積み程度と報告されているのであり、上記の台風の強風利用可能日の最大でも125日/年以下(34%)は決して少ないとは言えない。さらに台風以外の台風の卵である熱帯低気圧の風、さらには陸上よりも強い洋上風の15m/秒以下の風をも利用するようにした場合、むしろ利用率でも通常の陸上や洋上の風力発電装置よりも高くできる。風速10m/秒以上の風は熱帯低気圧や台風以外にも冬場の日本海や日本近海など洋上の色々なところで年中吹いており本発明の風力発電装置を気象衛星データ等の予測データを元に移動して利用することも当然可能であり、このように使用可能な風を追跡して利用することは本発明の液化水素製造船のように移動できる船でなくてはできないし、移動した場合そこで幾ら効率高く発電してもその電気の利用は船内の利用か、精々リチウムイオン電池などでの蓄電に限定されるので到底、本発明の効果である既存エネルギーにコストで勝るシステムは構築できない。
【0031】
本発明の液化水素製造船で用いる水電気分解装置については既存の高性能の電気分解装置を用いることが商業的に可能である。例えば、商業的に入手可能な日立造船のHYDROSPRINGの場合(大きさは幅2.33m×長さ12m程度)、1セットで最大200Nm3/hの水素を発生可能である。この200Nm3/hでの使用電気量は1000kwh程度であり、年間の水素を発生量に単純換算するとその量は480000 Nm3(42トン)となる。本発明では本発明の船の最大発電能力に相当する数は本電気分解装置では計算上1基~5000(=5000000kw÷1000Kw)基となる。後述するマンモスタンカー並の船に設置して利用した場合、約1000基の電気分解装置が設置可能である。実際はかかる技術をベースに発明の船に適した等価の電気分解能力の水電気分解装置を特注発注して設置することも可能である。いずれの場合でも水素発生量は40~42000トン以上となる。本発明の液化水素製造船は既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる方法を指向として、台風の強風の利用を指向しており、台風の持つ風のエネルギーは真に無限であり、その正に目の前にある無限のエネルギーを利用して最大限発電し、それを最大限水素に変換するため水素発生量は40~42000トン以上とするのが好ましい。
【0032】
本発明の液化水素製造船は発生した水素ガスを直ちに連続して液化するための冷凍装置を備えている。水素の沸点は-253℃でありそれ以下で液化する、又加圧下ではそれより高い温度でも液化するが、そのための冷凍装置については既存の気体圧縮液化法や磁気冷凍液化法など広く実用化されておりそれらの既存設備や技術をそのまま、又は特注して用いることが可能で、現在では気体圧縮液化法については世界最大のものは冷凍能力60トン/日のものが商業的に入手可能であり、本発明の船での必要装置数は1基から700基程度となる。実際はかかる技術をベースに船に適した等価の冷凍能力の冷凍装置を適宜設置してもよい。液化水素の代わりに水素を700気圧以上の圧力で封じ込める圧縮水素として保存することも可能である。
【0033】
本発明の液化水素製造船は製造した低温の液化水素を一次的に保管するための保存タンクを装備している。かかる低温の液化水素の貯蔵タンクも既存の設備が利用可能であり、液化水素の液密度は 70.8 kg/m3 であり、例えば、川崎重工の世界最大級(令和2年12月)の11200m3球形液化水素貯蔵タンク(外槽球殻径約30m)の場合、1基で容量の80%と仮定しても最大634トンの液化水素を保管できる。本液化水素製造船では製造した液化水素を適宜他の輸送船や陸上の貯蔵施設に移送するため本液化水素製造船の年間製造能力の1/10程度の容量となる1基から10基の保存タンクを装備すればよい。外槽球殻径についても最大とする必要はなく、船内の空間と液化水素製造船の寄港頻度などを考慮して容易に設計し、採用できる。
【0034】
本発明の風力発電装置及びその装置を装備した液化水素製造船は熱帯低気圧や台風を追随できるようにするため時速10km以上の速力で走航可能とする。巨大なマンモスタンカーなどでも時速30km以上での航行が可能であり、時速15km以上が好ましく、さらに時速20km以上が好ましい。前述したとおり北西太平洋における台風の発生数は年間25個程度で発生から消滅までの期間は5日程度であるが、発生の場所は北緯8度から16度のマリアナ、カロリン、マーシャル諸島付近の海上が多いがその範囲は広範囲であり、しかもその後の熱帯低気圧や台風の進路はもっと多様である。従って、熱帯低気圧や台風の風を有効活用するためには液化水素製造船は台風を追跡するのが好ましいが台風は停滞もするが、通常台風は時速10km、時には40km、50kmで移動する。しかし、台風の風速15m/秒以上の暴風圏は大型台風の場合は半径500km、超大型となると800kmとなるのであり、必ずしも台風の移動速度に追随できなくても確実にその台風の好ましい風速範囲の風を長い期間利用できる。しかも、気象衛星の進歩、気象学の進歩により台風の卵である熱帯低気圧の発生の位置や発生後台風に発達してからその後の進行方向まで驚くほど正確に予測が可能となっているので船での追随走行距離を最短にして、台風の速度よりも遅い速度の船でも確実に効率よく風を利用することが可能である。その上、北半球の台風の場合、反時計回り方向の風が吹いているので船の進行にその風も利用できるのである。台風の風を利用するために船で台風に近づくのは無謀で危険であるという固定観念はかかる技術進歩を鑑みれば全く陳腐な観念である。驚くべきことに、気象衛星の進歩、気象学の進歩を応用すれば例えば液化水素製造船の最適設計風速が15m/秒から30m/秒の範囲内にある場合でも、気象情報と通信衛星の利用によりその好ましい風速となる台風暴風圏の中の特定の位置範囲内に船を長い期間配置することが可能となるのである。しかも地球の北半球の台風(台風、ハリケーン、サイクロンなど)は反時計方向の風の向きとなり、地形が複雑で建造物などもあり風の向きも複雑な陸地や近海と違い大洋は平坦な海原であるため台風の渦の特性から陸地で台風に接するよりも容易となる側面がある。勿論、自然現象であり、想定外の突風が吹くことも横方向だけでなく上下の激しい風も当然起きるし、風の強弱も相当に大きいことは当然であり、高い波の影響もあるのでそれ相応の船体や風車の強度は必要である。この点でも風車の小型化は好ましい。特に甲板上に配置する風車の翼の破壊は他の風車の破壊へと直接的に連鎖するので強度と工作精度が大切である。
【0035】
しかし、これらのことは陸上や洋上に配置した風力発電装置の場合も同じでその知見を利用できるが、むしろ固定した位置で陸上や洋上に配置した風車の場合は発達して上陸してくる台風、今後時には風速100m/秒になることもあると予想されているような巨大台風の猛烈な風や波や地震と津波から逃れるすべはなく全壊や部分破損などの危険度は非常に高いのでこれらの破損を防止するための基礎工事や設備対策や管理はむしろ大きく、厄介となる。そのコスト負担は非常に大きい。過去に台風の度に破壊された巨大な風車を日本で何度も新聞などの写真で見てきたが、今後はこれまで以上の経験したことのないような強風の台風の来襲も予測されている。このことは風力発電の先進国ではあるが台風もなく、地震もない欧州とは日本は全く異なる厳しい環境状況であることを示している。これに対して本発明の液化水素製造船は走行でき、通信衛星などの先端技術を取り入れるためそのような巨大台風からも地震による津波からの影響を避けて、しかもそのエネルギーを最適な風速で必要なだけ悠々と利用できるのである。このようなことは台風が危ないものという固定観念だけで想像していては絶対に知り得ないことであり、陸上や洋上の設備の方が船舶の設備よりも安全ということも固定観念である。
【0036】
本発明の風力発電装置及びその装置を装備した液化水素製造船は既存発電(既存エネルギー)に経済的に太刀打ちできる方法を目的としており、そのためには水素1kgあたりのコストを300円(26.7円/Nm3)以下とすることが必要とされているが、台風などの無限のエネルギーを可能な限り多く利用するために船一隻に配置できる発電装置用の風車の数を増やす程、得られる液化水素の製造コストが低下する。このような単純さは原料(資源)となる風力エネルギーが無限に、しかも無料で存在するからである。しかし、通常の洋上風力発電ではその数を増加するほどコストが下がるのではなく、数を増やしてコストが下がるとすれば、それは同種のものを多量に製造することでの設備を多量発注での単価の低下や地上での管理の固定費が減少するからであり、洋上風力発電装置のコスト低下のためには如何に効率よく風を捕らえるか、そしてそれを電力に変換できるかにかかっている。しかし、本発明での風車の数を増加してコストが下がるのとは根拠が異なる。本発明の液化水素製造船で風車の数を増加するための方法としては風車の単位直径を小型化する、風車の船への搭載方法を複数段とする等があるが、それらの対策をした上でさらに母体となる船の甲板面積を広くすることが好ましく、そのためには航行上安全な範囲で出来るかぎり大型化することが好ましく、これも既存の商業化技術で問題なく対応できる。
【0037】
本発明の風力発電装置及びその装置を装備した液化水素製造船で台風などの無限のエネルギーを可能な限り多く利用するために船は大型とするのが好ましい。本発明の液化水素製造船は風力発電装置、船内で発電した電力を利用した水の電気分解装置、発生させた水素を液化するための冷凍装置、船内で製造した液化水素を貯蔵するために保存タンクを備えているが、風力を最大限利用するためには無限のエネルギーを取得するための設備であり船の甲板に配置する風車の効率を高めその数を多くする。その他の電気分解装置、発生させた水素を液化するための冷凍装置、船内で製造した液化水素を貯蔵するために保存タンクは既存の商業化済みの設備を取捨選択して配置すればよく、本発明の液化水素製造船の甲板の下に位置する船の内部は甲板の広さに比例して広大であり、そこでの天井までの高さは吃水が約10mあるため通常15mから20mあるのであり場所上問題となることはなく、むしろ有り余る空間ができる。敢えて言えば、水素は可燃性のガスであり、空気中4.0~75%が爆発濃度範囲であるということで設備上及び取扱い上十分な注意が必要であるということである。海上の船内の水素濃度を4.0%以下はおろか、0.1%以下にすることも容易である。
【0038】
甲板に配置する風車の数については円筒型のケーシングの長さとロータ径と、その配置方法、例えば、並列に単段配置か、複数段配置かに影響されるし、何よりも甲板の広さにより決まる。通常の陸上、洋上の風車は少ない風を捕らえるために大きな間隔を開けて配置されているが、本発明の場合、基本的に強風の場所を追跡するために一つの風車と隣の風車の間隔はお互いに衝突しない距離であればよく、それは上下についても言える。かかる特徴は既存の風力発電とは根本的に異なるものである。甲板面積とコストの関係から500m2以上とする。これは経済学での「生産規模の拡大により、固定費比率などが低下して単位当たりの生産コストが低くなる」という規模の経済と経験曲線効果によるものではなく、本発明では既存エネルギーに勝る低コストで液体水素を作るために自然エネルギーを集めるための風車の数を増やすために大きい甲板面積を確保するのが目的である。かかることができるのは「原料」である強風が無限にしかも無料に得られる強風を利用するからである。通常の洋上風力発電では数を増やしてもコストは低下せず、コストを下げる方法として風車の径を大きくすることが採られているが、気候変動による損傷や軸受け部の寿命などから自ずとその大きさにも最適化範囲があるのであり本発明とは全く異なる。後述するように日本でもこれまでの大型船の実績を考慮した上で、本発明の効果を更に高め、より低コストの液化水素を得るために甲板の総面積は1、000m2以上が好ましく、さらにマンモスタンカー並の20、000m2以上、あるいはそれ以上とするのが特に好ましい。
【0039】
本発明の液化水素製造船の船は風車の数を増やすために大きい甲板面積を確保するためマンモスタンカー並かそれ以上の大型となるのが好ましい。海に囲まれた日本は昔より造船大国であり造船技術に優れ、大型の船も数多く建造されてきた。例えば1940年に進水した全長264.40 m、最大幅38.9 m(計算上の甲板面積10、246m2)の世界最大の戦艦大和があり、この船の速力は実に時速50kmであった。この船は戦艦であり大砲など多くの重量物を多量に積載する能力の船であったと想像されるが、本発明の液化水素製造船はそれに比較すると各段に簡単で単純な構造で圧倒的に軽量となる。また、1960年に建造された石油タンカー「日章丸」は全長326メートル、幅49.8メートル(計算上の甲板面積16、234m2)、速度16.79ノット(時速31km)であり、また世界的には、世界最大のノルウェー船籍の石油タンカーKnock Nevisは、全長458.45メートル、幅68.8メートル(計算上の甲板面積31、541m2)、速度13~16ノット(時速24~29km)で、世界最大の客船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」は全長361.0m、最大幅46.9m(計算上の甲板面積16、930m2)、高さ72mで速力は時速37kmであり、巨大船は既存技術で、特に石油タンカーのように単純構造の場合、比較的低い投資額で建造可能で本発明の速力15km以上も問題なく達成可能である。特に オアシス・オブ・ザ・シーズの場合、船上に15層の客室デッキがあり高さも72mであった。これは本発明の液化水素製造船の甲板の上に本発明の風力発電装置を例えば円筒型シーケンスの直径が10mを7段に設置した高さとほぼ同じである。さらに、本発明の液化水素製造船もほとんどが既存の風力発電装置、船内で発電した電力を利用した水の電気分解装置、発生させた水素を液化するための冷凍装置、船内で製造した液化水素を貯蔵するために保存タンクを単に搭載設置するための場所を提供するだけの船体であり建造上の問題はなく、必要な補強材の追加も容易である。
【0040】
そして、例えば、石油タンカーKnock Nevisと同じ全長458.45メートル、幅68.8メートルとした場合、直径10mで長さが20mの風車は単段配置でそれぞれ1mの余裕をもって搭載した場合でも21×6=126基設置可能であり、それを2段、又は3段又は7段とした場合、それぞれ252基、378基、882基設置可能となる。実際には設置や保全作業を考慮して、それなりの余裕空間が必要であるが、例えば3段配置でもその高さの追加は約30mに過ぎない。風車の直径を10mより小さくすれば更に多くの風車を設置できる。また、既存の石油タンカーの場合、船が破壊された場合その環境被害は甚大となるためその最大サイズの巨大化には単に船が経済的に建造できるか否かの問題だけでなく環境破壊とその時の海水汚染と巨大な損害賠償というリスクが伴うが、本発明の液化水素製造船の場合、万が一破壊されても元々が鉄鋼や複合樹脂であり回収も可能であり環境を汚染するものはほとんど出ない、少なくも流れ出さない。製造済みの水素が同時に生産される酸素と共に大気に揮散し、装備した殆どが既存設備のみが破損されるのであり、スエズ運河やパナマ運河などの狭い海峡を通過する必要もなく、浅瀬を避けることも可能で、単に波力による破壊を防止できる強度を持つ単純な構造であり石油タンカーKnock Nevis以上の巨大化も可能であり、それは好ましい。まして、大切なことは強力な台風の風を利用すると言っても、世界最先端の造船技術で建造し、最新の気象学、通信衛星情報、人工知能を駆使して航行して風車設計を考慮した条件で最適運転するのであり破壊のリスクも環境破壊も考えられない。例えば、10m/秒から50m/秒の間とか、更に最適化して10m/秒から40m/秒の間とかを選択して運転することが可能であり、近年台風が巨大化して、風速100m/秒の猛烈な台風の発生も予想されているが、そのような台風でも中心からの距離から離れるほど、例えば10m/秒から20m/秒の間を選択することも全く問題なく可能である。最新の気象学、通信衛星情報、人工知能を駆使できる点、航行できる点は洋上などに固定する強風から逃げることの出来ない風力発電などに比較すると本発明の液化水素製造船は各段に有利である。
【0041】
即ち、利用する風速が例えば2倍となる場合として、既存の風力発電装置での利用風速を平均10m/秒(実際には平均は約6m/秒程度という報告が多い)、本発明での利用風速の平均を20m/秒(実際は15m/秒から50m/秒、あるいはそれ以上)とした場合、受風羽根が受ける風圧としては4倍となる計算であり、しかも実際に風を受ける風に向かった平面での受風面積も大きさが同じとき10倍以上の差があるので羽根が受ける風圧は40倍(4×10)以上となるのであり、その上に台風などの風は風雨であることが多く利用する風の密度を高くなることが多いので風圧の差は更に大きくなるのである。風力発電装置の実際の発電機の発電量は利用する発電機の(回転子の)回転数の2乗に比例するので風力発電装置の回転軸から実際の発電機の(回転子の)回転数に如何に効率よく高い回転数に変換できるかにかかっているが、大きさは4分の一としても同じ発電量が期待できることである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の風力発電装置の風車ランナの全体を示す模式図である。
図2】本発明の風車ランナを円筒型のケーシングにとり付けた状態を示す断面図である。
図3】本発明の円筒型のケーシングとその中に設置した風車ランナと、風取り入れ窓と風排出口を示したA-A線に沿う断面図である。矢印は風の移動方向を示している。
【符号の説明】
【0043】
1 風車ランナ
2 円筒型のケーシング
3 円筒型のケーシングの中心線
4 ロータ軸
5 軸受
6 受風羽根
7 風取り入れ窓
8 風排出口
【実施例0044】
以下、本文にて説明した本発明の風力発電装置及びその装置を装備した液化水素製造船は構成要素を用いて1例を組み立てて実施例として説明するが、本発明は該実施例に拘束されるものではない。
【実施例0045】
風力発電装置は、円筒型のケーシングの直径(内径)が10mで長さが20mで、ロータ軸の直径20cm、軸の外周から均等な間隔でロータ軸から16枚の受風羽根が風を受けて軸を回転するように溶接により取り付けてあって風車ランナを形成しており、風車ランナのロータ径は円筒型のケーシングの内径の間には5~20mmの隙間(クリアランス)となるように受風羽根の先端面は研磨により調整してあり、該風車ランナのロータ軸は円筒型のケーシングの両端に設けた軸受けで自由回転できるように受けおり、該ロータ軸の片側は軸受を経た後で既存技術による回転速度調整のための回転数増速装置を経て既存技術による発電装置に連結されており、円筒型のケーシングの風上となる側には高さ方向に5mで長さ方向に20mの風取り入れ窓が設けてあり、円筒型のケーシングの風下となる側には高さ方向に6mで長さ方向に20mの風排出口が設けてあり、平均風速20m/秒想定での発電能力4000kwの風力発電装置を形成している。
全長460メートル、幅70メートル、吃水10メートル(甲板面積32、200m2)、航海速力20ノット(時速37km)の既存の最大タンカーとほぼ同じ大きさの船体であり、その甲板に当該風力発電装置と同じ風力発電装置を一列に20基で、5列に並列に配置し、それを2段に配置(合計200基)して発電し(800、000kw/hr)、その甲板の下に位置する船内空間に水素発生能力200Nm3/hの既存の電気分解装置を760基据付けて(水素発生量152、000 Nm3/h)、この水素を冷凍する冷凍能力60トン/日の気体圧縮液化法の既存冷凍設備を6基設置(製造量302トン/日)、既存では最大となる11、200m3球形液化水素貯蔵タンク(外槽球殻径約30m)を2基(合計液化水素貯蔵量18、000トン)設置したもの。気象衛星からの台風情報を逐次受信しコンピュータを用いたAI(人工知能)を駆使して熱帯低気圧や台風による主として風速10m/秒から40m/秒を最適風速となる位置を追跡して航行し運転して最大29、032トン/年の液化水素を製造する。
推定投資額は750億円で、液化水素の製造コストは300円/kg以下となる。
図1
図2
図3