IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社今仙電機製作所の特許一覧

<>
  • 特開-リクライニング装置 図1
  • 特開-リクライニング装置 図2
  • 特開-リクライニング装置 図3
  • 特開-リクライニング装置 図4
  • 特開-リクライニング装置 図5
  • 特開-リクライニング装置 図6
  • 特開-リクライニング装置 図7
  • 特開-リクライニング装置 図8
  • 特開-リクライニング装置 図9
  • 特開-リクライニング装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132801
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/225 20060101AFI20220906BHJP
   A47C 1/025 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B60N2/225
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031473
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA20
3B099CA33
3B099CB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブッシュが全周に渡って軸受することができるようにし、360°のいずれの方向からの外力であってもブッシュによって力を受けることで摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供する。
【解決手段】本発明のリクライニング装置100は、外歯歯車10と、内歯歯車20と、内歯歯車20の円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、外歯歯車10又は内歯歯車20のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフト30と、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、内周側にスプリング収容部を有し、かつ回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュ40と、ブッシュ40及び円筒ボスに同時に接触させる方に付勢するスプリング60と、を備え、外歯歯車の貫通孔とブッシュとの隙間は、内歯歯車の円筒ボスとブッシュとの隙間よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ内周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記内歯歯車の前記円筒ボス又は前記ブッシュと前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間よりも大きいことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ外周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記外歯歯車の前記貫通孔又は前記ブッシュと前記円筒ボスを摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間よりも小さいことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項3】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記内歯歯車の前記貫通孔の間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ内周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記外歯歯車の前記円筒ボス又は前記ブッシュと前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間よりも小さいことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項4】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記内歯歯車の前記貫通孔との間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ外周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記内歯歯車の前記貫通孔又は前記ブッシュと前記円筒ボスを摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間よりも大きいことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項5】
前記ブッシュの外周面に対する中心と円筒ボス用孔の中心との偏心量が、前記内歯歯車の中心と前記外歯歯車の中心の偏心量以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本権利者は、シートクッションに対して、シートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置において、
シートクッション及びシートバックのいずれか一方に固定される第1フレームと、シートクッション及びシートバックの他方に固定される第2フレームと、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の外歯ボス部を備える外歯歯車と、
前記第2フレームに連結されて外周面に前記外歯に噛合可能な内歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボス部を備える内歯歯車と、
前記外歯歯車に同軸的かつ回転自在に嵌合すると共に、前記外歯歯車および前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に公転させる回転軸と、を備え、
前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との間に介挿され、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部とに同時に接触して前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を規制すると共に、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方を摺動させ、前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側とに同時に接触させる方に付勢するバネ材と、
前記回転軸の回転に伴い回転する円盤状部材であって、軸方向に延在し、前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方から非接触にする方向へ押す当接面にテーパーの設けられたカム押し翼を一対備える円盤状部材と、
前記円盤状部材を前記一対のくさび状カム側に押し当て、前記テーパーの設けられた当接面を前記一対のくさび状カムへ当接させる板バネであって、付勢力は前記バネ材よりも弱く設定されている板バネと、を備えるものを提案している(特許文献1)。
【0003】
かかるリクライニング装置によれば、回転軸に連動する円盤状部材のカム押し翼によってくさび状カムを直接作動させるため、外歯歯車と、内歯歯車との間の回転抵抗が均一になり、外歯歯車と内歯歯車の回転をなめらかにすることができる、という効果を有する。
【0004】
かかるリクライニング装置は、ブッシュに対してくさび状カムしか当接していないため、車両シートのシートバックに大きな力が加わった場合に、リクライニング装置に加わる外力に対して、ブッシュとくさび状カムとの接触部でしか力を受けることができない、という問題点があった。そのため、加わる外力の方向に応じて一部に大きな力が加わったりし、例えば、力をギア歯で受けなければならない場合もあり、このように力をギア歯で受けている場合、差動歯車となっているリクライニング装置ではスムーズに摺動回転させることができない場合があるといった問題があった。
【0005】
また、くさび状カムの代わりにスプリングの端部をそのままカム代わりに使用しようとした場合、線状に形成されたスプリングと、ブッシュ又はボス部とが線接触となりスプリングの一部に大きな力が加わるため、強度が足らずスプリングをそのまま使用することができないと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-127210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、ブッシュが全周に渡って軸受することができるようにし、360°のいずれの方向から外力が加わった場合であってもブッシュによって力を受けることで摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供することを目的とする。また、別途くさび状カムを使用することなく、スプリングをそのままカムの代わりとして使用することができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0009】
本発明のリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ内周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記内歯歯車の前記円筒ボス又は前記ブッシュと前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
かかる構成を採用することによって、ブッシュによってほぼ全周に渡って軸受することができる。そのため、360°のいずれの方向からの外力であってもブッシュによって力を受けることで摺動を安定化させることができる。また、大きな力が加わった場合には内歯歯車の円筒ボス及び外歯歯車の貫通孔から受ける力はブッシュで受けるので、スプリングに大きな力が加わることを低減することができる。そのため、くさび状カムの代わりにスプリングをそのままカムの代わりとして使用することができる。
【0011】
また、本発明にかかるリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ外周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記外歯歯車の前記貫通孔又は前記ブッシュと前記円筒ボスを摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
かかる構成を採用することによって、ブッシュによってほぼ全周に渡って軸受することができる。そのため、360°のいずれの方向からの外力であってもブッシュによって力を受けることで摺動を安定化させることができる。また、大きな力が加わった場合には内歯歯車の円筒ボス及び外歯歯車の貫通孔から受ける力はブッシュで受けるので、スプリングに大きな力が加わることを低減することができる。そのため、くさび状カムの代わりにスプリングをそのままカムの代わりとして使用することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記内歯歯車の前記貫通孔の間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ内周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記外歯歯車の前記円筒ボス又は前記ブッシュと前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明にかかるリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記内歯歯車の前記貫通孔との間に配置され、外周面の中心と内周面の中心とが偏心している円環状に形成され、円環状の最も厚い部分の両側かつ外周に離間する方向に徐々に間隔が狭くなるように形成された2つのスプリング収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転するブッシュと、
環状部と、前記環状部から90°折れるように立ち上がった2つの端部とを有し、2つの前記端部は、2つの前記スプリング収容部に収容されて互いに離間する方向へ付勢されており、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記ブッシュと前記内歯歯車の前記貫通孔又は前記ブッシュと前記円筒ボスを摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する弾性体と、
を備え、
前記内歯歯車の前記貫通孔と前記ブッシュとの隙間は、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記ブッシュとの隙間よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、
前記ブッシュの外周面に対する中心と前記円筒ボス用孔の中心との偏心量が、前記内歯歯車の中心と前記外歯歯車の中心の偏心量以上であることを特徴とするのであってもよい。
【0016】
かかる範囲に設定することによって、外歯歯車の外歯と、内歯歯車の内歯との間に隙間が生じることを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
図3図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態にかかる図2のA-A断面図である。
図5図5は、第1実施形態にかかるブッシュ40を説明する模式図である。
図6図6は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
図7図7は、第3実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図8図8は、第3実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
図9図9は、第4実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図10図10は、第4実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、車両用シート200の模式図であり、図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、図3は、リクライニング装置100の分解斜視図であり、図4図2のA-A断面図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0019】
本発明にかかるリクライニング装置100は、図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して、傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0020】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、図2及び図3に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、回転シャフト30、ブッシュ40、弾性体としてのスプリング60、スプリングカバー70及びプレートカバー80を備えている。なお、図2では、内部構造を見やすくするため、スプリングカバー70及びプレートカバー80は省略されている。
【0021】
外歯歯車10は、図3に示すように、円板状に形成されており、外周面10aには外歯11が形成され、中央には円筒状の貫通孔12が形成されている。外歯歯車10には、外側面10bに突出部13が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって取り付けられる。
【0022】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内側面20aに内歯21が形成されている。内歯21は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心Cと内歯歯車20の中心Cが偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は差動歯車を形成し、内歯歯車20が外歯11の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中心には、円筒ボス22が設けられている。図3に示すように、この内歯歯車20の外側面にも突出部23が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって取り付けられる。
【0023】
回転シャフト30は、内歯歯車20の円筒ボス22に対して同軸上で回転自在に嵌挿されている。また、回転シャフト30は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、傾動用モータの回転力を受けるために内筒面には、セレーション31が設けられている。さらに、回転シャフト30は、後述するブッシュ40に設けられる突起部42と嵌合する嵌合凹部32を有している。嵌合凹部32は、突起部42を両側から挟み込むようにして取り付けられており、時計周り、反時計周りのいずれに回転シャフト30を回転させても、ブッシュ40は回転シャフト30と同様に回転する。
【0024】
ブッシュ40は、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、外歯歯車10の貫通孔12との間に配置される円環状又はリング状の部材である。ブッシュ40は、図5に示すように、円筒ボス用孔41の内周面の中心Cと、外周面43の中心Cがずれて偏心しているリング状に形成されている。ブッシュ40の円筒ボス用孔41は、図2に示すように、円筒ボス22の外周面22aの直径に対して、わずかに大きい直径を有しており、ロック状態では円筒ボス用孔41と円筒ボス22の外周面22aの間に隙間Aが形成されている。隙間Aは、概ね0.06mm~0.12mm程度に設定するとよい。また、ブッシュ40の外周面43は、外歯歯車10の貫通孔12内に配置され、外歯歯車10の貫通孔12の直径に対して、わずかに小さい直径に形成されており、ブッシュ40の外周面43と外歯歯車10の貫通孔12との間には、隙間Bが形成されている。隙間Bは、概ね0.02mm~0.06mm程度に設定するとよい。この際に、外歯歯車10と内歯歯車20を噛み合わせるためには、隙間Aと隙間Bとの関係は、隙間A>隙間Bである必要がある。すなわち、内歯歯車20の円筒ボス22とブッシュ40との隙間Aは、外歯歯車10の貫通孔12とブッシュ40との隙間Bよりも大きくなるように設定する。
【0025】
ブッシュ40には、前述した嵌合凹部32と嵌合する突起部42が側面に設けられている。突起部42の数や位置は特に限定するものではない。これによって、回転シャフト30の回転と同期するようにブッシュ40は回転することになる。
【0026】
ブッシュ40の円筒ボス用孔41の内周面には、ブッシュ40の円環状の最も厚い部位α(最も肉厚な部分)を挟んで両側にスプリング収容部44が設けられている。スプリング収容部44は、面対称に形成されており、向かい合った側から徐々に狭くなるように形成されている。最も肉厚な部位αは、円筒ボス22の外周面22aに向かって延びる延出部46を有している。
【0027】
スプリング60は、図3に示すように、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有し、この端部62a、62bは、スプリング収容部44に配置され、それぞれ端部62a、62bは互いに離間する方向へ付勢されている。これによって、ブッシュ40を介して内歯歯車20に対して外歯歯車10を押し付けて噛合させることができる。
【0028】
スプリングカバー70は、図4に示すように、スプリング60が外れることがないように、保持するためのカバーであり、スプリング60を保持できる形態であれば、特に限定するものではない。
【0029】
プレートカバー80は、円環状に形成された金属板で形成されており、内歯歯車20の外周側の端部に溶接等で固定され、外歯歯車10の軸方向への移動を規制する機能を有する。
【0030】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、スプリング60によってブッシュ40を付勢し、ブッシュ40と内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0031】
このロック状態から、回転シャフト30を例えば図2において、反時計方向に回転させると、回転シャフト30と係合しているブッシュ40も同様に回転する。またブッシュ40のスプリング収容部44の内壁にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はスプリング60の端部62a、62bと接触している。ブッシュ40の回転により、クサビ角内壁はスプリング60の端部62a、62bの間にスキマが発生しスプリング60の端部62a、62bが外れる。この回転により、ブッシュ40のスプリング収容部44の側壁によってスプリング60の端部62aを隙間から引き抜く方向に力が加わり、回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、この結果、ブッシュ40と円筒ボス22及びブッシュ40と外歯歯車10の貫通孔12との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の端部62bの付勢力によって隙間を埋めるように反時計周りに回転する。こうしてスプリング60は、回転シャフト30、ブッシュ40とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0032】
こうして作製されたリクライニング装置100は、ブッシュ40がリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、外歯歯車10の貫通孔12に対して、垂直方法にブッシュが挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリクライニング装置100が図6に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、ブッシュ40以外は、第1実施形態と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0034】
第2実施形態にかかるブッシュ40は、ブッシュ40の外周面43と外歯歯車10の貫通孔12との間に、向かい合った側から徐々に隙間が狭くなるように2つのスプリング収容部44が形成されており、スプリング60の端部62a、62bは、このスプリング収容部44に嵌挿されている。すなわち、第1実施形態では、スプリング収容部44がブッシュ40の内周側に形成されているのに対して、第2実施形態では、スプリング収容部44がブッシュ40の外周側に形成されている点が異なる。ロック状態では、円筒ボス用孔41の内周と円筒ボス22の外周面22aの間の隙間Aと、外歯歯車10の貫通孔12とブッシュ40との間の隙間Bとの関係は、隙間A<隙間Bである必要がある。すなわち、すなわち、内歯歯車20の円筒ボス22と円筒ボス用孔41の内周との隙間Aは、外歯歯車10の貫通孔12とブッシュ40との隙間Bよりも小さくなるように設定する。
【0035】
この第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、一対のスプリング60の端部60a、60bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、ブッシュ40と外歯歯車10の貫通孔12の内周面とに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0036】
このロック状態から、回転シャフト30を反時計回りに回転させると、回転シャフト30と係合しているブッシュ40も同様に回転する。また、ブッシュ40のスプリング収容部44の内壁にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はスプリング60の端部60a、60bと接触している。この回転により、クサビ角内壁はスプリング60の端部60a、60bの間にスキマが発生しクサビが外れる。回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、この結果、ブッシュ40と円筒ボス22及びブッシュ40と外歯歯車10の貫通孔12との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってくスプリング60の端部60a、60bがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。スプリング60の端部60a、60bは、回転シャフト30、ブッシュ40とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0037】
こうして作製されたリクライニング装置100は、ブッシュ40がリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、外歯歯車10の貫通孔12の内周面に対して、垂直方法にブッシュ40が挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0038】
(第3実施形態)
第3実施形態にかかるリクライニング装置100が図7又は図8に示されている。第3実施形態にかかるリクライニング装置100は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100に対して、外歯歯車10の中心に円筒ボス14が設けられており、内歯歯車20の中心に貫通孔25が設けられている点が異なる。また、回転シャフト30、ブッシュ40、スプリング60が軸方向へ移動するのを防止する規制カバー70が内歯歯車20の外側面側に設けられており、この規制カバー70に取付用プレート等230の嵌合孔と嵌合する突出部71が設けられている点が異なる。一方、プレートカバー80は、円環状に形成された金属板で形成されており、外歯歯車10の外側面側に配置され、内歯歯車20の外周側の端部に溶接等で固定され、外歯歯車10の軸方向への移動を規制している。
【0039】
回転シャフト30、ブッシュ40及びスプリング60は、第1実施形態に対称となるように作製されている。ブッシュ40は、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aと、内歯歯車20の貫通孔25との間に、円筒ボス14がブッシュ40の円筒ボス用孔41に挿入されるように配置される。回転シャフト30は、円筒ボス14の中心軸と同軸で回転するように円筒ボス14内に配置されており、第1実施形態と同様に、ブッシュ40に設けられる突起部42を嵌合凹部32で両側から挟み込むようにして取り付け、時計周り、反時計周りのいずれに回転シャフト30を回転させても、ブッシュ40が回転シャフト30と同様に回転するようにされている。ブッシュ40の内周面には、向かい合った側から徐々に隙間が狭くなるようにスプリング収容部44が2箇所形成されており、スプリング60の端部60a、60bはこのスプリング収容部44に嵌挿されている。スプリング60は、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有し、この端部62a、62bは、スプリング収容部44内で互いに離間する方向へ付勢されている。これによって、内歯歯車20に対して外歯歯車10を押し付けて噛合させることができる。
【0040】
ブッシュ40の円筒ボス用孔41は、円筒ボス14の外周面14aの直径に対して、わずかに大きい直径を有しており、ロック状態では円筒ボス用孔41と円筒ボス14の外周面14aの間に隙間A’が形成されている。ブッシュ40の円筒ボス用孔41と円筒ボス14の外周面14aの間の隙間A’は、概ね0.06mm~0.12mm程度に設定するとよい。また、ブッシュ40の外周面43は、内歯歯車20の貫通孔25内に配置され、内歯歯車20の貫通孔25の直径に対して、わずかに小さい直径に形成されており、ロック状態ではブッシュ40の外周面43と内歯歯車20の貫通孔25との間には、隙間B’が形成されている。ブッシュ40の外周面43と内歯歯車20の貫通孔25との隙間B’は、概ね0.02mm~0.06mm程度に設定するとよい。この際に、外歯歯車10と内歯歯車20を噛み合わせるためには、隙間A’と隙間B’との関係は、隙間A’>隙間B’である必要がある。すなわち、内歯歯車20の貫通孔25とブッシュ40との隙間B’は、外歯歯車10の円筒ボス14とブッシュ40との隙間A’よりも小さくなるように設定する。
【0041】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、一対のスプリングの端部60a、60bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、ブッシュ40と外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0042】
このロック状態から、回転シャフト30を反時計方向に回転させると、回転シャフト30と係合しているブッシュ40も同様に回転する。またブッシュ40のスプリング収容部44の内壁にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はスプリング60の端部62a、62bと接触している。ブッシュ40の回転により、クサビ角内壁はスプリング60の端部62a、62bの間にスキマが発生しスプリング60の端部62a、62bが外れる。この回転により、ブッシュ40のスプリング収容部44の側壁によってスプリング60の端部62aを隙間から引き抜く方向に力が加わり、回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、この結果、ブッシュ40と円筒ボス14及びブッシュ40と内歯歯車20の貫通孔25との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の端部62bの付勢力によって隙間を埋めるように反時計周りに回転する。こうしてスプリング60は、回転シャフト30、ブッシュ40とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0043】
こうして作製されたリクライニング装置100は、ブッシュ40がリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面と、内歯歯車20の貫通孔25に対して、垂直方法にブッシュが挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0044】
(第4実施形態)
第4実施形態にかかるリクライニング装置100が図9又は図10に示されている。第4実施形態にかかるリクライニング装置100は、ブッシュ40以外は、第3実施形態と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0045】
第4実施形態にかかるブッシュ40は、ブッシュ40の外周面43と内歯歯車20の貫通孔25との間に、向かい合った側から徐々に隙間が狭くなるようにスプリング収容部44が形成されており、スプリング60の端部60a、60bは、このスプリング収容部44に嵌挿されている。すなわち、第3実施形態では、スプリング収容部44がブッシュ40の内周側に形成されているのに対して、第4実施形態では、スプリング収容部44がブッシュ40の外周側に形成されている点が異なる。ロック状態では外歯歯車10の円筒ボス14とブッシュ40の内周面の隙間A’と、内歯歯車20の貫通孔25とブッシュ40との間の隙間B’が形成される。外歯歯車10の円筒ボス14とブッシュ40の内周面の隙間A’と、内歯歯車20の貫通孔25とブッシュ40との間の隙間B’との関係は、隙間A’<隙間B’である必要がある。すなわち、内歯歯車20の貫通孔25とブッシュ40との隙間B’は、外歯歯車10の円筒ボス14とブッシュ40の円筒ボス用孔41の内周との隙間A’よりも大きくなるように設定する。
【0046】
この第4実施形態にかかるリクライニング装置100は、回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、一対のスプリング60の端部60a、60bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、ブッシュ40と内歯歯車20の貫通孔25の内周面とに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0047】
このロック状態から、回転シャフト30を反時計回りに回転させると、回転シャフト30と係合しているブッシュ40も同様に回転する。またブッシュ40のスプリング収容部44の内壁にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はスプリング60の端部60a、60bと接触している。この回転により、クサビ角内壁はスプリング60の端部60a、60bの間にスキマが発生しスプリングの端部60a、60bが外れる。回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、この結果、ブッシュ40と円筒ボス14及びブッシュ40と内歯歯車20の貫通孔25との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってスプリング60の端部60aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。スプリング60は、回転シャフト30、ブッシュ40とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0048】
こうして作製されたリクライニング装置100は、ブッシュ40がリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aと、内歯歯車20の貫通孔25の内周面に対して、垂直方法にブッシュ40が挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0049】
前述した第1実施形態から第4実施形態において、ブッシュ40は、内歯歯車20の中心Cと外歯歯車10の中心Cの偏心量βに対して、ブッシュ40の外周面43に対する中心Cと円筒ボス用孔41の中心Cの偏心量γが大きい円環状又はリング状に形成するとよい。すなわち、偏心量γ>偏心量βとなるようにブッシュ40を形成するとよい。
【0050】
リクライニング装置100の各部品は、それぞれ製造工程によるばらつきが生じる上、円筒ボス用孔41と円筒ボス22の外周面22aの間に隙間Aが形成され、外歯歯車10と貫通孔12との間には、隙間Bが形成されているため、隙間分のズレが外歯歯車10の外歯11と、内歯歯車20の内歯21との間に隙間が生じることになる。そのため、ブッシュ40の外周面43に対する中心Cと円筒ボス用孔41の中心Cとの偏心量を、内歯歯車20の中心Cと外歯歯車10の中心Cの偏心量以上に形成することによって、外歯歯車10と外歯11と、内歯歯車20の内歯21との間に隙間が生じることを低減させることができる。
【0051】
また、前述した第1実施形態から第4実施形態においては、ブッシュ40に突起部42を設け、回転シャフト30に嵌合凹部32を設けるものとしたが、ブッシュ40に嵌合凹部32を設け、回転シャフト30に突起部42を設けても良い。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…外歯歯車、10a…外周面、10b…外側面、11…外歯、12…貫通孔、13…突出部、20…内歯歯車、20a…内側面、21…内歯、22…円筒ボス、22a…外周面、23…突出部、30…回転シャフト、31…セレーション、32…嵌合凹部、40…ブッシュ、41…円筒ボス用孔、42…突起部、43…外周面、44…スプリング収容部、46…延出部、60…スプリング、61…環状部、62a,62b…端部、70…スプリングカバー、80…プレートカバー、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10