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特開2022-132805アスベスト除去装置およびアスベスト回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132805
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】アスベスト除去装置およびアスベスト回収システム
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/043 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B08B9/043
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031477
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】516049272
【氏名又は名称】株式会社マルホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕己
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA38
3B116AB54
3B116BB21
3B116BB22
3B116BB43
3B116BB54
3B116BB62
3B116BB90
3B116CD22
(57)【要約】
【課題】作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去装置およびアスベスト回収システムを提供する。また、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト除去装置およびアスベスト回収システムを提供する。
【解決手段】アスベスト除去装置30は、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を煙突の内面に向けて吐出する飛散抑制剤吐出部32と、高圧水を内面に向けて吐出し、アスベスト層を除去する高圧水吐出部31と、を備えており、飛散抑制剤吐出部32および高圧水吐出部31は、当該アスベスト除去装置30の昇降方向に沿って相互に離間しており、高圧水吐出部31の下側に飛散抑制剤吐出部32が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突の内部において昇降され、前記煙突の内面に形成されたアスベスト層を除去するアスベスト除去装置であって、
前記アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を前記内面に向けて吐出する飛散抑制剤吐出部と、
高圧水を前記内面に向けて吐出し、前記アスベスト層を除去する高圧水吐出部と、を備えており、
前記飛散抑制剤吐出部および前記高圧水吐出部は、当該アスベスト除去装置の昇降方向に沿って相互に離間して配置されていることを特徴とするアスベスト除去装置。
【請求項2】
前記飛散抑制剤吐出部は、
前記飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であることを特徴とする請求項1に記載のアスベスト除去装置。
【請求項3】
前記高圧水吐出部は、
前記煙突の中心軸を回転中心として回転可能に設けられており、かつ、前記高圧水を吐出する複数のノズルが前記回転中心の半径方向の外向きに設けられており、
前記高圧水吐出部の回転を制御するブレーキ装置を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアスベスト除去装置。
【請求項4】
煙突の内部において昇降され、前記煙突の内面に形成されたアスベスト層を除去するアスベスト除去装置であって、
前記アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤、または、前記アスベストを除去する高圧水を前記内面に向けて吐出する吐出部と、
飛散抑制剤供給装置および高圧水供給装置に接続されており、前記飛散抑制剤供給装置から供給される前記飛散抑制剤および前記高圧水供給装置から供給される前記高圧水を切り替えて前記吐出部に供給する切替装置と、
を備えていることを特徴とするアスベスト除去装置。
【請求項5】
前記吐出部は、
前記飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であることを特徴とする請求項4に記載のアスベスト除去装置。
【請求項6】
前記吐出部は、
前記煙突の中心軸を回転中心として回転可能に設けられており、かつ、前記飛散抑制剤または前記高圧水を吐出するノズルが前記回転中心の半径方向の外向きに複数設けられており、
前記吐出部の回転を制御するブレーキ装置を備えていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のアスベスト除去装置。
【請求項7】
煙突の内部において昇降され、前記煙突の内面に形成されたアスベスト層を除去するアスベスト除去装置であって、
前記アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を前記内面に向けて吐出する飛散抑制剤吐出ノズルと、
前記アスベストを除去する高圧水を前記内面に向けて吐出する高圧水吐出ノズルと、を有する吐出部を備えており、
前記吐出部は、
前記煙突の中心軸を回転中心として回転可能に設けられており、かつ、前記飛散抑制剤吐出ノズルおよび前記高圧水吐出ノズルが前記回転中心の半径方向の外向きにそれぞれ複数設けられていることを特徴とするアスベスト除去装置。
【請求項8】
前記複数の飛散抑制剤吐出ノズルは、
前記飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であることを特徴とする請求項7に記載のアスベスト除去装置。
【請求項9】
前記吐出部の回転を制御するブレーキ装置を備えていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のアスベスト除去装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のアスベスト除去装置と、
前記アスベスト除去装置により煙突の内面から除去されたアスベストを回収するアスベスト回収装置と、を備えており、
前記アスベスト回収装置は、
前記アスベスト除去装置により除去されたアスベストを前記煙突の内部から吸引する吸引ホースと、前記吸引ホースの内部を負圧にする負圧発生装置との間に設けられており、前記吸引ホースにより吸引されたアスベストを蓄積する蓄積体と、
前記蓄積体に設けられており、前記蓄積体に蓄積したアスベストを排出する排出口と、
前記排出口を開閉する開閉装置と、
前記排出口から排出されるアスベストを収容する運搬可能な収容体と、
前記除去されたアスベストを凝固させる凝固剤を前記吸引されたアスベストに供給する凝固剤供給装置と、
を備えていることを特徴とするアスベスト回収システム。
【請求項11】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のアスベスト除去装置と、
前記アスベスト除去装置により煙突の内面から除去されたアスベストを回収するアスベスト回収装置と、を備えており、
前記アスベスト回収装置は、
前記アスベスト除去装置により除去されたアスベストを前記煙突の内部から吸引する吸引ホースと、前記吸引ホースの内部を負圧にする負圧発生装置との間に設けられており、前記吸引ホースにより吸引されたアスベストを蓄積する蓄積体と、
前記蓄積体に設けられており、前記蓄積体に蓄積したアスベストを排出する排出口と、
前記排出口から排出されるアスベストを収容する運搬可能な収容体と、
前記収容体に形成されており、前記排出口から排出されるアスベストを受入れる開口部と、
前記開口部を密封する密封装置と、
前記除去されたアスベストを凝固させる凝固剤を前記吸引されたアスベストに供給する凝固剤供給装置と、
を備えていることを特徴とする請求項10に記載のアスベスト回収システム。
【請求項12】
前記蓄積体に蓄積したアスベストの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検出する第1センサと、
前記第1センサが前記蓄積体に蓄積したアスベストの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検出したときに前記開閉装置を開作動させる制御部と、
を備えていることを特徴とする請求項10に記載のアスベスト回収システム。
【請求項13】
前記収容体に収容されたアスベストの重量が所定の重量に達したことを検出する第2センサと、
前記第2センサが前記収容体に収容されたアスベストの重量が所定の重量に達したことを検出したときに前記密封装置を作動させる制御部と、
を備えていることを特徴とする請求項11に記載のアスベスト回収システム。
【請求項14】
前記蓄積体の下部には突出部が設けられており、前記排出口は前記突出部の先端に形成されており、
前記収容体の開口部には逆止弁が設けられており、
前記突出部は、前記逆止弁を介して前記収容体の内部に挿通可能であることを特徴とする請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載のアスベスト回収システム。
【請求項15】
前記吸引ホースを挿通可能な挿通孔が形成されており、かつ、前記煙突の開口部を閉塞可能な閉塞部材を備えていることを特徴とする請求項10から請求項14までのいずれか1項に記載のアスベスト回収システム。
【請求項16】
前記閉塞部材には、第1および第2の貫通孔が形成されており、
前記第1の貫通孔から挿通可能であり、左腕に装着するための第1のグローブと、
前記第2の貫通孔から挿通可能であり、右腕に装着するための第2のグローブと、を備えていることを特徴とする請求項15に記載のアスベスト回収システム。
【請求項17】
前記閉塞部材は、
前記煙突の内部と外部とに連通する通気口と、
前記通気口に設けられており、アスベストの粒子を濾過するフィルタと、を備えていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載のアスベスト回収システム。
【請求項18】
前記吸引ホースから前記収容体に至るまでの回収経路には、前記吸引ホースにより吸引されたアスベストが外気に触れる箇所が存在しないことを特徴とする請求項10から請求項17までのいずれか1項に記載のアスベスト回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突の内面に吹き付けられたアスベストを除去するアスベスト除去装置および除去されたアスベストを回収するアスベスト回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、煙突の内面に吹き付けられたアスベストを除去する作業を行う場合、使用されているアスベストの種類に応じてレベル1~レベル3の作業レベルに区分されている。レベル1は、アスベスト含有吹付け材に対する作業レベルであり、発塵性が著しく高いという区分である。レベル2は、アスベスト含有保温材、アスベスト含有耐火被覆材およびアスベスト含有断熱材に対する作業レベルであり、発塵性が高いという区分である。レベル3は、その他、アスベスト含有成形板などに対する作業レベルであり、発塵性が比較的低いという区分である。
煙突の中でも、煙突の内面には、最も発塵性の高いレベル1のアスベスト含有吹付け材が吹き付けられている。レベル1のアスベスト含有吹付け材は、その他のアスベストと比べて特に繊維の露出が多く、また硬度や比重が小さく単一では脆いという特徴がある。このため、粉塵が比較的飛散しやすく、少しの外圧で破損するという特性を有する。
つまり、レベル1のアスベストを除去する作業を行う場合は、作業場所の隔離、高濃度の粉塵量に応じた防塵マスクおよび保護衣の使用など、厳重な暴露対策が必要となる。
【0003】
そこで、従来、煙突の内面に吹付けられたレベル1のアスベストを回収するシステムとして、例えば、図16に記載のシステムが知られている。図16に示すように、建造物900に設けられた煙突300の側方には、煙突300に沿って足場400が組まれている。また、建造物900の屋上には足場401が組まれており、足場400,401の上部には、隔離区域500が設けられている。隔離区域500の内面の全体は、養生シート(図示せず)によって覆われている。地上には、高圧水供給装置200が配備されており、その高圧水供給装置200に接続された高圧ホース101は、隔離区域500に設けられた滑車102,102を介して煙突300の内部に昇降可能に延びている。高圧ホース101の先端には、アスベスト除去装置100(特許文献1参照)が接続されており、アスベスト除去装置100は、高圧ホース101を介して煙突300の内部を昇降可能になっている。
【0004】
煙突300の下部の側方には、隔離区域700が形成されている。隔離区域700の内面の全体は、養生シート(図示せず)によって覆われている。隔離区域700は、煙突300の下部に形成された開口部301と連通している。隔離区域700には、開口部301から排出されたアスベストを吸引する吸引装置600が配置されている。隔離区域700の隣には、セキュリティゾーン800が配置されており、セキュリティゾーン800には、エアーシャワー装置801が配置されている。
【0005】
アスベスト除去装置100は、高圧水供給装置200から供給される高圧水を煙突300の内面に噴射しながら水平方向に回転し、煙突300の内面に吹付けられたアスベストを除去する。作業者は、隔離区域500に入り、高圧ホース101を操作してアスベスト除去装置100を昇降させる。また、作業者は、防塵マスクおよび保護衣を着用して隔離区域700に入り、煙突300の下に落下したアスベストを開口部301から隔離区域700内に掻き出し、その掻き出したアスベストを吸引装置600によって吸引する。アスベストの吸引作業を行った作業者は、セキュリティゾーン800に入り、エアーシャワー装置801によってエアーを全身に吹き付け、全身に付着したアスベストを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4916298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した従来のアスベスト回収システムでは、除去されたアスベストの粒子が煙突300の内部を上昇するため、煙突300と連通する隔離区域500で作業を行う作業者がアスベストを吸引するおそれがある。
また、前述した従来のアスベスト回収システムでは、作業者が、密室状態となった隔離区域700において長時間の作業を行うことで、除去されたアスベストを吸引するおそれがある。
また、気温が高いときに防塵マスクおよび保護衣を着用して密室状態で行う作業は、アスベストで汚染された空間での作業になり、また、汗だくになるため、過酷を極める。
つまり、従来のアスベスト回収システムは、作業者の健康を害するおそれが高かった。
【0008】
また、従来のアスベスト回収システムは、除去したアスベストの粒子が煙突300の先端から外部に飛散しないようにするために、煙突300の先端に隔離区域500を設け、その隔離区域500の内面全体を養生シートによって覆わなければならない。
また、前述したアスベスト回収システムは、セキュリティゾーン800およびエアーシャワー装置801を設置しなければならない。
つまり、前述したアスベスト回収システムは、準備に時間が掛かるし、作業コストが高いという問題がある。
また、前述したアスベスト回収システムは、密室状態となった隔離区域700にて長時間の作業を行うことが困難であるため、定期的に作業を中断するか作業員を交替させなければならないため、作業効率が悪いという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した諸問題を解決するために鋭意研究の結果創出されたものであり、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去装置およびアスベスト回収システムを提供することを目的とする。また、本発明は、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト除去装置およびアスベスト回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明)
前述した目的を達成するため、本願の第1発明に係るアスベスト除去装置(30(図1))は、
煙突(10)の内部において昇降され、煙突(10)の内面(11)に形成されたアスベスト層(13)を除去するアスベスト除去装置(30(図1))であって、
アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を内面(11)に向けて吐出する飛散抑制剤吐出部(32)と、
高圧水を内面(11)に向けて吐出し、アスベスト層(13)を除去する高圧水吐出部(31)と、を備えており、
飛散抑制剤吐出部(32)および高圧水吐出部(31)は、当該アスベスト除去装置(30)の昇降方向に沿って相互に離間して配置されていることを特徴とする。
【0011】
(第2発明)
本願の第2発明に係るアスベスト除去装置(30)は、前述した第1発明に係るアスベスト除去装置(30)において、
飛散抑制剤吐出部(32)は、
飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であることを特徴とする。
【0012】
(第3発明)
本願の第3発明に係るアスベスト除去装置(30)は、前述した第1発明または第2発明に係るアスベスト除去装置(30)において、
高圧水吐出部(31)は、
煙突(10)の中心軸(P)を回転中心(Q(図2))として回転可能に設けられており、かつ、高圧水を吐出する複数のノズル(31b)が回転中心(Q)の半径方向の外向きに設けられており、
高圧水吐出部(31)の回転を制御するブレーキ装置(91,92(図3))を備えていることを特徴とする。
【0013】
(第4発明)
前述した目的を達成するため、本願の第4発明に係るアスベスト除去装置(40(図14))は、
煙突(10)の内部において昇降され、煙突(10)の内面(11)に形成されたアスベスト層(13)を除去するアスベスト除去装置(40)であって、
アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤、または、アスベストを除去する高圧水を内面(11)に向けて吐出する吐出部(41(図13))と、
飛散抑制剤供給装置(22)および高圧水供給装置(21)に接続されており、飛散抑制剤供給装置(22)から供給される飛散抑制剤および高圧水供給装置(21)から供給される高圧水を切り替えて吐出部(40)に供給する切替装置(29(図14))と、
を備えていることを特徴とする。
【0014】
(第5発明)
本願の第5発明に係るアスベスト除去装置(40)は、前述した第4発明に係るアスベスト除去装置(40)において、
吐出部(41)は、
飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であることを特徴とする。
【0015】
(第6発明)
本願の第6発明に係るアスベスト除去装置(40)は、前述した第4発明または第5発明に係るアスベスト除去装置(40)において、
吐出部(41)は、
煙突(10)の中心軸(P)を回転中心(Q)として回転可能に設けられており、かつ、飛散抑制剤または高圧水を吐出するノズル(41b)が回転中心(Q)の半径方向の外向きに複数設けられており、
吐出部(41)の回転を制御するブレーキ装置(91,92(図3))を備えていることを特徴とする。
【0016】
(第7発明)
前述した目的を達成するため、本願の第7発明に係るアスベスト除去装置(42(図15))は、
煙突(10)の内部において昇降され、煙突の内面(11)に形成されたアスベスト層(13)を除去するアスベスト除去装置(42)であって、
アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を内面(11)に向けて吐出する飛散抑制剤吐出ノズル(32b)と、
アスベストを除去する高圧水を内面(11)に向けて吐出する高圧水吐出ノズル(31b)と、を有する吐出部(42a)を備えており、
吐出部(42a)は、
煙突(10)の中心軸(P(図14))を回転中心(Q)として回転可能に設けられており、かつ、飛散抑制剤吐出ノズル(32b)および高圧水吐出ノズル(31b)が回転中心(Q)の半径方向の外向きにそれぞれ複数設けられていることを特徴とする。
【0017】
(第8発明)
本願の第8発明に係るアスベスト除去装置(42)は、前述した第7発明に係るアスベスト除去装置(42)において、
複数の飛散抑制剤吐出ノズル(32b)は、
飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であることを特徴とする。
【0018】
(第9発明)
本願の第9発明に係るアスベスト除去装置(42)は、前述した第7発明または第8発明に係るアスベスト除去装置(42)において、
吐出部(42a)の回転を制御するブレーキ装置(91,92(図3))を備えていることを特徴とする。
【0019】
(第10発明)
前述した目的を達成するため、本願の第10発明に係るアスベスト回収システム(1(図4))は、
第1発明から第9発明までのいずれか1つのアスベスト除去装置と、
アスベスト除去装置により煙突(10)の内面(11)から除去されたアスベストを回収するアスベスト回収装置(51(図5))と、を備えており、
アスベスト回収装置(51)は、
除去装置により除去されたアスベストを吸引する吸引ホース(52)と、吸引ホース(52)の内部を負圧にする負圧発生装置(81)との間に設けられており、吸引ホース(52)により吸引されたアスベストを蓄積する蓄積体(54)と、
蓄積体(54)に設けられており、蓄積体(54)に蓄積したアスベストを排出する排出口(54a)と、
排出口(54a)を開閉する開閉装置(56)と、
排出口(54a)から排出されるアスベストを収容する運搬可能な収容体(61)と、
除去されたアスベストを凝固させる凝固剤を吸引されたアスベストに供給する凝固剤供給装置(58)と、
を備えていることを特徴とする。
【0020】
(第11発明)
前述した目的を達成するため、本願の第11発明に係るアスベスト回収システム(1)は、
第1発明から第9発明までのいずれか1つに記載のアスベスト除去装置と、
アスベスト除去装置により煙突(10)の内面(11)から除去されたアスベストを回収するアスベスト回収装置(51(図5)と、を備えており、
アスベスト回収装置(51)は、
除去装置により除去されたアスベストを吸引する吸引ホース(52)と、吸引ホース(52)の内部を負圧にする負圧発生装置(81)との間に設けられており、吸引ホース(52)により吸引されたアスベストを蓄積する蓄積体(54)と、
蓄積体(54)に設けられており、蓄積体(54)に蓄積したアスベストを排出する排出口(54a)と、
排出口(54a)から排出されるアスベストを収容する運搬可能な収容体(61)と、
収容体(61)に形成されており、排出口(54a)から排出されるアスベストを受入れる開口部(61a)と、
開口部(61a)を密封する密封装置(57)と、
除去されたアスベストを凝固させる凝固剤を吸引されたアスベストに供給する凝固剤供給装置(58)と、
を備えていることを特徴とする。
【0021】
(第12発明)
本願の第12発明は、前述した第10発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
蓄積体(54)に蓄積したアスベストの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検出する第1センサ(55(図5(A)))と、
第1センサ(55)が蓄積体(54)に蓄積したアスベストの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検出したときに開閉装置(56)を開作動させる制御部(64)と、
を備えていることを特徴とする。
【0022】
(第13発明)
本願の第13発明は、前述した第11発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
収容体(61)に収容されたアスベストの重量が所定の重量に達したことを検出する第2センサ(62(図5(A)))と、
第2センサ(62)が収容体(61)に収容されたアスベストの重量が所定の重量に達したことを検出したときに密封装置(57)を作動させる制御部(64)と、
を備えていることを特徴とする。
【0023】
(第14発明)
本願の第14発明は、前述した第10から第13発明のいずれか1つに係るアスベスト回収システム(1)において、
蓄積体(54)の下部には突出部(54b(図5(B))が設けられており、排出口(54a)は突出部(54b)の先端に形成されており、
収容体(61)の開口部(61a)には逆止弁(61c、61d(図7))が設けられており、
突出部(54b)は、逆止弁(61c、61d)を介して収容体(61)の内部に挿通可能であることを特徴とする。
【0024】
(第15発明)
本願の第15発明は、前述した第10から第14発明のいずれか1つに係るアスベスト回収システム(1)において、
吸引ホース(52)を挿通可能な挿通孔(72)が形成されており、かつ、煙突(10)の開口部(12)を閉塞可能な閉塞部材(70(図8))と、
を備えていることを特徴とする。
【0025】
(第16発明)
本願の第16発明は、前述した第15発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
閉塞部材(70)には、第1および第2の貫通孔(73,74(図8))が形成されており、
第1の貫通孔(73)から挿通可能であり、左腕に装着するための第1のグローブ(75)と、
第2の貫通孔(74)から挿通可能であり、右腕に装着するための第2のグローブ(76)と、を備えていることを特徴とする。
【0026】
(第17発明)
本願の第17発明は、前述した第15発明または第16発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
閉塞部材(70)は、
煙突(10)の内部と外部とに連通する通気口(77(図8))と、
通気口(77)に設けられており、アスベストの粒子を濾過するフィルタ(78)と、を備えていることを特徴とする。
【0027】
(第18発明)
本願の第18発明は、前述した第10発明から第17発明のいずれか1つに係るアスベスト回収システム(1)において、
吸引ホース(52(図4))から収容体(61(図5))に至るまでの回収経路(R1(図13))には、吸引ホース(52)により吸引されたアスベストが外気に触れる箇所が存在しないことを特徴とする。
【0028】
なお、上記各括弧内の符号および図番は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0029】
(第1発明の効果)
本願の第1発明によれば、アスベスト除去装置は、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を煙突の内面に向けて吐出する飛散抑制剤吐出部と、高圧水を内面に向けて吐出し、アスベスト層を除去する高圧水吐出部と、を備えているため、飛散抑制剤吐出部から飛散抑制剤を吐出してアスベスト層に浸透させた後に、高圧水吐出部から高圧水を吐出してアスベスト層を除去することができるので、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。また、アスベスト層を除去した跡に飛散抑制剤をコーティングすることもできるため、煙突を解体した際に、残存しているアスベストの飛散を抑制することもできる。
従って、本願の第1発明によれば、アスベスト除去作業を行う作業者および煙突の解体作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0030】
さらに、本願の第1発明によれば、従来のように、煙突の上下に隔離区域やセキュリティゾーンを設ける必要がない。また、本願の第1発明によれば、アスベスト除去装置は、飛散抑制剤吐出部および高圧水吐出部を備えているため、高圧水を吐出する高圧水吐出装置および飛散抑制剤を吐出する飛散抑制剤吐出装置を個別に用意する必要がないし、アスベスト層を除去した後に、飛散抑制剤吐出装置を準備して煙突内で昇降させる必要がない。
従って、本願の第1発明によれば、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることもできる。
【0031】
さらに、本願の第1発明によれば、飛散抑制剤吐出部および高圧水吐出部は、当該アスベスト除去装置の昇降方向に沿って相互に離間して配置されているため、高圧水吐出部の下側に飛散抑制剤吐出部を配置した構成と、高圧水吐出部の上側に飛散抑制剤吐出部を配置した構成とを採用することができる。高圧水吐出部の下側に飛散抑制剤吐出部を配置した構成を採用した場合は、当該アスベスト除去装置を煙突の下部から上部へ上昇させながら、高圧水吐出部から高圧水を内面に向けて吐出すると同時に飛散抑制剤吐出部から飛散抑制剤を内面に向けて吐出することにより、除去されて落下するアスベストに飛散抑制剤を付着させることができるため、除去されて煙突の底部に落下したアスベストが飛散することを抑制することもできる。
従って、本願の第1発明によれば、アスベストの飛散をより一層強く抑制することができるため、煙突の底部に落下したアスベストの回収作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがより一層なくなる。
【0032】
また、高圧水吐出部の上側に飛散抑制剤吐出部を配置した構成を採用した場合は、当該アスベスト除去装置を煙突の上部から下部へ下降させながら、高圧水吐出部から高圧水を内面に向けて吐出してアスベスト層を除去すると同時に飛散抑制剤吐出部から飛散抑制剤を内面に向けて吐出することにより、アスベスト層が除去された跡に飛散抑制剤をコーティングすることができる。
従って、本願の第1発明によれば、アスベストの除去作業と飛散抑制剤のコーティング作業とを同時に行うことができるため、作業効率をより一層高めることができる。
【0033】
(第2発明の効果)
本願の第2発明によれば、飛散抑制剤吐出部は、飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であるため、泡状の飛散抑制剤を煙突の内部に充填することにより、飛散抑制剤をアスベスト層に浸透させることができるので、高圧水を吐出してアスベスト層を除去するときに、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。
さらに、本願の第2発明によれば、泡状の飛散抑制剤が煙突の内部に充填された状態で、アスベスト除去装置を煙突の下部から上昇させながら高圧水を吐出してアスベスト層を除去すれば、除去されたアスベストの粒子が泡状の飛散抑制剤に捕捉されるため、アスベストの粒子が煙突の先端から外気に飛散するおそれがない。
【0034】
(第3発明の効果)
本願の第3発明によれば、高圧水吐出部は、煙突の中心軸を回転中心として回転可能に設けられており、かつ、高圧水を吐出する複数のノズルが回転中心の半径方向の外向きに設けられているため、高圧水吐出部を回転させながら複数のノズルから高圧水を吐出することができるので、アスベスト層を効率良く除去することができる。
さらに、本願の第3発明によれば、高圧水吐出部の回転を制御するブレーキ装置を備えているため、高圧水吐出部の回転数を適正な回転数に制御することにより、過回転を防ぐとともに、アスベスト層の除去効率を高めることができる。
さらに、高圧水吐出部が各ノズルから高圧水を吐出するときの反動によって自身が回転する場合はエアモータや電動モータなどの動力源が不要であるため、その分、アスベスト除去装置の製造コストを低減することができ、かつ、装置の故障率を下げることができる。
【0035】
(第4発明の効果)
本願の第4発明によれば、アスベスト除去装置は、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤、または、アスベストを除去する高圧水を内面に向けて吐出する吐出部を備えているため、吐出部から飛散抑制剤を吐出してアスベスト層に浸透させた後に、吐出部から高圧水を吐出してアスベスト層を除去することができるので、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。また、アスベスト層を除去した跡に飛散抑制剤をコーティングすることもできるため、煙突を解体した際に、残存しているアスベストの飛散を抑制することもできる。
従って、本願の第4発明によれば、アスベスト除去作業を行う作業者および煙突の解体作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
さらに、本願の第4発明によれば、従来のように、煙突の上下に隔離区域やセキュリティゾーンを設ける必要がない。また、本願の第4発明によれば、アスベスト除去装置は、飛散抑制剤または高圧水を吐出する吐出部を備えているため、高圧水を内面に向けて吐出し、アスベストを除去した後に、飛散抑制剤を内面に向けて吐出する別個の装置を準備して煙突内で昇降させる必要がない。
従って、本願の第4発明によれば、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができる。
【0036】
さらに、本願の第4発明によれば、飛散抑制剤供給装置および高圧水供給装置に接続されており、飛散抑制剤供給装置から供給される飛散抑制剤および高圧水供給装置から供給される高圧水を切り替えて吐出部に供給する切替装置を備えているため、飛散抑制剤を吐出する吐出部と、高圧水を吐出する吐出部とを個別に設ける必要がないので、その分、吐出部の容積を小さくすることができ、かつ、吐出部の製造コストを低減することができる。
さらに、切替装置を用いない場合は、飛散抑制剤供給装置と吐出部とを接続するチューブと、高圧水供給装置と吐出部とを接続するチューブとが必要であるが、切替装置を用いることにより、切替装置と吐出部とを接続するチューブを1本にすることができるため、切替装置を煙突の外部に配置すれば、アスベスト除去装置を煙突内で昇降させるときにチューブが邪魔になり難い。
【0037】
(第5発明の効果)
本願の第5発明によれば、吐出部は、飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であるため、泡状の飛散抑制剤を煙突の内部に充填することにより、飛散抑制剤を内面のアスベスト層に浸透させることができるので、高圧水を吐出してアスベストを除去するときに、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。
さらに、本願の第5発明によれば、泡状の飛散抑制剤が煙突の内部に充填された状態で、アスベスト除去装置を煙突の下部から上昇させながら高圧水を吐出してアスベストを除去すれば、除去されたアスベストの粒子が泡状の飛散抑制剤に捕捉されるため、アスベストの粒子が煙突の先端から外気に飛散するおそれがない。
【0038】
(第6発明の効果)
本願の第6発明によれば、吐出部は、煙突の中心軸を回転中心として回転可能に設けられており、かつ、飛散抑制剤または高圧水を吐出するノズルが回転中心の半径方向の外向きに複数設けられているため、吐出部を回転させながら複数のノズルから高圧水を吐出することができるので、アスベスト層を効率良く除去することができるし、飛散抑制剤を効率良くアスベスト層に浸透させることができる。
さらに、本願の第6発明によれば、吐出部の回転を制御するブレーキ装置を備えているため、吐出部の回転数を適正な回転数に制御することにより、過回転を防ぐとともに、アスベスト層の除去効率を高めることができる。
さらに、吐出部が各ノズルから高圧水を吐出するときの反動によって自身が回転する場合はエアモータや電動モータなどの動力が不要であるため、その分、アスベスト除去装置の製造コストを低減することができ、かつ、装置の故障率を下げることができる。
【0039】
(第7発明の効果)
本願の第7発明によれば、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を煙突の内面に向けて吐出する飛散抑制剤吐出ノズルと、アスベストを除去する高圧水を内面に向けて吐出する高圧水吐出ノズルと、を有する吐出部を備えているため、飛散抑制剤吐出ノズルから飛散抑制剤を吐出してアスベスト層に浸透させた後に、高圧水吐出ノズルから高圧水を吐出してアスベスト層を除去することができるので、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。また、アスベスト層を除去した跡に飛散抑制剤をコーティングすることもできるため、煙突を解体した際に、残存しているアスベストの飛散を抑制することもできる。
従って、本願の第7発明によれば、アスベスト除去作業を行う作業者および煙突の解体作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0040】
さらに、本願の第7発明によれば、従来のように、煙突の上下に隔離区域やセキュリティゾーンを設ける必要がない。また、本願の第7発明によれば、アスベスト除去装置は、飛散抑制剤を吐出する飛散抑制剤吐出ノズルと、高圧水を吐出する高圧水吐出ノズルとを備えているため、高圧水を内面に向けて吐出し、アスベストを除去した後に、飛散抑制剤を内面に向けて吐出する別個の装置を準備して煙突内で昇降させる必要がない。
従って、本願の第7発明によれば、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができる。
【0041】
さらに、本願の第7発明によれば、吐出部は、煙突の中心軸を回転中心として回転可能に設けられており、かつ、飛散抑制剤吐出ノズルおよび高圧水吐出ノズルが回転中心の半径方向の外向きにそれぞれ複数設けられているため、吐出部を回転させながら複数の高圧水吐出ノズルから高圧水を吐出することができるので、アスベスト層を効率良く除去することができるし、複数の飛散抑制剤吐出ノズルから飛散抑制剤を吐出することができるので、飛散抑制剤を効率良くアスベスト層に浸透させることができる。
【0042】
(第8発明の効果)
本願の第8発明によれば、複数の飛散抑制剤吐出ノズルは、飛散抑制剤を泡状にして吐出可能であるため、泡状の飛散抑制剤を煙突の内部に充填することにより、飛散抑制剤を内面のアスベスト層に浸透させることができるので、高圧水を吐出してアスベスト層を除去するときに、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。
さらに、本願の第8発明によれば、泡状の飛散抑制剤が煙突の内部に充填された状態で、アスベスト除去装置を煙突の下部から上昇させながら高圧水を吐出してアスベスト層を除去すれば、除去されたアスベストの粒子が泡状の飛散抑制剤に捕捉されるため、アスベストの粒子が煙突の先端から外気に飛散するおそれがない。
【0043】
(第9発明の効果)
本願の第9発明によれば、吐出部の回転を制御するブレーキ装置を備えているため、吐出部の回転数を適正な回転数に制御することにより、過回転を防ぐとともに、アスベストの除去効率を高めることができる。
さらに、吐出部が各高圧水吐出ノズルから高圧水を吐出するときの反動によって自身が回転する場合は、エアモータや電動モータなどの動力が不要であるため、その分、アスベスト除去装置の製造コストを低減することができ、かつ、装置の故障率を下げることができる。
【0044】
(第10発明の効果)
本願の第10発明によれば、吸引ホースにより吸引されたアスベストを蓄積する蓄積体の排出口を開閉する開閉装置を備えているため、排出口を閉口することができるので、蓄積体に蓄積されたアスベストが蓄積体の排出口から外部へ飛散するおそれがない。
さらに、本願の第10発明によれば、蓄積体は、吸引ホースと、吸引ホースの内部を負圧にする負圧発生装置との間に設けられているため、煙突の内部を負圧にすることができるので、除去されたアスベストが上昇して煙突の先端から外部に飛散するおそれがない。
さらに、本願の第10発明によれば、蓄積体の排出口から排出されるアスベストを収容する運搬可能な収容体を備えているため、収容体を運搬することにより、アスベストを処分することができる。
さらに、本願の第10発明によれば、除去されたアスベストを凝固させる凝固剤を、吸引されたアスベストに供給する凝固剤供給装置を備えているため、吸引されたアスベストを凝固させることができるので、収容体に収容されたアスベストが収容体の外部へ飛散するおそれをより一層なくすことができる。
従って、収容体を運搬する者がアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0045】
(第11発明の効果)
本願の第11発明によれば、蓄積体の排出口から排出されるアスベストを収容する収容体の開口部を密封する密封装置を備えているため、密封装置により収容体の開口部を密封することができるので、収容体に収容されたアスベストが収容体の外部へ飛散するおそれがない。
さらに、本願の第11発明によれば、除去されたアスベストを凝固させる凝固剤を吸引されたアスベストに供給する凝固剤供給装置を備えているため、吸引されたアスベストを凝固させることができるので、収容体に収容されたアスベストが収容体の外部へ飛散するおそれをより一層なくすことができる。
従って、収容体を運搬する者がアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0046】
(第12発明の効果)
本願の第12発明によれば、蓄積体に蓄積したアスベストの蓄積量が所定の蓄積量に達したときに、蓄積体の排出口を自動的に開口することができるため、作業者が開閉装置を手動で操作することによりアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0047】
(第13発明の効果)
本願の第13発明によれば、収容体に収容されたアスベストの重量が所定の重量に達したときに、収容体の開口部を自動的に密封することができるため、作業者が密封装置を手動で操作することによりアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0048】
(第14発明の効果)
本願の第14発明によれば、蓄積体の下部に設けられた突出部を、収容体の開口部に設けられた逆止弁を介して収容体の内部に挿通することができるため、収容体の開口部を蓄積体の突出部から外すときに逆止弁が開口部を閉口するので、アスベストが収容体から漏れるおそれがない。
【0049】
(第15発明の効果)
本願の第15発明によれば、煙突の開口部を閉塞する閉塞部材を介して吸引ホースを挿通することができるため、除去されたアスベストが煙突の開口部から漏れるおそれがないので、吸引ホースを操作する作業者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0050】
(第16発明の効果)
本願の第16発明によれば、吸引ホースによってアスベストを吸引する作業を行う作業者は、第1のグローブを装着した左腕を閉塞部材の第1の貫通孔から挿通し、第2のグローブを装着した右腕を閉塞部材の第2の貫通孔から挿通して吸引ホースを操作することができるため、作業者がアスベストに触れないので、作業者が健康を害するおそれがない。
また、作業者が吸引ホースを操作してアスベストを吸引することができるため、吸引ホースを操作しないで固定して作業を行う場合と比較すると、アスベストを効率的に吸引することができるので、作業効率を高めることができる。
【0051】
(第17発明の効果)
本願の第17発明によれば、閉塞部材に設けられた通気口には、アスベストの粒子を濾過するフィルタが設けられているため、除去したアスベストが通気口を介して煙突の外部へ漏れないようにすることができるので、吸引ホースを扱う作業者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0052】
(第18発明の効果)
本願の第18発明によれば、吸引ホースから収容体に至るまでの回収経路には、吸引ホースにより吸引されたアスベストが外気に触れる箇所が存在しないため、作業者および作業現場の周囲に居る者がアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
さらに、従来のように、作業現場に隔離区域を設け、その隔離区域の内面全体を養生シートで覆う必要がないため、その分、作業効率を高めることができ、かつ、作業コストを低減することができる。
【0053】
前述したように、本願の第1発明から第18発明によれば、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去装置およびアスベスト回収システムを提供することができる。また、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト除去装置およびアスベスト回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の第1実施形態に係るアスベスト除去装置の正面説明図である。
図2図1に示すアスベスト除去装置の平面説明図であり、(A)は高圧水吐出部の平面図、(B)は飛散抑制剤吐出部の平面図である。
図3】(A)はドラム式ブレーキ装置の説明図、(B)はディスク式ブレーキ装置の説明図、(C)および(D)は接続パイプの変更例を示す説明図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るアスベスト回収システムの説明図である。
図5図4に示すアスベスト回収システムに備えられたアスベスト回収装置の説明図であり、(A)はアスベスト回収装置の正面説明図、(B)は(A)のうち、蓄積体および収容体の接続部分を拡大して示す説明図である。
図6】(A)は図5に示すアスベスト回収装置に備えられた密封装置の動作を示す模式図であり、(B)は密封装置が収容体の開口部を密封した状態を示す模式図であり、(C)は密封装置の変更例を示す模式図である。
図7】(A)は蓄積体の突出部が収容体の逆止弁を介して内部に挿入された状態を示す模式図であり、(B)は逆止弁の模式図である。
図8図4に示すアスベスト回収システムに備えられた閉塞部材の説明図であり、(A)は閉塞部材の正面図、(B)は閉塞部材の平面図である。
図9図8に示す閉塞部材の使用方法を示す平面説明図である。
図10図8に示す閉塞部材の使用方法を示す側面説明図である。
図11】アスベスト除去方法の工程図である。
図12図5に示すアスベスト回収装置に備えられた制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図13】アスベスト回収経路の説明図である。
図14】本発明の第2実施形態に係るアスベスト除去装置の正面説明図である。
図15】本発明の第3実施形態に係るアスベスト除去装置に備えられた吐出部の平面説明図である。
図16】従来のアスベスト回収システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態のアスベスト除去装置について図を参照しつつ説明する。
[アスベスト除去装置の構成]
図4に示すように、建造物2には煙突10が設けられている。煙突10は、先端が開口された筒状に形成されている。図1に示すように、煙突10の内面11には、アスベスト層13が形成されている。アスベスト層13は、レベル1のアスベスト含有吹付け材から形成されている。以下の説明では、煙突10の先端方向を上方または上昇方向とし、煙突10の下端方向を下方または下降方向という。本実施形態では、煙突10を水平に切断したときの内面11の断面形状は円形である。本実施形態のアスベスト除去装置30は、高圧水を煙突10の内面11に向けて吐出し、内面11に形成されたアスベスト層13を除去する高圧水吐出部31と、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を内面11に向けて吐出する飛散抑制剤吐出部32とを備えている。
【0056】
高圧水吐出部31および飛散抑制剤吐出部32は、支柱90に取り付けられており、支柱90は、平面視円板形状の遮蔽部材34の中央に挿通されている。遮蔽部材34の中央には、ケーシング33の底部が取り付けられている。ケーシング33の内部には、支柱90を回転させるためのエアモータ37が設けられている。支柱90は、伝達機構(図示せず)を介してエアモータ37の回転シャフトと回転可能に接続されている。
ケーシング33には、エアモータ37に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給チューブ23aと、高圧水吐出部31に高圧水を供給するための高圧水供給チューブ21aと、飛散抑制剤吐出部32に飛散抑制剤を供給するための飛散抑制剤供給チューブ22aとが挿通されている。
【0057】
圧縮空気供給チューブ23aは、圧縮空気供給装置23およびエアモータ37と接続されており、圧縮空気供給装置23から供給される圧縮空気をエアモータ37に供給し、エアモータ37は、その供給された圧縮空気を動力源にして回転する。高圧水供給チューブ21aは、高圧水供給装置21および高圧水吐出部31と接続されており、高圧水供給装置21から供給される高圧水を高圧水吐出部31に供給し、高圧水吐出部31は、その供給された高圧水を内面11に向けて吐出する。飛散抑制剤供給チューブ22aは、飛散抑制剤供給装置22および飛散抑制剤吐出部32と接続されており、飛散抑制剤供給装置22から供給される飛散抑制剤を飛散抑制剤吐出部32に供給し、飛散抑制剤吐出部32は、その供給された飛散抑制剤を内面11に向けて吐出する。
【0058】
遮蔽部材34の上面には、固定部35,35がケーシング33を中心にして相対向する位置に固定されており、各固定部35には、金具36がそれぞれ固定されている。本実施形態では、各金具36は、それぞれ先端がリング状に形成されている。各金具36には、それぞれワイヤー38の一端が取り付けられており、各ワイヤー38の他端は、滑車39のブロック39aに取り付けられている。滑車39のシーブ39bには、ワイヤー28が掛けられており、ワイヤー28は、巻上機27(図4)のドラム(図示せず)に捲回可能に接続されている。
【0059】
図2(A)に示すように、高圧水吐出部31は、平面視四角形の基部31cを備えている。基部31cの各側面には、接続パイプ31aの一端がそれぞれ着脱可能に接続されており、各接続パイプ31aの他端には、それぞれ高圧水吐出ノズル31bが着脱可能に接続されている。支柱90は、煙突10の中心軸C(図1)を回転中心として回転するため、高圧水吐出部31は、煙突10の中心軸C(図1)を回転中心Qとして回転する。各高圧水吐出ノズル31bは、高圧水吐出部31の回転中心Qから半径方向の外向きに設けられている。各接続パイプ31aは、それぞれ高圧水供給チューブ21aを介して高圧水供給装置21(図1)と接続されている。
各接続パイプ31aは、それぞれ高圧水吐出ノズル31bと連通しており、高圧水供給装置21から高圧水供給チューブ21aを介して供給される高圧水を自身に接続された高圧水吐出ノズル31bに供給する。各高圧水吐出ノズル31bは、それぞれ煙突10の内面11に対向しており、自身が接続された接続パイプ31aから供給される高圧水をアスベスト層13に向けて吐出する。高圧水吐出部31は、各高圧水吐出ノズル31bから、例えば、245MPaの高圧水を最高吐出流量が50リットル/分にて吐出する能力を有する。高圧水吐出部31は、エアモータ37が連結されていないと、各高圧水吐出ノズル31bから高圧水を吐出するときの反動によって高速回転し、回転速度を制御できなくなるが、その回転速度はエアモータ37によって制御される。
【0060】
煙突10の内面11の直径が変化すると、高圧水吐出ノズル31bの先端とアスベスト層13との距離が変化し、その距離が長くなると、高圧水によるアスベスト層13の除去能力が低下することが考えられる。
そこで、前述したように、各接続パイプ31aはそれぞれ基部31cに対して着脱可能であるため、上記の距離が最適となるような長さの接続パイプ31aを選択して基部31cに接続することにより、上記の距離を最適とすることができ、アスベスト層13の除去能力が低下しないようにすることができる。
【0061】
図2(B)に示すように、飛散抑制剤吐出部32は、平面視四角形の基部32cを備えている。基部32cの各側面には、接続パイプ32aの一端がそれぞれ着脱可能に接続されており、各接続パイプ32aの他端には、それぞれ飛散抑制剤吐出ノズル32bが着脱可能に接続されている。支柱90は、煙突10の中心軸C(図1)を回転中心として回転するため、飛散抑制剤吐出部32は、煙突10の中心軸C(図1)を回転中心Qとして回転する。各飛散抑制剤吐出ノズル32bは、飛散抑制剤吐出部32の回転中心Qから半径方向の外向きに設けられている。各接続パイプ32aは、それぞれ飛散抑制剤供給チューブ22aを介して飛散抑制剤供給装置22(図1)と接続されている。
各接続パイプ32aは、それぞれ飛散抑制剤吐出ノズル32bと連通しており、飛散抑制剤供給装置22から飛散抑制剤供給チューブ22aを介して供給される飛散抑制剤を自身に接続された飛散抑制剤吐出ノズル32bに供給する。各飛散抑制剤吐出ノズル32bは、それぞれ煙突10の内面11に対向しており、自身が接続された接続パイプ32aから供給される飛散抑制剤を内面11に向けて吐出する。
【0062】
煙突10の内面11の直径が変化すると、飛散抑制剤吐出ノズル32bの先端とアスベスト層13との距離が変化し、その距離が長くなると、飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させる能力が低下することが考えられる。
そこで、前述したように、各接続パイプ32aはそれぞれ基部32cに対して着脱可能であるため、上記の距離が最適となるような長さの接続パイプ32aを選択して基部32cに接続することにより、上記の距離を最適とすることができ、飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させる能力が低下しないようにすることができる。
【0063】
高圧水吐出部31および飛散抑制剤吐出部32は、当該アスベスト除去装置30の煙突10内部における昇降方向に沿って相互に離間して配置されており、高圧水吐出部31の下側に飛散抑制剤吐出部32が配置されている。このように配置することにより、図1に示すように、高圧水吐出部31の各高圧水吐出ノズル31bから高圧水を内面11に吐出しながら、飛散抑制剤吐出部32の各飛散抑制剤吐出ノズル32bから飛散抑制剤を内面11に吐出することができる。このように、高圧水によりアスベスト層13を除去しながら飛散抑制剤を吐出することにより、削除されて煙突10の底部へ落下する途中のアスベストに飛散抑制剤を付着させることができるため、底部に落下したアスベストが飛散することを抑制することができる。
【0064】
図1に示すように、遮蔽部材34は、高圧水吐出部31の上側に配置されており、高圧水吐出部31によって除去されたアスベストの粒子が煙突10の先端へ上昇することを阻止する。除去されたアスベストの粒子の上昇を阻止するためには、遮蔽部材34とアスベスト層13との間に隙間が無い方が良いが、遮蔽部材34の外周とアスベスト層13との摩擦が大きくなると、アスベスト除去装置30の昇降に支障が出るため、図1に示すように、遮蔽部材34は、自身の外周とアスベスト層13との間に隙間が形成される大きさに形成されている。また、図2に示すように、遮蔽部材34は、自身の外周が、各高圧水吐出ノズル31bおよび各飛散抑制剤吐出ノズル32bの各先端よりもアスベスト層13に近くなる大きさに形成されている。つまり、遮蔽部材34は、各高圧水吐出ノズル31bおよび各飛散抑制剤吐出ノズル32bの各先端を通る円の直径よりも大きい。直径に形成されている。これにより、アスベスト除去装置30は、高圧水吐出部31が高圧水を吐出するときの反動により、回転中心Qが水平方向に振れた場合であっても、高圧水吐出ノズル31bや飛散抑制剤吐出ノズル32bがアスベスト層13や内面11に衝突して損傷しないようにすることができる。
【0065】
[アスベスト回収システムの構成]
次に、本実施形態のアスベスト回収システムの構成について図4を参照しつつ説明する。
煙突10の側方には足場3が組まれており、建造物2の屋上には足場4が組まれている。足場4の上には、作業部屋5が設けられている。作業部屋5の外壁には滑車25が設けられており、作業部屋5の内部の天井には滑車26が設けられている。また、作業部屋5の内部には、巻上機27が設けられている。
【0066】
煙突10の下方の近傍には、作業車20と、作業車50と、作業車80とが配置されている。作業車20には、高圧水供給装置21と、飛散抑制剤供給装置22と、圧縮空気供給装置23とが搭載されている。飛散抑制剤供給装置22がアスベスト除去装置30へ供給する飛散抑制剤の種類は、アスベストの粒子の飛散を効果的に抑制できるものであれば限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂を主成分とする水溶性樹脂などを使用することができる。
煙突10の先端には、蓋24が被せられており、アスベスト層13を除去する作業中に、除去されたアスベストの粒子が煙突10の先端から外部に漏れないようになっている。
【0067】
高圧水供給装置21に接続された高圧水供給チューブ21aと、飛散抑制剤供給装置22に接続された飛散抑制剤供給チューブ22aと、圧縮空気供給装置23に接続された圧縮空気供給チューブ23aとは、滑車25,26を介して作業部屋5の内部に導出されており、さらに、蓋24に貫通形成された貫通孔(図示せず)に挿通されており、アスベスト除去装置30に接続されている。また、巻上機27とアスベスト除去装置30とを接続するワイヤー28も、蓋24に貫通形成された貫通孔に挿通されている。
【0068】
煙突10の下部には、煙突10の内部および外部に連通する開口部12が形成されており、その開口部12には、開口部12を閉塞する閉塞部材70が取付けられている。閉塞部材70には、吸引ホース52が挿通されている。吸引ホース52は、アスベスト除去装置30により除去され、煙突10の下部に蓄積された物、つまり、除去されたアスベスト層13と、高圧水吐出部31から吐出された水と、飛散抑制剤吐出部32から吐出された飛散抑制剤とが混合された混合物Asを吸引する。吸引ホース52は、作業車50に搭載されたアスベスト回収装置51と接続されている。
アスベスト回収装置51は、吸引ホース53を介して、作業車80に搭載された負圧発生装置81と接続されている。負圧発生装置81が吸引ホース52の内部を負圧にすることにより、吸引ホース52が、煙突10の底部に蓄積された混合物Asをアスベスト回収装置51に吸引する。負圧発生装置81には、混合物Asと共に吸引した気体を大気へ排気するための排気パイプ82が備えられている。
【0069】
本実施形態では、排気パイプ82にはヘパフィルタ(図示せず)が取付けられている。ヘパフィルタは、JISZ8122に規定されており、定格風量で粒径が0.3オmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。つまり、ヘパフィルタを用いることにより、0.3オm以下のアスベスト粒子を99.97%以上濾過することができるため、排気パイプ82から大気中に排出されたアスベスト粒子を作業者が吸い込んで健康を害するおそれがなくなる。
【0070】
上述したように、本実施形態のアスベスト回収システム1は、アスベスト除去装置30と、このアスベスト除去装置30へ高圧水を供給する高圧水供給装置21と、アスベスト除去装置30へ飛散抑制剤を供給する飛散抑制剤供給装置22と、アスベスト除去装置30へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置23と、煙突10の下部に形成された開口部12を閉塞する閉塞部材70と、閉塞部材70に挿通された吸引ホース52と、この吸引ホース52が接続されたアスベスト回収装置51と、このアスベスト回収装置51に接続された負圧発生装置81とを備えている。
【0071】
(閉塞部材)
ここで、閉塞部材70の構造について図8を参照しつつ説明する。
閉塞部材70は、煙突10の下部に形成された開口部12(図4)に合致した形状に形成されている。本実施形態では、開口部12は矩形に形成されており、閉塞部材70は、開口部12に合致した矩形で板状に形成されている。閉塞部材70は、開口部12に合致した矩形で板状の本体71を備えている。本体71には、吸引ホース52(図4)を挿通するために貫通形成された挿通孔72と、第1の貫通孔73と、第2の貫通孔74と、通気口77と、この通気口77に取付けられたフィルタ78とを備えている。本実施形態では、フィルタ78は、前述したヘパフィルタである。このため、通気口77から煙突10の外へ排出されたアスベスト粒子を作業者が吸い込んで健康を害するおそれがなくなる。また、本体71は、アクリルなどの合成樹脂により透明に形成されている。
【0072】
第1の貫通孔73からは、作業者Pの左腕に装着する第1のグローブ75が突出しており、第2の貫通孔74からは、作業者Pの右腕に装着する第2のグローブ76が突出している。第1のグローブ75および第2のグローブ76は、それぞれ少なくとも肘よりも肩に近い部分から指先までを密閉する構造になっている。また、第1のグローブ75の周囲は、第1の貫通孔73の周囲と密着しており、第1のグローブ75と第1の貫通孔73との間には隙間が形成されていない。また、第2のグローブ76の周囲は、第2の貫通孔74の周囲と密着しており、第2のグローブ76と第2の貫通孔74との間には隙間が形成されていない。
【0073】
つまり、本体71と、第1のグローブ75と、第2のグローブ76とは、いわゆるグローブボックスの構造を利用して構築することができる。グローブボックスとは、外気と遮断された状況下で作業が可能となるように、内部に手だけが入れられるよう設計された密閉容器である。また、挿通孔72の周縁からは、挿通孔72の径よりも小径のスカート部72aが形成されている。本実施形態では、スカート部72aはゴム製であり、挿通孔72に挿通された吸引ホース52の外周面に密着し、吸引ホース52と挿通孔72との間に隙間が形成されないようになっている。
つまり、閉塞部材70は、混合物Asの吸引作業を行うときに、アスベストが開口部12を通じて煙突10の外部に漏れない構造になっている。
また、本体71は、透明であるため、混合物Asの吸引作業中に、吸引ホース52の位置を閉塞部材70の外から視認することができる。
【0074】
(アスベスト回収装置)
ここで、アスベスト回収装置51の構成について図5を参照しつつ説明する。
アスベスト回収装置51は、吸引ホース52によって吸引された混合物Asを回収する装置である。アスベスト回収装置51は、蓄積体54と、第1センサ55と、開閉装置56と、密封装置57と、凝固剤供給装置58と、フィルタ59と、収容体61と、第2センサ62と、制御部64とを備えている。
【0075】
蓄積体54は、吸引ホース52と、負圧発生装置81(図4)と接続された吸引ホース53との間に設けられている。本実施形態では、蓄積体54は、ホッパの形状に形成されている。蓄積体54の下部には筒状の突出部54bが設けられており、その突出部54bの先端(図5(B)では下端)には、蓄積体54に蓄積された混合物Asを排出するための排出口54aが閉塞可能に開口形成されている。
吸引ホース53は、蓄積体54の上部に取付けられている。こうすることにより、吸引ホース52から排出された混合物Asが、吸引された勢いで直接吸引ホース53に入らないようにすることができる。蓄積体54と吸引ホース53との接続箇所には、蓄積体54の内部に吸引された混合物Asを濾過するフィルタ59が設けられている。フィルタ59の目を細かくすると吸引力が低下し、目を粗くすると濾過されない混合物Asの粒子が大きくなるため、フィルタ59の種類は、吸引力および濾過能力を考慮して決定する。例えば、フィルタ59としてデミスターなどの金網を用いることができる。
第1センサ55は、蓄積体54に蓄積された混合物Asが所定量に達したことを検知するセンサである。例えば、第1センサ55は、近接センサである。また、近接センサに代えてリミットスイッチを用いることもできる。通常、蓄積体54の排出口54aは開口しており、蓄積体54に蓄積された混合物Asは、蓄積体54の下部に配置された収容体61に落下する。
【0076】
収容体61は、収容体61の重量が所定量に達したことを検知する第2センサ62の上に載置されている。収容体61の上部61bには、蓄積体54の排出口54aから排出される混合物Asを受入れる開口部61aが密封可能に開口している。本実施形態では、収容体61は運搬可能な袋状に形成されている。例えば、収容体61は、アスベストの粒子が漏れることのない材料、例えば、ポリエチレンにより形成することができる。収容体61の肉厚が薄い場合は、収容体61を二重にすることにより、破損を防止し、アスベストが漏れないようにする。また、本実施形態では、収容体61の容量は、基本的に作業者が手で持ち上げて回収するため、回収されたアスベストを持ち上げることができる容量、例えば、20~40リットルである。また、収容体61としてさらに大きい容量(例えば、1立方メートル)のものを用いる場合は、ポリエチレンなどにより形成された収容体61を、通称、フレコン(株式会社ナシヨナルマリンプラスチツクの登録商標で、フレキシブルコンテナバッグの略称)と呼ばれるものに入れ、クレーンなどを使って運搬するようにしても良い。
【0077】
蓄積体54の底部には、蓄積体54の排出口54aを開閉する開閉装置56が設けられている。開閉装置56は、通常は開作動しており、収容体61の重量が所定量に達したことを第2センサ62が検知したときに閉作動し、蓄積体54の排出口54aを閉塞する。例えば、開閉装置56は、シャッター式またはバタフライ式の弁56aと、この弁を開閉駆動するソレノイドやモータなどのアクチュエータ(図示せず)とを備えている。また、第2センサ62は、例えば、重量センサである。
【0078】
開閉装置56の下方には、収容体61の開口部61aを密封する密封装置57が設けられている。本実施形態では、密封装置57は、ヒート式または超音波式の溶着装置であり、収容体61の開口部を密封し、アスベストが漏れないようにする。図6に示すように、密封装置57は、金属プレート57aと、加熱プレート57bと、加熱プレート57bを矢印の方向へ往復移動させるためのモータやソレノイドなどのアクチュエータ(図示せず)とを備えている。開閉装置56が閉作動し、蓄積体54の排出口54aが閉塞されると、密封装置57が作動し、加熱プレート57bが金属プレート57aの方へ移動し、金属プレート57aおよび加熱プレート57b間で、収容体61の開口部61aを溶着して密封する。密封が終了すると、加熱プレート57bが原点に復帰する。
【0079】
また、密封装置57は、収容体61の開口部61aを着脱可能に構成されている。図5(B)に示すように、蓄積体54の筒状の突出部54bが収容体61の開口部61aに挿入されるため、図6(A)に示すように、開口部61aは突出部54bに対応した円形になっている。このように、開口部61aが円形になった状態で溶着しても良いが、図6(C)に示すように、収容体61の開口部61aを構成する長手面が相対向するように、収容体61を密封装置57にセットし、相対向する長手面を相互に溶着する構造でも良い。また、密封装置57は、収容体61の開口部61aを絞り込んでから結束部材によって結束する構造でも良い。また、開口部61aの絞り込んだ部分を溶着する構造でも良い。
【0080】
図5に示すように、凝固剤供給装置58は、チューブ60によって蓄積体54と接続されている。チューブ60の先端には、混合物Asを凝固させる凝固剤を噴射する噴射ノズル65が取付けられている。噴射ノズル65の噴射孔は、蓄積体54の排出口54aの方に向いており、排出口54aが開口しているときに、排出口54aから収容体61の開口部61aを通じて、収容体61に収容されている混合物Asに凝固剤を噴射する。つまり、収容体61に収容されている混合物Asを凝固させる。噴射ノズル65は、開閉装置56または密封装置57に設けることもできる。
凝固剤の種類および濃度は、収容体61の開口部61aからアスベストが大気中に飛散しないように調整する。凝固剤としては、例えば、高分子ポリマーを用いることができる。第2センサ62および凝固剤供給装置58は、基台63の上に配置されている。
【0081】
制御部64は、開閉装置56と、密封装置57と、凝固剤供給装置58と、負圧発生装置81とに接続されており、接続された各装置を制御する。制御部64は、各装置を制御するための制御プログラムや制御テーブルなどが格納されたROMと、このROMから読出された制御プログラムを展開して格納するRAMと、このRAMに展開された制御プログラムを実行するCPUとを備えている。また、RAMは、CPUの処理結果などを一時的に格納する。
【0082】
[アスベスト回収方法]
次に、アスベスト回収方法について図11の工程図を参照しつつ説明する。
(工程1)
最初に、アスベスト層13を除去して回収するための準備を行う。具体的には、図4に示すように、煙突10の側方に足場3を組み、煙突10が設置された建造物2の屋上に煙突10の先端の周囲を囲むように足場4を組む。また、足場4の上に作業部屋5を設置し、作業部屋5に滑車25,26を取付け、作業部屋5に巻上機27を配置する。また、煙突10の下方の近傍に作業車20,50,80を配置する。
また、アスベスト除去装置30を作業部屋5に用意する。また、高圧水供給チューブ21a、飛散抑制剤供給チューブ22aおよび圧縮空気供給チューブ23aが滑車25,26に架け渡され、蓋24に挿通され、さらに、アスベスト除去装置30に接続された状態にする。また、ワイヤー28を介して巻上機27(図4)とアスベスト除去装置30とを接続する。また、高圧水供給装置21、飛散抑制剤供給装置22、圧縮空気供給装置23および制御部64(図5(A))を操作する作業者を配置し、巻上機27を操作する作業者、吸引ホース52により作業を行う作業者などを配置する。
【0083】
(工程2)
次に、煙突10の先端に蓋24を被せて煙突10の先端を閉塞し、巻上機27を操作してアスベスト除去装置30を煙突10の底部まで下降させる。
【0084】
(工程3)
次に、圧縮空気供給装置23および飛散抑制剤供給装置22(図4)を作動させる。これにより、エアモータ37(図1)が回転し、飛散抑制剤吐出部32が回転しながら各飛散抑制剤吐出ノズル32bから飛散抑制剤をアスベスト層13に吐出する。この場合、飛散抑制剤の吐出速度は、吐出した飛散抑制剤がアスベスト層13に浸透可能な吐出速度であれば良い。また、巻上機27を操作し、アスベスト除去装置30を上昇させる。つまり、飛散抑制剤吐出部32から飛散抑制剤をアスベスト層13に吐出しながらアスベスト除去装置30を上昇させ、飛散抑制剤をアスベスト層13に満遍なく浸透させる。
なお、エアモータ37の回転速度は、圧縮空気供給装置23に設けられた回転速度調整部(図示せず)によって調節することができ、エアモータ37の回転速度を調節することにより、飛散抑制剤吐出部32の回転速度を所望の回転速度に調節することができる。
【0085】
(工程4)
次に、工程3により吐出された飛散抑制剤がアスベスト層13に浸透するまで所定時間待機する。この所定時間は、アスベスト層13の種類または厚さに応じて、予め、経験または実験により求めておくことができる。
【0086】
(工程5)
次に、飛散抑制剤がアスベスト層13に浸透した後、巻上機27を操作し、アスベスト除去装置30を煙突10の底部まで下降させる。
【0087】
(工程6)
次に、高圧水供給装置21および圧縮空気供給装置23を作動させる。これにより、高圧水吐出部31が回転しながら各高圧水吐出ノズル31b(図1)から高圧水をアスベスト層13に吐出し、その吐出された高圧水の圧力によりアスベスト層13を除去する。また、巻上機27を操作し、アスベスト除去装置30を上昇させる。つまり、高圧水吐出部31から高圧水を吐出しながらアスベスト除去装置30を上昇させ、アスベスト層13を満遍なく除去する。
なお、高圧水吐出部31の回転速度は、エアモータ37の回転速度を調節することにより、所望の回転速度に調節することができる。また、アスベスト除去装置30の上昇速度は、アスベスト層13の除去能力、アスベスト層13の種類、アスベスト層13の厚さなどに応じて、予め、経験または実験により求めておくことができる。
【0088】
また、負圧発生装置81(図4)およびアスベスト回収装置51(図5)を作動させ、除去されて煙突10の底部に蓄積された混合物Asを吸引し、アスベスト回収装置51に回収する。図9に示すように、混合物Asの吸引作業を行う作業者Pは、左腕を第1のグローブ75に挿通し、右腕を第2のグローブ76に挿通する。そして、図10に示すように、作業者Pは、両手で吸引ホース52を操作し、煙突10の底部に蓄積した混合物Asを吸引ホース52によって吸引する。
【0089】
(工程7)
次に、煙突10の内部を撮影し、アスベスト層13の除去状態を確認する。例えば、アスベスト除去装置30にカメラおよび照明器具を取付け、アスベスト除去装置30を煙突10の内部で昇降させ、煙突10の内面11を撮影し、その撮影画像を、作業現場に設けたモニタに表示し、その表示された画像を見て、アスベスト層13の除去状態を確認する。その結果、アスベスト層13が残存していることが分かった場合は、再度、工程5および工程6を実行する。この場合、アスベスト層13の残存量によっては工程2~工程6を実行しても良い。
【0090】
(工程8)
次に、巻上機27を操作し、アスベスト除去装置30を煙突10の底部まで下降させる。
【0091】
(工程9)
次に、飛散抑制剤供給装置22および圧縮空気供給装置23を作動させる。これにより、飛散抑制剤吐出部32が回転しながら各飛散抑制剤吐出ノズル32b(図1)から飛散抑制剤を、アスベスト層13が除去された跡に吐出し、コーティングする。これにより、煙突10の内面11にアスベスト層13が残っていた場合であっても、煙突10を解体した際にアスベストが飛散しないようにすることができるため、解体作業を行う作業者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0092】
[制御部の処理内容]
次に、上述した工程6において制御部64(図5)が実行する処理内容について図12を参照しつつ説明する。以下の説明では、制御部64が実行する処理ステップをSと略す。
【0093】
制御部64は、負圧発生装置81(図4)に対して作動命令を出力し、混合物Asの吸引を開始させる(S1)。このS1の処理は、制御部64に接続された吸引スイッチ(図示せず)がオンしたときに開始する。この吸引スイッチは、吸引ホース52を操作する作業者の近傍に配置することもできる。続いて、制御部64は、第1センサ55(図5)がオンしたか否かを判定し(S2)、オンしていないと判定した場合は(S2:No)、開閉装置56(図5)を閉作動させ、蓄積体54の底部を閉口する(S3)。つまり、制御部64は、蓄積体54に蓄積された混合物Asが、第1センサ55がオンする所定量に達するまでは開閉装置56を閉作動させて排出口54aが閉塞された状態を保持し、蓄積体54に混合物Asが所定量蓄積されるように制御する。
【0094】
また、制御部64は、第1センサ55がオンしたと判定した場合は(S2:Yes)、開閉装置56を開作動させ、蓄積体54の排出口54aを開口する(S4)。つまり、制御部64は、蓄積体54に蓄積された混合物Asが、第1センサ55がオンする所定量に達したときは開閉装置56を開作動させて排出口54aを開口させ、蓄積体54に蓄積された混合物Asを収容体61の開口部61aに落下させる。続いて、制御部64は、アスベスト回収装置51に設けられた凝固剤供給装置58(図5)を作動させ、凝固剤を噴射ノズル65から収容体61の内部に噴射させる(S5)。続いて、制御部64は、第2センサ62(図5)がオンしたか否かを判定し(S6)、オンしたと判定した場合は(S6:Yes)、開閉装置56を閉作動させて排出口54aを閉塞する(S7)。つまり、制御部64は、収容体61に回収された混合物Asが所定の重量に達したと判定した場合は、蓄積体54の排出口54aを閉塞し、蓄積体54に蓄積された混合物Asが収容体61に落下しないように制御する。
【0095】
また、制御部64は、第2センサ62がオンしていないと判定した場合は(S6:No)、S1~S5を実行する。つまり、制御部64は、収容体61に回収された混合物Asが所定の重量に達したと判定するまで、混合物Asの吸引および凝固剤の噴射を継続する。
そして、制御部64は、負圧発生装置81および凝固剤供給装置58を停止させ(S8)、混合物Asの吸引および凝固剤の噴射を停止させる。続いて、制御部64は、密封装置57(図5)を作動させ(S9)、収容体61の開口部61aを密封する。続いて、制御部64は、収容体61が混合物Asで満杯になったことを報知する(S10)。例えば、制御部64には、収容体61が混合物Asで満杯になったことを報知する報知ランプおよび報知スピーカが接続されており、その報知ランプを点灯させ、かつ、報知スピーカから所定の音を出力することにより、収容体61が混合物Asで満杯になったことを周囲の作業者に報知する。報知ランプおよび報知スピーカは、吸引ホース52を操作する作業者の近傍に配置することもできる。
【0096】
作業者は、密封装置57から収容体61を取外し、その収容体61を所定の場所まで運搬する。このとき、収容体61の開口部61aは、密封装置57によって密封されているため、収容体61からアスベストが外部に漏れるおそれがないので、収容体61を運搬する作業者および周囲の人が、アスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
そして、混合物Asの回収作業を継続する場合は、作業者は、新たな収容体61を密封装置57および蓄積体54の突出部54bにセットし、制御部64に接続された吸引スイッチ(図示せず)をオンし、制御部64に前述したS1~S10を実行させる。
【0097】
図13は、アスベスト回収経路の説明図である。前述したようなアスベスト層13の除去および回収を行う作業現場Wは、吸引ホース52によりアスベスト回収装置51と接続されており、アスベスト回収装置51は、吸引ホース53により負圧発生装置81と接続されている。アスベスト回収経路は、作業現場Wからアスベスト回収装置51に至る回収経路R1と、アスベスト回収装置51から負圧発生装置81に至る回収経路R2とから構成されている。作業現場W、吸引ホース52,53、作業者P、アスベスト回収装置51および負圧発生装置81が置かれている環境をEとすると、回収経路R1,R2では、回収される混合物As(アスベスト)が外気に触れる箇所が存在しないため、作業者Pを初めとして環境Eに存在する者が、混合物Asに含まれているアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0098】
従って、本来であれば、煙突10のアスベスト層13は吹き付けアスベストであり、レベル1の区分であるため、レベル1に対応した作業環境(作業現場の養生、作業者の防護服など)を作る必要があるが、本実施形態のアスベスト除去装置30およびアスベスト回収システム1によれば、アスベストが外気に触れる箇所が存在しないため、レベル3の区分に対応した作業環境を作れば良い。このため、レベル1のように、作業場所の隔離、高濃度の粉塵量に応じた防塵マスクおよび保護衣の使用など、厳重な暴露対策を行う必要がないため、作業効率を高めることができ、かつ、作業コストを低減することができる。
【0099】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態のアスベスト除去装置30によれば、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を煙突10の内面11に向けて吐出する飛散抑制剤吐出部32と、高圧水を内面11に向けて吐出し、アスベスト層13を除去する高圧水吐出部31と、を備えているため、飛散抑制剤吐出部32から飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させた後に、高圧水吐出部31から高圧水を吐出してアスベスト層13を除去することができるので、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。また、アスベスト層13を除去した跡に飛散抑制剤をコーティングすることもできるため、煙突10を解体した際に、残存しているアスベストの飛散を抑制することもできる。
従って、上述した第1実施形態のアスベスト除去装置30によれば、アスベスト除去作業を行う作業者および煙突10の解体作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0100】
(2)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去装置30によれば、従来のように、煙突の上下に隔離区域やセキュリティゾーンを設ける必要がない。また、上述した第1実施形態のアスベスト除去装置30によれば、飛散抑制剤吐出部32および高圧水吐出部31を備えているため、高圧水を吐出する高圧水吐出装置および飛散抑制剤を吐出する飛散抑制剤吐出装置を個別に用意する必要がないし、アスベスト層13を除去した後に、飛散抑制剤吐出装置を準備して煙突10内で昇降させる必要がない。
従って、上述した第1実施形態のアスベスト除去装置30によれば、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることもできる。
【0101】
(3)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去装置30によれば、高圧水吐出部31は、煙突10の中心軸Cを回転中心Qとして回転可能に設けられており、かつ、各高圧水吐出ノズル31bが回転中心Qの半径方向の外向きに設けられているため、高圧水吐出部31を回転させながら各高圧水吐出ノズル31bから高圧水を吐出することができるので、アスベスト層13を効率良く除去することができる。
【0102】
(4)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去装置30によれば、飛散抑制剤吐出部32は、煙突10の中心軸Cを回転中心Qとして回転可能に設けられており、かつ、各飛散抑制剤吐出ノズル32bが回転中心Qの半径方向の外向きに設けられているため、飛散抑制剤吐出部32を回転させながら各飛散抑制剤吐出ノズル32bから飛散抑制剤を吐出することができるので、飛散抑制剤をアスベスト層13に効率良く浸透させることができる。また、アスベスト層13が除去された跡に、飛散抑制剤を効率良く塗布することもできる。
【0103】
(5)また、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、吸引ホース52により吸引された混合物Asを蓄積する蓄積体54の排出口54aを開閉する開閉装置56を備えているため、排出口54aを閉口することができるので、蓄積体54に蓄積された混合物Asに含まれているアスベストが蓄積体54の排出口54aから外部へ飛散するおそれがない。
【0104】
(6)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、蓄積体54は、吸引ホース52と、吸引ホース52の内部を負圧にする負圧発生装置81との間に設けられているため、煙突10の内部を負圧にすることができるので、除去されたアスベストが煙突10の先端から外部に飛散するおそれがない。
【0105】
(7)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、蓄積体54の排出口54aから排出される混合物Asを収容する運搬可能な収容体61を備えているため、収容体61を運搬することにより、アスベストを含む混合物Asを処分することができる。
【0106】
(8)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、除去された混合物Asを凝固させる凝固剤を吸引された混合物Asに供給する凝固剤供給装置58を備えているため、吸引された混合物Asを凝固させることができるので、収容体61に収容された混合物Asに含まれているアスベストが収容体61の外部へ飛散するおそれをより一層なくすことができる。
従って、収容体61を運搬する者がアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0107】
(9)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、蓄積体54の排出口54aから排出される混合物Asを収容する収容体61の開口部61aを密封する密封装置57を備えているため、密封装置57により収容体61の開口部61aを密封することができるので、収容体61に収容された混合物Asに含まれているアスベストが収容体61の外部へ飛散するおそれがない。
【0108】
(10)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、蓄積体54に蓄積した混合物Asの蓄積量が所定の蓄積量に達したときに、蓄積体54の排出口54aを自動的に開口することができるため、作業者が開閉装置56を手動で操作することによりアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0109】
(11)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、収容体61に収容された混合物Asの重量が所定の重量に達したときに、収容体61の開口部61aを自動的に密封することができるため、作業者が密封装置57を手動で操作することによりアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0110】
(12)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、煙突10の開口部12を閉塞する閉塞部材70を介して吸引ホース52を挿通することができるため、除去された混合物Asが煙突10の開口部12から漏れるおそれがないので、吸引ホース52を操作する作業者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0111】
(13)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、吸引ホース52によって混合物Asを吸引する作業を行う作業者Pは、第1のグローブ75を装着した左腕を閉塞部材70の第1の貫通孔73から挿通し、第2のグローブ76を装着した右腕を閉塞部材70の第2の貫通孔74から挿通して吸引ホース52を操作することができるため、作業者がアスベストに触れないので、作業者が健康を害するおそれがない。
【0112】
(14)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、作業者が吸引ホース52を操作して混合物Asを吸引することができるため、吸引ホース52を操作しないで固定して作業を行う場合と比較すると、混合物Asを効率的に吸引することができるので、作業効率を高めることができる。
【0113】
(15)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、閉塞部材70に設けられた通気口77には、アスベストの粒子を濾過するフィルタ78が設けられているため、除去したアスベストが通気口77を介して煙突10の外部へ漏れないようにすることができるので、吸引ホース52を扱う作業者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0114】
(16)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、吸引ホース52から収容体61に至るまでの回収経路には、吸引ホース52により吸引されたアスベストが外気に触れる箇所が存在しないため、作業者および作業現場の周囲に居る者がアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0115】
(17)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト回収システム1によれば、従来のように、作業場所の隔離、高濃度の粉塵量に応じた防塵マスクおよび保護衣の使用など、厳重な暴露対策を行う必要がないため、その分、作業効率を高めることができ、かつ、作業コストを低減することができる。
【0116】
(17)上述したように、第1実施形態のアスベスト除去装置30およびアスベスト回収システム1によれば、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去装置30およびアスベスト回収システム1を提供することができる。また、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト除去装置30およびアスベスト回収システム1を提供することができる。
【0117】
〈第1実施形態の第1変更例〉
高圧水吐出部31から高圧水を吐出すると同時に飛散抑制剤吐出部32から飛散抑制剤を吐出することもできる。これにより、除去されたアスベストのうち、飛散抑制剤が浸透していなかったアスベストは、落下する途中で、飛散抑制剤吐出部32から吐出された飛散抑制剤と接触するため、飛散抑制剤が付着した状態で煙突10の底部に落下する。これにより、除去されて煙突の底部に落下したアスベストが飛散することを抑制することができる。
従って、第1実施形態の第1変更例によれば、アスベストの飛散をより一層強く抑制することができるため、煙突10の底部に落下したアスベストの回収作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがより一層なくなる。
【0118】
〈第1実施形態の第2変更例〉
高圧水吐出部31の上側に飛散抑制剤吐出部32を配置した構成とし、アスベスト除去装置30を煙突10の上部から下部へ下降させながら、高圧水吐出部31から高圧水を内面11に向けて吐出すると同時に飛散抑制剤吐出部32から飛散抑制剤を内面11に向けて吐出することにより、アスベストが除去された跡に飛散抑制剤をコーティングすることもできる。
従って、第1実施形態の第2変更例によれば、アスベストの除去作業と飛散抑制剤のコーティング作業とを同時に行うことができるため、作業効率をより一層高めることができる。
【0119】
〈第1実施形態の第3変更例〉
飛散抑制剤吐出部32の各飛散抑制剤吐出ノズル32bが、飛散抑制剤を泡状にして吐出することにより、泡状の飛散抑制剤を煙突10の内部に充填し、飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させることもできる。
従って、第1実施形態の第3変更例によれば、飛散抑制剤を泡状にすることにより、飛散抑制剤をアスベスト層13の細部にまで浸透させることができるため、高圧水を吐出してアスベスト層13を除去するときに、除去されたアスベストの飛散をより一層抑制することができる。
また、泡状の飛散抑制剤が煙突10の内部に充填された状態で、アスベスト除去装置30を煙突10の下部から上昇させながら高圧水を吐出してアスベスト層13を除去することもできる。この方法によれば、除去されたアスベストの粒子が泡状の飛散抑制剤に捕捉されるため、アスベストの粒子の浮遊を抑制することができる。
【0120】
〈第1実施形態の第4変更例〉
エアモータ37(図1)を用いないで、図3(A)に示すドラム式ブレーキ装置91を設け、高圧水吐出部31の回転を制御するように構成することもできる。ドラム式ブレーキ装置91は、アスベスト除去装置30の回転部分である支柱90の内壁を押圧可能なシュー91a,91aと、各シュー91aを支柱90の内壁に押圧可能なピストンシリンダ91bと、このピストンシリンダ91bに作動油を供給する油圧パイプ91cと、この油圧パイプ91cに供給する油圧量を制御する制御部91dとを備えている。制御部91dは、アスベスト除去装置30を操作する者の近傍、例えば、作業部屋5(図4)などに配置される。
上述した第1実施形態の第4変更例によれば、高圧水吐出部31の回転を制御するドラム式ブレーキ装置91を備えているため、高圧水吐出部31の回転数を適正な回転数に制御することにより、過回転を防ぐとともに、アスベスト層13の除去効率を高めることができる。
さらに、高圧水吐出部31は、各高圧水吐出ノズル31bが高圧水を吐出するときの反動によって自身が回転するため、エアモータ37や電動モータなどの動力源が不要であり、その分、アスベスト除去装置30の製造コストを低減することができ、かつ、装置の故障率を下げることができる。
【0121】
また、上述したドラム式ブレーキ装置91に代えて、図3(B)に示すディスク式ブレーキ装置92を用いることもできる。ディスク式ブレーキ装置92は、アスベスト除去装置30の回転部分である支柱90の内壁に同軸状に固定されたディスク92aと、ディスク92aの両面を挾持可能なパッド92b,92bと、各パッド92bをディスク92aの挾持方向に動作させるピストンシリンダ92cと、このピストンシリンダ92cに作動油を供給する油圧パイプ92dと、この油圧パイプ92dに供給する油圧量を制御する制御部92dとを備えている。ドラム式ブレーキ装置91およびディスク式ブレーキ装置92は、本発明のブレーキ装置の一例である。
【0122】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態のアスベスト除去装置について図14を参照しつつ説明する。
本実施形態のアスベスト除去装置40は、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤、または、アスベスト層13を除去する高圧水を煙突10の内面11に向けて吐出する吐出部41と、切替装置29とを備えている。切替装置29は、飛散抑制剤供給装置22および高圧水供給装置21に接続されており、供給チューブ29aを介して吐出部41に接続されている。切替装置29は、飛散抑制剤供給装置22から供給される飛散抑制剤および高圧水供給装置21から供給される高圧水を切り替えて吐出部41に供給する。
【0123】
吐出部41は、煙突10の中心軸Cを回転中心として水平回転可能に設けられており、吐出部41には、飛散抑制剤または高圧水を吐出するノズル41bが回転中心の半径方向の外向きに複数設けられている。本実施形態では、基部41cは平面視四角形に形成されており、その基部41cの各側面に接続パイプ41aの一端がそれぞれ着脱可能に接続されており、各接続パイプ41aの他端にノズル41bがそれぞれ着脱可能に接続されている。各ノズル41bは、切替装置29が高圧水供給装置21の側に切り替えられているときは、高圧水を吐出し、アスベスト層13を除去する。また、各ノズル41bは、切替装置29が飛散抑制剤供給装置22の側に切り替えられているときは、飛散抑制剤をアスベスト層13、あるいは、アスベスト層13が除去された跡に吐出する。
【0124】
[第2実施形態の効果]
(1)上述した第2実施形態のアスベスト除去装置40によれば、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤、または、アスベストを除去する高圧水を煙突10の内面11に向けて吐出する吐出部41を備えているため、各ノズル41bから飛散抑制剤を吐出してアスベスト層13に浸透させた後に、各ノズル41bから高圧水を吐出してアスベスト層13を除去することができるので、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。また、アスベスト層13を除去した跡に飛散抑制剤をコーティングすることもできるため、煙突10を解体した際に、残存しているアスベストの飛散を抑制することもできる。
従って、上述した第2実施形態のアスベスト除去装置40によれば、アスベスト除去作業を行う作業者および煙突10の解体作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0125】
(2)さらに、前述した第2実施形態のアスベスト除去装置40によれば、従来のように、煙突の上下に隔離区域やセキュリティゾーンを設ける必要がない。また、前述した第2実施形態のアスベスト除去装置40によれば、飛散抑制剤または高圧水を吐出する吐出部41を備えているため、高圧水を内面11に向けて吐出し、アスベスト層13を除去した後に、飛散抑制剤を内面11に向けて吐出する別個の装置を準備して煙突10内で昇降させる必要がない。
従って、前述した第2実施形態のアスベスト除去装置40によれば、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができる。
【0126】
(3)さらに、前述した第2実施形態のアスベスト除去装置30によれば、吐出部41は、煙突10の中心軸Cを回転中心として回転可能に設けられており、かつ、各ノズル41bが回転中心の半径方向の外向きに設けられているため、吐出部41を回転させながら各ノズル41bから高圧水を吐出することができるので、アスベスト層13を効率良く除去することができる。
【0127】
(4)さらに、前述した第2実施形態のアスベスト除去装置30によれば、吐出部41は、煙突10の中心軸Cを回転中心として回転可能に設けられており、かつ、各ノズル41bが回転中心の半径方向の外向きに設けられているため、吐出部41を回転させながら各ノズル41bから飛散抑制剤を吐出することができるので、飛散抑制剤をアスベスト層13に効率良く浸透させることができる。また、アスベスト層13が除去された跡に、飛散抑制剤を効率良く塗布することもできる。
【0128】
(5)さらに、前述した第2実施形態のアスベスト除去装置40によれば、飛散抑制剤供給装置22および高圧水供給装置21に接続されており、飛散抑制剤供給装置22から供給される飛散抑制剤および高圧水供給装置21から供給される高圧水を切り替えて吐出部41に供給する切替装置29を備えているため、飛散抑制剤を吐出する吐出部と、高圧水を吐出する吐出部とを個別に設ける必要がないので、その分、吐出部41の容積を小さくすることができ、かつ、吐出部41の製造コストを低減することができる。
【0129】
(6)さらに、前述した第2実施形態のアスベスト除去装置40によれば、切替装置29を用いない場合は、飛散抑制剤供給装置22と吐出部41とを接続するチューブと、高圧水供給装置21と吐出部41とを接続するチューブとが必要であるが、切替装置29を用いることにより、切替装置29と吐出部41とを接続する供給チューブ29aの1本にすることができるため、切替装置29を煙突10の外部に配置すれば、アスベスト除去装置40を煙突10内で昇降させるときにチューブが邪魔になり難い。
【0130】
〈第2実施形態の第1変更例〉
吐出部41の各ノズル41bが、飛散抑制剤を泡状にして吐出することにより、泡状の飛散抑制剤を煙突10の内部に充填し、飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させることもできる。
従って、第2実施形態の第1変更例によれば、飛散抑制剤を泡状にすることにより、飛散抑制剤をアスベスト層13の細部にまで浸透させることができるため、高圧水を吐出してアスベスト層13を除去するときに、除去されたアスベストの飛散をより一層抑制することができる。
また、泡状の飛散抑制剤が煙突10の内部に充填された状態で、アスベスト除去装置40を煙突10の下部から上昇させながら高圧水を吐出してアスベスト層13を除去することもできる。この方法によれば、除去されたアスベストの粒子が泡状の飛散抑制剤に捕捉されるため、アスベストの粒子の浮遊を抑制することができる。
【0131】
〈第2実施形態の第2変更例〉
エアモータ37(図1)を用いないで、図3(A)に示すドラム式ブレーキ装置91、または、図3(B)に示すディスク式ブレーキ装置92を設け、吐出部41の回転を制御するように構成することもできる。
従って、第2実施形態の第2変更例によれば、吐出部41の回転を制御するドラム式ブレーキ装置91またはディスク式ブレーキ装置92を備えているため、吐出部41の回転数を適正な回転数に制御することにより、過回転を防ぐとともに、アスベスト層13の除去効率を高めることができる。
さらに、吐出部41は、各ノズル41bが高圧水または飛散抑制剤を吐出するときの反動によって自身が回転するため、エアモータ37や電動モータなどの動力源が不要であり、その分、アスベスト除去装置40の製造コストを低減することができ、かつ、装置の故障率を下げることができる。
【0132】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態のアスベスト除去装置について図15を参照しつつ説明する。
本実施形態のアスベスト除去装置42の吐出部42aは、平面視六角形の基部42bと、この基部42bの各側面に一端が着脱可能に接続された接続パイプ31a,32aと、各接続パイプ31aの他端にそれぞれ着脱可能に接続された高圧水吐出ノズル31bと、各接続パイプ32aの他端にそれぞれ着脱可能に接続された飛散抑制剤吐出ノズル32bとを備えている。接続パイプ31a,32aは、基部42bの側面に交互に接続されており、高圧水吐出ノズル31bおよび飛散抑制剤吐出ノズル32bが交互に配置された構成になっている。つまり、高圧水吐出ノズル31bおよび飛散抑制剤吐出ノズル32bが、吐出部42aの回転中心Qの円周方向において交互に配置されている。
【0133】
各接続パイプ31aは、高圧水供給チューブ21a(図1)を介して高圧水供給装置21と接続されており、各接続パイプ32aは、飛散抑制剤供給チューブ22aを介して飛散抑制剤供給装置22と接続されている。アスベスト層13を除去するときは、高圧水供給装置21を作動し、各高圧水吐出ノズル31bから高圧水を吐出する。また、飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させる場合、あるいは、アスベスト層13が除去された跡に飛散抑制剤をコーティングする場合は、飛散抑制剤供給装置22を作動し、各飛散抑制剤吐出ノズル32bから飛散抑制剤を吐出する。
【0134】
[第3実施形態の効果]
(1)上述した第3実施形態のアスベスト除去装置42によれば、アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤を煙突10の内面11に向けて吐出する飛散抑制剤吐出ノズル32bと、アスベスト層13を除去する高圧水を内面11に向けて吐出する高圧水吐出ノズル31bと、を有する吐出部42を備えているため、各飛散抑制剤吐出ノズル32bから飛散抑制剤を吐出してアスベスト層13に浸透させた後に、各高圧水吐出ノズル31bから高圧水を吐出してアスベスト層13を除去することができるので、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。また、アスベスト層13を除去した跡に飛散抑制剤をコーティングすることもできるため、煙突10を解体した際に、残存しているアスベストの飛散を抑制することもできる。
従って、上述した第2実施形態のアスベスト除去装置42によれば、アスベスト除去作業を行う作業者および煙突10の解体作業を行う作業者が、除去されずに浮遊するアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
【0135】
(2)さらに、前述した第3実施形態のアスベスト除去装置42によれば、従来のように、煙突の上下に隔離区域やセキュリティゾーンを設ける必要がない。また、前述した第3実施形態のアスベスト除去装置42によれば、飛散抑制剤を吐出する飛散抑制剤吐出ノズル32bと、高圧水を吐出する高圧水吐出ノズル31bとを備えているため、高圧水を内面11に向けて吐出し、アスベスト層13を除去した後に、飛散抑制剤を内面11に向けて吐出する別個の装置を準備して煙突10内で昇降させる必要がない。
従って、前述した第3実施形態のアスベスト除去装置42によれば、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができる。
【0136】
(3)さらに、前述した第3実施形態のアスベスト除去装置42によれば、吐出部42aは、煙突10の中心軸Cを回転中心Qとして回転可能に設けられており、かつ、飛散抑制剤吐出ノズル32bおよび高圧水吐出ノズル31bが回転中心Qの半径方向の外向きにそれぞれ3個ずつ設けられているため、吐出部42aを水平回転させながら各高圧水吐出ノズル31bから高圧水を吐出することができるので、アスベスト層13を効率良く除去することができる。
【0137】
(4)さらに、前述した第3実施形態のアスベスト除去装置42によれば、吐出部42aを水平回転させながら各飛散抑制剤吐出ノズル32bから飛散抑制剤を吐出することができるため、飛散抑制剤をアスベスト層13に効率良く浸透させることができるし、アスベスト層13が除去された跡に飛散抑制剤を効率良く塗布することができる。
【0138】
〈第3実施形態の第1変更例〉
吐出部42の各飛散抑制剤吐出ノズル32bが、飛散抑制剤を泡状にして吐出することにより、泡状の飛散抑制剤を煙突10の内部に充填し、飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させることもできる。
従って、第3実施形態の第1変更例によれば、飛散抑制剤を泡状にすることにより、飛散抑制剤をアスベスト層13の細部にまで浸透させることができるため、各高圧水吐出ノズル31bから高圧水を吐出してアスベスト層13を除去するときに、除去されたアスベストの飛散を抑制することができる。
また、泡状の飛散抑制剤が煙突10の内部に充填された状態で、アスベスト除去装置42を煙突10の下部から上昇させながら高圧水を吐出してアスベスト層13を除去することもできる。この方法によれば、除去されたアスベストの粒子が泡状の飛散抑制剤に捕捉されるため、アスベストの粒子の浮遊を抑制することができる。
【0139】
〈第3実施形態の第2変更例〉
エアモータ37(図1)を用いないで、図3(A)に示すドラム式ブレーキ装置91、または、図3(B)に示すディスク式ブレーキ装置92を設け、吐出部42aの回転を制御するように構成することもできる。
従って、第3実施形態の第2変更例によれば、吐出部42aの回転を制御するドラム式ブレーキ装置91またはディスク式ブレーキ装置92を備えているため、吐出部42aの回転数を適正な回転数に制御することにより、過回転を防ぐとともに、アスベスト層13の除去効率を高めることができる。
さらに、吐出部42aは、各高圧水吐出ノズル31bが高圧水を吐出するときの反動、または、各飛散抑制剤吐出ノズル32bが飛散抑制剤を吐出するときの反動によって自身が回転するため、エアモータ37や電動モータなどの動力源が不要であり、その分、アスベスト除去装置42の製造コストを低減することができ、かつ、装置の故障率を下げることができる。
【0140】
〈他の実施形態〉
(1)第1実施形態のアスベスト除去装置30において、高圧水吐出部31を昇降方向に複数設け、各高圧水吐出部31から高圧水を吐出することにより、アスベスト層13の除去効率を高めるように構成することもできる。
(2)第1実施形態のアスベスト除去装置30において、飛散抑制剤吐出部32を昇降方向に複数設け、各飛散抑制剤吐出部32から飛散抑制剤を吐出することにより、飛散抑制剤のアスベスト層13への浸透効率を高めるように構成することもできる。
【0141】
(3)第1実施形態のアスベスト除去装置30において、高圧水吐出部31を回転させるためのエアモータを設けず、飛散抑制剤吐出部32を回転させるためのエアモータのみを設け、高圧水吐出部31は高圧水を吐出するときの反動によって回転させ、飛散抑制剤吐出部32はエアモータによって回転させるように構成することもできる。
(4)第1実施形態のアスベスト除去装置30において、基部31c,32cを単一の基部とし、その基部に対して、図1および図2に示した配置構成にて各高圧水吐出ノズル31bおよび各飛散抑制剤吐出ノズル32bを設けることもできる。
【0142】
(5)第1実施形態のアスベスト除去装置30において、接続パイプ31a,32aをそれぞれ伸縮可能な構成にすることもできる。例えば、図3(C)に示すように、周面に雄ねじが形成された調節パイプ31dを基部31cから突出形成し、内面に雌ねじが形成された接続パイプ31aを調節パイプ31dにねじ込む。そして、接続パイプ31aを回転させることにより、接続パイプ31aの基部31cからの突出長さを調節する。
この構成を用いれば、煙突10の内面11の直径が変化した場合であっても、接続パイプ31aの基部31cからの突出長さを調節することにより、高圧水吐出ノズル31bからアスベスト層13までの距離を調節することができるため、アスベスト層13の除去能力が低下するおそれがない。
【0143】
(6)図3(D)に示すように、周面に雄ねじが形成された調節パイプ32dを基部32cから突出形成し、内面に雌ねじが形成された接続パイプ32aを調節パイプ32dにねじ込む。そして、接続パイプ32aを回転させることにより、接続パイプ32aの基部32cからの突出長さを調節する。
この構成を用いれば、煙突10の内面11の直径が変化した場合であっても、接続パイプ32aの基部32cからの突出長さを調節することにより、飛散抑制剤吐出ノズル32bからアスベスト層13までの距離を調節することができるため、飛散抑制剤をアスベスト層13に浸透させる能力が低下するおそれがない。
【0144】
(7)図7に示すように、開口部61aに逆止弁61c,61dが設けられた収容体61を用い、蓄積体54の突出部54bを逆止弁61c,61dを介して収容体61の内部に挿通する構成を用いることもできる。逆止弁61c,61dは、それぞれ開閉可能であり、かつ、開閉方向が異なっている。また、逆止弁61c,61dは、それぞれ剛性を有し、通常は、開口部61aを閉塞した状態になっており、上下方向に相互に重なっている。収容体61の開口部61aを蓄積体54の突出部54bから外すと、逆止弁61c,61dは、それぞれ原点に復帰し、開口部61aを閉塞する。
この構成を備えたアスベスト回収装置51によれば、収容体61の開口部61aを蓄積体54の突出部54bから外すときに逆止弁61c,61dが開口部61aを閉塞するので、アスベストが収容体61から漏れるおそれがない。また、密封装置57を設ける必要がないため、その分、アスベスト回収装置51のコストを低減することができる。なお、逆止弁の構造は、図7に示した構造以外の公知の構造でも良い。
【0145】
(8)煙突10の内面に形成されたアスベスト層13の種類、アスベスト層13の厚さ、飛散抑制剤がアスベストに浸透する時間、煙突10の内面11の容積などの外部要因と、飛散抑制剤を煙突10の内面に充填するために必要な飛散抑制剤の容量との関係を実験により求め、上記外部要因が分かれば、飛散抑制剤の必要な容量が分かるようにしておくこともできる。
例えば、上記外部要因と飛散抑制剤の容量との対応関係をテーブルにして制御部64のRAMに記憶しておき、制御部64に接続された入力部(例えば、数値入力キーなど)から上記外部要因の各値を入力すると、制御部64がRAMの上記テーブルを参照し、入力された外部要因に対応する飛散抑制剤の容量を、制御部64に接続された表示部(例えば、液晶表示装置など)に表示するように構成することもできる。
また、飛散抑制剤供給装置22が供給する飛散抑制剤の容量が、上記の必要な容量に達したときに、飛散抑制剤供給装置22が自動的に飛散抑制剤の供給を停止するように構成することもできる。
【0146】
(9)吸引ホース52によって混合物Asを吸引する前に、吸引ホース52によって飛散抑制剤を吸引し、飛散抑制剤を吸引ホース52の内壁面にコーティングしておくコーティング工程を加えることもできる。このコーティング工程を加えれば、混合物Asの吸引を行った後に吸引ホース52を外した際に、吸引ホース52の内部に残っていた混合物Asが吸引ホース52の先端から外部に漏れにくいようにすることができるため、作業現場にいる者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。また、吸引ホース53の内壁面に飛散抑制剤をコーティングしておくこともできる。
【0147】
(10)飛散抑制剤供給装置22から供給される飛散抑制剤を泡状の飛散抑制剤に変換して吐出する変換器を煙突10の先端の開口部に取付け、その変換器から吐出される泡状の飛散抑制剤を煙突10の内面11に充填することもできる。
(11)アスベスト除去装置にカメラおよび照明器具を取付け、アスベスト層13の除去状態を確認しながらアスベスト層13を除去することもできる。また、カメラのレンズに付着した汚れを払拭する装置を取付け、その装置により、定期的または汚れを確認したときにレンズを払拭し、撮影に障害が出ないようにすることもできる。また、上記照明器具の光を出射する面に付着した汚れを払拭する装置を取付けることもできる。
【0148】
(12)アスベスト回収装置51の内部の気体を外部へ吸引する吸引装置を設け、アスベスト回収装置51の内部に浮遊しているアスベスト粒子を吸引することもできる。この場合、その吸引装置とアスベスト回収装置51とを接続する排気パイプに前述したヘパフィルタを設けることにより、吸引したアスベスト粒子が大気中に漏れないようにすることもできる。
また、密封装置57の周囲、または、開閉装置56および密封装置57の周囲を覆う部材を設け、その部材に吸引装置を接続することもできる。この構成によれば、密封装置57から収容体61を着脱する際に、密封装置57また開閉装置56からアスベストが漏れた場合であっても、その漏れたアスベストを吸引することができるため、収容体61を着脱する者が、アスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0149】
(13)収容体61に回収されたアスベストの重量が所定の重量になったときに、負圧発生装置81の動作を一時的に停止させ、凝固剤供給装置58を動作させ、収容体61に凝固剤を噴射し、凝固剤の噴射が終了してから、負圧発生装置81の動作を再開させる方法を用いることもできる。また、凝固剤を噴射する噴射ノズル65を開閉装置56または密封装置57を構成する所定の部材に設け、噴射ノズル65の噴射孔が収容体61の内部に向いているように構成することもできる。
【符号の説明】
【0150】
1 アスベスト回収システム
10 煙突
11 内面
12 開口部
13 アスベスト層
21 高圧水供給装置
22 飛散抑制剤供給装置
23 圧縮空気供給装置
24 蓋
30 アスベスト除去装置
31 高圧水吐出部
31b 高圧水吐出ノズル
32 飛散抑制剤吐出部
32b 飛散抑制剤吐出ノズル
37 エアモータ
51 アスベスト回収装置
52 吸引ホース
53 吸引ホース
54 蓄積体
54a 排出口
54b 突出部
55 第1センサ
56 開閉装置
57 密封装置
58 凝固剤供給装置
59 フィルタ
61 収容体
61a 開口部
61b 上部
61c 逆止弁
61d 逆止弁
62 第2センサ
64 制御部
65 噴射ノズル
70 閉塞部材
72 挿通孔
73 第1の貫通孔
74 第2の貫通孔
75 第1のグローブ
76 第2のグローブ
77 通気口
78 フィルタ
81 負圧発生装置
As 混合物
C 煙突の中心軸
P 作業者
Q 回転軸
R1 回収経路
R2 回収経路
図1
図2
図3
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