IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KELKの特許一覧

<>
  • 特開-処理液温調装置 図1
  • 特開-処理液温調装置 図2
  • 特開-処理液温調装置 図3
  • 特開-処理液温調装置 図4
  • 特開-処理液温調装置 図5
  • 特開-処理液温調装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132806
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】処理液温調装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/02 20060101AFI20220906BHJP
   F28D 7/06 20060101ALI20220906BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20220906BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F28D9/02
F28D7/06
F25B21/02 Q
H01L21/304 648K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031479
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦
【テーマコード(参考)】
3L103
5F157
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103AA05
3L103AA35
3L103BB19
3L103CC12
3L103DD06
3L103DD15
3L103DD58
3L103DD94
5F157CF36
5F157CF60
5F157CF99
5F157DC51
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】コンパクト化及びコスト低減を図ることができるとともに熱交換効率を向上させることができる処理液温調装置を提供する。
【解決手段】処理液温調装置1は、炭化珪素焼結体からなる一体構造をなして、内部に半導体処理液が流通する流路Fを有するブロック体10と、ブロック体10に設けられて、流路Fを流通する半導体処理液の温度調整を行う温度調整部60と、を備える。これにより、部品点数を削減して、コンパクト化及びコスト低減を図ることができる。また、処理液と温度調整部60との間の熱伝導を高めることができ、熱交換効率を向上させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素焼結体からなる一体構造をなして、内部に形成された半導体処理液が流通する流路、及び、該流路を外部と隔てる隔壁を有するブロック体と、
前記ブロック体の外面に設けられて、前記隔壁を介して前記半導体処理液と熱交換する温度調整部と、
を備える処理液温調装置。
【請求項2】
前記隔壁の厚さが、0.5~5.0mmの範囲である請求項1に記載の処理液温調装置。
【請求項3】
前記ブロック体は、互いに厚さ方向Tに離間して配置された前記外面として第一主面及び第二主面を有し
前記流路は、前記厚さ方向Tに直交する方向に延びており、
前記温度調整部は、前記第一主面及び前記第二主面にそれぞれ接するように設けられている請求項1に記載の処理液温調装置。
【請求項4】
前記ブロック体は、
前記第一主面を有し、該第一主面の反対側の面に前記流路の一部を形成する第一流路溝が形成された第一炭化珪素材と、
前記第二主面を有し、該第二主面の反対側の面に前記流路の一部を形成する第二流路溝が形成された第二炭化珪素材と、
前記第一炭化珪素材と前記第二炭化珪素材との間に設けられて、前記第一流路溝とともに第一流路を形成するとともに前記第二流路溝とともに第二流路を形成し、これら第一流路及び第二流路を互いに連通させる連通部を有する第三炭化珪素材と、
を備え、
前記ブロック体は、前記第一炭化珪素材、前記第二炭化珪素材及び前記第三炭化珪素材による一体構造とされている請求項1又は2に記載の処理液温調装置。
【請求項5】
前記温度調整部は、ペルチェ素子からなるペルチェモジュールである請求項1から4のいずれか一項に記載の処理液温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、半導体処理用液(以下、単に処理液と称する)の温度調整を行う処理液温調装置が開示されている。この装置は、流路溝が表面に形成されたブロック体を有している。ブロック体の表面上には、処理液に対して耐食性を有する耐食プレート、金属材料から形成された伝熱板、及び、温度調整部としてのペルチェモジュールが順次積層されている。この装置では、耐食プレート及び伝熱板を介して温度調整部との間で熱交換が行われ、処理液の温度が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-202816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記の処理液温調装置では、ブロック体と温度調整部との間に耐食プレート及び伝熱板の2つの部材が存在している。そのため装置全体として部品点数が増加し、装置の大型化及びコストアップにつながってしまっていた。また、処理液温調装置としては、処理液と温度調整部との熱交換効率をさらに向上させることが求められている。
【0005】
そこで本発明は、コンパクト化及びコスト低減を図ることができるとともに熱交換効率を向上させた処理液温調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る処理液温調装置は、炭化珪素焼結体からなる一体構造をなして、内部に形成された半導体処理液が流通する流路、及び、該流路を外部と隔てる隔壁を有するブロック体と、前記ブロック体の外面に設けられて、前記隔壁を介して前記半導体処理液と熱交換する温度調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、コンパクト化及びコスト低減を図ることができるとともに熱交換効率を向上させた処理液温調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る処理液温調装置の側面図である。
図2】実施形態に係る処理液温調装置のブロック体の平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】実施形態に係る処理液温調装置の流路の第一変形例である。
図6】実施形態に係る処理液温調装置の流路の第二変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に示す処理液温調装置1は、半導体製造プロセスで使用される処理液(半導体処理液)の温度を調整するために用いられる。処理液としては、ウェットプロセス(RCA洗浄)やウェットエッチング等に使用される塩酸、硫酸、リン酸等の酸系の水溶液、またはオゾン水が用いられる。
【0010】
<処理液温調装置の全体構成>
図1に示すように、処理液温調装置1は、ブロック体10、第一処理液配管51、第二処理液配管52、一対の温度調整部60,60及び一対のウォータジャケット70,70を備えている。
【0011】
<ブロック体>
ブロック体10は、炭化珪素焼結体からなるブロック状をなしている。ブロック体10の内部には、図2図4に示すように、処理液が流通する流路Fが形成されている。ブロック体10は、平板状をなしている。図1に示すように、ブロック体10は、該ブロック体10の厚さ方向Tに互いに離間して配置された外面である第一主面21及び第二主面31を有している。第一主面21及び第二主面31は平面であって互いに平行をなしている。
【0012】
<第一処理液配管、第二処理液配管>
図1及び図2に示すように、第一処理液配管51及び第二処理液配管52は、ブロック体10に接続されている。第一処理液配管51はブロック体10内に処理液を供給する配管であって、第二処理液配管52はブロック体10内から処理液を外部に排出する配管である。第一処理液配管51及び第二処理液配管52は、例えばPTFEやPFA等の処理液に対して耐食性を有する材料によって構成されている。第一処理液配管51及び第二処理液配管52は、それぞれ端部がブロック体10に対して例えばボルト止め等によって固定されている。第一処理液配管51及び第二処理液配管52とブロック体10との接続箇所には、処理液が外部に漏出することを防止するためのOリング等のシール部材が設けられている。
【0013】
<温度調整部>
図1に示すように、温度調整部60,60は、ブロック体10の第一主面21と第二主面31とにそれぞれ対応するように計一対が設けられている。温度調整部60,60は、第一主面21及び第二主面31に積層される平板状をなしている。温度調整部60,60と第一主面21、第二主面31との間には他のシート、平板等は介在されていない。即ち、温度調整部60,60は、第一主面21及び第二主面31に直接的に接触している。
本実施形態では温度調整部60,60として、ペルチェ素子によって構成されたペルチェモジュールが用いられている。
【0014】
<ウォータジャケット>
各温度調整部60,60におけるブロック体10側とは反対側の面には、各温度調整部60,60に対応するようにして計一対のウォータジャケット70,70が設けられている。ウォータジャケット70は、温度調整部60に積層される平板状をなす放熱ブロック71と、該放熱ブロック71の内部に通過するように設けられた冷却水パイプ72とを有する。
【0015】
このように処理液温調装置1は、ブロック体10の厚さ方向T両側に温度調整部60,60、ウォータジャケット70,70がそれぞれ積層された構造をなしている。これらブロック体10は、温度調整部60、ウォータジャケット70は、例えば厚さ方向Tに貫通するボルト等に固定部材によって、一体に固定されている。
【0016】
<ブロック体の詳細構成>
以下、ブロック体10の構成についてより詳細に説明する。
図1図3及び図4に示すように、ブロック体10は、それぞれ炭化珪素によって形成された第一炭化珪素材20、第二炭化珪素材30及び第三炭化珪素材40から構成されている。
【0017】
<第一炭化珪素材20>
図1に示すように、第一炭化珪素材20は、厚さ方向Tに直交し、かつ、互いに直交する第一方向D1及び第二方向D2に延びる矩形平板状をなしている。第一炭化珪素材20の厚さ方向T一方側(図1図3図4の下側)の面は、第一主面21とされている。
【0018】
第一炭化珪素材20における第一主面21とは反対側の面、即ち、厚さ方向T他方側(図1図3図4の上側)の面は、第一接合面22とされている。第一接合面22は第一主面21と平行をなす平面である。
図3及び図4に示すように、第一炭化珪素材20には、該第一接合面22から厚さ方向T一方側に凹むようにして第一流路溝23が形成されている。第一流路溝23は、第一方向D1及び第二方向D2を含む仮想面に沿う方向に延びている。第一流路溝23と第一主面21とを厚さ方向Tに隔てる第一炭化珪素材20の隔壁24の厚さ、即ち、厚さ方向T1の寸法は、例えば0.5~5.0mmに設定されており、より好ましくは、0.5mm~3.0mmに設定されている。
【0019】
<第二炭化珪素材>
図1及び図2に示すように、第二炭化珪素材30は、第一炭化珪素材同様、第一方向D1及び第二方向D2に延びる矩形平板状をなしている。第二炭化珪素材30の第一方向D1の寸法は第一炭化珪素材20よりも小さい。第二炭化珪素材30の第二方向D2の寸法は第二炭化珪素材30と同一とされている。第一炭化珪素材20の厚さ方向T一方側の面は、上記第二主面31とされている。
【0020】
図1図3及び図4に示すように、第二炭化珪素材30における第二主面31とは反対側の面、即ち、厚さ方向T一方側の面は、第二接合面32とされている。第二接合面32は第二主面31と平行をなす平面である。
図3及び図4に示すように、第二接合面32には、該第二接合面32から厚さ方向T他方側に凹むようにして第二流路溝33が形成されている。第二流路溝33は、第一方向D1及び第二方向D2を含む仮想面に沿う方向に延びている。第二流路溝33と第二主面31とを厚さ方向Tに隔てる第二炭化珪素材30の隔壁24の厚さは、例えば0.5~5.0mmに設定されており、より好ましくは、0.5mm~3.0mmに設定されている。
【0021】
<第三炭化珪素材>
図1に示すように、第三炭化珪素材40は、第一方向D1及び第二方向D2に矩形状に延びるシート状をなしている。図2に示すように、第三炭化珪素材40の第一方向D1及び第二方向D2の寸法は、第一炭化珪素材20の第一方向D1及び第二方向D2の寸法と同一とされている。
【0022】
図1図3及び図4に示すように、第三炭化珪素材40の厚さ方向T一方側の面は第一シート面41とされている。第三炭化珪素材40の厚さ方向T他方側の面は第二シート面42とされている。図2及び図3に示すように、第三炭化珪素材40には、第一シート面41と第二シート面42とを厚さ方向Tにそれぞれ貫通する第一連通孔43、第二連通孔44、導入開口部45及び導出開口部46が形成されている。第三炭化珪素材40の厚さ即ち、厚さ方向の寸法は、例えば0.5~5.0mmに設定されており、より好ましくは、0.5mm~3.0mmに設定されている。即ち、第一炭化珪素材20の隔壁24の厚さ、第二炭化珪素材30の隔壁34の厚さ、及び、第三炭化珪素材40の厚さは互いに同様とされている。
【0023】
<炭化珪素焼結体>
ブロック体10は、第一炭化珪素材20、第二炭化珪素材30及び第三炭化珪素材40が一体に焼結されることによって生成される。
ブロック体10を焼結生成する際には、図1に示すように、第一炭化珪素材20の第一接合面22と第二炭化珪素材30の第二接合面と32の間に第三炭化珪素材40が介在されるように配置する。これにより、第一炭化珪素材20の第一接合面22の全域が第三炭化珪素材40の第一シート面41に覆われる。第二炭化珪素材30は、第三炭化珪素材40の第二シート面42上に第一方向D1一方側(図1図4の右側)に偏在するように積層される。これによって、第二シート面42の第二接合面32の全域が第三炭化珪素材40の第二シート面42によって覆われる。また、第三炭化珪素材40の第二シート面42における第一方向D1他方側(図1図4の左側)の領域は外部に露出した状態となる。第一炭化珪素材20、第二炭化珪素材30及び第三炭化珪素材40を積層させる際には、これらの間に接着剤が介在させられる。これにより、第一炭化珪素材20、第二炭化珪素材30及び第三炭化珪素材40の一体構造体を得られる。
【0024】
このような第一炭化珪素材20、第二炭化珪素材30及び第三炭化珪素材40の一体構造体に高温での熱処理を施すことによって、第一炭化珪素材20、第二炭化珪素材30及び第三炭化珪素材40の炭化珪素焼結体としてのブロック体10が生成される。
【0025】
<ブロック体内の流路>
ブロック体内部の流路Fは、第一炭化珪素材20の第一流路溝23、第二炭化珪素材30の第二流路溝33、第三炭化珪素材40の第一シート面41及び第二シート面42によって区画形成されている。
【0026】
第一炭化珪素材20の第一流路溝23と第三炭化珪素材40の第一シート面41によって、第一蛇行流路F1、導入流路F3及び導出流路F4が形成されている。
第一蛇行流路F1は、図3に示すように、第一方向D1一方側に偏った位置に形成されている。第一蛇行流路F1は、第一方向D1の一方側と他方側とを往復しながら第二方向D2に向かって延びる流路Fである。
【0027】
導入流路F3は、処理液の入口側となる第一蛇行流路F1の第二方向D2一方側(図2の下側)の端部に接続されており、第一方向D1他方側かつ第二方向D2一方側の角部まで延びている。導入流路F3は、第三炭化珪素材40の導入開口部45を介して第一処理液配管51に連通している。
導出流路F4は、処理液の出口側となる第一蛇行流路F1の第二方向D2他方側(図2の上側)の端部に接続されており、第一方向D1他方側かつ第二方向D2他方側の角部まで延びている。導出流路F4は、第三炭化珪素材40の導出開口部46を介して第二処理液配管52に連通している。
【0028】
第二炭化珪素材30の第二流路溝33と第三炭化珪素材40の第二シート面42によって、第二蛇行流路F2が形成されている。第二蛇行流路F2は、平面視にて第一蛇行流路F1と重なる領域に形成されている。即ち、第二蛇行流路F2は第一蛇行流路F1と同様に、第一方向D1の一方側と他方側とを往復しながら第二方向D2に向かって延びる流路Fである。
【0029】
第二蛇行流路F2の処理液の入口側となる第二方向D2一方側の端部は、第三炭化珪素材40の第一連通孔43を介して第一蛇行流路F1に連通している。
第二蛇行流路F2の処理液の出口側となる第二方向他方側の端部は、第三炭化珪素材40の第二連通孔44を介して第一蛇行流路F1に連通している。
【0030】
<処理液温調装置の動作>
上記構成の処理液温調装置1によって処理液の温度調整を行う際には、第一処理液配管51を介してブロック体10の流路F内に処理液を導入する。第一処理液配管51からブロック体10に導入される処理液は、導入流路F3を通過し、第一蛇行流路F1及び第二蛇行流路F2に並行して導入される。処理液は第一蛇行流路F1及び第二蛇行流路F2を流通する過程で、第一主面21及び第二主面31上に配置された温度調整部60によって温度調節される。
【0031】
即ち、ペルチェモジュールに通電されることで第一炭化珪素材20及び第二炭化珪素材30の隔壁24を介してペルチェ素子-処理液間で熱交換が行われる。これによって処理液の温度が適切な値に調整される。また、この際、ウォータジャケット70によって、ペルチェモジュールの放熱除去又は給熱が行われる。
そして、温度調整部60により適切な温度となった処理液は、第一蛇行流路F1、第二蛇行流路F2から導出流路F4に流れ込み、その後、導出開口部46を介して第二処理液配管52に導かれる。これにより、処理液が処理液温調装置1の外部に排出される。
【0032】
<作用効果>
処理液温調装置1に導入される処理液は腐食性が高い。そのため、該処理液が通過する流路Fを形成する材料としては、高い耐食性を有することが要求される。
近年の炭化珪素製造技術の進歩により、製造過程で金属粉等の不純物の混入が少ない高い純度の炭化珪素材の製造が可能となっている。炭化珪素材に不純物が混入している場合、当該不純物の混入箇所を起点とした腐食が起こりやすい。これに対して高純度の炭化珪素材の場合、処理液に対する高い耐食性を発揮するため、腐食に対する懸念は必要ない。
【0033】
このような背景の下で、本実施形態のブロック体10は高純度の炭化珪素材からなる炭化珪素焼結体によって構成されている。これにより、流路F内を流通する処理液によってブロック体10自身が腐食してしまうことを回避することができる。
【0034】
このように炭化珪素材のみによって処理液の流路Fを形成することによって、耐食プレート等の耐食性の高い部材や、該耐食プレートを保持するための伝熱板等を設ける必要がなくなる。これにより、流路Fを流通する処理液と該処理液の温度調整を図る温度調整部60,60との間には第一炭化珪素材20及び第二炭化珪素材30の隔壁24,34のみとなる。したがって、処理液温調装置1全体としての部品点数を減らすことでき、コストアップを回避しながら装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0035】
また、炭化珪素材自体が耐食性を有することで、ブロック体10における処理液と温度調節部との間の隔壁24,34の厚さを薄くすることができる。これにより、隔壁24の厚さを例えば0.5~5.0mm、より好ましくは0.5mm~3.0mmに設定することができる。このように処理液と温度調整部60との間隔を十分に狭めることで厚さ方向Tの寸法をより小さくし、装置全体としてさらにコンパクト化を図ることができる。
【0036】
さらに、このようにブロック体10における隔壁24の厚さを薄くすることによって、処理液と温度調整部60との熱交換効率を向上させることができる。炭化珪素材自体の熱伝導率は、従前用いられていた耐食プレートや伝熱板よりも小さい。このような炭化珪素材の隔壁24を上記寸法のように薄くすることによって、隔壁24の熱容量が従前よりも十分に小さくすることができる。これにより、処理液と温度調整部60との熱交換を促進させることができ、温度調整部60による処理液の温度変化の応答性を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態のブロック体10は、流路溝が形成された複数の炭化珪素材を積層して熱処理を施すことによって得ることができる。したがって、特殊な製法を取らずとも、耐食性が高く熱交換効率の高いブロック体10を容易に得ることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば実施形態では温度調整部60としてペルチェモジュールを採用した例について説明したが、処理液の温度調整を行うことができれば、ヒータ等の他の構成を採用してもよい。
【0039】
実施形態では、ブロック体10の流路Fが第一蛇行流路F1、第二蛇行流路F2を含むものであったが、例えば第一蛇行流路F1だけを有する構成であってもよい。この場合、第一主面21、第二主面31のうち第一主面21のみに温度調整部60が設けられていてもよい。即ち、温度調整部60は必ずしも一対を設ける必要はなく、一つのみを設けた構成であってもよい。
【0040】
また、実施形態では、ブロック体10の流路Fにおける熱交換を行う部分を第一蛇行流路F1、第二蛇行流路F2のように蛇行した形状としたが、これに限るものではない。例えば流路Fを、図5に示すような渦巻き状流路F5としてもよいし、図6に示すような角型スパイラル状流路F6としてもよい。
【0041】
さらに、実施形態では、ブロック体10を第一炭化珪素材20、第二炭化珪素材30及び第三炭化珪素材40によって構成されている例について説明したが、これに限定されることはない。これら三つ炭化珪素材のうち、二つによってブロック体10を構成してもよい。また、4つ以上の炭化珪素材を用いてより複雑な流路を有するブロック体を構成してもよい。流路の形状も実施形態には限られず、任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…処理液温調装置、10…ブロック体、20…第一炭化珪素材、21…第一主面、22…第一接合面、23…第一流路溝、24…隔壁、30…第二炭化珪素材、31…第二主面、32…第二接合面、33…第二流路溝、34…隔壁、40…第三炭化珪素材、41…第一シート面、42…第二シート面、43…第一連通孔、44…第二連通孔、45…導入開口部、46…導出開口部、51…第一処理液配管、52…第二処理液配管、60…温度調整部、70…ウォータジャケット、71…放熱ブロック、72…冷却水パイプ72、F…流路、F1…第一蛇行流路、F2…第二蛇行流路、F3…導入流路、F4…導出流路、T…厚さ方向T、D1…第一方向、D2…第二方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6