(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132829
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ボラードカバー及びボラード
(51)【国際特許分類】
E01F 13/02 20060101AFI20220906BHJP
E01F 9/677 20160101ALI20220906BHJP
E01F 13/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
E01F9/677
E01F13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031512
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】592160607
【氏名又は名称】日進ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518232375
【氏名又は名称】株式会社KRG
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】和氣 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】谷本 政吉
【テーマコード(参考)】
2D064
2D101
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA22
2D064CA01
2D064DA05
2D064DB12
2D064HA13
2D064HA21
2D064HA22
2D064JA02
2D101CA11
2D101CA13
2D101CB07
2D101DA05
2D101FA23
2D101GA11
2D101GA15
2D101GA17
2D101HA01
(57)【要約】
【課題】
自動車などの車体がボラードカバーに接触した際に、ボラードカバーや車体に擦り傷が付きにくくする。
【解決手段】
ボラード本体11の外周部に取り付けて使用される筒状のボラードカバー12において、ボラードカバー12の内周面を、ボラード本体11の外周面に対して滑り回転可能な滑り面αとした。滑り面αには、低摩擦塗料を塗布することや、低摩擦フィルムを貼り付けることができる。また、滑り面αには、多数の凹凸を繰り返し形成することもできる。ボラードカバー12は、その略全体を発泡樹脂で形成することが好ましい。ボラードカバー12を取り付ける対象のボラード本体11の外周面も、ボラードカバー12の滑り回転を許容する滑り面βとすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボラード本体の外周部に取り付けて使用される筒状のボラードカバーであって、
内周面が、ボラード本体の外周面に対して滑り回転可能な滑り面αとされた
ことを特徴とするボラードカバー。
【請求項2】
滑り面αに、低摩擦塗料が塗布された請求項1記載のボラードカバー。
【請求項3】
滑り面αに、低摩擦フィルムが貼り付けられた請求項1又は2記載のボラードカバー。
【請求項4】
滑り面αに、多数の凹凸が繰り返し形成された請求項1~3いずれか記載のボラードカバー。
【請求項5】
略全体が発泡樹脂で形成された請求項1~4いずれか記載のボラードカバー。
【請求項6】
複数の分割筒状部材に分割可能な構造を有する請求項1~5いずれか記載のボラードカバー。
【請求項7】
周方向に隣り合う分割筒状部材を互いに嵌合する構造とされた請求項6記載のボラードカバー。
【請求項8】
地面に立設されるボラード本体と、
ボラードの外周部に取り付けられた筒状のボラードカバーと
で構成されたボラードであって、
ボラード本体の外周面が、ボラードカバーの滑り回転を許容する滑り面βとされ、
ボラードカバーが、ボラード本体を中心として回転可能な構造とされた
ことを特徴とするボラード。
【請求項9】
滑り面βに、電着塗装により低摩擦塗料を塗布した請求項9記載のボラード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボラードと、その外周部に取り付けるためのボラードカバーとに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の進入を規制することや、車両を誘導することなどを目的として、道路や広場にボラードを設置することが行われている。ボラードは、その設置場所などに応じた、様々なタイプのものが提案されている。例えば、形態においては、地面から上向きに真っ直ぐ延びる柱状のボラードのほか、逆U字状に曲げられた柵状のボラードが知られている。また、材質においては、金属など、剛性の高い素材で形成したボラードのほか、ゴムや樹脂など、剛性の低い素材で形成したボラードも知られている。ゴムや樹脂で形成したボラードのなかには、車両が衝突したときに、根元から弾性的に折れ曲がるようにしたもの(弾性ボラード)もある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
弾性ボラードは、万が一、それに車両や人などが衝突した場合であっても、車両や人が受ける衝撃を和らげることができるという利点を有している。しかし、近年には、駐車場に駐車しようとした自動車がブレーキとアクセルの踏み間違えによって建物に激突する事故の発生が度々報告されるようになっているところ、駐車場と建物の境界に設置するボラードとして、弾性ボラードを採用したのでは、自動車が建物に激突することを防ぐことができない。このため、自動車が衝突するおそれがある箇所では、自動車が衝突しても容易に折れ曲がらない程度の剛性を有する金属製のボラードが設置されることが多い。
【0004】
ところが、金属製のボラードには、表面が錆びるという欠点がある。錆を防ぐためにボラードの表面に塗装を施したとしても、その塗装は、経年劣化により剥がれ落ちてしまう。また、自転車のペダルが引っ掛かるなど、何か物が当たった場合にも、その塗装が剥がれ落ちるおそれがある。このため、金属製のボラードは、塗装などのメンテナンスを定期的に行う必要があった。また、金属製のボラードは、表面が硬く、車両や人が衝突したときの衝撃を和らげることができないという欠点も有している。
【0005】
このような実状に鑑みて、これまでには、金属製のボラードの外周部に取り付けて使用する筒状のカバー(ボラードカバー)が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照)。これにより、ボラードの外周部を保護することが可能になる。また、このボラードカバーも経年劣化するものの、その場合には、ボラードカバーの交換のみで済み、塗装などの手間を要しないという利点もある。さらに、このボラードカバーを、クッション性を有する素材で形成すれば、車両や人が衝突したときの衝撃を和らげることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-012967号公報
【特許文献2】実公昭59-012252号公報
【特許文献3】実公昭59-031768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のボラードカバーを取り付けたとしても、それに自動車などの車体が当たると、ボラードカバーや車体の表面に、目立つ擦り傷が髭状に形成されてしまう。このため、頻繁にボラードカバーを交換する必要が生じる。また、車体を修理する必要も生じる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、自動車などの車体がボラードカバーに接触した際に、ボラードカバーや車体に擦り傷が付きにくくすることを目的とする。また、このボラードカバーを好適に用いることのできるボラードを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、
ボラード本体の外周部に取り付けて使用される筒状のボラードカバーであって、
内周面が、ボラード本体の外周面に対して滑り回転可能な滑り面αとされた
ことを特徴とするボラードカバー
を提供することによって解決される。
【0010】
これにより、自動車などの車体がボラード(ボラードカバー)に接触したときには、車体からボラードカバーに加えられる力によって、ボラードカバーがボラード本体に対して回転するようになる。このため、車体からボラードカバーに加えられる力を受け流し、車体とボラードカバーとの間に大きな摩擦が生じないようにすることができる。したがって、ボラードカバーや車体に擦り傷が付きにくくすることが可能になる。本発明のボラードカバーは、既設のボラード(ボラード本体)に対して事後的に取り付けるものとして適しているが、勿論、新品のボラード(ボラード本体)に対しても取り付けることができる。
【0011】
本発明のボラードカバーの内周面(滑り面α)は、ボラード本体の外周面に対して滑りやすい性状となっていればよい。例えば、ボラードカバーの内周面(滑り面α)には、低摩擦塗料を塗布したり、低摩擦フィルムを貼り付けたりすることができる。これにより、ボラード本体の外周面に対するボラードカバーの内周面(滑り面α)の摩擦係数を小さくすることができる。また、ボラードカバーの内周面(滑り面α)には、多数の凹凸を繰り返し形成することもできる。これにより、ボラード本体の外周面に対するボラードカバーの内周面(滑り面α)の接触面積を小さくし、ボラード本体の外周面からボラードカバーの内周面(滑り面α)に加えられる摩擦力を小さく抑えることができる。
【0012】
本発明のボラードカバー(ボラードカバーの略全体を形成する基材部分)を形成する素材は、ボラード本体を保護できるものであれば、特に限定されないが、緩衝性(クッション性)を有する素材とすることが好ましい。これにより、ボラードカバーに車両や人が衝突したときの衝撃を和らげることが可能になる。このような素材としては、発泡樹脂が例示される。発泡樹脂は、緩衝性に優れるだけでなく、軽量であるという利点も有する。ボラードカバーが軽量であると、ボラードカバーがさらに回転しやすくなる。
【0013】
本発明のボラードカバーは、その全体が一体的に形成されたものであってもよいが、複数のパーツ(部材)に分割可能な構造を有することが好ましい。例えば、ボラードカバーを、複数の分割筒状部材(筒状を為すボラードカバーを、その筒の中心線を含む平面で切断した形状の部材)に分割可能な構造とすることが好ましい。この場合には、周方向に隣り合う分割筒状部材を互いに嵌合する構造とすることが好ましい。これにより、ボラード本体の外周部に対してボラードカバーを容易に取り付けることが可能になる。特に、逆U字状に曲げられた柵状のボラード本体における支柱部分に対しても、ボラードカバーを容易に取り付けることができるようになる。
【0014】
また、上記課題は、
地面に立設されるボラード本体と、
ボラードの外周部に取り付けられた筒状のボラードカバーと
で構成されたボラードであって、
ボラード本体の外周面が、ボラードカバーの滑り回転を許容する滑り面βとされ、
ボラードカバーが、ボラード本体を中心として回転可能な構造とされた
ことを特徴とするボラード
を提供することによっても解決される。
【0015】
これによっても、自動車などの車体がボラードカバーに接触したときには、車体からボラードカバーに加えられる力によって、ボラードカバーがボラード本体に対して回転するようになる。このため、ボラードカバーや車体に擦り傷が付きにくくすることが可能になる。上述した本発明のボラードカバーは、ボラード本体が柵状を為す場合に好適に用いることができる。ボラードカバーの内周面(滑り面α)とボラード本体の外周面(滑り面β)との双方を互いに滑りやすいものとすることによって、ボラード本体の外周面に対してボラードカバーをさらに回転しやすくすることができる。
【0016】
本発明のボラードにおいては、ボラード本体の外周面(滑り面β)に、電着塗装により低摩擦塗料を塗布することが好ましい。電着塗料(低摩擦塗料)の水溶液中に、被塗物(ボラード)及び電極を浸漬し、被塗物と電極との間に直流電圧を印加し、電着塗料を被塗物側に電気泳動させることにより、被塗物の表面に塗膜を形成する電着塗装を行うと、ボラード本体の外周面に、ピンホールのない質の高い塗膜を均一に形成することができる。このため、ボラード本体の外周面(滑り面β)をより滑らかにして、その滑り性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、自動車などの車体がボラードカバーに接触した際に、ボラードカバーや車体に擦り傷が付きにくくすることが可能になる。また、このボラードカバーを好適に用いることのできるボラードを提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態のボラードにおけるボラードカバーをボラード本体に取り付けている様子を示した斜視図である。
【
図2】第一実施形態のボラードにおけるボラードカバーをボラード本体に取り付けた状態を、ボラードの中心線に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【
図3】第一実施形態のボラードにおけるボラードカバーの内周面(滑り面α)を撮影した写真である。
【
図4】第二実施形態のボラードにおけるボラードカバーをボラード本体に取り付けた状態を示した斜視図である。
【
図5】第二実施形態のボラードにおけるボラードカバーをボラード本体に取り付けた状態を、ボラードの中心線に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【
図6】第二実施形態のボラードにおけるボラードカバーを構成する分割筒状部材の組み付け態様の一例を示した図である。
【
図7】第二実施形態のボラードにおけるボラードカバーをボラード本体に取り付けている様子を示した斜視図である。
【
図8】第三実施形態のボラードにおけるボラードカバーをボラード本体に取り付けた状態を、ボラードの中心線に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のボラードカバー及びそれを用いたボラードの好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施形態から第三実施形態までの3つの実施形態を例に挙げて、本発明のボラードカバー及びボラードを説明するが、本発明のボラードカバーやボラードの技術的範囲は、これらの実施形態で述べる構成に限定されない。本発明のボラード及びボラードカバーには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0020】
1.第一実施形態のボラード
まず、第一実施形態のボラードについて説明する。
図1は、第一実施形態のボラード10におけるボラードカバー12を、ボラード本体11に取り付けている様子を示した斜視図である。
図1(a)は、ボラードカバー12をボラード本体11に取り付ける前の状態を、
図1(b)は、ボラードカバー12をボラード本体11に取り付けた後の状態をそれぞれ示している。
【0021】
ボラード本体11は、
図1に示すように、地面に立設された状態とされる。地面に対するボラード本体11の固定方法は、特に限定されない。第一実施形態のボラード10においては、地面に掘った穴の底部に割栗石を敷いて、その穴の中にボラード本体11の下端部を差し込んだ後、その穴にモルタルを流し込んで硬化させることで、ボラード本体11を地面に固定している。地面がアスファルトやコンクリートで舗装されている場合には、ボラードの下端部に外向きフランジを設け、その外向きフランジを地面にボルト止めする方法でも、ボラード本体11を固定することができる。
【0022】
ボラード本体11は、自動車が衝突しても容易に折れ曲がらない程度の剛性を有する素材によって形成されている。このような剛性を有する素材としては、金属や、コンクリートや、石や、木や、硬質樹脂などが例示されるところ、ボラード本体11の施工性などを考慮すると、通常は、金属とされる。第一実施形態のボラード10においては、ボラード本体11として、金属製のパイプ(中空な柱状部材)を用いている。このように、ボラード本体11を金属製のものとする場合、ボラード本体11の表面には、通常、塗装が施される。ボラード本体11の形態に、特に決まりはないが、第一実施形態のボラード10においては、ボラード本体11を、地面から上向きに真っ直ぐ延びる円柱状としている。
【0023】
ボラードカバー12は、
図1に示すように、筒状を為しており、ボラード本体11の外周部に取り付けて使用するものとなっている。このボラードカバー12によって、ボラード本体11を、錆などの腐食や、塗装の剥がれ落ちなどから保護することができる。また、ボラード10に車両や人が衝突したときの衝撃を和らげることもできる。既に述べたように、第一実施形態のボラード10において、ボラード本体11は、地面から上向きに真っすぐ延びているところ、第一実施形態のボラードカバー12は、そのボラード本体11の上側から挿入(外挿)することで、ボラード本体11に取り付けるようになっている。
【0024】
ただし、ボラードカバー12をボラード本体11に挿入しただけであると、悪戯などで、ボラードカバー12がボラード本体11から上側に引き抜かれてしまうおそれがある。このため、ボラード本体11の上端部には、キャップ13を取り付けている。キャップ13の外径は、ボラードカバー12の内径よりも大きくなっており、ボラードカバー12を上側に引き抜こうとしても、ボラードカバー12の上端がキャップ13に引っ掛かり、ボラードカバー12を引き抜くことができないようになっている。
【0025】
キャップ13には、反射部材や、発光部材や、その発光部材を点灯するための電力を発電する発電手段(太陽光発電パネルなど)や、その電力を蓄える蓄電手段(バッテリーなど)を設けることができる。第一実施形態のボラード10において、キャップ13は、図示省略のボルトを用いてボラード本体11に固定するようにしている。しかし、ボラード本体11に対してキャップ13を固定する方法は、これに限定されず、螺合や、嵌合や、接着など、他の固定方法を採用することもできる。
【0026】
ボラードカバー12は、ボラード本体11を保護できるものであれば、特に限定されない。ボラードカバー12の素材(その基材部分の素材)としては、樹脂や、ゴムが例示される。ボラードカバー12を形成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)や、ポリエチレン(PE)や、ポリスチレン(PS)や、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)や、これらの発泡体が例示される。また、ボラードカバー12を形成するゴムとしては、天然ゴム(NR)や、スチレンブタジエンゴム(SBR)や、クロロプレンゴム(CR)や、エチレンプロピレンゴム(EPM)などが例示される。また、廃タイヤを主原料として製造されたタイヤ再生ゴムなどの再生ゴムを用いることもできる。
【0027】
第一実施形態のボラード10においては、ボラードカバー12を、発泡樹脂で形成している。これにより、ボラードカバー12の緩衝性(クッション性)を高め、ボラードカバー12をより衝撃吸収性能に優れたものとすることができる。また、発泡樹脂は、安価であることに加えて、加工も容易である。発泡樹脂製のボラードカバー12は、金型を用いて射出成形や押出成形しなくても、熱線で溶断することで、所望の形状に加工することができる。さらに、発泡樹脂製のボラードカバー12は、軽量であるため、施工性や運搬性にも優れている。加えて、第一実施形態のボラード10においては、後述するように、ボラードカバー12の表面に低摩擦塗料としてウレタンコーティングを施すところ、ポリプロピレンやポリスチレンなどの発泡樹脂は、ウレタンコーティングとの相性がよいという利点も有している。
【0028】
図2は、第一実施形態のボラード10におけるボラードカバー12を、ボラード本体11に取り付けた状態を、ボラード10の中心線Lに垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図2に示すように、ボラードカバー12は、筒状となっているところ、その内周面は、ボラード本体11の外周面に対して滑り回転可能な滑り面αとなっている。また、ボラード本体11も、筒状となっているところ、その外周面は、ボラードカバーの滑り回転を許容する滑り面βとなっている。加えて、第一実施形態のボラード10においては、ボラードカバー12の内径D
2を、ボラード本体11の外径D
1よりも大きく設定しており、ボラードカバー12をボラード本体11に外挿したときに、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)とボラード本体11の外周面(滑り面β)との間に、隙間γが形成されるようにしている。
【0029】
このため、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)は、ボラード本体11の外周面(滑り面β)から摩擦力を受けにくくなっている。したがって、ボラードカバー12は、
図2の矢印Aで示すように、ボラード本体11に対して、ボラードの中心線Lを中心として容易に回転できるようになっている。よって、自動車などの車体がボラードカバー12に接触したときには、車体からボラードカバー12に加えられる力によって、ボラードカバー12がボラード本体11に対して回転するようになる。このため、車体からボラードカバー12に加えられる力を受け流し、ボラードカバー12や車体に擦り傷が付きにくくすることが可能となっている。
【0030】
ボラードカバー12の内周面(滑り面α)には、低摩擦塗料を塗布したり、低摩擦フィルムを貼り付けたりすることができる。低摩擦塗料としては、ウレタン系塗料や、シリコン系塗料や、ガラス系塗料などが例示される。また、低摩擦フィルムとしては、テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂からなるフィルムや、ナイロンからなるフィルムや、シリコーンゴムやニトリルゴムからなるフィルムなどが例示される。
【0031】
第一実施形態のボラード10においては、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)に、低摩擦塗料として、ウレタン系塗料(
図2におけるコーティング層12aを参照)を塗布している。このようにウレタン系塗料からなるコーティング層12aを設けると、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)を滑りやすくするのは勿論のこと、ボラードカバー12の基材部分(コーティング層12aで覆われる部分)を保護することも可能になる。特に、第一実施形態のボラード10においては、ボラードカバー12の基材部分を発泡樹脂で形成したため、ボラードカバー12の内部に雨水などが染み込むおそれがあるところ、コーティング層12aを設けることで、雨水などがボラードカバー12の内部に染み込まないようにすることができる。このため、コーティング層12aは、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)だけでなく、外周面など、他の表面にも施している。
【0032】
コーティング層12aの厚さ(ボラードカバー12の内周面(滑り面α)側のコーティング層12a、及び、ボラードカバー12の外周面側のコーティング層12aのそれぞれの厚さ)は、特に限定されないが、薄くしすぎると、コーティング層12aが剥がれ落ちやすくなるおそれがある。このため、コーティング層12aの厚さは、通常、0.1mm以上とされる。コーティング層12aの厚さは、0.2mm以上とすることが好ましく、0.3mm以上とすることがより好ましい。加えて、ボラードカバー12の外周面は、外部に露出するため、ボラードカバー12の外周面側のコーティング層12aは、内周面側のコーティング層12aよりも厚くすることが好ましい。ボラードカバー12の外周面側のコーティング層12aの厚さは、0.5mm以上とすることが好ましく、1mm以上とすることがより好ましく、1.5mm以上とすることがさらに好ましい。
【0033】
コーティング層12aの厚さに、特に上限はないが、通常、10mm以下、好ましくは、5mm以下とされる。特に、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)側は、外部に露出しないため、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)側のコーティング層12aを厚く形成しすぎてもあまり意味がない。このため、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)側のコーティング層12aの厚さは、通常、3mm以下とされる。ボラードカバー12の内周面(滑り面α)側のコーティング層12aの厚さは、2mm以下とすることもでき、1mm以下とすることもできる。第一実施形態のボラード10においては、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)側のコーティング層12aの厚さを約0.5mmとし、ボラードカバー12の外周面側のコーティング層12aの厚さを約2mmとしている。
【0034】
ボラードカバー12の内周面(滑り面α)は、凹凸のない面としてもよいが、この場合には、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)とボラード本体11の外周面(滑り面β)との接触面積が大きくなり、ボラード本体11の外周面(滑り面β)からボラードカバー12の内周面(滑り面α)に加えられる摩擦力を小さくしにくくなるおそれがある。この点、第一実施形態のボラード10においては、
図3に示すように、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)に、多数の緩やかな凹凸(エッジがなく丸みを帯びた凹凸)を不規則に繰り返し形成している。
図3は、第一実施形態のボラード10におけるボラードカバー12の内周面(滑り面α)を撮影した写真である。
【0035】
これにより、ボラード本体11の外周面(滑り面β)に対するボラードカバー12の内周面(滑り面α)の接触面積を小さく抑え、ボラード本体11に対してボラードカバー12をさらに回転しやすくなる。既に述べたように、第一実施形態のボラード10では、ボラードカバー12の基材部分を発泡樹脂によって形成するとともに、ボラードカバー12の表面にコーティング層12aを形成しているところ、ある程度表面が粗い発泡樹脂に塗料を塗布すると、自然と
図3に示すように、緩やかな凹凸が不規則に形成された状態となる。
【0036】
以上では、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)に多数の凹凸を不規則に形成する場合について説明したが、この凹凸は、規則的に形成することもできる。ボラードカバー12の成形が多少難しくなるものの、例えば、ボラード10の中心線L(
図2を参照)に平行な方向に延びる凸条及び凹溝をボラードカバー12の周方向に繰り返し形成することや、ボラードカバー12の周方向に延びる凸条及び凹溝をボラード10の中心線Lに平行な方向に繰り返し形成することもできる。また、上記の凸条や凹溝は、長手状に延びている必要も特になく、スポット的な凸部や凹部とすることもできる。この場合でも、凸条(凸部)や凹溝(凹部)は、エッジのない丸みを帯びた形状とすることが好ましい。
【0037】
上述した低摩擦塗料や、低摩擦フィルムや、凹凸に係る構成は、ボラード本体11の外周面(滑り面β)でも同様に採用することができる。この点、第一実施形態のボラード10においては、ボラード本体11の外周面(滑り面β)に、電着塗料(低摩擦塗料)を電着塗装により塗布(
図2におけるコーティング層11aを参照。)している。これにより、ボラード本体11の外周面(滑り面β)に、ピンホールのない質の高い塗膜を均一に形成し、ボラード本体11の外周面(滑り面β)の滑り性をさらに高めることができる。また、電着塗装には、電着塗料をプラスに帯電させるカチオン電着塗装と、電着塗料をマイナスに帯電させるアニオン電着塗装とがあり、それに用いる電着塗料としては、エポキシ樹脂系塗料やアクリル樹脂系塗料などが挙げられる。
【0038】
しかし、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)に凹凸を形成した第一実施形態のボラード10において、ボラード本体11の外周面(滑り面β)にも凹凸を形成すると、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)の凹凸と、ボラード本体11の外周面(滑り面β)の凹凸とが噛み合ってしまい、ボラード本体11に対してボラードカバー12が円滑に回転しにくくなるおそれがある。このため、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)と、ボラード本体11の外周面(滑り面β)とのうち、いずれか一方に凹凸を形成する場合には、他方は凹凸のない平滑面とすることが好ましい。第一実施形態のボラード10においても、ボラード本体11の外周面(滑り面β)を凹凸のない平滑面としている。
【0039】
また、既に述べたように、第一実施形態のボラード10においては、ボラードカバー12の内径D
2(
図2)を、ボラード本体11の外径D
1(
図2)よりも大きく設定しており、ボラードカバー12をボラード本体11に外挿したときに、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)とボラード本体11の外周面(滑り面β)との間に、隙間γ(
図2)が形成されるようにしている。この隙間γの幅(=(D
2-D
1)/2)は、特に限定されないが、狭くしすぎると、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)がボラード本体11の外周面(滑り面β)に密着するおそれがあり、ボラード本体11に対してボラードカバー12が回転しにくくなるおそれがある。このため、隙間γの幅は、0.3mm以上とすることが好ましい。隙間γの幅は、0.5mm以上とすることがより好ましく、0.7mm以上とすることがさらに好ましい。
【0040】
ただし、ボラードカバー12の内周面(滑り面α)とボラード本体11の外周面(滑り面β)との隙間γを広くしすぎると、ボラードカバー12が緩くなり過ぎてしまい、ボラード本体11に対してボラードカバー12が安定して回転しなくなるおそれがある。また、隙間γに、ゴミなどが入り込みやすくなり、そのゴミなどがボラードカバー12の回転を邪魔するおそれもある。このため、隙間γの幅は、5mm以下とすることが好ましい。隙間γの幅は、3mm以下とすることがより好ましく、2mm以下とすることがさらに好ましい。
【0041】
以上で述べた第一実施形態のボラード10は、ボラード本体11に外挿されたボラードカバー12がボラード本体11を中心として容易に回転できる構造となっている。このため、自動車などの車体がボラードカバー12に接触したときには、車体からボラードカバー12に加えられる力によって、ボラードカバー12がボラード本体11に対して回転し、ボラードカバー12や車体に擦り傷が付きにくくすることができるようになっている。第一実施形態のボラード10におけるボラード本体11は、新設のものであってもよいし、既設のものであってもよい。
【0042】
2.第二実施形態のボラード
続いて、第二実施形態のボラードについて説明する。第二実施形態のボラードについては、上で説明した第一実施形態のボラードと異なる構成について説明し、第一実施形態のボラードと共通する構成については、説明を割愛する。第二実施形態のボラードで特に言及しない構成については、第一実施形態のボラードで採用したものと同様の構成を採用することができる。
【0043】
図4は、第二実施形態のボラード10におけるボラードカバー12をボラード本体11に取り付けた状態を示した斜視図である。
図5は、第二実施形態のボラード10におけるボラードカバー12をボラード本体11に取り付けた状態を、ボラードの中心線Lに垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【0044】
上で述べた第一実施形態のボラード10(
図1)では、ボラード本体11が、地面から上向きに真っ直ぐ延びる円柱状となっていたが、第二実施形態のボラード10では、
図4に示すように、ボラード本体11が、逆U字状に曲げられた柵状(一対の縦支柱部11bと、当該一対の縦支柱部11bの上端を連結する横支柱部11cとを有する形状)を為している。このため、ボラード本体11には、ボラードカバー12を取り付けるべき縦支柱部11bが2箇所存在しており、それぞれの縦支柱部11bにボラードカバー12を取り付けている。
【0045】
このように、第二実施形態のボラード10は、ボラード本体11における縦支柱部11bの上端が横支柱部11aで連結されているため、第一実施形態のボラード10(
図1)のように、ボラードカバー12の全体を一体的に形成(ボラードカバー12を単一の部材で形成)したのでは、ボラードカバー12を縦支柱部11bの上側から挿入(外挿)することができない。このため、第二実施形態のボラード10では、それぞれの縦支柱部11bに取り付けられるボラードカバー12を、複数のパーツ(部材)に分割可能な構造としている。具体的には、
図5に示すように、それぞれのボラードカバー12を、複数の分割筒状部材12bに分割可能な構造としている。これにより、
図4に示すように、ボラード本体11が柵状の場合であっても、そのボラード本体11における縦支柱部11bにボラードカバー12を取り付けることが可能になる。
【0046】
ボラードカバー12を構成する分割筒状部材12aの個数(ボラードカバー12の分割数)は、2以上であれば、特に限定されないが、多くしても、それぞれの分割筒状部材12aの組み付けが大変になるだけで、あまりメリットはない。それどころか、ボラードカバー12の強度を維持しにくくなるというデメリットが生じ得る。このため、ボラードカバー12を構成する分割筒状部材12aの個数は、通常、4個以下とされ、3個以下とすることが好ましい。第二実施形態のボラード10においては、それぞれが半円筒状を為す2つの分割筒状部材12bによって、ボラードカバー12を構成している。
【0047】
隣り合う分割筒状部材12bを連結固定する方法又は構造は、特に限定されず、接着やボルト止めなどを採用することができる。しかし、接着のみだと、隣り合う分割筒状部材12bの位置決めを行いにくい。また、ボルト止めだと、ボラードカバー12に硬いボルト部分が存在するようになり、ボラードカバー12の緩衝性能が低下するおそれがある。また、その部分に接触した車体などが傷つくおそれもある。この点、第二実施形態のボラード10では、
図5に示すように、それぞれの分割筒状部材12bにおける周回方向一端部に凸部δを設けるとともに、周回方向他端部に凹部εを設けており、一の分割筒状部材12bにおける凸部δが、当該一の分割筒状部材12bに隣り合う他の分割筒状部材12bにおける凹部εに嵌合するようにしている。凸部δは、頭部δ
1と首部δ
2とを有しており、凹部εも、それに対応した形態を有している。
【0048】
このような嵌合構造を有するボラードカバー12は、
図6に示すように、一方の分割筒状部材12bの上側から他方の分割筒状部材12bをスライドさせることにより、凸部δと凹部εが嵌合するようにしてもよい。
図6は、第二実施形態のボラード10におけるボラードカバー12を構成する分割筒状部材12bの組み付け態様の一例を示した図である。しかし、この場合には、分割筒状部材12bのスライドしろを確保する必要が生じる。このため、
図4に示すように、柵状のボラード本体11における縦支柱部11bにボラードカバー12を取り付ける場合には、縦支柱部11bの上部をボラードカバー12で覆いにくくなる。
【0049】
このため、柵状のボラード本体11における縦支柱部11bにボラードカバー12を取り付ける場合には、
図7に示すように、それぞれの分割筒状部材12bを、縦支柱部11bの側方から互いに組み付けるようにすることが好ましい。
図7は、第二実施形態のボラード10におけるボラードカバー12をボラード本体11に取り付けている様子を示した斜視図である。これにより、上記のスライドしろを確保する必要がなくなり、縦支柱部11bの上部もボラードカバー12で覆うことが可能になる。このような組み付けは、分割筒状部材12bにおける凸部δ及び凹部εの周辺を弾性変形できるようにすることで実現することができる。
【0050】
3.第三実施形態のボラード
続いて、第三実施形態のボラードについて説明する。第三実施形態のボラードについては、上で説明した第二実施形態のボラードと異なる構成について説明し、第二実施形態のボラードと共通する構成については、説明を割愛する。第三実施形態のボラードで特に言及しない構成については、第一実施形態や第二実施形態のボラードで採用したものと同様の構成を採用することができる。
【0051】
図8は、第三実施形態のボラード10におけるボラードカバー12をボラード本体11に取り付けた状態を、ボラード10の中心線Lに垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。上述した第二実施形態のボラード10(
図5)では、ボラードカバー12を構成する分割筒状部材12bの凸部δ及び凹部εを直接嵌合する構造となっていた。これに対し、第三実施形態のボラード10では、
図8に示すように、分割筒状部材12bには、凹部εのみを設け、隣り合う分割筒状部材12bにおける凹部εに、共通の連結嵌合部材12cを嵌合することで、分割筒状部材12bを連結固定するようにしている。このように、ボラードカバー12を構成する分割筒状部材12bを嵌合するといっても、その構造は、1通りではなく、様々なバリエーションがある。
【符号の説明】
【0052】
10 ボラード
11 ボラード本体
11a コーティング層
11b 縦支柱部
11c 横支柱部
12 ボラードカバー
12a コーティング層(内周側)
12b 分割筒状部材
12c 連結嵌合部材
13 キャップ
D1 ボラード本体の外径
D2 ボラードカバーの内径
L ボラードの中心線
α 滑り面(ボラードカバーの内周面)
β 滑り面(ボラード本体の外周面)
γ ボラードカバーの内周面とボラード本体の外周面との隙間
δ 凸部
δ1 頭部
δ2 首部
ε 凹部