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特開2022-132831自動運転方法、コンバイン及び自動運転システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132831
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】自動運転方法、コンバイン及び自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220906BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20220906BHJP
   A01D 41/127 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01D41/12 C
A01D41/127
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031515
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】村山 昌章
【テーマコード(参考)】
2B043
2B074
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA09
2B043BB14
2B043EA18
2B043EA23
2B043EA32
2B043EA40
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC02
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC18
2B043ED03
2B043ED12
2B043ED15
2B074BA09
2B074BA13
2B074EA02
2B074EA12
2B074EB02
2B074EB11
2B074EE02
(57)【要約】
【課題】自動刈取走行の完了後に自動排出走行を適切に行うことで、作業者の負担を軽減すると共に作業効率を向上させることができる自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムを提供する。
【解決手段】
コンバイン1は、制御装置50を備えていて、制御装置50は、走行経路作成部61、排出経路作成部62及び自動運転制御部64として機能する。走行経路作成部61は、圃場の未刈領域に対して走行経路Rを作成する。排出経路作成部62は、未刈領域の自動刈取を完了する走行経路Rの終了位置Eから、圃場に対して予め設定された排出位置までの排出経路Dを作成する。自動運転制御部64は、走行経路Rに従った自動刈取走行又は排出経路Dに従った自動排出走行を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインの自動運転方法であって、
圃場の未刈領域に対して前記走行経路を作成する走行経路作成工程と、
前記未刈領域の自動刈取を完了する前記走行経路の終了位置から、前記圃場に対して予め設定された排出位置までの排出経路を作成する排出経路作成工程と、
前記走行経路に従った前記自動刈取走行又は前記排出経路に従った自動排出走行を制御する自動運転制御工程と、
を有することを特徴とする自動運転方法。
【請求項2】
前記自動運転制御工程は、次回作業圃場に係る情報に基づいて前記自動排出走行を行うか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項3】
前記自動運転制御工程は、現在作業圃場と次回作業圃場とで作物の種類又は品種が異なる場合に前記自動排出走行を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動運転方法。
【請求項4】
前記自動運転制御工程は、次回作業圃場が存在するとき、穀粒の貯留量が所定の貯留閾値を超えている場合には、前記自動排出走行を行い、前記貯留量が前記貯留閾値以下の場合には、前記自動排出走行を行わないことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項5】
前記自動運転制御工程は、前記貯留閾値を次回作業圃場における穀粒の予定収穫量に基づいて予め設定することを特徴とする請求項4に記載の自動運転方法。
【請求項6】
前記自動運転制御工程が前記自動排出走行を行わない場合、前記走行経路の前記終了位置から、前記圃場に対して予め設定された入退場位置までの退場経路を作成する退場経路作成工程を更に有し、
前記自動運転制御工程は、前記自動排出走行を行わない場合、前記退場経路に従った自動退場走行を行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の自動運転方法。
【請求項7】
前記排出経路作成工程は、前記走行経路の少なくとも一部に沿った前記排出経路を作成することを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項8】
前記自動排出走行の要否を選択する選択工程を更に有することを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の自動運転方法。
【請求項9】
走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインであって、
圃場の未刈領域に対して前記走行経路を作成する走行経路作成部と、
前記未刈領域の自動刈取を完了する前記走行経路の終了位置から、前記圃場に対して予め設定された排出位置までの排出経路を作成する排出経路作成部と、
前記走行経路に従った前記自動刈取走行又は前記排出経路に従った自動排出走行を制御する自動運転制御部と、
を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項10】
走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインの自動運転システムであって、
圃場の未刈領域に対して前記走行経路を作成する走行経路作成部と、
前記未刈領域の自動刈取を完了する前記走行経路の終了位置から、前記圃場に対して予め設定された排出位置までの排出経路を作成する排出経路作成部と、
前記走行経路に従った前記自動刈取走行又は前記排出経路に従った自動排出走行を制御する自動運転制御部と、
を備えることを特徴とする自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の刈取完了後に排出位置まで自動排出走行を行うことが可能な自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈の刈取を行うコンバインは、GPS等の衛星測位システムを利用して取得した自装置の位置情報に基づいて、予め設定された走行経路に従って自動刈取走行を行うことができる。また、コンバインは、自動刈取走行中に穀粒の貯留量が所定量以上に到達すると、穀粒の排出作業を行うために排出位置まで自動走行するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される自動走行システムは、自動走行を行う走行経路を設定する経路設定部と、機体の位置と走行経路とに基づいて機体の自動走行制御を行う自動走行制御部と、収穫機の状態を検出する状態検出部と、状態検出部の検出結果に基づいて自動走行の中断を判定可能な中断判定部とを備えている。経路設定部は、中断判定部によって自動走行の中断が判定されると、圃場内において自動走行の中断後に作業する途中作業位置と、自動走行の中断が判定されたときの機体の位置と、圃場の収穫状況とに基づいて、途中作業位置へ移動する途中作業経路を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-22429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような従来のコンバインでは、自動刈取走行の途中で排出作業へ移行する動作のみが考慮されている。従来のコンバインでは、圃場に対して予め設定された走行経路の終了位置に到達して自動刈取走行を完了した場合に、その後、排出作業へ移行するための動作や、次に作業する圃場へ移動するための動作について考慮されていない。そのため、従来のコンバインは、自動刈取走行を完了したとき、走行経路の終了位置に停止したままとなり、作業者は、その停止位置から穀粒の排出作業を行う排出位置まで手動でコンバインを移動させる必要がある。このとき、コンバインを移動させる負担が作業者に掛かり、また、自動刈取走行を完了した後、即座に排出作業に移行できないために作業効率が低下するおそれがある。このように、従来のコンバインでは、自動刈取走行の完了後に、作業者の意図や圃場の状態に合わせた自動排出走行を適切に行うことができない。
【0006】
本発明は、自動刈取走行の完了後に自動排出走行を適切に行うことで、作業者の負担を軽減すると共に作業効率を向上させることができる自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自動運転方法は、走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインの自動運転方法であって、圃場の未刈領域に対して前記走行経路を作成する走行経路作成工程と、前記未刈領域の自動刈取を完了する前記走行経路の終了位置から、前記圃場に対して予め設定された排出位置までの排出経路を作成する排出経路作成工程と、前記走行経路に従った前記自動刈取走行又は前記排出経路に従った自動排出走行を制御する自動運転制御工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明のコンバインは、走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインであって、圃場の未刈領域に対して前記走行経路を作成する走行経路作成部と、前記未刈領域の自動刈取を完了する前記走行経路の終了位置から、前記圃場に対して予め設定された排出位置までの排出経路を作成する排出経路作成部と、前記走行経路に従った前記自動刈取走行又は前記排出経路に従った自動排出走行を制御する自動運転制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の自動運転システムは、走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインの自動運転システムであって、圃場の未刈領域に対して前記走行経路を作成する走行経路作成部と、前記未刈領域の自動刈取を完了する前記走行経路の終了位置から、前記圃場に対して予め設定された排出位置までの排出経路を作成する排出経路作成部と、前記走行経路に従った前記自動刈取走行又は前記排出経路に従った自動排出走行を制御する自動運転制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動刈取走行の完了後に自動排出走行を適切に行うことで、作業者の負担を軽減すると共に作業効率を向上させることができる自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るコンバインの側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンバインのブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて走行経路の終了位置から排出位置までの排出経路が設定される圃場の例を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて走行経路の終了位置から排出位置までの排出経路が設定される圃場の例を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて走行経路の終了位置から排出位置までの排出経路が設定される圃場の例を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて排出設定画面の例を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて自動刈取走行後の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態によるコンバイン1について図1等を参照して説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うために刈取等の作業を行うものである。コンバイン1は、例えば、自動運転によって操向を制御する一方、手動操作に応じて走行速度を制御するオート作業や、自動運転によって操向及び走行速度を制御する無人作業を行うように構成され、圃場内で自律して走行、旋回及び作業することができる。
【0013】
コンバイン1は、所定の走行パターンの走行経路R(図3図5参照)に従って自動走行しながら自動刈取する自動刈取走行を行うように構成される。例えば、コンバイン1は、圃場の未刈穀稈を有する領域(以下、未刈領域と称する)において複数の行程を往復する往復刈りや、未刈領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈り等の走行パターンの自動刈取走行を行う。
【0014】
また、コンバイン1は、刈取走行で貯留した穀粒の排出作業を排出位置C(図3図5参照)で行うために、排出位置Cまでの排出経路D(図3図5参照)に従って自動排出走行を行うように構成される。排出位置Cの近傍には、排出作業を行うための穀粒の搬送トラック等が圃場の枕地の外側の畔等に設けられる。コンバイン1は、排出作業を行う場合、例えば、オーガ等で構成される排出装置24が機体右側に設けられるため、機体右側を枕地の外側に向けた状態で排出位置Cに停止することが好ましい。なお、コンバイン1が排出位置Cに対して円滑に進入及び退出できるように、排出位置Cは、枕地の外周に沿って前後方向に所定距離を有して設定されるとよい。
【0015】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0016】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられていて、左右一対のクローラ式走行装置11と、トランスミッション(図示せず)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン26から伝達される動力(例えば、回転動力)によって、クローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置11へ伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0017】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられ、最大刈取条数以内の条列の刈取作業を行い、刈取作業の対象の条列数によって刈取幅が定まる。刈取部3は、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16とを備える。デバイダ13は、圃場の穀稈を一条毎に分草して、最大刈取条数以内の所定条数分の穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
【0018】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0019】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置21と、風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0020】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク23と、排出装置24とを備える。グレンタンク23は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置24は、オーガ等で構成され、穀粒の排出作業を行い、グレンタンク23に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。排出装置24は、コンバイン1が排出位置Cに到達して排出作業の準備を完了すると、制御装置50(図2参照)に制御されて自動的に、又は操縦部9の操作に応じて手動で排出作業を行う。
【0021】
また、コンバイン1は、貯留部6のグレンタンク23内に貯留されている穀粒の量(以下、貯留量と称する)を検出する穀粒センサー25を備える(図2参照)。穀粒センサー25は、例えば、グレンタンク23の高さ方向の複数の位置に所定間隔を空けて配置された複数のもみセンサーで構成されてもよい。各もみセンサーは、配置された高さに穀粒がある場合にオンになり、穀粒がない場合にオフになる。穀粒センサー25は、オンのもみセンサーの高さ又はオフのもみセンサーの高さに基づいて穀粒の収穫積算量を検出する。あるいは、穀粒センサー25は、重量センサーやその他のセンサーで構成されて穀粒の収穫積算量を検出してもよい。
【0022】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。排藁処理部7は、排藁の排出に関する第1の排出モードと第2の排出モードとを、作業者による操縦部9又は携帯端末53の操作に応じて切り替え可能にしてよい。
【0023】
排藁処理部7は、第1の排出モードでは、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を、排藁搬送装置によってそのまま機外へ排出し、未切断の排藁を利用可能にする。例えば、排藁処理部7は、排藁をそのまま排出する場合、コンバイン1の後方や下方で走行部2の一対のクローラ式走行装置11の間に排藁を排出する。あるいは、排藁処理部7は、第2の排出モードでは、排藁搬送装置によって排藁切断装置へ搬送して、排藁切断装置によって切断した後で機外へ排出し、切断した排藁を処理し易くする。例えば、排藁処理部7は、排藁を切断して排出する場合、コンバイン1の後方の右側寄りに排出する。
【0024】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、貯留部6の前方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン26を備える。動力部8は、エンジン26が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。また、コンバイン1は、動力部8のエンジン26へ供給する燃料を収容する燃料タンクを備える。
【0025】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、運転席(図示せず)と、複数の操作具(図示せず)とを備える。運転席は、作業者が座る座席であり、例えば、右側に設けられる。操作具は、コンバイン1の進行方向を変更し、すなわちコンバイン1を操向操作するためのハンドルを含み、作業者は、ハンドル等の操作具を操作することにより、コンバイン1の走行や作業を操縦できる。また、操作具は、コンバイン1の走行部2の走行速度を調整する機構や、刈取部3を昇降させる昇降スイッチを含む。
【0026】
コンバイン1は、図2に示すように、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する測位ユニット34を備えている。測位ユニット34は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット34の位置情報、すなわち、コンバイン1の位置情報を取得する。
【0027】
なお、コンバイン1は、圃場の周囲の畦等に設置された基地局(図示せず)と通信可能に構成されてもよい。基地局は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて基地局の位置情報を取得する。基地局は、基地局の位置情報に基づく補正情報を、コンバイン1(例えば、測位ユニット34)へ送信する。コンバイン1(例えば、測位ユニット34)は、補正情報を基地局から受信し、補正情報に基づいて測位ユニット34の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を補正する。
【0028】
次に、コンバイン1の制御装置50について図2を参照して説明する。
【0029】
制御装置50は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51や、外部機器と通信を行う通信部52に接続されている。記憶部51は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。
【0030】
制御装置50は、例えば、測位ユニット34を制御してコンバイン1の位置情報を取得する。制御装置50は、穀粒センサー25を制御してグレンタンク23内の穀粒の貯留量を検出させて取得する。
【0031】
記憶部51は、例えば、コンバイン1の作業対象である圃場の圃場情報を記憶する。圃場情報は、圃場に植えられた作物の種類又は品種、圃場外周を構成する圃場端の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等や、圃場の未刈領域の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等を含む。また、圃場情報は、コンバイン1が圃場に入退場する出入口付近の入退場位置F(図3図5参照)や穀粒の排出作業を行う排出位置Cを含む。コンバイン1が2つ以上の圃場に亘って刈取作業を行う場合、記憶部51は、各圃場の圃場情報を記憶するとよい。なお、コンバイン1が1つの圃場の刈取作業を行う場合でも、記憶部51は、その圃場の圃場情報を記憶してよい。
【0032】
通信部52は、無線通信アンテナを介して、作業者の保有する携帯端末53や、コンバイン1の作業を管理する管理サーバ54等の外部機器と無線通信可能となる。制御装置50は、通信部52を制御して携帯端末53や管理サーバ54と無線通信を行い、携帯端末53や管理サーバ54との間で各種情報を送受信する。
【0033】
携帯端末53は、コンバイン1の構成要素の一つであって、コンバイン1を遠隔操作可能な端末であり、例えば、タッチパネルを備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。なお、携帯端末53と同様の操作装置が操縦部9に備えられてもよい。
【0034】
携帯端末53は、作業対象の圃場に係る圃場情報について、タッチパネルのタッチ操作等による入力操作を受け付けるように構成され、例えば、圃場情報を設定可能な圃場情報設定画面を表示する。携帯端末53は、圃場情報設定画面において、圃場情報に基づく圃場マップを表示しつつ、圃場マップ上にコンバイン1の走行経路Rを進行方向が分かるように表示することもできる。
【0035】
携帯端末53は、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターンの選択を受け付ける機能を有し、自動刈取走行の走行経路Rを作成する場合に、往復刈り又は回り刈りの走行パターンを選択する走行選択画面をタッチパネルに表示する。携帯端末53は、走行選択画面の操作に応じて入力された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)をコンバイン1へ送信して走行経路Rの作成を指示する。
【0036】
また、携帯端末53は、コンバイン1が貯留した穀粒の排出に関する各種情報について、タッチパネルのタッチ操作等による入力操作を受け付けるように構成され、例えば、図6に示すように、各種情報を設定可能な排出設定画面70を表示する。携帯端末53は、排出設定画面70において、圃場情報に基づく圃場マップM及びコンバイン1の走行経路Rを表示してよい。例えば、携帯端末53は、排出設定画面70において、排出位置Cを設定可能にする。排出設定画面70では、圃場マップMのタッチ操作に応じて、排出位置候補を選択させ、排出位置設定ボタン71の操作に応じて、選択されている排出位置候補を排出位置Cとして設定する。なお、排出位置Cは、圃場情報設定画面で設定してもよく、排出設定画面70で設定してもよい。
【0037】
また、携帯端末53は、排出設定画面70において、コンバイン1の自動刈取走行後の排出走行モードとして、自動右寄モード、自動最短モード及び手動モードの何れかを設定する自動右寄ボタン72、自動最短ボタン73及び手動ボタン74を備える。自動右寄モードは、自動刈取走行を完了する走行経路Rの終了位置E(最終行程の終端)から排出作業を行う排出位置Cまでコンバイン1を自動排出走行させて、コンバイン1の機体右側を枕地の外側に向けた状態で排出位置Cに停止させる排出走行モードである。自動最短モードは、コンバイン1の向きに拘わらず、終了位置Eから排出位置Cまで最短の経路でコンバイン1を自動排出走行させるモードである。手動モードは、自動刈取走行の完了後に走行経路Rの終了位置Eで停止し、終了位置Eから排出位置Cまでコンバイン1を手動で排出走行させるモードである。なお、自動右寄モード、自動最短モード及び手動モードは、自動刈取走行の完了時に終了位置Eから排出位置Cに行く際の走行に限らず、作業途中でグレンタンク23が満量になった場合の排出作業のために排出位置Cに行く際の走行に適用されてよい。
【0038】
更に、携帯端末53は、手動でコンバイン1を操縦して刈取走行を完了した後、その完了位置を刈取走行の終了位置Eとして、終了位置Eから排出位置Cまでコンバイン1を自動排出走行させるために、排出設定画面70において、排出位置移動ボタン75を備えてもよい。なお、コンバイン1の刈取走行が自動か手動かに拘わらず、排出位置移動ボタン75の操作に応じて、排出位置Cまでコンバイン1を自動排出走行させてもよい。
【0039】
携帯端末53の排出設定画面70は、コンバイン1の自動刈取走行の開始前に、穀粒の排出に関する各種操作を受け付け可能にしていて、一方、コンバイン1の自動刈取走行の開始後では、排出位置移動ボタン75の操作を受け付ける。
【0040】
なお、携帯端末53は、排藁処理部7が第1の排出モードで排出した未切断の排藁を踏み荒らさないように、刈取走行時に通った直線行程を辿って(直線行程に沿って進んで)排出位置Cまでコンバイン1を自動排出走行させるために、排出設定画面70において、排藁回避ボタン(図示せず)を備えてもよい。
【0041】
また、携帯端末53は、コンバイン1が自動刈取走行や排出作業を完了した後、コンバイン1を圃場の出入口へ向かって自動退場走行させるか否かの選択操作を受け付けてもよい。携帯端末53は、自動退場走行のオン/オフの選択を記憶部51に記憶しておく。コンバイン1が2つ以上の圃場に亘って刈取作業を行う場合、携帯端末53は、圃場毎に自動退場走行のオン/オフを選択させてよい。
【0042】
コンバイン1は、グレンタンク23が穀粒を貯留できる最大容量(以下、設定収穫量[kg]と称する)を記憶部51に記憶している。更に、コンバイン1は、自動刈取走行を実行できる距離(以下、刈取可能距離と称する)を、グレンタンク23内の穀粒の収穫積算量又は穀粒を貯留できる空き容量(以下、刈取可能収穫量[kg]と称する)に基づいて算出するために、単位距離(例えば、0.1m)当たりで収穫できる穀粒の量(以下、単位収穫量[kg/0.1m]と称する)を記憶部51に記憶している。あるいは、コンバイン1は、単位収穫量を算出するために、例えば、収穫係数として、収穫量[kg]を俵に変換する俵・kg変換係数[kg/俵]や、単位収穫係数[0.1俵/1000]を記憶部51に記憶していてもよい。
【0043】
コンバイン1は、刈取部3の刈取能力値として条列毎の刈取幅や一行程当たりの刈取幅(例えば、最大刈取条数の条列の刈取幅)、一行程当たりの刈取条数(例えば、最大刈取条数)を予め設定して記憶部51に記憶している。なお、一行程当たりの刈取幅は、条列毎の刈取幅に基づいて把握してもよい。
【0044】
また、制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、排出経路作成部62、退場経路作成部63及び自動運転制御部64として動作する。なお、走行経路作成部61、排出経路作成部62、退場経路作成部63及び自動運転制御部64は、本発明に係る自動運転方法の走行経路作成工程、排出経路作成工程、退場経路作成工程及び自動運転制御工程を実現するものである。なお、携帯端末53の操作に基づく制御装置50が、自動排出走行の要否を選択する選択部として機能し、本発明に係る自動運転方法の選択工程を実現する。
【0045】
圃場情報設定部60は、作業対象の圃場に係る圃場情報を自動又は手動で設定して記憶部51に記憶する。例えば、圃場情報設定部60は、携帯端末53の圃場情報設定画面に対する圃場情報の入力操作に応じて、圃場情報を手動で設定する。あるいは、圃場情報設定部60は、管理サーバ54との通信によって、管理サーバ54が記憶している圃場情報を管理サーバ54から受信して自動で設定してもよい。また、圃場情報設定部60は、管理サーバ54から受信した圃場情報を、携帯端末53の圃場情報設定画面によって編集可能にしてもよい。
【0046】
コンバイン1が2つ以上の圃場に亘って刈取作業を行う場合、圃場情報設定部60は、各圃場の圃場情報を設定して記憶部51に記憶してよい。なお、管理サーバ54が2つ以上の圃場に亘る刈取作業スケジュールを記憶している場合には、圃場情報設定部60は、各圃場の圃場情報を管理サーバ54から受信するとよい。また、圃場情報設定部60は、現在、刈取作業を行っている圃場(現在作業圃場)で自動刈取走行等の刈取作業を完了したときに、後続の圃場(次回作業圃場)の圃場情報を圃場情報設定画面によって設定可能にしてもよい。
【0047】
圃場情報設定部60は、例えば、各圃場の作物の種類及び品種を、圃場情報設定画面を介して作業者に設定させてもよく、又は管理サーバ54に記憶した圃場情報を受信してもよく、あるいは、コンバイン1の記憶部51や管理サーバ54に記憶されている前年のデータに基づいて設定されてもよい。
【0048】
なお、他の例として、圃場情報設定部60は、作業対象の圃場を撮影した圃場画像を取得し、圃場画像を画像解析した結果に基づいて圃場情報を設定してもよい。また、圃場情報設定部60は、携帯端末53の操作に応じて設定した圃場情報や、管理サーバ54から受信した圃場情報と、圃場画像から解析した圃場情報と整合性をとることで、より正確な圃場情報を取得してもよい。
【0049】
圃場画像は、コンバイン1に備わる機体カメラによって撮影してもよく、基地局に備わる固定カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよく、携帯端末53に備わる携帯カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよく、ドローン等の空撮装置に備わる空撮カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよい。圃場情報設定部60は、機体カメラ、固定カメラ、携帯カメラ又は空撮カメラのうち、1つのカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよく、2つ以上のカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよい。なお、制御装置50は、機体カメラ、固定カメラ、携帯カメラ又は空撮カメラによって撮影した圃場画像を操縦部9のモニタに表示させたり、携帯端末53へ送信して携帯端末53のモニタに表示させたりしてもよい。
【0050】
走行経路作成部61は、圃場をコンバイン1が自動運転で自動走行及び自動刈取(自動刈取走行)を行うために参照する走行経路R(図3図5の破線参照)を作成して記憶部51に記憶する。走行経路Rは、走行に関する走行設定だけでなく、刈取等の作業に関する作業設定も含む。走行設定は、圃場における走行位置に加えて、各走行位置での走行速度及び進行方向(操向方向及び前進又は後退)を含む。作業設定は、各走行位置での刈取の稼働又は停止、刈取速度及び刈取高さ、刈取条数、他の作業に関する情報を含む。
【0051】
走行経路作成部61は、圃場内の未刈領域に対して、走行しながら刈取を行う行程を直線状に設定し、複数の直線行程を組み合わせて走行経路Rを設定する。走行経路作成部61は、携帯端末53等の操作に応じて選択された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)に応じた走行経路Rを作成する。例えば、走行経路作成部61は、未刈領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈りの走行経路Rや、未刈領域において複数の行程を往復する往復刈りの行程を作成する。走行経路作成部61は、複数の直線行程からなる一連の走行経路Rにおいて、自動刈取走行を開始する開始位置Sと、自動刈取走行を完了する終了位置Eとを設定する。
【0052】
排出経路作成部62は、排出作業を行うために、図3に示すように、走行経路作成部61によって作成した走行経路Rの終了位置Eから、予め設定された圃場情報の排出位置Cへと向かう排出経路Dを作成する。排出経路Dは、自動刈取走行の完了後に、自動排出走行で排出位置Cへ向かう経路であり、走行に関する走行設定を含む。
【0053】
排出経路作成部62は、自動刈取走行における所定のタイミングで、排出経路D(図3図5の一点鎖線参照)を作成して記憶部51に記憶する。例えば、排出経路作成部62は、自動刈取走行の走行経路Rの終了位置Eへ到達する前のタイミングで、自動刈取走行の走行経路Rを構成する複数の直線行程のうち、終了位置Eに近付く行程(例えば、最終行程よりも1本又は2本前の行程)において、又は最終行程において、自動刈取走行を行っている間に排出経路Dを作成する。あるいは、排出経路作成部62は、走行経路作成部61によって走行経路Rを作成したタイミングで排出経路Dを作成してもよく、自動刈取走行を行っている間のその他のタイミングで排出経路Dを作成してもよい。なお、コンバイン1が最終行程よりも数本前の行程又は最終行程を走行中に、刈り取った穀稈等の詰まり等が生じて、自動刈取走行を中断した場合、排出経路作成部62は、自動刈取走行の再開時に排出経路Dを再作成するとよい。
【0054】
排出経路作成部62は、作成した排出経路Dのデータを携帯端末53へ送信してタッチパネルに表示させると共に、排出作業への移行や自動刈取走行の完了を作業者へ通知する。例えば、排出経路作成部62は、コンバイン1の自動刈取走行の完了後、コンバイン1が排出経路Dに従って自動排出走行を開始するときに、排出経路Dを表示させる。なお、携帯端末53による排出経路Dの表示は、排出位置Cへの移動を完了したときに終了してよい。
【0055】
排出経路作成部62は、携帯端末53の排出設定画面70で設定された排出走行モードに応じて排出経路Dを作成する。排出走行モードとして自動右寄モードが設定されている場合、排出経路作成部62は、コンバイン1が機体右側を圃場の枕地の外側に向けた状態で排出位置Cに臨むような排出行程を含んでいて、走行経路Rの終了位置Eからこの排出行程へ至る最短の経路を含む排出経路Dを作成する。また、排出走行モードとして自動最短モードが設定されている場合、排出経路作成部62は、排出位置Cにおけるコンバイン1の向きに拘わらず、終了位置Eから排出位置Cまで最短となる排出経路Dを作成する。
【0056】
更に、排出経路作成部62は、携帯端末53の排出設定画面70において排出位置移動ボタンが操作された場合には、その操作時のコンバイン1の位置、すなわち、刈取走行の完了位置を終了位置Eとして、終了位置Eから排出位置Cまでコンバイン1を自動排出走行させる排出経路Dを作成する。この場合の排出経路Dは、右寄モード及び最短モードの何れかが自動的に選択されてもよく、あるいは、作業者の操作に応じて右寄モード及び最短モードの何れかが選択されてもよい。
【0057】
排出経路作成部62は、コンバイン1が終了位置Eから排出位置Cへ至るまでに旋回を要する場合には、十分な旋回半径を取り、旋回距離及び旋回時間がより短くなるように排出経路Dを作成するとよい。排出経路作成部62は、例えば、終了位置Eから旋回しながら進行する所定旋回半径の旋回円と、排出位置Cへと旋回しながら進行する所定旋回半径の旋回円とを設定し、これらの旋回円を直線で繋いで排出経路Dを作成する。
【0058】
なお、旋回円の旋回半径は、初期値として所定の旋回半径最小値に設定されてよく、枕地の幅に応じて変更してよい。例えば、枕地の幅が大きいほど、旋回半径を大きくしてよい。終了位置Eの旋回円は、終了位置Eに到達したときのコンバイン1の進行方向に延びる仮想線(すなわち、終了位置Eの直線行程に沿う仮想線)を接線とする円で設定される。排出位置Cの旋回円は、排出位置Cで排出作業を行う状態のコンバイン1の進行方向に延びる仮想線(すなわち、排出位置Cへ進入する直線経路に沿う仮想線)を接線とする円で設定される。
【0059】
排出経路作成部62は、圃場の様々な状態を考慮して終了位置Eから排出位置Cへ至る複数パターンの排出経路を作成して、これらの複数パターンの排出経路のうち、最短のものを排出経路Dとしてもよい。例えば、排出経路作成部62は、終了位置Eから前方へ進行する排出経路D(図3参照)と、終了位置Eから後方へ後退する排出経路D(図4参照)とを作成して、最短のものを排出経路Dとしてもよい。なお、図4では、終了位置Eから切り返し位置Bまで後退した後、前進して排出位置Cへ向かう排出経路Dを示す。
【0060】
また、排出経路作成部62は、自動刈取走行において排藁処理部7が排藁を第1の排出モードで排出していた場合、又は携帯端末53の排出設定画面70において排藁回避ボタンが操作された場合には、未切断の排藁を踏み荒らさないように、自動刈取走行時に通った何れかの直線行程を辿る(直線行程に沿って進む)ように排出経路Dを作成する(図5参照)。なお、排出経路作成部62は、自動刈取走行において排藁処理部7が排藁を第2の排出モードで排出していた場合には、自動刈取走行時の走行経路Rに拘わらず、排出経路Dを作成してよい。
【0061】
退場経路作成部63は、コンバイン1が自動刈取走行や排出作業を完了した後、圃場の出入口へ向かって自動退場走行を行う場合に、走行経路作成部61で作成された走行経路Rの終了位置Eや圃場情報に基づく排出位置Cから、圃場情報に基づく入退場位置Fへと向かう退場経路を作成する。退場経路は、走行に関する走行設定を含む。
【0062】
退場経路作成部63は、例えば、コンバイン1が2つ以上の圃場に亘って刈取作業を行う場合において、自動刈取走行を完了した圃場(現在作業圃場)と後続の圃場(次回作業圃場)との間で、穀粒の排出作業を行わない場合に、走行経路Rの終了位置Eから入退場位置Fまでの退場経路を作成する。
【0063】
自動運転制御部64は、走行経路作成部61で作成された走行経路Rの走行設定及び作業設定に基づいて、動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御して、走行経路Rに応じた自動走行及び自動刈取を実行させる。自動運転制御部64は、刈取部3によって走行経路R上の未刈穀稈を自動的に刈り取る。また、自動運転制御部64は、自動刈取に伴い、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を制御して、刈取後の穀稈の脱穀、脱穀後の穀粒や藁屑の選別、選別後の穀粒の貯留、脱穀後の排藁の処理等を自動的に実行させる。なお、コンバイン1は、ジャイロセンサ及び方位センサを備えてコンバイン1の変位情報及び方位情報を取得し、自動運転制御部64は、変位情報及び方位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を調整してもよい。
【0064】
また、自動運転制御部64は、排出経路作成部62で作成された排出経路Dの走行設定に基づいて、動力部8並びに走行部2を制御して、排出経路Dに応じた自動走行を実行させる。自動運転制御部64は、携帯端末53の排出設定画面70で設定された排出走行モードが自動右寄モード又は自動最短モードである場合、走行経路Rに従った自動刈取走行を完了したときに、走行経路Rの自動刈取走行を排出経路Dの自動排出走行に切り替える。自動排出走行によってコンバイン1が排出位置Cに到達すると、自動運転制御部64は、排出経路Dの自動排出走行を終了する。
【0065】
一方、自動運転制御部64は、携帯端末53の排出設定画面70で設定された排出走行モードが手動モードである場合、走行経路Rに従った自動刈取走行を完了した終了位置Eでコンバイン1を停止する。
【0066】
ところで、自動運転制御部64は、自動刈取走行を完了した圃場(現在作業圃場)の後続の圃場(次回作業圃場)の有無や、次回作業圃場の圃場情報(種類・品種、収穫量等)等の、次回作業圃場に係る情報に基づいて、自動排出走行を行うか否かを判定してもよい。コンバイン1が2つ以上の圃場に亘って刈取作業を行う場合において、次回作業圃場がある場合には、自動運転制御部64は、作業状況に応じて自動排出走行を行うか否かを判定する。例えば、自動運転制御部64は、現在作業圃場及び次回作業圃場の圃場情報に基づいて、現在作業圃場と次回作業圃場とで作物の種類又は品種が異なるか否かを判定する。圃場間で作物の種類又は品種が異なるか否かの判定は、現在作業圃場の自動刈取走行の開始前に行ってもよく、あるいは、自動刈取走行の実行中であって自動刈取走行の完了前に行ってもよい。
【0067】
圃場間で作物の種類又は品種が異なる場合、現在作業圃場と次回作業圃場との間で排出作業を行わなければ、次回作業圃場の刈取作業によってグレンタンク23内に異なる種類又は品種の穀粒が貯留されてしまう。そこで、自動運転制御部64は、圃場間で作物の種類又は品種が異なる場合には、コンバイン1のグレンタンク23内の穀粒の貯留量に拘わらず、自動排出走行を行うと判定する。
【0068】
一方、圃場間で作物の種類及び品種が同じ場合には、現在作業圃場と次回作業圃場との間で排出作業を行わずに次回作業圃場の刈取作業を行っても、グレンタンク23内には同じ種類及び品種の穀粒が貯留される。そこで、自動運転制御部64は、圃場間で作物の種類及び品種が同じ場合には、自動排出走行を行わないと判定してもよい。
【0069】
なお、コンバイン1は、現在作業圃場の自動刈取走行の完了後に自動排出走行を行うか否かの情報を、現在作業圃場及び次回作業圃場の圃場情報(例えば、作物の種類及び品種)に基づいて予め判定して記憶部51や管理サーバ54に記憶していてもよい。この場合、自動運転制御部64は、自動排出走行を行うか否かの情報を、記憶部51や管理サーバ54から取得すればよい。
【0070】
ところで、圃場間で作物の種類及び品種が同じ場合であっても、現在作業圃場の刈取完了時のグレンタンク23内の穀粒の貯留量が比較的多く、排出作業を行わずに次回作業圃場の刈取を開始してもグレンタンク23が直ぐに満量になってしまうような場合には、自動運転制御部64は、現在作業圃場の刈取完了時に自動排出走行を行うと判定してよい。
【0071】
例えば、自動運転制御部64は、次回作業圃場が存在するとき、穀粒センサー25によって現在作業圃場の刈取完了時のグレンタンク23内の穀粒の貯留量を検出し、貯留量が所定の貯留閾値を超えているか否かを判定する。貯留量が貯留閾値を超えている場合、自動運転制御部64は、現在作業圃場の刈取完了時に自動排出走行を行うと判定する。
【0072】
一方、貯留量が貯留閾値以下である場合、自動運転制御部64は、現在作業圃場の刈取完了時に自動排出走行を行わないと判定する。
【0073】
貯留閾値は、次回作業圃場における穀粒の予定収穫量に基づいて予め設定されるとよく、例えば、次回作業圃場の外周1周分の予定収穫量や、次回作業圃場の自動刈取走行に対して作成される走行経路Rの終了位置Eまでの予定収穫量に設定されてよい。あるいは、次回作業圃場の自動刈取走行に対して作成される走行経路R上でグレンタンク23が満量になる満量位置を予め予測し、満量位置を含む行程より前の行程の終端であって、次回作業圃場の排出位置Cに最も近い行程の終端を予測し、貯留閾値は、予測した終端までの予定収穫量に設定されてもよい。なお、次回作業圃場の予定収穫量及び予定収穫量を算出するための単位距離当たりの収穫量は、携帯端末53を用いた作業者の操作に応じて設定されてもよく、あるいは、コンバイン1の記憶部51や管理サーバ54に記憶されている前年のデータに基づいて設定されてもよい。貯留閾値は、上記のように変動値でもよく、あるいは固定値でもよい。
【0074】
なお、自動運転制御部64は、コンバイン1の自動刈取走行の完了後、排出作業を行わないと判定した場合には、退場経路作成部63で作成された退場経路に従って入退場位置Fまで自動退場走行するように動力部8並びに走行部2を制御してもよい。例えば、自動運転制御部64は、現在作業圃場の自動刈取走行を完了したときに、排出作業を行わず、自動排出走行を行わないと判定した場合、即座に次回作業圃場の刈取作業へ移行するために、自動退場走行を行うとよい。
【0075】
次に、コンバイン1による自動刈取走行後の動作例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0076】
本動作例において、先ず、コンバイン1は、走行経路作成部61で作成された走行経路Rに従って自動運転制御部64に制御されて自動刈取走行を行っている。
【0077】
自動運転制御部64は、走行経路Rの終了位置Eに到達するまで(ステップS1:No)自動刈取走行を継続し、走行経路Rの終了位置Eに到達すると(ステップS1:Yes)自動刈取走行を完了する。
【0078】
自動刈取走行の完了後、自動運転制御部64は、設定されている排出走行モードが自動排出走行を行う自動右寄モード又は自動最短モードであるか否かを判定する(ステップS2)。
【0079】
排出走行モードが自動排出走行を行わない手動モードである場合(ステップS2:No)、自動運転制御部64は、コンバイン1を終了位置Eで停止させて、作業者による操縦部9の操縦を待機した状態になる。
【0080】
一方、排出走行モードが自動排出走行を行う自動右寄モード又は自動最短モードである場合(ステップS2:Yes)、自動運転制御部64は、次回作業圃場が設定されているか否かを判定する(ステップS3)。
【0081】
次回作業圃場が設定されていない場合(ステップS3:No)、全ての圃場に亘って刈取作業を終了する必要があるので、自動運転制御部64は、排出経路作成部62で作成された排出経路Dに従って、走行経路Rの終了位置Eから排出位置Cまでの自動排出走行を行う(ステップS4)。
【0082】
一方、次回作業圃場が設定されている場合(ステップS3:Yes)、自動運転制御部64は、現在作業圃場及び次回作業圃場の圃場情報に基づいて、現在作業圃場と次回作業圃場とで作物の種類及び品種が同じか否かを判定する(ステップS5)。
【0083】
圃場間で作物の種類及び品種が異なる場合(ステップS5:No)、次回作業圃場での刈取作業のためにグレンタンク23を空にする必要があるので、自動運転制御部64は、排出経路作成部62で作成された排出経路Dに従って、走行経路Rの終了位置Eから排出位置Cまでの自動排出走行を行う(ステップS4)。
【0084】
一方、圃場間で作物の種類及び品種が同じ場合(ステップS5:Yes)、自動運転制御部64は、現在作業圃場の刈取完了時のグレンタンク23内の穀粒の貯留量が所定の貯留閾値を超えているか否かを判定する(ステップS6)。
【0085】
貯留量が貯留閾値を超えている場合(ステップS6:Yes)、次回作業圃場の刈取作業を開始しても、グレンタンク23が穀粒を貯留できる空き容量が少ないので、直ぐにグレンタンク23が満量になるおそれがある。そのため、自動運転制御部64は、排出経路作成部62で作成された排出経路Dに従って、走行経路Rの終了位置Eから排出位置Cまでの自動排出走行を行う(ステップS4)。
【0086】
一方、貯留量が貯留閾値以下である場合(ステップS6:No)、グレンタンク23が穀粒を貯留できる空き容量が十分あり、次回作業圃場の刈取作業で収穫した穀粒を貯留できることになる。そのため、自動運転制御部64は、現在作業圃場の自動排出走行及び排出作業を行うことなく次回作業圃場へ移動するために、退場経路作成部63で作成された退場経路に従って、走行経路Rの終了位置Eから入退場位置Fまでの自動退場走行を行う(ステップS7)。
【0087】
なお、本実施形態において、上記したコンバイン1の動作例では、コンバイン1が走行経路Rの終了位置Eに到達してから自動排出走行の判定を行ったが、本発明はこの動作例に限定されない。例えば、他の動作例では、コンバイン1は、刈取走行前又は刈取走行中に上記のステップS3~S6に示す判定を行って自動排出走行の排出経路又は自動退場走行の退場経路を作成しておき、コンバイン1が終了位置Eに到達した際に上記のステップS1及びS2に示す判定を行って自動排出走行又は自動退場走行を行ってもよい。
【0088】
また、本実施形態において、上記したコンバイン1の動作例では、次回作業圃場の有無や穀粒貯留量に基づいて自動排出走行の判定を行ったが、本発明はこの動作例に限定されない。例えば、他の動作例では、コンバイン1は、次回作業圃場の有無や穀粒貯留量に関わらず終了位置Eから排出位置Cまで自動排出走行を行ってもよい。
【0089】
上記のように、本実施形態によれば、コンバイン1は、制御装置50を備えていて、制御装置50は、走行経路作成部61、排出経路作成部62及び自動運転制御部64として機能する。走行経路作成部61は、圃場の未刈領域に対して走行経路Rを作成する。排出経路作成部62は、未刈領域の自動刈取を完了する走行経路Rの終了位置Eから、圃場に対して予め設定された排出位置Cまでの排出経路Dを作成する。自動運転制御部64は、走行経路Rに従った自動刈取走行又は排出経路Dに従った自動排出走行を制御する。
【0090】
これにより、コンバイン1は、圃場の自動刈取走行の完了後に、刈り取った穀粒の排出作業を行う排出位置Cへと自動的に移動することで、コンバイン1を排出位置Cへ移動させるか否かの判断を作業者に強いることがなく、コンバイン1の排出位置Cまでの手動操縦を省くことができる。また、自動刈取走行を完了してから、排出位置Cへの移動を開始するまでの時間を短縮することができる。このように、コンバイン1は、自動刈取走行の完了後に自動排出走行を適切に行うことで、作業者の負担を軽減すると共に作業効率を向上させることができる。
【0091】
本実施形態のコンバイン1において、自動運転制御部64は、次回作業圃場に係る情報(次回作業圃場の有無や、次回作業圃場の圃場情報等)に基づいて自動排出走行を行うか否かを判定する。例えば、自動運転制御部64は、現在作業圃場と次回作業圃場とで作物の種類又は品種が異なる場合に自動排出走行を行う。
【0092】
これにより、コンバイン1は、次回作業圃場も考慮した上で、現在作業圃場の自動排出走行を判定することができる。例えば、圃場間で作物の種類又は品種が異なるか否かの判断を作業者に強いることがなく、種類又は品種の異なる穀粒がグレンタンク23に混在して貯留されることをより確実に回避することができる。また、圃場間で作物の種類又は品種が異なる場合でも、円滑に次回作業圃場の作業へ移行することができる。そのため、作業者の負担を軽減することができ、コンバイン1の作業効率を向上することができる。
【0093】
本実施形態のコンバイン1において、自動運転制御部64は、次回作業圃場が存在するとき、穀粒の貯留量が所定の貯留閾値を超えている場合には、自動排出走行を行い、穀粒の貯留量が貯留閾値以下の場合には、自動排出走行を行わない。
【0094】
これにより、現在作業圃場の刈取完了時のグレンタンク23内の穀粒の貯留量が比較的多く、排出作業を行わずに次回作業圃場の刈取を開始してもグレンタンク23が直ぐに満量になってしまうような場合には、自動排出走行を行うため、グレンタンク23の空き容量が十分な状態で次回作業圃場の作業に移行することができる。また、自動排出走行を行わなくてもグレンタンク23の空き容量が十分な場合には、円滑に次回作業圃場の作業へ移行することができる。このように、自動排出走行を行うか否かの判断を作業者に強いることがなく、作業者の負担を軽減することができ、コンバイン1の作業効率を向上することができる。
【0095】
本実施形態のコンバイン1において、自動運転制御部64は、貯留閾値を次回作業圃場における穀粒の予定収穫量に基づいて予め設定する。
【0096】
これにより、次回作業圃場における穀粒の予定収穫量を考慮することで自動排出走行を行うか否かをより適切に判断することができ、コンバイン1の作業効率を向上することができる。
【0097】
本実施形態のコンバイン1は、自動運転制御部64が自動排出走行を行わない場合、走行経路Rの終了位置Eから、圃場に対して予め設定された入退場位置Fまでの退場経路を作成する退場経路作成部63を更に備える。自動運転制御部64は、自動排出走行を行わない場合、退場経路に従った自動退場走行を行う。
【0098】
これにより、自動排出走行を行わない場合には、コンバイン1を入退場位置Fへ移動させるか否かの判断を作業者に強いることがなく、コンバイン1の入退場位置Fまでの手動操縦を省くことができる。また、自動刈取走行を完了してから、入退場位置Fへの移動を開始するまでの時間を短縮することができる。このように、コンバイン1は、自動刈取走行の完了後に自動退場走行を適切に行うことで、作業者の負担を軽減すると共に作業効率を向上させることができる。
【0099】
本実施形態のコンバイン1は、排出経路作成部62は、走行経路Rの少なくとも一部(例えば、自動刈取走行を既に行った領域における何れかの行程)に沿った排出経路Dを作成する。
【0100】
これにより、コンバイン1が排藁を踏み荒らすことを抑制することができるので、排藁を用いたロールベールが作り易くなる等、排藁を有効利用することができる。
【0101】
本実施形態のコンバイン1は、自動排出走行の要否を選択する選択部として、携帯端末53の操作に基づく制御装置50が機能する。
【0102】
これにより、作業者が自動排出走行の要否を選択することができるので、圃場や作業者の状況に応じて自動排出走行を設定することができ、穀粒の排出作業を圃場や作業者の状況に合わせることができる。
【0103】
なお、上記した実施形態では、コンバイン1の制御装置50が圃場情報設定部60、走行経路作成部61、排出経路作成部62、退場経路作成部63及び自動運転制御部64として機能する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、携帯端末53が圃場情報設定部60、走行経路作成部61、排出経路作成部62、退場経路作成部63又は自動運転制御部64として機能するように構成されてもよい。また、自動排出走行や自動退場走行の要否を管理サーバ54によって判断してもよい。換言すれば、本発明に係る自動運転システムは、コンバイン1の制御装置50、携帯端末53及び管理サーバ54の少なくとも一つを適用して、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、排出経路作成部62、退場経路作成部63又は自動運転制御部64として機能し、自動排出走行や自動退場走行の要否を判定すればよい。
【0104】
上記した実施形態では、自脱型コンバインで構成されるコンバイン1の例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、コンバイン1は、普通型コンバインで構成されてもよい。
【0105】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動運転方法、コンバイン及び自動運転システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
50 制御装置
51 記憶部
52 通信部
53 携帯端末
54 管理サーバ
60 圃場情報設定部
61 走行経路作成部
62 排出経路作成部
63 退場経路作成部
64 自動運転制御部
R 走行経路
C 排出位置
D 排出経路
E 終了位置
F 入退場位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7