(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132851
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】輻射パネル及び輻射冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
F28D 9/02 20060101AFI20220906BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20220906BHJP
F28F 13/12 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F28D9/02
F24F5/00 101B
F28F13/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031548
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】307018405
【氏名又は名称】株式会社エコ・パワー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 正
(72)【発明者】
【氏名】水野 高伸
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA32
3L103AA35
3L103BB42
3L103CC22
3L103DD15
3L103DD18
3L103DD19
3L103DD52
(57)【要約】
【課題】熱を効率よく伝達することができる輻射パネル及び輻射冷暖房システムを提供する。
【解決手段】輻射パネル10は、熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板12を有し、気体Aが流れる気体流路を表面板12と協働して形成する流路形成部材11、15と、気体流路に設けられ、気体流路を流れる気体Aが保有する冷熱又は温熱を表面板12に伝達するのを促進する熱伝達促進部材22と、を備える。輻射冷暖房システムは、輻射パネル10と、気体Aの温度を調節する温度調節機器と、温度調節機器で温度が調節された気体Aを気体流路に導く分配ダクトと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板を有し、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する流路形成部材と、
前記気体流路に設けられ、前記気体流路を流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を前記表面板に伝達するのを促進する熱伝達促進部材と、を備える、
輻射パネル。
【請求項2】
前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、
前記熱伝達促進部材は、前記流入口から前記流出口へと前記気体流路を流れる前記気体の流れ方向を、前記表面板に衝突させるように変える又は前記表面板に熱が伝わる前記流路形成部材の部分に衝突させるように変える方向変換部材である、
請求項1に記載の輻射パネル。
【請求項3】
前記方向変換部材は、前記表面板から離れて設けられていて前記流れ方向に流れる前記気体を捕捉し前記表面板に衝突させるように導く捕捉部材が、前記気体の流れ方向に沿って所定の間隔で複数が配置されている、
請求項2に記載の輻射パネル。
【請求項4】
前記流路形成部材は、前記表面板に熱が伝わる前記流路形成部材の部分として、前記表面板に接続された側面板を有しており、
前記方向変換部材は、前記側面板との間に隙間が形成されるように設けられていて前記流れ方向に流れる前記気体が前記隙間を通るように導く流路縮小板が、前記気体の流れ方向に沿って所定の間隔で複数が配置されている、
請求項2に記載の輻射パネル。
【請求項5】
前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、
前記気体流路を前記気体が流れる流れ方向は、前記流入口から前記流出口へと向かう方向であり、
前記熱伝達促進部材は、前記流れ方向に流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を採取して前記表面板に伝達する採熱伝達部材である、
請求項1に記載の輻射パネル。
【請求項6】
前記採熱伝達部材は、前記流れ方向に沿って延びる平板を有し、
前記平板は、前記気体流路を流れる前記気体が沿う面から突き出て前記流れ方向に沿って延びる採熱フィンを複数有している、
請求項5に記載の輻射パネル。
【請求項7】
前記流路形成部材は、前記表面板に接続された垂れ壁を有しており、
前記採熱伝達部材は、前記垂れ壁との間に前記気体を流入させることが可能な空間を形成する空間形成部材を有し、
前記空間形成部材は、前記流れ方向に所定の間隔で切り起こされた案内羽根を複数有すると共に、各前記案内羽根が切り起こされた跡に前記気体が通過可能な通過孔が形成されており、
前記案内羽根は、前記流れ方向の下流側で前記空間形成部材に接続されている、
請求項5に記載の輻射パネル。
【請求項8】
前記気体流路は、前記気体が流れる流れ方向に細長く形成されており、
前記流路形成部材は、前記表面板に接続されて前記流れ方向に延びる側面板を有しており、
前記流路形成部材の複数が、前記側面板同士を共有して又は前記側面板同士が隣接して、前記流れ方向に対して交差する方向に配列されている、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の輻射パネル。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の輻射パネルと、
前記気体の温度を調節する温度調節機器と、
前記温度調節機器で温度が調節された前記気体を前記気体流路に導く分配ダクトと、を備える、
輻射冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輻射パネル及び輻射冷暖房システムに関し、特に気体が保有する熱を熱輻射部材に効率よく伝達する輻射パネル及び輻射冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと快適性とを両立する冷暖房方式として、輻射熱で冷暖房を行う輻射冷暖房システムが採用されることが増加してきている。輻射冷暖房システムは、冷暖房対象空間に面する部材(例えば天井など)を、冷房時は冷やし暖房時は暖めて、冷却又は加熱した部材からの輻射熱により対象空間の冷暖房を行うシステムである。輻射冷暖房システムに用いられる部材として、対象空間に面する表面板の裏側に、温度調節した空気を流す流路を複数設け、この流路を流れる空気の熱を表面板に伝達させて、表面板から冷熱又は温熱を輻射する仕切パネルがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輻射による冷暖房では、冷熱又は温熱を輻射する部材に、気体が保有する冷熱又は温熱をより多く伝達させることができれば、冷暖房をより効果的に行うことができ、省エネルギーにも資することとなる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、冷熱又は温熱を輻射する部材に対して気体が保有する冷熱又は温熱を効率よく伝達することができる輻射パネル及び輻射冷暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る輻射パネルは、熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板を有し、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する流路形成部材と、前記気体流路に設けられ、前記気体流路を流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を前記表面板に伝達するのを促進する熱伝達促進部材と、を備える。
【0007】
このように構成すると、気体流路を流れる気体が保有する冷熱又は温熱を熱伝達促進部材によって効率よく表面板に伝達することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る輻射パネルは、上記本発明の第1の態様に係る輻射パネルにおいて、前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、前記熱伝達促進部材は、前記流入口から前記流出口へと前記気体流路を流れる前記気体の流れ方向を、前記表面板に衝突させるように変える又は前記表面板に熱が伝わる前記流路形成部材の部分に衝突させるように変える方向変換部材である。
【0009】
このように構成すると、気体を表面板又は流路形成部材の部分に衝突させることで境界層を破壊することができ、気体が保有する冷熱又は温熱を表面板に効率よく伝えることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る輻射パネルは、上記本発明の第2の態様に係る輻射パネルにおいて、前記方向変換部材は、前記表面板から離れて設けられていて前記流れ方向に流れる前記気体を捕捉し前記表面板に衝突させるように導く捕捉部材が、前記気体の流れ方向に沿って所定の間隔で複数が配置されている。
【0011】
このように構成すると、所定の間隔で表面板に気体を衝突させることができ、表面板の広範囲に気体が保有する冷熱又は温熱を伝達することが可能になる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る輻射パネルは、上記本発明の第2の態様に係る輻射パネルにおいて、前記流路形成部材は、前記表面板に熱が伝わる前記流路形成部材の部分として、前記表面板に接続された側面板を有しており、前記方向変換部材は、前記側面板との間に隙間が形成されるように設けられていて前記流れ方向に流れる前記気体が前記隙間を通るように導く流路縮小板が、前記気体の流れ方向に沿って所定の間隔で複数が配置されている。ここで、表面板に接続された側面板とは、側面板が表面板と一体に形成されている状態又は側面板が表面板とは別体であるが熱伝達可能に接している状態を意味している。
【0013】
このように構成すると、隙間を通過する気体の流速を上げて側面板の境界層を破壊することができ、気体が保有する冷熱又は温熱を側面板に効率よく伝え、その後側面板から表面板に伝達させることができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る輻射パネルは、上記本発明の第1の態様に係る輻射パネルにおいて、前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、前記気体流路を前記気体が流れる流れ方向は、前記流入口から前記流出口へと向かう方向であり、前記熱伝達促進部材は、前記流れ方向に流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を採取して前記表面板に伝達する採熱伝達部材である。
【0015】
このように構成すると、気体流路を流れる気体の流動抵抗を軽減しつつ気体が保有する冷熱又は温熱を表面板に伝達することができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る輻射パネルは、上記本発明の第5の態様に係る輻射パネルにおいて、前記採熱伝達部材は、前記流れ方向に沿って延びる平板を有し、前記平板は、前記気体流路を流れる前記気体が沿う面から突き出て前記流れ方向に沿って延びる採熱フィンを複数有している。
【0017】
このように構成すると、採熱フィンを介して気体が保有する冷熱又は温熱を平板に採り入れて、表面板に伝達することができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る輻射パネルは、上記本発明の第5の態様に係る輻射パネルにおいて、前記流路形成部材は、前記表面板に接続された垂れ壁を有しており、前記採熱伝達部材は、前記垂れ壁との間に前記気体を流入させることが可能な空間を形成する空間形成部材を有し、前記空間形成部材は、前記流れ方向に所定の間隔で切り起こされた案内羽根を複数有すると共に、各前記案内羽根が切り起こされた跡に前記気体が通過可能な通過孔が形成されており、前記案内羽根は、前記流れ方向の下流側で前記空間形成部材に接続されている。
【0019】
このように構成すると、気体流路を流れる気体が表面板に冷熱又は温熱を伝達すると共に、通過孔を通って空間内に流入した気体が垂れ壁に接触して垂れ壁に冷熱又は温熱を伝達して垂れ壁からの熱伝導で表面板に冷熱又は温熱を伝達することができる。
【0020】
また、本発明の第8の態様に係る輻射パネルは、上記本発明の第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つの態様に係る輻射パネルにおいて、前記気体流路は、前記気体が流れる流れ方向に細長く形成されており、前記流路形成部材は、前記表面板に接続されて前記流れ方向に延びる側面板を有しており、前記流路形成部材の複数が、前記側面板同士を共有して又は前記側面板同士が隣接して、前記流れ方向に対して交差する方向に配列されている。
【0021】
このように構成すると、気体が保有する冷熱又は温熱を効率的に伝達させる表面板の面積を拡大させることができる。
【0022】
また、本発明の第9の態様に係る輻射冷暖房システムは、上記本発明の第1の態様乃至第8の態様のいずれか1つの態様に係る輻射パネルと、前記気体の温度を調節する温度調節機器と、前記温度調節機器で温度が調節された前記気体を前記気体流路に導く分配ダクトと、を備える。
【0023】
このように構成すると、気体が保有する冷熱又は温熱を表面板に伝達し、表面板から熱輻射が行われることで、冷房又は暖房を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、気体流路を流れる気体が保有する冷熱又は温熱を効率よく表面板に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る輻射パネルの分解斜視図である。
【
図2】(A)は輻射パネルが備えるエレメントの部分斜視図、(B)は輻射パネルの部分背面図である。
【
図3】(A)は本開示の第2の実施の形態に係る輻射冷暖房システムの系統図、(B)は変形例に係る分配ダクトの平面図である。
【
図4】(A)は本開示の第2の実施の形態の変形例に係る輻射冷暖房システムの概略構成を示す部分斜視図、(B)は上部収集ダクトの斜視図である。
【
図5】(A)は変形例に係る輻射冷暖房システムが備える輻射パネルの流入口まわりの斜視図、(B)は変形例に係る輻射冷暖房システムが備える分配ダクトの斜視図である。
【
図6】本開示の第1の実施の形態の第1の変形例に係る輻射パネルの分解斜視図である。
【
図7】(A)は第1の変形例に係る輻射パネルが備えるエレメントの部分斜視図、(B)は第1の変形例に係る輻射パネルの部分背面図である。
【
図8】(A)は本開示の第1の実施の形態の第2の変形例に係る輻射パネルの分解斜視図、(B)は部分背面図である。
【
図9】(A)は第2の変形例に係る輻射パネルが備えるエレメントの分解斜視図、(B)は部分斜視図である。
【
図10】(A)は本開示の第1の実施の形態の第3の変形例に係る輻射パネルの分解斜視図、(B)は部分背面図、(C)はエレメントの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0027】
まず
図1を参照して、本開示の第1の実施の形態に係る輻射パネル10を説明する。
図1は、輻射パネル10の分解斜視図である。輻射パネル10は、温度が調節された空気(以下「温調空気A」という。)を内部に通過させて、冷却又は加熱された輻射パネル10から冷熱又は温熱を輻射することで、周囲の冷暖房を行うためのものである。ここで、輻射パネル10を冷却して冷熱を輻射する際は、周囲よりも温度が低い輻射パネル10が、周囲から吸熱することで清涼感が得られるのであるが、便宜上、輻射パネル10が冷熱を輻射すると表現することとする。また、冷暖房を行うとは、状況に応じて冷房又は暖房のいずれかを行うことをいう。冷暖房を行う輻射パネル10は、冷房及び暖房のいずれをも行うことができることを意味する。輻射パネル10は、上蓋11と、下蓋15と、気流変換噴流エレメント20とを備えている。以下、
図2(A)に示す気流変換噴流エレメント20の部分斜視図、及び
図2(B)に示す輻射パネル10の部分背面図を併せて参照して、輻射パネル10の構成を説明する。
【0028】
上蓋11は、輻射パネル10の外装の約半分を構成する部材である。上蓋11は、薄板状の部材が折り返し加工されて形成されている。上蓋11は、典型的には鋼板で構成されているが、他の金属板や、成型性に富み熱放射による伝熱性に優れた他の材料(金属以外の材料)で構成されていてもよい。また、上蓋11を構成する材料には、亜鉛めっき等の表面処理が施されていてもよい。上蓋11は、薄板状部材の折り返し加工によって、上襞13と、小突起14とが形成されている。上襞13は、薄板状部材を90度に曲げ、この曲げた位置から所定の長さのところで180度折り返し、先程90度に曲げた位置で薄板状部材が存在する側とは逆側に90度曲げることにより、形成されている。このように折り返し加工しているので、上襞13は、薄板状部材が2枚重なった状態になっている。小突起14は、上襞13よりも高さが短いが、上襞13と同様の折り返し加工によって形成されている。上蓋11には、上襞13及び小突起14がそれぞれ複数形成されており、上襞13及び小突起14は交互に形成されている。上襞13及び小突起14は、薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向に沿って、相互に平行に延びている。上襞13及び小突起14が突き出ている側とは反対側の上蓋11の面は、面一になっている。この面一になっている上蓋11の面の部分を、表面板12ということとする。上述の折り返し加工により、本実施の形態では、表面板12と上襞13及び小突起14とが一体に形成されている。表面板12は、熱輻射エネルギーの射出(暖房時)又は入射(冷房時)を行うことができるようになっている。
【0029】
下蓋15は、輻射パネル10の外装の残りの約半分を構成する部材である。下蓋15は、薄板状の部材が折り返し加工されて形成されている。下蓋15は、典型的には上蓋11と同じ材料で構成されているが、上蓋11と異なる材料で構成されていてもよい。下蓋15は、薄板状部材の折り返し加工によって、下襞17が形成されている。下蓋15には、上蓋11における小突起14と同様の構成は形成されていない。下襞17は、上襞13と同じ要領で形成され、高さも上襞13と同じ所定の長さに形成されている。下蓋15には、下襞17が複数形成されている。各下襞17は、薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向に沿って平行に延びている。隣接する下襞17の間隔は、上蓋11における隣接する上襞13の間隔と同じになっている。下襞17が突き出ている側とは反対側の面は、面一になっている。この面一になっている下蓋15の面の部分を、対向板16ということとする。薄板状部材の折り返し加工により、本実施の形態では、対向板16と下襞17とが一体に形成されている。
【0030】
輻射パネル10の外装は、上蓋11と下蓋15とが組み合わせられることで構成されている。上蓋11及び下蓋15は、表面板12と対向板16との間に上襞13及び下襞17が挟まれるように組み合わせられている。このとき、各下襞17が各小突起14の一方の側面に接するように組み合わせられている。このように上蓋11及び下蓋15が組み合わせられることで、表面板12と対向板16との間に、上襞13及び下襞17によって区分けされた空間が複数形成されることとなる。この、表面板12と、上襞13と、対向板16と、下襞17とに囲まれた空間は、気体の一形態である温調空気Aが流れる気体流路19となる。したがって、上襞13と、下襞17と、上襞13と下襞17との間にある表面板12及び対向板16の各部分は、流路形成部材に相当する。本実施の形態では、上蓋11と下蓋15とを組み合わせることによって、複数の気体流路19が形成されている。気体流路19は、上蓋11及び下蓋15を成形したときに薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向に細長く形成されている。以下、説明の便宜上、薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向を、軸線方向Xということがある。また、気体流路19について、軸線方向Xの距離を「長さ」と、軸線方向Xに直交し表面板12に平行な方向の距離を「幅」と、軸線方向X及び表面板12に直交する方向の距離を「高さ」と、いうことがある。これらの用語を用いて気体流路19を表現し直すと、輻射パネル10内には、軸線方向Xに細長い気体流路19の複数が、幅方向に配列されているということができる。前述した上襞13及び下襞17の所定の長さは、気体流路19の高さとなるように決定すればよい。
【0031】
各気体流路19は、上襞13及び下襞17が、隣接する気体流路19に対して区画する区画板の機能を果たしている。本実施の形態では、幅方向両端の気体流路19を除く気体流路19は、隣接する気体流路19と、上襞13又は下襞17を区画板として共有している。上襞13は、本実施の形態では、表面板12と一体に形成されているため、表面板12に接続されているといえる。また、下襞17は、本実施の形態では、表面板12とは別体に形成されているが、表面板12に接触しているため、表面板12に接続されているといえる。このため、区画板として機能する上襞13及び下襞17は、側面板に相当する。気体流路19は、本実施の形態では、軸線方向Xに直交する断面が矩形に形成されている。輻射パネル10及びその中の気体流路19のサイズは、輻射パネル10を設置する場所や用途に応じて適宜決定することができる。気体流路19は、典型的には、長さと幅との比が、5以上に構成されており、10や20程度でもよく、さらに大きくてもよい。
【0032】
各気体流路19は、軸線方向Xの一端に流入口28が形成されており、軸線方向Xの他端に流出口29が形成されている。流入口28は、温調空気Aが気体流路19に流入する開口である。流出口29は、気体流路19から温調空気Aが流出する開口である。流入口28及び流出口29は、本実施の形態では、組み合わせられた上蓋11及び下蓋15の軸線方向Xの両端が、塞がれずに開口されていることで形成されている。したがって、流入口28と流出口29とは、本実施の形態では、気体流路19の長さの分だけ離れている。
【0033】
気流変換噴流エレメント20(以下、単に「エレメント20」という。)は、気体流路19に装着されるものである。
図1中では、上蓋11及び下蓋15によって形成される気体流路19の数だけ、エレメント20を配列して示している。エレメント20は、台座21と、変換器22とを有している。台座21は、複数の変換器22を載置するための部材である。台座21は、薄板状の部材が、1つの気体流路19における対向板16の大きさに加工されることで形成されている。台座21は、エレメント20が気体流路19に装着されたときに、対向板16の上に設置される。以下、台座21及び変換器22を含むエレメント20について、上蓋11、下蓋15、及び気体流路19との関係に言及しているときは、特に断りがある場合を除き、エレメント20が気体流路19に装着されている状態を前提とする。台座21は、樹脂や金属等の種々の材料を使用することができるが、本実施の形態では輻射面とはしない対向板16への熱伝達を抑制するため、断熱性に優れた材料を用いることが好ましい。
【0034】
変換器22は、気体流路19を軸線方向Xに流れてきた温調空気Aの方向を、表面板12に衝突する向きに変える部材であり、方向変換部材及び熱伝達促進部材に相当する。変換器22は、衝立23と、半筒24とを有している。衝立23は、薄板状の部材で構成されており、半筒24と協働して、気体流路19の軸線方向Xに直交する断面を概ね塞ぐものである。衝立23は、薄板状の部材の面の法線が台座21及び軸線方向Xに平行になるようにして、台座21に固定されている。衝立23は、上襞13及び下襞17のどちらか一方との間に、スリット状の隙間26(
図2(B)参照)が形成されるように設けられている。衝立23は、上襞13及び下襞17のどちらか一方との間に隙間26が形成されていない方に対して、並びに表面板12、及び台座21を介した対向板16に対しては、隙間が形成されないように全体が接している。衝立23は、本実施の形態では、表面板12及び上襞13に対して垂直に設置されている。衝立23は、概ね中央部に通気開口25が形成されている。通気開口25は、温調空気Aが通過する開口である。通気開口25は、台座21に達しているが、表面板12並びに上襞13及び下襞17(あるいはこのどちらかに隣接した隙間26)には達しないように形成されている。通気開口25は、典型的には、衝立23の外周の形状に対して相似かつ40~80%の大きさ、好ましくは50~70%の大きさに形成されている。衝立23は、典型的には、気体流路19の幅方向中央に形成されている。
【0035】
半筒24は、通気開口25を通過してきた温調空気Aを捕捉し、捕捉した温調空気Aを表面板12に衝突させるように導くものであり、捕捉部材に相当する。半筒24は、筒状部材を、その軸線方向で半割にした形状になっている。半筒24は、本実施の形態では円筒を半割にして形成されているが、軸線に直交する断面が四角形や六角形等の多角形あるいは楕円の筒を半割にしたものであってもよい。半筒24は、幅及び高さが、通気開口25の幅及び高さと同じ大きさに形成されている。半筒24は、軸線に平行な両端辺が、上襞13に平行となる通気開口25の両辺に合うようにして、衝立23に接続されている。また、半筒24は、その軸線が台座21に垂直になるようにして、台座21に載置されて固定されている。このような態様で半筒24が衝立23に取り付けられることで、変換器22が構成されている。
【0036】
エレメント20は、変換器22の複数が、台座21に、軸線方向Xに所定の間隔をあけて取り付けられることで構成されている。このとき、台座21に取り付けられた各変換器22は、衝立23に対して半筒24が出っ張る向きが揃うように配列されている。また、衝立23と上襞13又は下襞17との間に形成される隙間26が、軸線方向Xに見て、上襞13との間と下襞17との間とで交互に形成されるように、変換器22が台座21に取り付けられている。エレメント20は、各変換器22において衝立23が流入口28の側で半筒24が流出口29の側となるように、気体流路19に取り付けられている。換言すれば、気体流路19を流れる温調空気Aの流れ方向上流側に衝立23が位置し、下流側に半筒24が位置する向きで、エレメント20が配置されている。台座21に取り付けられた各変換器22の間の所定の間隔は、通気開口25を通過して半筒24に入ってから向きを変えて表面板12に衝突した温調空気Aが、軸線方向Xに流れて次の変換器22の通気開口25に円滑に入ることができる距離とするとよい。例えば、各変換器22の間の所定の間隔を、温調空気Aの過度な乱流を抑制する観点から、気体流路19の幅の3倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは5倍以上とするとよい。他方、温調空気Aから表面板12への熱伝達を促進させる観点から、各変換器22の間の所定の間隔を、気体流路19の幅の10倍以下、好ましくは8倍以下、より好ましくは6倍以下とするとよい。
【0037】
輻射パネル10は、上述した上蓋11及び下蓋15並びに及びエレメント20を、以下のように組み立てることで、構成することができる。まず、下蓋15を、下襞17が対向板16よりも上になるようにして、作業台(作業床)の上に載置する。次に、下襞17と下襞17との間の対向板16の上に、このスペース1箇所につき、2つのエレメント20を載置する。このとき、衝立23に対して半筒24が突き出る向きを揃えると共に、2つのエレメント20をそれぞれ近接する方の下襞17に寄せる。このように寄せることで、2つのエレメント20の間には、上襞13が入るスペースができる。1箇所につき2つのエレメント20の載置は、下蓋15全体に行う。なお、本実施の形態では、幅方向両端については、1つのエレメント20を下襞17に寄せて載置する。次に、エレメント20が載置された下蓋15に、上蓋11を被せる。このとき、2つのエレメント20の間のスペースの各所に上襞13を入れ、小突起14が下襞17に接するようにし、幅方向両端のエレメント20を上蓋11の幅方向両端の壁で覆うようにして、上蓋11を設置する。上述の要領で下蓋15、エレメント20、上蓋11を組み立てると、各上襞13と下襞17との間に1つの気体流路19が形成され、1つの気体流路19に1つのエレメント20が設けられることとなる。このようにして構成された輻射パネル10は、本実施の形態では、軸線方向Xの両端面が開口している。輻射パネル10のこの軸線方向X両端面の開口は、各変換器22の衝立23の側の端面が流入口28となり、半筒24の側の端面が流出口29になる。なお、輻射パネル10を各部材の材料は、軽量化を図る観点から、金属の場合はアルミニウム板や鋼板、伝熱に寄与しない部分は樹脂を用いた、複合としてもよい。
【0038】
次に
図3(A)を参照して、これまで説明した輻射パネル10を備える輻射冷暖房システム100を説明する。
図3(A)は、輻射冷暖房システム100の模式的系統図である。輻射冷暖房システム100は、輻射パネル10のほか、分配ダクト31と、空調機40とを備えている。また、本実施の形態の輻射冷暖房システム100は、収集ダクト32も備えている。輻射冷暖房システム100は、建物内や乗物内などに設置することができる。以下の説明では、輻射冷暖房システム100が工場(建物)内に適用される場合を想定して説明する。
【0039】
分配ダクト31は、輻射パネル10の各気体流路19に、温調空気Aを分配する部材である。分配ダクト31は、複数の気体流路19が並ぶ方向(幅方向)に細長い筒状に形成されている。分配ダクト31は、長手方向に直交する断面の形状が、典型的には矩形に形成されているが、円形や楕円形、多角形であってもよい。分配ダクト31は、長手方向の大きさ(筒状の側面の大きさ)が、輻射パネル10の流入口28全体を包含する大きさになっており、当該筒状の側面に、輻射パネル10の流入口28が接続されている。分配ダクト31と輻射パネル10とは、両者の接続部分において連絡しており、温調空気Aが分配ダクト31から輻射パネル10内に流入することができるようになっている。分配ダクト31は、細長い筒状の一端に、温調空気Aを導入する導入口38が形成されている。分配ダクト31は、本実施の形態では、輻射パネル10との連絡口及び導入口38以外の部分に開口が形成されておらず、導入口38から導入した温調空気Aのすべてを輻射パネル10の流入口28へ導くことができるようになっている。
【0040】
収集ダクト32は、各気体流路19を流れた温調空気Aを収集する部材である。収集ダクト32は、典型的には、分配ダクト31と同じ大きさ及び形状を有している。しかしながら、温調空気Aを収集する機能を果たすことができれば、分配ダクト31と異なる形状や大きさであってもよい。収集ダクト32は、長手方向の大きさ(筒状の側面の大きさ)が、輻射パネル10の流出口29全体を包含する大きさになっており、当該筒状の側面に、流出口29が接続されている。収集ダクト32と輻射パネル10とは、両者の接続部分において連絡しており、温調空気Aが輻射パネル10内から収集ダクト32に流入することができるようになっている。収集ダクト32は、細長い筒状の一端に、温調空気Aを排出する排出口39が形成されている。本実施の形態では、分配ダクト31の導入口38から最も遠い気体流路19に対して、収集ダクト32の排出口39が最も近くなるように、収集ダクト32の長手方向端部に排出口39が形成されている。収集ダクト32は、本実施の形態では、輻射パネル10との連絡口及び排出口39以外の部分に開口が形成されておらず、輻射パネル10から収集ダクト32へ流出した温調空気Aのすべてを排出口39へ導くことができるようになっている。
【0041】
空調機40は、温調空気Aの温度を調節する機器であり、温度調節機器に相当する。空調機40は、コイル41と、ファン42とを有している。コイル41は、空調機40に導入された温調空気Aを冷却又は加熱するものである。コイル41は、熱源機(不図示)で温度が調節された冷水又は温水を内部に流すチューブを有している。コイル41のチューブには、多数のフィンが設けられている。コイル41は、多数のフィンの間に温調空気Aを通過させて、冷水又は温水と温調空気Aとの間で熱交換させることにより、冷水又は温水の熱を温調空気Aに伝達させるように構成されている。ファン42は、コイル41で温度が調節された温調空気Aを輻射パネル10に向けて圧送するものである。なお、空調機40は、温調空気Aの温度を調節することができれば足り、温調空気Aの湿度を調節するための構成は有しなくてよい。しかしながら、空調機40から供給された温調空気Aに含まれる水分が結露するおそれがある場合は、結露を発生させないようにするため、空調機40が温調空気Aの湿度を調節するための構成を有することが好ましい。空調機40の吐出側と分配ダクト31の導入口38とは、空気往管33で接続されている。空調機40の吸い込み側と収集ダクト32とは、空気還管34で接続されている。空気往管33が接続された分配ダクト31の端部(導入口38)と、空気還管34が接続された収集ダクト32の端部(排出口39)とは、全体として矩形に形成された輻射パネル10の対角に位置するように構成されている。
【0042】
引き続き
図1~
図3を参照して、輻射冷暖房システム100の作用を説明する。輻射パネル10の作用は、輻射冷暖房システム100の作用の一環として説明する。輻射冷暖房システム100を作動させる際、まず、空調機40を起動する。すると、温調空気Aが空調機40に導入される。空調機40に導入された温調空気Aは、コイル41を通過する際、冷房時は冷やされ、暖房時は温められる。コイル41を通過して温度が調節された温調空気Aは、ファン42によって、空調機40から吐出される。空調機40から吐出された温調空気Aは、空気往管33を流れた後に分配ダクト31に流入する。分配ダクト31に流入した温調空気Aは、空気往管33が接続された側とは反対側の端部に向けて流れる。分配ダクト31内を流れる温調空気Aは、幅方向に配列された気体流路19に出会う度に、気体流路19に流入する。
【0043】
分配ダクト31から各気体流路19に流入した温調空気Aは、収集ダクト32が接続された側の端部に向けて流れる。この、各気体流路19を、分配ダクト31から収集ダクト32へ向かう方向を「流れ方向F」ということとする。流れ方向Fは、軸線方向Xに平行である。温調空気Aは、気体流路19を流れ方向Fに流れる際、表面板12や上襞13及び下襞17に接する部分を介して、表面板12や上襞13及び下襞17に、温調空気Aが保有している冷熱又は温熱を伝達する。その後、各気体流路19を流れ方向Fに流れる温調空気Aは、変換器22に到達する。変換器22に到達した温調空気Aは、大部分が衝立23又は半筒24にせき止められ、残りのわずかな分が衝立23と上襞13又は下襞17との間の隙間26に入り込む。衝立23にせき止められた温調空気Aは、通気開口25を通過して半筒24内に流れ込むか、隙間26に入り込む。衝立23にせき止められずに又は衝立23にせき止められてから隙間26に入り込んだ温調空気Aは、次の変換器22に向かって、引き続き流れ方向Fに流れる。他方、半筒24に入り込んだ温調空気Aは、表面板12の方に向きを変えて半筒24の軸線に沿って流れ、表面板12に衝突する。表面板12に衝突した温調空気Aは、再び流れ方向Fに向きを変え、次の変換器22に向かって流れる。これを、各気体流路19につき、所定の間隔で配列されている変換器22に到達する度に行った後、収集ダクト32に至る。温調空気Aは、軸線方向X沿って流れながらも、各変換器22の部分で軸線方向Xに対して交差する方向に局所的に流れの向きを変えるが、各気体流路19を全体として見れば、流れ方向Fに流れるといえる。
【0044】
温調空気Aは、各変換器22で流れの向きを変えて表面板12に衝突することによって、表面板12にへばり付いた静止空気(速度境界層)を除去することができ、温調空気Aから表面板12への熱伝達を促進させることができる。仮に、変換器22を設けずに単に気体流路19に温調空気Aを流した場合は、表面板12、上襞13、及び下襞17のそれぞれと温調空気Aとの境界面に存在する静止空気(速度境界層)を除去することができない。静止空気(速度境界層)は、グラスウール断熱材以上の断熱性能を有するため、単に気体流路19に温調空気Aを流しただけで、静止空気(速度境界層)を除去することができないと、冷暖房に必要なエネルギーを連続供給するのが困難となる。この点、本実施の形態に係る輻射パネル10では、温調空気Aを、変換器22で流れの向きを変えて表面板12に衝突させているので、静止空気(速度境界層)を除去することができ、温調空気Aから表面板12へ効果的に冷熱又は温熱を伝えることができる。表面板12は、温調空気Aからの熱伝達、並びに上襞13及び下襞17からの熱伝導によって、冷房時は冷やされ、暖房時は温められる。
【0045】
温調空気Aからの熱伝達等により冷やされ又は温められた表面板12は、表面から冷熱又は温熱を輻射して、表面板12に面した空間の冷房又は暖房を行う。なお、冷房時は、冷房対象空間に存在する物体の熱が表面板12に吸収されることで納涼感を得られるのであるが、本明細書では、便宜上、表面板12から冷熱が輻射されると表現している。輻射冷暖房システム100では、表面板12を冷却又は加熱する熱媒体が温調空気Aであるので、冷水又は温水を熱媒体とする場合に比べて、結露の発生を抑制することができ、漏水を回避することができる。仮に、熱媒体を冷水として輻射冷房を行う場合、輻射面の結露を防止するために冷水の温度を23℃以上(露点より高い温度)とすることが考えられるが、23℃一定の冷水を流した場合、負荷の変動があったときに迅速に追従することが困難となる。この点、本実施の形態に係る輻射冷暖房システム100は、熱媒体が温調空気Aであるので、負荷変動時の追従性に優れている。
【0046】
各気体流路19を流れて収集ダクト32に流入した温調空気Aは、空気還管34に向けて収集ダクト32を流れる。このとき、空気還管34が接続された収集ダクト32の端部は、空気往管33が接続された分配ダクト31の端部に対して対角に位置している。このため、各気体流路19を流れた温調空気Aが空気往管33から空気還管34まで移動した距離が概ね等しくなり(リバースレタン方式)、輻射パネル10の表面板12の全体をムラなく冷却又は加熱することができる。収集ダクト32を流れて空気還管34に流入した温調空気Aは、空気還管34を流れて空調機40に導入される。空調機40に導入された温調空気Aは、再び温度調節された後に空調機40から吐出され、以降、上述の作用を繰り返す。
【0047】
なお、上述の輻射冷暖房システム100において、収集ダクト32及び空気還管34を省略して、流出口29から流出した温調空気Aを周囲環境に放出し、周囲環境の空気を空調機40に導入することとしてもよい。このとき、分配ダクト31には、
図3(B)に示すように、内部に中仕切板37を設けるとよい。中仕切板37は、分配ダクト31の長手方向に沿って延びており、分配ダクト31の内部空間を、流入口28に連絡する側とその反対側との2つに概ね区分けする部材である。ここで「概ね区分けする」といったのは、中仕切板37で区分けされた2つの空間が、分配ダクト31の長手方向の両端において連絡しており、完全に区分けされている訳ではないからである。分配ダクト31は、長手方向の両端で相互に連絡する2つの空間が、中仕切板37によって形成されていることで、流入口28に連絡しない側の空間がバイパス流路として機能する。このため、各気体流路19に流入する温調空気Aの圧力に差が生じること(例えば導入口38から遠い気体流路19ほど流入する温調空気Aの圧力が低くなること)を抑制することができる。
【0048】
以上で説明したように、本実施の形態に係る輻射パネル10によれば、変換器22において、流れ方向Fに流れる温調空気Aの向きを変えて表面板12に衝突させている。これにより、表面板12付近の静止空気を除去することができ、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を、表面板12に効率よく伝達することができる。また、本実施の形態に係る輻射冷暖房システム100によれば、上述の輻射パネル10を備えるので、表面板12から熱輻射が行われることで、冷暖房対象空間を効率よく冷房又は暖房することができる。
【0049】
上述の輻射冷暖房システム100の説明では、輻射パネル10を1つ備える構成を例示しているが、冷暖房対象空間の大きさに応じて、輻射パネル10を複数配置することとしてもよい。輻射パネル10を複数配置した場合、空調機40から供給される温調空気Aを各輻射パネル10に並列に供給するように空気往管33を設置するとよい。
【0050】
上述の輻射冷暖房システム100の説明では、工場(建物)内に適用(設置)される場合を想定していたが、乗り物(自動車や列車)に適用することもできる。
図4(A)は、変形例に係る輻射冷暖房システム200の概略構成を示す部分斜視図である。
図4(A)は、ハイルーフ車に適用した例の輻射冷暖房システム200を示している。輻射冷暖房システム200は、輻射パネル50、60が、それぞれ、乗り物の床及び天井に配置されている。なお、
図4(A)に示す例では、温調空気Aの温度を調節する温度調節機器の図示を省略しているが、温度調節機器として、乗り物に一般に搭載されているエアコン(自動車の場合はカーエアコン)を用いればよい。つまり、輻射冷暖房システム200は、乗り物に搭載されているエアコン(不図示)で温度が調節された温調空気Aが、ダクト(不図示)を介して分配ダクト51、61に導入され、輻射パネル50、60に流入するように構成されている。このように、輻射冷暖房システム200は、輻射パネル50、60と、分配ダクト51と、エアコン(不図示)とを備えている。また、本変形例に係る輻射冷暖房システム200は、側部収集ダクト52及び上部収集ダクト62も備えている。なお、
図4(A)中では把握しにくい上部収集ダクト62を、
図4(B)に示している。
【0051】
輻射パネル50、60は、概ね輻射パネル10(
図1参照)と同様の構成であり、
図4には現れていない部品もあるが、
図1に示されている、上蓋11及び下蓋15で構成された流路形成部材と、エレメント20とを備えている。したがって、以下の輻射パネル50、60の説明において、輻射パネル10(
図1参照)と共通するが
図4(A)に示されていない構成に言及しているときは、
図1、
図2(A)、
図2(B)を参照することとする。輻射パネル50、60は、以下の点で輻射パネル10(
図1参照)と相違している。輻射パネル50、60は、各気体流路19への温調空気Aの流入口28が、気体流路19の長手方向の中央部分に設けられており、気体流路19の長手方向の両端が共に流出口29となっている。
【0052】
図5(A)に、流入口28まわりの概略構成を示す。流入口28は、下蓋15の対向板16に形成されている。流入口28が形成されている対向板16の部分には、エレメント20が設けられていない。輻射パネル50、60に設けられた1つのエレメント20は、流入口28の近傍から流出口29までの長さに形成されており、1つの気体流路19の約半分の長さになっている。輻射パネル50、60には、1つの気体流路19につき2つのエレメント20が配置されている。1つの気体流路19に配置された2つのエレメント20は、それぞれ、各変換器22において衝立23が流入口28の側で半筒24が流出口29の側となっている。つまり、1つの気体流路19に配置された2つのエレメント20は、向きが逆になっており、流入口28を挟んで相互のエレメント20の通気開口25が向かい合っている。輻射パネル50の下蓋15の外側には、流入口28を覆うように分配ダクト51が取り付けられている。
【0053】
図5(B)に、例示の分配ダクト51の斜視図を示す。分配ダクト51は、複数の気体流路19が並ぶ方向(幅方向)に細長い筒状に形成されている。本変形例における分配ダクト51は、その長手方向に直交する断面の形状が矩形に形成されている。分配ダクト51は、典型的には、細長い筒状の一端に導入口58が形成されており、他端は閉塞しているが、両端が導入口58になっていてもよい。分配ダクト51は、筒状の側面の4つのうちの1つに、輻射パネル50の流入口28と連絡する連絡口55が形成されている。連絡口55は、各気体流路19に形成されたすべての流入口28を包含するが、下蓋15の対向板16に覆われる大きさに形成されている。分配ダクト51の内部には、中仕切板57が設けられている。中仕切板57は、分配ダクト51の長手方向に沿って延びており、連絡口55が現れる面及びその奥の空間を概ね二等分している。
【0054】
図4(A)に示すように、乗り物の床に配置される輻射パネル50は表面板12が上向きになるように、乗り物の天井に配置される輻射パネル60は表面板12が下向になるように、それぞれ配置されている。なお、両者を区別する便宜のため、床に配置されたものを輻射パネル50といい、天井に配置されたものを輻射パネル60といっているが、両者は同じ構成となっている。床に配置された輻射パネル50には、分配ダクト51が、輻射パネル50の下方に設けられている。輻射パネル50の流出口29が設けられた両端には、側部収集ダクト52が設けられている。側部収集ダクト52は、輻射パネル50の各気体流路19を流れた温調空気Aを収集する部材である。側部収集ダクト52は、乗り物の側面に収容できるように、内部に空間が形成された厚板状に構成されている。側部収集ダクト52は、典型的には、乗り物の側面窓の下方に、厚板状の面の法線が水平になるような向きで配置されている。側部収集ダクト52の内部は、乗り物の構造体を形成している環状骨格59の内部の空洞に連絡している。環状骨格59は、乗り物のボディの剛性を高めるために、床、側面、及び天井の骨格を繋いで一体化したもので、内部を空洞にして軽量化が図られている。環状骨格59は、典型的には、乗り物の前後方向に所定の間隔をあけて、複数が設けられている。側部収集ダクト52は、輻射パネル50との連絡口及び環状骨格59との連絡口以外の部分に開口が形成されていない。輻射パネル50から流出した温調空気Aは、側部収集ダクト52に集められた後、環状骨格59の内部の空洞を流れるように構成されている。
【0055】
天井に配置された輻射パネル60には、分配ダクト61が、輻射パネル60の上方に設けられている。ここで、分配ダクト61は、分配ダクト51と概ね同じ構成であるが、導入口68が、細長い筒状の端部ではなく、筒状の側面に形成されている点が、分配ダクト51と異なっている。分配ダクト61の筒状の両端は閉塞している。分配ダクト61は、分配ダクト51の連絡口55と同様の連絡口55が形成されている。分配ダクト61の導入口68は、連絡口55が形成された側面に隣接する両隣の各側面に、複数が形成されている。各側面に形成された導入口68の数は、環状骨格59の数に対応している。分配ダクト61の各導入口68には環状骨格59が接続されており、側部収集ダクト52内の温調空気Aを、環状骨格59を介して、分配ダクト61に導入することができるように構成されている。つまり、輻射冷暖房システム200では、乗り物の構造体を形成している環状骨格59の内部の空洞を、温調空気Aの流路として用いている。
【0056】
輻射パネル60の流出口29が設けられた両端には、上部収集ダクト62が設けられている。上部収集ダクト62は、輻射パネル60の各気体流路19を流れた温調空気Aを収集する部材である。上部収集ダクト62は、細長い筒状に形成されており、環状骨格59の曲部の内側に配置されている。上部収集ダクト62は、細長い筒状の軸線に直交する断面形状が、本変形例では矩形に形成されているが、矩形以外の多角形や円形あるいは楕円形であってもよい。上部収集ダクト62は、筒状の側面の1つの面に、輻射パネル60の流出口29が接続されている。上部収集ダクト62は、
図4(B)に示すように、筒状の側面のうちの下方の面(車内空間が存在する方の面)に、排出口69が形成されている。排出口39は、上部収集ダクト62の長手方向に沿って延び、スリット状に細長く形成されている。上部収集ダクト62は、筒状の両端が閉塞しており、輻射パネル60との連絡口及び排出口69以外の部分に開口が形成されていない。上部収集ダクト62の内部には、中仕切板67が設けられている。中仕切板67は、上部収集ダクト62の長手方向に沿って延びている。中仕切板67は、上部収集ダクト62の内部の空間を、主として輻射パネル60との連絡口に通じる空間と、主として排出口69に通じる空間とに区分けする部材である。中仕切板67は、長手方向の両端部において上部収集ダクト62の閉塞端面に到達していない。上部収集ダクト62は、輻射パネル60から流入した温調空気Aが、中仕切板67の両端の外側を通って、排出口69が形成された空間に入ることができるように構成されている。
【0057】
上述のように構成された輻射冷暖房システム200では、エアコン(不図示)で温度が調節された温調空気Aが、ダクト(不図示)を介して分配ダクト51に導入される。分配ダクト51に導入された温調空気Aは、分配ダクト51の連絡口55及び輻射パネル50の流入口28を介して、輻射パネル50の各気体流路19に流入する。各気体流路19に流入した温調空気Aは、両端の流出口29に向かって流れ方向Fに流れる。各気体流路19を流れる温調空気Aは、流入口28から流出口29に至る間に、輻射パネル10(
図1参照)と同様の要領で、表面板12に冷熱又は温熱を伝達する。このとき、各変換器22で流れの向きを変えて表面板12に衝突することにより、温調空気Aから表面板12への熱伝達を促進させる。温調空気Aからの熱伝達により冷やされ又は温められた輻射パネル50の表面板12からは、冷熱又は温熱が輻射され、乗り物の床面から車内の冷房又は暖房が行われる。輻射パネル50の流出口29に到達した温調空気Aは、側部収集ダクト52に流出する。側部収集ダクト52に集められた温調空気Aは、環状骨格59の内部空洞を通って分配ダクト61に導入される。
【0058】
分配ダクト61に導入された温調空気Aは、分配ダクト61の連絡口及び輻射パネル60の流入口28を介して、輻射パネル60の各気体流路19に流入する。輻射パネル60の各気体流路19に流入した温調空気Aは、輻射パネル50と同様の要領で、表面板12に冷熱又は温熱を伝達する。温調空気Aからの熱伝達により冷やされ又は温められた輻射パネル60の表面板12からは、冷熱又は温熱が輻射され、乗り物の天井面から車内の冷房又は暖房が行われる。輻射パネル60の流出口29に到達した温調空気Aは、上部収集ダクト62に流出する。上部収集ダクト62に入った温調空気Aは、中仕切板67の両端を通って隣接する空間に移動し、排出口69から排出される。排出口39から排出された温調空気Aは、乗り物の車内に供給され、車内の冷暖房に用いられる。
【0059】
なお、以上の説明では、輻射パネル10、50、60における変換器22(捕捉部材)が衝立23と半筒24とを有しているとしたが、以下のように構成してもよい。つまり、捕捉部材として、変換器22から、半筒24を取り除き、衝立23に通気開口25を形成せずに衝立23を1枚の平板状部材とする。そして、この平板状部材を、表面板12の側の位置を対向板16の側の位置よりも流れ方向Fの下流側になるように、斜めに配置する。斜めに配置した平板状部材と表面板12との間には、温調空気Aが通過することのできる隙間を形成する。このように構成した捕捉部材では、気体流路19を流れ方向Fに流れる温調空気Aが、捕捉部材に到達すると、平板状部材の面に沿って流れ、表面板12に向かう方向に流れの向きを変える。このように、捕捉部材を、平板状部材を斜めに配置した構成として、温調空気Aを表面板12に衝突するように導くこととしてもよい。なお、このように捕捉部材を構成した場合は、表面板12に衝突した温調空気Aが表面板12に沿って流れ続けることを回避するため、2つの捕捉部材の間に、温調空気Aを表面板12から離れた位置に導く邪魔板を設けるとよい。
【0060】
次に
図6並びに
図7(A)及び
図7(B)を参照して、本開示の第1の変形例に係る輻射パネル70を説明する。
図6は、輻射パネル70の分解斜視図である。
図7(A)は輻射パネル70が備える漸縮小急速気流エレメント71(以下、単に「エレメント71」という。)の部分斜視図、
図7(B)は輻射パネル70の部分背面図である。輻射パネル70は、輻射パネル10(
図1参照)と概ね同様の構成であるが、輻射パネル70のエレメント71の構成が、輻射パネル10(
図1参照)のエレメント20(
図1参照)と異なっている。エレメント71は、エレメント20(
図1参照)と比較して、変換器22(
図1参照)に代えて、流路縮小板72が設けられている点が主として異なっている。エレメント71は、台座21と、流路縮小板72とを有している。台座21は、エレメント20(
図1参照)が有するものと同様である。流路縮小板72は、矩形の薄板状部材が折り曲げられることにより、2つの矩形の薄板状部材73、74が、それぞれの面同士が所定の角度で連なった構成となっている。所定の角度は、好ましくは105度~165度、より好ましくは120度~150度、典型的には135度である。流路縮小板72の折り曲げ線は、矩形の薄板状部材の一対の辺に平行になっている。流路縮小板72は、折り曲げ線が、台座21の面に垂直になるようにして、台座21の面に固定されている。流路縮小板72は、高さ(折り曲げ線の長さに相当)が、気体流路19の高さと同じに形成されている。また、流路縮小板72は、典型的には、連なった2つの薄板状部材のうちの一方のものの法線が軸線方向Xに平行となり、他方のものは一方のものよりも流出口29の側に位置するように、配置されている。以下、説明の便宜上、流路縮小板72の2つの薄板状部材のうち、法線が軸線方向Xに平行となる部分を衝突部73といい、衝突部73よりも流出口29の側にある部分を傾斜部74ということとする。また、上襞13及び下襞17を総称して「側面板」ということもある。流路縮小板72は、表面板12に接触して、気体流路19の上下を塞いでいるが、両側面板との間(上襞13との間及び下襞17との間)には隙間が形成されている。以下、衝突部73と側面板との間の隙間を衝突隙間75といい、傾斜部74と側面板との間の隙間を傾斜隙間76ということとする。衝突隙間75及び傾斜隙間76のそれぞれの幅は、通過する温調空気Aの流速が概ね3m/s~5m/sとなるようにするとよい。典型的には、衝突隙間75よりも傾斜隙間76の方が幅広に形成されているが、両者が同じ幅であってもよい。軸線方向Xに所定の間隔で配置された複数の流路縮小板72は、衝突部73及び傾斜部74の幅方向における配置が、交互に入れ替わるように設けられている。換言すれば、上襞13に沿って軸線方向Xに進んで見たときに、衝突隙間75と傾斜隙間76とが交互に現れるように、流路縮小板72が配置されている。輻射パネル70の上記以外の構成は、上蓋11及び下蓋15を含めて、輻射パネル10(
図1参照)と同様である。
【0061】
上述のように構成された輻射パネル70は、温調空気Aが流入口28から流入すると、流出口29に向かって気体流路19内を流れ方向Fに流れる。温調空気Aは、気体流路19を流れ方向Fに流れる際、表面板12や側面板に接する部分を介して、表面板12や側面板に、温調空気Aが保有している冷熱又は温熱を伝達する。その後、各気体流路19を流れ方向Fに流れる温調空気Aは、流路縮小板72に到達する。流路縮小板72に到達した温調空気Aは、大部分がせき止められた後、衝突隙間75又は傾斜隙間76に入り込むように流れの向きが変えられる。このように温調空気Aの流れの向きを変える流路縮小板72は、方向変換部材に相当する。衝突隙間75を通過する温調空気A及び傾斜隙間76を通過する温調空気Aは、流速が概ね3m/s~5m/sとなる。これにより、側面板にへばり付いた静止空気(速度境界層)を除去することができ、温調空気Aから側面板への熱伝達を促進させることができる。このため、流路縮小板72は熱伝達促進部材に相当する。この伝熱促進を、各気体流路19につき、所定の間隔で配列されている流路縮小板72に到達する度に行った後、温調空気Aは流出口29から流出する。温調空気Aから側面板(上襞13、下襞17)に伝達された冷熱又は温熱は、上襞13とは一体に形成されていて、下襞17とは接触している表面板12に伝わり、表面板12から冷熱又は温熱が輻射されて、対象空間の冷暖房が行われる。このような輻射パネル70は、輻射冷暖房システム100(
図3参照)において、輻射パネル10に代えて適用することができる。また、輻射パネル10(
図1参照)を輻射パネル50、60(
図4、
図5(A)参照)に変形したのと同じ要領で輻射パネル70を変形して、輻射冷暖房システム200(
図4参照)において、輻射パネル50、60に代えて適用することができる。
【0062】
次に
図8(A)及び
図8(B)を参照して、本開示の第2の変形例に係る輻射パネル80を説明する。
図8(A)は、輻射パネル80の分解斜視図である。
図8(B)は、輻射パネル80の部分背面図である。輻射パネル80は、上蓋11と、下蓋15と、採熱フィンエレメント81(以下、単に「エレメント81」という。)とを備えている。輻射パネル80における上蓋11及び下蓋15は、それぞれの構成は輻射パネル10(
図1参照)のものと同じであるが、組み合わせ方が輻射パネル10(
図1参照)とは異なっている。輻射パネル80では、上襞13と下襞17とが面で接する態様で上蓋11と下蓋15とが組み合わせられている。上襞13及び下襞17が接してひとまとまりになったものを側面板18ということとする。輻射パネル80は、表面板12と対向板16との間に、側面板18によって区分けされた空間が複数形成されることとなる。この、表面板12と、対向板16と、両側面板18とに囲まれた空間は、温調空気Aが流れる気体流路89となる。輻射パネル80の気体流路89は、輻射パネル10の気体流路19(
図1参照)に比べて、幅が約2倍になる。各気体流路89には、幅方向中央の表面板12に、小突起14が現れている。輻射パネル80は、各気体流路89の幅が、輻射パネル10(
図1参照)のものと異なっているが、輻射パネル10(
図1参照)の構成に準じて流入口28及び流出口29が形成されている。各気体流路89には、エレメント81が設けられている。
【0063】
図9(A)にエレメント81の分解斜視図を示す。
図9(B)にエレメント81の部分斜視図を示す。エレメント81は、概観すると、軸線方向Xに細長い筒状に形成された部材である。エレメント81の筒状の部分の、軸線方向Xに直交する断面形状は、本実施の形態では菱形に形成されている。エレメント81は、筒状を軸線方向Xに沿って二等分した概略形状のエレメント部材83を、2つ組み合わせて形成されている。各エレメント部材83は、2つの平板85と、2つの端部88とを有している。2つの平板85は、断面菱形の隣接する2つの辺に相当する部材である。端部88は、各平板85の、隣接する平板85が接続された辺に対向する辺に接続されている。2つの端部88は、同一平面上に延びている。2つの平板85及び2つの端部88は、典型的には、1つの薄板状部材が折り曲げられて形成されており、一体に構成されている。エレメント部材83は、平板85同士あるいは平板85と端部88との境界となる折り曲げ線が、軸線方向Xに平行に延びるようになる。平板85の表面には、採熱フィン86が設けられている。採熱フィン86は、平板85の面を切り起こすことによって形成されている。採熱フィン86の形成方法を例示すると、まず、平板85の表面を矩形に罫書く。このとき、矩形における2組の対向する一対の辺のうち、一方の一対の辺が、平板85同士の折り曲げ線に平行になり、他方の一対の辺が当該折り曲げ線に直交するように罫書く。2組の対向する辺の長さは、折り曲げ線に平行な辺よりも折り曲げ線に直交する辺の方が長くなるようにするとよく、典型的には折り曲げ線に直交する辺の長さが平行な辺の2倍の長さとするとよい。しかしながら、折り曲げ線に直交する辺よりも折り曲げ線に平行な辺の方が長くてもよい。次に、折り曲げ線に直交する一対の辺を切断する。さらに、切断した一対の辺の中点同士を結んだ直線で切断する。その後、切断された3辺と折り曲げ線に平行な辺とに囲まれた小片を、折り曲げ線に平行な辺で折り曲げて、平板85の面の外側に突出するように起こす。この突出した小片が、採熱フィン86となる。採熱フィン86は、典型的には、平板85の面に直交するように起こされるが、直角以外の角度であってもよい。採熱フィン86は、軸線方向Xに沿って延びることとなる。採熱フィン86は、軸線方向Xに間隔をあけて複数が設けられている。軸線方向Xにおける採熱フィン86の間隔は、複数の採熱フィン86にまたがって速度境界層が形成されてしまうことを回避することができる程度は離れたうえで、極力短くするとよい。エレメント81は、上述のエレメント部材83の2つが、両方の端部88同士が合わせられることで構成されている。エレメント81は、2つのエレメント部材83の端部88同士が合わせられた2箇所のうち、一方の端部88同士はスポット溶接等により直接接合されている。もう一方の端部88同士は、上蓋11の小突起14を挟み込んでいる。端部88に挟み込まれた小突起14は、端部88内に収まっている。小突起14を挟み込んでいる方とは反対側の、直接接合された方の端部88は、対向板16に接している。
【0064】
上述のように構成された輻射パネル80は、温調空気Aが流入口28から流入すると、流出口29に向かって気体流路89内を流れ方向Fに流れる。温調空気Aは、気体流路89を流れ方向Fに流れる際、表面板12や側面板18に接する部分を介して、表面板12や側面板18に、温調空気Aが保有している冷熱又は温熱を伝達する。また、温調空気Aは、エレメント81の平板85に接する部分を介して、平板85に、温調空気Aが保有している冷熱又は温熱を伝達する。このとき、平板85には複数の採熱フィン86が設けられているので、採熱フィン86を設けていない場合よりも多くの冷熱又は温熱を温調空気Aから平板85へ伝達することができる。このように、エレメント81は採熱伝達部材に相当する。なお、採熱フィン86は、軸線方向Xの長さが長すぎないので、採熱フィン86の表面に速度境界層が形成されてしまうことを回避することができる。このように、採熱フィン86の軸線方向Xの長さは、速度境界層が形成されることを回避又は抑制することができる長さとするとよい。温調空気Aから平板85に伝達された熱は、小突起14を介して表面板12に伝達される。このように、エレメント81によって表面板12への熱伝達が促進されるため、エレメント81は熱伝達促進部材に相当する。また、温調空気Aから側面板18に伝達された熱も、側面板18に接続している表面板12に伝達される。表面板12に伝達された冷熱又は温熱は、表面板12から輻射される。これにより、対象空間の冷暖房が行われる。このような輻射パネル80は、輻射冷暖房システム100(
図3参照)において、輻射パネル10に代えて適用することができる。また、輻射パネル80を変形して、輻射冷暖房システム200(
図4参照)において、輻射パネル50、60に代えて適用することができる。このときの輻射パネル80の変形は、下蓋15については、輻射パネル10(
図1参照)を輻射パネル50、60(
図4、
図5(A)参照)に変形したのと同じ要領で行えばよい。エレメント81については、対向板16に形成した流入口28に対応する位置の平板85に開口を形成してもよく、変形しなくてもよい。
【0065】
次に
図10(A)~
図10(C)を参照して、本開示の第3の変形例に係る輻射パネル90を説明する。
図10(A)は、輻射パネル90の分解斜視図である。
図10(B)は、輻射パネル90の部分背面図である。
図10(C)は、案内羽根採熱エレメント95(以下、単に「エレメント95」という。)の部分斜視図である。輻射パネル90は、上蓋91と、下蓋15と、エレメント95とを備えている。輻射パネル90の上蓋91は、小突起94の高さが、上蓋11の小突起14(
図8(B)参照)よりも高くなっている点で、輻射パネル80の上蓋11(
図8(B)参照)と異なっている。下蓋15は、輻射パネル80(
図8(B)参照)のものと同じである。輻射パネル90は、上蓋91と下蓋15との組み合わせ方が、輻射パネル80(
図8(B)参照)と同様に、上襞13と下襞17とが面で接する態様となっている。これにより、輻射パネル90においても、上襞13及び下襞17が接してひとまとまりになった側面板18が形成されている。エレメント95は、平板85に、採熱フィン86(
図9(B)参照)に代えて、案内羽根98が設けられている点が、エレメント81(
図9(A)参照)と異なっている。案内羽根98は、採熱フィン86(
図9(B)参照)と比較して、平板85の面を切り起こすことで形成されている点は同じであるが、突出した小片が平板85に接続している辺が異なっている。案内羽根98は、矩形に罫書いた各辺の、平板85同士の折り曲げ線に直交する一対の辺のうち、流れ方向F下流側(流出口29の側)の辺が平板85に接続されている。案内羽根98は、1つの矩形の罫書きから1つの小片が切り起こされるようになっている。案内羽根98が切り起こされて形成された平板85の開口は、温調空気Aが通過可能な通過孔99となる。通過孔99は、正方形であってもよく、軸線方向Xに沿う辺の長さがこれに直交する長さよりも長くてもよく(例えば、1.1倍、1.2倍、1.3倍等)、軸線方向Xに沿う辺の長さがこれに直交する長さよりも短くてもよい(例えば、0.9倍、0.8倍等)。エレメント95は、直接接合されている方の端部88が対向板16に接しており、もう一方の端部88同士は、上蓋91の小突起94を挟み込んでいる。このとき、小突起94は、エレメント95の4つの平板85が形成する空間を二等分するように延びて、直接接合されている方の端部88に接触している。ここで、小突起94は、表面板12と一体に形成されており(表面板12に接続されており)、垂れ壁に相当する。1つのエレメント95は、4つの平板85が形成する空間が、小突起94によって二等分されることによって、小突起94と2つの平板85とに囲まれた空間96が2つ形成されることになる。平板85は、小突起94との間に空間96を形成する部材であり、空間形成部材に相当する。
【0066】
上述のように構成された輻射パネル90は、温調空気Aが流入口28から流入すると、流出口29に向かって流れ方向Fに流れる。温調空気Aは、流れ方向Fに流れる際、表面板12や側面板18に接する部分を介して、表面板12や側面板18に、温調空気Aが保有している冷熱又は温熱を伝達する。また、温調空気Aは、エレメント95の平板85に接する部分を介して、平板85に、温調空気Aが保有している冷熱又は温熱を伝達する。さらに、温調空気Aは、エレメント95の平板85の近傍を流れているものが、案内羽根98に当たった後、通過孔99を介して空間96内に入り込む。空間96内に入り込んだ温調空気Aは、小突起94に接触して、保有している冷熱又は温熱を小突起94に伝達する。なお、案内羽根98は、採熱フィンとしての機能を果たし得るため、温調空気Aから平板85への熱伝達に寄与し得る。温調空気Aから平板85に伝達された熱は、小突起94を介して表面板12に伝達される。また、空間96内に入った温調空気Aから小突起94に伝達された熱も、表面板12に伝達される。このように、エレメント95は採熱伝達部材及び熱伝達促進部材に相当する。さらに、温調空気Aから側面板18に伝達された熱も、側面板18に接続している表面板12に伝達される。表面板12に伝達された冷熱又は温熱は、表面板12から輻射される。これにより、対象空間の冷暖房が行われる。このような輻射パネル90は、輻射冷暖房システム100(
図3参照)において、輻射パネル10に代えて適用することができる。また、輻射パネル10(
図1参照)を輻射パネル80(
図8(B)参照)に変形したのと同じ要領で輻射パネル90を変形して、輻射冷暖房システム200(
図4参照)において、輻射パネル50、60に代えて適用することができる。
【0067】
以上の説明では、上蓋11、91及び下蓋15が、それぞれ、1枚の薄板状部材を折り曲げ加工して形成されているとしたが、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、上蓋11、91は、1つの矩形の板状部材からなる表面板12に、別体の上襞13及び小突起14、94を溶接して形成されていてもよい。
【0068】
以上の説明では、隣接する気体流路19同士で、上襞13及び下襞17を区画板として共有していることとした。しかしながら、各気体流路19が独自に区画板を有していて当該区画板同士を密接させることで、複数の気体流路19を配列することとしてもよい。
【0069】
以上の説明では、流入口28及び流出口29が、組み合わせられた上蓋11、91及び下蓋15の軸線方向Xの両端が、塞がれずに開口されていることで形成されていることとした。しかしながら、軸線方向Xの端部を塞いだ上で、気体流路19、89に対して流入及び/又は流出する温調空気Aが所望の流速となる大きさの開口を形成することで、流入口28及び/又は流出口29を形成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10、50、60、70、80、90 輻射パネル
11、91 上蓋
12 表面板
13 上襞
14、94 小突起
15 下蓋
17 下襞
18 側面板
19 気体流路
22 変換器(捕捉部材)
26 隙間
28 流入口
29 流出口
31、51、61 分配ダクト
40 空調機
72 流路縮小板
75 衝突隙間
76 傾斜隙間
81 エレメント(採熱伝達部材)
85 平板
86 採熱フィン
95 エレメント(採熱伝達部材)
98 案内羽根
99 通過孔
100、200 輻射冷暖房システム
A 温調空気
F 流れ方向
【手続補正書】
【提出日】2022-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板を有し、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する流路形成部材と、
前記気体流路に設けられ、前記気体流路を流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を前記表面板に伝達するのを促進する熱伝達促進部材と、を備え、
前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、
前記熱伝達促進部材は、前記流入口から前記流出口へと前記気体流路を流れる前記気体の流れ方向を、前記表面板に衝突させるように変える又は前記表面板に熱が伝わる前記流路形成部材の部分に衝突させるように変える方向変換部材であり、
前記方向変換部材は、通気開口が形成されている板状の部材で形成されていて前記気体流路を塞ぐように前記表面板に接して配置された衝立と、前記表面板から離れて設けられていて前記流れ方向に流れて前記通気開口を通過した前記気体を捕捉し前記表面板に衝突させるように導く捕捉部材と、を有する変換器が、前記気体の流れ方向に沿って所定の間隔で複数が配置されている、
輻射パネル。
【請求項2】
前記流路形成部材は、前記表面板に対向する対向板と、前記表面板と前記対向板との間に設けられた一対の区画板とを有し、
前記方向変換部材は、前記一対の区画板のうちの一方と前記衝立との間に前記気体が通るスリット状の隙間が形成されるように前記衝立が配置されている、
請求項1に記載の輻射パネル。
【請求項3】
熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板を有し、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する流路形成部材と、
前記気体流路に設けられ、前記気体流路を流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を前記表面板に伝達するのを促進する熱伝達促進部材と、を備え、
前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、
前記熱伝達促進部材は、前記流入口から前記流出口へと前記気体流路を流れる前記気体の流れ方向を、前記表面板に衝突させるように変える又は前記表面板に熱が伝わる前記流路形成部材の部分に衝突させるように変える方向変換部材であり、
前記流路形成部材は、前記表面板に熱が伝わる前記流路形成部材の部分として、前記表面板に接続された側面板を有しており、
前記方向変換部材は、前記側面板との間に隙間が形成されるように設けられていて前記流れ方向に流れる前記気体が前記隙間を通るように導く流路縮小板が、前記気体の流れ方向に沿って所定の間隔で複数が配置されている、
輻射パネル。
【請求項4】
熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板を有し、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する流路形成部材と、
前記気体流路に設けられ、前記気体流路を流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を前記表面板に伝達するのを促進する熱伝達促進部材と、を備え、
前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、
前記気体流路を前記気体が流れる流れ方向は、前記流入口から前記流出口へと向かう方向であり、
前記熱伝達促進部材は、前記流れ方向に流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を採取して前記表面板に伝達する採熱伝達部材であり、
前記採熱伝達部材は、前記流れ方向に沿って延びる平板の複数によって前記流れ方向に長い筒状に形成されたエレメントを有し、
複数の前記平板のそれぞれは、前記気体流路を流れる前記気体が沿う面から突き出て前記流れ方向に沿って延びる採熱フィンを複数有している、
輻射パネル。
【請求項5】
熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板を有し、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する流路形成部材と、
前記気体流路に設けられ、前記気体流路を流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を前記表面板に伝達するのを促進する熱伝達促進部材と、を備え、
前記流路形成部材は、前記気体が前記気体流路に流入する流入口と、前記流入口から離れた位置で前記気体が前記気体流路から流出する流出口と、が形成されており、
前記気体流路を前記気体が流れる流れ方向は、前記流入口から前記流出口へと向かう方向であり、
前記熱伝達促進部材は、前記流れ方向に流れる前記気体が保有する冷熱又は温熱を採取して前記表面板に伝達する採熱伝達部材であり、
前記流路形成部材は、前記表面板に接続された垂れ壁を有しており、
前記採熱伝達部材は、前記垂れ壁との間に前記気体を流入させることが可能な空間を形成する空間形成部材を有し、
前記空間形成部材は、前記流れ方向に所定の間隔で切り起こされた案内羽根を複数有すると共に、各前記案内羽根が切り起こされた跡に前記気体が通過可能な通過孔が形成されており、
前記案内羽根は、前記流れ方向の下流側で前記空間形成部材に接続されている、
輻射パネル。
【請求項6】
前記気体流路は、前記気体が流れる流れ方向に細長く形成されており、
前記流路形成部材は、前記表面板に接続されて前記流れ方向に延びる側面板を有しており、
前記流路形成部材の複数が、前記側面板同士を共有して又は前記側面板同士が隣接して、前記流れ方向に対して交差する方向に配列されている、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の輻射パネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の輻射パネルと、
前記気体の温度を調節する温度調節機器と、
前記温度調節機器で温度が調節された前記気体を前記気体流路に導く分配ダクトと、を備える、
輻射冷暖房システム。