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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132890
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20220906BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61M25/10
A61M25/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031610
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 賢一
(72)【発明者】
【氏名】石川 茜
(72)【発明者】
【氏名】桂田 武治
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB29
4C267CC09
4C267HH03
(57)【要約】
【課題】バルーンカテーテルの回転力伝達性を向上させる。
【解決手段】バルーンカテーテルは、バルーンと、先端部にバルーンの基端部が固定された筒状のアウターシャフトと、バルーンおよびアウターシャフトの中空部に収容されており、先端部にバルーンの先端部が固定された筒状のインナーシャフトと、インナーシャフトの外周面と、アウターシャフトの内周面と、の間に形成された空間に配置され、先端部がインナーシャフトに固定され、基端部がアウターシャフトまたはインナーシャフトに固定されたコイル体と、を備える。コイル体は、アウターシャフトの内周面から離間して配置されている。コイル体は、インナーシャフトの外周面とアウターシャフトの内周面との間において、インナーシャフトの外周面に固定されていない第1の中間部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルであって、
バルーンと、
先端部に前記バルーンの基端部が固定された筒状のアウターシャフトと、
前記バルーンおよび前記アウターシャフトの中空部に収容されており、先端部に前記バルーンの先端部が固定された筒状のインナーシャフトと、
前記インナーシャフトの外周面と、前記アウターシャフトの内周面と、の間に形成された空間に配置され、先端部が前記インナーシャフトに固定され、基端部が前記アウターシャフトまたは前記インナーシャフトに固定されたコイル体と、
を備え、
前記コイル体は、前記アウターシャフトの内周面から離間して配置されており、
前記コイル体は、前記インナーシャフトの外周面と前記アウターシャフトの内周面との間において、前記インナーシャフトの外周面に固定されていない第1の中間部を有する、
バルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のバルーンカテーテルであって、
前記アウターシャフトは、
先端部に前記バルーンの基端部が固定された先端側アウターシャフトと、
前記先端側アウターシャフトの基端部に接続された基端側アウターシャフトと、
を有し、
前記コイル体の基端部は、前記基端側アウターシャフトの先端部に固定されている、
バルーンカテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のバルーンカテーテルであって、
前記基端側アウターシャフトは、金属により形成されている、
バルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体は、前記先端側アウターシャフトの全長にわたって、前記第1の中間部を有している、
バルーンカテーテル。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記基端側アウターシャフトより先端側に位置する第1の部分と、
前記第1の部分より先端側で、かつ、前記バルーンより基端側に位置し、前記第1の部分より剛性の低い第2の部分と、を有する、
バルーンカテーテル。
【請求項6】
請求項5に記載のバルーンカテーテルであって、
前記第1の部分における前記コイル体の単位長さあたりの巻き数は、前記第2の部分における前記コイル体の単位長さあたりの巻き数より多い、
バルーンカテーテル。
【請求項7】
請求項5に記載のバルーンカテーテルであって、さらに、
前記第1の部分に配置され、基端部が前記基端側アウターシャフトの先端部に固定され、前記先端側アウターシャフトの軸方向に沿って延びるコアワイヤを備える、
バルーンカテーテル。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体の先端部は、前記インナーシャフトの先端部に固定されている、
バルーンカテーテル。
【請求項9】
請求項8に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体は、前記インナーシャフトの外周面と前記バルーンの内周面との間において、前記インナーシャフトの外周面に固定されていない第2の中間部を有する、
バルーンカテーテル。
【請求項10】
請求項9に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体は、前記バルーンの内部空間の全長にわたって、前記第2の中間部を有している、
バルーンカテーテル。
【請求項11】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体の先端部は、前記インナーシャフトのうち、前記バルーンの基端部に並ぶ位置または該位置より基端側の位置に固定されている、
バルーンカテーテル。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体は、単一のワイヤが螺旋状に巻回された構成を有している、
バルーンカテーテル。
【請求項13】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体は、複数のワイヤが螺旋状に巻回された構成を有している、
バルーンカテーテル。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体は、疎巻きされたコイル体である、
バルーンカテーテル。
【請求項15】
請求項12または請求項13に記載のバルーンカテーテルであって、
前記コイル体は、密巻きされたコイル体である、
バルーンカテーテル。
【請求項16】
請求項12から請求項15までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記ワイヤは、単一の素線から構成されている、
バルーンカテーテル。
【請求項17】
請求項12から請求項15までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記ワイヤは、複数の素線を撚り合わせた撚線から構成されている、
バルーンカテーテル。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載のバルーンカテーテルであって、
前記インナーシャフトは、シャフト本体と、前記シャフト本体の先端に備えられたチップと、を有する、
バルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、血管等の体腔内の病変部(狭窄部や閉塞部)を押し広げて拡張させるために、体腔内に挿入される長尺状医療機器である。バルーンカテーテルは、バルーンと、筒状のアウターシャフトと、バルーンおよびアウターシャフトの中空部に収容された筒状のインナーシャフトとを備える。バルーンの先端部は、インナーシャフトの先端部に固定され、バルーンの基端部は、アウターシャフトの先端部に固定される。インナーシャフトの中空部は、ガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメンとして機能する。また、インナーシャフトの外周面とアウターシャフトの内周面との間に形成された空間は、バルーンの内部空間に向けてバルーンを拡張するための流体(造影剤や生理食塩水等)を供給するための拡張流体ルーメンとして機能する。
【0003】
従来、医師等の手技者がバルーンカテーテルの基端部を軸方向に押し込む力をバルーンカテーテルの先端部に良好に伝える性能(以下、「押し込み力伝達性」という。)を向上させるため、インナーシャフトの側壁内部に金属製の網状体が埋め込まれたバルーンカテーテルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-57495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルーンカテーテルにおいて、上述した押し込み力伝達性に加えて、手技者がバルーンカテーテルの基端部を軸方向廻りに回転させる力をバルーンカテーテルの先端部に良好に伝える性能(以下、「回転力伝達性」という。)を向上させることが有用である。例えば、バルーンカテーテルの先端部が比較的硬い病変部に引っ掛かり、バルーンカテーテルがそれ以上前進できなくなった場合に、手技者がバルーンカテーテルの基端部を軸方向廻りに回転させることによってバルーンカテーテルの先端部の向きを変えることができれば、該引っ掛かりが解消されてバルーンカテーテルの進行に支障がなくなる可能性がある。
【0006】
上記従来のバルーンカテーテルの構成では、金属製の網状体がインナーシャフトの側壁内部に埋め込まれており、網状体がインナーシャフトとは独立に変形することができないため、網状体によって基端部の回転を先端部に効果的に伝達することはできず、バルーンカテーテルの回転力伝達性を向上させることはできない。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるバルーンカテーテルは、バルーンと、先端部に前記バルーンの基端部が固定された筒状のアウターシャフトと、前記バルーンおよび前記アウターシャフトの中空部に収容されており、先端部に前記バルーンの先端部が固定された筒状のインナーシャフトと、前記インナーシャフトの外周面と、前記アウターシャフトの内周面と、の間に形成された空間に配置され、先端部が前記インナーシャフトに固定され、基端部が前記アウターシャフトまたは前記インナーシャフトに固定されたコイル体と、を備える。前記コイル体は、前記アウターシャフトの内周面から離間して配置されている。前記コイル体は、前記インナーシャフトの外周面と前記アウターシャフトの内周面との間において、前記インナーシャフトの外周面に固定されていない第1の中間部を有する。
【0010】
このように、本バルーンカテーテルは、先端部がインナーシャフトに固定され、基端部がアウターシャフトまたはインナーシャフトに固定されたコイル体を備える。コイル体は、アウターシャフトの内周面から離間して配置されており、かつ、インナーシャフトの外周面とアウターシャフトの内周面との間において、インナーシャフトの外周面に固定されていない第1の中間部を有する。そのため、コイル体の第1の中間部は、アウターシャフトおよびインナーシャフトから独立して変形することができる。従って、本バルーンカテーテルでは、コイル体の第1の中間部の存在によってバルーンカテーテルの基端部の回転をインナーシャフトに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテルの回転力伝達性を向上させることができる。また、コイル体は、アウターシャフトの内周面から離間して配置されているため、例えばアウターシャフトが湾曲して血管内壁に押しつけられ、動きにくくなった場合であっても、アウターシャフトによってコイル体が拘束されることが抑制され、コイル体の変形がアウターシャフトによって阻害されることが回避され、バルーンカテーテルの回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0011】
(2)上記バルーンカテーテルにおいて、前記アウターシャフトは、先端部に前記バルーンの基端部が固定された先端側アウターシャフトと、前記先端側アウターシャフトの基端部に接続された基端側アウターシャフトと、を有し、前記コイル体の基端部は、前記基端側アウターシャフトの先端部に固定されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、コイル体の基端部が、基端側アウターシャフトの先端部に固定されているため、コイル体とアウターシャフトとの間の接合強度を容易に向上させることができ、コイル体の第1の中間部の存在によってバルーンカテーテルの回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0012】
(3)上記バルーンカテーテルにおいて、前記基端側アウターシャフトは、金属により形成されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体とアウターシャフトとの間の接合強度をさらに容易に向上させることができ、コイル体の第1の中間部の存在によってバルーンカテーテルの回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体は、前記先端側アウターシャフトの全長にわたって、前記第1の中間部を有している構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体において、アウターシャフトおよびインナーシャフトから独立して変形することができる第1の中間部の長さを十分に確保することができ、バルーンカテーテルの回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0014】
(5)上記バルーンカテーテルにおいて、前記基端側アウターシャフトより先端側に位置する第1の部分と、前記第1の部分より先端側で、かつ、前記バルーンより基端側に位置し、前記第1の部分より剛性の低い第2の部分と、を有する構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、基端側アウターシャフトより先端側において、バルーンカテーテルの剛性を、先端側ほど剛性が低くなるように徐変させることができる。従って、本バルーンカテーテルによれば、アウターシャフトが先端側アウターシャフトと基端側アウターシャフトとから構成されていることに起因して生ずるバルーンカテーテルの剛性ギャップを緩和することができる。
【0015】
(6)上記バルーンカテーテルにおいて、前記第1の部分における前記コイル体の単位長さあたりの巻き数は、前記第2の部分における前記コイル体の単位長さあたりの巻き数より多い構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、部品点数の増加を抑制しつつ、バルーンカテーテルの剛性ギャップの緩和を実現することができる。
【0016】
(7)上記バルーンカテーテルにおいて、さらに、前記第1の部分に配置され、基端部が前記基端側アウターシャフトの先端部に固定され、前記先端側アウターシャフトの軸方向に沿って延びるコアワイヤを備える構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、単位長さあたりの巻き数が略一定である単純な構成のコイル体を用いた場合であっても、バルーンカテーテルの剛性ギャップの緩和を実現することができる。
【0017】
(8)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体の先端部は、前記インナーシャフトの先端部に固定されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体によってバルーンカテーテルの基端部の回転をインナーシャフトの先端部に効果的に伝達することができ、バルーンカテーテルの回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0018】
(9)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体は、前記インナーシャフトの外周面と前記バルーンの内周面との間において、前記インナーシャフトの外周面に固定されていない第2の中間部を有する構成としてもよい。本バルーンカテーテルでは、コイル体の第2の中間部は、インナーシャフトおよびバルーンから独立して変形することができため、コイル体の第2の中間部の存在によってバルーンカテーテルの基端部の回転をインナーシャフトにさらに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテルの回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0019】
(10)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体は、前記バルーンの内部空間の全長にわたって、前記第2の中間部を有している構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体において、インナーシャフトおよびバルーンから独立して変形することができる第2の中間部の長さを十分に確保することができ、バルーンカテーテルの回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0020】
(11)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体の先端部は、前記インナーシャフトのうち、前記バルーンの基端部に並ぶ位置または該位置より基端側の位置に固定されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、バルーンの内部空間内にコイル体が配置されていないため、コイル体の存在によって、収縮した状態のバルーンの外径が大きくなることを回避することができ、バルーンカテーテルの通過性を向上させることができる。
【0021】
(12)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体は、単一のワイヤが螺旋状に巻回された構成を有している構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体の変形しやすさを向上させることができ、コイル体の存在によってバルーンカテーテルの回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。また、本バルーンカテーテルによれば、インナーシャフトの外周面とアウターシャフトの内周面との間にコイル体を配置しても、コイル体によって拡張流体の流れが阻害されることを効果的に抑制することができる。
【0022】
(13)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体は、複数のワイヤが螺旋状に巻回された構成を有している構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体の存在によってバルーンカテーテルの基端部の回転をインナーシャフトにさらに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテルの回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。
【0023】
(14)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体は、疎巻きされたコイル体である構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体の変形しやすさを向上させることができ、コイル体の存在によってバルーンカテーテルの基端部の回転をインナーシャフトにさらに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテルの回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。また、本バルーンカテーテルによれば、インナーシャフトの外周面とアウターシャフトの内周面との間にコイル体を配置しても、コイル体によって拡張流体の流れが阻害されることを効果的に抑制することができる。
【0024】
(15)上記バルーンカテーテルにおいて、前記コイル体は、密巻きされたコイル体である構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体の耐久性を向上させることができ、ひいては、バルーンカテーテルの耐久性を向上させることができる。
【0025】
(16)上記バルーンカテーテルにおいて、前記ワイヤは、単一の素線から構成されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、構成の簡素化・製造の容易化を実現することができる。
【0026】
(17)上記バルーンカテーテルにおいて、前記ワイヤは、複数の素線を撚り合わせた撚線から構成されている構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、コイル体の耐久性を向上させることができ、ひいては、バルーンカテーテルの耐久性を向上させることができる。
【0027】
(18)上記バルーンカテーテルにおいて、前記インナーシャフトは、シャフト本体と、前記シャフト本体の先端に備えられたチップと、を有する構成としてもよい。本バルーンカテーテルによれば、バルーンカテーテルの先端部の柔軟性を向上させつつ、バルーンカテーテルの回転力伝達性を向上させることができる。
【0028】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、バルーンカテーテルおよびその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態におけるバルーンカテーテル100の構成を概略的に示す説明図
図2】第2実施形態におけるバルーンカテーテル100aの構成を概略的に示す説明図
図3】第3実施形態におけるバルーンカテーテル100bの構成を概略的に示す説明図
図4】第4実施形態におけるバルーンカテーテル100cの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
A.第1実施形態:
A-1.バルーンカテーテル100の構成:
図1は、第1実施形態におけるバルーンカテーテル100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、バルーンカテーテル100の縦断面(YZ断面)の構成が示されている。ただし、図示の便宜上、バルーンカテーテル100の一部の構成については、断面構成ではなく側面構成が示されており、またバルーンカテーテル100の一部の構成については、図示が省略されている。図1には、後述のバルーン30が拡張した状態で示されている。図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。図1では、バルーンカテーテル100が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、バルーンカテーテル100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、本明細書では、バルーンカテーテル100およびその各構成部材について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0031】
バルーンカテーテル100は、血管等の体腔内の病変部(狭窄部や閉塞部)を押し広げて拡張させるために、体腔内に挿入される長尺状医療機器である。バルーンカテーテル100の全長は、例えば1500mm程度である。バルーンカテーテル100は、インナーシャフト10と、アウターシャフト20と、バルーン30と、コイル体40とを備える。
【0032】
アウターシャフト20は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。なお、本明細書において「筒状(円筒状)」とは、完全な筒形状(円筒形状)に限らず、全体として略筒状(略円筒形状、例えば、若干、円錐形状や、一部に凹凸がある形状など)であることを意味する。本実施形態では、アウターシャフト20は、先端側アウターシャフト23と、基端側アウターシャフト27とから構成されている。基端側アウターシャフト27は、先端側アウターシャフト23の基端部に、先端側アウターシャフト23と略同軸になるように接続されている。また、本実施形態では、先端側アウターシャフト23は、細径部21と、細径部21の基端に接続され、細径部21より大きい外径および内径を有する太径部22とを有する。アウターシャフト20の各部の外径は、例えば、0.2mm~2.0mm程度である。
【0033】
先端側アウターシャフト23は、熱融着可能であり、かつ、ある程度の可撓性を有する材料により形成されている。先端側アウターシャフト23の形成材料としては、例えば樹脂を用いることができ、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタン等を用いることができる。また、基端側アウターシャフト27は、ハイポチューブにより構成されている。基端側アウターシャフト27の形成材料としては、例えば金属を用いることができ、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)等を用いることができる。
【0034】
インナーシャフト10は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。本実施形態では、インナーシャフト10は、シャフト本体11と、シャフト本体11の先端に接続されたチップ12とを有する。
【0035】
インナーシャフト10の外径は、アウターシャフト20の内径より小さく、インナーシャフト10は、アウターシャフト20の中空部に、アウターシャフト20と略同軸になるように収容されている。インナーシャフト10の先端部(シャフト本体11の先端部およびチップ12)は、アウターシャフト20の先端より先端側(Z軸正方向側)に突出している。また、インナーシャフト10の基端は、アウターシャフト20(基端側アウターシャフト27)の基端まで延びている。すなわち、本実施形態のバルーンカテーテル100は、いわゆるオーバーザワイヤ(OTW)型のバルーンカテーテルである。
【0036】
インナーシャフト10は、熱融着可能であり、かつ、ある程度の可撓性を有する材料により形成されている。インナーシャフト10の形成材料としては、上述した先端側アウターシャフト23の形成材料と同様の材料を用いることができる。
【0037】
インナーシャフト10の中空部は、ガイドワイヤ(不図示)を挿通させるためのガイドワイヤルーメンS1として機能する。ガイドワイヤルーメンS1は、基端側アウターシャフト27の基端部に接続されたYコネクタ60におけるガイドワイヤポート62に連通している。ガイドワイヤポート62を介してガイドワイヤルーメンS1に挿入されたガイドワイヤは、インナーシャフト10の先端(チップ12の先端)に形成された開口から外部に導出される。なお、Yコネクタ60と基端側アウターシャフト27との接続箇所には、例えばエラストマーやポリウレタン等の柔軟な樹脂により形成された保護チューブ70が配置されている。
【0038】
また、インナーシャフト10の外周面14とアウターシャフト20の内周面26との間に形成された空間は、バルーン30の内部空間S3に向けてバルーン30を拡張するための流体(造影剤や生理食塩水)を供給する拡張流体ルーメンS2として機能する。拡張流体ルーメンS2は、基端側アウターシャフト27の基端部に接続されたYコネクタ60における拡張流体ポート64に連通している。
【0039】
バルーン30は、内部空間S3が形成された中空状の部材であり、流体の供給および排出に伴い拡張および収縮が可能である。バルーン30は、インナーシャフト10の内、アウターシャフト20の先端から突出した部分の周囲を覆っている。バルーン30の先端部は、インナーシャフト10の先端部に、例えば溶着によって固定されており、バルーン30の基端部は、アウターシャフト20の先端部(より具体的には、先端側アウターシャフト23の先端部)に、例えば溶着によって固定されている。
【0040】
バルーン30の形成材料としては、例えば、樹脂やゴムを用いることができ、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
【0041】
A-2.コイル体40の構成:
次にコイル体40の構成について説明する。コイル体40は、ワイヤ44が螺旋状に巻回された構成を有している。本実施形態では、コイル体40は、それぞれ単一の素線から構成された複数の(具体的には3本の)ワイヤ44により構成された線材46が螺旋状に巻き回しされた構成を有している。なお、本実施形態では、各ワイヤ44は、その軸方向に直交する断面が略長方形(長辺がバルーンカテーテル100の軸方向に略平行であり、短辺がバルーンカテーテル100の径方向に略平行である長方形)である平線により構成されている。
【0042】
また、本実施形態では、コイル体40は、疎巻きされたコイル体である。すなわち、上述した3本のワイヤ44から構成された線材46が、コイル体40の軸方向に隣り合う部分が互いに間隔を空けた状態で巻き回しされている。
【0043】
コイル体40を形成する材料としては、例えば金属を用いることができ、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)等を用いることができる。
【0044】
コイル体40は、インナーシャフト10の外周面14とアウターシャフト20の内周面26との間に形成された空間、すなわち、拡張流体ルーメンS2内に配置されている。換言すれば、コイル体40は、線材46がインナーシャフト10の周囲に巻き回しされた構成を有している。コイル体40の先端部は、アウターシャフト20の先端より先端側(Z軸正方向側)に突出してバルーン30の内部空間S3内に至っており、インナーシャフト10の先端部に、例えばロウ付けによって固定されている。また、コイル体40の基端部は、アウターシャフト20を構成する基端側アウターシャフト27の先端部に、例えば溶接やロウ付けによって固定されている。
【0045】
コイル体40は、アウターシャフト20(より具体的には、先端側アウターシャフト23)の内周面26から離間して配置されている。すなわち、コイル体40は、先端側アウターシャフト23の内周面26に接していない。また、コイル体40は、インナーシャフト10の外周面14と先端側アウターシャフト23の内周面26との間において、インナーシャフト10の外周面14に固定されていない第1の中間部41を有する。本実施形態では、インナーシャフト10の外周面14と先端側アウターシャフト23の内周面26との間において、コイル体40の全体が、インナーシャフト10の外周面14に固定されていない第1の中間部41を構成している。すなわち、コイル体40は、先端側アウターシャフト23の全長にわたって、第1の中間部41を有している。なお、本実施形態では、第1の中間部41は、インナーシャフト10の外周面14から離間している。
【0046】
また、コイル体40は、インナーシャフト10の外周面14とバルーン30の内周面36との間(すなわち、バルーン30の内部空間S3)において、インナーシャフト10の外周面14に固定されていない第2の中間部42を有する。本実施形態では、インナーシャフト10の外周面14とバルーン30の内周面36との間において、コイル体40の先端を除く全体が、インナーシャフト10の外周面14に固定されていない第2の中間部42を構成している。すなわち、コイル体40は、バルーン30の内部空間S3の全長にわたって、第2の中間部42を有している。
【0047】
A-3.バルーンカテーテル100の使用方法:
手技者は、バルーン30が収縮した状態のバルーンカテーテル100の基端部を操作して、ガイドワイヤ(不図示)による案内の下、バルーンカテーテル100を体腔における病変部に移動させる。次に、Yコネクタ60の拡張流体ポート64から拡張流体ルーメンS2を介してバルーン30の内部空間S3に流体を供給することにより、バルーン30を拡張させ、拡張したバルーン30によって病変部を押し広げる。
【0048】
また、バルーンカテーテル100を移動させる際に、例えばバルーンカテーテル100の先端部が比較的硬い病変部に引っ掛かり、バルーンカテーテル100がそれ以上前進できなくなった場合には、手技者は、バルーンカテーテル100の基端部(本実施形態では、アウターシャフト20の基端部)を軸方向廻りに回転させる。アウターシャフト20が軸方向廻りに回転すると、アウターシャフト20の先端部に固定されたバルーン30に回転力が伝達される。バルーン30の先端部はインナーシャフト10の先端部に固定されているため、バルーン30に伝達された回転力は、インナーシャフト10の先端部に伝達される。ただし、バルーン30は柔軟性が非常に高いため、このような経路を介した回転力伝達性は高くない。一方、本実施形態のバルーンカテーテル100では、アウターシャフト20(より具体的には、基端側アウターシャフト27の先端部)にコイル体40が固定されている。そのため、アウターシャフト20が軸方向廻りに回転すると、アウターシャフト20に固定されたコイル体40にも回転力が伝達される。コイル体40の先端部はインナーシャフト10の先端部に固定されているため、コイル体40に伝達された回転力は、インナーシャフト10の先端部に伝達される。このような回転力の伝達経路はバルーン30を通らない経路であるため、該経路を介した回転力伝達性は高い。そのため、該経路を介してインナーシャフト10の先端部に伝達された回転力によってバルーンカテーテル100の先端部の向きが変化し、該引っ掛かりが解消されてバルーンカテーテル100の進行に支障がなくなる。
【0049】
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のバルーンカテーテル100は、バルーン30と、筒状のインナーシャフト10と、筒状のアウターシャフト20と、コイル体40とを備える。アウターシャフト20の先端部には、バルーン30の基端部が固定されている。インナーシャフト10は、バルーン30およびアウターシャフト20の中空部に収容されている。インナーシャフト10の先端部には、バルーン30の先端部が固定されている。コイル体40は、インナーシャフト10の外周面14と、アウターシャフト20の内周面26と、の間に形成された空間に配置されている。コイル体40の先端部は、インナーシャフト10に固定されており、コイル体40の基端部は、アウターシャフト20に固定されている。コイル体40は、アウターシャフト20の内周面26から離間して配置されている。また、コイル体40は、インナーシャフト10の外周面14とアウターシャフト20の内周面26との間において、インナーシャフト10の外周面14に固定されていない第1の中間部41を有する。
【0050】
このように、本実施形態のバルーンカテーテル100は、先端部がインナーシャフト10に固定され、基端部がアウターシャフト20に固定されたコイル体40を備える。コイル体40は、アウターシャフト20の内周面26から離間して配置されており、かつ、インナーシャフト10の外周面14とアウターシャフト20の内周面26との間において、インナーシャフト10の外周面14に固定されていない第1の中間部41を有する。そのため、コイル体40の第1の中間部41は、アウターシャフト20およびインナーシャフト10から独立して変形することができる。従って、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40の第1の中間部41の存在によってバルーンカテーテル100の基端部(アウターシャフト20の基端部)の回転をインナーシャフト10に効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を向上させることができる。また、コイル体40は、アウターシャフト20の内周面26から離間して配置されているため、例えばアウターシャフト20が湾曲して血管内壁に押しつけられ、動きにくくなった場合であっても、アウターシャフト20によってコイル体40が拘束されることが抑制され、コイル体40の変形がアウターシャフト20によって阻害されることが回避され、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、アウターシャフト20は、先端部にバルーン30の基端部が固定された先端側アウターシャフト23と、先端側アウターシャフト23の基端部に接続され、ハイポチューブにより構成された基端側アウターシャフト27とを有する。コイル体40の基端部は、基端側アウターシャフト27の先端部に固定されている。このように、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40の基端部が、ハイポチューブにより構成された基端側アウターシャフト27の先端部に固定されているため、コイル体40とアウターシャフト20との間の接合強度を容易に向上させることができ、コイル体40の第1の中間部41の存在によってバルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。なお、本実施形態では、基端側アウターシャフト27が金属により形成されているため、コイル体40とアウターシャフト20との間の接合強度をさらに容易に向上させることができ、コイル体40の第1の中間部41の存在によってバルーンカテーテル100の回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40は、先端側アウターシャフト23の全長にわたって第1の中間部41を有している。そのため、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、コイル体40において、アウターシャフト20およびインナーシャフト10から独立して変形することができる第1の中間部41の長さを十分に確保することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40の先端部は、インナーシャフト10の先端部に固定されている。そのため、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、コイル体40によってバルーンカテーテル100の基端部(アウターシャフト20の基端部)の回転をインナーシャフト10の先端部に効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40は、インナーシャフト10の外周面14とバルーン30の内周面36との間において、インナーシャフト10の外周面14に固定されていない第2の中間部42を有する。コイル体40の第2の中間部42は、インナーシャフト10およびバルーン30から独立して変形することができる。従って、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、コイル体40の第2の中間部42の存在によってバルーンカテーテル100の基端部(アウターシャフト20の基端部)の回転をインナーシャフト10にさらに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。なお、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40は、バルーン30の内部空間S3の全長にわたって第2の中間部42を有しているため、コイル体40において、インナーシャフト10およびバルーン30から独立して変形することができる第2の中間部42の長さを十分に確保することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40は、複数のワイヤ44が螺旋状に巻回された構成を有している。そのため、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、コイル体40の存在によってバルーンカテーテル100の基端部(アウターシャフト20の基端部)の回転をインナーシャフト10にさらに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40は、疎巻きされたコイル体である。そのため、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、コイル体40の変形しやすさを向上させることができ、コイル体40の存在によってバルーンカテーテル100の基端部(アウターシャフト20の基端部)の回転をインナーシャフト10にさらに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。また、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、拡張流体ルーメンS2にコイル体40を配置しても、コイル体40によって拡張流体の流れが阻害されることを効果的に抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、コイル体40を構成するワイヤ44は、単一の素線から構成されている。そのため、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、構成の簡素化・製造の容易化を実現することができる。
【0058】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100では、インナーシャフト10は、シャフト本体11と、シャフト本体11の先端に備えられたチップ12とを有する。そのため、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、バルーンカテーテル100の先端部の柔軟性を向上させつつ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を向上させることができる。
【0059】
B.第2実施形態:
図2は、第2実施形態におけるバルーンカテーテル100aの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態のバルーンカテーテル100aの構成のうち、上述した第1実施形態のバルーンカテーテル100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0060】
第2実施形態のバルーンカテーテル100aでは、コイル体40aにおける基端側の部分の単位長さあたりの巻き数が、他の部分より多くなっている。その結果、バルーンカテーテル100aは、基端側アウターシャフト27より先端側において、剛性の互いに異なる第1の部分110および第2の部分120を有する。第1の部分110は、バルーンカテーテル100aのうち、コイル体40aにおける単位長さあたりの巻き数が比較的多い部分を含む部分である。第2の部分120は、バルーンカテーテル100aのうち、コイル体40aにおける単位長さあたりの巻き数が比較的少ない部分を含む部分である。第2の部分120は、第1の部分110より先端側で、かつ、バルーン30より基端側に位置し、第1の部分110より剛性が低くなっている。
【0061】
このように、第2実施形態のバルーンカテーテル100aは、基端側アウターシャフト27より先端側に位置する第1の部分110と、第1の部分110より先端側で、かつ、バルーン30より基端側に位置し、第1の部分110より剛性の低い第2の部分120とを有する。そのため、第2実施形態のバルーンカテーテル100aでは、基端側アウターシャフト27より先端側において、バルーンカテーテル100aの剛性を、先端側ほど剛性が低くなるように徐変させることができる。従って、第2実施形態のバルーンカテーテル100aによれば、アウターシャフト20が先端側アウターシャフト23と基端側アウターシャフト27とから構成されていることに起因して生ずるバルーンカテーテル100aの剛性ギャップを緩和することができる。
【0062】
なお、第2実施形態のバルーンカテーテル100aでは、第1の部分110におけるコイル体40aの単位長さあたりの巻き数が、第2の部分120におけるコイル体40aの単位長さあたりの巻き数より多い。そのため、第2実施形態のバルーンカテーテル100aによれば、部品点数の増加を抑制しつつ、バルーンカテーテル100aの剛性ギャップの緩和を実現することができる。
【0063】
C.第3実施形態:
図3は、第3実施形態におけるバルーンカテーテル100bの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第3実施形態のバルーンカテーテル100bの構成のうち、上述した第1実施形態のバルーンカテーテル100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0064】
第3実施形態のバルーンカテーテル100bは、コアワイヤ80を備える。コアワイヤ80は、例えば金属により形成されている。コアワイヤ80の基端部は、基端側アウターシャフト27の先端部に、例えば溶接によって固定されている。コアワイヤ80は、基端側アウターシャフト27への固定部から、先端側アウターシャフト23の軸方向に沿って先端側に、バルーン30の基端より基端側の位置まで延びている。本実施形態では、コアワイヤ80は、拡張流体ルーメンS2に配置されている。
【0065】
第3実施形態のバルーンカテーテル100bは、基端側アウターシャフト27より先端側において、剛性の互いに異なる第1の部分110および第2の部分120を有する。第1の部分110は、バルーンカテーテル100bのうち、コアワイヤ80を含む部分である。第2の部分120は、バルーンカテーテル100bのうち、コアワイヤ80が含まれない部分である。第2の部分120は、第1の部分110より先端側で、かつ、バルーン30より基端側に位置し、第1の部分110より剛性が低い。
【0066】
このように、第3実施形態のバルーンカテーテル100bは、基端側アウターシャフト27より先端側に位置する第1の部分110と、第1の部分110より先端側で、かつ、バルーン30より基端側に位置し、第1の部分110より剛性の低い第2の部分120とを有する。そのため、第3実施形態のバルーンカテーテル100bでは、基端側アウターシャフト27より先端側において、バルーンカテーテル100bの剛性を、先端側ほど剛性が低くなるように徐変させることができる。従って、第3実施形態のバルーンカテーテル100bによれば、アウターシャフト20が先端側アウターシャフト23と基端側アウターシャフト27とから構成されていることに起因して生ずるバルーンカテーテル100bの剛性ギャップを緩和することができる。
【0067】
なお、第3実施形態のバルーンカテーテル100bでは、コアワイヤ80の存在によって剛性の互いに異なる第1の部分110および第2の部分120が形成されている。そのため、第3実施形態のバルーンカテーテル100bによれば、単位長さあたりの巻き数が略一定である単純な構成のコイル体40を用いた場合であっても、バルーンカテーテル100bの剛性ギャップの緩和を実現することができる。
【0068】
D.第4実施形態:
図4は、第4実施形態におけるバルーンカテーテル100cの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第4実施形態のバルーンカテーテル100cの構成のうち、上述した第1実施形態のバルーンカテーテル100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0069】
第4実施形態のバルーンカテーテル100cでは、コイル体40cの先端部が、インナーシャフト10における先端部ではなく、インナーシャフト10におけるバルーン30の基端部に径方向に並ぶ位置に固定されている。すなわち、第4実施形態のバルーンカテーテル100cでは、バルーン30の内部空間S3内にコイル体40cが配置されていない。
【0070】
このように、第4実施形態のバルーンカテーテル100cでは、バルーン30の内部空間S3内にコイル体40cが配置されていないため、コイル体40cの存在によって、収縮した状態のバルーン30の外径が大きくなることを回避することができ、バルーンカテーテル100cの通過性を向上させることができる。
【0071】
なお、第4実施形態のバルーンカテーテル100cでは、例えば、インナーシャフト10の材料選定やブレード等の補強体の使用等により、インナーシャフト10のねじり剛性を向上させることが好ましい。このようにすれば、コイル体40cの先端部がインナーシャフト10におけるバルーン30の基端部に接合された部分に固定された構成であっても、コイル体40cの存在によって、アウターシャフト20に加えられた回転力をバルーンカテーテル100cの先端部に効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100cの回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0072】
E.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0073】
上記実施形態におけるバルーンカテーテル100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、アウターシャフト20の先端側アウターシャフト23が、互いに径の異なる細径部21と太径部22とから構成されているが、先端側アウターシャフト23が、それらに加えて径の異なる他の部分を有していてもよいし、先端側アウターシャフト23が全長にわたって同径であってもよい。また、上記実施形態では、アウターシャフト20が、先端側アウターシャフト23と基端側アウターシャフト27とから構成されているが、アウターシャフト20が、それらに加えて他の部分を有していてもよいし、アウターシャフト20が一体部材であってもよい。
【0074】
上記実施形態では、インナーシャフト10が、シャフト本体11とチップ12とから構成されているが、インナーシャフト10が、それらに加えて他の部分を有していてもよいし、インナーシャフト10が一体部材であってもよい。
【0075】
上記実施形態では、コイル体40の先端部が、インナーシャフト10の先端部、または、インナーシャフト10におけるバルーン30の基端部に並ぶ位置に固定されているが、コイル体40の先端部の固定位置はこれに限られない。例えば、コイル体40の先端部は、インナーシャフト10における先端部と、インナーシャフト10におけるバルーン30の基端部に並ぶ位置と、の中間の位置(すなわち、バルーン30の内部空間S3に面する位置)に固定されていてもよいし、インナーシャフト10におけるバルーン30の基端部に並ぶ位置より基端側の位置に固定されていてもよい。また、上記実施形態では、コイル体40の基端部が、基端側アウターシャフト27の先端部に固定されているが、コイル体40の基端部の固定位置はこれに限られない。例えば、コイル体40の基端部は、基端側アウターシャフト27の先端部以外の部分に固定されていてもよいし、先端側アウターシャフト23に固定されていてもよい。このような構成であっても、コイル体40の存在によってバルーンカテーテル100の基端部(アウターシャフト20の基端部)の回転をインナーシャフト10に効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。また、コイル体40の基端部は、インナーシャフト10に固定されていてもよい。このような構成であっても、コイル体40の存在によってバルーンカテーテル100の基端部(インナーシャフト10の基端部)の回転をインナーシャフト10の先端部に効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性を効果的に向上させることができる。
【0076】
上記実施形態では、コイル体40は、先端側アウターシャフト23の全長にわたって第1の中間部41を有しているが、コイル体40が、先端側アウターシャフト23の全長の一部のみにおいて第1の中間部41を有しているとしてもよい。また、上記第1から第3実施形態では、コイル体40は、バルーン30の内部空間S3の全長にわたって第2の中間部42を有しているが、コイル体40が、バルーン30の内部空間S3の全長の一部のみにおいて第2の中間部42を有しているとしてもよい。また、コイル体40が第2の中間部42を有さないとしてもよい。
【0077】
上記実施形態では、コイル体40は、それぞれ単一の素線から構成された3本のワイヤ44からなる線材46が螺旋状に疎巻きされた構成であるが、コイル体40の構成はこれに限られない。例えば、コイル体40は、それぞれ単一の素線から構成された2本または4本以上のワイヤ44からなる線材46が螺旋状に疎巻きされた構成であってもよい。なお、ワイヤ44の軸方向に直交する断面形状は、長方形に限らず、正方形や円形、楕円形等の他の形状であってもよい。
【0078】
また、コイル体40は、単一のワイヤ44が螺旋状に疎巻きされた構成であってもよい。このような構成とすれば、コイル体40の変形しやすさを向上させることができ、コイル体40の存在によってアウターシャフト20の回転をインナーシャフト10にさらに効果的に伝達することができ、バルーンカテーテル100の回転力伝達性をさらに効果的に向上させることができる。また、このような構成とすれば、拡張流体ルーメンS2にコイル体40を配置しても、コイル体40によって拡張流体の流れが阻害されることを効果的に抑制することができる。
【0079】
また、コイル体40を構成する各ワイヤ44は、複数の素線を撚り合わせた撚線から構成されていてもよい。このような構成とすれば、コイル体40の耐久性を向上させることができ、ひいては、バルーンカテーテル100の耐久性を向上させることができる。
【0080】
また、コイル体40の巻き方は密巻きであってもよい。このような構成とすれば、コイル体40の耐久性を向上させることができ、ひいては、バルーンカテーテル100の耐久性を向上させることができる。
【0081】
また、コイル体40として、巻き方向が互いに異なる2つのコイルを積層させた2層コイル(内側層と外側層とが互いに編み込まれていないもの)を用いてもよい。このような構成とすれば、バルーンカテーテル100の軸廻りの両方向の回転について、回転力伝達性を向上させることができる。
【0082】
上記第2実施形態では、コアワイヤ80が拡張流体ルーメンS2に配置されているが、コアワイヤ80がアウターシャフト20に形成された他のルーメン(例えば、コアワイヤ80用に設けられた専用のルーメン)に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10:インナーシャフト 11:シャフト本体 12:チップ 14:外周面 20:アウターシャフト 21:細径部 22:太径部 23:先端側アウターシャフト 26:内周面 27:基端側アウターシャフト 30:バルーン 36:内周面 40:コイル体 41:第1の中間部 42:第2の中間部 44:ワイヤ 46:線材 60:Yコネクタ 62:ガイドワイヤポート 64:拡張流体ポート 70:保護チューブ 80:コアワイヤ 100:バルーンカテーテル 110:第1の部分 120:第2の部分 S1:ガイドワイヤルーメン S2:拡張流体ルーメン S3:内部空間
図1
図2
図3
図4