(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132898
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】眼科データ処理方法、眼科データ処理装置、その制御方法、眼科検査装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031618
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】安野 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】巻田 修一
(72)【発明者】
【氏名】山口 達夫
(72)【発明者】
【氏名】東 神之介
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB04
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB23
4C316FZ01
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】眼の動きを計測するための新規な手法を走査型イメージング技術を利用して提供する。
【解決手段】例示的な態様の眼科検査装置1は、眼底カメラユニット2及びOCTユニット100により互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用してデータセットを取得する。更に、眼科検査装置1は、データ処理部230によって、取得されたデータセットに基づき被検眼Eの位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用して取得されたデータセットを受け付け、
前記データセットに基づいて前記被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する、
眼科データ処理方法。
【請求項2】
更に、前記位置履歴データに基づいて評価データを生成する、
請求項1の方法。
【請求項3】
前記評価データは、所定の処理の信頼性評価データを含む、
請求項2の方法。
【請求項4】
更に、前記データセットに基づいて複数の画像データを構築し、
前記複数の画像データの相対位置補正を実行し、
前記信頼性評価データは、前記相対位置補正の信頼性評価データを含む、
請求項3の方法。
【請求項5】
眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データ及び当該位置履歴データを処理して生成された処理データの少なくとも一方を含む訓練データを用いた機械学習によって訓練された、位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方を入力とし且つ信頼度を出力とする推論モデルに対して、前記被検眼の前記位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方を入力し、
前記相対位置補正の前記信頼性評価データは、前記推論モデルから出力された信頼度を含む、
請求項4の方法。
【請求項6】
前記訓練データは、眼に関する所定の項目のデータを更に含み、
前記推論モデルは、位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方と、前記所定の項目のデータ及び当該データを処理して生成された処理データの少なくとも一方とを入力とし、且つ、信頼度を出力とし、
更に、前記被検眼に関する前記所定の項目のデータを受け付け、
受け付けられた前記所定の項目のデータ及びその処理データの少なくとも一方と、前記被検眼の前記位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方とを、前記推論モデルに入力し、
前記相対位置補正の前記信頼性評価データは、前記推論モデルから出力された信頼度を含む、
請求項5の方法。
【請求項7】
更に、前記被検眼に関する所定の項目のデータを受け付け、
前記位置履歴データ及び前記所定の項目のデータに基づいて前記評価データを生成する、
請求項2~5のいずれかの方法。
【請求項8】
更に、被検者から取得された時系列データを受け付け、
前記位置履歴データ及び前記時系列データに基づいて前記評価データを生成する、
請求項2~7のいずれかの方法。
【請求項9】
更に、被検者から取得された時系列データを受け付け、
前記時系列データに基づいて前記位置履歴データを補正する、
請求項1~7のいずれかの方法。
【請求項10】
前記時系列データは、前記被検者の頭部の位置の時系列変化を表すデータを含む、
請求項8又は9の方法。
【請求項11】
前記位置履歴データは、前記被検眼の前記位置の前記時系列変化の可視化データを含む、
請求項1~10のいずれかの方法。
【請求項12】
前記可視化データは、前記被検眼の前記位置の前記時系列変化を表すグラフデータを含む、
請求項11の方法。
【請求項13】
前記グラフデータは、所定の座標系で定義される前記被検眼の前記位置の所定方向成分の時系列変化を表す第1グラフデータを含む、
請求項12の方法。
【請求項14】
前記グラフデータは、所定の2次元座標系で定義される前記被検眼の2次元位置の時系列変化を表す第2グラフデータを含む、
請求項12又は13の方法。
【請求項15】
前記グラフデータは、所定の3次元座標系で定義される前記被検眼の3次元位置の時系列変化を表す第3グラフデータを含む、
請求項12~14のいずれかの方法。
【請求項16】
前記グラフデータは、前記被検眼の速度の時系列変化を表す第4グラフデータを含む、
請求項12~15のいずれかの方法。
【請求項17】
前記データセットに基づいて、前記一連のサイクルのうちの連続した複数のサイクルからなる第1サイクル群に対応する第1画像データと、他の連続した複数のサイクルからなる第2サイクル群に対応する第2画像データとを構築し、
前記第1画像データと前記第2画像データとの交差領域に基づいて、前記第1サイクル群に対応する第1時点と前記第2サイクル群に対応する第2時点との間における前記被検眼の変位を求め、
前記変位に基づいて前記位置履歴データを生成する、
請求項1~16のいずれかの方法。
【請求項18】
前記第1画像データ及び前記第2画像データのそれぞれは、所定の3次元座標系で定義された3次元画像データであり、
前記所定の3次元座標系の第1座標軸に沿う第1方向に前記第1画像データ及び前記第2画像データをそれぞれ投影して第1投影画像データ及び第2投影画像データを構築し、
前記第1投影画像データ及び前記第2投影画像データに基づいて、前記第1方向に直交する第2方向における前記被検眼の変位を求める、
請求項17の方法。
【請求項19】
前記第2方向における前記被検眼の前記変位を打ち消すように前記第1画像データと前記第2画像データとのレジストレーションを行い、
前記レジストレーションが行われた後、前記第1画像データ又は前記第1画像データに基づく前記第1方向に沿う画像データと、前記第2画像データ又は前記第2画像データに基づく前記第1方向に沿う画像データとを比較して、前記第1方向における前記被検眼の変位を求め、
前記第1方向における前記変位と前記第2方向における前記変位とに基づいて前記位置履歴データを生成する、
請求項18の方法。
【請求項20】
前記第1画像データ及び前記第2画像データのそれぞれは、所定の3次元座標系で定義された3次元画像データであり、
前記所定の3次元座標系の第1座標軸は、第1方向を規定し、
前記第1画像データ又は前記第1画像データに基づく前記第1方向に沿う画像データと、前記第2画像データ又は前記第2画像データに基づく前記第1方向に沿う画像データとを比較して、前記第1方向における前記被検眼の変位を求める、
請求項17の方法。
【請求項21】
前記所定の3次元座標系は、前記第1座標軸、第2座標軸、及び第3座標軸によって定義される直交座標系であり、
前記第1座標軸は、前記光走査のプローブ光が前記被検眼に入射する方向に対応し、
前記2次元パターンは、前記第2座標軸及び前記第3座標軸によって定義される、
請求項18~20のいずれかの方法。
【請求項22】
互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用して取得されたデータセットを記憶する記憶部と、
前記データセットに基づいて前記被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する位置履歴データ生成部と
を含む、眼科データ処理装置。
【請求項23】
プロセッサと記憶装置とを含む眼科データ処理装置を制御する方法であって、
前記プロセッサを、
互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用して取得されたデータセットを前記記憶装置に記憶させ、
前記データセットに基づいて前記被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する
ように制御する、眼科データ処理装置の制御方法。
【請求項24】
互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用してデータセットを取得するデータセット取得部と、
前記データセットに基づいて前記被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する位置履歴データ生成部と
を含む、眼科検査装置。
【請求項25】
前記データセット取得部は、前記光走査を行う走査部を含み、
前記走査部は、互いに異なる2つの方向に光を偏向可能な偏向器を含み、前記2つの方向の一方に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返しつつ他方に沿った偏向方向の変化を前記第1周期と異なる第2周期で繰り返すことによって前記2次元パターンに従う前記光走査を前記被検眼に適用する、
請求項24の眼科検査装置。
【請求項26】
被検眼に光走査を適用する走査部と、プロセッサとを含む眼科検査装置を制御する方法であって、
前記走査部を、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を前記被検眼に適用してデータを収集するように制御し、
前記プロセッサを、収集された前記データに基づいて前記被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成するように制御する、
眼科検査装置の制御方法。
【請求項27】
前記走査部は、互いに異なる2つの方向に光を偏向可能な偏向器を含み、
前記走査部を、前記2つの方向の一方に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返しつつ他方に沿った偏向方向の変化を前記第1周期と異なる第2周期で繰り返すことによって前記2次元パターンに従う前記光走査を前記被検眼に適用するように制御する、
請求項26の方法。
【請求項28】
請求項1~21、23、26、及び27のいずれかの方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項29】
請求項28のプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科データ処理方法、眼科データ処理装置、その制御方法、眼科検査装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野では様々なイメージング技術が応用されており、その1つに走査型イメージングがある。走査型イメージングとは、サンプルの複数の箇所に順次にビームを投射してデータを収集し、収集されたデータからサンプルの像を構築する技術である。
【0003】
光を利用した走査型イメージングの例として光コヒーレンストモグラフィ(OCT;光干渉断層撮影法)がある。OCTは、光散乱媒質をマイクロメートルレベル又はより高い分解能で計測及び画像化することが可能な技術であり、医用イメージングや非破壊検査などに応用されている。OCTは、低コヒーレンス干渉法に基づく技術であり、典型的には、光散乱媒質のサンプルへの深達性を確保するために近赤外領域のプローブ光(測定光)を利用する。眼科分野においては、近赤外光の利用には、測定光の移動を眼で追うことの防止、縮瞳の防止といったメリットもある。
【0004】
眼科画像診断ではOCT装置の普及が進んでおり、2次元的なイメージングだけでなく、3次元的なイメージング・レンダリング・構造解析・機能解析なども実用化され、診断の強力なツールとして広く利用されるに至っている。また、眼科分野では、走査型レーザー検眼鏡(SLO)など、OCT以外の走査型イメージングも利用されている。加えて、近赤外領域以外の波長帯の光(電磁波)や超音波を利用した走査型イメージングも知られている。
【0005】
OCTやSLOで利用される走査モードには様々なものがあるが、モーションアーティファクト補正などを目的とした所謂「リサジュー(Lissajous)スキャン」が近年注目を集めている(例えば、特許文献1~4、非特許文献1及び2を参照)。
【0006】
典型的なリサジュースキャンでは、或る程度の大きさを持つ複数のループ(サイクル)を順次に描くように測定光を高速走査するため、1つのサイクル上の多数の位置からのデータ取得時間の差を実質的に無視することができ、また、異なるサイクルの交差領域を参照してサイクル間の位置合わせを行えるため、サンプルの動きに起因するアーティファクトを補正することが可能である。このようなリサジュースキャンの特徴に着目し、眼科分野では眼球運動に起因するモーションアーティファクトへの対処を図っている。
【0007】
非特許文献1に記載された技術においては、リサジュースキャンで収集されたデータセットを比較的大きな動きが介在しない複数のサブボリュームに分割し、各サブボリュームの正面プロジェクション画像(en face projection)を構築する。このような正面プロジェクション画像はストリップと呼ばれる。これらストリップの間のレジストレーションを行うことでモーションアーティファクトが補正された画像が得られる。
【0008】
リサジュースキャンの特性として、2つのストリップが4箇所で重複(交差)していることがある。非特許文献1に記載された画像処理では、最大寸法のストリップが初期基準ストリップとして採用され、大きさ順に順序付けられたストリップが初期基準ストリップに対して逐次に(再帰的に)レジストレーションされ、合成される。レジストレーションでは、基準ストリップと他のストリップとの間の相対位置を求めるために相互相関関数が利用される。ここで、ストリップの形状は様々であるため、各ストリップを特定形状(例えば正方形状)の画像として扱うためのマスクを用いてストリップ間のオーバーラップ領域の相関演算を行っている(非特許文献1のAppendix Aを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-17915号公報
【特許文献2】特開2018-68578号公報
【特許文献3】特開2018-140004号公報
【特許文献4】特開2018-140049号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yiwei Chen, Young-Joo Hong, Shuichi Makita, and Yoshiaki Yasuno, ”Three-dimensional eye motion correction by Lissajous scan optical coherence tomography”, Biomedical Optics EXPRESS, Vol. 8, No. 3, 1 Mar 2017, PP. 1783-1802
【非特許文献2】Yiwei Chen, Young-Joo Hong, Shuichi Makita, and Yoshiaki Yasuno, ”Eye-motion-corrected optical coherence tomography angiography using Lissajous scanning”, Biomedical Optics EXPRESS, Vol. 9, No. 3, 1 Mar 2018, PP. 1111-1129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の1つの目的は、眼の動きを計測するための新規な手法を走査型イメージング技術を利用して提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
幾つかの態様の眼科データ処理方法は、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用して取得されたデータセットを受け付け、前記データセットに基づいて前記被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する。
【発明の効果】
【0013】
例示的な態様によれば、眼科分野における走査型イメージングの新規な応用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図2】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図3】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図4A】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図4B】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図4C】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図4D】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図5】例示的な実施形態に係る眼科検査装置が実行するリサジュースキャンのパターンの例を示す概略図である。
【
図6】例示的な実施形態に係る眼科検査装置が実行可能な処理の一例を表す概略図である。
【
図7A】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図7B】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図7C】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図7D】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図7E】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図7F】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図8A】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図8B】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図8C】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図9】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図10A】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図10B】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図10C】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図10D】例示的な実施形態に係る眼科検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の幾つかの例示的な態様について図面を参照しながら説明する。以下に説明される例示的な態様は、眼科データ処理方法、眼科データ処理装置、眼科データ処理装置を制御する方法、眼科検査装置、眼科検査装置を制御する方法、プログラム、及び記録媒体に関するものであるが、実施形態はこれらの態様に限定されず、例えば、眼科以外の診療科への応用、診断方法などの医学的方法への応用、医療分野以外の分野(生物学、非破壊検査など)への応用など、任意の応用が可能である。
【0016】
本明細書にて引用された文献に開示された事項や、他の任意の公知技術に関する事項を、例示的な実施形態に組み合わせることが可能である。また、特に言及しない限り、「画像データ」とそれに基づく「画像」とを区別せず、被検眼の「部位」とその「画像」とを区別しないものとする。
【0017】
以下に説明する例示的な実施形態に係る眼科検査装置は、フーリエドメインOCT(特にスウェプトソースOCT)を利用して生体眼の眼底を計測及び画像化することが可能に構成されている。実施形態に採用可能なOCTのタイプは、スウェプトソースOCTに限定されず、例えばスペクトラルドメインOCT又はタイムドメインOCTであってもよい。
【0018】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科検査装置は、OCT以外の走査型モダリティを利用可能であってよい。例えば、幾つかの例示的な実施形態は、SLO等の任意の光走査型モダリティを採用することができる。
【0019】
また、幾つかの例示的な実施形態に係る眼科検査装置に適用可能な走査型モダリティは、光走査型モダリティでなくてもよい。例えば、幾つかの例示的な実施形態は、光以外の電磁波を利用した走査型モダリティや、超音波を利用した走査型モダリティなどを採用することができる。
【0020】
幾つかの例示的な実施形態は、OCTスキャンで収集されたデータの処理及び/又はSLOで収集されたデータの処理に加え、他のモダリティで取得されたデータを処理可能であってよい。他のモダリティは、例えば、眼底カメラ、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡などの任意の眼科モダリティであってよい。幾つかの例示的な実施形態に係る眼科検査装置は、このようなモダリティの機能を有していてよい。また、幾つかの例示的な実施形態に係る眼科検査装置は、特開2013-248376号公報や特開2016-49243号公報に開示された、2以上の前眼部カメラを用いたステレオアライメント機能を有していてもよい。
【0021】
OCTが適用される対象(サンプル)は眼底に限定されず、前眼部や硝子体など眼の任意の部位であってもよい。なお、幾つかの例示的な実施形態に係る構成や機能を、眼以外の生体の部位(組織)の計測やイメージングに応用することが可能であり、また、生体以外の物体(動きを伴うもの)又はその部分の計測やイメージングに応用することが可能である。すなわち、幾つかの例示的な実施形態の産業上の利用分野は、眼科関連分野に限定されず、医療関連分野や獣医学関連分野や生物学関連分野を含んでもよく、より一般に、局所的運動及び/又は大域的運動を伴う任意の対象物(サンプル)に関連する分野を含んでいてもよい。
【0022】
以下に説明する例示的な実施形態は、眼科検査装置の幾つかの態様、眼科検査装置を制御する方法の幾つかの態様、眼科データ処理装置の幾つかの態様、眼科データ処理装置を制御する方法の幾つかの態様、眼科データ処理方法の幾つかの態様、プログラムの幾つかの態様、及び、記録媒体の幾つかの態様を提供する。これらの態様はいずれも単なる例示であり、発明を限定することを意図したものではない。
【0023】
<眼科検査装置の構成>
図1に示す眼科検査装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100、及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、被検眼Eを正面から撮影するための要素群(光学要素、機構など)が設けられている。OCTユニット100には、被検眼EにOCTスキャンを適用するための要素群(光学要素、機構など)の一部が設けられている。OCTスキャンのための要素群の他の一部は、眼底カメラユニット2に設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算や制御を実行する1以上のプロセッサを含む。これらに加え、眼科検査装置1は、被検者の顔を支持するための要素や、OCTスキャンが適用される部位を切り替えるための要素を備えていてもよい。前者の要素の例として、顎受けや額当てがある。後者の要素の例として、OCTスキャン適用部位を眼底から前眼部に切り替えるために使用されるレンズユニットがある。
【0024】
本明細書に開示された幾つかの要素の機能は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能を実行するハードウェア、又は、開示された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0025】
<眼底カメラユニット2>
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系が設けられている。取得される眼底Efの画像(眼底像、眼底写真等と呼ばれる)は、観察画像、撮影画像等の正面画像である。観察画像は、例えば近赤外光を用いた動画撮影により得られ、アライメント、フォーカシング、トラッキングなどに利用される。撮影画像は、例えば可視領域又は赤外領域のフラッシュ光を用いた静止画像である。
【0026】
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
【0027】
照明光学系10の観察光源11から出力された光(観察照明光)は、凹面鏡12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ系17、リレーレンズ18、絞り19、及びリレーレンズ系20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(眼底Ef)を照明する。観察照明光の被検眼Eからの戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系30のフォーカス(焦点位置)は、眼底Ef又は前眼部に合致するように調整される。
【0028】
撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、結像レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0029】
液晶ディスプレイ(LCD)39は固視標(固視標画像)を表示する。LCD39から出力された光束は、その一部がハーフミラー33Aに反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。LCD39における固視標画像の表示位置を変更することで、被検眼Eの視線を誘導する方向(固視方向、固視位置)が変更される。LCD等の表示デバイスの代わりに、例えば、発光素子アレイ、又は、発光素子とこれを移動する機構との組み合わせを用いてもよい。
【0030】
アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)に用いられるアライメント指標を生成する。発光ダイオード(LED)51から出力されたアライメント光は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。アライメント光の被検眼Eからの戻り光(角膜反射光等)は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(アライメント指標像)に基づいてマニュアルアライメントやオートアライメントを実行できる。
【0031】
従来と同様に、本例のアライメント指標像は、アライメント状態により位置が変化する2つの輝点像からなる。被検眼Eと光学系との相対位置がxy方向に変化すると、2つの輝点像が一体的にxy方向に変位する。被検眼Eと光学系との相対位置がz方向に変化すると、2つの輝点像の間の相対位置(距離)が変化する。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離が既定のワーキングディスタンスに一致すると、2つの輝点像が重なり合う。xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、所定のアライメントターゲット内又はその近傍に2つの輝点像が提示される。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離がワーキングディスタンスに一致し、且つ、xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、2つの輝点像が重なり合ってアライメントターゲット内に提示される。
【0032】
オートアライメントでは、データ処理部230が、2つの輝点像の位置を検出し、主制御部211が、2つの輝点像とアライメントターゲットとの位置関係に基づいて後述の移動機構150を制御する。マニュアルアライメントでは、主制御部211が、被検眼Eの観察画像とともに2つの輝点像を表示部241に表示させ、ユーザーが、表示された2つの輝点像を参照しながら操作部242を用いて移動機構150を動作させる。
【0033】
フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、フォーカス光学系60は照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱される。フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に傾斜配置される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。フォーカス光の被検眼Eからの戻り光(眼底反射光等)は、アライメント光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルフォーカシングやオートフォーカシングを実行できる。
【0034】
孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の撮影光路に、視度補正レンズ70及び71を選択的に挿入することができる。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラスレンズ(凸レンズ)である。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナスレンズ(凹レンズ)である。
【0035】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用光路とOCT用光路(測定アーム)とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。測定アームには、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44、及びリレーレンズ45が設けられている。
【0036】
リトロリフレクタ41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、それにより測定アームの長さが変更される。測定アーム長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0037】
分散補償部材42は、参照アームに配置された分散補償部材113(後述)とともに、測定光LSの分散特性と参照光LRの分散特性とを合わせるよう作用する。
【0038】
OCT合焦レンズ43は、測定アームのフォーカス調整を行うために測定アームに沿って移動される。撮影合焦レンズ31の移動、フォーカス光学系60の移動、及びOCT合焦レンズ43の移動を連係的に制御することができる。
【0039】
光スキャナ44は、実質的に、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ44は、測定アームにより導かれる測定光LSを偏向する。光スキャナ44は、例えば、x方向のスキャンを行うためのガルバノミラーと、y方向のスキャンを行うためのガルバノミラーとを含む、2次元スキャンが可能なガルバノスキャナである。
【0040】
<OCTユニット100>
図2に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを適用するための光学系が設けられている。この光学系は干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、測定アームによって被検眼Eに導かれた測定光の戻り光と参照アームによって導かれた参照光とを重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を検出する。干渉光学系により得られたデータ(検出信号)は、干渉光のスペクトルを表す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0041】
光源ユニット101は、例えば、少なくとも近赤外波長帯において出射波長を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。測定光LSの光路は測定アームと呼ばれ、参照光LRの光路は参照アームと呼ばれる。
【0042】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、リトロリフレクタ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、測定アームに配置された分散補償部材42とともに、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。リトロリフレクタ114は、これに入射する参照光LRの光路に沿って移動可能であり、それにより参照アームの長さが変更される。参照アーム長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0043】
リトロリフレクタ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119を通じてアッテネータ120に導かれてその光量が調整され、光ファイバ121を通じてファイバカプラ122に導かれる。
【0044】
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40によって平行光束に変換され、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱及び反射される。測定光LSの被検眼Eからの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0045】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを重ね合わせて干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、生成された干渉光を所定の分岐比(例えば1:1)で分岐することで一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0046】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードを含む。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をデータ収集システム(DAS)130に送る。
【0047】
データ収集システム130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐して2つの分岐光を生成し、これら分岐光の一方を光学的に遅延させ、これら分岐光を合成し、得られた合成光を検出し、その検出結果に基づいてクロックKCを生成する。データ収集システム130は、検出器125から入力される検出信号のサンプリングをクロックKCに基づいて実行する。データ収集システム130は、このサンプリングの結果を演算制御ユニット200に送る。
【0048】
本例では、測定アーム長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ41)と、参照アーム長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ114、又は参照ミラー)との双方が設けられているが、一方の要素のみが設けられていてもよい。また、測定アーム長と参照アーム長との間の差(光路長差)を変更するための要素はこれらに限定されず、任意の要素(光学部材、機構など)であってよい。
【0049】
<制御系・処理系>
眼科検査装置1の制御系及び処理系の構成例を
図3、
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dに示す。制御部210、画像データ構築部220、及びデータ処理部230は、例えば演算制御ユニット200に設けられる。眼科検査装置1は、外部装置との間でデータ通信を行うための通信デバイスを含んでいてもよい。眼科検査装置1は、記録媒体からのデータ読み出しと、記録媒体へのデータ書き込みとを行うためのドライブ装置(リーダ/ライタ)を含んでいてもよい。
【0050】
<制御部210>
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。また、
図4Aに示すように、本実施形態において、主制御部211は走査制御部2111を含み、記憶部212は走査プロトコル2121を記憶している。
【0051】
<主制御部211>
主制御部211は、プロセッサを含み、眼科検査装置1の各要素(
図1~
図4Dに示された要素を含む)を制御する。主制御部211は、プロセッサを含むハードウェアと、制御ソフトウェアとの協働によって実現される。走査制御部2111は、所定形状及び所定サイズの走査エリアに対するOCTスキャンの制御を行う。
【0052】
撮影合焦駆動部31Aは、主制御部211の制御の下に、撮影光路に配置された撮影合焦レンズ31と照明光路に配置されたフォーカス光学系60とを移動する。リトロリフレクタ(RR)駆動部41Aは、主制御部211の制御の下に、測定アームに設けられたリトロリフレクタ41を移動する。OCT合焦駆動部43Aは、主制御部211の制御の下に、測定アームに配置されたOCT合焦レンズ43を移動する。測定アームに設けられたリトロリフレクタ(RR)駆動部114Aは、主制御部211の制御の下に、参照アームに配置されたリトロリフレクタ114を移動する。各駆動部は、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。光スキャナ44は、主制御部211(走査制御部2111)の制御の下に動作する。
【0053】
移動機構150は、典型的には、眼底カメラユニット2を3次元的に移動するように構成されている。そのような移動機構150は、例えば、±x方向(左右方向)に移動可能に構成されたxステージと、xステージを移動するように構成されたx移動機構と、±y方向(上下方向)に移動可能に構成されたyステージと、yステージを移動するように構成されたy移動機構と、±z方向(奥行き方向)に移動可能に構成されたzステージと、zステージを移動するように構成されたz移動機構とを含む。x移動機構、y移動機構、及びz移動機構のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。
【0054】
<記憶部212>
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、OCT画像、眼底像、被検眼情報、制御情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。制御情報は、特定の制御に関する情報である。本実施形態の制御情報は、走査プロトコル2121を含む。
【0055】
走査プロトコル2121は、所定形状及び所定サイズの走査エリアに関するOCTスキャンのための制御の内容に関する取り決めであり、各種制御パラメータ(走査制御パラメータ)の組を含む。走査プロトコル2121は、走査モード毎のプロトコルを含む。本実施形態の走査プロトコル2121は、リサジュースキャンのプロトコルを少なくとも含み、更に、例えば、Bスキャン(ラインスキャン)、クロススキャン、ラジアルスキャン、ラスタースキャンなどのプロトコルを含んでいてもよい。
【0056】
本実施形態の走査制御パラメータは、光スキャナ44に対する制御の内容を示すパラメータを少なくとも含む。このパラメータは、例えば、スキャンパターンを示すパラメータ、スキャン速度を示すパラメータ、スキャン間隔を示すパラメータなどがある。スキャンパターンは、スキャンの経路の形状を示し、その例として、リサジューパターン、ラインパターン、クロスパターン、ラジアルパターン、ラスターパターンなどがある。スキャン速度は、例えば、Aスキャンの繰り返しレートとして定義される。スキャン間隔は、例えば、隣接するAスキャンの間隔として、つまりスキャン点の配列間隔として定義される。
【0057】
なお、特許文献1~4並びに非特許文献1及び2の開示のような従来技術と同様に、本実施形態の「リサジュースキャン」は、互いに直交する2つの単振動を順序対として得られる点の軌跡が描くパターン(リサジューパターン、リサジュー図形、リサジュー曲線、リサジュー関数、バウディッチ曲線)を経路とした「狭義の」リサジュースキャンだけでなく、一連のサイクルを含む所定の2次元パターンに従う「広義の」リサジュースキャンであってもよい。
【0058】
本実施形態の光スキャナ44は、例えば、x方向に測定光LSを偏向する第1ガルバノミラーと、y方向に測定光LSを偏向する第2ガルバノミラーとを含む。リサジュースキャンは、x方向に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返すように第1ガルバノミラーの制御を行いつつ、y方向に沿った偏向方向の変化を第2周期で繰り返すように第2ガルバノミラーの制御を行うことによって実現される。ここで、第1周期と第2周期とは互いに異なる。
【0059】
例えば、本実施形態のリサジュースキャンは、2つの正弦波の組み合わせから得られる狭義のリサジューパターンのスキャンだけでなく、正弦波に特定項(例えば、奇数次の多項式)を加えて得られるパターンのスキャンや、三角波に基づくパターンのスキャンであってもよい。
【0060】
「サイクル」は、一般に、或る長さを持つ複数のサンプリング点から構成されるオブジェクトを意味する。本実施形態のサイクルは、例えば、閉曲線又はほぼ閉曲線(実質的閉曲線、略閉曲線)であってよい。換言すると、本実施形態のサイクルは、その始点と終点とが一致又はほぼ一致していてよい。
【0061】
典型的には、走査プロトコル2121はリサジュー関数に基づいて設定される。非特許文献1の式(9)に示すように、リサジュー関数は、例えば、次のパラメトリック方程式系で表現される:x(ti)=A・cos(2π・(fA/n)・ti)、y(ti)=A・cos(2π・(fA・(n-2)/n2)・ti)。
【0062】
ここで、「x」はリサジュー曲線が定義される2次元座標系の横軸、「y」は縦軸、「ti」はリサジュースキャンにおける第i番目のAラインの収集時点、「A」はスキャン範囲(振幅)、「fA」はAラインの収集レート(スキャン速度、Aスキャンの繰り返しレート)、nはx方向(横軸方向)の各サイクルにおけるAラインの個数をそれぞれ示す。
【0063】
このような例示的なリサジュースキャンにおけるスキャンラインの分布(スキャンパターン)の例を
図5に示す。
【0064】
(狭義又は広義の)リサジュースキャンに含まれる任意のサイクル対(サイクルのペア)は、少なくとも1点(特に2点以上)で互いに交差する。このような交差を利用することで、リサジュースキャンにおける任意のサイクル対から収集されたデータ対の間のレジストレーションを行うことが可能となり、非特許文献1(又は2)に開示された画像構築手法及びモーションアーティファクト補正手法を実装することが可能となる。以下、特に言及しない限り、非特許文献1に記載された手法を適用する場合について説明する。
【0065】
記憶部212に記憶される制御情報は上記の例に限定されない。例えば、制御情報はフォーカス制御を行うための情報(フォーカス制御パラメータ)を含んでいてよい。
【0066】
フォーカス制御パラメータは、OCT合焦駆動部43Aに対する制御の内容を示すパラメータである。フォーカス制御パラメータの例として、測定アームの焦点位置を示すパラメータ、焦点位置の移動速度を示すパラメータ、焦点位置の移動加速度を示すパラメータなどがある。焦点位置を示すパラメータは、例えば、OCT合焦レンズ43の位置を示すパラメータである。焦点位置の移動速度を示すパラメータは、例えば、OCT合焦レンズ43の移動速度を示すパラメータである。焦点位置の移動加速度を示すパラメータは、例えば、OCT合焦レンズ43の移動加速度を示すパラメータである。移動速度は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。移動加速度についても同様である。
【0067】
このようなフォーカス制御パラメータによれば、眼底Efの形状(典型的には、中心部が深く且つ周辺部が浅い凹形状)や収差分布に応じたフォーカス調整が可能になる。フォーカス制御は、例えば、走査制御(リサジュースキャンの繰り返し制御)と連係的に実行される。それにより、モーションアーティファクトが補正され、且つ、スキャン範囲の全体に亘ってピントが合った、高品質の画像が得られる。
【0068】
<走査制御部2111>
走査制御部2111は、走査プロトコル2121に基づいて少なくとも光スキャナ44を制御する。走査制御部2111は、走査プロトコル2121に基づく光スキャナ44の制御と連係して光源ユニット101の制御を更に実行してもよい。走査制御部2111は、プロセッサを含むハードウェアと、走査プロトコル2121を含む走査制御ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0069】
<画像データ構築部220>
画像データ構築部220は、プロセッサを含み、データ収集システム130から入力された信号(サンプリングデータ)に基づいて、眼底EfのOCT画像データを構築する。このOCT画像データ構築は、従来のフーリエドメインOCT(スウェプトソースOCT)と同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。他のタイプのOCT手法が採用される場合、画像データ構築部220は、そのOCTタイプに対応した公知の処理を実行することによってOCT画像データを構築する。
【0070】
例えば、画像データ構築部220は、サンプリングデータから各スキャン点(各Aライン)に対応する画像データ(Aスキャン画像データ)を構築する処理を少なくとも実行するように構成されている。画像データ構築部220により構築される画像データは、画像化される前のデータであってもよく、例えば、深さ方向(z方向、光軸方向、Aライン方向)に沿った信号プロファイル(反射プロファイル、散乱プロファイル)であってもよい。
【0071】
前述したように、本実施形態ではリサジュースキャンが眼底Efに適用される。画像データ構築部220は、データ処理部230とともに、リサジュースキャンによる収集とデータ収集システム130によるサンプリングとを介して取得されたデータセットに対し、例えば非特許文献1に開示された画像構築手法及びモーションアーティファクト補正手法を適用することによって、眼底Efの3次元画像データを構築することができる。
【0072】
画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データにレンダリングを適用して表示用画像を形成することができる。適用可能なレンダリング法の例として、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、最大値投影(MIP)、最小値投影(MinIP)、多断面再構成(MPR)などがある。
【0073】
画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データに基づいてOCT正面画像(en face OCT image)を構築することが可能である。例えば、画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データをz方向(Aライン方向、光軸方向、深さ方向)に投影することでプロジェクションデータを構築することができる。また、画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元画像データの一部である部分的3次元画像データをz方向に投影することでシャドウグラムを構築することができる。この部分的3次元画像データは、例えば、任意のセグメンテーション手法を利用して設定されてよい。セグメンテーションは、画像中の部分領域を特定する処理である。本例では、眼底Efの1つ以上の組織(部位)に相当する画像領域を特定するためにセグメンテーションを行うことができる。
【0074】
シャドウグラム構築処理に限らず、実施形態のセグメンテーションは、例えば、閾値処理、エッジ検出、フィルタリング、機械学習(例えば、セマンティックセグメンテーション)など、任意の公知の技術を利用可能である。
【0075】
眼科検査装置1は、OCT血管造影(OCT-Angiography)を実行可能であってよい。OCT血管造影は、血管が強調された画像を構築するイメージング技術である(例えば、非特許文献2、特表2015-515894号公報などを参照)。一般に、眼底組織(構造)は短時間の間には変化しないが、血管内部の血流は短時間の間にも変化する。OCT血管造影では、このような時間的変化が存在する部分(血流信号)を強調して画像を生成する。なお、OCT血管造影は、OCTモーションコントラスト撮影(motion contrast imaging)などとも呼ばれる。また、OCT血管造影により取得される画像は、血管造影画像、アンジオグラム(angiogram)、モーションコントラスト画像などと呼ばれる。
【0076】
OCT血管造影を実行可能である場合、眼科検査装置1は、眼底Efの同じ領域を所定回数だけ繰り返しスキャンする。例えば、眼科検査装置1は、前述した走査制御(リサジュースキャンの繰り返し制御)を所定回数だけ繰り返し実行する。それにより、リサジュースキャンの適用領域から複数の3次元データ(時系列な3次元データセット)がデータ収集システム130によって収集される。画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、この3次元データセットからモーションコントラスト画像を構築することができる。このモーションコントラスト画像は、眼底Efの血流に起因する干渉信号の時間的変化が強調された血管造影画像である。この血管造影画像は、眼底Efの血管の3次元的な分布を表現した3次元血管造影画像データである。
【0077】
画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、この3次元血管造影画像データから、任意の2次元血管造影画像データ及び/又は任意の擬似的3次元血管造影画像データを構築することが可能である。例えば、画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元血管造影画像データに多断面再構成を適用することにより、眼底Efの任意の断面を表す2次元血管造影画像データを構築することができる。また、画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、3次元血管造影画像データにプロジェクション画像化又はシャドウグラム化を適用することにより、眼底Efの正面血管造影画像データを構築することができる。
【0078】
本実施形態において、画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、データ収集システム130により収集されたデータから複数のストリップを構築する。非特許文献1に記載されているように、画像データ構築部220及び/又はデータ処理部230は、リサジュースキャンで収集されたボリューム(3次元データ)を比較的大きな動きが介在しない複数のサブボリュームに分割し、各サブボリュームの正面プロジェクション画像(en face projection)を構築する。この正面プロジェクション画像がストリップである。このようにして得られた複数のストリップに対してレジストレーション及びマージ処理を適用することにより、モーションアーティファクトが補正された画像が得られる。後述するように、本例においては、レジストレーション及びマージ処理はデータ処理部230によって実行される。
【0079】
画像データ構築部220は、プロセッサを含むハードウェアと、画像構築ソフトウェアとの協働によって実現される。なお、幾つかの態様において、画像データ構築部220とデータ処理部230とが一体的に構成されていてよい。
【0080】
<データ処理部230>
データ処理部230は、プロセッサを含み、被検眼Eの画像に対して各種のデータ処理を適用する。例えば、データ処理部230は、プロセッサを含むハードウェアと、データ処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0081】
データ処理部230は、眼底Efについて取得された2つの画像の間の位置合わせ(レジストレーション)を行うように構成されてよい。例えば、データ処理部230は、OCTで取得された3次元画像データと、眼底カメラユニット2により取得された正面画像との間のレジストレーションを行うように構成される。また、データ処理部230は、OCTで取得された2つのOCT画像の間のレジストレーションを行うように構成される。また、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により取得された2つの正面画像の間のレジストレーションを行うように構成される。また、OCT画像の解析結果や、正面画像の解析結果に対してレジストレーションを適用するように構成されてもよい。これらのレジストレーションは、公知の手法によって実行可能であり、例えば特徴点抽出とアフィン変換とを含む。
【0082】
更に、データ処理部230は、リサジュースキャンを用いて得られたデータセットを処理するように構成される。前述したように、画像データ構築部220は、例えば、リサジュースキャンで収集されたデータから複数のストリップを構築するように構成されている。データ処理部230は、これらストリップに対してレジストレーション及びマージ処理を適用することにより、モーションアーティファクトが補正された画像を構築するように構成されている。
【0083】
リサジュースキャンの特性として、任意の2つのストリップはオーバーラップ領域を有する。非特許文献1に記載された手法と同様に、データ処理部230は、ストリップ間のオーバーラップを利用してストリップ間のレジストレーションを行うように構成される。データ処理部230は、まず、画像データ構築部220により構築された複数のストリップを大きさ(面積等)に従って順序付け(第1~第Nのストリップ)、最大のストリップである第1のストリップを初期基準ストリップに指定する。次に、データ処理部230は、第1のストリップを基準として第2のストリップのレジストレーションを行い、第1のストリップと第2のストリップとをマージする(合成する)。データ処理部230は、これにより得られたマージストリップを基準として第3のストリップのレジストレーションを行い、このマージストリップと第3のストリップとをマージする。このようなレジストレーション及びマージ処理を上記順序に従って順次に実行することにより第1~第Nのストリップの位置合わせ及び貼り合わせがなされ、モーションアーティファクトが補正された画像が得られる。
【0084】
このようなレジストレーションでは、基準ストリップと他のストリップとの間の相対位置を求めるために相互相関関数が利用されるが、ストリップは任意の形状を有するため、各ストリップを特定形状(例えば正方形状)の画像として扱うためのマスクを用いてストリップ間の相関演算が行われる(非特許文献1のAppendix Aを参照)。
【0085】
前述したように、ストリップは所定階調の強度画像であり、マスク画像は二値画像であるため、ストリップの画素値の絶対値とマスクの画素値の絶対値との差が大きくなり、ストリップとマスクとを用いた相関演算におけるマスクの効果が無視されて正しい相関係数が得られないおそれがある。特に、コスト等の観点から、ストリップ間の相関係数を求めるために単精度浮動小数点型(フロート型)の演算を採用した場合、有効桁数の少なさに起因する丸め誤差の影響により、この問題が顕著に現れる。
【0086】
本実施形態では、丸め誤差の問題に対処するために、更には被検眼Eの動きの検出や評価を行うために、
図4B~
図4Dに示す構成を有するデータ処理部230が採用される。
【0087】
図4Bに示すように、本例のデータ処理部230は、画像データ処理部231と、xy位置履歴データ生成部232と、zシフト量算出部233と、z位置履歴データ生成部234と、可視化データ生成部235と、画像データ補正部236と、評価データ生成部237と、位置履歴データ補正部238とを含んでいる。
【0088】
<画像データ処理部231>
画像データ処理部231は、画像データ構築部220により構築された画像データを処理するように構成されている。
図4Cに示すように、画像データ処理部231は、マスク画像生成部2311と、範囲調整部2312と、合成画像生成部2313と、相互相関関数算出部2314と、相関係数算出部2315と、xyシフト量算出部2316と、レジストレーション部2317と、マージ処理部2318とを含んでいる。以下に説明する例では、任意の2つのストリップを考慮し、その一方が基準ストリップ(reference strip)に指定され、この基準ストリップに対して他方のストリップ(対象ストリップ;registering strip)がレジストレーションされる。
【0089】
<マスク画像生成部2311>
マスク画像生成部2311は、基準ストリップに応じた基準マスク画像と、対象ストリップに応じた対象マスク画像とを生成する。マスク画像の幾つかの例を以下に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0090】
マスク画像の輪郭形状は、例えば矩形であり、典型的には正方形である。基準マスク画像の形状と対象マスク画像の形状とは同じであってよい。また、基準マスク画像の寸法と対象マスク画像の寸法とは同じであってよい。
【0091】
マスク画像の画素値の範囲は、例えば閉区間[0,1]に含まれるように設定される。典型的には、マスク画像は、画素値が0又は1の二値画像であってよい。具体例として、マスク画像は、ストリップの定義域に対応する領域内の画素の値が1であり、他の画素の値が0である二値画像である。換言すると、非特許文献1の式(20)に示すように、例示的なマスク画像の画素値は、対応するストリップの画像エリアにおける値が1であり、他のエリアにおける値が0である。
【0092】
<範囲調整部2312>
範囲調整部2312は、基準マスク画像の画素値の範囲と、対象マスク画像の画素値の範囲とに基づいて、基準ストリップの画素値の範囲と、対象ストリップの画素値の範囲とを調整するように構成される。典型的には、範囲調整部2312は、ストリップの画素値の範囲とマスク画像の画素値の範囲との間の差を小さくするように、基準ストリップの画素値の範囲及び対象ストリップの画素値の範囲の調整を行う。
【0093】
一般に、範囲調整部2312は、基準ストリップの画素値の範囲と、対象ストリップの画素値の範囲と、マスク画像の画素値の範囲とを相対的に調整する。典型的な例では、基準ストリップに適用される基準マスク画像と、対象ストリップに適用される対象マスク画像とは異なり、範囲調整部2312は、基準ストリップの画素値の範囲と、対象ストリップの画素値の範囲と、基準マスク画像の画素値の範囲と、対象ストリップの画素値の範囲とを相対的に調整する。
【0094】
範囲調整部2312は、基準ストリップの画素値の範囲と基準マスク画像の画素値の範囲とを小さくするように基準ストリップの画素値の範囲と基準マスク画像の画素値の範囲とを調整し、且つ、対象ストリップの画素値の範囲と対象マスク画像の画素値の範囲とを小さくするように、対象ストリップの画素値の範囲と対象ストリップの画素値の範囲とを相対的に調整するように構成される。
【0095】
範囲調整部2312は、ストリップ及びマスク画像の一方の画素値の範囲を他方の画素値の範囲に一致させるように、ストリップの画素値の範囲とマスク画像の画素値の範囲とを調整するように構成されてよい。例えば、範囲調整部2312は、基準ストリップの画素値の範囲と基準マスク画像の画素値の範囲とを一致させるように基準ストリップの画素値の範囲と基準マスク画像の画素値の範囲とを調整し、且つ、対象ストリップの画素値の範囲と対象マスク画像の画素値の範囲とを一致させるように、対象ストリップの画素値の範囲と対象ストリップの画素値の範囲とを相対的に調整するように構成されてよい。
【0096】
例えば、範囲調整部2312は、マスク画像の画素値の範囲に応じてストリップの画素値の範囲を正規化するように構成される。この正規化(規格化)の幾つかの例を以下に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0097】
正規化の第1の例を説明する。マスク画像の画素値の範囲が閉区間[0,1]に含まれる場合において、範囲調整部2312は、ストリップの各画素の値を、このストリップにおける最大画素値で除算する。本例では、範囲調整部2312は、まず、ストリップの全ての画素の値を比較して最大値(最大画素値)を特定し、このストリップの各画素の値を最大画素値で除算する。これにより、ストリップの画素値の範囲が、マスク画像の画素値の範囲と同じ閉区間[0,1]に一致される。
【0098】
正規化の第2の例を説明する。マスク画像の画素値の範囲が閉区間[0,1]に含まれる場合において、範囲調整部2312は、ストリップの各画素の値を、このストリップの画素値の範囲の最大値で除算する。ストリップの画素値の範囲は予め設定されており、範囲調整部2312は、この範囲の上限値(最大値)でストリップの各画素の値を除算する。本例によっても、ストリップの画素値の範囲が、マスク画像の画素値の範囲と同じ閉区間[0,1]に一致される。
【0099】
範囲調整部2312が実行する処理により、ストリップの画素値の絶対値とマスクの画素値の絶対値との差を小さくすることができ、ストリップとマスクとを用いた相関演算においてマスクの効果が無視されることが無くなり、相関係数の算出を正確に行うことが可能となる。特に、単精度浮動小数点型(フロート型)の演算を採用した場合であっても、有効桁数の少なさに起因する丸め誤差の影響を排除する(低減する)ことができる。
【0100】
本明細書ではストリップの画素値の範囲のみを変更する例について主に説明するが、マスク画像の画素値の範囲のみを変更してもよいし、ストリップの画素値の範囲とマスク画像の画素値の範囲との双方を変更してもよい。
【0101】
<合成画像生成部2313>
範囲調整部2312による画素値範囲調整が適用されたストリップ及びマスク画像について、合成画像生成部2313は、基準ストリップ及び対象ストリップのそれぞれにマスク画像を合成して2つの合成画像を生成する。典型的には、合成画像生成部2313は、基準ストリップに基準マスク画像を合成して基準合成画像を生成し、且つ、対象ストリップに対象マスク画像を合成して対象合成画像を生成する。
【0102】
ストリップとマスク画像とを合成する処理は、非特許文献1と同じ要領で実行されてよい。ただし、非特許文献1の手法とは異なり、本実施形態では、ストリップの画素値の範囲とマスク画像の画素値の範囲との間の差を小さくなるように調整されている。典型的には、基準マスク画像及び対象マスク画像の画素値の範囲に一致するように、基準ストリップ及び対象ストリップの画素値の範囲が正規化されている。
【0103】
例えば、非特許文献1の式(19)と同じ要領で、合成画像生成部2313は、画素値範囲が正規化されたストリップを、マスク画像と同じ寸法及び同じ形状の画像に埋め込むように構成されてよい。
【0104】
更に、合成画像生成部2313は、ストリップの埋め込み画像とマスク画像との合成画像を生成する。この合成画像は、非特許文献1における「f´(r)mf(r)」(第1800頁の第2行目等)に相当するが、前述したように、ストリップの埋め込み画像の値が式(19)のそれとは異なっている。
【0105】
<相互相関関数算出部2314>
相互相関関数算出部2314は、合成画像生成部2313により生成された2つの合成画像に基づいて複数の相互相関関数を求める。相互相関関数の算出は、非特許文献1と同じ要領で実行される。例えば、相互相関関数算出部2314は、基準ストリップ及び基準マスク画像から生成された基準合成画像と、対象ストリップ及び対象マスク画像から生成された対象合成画像とに基づいて、非特許文献1の式(33)に含まれる6個の相互相関関数(画像相互相関、image cross-correlation)を算出する。
【0106】
<相関係数算出部2315>
相関係数算出部2315は、相互相関関数算出部2314により算出された複数の相互相関関数に基づいて相関係数を算出する。この演算は、非特許文献1の式(33)に従う。
【0107】
<xyシフト量算出部2316>
xyシフト量算出部2316は、相関係数算出部2315により算出された相関係数に基づいて、基準ストリップと対象ストリップとの間のxy方向(ラテラル方向、横方向)のシフト量を算出する。
【0108】
例えば、xy方向シフト量を算出するための演算は、非特許文献1の「rough lateral motion correction」(第1787頁)に相当する演算を含み、xyシフト量算出部2316は、相互相関関数の最大値を求めることによってxy方向シフト量を推定するように構成される。
【0109】
更に、xyシフト量算出部2316は、スロードリフト(slow drift)やトレモア(tremor)等の眼球運動に起因するラテラル方向の小さなシフト量を算出するために、非特許文献1の「fine lateral motion correction」(第1789頁)に相当する演算を実行するように構成されてもよい。
【0110】
<レジストレーション部2317>
レジストレーション部2317は、xyシフト量算出部2316により算出されたラテラル方向のシフト量に基づいて、ラテラル方向のレジストレーションを実行する。例えば、このレジストレーションは、非特許文献1の「rough lateral motion correction」(第1787頁)に相当する処理を含む。レジストレーション部2317は、xyシフト量算出部2316により算出されたラテラル方向のシフト量を打ち消すように、基準ストリップと対象ストリップとの間のレジストレーションを実行することができる。
【0111】
xyシフト量算出部2316が非特許文献1の「fine lateral motion correction」(第1789頁)に相当する演算を実行した場合、レジストレーション部2317は、非特許文献1の「fine lateral motion correction」(第1789頁)に相当するレジストレーションを実行することによって、基準ストリップと対象ストリップとの間のラテラル方向の小さなモーションアーティファクトを除去することができる。
【0112】
xyシフト量算出部2316により算出されたラテラル方向のシフト量は、xy位置履歴データ生成部232に送られる。
【0113】
<マージ処理部2318>
マージ処理部2318は、レジストレーション部2317により相対位置調整がなされた基準ストリップと対象ストリップとのマージ画像を構築する。この処理も非特許文献1に記載された手法と同じ要領で実行される。
【0114】
前述したように、画像データ処理部231は、画像データ構築部220により構築された複数のストリップを大きさに応じた順序付けに従って、上記した一連の処理を逐次に実行する。これにより、画像データ構築部220により構築された複数のストリップから、ラテラル方向のモーションアーティファクトが補正されたマージ画像が得られる。このマージ画像は、典型的には、リサジュースキャンが適用された範囲全体を表現した画像である。
【0115】
なお、前述したように、複数のストリップは、リサジュースキャンで収集されたボリューム(3次元データ)を分割して得られた複数のサブボリュームに基づく複数の正面プロジェクション画像である。したがって、画像データ処理部231により複数のストリップから構築されるマージ画像は、ラテラル方向の位置調整がなされた複数のサブボリューム(及びそれらのマージ画像)を提供する。ラテラル方向に直交する深さ方向のレジストレーション及びマージ処理は、本例では、zシフト量算出部233及び画像データ補正部236によって実行される(後述)。
【0116】
<xy位置履歴データ生成部232>
画像データ構築部220により構築された複数のストリップの大きさに応じた順序付けに従って上記一連の処理が逐次に実行されているとき、xyシフト量算出部2316は、逐次に設定されるストリップのペア(基準ストリップ及び対象ストリップ)の間のラテラル方向のシフト量を逐次に算出する。xy位置履歴データ生成部232は、xyシフト量算出部2316により逐次に算出されるシフト量データを収集する。これにより、xy位置履歴データ生成部232は、複数のストリップの間におけるラテラル方向のシフト量の集合を取得する。
【0117】
xy位置履歴データ生成部232は、収集されたシフト量の集合を複数のストリップに対応するスキャン順序に従って配列する。つまり、xy位置履歴データ生成部232は、収集されたシフト量の集合を時系列(時間経過、時間軸、スキャン順序)に従って配列する(順序集合)。これにより、リサジュースキャンが適用されていた期間における被検眼Eのラテラル方向の動きを示すデータ、つまり、被検眼Eのラテラル方向における位置の履歴を示すデータが得られる。このデータをxy位置履歴データと呼ぶ。
【0118】
本例の「時間」は、時間に関するパラメータや単位(例えば、マイクロ秒)で表現されるに限定されず、時間に関するパラメータや単位と等価(相互に変換可能)な任意のパラメータや単位で表現されてよい。例えば、リサジュースキャンの順序(各サイクルに対応するスキャン順序)は、スキャン間隔が既知(例えば一定間隔)である場合には、時間に関するパラメータや単位と等価である。
【0119】
<zシフト量算出部233>
zシフト量算出部233は、リサジュースキャンで収集されたボリュームを分割して得られた複数のサブボリューム(つまり、複数のストリップの元になった複数のサブボリューム)の間のz方向(Aライン方向、光軸方向、深さ方向)のシフト量を算出する。
【0120】
本例は、画像データ処理部231によってxy方向(ラテラル方向、横方向)の位置調整を実行した後に、zシフト量算出部233及び画像データ補正部236によってz方向の位置調整を実行するように構成されている。すなわち、本例のzシフト量算出部233は、画像データ処理部231によって得られたデータ(例えば、xy方向シフト量データ、マージ画像)を利用してz方向のシフト量を算出するように構成されている。
【0121】
zシフト量算出部233が実行する処理の例を説明する。xy方向シフト量算出において考慮されるストリップのペア(基準ストリップ及び対象ストリップ)と同様に、z方向シフト量算出においてもサブボリュームのペアが考慮される。サブボリュームのペアは、xy方向シフト量算出において考慮された基準ストリップ及び対象ストリップに対応する2つのサブボリュームであってよく、これらサブボリュームをそれぞれ基準サブボリューム及び対象サブボリュームと呼ぶ。
【0122】
対応する基準ストリップ及び対象ストリップの間のxy方向のレジストレーションの結果に基づいて、基準サブボリューム及び対象サブボリュームは、xy方向の位置調整がなされている。また、前述したように、リサジュースキャンにおける任意の2つのストリップは4箇所で重複(交差)しており、したがって、任意の2つのサブボリュームも4箇所で重複(交差)している。
【0123】
zシフト量算出部233は、まず、xy方向の位置調整がなされた基準サブボリュームと対象サブボリュームとの交差領域(共通領域)を特定する。各交差領域は、3次元画像データである。
【0124】
次に、zシフト量算出部233は、特定された交差領域に断面を設定する。この断面は、例えば、xy平面における任意の軸(例えば、x軸、y軸、又は、x軸及びy軸の双方に斜交する軸)とz軸とによって貼られた平面である。なお、断面は平面に限定されず、曲面などであってもよい。
【0125】
次に、zシフト量算出部233は、設定された断面の画像を基準サブボリュームから構築し、且つ、同断面の画像を対象サブボリュームから構築する。基準サブボリュームから構築された断面画像を基準断面画像と呼び、対象サブボリュームから構築された断面画像を対象断面画像と呼ぶ。基準断面画像と対象断面画像とは、xy方向のレジストレーションがなされた基準サブボリュームと対象サブボリュームとの交差領域における同じ断面を表す画像である。
【0126】
次に、zシフト量算出部233は、基準断面画像を解析して被検眼Eの所定部位の像を特定し、且つ、対象断面画像を解析して同部位の像を特定する。この部位は、任意の部位であってよく、例えば眼底Efの表面(網膜表面、内境界膜、網膜と硝子体との境界)であってよい。また、被検眼Eに人工物が移植されている場合、この人工物の像を特定してもよい。所定部位の像を特定するための解析は、例えば、セグメンテーションを含んでいてよい。
【0127】
次に、zシフト量算出部233は、基準断面画像から特定された所定部位の像(基準像)のz座標を求め、且つ、対象断面画像から特定された所定部位の像(対象像)のz座標を求める。典型的には、所定部位の像は複数の画素からなり、これらの画素のz座標は一定ではない。例えば、一般に、網膜表面の大局的な形状は+z方向に凸な湾曲形状であり、その局所的箇所の像(基準像及び対象像の例)はz軸に対して少なくとも部分的に傾斜している。zシフト量算出部233は、所定部位の像を構成する画素群の少なくとも1つの画素に基づいて、この像のz座標を求めることができる。例えば、この画素群からz座標の統計量を求め、この統計量を当該像のz座標に採用することができる。この統計量は、任意の代表値(要約統計量)であってよく、その例として、最大値、最小値、平均値、中央値、最頻値、分位点などがある。一方、所定部位の像が単一の画素からなる場合には、この画素のz座標を所定部位のz座標として採用することができる。
【0128】
次に、zシフト量算出部233は、基準像のz座標と対象像のz座標との差(z方向のシフト量)を求める。幾つかの態様では、z方向シフト量が閾値を超える場合に画像データ補正部236による補正処理を実行するように処理制御を行うことができる。この閾値は、例えば、ゼロ又は正値であり、予め設定された固定値又は可変値であってよい。
【0129】
上記した例では、3次元画像データ(サブボリューム)から2次元画像データ(断面画像)を構築してz方向シフト量を求めているが、幾つかの態様では、2次元画像データの構築を行うことなく3次元画像データからz方向シフト量を求めてもよい。この場合、基準断面画像及び対象断面画像のペアに対して実行されたものと同様の処理を基準サブボリューム及び対象サブボリュームのペアに対して実行することができる。
【0130】
上記した例では、3次元画像データ(サブボリューム)から2次元画像データ(断面画像)を構築し、この2次元画像データから所定部位の像を特定してz方向シフト量を求めているが、幾つかの態様では、3次元画像データから所定部位の像を特定し、この所定部位の像の2次元画像データを構築してz方向シフト量を求めてもよい。
【0131】
また、zシフト量算出部233は、基準サブボリューム及び対象サブボリュームのペアに基づき算出される相関係数(例えば、相関係数算出部2315により算出される相関係数)に基づいて、基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のz方向シフト量を求めるように構成されてもよい。z方向シフト量を算出するための方法は以上に例示した方法には限定されず、基準サブボリューム及び対象サブボリュームのペアに対して適用可能な任意の方法であってよく、又は、他のオブジェクトペアに対して適用可能な任意の方法であってもよい。
【0132】
<z位置履歴データ生成部234>
zシフト量算出部233は、リサジュースキャンで収集されたボリュームを分割して得られた複数のサブボリュームから逐次に設定されるサブボリュームのペア(基準サブボリュームと対象サブボリュームとのペア)の間のz方向シフト量を逐次に算出する。z位置履歴データ生成部234は、zシフト量算出部233により逐次に算出されるシフト量データを収集する。これにより、z位置履歴データ生成部234は、リサジュースキャンで収集されたボリュームを分割して得られた複数のサブボリュームの間におけるz方向シフト量の集合を取得する。
【0133】
z位置履歴データ生成部234は、収集されたz方向シフト量の集合を複数のサブボリュームに対応するスキャン順序に従って配列する。つまり、z位置履歴データ生成部234は、収集されたz方向シフト量の集合を時系列(時間経過、時間軸)に従って配列する(順序集合)。これにより、リサジュースキャンが適用されていた期間における被検眼Eのz方向の動きを示すデータ、つまり、被検眼Eのz方向における位置の履歴を示すデータが得られる。このデータをz位置履歴データと呼ぶ。
【0134】
本態様では、xy位置履歴データ生成部232により取得されたxy位置履歴データと、z位置履歴データ生成部234により取得されたz位置履歴データとをまとめることで、リサジュースキャンが適用されていた期間における被検眼Eの3次元的な動きを示すデータ、つまり、被検眼Eの3次元方向(xyz方向)における位置の履歴を示すデータが得られる。
【0135】
xy位置履歴データ生成部232及びz位置履歴データ生成部234によって生成される位置履歴データは、時間情報と位置情報とが互いに関連付けられたデータである。前述した位置履歴データの生成方法から分かるように、位置履歴データにおける位置情報は、或る時点を基準とした変位を表されていてよい。位置情報の基準時点は、例えば、リサジュースキャンが適用されていた期間の初期時点であってよい。
【0136】
幾つかの態様において、リサジュースキャンで収集されたボリュームを分割して得られた複数のサブボリューム(それらに基づく複数のストリップ)に対してスキャン順序(つまり時系列順)に応じた序数m=1、2、・・・、M(Mは2以上の整数)を割り当てると、位置履歴データは{(Δxm、Δym、Δzm、tm):m=1、2、・・・、M}と表される。
【0137】
ここで、tmは時間(時点)を表し、Δxm、Δym及びΔzmは時点tmにおける被検眼Eのx方向の変位、y方向の変位、及びz方向の変位をそれぞれ表す。例えば、Δx1、Δy1及びΔz1はいずれもゼロであり、Δxm、Δym及びΔzm(m=2~M)は、時点tm-1から時点tmまでの期間における被検眼Eのx方向の変位、y方向の変位、及びz方向の変位をそれぞれ表す。
【0138】
他の態様に係る位置履歴データは、上記の例示的な位置履歴データ{(Δxm、Δym、Δzm、tm):m=1、2、・・・、M}から再帰的に得られる、時間情報と3次元座標とを対応付けたデータであってよい。このような位置履歴データにおいて、時点tmにおけるx座標xmは、xm=Δx1+・・・+Δxmによって定義される(m=1~M)。同様に、時点tmにおけるy座標ymは、ym=Δy1+・・・+Δymによって定義され、時点tmにおけるz座標zmは、zm=Δz1+・・・+Δzmによって定義される。このようにして得られる順序集合{(xm、ym、zm、tm):m=1、2、・・・、M}は位置履歴データの例である。
【0139】
位置履歴データの態様はこれらの例に限定されない。例えば、位置情報は3次元座標に限定されず、1次元座標又は2次元座標であってもよい。また、位置履歴データは、離散的データに限定されず、連続的データであってもよい。以下に説明する可視化データ生成部235によって幾つかの態様の位置履歴データが提供される。
【0140】
<可視化データ生成部235>
可視化データ生成部235は、xy位置履歴データ生成部232及びz位置履歴データ生成部234によって生成された位置履歴データに基づいて、被検眼Eの位置の時系列変化の可視化データを生成する。可視化データは、被検眼Eの位置の時系列変化を視覚情報として提示する(ビジュアライゼーション)ために用いることが可能なデータである。なお、可視化データに基づき提示される視覚情報も同じく可視化データと呼ぶことがある。
【0141】
可視化データ生成部235により生成される可視化データの例としてグラフデータがある。グラフデータは、被検眼Eの位置の時系列変化を表すグラフを視覚情報として提示するために用いることが可能なデータである。幾つかの態様において、このグラフは、任意の数学的図式(mathematical diagram)や統計図表(chart)であってよく、例えば、折れ線グラフ、回帰曲線グラフ、棒グラフ、ヒートマップなどであってよい。グラフデータの幾つかの例を以下に説明する。
【0142】
まず、第1の例のグラフデータ(第1グラフデータ)について説明する。第1グラフデータは、所定の座標系で定義される被検眼Eの位置の所定方向成分の時系列変化を表す。
【0143】
幾つかの態様の第1グラフデータは、xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データとz位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データとに基づき生成されるグラフデータであってよく、例えば、xyz座標系で定義される被検眼Eの位置のx方向成分の時系列変化を表すグラフデータ、y方向成分の時系列変化を表すグラフデータ、及び、z方向成分の時系列変化を表すグラフデータのいずれかを含んでいてよい。
【0144】
また、幾つかの態様の第1グラフデータは、xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データに基づき生成されるグラフデータであってよく、例えば、xy座標系で定義される被検眼Eの位置のx方向成分の時系列変化を表すグラフデータ、及びy方向成分の時系列変化を表すグラフデータのいずれかを含んでいてよい。
【0145】
また、幾つかの態様の第1グラフデータは、z位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データに基づき生成されるグラフデータであってよく、例えば、z座標系(z座標軸)で定義される被検眼Eの位置のz方向成分の時系列変化を表すグラフデータを含んでいてよい。
【0146】
x方向成分の時系列変化を表すグラフデータ(第1グラフデータ)は、例えば、時間軸(t)とx軸(x)とからなる2次元直交座標系によって定義され、上記の座標記載法を用いると、順序集合{(tm、Δxm):m=1、2、・・・、M}を表すグラフデータ、又は、順序集合{(tm、xm):m=1、2、・・・、M}を表すグラフデータであってよい。y方向成分の時系列変化を表すグラフデータ及びz方向成分の時系列変化を表すグラフデータについても同様であってよい。
【0147】
このような第1グラフデータは、被検眼Eの3次元位置(x座標、y座標、及びz座標)の時系列変化を所定方向(x方向、y方向、又はz方向)に投影したグラフデータである。なお、投影方向はx方向、y方向、又はz方向に限定されず、x方向、y方向、及びz方向の全てに斜交する任意の方向であってもよい。
【0148】
次に、第2の例のグラフデータ(第2グラフデータ)について説明する。第2グラフデータは、所定の2次元座標系で定義される被検眼Eの2次元位置の時系列変化を表す。
【0149】
幾つかの態様の第2グラフデータは、xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データとz位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データとに基づき生成されるグラフデータであってよい。例えば、第2グラフデータは、xy座標系で定義される被検眼Eの2次元位置(x座標及びy座標)の時系列変化を表すグラフデータ、yz座標系で定義される被検眼Eの2次元位置(y座標及びz座標)の時系列変化を表すグラフデータ、及び、zx座標系で定義される被検眼Eの2次元位置(z座標及びx座標)の時系列変化を表すグラフデータのいずれかを含んでいてよい。
【0150】
また、幾つかの態様の第2グラフデータは、xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データに基づき生成されるグラフデータであってよく、例えば、xy座標系で定義される被検眼Eの2次元位置(x座標及びy座標)の時系列変化を表すグラフデータを含んでいてよい。
【0151】
このような第2グラフデータは、被検眼Eの3次元位置(x座標、y座標、及びz座標)の時系列変化を所定の平面(xy平面、yz平面、又はzx平面)に投影したグラフデータである。なお、投影平面はxy平面、yz平面、又はzx平面に限定されず、xy平面、yz平面、及びzx平面の全てに斜交する任意の向きの平面であってもよい。
【0152】
次に、第3の例のグラフデータ(第3グラフデータ)について説明する。第3グラフデータは、所定の3次元座標系で定義される被検眼Eの3次元位置の時系列変化を表す。
【0153】
幾つかの態様の第3グラフデータは、xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データとz位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データとに基づき生成されるグラフデータであってよい。例えば、第3グラフデータは、xyz座標系で定義される被検眼Eの3次元位置(x座標、y座標、及びz座標)の時系列変化を表すグラフデータを含んでいてよい。
【0154】
次に、第4の例のグラフデータ(第4グラフデータ)について説明する。第4グラフデータは、被検眼Eの動きの速度の時系列変化を表す。
【0155】
被検眼Eの動きの速度は、3次元座標系で定義される3次元空間における速度、2次元空間における速度、及び、1次元空間における速度のいずれかを含んでいてよい。幾つかの態様において、時点tmにおける速度vmは、演算式(Δxm
2+Δym
2+Δzm
2)1/2/(tm-tm-1)又は演算式(Δxm+1
2+Δym+1
2+Δzm+1
2)1/2/(tm+1-tm)で算出される3次元的な速度を含んでいてよい。また、幾つかの態様において、時点tmにおける速度vmは、演算式(Δxm
2+Δym
2)1/2/(tm-tm-1)又は演算式(Δxm+1
2+Δym+1
2)1/2/(tm+1-tm)で算出される2次元的な速度(xy平面における速度)、演算式(Δym
2+Δzm
2)1/2/(tm-tm-1)又は演算式(Δym+1
2+Δzm+1
2)1/2/(tm+1-tm)で算出される2次元的な速度(yz平面における速度)、及び、演算式(Δzm
2+Δxm
2)1/2/(tm-tm-1)又は演算式(Δzm+1
2+Δxm+1
2)1/2/(tm+1-tm)で算出される2次元的な速度(zx平面における速度)のいずれかを含んでいてよい。また、幾つかの態様において、時点tmにおける速度vmは、演算式Δxm/(tm-tm-1)又は演算式Δxm+1/(tm+1-tm)で算出される1次元的な速度(x方向における速度)、演算式Δym/(tm-tm-1)又は演算式Δym+1/(tm+1-tm)で算出される1次元的な速度(y方向における速度)、及び、演算式Δzm/(tm-tm-1)又は演算式Δzm+1/(tm+1-tm)で算出される1次元的な速度(z方向における速度)のいずれかを含んでいてよい。
【0156】
1次元的な速度の時系列変化を表す第4グラフデータは、x方向、y方向、又はz方向に対応したグラフデータに限定されず、x方向、y方向、及びz方向の全てに斜交する任意の方向における被検眼Eの動きの速度の時系列変化を表すグラフデータであってもよい。
【0157】
同様に、2次元的な速度の時系列変化を表す第4グラフデータは、xy平面、yz平面、又はzx平面に対応したグラフデータに限定されず、xy平面、yz平面、及びzx平面の全てに斜交する任意の向きの平面における被検眼Eの動きの速度の時系列変化を表すグラフデータであってもよい。
【0158】
また、グラフデータの生成に使用される座標系は、xyz座標系又はその一部からなる座標系に限定されず、被検眼Eの位置を表現するために使用することが可能な任意の座標系であってよい。
【0159】
グラフデータの具体例については後述する。
【0160】
可視化データは上記した態様のグラフデータに限定されるものではなく、xy位置履歴データ及び/又はz位置履歴データに基づくビジュアライゼーションのための任意のデータであってよい。
【0161】
例えば、可視化データ生成部235は、被検眼Eの動き(眼球運動)の周波数成分を表す可視化データを生成するように構成されていてもよい。特開2007-130403号公報(米国特許出願公開第2010/0142780号明細書)や、「Heartbeat-Induced Axial Motion Artifacts in Optical Coherence Tomography Measurements of the Retina」(Roy de Kinkelder, et al., IOVS, May 2011, Vol. 52, No. 6, pp.3908-3913)などに記載されているように、心拍に由来する深さ方向(z方向)のパルス状の(ほぼ周期的な)モーションアーティファクトが存在することが知られている。このパルス状のモーションアーティファクトの可視化データは、z方向シフト量の時系列変化を表すデータであってよく、例えば、時間軸とz軸とにより定義されるグラフデータであってよい。
【0162】
眼科検査装置1は、z位置履歴データ(又は、xy位置履歴データとz位置履歴データとを合成した3次元位置履歴データ)から心拍由来モーションアーティファクトを抽出して評価することができる。これにより、心拍由来の被検眼Eの動きのデータを高い正確度で得ることが可能になる。また、眼科検査装置1は、抽出された心拍由来モーションアーティファクトをz位置履歴データ又は3次元位置履歴データから除去することもできる。これにより、心拍の影響を除いた被検眼Eの動きのデータを得ることが可能になる。リサジュースキャンを利用してこれらのデータを生成することによって、心拍由来モーションアーティファクトの評価や、眼振などの眼球運動の評価を、従来よりも高い正確度で行うことが可能になると考えられる。
【0163】
<画像データ補正部236>
画像データ補正部236は、画像データ処理部231によりxy方向の位置調整がなされた複数のサブボリュームに対して、zシフト量算出部233により取得されたz方向シフト量(z位置履歴データ生成部234により収集されたz方向シフト量の集合)に基づくz方向の位置調整を実行するように構成されている。
【0164】
xy方向シフト量に基づくレジストレーションを実行するレジストレーション部2317と同様に、画像データ補正部236は、zシフト量算出部233により取得された対応するz方向シフト量を打ち消すように、基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のレジストレーションを実行する。
【0165】
前述したように、幾つかの態様では、画像データ補正部236は、対応するz方向シフト量が閾値を超える場合にのみ、基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のレジストレーションを実行するように制御されてよい。
【0166】
画像データ補正部236による位置調整の結果として得られる画像データは、x方向、y方向、及びz方向の全てにおいてレジストレーションがなされたサブボリューム群、つまり、3次元的レジストレーションがなされたサブボリューム群である。このようなレジストレーションを適用する前のサブボリューム群は、リサジュースキャンで収集されたボリュームである。データ処理部230は、3次元的レジストレーションにより得られたサブボリューム群を再合成することによって、3次元的レジストレーションが適用されたボリュームが得られる。
【0167】
3次元的レジストレーションが適用されたデータセットを、任意の処理(画像処理、後処理、解析、評価、可視化、レンダリングなど)に利用することができる。これにより、従来よりも高い正確度及び高い精度でモーションアーティファクトが補正された3次元データセットを用いて所望の処理を実行することが可能になる。
【0168】
なお、zシフト量算出部233及び画像データ補正部236は、z方向のモーションアーティファクトを除去するために、非特許文献1の「axial motion correction (rough axial motion correction 及び/又は fine axial motion correction」(第1789頁~第1790頁)に相当するレジストレーションを実行するように構成されてもよい。
【0169】
<評価データ生成部237>
評価データ生成部237は、xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データ及び/又はz位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データ位置履歴データに基づいて評価データを生成するように構成されている。
【0170】
評価データは、眼科分野及び/又は他の分野において参照可能な任意の評価項目に関するデータであってよい。評価データの幾つかの例、及び、評価データ生成部237が実行可能な処理の幾つかの例について、以下に説明する。なお、評価データの種類や、評価データ生成部237が実行する処理の内容は、以下の例に限定されるものではない。
【0171】
評価データ生成部237は、評価データとして、所定の処理の信頼性に関する評価データ(信頼性評価データ)を生成するように構成されていてよい。信頼性評価データは、例えば、評価対象の処理自体の信頼性に関する評価データ、評価対象の処理に含まれる工程(サブ処理)の信頼性に関する評価データ、評価対象の処理をサブ処理として含む処理の信頼性に関する評価データ、評価対象の処理の結果(出力)の信頼性に関する評価データ、及び、評価対象の処理への入力の信頼性に関する評価データのいずれかを含んでいてよい。
【0172】
信頼性とは、評価対象の処理が与えられた条件下において、要求された機能(役割)を果たすことができる性質(能力)又は確率を意味し、信頼度とも呼ばれる。信頼性評価データは、信頼性の有無を示す情報を含んでもよいし、信頼性の程度を示す情報を含んでもよいし、信頼性を数値化した情報を含んでもよい。
【0173】
幾つかの態様において、信頼性評価データは、モーションアーティファクト補正の信頼性評価データを含んでいてよい。本態様では、信頼性評価データは、画像データ処理部231により実行されるxy方向のモーションアーティファクト補正の信頼性評価データを含んでいてもよく、zシフト量算出部233及び画像データ補正部236により実行されるz方向のモーションアーティファクト補正の信頼性評価データを含んでいてもよい。
【0174】
前述したように、画像データ構築部220は、リサジュースキャンで収集されたデータセットに基づいて複数の画像データ(例えば、複数のサブボリューム、複数のストリップ)を構築する。画像データ処理部231は、位置補正部として機能し、複数の画像データの相対位置補正(xy方向のモーションアーティファクト補正)を実行する。また、zシフト量算出部233及び画像データ補正部236は、位置補正部として機能し、複数の画像データの相対位置補正(z方向のモーションアーティファクト補正)を実行する。本例の評価データ生成部237は、信頼性評価データとして、xy方向のモーションアーティファクト補正の信頼性評価データ及び/又はz方向のモーションアーティファクト補正の信頼性評価データを生成するように構成される。
【0175】
信頼性評価データの生成に機械学習を利用することができる。例えば、
図4Dに示すように、評価データ生成部237は、推論モデル2371を含んでいてよい。推論モデル2371は、訓練データを用いた機械学習によって事前に訓練される。機械学習の手法は任意であってよく、教師あり学習、教師なし学習、及び強化学習のうちの少なくとも1つの手法を含んでいてよい。
【0176】
訓練データは、例えば、データ処理部230と同様の処理によって収集された位置履歴データ(眼の位置の時系列変化を表すデータ)の集合を含んでいてよい。また、訓練データは、位置履歴データを処理して生成された処理データの集合を含んでいてよい。処理データは、データ処理部230によって生成可能な種類のデータであってよく、例えば、前述した各種の可視化データのいずれかを含んでいてよい。教師あり学習の場合、訓練データは、例えば、各位置履歴データ及び/又は各処理データに割り当てられたラベルを含んでいる。ラベルは、信頼性(信頼度)を示すデータであり、例えば、モーションアーティファクト補正(リサジュースキャン、撮影)の「成功」を示すラベル、「失敗」を示すラベル、「成功確率(数値)」を示すラベルなどであってよい。
【0177】
推論モデル2371への入力は、データ処理部230によって生成された位置履歴データ及び/又は処理データ(可視化データなど)を含む。このようなデータの入力に対応する推論モデル2371からの出力は、信頼度を含む。出力される信頼度は、例えば、モーションアーティファクト補正(リサジュースキャン、撮影)の「成功」、「失敗」、「成功確率(数値)」などを示す情報である。
【0178】
本態様では、例えば、少なくとも、xy位置履歴データ生成部232により生成された被検眼Eのxy位置履歴データ、z位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データ、及び、可視化データ生成部235により生成された可視化データのうちの1つ以上のデータが、推論モデル2371に入力される。推論モデル2371は、入力されたデータに基づいて、モーションアーティファクト補正(相対位置補正)の信頼性評価データを生成することができる。
【0179】
このように、本態様の評価データ生成部237は、リサジュースキャンが実行されていた期間における被検眼Eのx方向シフト特性、y方向シフト特性、z方向シフト特性などに基づいて、モーションアーティファクト補正の信頼性評価データを生成することができる。シフト特性は、被検眼Eの移動(シフト)に関する任意の特性であってよく、例えば、シフト量、シフト量の統計値(最大値、最小値、平均値、標準偏差など)、シフト量の時系列変化、シフト量の時系列変化のグラフのパラメータ値(周波数、振幅など)、シフト速度、シフト速度の統計値、シフト速度の時系列変化、シフト速度の時系列変化のグラフのパラメータ値などであってよい。
【0180】
推論モデル2371に入力されるデータは、被検眼Eのシフト特性に限定されない。例えば、被検眼Eの瞬きのデータをシフト特性とともに推論モデル2371に入力することができる。瞬きデータは、例えば、リサジュースキャンが適用されていた期間における被検眼Eの瞬きの有無、回数、頻度、時点などを含む。また、瞬きデータは、リサジュースキャンが適用されていた期間の少なくとも一部にわたる積分データを含んでいてもよい。
【0181】
瞬きデータのような眼に関する所定の項目のデータも訓練データに含まれる場合、この訓練データによって訓練された推論モデル2371は、位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方と、当該項目のデータ及びその処理データの少なくとも一方とを入力とし、且つ、信頼度を出力とするように構築される。
【0182】
本例の眼科検査装置1は、被検眼Eに関する当該項目のデータを取得する機能を有する。眼科検査装置1は、被検眼Eを検査することによって当該項目のデータを生成するように構成されていてよい。例えば、眼科検査装置1は、眼底カメラユニット2により得られる観察画像を解析することによって瞬きデータを生成することができる。或いは、前述したステレオアライメントに用いられる2以上の前眼部カメラにより得られる動画像を解析することによって瞬きデータを生成することができる。瞬き以外の項目のデータを生成する場合においても同様に、被検眼Eの画像の取得及び解析によって当該データを生成することができる。一方、眼科検査装置1は、被検眼Eに関する所定の項目のデータを外部から受け付けるように構成されていてもよい。例えば、眼科検査装置1は、被検眼Eに関する所定の項目のデータを外部装置(例えば、コンピュータ、記憶装置、記録媒体、情報システムなど)から取得するための構成要素を有していてもよい(例えば、後述のデータ受付部250)。本例の眼科検査装置1は、生成された又は受け付けられた被検眼Eの所定の項目のデータを加工して新たなデータ(処理データ)を生成するように構成されていてもよい。
【0183】
本例の評価データ生成部237は、被検眼Eの所定の項目のデータ及びその処理データの少なくとも一方と、データ処理部230により生成された被検眼Eの位置履歴データ及びその処理データ(可視化データなど)の少なくとも一方とを、推論モデル2371に入力する。推論モデル2371は、入力されたデータに基づいて、モーションアーティファクト補正の信頼性評価データを生成することができる。
【0184】
推論モデル2371の幾つかの例を説明する。推論モデル2371の第1の例は、入力データから特徴量を抽出する特徴量抽出器と、抽出された特徴量を入力とし且つ信頼性評価データを出力としたサポートベクターマシン(SVM)とを含む。
【0185】
特徴量抽出器は、例えば、任意の特徴エンジニアリング技術を利用して構築されてよい。サポートベクターマシンは、教師あり学習を用いたパターン認識モデルであり、線形入力素子を利用して2クラスのパターン識別器を構成し、訓練データ(訓練サンプル)から各データ点との距離が最大となるマージン最大化超平面を求めることを基準(分離超平面定理)として線形入力素子のパラメータを学習する。本例のサポートベクターマシンは、特徴量抽出器により抽出された特徴量に基づく推論(分類、回帰など)を実行する。
【0186】
このような構成の推論モデル2371を有する評価データ生成部237は、例えば、データ処理部230により生成された位置履歴データ及び/又は可視化データを周波数解析することによって、被検眼Eの動きの振幅や周波数を特徴量として求めることができる。また、本例の評価データ生成部237は、瞬きデータに基づいて、リサジュースキャンが実行されていた期間における被検眼Eの合計瞬き時間を特徴量として求めることができる。更に、本例の評価データ生成部237は、これらの特徴量をサポートベクターマシンに入力することによって、モーションアーティファクト補正(リサジュースキャン、撮影)が成功したか失敗したか分類(識別)することができ、また、その成功確率(信頼性)を求めることができる。
【0187】
推論モデル2371の第2の例は、入力データから信頼性評価データを生成するニューラルネットワーク(NN)を含む。本例のニューラルネットワークは、典型的には、入力データ(位置履歴データ、可視化データ、瞬きデータなど)と同種のデータセット(撮影成功、撮影失敗、撮影成功確率(撮影信頼性)などのラベルが付帯している)を用いて訓練された学習済みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であってよい。
【0188】
畳み込みニューラルネットワークの例を説明する。畳み込みニューラルネットワークの入力層には、所定のデータ(位置履歴データ、可視化データ、瞬きデータなど)が入力される。入力データは、典型的には画像である。入力層の後ろには、畳み込み層とプーリング層とのペアが複数配置されている。ペアの個数は任意である。畳み込み層では、画像から特徴(輪郭など)を把握するための畳み込み演算が行われる。畳み込み演算は、入力された画像に対する、この画像と同じ次元のフィルタ関数(重み係数、フィルタカーネル)の積和演算である。畳み込み層では、入力された画像の複数の部分にそれぞれ畳み込み演算を適用する。より具体的には、畳み込み層では、フィルタ関数が適用された部分画像の各画素の値に、その画素に対応するフィルタ関数の値(重み)を乗算して積を算出し、この部分画像の複数の画素にわたって積の総和を求める。このように得られた積和値は、出力される画像における対応画素に代入される。フィルタ関数を適用する箇所(部分画像)を移動させながら積和演算を行うことで、入力された画像の全体についての畳み込み演算結果が得られる。このような畳み込み演算によれば、多数の重み係数を用いて様々な特徴が抽出された画像が多数得られる。つまり、平滑化画像やエッジ画像などの多数のフィルタ処理画像が得られる。畳み込み層により生成される多数の画像は特徴マップと呼ばれる。プーリング層では、直前の畳み込み層により生成された特徴マップの圧縮(データの間引きなど)が行われる。より具体的には、プーリング層では、特徴マップ内の注目画素の所定の近傍画素における統計値を所定の画素間隔ごとに算出し、入力された特徴マップよりも小さな寸法の画像を出力する。なお、プーリング演算に適用される統計値は、例えば、最大値(max pooling)又は平均値(average pooling)である。また、プーリング演算に適用される画素間隔は、ストライド(stride)と呼ばれる。畳み込みニューラルネットワークでは、畳み込み層とプーリング層とのペアを複数設けて処理を行うことにより、入力された画像から多くの特徴を抽出することができる。畳み込み層とプーリング層との最後のペアの後ろには、全結合層が設けられている。全結合層の個数は任意である。全結合層では、畳み込み及びプーリングによって圧縮された特徴量を用いて推論(分類、回帰など)が行われる。全結合層の後段には、出力結果を提供する出力層が設けられている。なお、幾つかの例示的な態様において、畳み込みニューラルネットワークは、全結合層を含まなくてもよいし、サポートベクターマシンや再帰型ニューラルネットワーク(RNN)を含んでいてもよい。
【0189】
このような構成の推論モデル2371を有する評価データ生成部237は、例えば、データ処理部230により生成された位置履歴データ、可視化データ、瞬きデータなどに基づいて、モーションアーティファクト補正(リサジュースキャン、撮影)が成功したか失敗したか分類(識別)することができ、また、その成功確率(信頼性)を求めることができる。
【0190】
評価データ生成部237は、画像データの複数の部分についてそれぞれ評価データを求めるように構成されてもよい。この画像データは、リサジュースキャンで収集されたデータセットから構築された任意の画像データであってよく、例えば、画像データ構築部220により構築された画像データ、画像データ処理部231(例えば、マージ処理部2318)により構築された画像データ、又は、画像データ補正部236により構築された画像データであってよい。
【0191】
例えば、評価データ生成部237は、画像データを複数の部分領域に分割する処理と、各部分領域について評価データを生成する処理とを実行するように構成されてよい。本例の眼科検査装置1(例えば、主制御部211)は、各部分領域に対して、その評価データに応じた表示パラメータを割り当てることができる。表示パラメータは、例えば、信頼度の値の大きさに対応した色パラメータであってよい。主制御部211は、部分領域ごとに付与された色パラメータに基づいて、信頼度に関するヒートマップを表示させることができる。被検眼Eの画像に重ねてヒートマップを表示することや、被検眼Eの画像にヒートマップを合成して表示することが可能である。これにより、画像の各部分の信頼度(つまり、信頼度の分布)を可視化することができる。
【0192】
ヒートマップ表示は、広角撮影(パノラマ撮影、モンタージュ撮影)においても有効である。広角撮影は、被検眼Eの異なる複数の領域に対して順次にスキャン(リサジュースキャン)を適用し、複数の領域からそれぞれ収集された複数のデータセットに基づき複数の画像データをそれぞれ構築し、これら画像データをパノラマ合成する技術である。広角撮影は、例えば、固視位置の移動によってスキャン適用領域を移動することにより実現される。評価データ生成部237は、複数の領域に対応する複数の画像データのそれぞれについて評価データを生成することができる。主制御部211は、各画像データに対して、その評価データに応じた表示パラメータ(色パラメータ)を割り当てることができる。主制御部211は、複数の画像データにそれぞれ付与された色パラメータに基づいて、画像データごとの信頼度に関するヒートマップを表示させることができる。パノラマ合成された画像に重ねてヒートマップを表示することや、パノラマ合成された画像にヒートマップを合成して表示することが可能である。これにより、広角撮影において実施された複数の撮影のそれぞれの信頼度を可視化することができる。
【0193】
位置履歴データ以外のデータも考慮した評価データ生成手法は、機械学習を利用した手法に限定されない。例えば、幾つかの態様において、評価データ生成部237は、位置履歴データ及び所定の項目のデータに基づき任意の手法で評価データを生成するように構成されていてよい。所定の項目のデータは、眼科検査装置1により生成されたデータ、及び/又は、データ受付部250により受け付けられたデータを含む。
【0194】
眼科検査装置1を用いた評価の幾つかの応用例を説明する。位置履歴データや可視化データを眼球運動のバイオマーカーとして用いることで、アルツハイマー病やパーキンソン病などに由来する神経障害(眼振など)を検出、評価することが可能である。例えば位置履歴データや可視化データをアミロイドベータ(Aβ)のバイオマーカーとして用いるとともに、眼底OCT画像データ(Bスキャン画像データ、3次元画像データなど)から得られる網膜神経線維層(RNFL)の菲薄化の情報(RNFL厚分布)と組み合わせることによって、アルツハイマー病に関する評価を行うことが可能である。
【0195】
位置履歴データや可視化データを眼球運動のバイオマーカーとすることが可能な疾患は他にもある。例えば、内頚動脈海綿静脈洞瘻は、頭蓋底骨折や動脈瘤の破裂が原因で生じる疾患であり、拍動性眼球突出、眼窩部での拍動性雑音、眼結膜の充血、外眼筋麻痺、視力障害、複視、眼圧上昇、網膜出血、乳頭浮腫などを呈するが、結膜炎と類似した症状であるため、医師には注意深い鑑別が要求される。眼科においてこの疾患を疑った際には、眼球や眼窩部の雑音聴取を聴診器(ベル型)で行うとともに、脳神経外科に当該患者を紹介するのが通常である。このような従来の診療態様に加え、本実施形態を応用した幾つかの態様によれば、位置履歴データや可視化データを眼球運動のバイオマーカーとして用いることで、拍動性眼球突出や外眼筋麻痺の評価を行うことが可能である。
【0196】
<位置履歴データ補正部238>
位置履歴データ補正部238は、被検者から取得された時系列データに基づいて位置履歴データの補正を行う。
図4B及び
図4Cに示すように、xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データと、z位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データとが、位置履歴データ補正部238に入力される。位置履歴データ補正部238は、xy位置履歴データ及びz位置履歴データの少なくとも一方を補正することができる。
【0197】
位置履歴データの補正の例を説明する。眼科検査装置1がステレオカメラ(図示省略)を備えている場合、ステレオカメラで得られる一対の前眼部動画像から瞳孔中心を検出し、その位置の時系列変化を検出することによって、被検眼Eの動き(眼球運動及び頭部の動きを含む)を評価することができる。また、瞳孔中心以外の部位(例えば目尻、目頭、瞼など)を特徴点として検出し、当該特徴点の変位を瞳孔中心の変位から差し引くことで、眼球運動単体と頭部の動きとを分離して評価を行うことが可能である。
【0198】
xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データ及びz位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データ(更には、これらに基づく可視化データ及び評価データ)は、眼球運動だけでなく頭の動きなどの情報も含んでいる。眼球運動を正確に検出、評価するためには、位置履歴データ(可視化データ、評価データ)から眼球運動以外に由来する被検眼Eの動き(頭の動きなど)を除去することが望ましい。
【0199】
そこで、本態様の位置履歴データ補正部238は、ステレオカメラを用いて得られた上記情報(眼球運動由来の被検眼Eの動きと、他の要因による被検眼Eの動きとの分離)を利用することで、位置履歴データから眼球運動以外に由来する被検眼Eの動き(頭の動きなど)を除去するように構成される。
【0200】
例えば、位置履歴データ補正部238は、まず、ステレオカメラを用いて得られた眼球運動以外に由来する被検眼Eの動きの時系列データ(補正用時系列データ)と、位置履歴データ(時系列データである)との時間軸を合わせる処理を実行する。次に、位置履歴データ補正部238は、位置履歴データから補正用時系列データを差し引くことで、位置履歴データから眼球運動を抽出する。なお、ステレオカメラを用いた被検眼Eの動きの検出は、被検眼Eの3次元的な動き(x方向の動き、y方向の動き、z方向の動き)を検出可能であり、位置履歴データ補正部238は、x方向、y方向、及びz方向のそれぞれについて、位置履歴データから補正用時系列データを差し引くことが可能である。このような位置履歴データ補正が実行される場合における処理の流れが
図6に示されている。
【0201】
可視化データ生成部235は、位置履歴データ補正部238により補正された位置履歴データから可視化データを生成することが可能である。これにより、眼球運動に対応した可視化データを取得することが可能となる。また、評価データ生成部237は、位置履歴データ補正部238により補正された位置履歴データ、及び/又は、補正された位置履歴データから生成された可視化データに基づいて、評価データを生成することが可能である。これにより、眼球運動に対応した評価データを取得することが可能となる。
【0202】
xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データ及び/又はz位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データに基づき可視化データ生成部235が生成した可視化データに対して、位置履歴データ補正部238と同様のデータ補正を適用することが可能である。これにより、眼球運動に対応した可視化データを取得することが可能となる。このような可視化データの補正は、データ処理部230(図示しない可視化データ補正部)によって実行される。
【0203】
xy位置履歴データ生成部232により生成されたxy位置履歴データ及び/又はz位置履歴データ生成部234により生成されたz位置履歴データに基づき評価データ生成部237が生成した評価データに対して、位置履歴データ補正部238と同様のデータ補正を適用することが可能である。これにより、眼球運動に対応した評価データを取得することが可能となる。このような評価データの補正は、データ処理部230(図示しない評価データ補正部)によって実行される。
【0204】
なお、リサジュースキャンを用いた被検眼Eの動きの検出や解析や評価に組み合わせることが可能な技術はステレオカメラ(それを用いた被検眼Eの動きの検出や解析)に限定されない。幾つかの態様において、位置履歴データ生成及び/又は評価データ生成に任意の計測手法を組み合わせることができる。この計測手法は、典型的には、眼の動きに関連するデータ(時系列データなど)を取得するための医学的手法である。そのような医学的手法として、ドップラー計測、赤外撮影、脈拍計、光コヒーレンスエラストグラフィ(OCE)装置などがある。
【0205】
例えば、光コヒーレンスエラストグラフィで組織の硬度(stiffness)を計測する手法が知られている。この従来技術では、微小な動きを評価するために位相情報を用いたOCEイメージングを行っているが、本実施形態によれば、前述した心拍由来の深さ方向のパルス状の振動(モーションアーティファクト)の計測データから組織硬度を推定するという新規な計測手法を提供することが可能である。
【0206】
<ユーザーインターフェイス240>
ユーザーインターフェイス240は表示部241と操作部242とを含む。表示部241は表示装置3を含む。操作部242は各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科検査装置1に接続された外部装置であってよい。
【0207】
<データ受付部250>
データ受付部250は、外部装置からデータを取得する。例えば、データ受付部250は、前述した被検眼Eに関する所定の項目のデータを外部装置から受け付ける。
【0208】
外部装置は、例えば、コンピュータ、記憶装置、記録媒体、情報システム(例えば、病院情報システム、電子カルテシステム、画像アーカイビングシステム)などであってよい。外部装置は、例えば、眼科検査装置1に直接に接続された装置、ローカルエリアネットワーク(LAN)を介して眼科検査装置1に接続された装置、ワイドエリアネットワーク(WAN)を介して眼科検査装置1に接続された装置などを含んでいてよい。
【0209】
データ受付部250は、例えば、通信インターフェイス、ドライブ装置などを含んでいてもよい。また、データ受付部250は、紙葉類に記録されたデータを読み取るためのスキャナを含んでいてもよい。また、データ受付部250は、ユーザーがデータを入力するための入力デバイスを含んでいてもよい。入力デバイスは、キーボード、ペンタブレットなどであってよい。
【0210】
<動作>
眼科検査装置1の動作について説明する。眼科検査装置1の動作の例を
図7A~
図7Fに示す。なお、幾つかの態様は、当該動作例の一部の工程のみを実行してもよい。また、幾つかの態様では、当該動作例の一部の工程を他の工程(例えば、類似の工程)に置換してもよい。また、幾つかの態様では、当該動作例に任意の工程を組み合わせてもよい。
【0211】
患者IDの入力、走査モードの設定(リサジュースキャンの指定)、固視標の提示、アライメント、フォーカス調整、OCT光路長調整など、従来と同様の準備的な処理が、ステップS1の前に実行される。
【0212】
(S1:リサジュースキャン)
所定の走査開始トリガー信号を受けて、走査制御部2111は、被検眼E(眼底Ef)に対するOCTスキャン(リサジュースキャン)の適用を開始する。
【0213】
走査開始トリガー信号は、例えば、所定の準備動作(アライメント、フォーカス調整、OCT光路長調整など)が完了したことに対応して、又は、操作部242を用いて走査開始指示操作が行われたことに対応して生成される。
【0214】
走査制御部2111は、走査プロトコル2121(リサジュースキャンに対応したプロトコル)に基づいて光スキャナ44及びOCTユニット100などを制御することによってリサジュースキャンを眼底Efに適用する。リサジュースキャンにより収集されたデータは画像データ構築部220に送られる。
【0215】
(S2:複数のストリップを構築)
画像データ構築部220は、前述した要領で、ステップS1で収集されたデータに基づいて複数のストリップを構築する。構築された複数のストリップはデータ処理部230に送られる。
【0216】
(S3:基準ストリップと対象ストリップを設定する)
データ処理部230は、ステップS2で構築された複数のストリップを寸法(面積等)に従って順序付けする。本例では、ステップS2で構築された複数のストリップの個数をN個(Nは2以上の整数)であるとする。また、順序付けにより指定された順序に従って、これらN個のストリップを、第1のストリップ、第2のストリップ、・・・、第Nのストリップと呼ぶ。また、第1~第Nのストリップのうちの任意のストリップを第nのストリップと呼ぶことがある(n=1、2、・・・、N)。このように、第1のストリップは最も大きなストリップであり、第2のストリップは2番目に大きなストリップであり、第nのストリップはn番目に大きなストリップであり、第Nのストリップは最も小さなストリップである。
【0217】
本例において、データ処理部230は、第1のストリップを初期基準ストリップに設定し、第2のストリップを初期対象ストリップに設定する。
【0218】
なお、基準ストリップ及び対象ストリップは、それぞれ、非特許文献1のAppendix Aにおける任意形状の画像(arbitrary shaped images)f(r)及びg(r)に相当する。
【0219】
(S4:基準マスク画像と対象マスク画像を設定)
マスク画像生成部2311は、基準ストリップに対応するマスク画像(基準マスク画像)と、対象ストリップに対応する対象マスク画像とを生成する。
【0220】
この段階では、マスク画像生成部2311は、第1のストリップ及び第2のストリップにそれぞれ対応する2つのマスク画像を生成する。データ処理部230は、第1のストリップに対応する第1のマスク画像を初期基準マスク画像に設定し、第2のストリップに対応する第2のマスク画像を初期対象マスク画像に設定する。
【0221】
なお、基準マスク画像及び対象マスク画像は、それぞれ、非特許文献1のAppendix Aにおける矩形状の二値画像マスク(rectangular shaped binary image masks)mf(r)及びmg(r)に相当する。
【0222】
(S5:基準ストリップと対象ストリップを正規化)
範囲調整部2312は、前述した要領で、ステップS3で設定された基準ストリップと対象ストリップに正規化を施す。ストリップの正規化は、マスク画像の画素値の範囲に応じて行われる。この段階においては、範囲調整部2312は、第1のストリップ(基準ストリップ)及び第2のストリップ(対象ストリップ)に正規化を適用する。なお、範囲調整部2312が実行する処理は正規化には限定されず、前述した範囲調整処理のいずれか又はそれに類する処理であってよい。
【0223】
本例において、各マスク画像の画素値の範囲は閉区間[0,1]に含まれるものとする。特に、本例の各マスク画像は、対応するストリップの定義域に相当する領域内の画素値が1に設定され且つ他の画素の値が0に設定された二値画像であるものとする。
【0224】
範囲調整部2312は、例えば、ストリップの各画素の値をこのストリップにおける最大画素値で除算することにより、又は、ストリップの各画素の値をこのストリップの画素値の範囲(階調範囲)の最大値で除算することにより、このストリップの正規化を行う。
【0225】
また、データ処理部230(合成画像生成部2313)は、画素値範囲が正規化されたストリップを、対応するマスク画像と同じ寸法及び同じ形状の画像に埋め込む。正規化された第1のストリップf(r)の埋め込み画像は、非特許文献1のAppendix Aにおける矩形状の画像(rectangular shaped image)f´(r)に類する画像であるが、第1のストリップf(r)の画像エリア内の値域の絶対値(|f(r)|)が1以下に正規化されている。この埋め込み画像を同じくf´(r)と表す。
【0226】
同様に、正規化された第2のストリップg(r)の埋め込み画像は、矩形状の画像g´(r)に類する画像であるが、第2のストリップg(r)の画像エリア内の値域の絶対値(|g(r)|)が1以下に正規化されている。この埋め込み画像を同じくg´(r)と表す。
【0227】
(S6:基準合成画像と対象合成画像を生成)
合成画像生成部2313は、正規化されたストリップの埋め込み画像と、対応するマスク画像との合成画像を生成する。
【0228】
この段階においては、合成画像生成部2313は、正規化された第1のストリップ(基準ストリップ)の埋め込み画像と、第1のマスク画像(基準マスク画像)との合成画像を生成し、且つ、正規化された第2のストリップ(対象ストリップ)の埋め込み画像と、第2のマスク画像(対象マスク画像)との合成画像を生成する。前者の合成画像を基準合成画像と呼び、後者を対象合成画像と呼ぶ。
【0229】
ここで、基準合成画像及び対象合成画像は、それぞれ、非特許文献1のAppendix Aにおける2つの矩形状の画像の組み合わせ(combination of two rectangle shaped images)f´(r)mf(r)及びg´(r)mg(r)に相当する。ただし、前述したように、第1のストリップf(r)の画像エリア内の値域の絶対値(|f(r)|)は1以下であり、且つ、第2のストリップg(r)の画像エリア内の値域の絶対値(|g(r)|)は1以下である。
【0230】
図8Aの画像311は、正規化された第1のストリップf(r)の埋め込み画像f´(r)の例であり、画像321は、第1のマスク画像の例である。これら2つの画像311及び321を組み合わせることによって基準合成画像f´(r)m
f(r)が得られる。
【0231】
同様に、
図8Bの画像312は、正規化された第2のストリップg(r)の埋め込み画像g´(r)の例であり、画像322は、第2のマスク画像の例である。これら2つの画像312及び322を組み合わせることによって基準合成画像g´(r)m
g(r)が得られる。
【0232】
(S7:複数の相互相関関数を算出)
相互相関関数算出部2314は、ステップS6で生成された基準合成画像及び対象合成画像に基づいて複数の相互相関関数を算出する。本例では、相互相関関数算出部2314は、ステップS6で生成された基準合成画像及び対象合成画像に基づいて、非特許文献1の式(33)に含まれる6個の相互相関関数を算出する。
【0233】
(S8:相関係数を算出)
相関係数算出部2315は、ステップS7で算出された複数の相互相関関数に基づいて相関係数を算出する。本例では、相関係数算出部2315は、非特許文献1の式(33)に従って、ステップS7で算出された複数の相互相関関数から相関係数(ρ(r´))を算出する。
【0234】
(S9:基準ストリップと対象ストリップとの間のxy方向シフト量を算出)
xyシフト量算出部2316は、ステップS8で算出された相関係数に基づいて、第1のストリップ(基準ストリップ)f(r)と第2のストリップ(対象ストリップ)g(r)との間のxy方向シフト量を算出する。本例では、ステップS8で算出された相関係数ρ(r´)のピークを検出することにより、基準ストリップf(r)と対象ストリップg(r)との間の相対的なxy方向シフト量(Δx、Δy)が求められる。
【0235】
(S10:xy方向シフト量を保存)
ステップS9において当該ストリップペアについて算出されたxy方向シフト量は、xy位置履歴データ生成部232に送られて保存される。xy位置履歴データ生成部232は、例えば、当該ストリップペアに対応する時間情報とともにxy方向シフト量を記録する。
【0236】
時間情報は、リサジュースキャンに対応する時間パラメータ又はそれに基づく情報であってもよいし、リサジュースキャンに関する順序情報又はそれに基づく情報であってもよい。リサジュースキャンに関する順序情報は、例えば、複数のサイクルのスキャン順序、それに基づく複数のストリップの順序などであってよい。
【0237】
位置履歴データ生成部234は、ステップS3~S12の反復によって逐次に取得されるxy方向シフト量を時間情報とともに記録することによってxy位置履歴データを生成する。
【0238】
(S11:基準ストリップと対象ストリップとの間のレジストレーション)
基準ストリップ及び対象ストリップに対して、レジストレーション部2317は、ステップS9で算出されたxy方向シフト量に基づきxy方向のレジストレーション(rough lateral motion correction)を適用する。この段階では、第1のストリップf(r)と第2のストリップとの間のレジストレーションが行われる。
【0239】
更に、レジストレーション部2317は、前述した「fine lateral motion correction」などの任意のxy方向のレジストレーションを基準ストリップ及び対象ストリップに対して適用してもよい。
【0240】
(S12:基準ストリップと対象ストリップとのマージ画像を構築)
マージ処理部2318は、ステップS11のレジストレーションにより相対位置調整がなされた基準ストリップと対象ストリップとのマージ画像を構築する。
図8Cの画像330は、第1のストリップと第2のストリップとのマージ画像の例を示す。
【0241】
ここで、ステップS7~S12の処理の実装例を説明する。まず、f´(r)mf(r)、g´(r)mg(r)、mf(r)、mg(r)、(f´(r)mf(r))2、及び(g´(r)mg(r))2のそれぞれの虚部(imaginary part)を0に設定し、実部(real part)のみにする。
【0242】
次に、f´(r)mf(r)、g´(r)mg(r)、mf(r)、mg(r)、(f´(r)mf(r))2、及び(g´(r)mg(r))2のそれぞれの実部に対して高速フーリエ変換(FFT)を適用する。
【0243】
次に、これらの高速フーリエ変換で得られた関数群に基づいて、
図6のステップS7に示された6個の相互相関関数を算出する。
【0244】
次に、算出された6個の相互相関関数のそれぞれに逆高速フーリエ変換(IFFT)を適用する。
【0245】
次に、非特許文献1の式(33)の相関係数ρ(r´)を算出する。
【0246】
そして、相関係数ρ(r´)のピーク位置を特定することによって基準ストリップf(r)と対象ストリップg(r)との間の相対的なシフト量(Δx、Δy)を算出し、このシフト量に基づいて基準ストリップf(r)と対象ストリップg(r)との間のレジストレーション及びマージ処理を実行する。
【0247】
このような一連の処理をN個のストリップに対して逐次に適用することにより、N個のストリップの全てのマージ画像が得られる。また、当該ストリップペアについて求められたxy方向シフト量(Δx、Δy)を時間情報とともに(つまり、時間情報に関連付けて)保存する。
【0248】
(S13:全てのストリップを処理したか?)
ステップS2で得られたN個のストリップの全てに対し、前述した順序に従って逐次に、ステップS3~S12の一連の処理が実行される。
【0249】
Nが3以上の場合において、ステップS12で第1のストリップと第2のストリップとのマージ画像が作成された場合(S13:No)、処理はステップS3に戻る。ステップS3では、第1のストリップと第2のストリップとのマージ画像が新たな基準ストリップに設定され、且つ、第3のストリップが新たな対象ストリップに設定される。新たな基準ストリップと新たな対象ストリップに基づきステップS4~S12の処理を実行することにより、新たな基準ストリップと新たな対象ストリップとのマージ画像が得られる。この新たなマージ画像は、第1~第3のストリップのマージ画像である。このような一連の処理をN個のストリップに対して逐次に適用することにより、N個のストリップの全てのマージ画像が得られる(S13:Yes)。
【0250】
(S14:xy方向のモーションアーティファクトが補正された画像を保存)
以上に説明した繰り返し処理により最終的に得られたマージ画像は、xy方向のモーションアーティファクトが補正された画像であり、且つ、ステップS1のリサジュースキャンの適用範囲全体を表現した画像である。主制御部211は、この最終的なマージ画像を記憶部212(及び/又は、他の記憶装置)に保存することができる。
【0251】
データ処理部230は、N個のストリップに基づくレジストレーションの結果を利用して、ステップS1で収集されたデータ(3次元データ)、及び/又は、この3次元データから画像データ構築部220が構築した3次元画像データのレジストレーションを行うことができる。つまり、データ処理部230は、最終的に得られたマージ画像を利用して3次元データや3次元画像データのレジストレーションを行うことができる。このレジストレーションは、リサジュースキャンの定義座標系を3次元直交座標系(xyz座標系)に変換する処理を含む。この座標変換は、非特許文献1に記載された手法における「remapping」に相当する。このようにして、xy方向のモーションアーティファクトが補正された3次元画像データ(ボリューム)が得られる。主制御部211は、このxy方向モーションアーティファクト補正済みボリュームを、最終的なマージ画像とともに又はその代わりに、記憶部212(及び/又は、他の記憶装置)に保存することができる。
【0252】
(S15:基準ストリップを選択)
z方向のモーションアーティファクトを補正するための処理に移行する。z方向モーションアーティファクト補正では、まず、zシフト量算出部233が、xy方向モーションアーティファクトが補正されたボリュームに対応する複数のストリップから、1つのストリップ(基準ストリップ)を選択する。ここで選択される基準ストリップは、第1回目のステップS3で選択された第1のストリップであってもよいし、これ以外のストリップであってもよい。
【0253】
(S16:対象ストリップを選択)
次に、zシフト量算出部233は、ステップS15で選択された基準ストリップとは別の1つのストリップ(対象ストリップ)を、xy方向モーションアーティファクトが補正されたボリュームに対応する複数のストリップからを選択する。ここで選択される基準ストリップは、第1回目のステップS3で選択された第2のストリップであってもよいし、これ以外のストリップであってもよい。
【0254】
(S17:基準ストリップに対応する基準サブボリュームを設定)
次に、zシフト量算出部233は、ステップS15で選択された基準ストリップに対応するサブボリュームを基準サブボリュームに設定する。ここで、基準サブボリュームの正面プロジェクション画像が基準ストリップである。
【0255】
(S18:対象ストリップに対応する対象サブボリュームを設定)
同様に、zシフト量算出部233は、ステップS16で選択された対象ストリップに対応するサブボリュームを対象サブボリュームに設定する。ここで、対象サブボリュームの正面プロジェクション画像が対象ストリップである。
【0256】
(S19:基準サブボリュームと対象サブボリュームとの交差領域を特定)
次に、zシフト量算出部233は、ステップS17で設定された基準サブボリュームと、ステップS18で設定された対象サブボリュームとの交差領域(共通領域)を特定する。
【0257】
前述したように、2つのサブボリュームには4つの交差領域がある。zシフト量算出部233は、1つ又は2つ以上の交差領域を特定する。2つ以上の交差領域を特定する場合、各交差領域について次のステップS20が実行される。
【0258】
(S20:基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のz方向シフト量を算出)
次に、zシフト量算出部233は、ステップS19で特定されたサブボリューム間の交差領域に基づいて、基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のz方向シフト量を算出する。
【0259】
例えば、zシフト量算出部233は、ステップS19で特定された交差領域に断面(注目断面)を設定する。注目断面は、交差領域の任意の断面であってよい。次に、zシフト量算出部233は、基準サブボリュームから注目断面の画像(基準断面画像)を構築し、且つ、対象サブボリュームから注目断面の画像(対象断面画像)を構築する。次に、zシフト量算出部233は、基準断面画像を解析して被検眼Eの所定部位の像(基準像)を特定し、且つ、対象断面画像を解析して同部位の像(対象像)を特定する。次に、zシフト量算出部233は、基準像のz座標と対象像のz座標とを求め、これら2つのz座標の差を算出する。本例では、算出された差が、基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のz方向シフト量に採用される。
【0260】
図9に具体例を示す。符号401は、基準サブボリュームに対応するストリップ402と対象サブボリュームに対応するストリップ403との交差状態を表している。本例では、白丸で囲まれた交差領域に着目する。x方向に沿った白丸の直径(点線で示されている)が注目断面である。2つのストリップ402及び403にもそれぞれ交差領域と注目断面とが同様に示されている。zシフト量算出部233は、ストリップ402に対応する基準サブボリュームから、この注目断面の画像(基準断面画像)412を構築し、且つ、ストリップ403に対応する対象サブボリュームから、この注目断面の画像(対象断面画像)413を構築する。更に、zシフト量算出部233は、基準断面画像412を解析して網膜表面の像のz位置(z座標)422を特定し、且つ、対象断面画像413を解析して網膜表面の像のz位置(z座標)423を特定する。加えて、zシフト量算出部233は、基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のz方向シフト量として、2つの断面画像412及び413からそれぞれ特定された2つのz位置(2つのz座標)422及び423の間の差Δzを求める。
【0261】
前述したように、基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のz方向シフト量を算出する手法は、これに限定されず、それらの交差領域を利用する任意の手法であってよい。
【0262】
(S21:z方向シフト量を保存)
ステップS20において当該サブボリュームペアについて算出されたz方向シフト量は、z位置履歴データ生成部234に送られて保存される。xy方向シフト量の保存(ステップS10)と同様に、z位置履歴データ生成部234は、例えば、当該サブボリュームペアに対応する時間情報とともにz方向シフト量を記録する。
【0263】
(S22:基準サブボリュームと対象サブボリュームとの間のレジストレーション)
画像データ補正部236は、基準サブボリューム及び対象サブボリュームに対して、ステップS20で算出されたz方向シフト量に基づきz方向のレジストレーションを適用する。
【0264】
このレジストレーションは、例えば、
図9のz方向シフト量Δzを打ち消すように、つまり、基準断面画像412中の網膜表面の像と対象断面画像413中の網膜表面の像とが同じz位置(等しいz座標)に配置されるように、基準サブボリュームと対象サブボリュームとのz方向の位置を調整する処理である。
【0265】
(S23:基準サブボリュームと対象サブボリュームとのマージ画像を構築)
画像データ補正部236は、ステップS22のレジストレーションによりz方向の相対位置調整がなされた基準サブボリュームと対象サブボリュームとのマージ画像を構築する。これにより、xy方向及びz方向について相対位置調整がなされた基準サブボリュームと対象サブボリュームとのマージ画像が得られる。
【0266】
(S24:全てのサブボリュームを処理したか?)
全てのサブボリュームに対し、所定の順序(例えば、第1~第Nのストリップに割り当てられた順序)に従って逐次に、ステップS16~S23の一連の処理が実行される(S24:No)。なお、本例では、ステップS23で構築されたマージ画像が、次のルーチンにおける基準ストリップとして設定される。このような一連の処理を全てのサブボリュームに対して逐次に適用することにより、全てのサブボリュームのマージ画像が得られる(S24:Yes)。
【0267】
(S25:全てのサブボリュームがマージされたボリュームを保存)
このようなステップS16~S23の反復により最終的に得られたマージ画像は、xy方向及びz方向のモーションアーティファクトが補正された画像であり、且つ、ステップS1のリサジュースキャンの適用範囲全体を表現した画像である。主制御部211は、この最終的なマージ画像を記憶部212(及び/又は、他の記憶装置)に保存することができる。
【0268】
以下の処理は、z方向のモーションアーティファクト補正をより精密に行うためのものである。ステップS15~S24では、z方向のモーションアーティファクト補正をサブボリューム単位(ストリップ単位)で行っている。これに対し、以下に説明するステップS26~S31では、z方向のモーションアーティファクト補正をサイクル単位で実行する。このサイクル単位の補正は、データ処理部230(例えば、画像データ補正部236)によって実行される。
【0269】
なお、精密なz方向モーションアーティファクト補正は、サイクル単位で実行される必要はなく、サブボリュームの一部を構成するサイクル群を単位として実行するようにしてもよい。また、精密なz方向モーションアーティファクト補正は、全てのサイクル(全てのサイクル群)について実行される必要はなく、一部のサイクル(一部のサイクル群)についてのみ実行するようにしてもよい。
【0270】
(S26:マージされたボリュームからサイクルを選択)
画像データ補正部236は、全てのサブボリュームがマージされたボリュームから、1つのサイクル(に対応する部分データ)を選択する。
【0271】
最初に選択されるサイクルは、任意であってよい。例えば、ステップS1のリサジュースキャンにおける複数のサイクルのスキャン順(時系列順)に従ってサイクルが順次に選択される。或いは、複数のストリップ(複数のサブボリューム)に割り当てられた順序に基づいてサイクルの選択順序が設定さてもよい。
【0272】
(S27:サイクルをボリュームから抜去)
次に、画像データ補正部236は、ステップS26で選択されたサイクルに対応する部分データをボリュームから抜き出す。
【0273】
(S28:サイクル抜去後のボリュームとサイクルとの間のz方向シフト量を算出)
次に、画像データ補正部236は、ステップS27で抜き出されたサイクルに対応する部分データと、当該サイクルが抜き出されたボリュームとの間におけるz方向シフト量を算出する。
【0274】
本ステップのz方向シフト量算出の手法は、ステップS20の手法と同様であってよい。例えば、画像データ補正部236は、ステップS27でボリュームから抜去されたサイクルの部分データ(注目断面画像)を解析して被検眼Eの所定部位の像(第1の像)を特定し、且つ、注目断面画像が抜き出されたボリュームを解析して同部位の像(第2の像)を特定する。第2の像を特定するための解析は、注目断面画像が抜き出されたボリュームの全体に対して適用される必要はなく、例えば、注目断面画像に隣接する部分(隣接するサイクル)のみに対して適用されてよい。更に、画像データ補正部236は、第1の像のz座標と第2の像のz座標とを求め、これら2つのz座標の差を算出する。本例では、算出された差が、当該サイクルと当該サイクル抜去後のボリュームとの間のz方向シフト量に採用される。
【0275】
(S29:z方向シフト量を更新)
次に、z位置履歴データ生成部234は、ステップS20で求められたz方向シフト量を、新たにステップS28で算出されたz方向シフト量に置き換える。ここでは、ステップS27で抜去されたサイクルに対応する部分データを含むサブボリュームのz方向シフト量が更新される。
【0276】
(S30:レジストレーション及びマージング)
次に、画像データ補正部236は、ステップS28で求められたz方向シフト量を打ち消すように、ステップS27で抜去されたサイクルに対応する部分データと、サイクル抜去後のボリュームとの間のレジストレーションを実行する。更に、画像データ補正部236は、このレジストレーションによりz方向の相対位置調整がなされた当該部分データとサイクル抜去後のボリュームとのマージ画像を構築する。これにより、xy方向について相対位置調整がなされ且つz方向について精密に相対位置調整がなされたボリュームが得られる。
【0277】
(S31:全てのサイクルを処理したか?)
全てのサイクルに対し、所定の順序に従って逐次に、ステップS26~S30の一連の処理が実行される(S31:No)。このような一連の処理を全てのサイクルに対して逐次に適用することにより、全サイクル間のz方向相対位置調整がなされたボリュームが得られる(S31:Yes)。主制御部211は、この最終的なボリュームを記憶部212(及び/又は、他の記憶装置)に保存することができる。
【0278】
(S32:可視化データを生成)
次に、可視化データ生成部235は、ステップS30で構築されたボリュームに基づいて可視化データを生成する。なお、ステップS26~S31を含まない態様などにおいては、ステップS25で保存されたボリュームに基づき可視化データを生成することができる。また、ステップS14で保存されたボリュームに基づき可視化データを生成してもよい。
【0279】
本ステップで生成される可視化データの具体例を
図10A~
図10Dに示す。なお、本ステップで生成される可視化データはこれらの例に限定されない。
【0280】
図10Aは、ステップS1のリサジュースキャンが実行されている期間に発生した被検眼Eのシフトの時間プロファイルを表している。上段のグラフは水平方向(x方向)におけるシフト量の時間変化を表す。中段のグラフは、垂直方向(y方向)におけるシフト量の時間変化を表す。下段のグラフは、軸方向(z方向)におけるシフト量の時間変化を表す。各グラフは、計測開始時におけるシフト量が基準(シフト量ゼロ)とされている。
図10Aの各グラフは、前述した第1グラフデータの例である。
【0281】
図10Bは、ステップS1のリサジュースキャンが実行されている期間に発生した被検眼Eのxy方向におけるシフト(動き)の軌跡を表している。このグラフは、例えば、
図10Aの上段のグラフデータと中段のグラフデータとを合成することによって生成される。横軸は水平方向の位置(x座標)を示し、縦軸は垂直方向の位置(y座標)を示す。本例では、グラフ上の各点の色によって時間情報が表現されている。時間と色との対応関係を示すカラーコードがグラフに付帯されている。なお、時間情報の表現方法は色を用いるものに限定されず、例えば、模様、太さ、濃淡などであってもよい。
図10Bのグラフは、前述した第2グラフデータの例である。
【0282】
図10Cは、ステップS1のリサジュースキャンが実行されている期間に発生した被検眼Eのシフト(動き)の3次元的な軌跡を表している。このグラフは、例えば、
図10Aの3つのグラフデータを合成することによって生成される。本例においても、グラフ上の各点の色によって時間情報が表現されている。時間情報の表現については、
図10Bのグラフデータと同様であってよい。
図10Cのグラフは、前述した第3グラフデータの例である。
【0283】
図10Dは、ステップS1のリサジュースキャンが実行されている期間に発生した被検眼Eのシフト速度の時間プロファイルを表している。このグラフは、前述した第4グラフデータの例である。
【0284】
(S33:可視化データを保存)
主制御部211は、ステップS32で生成された可視化データを記憶部212(及び/又は、他の記憶装置)に保存する。
【0285】
(S34:評価データを生成)
次に、評価データ生成部237は、ステップS30で構築されたボリューム及び/又はステップS32で生成された可視化データに基づいて評価データを生成する。なお、ステップS30で構築されたボリュームの代わりに、ステップS25で保存されたボリュームや、ステップS14で保存されたボリュームを用いてもよい。
【0286】
例えば、ステップS1のリサジュースキャンを実行しつつ瞬き検知を行う場合において、評価データ生成部237は、瞬き検知によって取得された瞬きデータと、
図10Aの3つのグラフデータと、
図10Dのグラフデータとを解析することによって、本例で実行されたモーションアーティファクト補正の成否又は成功確率(信頼性)、つまりリサジュースキャンによる撮影の成否又は成功確率(信頼性)を推定することができる。
【0287】
また、ステップS1のリサジュースキャンを実行しつつ瞬き検知を行う場合において、評価データ生成部237は、瞬き検知によって取得された瞬きデータを積分してリサジュースキャン中における合計瞬き時間を算出し、
図10Aの3つのグラフデータに周波数解析を適用して所定のパラメータ(振幅、周波数など)の値を求めることができる。更に、評価データ生成部237は、合計瞬き時間、振幅、周波数などの特徴量をサポートベクターマシンに入力することで、リサジュースキャンによる撮影の成否又は成功確率(信頼性)を推定することができる。
【0288】
また、評価データ生成部237は、撮影成否のラベルが付された訓練データを用いた機械学習が施されたニューラルネットワーク(例えば畳み込みニューラルネットワーク)に、
図10Cのグラフデータを入力することで、リサジュースキャンによる撮影の成否又は成功確率(信頼性)を推定することができる。
【0289】
(S35:評価データを保存)
主制御部211は、ステップS34で生成された評価データを記憶部212(及び/又は、他の記憶装置)に保存する。
【0290】
(S36:情報を表示)
主制御部211は、本動作例で取得された情報を表示部241に表示させる(エンド)。表示される情報は、例えば、ステップS14で保存されたボリュームから作成される画像、ステップS25で保存されたボリュームから作成される画像、ステップS30で構築されたボリュームから作成される画像、ステップS32で生成された可視化データに基づく情報(グラフなど)、ステップS34で生成された評価データに基づく情報(撮影の成否、成功確率、信頼性、信頼度など)、眼底カメラユニット2により取得された画像などを含んでいてよい。
【0291】
このように、眼科検査装置1は、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査(例えば、リサジュースキャン)を被検眼Eに適用してデータセットを取得する。このデータセットは、光走査による収集データ、及び/又は、この収集データから生成された任意のデータを含んでいてよい。更に、眼科検査装置1は、取得されたデータセットに少なくとも基づいて被検眼Eの位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成することができる。
【0292】
従来の3次元OCTスキャン(ラスタースキャン)では、眼球運動を測定することはできなかった。一方、従来の眼球運動測定法として、プルキンエ像を用いる方法、サーチコイル法、眼底カメラやSLOで得た眼底画像を用いる方法などが知られているが、精度が低いという問題がある。
【0293】
また、近年注目を集めている眼球運動評価デバイス(アイトラッカー)は、ステレオカメラで被検眼を撮影し、得られた画像中の瞳孔位置などから眼球運動を評価するものであるため、やはり精度が低いという問題がある。
【0294】
これに対し、眼科検査装置1によれば、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査(例えば、OCTのリサジュースキャン)を利用することによって非常に高い精度での(ミクロンオーダー)眼球運動の測定や評価が可能となる。更に、眼科検査装置1は、眼球運動の測定や評価に加えて、モーションアーティファクトが補正された画像を提供することも可能である。
【0295】
眼科検査装置1の幾つかの特徴例を以下に説明する。
【0296】
眼科検査装置1は、位置履歴データに少なくとも基づいて評価データを生成することができる。評価データは、所定の処理の信頼性評価データを含んでいてもよい。例えば、眼科検査装置1は、光走査で取得されたデータセットに基づいて複数の画像データ(収集データ、ボリューム、ストリップなど)を構築し、複数の画像データの相対位置補正(モーションアーティファクト補正)を実行し、この相対位置補正の信頼性評価データを生成することができる。
【0297】
眼科検査装置1は、推論モデルを備えていてよい。推論モデルは、眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データ及び当該位置履歴データを処理して生成された処理データ(例えば、周波数解析データ)の少なくとも一方を含む訓練データを用いた機械学習によって訓練されたものである。推論モデルは、位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方を入力とし、且つ、信頼度を出力としている。眼科検査装置1は、このような推論モデルに対して、被検眼Eの位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方を入力する。データが入力された推論モデルは信頼度を出力する。この場合、相対位置補正の信頼性評価データは、推論モデルから出力された信頼度を含んでいてよい。
【0298】
推論モデルの機械学習に用いられる訓練データは、眼に関する所定の項目のデータ(例:瞬きデータ)を更に含んでいてもよい。この場合、推論モデルは、位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方と、所定の項目のデータ及び当該データを処理して生成された処理データ(例えば、瞬きデータの積分データ)の少なくとも一方とを入力とし、且つ、信頼度を出力とする。眼科検査装置1は、被検眼Eに関する所定の項目のデータ及びその処理データの少なくとも一方と、被検眼Eの位置履歴データ及びその処理データの少なくとも一方とを、推論モデルに入力する。データが入力された推論モデルは、信頼度を出力する。本例における相対位置補正の信頼性評価データは、推論モデルから出力された信頼度を含んでいてよい。
【0299】
機械学習を用いることなく、眼科検査装置1は、被検眼Eに関する所定の項目のデータ及び位置履歴データに基づいて評価データを生成するように構成されていてもよい。
【0300】
眼科検査装置1は、被検者から取得された時系列データ及び位置履歴データに基づいて評価データを生成するように構成されていてもよい。時系列データは、被検者の頭部の位置の時系列変化を表すデータを含んでいてもよい。
【0301】
眼科検査装置1は、被検者から取得された時系列データに基づいて位置履歴データを補正するように構成されていてもよい。時系列データは、被検者の頭部の位置の時系列変化を表すデータを含んでいてもよい。
【0302】
眼科検査装置1は、被検眼Eの位置の時系列変化の可視化データを生成するように構成されていてもよい。可視化データは、表示、印刷などのビジュアライゼーションに使用可能なデータである。
【0303】
可視化データは、被検眼Eの位置の時系列変化を表すグラフデータを含んでいてよい。グラフデータは、所定の座標系で定義される被検眼Eの位置の所定方向成分(例えば、x方向成分、y方向成分、z方向成分)の時系列変化を表すグラフデータ(第1グラフデータ)を含んでいてもよい。また、グラフデータは、所定の2次元座標系(例えば、xy座標系、yz座標系、zx座標系)で定義される被検眼Eの2次元位置の時系列変化を表すグラフデータ(第2グラフデータ)を含んでいてもよい。また、グラフデータは、所定の3次元座標系(例えば、xyz座標系)で定義される被検眼Eの3次元位置の時系列変化を表すグラフデータ(第3グラフデータ)を含んでいてもよい。また、グラフデータは、被検眼Eの速度の時系列変化を表すグラフデータ(第4グラフデータ)を含んでいてもよい。
【0304】
眼科検査装置1は、光走査で取得されたデータセットに基づいて上記一連のサイクルのうちの連続した複数のサイクルからなる第1サイクル群に対応する第1画像データと、他の連続した複数のサイクルからなる第2サイクル群に対応する第2画像データとを構築するように構成されていてよい。第1画像データ及び第2画像データは、例えば、ストリップの構築(プロジェクション)に用いられたサブボリューム、又は、サブボリュームの構築に用いられたデータであってよい。更に、眼科検査装置1は、第1画像データと第2画像データとの交差領域に基づいて第1サイクル群に対応する第1時点と第2サイクル群に対応する第2時点との間における被検眼Eの変位を求め、この変位に基づいて位置履歴データを生成するように構成されていてよい。
【0305】
第1画像データ及び第2画像データのそれぞれは、所定の3次元座標系(例えば、xyz座標系)で定義された3次元画像データ(サブボリューム)であってよい。この場合、眼科検査装置1は、所定の3次元座標系の第1座標軸に沿う第1方向(例えば、z方向)に第1画像データ及び第2画像データをそれぞれ投影して第1投影画像データ及び第2投影画像データを構築し、第1投影画像データ及び第2投影画像データに基づいて第1方向に直交する第2方向(例えば、xy方向)における被検眼Eの変位を求めるように構成されていてもよい。ここで、第1投影画像データ及び第2投影画像データのそれぞれは、ストリップ、又は、ストリップの元になるデータである。
【0306】
眼科検査装置1は、第2方向(例えば、xy方向)における被検眼Eの変位を打ち消すように第1画像データと第2画像データとのレジストレーションを行うことができる。このレジストレーションの後、眼科検査装置1は、第1画像データ又は第1画像データに基づく第1方向(例えば、z方向)に沿う画像データ(例えば、断面画像、部分3次元画像、Aスキャン画像、その元になるデータ)と、第2画像データ又は第2画像データに基づく第1方向に沿う画像データ(例えば、断面画像、部分3次元画像、Aスキャン画像、その元になるデータ)とを比較して、第1方向における被検眼Eの変位を求めることができる。更に、眼科検査装置1は、第1方向における変位と第2方向における変位とに基づいて位置履歴データを生成することができる。
【0307】
第1画像データ及び第2画像データのそれぞれは、所定の3次元座標系(例えば、xyz座標系)で定義された3次元画像データ(サブボリューム)であってよい。この3次元座標系の第1座標軸は、第1方向(例えば、z方向)を規定してもよい。眼科検査装置1は、第1画像データ又は第1画像データに基づく第1方向に沿う画像データと、第2画像データ又は第2画像データに基づく第1方向に沿う画像データとを比較して、第1方向における被検眼Eの変位を求めるように構成されていてもよい。
【0308】
上記3次元座標系は、第1座標軸、第2座標軸、及び第3座標軸によって定義される直交座標系であってよい。第1座標軸は、光走査のプローブ光が被検眼Eに入射する方向(z方向)に対応してよく、且つ、上記2次元パターンは、第2座標軸及び第3座標軸(x軸及びy軸)によって定義されてよい。
【0309】
上記した例示的な実施形態は、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用して取得されたデータセットを記憶する記憶部(記憶部212)と、データセットに基づいて被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する位置履歴データ生成部(データ処理部230)とを含む眼科データ処理装置を提供する。
【0310】
上記した例示的な実施形態は、眼科データ処理装置の制御方法を提供する。眼科データ処理装置は、プロセッサ(主制御部211、230)と記憶装置(記憶部212)とを含む。本態様に係る方法は、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用して取得されたデータセットを記憶装置に記憶させるようにプロセッサを制御し、且つ、このデータセットに基づいて被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成するようにプロセッサを制御する。
【0311】
上記した例示的な実施形態は、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用してデータセットを取得するデータセット取得部(眼底カメラユニット2、OCTユニット100、画像データ構築部220)と、このデータセットに基づいて被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成する位置履歴データ生成部(データ処理部230)とを含む眼科検査装置を提供する。
【0312】
データセット取得部は、光走査を行う走査部(眼底カメラユニット2、OCTユニット100)を含んでいてよい。走査部は、互いに異なる2つの方向(例えば、x方向及びy方向)に光を偏向可能な偏向器(光スキャナ44)を含み、これら2つの方向の一方に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返しつつ他方に沿った偏向方向の変化を第1周期と異なる第2周期で繰り返すことによって2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用するように構成されてよい。
【0313】
上記した例示的な実施形態は、被検眼に光走査を適用する走査部(眼底カメラユニット2、OCTユニット100)と、プロセッサ(画像データ構築部220、データ処理部230)とを含む眼科検査装置を制御する方法を提供する。本態様に係る方法は、互いに交差する一連のサイクルを含む2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用してデータを収集するように走査部を制御し、収集されたデータに基づいて被検眼の位置の時系列変化を表す位置履歴データを生成するようにプロセッサを制御する。
【0314】
走査部は、互いに異なる2つの方向(例えば、x方向及びy方向)に光を偏向可能な偏向器(光スキャナ44)を含んでいてよい。この場合、眼科検査装置を制御する方法は、2つの方向の一方に沿った偏向方向の変化を第1周期で繰り返しつつ他方に沿った偏向方向の変化を第1周期と異なる第2周期で繰り返すことによって2次元パターンに従う光走査を被検眼に適用するように走査部を制御することができる。
【0315】
上記した例示的な実施形態は、眼科検査装置を制御する方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することが可能である。また、上記した例示的な実施形態は、眼科データ処理装置を制御する方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することが可能である。また、上記した例示的な実施形態は、眼科データ処理方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することが可能である。
【0316】
更に、上記した例示的な実施形態は、このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0317】
本開示は、幾つかの態様を例示するものに過ぎず、発明の限定を意図したものではない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0318】
1 眼科検査装置
44 光スキャナ
100 OCTユニット
211 主制御部
2111 走査制御部
212 記憶部
2121 走査プロトコル
220 画像データ構築部
230 データ処理部
231 画像データ処理部
232 xy位置履歴データ生成部
233 zシフト量算出部
234 z位置履歴データ生成部
235 可視化データ生成部
236 画像データ補正部
237 評価データ生成部
238 位置履歴データ補正部
250 データ受付部