(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132920
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】断熱容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 41/02 20060101AFI20220906BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A47J41/02 102D
B65D81/38 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031657
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】伊石 翼
【テーマコード(参考)】
3E067
4B002
【Fターム(参考)】
3E067AB26
3E067BA01A
3E067BB11A
3E067BC03A
3E067CA18
3E067EB27
3E067GA13
4B002AA02
4B002BA31
4B002BA60
4B002CA43
(57)【要約】
【課題】脱気用のスリットを設けることなく、外容器と内容器との間に真空断熱層を形成することを可能とした断熱容器の製造方法を提供する。
【解決手段】一端が開口した金属製の外容器2及び内容器3を有して、外容器2の内側に内容器3を収容した状態で互いの開口端側が接合されると共に、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4が設けられた断熱容器1Aの製造方法であって、減圧された状態で、外容器2を構成する一の部材2aと他の部材2bとの間を溶接により接合することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、前記外容器の内側に前記内容器を収容した状態で互いの開口端側が接合されると共に、前記外容器と前記内容器との間に真空断熱層が設けられた断熱容器の製造方法であって、
減圧された状態で、前記外容器を構成する一の部材と他の部材との間を溶接により接合することによって、前記外容器と前記内容器との間に前記真空断熱層を形成することを特徴とする断熱容器の製造方法。
【請求項2】
減圧された状態で、前記外容器の底部を形成する前記一の部材と、前記外容器の胴部を形成する前記他の部材との間を溶接により接合することを特徴とする請求項1に記載の断熱容器の製造方法。
【請求項3】
減圧された状態で、前記外容器の肩部を形成する前記一の部材と、前記外容器の胴部を形成する前記他の部材との間を溶接により接合することを特徴とする請求項1に記載の断熱容器の製造方法。
【請求項4】
一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、前記外容器の内側に前記内容器を収容した状態で互いの開口端側が接合されると共に、前記外容器と前記内容器との間に真空断熱層が設けられた断熱容器の製造方法であって、
減圧された状態で、前記外容器を構成する一の部材と、前記内容器を構成する他の部材との間を溶接により接合することによって、前記外容器と前記内容器との間に前記真空断熱層を形成することを特徴とする断熱容器の製造方法。
【請求項5】
前記一の部材と前記他の部材との間をレーザー溶接により接合することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の断熱容器の製造方法。
【請求項6】
前記外容器及び前記内容器は、チタン、アルミニウム、マグネシウム又はこれらの合金からなることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の断熱容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、外容器の内側に内容器を収容した状態で互いの開口端側が接合されると共に、外容器と内容器との間に真空断熱層が設けられた真空断熱構造を有する断熱容器がある。このような断熱容器は、保温・保冷機能を有する水筒やマグなどの飲料用容器、保温機能を有するフードコンテナや調理器などに広く利用されている。
【0003】
上述した断熱容器では、外容器と内容器との互いの開口端同士を合わせた状態で、この合わせ部分を溶接により接合している。また、減圧(真空引き)されたチャンバー内で、外容器の底面中央部に設けられた脱気孔をろう材により封止することによって、外容器と内容器との間に真空断熱層を形成している。
【0004】
一方、下記特許文献1には、真空断熱層を形成する方法として、減圧された状態で、外容器に設けられた脱気用のスリットを溶接により封止する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0231145号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、溶接により封止されたスリットは、溶接痕により見た目が悪くなってしまう。一方、溶接痕を目立たなくするため、スリット幅や長さを小さくすると、このスリットを通して脱気するのに要する時間が長くなり、製造効率が悪くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、脱気用のスリットを設けることなく、外容器と内容器との間に真空断熱層を形成することを可能とした断熱容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、前記外容器の内側に前記内容器を収容した状態で互いの開口端側が接合されると共に、前記外容器と前記内容器との間に真空断熱層が設けられた断熱容器の製造方法であって、
減圧された状態で、前記外容器を構成する一の部材と他の部材との間を溶接により接合することによって、前記外容器と前記内容器との間に前記真空断熱層を形成することを特徴とする断熱容器の製造方法。
〔2〕 減圧された状態で、前記外容器の底部を形成する前記一の部材と、前記外容器の胴部を形成する前記他の部材との間を溶接により接合することを特徴とする前記〔1〕に記載の断熱容器の製造方法。
〔3〕 減圧された状態で、前記外容器の肩部を形成する前記一の部材と、前記外容器の胴部を形成する前記他の部材との間を溶接により接合することを特徴とする前記〔1〕に記載の断熱容器の製造方法。
〔4〕 一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、前記外容器の内側に前記内容器を収容した状態で互いの開口端側が接合されると共に、前記外容器と前記内容器との間に真空断熱層が設けられた断熱容器の製造方法であって、
減圧された状態で、前記外容器を構成する一の部材と、前記内容器を構成する他の部材との間を溶接により接合することによって、前記外容器と前記内容器との間に前記真空断熱層を形成することを特徴とする断熱容器の製造方法。
〔5〕 前記一の部材と前記他の部材との間をレーザー溶接により接合することを特徴とする前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の断熱容器の製造方法。
〔6〕 前記外容器及び前記内容器は、チタン、アルミニウム、マグネシウム又はこれらの合金からなることを特徴とする前記〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の断熱容器の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、脱気用のスリットを設けることなく、外容器と内容器との間に真空断熱層を形成することを可能とした断熱容器の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る断熱容器の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す断熱容器の構成を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す断熱容器の構成を示す分解断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る断熱容器の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す断熱容器の構成を示す断面図である。
【
図6】
図4に示す断熱容器の構成を示す分解断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る断熱容器の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す断熱容器の構成を示す断面図である。
【
図9】
図7に示す断熱容器の構成を示す分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図3に示す断熱容器1A及びその製造方法について説明する。
【0013】
なお、
図1は、断熱容器1Aの構成を示す斜視図である。
図2は、断熱容器1Aの構成を示す断面図である。
図3は、断熱容器1Aの構成を示す分解断面図である。
【0014】
本実施形態の断熱容器1Aは、
図1~
図3に示すように、一端が開口した金属製の外容器2及び内容器3を備えている。断熱容器1Aは、外容器2の内側に内容器3を収容した状態で、互いの開口端側が接合されると共に、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4が設けられた真空断熱構造を有している。
【0015】
本実施形態の断熱容器1Aでは、このような真空断熱構造を有することで、保温や保冷といった機能を持たせることが可能である。また、断熱容器1Aでは、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外容器2及び内容器3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外容器2及び内容器3の機械的強度が増すことになる。これにより、外容器2及び内容器3の板厚を薄くした場合でも、断熱容器1Aの剛性を高めることが可能であり、この断熱容器1Aの軽量化を図ることが可能である。
【0016】
本実施形態の断熱容器1Aは、蓋付き容器の容器本体として、この断熱容器1Aに対して螺合により脱着される蓋体(図示せず。)によって、断熱容器1Aの上部開口部を開閉することが可能となっている。
【0017】
なお、本実施形態の断熱容器1Aは、全体として有底略円筒状の外観形状を有しているが、断熱容器1Aの外観形状については、特に限定されるものではなく、サイズやデザイン等に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。また、外容器2の外面には、塗装や印刷等が施されていてもよい。
【0018】
ところで、本実施形態の断熱容器1Aにおいて、外容器2は、一の部材である上側部材2aと、他の部材である下側部材2bとを有している。このうち、上側部材2aは、外容器2の胴部、肩部及び口頸部を構成している。下側部材2bは、外容器2の底部及び胴部を構成している。
【0019】
本実施形態の断熱容器1Aでは、上側部材2aの内側に内容器3を収容した状態で、これら上側部材2a及び内容器3の開口端同士を突き合わさせ、この突き合わせ部分を溶接により接合している。
【0020】
また、本実施形態の断熱容器1Aでは、内容器3と接合された上側部材2aに対して下側部材2bの上端を内側に嵌め込んだ状態で、これら上側部材2aと下側部材2bとの間を溶接により接合している。これにより、外容器2が構成されている。
【0021】
図2では、上側部材2aと内容器3との接合部分(境界)及び上側部材2aと下側部材2bとの接合部分(境界)が図示されているが、接合後は、これらの接合部分が溶接により溶融することで、接合部分の全周に亘って溶接ビードが形成されることになる。また、この溶接ビードについては、溶接後に研削及び研磨加工を施すことによって、平滑な面に仕上げられる。
【0022】
外容器2及び内容器3には、一般的に用いられるステンレスの他にも、チタン、アルミニウム、マグネシウム又はこれらの合金などの金属が用いられている。また、溶接による接合には、例えばレーザー溶接などの溶接方法が用いられている。
【0023】
本実施形態の断熱容器1Aでは、減圧された状態で、外容器2を構成する上側部材2aと下側部材2bとの間を溶接により接合することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成している。
【0024】
具体的に、この断熱容器1Aを製造する際は、減圧(真空引き)されたチャンバー内において、上側部材2aに対して下側部材2bの上端を内側に嵌め込んだ状態とする。この状態で、チャンバーに設けられた窓部を通して外部からチャンバー内の断熱容器1Aに対してレーザー光を照射する。
【0025】
このとき、断熱容器1Aを中心軸回りに回転させながら、上側部材2aと下側部材2bとの境界に沿ってレーザー光を照射する。これにより、上側部材2aと下側部材2bとの間を精度良く接合することが可能である。
【0026】
この場合、従来のような減圧(真空引き)されたチャンバー内で、外容器の底面に設けられた脱気用の孔部をろう材により封止する方法では、ろう材を溶融させるために断熱容器を加熱する必要がある。
【0027】
例えば、外容器及び内容器にステンレスよりも軽量な純チタンを用いる場合、純チタンに適したろう材は、800℃程度まで加熱して溶融させる必要がある。この場合、焼き鈍しによって外容器及び内容器の機械的強度が低下するため、ステンレスと同様の厚みでは機械的強度を保つことが困難となる。
【0028】
したがって、従来の封止方法では、ステンレスを用いる場合よりも外容器及び内容器の厚みを厚くして、外容器及び内容器の機械的強度を確保する必要がある。
【0029】
これに対して、本実施形態の断熱容器1Aの製造方法では、断熱容器1Aを加熱する必要がなく、外容器2及び内容器3に純チタンを用いた場合に焼き鈍しされることがない。したがって、外容器2及び内容器3の厚みを薄くすることが可能である。また、断熱容器1Aを加熱するのに必要な電力や時間が不要となる。
【0030】
以上のように、本実施形態の断熱容器1Aの製造方法では、脱気用のスリットを設けることなく、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することが可能である。
【0031】
また、本実施形態の断熱容器1Aの製造方法では、例えば下側部材2bの底面の一部に脱気用のスリットを設ける場合と比べて、上側部材2aと下側部材2bとの間から全周に亘って脱気することができるため、脱気にかかる時間を短くすることができ、製造タクトを短縮することが可能である。
【0032】
なお、本実施形態の断熱容器1Aの製造方法では、上述した減圧(真空引き)されたチャンバー内において、上側部材2aと下側部材2bとの間を全周に亘って接合する場合を例示しているが、上側部材2aと下側部材2bとの間の一部に非溶接部を残して大気圧中で溶接により接合した後に、減圧された状態で、この非溶接部を溶接により封止することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することも可能である。
【0033】
具体的に、非溶接部を封止する際は、減圧(真空引き)されたチャンバー内に、封止前の断熱容器1Aを収容し、非溶接部を通して外容器2と内容器3との間を脱気する。この状態で、チャンバーに設けられた窓部を通して外部からチャンバー内の断熱容器1Aに対してレーザー光を照射する。
【0034】
このとき、断熱容器1Aを中心軸回りに回転させながら、非溶接部に沿ってレーザー光を照射する。これにより、非溶接部を精度良く封止することが可能である。
【0035】
また、本実施形態の断熱容器1Aの製造方法では、上側部材2aと内容器3との間の一部に非溶接部を残して接合した後に、減圧された状態で、この非溶接部を溶接により封止することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することも可能である。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図4~
図6に示す断熱容器1B及びその製造方法について説明する。
【0037】
なお、
図4は、断熱容器1Bの構成を示す斜視図である。
図5は、断熱容器1Bの構成を示す断面図である。
図6は、断熱容器1Bの構成を示す分解断面図である。また、以下の説明では、上記断熱容器1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0038】
本実施形態の断熱容器1Bにおいて、外容器2は、
図4~
図6に示すように、一の部材である上側部材2cと、他の部材である下側部材2dとを有している。このうち、上側部材2cは、外容器2の肩部及び口頸部を構成している。下側部材2dは、外容器2の胴部及び底部を構成している。
【0039】
本実施形態の断熱容器1Bでは、上側部材2cの内側に内容器3を収容した状態で、これら上側部材2c及び内容器3の開口端同士を突き合わさせ、この突き合わせ部分を溶接により接合している。
【0040】
また、本実施形態の断熱容器1Bでは、上側部材2cと接合された内容器3を下側部材2dの内側に収容した状態で、上側部材2cと下側部材2dとを突き合わさせ、これら上側部材2cと下側部材2dとの間を溶接により接合している。これにより、外容器2が構成されている。
【0041】
図5では、上側部材2cと内容器3との接合部分(境界)及び上側部材2cと下側部材2dとの接合部分(境界)が図示されているが、接合後は、これらの接合部分が溶接により溶融することで、接合部分の全周に亘って溶接ビードが形成されることになる。また、この溶接ビードについては、溶接後に研削及び研磨加工を施すことによって、平滑な面に仕上げられる。
【0042】
本実施形態の断熱容器1Bでは、減圧された状態で、外容器2を構成する上側部材2cと下側部材2dとの間を溶接により接合することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成している。
【0043】
具体的に、この断熱容器1Bを製造する際は、大気圧中において予め上側部材2cと内容器3とを溶接により接合した後に、減圧(真空引き)されたチャンバー内において、上側部材2cの下端と側部材2dの上端とを突き合わせた状態とする。この状態で、チャンバーに設けられた窓部を通して外部からチャンバー内の断熱容器1Bに対してレーザー光を照射する。
【0044】
このとき、断熱容器1Bを中心軸回りに回転させながら、上側部材2cと下側部材2dとの境界に沿ってレーザー光を照射する。これにより、上側部材2cと下側部材2dとの間を精度良く接合することが可能である。
【0045】
本実施形態の断熱容器1Bの製造方法では、断熱容器1Bを加熱する必要がなく、外容器2及び内容器3に純チタンを用いた場合に焼き鈍しされることがない。したがって、外容器2及び内容器3の厚みを薄くすることが可能である。また、断熱容器1Bを加熱するのに必要な電力や時間が不要となる。
【0046】
以上のように、本実施形態の断熱容器1Bの製造方法では、脱気用のスリットを設けることなく、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することが可能である。
【0047】
また、本実施形態の断熱容器1Bの製造方法では、例えば下側部材2dの底面の一部に脱気用のスリットを設ける場合と比べて、上側部材2cと下側部材2dとの間から全周に亘って脱気することができるため、脱気にかかる時間を短くすることができ、製造タクトを短縮することが可能である。
【0048】
なお、本実施形態の断熱容器1Bの製造方法では、上述した減圧(真空引き)されたチャンバー内において、上側部材2cと下側部材2dとの間を全周に亘って接合する場合を例示しているが、上側部材2cと下側部材2dとの間の一部に非溶接部を残して大気圧中で溶接により接合した後に、減圧された状態で、この非溶接部を溶接により封止することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することも可能である。
【0049】
具体的に、非溶接部を封止する際は、減圧(真空引き)されたチャンバー内に、封止前の断熱容器1Bを収容し、非溶接部を通して外容器2と内容器3との間を脱気する。この状態で、チャンバーに設けられた窓部を通して外部からチャンバー内の断熱容器1Bに対してレーザー光を照射する。
【0050】
このとき、断熱容器1Bを中心軸回りに回転させながら、非溶接部に沿ってレーザー光を照射する。これにより、非溶接部を精度良く封止することが可能である。
【0051】
また、本実施形態の断熱容器1Bの製造方法では、上側部材2cと内容器3との間の一部に非溶接部を残して接合した後に、減圧された状態で、この非溶接部を溶接により封止することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することも可能である。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図7~
図9に示す断熱容器1Cについて説明する。
【0053】
なお、
図7は、断熱容器1Cの構成を示す斜視図である。
図8は、断熱容器1Cの構成を示す断面図である。
図9は、断熱容器1Cの構成を示す分解断面図である。また、以下の説明では、上記断熱容器1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0054】
本実施形態の断熱容器1Cでは、
図7~
図9に示すように、外容器2の内側に内容器3を収容した状態で、これら外容器2及び内容器3の開口端を合わせ、この合わせ部分を溶接により接合している。
【0055】
図8では、外容器2と内容器3との接合部分(境界)が図示されているが、接合後は、これらの接合部分が溶接により溶融することで、接合部分の全周に亘って溶接ビードが形成されることになる。また、この溶接ビードについては、溶接後に研削及び研磨加工を施すことによって、平滑な面に仕上げられる。
【0056】
本実施形態の断熱容器1Cでは、減圧された状態で、外容器2と内容器3との間を溶接により接合することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成している。
【0057】
具体的に、この断熱容器1Cを製造する際は、減圧(真空引き)されたチャンバー内において、外容器2と内容器3との開口端周辺を合わせた状態とする。この状態で、チャンバーに設けられた窓部を通して外部からチャンバー内の断熱容器1Cに対してレーザー光を照射する。
【0058】
このとき、断熱容器1Cを中心軸回りに回転させながら、外容器2と内容器3との境界に沿ってレーザー光を照射する。これにより、外容器2と内容器3との間を精度良く接合することが可能である。
【0059】
本実施形態の断熱容器1Cの製造方法では、断熱容器1Cを加熱する必要がなく、外容器2及び内容器3に純チタンを用いた場合に焼き鈍しされることがない。したがって、外容器2及び内容器3の厚みを薄くすることが可能である。また、断熱容器1Cを加熱するのに必要な電力や時間が不要となる。
【0060】
以上のように、本実施形態の断熱容器1Cでは、脱気用のスリットを設けることなく、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することが可能である。
【0061】
また、本実施形態の断熱容器1Cの製造方法では、例えば外容器2の底面の一部に脱気用のスリットを設ける場合と比べて、外容器2と内容器3との間から全周に亘って脱気することができるため、脱気にかかる時間を短くすることができ、製造タクトを短縮することが可能である。
【0062】
なお、本実施形態の断熱容器1Cの製造方法では、上述した減圧(真空引き)されたチャンバー内において、外容器2と内容器3との合わせ部分を全周に亘って接合する場合を例示しているが、外容器2と内容器3との間の一部に非溶接部を残して大気圧中で溶接により接合した後に、減圧された状態で、この非溶接部を溶接により封止することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することも可能である。
【0063】
具体的に、非溶接部を封止する際は、減圧(真空引き)されたチャンバー内に、封止前の断熱容器1Cを収容し、非溶接部を通して外容器2と内容器3との間を脱気する。この状態で、チャンバーに設けられた窓部を通して外部からチャンバー内の断熱容器1Cに対してレーザー光を照射する。
【0064】
このとき、断熱容器1Cを中心軸回りに回転させながら、非溶接部に沿ってレーザー光を照射する。これにより、非溶接部を精度良く封止することが可能である。
【0065】
また、本実施形態の断熱容器1Cの製造方法では、外容器2と内容器3との間の一部に非溶接部を残して接合した後に、減圧された状態で、この非溶接部を溶接により封止することによって、外容器2と内容器3との間に真空断熱層4を形成することも可能である。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、上述した蓋付き容器の容器本体に対して本発明の断熱容器を適用した場合を例示しているが、保温・保冷機能を有する水筒やマグなどの飲料用容器、保温機能を有するフードコンテナや調理器など、本発明が適用可能な断熱容器に対して本発明を幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1A,1B,1C…断熱容器 2…外容器 2a,2c…上側部材(一の部材) 2b,2d…下側部材(他の部材) 3…内容器 4…真空断熱層