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特開2022-132971ワークとシート材の一体化方法、ワークとシート材の一体化装置、および半導体製品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132971
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ワークとシート材の一体化方法、ワークとシート材の一体化装置、および半導体製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220906BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031743
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】村山 聡洋
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA15
5F063EE11
5F131AA02
5F131BA53
5F131CA09
5F131EB32
5F131EC33
5F131EC34
5F131EC44
5F131EC62
5F131EC69
5F131EC72
5F131EC77
5F131JA12
(57)【要約】
【課題】ワークにシート材を貼りつけて一体化させて半導体製品を製造させる際に、ワークに損傷が発生することをより確実に回避しつつ、シート材とワークとの密着性をより向上できるワークとシート材の一体化方法、ワークとシート材の一体化装置、および半導体製品の製造方法を提供する。
【解決手段】粘着テープDTを挟み込んでチャンバ29を下空間H1と上空間H2とに区画する上下空間形成過程と、チャンバ29の内部を減圧させ、下空間H1と上空間H2との間に形成された差圧で粘着テープDTをウエハWに付着させる第1の一体化過程と、下空間H1と上空間H2との圧力差を調整する圧力差調整過程と、当該圧力差が調整されている状態で、チャンバ29の内部空間の圧力を大気圧以上に上げて粘着テープDTをウエハWに密着させる第2の一体化過程と、を備える。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上チャンバと下チャンバとを備えたチャンバの内部空間で、ワークとシート材とを一体化させるワークとシート材の一体化方法であって、
前記上チャンバと前記下チャンバとによって前記シート材を挟み込んで、前記チャンバの内部空間を前記ワークが配置される下空間と、前記シート材を介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、
前記下空間の圧力が前記上空間の圧力より低くなるように前記チャンバの内部を減圧させ、前記チャンバ内の上空間と下空間との間に形成された差圧によって前記シート材を前記ワークに接触させることにより前記シート材を前記ワークに付着させる第1の一体化過程と、
第1の一体化過程の後に、前記チャンバ内の上空間と下空間との間の圧力差を調整する圧力差調整過程と、
前記圧力差が調整されている状態で、前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げることにより前記シート材を前記ワークに密着させる第2の一体化過程と、
を備えることを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記圧力差調整過程は、
前記シート材に貫通孔を形成させることによって、前記貫通孔を介して前記上空間と前記下空間とを連通させる
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項3】
請求項1に記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記圧力差調整過程は、
少なくとも前記上空間および前記下空間のうち一方の圧力を段階的に上昇するように制御することによって前記圧力差を維持させる
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項4】
請求項1に記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記チャンバは、
前記上空間の圧力を調整する第1変圧機構と、
前記下空間の圧力を調整する第2変圧機構と、
前記第1変圧機構および前記第2変圧機構を独立に制御する制御部と、
を備え、
前記圧力差調整過程は、
前記制御部が前記第1変圧機構および前記第2変圧機構を独立に制御することにより、前記圧力差を維持させつつ前記上空間および前記下空間の圧力を上昇させる
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記第1の一体化過程では、前記シート材を前記ワークに向けて凸状に変形させることにより前記シート材を前記ワークに接触させる
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記シート材は、前記ワークに応じた所定形状を有している
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記シート材は長尺の搬送用シートに保持されており、
前記上ハウジングの内部に配設されているシート状の弾性体を備え、
前記上下空間形成過程において前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記搬送用シートを挟み込むことにより、前記搬送用シートのうち前記シート材を保持していない面に前記シート状の弾性体が当接するように、前記シート状の弾性体は配設される
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記ワークは一方の面の外周に環状凸部を有し、
前記シート材は前記ワークのうち前記環状凸部が形成されている面に密着される
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のワークとシート材の一体化方法において、
前記ワークは光学素子を搭載した基板であり、
前記シート材は前記ワークのうち前記光学素子が搭載された面に密着される
ことを特徴とするワークとシート材の一体化方法。
【請求項10】
上チャンバと下チャンバとを備えたチャンバの内部空間で、ワークとシート材とを一体化させるワークとシート材の一体化装置であって、
前記ワークを保持する保持テーブルと、
前記保持テーブルを収納し、前記上チャンバと前記下チャンバによって前記シート材を挟み込んで形成される、前記シート材を介して上空間と下空間とに区画されるチャンバと、
前記シート材を供給する供給機構と、
前記下空間の圧力が前記上空間の圧力より低くなるように前記チャンバの内部を減圧させ、前記チャンバ内の上空間と下空間との間に形成された差圧によって前記シート状封止材を前記ワークに接触させることにより前記シート材を前記ワークに付着させる第1の一体化機構と、
前記シート材が前記ワークに付着した後に、前記チャンバ内の上空間と下空間との間の圧力差を調整する差圧調整機構と、
前記圧力差が調整されている状態で、前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げることにより前記シート材を前記ワークに密着させる第2の一体化機構と、
を備えることを特徴とするワークとシート材の一体化装置。
【請求項11】
上チャンバと下チャンバとを備えたチャンバの内部空間で、ワークとシート材とを一体化させることにより半導体製品を製造する半導体製品の製造方法であって、
前記上チャンバと前記下チャンバとによって前記シート材を挟み込んで、前記チャンバの内部空間を前記ワークが配置される下空間と、前記シート材を介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、
前記下空間の圧力が前記上空間の圧力より低くなるように前記チャンバの内部を減圧させ、前記チャンバ内の上空間と下空間との間に形成された差圧によって前記シート材を前記ワークに接触させることにより前記シート材を前記ワークに付着させる第1の一体化過程と、
第1一体化過程の後に、前記チャンバ内の上空間と下空間との間の圧力差が低減されるように前記チャンバ内の圧力を調整する圧力差調整過程と、
前記圧力差が調整されている状態で、前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げることにより前記シート材を前記ワークに密着させる第2の一体化過程と、
を備えることを特徴とする半導体製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップまたは電子部品などが搭載されている、半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)または基板を例とするワークに対して、テープ状の粘着材を例とするシート材を貼り付けて一体化させ、半導体製品を製造するために用いるワークとシート材の一体化方法、ワークとシート材の一体化装置、および半導体製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの表面に回路パターンが形成された後、バックグラインド工程によってウエハの裏面を研削し、さらにダイシング工程によって当該ウエハを多数のチップ部品に分断する。
裏面研削の工程では、ウエハの裏面外周を残して中央部分のみを研削し、バックグラインド域を囲むようにウエハの裏面外周に環状凸部を形成させる場合がある。
【0003】
この場合、ウエハの中央部を薄型化した場合であっても環状凸部によって補強されるので取り扱い時に歪み等が発生することを回避できる。バックグラインド工程の後、リングフレームの中央に環状凸部を有するウエハを載置させ、リングフレームとウエハの裏面とにわたって支持用の粘着テープ(ダイシングテープ)を貼り付ける。ダイシングテープを貼り付けてウエハとダイシングテープとを一体化させることによってマウントフレームが作成され、ダイシング工程へと供される。
【0004】
環状凸部によって段差が形成されたウエハに対し、ダイシングテープを例とする粘着シートを貼り付ける方法の一例としては、次のようなものが提案されている。すなわち、上下一対のハウジングからなるチャンバの接合部分に粘着シートを挟み込む。そしてチャンバ内を減圧し、当該粘着シートによって仕切られた2つの空間に差圧を発生させるとともに、当該粘着テープを凹入湾曲させてウエハ裏面に粘着シートを貼り付ける処理を行う。さらにチャンバにおける差圧を解消させた後、環状凸部の内側角部で接着しきれずに浮き上がっている粘着シートに第1押圧部材から気体を供給することによって2回目の貼付け処理を行っている(特許文献1を参照)。
【0005】
また、粘着シートを貼りつける処理をデバイス封止工程に転用する試みがなされている。すなわち、BGA(Ball grid array)パッケージを例とする電子製品の製造工程においては、ウエハまたは基板を例とするワークの表面に搭載されている、半導体チップを例とするデバイスを、樹脂組成物などの封止材料によって封止してパッケージ化する工程が行われる。
【0006】
従来は、デバイスが搭載されているワークを配置させた金型の内部に液体状態の樹脂を流し込んだ後、樹脂を熱硬化させてデバイスを封止する方法などが用いられている(例えば、特許文献2を参照)。これに対し、粘着力を有するシート状のデバイス封止材を上下一対のハウジングで挟み込むことで形成されたチャンバの内部にワークを配置し、チャンバの内部に差圧を発生させることでワーク上のデバイスをデバイス封止材の粘着シートで封止して両者を一体化する方法が本出願人によって別途提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2013-232582号公報
【特許文献2】特開2017-087551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来方法では次のような問題がある。すなわち、従来の方法では、粘着シートまたはシート状封止材を例とするシート材をワークに貼り付けてから時間が経過するにしたがって、密着性が低下し、ワークからシート材が剥がれるおそれが生じる。また、シート材をワークに貼り付ける際においてワークに割れ、欠け、または歪みなどの損傷が発生するという課題も新たに生ずる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ワークにシート材を貼りつけて一体化させて半導体製品を製造させる際において、ワークに損傷が発生することをより確実に回避しつつ、シート材とワークとの密着性をより向上できるワークとシート材の一体化方法、ワークとシート材の一体化装置、および半導体製品の製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、上チャンバと下チャンバとを備えたチャンバの内部空間で、ワークとシート材とを一体化させるワークとシート材の一体化方法であって、
前記上チャンバと前記下チャンバとによって前記シート材を挟み込んで、前記チャンバの内部空間を前記ワークが配置される下空間と、前記シート材を介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、
前記下空間の圧力が前記上空間の圧力より低くなるように前記チャンバの内部を減圧させ、前記チャンバ内の上空間と下空間との間に形成された差圧によって前記シート材を前記ワークに接触させることにより前記シート材を前記ワークに付着させる第1の一体化過程と、
第1の一体化過程の後に、前記チャンバ内の上空間と下空間との間の圧力差を調整する圧力差調整過程と、
前記圧力差が調整されている状態で、前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げることにより前記シート材を前記ワークに密着させる第2の一体化過程と、
を備えることを特徴とするものである。
【0011】
(作用・効果)この構成によれば、上下空間形成過程でシート材によってチャンバの内部空間を下空間と上空間とに区画した後、第1の一体化過程においてシート材をワークに接触させる。第1の一体化過程ではチャンバの内部を減圧させるので、上空間と下空間との間に形成された差圧を用いてシート材をワークに接触させる際にシート材とワークとの間に気泡が巻き込まれることを回避できる。
【0012】
また、第2の一体化過程ではチャンバの内部空間を大気圧以上の圧力に上げるので、ワークに接触したシート材とワークとの間に強い押圧力が作用する。その結果、シート材とワークとの密着性を大きく向上できるので、シート材をワークに貼り付けてから時間が経過してもワークからシート材が剥がれるという事態は防止される。
【0013】
そして、上空間と下空間との間の圧力差が所定値以下となるように調整する圧力差調整過程が第2の一体化過程の前に行われる。圧力差調整過程を行うことにより、第2の一体化過程では上空間と下空間との間の圧力差が所定値以下となるように調整されている状態でチャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げられる。そのため、チャンバの内部空間を大気圧以上に加圧することによって上空間と下空間との間に大きな圧力差が発生し、当該圧力差に起因して割れ、欠け、または歪みを例とする損傷がワークに発生するという事態を回避できる。よって、ワークとシート材とを一体化させる過程において、ワークとシート材との密着性を高めつつワークの損傷を回避できる。
【0014】
また、上述した発明において、前記圧力差調整過程は、前記シート材に貫通孔を形成させることによって、前記貫通孔を介して前記上空間と前記下空間とを連通させることが好ましい。
【0015】
(作用・効果)この構成によれば、圧力差調整過程においてシート材に貫通孔を形成させる。すなわち圧力差調整過程が行われることにより、貫通孔を介して上空間と下空間とが連通されるので、上空間の気圧と下空間の気圧との間に偏りが発生したとしても貫通孔を介して上空間と下空間との間で気体が流通することによって当該偏りは速やかに解消される。第2の一体化過程では貫通孔が形成された状態でチャンバの内部空間を大気圧以上に加圧するので、より確実に上空間と下空間との間に発生する圧力差を所定値以下に抑制させつつチャンバの内部空間を大気圧以上に加圧できる。
【0016】
また、上述した発明において、前記圧力差調整過程は、少なくとも前記上空間および前記下空間のうち一方の圧力を段階的に上昇するように制御することによって前記圧力差を維持させることが好ましい。
【0017】
(作用・効果)この構成によれば、圧力差調整過程を行うことにより、第2の一体化過程では少なくとも上空間および下空間のうち一方の圧力を段階的に上昇するように制御しつつ、チャンバの内部空間を大気圧以上に加圧する。少なくとも上空間および下空間のうち一方の圧力を段階的に上昇させることにより、上空間と下空間との間に発生する圧力差が所定値より大きくなることを防止できる。よって、より確実に上空間と下空間との間に発生する圧力差を所定値以下に抑制させつつチャンバの内部空間を大気圧以上に加圧できる。
【0018】
また、上述した発明において、前記チャンバは、前記上空間の圧力を調整する第1変圧機構と、前記下空間の圧力を調整する第2変圧機構と、前記第1変圧機構および前記第2変圧機構を独立に制御する制御部と、を備え、前記圧力差調整過程は、前記制御部が前記第1変圧機構および前記第2変圧機構を独立に制御することにより、前記圧力差を維持させつつ前記上空間および前記下空間の圧力を上昇させることが好ましい。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、上空間の圧力を調整する第1変圧機構と下空間の圧力を調整する第2変圧機構とを備える。そして制御部は第1変圧機構および第2変圧機構を独立に制御することにより、上空間の圧力と下空間の圧力とを独立に調整できる。そのため、圧力差調整過程において制御部が第1変圧機構および第2変圧機構を独立に制御することによって、第2の一体化過程ではより確実に上空間と下空間との間に発生する圧力差を所定値以下に抑制させつつチャンバの内部空間を大気圧以上に加圧できる。
【0020】
また、上述した発明において、前記第1の一体化過程では、前記シート材を前記ワークに向けて凸状に変形させることにより前記シート材を前記ワークに接触させることが好ましい。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、シート材をワークに向けて凸状に変形させるので、シート材は一点から放射状に広がるようにワークに接触させることができる。そのため、シート材をワークに接触させる際に気泡が巻き込まれることを回避できる。
【0022】
また、上述した発明において、前記シート材は、前記ワークに応じた所定形状を有していることが好ましい。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、シート材は、ワークに応じた所定形状を予め有している。そのため、ワークの形状に応じてシート材を適切にワークへ接触させることができる。また、シート材を適切な所定形状に切断するなどの工程が不要となるので、シート材とワークを一体化させる工程を短縮化できる。
【0024】
また、上述した発明において、前記シート材は長尺の搬送用シートに保持されており、前記上ハウジングの内部に配設されているシート状の弾性体を備え、前記上下空間形成過程において前記上ハウジングと前記下ハウジングとによって前記搬送用シートを挟み込むことにより、前記搬送用シートのうち前記シート材を保持していない面に前記シート状の弾性体が当接するように、前記シート状の弾性体は配設されることが好ましい。
【0025】
(作用・効果)この構成によれば、第1の一体化過程において、上空間と下空間との間に形成される差圧によってシート状の弾性体は全体にわたって、より均一な湾曲率で凸状に変形する。そのため、シート材はワークの面の形状に応じて変形し易くなるので、ワークに対するシート材の密着性をより向上できる。従って、ワークと一体化させたシート材が時間の経過とともにワークから剥がれる事態をより確実に回避できる。
【0026】
また、上述した発明において、前記ワークは一方の面の外周に環状凸部を有し、前記シート材は前記ワークのうち前記環状凸部が形成されている面に密着されることが好ましい。
【0027】
(作用・効果)この構成によれば、一方の面の外周に環状凸部を有するワークのうち環状凸部が形成されている面に対してシート材を密着させることによって、ワークとシート材とを一体化させる。一般的に環状凸部を有するワークにシート材を一体化させる場合、環状凸部の内側角部は圧力が集中しやすい部分であるので破損が発生し易く、またシート材は環状凸部の内側角部から剥がれやすい。
【0028】
本発明では第1の一体化過程、圧力差調整過程、および第2の一体化過程を行うので、ワークとシート材との密着性を高めつつワークの損傷を回避できる。そのため、外周に環状凸部を有するワークにシート材を一体化させる場合であっても、ワークに損傷が発生する事態とシート材がワークから剥がれる事態との両方を防止できる。よって、一方の面の外周に環状凸部を有するワークに対してより好適にシート材を一体化させることができる。
【0029】
また、上述した発明において、前記ワークは光学素子を搭載した基板であり、前記シート材は前記ワークのうち前記光学素子が搭載された面に密着されることが好ましい。
【0030】
(作用・効果)この構成によれば、光学素子を搭載した基板の光学素子搭載面に対してシート材を密着させることによって、ワークとシート材とを一体化させる。本発明では第1の一体化過程、圧力差調整過程、および第2の一体化過程を行うので、ワークとシート材との密着性を高めつつワークの損傷を回避できる。よって、光学素子を搭載した基板に対してより好適にシート材を一体化させることができる。
【0031】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、上チャンバと下チャンバとを備えたチャンバの内部空間で、ワークとシート材とを一体化させるワークとシート材の一体化装置であって、
前記ワークを保持する保持テーブルと、
前記保持テーブルを収納し、前記上チャンバと前記下チャンバによって前記シート材を挟み込んで形成される、前記シート材を介して上空間と下空間とに区画されるチャンバと、
前記シート材を供給する供給機構と、
前記下空間の圧力が前記上空間の圧力より低くなるように前記チャンバの内部を減圧させ、前記チャンバ内の上空間と下空間との間に形成された差圧によって前記シート状封止材を前記ワークに接触させることにより前記シート材を前記ワークに付着させる第1の一体化機構と、
前記シート材が前記ワークに付着した後に、前記チャンバ内の上空間と下空間との間の圧力差を調整する差圧調整機構と、
前記圧力差が調整されている状態で、前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げることにより前記シート材を前記ワークに密着させる第2の一体化機構と、
を備えることを特徴とするものである。
【0032】
(作用・効果)この構成によれば、シート材によって下空間と上空間とに区画されたチャンバにおいて、第1の一体化機構はシート材をワークに接触させる。このときチャンバの内部が減圧されるので、上空間と下空間との間に形成された差圧を用いてシート材をワークに接触させる際にシート材とワークとの間に気泡が巻き込まれることを回避できる。
【0033】
また、第2の一体化機構はチャンバの内部空間を大気圧以上の圧力に上げてシート材とワークとを一体化させるので、ワークに接触したシート材とワークとの間に強い押圧力が作用する。その結果、シート材とワークとの密着性を大きく向上できるので、シート材をワークに貼り付けてから時間が経過してもワークからシート材が剥がれるという事態が防止される。
【0034】
そして、差圧調整機構が上空間と下空間との間の圧力差が所定値以下となるように調整する。すなわち、差圧調整機構が予め作動することによって、第2の一体化機構は上空間と下空間との間の圧力差が所定値以下となるように調整されている状態でチャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上昇させる。そのため、チャンバの内部空間を大気圧以上に加圧することによって上空間と下空間との間に大きな圧力差が発生し、当該圧力差に起因して割れ、欠け、または歪みを例とする損傷がワークに発生するという事態を回避できる。よって、ワークとシート材とを一体化させる過程において、ワークとシート材との密着性を高めつつワークの損傷を回避できる。
【0035】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、上チャンバと下チャンバとを備えたチャンバの内部空間で、ワークとシート材とを一体化させることにより半導体製品を製造する半導体製品の製造方法であって、
前記上チャンバと前記下チャンバとによって前記シート材を挟み込んで、前記チャンバの内部空間を前記ワークが配置される下空間と、前記シート材を介在して前記下空間と対向する上空間とに区画する上下空間形成過程と、
前記下空間の圧力が前記上空間の圧力より低くなるように前記チャンバの内部を減圧させ、前記チャンバ内の上空間と下空間との間に形成された差圧によって前記シート材を前記ワークに接触させることにより前記シート材を前記ワークに付着させる第1の一体化過程と、
第1一体化過程の後に、前記チャンバ内の上空間と下空間との間の圧力差が低減されるように前記チャンバ内の圧力を調整する圧力差調整過程と、
前記圧力差が調整されている状態で、前記チャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げることにより前記シート材を前記ワークに密着させる第2の一体化過程と、
を備えることを特徴とするものである。
【0036】
(作用・効果)この構成によれば、上下空間形成過程でシート材によってチャンバの内部空間を下空間と上空間とに区画した後、第1の一体化過程においてシート材をワークに接触させる。第1の一体化過程ではチャンバの内部を減圧させるので、上空間と下空間との間に形成された差圧を用いてシート材をワークに接触させる際にシート材とワークとの間に気泡が巻き込まれることを回避できる。
【0037】
また、第2の一体化過程ではチャンバの内部空間を大気圧以上の圧力に上げるので、ワークに接触したシート材とワークとの間に強い押圧力が作用する。その結果、シート材とワークとの密着性を大きく向上できるので、シート材をワークに貼り付けてから時間が経過してもワークからシート材が剥がれるという事態は防止される。
【0038】
そして、上空間と下空間との間の圧力差が所定値以下となるように調整する圧力差調整過程が第2の一体化過程の前に行われる。圧力差調整過程を行うことにより、第2の一体化過程では上空間と下空間との間の圧力差が所定値以下となるように調整されている状態でチャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げられる。そのため、チャンバの内部空間を大気圧以上に加圧することによって上空間と下空間との間に大きな圧力差が発生し、当該圧力差に起因して割れ、欠け、または歪みを例とする損傷がワークに発生するという事態を回避できる。よって、ワークとシート材とを一体化させる過程において、ワークとシート材との密着性を高めつつワークの損傷を回避できる。従って、ワークとシート材とが一体化された半導体製品を製造する際においてワークが損傷した不良品が発生することを防止できるとともに、製造される半導体製品の品質をより向上できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係るワークとシート材の一体化方法、ワークとシート材の一体化装置、および半導体製品の製造方法によれば、上下空間形成過程でシート材によってチャンバの内部空間を下空間と上空間とに区画した後、第1の一体化過程においてシート材をワークに接触させる。第1の一体化過程ではチャンバの内部を減圧させるので、上空間と下空間との間に形成された差圧を用いてシート材をワークに接触させる際にシート材とワークとの間に気泡が巻き込まれることを回避できる。
【0040】
また、第2の一体化過程ではチャンバの内部空間を大気圧以上の圧力に上げるので、ワークに接触したシート材とワークとの間に強い押圧力が作用する。その結果、シート材とワークとの密着性を大きく向上できるので、シート材をワークに貼り付けてから時間が経過してもワークからシート材が剥がれるという事態は防止される。
【0041】
そして、上空間と下空間との間の圧力差を調整する圧力差調整過程が第2の一体化過程の前に行われる。圧力差調整過程を行うことにより、第2の一体化過程では上空間と下空間との間の圧力差が調整されている状態でチャンバの内部空間の圧力を大気圧以上の圧力に上げられる。
【0042】
そのため、チャンバの内部空間を大気圧以上に加圧することによって上空間と下空間との間に大きな圧力差が発生し、当該圧力差に起因して割れ、欠け、または歪みを例とする損傷がワークに発生するという事態を回避できる。よって、ワークとシート材とを一体化させる過程において、ワークとシート材との密着性を高めつつワークの損傷を回避できる。従って、ワークとシート材とが一体化された半導体製品を製造する際においてワークが損傷した不良品が発生することを防止できるとともに、製造される半導体製品の品質をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施例1に係る半導体ウエハの構成を示す図である。(a)は半導体ウエハの一部破断斜視図であり、(b)は半導体ウエハの裏面側の斜視図であり、(c)は半導体ウエハの部分縦断面図である。
【
図2】実施例1に係る粘着シートの構成を示す断面図である。
【
図3】実施例1に係る粘着シート貼付け装置の平面図である。
【
図4】実施例1に係る粘着シート貼付け装置の正面図である。
【
図5】実施例1に係る貼付けユニットの正面図である。
【
図7】実施例1に係るシート穿孔部の斜視図である。
【
図8】実施例1に係る粘着シート貼付け装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施例1に係るマウントフレームの斜視図である。
【
図10】実施例1に係るステップS2を説明する図である。
【
図11】実施例1に係るステップS3を説明する図である。
【
図12】実施例1に係るステップS3を説明する図である。
【
図13】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
【
図14】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
【
図15】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
【
図16】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
【
図17】実施例1に係るステップS5において、シート穿孔部が下降することによって形成された貫通孔の位置を説明する平面図である。
【
図18】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
【
図19】実施例1に係るステップS5において、シート穿孔部が回動することによって形成された貫通孔の位置を説明する平面図である。
【
図20】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
【
図21】実施例1に係るステップS6を説明する図である。
【
図22】実施例1に係るステップS7を説明する図である。
【
図23】実施例1に係るステップS7を説明する図である。
【
図24】実施例1に係るステップS8を説明する図である。
【
図25】比較例に係るチャンバ内部の加圧制御パターンを説明するグラフ図である。
【
図26】実施例2に係るチャンバ内部の加圧制御パターンを説明するグラフ図である。
【
図27】実施例3に係るチャンバの縦断面図である。
【
図28】実施例3に係るステップS6を説明する図である。
【
図29】実施例3に係るチャンバ内部の圧力の変化を説明するグラフ図である。
【
図30】実施例4に係るチャンバの縦断面図である。
【
図31】実施例5に係る封止部材の構成を示す図である。(a)は封止部材の裏面側の斜視図であり、(b)は封止部材の縦断面図である。
【
図32】実施例5に係る基板およびリングフレームの構成を示す斜視図である。
【
図33】実施例5に係るデバイス封止装置の平面図である。
【
図34】実施例5に係るデバイス封止装置の正面図である。
【
図35】実施例5に係る封止ユニットの正面図である。
【
図36】実施例5に係るデバイス封止装置の動作を示すフローチャートである。
【
図37】実施例5に係るステップS2を説明する図である。
【
図38】実施例5に係るステップS2を説明する図である。
【
図39】実施例5に係るステップS3を説明する図である。
【
図40】実施例5に係るステップS3を説明する図である。
【
図41】実施例5に係るステップS4を説明する図である。
【
図42】実施例5に係るステップS4を説明する図である。
【
図43】実施例5に係るステップS5を説明する図である。
【
図44】実施例5に係るステップS5を説明する図である。
【
図45】実施例5に係るステップS5において、シート穿孔部が回動することによって形成された貫通孔の位置を説明する平面図である。
【
図46】実施例5に係るステップS6を説明する図である。
【
図47】実施例5に係るステップS7を説明する図である。
【
図48】実施例5に係るステップS7を説明する図である。
【
図49】実施例5に係るステップS8を説明する図である。
【
図50】実施例5の効果を説明する図である。(a)はチャンバ内を減圧して封止を行う際に間隙部が形成される場合の構成を説明する縦断面図であり、(b)はチャンバ内を加圧して封止を行うことにより、間隙部が充填されていく状態を説明する縦断面図である。
【
図51】変形例に係るステップS4を説明する図である。
【
図52】変形例に係る構成を説明する図である。(a)は弾性体を備える変形例に係るチャンバの構成を示す縦断面図であり、(b)は弾性体を有しない比較例において発生しうる問題点を説明する図であり、(c)は弾性体を有する変形例における利点を説明する図である。
【
図53】変形例に係る構成を説明する図である。(a)は加温機構を備える変形例の構成を示す図であり、(b)は加温機構を粘着テープに近接させる変形例の構成を示す図である。
【
図54】変形例に係る構成を説明する図である。(a)は変形例に係る基板の構成を示す縦断面図であり、(b)は変形例に係る保持テーブルの構成を説明する縦断面図である。
【
図55】変形例に係るステップS3の工程を説明する図である。
【
図56】変形例に係るステップS2の工程を説明する図である。
【
図57】変形例に係るステップS3の工程を説明する図である。
【
図58】実施例2に係るチャンバの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0044】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。実施例1は、ワークとシート材を一体化させる構成の例として、ワークに対して粘着シートを貼りつける粘着シート貼付け装置1を用いて説明する。
【0045】
実施例1に係る粘着シート貼付け装置1では、支持用の粘着テープDT(ダイシングテープ)を粘着シートとして用い、粘着シートを貼り付ける対象であるワークとして半導体ウエハW(以下、「ウエハW」とする)、およびリングフレームfを用いるものとする。すなわち実施例1に係る粘着シート貼付け装置1では、ウエハWおよびリングフレームfにわたって粘着テープDTを貼り付けることにより、マウントフレームMFが作成される。マウントフレームMFは、ウエハWおよびリングフレームfに対して粘着テープDTが一体化している半導体製品である。実施例1において、マウントフレームMFは本発明における半導体製品に相当する。
【0046】
ウエハWは
図1(a)ないし
図1(c)に示すように、回路パターンが形成された表面に、回路保護用の保護テープPTが貼り付けられている状態でバックグラインド処理されたものである。ウエハWの裏面は、外周部を径方向に約3mmを残して研削(バックグラインド)されている。すなわち、裏面に扁平凹部Heが形成されるとともに、その外周に沿って環状凸部Kaが残存された形状に加工されたものが使用される。一例として、扁平凹部Heにおいて研削される深さdが数百μm、扁平凹部Heのウエハ厚さJが30μmないし50μmになるよう加工されている。したがって、裏面外周に形成された環状凸部Kaは、ウエハWの剛性を高める環状リブとして機能し、ハンドリングやその他の処理工程におけるウエハWの撓み変形を抑止する。なお、環状凸部Kaの内側角部について、符
号Kfを用いて示している。内側角部Kfは、環状凸部Kaと扁平凹部Heとの境界に相当する。ウエハWの裏面は、本発明におけるワークの環状凸部形成面に相当する。
【0047】
本実施例に用いられる粘着テープDTは
図2に示すように、非粘着性の基材Taと、粘着性を有する粘着材Tbとが積層した長尺状の構造を備えている。粘着材TbにはセパレータSが添設されている。すなわち粘着テープDTの粘着面にセパレータSが添設されており、セパレータSを粘着テープDTから剥離することによって粘着テープDTの粘着面が露出する。
【0048】
基材Taを構成する材料の例として、ポリオレフィン、ポリエチレン、エチレン-ビニル酢酸共重合体、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンメタアクリル酸共重合体、ポリプロピレン、メタアクリル酸テレフタレート、ポリアミドイミド、ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。なお、上述した材料を複数組み合わせたものを基材Taとして用いてもよい。また、基材Taは単層でもよいし、複数の層を積層させた構成でもよい。
【0049】
粘着材Tbは、粘着テープDTがウエハWおよびリングフレームfに粘着する状態を保持できる機能と、後のダイシング工程においてチップ部品の飛散を防止する機能とを担保できる材料で構成されることが好ましい。粘着材Tbを構成する材料の例として、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。セパレータSの例として、長尺状の紙材やプラスチックなどが挙げられる。なお、粘着材Tbの代わりに接着材または粘接着材を用いてもよい。
【0050】
<全体構成の説明>
ここで、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の全体構成について説明する。
図3は、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の基本構成を示す平面図である。粘着シート貼付け装置1は、横長の矩形部1aと、突出部1bとを備えた構成になっている。突出部1bは、矩形部1aの中央部で連接して上側に突出する構成になっている。なお、以後の説明において、矩形部1aの長手方向を左右方向(x方向)、これと直交する水平方向(y方向)を前後方向と呼称する。
【0051】
矩形部1aの右側にはウエハ搬送機構3が配備されている。矩形部1aの下側右寄りの位置には、ウエハWを収容した2個の容器5が並列に載置されている。容器5の内部には、表面に保護テープPTが貼り付けられているウエハWが、表面側を下向きにした状態で多段に収納されている。矩形部1aの左端には、ウエハWのマウントを完了した
図9に示すマウントフレームMFを回収するフレーム回収部6が配備されている。
【0052】
矩形部1aの上側の右からアライナ7、保持テーブル9、およびフレーム供給部12の順に配備されている。突出部1bには、支持用の粘着テープDT(ダイシングテープ)をウエハWの裏面とリングフレームfとにわたって貼り付ける貼付けユニット13が配備されている。
【0053】
ウエハ搬送機構3は
図4に示すように、矩形部1aの上部に左右水平に架設された案内レール15の右側に左右往復移動可能に支持されたウエハ搬送装置16が備えられている。また、案内レール15の左側には左右移動可能に支持されたフレーム搬送装置17が備えられている。
【0054】
ウエハ搬送装置16は、容器5のいずれか一方から取り出したウエハWを左右および前後に搬送できるよう構成されている。ウエハ搬送装置16は、左右移動可動台18と前後移動可動台19とが装備されている。
【0055】
左右移動可動台18は、案内レール15に沿って左右方向へ往復移動可能となるように構成されている。前後移動可動台19は、左右移動可動台18に備えられた案内レール20に沿って前後方向へ往復移動可能となるように構成されている。
【0056】
さらに、前後移動可動台19の下部には、ウエハWを保持する保持ユニット21が装備されている。保持ユニット21は縦方向に延伸する昇降レール22に沿って上下方向(z方向)に往復移動可能となるよう構成されている。また保持ユニット21は図示しない回転軸により、z方向の軸周りに旋回可能となっている。
【0057】
保持ユニット21の下部には、馬蹄形の保持アーム23が装備されている。保持アーム23の保持面には、僅かに突出した複数個の吸着パッドが設けられており、当該吸着パッドを介してウエハWを吸着保持する。また、保持アーム23は、その内部に形成された流路と、この流路の基端側で連接された接続流路を介して圧空装置に連通接続されている。
【0058】
上記した可動構造を利用することで、吸着保持したウエハWを保持アーム23によって前後移動、左右移動、および、z方向軸周りの旋回移動を行うことができるようになっている。
【0059】
フレーム搬送装置17は、左右移動可動台24と、前後移動可動台25と、左右移動可動台24の下部に連結された屈伸リンク機構26と、屈伸リンク機構26の下端に装備された吸着プレート27などを備えている。吸着プレート27はウエハWを吸着保持する。吸着プレート27の周りには、リングフレームfを吸着保持する複数個の吸着パッド28が配備されている。従って、フレーム搬送装置17は、保持テーブル9に載置保持されたリングフレームfまたはマウントフレームMFを吸着保持して、昇降および前後左右に搬送することができる。吸着パッド28は、リングフレームfのサイズに対応して水平方向にスライド調節可能になっている。
【0060】
保持テーブル9は、
図5および
図6などに示すように、ウエハWと同形状以上の大きさを有する金属製のチャックテーブルであり、外部に配備されている真空装置31および加圧装置32の各々と連通接続されている。真空装置31および加圧装置32の動作は、制御部33によって制御される。
【0061】
実施例1において、保持テーブル9は外周部に環状の突起部9aを備えており全体として中空となっている。突起部9aは平面視においてウエハWの環状凸部Kaの配置と略一致する位置に構成されており、突起部9aがウエハWの環状凸部Kaを支持することによって、保持テーブル9は薄い扁平凹部Heに接触することなくウエハWを保持できる。
【0062】
また
図5に示すように、保持テーブル9は、チャンバ29を構成する下ハウジング29Aに収納されており、下ハウジング29Aを貫通するロッド35の一端と連結されている。ロッド35の他端はモータなどを備えるアクチュエータ37に駆動連結されている。そのため、保持テーブル9はチャンバ29の内部で昇降移動が可能となっている。
【0063】
下ハウジング29Aは、当該下ハウジング29Aを外囲するフレーム保持部38を備えている。フレーム保持部38は、リングフレームfを載置したとき、リングフレームfの上面と下ハウジング29Aの円筒頂部とが面一になるように構成されている。また、下ハウジング29Aの円筒頂部は離型処理が施されていることが好ましい。
【0064】
なお
図3に示すように、保持テーブル9は下ハウジング29Aとともに、前後方向に付設されているレール40に沿って、初期位置と貼付け位置との間を往復移動可能に構成されている。初期位置は矩形部1aの内部にあり、
図3において保持テーブル9が実線で示されている位置である。当該初期位置において、ウエハWおよびリングフレームfが保持テーブル9に載置される。
【0065】
貼付け位置は突出部1bの内部にあり、
図3において保持テーブル9が点線で示されている位置である。貼付け位置へ保持テーブル9が移動することにより、保持テーブル9に載置されているウエハWに対して粘着テープDTを貼り付ける貼付け工程を実行することが可能となる。
【0066】
フレーム供給部12は、所定枚数のリングフレームfを積層収納した引き出し式のカセットを収納する。
【0067】
貼付けユニット13は、
図5に示すように、シート供給部71、セパレータ回収部72、シート貼付け部73、シート回収部74、およびシート穿孔部76などから構成されている。シート供給部71は、支持用の粘着テープDTが巻回された原反ロールの装填された供給ボビンを備えている。そして、シート供給部71の供給ボビンから粘着テープDTを貼付け位置に供給する過程で剥離ローラ75によってセパレータSを剥離するよう構成されている。なお、シート供給部71に設けられている供給ボビンは、電磁ブレーキに連動連結されて適度の回転抵抗がかけられている。したがって、供給ボビンから過剰なテープの繰り出しが防止されている。
【0068】
セパレータ回収部72は、粘着テープDTから剥離されたセパレータSを巻き取る回収ボビンが備えられている。この回収ボビンは、モータよって正逆に回転駆動制御されるようになっている。
【0069】
シート貼付け部73は、チャンバ29、シート貼付け機構81およびシート切断機構82などから構成されている。
【0070】
チャンバ29は、下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとによって構成される。下ハウジング29Aは保持テーブル9を囲繞するように配設されており、保持テーブル9とともに初期位置と貼付け位置との間を前後方向に往復移動する。上ハウジング29Bは突出部1bに配備されており、昇降可能に構成される。
【0071】
図6に示すように、下ハウジング29Aは減圧用の流路201と連通接続されており、上ハウジング29Bは減圧用の流路202と連通接続されている。流路201および流路202は、いずれも減圧用の流路101を介して真空装置31と連通接続されている。すなわち、下ハウジング29Aは流路101および流路201を介して減圧用の真空装置31と連通接続されている。そして上ハウジング29Bは流路101および流路202を介して減圧用の真空装置31と連通接続されている。
【0072】
さらに、下ハウジング29Aは加圧用の流路203と連通接続されており、上ハウジング29Bは加圧用の流路204と連通接続されている。流路203および流路204は、いずれも加圧用の流路102を介して加圧装置32と連通接続されている。すなわち、下ハウジング29Aは流路102および流路203を介して加圧装置32と連通接続されている。そして上ハウジング29Bは流路102および流路204を介して加圧装置32と連通接続されている。
【0073】
なお、流路101には電磁バルブ103が備えられており、流路102には電磁バルブ104が備えられている。また、両ハウジング29A、29Bには、大気開放用の電磁バルブ105、107を備えた流路109がそれぞれ連通接続されている。そして、流路201には電磁バルブ113が備えられており、流路203には電磁バルブ114が備えられている。
【0074】
さらに、上ハウジング29Bには、一旦減圧した内圧をリークにより調整する電磁バルブ110を備えた流路111が連通接続されている。電磁バルブ110には、開度調節弁112が設けられている。開度調節弁112は、電磁バルブ110の開度を適宜調節することにより、流路111を介してリークされる気体の量を調節する。なお、これら電磁バルブ103、104、105、107、113、114の開閉操作、電磁バルブ110の開度の調節、真空装置31の作動、加圧装置32の作動は、制御部33によって行われている。
【0075】
すなわち真空装置31は、下ハウジング29A側の空間の気圧と上ハウジング29B側の空間の気圧とを減圧調節できるように構成されている。そして加圧装置32は、下ハウジング29A側の空間の気圧と上ハウジング29B側の空間の気圧とを加圧調節できるように構成されている。
【0076】
なお実施例1において、電磁バルブ103が流路101に配設されている場合、電磁バルブ113は流路201の代わりに流路202に配設されてもよい。電磁バルブ113が流路201に配設されている場合、電磁バルブ103は流路101の代わりに流路202に配設されていてもよい。電磁バルブ104が流路102に配設されている場合、電磁バルブ114は流路203の代わりに流路204に配設されてもよい。電磁バルブ114が流路203に配設されている場合、電磁バルブ104は流路102の代わりに流路204に配設されていてもよい。
【0077】
シート貼付け機構81は、可動台84、貼付けローラ85、ニップローラ86などを備えている。可動台84は、左右方向に架設された案内レール88に沿って左右水平に移動する。貼付けローラ85は、可動台84に備わったシリンダの先端に連結されたブラケットに軸支されている。ニップローラ86はシート回収部74側に配備されており、モータにより駆動する送りローラ89とシリンダによって昇降するピンチローラ90とを備えている。
【0078】
シート切断機構82は、上ハウジング29Bを昇降させる昇降駆動台91に配備されており、z方向に延びる支軸92と、支軸92の周りに回転するボス部93を備えている。ボス部93は、径方向に延伸する複数の支持アーム94を備えている。少なくとも1つの支持アーム94の先端には、粘着テープDTをリングフレームfに沿って切断する円板形のカッタ95が上下移動可能となるように配備されている。他の支持アーム94の先端には、押圧ローラ96が上下移動可能となるように配備されている
【0079】
シート回収部74は、切断後に剥離された不要な粘着テープDTを巻き取る回収ボビンを備えている。この回収ボビンは、図示されていないモータよって正逆に回転駆動制御されるようになっている。
【0080】
フレーム回収部6は、
図4に示すように、マウントフレームMFを積載して回収するカセット41が配備されている。このカセット41は、装置フレーム43に連結固定された縦レール45と、この縦レール45に沿ってモータ47でネジ送り昇降される昇降台49が備えられている。したがって、フレーム回収部6は、マウントフレームMFを昇降台49に載置してピッチ送り下降するよう構成されている。
【0081】
シート穿孔部76は、上ハウジング29Bの内部に配設されている。シート穿孔部76は
図7に示すように、昇降駆動台97と、回転軸部99とを備えている。昇降駆動台97は、上ハウジング29Bの内部においてz方向へ昇降移動可能に構成されている。回転軸部99はz方向に延びており、昇降駆動台97の下部に接続されている。回転軸部99は、図示しないモータによってz方向の軸周りに回動可能に構成されている。
【0082】
回転軸部99の側面には、回転軸部99の径方向に延伸する支持アーム127が備えられている。各々の支持アーム127の基端側は回転軸部99に接続されている。各々の支持アーム127の先端側にはカッタホルダ128に支持されたカッタ129が配設されている。実施例1において、シート穿孔部76は4本の支持アーム127を備えているが、支持アーム127の数は適宜変更して良い。
【0083】
カッタ129はチャンバ29の内部において粘着テープDTに貫通孔を形成させるものであり、カッタ刃を下向きにした状態でカッタホルダ128の下部に配備されている。すなわち昇降駆動台97がz方向に昇降移動することによって、各々の支持アーム127に支持されているカッタ129は昇降駆動台97とともにz方向へ昇降移動する。また、回転軸部99が回転することによって、カッタ129の各々は支持アーム127とともに回転軸部99を中心とする円軌道L1に沿って移動する。
【0084】
<動作の概要>
ここで、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の基本動作を説明する。
図8は、粘着シート貼付け装置1を用いて、ウエハWに粘着テープDTを貼り付ける一連の工程を説明するフローチャートである。
【0085】
ステップS1(ワークの供給)
貼付け指令が出されると、フレーム供給部12から下ハウジング29Aのフレーム保持部38へリングフレームfが搬送されるとともに、容器5から保持テーブル9へウエハWが搬送される。
【0086】
すなわち、フレーム搬送装置17はフレーム供給部12からリングフレームfを吸着してフレーム保持部38に移載する。フレーム搬送装置17がリングフレームfの吸着を解除して上昇すると、リングフレームfの位置合わせを行う。当該位置合わせは、一例としてフレーム保持部38を囲繞するように立設された複数の支持ピンを中央方向へ同期的に移動させることによって行われる。リングフレームfは、フレーム保持部38にセットされた状態で、ウエハWが搬送されてくるまで待機している。
【0087】
フレーム搬送装置17がリングフレームfを搬送する一方、ウエハ搬送装置16は、容器5の内部で多段に収納されているウエハWの同士の間に保持アーム23を挿入する。保持アーム23は、ウエハWを吸着保持して搬出し、アライナ7に搬送する。アライナ7は、その中央から突出した吸着パッドによりウエハWの中央を吸着する。同時に、ウエハ搬送装置16は、ウエハWの吸着を解除して上方に退避する。アライナ7は、吸着パッドでウエハWを保持して回転させながらノッチなどに基づいて位置合わせを行う。
【0088】
位置合わせが完了すると、ウエハWを吸着した吸着パッドをアライナ7の面から突出させる。その位置にウエハ搬送装置16が移動し、ウエハWを吸着保持する。吸着パッドは、吸着を解除して下降する。
【0089】
ウエハ搬送装置16は保持テーブル9の上方に移動し、保護テープPTが貼り付けられている表面側を下向きにした状態で、ウエハWを保持テーブル9に載置させる。保持テーブル9がウエハWを吸着保持し、フレーム保持部38がリングフレームfを吸着保持すると、下ハウジング29Aはレール40に沿って初期位置からシート貼付け機構81側の貼付け位置へと移動する。保持テーブル9にウエハWが供給され、貼付け位置へと移動した状態は
図10に示されている。
【0090】
ステップS2(粘着シートの供給)
ウエハ搬送装置16などによるワークの供給が行われると、貼付けユニット13において粘着テープDTの供給を行う。すなわち、シート供給部71から所定量の粘着テープDTがセパレータSを剥離されながら繰り出される。全体として長尺状である粘着テープDTは、所定の搬送経路に沿って貼付け位置の上方へと案内される。
【0091】
ステップS3(チャンバの形成)
ワークおよび粘着テープDTが供給されると、
図11に示すように、貼付けローラ85が下降する。そして、粘着テープDTの上を転動しながらリングフレームfと下ハウジング29Aの頂部とにわたって粘着テープDTを貼り付ける。この貼付けローラ85の移動に連動して、シート供給部71から所定量の粘着テープDTがセパレータSを剥離されながら繰り出される。
【0092】
リングフレームfに粘着テープDTが貼り付けられると、貼付けローラ85を初期位置へと復帰させるとともに、上ハウジング29Bを下降させる。上ハウジング29Bの下降に伴って、
図12に示すように、下ハウジング29Aの頂部に貼り付けられている部分の粘着テープDTは上ハウジング29Bと下ハウジング29Aによって挟持され、チャンバ29が構成される。
【0093】
このとき、粘着テープDTがシール材として機能するとともに、チャンバ29は粘着テープDTによって2つの空間に分割される。すなわち、粘着テープDTを挟んで下ハウジング29A側の下空間H1と上ハウジング29B側の上空間H2とに分割される。下ハウジング29A内に位置するウエハWは、粘着テープDTと所定のクリアランスを有して近接対向している。
【0094】
ステップS4(第1貼付け過程)
チャンバ29を形成させた後、第1貼付け過程を開始する。まず、制御部33は、
図6に示す電磁バルブ104、105、107、110、114を閉じるとともに、電磁バルブ103および113を開く。そして制御部33は真空装置31を作動させて下空間H1内の気圧と上空間H2内の気圧とを所定値まで減圧する。所定値の例として、10Pa~100Paが挙げられる。
【0095】
下空間H1および上空間H2の気圧が所定値まで減圧されると、制御部33は、電磁バルブ103を閉じるとともに、真空装置31の作動を停止する。そして制御部33は、下空間H1の気圧より上空間H2の気圧の方が高くなるよう、下空間H1に接続されている電磁バルブ103、105、107、113を閉じたまま、上空間H2に接続されている電磁バルブ110の開度を調整してリークさせるよう制御する。
【0096】
下空間H1の気圧より上空間H2の気圧の方が高くなることにより、
図13に示すように、両空間の間に差圧Faが発生する。差圧Faが発生することにより、粘着テープDTは中心部分から下ハウジング29Aの側へ引き込まれていき、凸状に変形していく。本実施例ではステップS4において、上空間H2および下空間H1の気圧を10Paに調整した後、上空間H2の気圧を10Paから100Paへと調整することによって差圧Faを発生させる。
【0097】
差圧Faを発生させた後、
図14に示すように、アクチュエータ37を駆動させて保持テーブル9を上昇させる。差圧Faによる粘着テープDTの変形と保持テーブル9の上昇とによって、抜気されている下空間H1の内部におい粘着テープDTは中心部から外周部に向けて放射状にウエハWの裏面に接触していく。当該接触により、ウエハWの裏面は粘着テープDTによって覆われる。
図15は、ウエハWの裏面が粘着テープDTによって覆われた状態を示している。
【0098】
ウエハWの裏面が粘着テープDTによって覆われると、制御部33は電磁バルブ105、107を開いた状態にして上空間H2および下空間H1を大気開放させる。当該大気開放により、第1貼付け過程は完了する。このように、第1貼付け過程ではチャンバ29の内部空間を減圧した状態で粘着テープDTをウエハWの裏面に接触させることにより粘着テープDTでウエハWの裏面側を覆わせる操作を行う。なお、実施例1において第1貼付け過程は本発明に係る第1の一体化過程に相当する。
【0099】
ステップS5(圧力差調整過程)
差圧Faを用いた第1貼付け過程が完了した後、圧力差調整過程を開始する。圧力差調整過程は、以後において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差が所定値以下に抑制されるような処理を行う過程である。実施例1では、シート穿孔部76を用いて粘着テープDTに貫通孔を形成させることによって、以後に上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に抑制させる。所定値の一例として、8000Pa~10000Paが挙げられる。当該所定値は、シート材とワークとを一体化させる工程における様々な条件に応じて適宜変更される。条件の一例として、ウエハWの材料またはウエハWの厚みなどが挙げられる。
【0100】
ステップS5が開始すると
図16に示すように、制御部33は昇降駆動台97を駆動させてシート穿孔部76を下降させる。シート穿孔部76が下降することにより、支持アーム127の各々に配設されているカッタ129の各々が粘着テープDTに突き刺される。カッタ129が粘着テープDTに突き刺されることにより、
図17に示すように、粘着テープDTのうちウエハWとリングフレームfとの間の部分において貫通孔PHが形成される。実施例1では回転軸部99を囲むように4本のカッタ129が配設されているので、ウエハWを囲むように貫通孔PHが4カ所に形成される。
【0101】
貫通孔PHが形成されることにより、上空間H2と下空間H1との間で気体が流通する通気孔が形成される。すなわち粘着テープDTに貫通孔PHが形成されることによって、チャンバ29の内部において上空間H2と下空間H1とに区画された状態が解消される。貫通孔PHを介して上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となることにより、ステップS6において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下とすることができる。なお説明の便宜上、粘着テープDTに貫通孔PHが形成された後であっても、粘着テープDTを境界としてウエハWが配置される側の空間を下空間H1とする。そして粘着テープDTを挟んで下空間H1と逆側の空間を上空間H2として説明を続ける。
【0102】
シート穿孔部76が下降させて粘着テープDTにカッタ129を突き刺させた後、
図18に示すように、回転軸部99をz方向の軸周りに回転させる。回転軸部99が回転することにより、支持アーム127の先端側に配設されているカッタ129の各々は、円軌道L1に沿って移動しつつ粘着テープDTを切断していく。円軌道L1は、回転軸部99を中心として支持アーム127の長さを径とする円の軌道である。言い換えると、円軌道L1は
図19に示されるウエハWの中心Qを中心として支持アーム127の長さを径とする円の軌道である。
【0103】
カッタ129が円軌道L1に沿って移動することにより、貫通孔PHの各々は
図19に示すように、円軌道L1に沿った円弧状に広げられる。ステップS5における回転軸部99の回転角度θは、ステップS8におけるマウントフレームMFを搬送する工程を適切に実行できる程度の角度に定められる。貫通孔PHが広げられることにより、上空間H2と下空間H1との間でより多くの気体が流通可能となるので、ステップS6において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差をより小さくすることができる。
【0104】
シート穿孔部76の下降および回転によって貫通孔PHが形成された後、制御部33は昇降駆動台97を駆動させ、
図20に示すようにシート穿孔部76を初期位置へと上昇させる。シート穿孔部76を上昇させるとともに、制御部33はアクチュエータ37を制御して保持テーブル9を初期位置へと下降させる。予め定められた位置に貫通孔PHが形成されることにより、実施例1に係る圧力差調整過程は完了する。
【0105】
ステップS6(第2貼付け過程)
シート穿孔部76によって粘着テープDTに貫通孔PHが形成された後、第2貼付け過程を開始する。実施例1において、第2貼付け過程は本発明における第2の一体化過程に相当する。第2貼付け過程が開始されると、まず制御部33は
図6に示す電磁バルブ103、105、107、110、113を閉じるとともに、電磁バルブ104および114を開放させる。そして制御部33は加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体Arを供給し、下空間H1および上空間H2を特定値PNにまで加圧する。特定値PNの例として0.3MPa~0.6MPaが挙げられる。加圧装置32が加圧操作を行うことにより、下空間H1の気圧および上空間H2の気圧はいずれも大気圧より高くなる。
【0106】
上空間H2の加圧により、
図21に示すように、上空間H2から粘着テープDTに向けて押圧力V1が作用する。なお、上空間H2の全体が加圧されるので、押圧力V1は粘着テープDTの全体にわたって均一に作用する。また、下空間H1の全体が加圧されることにより、下空間H1からウエハWの下向きの面に対して押圧力V2が均一に作用する。すなわち、大気圧より高い特定値PNに加圧することによって、押圧力V1および押圧力V2が粘着テープDTとウエハWとの間に作用する。すなわち大気圧より大きい力を均一に作用させることによって、粘着テープDTはウエハWの裏面に精度良く貼り付けられていく。その結果、ウエハWと粘着テープDTとの密着性が向上するので、時間の経過によって粘着テープDTがウエハWの裏面から剥がれる、という事態が発生することを回避できる。
【0107】
実施例1ではステップS5において粘着テープDTに貫通孔PHが形成された後に下空間H1および上空間H2を特定値PNまで加圧する。そのため、下空間H1の広さと上空間H2の広さとの差を例とする要因によって下空間H1の気圧Ph2と上空間H2の気圧Ph1との間に圧力差が発生したとしても、当該圧力差は速やかに解消される。すなわち、貫通孔PHを介して下空間H1と上空間H2との間で気体が流通可能であるので、気圧Ph1と気圧Ph2との間に偏りが生じることを防止できる。よって、下空間H1と上空間H2との間に発生する圧力差は所定値以下に抑制される。実質的に、下空間H1と上空間H2との間の圧力差はゼロに近い値となる。
【0108】
押圧力V1の大きさは気圧Ph1に依存しており、押圧力V2の大きさは気圧Ph2に依存する。そのため、気圧Ph1と気圧Ph2との差を所定値以下に抑制することにより、ウエハWに対して上空間H2の側から作用する押圧力V1とウエハWに対して下空間H1の側から作用する押圧力V2との差を所定値以下に抑制できる。よって、下空間H1と上空間H2との間の圧力差が小さくなることにより、当該圧力差に起因してウエハWに割れまたは欠けが発生するという事態を回避できる。
【0109】
下空間H1および上空間H2を大気圧より高い気圧に加圧した状態で、粘着テープDTとウエハWとの間に押圧力を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ105および電磁バルブ107を開放状態にして、下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル9を上昇させてウエハWの表面を保持テーブル9のウエハ保持面に当接させる。
【0110】
ステップS7(シートの切断)
なお、チャンバ29内においてステップS4ないしステップS6に係る工程を行っている間に、シート切断機構82を作動させて粘着テープDTの切断を行う。このとき、
図22に示すように、リングフレームfに貼り付けられた粘着テープDTをカッタ95がリングフレームfの形状に切断するとともに、押圧ローラ96がカッタ95に追従してリングフレームf上のシート切断部位を転動しながら押圧してゆく。
【0111】
上ハウジング29Bを上昇させた時点でステップS4に係る第1貼付け過程およびステップS5に係る第2貼付け過程は完了しているので、ピンチローラ90を上昇させて粘着テープDTのニップを解除する。その後、
図23に示すように、ニップローラ86を移動させてシート回収部74に向けて切断後の不要な粘着テープDTを巻き取り回収してゆくとともに、シート供給部71から所定量の粘着テープDTを繰り出す。ステップS6までの各工程により、粘着テープDTを介してリングフレームfおよびウエハWが一体化されたマウントフレームMFが形成される。
【0112】
不要な粘着テープDTが巻き取り回収されると、ニップローラ86および貼付けローラ85は初期位置に復帰する。そしてマウントフレームMFを保持している状態で保持テーブル9は貼付け位置から初期位置へと移動する。
【0113】
ステップS8(マウントフレームの回収)
保持テーブル9が初期位置に復帰すると、
図24に示すように、フレーム搬送装置17に設けられている吸着パッド28がマウントフレームMFを吸着保持し、下ハウジング29AからマウントフレームMFを離脱させる。マウントフレームMFを吸着保持したフレーム搬送装置17は、マウントフレームMFをフレーム回収部6へと搬送する。搬送されたマウントフレームMFは、カセット41に積載収納される。
【0114】
以上で、ウエハWに粘着テープDTを貼り付ける一巡の動作が終了する。以後、マウントフレームMFが所定数に達するまで上記処理が繰り返される。
【0115】
<実施例1の構成による効果>
上記実施例1に係る装置によれば、チャンバを用いて第1貼付け過程および第2貼付け過程を行う。すなわち、第1貼付け過程によって粘着テープDTをウエハWに貼り付けた後、第2貼付け過程を行うことにより、粘着テープDTをウエハWに対してさらに精度良く密着するように貼り付ける。このような構成により、環状凸部Kaを一方の面に有するウエハWに対し、ウエハWが破損する事態を回避しつつ、粘着テープDTを精度良く貼り付けることができる。
【0116】
本発明に係る第1貼付け過程では、チャンバ29の内部において、ウエハWが配置される下空間H1の内部が減圧される。すなわち粘着テープDTおよびウエハWの周辺空間は減圧により抜気されるので、粘着テープDTがウエハWに接触してウエハWの裏面を覆う際に、粘着テープDTとウエハWとの間に気体が巻き込まれることを防止できる。よって、気体の巻き込みに起因する密着力の低下を回避できる。
【0117】
また、本発明に係る第2貼付け過程では、下空間H1および上空間H2の気圧を大気圧より大きくなるように加圧させることにより、粘着テープDTを精度良くウエハWの裏面に貼り付ける。
【0118】
真空装置を用いてチャンバの内部を減圧することによって差圧Faを発生させる場合、大気圧状態からの減圧によって発生する差圧Faの大きさは、大気圧以下となる。すなわち差圧Faを用いて粘着テープDTをウエハWに押圧させる場合、ウエハWの裏面に対して粘着テープDTを押圧させる力の大きさに上限が存在する。
【0119】
従って、減圧による差圧Faによって粘着テープDTをウエハWに接触させた状態において、粘着テープDTとウエハWとの密着性は低い。また、第1押圧部材を用いる従来の構成では、粘着テープDTのうち限られた部分にしか押圧力を作用させることができない。また、当該押圧力の大きさも不十分であるので、粘着テープDTとウエハWとの密着性を向上させることが困難である。
【0120】
これに対し、本発明では加圧装置32を用いてチャンバ29内の上空間H2および下空間H1を大気圧より大きい気圧となるように加圧する。すなわち第2貼付け過程では差圧Faより十分に大きい押圧力V1、V2を粘着テープDTおよびウエハWに作用させることができる。また、押圧力V1、V2はウエハWに貼り付けられる粘着テープDTの全面にわたって作用する。従って、第2貼付け過程を行うことによって、粘着テープDTとウエハWとの密着性を大きく向上できるので、一連の貼付け処理が完了した後に時間が経過しても、粘着テープDTがウエハWから剥がれることを回避できる。
【0121】
また、第2貼付け過程では加圧装置32を適宜制御することにより、押圧力V1およびV2の大きさを任意の値に調節できる。従って、粘着材Tbの構成材料、またはウエハWのサイズおよび環状凸部Kaの厚みを例とする各種条件が変更される場合であっても、押圧力V1およびV2の大きさを適宜調節することにより、確実に粘着テープDTをウエハWの環状凸部形成面に貼り付けることができる。
【0122】
実施例1に係る粘着シート貼付け装置1では、第2貼付け過程の前に圧力差調整過程を行うことにより、第2貼付け過程において上空間H2と下空間H1との間で発生する気圧の差を所定値以下に低減させる。圧力差調整過程を行うことにより、粘着テープDTとウエハWとの密着性を高めつつ、ウエハWに割れまたは欠けなどの破損が発生することをより確実に回避できる。
【0123】
ここで圧力差調整過程による効果について説明する。発明者の鋭意検討により、チャンバ29の内部が粘着テープDTによって上空間H2と下空間H1とに区画された状態で上空間H2と下空間H1とを大気圧以上に加圧すると、ウエハWに割れまたは欠けなどの破損が発生するという問題が見出された。
【0124】
発明者がさらに鋭意検討を進めた結果、以下のような仮説が見出された。すなわち、チャンバ29の内部を大気圧以上に加圧することによって、上空間H2において発生する押圧力V1と下空間H1において発生する押圧力V2との間に大きな圧力差が発生する。上空間H2および下空間H1はいずれも流路102を介して加圧装置32に接続されているので、上空間H2および下空間H1の各々に供給される気体の量は等しい。
【0125】
しかしながら、上空間H2および下空間H1の容積の差などに起因して、気体の供給量が等しくとも上空間H2の気圧(押圧力V1)が上昇する速さと下空間H1の気圧(押圧力V2)が上昇する速さとが異なる場合がある。その結果、ステップS6において押圧力V1と押圧力V2との圧力差に起因してウエハWに割れまたは欠けなどの破損が発生すると考えられる。
【0126】
そこで、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1では、第2貼付け過程の前にシート穿孔部76を用いて粘着テープDTに貫通孔PHを形成させる。貫通孔PHを介して上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能になることにより、押圧力V1と押圧力V2との間で圧力差が発生した場合であっても、気体の流通によって当該圧力差は速やかに解消される。従って、ステップS6においてチャンバ29の内部を加圧する際に、押圧力V1と押圧力V2との間で発生する圧力差を所定値以下に低減した状態を維持できるので、高い押圧力V1および押圧力V2によって粘着テープDTとウエハWとの密着性を高めつつ、押圧力V1と押圧力V2との圧力差に起因してウエハWに破損が発生することを回避できる。
【実施例0127】
以下、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。実施例1ではシート穿孔部76を用いて粘着テープDTに貫通孔PHを形成させることで、ステップS6に係る第2貼付け過程において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を低減させる構成を例にとって説明した。これに対して実施例2では、制御部33が上空間H2および下空間H1の各々を段階的に加圧することによって、ステップS6において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を低減させる。なお、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。
【0128】
実施例2に係る粘着シート貼付け装置1は、チャンバ29を除いて実施例1に係る粘着シート貼付け装置1と構成が共通する。但し、実施例2では制御部33が設定する制御パターンによって、上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を低減させる。そのため、実施例2に係る粘着シート貼付け装置1ではシート穿孔部76を省略できる。
【0129】
図58は実施例2に係るチャンバの縦断面図である。実施例2では、電磁バルブ104は流路204に配設されており、電磁バルブ114は流路203に配設される。すなわち制御部33が電磁バルブ104および電磁バルブ114の開閉動作を独立制御することにより、実施例2では下空間H1に対する気体の供給のオン/オフと上空間H2に対する気体の供給のオン/オフとを独立制御できるように構成されている。
【0130】
<実施例2に係る加圧制御>
実施例2において制御部33が上空間H2と下空間H1とを加圧する制御の詳細について、実施例1における加圧制御と比較しつつ説明する。
図25は、制御部33が上空間H2および下空間H1の気圧を初期値PSから特定値PNへと加圧する一般的な制御方法を説明するグラフである。なお、初期値PSは1気圧、特定値PNは6気圧である場合を例として説明する。また、上空間H2と比べて下空間H1の容積が広く、下空間H1における加圧速度が上空間H2における加圧速度より低いものとする。
【0131】
一般的に、上空間H2および下空間H1を大気圧より高い気圧へと加圧する場合、1回の加圧ステップによって、上空間H2および下空間H1の各々の気圧を初期値PSから予め定められた特定値PNへと上昇させる。すなわち制御部33は1気圧の状態である上空間H2および下空間H1の各々に対して、特定値PNである6気圧を目標値として加圧を行う。
【0132】
上空間H2および下空間H1はいずれも同じ流路102を介して加圧装置32と接続されているので、上空間H2および下空間H1の各々には単位時間あたりで等量の気体が供給される。しかしながら、
図25において実線で示される上空間H2の気圧Ph1が上昇する速度と、
図25において点線で示される下空間H1の気圧Ph2が上昇する速度とは異なる。すなわち、上空間H2の容積は下空間H1の容積よりも小さいので、気圧Ph1の上昇速度は気圧Ph2の上昇速度より大きい。従って、気圧Ph1は時刻taにおいて速やかに目標値である6気圧へと到達した後、当該目標値を維持する。一方、気圧Ph2は上昇速度が遅いので時刻taの時点では目標値である6気圧には到達せず、時刻taより遅い時刻tbにおいて6気圧へと到達する。
【0133】
このように、1回の加圧ステップRvによって特定値PNへと加圧する一般的な加圧制御パターンでは、気圧Ph1と気圧Ph2との圧力差Dsが非常に大きくなる。すなわち
図25に示すように、時刻taにおいて圧力差Dsが大きくなる。そして
図25で示すような加圧速度で加圧を行う場合、時刻taにおける圧力差Dsは2気圧より大きい。その結果、非常に大きい圧力差Dsに起因して、ステップS6において大きな差圧がウエハWに作用するのでウエハWに破損が発生しやすくなる。
【0134】
一方、実施例2に係る加圧制御では
図26に示すように、上空間H2および下空間H1を加圧する工程をn回の加圧ステップR1~Rnに分割し、段階的に両空間を加圧する。なお、nの値については2以上の整数であれば適宜変更してよい。
【0135】
分割された加圧ステップR1~Tnの各々では、電磁バルブ104および114を開けて上空間H2および下空間H1を加圧ステップごとに定められた目標値Mへと加圧する制御が行われる。そして、上空間H2および下空間H1のうち先に目標値Mに達した方は他方の空間が当該目標値Mに達するまで気圧の値を当該目標値Mに保つように制御される。
【0136】
一例として上空間H2の気圧が先に目標値Mに到達した場合、上空間H2の気圧が目標値Mに到達した時点において制御部33は電磁バルブ104を閉じることによって上空間H2に対する気体の供給を停止させる。その一方で、制御部33は電磁バルブ114を開いた状態に維持して下空間H1に対する気体の供給を続行させる。当該制御により、上空間H2の気圧は目標値Mに維持される一方、下空間H1の気圧は目標値Mに向けて上昇する。下空間H1の気圧が先に目標値Mに到達した場合、制御部33は電磁バルブ104を開いた状態に維持しつつ、電磁バルブ114を閉じる制御を行う。下空間H1および上空間H2の気圧がいずれも目標値Mに到達すると、次の加圧ステップRを開始して電磁バルブ104および114をいずれも開放させ、下空間H1および上空間H2を加圧させる。
【0137】
なお、加圧ステップR1~Rnの各々に定められている目標値Mの各々については、目標値M1~Mnとして区別する。一例として、加圧ステップR1に定められている目標値Mについては目標値M1として他の加圧ステップR2~Rnが有する目標値Mと区別する。目標値M1~Mnは、段階的に高くなるように予め定められる。すなわち目標値M1と比べて目標値M2の方が高くなるように定められ、目標値Mnが最も高くなるように定められる。
【0138】
上空間H2および下空間H1を加圧する工程の分割によって発生する加圧ステップの数、すなわちnの値は適宜変更してよい。すなわち、加圧ステップR1~Rnの数nは、上空間H2および下空間H1の圧力差が所定値以下に維持されるように予め定められる。
【0139】
図26では、上空間H2および下空間H1を加圧する工程を5回の加圧ステップR1~T5に分割し、両空間を1気圧から6気圧へと加圧する制御を行う構成を例示している。この場合、まず第1の加圧ステップR1において目標値M1が2気圧と定められる。すなわち上空間H2および下空間H1が開始値である1気圧から目標値M1である2気圧へと加圧されるように、制御部33は加圧装置32を制御する。
【0140】
第1の加圧ステップR1が時刻t0において開始されると、上空間H2の気圧Ph1は時刻t1において速やかに目標値である2気圧へと到達する。上空間H2の気圧Ph1が目標値に到達すると、制御部33は電磁バルブ114を開いた状態に維持しつつ電磁バルブ104を開いた状態から閉じた状態に切り換える。当該制御により、上空間H2に対する気体の供給が停止される一方で下空間H1に対する気体の供給が続けられる。そして下空間H1の気圧Ph2が2気圧に到達する時刻t2まで、気圧Ph1は上昇することなく目標値M1である2気圧の状態を維持する。
【0141】
上空間H2および下空間H1の両方が目標値M1である2気圧に到達することにより、第2の加圧ステップR2を開始する。第2の加圧ステップR2が開始されると、制御部33は電磁バルブ104および114をいずれも開いた状態となるように制御し、下空間H1および上空間H2へ気体を供給させる。
【0142】
第2の加圧ステップR2では、目標値M2は目標値M1より高い3気圧と定められる。すなわち第2の加圧ステップR2では、上空間H2および下空間H1が開始値である2気圧から目標値M2である3気圧へと加圧される。上空間H2の気圧Ph1は時刻t3に目標値M2である3気圧へと到達し、時刻t4まで3気圧である状態を維持する。そして時刻t4において気圧Ph2が3気圧(目標値M2)に到達することによって、第2の加圧ステップR2から第3の加圧ステップR3へと移行する。
【0143】
第3の加圧ステップR3では目標値M3が目標値M2より高い4気圧と定められており、上空間H2および下空間H1が3気圧から4気圧へと加圧される。時刻t4において第3の加圧ステップR3が開始され、時刻t5において気圧Ph1が目標値M3である4気圧に到達する。そして時刻t6において気圧Ph2が4気圧に到達し、第3の加圧ステップR3から第4の加圧ステップR4へと移行する。
【0144】
第4の加圧ステップR4では目標値M4が目標値M3より高い値である5気圧と定められており、上空間H2および下空間H1が4気圧から5気圧へと加圧される。時刻t6において第4の加圧ステップR4が開始され、時刻t7において気圧Ph1が5気圧に到達する。そして時刻t8において気圧Ph2が5気圧に到達し、第4の加圧ステップR4から第5の加圧ステップR5へと移行する。
【0145】
第5の加圧ステップR5では目標値M5が最終的な目標である6気圧(特定値PN)と定められており、上空間H2および下空間H1が5気圧から6気圧へと加圧される。時刻t8において第5の加圧ステップR5が開始され、時刻t9において気圧Ph1が6気圧に到達する。そして時刻t10において気圧Ph2が6気圧に到達し、上空間H2および下空間H1を初期値PSから特定値PNへと加圧する全過程が完了する。
【0146】
このように、上空間H2および下空間H1を初期値PSから特定値PNへと加圧する過程を複数のステップに分割し、段階的に上空間H2および下空間H1を加圧する構成とすることによって、実施例2では気圧Ph1と気圧Ph2との圧力差Dsを低減できる。
図26に示される実施例2の構成において圧力差Dsが最大となる時刻は、各々の加圧ステップR1~R5において気圧Ph1が目標値に到達する時刻t1、t3、t5、t7、t9である。
図26に示す実施例2における圧力差Dsの最大値は、
図25に示すような1回の加圧ステップRvで特定値PNへ加圧する構成における圧力差Dsの最大値と比べて非常に小さくなる。
【0147】
すなわち、上空間H2および下空間H1を特定値PNへ加圧する過程を複数の加圧ステップT1~Tnに分割して段階的に加圧することにより、圧力差Dsの最大値を小さくできる。言い換えると、上空間H2および下空間H1の気圧を各々の加圧ステップR1~Rnにおいて設定された目標値へと上昇させるという動作を繰り返すことにより、圧力差Dsの最大値を小さくできる。
【0148】
圧力差Dsの最大値を小さくできる理由として、複数の加圧ステップR1~Rnに分割することにより、各々の加圧ステップにおける開始値と目標値との差を小さくできることが挙げられる。具体的に、
図25に示す構成では1回の加圧ステップにおいて、上空間H2および下空間H1を開始値(初期値PS)である1気圧から目標値(特定値PN)である6気圧まで加圧する。すなわち、当該1回の加圧ステップにおける気圧の上昇量(開始値と目標値との差)は5気圧となる。よって、1回の加圧ステップで5気圧上昇させる場合、圧力差Dsは最大で5気圧になり得る。
【0149】
一方で
図26に示す構成では、1気圧から6気圧へ加圧する工程を5つの加圧ステップT1~T5に分割するため、加圧ステップT1~T5の各々における気圧の上昇量は1気圧となる。よって、各々の加圧ステップT1~T5において、圧力差Dsの最大値は1気圧以下に抑えられる。
【0150】
<実施例2における動作>
ここで、実施例2に係る粘着シート貼付け装置1の動作を説明する。実施例2に係るフローチャートの概要は
図8に示される実施例1に係るフローチャートと共通する。実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の動作と同一の工程については説明を簡略化し、異なる工程であるステップS5およびステップS6について詳述する。
【0151】
ステップS5(圧力差調整過程)
ステップS4に係る第1貼付け過程が完了すると、制御部33はステップS6における加圧制御パターンを設定する。言い換えると、制御部33は上空間H2および下空間H1を大気圧より高い気圧となるように加圧する制御パターンを設定する。具体的には、段階的に高くなる目標値M1~M5が定められている5つの加圧ステップR1~R5を実行することによって、上空間H2および下空間H1を大気圧より高い気圧となるように加圧する制御パターンを制御部33は設定する。
【0152】
各々の加圧ステップR1~R5は、上空間H2および下空間H1の気圧を、加圧ステップごとに定められた目標値Mに上昇させるステップである。制御部33が加圧ステップR1~R5を有する加圧制御パターンを設定することにより、上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に抑制させる処理、すなわち圧力差調整過程は完了する。
【0153】
ステップS6(第2貼付け過程)
複数の加圧ステップR1~R5を用いた上空間H2および下空間H1の加圧制御パターンが設定された後、第2貼付け過程を開始する。制御部33は、
図6に示す電磁バルブ103、105、107、110、113を閉じるとともに、電磁バルブ104および114を開放させる。そして制御部33は加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体を供給し、電磁バルブ104および114の開閉を独立制御することによって、ステップS5において設定された加圧制御パターンに従って下空間H1および上空間H2を特定値PNにまで段階的に加圧する。実施例2では5つに分割された加圧ステップR1~R5の各々において、下空間H1および上空間H2の気圧を1気圧ずつ上昇させる。
【0154】
加圧ステップR1~R5の各々では、下空間H1および上空間H2のうち一方の気圧が目標値Mに到達した場合、下空間H1および上空間H2のうち他方の気圧が当該目標値Mに到達するまで、下空間H1および上空間H2のうち一方の気圧は目標値Mを維持するように制御部33は加圧装置32を制御する。
【0155】
一例として目標値M1を有する加圧ステップR1において上空間H2の気圧Ph1が下空間H1の気圧Ph2より先に目標値M1に到達した場合、電磁バルブ114を開状態にしつつ電磁バルブ104を閉状態にすることにより、気圧Ph2が目標値M1に到達するまで気圧Ph1は目標値M1を維持する。言い換えると、気圧Ph2が目標値M1に到達するまでは気圧Ph1を目標値M1より高くすることがない。従って、加圧ステップR1において発生する下空間H1と上空間H2との圧力差Dsは、加圧ステップR1における気圧の上昇量以下(実施例2では1気圧以下)に抑制される。
【0156】
上空間H2および下空間H1の気圧がいずれも目標値M1に到達すると、加圧ステップR1を完了させて次の加圧ステップR2を開始する。加圧ステップR2では、上空間H2および下空間H1を目標値M2へと加圧する。上空間H2の気圧Ph1が下空間H1の気圧Ph2より先に目標値M2に到達した場合、気圧Ph2が目標値M2に到達するまで気圧Ph1は目標値M2を維持する。上空間H2および下空間H1の気圧がいずれも目標値M2に到達すると、加圧ステップR2を完了させて次の加圧ステップR3を開始する。以下、加圧ステップR3~R5を順に実行させることによって、上空間H2および下空間H1を段階的に加圧させる。
【0157】
このように、上空間H2および下空間H1の気圧を目標値M1~M5へ加圧させる加圧ステップR1~R5を順に実行させることにより、上空間H2および下空間H1の気圧を初期値PSから特定値PNへと段階的に上昇させる。上空間H2および下空間H1を初期値PSから特定値PNへと加圧する過程を複数の加圧ステップR1~R5に分割させることにより、各々の加圧ステップR1~R5において発生する上空間H2と下空間H1との圧力差の上限が加圧ステップR1~R5の数に応じて低減される。
【0158】
従って、加圧ステップR1~R5を順次実行することで上空間H2および下空間H1を段階的に加圧させることにより、上空間H2および下空間H1を加圧させる過程において発生する上空間H2と下空間H1との圧力差を所定値以下に抑制させることができる。よって、上空間H2および下空間H1が大気圧より高い圧力となるように加圧した状態であっても上空間H2と下空間H1との圧力差に起因してウエハWに損傷が発生することを回避できる。
【0159】
加圧ステップR1~R5が完了し、大気圧より高い特定値PNに加圧した状態で押圧力V1およびV2をウエハWに所定時間作用させることにより、粘着テープDTはウエハWに対してより密着するように貼り付けられる。押圧力V1およびV2を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ105、107を全開にして下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル9を上昇させてウエハWの表面を保持テーブル9のウエハ保持面に当接させることによりステップS6に係る工程は完了する。ステップS6が完了した後、実施例1と同様にステップS7およびステップS8の工程を実行することによってマウントフレームMFが作成される。
【0160】
実施例2では、制御部33による加圧制御パターンを設定することによって圧力差調整過程を実行する。すなわち、制御部33が設定する加圧制御パターンを複数の加圧ステップR1~R5によって上空間H2および下空間H1を段階的に加圧させる制御パターンとすることによって、第2貼付け過程において上空間H2と下空間H1との圧力差を所定値以下に抑制できる。そのため、シート穿孔部76を例とする新たな機構を粘着テープ貼付け装置1に組み入れなくとも、加圧制御パターンに関する制御部33のプログラムを更新することによって、ウエハWに損傷が発生することを回避しつつ、ウエハWと粘着テープDTとの密着性を向上できる。
【実施例0161】
以下、図面を参照して本発明の実施例3を説明する。実施例3に係る粘着シート貼付け装置1は、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1と構成が共通する。実施例3では加圧装置32に接続される流路および電磁バルブの構成が、
図6に示す実施例1または実施例2の構成と異なっている。また実施例3では実施例2と同様、シート穿孔部76を省略できる。
【0162】
図27は実施例3に係るチャンバの縦断面図である。実施例1および実施例2では、電磁バルブ104および電磁バルブ114は完全に開いた状態と完全に閉じた状態とを切り換える構成となっている。すなわち、電磁バルブ104および電磁バルブ114を開いた状態にして下空間H1および上空間H2に気体を供給する場合、単位時間において下空間H1に供給される気体の量と上空間H2に供給される気体の量とは等しい構成となっている。
【0163】
一方、実施例3に係るチャンバ29は、単位時間において下空間H1に供給される気体の量と、単位時間において上空間H2に供給される気体の量をそれぞれ独立して調節できる構成となっている。言い換えると、気体の供給によって下空間H1の気圧が上昇する速度と、気体の供給によって上空間H2の気圧が上昇する速度とをそれぞれ独立に調節できる構成となっている。
【0164】
実施例3では実施例2と同様に、電磁バルブ104は流路204に配設されており、電磁バルブ114は流路203に配設される。但し実施例3に係るチャンバ29では
図27に示すように、電磁バルブ104には開閉調節弁115が設けられており、電磁バルブ114には開閉調節弁116が設けられている。開度調節弁115は、電磁バルブ104の開度を適宜調節することにより、流路204を介して上空間H2に供給される気体の量を調節する。開度調節弁116は、電磁バルブ114の開度を適宜調節することにより、流路203を介して下空間H1に供給される気体の量を調節する。
【0165】
電磁バルブ104および114の開閉操作に加えて、開度調節弁115を介した電磁バルブ104の開度の調節、および開度調節弁116を介した電磁バルブ114の開度の調節は、いずれも制御部33によって行われる。すなわち実施例3では開度調節弁115および開度調節弁116を設けることにより、下空間H1および上空間H2に対する気体の供給のオン/オフを独立制御するのみならず、上空間H2に対する気体供給速度と下空間H1に対する気体供給速度とを独立して調節することもできる。
【0166】
このように、実施例3では加圧装置32を作動させた場合、電磁バルブ104の開度を調節することによって上空間H2における気圧の上昇速度を調節できる。そして電磁バルブ114の開度を調節することによって、下空間H1における気圧の上昇速度を調節できる。すなわち実施例3では、制御部33が電磁バルブ114の開度と電磁バルブ104の開度とを独立に制御することにより、ステップS6において上空間H2の気圧が上昇する速度と下空間H1の気圧が上昇する速度とを独立に制御できる構成となっている。そして制御部33は上空間H2の気圧が上昇する速度と下空間H1の気圧が上昇する速度とが等しくなるように電磁バルブ114の開度と電磁バルブ104の開度とをそれぞれ制御することによって、上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に抑制させる。
【0167】
加圧装置32、流路204、電磁バルブ104、および開度調節弁115を備え、上空間H2の圧力を調整する機構は本発明における第1変圧機構に相当する。加圧装置32、流路203、電磁バルブ114、および開度調節弁116を備え、下空間H1の圧力を調整する機構は本発明における第2変圧機構に相当する。
【0168】
<実施例3における動作>
ここで、実施例3に係る粘着シート貼付け装置1の動作を説明する。実施例3に係るフローチャートの概要は
図8に示される実施例1に係るフローチャートと共通する。実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の動作と同一の工程については説明を簡略化し、異なる工程であるステップS5およびステップS6について詳述する。
【0169】
ステップS5(圧力差調整過程)
実施例3ではステップS4に係る第1貼付け過程が完了すると、上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に抑制させる処理を開始する。すなわち、制御部33は下空間加圧用の流路203に備えられている電磁バルブ114の開度と、上空間加圧用の流路204に備えられている電磁バルブ104の開度とを独立に制御する。このとき、上空間H2の気圧が上昇する速度と下空間H1の気圧が上昇する速度とが等しくなるように電磁バルブ114の開度と電磁バルブ104の開度とをそれぞれ制御する。
【0170】
実施例3に係る粘着シート貼付け装置1では他の実施例と同様、上空間H2の容積が下空間H1の容積より小さい。そのため、電磁バルブ114の開度と電磁バルブ104の開度が等しい場合、上空間H2の気圧が上昇する速度は下空間H1の気圧が上昇する速度より大きくなる。そこで制御部33は上空間H2および下空間H1の気圧上昇速度が等しくなるよう、電磁バルブ114の開度を電磁バルブ104の開度より大きくさせる。制御部33が電磁バルブ114および電磁バルブ104の開度を調節することにより、圧力差調整過程は完了する。
【0171】
ステップS6(第2貼付け過程)
制御部33によって電磁バルブ114および104の開度が調節された後、第2貼付け過程を開始する。すなわち
図28に示すように、電磁バルブ114の開度が電磁バルブ104の開度より大きくなるように制御された状態で、制御部33は加圧装置32を作動させて上空間H2および下空間H1の各々に気体を供給する。上空間H2および下空間H1の各々に気体を供給することにより、制御部33は上空間H2および下空間H1の圧力を大気圧より高い圧力に上昇させる。
【0172】
一例として電磁バルブ114の開度が電磁バルブ104の開度と等しい状態で加圧装置32を作動させた場合、下空間H1の気圧Ph2の上昇速度は上空間H2の気圧Ph1の上昇速度より小さいので、気圧Ph1と気圧Ph2との間で大きな圧力差Dsが発生する(
図25を参照)。
【0173】
一方、実施例3では電磁バルブ114の開度が電磁バルブ104の開度より大きくなるように制御された状態で加圧装置32を作動させるので、上空間H2に供給される気体Ar1と比べて、下空間H1に供給される気体Ar2は単位時間あたりの気体供給量が多くなる。従って、実施例3では
図29に示すように気圧Ph2の上昇速度は気圧Ph1の上昇速度と等しくなる。すなわち、気圧Ph2の上昇速度は
図29において二点鎖線で示される速度から、実線で示される速度へと高められる。
【0174】
気圧Ph2の上昇速度を高めて気圧Ph1の上昇速度と等しくすることにより、気圧Ph1と気圧Ph2との差は所定値以下に抑制される。従って、ウエハWに対して上空間H2の側から作用する押圧力V1と、ウエハWに対して下空間H1の側から作用する押圧力V2との差は所定値以下に抑制されるので、ステップS6においてウエハWに破損が発生することを回避できる。
【0175】
大気圧より高い特定値PNに加圧した状態で押圧力V1およびV2をウエハWに所定時間作用させることにより、粘着テープDTはウエハWに対してより密着するように貼り付けられる。押圧力V1およびV2を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ105および107を全開にして下空間H1および上空間H2を大気開放させる。
【0176】
その後、制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル9を上昇させてウエハWの表面を保持テーブル9のウエハ保持面に当接させることによりステップS6に係る工程は完了する。ステップS6が完了した後、実施例1と同様にステップS7およびステップS8の工程を実行することによって、ウエハWと粘着テープDTとが一体化されたマウントフレームMFが作成される。
【0177】
実施例3では電磁バルブ104に開度調節弁115を配設し、電磁バルブ114に開度調節弁116を配設することにより、上空間H2の気圧上昇速度と下空間H1の気圧上昇速度との各々を独立に制御する構成を有している。そして上空間H2と下空間H1との各々を独立に加圧制御する構成によって、ステップS6において発生する上空間H2と下空間H1との圧力差は所定値以下に抑制される。このような実施例3ではシート穿孔部76が不要であるので、粘着テープDTに貫通孔PHを形成させる位置および面積を考慮する必要がない。
【0178】
また、上空間H2における気圧上昇速度と下空間H1における気圧上昇速度とを等しくさせることにより、上空間H2および下空間H1のうち一方の気圧が特定値PNに達した後、他方の気圧が特定値PNに到達するまで待機する時間の発生を回避できる。
図29に示すように、下空間H1の気圧Ph2の上昇速度を挙げて上空間H2の気圧Ph1の上昇速度と等しくすることにより、気圧Ph2が特定値PNに到達する時刻はtbからtaへと早められる。その結果、上空間H2および下空間H1の両方が特定値PNに到達する時刻を早めることができるので、ステップS6の工程に要する時間を短縮できる。
【実施例0179】
以下、図面を参照して本発明の実施例4を説明する。実施例4に係る粘着シート貼付け装置1は、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1と構成が共通する。但し、実施例4ではチャンバ29の構成が、他の実施例の構成と異なっている。
【0180】
図30は実施例4に係るチャンバ29の断面図である。実施例4に係るチャンバ29は、下ハウジング29Aおよび上ハウジング29Bを連通接続させる流路135を備えている。流路135には電磁バルブ137が備えられており、電磁バルブ137の開閉動作は制御部33によって制御される。電磁バルブ137が開放されることにより、上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となる。すなわち電磁バルブ137が開放されることにより、流路135は上空間H2と下空間H1との間で気体が流通する通気孔として機能する。
【0181】
<実施例4における動作>
ここで、実施例4に係る粘着シート貼付け装置1の動作を説明する。実施例4に係るフローチャートは
図8に示される実施例1に係るフローチャートと共通する。実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の動作と同一の工程については説明を簡略化し、異なる工程であるステップS5およびステップS6について詳述する。
【0182】
ステップS5(圧力差調整過程)
実施例4ではステップS4に係る第1貼付け過程が完了すると、圧力差調整過程として、上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となるような処理を行う。すなわちステップS5が開始すると、制御部33は電磁バルブ137を開放させる制御を行う。電磁バルブ137が開放されることにより、流路135を介して上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となる。制御部33が電磁バルブ137を開放させることにより、圧力差調整過程は完了する。
【0183】
ステップS6(第2貼付け過程)
制御部33によって電磁バルブ137が開放された後、第2貼付け過程を開始する。まず制御部33は、
図6に示す電磁バルブ103、105、107、110、113を閉じるとともに、電磁バルブ104、114を開放させる。そして電磁バルブ137が開放された状態を維持しつつ、制御部33は加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体を供給し、下空間H1および上空間H2を特定値PNにまで加圧する。
【0184】
上空間H2の加圧により、上空間H2から粘着テープDTとウエハWの表面側とに向けて押圧力V1が作用するとともに、下空間H1からウエハWの裏面側に向けて押圧力V2が作用する(
図21を参照)。大気圧より高い圧力である押圧力V1および押圧力V2が作用することにより、粘着テープDTとウエハWとの間の密着性が高められる。
【0185】
実施例4ではステップS5において電磁バルブ137を開放させた後に下空間H1および上空間H2を大気圧より高い特定値PNまで加圧する。そのため、下空間H1の気圧Ph2と上空間H2の気圧Ph1との間に圧力差が発生したとしても、流路135を介して下空間H1と上空間H2との間で気体が流通することにより、当該圧力差は速やかに解消される。よって、下空間H1と上空間H2との間に発生する圧力差が所定値以下に抑制された状態で、下空間H1および上空間H2を大気圧より高い特定値PNへと加圧することができる。
【0186】
押圧力V1およびV2を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ105および電磁バルブ107を全開にして下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル9を上昇させてウエハWの表面を保持テーブル9のウエハ保持面に当接させることによりステップS6に係る工程は完了する。ステップS6が完了した後、実施例1と同様にステップS7およびステップS8の工程を実行することによってマウントフレームMFが作成される。
【0187】
実施例4では流路135と電磁バルブ137とを備えることにより、上空間H2と下空間H1との間で気体を流通可能とする構成を有している。そして電磁バルブ137を開放した状態で上空間H2および下空間H1を大気圧より高い圧力へと加圧することで、ステップS6において発生する上空間H2と下空間H1との圧力差を所定値以下に抑制できる。このような実施例4では、粘着テープDTに貫通孔PHを形成させなくとも上空間H2と下空間H1との間で気体を流通可能とすることができるので、シート穿孔部76を省略することができる。
【実施例0188】
以下、図面を参照して本発明の実施例5を説明する。実施例1ないし実施例4では、環状凸部Kaを有するウエハWをワークとして粘着テープDTを貼りつける粘着シート貼付け装置1を用いて本発明の構成を説明した。これに対して実施例5では、ワークとシート材を一体化させる構成の例として、ワークに搭載されているデバイスに対して粘着力を有するシート状封止材を貼りつけてワークとシート材とを一体化させるデバイス封止装置301を用いて本発明の構成を説明する。
【0189】
なお実施例5に係るデバイス封止装置301の構成は、基本的に実施例1に係る粘着シート貼付け装置1の構成と共通する。そのため、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。
【0190】
デバイス封止装置301は、ワークに搭載されたデバイスをシート材で封止するものであり、本実施例ではLED311が搭載された基板310に対してシート状の封止部材BPを貼りつけることによってLED311を封止する。
【0191】
<ワークおよびシート材の構成>
まず、本実施例に係るワークおよびシート材の構成について説明する。
図31(a)は封止部材BPの裏面側を示す斜視図であり、
図31(b)は封止部材BPの縦断面図である。
図32は、封止部材BPによる封止の対象となる基板310、およびリングフレームfの構成を示す斜視図である。
【0192】
本実施例に係る封止部材BPは、
図31(a)に示すように、封止シートBSと搬送用シートBTとを備えている。封止シートBSは基板310の形状に応じた所定の形状に予め切断されている。本実施例において、封止シートBSは予め略矩形状に切断されているものとする。ここで、略矩形状とは
図31(a)に示すように、矩形の各角部が丸みを帯びている形状を意味する。また本実施例において、封止シートBSの大きさは基板310より大きく、かつ後述する下ハウジング29Aの内径より小さくなるように設定されている。
【0193】
搬送用シートBTは長尺状であり、封止シートBSは所定のピッチで搬送用シートBTに貼付け保持されている。実施例5において、封止シートBSは本発明におけるシート材に相当する。
【0194】
搬送用シートBTは
図31(b)に示すように、非粘着性の基材BTaと、粘着性を有する粘着材BTbとが積層した構造を備えている。基材BTaを構成する材料の例として、ポリオレフィン、ポリエチレンなどが挙げられる。粘着材BTbを構成する材料の例として、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0195】
封止シートBSは
図31(b)に示すように、非粘着性の基材BSaと、粘着性を有する封止材BSbとが積層した構造を備えている。基材BSaが搬送用シートBTの粘着材BTbに貼付けられることにより、搬送用シートBTは封止シートBSを保持する。基材BSaを構成する材料の例として、ポリオレフィン、ポリエチレンなどが挙げられる。本実施例において封止シートBSの形状は略矩形状であるが、基板310の形状に応じて適宜変更可能である。
【0196】
封止材BSbには図示しないセパレータBSが添設されており、セパレータBSが剥離されることによって封止材BSbの粘着面が露出する。本実施例において、封止材BSbを構成する材料として、光学的に透明な粘着材であるOCA(Optical Clear Adhesive)を用いるものとする。
【0197】
図32に示すように、基板310の表面中央部には複数のLED311およびTFT(図示しない)が、二次元マトリクス状に並列搭載されている。すなわちLED311によって、基板310の表面は凹凸が形成された状態となっている。LED311は、TFTやバンプ(図示しない)などを介して基板310と接続されている。基板310の例として、ガラス基板、有機基板、回路基板、シリコンウエハなどが挙げられる。本実施例では基板310は略矩形状となっているが、基板310の形状は矩形状、円形状、多角形状などを例とする任意の形状に適宜変更してよい。実施例5において、基板310は本発明におけるワークに相当する。LED311は、本発明におけるデバイスに相当する。
【0198】
リングフレームfは、基板310を囲繞するような大きさおよび形状となっている。実施例に係るデバイス封止装置301は、基板310に搭載されているLED311を封止シートBSで封止することによって、基板310およびリングフレームfが封止シートBSによって一体化された構成を有する封止体BMFが作成される。実施例5において、封止体BMFは本発明における半導体製品に相当する。
【0199】
<全体構成の説明>
ここで、実施例5に係るデバイス封止装置301の全体構成について説明する。
図33は、実施例5に係るデバイス封止装置301の基本構成を示す平面図である。デバイス封止装置301は、横長の矩形部301aと、突出部301bとを備えた構成になっている。突出部301bは、矩形部301aの中央部で連接して上側に突出する構成になっている。
【0200】
矩形部301aの右側には基板搬送機構303が配備されている。矩形部301aの下側右寄りの位置には、基板310を収容した2個の容器305が並列に載置されている。矩形部301aの左端には、封止体BMFを回収する封止体回収部306が配備されている。
【0201】
矩形部301aの上側の右からアライナ7、保持テーブル309、およびフレーム供給部12の順に配備されている。突出部301bには、基板310に搭載されているLED311の各々を封止シートBSによって封止させる封止ユニット313が配備されている。
【0202】
基板搬送機構303は
図34に示すように、矩形部301aの上部に左右水平に架設された案内レール15の右側に左右往復移動可能に支持された基板搬送装置316が備えられている。また、案内レール15の左側には左右移動可能に支持されたフレーム搬送装置17が備えられている。
【0203】
基板搬送装置316は、容器5のいずれか一方から取り出した基板310を左右および前後に搬送できるよう構成されている。基板搬送装置16は、左右移動可動台18と前後移動可動台19とが装備されている。前後移動可動台19の下部には、基板310を保持する保持ユニット21が装備されている。保持ユニット21の下部には、馬蹄形の保持アーム23が装備されている。保持アーム23は保持面に設けられた吸着パッドを介して基板310を吸着保持する。保持アーム23は基板310を吸着保持した状態で前後移動、左右移動、および、z方向軸周りの旋回移動を行うことができるように構成されている。
【0204】
保持テーブル309は、
図35などに示すように、基板310と同形状以上の大きさを有する金属製のチャックテーブルであり、外部に配備されている真空装置31および加圧装置32の各々と連通接続されている。真空装置31および加圧装置32の動作は、制御部33によって制御される。保持テーブル309は、チャンバ29を構成する下ハウジング29Aに収納されており、チャンバ29の内部で昇降移動が可能となっている。
【0205】
なお実施例5において保持テーブル309は環状の突起部9aを備えていないという点で実施例1に係る保持テーブル9と異なる。すなわち基板310は環状凸部Kaおよび扁平凹部Heを有していないので、実施例5に係る保持テーブル309は環状の突起部9aを備える必要がない。よって、保持テーブル309は全体として扁平となっている。
【0206】
下ハウジング29Aは、当該下ハウジング29Aを外囲するフレーム保持部38を備えている。フレーム保持部38は、リングフレームfを載置したとき、リングフレームfの上面と下ハウジング29Aの円筒頂部とが面一になるように構成されている。また、下ハウジング29Aの円筒頂部は離型処理が施されていることが好ましい。
【0207】
なお
図33に示すように、保持テーブル309は前後方向に付設されているレール40に沿って、初期位置と封止位置との間を往復移動可能に構成されている。初期位置は矩形部1aの内部にあり、
図33において保持テーブル309が実線で示されている位置である。当該セット位置において、基板310が保持テーブル309に載置される。
【0208】
封止位置は突出部301bの内部にあり、
図33において保持テーブル309が点線で示されている位置である。封止位置へ保持テーブル309が移動することにより、保持テーブル309に載置されている基板310に対して、封止部材BPを用いた封止工程を実行することが可能となる。フレーム供給部12は、所定枚数のリングフレームfを積層収納した引き出し式のカセットを収納する。
【0209】
封止ユニット313は、
図5に示すように、シート供給部371、セパレータ回収部72、デバイス封止部373およびシート回収部374などから構成されている。シート供給部371は、セパレータ付封止部材BPS(セパレータSが添設された封止部材BP)が巻回された原反ロールの装填された供給ボビンから封止部材BPを封止位置に供給する過程で、セパレータ剥離ローラ75によってセパレータSを剥離するよう構成されている。
【0210】
セパレータ回収部72は、封止部材BPから剥離されたセパレータSを巻き取る回収ボビンが備えられている。この回収ボビンは、モータよって正逆に回転駆動制御されるようになっている。
【0211】
デバイス封止部373は、チャンバ29、デバイス封止機構381およびシート切断機構82などから構成されている。
【0212】
チャンバ29は、下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとによって構成される。下ハウジング29Aは保持テーブル309を囲繞するように配設されており、保持テーブル9とともに初期位置と封止位置との間を前後方向に往復移動する。上ハウジング29Bは突出部301bに配備されており、昇降可能に構成される。実施例5において、チャンバ29の構成は
図6に示す実施例1の構成と共通するので詳細は省略する。
【0213】
デバイス封止機構381は、可動台84、貼付けローラ85、ニップローラ86などを備えている。シート切断機構82は、上ハウジング29Bを昇降させる昇降駆動台91に配備されており、z方向に延びる支軸92と、支軸92の周りに回転するボス部93を備えている。ボス部93は、径方向に延伸する複数の支持アーム94を備えている。少なくとも1つの支持アーム94の先端には、封止部材BPの搬送用シートBTをリングフレームfに沿って切断する円板形のカッタ95が上下移動可能となるように配備されている。
【0214】
シート回収部374は、切断後に剥離された不要な搬送用シートBTを巻き取る回収ボビンを備えている。この回収ボビンは、図示されていないモータよって正逆に回転駆動制御されるようになっている。封止体回収部306は、
図4に示すように、封止体BMFを積載して回収するカセット41が配備されている。このカセット41は、装置フレーム43に連結固定された縦レール45と、この縦レール45に沿ってモータ47でネジ送り昇降される昇降台49が備えられている。したがって、封止体回収部306は、封止体BMFを昇降台49に載置してピッチ送り下降するよう構成されている。
【0215】
実施例5において、上ハウジング29Bの内部には実施例1と同様にシート穿孔部76が配設されている。実施例5において、シート穿孔部76は搬送用シートBTに貫通孔PHを形成させる。実施例5に係るシート穿孔部76の構成は、
図7に示される実施例1の構成と同様である。
【0216】
<動作の概要>
ここで、実施例5に係るデバイス封止装置301の基本動作を説明する。
図36は、デバイス封止装置301を用いて、基板310に搭載されたLED311を封止シートBSで封止して封止体BMFを製造する一連の工程を説明するフローチャートである。
【0217】
ステップS1(ワークの供給)
封止指令が出されると、フレーム供給部12から下ハウジング29Aのフレーム保持部38へリングフレームfが搬送されるとともに、容器305から保持テーブル309へ基板310が搬送される。
【0218】
すなわち、フレーム搬送装置17はフレーム供給部12からリングフレームfを吸着してフレーム保持部38に移載する。フレーム搬送装置17がリングフレームfの吸着を解除して上昇すると、リングフレームfの位置合わせを行う。当該位置合わせは、一例としてフレーム保持部38を囲繞するように立設された複数の支持ピンを中央方向へ同期的に移動させることによって行われる。リングフレームfは、フレーム保持部38にセットされた状態で、基板310が搬送されてくるまで待機している。
【0219】
フレーム搬送装置17がリングフレームfを搬送する一方、基板搬送装置316は、多段に収納された基板310の同士の間に保持アーム23を挿入する。保持アーム23は、基板310の表面のうち、LED311が搭載されていない部分(周縁側の部分)を吸着保持して搬出し、アライナ7に搬送する。アライナ7は、その中央から突出した吸着パッドにより基板310の裏面中央を吸着する。同時に、基板搬送装置316は、基板310の吸着を解除して上方に退避する。アライナ7は、吸着パッドで基板310を保持して回転させながらノッチなどに基づいて位置合わせを行う。
【0220】
位置合わせが完了すると、基板310を吸着した吸着パッドをアライナ7の面から突出させる。その位置に基板搬送装置316が移動し、基板310を表面側から吸着保持する。吸着パッドは、吸着を解除して下降する。
【0221】
基板搬送装置316は保持テーブル309の上方に移動し、LED311が搭載されている表面側を上向きにした状態で、保持テーブル309に基板310を載置させる。保持テーブル309が基板310を吸着保持し、フレーム保持部38がリングフレームfを吸着保持すると、下ハウジング29Aはレール40に沿って初期位置からデバイス封止機構381側の封止位置へと移動する。保持テーブル309に基板310が供給され、封止位置へと移動した状態は
図37に示されている。
【0222】
ステップS2(封止シートの供給)
基板搬送装置316などによるワークの供給が行われると、封止ユニット313において封止シートBSの供給を行う。すなわち、シート供給部371から所定量の封止部材BPがセパレータSを剥離されながら繰り出される。全体として長尺状である封止部材BPは、所定の搬送経路に沿って封止位置の上方へと案内される。このとき
図38に示すように、搬送用シートBTに保持されている封止シートBSは、保持テーブル309に載置されている基板310の上方に位置するようにポジショニングが行われる。
【0223】
ステップS3(チャンバの形成)
ワークおよび封止シートBSが供給されると、
図39に示すように、貼付けローラ85が下降する。そして、貼付けローラ85は搬送用シートBTの上を転動しながらリングフレームfと下ハウジング29Aの頂部とにわたって搬送用シートBTを貼り付ける。この貼付けローラ85の移動に連動して、シート供給部371から所定量の封止部材BPがセパレータSを剥離されながら繰り出される。
【0224】
リングフレームfに搬送用シートBTが貼り付けられると、貼付けローラ85を初期位置へと復帰させるとともに、上ハウジング29Bを下降させる。上ハウジング29Bの下降に伴って、
図40に示すように、下ハウジング29Aの頂部に貼り付けられている部分の搬送用シートBTは上ハウジング29Bと下ハウジング29Aによって挟持され、チャンバ29が構成される。
【0225】
このとき、搬送用シートBTがシール材として機能するとともに、チャンバ29は粘着テープDTによって2つの空間に分割される。すなわち、搬送用シートBTを挟んで下ハウジング29A側の下空間H1と上ハウジング29B側の上空間H2とに分割される。下ハウジング29A内に位置する基板310は、封止シートBSと所定のクリアランスを有して近接対向している。
【0226】
ステップS4(第1封止過程)
チャンバ29を形成させた後、第1封止過程を開始する。実施例5において、第1封止過程は本発明における第1の一体化過程に相当する。第1封止過程が開始されると、まず制御部33は、電磁バルブ104、105、107、110114を閉じるとともに、電磁バルブ103および113を開く。そして制御部33は真空装置31を作動させて下空間H1内の気圧と上空間H2内の気圧とを所定値まで減圧する。所定値の例として、10Pa~100Paが挙げられる。
【0227】
下空間H1および上空間H2の気圧が所定値まで減圧されると、制御部33は、電磁バルブ103を閉じるとともに、真空装置31の作動を停止する。そして制御部33は、下空間H1の気圧より上空間H2の気圧の方が高くなるよう、下空間H1に接続されている電磁バルブ103、105、107、113を閉じたまま、上空間H2に接続されている電磁バルブ110の開度を調整してリークさせるよう制御する。
【0228】
下空間H1の気圧より上空間H2の気圧の方が高くなることにより、
図41に示すように、両空間の間に差圧Faが発生する。差圧Faが発生することにより、粘着テープDTは中心部分から下ハウジング29Aの側へ引き込まれていき、凸状に変形していく。実施例5では実施例1と同様に、ステップS4において上空間H2および下空間H1の気圧を10Paに調整した後、上空間H2の気圧を10Paから100Paへと調整することによって差圧Faを発生させる。
【0229】
差圧Faを発生させた後、
図42に示すように、アクチュエータ37を駆動させて保持テーブル309を上昇させる。差圧Faによる封止部材BPの変形と保持テーブル309の上昇とによって、抜気されている下空間H1の内部において封止シートBSは中心部から外周部に向けて放射状に基板310の表面に接触していく。当該接触により、基板310に搭載されているLED311の各々は封止シートBSによって覆われる。
【0230】
LED11が封止シートBSによって覆われると、制御部33は電磁バルブ105、107を開けて上空間H2および下空間H1を大気開放させる。当該大気開放により、第1封止過程は完了する。このように、第1封止過程ではチャンバ29の内部空間を減圧した状態で封止シートBSを基板310の表面に接触させることにより封止シートBSでLED311を覆わせる操作を行う。当該操作により、基板310に封止シートBSが付着された状態となる。
【0231】
ステップS5(圧力差調整過程)
差圧Faを用いた第1封止過程が完了した後、圧力差調整過程を開始する。実施例5では、実施例1と同様にシート穿孔部76を用いることによって、以後に上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に抑制させる処理を行う。すなわち、シート穿孔部76を用いて搬送用シートBTに貫通孔を形成させることによって、ステップS6において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に抑制させる。
【0232】
ステップS5が開始すると
図43に示すように、制御部33は昇降駆動台97を駆動させてシート穿孔部76を下降させる。シート穿孔部76が下降することにより、搬送用シートBTのうちリングフレームfと封止シートBSとの間の部分に対してカッタ129の各々が突き刺される。カッタ129が搬送用シートBTに突き刺されることにより、搬送用シートBTのうちリングフレームfと封止シートBSとの間の部分において貫通孔PHが形成される。
【0233】
貫通孔PHが形成されることにより、上空間H2と下空間H1との間で気体が流通する通気孔が形成される。すなわち搬送用シートBTに貫通孔PHが形成されることによって、チャンバ29の内部において上空間H2と下空間H1とに区画された状態が解消される。貫通孔PHを介して上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となることにより、ステップS6において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下とすることができる。なお説明の便宜上、搬送用シートBTに貫通孔PHが形成された後であっても、搬送用シートBTを境界として基板310が配置される側の空間を下空間H1とする。そして搬送用シートBTを挟んで下空間H1と逆側の空間を上空間H2として説明を続ける。
【0234】
シート穿孔部76が下降させて搬送用シートBTにカッタ129を突き刺させた後、
図44に示すように、回転軸部99をz方向の軸周りに回転させる。回転軸部99が回転することにより、支持アーム127の先端側に配設されているカッタ129の各々は、回転軸部99を中心とする円軌道L1に沿って移動しつつ搬送用シートBTを切断していく。
【0235】
カッタ129が円軌道L1に沿って移動することにより、貫通孔PHの各々は
図45に示すように、円軌道L1に沿った円弧状に広げられる。ステップS5における回転軸部99の回転角度θは、ステップS8における封止体BMFを搬送する工程を適切に実行できる程度の角度に定められる。貫通孔PHが広げられることにより、上空間H2と下空間H1との間でより多くの気体が流通可能となるので、ステップS6において上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差をより小さくすることができる。
【0236】
シート穿孔部76の下降および回転によって貫通孔PHが形成された後、制御部33は昇降駆動台97を駆動させ、シート穿孔部76を初期位置へと上昇させる。シート穿孔部76を上昇させるとともに、制御部33はアクチュエータ37を制御して保持テーブル309を初期位置へと下降させる。予め定められた位置に貫通孔PHが形成されることにより、実施例5のステップS5に係る圧力差調整過程は完了する。
【0237】
ステップS6(第2封止過程)
シート穿孔部76によって搬送用シートBTに貫通孔PHが形成された後、第2封止過程を開始する。実施例5において、第2封止過程は本発明における第2の一体化過程に相当する。第2封止過程が開始されると、まず制御部33は
図6に示す電磁バルブ103、105、107、110、113を閉じるとともに、電磁バルブ104および114を開放させる。そして制御部33は加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体Arを供給し、下空間H1および上空間H2を特定値PNにまで加圧する。特定値PNの例として0.3MPa~0.6MPaが挙げられる。加圧装置32が加圧操作を行うことにより、下空間H1の気圧および上空間H2の気圧はいずれも大気圧より高くなる。
【0238】
上空間H2の加圧により、
図46に示すように、上空間H2から封止シートBSに向けて押圧力V1が作用する。なお、上空間H2の全体が加圧されるので、押圧力V1は封止シートBSの全体にわたって均一に作用する。また、下空間H1の全体が加圧されることにより、下空間H1から基板310の下向きの面に対して押圧力V2が均一に作用する。すなわち、大気圧より高い特定値PNに加圧することによって、押圧力V1および押圧力V2が封止シートBSと基板310との間に作用する。
【0239】
そして、大気圧より大きい力である押圧力V1および押圧力V2を均一に作用させることによって、LED311同士の隙間に封止シートBSの封止材BSbが充填されていく。その結果、封止シートBSと基板310との密着性が向上するので、時間の経過によって封止シートBSが基板310から剥がれる、という事態が発生することを回避できる。その結果、基板310と封止シートBSとがより密着するとともに、LED311は封止シートBSによって封止される。
【0240】
実施例5ではステップS5において搬送用シートBTに貫通孔PHが形成された後に下空間H1および上空間H2を特定値PNまで加圧する。そのため、下空間H1の広さと上空間H2の広さとの差を例とする要因によって下空間H1の気圧Ph2と上空間H2の気圧Ph1との間に圧力差が発生したとしても、当該圧力差は速やかに解消される。すなわち、貫通孔PHを介して下空間H1と上空間H2との間で気体が流通可能であるので、気圧Ph1と気圧Ph2との間に偏りが生じることを防止できる。よって、下空間H1と上空間H2との間に発生する圧力差は所定値以下に抑制される。
【0241】
押圧力V1の大きさは気圧Ph1に依存しており、押圧力V2の大きさは気圧Ph2に依存する。そのため、気圧Ph1と気圧Ph2との差を所定値以下に抑制することにより、ウエハWに対して上空間H2の側から作用する押圧力V1とウエハWに対して下空間H1の側から作用する押圧力V2との差を所定値以下に抑制できる。よって、下空間H1と上空間H2との間の圧力差が小さくなることにより、当該圧力差に起因して割れ、欠け、または歪みを例とする損傷が基板310に発生するという事態を回避できる。
【0242】
下空間H1および上空間H2を大気圧より高い気圧に加圧した状態で、封止シートBSと基板310との間に押圧力を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ105および電磁バルブ107を開けて下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル309を上昇させて基板310の裏面を保持テーブル309の基板保持面に当接させる。
【0243】
ステップS7(シートの切断)
なお、チャンバ29内においてステップS4ないしステップS6に係る工程を行っている間に、シート切断機構82を作動させて封止部材BPの切断を行う。このとき、
図47に示すように、リングフレームfに貼り付けられた封止部材BP(具体的には、搬送用シートBT)をカッタ95がリングフレームfの形状に切断するとともに、押圧ローラ96がカッタ95に追従してリングフレームf上のシート切断部位を転動しながら押圧してゆく。
【0244】
上ハウジング29Bを上昇させた時点でステップS4に係る第1貼付け過程およびステップS5に係る第2貼付け過程は完了しているので、ピンチローラ90を上昇させて搬送用シートBTのニップを解除する。その後、
図48に示すように、ニップローラ86を移動させてシート回収部374に向けて切断後の不要な搬送用シートBTを巻き取り回収してゆくとともに、シート供給部371から所定量の封止部材BPを繰り出す。ステップS7までの各工程により、封止部材BPを介してリングフレームfおよび基板310が一体化された封止体BMFが形成される。
【0245】
不要な搬送用シートBTが巻き取り回収されると、ニップローラ86および貼付けローラ85は初期位置に復帰する。そして封止体BMFを保持している状態で保持テーブル309は貼付け位置から初期位置へと移動する。
【0246】
ステップS8(封止体の回収)
保持テーブル309が初期位置に復帰すると、
図49に示すように、フレーム搬送装置17に設けられている吸着パッド28が封止体BMFを吸着保持し、下ハウジング29Aから封止体BMFを離脱させる。封止体BMFを吸着保持したフレーム搬送装置17は、封止体BMFを封止体回収部306へと搬送する。搬送された封止体BMFは、カセット41に積載収納される。
【0247】
以上で、基板310に搭載されているLED311を封止シートBSによって封止する一巡の動作が終了する。以後、封止体BMFが所定数に達するまで上記処理が繰り返される。
【0248】
<実施例5の構成による効果>
上記実施例5に係る装置によれば、チャンバ29の内部の気圧を調節することにより、基板310に搭載されているLED311をシート状封止材である封止シートBSで封止する。液状の封止材をデバイス周辺に充填させた後に当該封止材を硬化させるという特許文献1に係るデバイス封止方法では、未硬化状態の樹脂に気泡が混入するなどの原因によって、封止材の表面における平坦性が低下する。
【0249】
一方で本発明の構成において、封止シートBSが備える基材BSaおよび封止材BSbの各々は、予め平坦なシート状となっている。従って、封止シートBSによる封止が完了した状態において、封止シートSの表面における平坦性を向上させることができる。また、チャンバ29の内部に基板310および封止シートBSを配設した状態で、チャンバ29の内部の気圧を調節することによって封止を行うので、封止シートBSの全体にわたって差圧Fa、または押圧力V1およびV2が均一に作用する。従って、封止シートBSに作用する力の偏りに起因して封止シートBSの表面に凹凸が発生することを確実に回避できるので、封止シートBSの平坦性をより確実に向上できる。
【0250】
上記実施例5に係るデバイス封止装置301によれば、実施例1に係る粘着シート貼付け装置1と同様の効果を得ることができる。チャンバ29を用いて第1封止過程、圧力差調整過程、および第2封止過程を行うことにより、LED311が搭載されている基板310に対して封止シートBSを封止させる際において、基板310が破損する事態を回避しつつ、封止シートBSと基板310との密着性を向上させることができる。
【0251】
ステップS4に係る第1封止過程では、チャンバ29の内部において、基板310が配置される下空間H1の内部が減圧される。すなわち封止シートBSおよび基板310の周辺空間は減圧により抜気されるので、封止シートBSがLED11に接触してLED11を覆う際に、封止シートBSとLED311との間に気体が巻き込まれることを防止できる。よって、気体の巻き込みに起因する密着力の低下を回避できる。
【0252】
また、ステップS6に係る第2封止過程では、下空間H1および上空間H2の気圧を大気圧より大きくなるように加圧させることにより、封止シートBSの封止材BSbを精度良くLED11の間隙に充填させる。
【0253】
真空装置を用いてチャンバの内部を減圧することによって差圧Faを発生させる場合、大気圧状態からの減圧によって発生する差圧Faの大きさは、大気圧以下となる。すなわち差圧Faのみを用いて封止シートBSをLED311に押圧させる場合、封止シートBSにLED311を押圧させる力の大きさに上限が存在する。従って
図50(a)に示すように、減圧による差圧Faによって封止シートBSの封止材BSbがLED11を覆った状態において、LED311の周囲の空間を封止材BSbが完全に充填しきれず、間隙部Jが発生する場合がある。
【0254】
これに対し、実施例5に係るデバイス封止装置301では加圧装置32を用いてチャンバ29内の上空間H2および下空間H1を大気圧より大きい気圧となるように加圧する。すなわち第2封止過程では差圧Faより大きい押圧力V1、V2を封止シートBSおよびLED311に作用させることができる。従って
図50(b)に示すように、未硬化状態の封止材BSbが押圧力V1およびV2の作用によってさらに押圧変形し、間隙部Jを確実に充填していく。そのため、第2封止過程を行うことによってLED311をより精度良く封止できるので、基板310と封止シートBSとの密着性をより高めた状態で基板310と封止シートBSとを一体化できる。
【0255】
また、第2封止過程では加圧装置32を適宜制御することにより、押圧力V1およびV2の大きさを任意の値に調節できる。従って、粘着材BTbの構成材料、または基板310のサイズおよびLED311のサイズを例とする各種条件が変更される場合であっても、押圧力V1およびV2の大きさを適宜調節することにより、確実にLED311を封止できる。
【0256】
実施例5に係るデバイス封止装置1では、第2封止過程の前に圧力差調整過程を行うことにより、第2貼付け過程において上空間H2と下空間H1との間で発生する気圧の差を所定値以下に低減させる。圧力差調整過程を行うことにより、封止シートBSと基板310との密着性を高めつつ、基板310に割れ、欠け、または歪みなどの破損が発生することをより確実に回避できる。
【0257】
具体的には、第2貼付け過程の前にシート穿孔部76を用いて封止部材BPに貫通孔PHを形成させる。貫通孔PHを介して上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能になることにより、押圧力V1と押圧力V2との間で圧力差が発生した場合であっても、気体の流通によって当該圧力差は速やかに解消される。従って、ステップS6においてチャンバ29の内部を加圧する際に、押圧力V1と押圧力V2との間で発生する圧力差を所定値以下に低減した状態を維持できるので、高い押圧力V1および押圧力V2によって封止シートBSと基板310との密着性を高めつつ、押圧力V1と押圧力V2との圧力差に起因して基板310またはLED311に破損が発生することを回避できる。
【実施例0258】
次に、本発明の実施例6を説明する。実施例6は、実施例5に係るデバイス封止装置301において、実施例2に係る圧力差調整過程を行うものである。すなわち、実施例6に係るデバイス封止装置301の構成は、実施例5に係るデバイス封止装置301からシート穿孔部76が省略された構成となる。
【0259】
そして実施例6に係るデバイス封止装置301を用いて基板301に搭載されたLED311を封止シートBSで封止する場合、制御部33が設定する制御パターンによって、上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を低減させる。実施例6に係るステップS5において制御部33が設定する制御パターンは、
図26に示される実施例2の制御パターンと共通するので説明は省略する。
【0260】
実施例6に係るデバイス封止装置301の動作は以下の通りである。実施例6に係る一連の操作は、ステップS1~S4の工程が実施例5と共通しており、ステップS5~S6の工程が実施例5と相違する。ステップS4に係る第1貼付け過程が完了すると、ステップS5に係る圧力差調整過程を開始する。すなわち、制御部33はステップS6における加圧制御パターンを設定する。具体的には、段階的に高くなる目標値M1~M5が定められている5つの加圧ステップR1~R5を実行することによって、上空間H2および下空間H1を大気圧より高い気圧となるように加圧する制御パターンを制御部33は設定する。
【0261】
各々の加圧ステップR1~R5は、上空間H2および下空間H1の気圧を、加圧ステップごとに定められた目標値Mに上昇させるステップである。制御部33が加圧ステップR1~R5を有する加圧制御パターンを設定することにより、上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に低減させる処理、すなわち圧力差調整過程は完了する。
【0262】
そして複数の加圧ステップR1~R5を用いた上空間H2および下空間H1の加圧制御パターンが設定された後、ステップS6に係る第2封止過程を開始する。制御部33は、
図58に示す電磁バルブ103、105、107、110、113を閉じるとともに、電磁バルブ104、114を開放させる。そして制御部33は加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体を供給し、ステップS5において設定された加圧制御パターンに従って下空間H1および上空間H2を特定値PNにまで段階的に加圧する。実施例6では5つに分割された加圧ステップR1~R5の各々において、下空間H1および上空間H2の気圧を1気圧ずつ上昇させる。
【0263】
加圧ステップR1~R5の各々では、下空間H1および上空間H2のうち一方の気圧が目標値Mに到達した場合、下空間H1および上空間H2のうち他方の気圧が当該目標値Mに到達するまで、下空間H1および上空間H2のうち一方の気圧は目標値Mを維持するように制御部33は加圧装置32を制御する。加圧ステップR1~R5を順に実行させることによって、上空間H2と下空間H1との圧力差が低減された状態を維持しつつ、上空間H2および下空間H1が段階的に加圧される。上空間H2と下空間H1との圧力差が低減されているので、上空間H2および下空間H1が大気圧より高い圧力となるように加圧した状態であっても上空間H2と下空間H1との圧力差に起因して基板310に損傷が発生することを回避できる。
【0264】
加圧ステップR1~R5が完了し、大気圧より高い特定値PNに加圧した状態で押圧力V1およびV2を基板310および封止部材BPに所定時間作用させることにより、封止シートBSは基板310およびLED311に対してより密着するように封止される。押圧力V1およびV2を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させるとともに下空間H1および上空間H2を大気開放させる。さらに制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放させ、保持テーブル309を上昇させることによりステップS6に係る工程は完了する。ステップS6が完了した後、実施例5と同様にステップS7およびステップS8の工程を実行することによって封止体BMFが作成される。
【0265】
このように、実施例6ではデバイス封止装置301を用いて、実施例2に係る圧力差調整過程および第2封止過程を行うことにより、LED311を封止シートBSで封止して封止体BMFを製造する工程において、実施例2と同様の有利な効果を得ることができる。すなわち、制御部33が設定する加圧制御パターンを複数の加圧ステップR1~R5によって上空間H2および下空間H1を段階的に加圧させる制御パターンとすることによって、第2封止過程において上空間H2と下空間H1との圧力差を所定値以下に抑制できる。そのため、シート穿孔部76を例とする機械的な機構をデバイス封止装置301へ新たに組み入れなくとも、加圧制御パターンに関する制御部33のプログラムを更新することによって、基板310の損傷を回避しつつ基板310と封止シートBSとの密着性を向上できる。
【実施例0266】
次に、本発明の実施例7を説明する。実施例7は、実施例5に係るデバイス封止装置301において、実施例3に係る圧力差調整過程を行うものである。すなわち、実施例7に係るデバイス封止装置301の構成は、実施例5に係るデバイス封止装置301に対して
図27に記載されているチャンバ29が配備された構成となる。
【0267】
すなわち、実施例7に係るデバイス封止装置301において、流路204に配設される電磁バルブ104には開度調節弁115が備えられており、流路203に配設される電磁バルブ114には開度調節弁116が備えられている。すなわち実施例7では実施例3と同様に、制御部33が電磁バルブ114の開度と電磁バルブ104の開度とを独立に制御することにより、ステップS6において上空間H2の気圧が上昇する速度と下空間H1の気圧が上昇する速度とを独立に制御できる構成となっている。
【0268】
<実施例7における動作>
ここで、実施例7に係るデバイス封止装置301の動作を説明する。実施例7に係るフローチャートは
図37に示される実施例5に係るフローチャートと共通する。実施例5に係るデバイス封止装置301の動作と同一の工程については説明を簡略化し、異なる工程であるステップS5およびステップS6について詳述する。
【0269】
ステップS5(圧力差調整過程)
実施例7ではステップS4に係る第1封止過程が完了すると、以後に上空間H2と下空間H1との間で発生する圧力差を所定値以下に低減させる処理を開始する。すなわち、制御部33は下空間加圧用の流路203に備えられている電磁バルブ114の開度と、上空間加圧用の流路204に備えられている電磁バルブ104の開度とを独立に制御する。このとき、上空間H2の気圧が上昇する速度と下空間H1の気圧が上昇する速度とが等しくなるように電磁バルブ114の開度と電磁バルブ104の開度とをそれぞれ制御する。一例として上空間H2の容積が下空間H1の容積より小さい場合、電磁バルブ114の開度を電磁バルブ104の開度より大きくさせる。制御部33が電磁バルブ114および電磁バルブ104の開度を調節することにより、圧力差調整過程は完了する。
【0270】
ステップS6(第2貼付け過程)
制御部33によって電磁バルブ114および134の開度が調節された後、第2貼付け過程を開始する。すなわち
図28に示すように、電磁バルブ114の開度が電磁バルブ104の開度より大きくなるように制御された状態で、制御部33は加圧装置32を作動させて上空間H2および下空間H1の各々に気体を供給する。上空間H2および下空間H1の各々に気体を供給することにより、制御部33は上空間H2および下空間H1の圧力を大気圧より高い圧力に上昇させる。
【0271】
実施例7では電磁バルブ114の開度が電磁バルブ104の開度より大きくなるように制御された状態で加圧装置32を作動させるので、気圧Ph2の上昇速度は気圧Ph1の上昇速度と等しくなる(
図29を参照)。すなわち実施例3と同様に、Ph2の上昇速度は
図29において二点鎖線で示される速度から、実線で示される速度へと高められる。その結果、気圧Ph1と気圧Ph2との差は所定値以下に抑制される。すなわち、基板310に対して上空間H2の側から作用する押圧力V1と、基板310に対して下空間H1の側から作用する押圧力V2との差は所定値以下に抑制されるので、ステップS6において基板310またはLED311に破損が発生することを回避できる。
【0272】
大気圧より高い特定値PNに加圧した状態で押圧力V1およびV2をウエハWに所定時間作用させることにより、封止シートBSは基板310およびLED311に対してより密着するように封止され、LED311の周囲空間は封止材BSbによって充填される。
【0273】
押圧力V1およびV2を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ105、107を開けて下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル309を上昇させて基板310の裏面を保持テーブル309の基板保持面に当接させることによりステップS6に係る工程は完了する。ステップS6が完了した後、実施例3と同様にステップS7およびステップS8の工程を実行することによって封止体BMFが作成される。
【0274】
実施例7では実施例3と同様に開度調節弁115および開度調節弁116を備えることにより、上空間H2と下空間H1との各々を独立に加圧制御する構成を有している。そして上空間H2と下空間H1との各々を独立に加圧制御する構成によって、ステップS6において発生する上空間H2と下空間H1との圧力差を所定値以下に抑制する。このような実施例3ではシート穿孔部76が不要であるので、封止部材BPに貫通孔PHを形成させる位置および面積を考慮する必要がない。
【0275】
また、上空間H2における気圧上昇速度と下空間H1における気圧上昇速度とを等しくさせることにより、上空間H2および下空間H1のうち一方の気圧が特定値PNに達した後、他方の気圧が特定値PNに到達するまで待機する時間の発生を回避できる。
図29に示すように、下空間H1の気圧Ph2の上昇速度を挙げて上空間H2の気圧Ph1の上昇速度と等しくすることにより、気圧Ph2が特定値PNに到達する時刻はtbからtaへと早められる。その結果、上空間H2および下空間H1の両方が特定値PNに到達する時刻を早めることができるので、ステップS6の工程に要する時間を短縮できる。
【実施例0276】
次に、本発明の実施例8を説明する。実施例8に係るデバイス封止装置301は、実施例5に係るデバイス封止装置31において、実施例4に係る圧力差調整過程を行うものである。すなわち、実施例8に係るデバイス封止装置301の構成は、実施例5に係るデバイス封止装置301に対して
図30に記載されているチャンバ29が配備された構成となる。
【0277】
実施例8に係るデバイス封止装置301において、チャンバ29は下ハウジング29Aおよび上ハウジング29Bを連通接続させる流路135を備えている。流路135には電磁バルブ137が備えられており、電磁バルブ137の開閉動作は制御部33によって制御される。電磁バルブ137が開放されることにより、上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となる。電磁バルブ137が開放されることにより、流路135は上空間H2と下空間H1との間で気体が流通する通気孔として機能する。
【0278】
<実施例8における動作>
ここで、実施例8に係るデバイス封止装置301の動作を説明する。実施例8に係るフローチャートの概要は
図37に示される実施例5に係るフローチャートと共通する。実施例5に係るデバイス封止装置301の動作と同一の工程については説明を簡略化し、異なる工程であるステップS5およびステップS6について詳述する。
【0279】
ステップS5(圧力差調整過程)
実施例8ではステップS4に係る第1封止過程が完了すると、圧力差調整過程として、上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となるような処理を行う。すなわちステップS5が開始すると、制御部33は電磁バルブ137を開放させる制御を行う。電磁バルブ137が開放されることにより、流路135を介して上空間H2と下空間H1との間で気体が流通可能となる。制御部33が電磁バルブ137を開放させることにより、圧力差調整過程は完了する。
【0280】
ステップS6(第2貼付け過程)
制御部33によって電磁バルブ137が開放された後、第2貼付け過程を開始する。まず制御部33は、
図6に示す電磁バルブ103、105、107、110、113を閉じるとともに、電磁バルブ104、114を開放させる。そして電磁バルブ137が開放された状態を維持しつつ、制御部33は加圧装置32を作動させて下空間H1および上空間H2に気体を供給し、下空間H1および上空間H2を特定値PNにまで加圧する。
【0281】
上空間H2の加圧により、上空間H2から粘着テープDTとウエハWの表面側とに向けて押圧力V1が作用するとともに、下空間H1から基板310の裏面側に向けて押圧力V2が作用する(
図46を参照)。大気圧より高い圧力である押圧力V1および押圧力V2が作用することにより、LED311が搭載されている基板310と封止シートBSとの間の密着性が高められる。
【0282】
実施例8では実施例4と同様に、ステップS5において電磁バルブ137を開放させた状態で下空間H1および上空間H2を大気圧より高い特定値PNまで加圧する。そのため、下空間H1の気圧Ph2と上空間H2の気圧Ph1との間に圧力差が発生したとしても、流路135を介して下空間H1と上空間H2との間で気体が流通することにより、当該圧力差は速やかに解消される。よって、下空間H1と上空間H2との間に発生する圧力差が所定値以下に抑制された状態で、下空間H1および上空間H2を大気圧より高い特定値PNへと加圧することができる。
【0283】
押圧力V1およびV2を所定時間作用させた後、制御部33は加圧装置32を停止させる。そして制御部33は電磁バルブ105、107を開けて下空間H1および上空間H2を大気開放させる。制御部33は上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を開放するとともに、保持テーブル309を上昇させて基板310に当接させることによりステップS6に係る工程は完了する。ステップS6が完了した後、実施例4と同様にステップS7およびステップS8の工程を実行することによって封止体BMFが作成される。
【0284】
実施例8では流路135と電磁バルブ137とを備えることにより、上空間H2と下空間H1との間で気体を流通可能とする構成を有している。そして電磁バルブ137を開放した状態で上空間H2および下空間H1を大気圧より高い圧力へと加圧することで、ステップS6において発生する上空間H2と下空間H1との圧力差を所定値以下に抑制できる。このような実施例4では、封止部材BPに貫通孔PHを形成させなくとも上空間H2と下空間H1との間で気体を流通可能とすることができるので、シート穿孔部76を省略することができる。
【0285】
<他の実施形態>
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0286】
(1)各実施例に係るステップS4において、上空間H2および下空間H1の気圧を10Paに調整した後、上空間H2の気圧を10Paから100Paへと調整することによって差圧Faを発生させるが、これに限られない。すなわち上空間H2の気圧が下空間H1の気圧より高く調節する限りにおいて、ステップS4における上空間H2および下空間H1の気圧は適宜変更してもよい。一例として、下空間H1および上空間H2の気圧を所定値にまで減圧させた後、上空間H2の気圧を大気圧に戻すことによって差圧Faを発生させてもよい。上空間H2の気圧を大気圧にまで戻して差圧Faを発生させる構成では、差圧Faをより大きくできるので、粘着テープDTを変形させてウエハWの環状凸部形成面を粘着テープDTで覆わせる過程をより速やかに完了できる。
【0287】
(2)各実施例に係るステップS6において、加圧装置32は下空間H1および上空間H2の両方の内部を加圧したが、これに限られない。すなわち、加圧装置32は上空間H2のみを大気圧より高い気圧になるまで加圧し、押圧力V1によって粘着テープDTをより精度良く貼り付けてもよい。
【0288】
上空間H2のみを加圧する構成のさらなる変形例として、下空間H1の内部を大気圧より低い気圧となるように減圧された状態を維持しつつ、上空間H2の内部を大気圧より高い気圧となるように加圧することによって粘着テープDTを貼り付ける構成であってもよい。当該構成では、ステップS4において差圧Faによる第1貼付け過程を行った後、下空間H1の気圧が所定値に減圧された状態を維持しつつ、上空間H2に接続されている電磁バルブ105を開放して上空間H2のみを大気開放する。そしてステップS5において、加圧装置32を作動させ、上空間H2の内部を加圧して大気圧より高くする。
【0289】
当該変形例では、ステップS5において、保持テーブル9を上昇させてウエハWの裏面に保持テーブル9を当接させた状態で、上空間H2の内部を加圧して第2貼付け過程を行う。保持テーブル9によってウエハWを保持した状態で上空間H2を加圧して押圧力V1を発生させることにより、下空間H1が大気圧より低く減圧されている状態であっても押圧力V1を粘着テープDTおよびウエハWの全面にわたって均等に作用させることができる。
【0290】
(3)各実施例に係るステップS4において、真空装置31を用いてチャンバ29の内部に差圧Faを発生させることにより、粘着テープDTを凸状に変形させてウエハWの環状凸部形成面に接触させているが、粘着テープDTを凸状に変形させる方法は差圧Faを発生させる構成に限られない。すなわち
図51に示すように、上ハウジング29Bの内部に押圧部材141を備える構成であってもよい。
【0291】
押圧部材141は、底面が凸状(一例として半球状)となっており、粘着テープDTの上方に位置するように配設される。そのため、押圧部材141を下降させることにより、凸状となっている押圧部材141の底面が粘着テープDTを押圧し、粘着テープDTは凸状に変形してウエハWに接触することができる。この場合、差圧Faの発生に必要な構成を省略できる。また、粘着テープDTを凸状に変形させる他の構成として、ローラなどを用いて粘着テープDTを上方から押圧させる構成なども挙げられる。
【0292】
(4)各実施例において、支持用の粘着テープDTをウエハWに貼り付ける構成を例として説明したが、ウエハWに貼り付ける粘着シートはこれに限ることはない。回路保護用の粘着テープを例とするシート状の粘着材を貼り付ける構成であれば、各実施例に係る構成を適用できる。
【0293】
(5)実施例1ないし実施例4において、粘着シートを貼りつける対象となるワークとして、ウエハWおよびリングフレームfを例示したが、ワークはこれに限られない。一例として、リングフレームfを省略し、ウエハWのみに粘着シート(粘着テープDT)を貼り付けてもよい。リングフレームfを省略する場合、第2貼付け過程が完了して粘着テープDTが密着して貼りつけられた状態となっているウエハWが本発明における半導体製品に相当する。また、実施例5ないし実施例8においてもリングフレームfを省略し、基板310のみに封止部材BPを貼りつけてもよい。リングフレームfを省略する場合、第2封止過程が完了して封止シートBSが密着して貼りつけられた状態となっている基板310が本発明における半導体製品に相当する。
【0294】
(6)各実施例において、ウエハ、基板、パネルなど各種半導体用部材をワークとして適用することができる。さらにワークの形状としては円形状の他、矩形状、多角形状、略円形状などであってもよい。
【0295】
(7)各実施例において、保持テーブル9または保持テーブル309を所定のタイミングで昇降移動させてワークとシート材とを一体化させているが、保持テーブル9または保持テーブル309の昇降移動は適宜変更してもよい。一例として、ステップS6に係る加圧処理は保持テーブル9を下降させた後に行う構成に限られず、上昇状態を維持しつつ加圧処理を行ってもよい。
【0296】
(8)各実施例において、フレーム保持部38は下ハウジング29Aの外部に配設されているが、下ハウジング29Aの内部にフレーム保持部38を設けてもよい。この場合、ステップS4以降の過程は、リングフレームfおよびウエハWの各々をチャンバ29の内部に収納した状態で行われる。
【0297】
(9)各実施例において、
図52(a)に示すように、チャンバ29はシート状の弾性体Gsを備えていてもよい。以下、実施例6の構成を例示して本変形例について説明する。
【0298】
弾性体Gsは上ハウジング29Bの内部に配設されており、上ハウジング29Bの内径に接するように構成されている。また、弾性体Gsの下面と上ハウジング29Bの円筒底部とが面一となるように構成される。従って、下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとが搬送用シートPを挟み込んでチャンバ29を形成すると、弾性体Gsは搬送用シートPと当接する。具体的には、搬送用シートPにおいて、粘着テープDTを保持する面とは逆の側(図では上面側)に弾性体Gsが当接される。弾性体Gsを下ハウジング29Aの内径に接するように配設することにより、チャンバ29を形成する際に弾性体Gsが挟み込まれることがないので、チャンバ29の密閉性が弾性体Gsによって低下することを防止できる。弾性体Gsを構成する材料の例として、ゴム、エラストマー、またはゲル状の高分子材料などが挙げられる。
【0299】
チャンバ29が弾性体Gsを備えることにより、ステップS4において封止部材BPを凸状に変形させる際に、封止部材BPの屈曲率をより均一にすることができる。ここで弾性体Gsを備える構成の効果について説明する。一例として、封止シートBSが比較的硬い材料で構成されている場合、
図52(b)に示すように、封止部材BPの屈曲率が不均一になりやすい。
【0300】
すなわち、搬送用シートBTのうち、封止シートBSが搬送用シートBTに保持されている領域P1においては、硬い封止シートBSが存在しているので差圧Faによる搬送用シートBTの屈曲率が小さい。一方、搬送用シートBTのうち封止シートBSが搬送用シートBTに保持されていない領域P2においては、差圧Faによる搬送用シートBTの屈曲率が比較的大きい。すなわち差圧Faによって領域P2の方が容易に変形することによって、領域P1における搬送用シートBTの屈曲率がさらに低下する。
【0301】
また、封止シートBSのうち領域P2に近い側は封止シートBSの屈曲率が大きく、封止シートBSの中央部では封止シートBSの屈曲率が小さくなる。このように、封止シートBSおよび搬送用シートBTの各々において、差圧Faによる屈曲率が不均一となる。その結果、基板310に貼り付けられた封止シートBSについて、封止シートBSと基板310との密着性が低下する。
【0302】
一方で弾性体Gsを備える場合、
図52(c)に示すように、差圧Faによって弾性体Gsの全体が均一に凸状変形する。そのため、領域P1における搬送用シートBTの屈曲率が向上して領域P2における屈曲率との差が小さくなるので、搬送用シートBTおよび封止シートBSの屈曲率は全体的に均一となる。すなわち、封止シートBSは基板310のデバイス形成面の形状に応じて変形し易くなるので、封止シートBSと基板310との密着性をさらに向上できる。
【0303】
(10)各実施例において、粘着テープDTまたは封止部材BPを加温する構成をさらに備えてもよい。粘着テープDTなどを加温する構成の一例として、シート貼付け機構81は
図53(a)に示すように、上ハウジング29Bの内部に加温機構120を有している。
図53(a)は、実施例2の構成に加温機構120を備えた構成を本変形例の一例として示している。
【0304】
加温機構120は、シリンダ121および加温部材123を備えている。シリンダ121は加温部材123の上部に連結されており、シリンダ121の動作によって加温部材123はチャンバ29の内部で昇降できる。なお、加温部材123は粘着テープDTを加温可能であれば、昇降移動可能な構成でなくともよい。
【0305】
加温部材123の内部には粘着テープDTを加温するヒータ125が埋設されている。ヒータ125による加温の温度は粘着テープDTが柔らかくなる温度となるように調整される。当該加温の温度の一例として、50℃~70℃程度が挙げられる。加温部材123の底面の形状はウエハWの形状に応じて変更してよい。一例として、加温部材123は全体として円柱状となっている。
【0306】
なお、ステップS4を開始する前に予め、加温機構120を用いて上空間H2を加温させておくことが好ましい。すなわち、制御部33はヒータ125を作動させて加温装置123を所定の温度に加温させる。加温装置123が加温されることにより、熱伝導効果によって上空間H2が加温され、さらに粘着テープDTが加温される。
【0307】
粘着テープDTは加温されることによって柔らかくなるので、差圧Faによる粘着テープDTの変形性が向上する。すなわち、粘着テープDTでウエハWを覆わせる際に、ウエハWに対する粘着テープDTの追従性をより高めることができる。なお
図53(b)に示すように、粘着テープDTに近接または当接するように加温部材123を下降させ、粘着テープDTを加温部材123で直接加温してもよい。
【0308】
なお、加温機構120はチャンバ29における上空間H2の側に配設され、上空間H2を加温する構成に限られない。すなわち加温機構120は下空間H1を加温する構成であってもよい。一例として、ヒータ125を保持テーブル9の内部に配設し、ヒータ125が下空間H1を加温することによって粘着テープDTを加温する構成が挙げられる。また、加温機構120は上空間H2および下空間H1の両方を加温する構成であってもよい。
【0309】
(11)実施例5ないし実施例8に係るワークとして、表面側にLED311が搭載されており裏面側が平坦である基板310を用いて説明したが、ワークの裏面側は平坦な構成に限られない。すなわち
図54(a)に示すように、表面側にLED311が搭載されており裏面側に凸状部材330を備える基板331をワークとして用いてもよい。凸状部材330は、LEDを例とする電子部品の他、基板331の構成材料である場合などが挙げられる。すなわち裏面側に凹凸が存在する基板331として、基板331自体の裏面に凹凸が形成されている構成も含むものとする。
【0310】
裏面側に凸状部材330を備える基板331に対し、表面側に搭載されているLED311を封止シートSで封止する場合、デバイス封止装置301は保持テーブル309の代わりに
図54(b)に示されるような保持テーブル335を備える。
【0311】
保持テーブル335は外周部に環状の突起部337を備えており、中央部に凹部339を備えている。すなわち保持テーブル335は全体として中空となっている。凹部339は平面視において、基板331において凸状部材330が配置されている領域を包含する位置に構成されている。基板331の裏面のうち凸状部材330が配設されていない部分を突起部337が支持することによって、保持テーブル335は凸状部材330に接触することなく基板331を保持できる。
【0312】
図55は、下ハウジング29Aが保持テーブル335を備える構成において、保持テーブル335が基板331を支持している状態を示している。当該状態は、ステップS3においてチャンバ29を形成させる工程に相当する。保持テーブル335を備える構成において基板310上のLED311を封止シートBSで封止する各工程は、既に説明した実施例と同様であるので詳述を省略する。
【0313】
(13)実施例5ないし実施例8において、封止シートBSによる封止の対象となるデバイスとして、LED311を例として説明したが、これに限ることはない。デバイスの他の例としては、LED311を例とする光学素子の他に、半導体素子、電子部品などが挙げられる。
【0314】
(14)実施例5ないし実施例8において、封止シートBSによってLED311を封止した後、封止シートBSの封止材BSbを硬化させる工程を行ってもよい。封止材BSbを硬化させる工程は封止材BSbの材料によって適宜変更できるが、一例として熱処理による硬化、紫外線処理による硬化などが挙げられる。
【0315】
(15)実施例5ないし実施例8において、封止材BSbとしてOCAを用いているがこれに限られない。すなわち、封止材Sbは光学的に透明な材料の他、光学的に不透明な材料を用いてもよく、無色または有色の材料を用いてもよい。
【0316】
(16)実施例および変形例の各々において、第1貼付け過程または第1封止過程はチャンバ29の内部で行う構成に限ることはない。すなわちチャンバ29の外部において予めシート材をワークに接触させてシート材をワーク付着させる工程を行ってもよい。以下、デバイス封止装置301においてチャンバ29の外部で第1封止過程を行う構成を例として当該変形例を説明する。
【0317】
チャンバ29の外部で第1封止過程を行う変形例において、デバイス封止装置301はチャンバ29の外部に昇降テーブル338を備えている。昇降テーブル338は一例として矩形部301aに配置されており、矩形部1aの上側の右からアライナ7、昇降テーブル338、保持テーブル309、およびフレーム供給部12の順に配備されている。
【0318】
昇降テーブル338は、前後方向(y方向)に付設されているレール54に沿って、初期位置と封止位置との間を往復移動可能に構成されている。初期位置は矩形部1aの内部にあり、当該初期位置において基板310が昇降テーブル338に載置される。封止位置は突出部301bの内部にあり、封止位置へ昇降テーブル8が移動することによって、昇降テーブル338に載置されている基板310を封止部材BPに接触させることが可能となる。
【0319】
昇降テーブル338は基板310を保持するものであり、一例として基板310と同形状以上の大きさを有する金属製のチャックテーブルである。昇降テーブル338の好ましい構成として、内部に設けられている吸引装置により基板310を吸着保持するように構成されている。昇降テーブル338は
図56および
図57などに示すように、昇降テーブル338を支持する支持台351を貫通するロッド352の一端と連結されている。ロッド352の他端はモータなどを備えるアクチュエータ353に駆動連結されている。ロッド352およびアクチュエータ353により、昇降テーブル338は昇降移動が可能となっている。
【0320】
<変形例における動作>
ここで、変形例に係るデバイス封止装置301の動作を説明する。変形例に係るフローチャートの概要は
図37に示される実施例5に係るフローチャートと共通する。実施例5に係るデバイス封止装置301の動作と同一の工程については説明を簡略化し、異なる工程であるステップS1ないしステップS4について詳述する。
【0321】
ステップS1(ワークの供給)
封止指令が出されると、フレーム供給部12から下ハウジング29Aのフレーム保持部38へリングフレームfが搬送されるとともに、容器305から昇降テーブル338へ基板310が搬送される。フレーム保持部38がリングフレームfを保持すると、下ハウジング29Aは保持テーブル309とともに、レール40に沿って初期位置からデバイス封止機構81側の封止位置へと移動する。
【0322】
フレーム搬送装置17がリングフレームfを搬送する一方、基板搬送装置316は、保持アーム23を用いて基板310を吸着保持して搬出し、アライナ7に搬送する。アライナ7は、吸着パッドで基板310を保持して回転させながらノッチなどに基づいて位置合わせを行う。位置合わせが完了すると、基板搬送装置316はアライナ7から基板310を搬出させ、昇降テーブル338に基板310を載置させる。昇降テーブル8が基板10を吸着保持すると、昇降テーブル338はレール54に沿って初期位置からデバイス封止機構381側の封止位置へと移動する。昇降テーブル338および保持テーブル309の各々が封止位置へと移動した状態が、
図56に示されている。
【0323】
ステップS2(封止シートの供給)
基板搬送装置316などによるワークの供給が行われると、封止ユニット313において封止シートBSの供給を行う。すなわち、シート供給部371から所定量の封止部材BPがセパレータSを剥離されながら繰り出される。全体として長尺状である封止部材BPは、所定の搬送経路に沿って封止位置の上方へと案内される。このとき
図56に示すように、搬送用シートBTに保持されている封止シートBSは、昇降テーブル338に載置されている基板310の上方に位置するようにポジショニングが行われる。
【0324】
ステップS3(第1封止過程)
ワークおよび封止シートBSが供給されると、第1封止過程を開始する。すなわち、制御部33はアクチュエータ353を駆動させて昇降テーブル338を上昇させる。昇降テーブル338の上昇により、
図57に示すように、基板310に搭載されているLED311の上面が封止シートBSに接触する。当該接触により、封止シートBSが基板310に付着して両者が一体化する。
【0325】
当該接触により、粘着力を有する封止層BSbにLED311が付着し、LED311を介して基板310が封止シートBSによって保持される。封止シートBSを介して基板10と封止部材BPとが一体化したものを以下、封止材複合体BMとする。封止材複合体BMが形成された後、封止部材BPを所定量繰り出すことによって、封止材複合体BMは保持テーブル309の上方へと搬送される。封止材複合体BMが搬送されるとともに、昇降テーブル338は下降して初期状態へと復帰する。封止材複合体BMが形成されて保持テーブル309へと搬送されることにより、ステップS3に係る第1封止過程は完了する。
【0326】
ステップS4(チャンバの形成)
封止材複合体Mが保持テーブル309の上方へと搬送されると、貼付けローラ85が下降する。そして搬送用シートBTの上を転動しながらリングフレームfと下ハウジング29Aの頂部とにわたって搬送用シートBTを貼り付ける。
【0327】
リングフレームfに搬送用シートBTが貼り付けられると、貼付けローラ85を初期位置へと復帰させるとともに、上ハウジング29Bを下降させる。上ハウジング29Bの下降に伴って、下ハウジング29Aの頂部に貼り付けられている部分の搬送用シートTは上ハウジング29Bと下ハウジング29Aによって挟持され、チャンバ29が構成される。以降、実施例5ないし8の構成と同様にステップS5~S8の工程を行い、封止体BMFを作成する。
【0328】
第1封止過程において基板310に付着していた封止シートBSは、第2封止過程において基板310との密着性がより高い状態となる。第2封止過程において大気圧より高い圧力が基板310と封止シートBSとの間で作用することにより、基板310と封止シートBSとの密着性が高くなり、基板310に搭載されているLED311が封止シートBSによって強固に封止される。
【0329】
(17)実施例1ないし実施例4において、長尺状の粘着テープDTをウエハWの裏面とリングフレームfとにわたって貼り付けた後、ワークの形状(ここでは、ウエハWまたはリングフレームfの形状)に応じた所定の形状に切断する構成を例にとって説明したがこれに限られない。すなわち、予めワークの形状に応じた所定の形状を有する粘着テープを、当該ワークに貼り付けてもよい。
【0330】
当該変形例に係る粘着テープDTの構成は、
図31(a)に示される封止部材BPの構成と同様である。すなわち、長尺状の搬送用シートBTの一方の面に、所定形状の粘着テープDTが所定のピッチで貼付け保持される。粘着テープDTはウエハWにおける環状凸部Kaの形成面(本実施例では裏面)の形状に応じた所定の形状に予め切断されている。当該変形例では、ステップS3において上ハウジング29Bおよび下ハウジング29Aが搬送用シートBTを挟み込むことによってチャンバ29が形成される。
【0331】
(18)実施例1または実施例5において、シート穿孔部76は昇降移動および回転移動によって円弧状の貫通孔PHを形成させる構成であるが、貫通孔PHを形成させる限りにおいてシート穿孔部76の動作は適宜変更してよい。一例として、シート穿孔部76は昇降移動のみによって貫通孔PHを形成させてよい。具体的に、シート穿孔部76が下降することによってカッタ129を粘着テープDTに突き刺して貫通孔PHを形成させた後、シート穿孔部76を上昇させて初期位置へ復帰させる。
【0332】
(19)実施例1または実施例5において、シート穿孔部76はカッタ刃を有するカッタ129を用いて貫通孔PHを形成させる構成に限ることはなく、カッタ129の代わりに針状部材または円錐形部材を備えてもよい。この場合、針状部材または円錐形部材の先端部を粘着テープDTに突き刺すことによって貫通孔PHを形成させる。
【符号の説明】
【0333】
1 … 粘着シート貼付け装置
3 … ウエハ搬送機構
5 … 容器
6 … フレーム回収部
7 … アライナ
9 … 保持テーブル
12 … フレーム供給部
13 … 貼付けユニット
16 … ウエハ搬送装置
17 … フレーム搬送装置
23 … 保持アーム
31 … 真空装置
32 … 加圧装置
33 … 制御部
38 … フレーム保持部
71 … シート供給部
72 … セパレータ回収部
73 … シート貼付け部
74 … シート回収部
76 … シート穿孔部
81 … シート貼付け機構
82 … シート切断機構
85 … 貼付けローラ
86 … ニップローラ
95 … カッタ
97 … 昇降駆動台
99 … 回転軸部
101 … 流路
102 … 流路
103 … 電磁バルブ
104 … 電磁バルブ
120 … 加温機構
127 … 支持アーム
128 … カッタホルダ
129 … カッタ
131 … 流路
132 … 電磁バルブ
133 … 流路
134 … 電磁バルブ
135 … 流路
137 … 電磁バルブ
141 … 押圧部材
301 … デバイス封止装置
309 … 保持テーブル
310 … 基板
311 … LED
f … リングフレーム
DT … 粘着テープ
MF … マウントフレーム
BT … 搬送用シート
BS … 封止シート
BP … 封止部材
BMF … 封止体
PH … 貫通孔
Ka … 環状凸部
Kf … 内側角部
He … 扁平凹部
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