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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133008
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20220906BHJP
   E02F 3/36 20060101ALI20220906BHJP
   E02F 3/38 20060101ALI20220906BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
E02F9/00 A
E02F3/36 A
E02F3/38 A
E04G23/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031796
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加庭 啓充
(72)【発明者】
【氏名】朝日 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓人
(72)【発明者】
【氏名】天童 作
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輝
【テーマコード(参考)】
2D012
2D015
2E176
【Fターム(参考)】
2D012DA02
2D012DA03
2D012GA03
2D015AA01
2E176DD03
2E176DD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アームとアームシリンダとに対して連結用のピンを抜き差しするときの作業性を高める。
【解決手段】油圧ショベル1の作業装置7は、ブームシリンダ14により上部旋回体3に対して回動するブーム8と、アームシリンダ16によりブーム8に対して回動するアーム11と、アーム11の先端に取付けられた作業具とを備える。アームシリンダ16は、一端がブーム8に回動可能に連結されると共に、他端がアーム11のピン孔11Cにピンを用いて回動可能に連結され、ブーム8とアームシリンダ16との間には、アームシリンダ16をブーム8に対して起伏させることにより、アームシリンダ16のロッド16B側のピン孔16Cをアーム11のピン孔11Cに対して位置合わせするジャッキ18が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記作業装置は、
基端側が前記車体に取付けられブームシリンダにより前記車体に対して回動するブームと、
基端側が前記ブームの先端に取付けられアームシリンダにより前記ブームに対して回動するアームと、
前記アームの先端に取付けられた作業具とを備え、
前記アームシリンダは、一端が前記ブームに回動可能に連結されると共に他端が前記アームのシリンダ連結部にピンを用いて回動可能に連結された建設機械において、
前記ブームと前記アームシリンダとの間には、前記アームシリンダを前記ブームに対して起伏させることにより前記アームシリンダの他端を前記アームのシリンダ連結部に対して位置合わせするジャッキが設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記アームシリンダと対面する前記ブームの背面にはブーム側ジャッキ固定部が設けられ、
前記アームシリンダの外周面のうち前記ブームの背面と対面する部位にはシリンダ側ジャッキ固定部が設けられ、
前記ジャッキは、伸縮方向の一端が前記ブーム側ジャッキ固定部に固定されると共に伸縮方向の他端が前記シリンダ側ジャッキ固定部に固定されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ブーム側ジャッキ固定部と前記ジャッキの伸縮方向の一端との間にはヒンジ機構が設けられ、
前記シリンダ側ジャッキ固定部と前記ジャッキの伸縮方向の他端との間には、両者間を着脱可能に固定する締結具が設けられ、
前記ジャッキは、前記シリンダ側ジャッキ固定部から前記ジャッキの伸縮方向の他端が取外された状態で、前記ヒンジ機構を中心として前記ブーム側ジャッキ固定部から前記アームシリンダ側に立上がる作業位置と、前記ブームの背面側に折畳まれる格納位置との間で移動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ブームには、前記ジャッキを前記格納位置に固定するジャッキ固定具が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記ブームは、基端側が前記車体に回動可能に取付けられたメインブームと、
基端側が前記メインブームの先端に回動可能に取付けられると共に先端に前記アームが回動可能に取付けられたフロントブームとを含んで構成され、
前記アームシリンダは、前記フロントブームと前記アームとの間に設けられ、
前記ジャッキは、前記フロントブームと前記アームシリンダとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自走可能な車体と、油圧シリンダによって作動する作業装置とを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を代表する油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより車体が構成され、上部旋回体の前部側には作業装置が設けられている。そして、高層建築物等の地上高さが大きな構造物を解体する場合には、上部旋回体の前部側に解体作業用の作業装置が取付けられる。
【0003】
解体作業用の作業装置は、通常、基端が上部旋回体の旋回フレームに回動可能に連結されたメインブームと、メインブームの先端に取付けられたフロントブームとを含んで構成されたブーム(マルチブーム)を有している。フロントブームの先端にはアームが回動可能に連結され、アームの先端には圧砕機等の作業具が取付けられる。旋回フレームとメインブームとの間にはブームシリンダが設けられ、メインブームとフロントブームとの間にはジブシリンダが設けられている。また、フロントブームとアームとの間にはアームシリンダが設けられ、アームと作業具との間には作業具シリンダが設けられている。
【0004】
ところで、解体作業用の油圧ショベルを作業現場に搬送する場合には、通常、油圧ショベルを車体と作業装置とに分割し、これら車体と作業装置とを別々の車両に積載して作業現場に個別に搬送する。解体作業用の作業装置は長大であるため、通常、アームをブームから取外すと共にアームシリンダの先端をアームから取外した状態で、アームシリンダの基端が取付けられたブームとアームとを個別に作業現場に搬送する。そして、作業現場において、作業装置のブームを車体に取付け、ブームの先端にアームを取付けた後、アームシリンダの先端をアームに取付ける。
【0005】
このように、アームシリンダの基端が取付けられたブームとアームとを作業現場で組立てる場合には、例えばブームにアームシリンダを仮止めした状態で、ブームの先端にピンを用いてアームを連結する。そして、ブームシリンダによってブームを持上げてアームとの角度を調整すると共に、アームシリンダを伸長させる。これにより、ブームに仮止めされたアームシリンダ(ピストンロッド)先端のピン孔と、アームに設けられたピン孔とを位置合わせし、これら各ピン孔にピンを挿通することによりアームシリンダの先端をアームに回動可能に連結することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-263995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1による油圧ショベルでは、作業現場でアームシリンダの先端をアームにピンを用いて連結する場合には、オペレータが、ブームシリンダによるブームの起伏動作とアームシリンダの伸長動作とを、誘導者の指示の下で並行して行う必要がある。このため、オペレータの負担が大きくなるという問題がある。さらに、ブームを持上げることによりアーム側のピン孔の位置が高くなるため、重量物であるピンをアーム側のピン孔とアームシリンダ先端のピン孔とに挿通する作業が高所作業となり、組立て作業の作業性が低下してしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、アームとアームシリンダとに対して連結用のピンを抜き差しするときの作業性を高めることができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記作業装置は、基端側が前記車体に取付けられブームシリンダにより前記車体に対して回動するブームと、基端側が前記ブームの先端に取付けられアームシリンダにより前記ブームに対して回動するアームと、前記アームの先端に取付けられた作業具とを備え、前記アームシリンダは、一端が前記ブームに回動可能に連結されると共に他端が前記アームのシリンダ連結部にピンを用いて回動可能に連結された建設機械において、前記ブームと前記アームシリンダとの間には、前記アームシリンダを前記ブームに対して起伏させることにより前記アームシリンダの他端を前記アームのシリンダ連結部に対して位置合わせするジャッキが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジャッキによってアームシリンダをブームに対して起伏させることにより、アームのシリンダ連結部に対するアームシリンダの他端の位置を微調整して正確に位置合わせすることができる。この結果、作業現場等においてアームとアームシリンダとを連結するときの作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態が適用された解体作業用の油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】アーム支持台に支持されたアームに対し、アームシリンダの先端を連結する作業を示す左側面図である。
図3】アームシリンダの先端をアームに連結した状態を示す左側面図である。
図4図2中のジャッキ等を拡大した要部拡大図である。
図5】ジャッキ、アームシリンダ、フロントブーム等を図4中の矢示V-V方向から見た断面図である。
図6図3中のVI部を拡大して示す左側面図である。
図7図6中のジャッキ等を拡大した要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、解体作業用の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0013】
解体作業用の油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられたマルチブーム式の作業装置7とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、例えば高層建築物等の地上高さが大きな構造物を解体する解体作業に好適に用いられる。
【0014】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム4と、旋回フレーム4の後端側に設けられたカウンタウエイト4Aと、旋回フレーム4の前部左側に配置されたキャブ5と、カウンタウエイト4Aの前側に配置された建屋カバー6とを含んで構成されている。キャブ5は、オペレータが油圧ショベル1を操縦するための運転室を画成し、キャブ5内には下部走行体2の走行動作を制御する走行レバー・ペダル装置、上部旋回体3の旋回動作、作業装置7の動作を制御する操作レバー装置(いずれも図示せず)が設けられている。建屋カバー6の内部には、エンジン、油圧ポンプ、熱交換器等の搭載機器(図示せず)が収容されている。
【0015】
旋回フレーム4の前端側には、底板から上方に立上がる支持ブラケット(図示せず)が一体に設けられている。この支持ブラケットは、後述するロアブーム9Aの基端側を回動可能に支持すると共に、ブームシリンダ14の基端側を回動可能に支持している。
【0016】
マルチブーム式の作業装置7は、上部旋回体3を構成する旋回フレーム4の前端部に取付けられている。作業装置7は、メインブーム9およびフロントブーム10からなるブーム8と、アーム11と、作業具としての圧砕機12とを含んで構成されている。メインブーム9はロアブーム9Aとアッパブーム9Bとからなり、ロアブーム9Aの基端側は、旋回フレーム4の前端側(前記支持ブラケット)に回動可能に取付けられている。アッパブーム9Bの先端には、フロントブーム10の基端側がピン10Aを介して回動可能に連結されている。アーム11の基端側は、フロントブーム10の先端にピン11Aを用いて回動可能に連結されている。圧砕機12は、アーム11の先端にピン12Aを用いて回動可能に連結されている。
【0017】
ここで、フロントブーム10は、一定の間隔をもって左右方向で対面する左側面板10Bおよび右側面板10Cと、左右の側面板10B,10Cの上端間を連結する背面板10Dと、背面板10Dと上下方向で対面し左右の側面板10B,10Cの下端間を連結する下面板10Eとによって囲まれた断面四角形のボックス体として形成されている。フロントブーム10の基端側には、背面板10Dから上方に突出する上シリンダブラケット10Fが設けられ、上シリンダブラケット10Fには、アームシリンダ16のボトム側が回動可能に連結されている。フロントブーム10の長さ方向の中間部には、下面板10Eから下方に突出する下シリンダブラケット10Gが設けられ、下シリンダブラケット10Gには、ジブシリンダ15のロッド側が回動可能に連結されている。
【0018】
また、フロントブーム10の長さ方向の中間部には、ブーム側ジャッキ固定板10Hが設けられている。ブーム側ジャッキ固定板10Hは平板状の鋼板からなり、フロントブーム10の背面板10Dに溶接等の手段を用いて固定されている(図4図5参照)。ブーム側ジャッキ固定板10Hには、後述するジャッキ18のブーム側ベース部材19が固定されている。さらに、フロントブーム10の背面板10Dには、ブーム側ジャッキ固定板10Hに隣接して後述のジャッキ固定具28が設けられている。
【0019】
アーム11は、フロントブーム10と同様な断面四角形のボックス体として形成されている。アーム11の基端にはシリンダブラケット11Bが設けられ、シリンダブラケット11Bには、シリンダ連結部としてのピン孔11Cが形成されている(図2参照)。
【0020】
解体作業用の圧砕機12は、油圧シリンダによって開閉する左右の爪部材12Bを有し、左右の爪部材12Bによって建物等を破砕すると共に、破砕した廃材を持上げて輸送車両等(図示せず)に搬送する。また、圧砕機12の基端側にはブラケット12Cが設けられ、ブラケット12Cは、アーム11の先端にピン12Aを用いて連結されている。また、ブラケット12Cとアーム11との間にはバケットリンク13が設けられ、バケットリンク13の中間部には、後述する作業具シリンダ17のロッド側が連結されている。
【0021】
旋回フレーム4とロアブーム9Aとの間には、左右一対(2本)のブームシリンダ14が設けられている(左側のみ図示)。ブームシリンダ14のボトム側は、旋回フレーム4の前記支持ブラケットに回動可能に取付けられている。ブームシリンダ14のロッド側は、ロアブーム9Aの先端側にピン14Aを用いて回動可能に連結されている。アッパブーム9Bとフロントブーム10との間には、ジブシリンダ15が設けられている。ジブシリンダ15のボトム側は、アッパブーム9Bにピン15Aを用いて回動可能に連結され、ジブシリンダ15のロッド側は、フロントブーム10の下シリンダブラケット10Gにピン15Bを用いて回動可能に連結されている。
【0022】
アームシリンダ16は、フロントブーム10とアーム11との間に設けられている。アームシリンダ16は、チューブ16Aと、チューブ16A内に摺動可能に設けられたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端側がチューブ16Aから突出したロッド16Bとを有し、ロッド16Bの先端にはピン孔16Cが形成されている(図2参照)。アームシリンダ16(チューブ16A)の一端となるボトム側は、フロントブーム10の上シリンダブラケット10Fにピン16Dを用いて回動可能に連結されている。アームシリンダ16の他端となるロッド16Bの先端は、アーム11のシリンダブラケット11Bにピン16Eを用いて回動可能に連結されている。
【0023】
アームシリンダ16(チューブ16A)の外周面のうち、フロントブーム10の背面板10Dと対面する部位には、シリンダ側ジャッキ固定板16Fが設けられている。シリンダ側ジャッキ固定板16Fは平板状の鋼板からなり、チューブ16Aの外周面に溶接等の手段を用いて固定されている(図4図5参照)。シリンダ側ジャッキ固定板16Fの四隅には、それぞれ板厚方向に貫通する4つのボルト挿通孔16Gが形成されている。
【0024】
アーム11とバケットリンク13の間には、作業具シリンダ17が設けられている。作業具シリンダ17のボトム側は、アーム11にピン17Aを用いて回動可能に連結され、作業具シリンダ17のロッド側は、バケットリンク13の中間部にピン17Bを用いて回動可能に連結されている。
【0025】
メインブーム9は、ブームシリンダ14を伸縮させることにより旋回フレーム4に対して上下方向に回動し、フロントブーム10は、ジブシリンダ15を伸縮させることにより、ピン10Aを支点としてメインブーム9に対して上下方向に回動する。アーム11は、アームシリンダ16を伸縮させることにより、ピン11Aを支点としてフロントブーム10に対して上下方向に回動し、圧砕機12は、作業具シリンダ17を伸縮させることにより、ピン12Aを支点としてアーム11に対して上下方向に回動する。
【0026】
次に、フロントブーム10とアームシリンダ16との間に設けられたジャッキ18について説明する。
【0027】
ジャッキ18は、フロントブーム10の背面板10Dとアームシリンダ16との間に設けられている。ジャッキ18は、アームシリンダ16(チューブ16A)のボトム側がフロントブーム10(上シリンダブラケット10F)にピン16Dを介して連結された状態で、アームシリンダ16のロッド16B側をピン16Dを支点としてフロントブーム10に対して起伏させる。これにより、ジャッキ18は、アームシリンダ16のロッド16Bの先端に設けられたピン孔16Cを、アーム11のシリンダブラケット11Bに設けられたピン孔11Cに対して位置合わせする(図2参照)。図4および図5に示すように、ジャッキ18は、ブーム側ベース部材19、シリンダ側ベース部材21、ブーム側アーム23A,23B、シリンダ側アーム24A,24B、第1連結部材25、第2連結部材26、ねじ軸27等を備えた手動操作式のジャッキとして構成されている。
【0028】
ブーム側ベース部材19は、ジャッキ18の伸縮方向の一端を構成している。ブーム側ベース部材19は、フロントブーム10の背面板10Dに固定されたブーム側ジャッキ固定板10Hに対応する位置に設けられている。ブーム側ベース部材19は、ブーム側ジャッキ固定板10Hと等しい四角形状を有するベース板19Aと、ベース板19Aの上面に一定の間隔をもって突設された一対(2枚)のアーム支持板19Bとを含んで構成されている。ベース板19Aは、フロントブーム10のブーム側ジャッキ固定板10Hにヒンジ機構20を介して連結されている。
【0029】
ヒンジ機構20は、フロントブーム10のブーム側ジャッキ固定板10Hとジャッキ18のブーム側ベース部材19との間を連結している。ヒンジ機構20は、回動軸を中心として相対回動する2つの回動片20A,20Bを有し、一方の回動片20Aは、ブーム側ジャッキ固定板10Hの端面に固定され、他方の回動片20Bは、ブーム側ベース部材19の端面に固定されている。従って、ブーム側ベース部材19は、ブーム側ジャッキ固定板10Hに対しヒンジ機構20を中心として回動変位する。
【0030】
図4に示すように、ブーム側ベース部材19が、ブーム側ジャッキ固定板10Hの上面に重ね合わせて配置されたときには、ジャッキ18は、ブーム側ジャッキ固定板10Hからアームシリンダ16側に立上がる作業位置となる。一方、図7中の実線で示すように、ブーム側ベース部材19が、ヒンジ機構20を支点としてブーム側ジャッキ固定板10Hの上面から離脱したときには、ジャッキ18は、フロントブーム10の背面板10D側に折畳まれた格納位置となる。
【0031】
シリンダ側ベース部材21は、ジャッキ18の伸縮方向の他端を構成している。シリンダ側ベース部材21は、アームシリンダ16のチューブ16Aに固定されたシリンダ側ジャッキ固定板16Fに、締結具としての複数のボルト22を用いて着脱可能に固定される。シリンダ側ベース部材21は、シリンダ側ジャッキ固定板16Fと等しい四角形状を有するベース板21Aと、ベース板21Aの下面に一定の間隔をもって突設された一対(2枚)のアーム支持板21Bとを含んで構成されている。ベース板21Aの四隅には、シリンダ側ジャッキ固定板16Fのボルト挿通孔16Gに対応する4つのボルト挿通孔21Cが形成されている。ベース板21Aの下面には、4つのボルト挿通孔に対応する4つのナット21Dが溶接されている。従って、シリンダ側ジャッキ固定板16Fのボルト挿通孔16Gに挿通された4本のボルト22を、ベース板21Aのナット21Dに螺着することにより、シリンダ側ベース部材21は、シリンダ側ジャッキ固定板16Fの下面に重ね合わせて固定される。
【0032】
ブーム側アーム23Aは、ブーム側ベース部材19と第1連結部材25との間に設けられ、ブーム側アーム23Bは、ブーム側ベース部材19と第2連結部材26との間に設けられている。ブーム側アーム23Aは、一端がブーム側ベース部材19のアーム支持板19Bにピン23Cを介して回動可能に連結され、他端が第1連結部材25にピン23Dを介して回動可能に連結されている。ブーム側アーム23Bは、一端がブーム側ベース部材19のアーム支持板19Bにピン23Eを用いて回動可能に連結され、他端が第2連結部材26にピン23Fを用いて回動可能に連結されている。
【0033】
シリンダ側アーム24Aは、シリンダ側ベース部材21と第1連結部材25との間に設けられ、シリンダ側アーム24Bは、シリンダ側ベース部材21と第2連結部材26との間に設けられている。シリンダ側アーム24Aは、一端がシリンダ側ベース部材21のアーム支持板21Bにピン24Cを介して回動可能に連結され、他端が第1連結部材25にピン24Dを介して回動可能に連結されている。シリンダ側アーム24Bは、一端がシリンダ側ベース部材21のアーム支持板21Bにピン24Eを介して回動可能に連結され、他端が第2連結部材26にピン24Fを介して回動可能に連結されている。
【0034】
第1連結部材25は、ブーム側ベース部材19とシリンダ側ベース部材21との間に設けられ、ブーム側アーム23Aの他端とシリンダ側アーム24Aの他端との間を連結している。第1連結部材25は、ねじ軸27の一端を軸方向への移動を規制した状態で回転可能に支持している。
【0035】
第2連結部材26は、第1連結部材25と左右方向に並んだ状態でブーム側ベース部材19とシリンダ側ベース部材21との間に配置され、ブーム側アーム23Bの他端とシリンダ側アーム24Bの他端との間を連結している。第2連結部材26には、ねじ軸27が螺合するねじ孔(雌ねじ)26Aが左右方向に貫通して形成されている。
【0036】
ねじ軸27は、第1連結部材25と第2連結部材26とに挿通して設けられている。ねじ軸27の長さ方向の一端側は、第1連結部材25に軸方向の移動が規制された状態で回転可能に支持されている。一方、ねじ軸27の他端側は、第2連結部材26のねじ孔26Aに螺合している。さらに、ねじ軸27の一端は、第1連結部材25から軸方向に突出した操作部27Aとなっている。操作部27Aは、例えば四角形、六角形等の多角柱状をなすことにより、インパクトレンチ等のねじ締め用工具(図示せず)を接続できるようになっている。
【0037】
従って、操作部27Aにねじ締め用工具を接続してねじ軸27を回転させることにより、第1連結部材25と第2連結部材26との間隔を変化させてジャッキ18を伸縮させることができる。これにより、ジャッキ18のシリンダ側ベース部材21を、ブーム側ベース部材19に対して接近、離間する方向に移動させ、アームシリンダ16を、フロントブーム10との連結部であるピン16Dを支点として起伏させることができる構成となっている。
【0038】
ジャッキ固定具28は、ブーム側ジャッキ固定板10Hに隣接してフロントブーム10の背面板10Dに設けられている。図4および図7に示すように、ジャッキ固定具28は、鋼板等をL字型に折曲げることにより形成され、背面板10Dに溶接等の手段を用いて固定されている。ジャッキ固定具28は、背面板10Dから上方に立上がる取付板28Aを有し、取付板28Aは、ジャッキ18が縮小状態で格納位置に移動したときに、シリンダ側ベース部材21のベース板21Aに当接する(図7参照)。取付板28Aには、板厚方向に貫通する2つのボルト挿通孔28Bが形成され、このボルト挿通孔28Bは、ジャッキ18のシリンダ側ベース部材21に設けられたボルト挿通孔21Cに対応している。従って、ボルト挿通孔28Bに挿通したボルト29を、シリンダ側ベース部材21のナット21Dに螺着することにより、ジャッキ18を格納位置に固定することができる。
【0039】
本実施形態による解体作業用の油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、油圧ショベル1は、下部走行体2によって解体すべき構造物の近傍まで自走する。そして、作業装置7の圧砕機12によって建物等を破砕し、輸送車両の荷台等(図示せず)に廃棄する。
【0040】
この解体作業時には、ジャッキ18は、図7に実線で示す格納位置にあり、ジャッキ固定具28によって格納位置に固定されている。これにより、解体作業時にジャッキ18が作業装置7の動作によってがたつくのを抑え、ジャッキ18を保護することができる。
【0041】
次に、油圧ショベル1を解体作業の現場に搬送する場合には、上部旋回体3の旋回フレーム4からロアブーム9Aおよびブームシリンダ14を取外す。このようにして、油圧ショベル1を、車体(下部走行体2および上部旋回体3)と作業装置7とに分割し、これら車体と作業装置7とを、それぞれ搬送車両に積載して個別に作業現場に搬送する。さらに、作業装置7を構成するアーム11の長さが大きい場合には、フロントブーム10からアーム11を取外すと共に、アームシリンダ16のロッド16B側をアーム11から取外す。このとき、アームシリンダ16のチューブ16A側は、ピン16Dを介してフロントブーム10に連結されている
【0042】
アーム11を取外す場合には、図3に示すように、アーム11の先端から圧砕機12を取外した状態で、ジブシリンダ15を縮小させると共にアームシリンダ16を伸長させ、作業具シリンダ17が下側となるようにアーム支持台30上にアーム11を載置する。次に、ジャッキ18を、図7中の実線で示す格納位置から二点鎖線で示す作業位置へと移動させる。即ち、ジャッキ18をジャッキ固定具28に固定しているボルト29を取外し、ブーム側ベース部材19をヒンジ機構20を中心として、ブーム側ジャッキ固定板10Hに当接するまで回動させる。この状態で、ジャッキ18のねじ軸27を回転させてジャッキ18を伸長させ、シリンダ側ベース部材21をアームシリンダ16のシリンダ側ジャッキ固定板16Fに当接させる。そして、シリンダ側ジャッキ固定板16Fのボルト挿通孔16Gにボルト22を挿通し、シリンダ側ベース部材21のナット21Dに螺着することにより、シリンダ側ベース部材21をシリンダ側ジャッキ固定板16Fの下面に固定する。
【0043】
このようにして、ジャッキ18を図4および図5に示す作業位置に移動させ、アームシリンダ16をジャッキ18によって下側から支持する。その後、ねじ軸27を適宜に回転させてジャッキ18を細かく伸縮させることにより、アームシリンダ16のロッド16B先端のピン孔16Cと、アーム11のシリンダブラケット11Bのピン孔11Cとを正確に位置合わせすることができる。この結果、アームシリンダ16とアーム11との間を連結するピン16Eを容易に抜取ることができる。
【0044】
アームシリンダ16とアーム11との間を連結するピン16Eを抜取った後には、フロントブーム10とアーム11との間を連結するピン11Aを抜取る。これにより、作業装置7からアーム11が取外され、アーム11は、アーム支持台30に載置された状態で搬送車両に積載され、作業装置7とは別個に作業現場に搬送される。
【0045】
このようにして、油圧ショベル1は、下部走行体2と上部旋回体3からなる車体と、アーム11と、アーム11が取外された作業装置7とに分割された状態で作業現場に搬送される。そして、個別に搬送された車体と、作業装置7と、アーム11とは、作業現場において油圧ショベル1として組立てられる。
【0046】
油圧ショベル1を組立てるときには、まず、アーム11が取外された作業装置7をクレーン等(図示せず)を用いて持上げ、ロアブーム9Aの基端とブームシリンダ14のボトム側とを、旋回フレーム4の支持ブラケットに取付ける。次に、アーム支持台30に支持された状態で地上に置かれたアーム11の近傍まで下部走行体2を自走させた後、ジブシリンダ15の伸縮動作等によってフロントブーム10の先端に形成されたピン孔とアーム11に形成されたピン孔とを位置合わせし、両者間をピン11Aを介して連結する。
【0047】
次に、図2に示すように、ジャッキ18によってアームシリンダ16を下側から支持した状態で、アームシリンダ16を伸縮させつつ、ジャッキ18のねじ軸27を適宜に回転させてジャッキ18を細かく伸縮させる。これにより、アームシリンダ16のロッド16B先端のピン孔16Cと、アーム11のシリンダブラケット11Bのピン孔11Cとの位置を微調整して正確に位置合わせすることができる。この結果、アームシリンダ16側のピン孔16Cとアーム11側のピン孔11Cとにピン16Eを円滑に差込むことができ、アームシリンダ16のロッド16Bとアーム11とを、ピン16Eを介して迅速かつ容易に連結することができる。
【0048】
このように、本実施形態では、アームシリンダ16のロッド16Bとアーム11とにピン16Eを抜き差しする場合に、アームシリンダ16側のピン孔16Cとアーム11側のピン孔11Cとを位置合わせする作業を、ジャッキ18を用いたアームシリンダ16の起伏動作と、アームシリンダ16の伸縮動作とによって行うことができる。従って、油圧ショベル1のピン16Eを抜き差しするときに、オペレータが負担する作業はアームシリンダ16の伸縮操作のみとなる。このため、例えば従来技術のように、アームシリンダの先端をアームにピンを用いて連結する場合に、ブームシリンダによるブームの起伏動作と、アームシリンダの伸長動作とを並行して行う必要がなく、オペレータの負担を軽減することができる。
【0049】
さらに、アーム支持台30に支持された状態で地上に置かれたアーム11のピン孔11Cと、アームシリンダ16側のピン孔16Cとに対し、重量物であるピン16Eを地上作業によって容易に抜き差しすることができる。従って、従来技術のようにブームを起伏させて持上げることにより、アーム側のピン孔の位置が高くなる場合に比較して、ピン16Eを抜き差しするときの作業性を高めることができる。
【0050】
かくして、本実施形態による油圧ショベル1は、自走可能な車体と、上部旋回体3に設けられた作業装置7とからなり、作業装置7は、基端側が上部旋回体3に取付けられブームシリンダ14により上部旋回体3に対して回動するブーム8と、基端側がブーム8の先端に取付けられアームシリンダ16によりブーム8に対して回動するアーム11と、アーム11の先端に取付けられた作業具とを備え、アームシリンダ16は、一端がブーム8に回動可能に連結されると共に他端がアーム11のシリンダ連結部(ピン孔11C)にピン16Eを用いて回動可能に連結され、ブーム8とアームシリンダ16との間には、アームシリンダ16をブーム8に対して起伏させることによりアームシリンダ16の他端(ピン孔16C)をアーム11のシリンダ連結部(ピン孔11C)に対して位置合わせするジャッキ18が設けられている。
【0051】
この構成によれば、ジャッキ18によってアームシリンダ16をブーム8に対して起伏させることにより、アーム11のピン孔11Cに対するアームシリンダ16のピン孔16Cの位置を微調整して正確に位置合わせすることができる。この結果、ブーム8とアームシリンダ16との間を連結するピン16Eを抜き差しするときの作業性を高めることができる。
【0052】
実施形態では、アームシリンダ16と対面するブーム8の背面にはブーム側ジャッキ固定板10Hが設けられ、アームシリンダ16の外周面のうちブーム8の背面と対面する部位にはシリンダ側ジャッキ固定板16Fが設けられ、ジャッキ18は、伸縮方向の一端(ブーム側ベース部材19)がブーム側ジャッキ固定板10Hに固定されると共に伸縮方向の他端(シリンダ側ベース部材21)がシリンダ側ジャッキ固定板16Fに固定される。この構成によれば、アームシリンダ16とブーム8の背面とに対し、ジャッキ18の伸縮動作を確実に伝えることができ、ジャッキ18の伸縮に応じてアームシリンダ16を細かく起伏させることができる。
【0053】
実施形態では、ブーム側ジャッキ固定板10Hとジャッキ18の伸縮方向の一端(ブーム側ベース部材19)との間にはヒンジ機構20が設けられ、シリンダ側ジャッキ固定板16Fとジャッキ18の伸縮方向の他端(シリンダ側ベース部材21)との間には、両者間を着脱可能に固定する締結具(ボルト22)が設けられ、ジャッキ18は、シリンダ側ジャッキ固定板16Fからジャッキ18の伸縮方向の他端(シリンダ側ベース部材21)が取外された状態で、ヒンジ機構20を中心としてブーム側ジャッキ固定板10Hからアームシリンダ16側に立上がる作業位置と、ブーム8の背面側に折畳まれる格納位置との間で移動可能に構成されている。この構成によれば、ジャッキ18を格納位置に移動させることにより、作業装置7を用いた作業時にアームシリンダ16がジャッキ18に干渉するのを防止することができる。
【0054】
実施形態では、ブーム8には、ジャッキ18を格納位置に固定するジャッキ固定具28が設けられている。この構成によれば、作業装置7の作動時にジャッキ18がブーム8に対してがたつくのを抑え、ジャッキ18を保護することができる。
【0055】
実施形態では、ブーム8は、基端側が上部旋回体3に回動可能に取付けられたメインブーム9と、基端側がメインブームの先端に回動可能に取付けられると共に先端にアーム11が回動可能に取付けられたフロントブーム10とを含んで構成され、アームシリンダ16は、フロントブーム10とアーム11との間に設けられ、ジャッキ18は、フロントブーム10とアームシリンダ16との間に設けられている。この構成によれば、ジャッキ18によってアームシリンダ16をフロントブーム10に対して起伏させることにより、アーム11のピン孔11Cに対するアームシリンダ16のピン孔16Cの位置を微調整し、正確な位置合わせを行うことができる。
【0056】
なお、実施形態では、メインブーム9とフロントブーム10とを備えたマルチブーム式の作業装置7を備えた油圧ショベル1において、フロントブーム10とアームシリンダ16との間にジャッキ18を設ける構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば単一のブームを備えた作業装置にも適用することができる。
【0057】
また、実施形態では、ねじ軸27を備えた手動操作式のジャッキ18を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電動式、油圧式のジャッキを用いる構成としてもよい。
【0058】
さらに、実施形態では、アーム11の先端に取付けられた作業具として解体作業用の圧砕機12を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、バケット、グラップル、リフティングマグネット等の他の作業具を備えた油圧ショベルにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
7 作業装置
8 ブーム
9 メインブーム
10 フロントブーム
10H ブーム側ジャッキ固定板(ブーム側ジャッキ固定部)
11 アーム
11C ピン孔(シリンダ連結部)
12 圧砕機(作業装置)
14 ブームシリンダ
16 アームシリンダ
16E ピン
16F シリンダ側ジャッキ固定板(シリンダ側ジャッキ固定部)
17 作業具シリンダ
18 ジャッキ
19 ブーム側ベース部材(伸縮方向の一端)
20 ヒンジ機構
21 シリンダ側ベース部材(伸縮方向の他端)
22 ボルト(締結具)
28 ジャッキ固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7