(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133021
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】会議支援システム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/02 20060101AFI20220906BHJP
H04R 1/34 20060101ALI20220906BHJP
H04R 1/22 20060101ALI20220906BHJP
G10K 11/28 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H04R3/02
H04R1/34 310
H04R1/22 310
G10K11/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031823
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 崇
(72)【発明者】
【氏名】加藤 菖
(72)【発明者】
【氏名】岡 大介
【テーマコード(参考)】
5D018
5D220
【Fターム(参考)】
5D018AA00
5D018AF11
5D220AB03
5D220BC01
5D220CC03
5D220CC08
(57)【要約】
【課題】会議支援システムにおいて、どのように増幅及び再生すれば、話者及び会議参加者に適切に伝達できるかについて指標を提供する。
【解決手段】本発明に係る会議支援システム1は、会議参加者による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホン30と、前記マイクロホン30で変換された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるフィルタ(ハイパスフィルタ42)と、前記フィルタ(ハイパスフィルタ42)を通過した電気信号を増幅するアンプ50と、前記アンプ50で増幅された電気信号を再生するスピーカ60と、前記スピーカ60で再生された音を反射する天井の一部に形成される放物面と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
会議参加者による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、
入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、
前記マイクロホンで変換された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるフィルタと、
前記フィルタを通過した電気信号を増幅するアンプと、
前記アンプで増幅された電気信号を再生するスピーカと、
前記スピーカで再生された音を反射する天井の一部に形成される放物面と、を有することを特徴とする会議支援システム。
【請求項2】
会議参加者による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、
入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、
前記マイクロホンで変換された電気信号を増幅するアンプと、
前記アンプで増幅された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを再生させるツイータと、
前記ツイータで再生された音を反射する天井の一部に形成される放物面と、を有することを特徴とする会議支援システム。
【請求項3】
会議参加者による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、
入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、
前記マイクロホンで変換された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるフィルタと、
前記フィルタを通過した電気信号を増幅するアンプと、
前記アンプで増幅された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを再生させるツイータと、
前記ツイータで再生された音を反射する天井の一部に形成される放物面と、を有することを特徴とする会議支援システム。
【請求項4】
前記フィルタで通過させる電気信号に対応する成分の前記所定の周波数は1kHz以上であることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の会議支援システム。
【請求項5】
前記ツイータで再生させる電気信号に対応する成分の前記所定の周波数は1kHz以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の会議支援システム。
【請求項6】
前記スピーカの下方に遮音板が配されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の会議支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち合わせスペースなどでの会話が近接する他の執務者に聞こえ、当該他の執務者の生産性が低下するようなことをなくす会議支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のワークプレイスでは、会議・打合せ等を行うスペース(打ち合わせスペース)が、個人が執務するスペース(執務スペース)に近接して配置されることがある。
【0003】
また、コラボレーションの誘発を目的として、執務者同士の偶発的な接近と会話の発生の起こりやすい、オープン執務スペースの設置やフリーアドレスの導入も進められている。ここで、オープン執務スペースとは、数名が着席出来る大きめの机で、各執務者がそれぞれ自由に利用して作業や執務を行うスペースである。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2010-4962号公報)には、複数の作業者が対面して利用できるようにしたフリーアドレス型の大型のデスクを主体としてなる家具システムが開示されている。
【0005】
また、個人作業から会話・打ち合わせへの移行を容易に行うため、様々なスペースが混在するワークプレイスが計画されることも多い。
【0006】
しかしながら、このような様々なスペースが混在するワークプレイスでは、打ち合わせスペースやオープン執務スペースでの会話が近接する他の執務者に聞こえることで、他の執務者の生産性が低下する、という課題があった。
【0007】
そこで、発明者は、特許文献2(特願2020-86764号)による出願おいて、会議参加者による発声を集音し、集音された発声をスピーカで再生し会議参加者に提示することで会議の支援を行う会議支援システムであって、天井の一部に形成される放物面を設けておき、当該放物面によってスピーカで再生された音を反射する構成を提案した。また、同出願では、マイクロホン→アンプ→スピーカ(→放物天井面)→マイクロホンといったループが存在し、ハウリング抑制措置が必要であるため、同出願の第2実施形態で電気音響装置によるハウリングを抑制する方法について提案を行った。
【特許文献1】特開2010-4962号公報
【特許文献2】特願2020-86764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記出願においては、音声の再生に利用するスピーカ等の周波数特性は特に規定されておらず、マイクロホンにより収録した音声をどのように増幅及び再生して話者及び会議参加者に伝達すればよいか記述されていない、という問題があった。
【0009】
また、同出願においてハウリング抑制措置を提案したものの、現状では、上記の電気音響装置によりハウリングを抑制したとしても、その効果が不十分で、スピーカから再生する音声の増幅率を上げることができず、話者及び会議参加者に伝達する会話音声の音量が不足する、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明に係る会議支援システムは、会議参加者による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、前記マイクロホンで変換された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるフィルタと、前記フィルタを通過した電気信号を増幅するアンプと、前記アンプで増幅された電気信号を再生するスピーカと、前記スピーカで再生された音を反射する天井の一部に形成される放物面と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る会議支援システムは、会議参加者による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、前記マイクロホンで変換された電気信号を増幅するアンプと、前記アンプで増幅された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを再生させるツイータと、前記ツイータで再生された音を反射する天井の一部に形成される放物面と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る会議支援システムは、会議参加者による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、前記マイクロホンで変換された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるフィルタと、前記フィルタを通過した電気信号を増幅するアンプと、前記アンプで増幅された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを再生させるツイータと、前記ツイータで再生された音を反射する天井の一部に形成される放物面と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る会議支援システムは、前記フィルタで通過させる電気信号に対応する成分の前記所定の周波数は1kHz以上であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る会議支援システムは、前記ツイータで再生させる電気信号に対応する成分の前記所定の周波数は1kHz以上であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る会議支援システムは、前記スピーカの下方に遮音板が配されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る会議支援システムは、マイクロホンで変換された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるフィルタを有しているので、このような本発明に係る会議支援システムによれば、マイクロホンにより収録した音声を、どのように増幅及び再生すれば、話者及び会議参加者に適切に伝達できるかについて指標を提供することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る会議支援システムによれば、前記のようなフィルタによりスピーカから再生する音声の増幅率を上げることが可能となり、話者及び会議参加者に伝達する会話音声の音量を十分に上げることができる。
【0018】
また、本発明に係る会議支援システムは、アンプで増幅された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを再生させるツイータを有しているので、このような本発明に係る会議支援システムによれば、マイクロホンにより収録した音声を、どのように増幅及び再生すれば、話者及び会議参加者に適切に伝達できるかについて指標を提供することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る会議支援システムによれば、前記のようなツイータから再生する音声の増幅率を上げることが可能となり、話者及び会議参加者に伝達する会話音声の音量を十分に上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る会議支援システム1の音声処理部40のブロック図である。
【
図3】会議支援システム1におけるスピーカ60と天井の幾何学的配置を説明する図である。
【
図4】会議支援システム1の放物面天井部17による反射音を説明する図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る会議支援システム1のブロック図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る会議支援システム1のブロック図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る会議支援システム1の音声処理部40のブロック図である。
【
図8】本発明の第5実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
【
図9】音の放音範囲に、反射物Rが置かれた場合を説明する図である。
【
図10】本発明の第6実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
【
図11】焦点Fの高さと、遮音板70の高さとに基づく伝搬経路の相違を説明する図である。
【
図12】遮音板70の上面が平坦かつ床面20に対して平行な場合の音の伝搬経路の模式図である。
【
図13】焦点Fに合わせた小型のスピーカ60による問題を説明する図である。
【
図14】本発明の第6実施形態に係る会議支援システム1の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明に係る会議支援システム1は、例えば、執務が行われているフリーアドレス型の大型デスク、或いはオープン執務スペースなどに近接する場所に設けられている打ち合わせスペースに適用されることが想定されるものである。
【0022】
また、先のフリーアドレス型の大型デスクやオープン執務スペースなどでは執務者によって執務が行われ、打ち合わせスペースでは会議が行われ、会議参加者が発言することが想定されている。
【0023】
なお、本明細書で「執務者」は、デスクワークとして、書類仕事やパソコン入力作業に従事し基本的に音声を行わない者として定義し、打ち合わせスペースで会議に参加し発言を行う会議参加者とは区別する。
【0024】
本発明に係る会議支援システム1においては、当該打ち合わせスペースにおける参加者による会話内容が近接する大型デスクやオープン執務スペースにおける他の執務者に可能な限り聞こえないようにしつつ、会議参加者には適切な音声を放音することをその目的としている。これを実現するため、本発明に係る会議支援システム1では、会議参加者(の中の話者)による音声を集音し、集音された音声をスピーカで再生し会議参加者に放音することで会議の支援を行うようにする。
【0025】
ところで、音声は母音と子音によって構成されており、主として前者は低い周波数の成分からなり、後者は高い周波数の成分からなっている。そして、聴覚では、低周波域成分が高周波域成分をマスクすることが知られており、音声を知覚するときにも、このマスキングが働いている。このようなマスキングは、音声の聞き取りを悪くする原因の一つとなっている。
【0026】
本発明に係る会議支援システム1においては、集音された話者の音声を会議参加者に対してスピーカで再生する際には、このような音声及び聴覚の特性に着目して、スピーカから再生する音声の周波数を規定することで、再生音の明瞭度低下を抑制し、課題の解決を図っている。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。床面20上に置かれたデスク25で、2人の参加者で会議が執り行われている状況を示している。このデスク25の近傍には、先のフリーアドレス型の大型デスクやオープン執務スペース(いずれも不図示)などで執務者が執務を行っていることが想定される。
【0028】
当該デスク25上には、マイクロホン30が設置されており、このマイクロホン30により会議参加者による音声を集音する。マイクロホン30は、音声による音声信号が入力されると、これを電気信号に変換する。
【0029】
マイクロホン30により変換された電気信号は、音声処理部40に入力される。この音声処理部40では、電気信号をスピーカ60で再生するために適切なものに変換処理することが行われる。
図2は本発明の実施形態に係る会議支援システム1の音声処理部40のブロック図である。
図2における音声処理部40は一つの例であり、他の態様も種々取り得る。
図2の音声処理部40においては、音量調整部41で電気信号のレベルの調整がされ、アンプ50で電気信号の増幅が行われる。
【0030】
図2において、マイクロホン30により変換された電気信号は、音声処理部40におけるハイパスフィルタ42に入力される。このハイパスフィルタ42は、マイクロホン30から出力される電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるフィルタである。ハイパスフィルタ42で通過させる電気信号に対応する成分の前記所定の周波数は1kHzとすることが好ましい。
【0031】
日本語の音節の大部分は子音及び母音で構成されており、それぞれに異なる周波数特性を有している。そして、日本語の会話において、子音は音声を明瞭に伝達するために重要な役割を持つといわれている。そこで、本実施形態では、母音を構成する低周波域成分をハイパスフィルタ42でカットし、高周波域成分よりなる子音を強調することで、音声の聞き取りを向上させるようにするものである。
【0032】
本発明はマイクロホン30で収録した会話音声のうち、基本的に1kHz以上(再生周波数帯域)の成分を増幅し、放物面天井部17の焦点に設置したスピーカ60から再生するようにしている。
【0033】
すなわち、本発明では、上記再生周波数帯域を中心として増幅・再生するシステムとすることで、子音の成分を多く含む周波数帯域のみを強調して音声を再生するものである。
【0034】
子音は母音と比較して高い周波数帯域(1k~6kHz)に主な成分を有しており、子音の主な成分が含まれる周波数帯域は1kHz~6kHzとされている。そのため、本発明に係る会議支援システム1においては、再生周波数帯域を1kHz以上6kHz以下としても良い。この場合、ハイパスフィルタ42に代えて、1kHz~6kHzを通過帯域とするバンドパスフィルタを用いることが可能である。
【0035】
ただし、本発明に係る会議支援システム1においては、基本的に再生周波数帯域は1kHz以上とし、6kHz以上の帯域も含むようにすることがより好ましい。というのは、1kHz~6kHzの帯域と比較して弱いものとはなるが、6kHz以上の周波数帯域においても子音の成分は含まれるからである。また、子音はエネルギーが微小であっても、会話の明瞭度に影響を与えるので、主要な成分を含まないとは言え、6kHz以上を再生周波数帯域に含めることがより好ましい。
【0036】
さて、ハイパスフィルタ42からの出力は、音量調整部41に入力される。音量調整部41は、スピーカ60で再生する音の音量を調整する。この音量調整部41は、自動で行われるようにしてもよいし、手動で行われるようにしてもよい。後者の場合、音量調整用の入力つまみ、入力スライダーなどの構成は、デスク25上に適宜設けるようにしておくことが好ましい。
【0037】
音声処理部40のアンプ50で増幅された電気信号は、スピーカ60に入力され、スピーカ60で音が再生される。スピーカ60は、指向方向が上向きとなるように設置されており、スピーカ60から天井10に向けて音が放射されるようになっている。
【0038】
天井10は、水平面を有する一般天井部15と、当該一般天井部15の一部に形成されてなる、凹状の放物面を有する放物面天井部17とを有している。本発明に係る会議支援システム1では、デスク25上に放物面天井部17が配されるようにレイアウトされている。また、放物面天井部17の広さは、平面視で、デスク25周りに着席する会議参加者が少なくとも含まれる広さであることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態では、放物面天井部17を天井10の一部として設ける例に基づいて説明しているが、放物面天井部17に相当する構成を天井10とは独立して設けるようにしてもよい。例えば、天井10における一般天井部15とは独立した、放物面天井部17に相当するパラソルのような構成を天井10に配するようにしてもよい。
【0040】
上記のような放物面天井部17は、スピーカ60で再生された音を鉛直下方に向けて反射する。本発明に係る会議支援システム1では、天井構造を工夫することで、一般的なスピーカを用いても限られた範囲(デスク25が配された打ち合わせスペース)に音を放音するものである。
図3は会議支援システム1におけるスピーカ60と天井の幾何学的配置を説明する図であり、建物の天井10と床面20の断面を示す模式図である。
【0041】
天井10は、一般的な床面20と平行な関係にある一般天井部15と、その天井10の一部に形成されている放物面天井部17とから構成されている。ここで、x軸が水平方向であり、y軸は鉛直方向であり、スピーカ60(
図3には不図示)の配置位置Fを原点とする座標(x、y)を定義する。
【0042】
上記のように定義された座標において、放物面天井部17は、y=-x2/4L+Lをy軸周りに回転させた回転体の表面と重なるように構成される。このとき、xy座標の原点(0,0)は、放物面天井部17の焦点と一致する。
【0043】
また、スピーカ60(
図1には不図示)の指向範囲をφとすると、φによるコーンが放物面天井部17内に収まるような関係とすることが好ましい。
【0044】
本発明に係る会議支援システム1における再生音放音手段としては、上記のような放物面の一部をなす形状の放物面天井部17と、放物面天井部17下方に指向方向を上向きに設置したスピーカ60とから構成される。また、スピーカ60は天井10の放物面の焦点Fに位置するように設置される。
【0045】
前記のような関係において、スピーカ60をFに配置すると、
図4に示すように、放物面天井部17で反射した音は、鉛直下方の床面20方向に進行する。
【0046】
本発明に係る会議支援システム1においては、天井面が放物面をなす範囲は、スピーカ60から放射された音が入射する範囲、すなわち、スピーカ60の指向範囲をカバーできる範囲とされることが好ましい。
【0047】
放物面天井部17を構成する放物面の焦点Fに設置されたスピーカ60から放射された音は、放物面の一部をなす放物面天井部17に入射した後、会議参加者が周囲に着席するデスク25に向けて垂直下向きに反射する。本発明に係る会議支援システム1では、パラメトリックスピーカやフラットパネルスピーカなどの高価なスピーカシステムを用いることなく、スピーカから放射した音を、放音したい範囲内で収めることができる。このように、本発明に係る会議支援システム1は、一般的なスピーカを用いて安価に実現できる。
【0048】
なお、放物面天井部17とスピーカ60とによる音声伝達支援の仕組み自体については、発明者らが特願2017-160105(特開2019-39166参照)において既に提案を行ったものである。当該提案は、美術館や博物館等でBGM やアナウンスによる音情報を、限られた範囲にのみ提供するという効果を有するものであった。
【0049】
一方、本発明に係る会議支援システム1では、会議参加者は、スピーカ60で再生され放物面天井部17に反射された自らの声を聞くことで、自らの声量を客観的に判断することが可能となる、と考えることもできる。従って、会議参加者は自らの声量を、自らコントロールし抑制するようになる。これにより、会議支援システム1として、打ち合わせスペースに近接する執務者に対して聞こえるような音量の会話を、抑制していくことができるようになる。このような効果は、先の提案から必ずしも簡明に導き得るようなものではない。
【0050】
さて、放物面天井部17がスピーカ60の主たる指向範囲より広ければ、スピーカ60からの再生音は周囲へ伝搬することなく、放物面天井部17直下のみに放音される。
【0051】
このように、放物面天井部17とスピーカ60の指向範囲を、打ち合わせスペースをカバーするように適切に設定すれば、マイクロホン30で収録された音声は、打ち合わせスペースにおいて会話を行う会議参加者に対してのみ確実に伝達される。
【0052】
本発明に係る会議支援システム1による音声伝達支援の特徴は、会話の相手だけでなく、話者本人にも同時に自身の会話音声が増幅されて伝達されるところにある。
【0053】
本発明に係る会議支援システム1を用いることで、話者は自身の声が大きく聞こえ、かつ会話の相手に確実に自身の声が伝わっていると感じられることから、自然と声量を抑制する方向へ調整することが期待できる。このように、話者の声量が抑制されれば、打ち合わせスペースから周囲へ伝搬する会話音声が低減され、近接する他の執務者の作業効率の低下や、他の会話の妨害の度合いを低減することができる。
【0054】
このように、放物面天井部17がカバーする打ち合わせスペースに限定して会話を行う会議参加者に音声を確実に伝達しつつ、話者に対して会話声量を抑制する方向へ誘導することができる。その結果、近接する他の執務者の作業効率の低下や、他の会話の妨害の度合いを低減することができる。
【0055】
本発明に係る会議支援システム1で用いるマイクロホン30はデスク25の上に設置するものが望ましい。但し、会話を行う会議参加者がそれぞれ身に付けるピンマイクを利用することもできる。
【0056】
以上のように構成される本発明に係る会議支援システム1によれば、打合せスペースなどをパーティションで囲むといった対策をすることなく、打ち合わせスペースなどでの会話が近接する他の執務者に聞こえることで、当該他の執務者の生産性が低下するようなことを抑制できる。
【0057】
そして、本発明に係る会議支援システム1は、マイクロホン30で変換された電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させるハイパスフィルタ42を有しているので、このような本発明に係る会議支援システム1によれば、マイクロホン30により収録した音声を、どのように増幅及び再生すれば、話者及び会議参加者に適切に伝達できるかについて指標を提供することが可能となる。
【0058】
また、本発明に係る会議支援システム1によれば、前記のようなハイパスフィルタ42が設けられることによりスピーカ60から再生する音声の増幅率を上げることが可能となり、話者及び会議参加者に伝達する会話音声の音量を十分に上げることができる。
【0059】
また、逆に言えば、再生周波数帯域を基本とした再生により、会話音声が明瞭となるため、会議参加者に音声を適切に伝達できる、という効果は、再生音声の増幅率を上げなくても得ることができる。すなわち、ハウリングが発生しない程度の増幅率であっても、会議参加者に音声を適切に伝達可能となる。
【0060】
また、本発明に係る会議支援システム1によれば、ハウリング周波数が再生周波数帯域外にある場合においては、増幅率を十分に上げることが可能となり、これによっても、会議参加者に対する音声伝達性を向上させることができる。
【0061】
また、本発明に係る会議支援システム1によれば、天井における放物面がカバーする範囲に限定して、会議参加者にのみ音声を確実に伝達しつつ、話者に対して会話声量を抑制する方向へ誘導することができる。
【0062】
これにより、近接するスペースへ伝搬する会話音声を低減することが出来るようになる。また、 その結果、近接スペースで執務する他の執務者の作業効率の低下の度合いを低減すること、近接スペースで行われる別の会話の妨害の度合いを低減すること、ワークプレイス全体の喧騒感を低減することができる、といった効果が得られる。
【0063】
また、本発明に係る会議支援システム1によれば、打合せスペースにおいて情報秘匿性の高い会話を行う場合、周辺への会話内容が漏洩し難くすることが可能である。
【0064】
また、本発明に係る会議支援システム1において、机上に設置したマイクロホンを使用すれば、インカム等の身に付ける装置が不要であり、利便性を損なうことなく、上記の効果を得ることができる。インカム等の装着は利便性を損なうと共に、それに慣れた執務者以外は違和感により打合せの効率の低下につながることがある。
【0065】
また、本発明に係る会議支援システム1において、焦点に設置するスピーカは一般的なスピーカを用いることができ、上記効果を安価に実現できる。範囲を限定して会話音の再生を行うために、狭い指向特性を有するスピーカシステムとして、パラメトリックスピーカやフラットパネルスピーカが存在するが、価格や音質に課題がある。
【0066】
また、本発明に係る会議支援システム1は、実際に対面して会話を行う場合のほか、Web会議等遠隔地の相手と会話を行う場合においても有効である。
【0067】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態では、ハイパスフィルタ42によって、マイクロホン30から出力される電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させて、これをスピーカ60から再生するようにしていた。一方、第2実施形態においては、このようなフィルタを用いることなく、スピーカ60をツイータ67に代えることで、所定の周波数以上の成分を再生する。その他の構成は、第1実施形態と同様のものである。
図5はこのような本発明の第2実施形態に係る会議支援システム1のブロック図である。先の実施形態と同様、第2実施形態においても、ツイータ67で再生された音は、天井の一部に形成される放物面天井部17で反射させるように構成されている。
【0068】
ここで、本明細書においてはツイータ67とは、1kHz以上の音の成分が再生され、1kHz未満の音の成分が再生されないスピーカとして定義する。すなわち、
図5のツイータ67で再生される電気信号に対応する音の成分の周波数は1kHz以上となり、それより低い周波数の音に対応する電気信号は再生されない。
【0069】
第2実施形態に係る会議支援システム1においては、マイクロホン30で収録した会話音声は、音量調整部41で電気信号のレベルの調整がされ、アンプ50で電気信号の増幅が行われる。そして、会話音声のうち、基本的に1kHz以上(再生周波数帯域)の成分のみが、放物面天井部17の焦点に設置されたツイータ67で再生されように構成されている。すなわち、第2実施形態では、ツイータ67により上記再生周波数帯域を中心として増幅・再生するシステムとすることで、子音の成分を多く含む周波数帯域のみを強調して音声を再生するものである。このような第2実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0070】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図6は本発明の第3実施形態に係る会議支援システム1のブロック図である。第3実施形態に係る会議支援システム1においては、
音声処理部40では1kHz以上の音の成分に対応する電気信号のみを通過させるハイパスフィルタ42が採用されている。ハイパスフィルタ42を経た電気信号は、音量調整部41で電気信号のレベルの調整がされ、アンプ50で電気信号の増幅が行われる。アンプ50により増幅された電気信号は、1kHz以上の音の成分が再生されるツイータ67に入力される。
【0071】
このように第3実施形態に係る会議支援システム1では、ハイパスフィルタ42とツイータ67の双方が用いられており、このような実施形態によっても先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0072】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明した実施形態においては、所定の周波数以上(好ましくは、1kHz以上)の音の成分に対応する電気信号のみを再生させるハイパスフィルタやツイータを用いる構成としていた。これに対して、第4実施形態においては、必要に応じて、所定の周波数未満の音を、カットし1kHz以上(再生周波数帯域)の成分を放物面天井部17で反射させて、会議参加者に聞かせるような構成としている。
図7は本発明の第4実施形態に係る会議支援システム1の音声処理部40のブロック図である。
【0073】
図7において、マイクロホン30により変換された電気信号は、ハイパスフィルタ42に入力され、このハイパスフィルタ42が、マイクロホン30から出力される電気信号のうち所定の周波数以上の成分に対応する電気信号のみを通過させる。マイクロホン30により変換された電気信号は、ローパスフィルタ43にも入力され、このローパスフィルタ43は、マイクロホン30から出力される電気信号のうち所定の周波数未満の成分に対応する電気信号のみを通過させる。
【0074】
ハイパスフィルタ42が設けられるライン上には可変ゲインアンプ44が設けられており、少なくとも1倍より大きなゲインが得られるように設定される。一方、ローパスフィルタ43が設けられるライン上には開閉スイッチ45が配されており、この開閉スイッチ45は会議参加者が操作することが可能なデスク25近傍に設けられている。また、可変ゲインアンプ44におけるゲインも、不図示の調整部により設定変更可能に構成されている。当該調整部もデスク25近傍に設けられ、会議参加者が操作・調整することができるように構成されることが好ましい。
【0075】
ハイパスフィルタ42から出力されるラインと、ローパスフィルタ43から出力されるラインとは加算されて音量調整部41に入力される。この音量調整部41で電気信号のレベルの調整がされ、アンプ50で電気信号の増幅が行われる。アンプ50で増幅された電気信号は、スピーカ60に入力され、これまで説明した実施形態同様、スピーカ60から放物面天井部17に向けて音が再生される。
【0076】
ローパスフィルタ43側のラインには開閉スイッチ45が設けられているが、ローパスフィルタ43側のラインの開閉スイッチ45が閉となっていたとしても、ハイパスフィルタ42側のラインには可変ゲインアンプ44が設けられているので、両者が加算されて音量調整部41に入力される電気信号のレベルは、ハイパスフィルタ42側のラインのものの方が高くなる。従って、スピーカ60で再生される音の成分は、所定の周波数以上(例えば、1kHz以上とすることができる)の成分が強調されるようになっている。これにより、第4実施形態に係る会議支援システム1においても、基本的に子音の成分を多く含む周波数帯域が強調された音声が再生されるので、音声の聞き取りがし易い。
【0077】
一方、会議参加者は聞き取り性をさらに向上させるために、開閉スイッチ45が開とし、所定の周波数未満の音の成分を完全に遮断するように構成することもできる。ローパスフィルタ43側のラインの開閉スイッチ45が開となると、音量調整部41に入力される電気信号はハイパスフィルタ42側のラインからの出力のみとなる。これにより、第4実施形態に係る会議支援システム1によれば、先の実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0078】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明した実施形態においては、スピーカ60と放物面天井部17による音の放音範囲(提示範囲)にマイクロホン30が存在するため、マイクロホン30への音の入力→アンプ50による増幅→スピーカ60からの再生→マイクロホン30への音の入力、といったループによりハウリングの発生が予測される。そこで、第5実施形態においては、このようなハウリングを抑制する構成が採用されている。
【0079】
図8は本発明の第5実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。この第5実施形態に係る会議支援システム1は、これまで説明した第1乃至第4実施形態のいずれとも任意に組み合わせることができる。
【0080】
図8においては、ハウリングの抑制を図る構成として、スピーカ60の下方に設けられた遮音板70、マイクロホン30上方に設けたカバー体80、マイクロホン30を置くための円錐台や四角錐台の形状をなしたマイク台27、デスク25の上に敷かれた吸音材90の4つの構成が示されている。
【0081】
本実施形態においては、ハウリング抑制のために、それぞれの構成を単独で用いてもよいし、任意に組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0082】
遮音板70は、放物面天井部17で反射された音が、マイクロホン30で再び集音されることを避けるために設けられたものである。平面視で、遮音板70とマイクロホン30とが重なっているような配置関係が好ましい。
【0083】
また、カバー体80はマイクロホン30の上方に設けることで、マイクロホン30が、マイクロホン30上方側からの集音することを抑制し、会議参加者による音声を中心として集音するようにしている。
【0084】
また、マイクロホン30を置くマイク台27の形状は、円錐台や四角錐台をなしており、天井側からの音を、略側方側に反射することで、デスク25で反射した音をマイクロホン30が下方側から収音することを抑制するようにしている。
【0085】
また、デスク25の上に敷かれた吸音材90は、上方側から入射する音を吸収することで、デスク25で反射した音をマイクロホン30が下方側から収音することを抑制する。
【0086】
以上のような構成において、マイクロホン30で収録した会話音声のうち、基本的に1kHz以上(再生周波数帯域)の成分が増幅され、放物面天井部17の焦点に設置したスピーカ60から再生される。さらに、第5実施形態に係る会議支援システム1においては、上記のような各物理的ハウリング抑制措置が図られており、ハウリング周波数が再生周波数帯域内にある場合も、高周波数域においては遮音板70による回折効果、或いは、カバー体80、吸音材90による吸音効果が高いため、増幅率を十分に上げることが可能となり、音声の聞き取りを向上させることができる。また、第5実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0087】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態に係る会議支援システム1は、これまで説明した第1乃至第4実施形態のいずれとも任意に組み合わせて用いられるものである。
【0088】
本発明に係る会議支援システム1においては、放物面天井部17の焦点Fに上向きに設置したスピーカ60から放射された音が、放物面天井部17で垂直下方向に反射し、放物面天井部17がカバーする範囲に限定して放音されることを特徴としている。
【0089】
このような本発明に係る会議支援システム1において、音が放音される範囲(平面視で放物面天井部17の下方の領域)に、
図9に示すように、反射物Rが置かれていた場合、放物面天井部17で反射した音がこれらの反射物Rにより反射或いは散乱することで、本来音を放音したい放物面天井部17がカバーする範囲の外側に音が伝搬してしまう、という問題がある。ここで、
図9において、マイクロホン30などの構成については図示省略している。また、反射物Rの実例としては、例えば、ディスプレイ、パーソナルコンピューター、書棚、デスクライトなどを挙げることができる。
【0090】
なお、デスク25については、その天板上面は通常平坦かつ床面20と平行であるため、放物面天井部17で反射した後に天板上面で反射した音は放物面天井部17の方向に戻り、音を放音したい範囲外へ伝搬することはないため、ここでは反射物Rとは考えない。
【0091】
上記のような問題を解決するために、第6実施形態に係る会議支援システム1においては、スピーカ60の筐体61を含む構成の最上端が含まれる水平面と、面一の遮音板70を配するようにしている。
図10は本発明の第6実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
【0092】
スピーカ60は、振動源となるマグネット・コイル部62と、この振動源により振動されることで、実質的に音源としての振動部となるコーン部65とから構成されている。さらに、
が、このコーン部65の最上端が含まれる水平面と、遮音板70の上面とは面一となるようにレイアウトされている。このようなレイアウトとする理由については後述する。
【0093】
一般的に、スピーカ60はそれ自体が単体で用いられることはなく、エンクロージャーなどの筐体61に収納された状態で用いられる。遮音板70の上面は、このような筐体61における最上端が含まれる水平面と面一となるようにレイアウトされている。このようなレイアウトとする理由については後述する。
【0094】
なお、筐体61には、スピーカ60のコーン部65を保護するために、コーン部65の前面に設置される金属メッシュ等は含めない。このような金属メッシュ等の保護材は音響的に透過性とみなせるからである。また、筐体61には、ネジ、ビス等の微小な突起も含めない。
【0095】
遮音板70の設置範囲は、平面視での位置関係で、反射物Rと重なるか、または、それ以上の範囲とし、反射物Rが遮音板70の範囲に含まれるようにする。ただし、平面視で、遮音板70の範囲は放物面天井部17よりは狭く、音を放音したい対象である会議参加者とは、重ならない範囲とする。
【0096】
遮音板70の材質や構造は、放音したい音の周波数成分に対してある程度の遮音性能(例えば音響透過損失で10dB以上が望ましい)を有していれば良い。また、
図10に示す実施形態では遮音板70の形状は平面視で円形であるが、遮音板70の平面的な形状は特にこれに限定されるものではなく、遮音板70は平面視で四角形、多角形、不定形等とすることができる。
【0097】
また、遮音板70の断面形状は、少なくとも上面は、平坦でかつ床面20に対して平行な面とされている。ただし、これは一般天井部15が床面20に対して平行であり、放物面天井部17が、スピーカ60からの放射音が床面20に対して垂直に反射するように設置されているという前提に基づくものである。
【0098】
第6実施形態に係る会議支援システム1においては、スピーカ60の筐体61を含む構成の最上端が含まれる水平面と、面一の遮音板70を配するレイアウトとしているが、これは次のような理由による。
【0099】
図11は焦点Fの高さと、遮音板70の高さとに基づく伝搬経路の相違を説明する図であり、
図11(A)は遮音板70を焦点より下に設置した場合の音の伝搬経路の模式図であり、
図11(B)は焦点と同じ高さに遮音板70の上面を設置した場合の音の伝搬経路の模式図である。
【0100】
図11(A)に示すように、遮音板70の上面をスピーカ60、すなわち焦点Fより下方に設置した場合、スピーカから下方に回り込んだ音が遮音板70の上面に反射した後に放物面天井部17に入射する。このとき、その入射方向は、遮音板70の上面を対称面として焦点の対称位置にある、焦点の虚像F’から放射された音の入射方向に一致する。このため、放物面天井部17に入射した音の反射方向が床面20に対して垂直下向きとはならず、放物面天井部17がカバーする音を放音したい範囲の外側に音が伝搬してしまう。
【0101】
一方、
図11(B)に示すように、遮音板70の上面をスピーカ60が収納される筐体61の最上端と同じ高さとすれば、焦点の虚像は実像(本来の焦点)と同じ位置に存在するため、このような問題が生じることはない。第6実施形態に係る会議支援システム1において、このような理由により、遮音板70の上面側をスピーカ60の筐体61の最上端と同じ高さに設置するようにしている。なお、このように設置することは、実質的に、スピーカ60が収納される筐体61の最上端が含まれる水平面と、上面が面一の遮音板70を配することに相当するものである。
【0102】
第6実施形態に係る会議支援システム1において、遮音板70の上面を平坦でかつ床面20(すなわち、水平面)に対して平行とする理由は次の通りである。
図12は遮音板70の上面が平坦かつ床面20に対して平行な場合の音の伝搬経路の模式図である。
【0103】
焦点Fに設置したスピーカ60から放射された音(1)は、放物面天井部17に入射し、その後垂直下方向に反射される(2)。放物面天井部17から垂直下方向に反射された音は遮音板70上面に入射するが、この際、遮音板70の上面が平坦でかつ床面に対して平行であれば、遮音板70上面に入射した音は垂直上方向に反射され(3)、その後、再び放物面天井部17から焦点Fの方向に反射される(4)。
【0104】
その後は、スピーカ60の焦点F→放物面天井部17→遮音板70上面→放物面天井部17→スピーカ60の焦点F→・・・というように反射を繰り返し、放物面天井部17がカバーする音を放音したい範囲の外側に音が伝搬することはない。このような理由により、遮音板70の上面は平坦かつ床面20に対して平行とされる。
【0105】
次に、本発明の第6実施形態に係る会議支援システム1に用い得るスピーカ60について説明する。本発明で提案する技術によれば、放物面天井部17の焦点Fにスピーカ60を設置することが求められており、正確に焦点位置に設置するためにはスピーカ60は小さい方が望ましい。ただし、一般的に小さいスピーカ60は広い周波数帯域で指向範囲が広くなり、
図13に示すように、スピーカ振動部から側方又は下方へ回り込んだ音が、放物面天井部17に入射せず、本来音を放音したい範囲の外側に直接伝搬してしまうという問題がある。
【0106】
第6実施形態に係る会議支援システム1による遮音板70を設置すれば、
図14に示すように、波長が遮音板70の大きさに比べて小さい周波数帯域においては、スピーカ60側方又は下方への音の回り込みを低減できるという効果も得られる。これにより、放物面天井部17がカバーする範囲に限定して音を放音することが、より確実に可能になる。
【0107】
第6実施形態のような遮音板70を用いれば、上記の効果を得るために大きな筐体に小さいスピーカユニットを取り付けたスピーカを特注で製作する必要はない。一般的に販売されている小型スピーカを用いてシステムを構成して、上記の効果を得ることができる。
【0108】
以上のような構成において、マイクロホン30で収録した会話音声のうち、基本的に1kHz以上(再生周波数帯域)の成分が増幅され、放物面天井部17の焦点に設置したスピーカ60から再生される。さらに、上記のように構成される第6実施形態に係る会議支援システム1によれば、放物面天井部17で反射した音が、平面視で遮音板70の下方の領域に伝搬することを防止できる。その結果、放物天井の下に位置するディスプレイ等の反射物Rにより反射或いは散乱することで、本来音を放音したい範囲を超えて音が伝搬することを防止できる。
【0109】
また、第6実施形態に係る会議支援システム1においては、ハウリング周波数が再生周波数帯域内にある場合でも、高周波数域においては遮音板70による回折効果が高いため、増幅率を十分に上げることが可能となり、音声の聞き取りを向上させることができる。
【0110】
また、第5実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0111】
以上、本発明に係る会議支援システムによれば、マイクロホンにより収録した音声を、どのように増幅及び再生すれば、話者及び会議参加者に適切に伝達できるかについて指標を提供することが可能となる。
【0112】
また、本発明に係る会議支援システムによれば、スピーカから再生する音声の増幅率を上げることが可能となり、話者及び会議参加者に伝達する会話音声の音量を十分に上げることができる。
【0113】
また、本発明によれば、放音したい範囲を超えて音が伝搬することを防止できるので、その効果として、BGMやアナウンス等による音情報を、放物面天井部17がカバーする範囲に限定して提供することが、より確実に可能となる。
【0114】
また、本発明によれば、放物面天井部17がカバーする範囲に限定して、会話を行う会議参加者にのみ音声を確実に伝達しつつ、話者に対して会話声量を抑制する方向へ誘導し、これにより、近接するスペースへ伝搬する会話音声を低減することが、より確実に可能となる。その結果、近接スペースで執務する他の執務者の作業効率の低下の度合いを低減すること、近接スペースで行われる別の会話の妨害の度合いを低減すること、ワークプレイス全体の喧騒感を低減することができる、といった効果がより確実に得られる。
【0115】
また、本発明によれば、打合せスペースにおいて情報秘匿性の高い会話を行う場合、周辺への会話内容が漏洩し難くすることが、より確実に可能となる。
【符号の説明】
【0116】
1・・・会議支援システム
10・・・天井
15・・・一般天井部
17・・・放物面天井部
20・・・床面
25・・・デスク
27・・・マイク台
30・・・マイクロホン
40・・・音声処理部
41・・・調整部
42・・・ハイパスフィルタ
43・・・ローパスフィルタ
44・・・可変ゲインアンプ
45・・・開閉スイッチ
50・・・アンプ
60・・・スピーカ
61・・・筐体
62・・・マグネット・コイル部
65・・・コーン部
67・・・ツイータ
70・・・遮音板
80・・・カバー体
90・・・吸音材
R・・・反射物