(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133042
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20220906BHJP
B24B 37/32 20120101ALI20220906BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20220906BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B24B37/30 E
B24B37/32 A
B24B49/04 Z
H01L21/304 622R
H01L21/304 622K
H01L21/304 622S
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031850
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊光
(72)【発明者】
【氏名】八木 圭太
(72)【発明者】
【氏名】塩川 陽一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB92
3C034BB93
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3C158EB01
5F057AA02
5F057AA16
5F057AA20
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5F057GB02
5F057GB03
5F057GB13
(57)【要約】
【課題】所望の膜厚プロファイルを得ることが可能な研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置は、研磨ユニット14aと、基板Wの膜厚プロファイルを測定する膜厚測定器8と、研磨ユニット14aおよび膜厚測定器8の動作を少なくとも制御する制御装置30と、を備える。制御装置30は、各圧力室7a~7h内の圧力の変化に伴う基板Wの複数のモニタ領域の相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルを予め記憶している。さらに、制御装置は、膜厚測定器8を用いて、基板Wの研磨前の膜厚プロファイルを取得し、研磨前の基板Wの膜厚プロファイルと基板Wの目標膜厚との差分と、応答モデルと、に基づいて作成された最適研磨レシピで基板Wを研磨する。次の基板Wは、次の基板Wの目標研磨量と、最適研磨レシピおよび先の基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで研磨される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む少なくとも1つの研磨ユニットと、
前記基板の膜厚プロファイルを測定する膜厚測定器と、
前記研磨ユニット、および前記膜厚測定器の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルを予め記憶しており、
前記制御装置は、
前記膜厚測定器を用いて、前記基板の研磨前の膜厚プロファイルを取得し、
前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨する、研磨装置。
【請求項2】
前記最適研磨レシピが、少なくとも前記目標研磨量と、前記応答モデルを用いて算出した予測研磨量の差分の項を含む目的関数を最小化する最適化計算を用いて作成される、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記目的関数が、さらに、前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と予め設定された基準圧縮流体圧力との差分の項、および/または前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と先に研磨されたウエハの最適研磨レシピの圧縮流体圧力との差分の項を含む、請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記最適化計算が、二次計画法である、請求項2または3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記複数のモニタ領域が、前記複数の圧力室の数よりも多い、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記応答モデルが、さらに前記研磨パッドへの前記リテーナリングの押圧力の変化に伴う前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルであり、
前記最適研磨レシピが、更に前記リテーナリングの押圧力を含む、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記膜厚測定器は、前記複数のモニタ領域のそれぞれに設定された複数の測定点で膜厚を測定可能に構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記応答モデルは、前記複数のモニタ領域のそれぞれにおける単位研磨圧力あたりの研磨レートの増加量を表す応答係数を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記リテーナリングの一部に局所荷重を加える複数の局所荷重付与装置をさらに備え、
前記応答モデルは、前記局所荷重の変化に伴う、前記複数のモニタ領域の相互間における研磨量の変化をさらに考慮して作成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項10】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む少なくとも1つの研磨ユニットと、
前記基板の膜厚プロファイルを測定する膜厚測定器と、
前記研磨ユニット、および前記膜厚測定器の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記制御装置は、
複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルと、前記複数の基板のそれぞれを研磨した時の応答モデルであって、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルと、を予め蓄積し、
前記複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルを、互いに似ている膜厚プロファイルが属する複数のグループに予め分類しており、
前記制御装置は、
前記膜厚測定器を用いて、研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
前記研磨前の基板の膜厚プロファイルが属するグループを前記複数のグループから決定し、
前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記決定されたグループに関連付けられた応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨する、研磨装置。
【請求項11】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットと、
前記研磨ユニットの動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記基板は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含む複数の研磨工程によって研磨される基板であり、
前記第1研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、
前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第2研磨応答モデルを予め記憶しており、
前記制御装置は、
前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨装置。
【請求項12】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットと、
前記基板の膜厚プロファイルを測定する膜厚測定器と、
前記研磨ユニット、および前記膜厚測定器の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記基板は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含む複数の研磨工程によって研磨される基板であり、
前記第2研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、
前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルを予め記憶しており、
前記制御装置は、
前記膜厚測定器を用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、
前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、
前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを有する研磨ユニットに前記基板を搬送して、前記膜厚センサを用いて、前記第1研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨する、研磨装置。
【請求項13】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサと、を含む複数の研磨ユニットと、
前記研磨ユニットの動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記基板は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含む複数の研磨工程によって研磨される基板であり、
前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルおよび第2研磨応答モデルを予め記憶しており、
前記制御装置は、
前記複数の研磨ユニットのうちのいずれかに前記基板を搬送して、前記膜厚センサを用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、
前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、
前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、
前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨装置。
【請求項14】
基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を有する基板保持装置に保持された前記基板を、研磨テーブルに支持された研磨パッドに押し付けて研磨する研磨方法であって、
膜厚測定器を用いて、前記基板の研磨前の膜厚プロファイルを取得し、
前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨し、
前記応答モデルは、各圧力室の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成される、研磨方法。
【請求項15】
前記最適研磨レシピが、少なくとも前記目標研磨量と、前記応答モデルを用いて算出した予測研磨量の差分の項を含む目的関数を最小化する最適化計算を用いて作成される、請求項14に記載の研磨方法。
【請求項16】
前記目的関数が、さらに、前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と予め設定された基準圧縮流体圧力との差分の項、および/または前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と先に研磨されたウエハの最適研磨レシピの圧縮流体圧力との差分の項を含む、請求項15に記載の研磨方法。
【請求項17】
前記最適化計算が、二次計画法である、請求項15または16に記載の研磨方法。
【請求項18】
前記複数のモニタ領域が、前記複数の圧力室の数よりも多い、請求項14乃至17のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項19】
前記応答モデルが、さらに前記研磨パッドへの前記リテーナリングの押圧力の変化に伴う前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルであり、
前記最適研磨レシピが、更に前記リテーナリングの押圧力を含む、請求項14に記載の研磨方法。
【請求項20】
前記膜厚測定器は、前記複数のモニタ領域のそれぞれに設定された複数の測定点で膜厚を測定する、請求項14乃至19のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項21】
前記応答モデルは、前記複数のモニタ領域のそれぞれにおける単位研磨圧力あたりの研磨レートの増加量を表す応答係数を含む、請求項14乃至20のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項22】
前記応答モデルは、複数の局所荷重付与装置によって前記リテーナリングの一部に加えられる局所荷重の変化に伴う、前記複数のモニタ領域の相互間における研磨量の変化をさらに考慮して作成される、請求項14乃至21のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項23】
基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を有する基板保持装置に保持された前記基板を、研磨テーブルに支持された研磨パッドに押し付けて研磨する研磨方法であって、
複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルと、前記複数の基板のそれぞれを研磨した時の応答モデルであって、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルと、を予め蓄積し、
前記複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルを、互いに似ている膜厚プロファイルが属する複数のグループに予め分類し、
前記基板の研磨前の膜厚プロファイルを取得して、該膜厚プロファイルが属するグループを前記複数のグループから決定し、
前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記決定されたグループに関連付けられた応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨する、研磨方法。
【請求項24】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットで行われる複数の研磨工程によって、前記基板を研磨する方法であって、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記複数の研磨工程は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含んでおり、
前記第1研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、
各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第2研磨応答モデルを予め準備し、
前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨方法。
【請求項25】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットで行われる複数の研磨工程によって、前記基板を研磨する方法であって、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記複数の研磨工程は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含んでおり、
前記第2研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、
各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルを予め準備し、
膜厚測定器を用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、
前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、
前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを有する研磨ユニットに前記基板を搬送し、
前記膜厚センサを用いて、前記第1研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨する、研磨方法。
【請求項26】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットで行われる複数の研磨工程によって、前記基板を研磨する方法であって、
前記基板保持装置は、
前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、
前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、
前記複数の研磨工程は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含んでおり、
前記第1研磨を行う研磨ユニットと前記第2研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサをそれぞれ有しており、
各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルおよび第2研磨応答モデルを予め準備し、
前記第1研磨を行う研磨ユニットに前記基板を搬送して、前記膜厚センサを用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、
前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、
前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、
前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、
次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨し、
次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの基板の研磨装置および研磨方法に関し、特に、基板を研磨して所望の膜厚プロファイルを得るための研磨装置および研磨方法に関する。また、本発明は、そのような研磨装置を用いて基板を研磨する研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現しようとすると、下側の層の表面凹凸を踏襲しながら段差がより大きくなるので、配線層数が増加するに従って、薄膜形成における段差形状に対する膜被覆性(ステップカバレッジ)が悪くなる。したがって、多層配線するためには、このステップカバレッジを改善し、然るべき過程で平坦化処理しなければならない。また光リソグラフィの微細化とともに焦点深度が浅くなるため、半導体デバイスの表面の凹凸段差が焦点深度以下に収まるように半導体デバイス表面を平坦化処理する必要がある。
【0003】
したがって、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化がますます重要になっている。この表面の平坦化において最も重要な技術は、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)である。この化学機械研磨(以下、CMPという)は、シリカ(SiO2)等の砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を研磨パッドの研磨面上に供給しつつウエハなどの基板を研磨面に摺接させて研磨を行うものである。
【0004】
CMPを行うための研磨装置は、研磨面を有する研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を保持するための研磨ヘッド(基板保持装置)を備えている。このような研磨装置を用いた基板の研磨は次のようにして行われる。研磨テーブルを研磨パッドとともに回転させながら、研磨パッド上にスラリーを供給する。研磨ヘッドは基板を回転させながら、該基板を研磨パッドの研磨面に対して押し付ける。基板はスラリーの存在下で研磨パッドに摺接されながら、基板の表面は、スラリーの化学的作用と、スラリーに含まれる砥粒の機械的作用との組み合わせにより平坦化される。
【0005】
基板の研磨中、基板の表面は回転する研磨パッドに摺接されるため、基板には摩擦力が作用する。そこで、基板の研磨中に基板が研磨ヘッドから外れないようにするために、研磨ヘッドはリテーナリングを備えている。このリテーナリングは、基板を囲むように配置されており、基板の研磨中、リテーナリングは回転しながら基板の外側で研磨パッドを押し付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体デバイスやCMP工程に応じて変わりうる種々の初期膜厚プロファイルへの対応、および歩留まり向上などの理由から、基板の膜厚プロファイルをより精密に制御する(すなわち、基板の表面の平坦度を表す面内均一性を向上させる)ことへの要請が高まりつつある。
【0008】
さらに、目標膜厚に対する許容範囲も狭くなってきており、研磨中に膜厚センサを用いて基板の膜厚指標値を取得し、該膜厚指標値に基づいて、基板の研磨を終了させる従来の研磨方法では、膜厚を要求される許容範囲内に収めることが困難になってきている。例えば、研磨テーブルが1周する間の研磨量が許容範囲よりも大きいことがある。この場合、研磨テーブルに配置された膜厚センサから得られる膜厚指標値に基づいて研磨の終点を決定すると、研磨終了後の膜厚が目標膜厚に対する許容範囲を超えてしまうことがある。
【0009】
さらに、研磨対象である基板間で、研磨前の膜厚プロファイルが異なっていたり、研磨装置間で、研磨条件(例えば、研磨パッドの研磨面の状態)が異なっていたりする。これらの複合要因に起因しても、膜厚プロファイルを精密に制御して、要求される許容範囲に膜厚プロファイルを収めることが困難になってきている。
【0010】
そこで、本発明は、所望の膜厚プロファイルを得ることが可能な研磨装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような研磨装置を用いて基板を研磨する研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む少なくとも1つの研磨ユニットと、前記基板の膜厚プロファイルを測定する膜厚測定器と、前記研磨ユニット、および前記膜厚測定器の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルを予め記憶しており、前記制御装置は、前記膜厚測定器を用いて、前記基板の研磨前の膜厚プロファイルを取得し、前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨する、研磨装置が提供される。
【0012】
一態様では、前記最適研磨レシピが、少なくとも前記目標研磨量と、前記応答モデルを用いて算出した予測研磨量の差分の項を含む目的関数を最小化する最適化計算を用いて作成される。
一態様では、前記目的関数が、さらに、前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と予め設定された基準圧縮流体圧力との差分の項、および/または前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と先に研磨されたウエハの最適研磨レシピの圧縮流体圧力との差分の項を含む。
一態様では、前記最適化計算が、二次計画法である。
一態様では、前記複数のモニタ領域が、前記複数の圧力室の数よりも多い。
一態様では、前記応答モデルが、さらに前記研磨パッドへの前記リテーナリングの押圧力の変化に伴う前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルであり、前記最適研磨レシピが、更に前記リテーナリングの押圧力を含む。
【0013】
一態様では、前記膜厚測定器は、前記複数のモニタ領域のそれぞれに設定された複数の測定点で膜厚を測定可能に構成されている。
一態様では、前記応答モデルは、前記複数のモニタ領域のそれぞれにおける単位研磨圧力あたりの研磨レートの増加量を表す応答係数を含む。
一態様では、前記リテーナリングの一部に局所荷重を加える複数の局所荷重付与装置をさらに備え、前記応答モデルは、前記局所荷重の変化に伴う、前記複数のモニタ領域の相互間における研磨量の変化をさらに考慮して作成される。
【0014】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む少なくとも1つの研磨ユニットと、前記基板の膜厚プロファイルを測定する膜厚測定器と、前記研磨ユニット、および前記膜厚測定器の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記制御装置は、複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルと、前記複数の基板のそれぞれを研磨した時の応答モデルであって、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルと、を予め蓄積し、前記複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルを、互いに似ている膜厚プロファイルが属する複数のグループに予め分類しており、前記制御装置は、前記膜厚測定器を用いて、研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、前記研磨前の基板の膜厚プロファイルが属するグループを前記複数のグループから決定し、前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記決定されたグループに関連付けられた応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨する、研磨装置が提供される。
【0015】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットと、前記研磨ユニットの動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記基板は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含む複数の研磨工程によって研磨される基板であり、前記第1研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第2研磨応答モデルを予め記憶しており、前記制御装置は、前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨装置が提供される。
【0016】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットと、前記基板の膜厚プロファイルを測定する膜厚測定器と、前記研磨ユニット、および前記膜厚測定器の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記基板は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含む複数の研磨工程によって研磨される基板であり、前記第2研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルを予め記憶しており、前記制御装置は、前記膜厚測定器を用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを有する研磨ユニットに前記基板を搬送して、前記膜厚センサを用いて、前記第1研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨する、研磨装置が提供される。
【0017】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサと、を含む複数の研磨ユニットと、前記研磨ユニットの動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記基板は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含む複数の研磨工程によって研磨される基板であり、前記制御装置は、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルおよび第2研磨応答モデルを予め記憶しており、前記制御装置は、前記複数の研磨ユニットのうちのいずれかに前記基板を搬送して、前記膜厚センサを用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨装置が提供される。
【0018】
一態様では、基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を有する基板保持装置に保持された前記基板を、研磨テーブルに支持された研磨パッドに押し付けて研磨する研磨方法であって、膜厚測定器を用いて、前記基板の研磨前の膜厚プロファイルを取得し、前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨し、前記応答モデルは、各圧力室の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成される、研磨方法が提供される。
【0019】
一態様では、前記最適研磨レシピが、少なくとも前記目標研磨量と、前記応答モデルを用いて算出した予測研磨量の差分の項を含む目的関数を最小化する最適化計算を用いて作成される。
一態様では、前記目的関数が、さらに、前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と予め設定された基準圧縮流体圧力との差分の項、および/または前記最適研磨レシピの圧縮流体圧力と先に研磨されたウエハの最適研磨レシピの圧縮流体圧力との差分の項を含む。
一態様では、前記最適化計算が、二次計画法である。
一態様では、前記複数のモニタ領域が、前記複数の圧力室の数よりも多い。
一態様では、前記応答モデルが、さらに前記研磨パッドへの前記リテーナリングの押圧力の変化に伴う前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルであり、前記最適研磨レシピが、更に前記リテーナリングの押圧力を含む。
【0020】
一態様では、前記膜厚測定器は、前記複数のモニタ領域のそれぞれに設定された複数の測定点で膜厚を測定する。
一態様では、前記応答モデルは、前記複数のモニタ領域のそれぞれにおける単位研磨圧力あたりの研磨レートの増加量を表す応答係数を含む。
一態様では、前記応答モデルは、複数の局所荷重付与装置によって前記リテーナリングの一部に加えられる局所荷重の変化に伴う、前記複数のモニタ領域の相互間における研磨量の変化をさらに考慮して作成される。
【0021】
一態様では、基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を有する基板保持装置に保持された前記基板を、研磨テーブルに支持された研磨パッドに押し付けて研磨する研磨方法であって、複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルと、前記複数の基板のそれぞれを研磨した時の応答モデルであって、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された応答モデルと、を予め蓄積し、前記複数の基板の研磨前の膜厚プロファイルを、互いに似ている膜厚プロファイルが属する複数のグループに予め分類し、前記基板の研磨前の膜厚プロファイルを取得して、該膜厚プロファイルが属するグループを前記複数のグループから決定し、前記研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記決定されたグループに関連付けられた応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む最適研磨レシピで前記基板を研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記最適研磨レシピおよび前記基板の研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記応答モデルと、に基づいて作成した新たな最適研磨レシピで次の基板を研磨する、研磨方法が提供される。
【0022】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットで行われる複数の研磨工程によって、前記基板を研磨する方法であって、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記複数の研磨工程は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含んでおり、前記第1研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第2研磨応答モデルを予め準備し、前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨方法が提供される。
【0023】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットで行われる複数の研磨工程によって、前記基板を研磨する方法であって、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記複数の研磨工程は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含んでおり、前記第2研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサを有しており、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルを予め準備し、膜厚測定器を用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、前記第1研磨を行った後で、前記膜厚センサを有する研磨ユニットに前記基板を搬送し、前記膜厚センサを用いて、前記第1研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨する、研磨方法が提供される。
【0024】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための基板保持装置と、を含む複数の研磨ユニットで行われる複数の研磨工程によって、前記基板を研磨する方法であって、前記基板保持装置は、前記基板を押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が取り付けられるヘッド本体と、前記基板を囲むように配置されたリテーナリングと、を備えており、前記複数の研磨工程は、第1研磨、および前記第1研磨が行われた研磨ユニットとは別の研磨ユニットで行われる第2研磨を含んでおり、前記第1研磨を行う研磨ユニットと前記第2研磨を行う研磨ユニットは、前記基板の膜厚プロファイルを測定可能な膜厚センサをそれぞれ有しており、各圧力室内の圧力の変化に伴う、前記基板の複数のモニタ領域における相互間の研磨量の変化を考慮して作成された第1研磨応答モデルおよび第2研磨応答モデルを予め準備し、前記第1研磨を行う研磨ユニットに前記基板を搬送して、前記膜厚センサを用いて、前記基板の前記第1研磨前の膜厚プロファイルを取得し、前記第1研磨前の基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第1研磨最適レシピで前記基板を第1研磨し、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、前記第2研磨前の前記基板の膜厚プロファイルと前記基板の目標膜厚との差分である目標研磨量と、前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成された、少なくとも前記複数の圧力室に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を含む第2研磨最適レシピで前記基板を第2研磨し、前記膜厚センサを用いて、前記第2研磨後の前記基板の膜厚プロファイルを取得し、次の基板の目標研磨量と、前記第1研磨最適レシピおよび前記基板の前記第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第1研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第1研磨最適レシピで次の基板を第1研磨し、次の基板の目標研磨量と、前記第2研磨最適レシピおよび前記基板の前記第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて補正した前記第2研磨応答モデルと、に基づいて作成した新たな第2研磨最適レシピで次の基板を第2研磨する、研磨方法が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、応答モデルを用いて得られた最適研磨レシピは、各圧力室の圧力の変化に伴う基板の領域の相互間の研磨量の変化が考慮されている。したがって、基板の膜厚プロファイルをより精密に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す研磨ユニットの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、研磨ヘッドの一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る研磨方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6(a)は、複数の圧力室の一例を示す模式図であり、
図6(b)は、ウエハのモニタ領域の一例を示す模式図であり、
図6(c)は、ウエハのモニタ領域の他の例を示す模式図であり、
図6(d)は、ウエハのモニタ領域のさらに他の例を示す模式図であり、
図6(e)は、ウエハのモニタ領域のさらに他の例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、多数のウエハの各測定ポイントにおける研磨レートをグラフ化した概念図である。
【
図8】
図8は、ウエハの各測定ポイントにおける応答係数をグラフ化した概念図である。
【
図9】
図9は、応答モデルの行列C,D,R,Xの一例を示した図である。
【
図10】
図10は、応答モデルの行列C’,X’の一例を示した図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態に係る研磨ヘッドを模式的に示す斜視図である。
【
図12】
図12は、リテーナリングが研磨面を押し付けているときの状態を模式的に示した縦断面図である。
【
図13】
図13は、複数の実施形態に係る最適研磨レシピ作成方法を利用して、複数のウエハを連続して研磨した時の各実施形態における面内均一性の推移を示したグラフである。
【
図14】
図14は、他の実施形態に係る研磨方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、他の実施形態に係る研磨ユニットを示す模式図である。
【
図16】
図16は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートである。
【
図17】
図17は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートである。
【
図18】
図18は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートの前半部分である。
【
図19】
図19は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートの後半部分である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す平面図である。
図1に示す研磨装置は、基板の一例であるウエハの表面を研磨し、研磨後のウエハを洗浄し、洗浄後のウエハを乾燥させる一連の研磨プロセスを実行するCMP装置である。
【0028】
図1に示すように、研磨装置は、略矩形状のハウジング10と、多数のウエハ(基板)を収容する基板カセットが載置されるロードポート12を備えている。ロードポート12は、ハウジング10に隣接して配置されている。ロードポート12には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIF、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0029】
ハウジング10の内部には、ウエハを研磨する複数(本実施形態では4つ)の研磨ユニット14a~14dと、研磨されたウエハを洗浄する第1洗浄ユニット16及び第2洗浄ユニット18と、洗浄されたウエハを乾燥させる乾燥ユニット20が収容されている。研磨ユニット14a~14dは、基板処理装置の長手方向に沿って配列され、洗浄ユニット16,18及び乾燥ユニット20も基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。さらに、研磨装置は、ハウジング10の内部に位置して、各ユニットの動作を制御する制御装置30を有している。
【0030】
ロードポート12、研磨ユニット14a、及び乾燥ユニット20に囲まれた領域には、第1基板搬送ロボット22が配置され、また研磨ユニット14a~14dと平行に、基板搬送装置24が配置されている。第1基板搬送ロボット22は、研磨前のウエハをロードポート12から受け取って基板搬送装置24に渡すとともに、乾燥されたウエハを乾燥ユニット20から受け取ってロードポート12に戻す。基板搬送装置24は、第1基板搬送ロボット22から受け取った基板を搬送して、各研磨ユニット14a~14dとの間で基板の受け渡しを行う。
【0031】
第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18の間に位置して、これらの洗浄ユニット16,18および基板搬送装置24の間でウエハを搬送する第2基板搬送ロボット26が配置され、第2洗浄ユニット18と乾燥ユニット20との間に位置して、これらの各ユニット18,20の間でウエハを搬送する第3基板搬送ロボット28が配置されている。これら第1基板搬送ロボット22、基板搬送装置24、第2基板搬送ロボット26、および第3基板搬送ロボット28は、ロードポート12、研磨ユニット14a~14d、洗浄ユニット16,18、および乾燥ユニット20の間でウエハの受け渡しを行うための基板搬送ユニットを構成する。
【0032】
本実施形態では、第1洗浄ユニット16として、薬液の存在下で、ウエハの表裏両面にロールスポンジを擦り付けて基板をスクラブ洗浄する基板洗浄装置が使用されており、第2洗浄ユニット18として、ペン型スポンジ(ペンスポンジ)を用いた基板洗浄装置が使用されている。一実施形態では、第2洗浄ユニット18として、薬液の存在下で、ウエハの表裏両面にロールスポンジを擦り付けてウエハをスクラブ洗浄する基板洗浄装置を使用してもよい。また、乾燥ユニット20として、ウエハを保持し、移動するノズルからIPA蒸気を噴出してウエハを乾燥させ、更に高速で回転させることによってウエハを乾燥させるスピン乾燥装置が使用されている。
【0033】
ウエハは、研磨ユニット14a~14dの少なくとも1つにより研磨される。研磨されたウエハは、第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18により洗浄され、さらに洗浄された基板は乾燥ユニット20により乾燥される。一実施形態では、研磨された基板を、第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18のいずれか一方で洗浄してもよい。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る研磨装置は、ウエハの表面(被研磨面)の膜厚プロファイルを検出(測定)するための膜厚測定器(ITM:In-line Thickness Monitor)8を備えている。膜厚測定器8の種類は、ウエハの膜厚プロファイルを取得可能である限り任意である。例えば、膜厚測定器8は、渦電流式や光学式のような非接触式の検出方式を利用する測定機であってもよいし、ウエハの上方を非接触式に走査する検出ヘッドによって膜厚プロファイルを検出する測定器であってもよい。あるいは、膜厚測定器8は、ウエハの表面に接触させたプローブを走査して、該プローブの上下動をモニタリングすることでウエハの表面の凹凸の分布を検出する測定機であってもよい。接触式および非接触式のいずれの検出方式においても、検出される出力は膜厚もしくは膜厚に相当する信号である。ウエハの膜厚プロファイルの検出に際しては、ウエハのノッチの位置またはオリエンテーションフラットの位置を基準とすることで、膜厚プロファイルを半径方向の位置のみでなく、周方向の位置とも関連付けてもよい。
【0035】
膜厚測定器8は、制御装置30に接続されており、制御装置30は、膜厚測定器8の動作を制御可能に構成されている。さらに、膜厚測定器8は、その測定値を制御装置30に送信し、制御装置30は、膜厚測定器8から送信された測定値からウエハの膜厚プロファイルを取得することができる。
【0036】
図2は、
図1に示す研磨ユニット14aの一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図1に示す研磨装置の研磨ユニット14a~14dは、互いに同一の構成を有しているため、以下では、研磨ユニット14aについて説明する。
【0037】
図2に示す研磨ユニット14aは、研磨面33aを有する研磨パッド33が取り付けられた研磨テーブル35と、ウエハWを保持しかつウエハWを研磨テーブル35上の研磨パッド33に押圧する研磨ヘッド37と、研磨パッド33に研磨液やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための研磨液供給ノズル38と、研磨パッド33の研磨面33aのドレッシングを行うためのドレッサー41を有するドレッシング装置40と、を備えている。
【0038】
研磨テーブル35は、テーブル軸35aを介してその下方に配置されるテーブルモータ31に連結されており、このテーブルモータ31により研磨テーブル35が矢印で示す方向に回転されるようになっている。この研磨テーブル35の上面には研磨パッド33が貼付されており、研磨パッド33の上面がウエハWを研磨する研磨面33aを構成している。研磨ヘッド37はヘッドシャフト36の下端に連結されている。研磨ヘッド37は、真空吸引によりその下面にウエハWを保持できるように構成されている。ヘッドシャフト36は、上下動機構(図示せず)により上下動するようになっている。
【0039】
ヘッドシャフト36は、ヘッドアーム42に回転自在に支持されており、ヘッドアーム42は、ヘッド旋回モータ54に駆動されて、ヘッド旋回軸43を中心として旋回するように構成されている。ヘッド旋回モータ54を駆動することにより、研磨ヘッド37は、研磨パッド33の上方の研磨位置と、研磨パッド33の側方の待機位置との間を移動する。
【0040】
ドレッシング装置40は、研磨パッド33に摺接されるドレッサー41と、ドレッサー41が連結されるドレッサーシャフト45と、ドレッサーシャフト45の上端に設けられたエアシリンダ47と、ドレッサーシャフト45を回転自在に支持するドレッサーアーム48とを備えている。ドレッサー41の下面はドレッシング面41aを構成し、このドレッシング面41aは砥粒(例えば、ダイヤモンド粒子)から構成されている。エアシリンダ47は、複数の支柱51により支持された支持台50上に配置されており、これら支柱51はドレッサーアーム48に固定されている。
【0041】
ドレッサーアーム48は、ドレッサー旋回モータ55に駆動されて、ドレッサー旋回軸49を中心として旋回するように構成されている。ドレッサーシャフト45は、図示しないモータの駆動により回転し、このドレッサーシャフト45の回転により、ドレッサー41がドレッサーシャフト45を中心に矢印で示す方向に回転するようになっている。エアシリンダ47は、ドレッサーシャフト45を介してドレッサー41を上下動させ、ドレッサー41を所定の押圧力で研磨パッド33の研磨面(表面)33aに押圧するアクチュエータとして機能する。
【0042】
次に、
図3を参照して、研磨ユニット14aに備えられている研磨ヘッド37の一例について説明する。
図3は、研磨ヘッドの一例を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、研磨ヘッド37は、ヘッドシャフト36の下端に固定されたヘッド本体2と、研磨面33a(
図2参照)を直接押圧するリテーナリング3と、ウエハWを研磨面33aに対して押圧する弾性膜(メンブレン)5とから基本的に構成される。リテーナリング3はウエハWを囲むように配置されており、ヘッド本体2に連結されている。弾性膜5は、ヘッド本体2の下面を覆うようにヘッド本体2に取り付けられている。
【0043】
弾性膜5は、同心状に配置された複数(図示した例では8つ)の環状の周壁5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g,5hを有している。これら複数の周壁5a~5hによって、弾性膜5の上面とヘッド本体2の下面との間に、中央に位置する円形状の中央圧力室7a、最外周に位置する環状のエッジ圧力室7h、および中央圧力室7aとエッジ圧力室7hとの間に位置する、環状の6つの中間圧力室(第1~第6中間圧力室)7b,7c,7d,7e,7f,7gが形成されている。本実施形態では、弾性膜5に形成される圧力室の数は8であるが、圧力室の数は本実施形態には限定されない。圧力室の数は弾性膜5の構造に応じて増減されてもよい。
【0044】
ヘッド本体2内には、圧力室7a~7hにそれぞれ連通する流路4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4hがそれぞれ形成されている。そして、流路4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4hは、それぞれ流体ライン6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6hを介して圧力調整装置65に接続されている。圧力調整装置65は制御装置30に接続されており、制御装置30は圧力調整装置65の動作を制御可能に構成されている。
【0045】
リテーナリング3の直上にはリテーナ室34が形成されており、リテーナ室34は、ヘッド本体2内に形成された流路4iおよび流体ライン6iを介して圧力調整装置65に接続されている。
【0046】
図3に示すように構成された研磨ヘッド37によれば、ウエハWを研磨ヘッド37で保持した状態で、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力をそれぞれ制御することで、ウエハWの半径方向に沿った弾性膜5上の複数の領域(エリア)毎に異なった圧力でウエハWを押圧することができる。このように、研磨ヘッド37においては、ヘッド本体2と弾性膜5との間に形成される各圧力室7a~7hに供給する圧縮流体の圧力を調整することにより、ウエハWに加えられる押圧力をウエハWの領域毎に調整できる。同時に、リテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力を制御することで、リテーナリング3が研磨パッド33(
図2参照)を押圧する押圧力を調整できる。
【0047】
リテーナリング3が研磨パッド33を押圧すると、その押圧力に応じて研磨パッド33の形状が変化する。そのため、研磨パッド33へのリテーナリング3の押圧力も、研磨後のウエハWの膜厚プロファイルに影響を与える要因となる。
【0048】
リテーナリング3は、例えばエンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成され、弾性膜5は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0049】
次に、
図4を参照して、
図3に示す圧力調整装置65の構成について説明する。
図4は、
図3に示す圧力調整装置65を示す模式図である。
図4に示すように、流体ライン6a~6iには、開閉バルブV1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8,V9と圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9がそれぞれ接続されている。流路4a~4iは、それぞれ流体ライン6a~6iを介して流体供給源32に接続されている。
【0050】
さらに、流体ライン6a~6iには、大気開放ライン151~159が接続されている。これら大気開放ライン151~159には、大気開放バルブL1~L9がそれぞれ取り付けられている。
【0051】
圧力レギュレータR1~R9は、それぞれ流体供給源32から圧力室7a~7hおよびリテーナ室34に供給する圧縮流体の圧力を調整する圧力調整機能を有している。圧力レギュレータR1~R9、開閉バルブV1~V9、および大気開放バルブL1~L9は、制御装置30に接続されていて、それらの動作が制御装置30で制御されるようになっている。大気開放バルブL1~L9が作動されると、各室7a~7h,34は、大気開放され、大気圧状態になる。
【0052】
図示しないが、流体ライン6a~6iには、複数の真空ラインがそれぞれ接続されており、これら複数の真空ラインを通じて各室7a~7h,34には負圧を形成することができる。このように、各圧力室7a~7h,34は、圧力調整装置65によって加圧状態、負圧状態、大気圧状態のいずれかの圧力状態に調整される。
【0053】
弾性膜5の下面にウエハWが接触した状態で中間圧力室7b~7gのいずれか(例えば、中間圧力室7d)に真空が形成されると、ウエハWが研磨ヘッド37に真空吸引により保持される。さらに、ウエハWが研磨パッド33から離れた状態で、中間圧力室7b~7gのいずれか(例えば、中間圧力室7d)に圧縮流体を供給すると、ウエハWが研磨ヘッド37からリリースされる。
【0054】
次に、この研磨装置を用いて、ウエハWを研磨する研磨方法について説明する。
図5は、一実施形態に係る研磨方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、研磨装置の制御装置30は、ロードポート12(
図1参照)に載置された基板カセットからウエハWを取り出して、膜厚測定器8に搬送し、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図5のステップ1参照)。
【0055】
次いで、制御装置30は、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルと応答モデルに基づいて、最適研磨レシピを作成する(
図5のステップ2参照)。応答モデルは、予め制御装置30に記憶されている。この応答モデルの作成方法については後述する。
【0056】
以下では、一実施形態に係る最適研磨レシピの作成方法が説明される。
【0057】
最初に、制御装置30は、膜厚測定器8によって取得された、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルから、弾性膜5の各圧力室7a~7hに対応するウエハWのモニタ領域ごとの初期膜厚を算出する。以下では、説明の便宜上、圧力室7aに対応するウエハWのモニタ領域をDaと表し、モニタ領域Daの初期膜厚をTaと表す。同様に、圧力室7bに対応するウエハWのモニタ領域をDbと表し、モニタ領域Dbの初期膜厚をTbと表し、圧力室7cに対応するウエハWのモニタ領域をDcと表し、モニタ領域Dcの初期膜厚をTcと表し、圧力室7dに対応するウエハWのモニタ領域をDdと表し、モニタ領域Ddの初期膜厚をTdと表し、圧力室7eに対応するウエハWのモニタ領域をDeと表し、モニタ領域Deの初期膜厚をTeと表し、圧力室7fに対応するウエハWのモニタ領域をDfと表し、モニタ領域Dfの初期膜厚をTfと表し、圧力室7gに対応するウエハWのモニタ領域をDgと表し、モニタ領域Dgの初期膜厚をTgと表し、圧力室7hに対応するウエハWのモニタ領域をDhと表し、モニタ領域Dhの初期膜厚をThと表す。
【0058】
膜厚測定器8は、モニタ領域Da~Dhのそれぞれにおいて、複数の測定ポイントで膜厚を測定し、それら測定値を制御装置30に送信する。制御装置30は、各モニタ領域Da~Dhにおける複数の膜厚測定値の代表値を初期膜厚Ta~Thとして決定する。代表値は、例えば、複数の膜厚測定値の平均値である。次いで、制御装置30は、初期膜厚Ta~Thと目標膜厚Ttとの差分をそれぞれ算出して、各モニタ領域Da~Dhの目標研磨量Ra’~Rh’を算出する。
【0059】
次いで、制御装置30は、予め制御装置30に記憶された応答モデルを用いて、各モニタ領域Da~Dhにおける予測研磨量Ra~Rhを算出する。さらに、制御装置30は、予測研磨量Ra~Rhが算出された目標研磨量Ra’~Rh’に近い値となるように、少なくとも各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力と研磨時間とを最適化計算により算出する。
【0060】
この最適化計算では、例えば、以下の式(1)に示す目的関数が用いられる。具体的には、最適化計算では、予測研磨量Ra~Rhと目標研磨量Ra’~Rh’との差分を含む目的関数が最小となる各圧力室7a~7h、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間とが算出される。
【0061】
目的関数=Σ|予測研磨量-目標研磨量|2・・・(1)
【0062】
式(1)に示す目的関数では、研磨量のみを考慮しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、以下の式(2)に示すように、目的関数が、算出された最適圧縮流体圧力と事前に設定された基準圧縮流体圧力との差分、および算出された最適圧縮流体圧力と先のウエハの研磨時における最適圧縮流体圧力との差分の項を含んでいることも好ましい。
【0063】
目的関数=Σ|予測研磨量-目標研磨量|2
+λΣ|算出する最適圧縮流体圧力-基準圧縮流体圧力|2
+γΣ|算出する最適圧縮流体圧力-前ウエハの最適圧縮流体圧力|2・・・(2)
【0064】
ここで、λとγは各項の重みを決定する重み係数であり、任意の0以上の実数を設定することができる。これらの項を追加することで、算出される最適圧縮流体圧力が処理するウエハ毎に大きく変化するのを抑制し、安定した最適研磨条件を得ることができる。
【0065】
各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力は、各モニタ領域Da~Dhにおける研磨圧力に相当する。また、研磨パッド33へのリテーナリング3の押圧力は、リテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力に相当する。
【0066】
本実施形態では、ウエハWの膜厚のモニタ領域を、弾性膜5の各圧力室7a~7hに対応させて、弾性膜5の圧力室の総数に等しい数の領域に分割した(
図6(a)および
図6(b)参照)が、ウエハWの膜厚のモニタ領域をさらに細かく分割してもよい。上述したように、膜厚測定器8は、モニタ領域Da~Dhのそれぞれにおいて、複数の測定ポイントで膜厚を測定することができる。そのため、例えば、ウエハWの膜厚のモニタ領域を、膜厚測定器8による膜厚の各測定ポイントMPに対応するモニタ領域D1~Dmに分割することができる(
図6(a)および
図6(c)参照)。ここで、添え字「m」は、測定ポイントの数に対応する。
【0067】
さらに他のモニタ領域を細分割する方法では、ウエハ全面、または各モニタ領域Da~Dhを等間隔(例えば、1mm間隔に)に分割して、それぞれの分割領域を新たなモニタ領域D1~Dnとしてもよい(
図6(d)参照)。ここで、「n」は、細分割したモニタ領域の総数である。このようにモニタ領域を細分割すると、各モニタ領域内に膜厚測定器8による膜厚の測定ポイントが存在しない場合が生じうる。そこで、各測定ポイントにおける測定膜厚値から、各モニタ領域の代表点(例えば各モニタ領域の中心位置)における膜厚値を補間処理により算出することで、細分割された各モニタ領域の代表膜厚値(推定膜厚値)を算出することができる。このように、ウエハWの膜厚のモニタ領域を、弾性膜5の圧力室の総数よりも多くの領域に分割することにより、ウエハWの膜厚プロファイルをより精密に制御することができる。
【0068】
ウエハWの膜厚のモニタ領域を決定する際に、上記モニタ領域の設定方法のうちいずれか1つの方法だけを選ぶ必要はなく、複数の設定方法を組み合わせてもよい。例えば、ウエハWの内側の領域(例えば圧力室7a~7fに対応する領域)では、ウエハWの膜厚のモニタ領域を、圧力室7a~7fに対応するモニタ領域Da~Dfに設定し、ウエハWの外側の領域(例えば圧力室7g~7hに対応する領域)では、ウエハWの膜厚のモニタ領域を、膜厚測定器8による膜厚の各測定ポイントMPに対応するモニタ領域に設定してもよい(
図6(a)および
図6(e)参照)。
【0069】
次に、応答モデルの作成方法について説明する。応答モデルは、例えば、実験により作成される。実験では、最初に、膜厚測定器8で膜厚プロファイルを取得済みのウエハを、基準となる研磨レシピ(すなわち、所定の研磨圧力および所定の研磨時間)で研磨し、研磨後のウエハの膜厚プロファイルを膜厚測定器8によって取得する。次いで、基準研磨レシピで研磨されたウエハWとは別の多数のウエハを、弾性膜5の各圧力室7a~7h、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力を基準研磨レシピの圧力から変化させて研磨する。この際、多数のウエハは、研磨前後の膜厚プロファイルを膜厚測定器8によって取得される。
【0070】
上述したように、膜厚測定器8は、ウエハW上の複数の測定ポイントで膜厚を測定することができる。したがって、制御装置30は、基準研磨レシピで研磨されたウエハと多数のウエハの研磨前後の膜厚プロファイルから、各測定ポイントにおける研磨レートを算出することができる。
図7は、多数のウエハの各測定ポイントにおける研磨レートをグラフ化した概念図である。
図7において、縦軸は研磨レートを表し、横軸はウエハの半径方向の位置を表す。
【0071】
次に、制御装置30は、多数のウエハの各測定ポイントにおける研磨レートから単位研磨圧力(例えば、1hPa)あたりの研磨レートの増加量を算出する。本明細書では、単位研磨圧力あたりの研磨レートの増加量を、「応答係数」と称する。また、算出した応答係数を後述の式(3)に代入して求めた予測研磨量Rが、前述の基準となる研磨レシピで研磨して得られた実際の研磨量と等しくなるようにオフセット量Dを算出する。
【0072】
さらに、算出した各測定ポイントにおける応答係数とオフセット量から、前述の各モニタ領域における応答係数とオフセット量を補間処理により算出することで、各モニタ領域の応答係数とオフセット量を決定する。
図8は、ウエハの各測定ポイントにおける応答係数をグラフ化した概念図である。
図8において、縦軸は応答係数を表し、横軸はウエハの半径方向の位置を表す。
【0073】
このように算出された応答係数とオフセット量とは、応答モデルに含まれる。制御装置30は、応答モデルを利用して最適研磨レシピを作成する。具体的には、制御装置30は、以下の式(3)により、各圧力室7a~7h、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間とから予測研磨量Rを算出する。
【0074】
R = Tp・(C・X+D) ・・・(3)
【0075】
さらに算出された予測研磨量Rを式(1)もしくは式(2)に代入することにより、目的関数値を算出する。制御装置30は目的関数値が最小になる、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間とを最適化計算により求めることで、最適研磨レシピを作成する。ここで、上記式(1)または(2)はXの二次式の形で表すことができるため、最適化計算に二次計画法を用いることで、最適研磨レシピを一意的に決定することができる。その他にも、最急降下法等の勾配法、もしくはモンテカルロ法等の最適化計算手法を用いることができる。
【0076】
式(3)において、RはウエハWの各モニタ領域D1~Dmの予測研磨量R1~Rmからなる行列であり、Tpは、研磨時間であり、Cは、ウエハWの各モニタ領域における応答係数からなる行列であり、Xは、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力からなる行列であり、Dは、ウエハWの各モニタ領域D1~Dmのオフセットからなる行列である。ここで、添え字「m」は、ウエハWのモニタ領域の数に対応する。
【0077】
R,C,D,Xは、
図9に示すような行列として表される。行列R,C,Dにおいて、各行は、ウエハWの各モニタ領域D1~Dmに対応する。行列Cに掛け合わされる行列Xは、弾性膜5の各圧力室7a~7hに供給されるべき圧縮流体の圧力に対応する。したがって、行列Xにおいて、「Pa」は、弾性膜5の圧力室7aに供給されるべき圧縮流体の圧力であり、「Pc」は、弾性膜5の圧力室7cに供給されるべき圧縮流体の圧力である。
【0078】
行列Cにおける応答係数の2つの添え字のうち前の添え字は、ウエハWの各モニタ領域D1~Dmに対応し、後ろの添え字は、各圧力室7a~7hに供給されるべき圧縮流体の圧力に対応する。例えば、応答係数C2bは、ウエハWのモニタ領域D2における圧力室7bに供給される圧縮流体の圧力に対する応答係数であり、応答係数C3cは、ウエハWのモニタ領域D3における圧力室7cに供給される圧縮流体の圧力に対する応答係数である。
【0079】
制御装置30は、上述の最適化計算により、弾性膜5の各圧力室7a~7hに供給されるべき圧縮流体の圧力Pa~Phと、研磨時間Tpを算出し、これら圧縮流体の圧力Pa~Phと、研磨時間Tpを最適研磨レシピとして用いる。このように算出された最適研磨レシピは、ウエハWの各モニタ領域D1~Dmにおける複数の膜厚測定値を利用して、各圧力室7a~7hの研磨圧力を決定するため、精密にウエハWの膜厚プロファイルを制御することが可能となる。
【0080】
一実施形態では、弾性膜5の各圧力室7a~7hに供給されるべき圧縮流体の圧力Pa~Phと研磨時間Tpに、リテーナ室34に供給されるべき圧縮流体の圧力Piを加えた最適研磨レシピを算出してもよい。この場合、上述の応答行列Cの代わりに、
図10に示すような各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力に対応する応答係数C1a~Cmhと、リテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力に対応する応答係数C1i~Cmiからなる行列C’を用いる。また、行列Xの代わりに、弾性膜5の各圧力室7a~7hに供給されるべき圧縮流体の圧力Pa~Phと、リテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力Piからなる行列X’を用いる。
【0081】
応答係数C1a~Cmhおよび応答係数C1i~Cmiは、以下のように決定することができる。最初に、応答係数C1a~Cmhを決定する実験において、リテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力を所定の値に固定した状態で、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力を変化させて応答係数C1a~Cmhを算出する。次いで、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力を所定の値に固定した状態で、リテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力を変化させて、応答係数C1i~Cmiを取得する。
【0082】
上述の応答モデルの行列C’を用いて得られた最適研磨レシピは、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化だけでなく、研磨パッド33へのリテーナリング3の押圧力の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化も考慮されている。したがって、ウエハWの膜厚プロファイルをより精密に制御することができる。
【0083】
一実施形態では、応答モデル、すなわち、応答係数C1a~Cmhからなる行列C(または、応答係数C1i~Cmiからなる行列C’)および行列D(または、行列D’)をシミュレーションによって決定してもよい。この場合も、シミュレーションによって得られた行列C(または、行列C’)および行列D(または、行列D’)は、予め制御装置30に記憶される。
【0084】
図5に戻り、制御装置30は、ウエハWを研磨ユニット14a~14dのいずれかに搬送し、ウエハWを上述した最適研磨レシピで研磨する(
図5のステップ3参照)。ウエハWの研磨は次のようにして行われる。
図2に示すように、研磨ヘッド37および研磨テーブル35をそれぞれ矢印で示す方向に回転させ、研磨液供給ノズル38から研磨パッド33上に研磨液(スラリー)を供給する。この状態で、研磨ヘッド37は、最適研磨レシピに応じた研磨時間だけ、ウエハWを研磨パッド33の研磨面33aに押し付ける。ウエハWを研磨パッド33に押しつける際には、弾性膜5の各圧力室7a~7h、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力は、最適研磨レシピに応じた圧力に調整される。ウエハWの表面は、研磨液に含まれる砥粒の機械的作用と研磨液の化学的作用により研磨される。研磨終了後は、ドレッシング装置40による研磨面33aのドレッシング(コンディショニング)が行われる。
【0085】
研磨パッド33のドレッシングは次のようにして行われる。ドレッサー41がドレッサーシャフト45を中心として回転しつつ、研磨液供給ノズル38から純水が研磨パッド33上に供給される。この状態で、ドレッサー41はエアシリンダ47により研磨パッド33に押圧され、そのドレッシング面41aが研磨パッド33の研磨面33aに摺接される。さらに、ドレッサーアーム48をドレッサー旋回軸49を中心として旋回させてドレッサー41を研磨パッド33の半径方向に揺動させる。このようにして、ドレッサー41により研磨パッド33が僅かに削り取られ、その表面33aがドレッシング(再生)される。
【0086】
次いで、制御装置30は、研磨後のウエハWを第1洗浄ユニット16および/または第2洗浄ユニット18に搬送して洗浄し、さらに洗浄されたウエハWを乾燥ユニット20に搬送して乾燥させる。さらに、制御装置30は、研磨後のウエハWを膜厚測定器8に搬送して、研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図5のステップ4参照)。制御装置30は、研磨前後のウエハWの膜厚プロファイルと、このウエハWを研磨した最適研磨レシピとを記憶する。
【0087】
次に、制御装置30は、次のウエハWを研磨するための最適研磨レシピを作成するために、記憶された応答モデルを補正する(
図5のステップ5参照)。応答モデルの補正は次のように行われる。
【0088】
制御装置30は、既に研磨されたウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルからウエハWの各モニタ領域D1~Dmにおける実際の研磨量Racを算出する。実際の研磨量Racを算出する際には、制御装置30は、各モニタ領域D1~Dmにおける上記初期膜厚値T1~Tmから、研磨後のウエハWの各モニタ領域D1~Dmに対応する複数の膜厚測定値の代表値である研磨後膜厚値T1’~Tm’をそれぞれ減算する。研磨後膜厚値T1’~Tm’は、例えば、各モニタ領域D1~Dmにおける複数の膜厚測定値の平均値、または研磨後膜厚測定値から補間により算出した各モニタ領域の代表点における膜厚値である。制御装置30は、初期膜厚T1~Tmから研磨後膜厚値T1’~Tm’を減算することで、各モニタ領域D1~Dmの実際の研磨量Rac1~Racmを算出する。
【0089】
次に、制御装置30は、上記式(3)における予測研磨量Rと実際の研磨量Racとが以下の式(4)を満たすように、補正係数Kを算出する。
【0090】
Rac = K・R ・・・(4)
【0091】
ここで、Racは、各モニタ領域D1~Dmの実際の研磨量Rac1~Racmからなる行列であり、Kは、各モニタ領域D1~Dmに対応する補正係数からなる行列である。
【0092】
次に、以下の式(5)および(6)に示すように、制御装置30は、上述した行列Cと行列Dに、式(4)から得られたKを乗算し、補正された応答係数行列Cadjおよび補正されたオフセット量行列Dadjを算出し記憶する。
【0093】
Cadj=K・C ・・・(5)
【0094】
Dadj=K・D ・・・(6)
【0095】
次に、制御装置30は、次のウエハWを膜厚測定器8に搬送して、研磨前の次のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図5のステップ6参照)。
【0096】
次に、制御装置30は、次の式(7)から求めた補正予測研磨量Radjを用いて、各圧力室7a~7h、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間と、を上述の最適化計算により算出する。
Radj = Tp・(Cadj・X+Dadj) ・・・(7)
式(7)において、Radjは次のウエハWの各モニタ領域D1~Dmの予測研磨量からなる行列であり、Tpは、次のウエハWの研磨時間である。
【0097】
本実施形態では、先のウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルに基づいて補正された応答モデルを用いて、次のウエハWの研磨に用いられる最適研磨レシピの作成が行われる。先のウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルは、実際にウエハWの研磨を行った研磨ユニットの状態(例えば、研磨パッド33の表面性状)が反映されたデータである。したがって、先のウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルに基づいて補正された応答モデルを用いて、次のウエハWの研磨に用いる最適研磨レシピを作成することで、次のウエハWの膜厚プロファイルをより精密に制御できるようになる。
【0098】
次いで、制御装置30は、作成された最適研磨レシピで次のウエハWを研磨する(
図5のステップ8参照)。次いで、制御装置30は、研磨後の次のウエハWを第1洗浄ユニット16および/または第2洗浄ユニット18に搬送して洗浄し、さらに洗浄された次のウエハWを乾燥ユニット20に搬送して乾燥させる。さらに、制御装置30は、研磨後の次のウエハWを膜厚測定器8に搬送して、研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図5のステップ9参照)。
【0099】
さらに、制御装置30は、
図5のステップ5~ステップ9を繰り返す。すなわち、制御装置30は、さらに次のウエハWを研磨する前に、次のウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルと最適研磨レシピを用いて、応答モデルを補正する。次に、膜厚測定器8で、研磨前のさらに次のウエハWの膜厚プロファイルを取得する。次に、補正された応答モデルに基づいて、さらに次のウエハWの研磨に用いる最適研磨レシピを作成する。次いで、制御装置30は、作成された最適研磨レシピでさらに次のウエハWを研磨し、研磨後のさらに次のウエハWの膜厚プロファイルを取得する。このように、ウエハWを研磨するたびに応答モデルを補正していくことで、より精密に次のウエハWの膜厚プロファイルを制御できる。
【0100】
一実施形態では、制御装置30は、研磨装置の外部に設けられた演算装置70(
図1の点線参照)とデータを送受信可能に接続されていてもよい。この場合、応答モデルは、演算装置70に予め記憶されており、制御装置30は、研磨前の膜厚プロファイルと目標膜厚とを演算装置70に送信する。演算装置70は、送信された膜厚プロファイルと目標膜厚との差分である研磨量と、応答モデルとに基づいて最適研磨レシピを作成する。次いで、演算装置70は、最適研磨レシピを研磨装置の制御装置30に送信し、制御装置30は、受信した最適研磨レシピにしたがってウエハWを研磨する。さらに、制御装置30は、研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを演算装置70に送り、演算装置70は、ウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルと、このウエハWの研磨に用いられた最適研磨レシピを記憶する。さらに、制御装置30は、ウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルと、このウエハWの研磨に用いられた最適研磨レシピを用いて応答モデルを補正する。
【0101】
次のウエハWを研磨するときは、制御装置30は、研磨前の次のウエハWの膜厚プロファイルを演算装置70に送る。演算装置70は、研磨前の次のウエハWの膜厚プロファイルと目標膜厚との差分である目標研磨量と、補正された応答モデルとに基づいて、次のウエハWの研磨に用いられる最適研磨レシピを作成して、制御装置30に送信する。制御装置30は、送信された最適研磨レシピで次のウエハWを研磨する。さらに、制御装置30は、研磨後の次のウエハWの膜厚プロファイルを演算装置70に送信し、演算装置70は、次のウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルと、次のウエハWの研磨に用いられた最適研磨レシピを記憶する。演算装置70は、次のウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルと、次のウエハWの研磨に用いられた最適研磨レシピを、さらに次のウエハWを研磨する際に使用する応答モデルの補正に利用する。
【0102】
図11は、他の実施形態に係る研磨ヘッドを模式的に示す斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。なお、以下では、
図11を参照して説明される研磨ヘッド37が
図1に示す研磨ユニット14aに搭載される例を説明するが、この研磨ヘッド37を研磨ユニット14b~14dに搭載してもよい。
【0103】
図11に示す研磨ヘッド37は、ウエハWを研磨パッド33に対して押圧するヘッド本体2と、ウエハWを囲むように配置されたリテーナリング3とを備えている。リテーナリング3は、ヘッド本体2とは独立して上下動可能に構成されている。リテーナリング3は、ヘッド本体2から半径方向外側に張り出している。ウエハWの研磨中、リテーナリング3は、研磨パッド33の研磨面33aに接触し、回転しながらウエハWの外側で研磨パッド33を押し付ける。
【0104】
研磨ヘッド37は、内部に複数のローラが配置された回転リング71と、静止リング81とをさらに備えている。回転リング71は、リテーナリング3の上面に固定されており、リテーナリング3と共に回転可能に構成されている。静止リング81は、回転リング71上に配置されている。回転リング71はリテーナリング3と共に回転するが、静止リング81は回転せず、静止している。
【0105】
研磨ユニット14aは、リテーナリング3の一部に局所荷重を加える複数の局所荷重付与装置を備えている。図示した例では、研磨ユニット14aは、2つの局所荷重付与装置、すなわち、第1局所荷重付与装置83Aと、第2局所荷重付与装置83Bとを備えている。局所荷重付与装置83A,83Bは、リテーナリング3の上方に配置されている。局所荷重付与装置83A,83Bは、ヘッドアーム42(
図2参照)に固定されている。研磨中のリテーナリング3はその軸心周りに回転するが、局所荷重付与装置83A,83Bはリテーナリング3とは一体に回転せず、静止している。静止リング81は、局所荷重付与装置83A,83Bに連結されている。第1局所荷重付与装置83Aは、研磨パッド33の研磨面33aの進行方向においてリテーナリング3の上流側(研磨面33aが流入するリテーナリング3の一方側)に配置されており、第2局所荷重付与装置83Bは、研磨パッド33の研磨面33aの進行方向においてリテーナリング3の下流側(研磨面33aが流出するリテーナリング3の反対側)に配置されている。
【0106】
複数の局所荷重付与装置83A,83Bは、静止リング81に下向きの局所荷重を与える複数の押圧部材84A,84Bと、複数のブリッジ85A,85Bと、下向きの力を発生する複数のエアシリンダ86A,86Bと、エアシリンダ86A,86B内の圧縮流体の圧力を調節する複数の圧力レギュレータR10,R11と、複数のリニアガイド87A,87Bと、複数のガイドロッド88A,88Bと、複数のユニットベース89A,89Bと、を備えている。
【0107】
具体的には、第1局所荷重付与装置83Aは、第1押圧部材84Aと、第1ブリッジ85Aと、第1エアシリンダ86Aと、第1圧力レギュレータR10と、第1リニアガイド87Aと、第1ガイドロッド88Aと、第1ユニットベース89Aとを備えている。第2局所荷重付与装置83Bは、第2押圧部材84Bと、第2ブリッジ85Bと、第2エアシリンダ86Bと、第2圧力レギュレータR11と、第2リニアガイド87Bと、第2ガイドロッド88Bと、第2ユニットベース89Bとを備えている。
【0108】
第1エアシリンダ86Aのピストンロッド101aは、第1ブリッジ85Aを介して第1押圧部材84Aに連結され、第1押圧部材84Aの端部は静止リング81に連結されている。したがって、第1エアシリンダ86Aによって発生した力は第1押圧部材84Aに伝えられ、第1押圧部材84Aは静止リング81の一部に局所荷重を加える。同様に、第2エアシリンダ86Bのピストンロッド101bは、第2ブリッジ85Bを介して第2押圧部材84Bに連結され、第2押圧部材84Bの端部は静止リング81に連結されている。したがって、第2エアシリンダ86Bによって発生した力は第2押圧部材84Bに伝えられ、第2押圧部材84Bは静止リング81の一部に局所荷重を加える。
【0109】
本実施形態では、第1エアシリンダ86Aと第1圧力レギュレータR10との組み合わせは、第1押圧部材84Aから静止リング81に加えられる局所荷重を調節する第1アクチュエータ90Aを構成し、第2エアシリンダ86Bと第2圧力レギュレータR11との組み合わせは、第2押圧部材84Bから静止リング81に加えられる局所荷重を調節する第2アクチュエータ90Bを構成する。一実施形態では、第1アクチュエータ90Aおよび第2アクチュエータ90Bのそれぞれは、サーボモータと、ボールねじ機構と、モータドライバとの組み合わせから構成されてもよい。
【0110】
第1押圧部材84Aは2つの押圧ロッド103aを含んでおり、第2押圧部材84Bは2つの押圧ロッド103bを含んでいる。押圧ロッド103aおよび押圧ロッド103bは静止リング81に連結されている。第1押圧部材84Aは、研磨パッド33の研磨面33aの進行方向において静止リング81の上流側の部分に局所荷重を加えるように構成されており、第2押圧部材84Bは、研磨パッド33の研磨面33aの進行方向において静止リング81の下流側の部分に局所荷重を加えるように構成されている。
【0111】
局所荷重付与装置83A,83Bは、ユニットベース89A,89Bを介してヘッドアーム42(
図2参照)に固定されている。したがって、ウエハWの研磨中、研磨ヘッド37およびウエハWは回転している一方、局所荷重付与装置83A,83Bは静止している。同様に、ウエハWの研磨中、回転リング71は研磨ヘッド37と共に回転している一方で、静止リング81は静止している。
【0112】
局所荷重付与装置83A,83Bは同一の構成を有する。以下の説明は第1局所荷重付与装置83Aに関するものであるが、第2局所荷重付与装置83Bにも同様に適用される。第1ユニットベース89Aには、第1エアシリンダ86Aおよび第1リニアガイド87Aが取り付けられている。第1エアシリンダ86Aのピストンロッド101aおよび第1ガイドロッド88Aは、第1ブリッジ85Aに接続されている。第1ガイドロッド88Aは第1リニアガイド87Aにより低摩擦で上下動自在に支持されている。第1リニアガイド87Aにより、第1ブリッジ85Aは傾くことなく滑らかに上下動可能となっている。
【0113】
エアシリンダ86A,86Bは、気体移送ラインF1,F2を通じて圧縮流体供給源32(
図4参照)に接続されている。圧力レギュレータR10,R11は、気体移送ラインF1,F2にそれぞれ設けられており、
図4に示す圧力調整装置65に配置される。圧縮流体供給源からの圧縮流体は、圧力レギュレータR10,R11を通ってエアシリンダ86A,86Bにそれぞれ独立に供給される。
【0114】
圧力レギュレータR10,R11は、エアシリンダ86A,86B内の圧縮流体の圧力を互いに独立して調整させることが可能であり、これにより、エアシリンダ86A,86Bは、互いに独立して力を発生させることが可能となる。
【0115】
圧力レギュレータR10,R11は、
図1に示す制御装置30に電気的に接続されている。ウエハWの研磨中、制御装置30は、圧力レギュレータR10,R11のうちのいずれか1つに指令を出して、エアシリンダ86Aまたはエアシリンダ86B内の圧縮流体の圧力を調節させる。
【0116】
エアシリンダ86A,86Bが発生させた力は、ブリッジ85A,85Bにそれぞれ伝えられる。ブリッジ85A,85Bは、押圧部材84A,84Bを介して静止リング81に接続されており、押圧部材84A,84Bはブリッジ85A,85Bに加えられたエアシリンダ86A,86Bの力を静止リング81に伝達する。すなわち、第1押圧部材84Aは、第1エアシリンダ86Aが発生させた力に相当する局所荷重で、静止リング81の一部を押圧し、第2押圧部材84Bは、第2エアシリンダ86Bが発生させた力に相当する局所荷重で静止リング81の一部を押圧する。
【0117】
局所荷重付与装置83A,83Bのそれぞれは、静止リング81および回転リング71を介してリテーナリング3の一部に下向きの局所荷重を与える。すなわち、下向きの局所荷重は、静止リング81および回転リング71を通じてリテーナリング3に伝達される。
【0118】
研磨装置は、リテーナリング3に固定された回転リング71をリテーナリング3と共に回転させながら、かつ第1押圧部材84Aまたは第2押圧部材84Bから静止リング81に局所荷重を加えながらウエハWを研磨する。ウエハWの研磨中、リテーナリング3は研磨パッド33の研磨面33aに接触し、回転しながらウエハWの外側で研磨パッド33を押し付け、かつ研磨面33aの一部に下向きの局所荷重を与える。
【0119】
図12は、リテーナリングが研磨面を押し付けているときの状態を模式的に示した縦断面図である。
図12に示すように、リテーナリング3が研磨面33aの一部に下向きの局所荷重を与えると、研磨面33aの一部が上方に盛り上がる。上方に盛り上がった研磨面33aはウエハWに局所的な上向きの力を加える。本明細書では、この局所的な上向きの力を局所反発力と称する。
図12では、説明のために、研磨面33aの盛り上がった部分のみがウエハWに接触しているが、実際の研磨中では、ウエハWの下面(被研磨面)の全体が研磨面33aに接触している。局所反発力を受けた部分のウエハWの研磨レートは大きくなる。局所反発力の大きさはリテーナリング3が研磨パッド33を押し付ける力の大きさに依存し、局所反発力の大きさに依存して研磨レートは変化する。すなわち、局所反発力が大きくなるほど、研磨レートは大きくなる。局所反発力が発生する位置は、リテーナリング3が研磨面33aに与える局所荷重位置に依存する。
【0120】
したがって、第1押圧部材84Aまたは第2押圧部材84Bから静止リング81に局所荷重を加えながらウエハWを研磨することによって、それぞれの局所荷重に対応した局所反発力を発生させ、局所反発力を受ける部分のウエハWの研磨レートを変化させることができる。例えば、制御装置30は、第1押圧部材84Aが与える局所荷重を上げたいときは、圧力レギュレータR10に指令を出して、エアシリンダ86A内の圧縮流体の圧力を上昇させる。第2押圧部材84Bが与える局所荷重を上げたいときは、圧力レギュレータR11に指令を出して、エアシリンダ86B内の圧縮流体の圧力を上昇させる。
【0121】
このように、局所荷重付与装置83A,83Bがリテーナリング3に与える局所荷重(本実施形態では、エアシリンダ86A,86Bに供給される圧縮流体の圧力に対応する)も、研磨後のウエハWの膜厚プロファイルに影響を与える要因となる。
【0122】
そこで、本実施形態では、制御装置30(
図1参照)は、各圧力室7a~7hおよびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力に加えて、局所荷重も考慮して、上述した応答モデル(すなわち、応答係数C1a~Cmhからなる上記行列Cと、オフセット値からなる行列D)を算出する。さらに、制御装置30は、局所荷重も加味された応答モデルを用いて、最適研磨レシピを作成する(
図5のステップ3参照)。
【0123】
このようにして得られた最適研磨レシピは、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化、研磨パッド33へのリテーナリング3の押圧力の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化、および局所荷重の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化も考慮されている。したがって、ウエハWの膜厚プロファイルをより精密に制御することができる。
【0124】
さらに、次のウエハWを研磨する際の最適研磨レシピの算出に用いられる補正応答モデルも、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化、研磨パッド33へのリテーナリング3の押圧力の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化、および局所荷重の変化に伴う、モニタ領域D1~Dmの相互間における研磨量の変化が考慮される。したがって、補正応答モデルに基づいて作成された最適研磨レシピで研磨される次のウエハWの膜厚プロファイルもより精密に制御することができる。
【0125】
図13は、複数の実施形態に係る最適研磨レシピを利用して、複数のウエハを連続して研磨した時の各実施形態における面内均一性の推移を示したグラフである。
図13において、縦軸は面内均一性を表し、横軸は連続して研磨されたウエハの順番を表す。
図13に示す面内均一性は、研磨後のウエハWの膜厚測定値の最大値と最小値の差分によって表されている。
【0126】
図13において、点線は、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化のみを考慮して作成した応答モデルを用いて、最適研磨レシピの作成と、応答モデルの補正を行った場合(以下、実施例1と称する)の面内均一性の推移を示している。太い実線は、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力の変化を考慮して作成した応答モデルを用いて、最適研磨レシピの作成と、応答モデルの補正を行った場合(以下、実施例2と称する)の面内均一性の推移を示している。細い実線は、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化、リテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力の変化、および局所荷重の変化を考慮して作成した応答モデルを用いて、最適研磨レシピの作成と、応答モデルの補正を行った場合(以下、実施例3と称する)の面内均一性の推移を示している。
【0127】
なお、
図13における二点鎖線のグラフは、参考例を示すグラフであり、従来の研磨圧力調整方法を利用して複数のウエハWを連続して研磨した時の面内均一性の推移を表すグラフである。従来の研磨圧力調整方法では、研磨後のウエハWの各圧力室7a~7hに対応するモニタ領域Da~Dhにおける膜厚と目標膜厚との差分を演算し、各モニタ領域Da~Dhにおける差分が0となるように、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力を変化させて次のウエハWを研磨する。また、従来の研磨圧力調整方法では、モニタ領域Da~Dhの相互間の研磨量の変化を考慮した上述の応答モデルは作成せず、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力と各モニタ領域Da~Dhの研磨量が1対1で対応するとしている。そのため、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化に伴うモニタ領域Da~Dhの相互間の研磨量の変化を考慮しない研磨レシピで、次のウエハWが研磨される。
【0128】
図13から見て取れるように、実施例1乃至3の面内均一性は、参考例の面内均一性よりも大幅に向上している。したがって、上述した応答モデルを用いて、最適研磨レシピの作成と、応答モデルの補正を行いながらウエハWの連続研磨を行うことで、膜厚プロファイルを精密に制御できることが分かる。
【0129】
さらに、実施例2および実施例3の面内均一性は、実施例1の面内均一性よりも優れていることが分かる。したがって、少なくとも、各圧力室7a~7hに供給される圧縮流体の圧力の変化、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力の変化を考慮して作成した応答モデルを用いることで、膜厚プロファイルを精密に制御できることが分かる。
【0130】
図14は、他の実施形態に係る研磨方法を示すフローチャートである。特に説明しない本実施形態のステップは、
図5に示すフローチャートのステップと同様であるため、その重複する説明を省略する。
図14に示す研磨方法は、大量のデータ処理が必要になるおそれがあるため、演算装置70(
図1の点線参照)に接続された制御装置30を有する研磨装置で行われるのが好ましい。そのため、以下の説明では、演算装置70と制御装置30を用いてウエハWを研磨する方法が説明される。しかしながら、制御装置30が十分なデータ処理能力を有している場合は、演算装置70を介さずに制御装置30のみで
図14に示す研磨方法を実行してもよい。この場合は、以下の説明における「演算装置70」を「制御装置30」と適宜読み替えればよい。
【0131】
図14に示すように、本実施形態では、最初に、複数のウエハWの研磨前の膜厚プロファイルと、応答モデルとを収集し、演算装置70に設けられたストレージ(図示せず)に蓄積する(
図14のステップ1参照)。さらに、演算装置70は、複数の研磨前の膜厚プロファイルを、互いに似ている膜厚プロファイルが属する複数のグループに分類する(
図14のステップ2参照)。ウエハWの研磨前の膜厚プロファイルおよび応答モデルは、該ウエハWが属するグループに関連付けられる。
【0132】
制御装置30は、ウエハWの研磨を実行するたびに、該ウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルと、このウエハWの研磨に用いられた最適研磨レシピと、を演算装置70に送信する。演算装置70は、制御装置30からウエハWの研磨前後の膜厚プロファイルと、最適研磨レシピとの組み合わせが送られてくるたびに、研磨前後の膜厚プロファイルと、最適研磨レシピとを用いて、応答モデルを補正する。さらに、演算装置70は、ウエハWの研磨前の膜厚プロファイルと補正された応答モデルとの組み合わせを複数のグループのうちのいずれかに分類して蓄積していく。
【0133】
研磨前の膜厚プロファイルによる分類には、例えば、演算により得られる形状一致指数を用いることができる。形状一致指数の例としては、絶対平均、二乗平均、平均膜厚差、相関係数、GOF(Good of Fitting)値が挙げられる。形状一致指数は2つの膜厚プロファイルの形状一致度(類似度)を求める指標であり、第1の膜厚プロファイルをT1~Tm、T1~Tmの平均値をTave、第2の膜厚プロファイルをT’1~T’m、T’1~T’mの平均値をT’ave、としたときに、次式(8)~(11)のいずれかによってそれぞれ算出することができる。
【0134】
【0135】
【0136】
平均膜厚差=|Tave-T’ave| ・・・(10)
【0137】
【0138】
また、GOFは二つのプロファイルの一致度を示す一般的に使用されている指標である。絶対平均、二乗平均、および平均膜厚差は値が小さいほど形状一致度が高く(形状が類似している)、相関係数、およびGOFは値が大きいほど形状一致度が高くなる。
【0139】
演算装置70は、これら形状一致指数の少なくとも1つを用いて膜厚プロファイルを分類する。具体的には、演算装置70は、各グループを代表する膜厚プロファイル予め求めておき、研磨前の膜厚プロファイルと、各グループを代表する膜厚プロファイルとの形状一致指数を算出して、形状一致度が予め設定した閾値を超えて、かつ最も高いグループに、上記研磨前の膜厚プロファイルを分類する。各グループを代表する膜厚プロファイルは、例えば、各グループに分類された膜厚プロファイルの各測定点における膜厚値を平均した平均膜厚プロファイルを用いることができる。
【0140】
形状一致度が閾値を超えるグループがない場合、すなわち、形状一致指数に基づいて分類されるべきグループがない場合は、演算装置70は新しいグループを作成する。この作業により、互いに似ている膜厚プロファイルが集められた複数のグループが作成される。
【0141】
一実施形態では、演算装置70に機械学習器(図示せず)を設け、該機械学習器を用いて、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルを分類してもよい。この場合、機械学習器には、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルが入力される。機械学習器は、入力された膜厚プロファイルが属するべきグループを出力する。機械学習器が、入力された膜厚プロファイルが属するべきグループがないと判断した場合は、機械学習器は、演算装置70に新しいグループを作成させるための指令を出力する。
【0142】
次いで、制御装置30は、ロードポート12(
図1参照)に載置された基板カセットからウエハWを取り出して、膜厚測定器8に搬送し、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図14のステップ3参照)。このステップ3は、
図5のステップ1に対応する。次いで、制御装置30は、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルを演算装置70に送信し、演算装置70は、受信した膜厚プロファイル(すなわち、研磨されるウエハ)が属するべきグループを選択する(
図14のステップ4参照)。
【0143】
グループを選択する際は、演算装置70は、上述した形状一致指数を用いる。具体的には、演算装置70は、受信した膜厚プロファイルと、各グループの代表膜厚プロファイルを用いて、各グループに対する形状一致指数を算出し、形状一致度が閾値を超えて、かつ最も高いグループを膜厚プロファイルが属すべきグループとして選択する。
【0144】
次いで、演算装置70は、膜厚プロファイルが属するグループの応答モデルを利用して、最適研磨レシピを作成する(
図14のステップ5参照)。このステップ5は、
図5のステップ2に対応するため、最適研磨レシピの作成方法に関する説明は省略する。
【0145】
ステップ4で、形状一致度が閾値を超えるグループがない場合は、演算装置70は、形状一致指数が最も高い閾値を有するグループを選択し、このグループの応答モデルを利用して、最適研磨レシピを作成する。さらに、演算装置70は、この膜厚プロファイルが属する新しいグループを作成する。
【0146】
次いで、演算装置70は、作成された最適研磨レシピを制御装置30に送信し、制御装置30は、受信した研磨レシピに基づいてウエハWの研磨を実行する(
図14のステップ6参照)。
【0147】
次いで、制御装置30は、研磨後のウエハWを第1洗浄ユニット16および/または第2洗浄ユニット18に搬送して洗浄し、さらに洗浄されたウエハWを乾燥ユニット20に搬送して乾燥させる。さらに、制御装置30は、研磨後のウエハWを膜厚測定器8に搬送して、研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図14のステップ7参照)。制御装置30は、研磨前後のウエハWの膜厚プロファイルと、最適研磨レシピと、を用いて応答モデルを補正し、さらに、膜厚プロファイルが属するグループと関連付けて記録する(
図12のステップ8参照)。
【0148】
図12のステップ9からステップ12までの工程は、
図5のステップ6からステップ9の工程と同一であるため、重複する説明を省略する。
【0149】
本実施形態によれば、1枚目のウエハの最適研磨モデルを、該1枚目のウエハWの膜厚プロファイルと似た膜厚プロファイルを有するグループに属する最適研磨レシピおよび応答モデルを利用して作成する。そのため、1枚目のウエハWの膜厚プロファイルを精密に制御することができる。
【0150】
図15は、他の実施形態に係る研磨ユニットを示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2を参照して説明した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図15では、ドレッシング装置40(
図2参照)の図示を省略している。以下では、
図1に示す研磨ユニット14bが、
図13を参照して説明される研磨ユニットである例が説明される。しかしながら、
図15に示す研磨ユニットを、研磨装置の研磨ユニット14a,14c,14dの少なくともいずれかに配置してもよい。
【0151】
図15に示す研磨ユニット14bの構成は、ウエハWの膜厚に従って変化する膜厚信号を取得する膜厚センサ52を備えている点で、
図2に示す研磨ユニット14aの構成と異なっている。膜厚センサ52は、研磨テーブル35内に設置されており、研磨テーブル35が1回転するたびに、ウエハWの複数のモニタ領域D1~Dmのそれぞれにおける複数の測定点で膜厚信号を取得する。膜厚センサ52の例としては、光学式センサや渦電流センサが挙げられる。
【0152】
ウエハWの研磨中、膜厚センサ52は研磨テーブル35と共に回転し、記号Aに示すようにウエハWの表面を横切りながら膜厚信号を取得する。この膜厚信号は、膜厚を直接または間接に示す指標値であり、ウエハWの膜厚の減少に従って変化する。膜厚センサ52は制御装置30に接続されており、膜厚信号は制御装置30に送られるようになっている。制御装置30は、膜厚センサ52から送られる膜厚信号からウエハWの膜厚プロファイルを取得することができる。
【0153】
半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、ウエハW上に多層構造からなる配線が形成される。そのため、所望の膜が露出するまで1つの研磨ユニットでウエハWの研磨を実行すると、研磨時間が長くなり、その結果、研磨温度の上昇や副生成物の研磨パッド上の堆積などに起因してウエハのディフェクトを引き起こし、またはウエハ表面の平坦度が低下してしまう。ウエハW上に形成された多層構造の膜種次第では、複数の研磨ユニットにわたって、複数の研磨工程を実行することもある。例えば、ウエハWの最上層の金属膜を第1研磨ユニットで研磨した後で、金属膜の下に形成された誘電体膜層を第2研磨ユニットで研磨することもある。
【0154】
このように複数の研磨工程を連続して行う場合、1つの研磨工程が終了するたびに、
図2に示すような膜厚測定器8で、研磨後の膜厚プロファイルを取得すると、スループットが低下してしまう。そこで、本実施形態では、膜厚センサ52を利用して、研磨前のウエハWの膜厚プロファイルおよび/または研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する。
【0155】
図16は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートである。特に説明しない本実施形態のステップは、
図5に示すフローチャートのステップと同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0156】
図16に示すように、制御装置30は、最初に、ロードポート12(
図1参照)に載置された基板カセットからウエハWを取り出して、膜厚センサ52を有する第1研磨ユニット(例えば、研磨ユニット14b)に搬送し、第1研磨ユニットで所定の研磨レシピにしたがってウエハWを第1研磨する(
図16のステップ1参照)。ウエハWの第1研磨中、制御装置30は、膜厚センサ52の測定値から得られるウエハWの膜厚を監視し、膜厚が所定のしきい値に達したとき(すなわちウエハWの最上層の膜の厚さが所定の目標値に達したとき)に第1研磨を停止させる。
【0157】
ウエハWの第1研磨が終了すると、制御装置30は、研磨テーブル35上の研磨パッド33に純水を供給しながらウエハWを研磨する水研磨を行い、この水研磨を行っているときに、第1研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを膜厚センサ52により取得する(
図16のステップ2参照)。水研磨中は、ウエハWの研磨は実質的に進行しない。水研磨することで、研磨パッド33上の研磨液、研磨屑、副生成物などを除去することができるので、ウエハWの第1研磨後であっても、正確な膜厚プロファイルを取得することができる。膜厚センサ52は、ウエハWの第2研磨の最適研磨レシピを作成するのに必要とされるウエハWの第2研磨前の膜厚プロファイルを取得する膜厚測定器として機能する。
【0158】
次いで、制御装置30は、ウエハWの第2研磨を行うために、第1研磨後のウエハWを第1研磨ユニット以外の第2研磨ユニット(例えば、研磨ユニット14a)に搬送する(
図16のステップ3参照)。この際、制御装置30は、第2研磨前のウエハWの膜厚プロファイル(すなわち、第1研磨後に膜厚センサ52によって取得された膜厚プロファイル)と上述した応答モデルに基づいて、ウエハWの第2研磨最適レシピを作成する(
図16のステップ4参照)。この第2研磨最適レシピの作成方法は、上述した
図5のステップ2と同様の方法で行われる。
【0159】
次いで、制御装置30は、ステップ3でウエハWが搬送された第2研磨ユニットで、第2研磨最適レシピにしたがってウエハWの第2研磨を行う(
図16のステップ5参照)。次いで、制御装置30は、第2研磨後のウエハWを第1洗浄ユニット16および/または第2洗浄ユニット18に搬送して洗浄し、さらに洗浄されたウエハWを乾燥ユニット20に搬送して乾燥させる。さらに、制御装置30は、第2研磨後のウエハWを膜厚測定器8(
図1参照)に搬送して、第2研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図16のステップ6参照)。
【0160】
次いで、制御装置30は、次のウエハWを第1研磨ユニットに搬送し、次のウエハWの第1研磨を実行する(
図16のステップ7参照)。次のウエハWの第1研磨の終了後、制御装置30は、次のウエハWの水研磨を行いつつ、第1研磨後の次のウエハWの膜厚プロファイルを膜厚センサ52により取得する(
図16のステップ8参照)。
【0161】
次いで、制御装置30は、次のウエハWの第2研磨を行うために、第1研磨後の次のウエハWを第2研磨ユニットに搬送する(
図16のステップ9参照)。この際、制御装置30は、次のウエハWを第2研磨するための第2研磨最適レシピを作成するために、第2研磨応答モデルを補正する(
図16のステップ9参照)。次のウエハWの第2研磨応答モデルの補正は、
図5のステップ5で説明したように、先のウエハWの第2研磨最適レシピ、および第2研磨前後の膜厚プロファイルに基づいて行われる。
【0162】
具体的には、制御装置30は、既に第1研磨および第2研磨されたウエハWの第2研磨前後の膜厚プロファイルからウエハWの各モニタ領域D1~Dmにおける第2研磨の実際の研磨量Racを算出し、上記式(3)における予測研磨量Rと実際の研磨量Racとが上記式(4)を満たすように、補正係数Kを算出する。次に、制御装置30は、上述した行列Cと行列Dに、式(4)から得られたKを乗算し、上記式(5)および(6)により補正された応答係数行列Cadjおよび補正されたオフセット量行列Dadjを算出して記憶する。
【0163】
次に、制御装置30は、求めたCadj、Dadj、および次のウエハWの第2研磨の目標研磨量R’から、少なくとも、各圧力室7a~7h、およびリテーナ室34に供給される圧縮流体の圧力と、研磨時間とを含む次のウエハWの第2研磨最適レシピを上述の最適化計算により算出する。
【0164】
次いで、制御装置30は、算出された第2研磨最適レシピで次のウエハWを第2研磨する(
図16のステップ12参照)。次いで、制御装置30は、第2研磨後の次のウエハWを第1洗浄ユニット16および/または第2洗浄ユニット18に搬送して洗浄し、さらに洗浄された次のウエハWを乾燥ユニット20に搬送して乾燥させる。さらに、制御装置30は、第2研磨後の次のウエハWを膜厚測定器8に搬送して、第2研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図16のステップ13参照)。
【0165】
さらに、制御装置30は、
図16のステップ7~ステップ13を繰り返す。すなわち、制御装置30は、さらに次のウエハWを第2研磨ユニットで第2研磨する前に、第1研磨ユニットの膜厚センサ52を用いてさらに次のウエハWの第2研磨前の膜厚プロファイルを取得する。さらに、制御装置30は、次のウエハWの第2研磨前後の膜厚プロファイルに基づいて、次のウエハWの研磨に用いた第2研磨応答モデルを補正する。次いで、制御装置30は、補正された応答モデルに基づいて、さらに次のウエハWの第2研磨最適レシピを作成する。次いで、制御装置30は、補正された応答モデルに基づいて算出された第2研磨最適レシピでさらに次のウエハWを第2研磨し、第2研磨後のさらに次のウエハWの膜厚プロファイルを取得する。このように、ウエハWを研磨するたびに第2研磨応答モデルを補正していき、それに基づいて算出された第2研磨最適レシピで研磨することで、より精密に次のウエハWの膜厚プロファイルを制御できる。
【0166】
本実施形態によれば、複数の研磨工程を行う必要がある場合であっても、スループットの低下を抑えつつ、精密にウエハWの膜厚プロファイルを制御することができる。
【0167】
図17は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートである。特に説明しない本実施形態のステップは、
図16に示すフローチャートのステップと同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0168】
図17のフローチャートに示す研磨方法では、制御装置30は、最初に、ロードポート12(
図1参照)に載置された基板カセットからウエハWを取り出して、膜厚測定器8に搬送し、第1研磨前のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図17のステップ1参照)。
【0169】
次いで、制御装置30は、第1研磨前のウエハWの膜厚プロファイルと上述した応答モデルに基づいて、ウエハWの第1研磨最適レシピを作成する(
図17のステップ2参照)。この第1研磨最適レシピの作成方法は、上述した
図5のステップ2と同様の方法で行われる。次いで、制御装置30は、ウエハWを第1研磨最適レシピで第1研磨し(
図17のステップ3参照)、ウエハWを膜厚センサ52を有する第2研磨ユニット(例えば、研磨ユニット14b)に搬送する(
図17のステップ4参照)。
【0170】
次いで、制御装置30は、第2研磨を行う前に、上述した水研磨を行いつつ、第1研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを膜厚センサ52により取得する(
図17のステップ5参照)。次いで、制御装置30は、第2研磨ユニットで所定の研磨レシピにしたがってウエハWの第2研磨を行う(
図17のステップ6参照)。次いで、制御装置30は。第2研磨後のウエハWを第1洗浄ユニット16および/または第2洗浄ユニット18に搬送して洗浄し、さらに洗浄された次のウエハWを乾燥ユニット20に搬送して乾燥させる。
【0171】
次いで、制御装置30は、次のウエハWを膜厚測定器8に搬送し、第1研磨前の次のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図15のステップ7参照)。次いで、制御装置30は、ウエハWの第1研磨最適レシピと第1研磨前後の膜厚プロファイルに基づいて、第1研磨応答モデルの補正をおこなう(
図17のステップ8参照)。次いで、制御装置30は、補正された第1研磨応答モデルを用いて、次のウエハWを第1研磨するための最適研磨レシピを作成する(
図17のステップ9参照)。
【0172】
次いで、制御装置30は、次のウエハWを作成した最適研磨レシピで第1研磨し(
図17のステップ10参照)、第1研磨後の次のウエハWを第2研磨ユニットに搬送する(
図17のステップ11参照)。第2研磨ユニットでは、膜厚センサ52によって、水研磨中に、第1研磨後の次のウエハWの膜厚プロファイルが取得され(
図17のステップ12参照)、次いで、次のウエハWの第2研磨が行われる(
図17のステップ13参照)。
【0173】
さらに、制御装置30は、
図17のステップ7~ステップ13を繰り返す。すなわち、制御装置30は、次のウエハWの第1研磨最適レシピと、第1研磨前後の膜厚プロファイルと、を用いて、第1研磨応答モデルを補正する。さらに次のウエハWを第1研磨ユニットで第1研磨する前に、膜厚測定器8を用いてさらに次のウエハWの第1研磨前の膜厚プロファイルが取得される。さらに、制御装置30は、補正された第1研磨応答モデルと、さらに次のウエハWの第1研磨前の膜厚プロファイルに基づいて、さらに次のウエハWの研磨に用いる第1研磨最適レシピを作成する。次いで、制御装置30は、作成された第1研磨最適レシピでさらに次のウエハWを第1研磨し、第1研磨後のさらに次のウエハWの膜厚プロファイルを取得する。このように、ウエハWを研磨するたびに第1研磨応答モデルを補正していき、それに基づいて算出された第1研磨最適レシピで研磨することで、より精密に次のウエハWの膜厚プロファイルを制御できる。
【0174】
本実施形態でも、複数の研磨工程を行う必要がある場合でスループットの低下を抑えつつ、精密にウエハWの膜厚プロファイルを制御することができる。
【0175】
図18は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートの前半部分であり、
図19は、さらに他の実施形態に係る研磨方法を示したフローチャートの後半部分である。特に説明しない本実施形態のステップは、
図16および
図17に示すフローチャートのステップと同様であるため、その重複する説明を省略する。
図18および
図19のフローチャートに示す研磨方法では、第1研磨と第2研磨とが、膜厚センサ52を有する1つの研磨ユニットで行われる。したがって、研磨装置は、膜厚測定器8(
図1参照)を省略することができる。
【0176】
図18に示すように、制御装置30は、最初に、ロードポート12(
図1参照)に載置された基板カセットからウエハWを取り出して、膜厚センサ52を有する第1研磨ユニットに搬送し、該第1研磨ユニットで水研磨を行いつつ、膜厚センサ52によって、第1研磨前のウエハWの膜厚プロファイルが取得される(
図18のステップ1参照)。
【0177】
次いで、制御装置30は、第1研磨前のウエハWの膜厚プロファイルと上述した第1研磨応答モデルに基づいて、ウエハWの第1研磨最適レシピを作成する(
図18のステップ2参照)。この第1研磨最適レシピの作成方法は、上述した
図5のステップ2と同様の方法で行われる。制御装置30は、水研磨を終了させた後で、第1研磨最適レシピにしたがってウエハWを第1研磨する(
図18のステップ3参照)。
【0178】
次いで、制御装置30は、第1研磨が終了した後で、水研磨を再度開始し、水研磨中に、第1研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図18のステップ4参照)。この第1研磨後に取得された膜厚プロファイルは、第2研磨前の膜厚プロファイルに相当する。したがって、制御装置30は、ステップ4で取得した膜厚プロファイルと、上述した第2研磨応答モデルに基づいて、ウエハWの第2研磨最適レシピを作成し(
図18のステップ5参照)、第2研磨最適レシピでウエハWを第2研磨する(
図18のステップ6参照)。
【0179】
第2研磨が終了すると、制御装置30は、水研磨を開始して、該水研磨中に、第2研磨後のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図18のステップ7参照)。次いで、制御装置30は、第2研磨後の次のウエハWを第1洗浄ユニット16および/または第2洗浄ユニット18に搬送して洗浄し、さらに洗浄された次のウエハWを乾燥ユニット20に搬送して乾燥させる。
【0180】
次いで、制御装置30は、次のウエハWを研磨ユニットに搬送し、第1研磨前の次のウエハWの膜厚プロファイルを膜厚センサ52を用いて取得する(
図19のステップ8参照)。さらに、制御装置30は、ウエハWの第1研磨最適レシピと第1研磨前後の膜厚プロファイルを用いて、第1研磨応答モデルを補正し(
図19のステップ9参照)、次のウエハWを第1研磨するための第1研磨最適レシピを作成する(
図19のステップ10参照)。次のウエハWの第1研磨最適レシピの作成は、先の補正された第1研磨用の応答モデルと、ウエハWの第1研磨の目標研磨量とに基づいて行われる。
【0181】
次いで、制御装置30は、次のウエハWを補正後の第1研磨最適レシピで第1研磨する(
図19のステップ11参照)。さらに、制御装置30は、水研磨を開始し、水研磨中に、第1研磨後の次のウエハWの膜厚プロファイルを取得する(
図19のステップ12参照)。
【0182】
次いで、制御装置30は、ウエハWの第2研磨最適レシピと第2研磨前後の膜厚プロファイルを用いて、第2研磨応答モデルを補正し(
図19のステップ13参照)、次のウエハWを第2研磨するための第2研磨最適レシピを作成する(
図19のステップ14参照)。次のウエハWの最適研磨レシピの作成は、先の補正された第2研磨用の応答モデルと、ウエハWの第2研磨の目標研磨量とに基づいて行われる。次いで、制御装置30は、次のウエハWを補正後の第2研磨最適レシピで第2研磨する(
図19のステップ15参照)。第2研磨の終了後に、制御装置30は、水研磨を開始し、該水研磨中に、第2研磨後の次のウエハWの膜厚プロファイルを膜厚センサ52を用いて取得する(
図19のステップ16参照)。さらに、制御装置30は、
図19のステップ8~ステップ16を繰り返す。
【0183】
本実施形態によれば、複数の研磨処理を1つの研磨ユニットで行うことができるので、膜厚プロファイルを精密に制御しながら、スループットの低下を極力抑えることができる。さらに、一般に高額な膜厚測定器8(
図1参照)を省略することができるので、膜厚プロファイルを精密に制御可能な研磨装置を安価に提供できる。
【0184】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0185】
2 ヘッド本体
3 リテーナリング
5 弾性膜
7a,7b,7c,7d,7e,7f,7g,7h 圧力室
8 膜厚測定器
10 ハウジング
12 ロードポート
14a,14b,14c,14d 研磨ユニット
16,18 洗浄ユニット
20 乾燥ユニット
30 制御装置
33 研磨パッド
34 リテーナ室
37 研磨ヘッド(基板保持装置)
38 研磨液供給ノズル
52 膜厚センサ(膜厚測定器)
65 圧力調整装置
70 演算装置
83A,83B 局所荷重付与装置
86A,86B エアシリンダ
90A,90B アクチュエータ