(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133053
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】防食用ラミネートフィルムおよび防食テープ
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220906BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220906BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220906BHJP
C09J 7/28 20180101ALI20220906BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220906BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20220906BHJP
C09J 127/22 20060101ALI20220906BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220906BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20220906BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220906BHJP
C23F 11/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B32B15/08 D
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J7/28
C09J201/00
C09J123/26
C09J127/22
C09J133/00
C09J11/00
C09J11/06
C23F11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031876
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】393032125
【氏名又は名称】MCCアドバンスドモールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】森越 誠
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恭資
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
4K062
【Fターム(参考)】
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4K062BC07
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4K062GA01
(57)【要約】
【課題】施工性に優れ、かつ防水・防食性とその長期耐久性に優れ、また、物理的な外的応力に対してもピンホールや亀裂の発生しにくい防食用ラミネートフィルムおよび防食テープを提供する。
【解決手段】金属箔と、該金属箔の片面又は両面に積層された接着層とを有し、該接着層が熱可塑性熱接着樹脂よりなる防食用ラミネートフィルム。この防食用ラミネートフィルムに、アクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸してなる両面テープを貼り合わせてなる防食テープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、該金属箔の片面又は両面に積層された接着層とを有し、該接着層が熱可塑性熱接着樹脂よりなることを特徴とする防食用ラミネートフィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性熱接着樹脂は、酸変性ポリレフィン樹脂及び/又は酸変性フッ素樹脂を主成分とし、前記接着層の厚みが2~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項3】
光安定剤を含む層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項4】
前記光安定剤が高分子型ヒンダードアミン系光安定剤であることを特徴とする請求項3に記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項5】
前記金属箔が、厚み6~100μmのアルミニウム箔又はSUS箔であり、該アルミニウム箔の鉄含有量が0.3重量%以上1.7重量%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の防食用ラミネートフィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の防食用ラミネートフィルムに、湿度硬化型粘着剤層を設けてなることを特徴とする防食テープ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の防食用ラミネートフィルムに、アクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸してなる両面テープを貼り合わせてなることを特徴とする防食テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築用に使用される防水性或いは鋼材の防食用材料に関し、詳しくは、建築物の長期にわたり防水・防食性を維持することができ、構造物等の構成部材として使用される鋼材の表面に貼り付ける防水・防食のためのラミネートフィルムおよびテープとして好適な防食用ラミネートフィルムおよび防食テープに関するものである。より具体的には建築物、海洋構造物、鉄塔、高架水槽、タンク、水門、橋梁、プラント等の各種構造物に使用される鋼材の腐食防止に好適に用いられる防食用ラミネートフィルムおよび防食テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、海洋構造物、鉄塔、高架水槽、タンク、水門、橋梁、プラント等の構成部材として使用される鋼材には、用途、目的に応じて、炭素含有量や熱処理の方法などにより、強度、耐食性、耐熱性、磁気特性、熱膨張率等が調整され、様々な種類のものが使用されている。
【0003】
このような鋼材は、屋内外でそのままで放置された場合、腐食により赤錆や黄褐色の浮き錆等を生じ、景観を損なうばかりではなく、腐食による肉厚減少に起因した構造物としての強度が低下し、著しい場合には破損に到る問題がある。
【0004】
従来、このような鋼材の経時腐食の対策としては、特許文献1のように防食または防錆機能を付与した塗装を施すことが一般的であった。
【0005】
一方、特許文献2、3には、樹脂層あるいは金属層からなる防水性フィルムを粘着剤を介して鋼材の表面に貼ることで防食性を付与することが提案されている。
【0006】
例えば特許文献2には、透水率の低い材料、例えばブチルゴム等のゴム材料、アクリル、シリコーン、ポリエチレン、エポキシ、ウレタン等の樹脂材料よりなる基材に、天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどを主成分とする粘着剤を塗布した防水性粘着テープが記載され、この防水性粘着テープの膜厚は0.1~2.0mm、粘着力として1kg・cm以上、吸水率は1.0%以下のものが好ましいとされている。
【0007】
特許文献3には、ポリ塩化ビニルよりなる樹脂層の内部または表面に弾力性を付与する繊維層または金属層を配置した樹脂シートを、鋼材の表面に接着剤を塗布して貼り付けることで鋼材を防食する方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、無機物を蒸着した蒸着ベースフィルム層を有する重防食被覆鋼材が記載されている。
【0009】
特許文献5には、鋼材表面に腐食部を覆うように金属箔を貼付する工程を含む鋼材補修方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-97945号公報
【特許文献2】特開2001-81800号公報
【特許文献3】特開2013-71267号公報
【特許文献4】特開2005-262787号公報
【特許文献5】特開2020-33730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1のような塗装による防食方法では、防食効果は十分ではなく、水分がたまりやすい場所、塩分が付着しやすい場所や、塗膜が薄くなりやすい角部では腐食が進行しやすいという問題がある。また塗装コストが高いこと、耐用年数に限りがあること、定期的な塗り替えが必要なことからメンテナンスコストが高いという問題もある。
【0012】
特許文献2、3の、樹脂層あるいは金属層からなる防水性フィルムを粘着剤を介して鋼材の表面に貼る方法では、樹脂層、金属層の選定により防食効果を高めることはできるが、屋外での使用時には、風雨により砂、小石等がフィルム表面に衝突することでピンホールや亀裂が発生しやすく、防食性を長期間保つことができない問題がある。
ピンホールや亀裂の発生を防止するために金属層を厚くすると、シートが硬くなり、鋼材への施工性に問題を生じる。
また、フィルム基材として使用される防水性樹脂シートは、塗料や接着剤の付着力が弱く、剥離の問題もある。
【0013】
特許文献4の無機物蒸着ベースフィルム層を有する重防食被覆鋼材では、樹脂フィルムより水分バリア性が向上し、耐久性は増すものの、ピンホールや亀裂が生じ易く、防食性を長期間保つには不十分であるとともに、フィルム強度も不十分で外力による破損の可能性もある。
【0014】
特許文献5の、金属箔を鋼材表面の腐食部を覆うように貼付する方法では、薄膜の金属箔では、強度が不十分であり、外力による破損の問題がある。厚みの厚い金属箔であれば強度は増すが、硬すぎるためにハンドリング性、施工性に問題があり、施工対象が限定的される問題がある。
【0015】
このように、従来において、鋼材に防食性を付与するために各種の防食方法、種々の防食フィルムが提案されているが、鋼材の防食性を長期間保つことができず、鋼材が腐食するたびにメンテナンスが必要になる問題がある。
さらに、風雨により小石等の飛散物が衝突した場合に、ピンホールや亀裂が発生してバリア性が損なわれ、鋼材が腐食しやすくなるといった問題もある。
【0016】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、施工性に優れ、かつ防水・防食性とその長期耐久性に優れ、また、物理的な外的応力に対してもピンホールや亀裂の発生しにくい防食用ラミネートフィルムおよび防食テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の構成を採用することにより、上記課題を容易に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明の要旨は、
金属箔と、該金属箔の片面又は両面に積層された接着層とを有し、該接着層が熱可塑性熱接着樹脂よりなることを特徴とする防食用ラミネートフィルム、
この防食用ラミネートフィルムに、湿度硬化型粘着剤層を設けてなることを特徴とする防食テープ、
および
この防食用ラミネートフィルムに、アクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸してなる両面テープを貼り合わせてなることを特徴とする防食テープ、
に存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、施工性、防水・防食性およびその長期耐久性、耐ピンホール性に優れ、しかも環境負荷の少ない方法で安価に製造することができる防食用ラミネートフィルムおよび防食テープが提供される。
本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープを用いて、鋼材の発錆や劣化を低コストにかつ効果的に防止することができ、各種構造物に用いられる鋼材の長期耐久性、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の他の例を示す模式的断面図である。
【
図3】本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の別の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの実施の形態の一例を示す
図1~3を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
〔防食用ラミネートフィルム〕
本発明の防食用ラミネートフィルムは、金属箔と、該金属箔の片面又は両面に積層された接着層とを有し、該接着層が熱可塑性熱接着樹脂よりなることを特徴とする。
【0023】
[接着層]
本発明においては、金属箔の少なくとも片面に熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層を設ける。
【0024】
本発明において、熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層は、金属箔を長期にわたり保護するための保護層としても機能する。このため、金属箔に熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層を設けることにより、金属箔の防水・防食性と強度を向上させ、その結果、鋼材等の被保護材に貼り付けることにより鋼材等の被保護材の防水・防食性を大幅に向上させることができる。
ここで「熱接着樹脂」とは加熱溶融して接着性を発揮する樹脂をさす。
また、「接着性」とは、熱接着樹脂を融点以上に加熱溶融させ金属箔に接着させた後、23℃、50%の常温常湿環境下でT型ピール試験法による接着強度にて3N/15mm以上の接着強度を示すものをさす。
【0025】
接着層を構成する熱可塑性熱接着樹脂としては、例えば以下のような樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂が挙げられる。
・金属変性ポリオレフィン樹脂
・熱可塑性樹脂の一部を酸で変性した酸変性樹脂、例えば無水マレイン酸で変性したポリオレフィン樹脂や
・ポリ酢酸ビニル系樹脂
・エポキシで変性した樹脂、グリシジルメタクリレートやビニルアセテートやメチルアクリレート等の少なくとも1種以上の混合樹脂
・エチレンとアクリル酸等を共重合させカルボキシル基等の極性基を付与させた樹脂
・アイオノマー樹脂、例えばポリマー構造の間にイオン結合のある樹脂でエチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸の共重合体にアルカリ金属やアルカリ土類金属が結合して架橋構造を形成している樹脂
【0026】
本発明において、「主成分」とは、複数の成分を配合してなる材料において、当該配合材料中、重量割合で最も多く含まれている成分をさす。好ましくは、熱可塑性熱接着樹脂の主成分とは、熱可塑性熱接着樹脂100重量%のうちの50重量%以上を占める成分であり、この割合は、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上100重量%以下である。
【0027】
これらの熱可塑性熱接着樹脂は、一般包装材のラミネートフィルムに使用されるドライラミネート用接着剤とは異なり、加熱溶融させて金属箔に加熱、加圧され、その後冷却固化されることにより結晶ラメラが金属箔に向って成長し、水や紫外線から金属箔を保護することに寄与するばかりか、バリア性を有する金属箔の表面の極性基と強固に反応し、熱可塑性樹脂特有の柔軟性により外部からの物理的応力を緩和させ、金属箔を保護するため接着力と防水・防食性を長期にわたり維持することができる。
【0028】
上記例示樹脂のうち、熱可塑性熱接着樹脂としては、上記保護効果に優れる観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂、酸変性フッ素樹脂が好ましい。
【0029】
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする酸変性ポリエチレン樹脂、ランダム又はブロックポリプロピレンを主成分とする酸変性ポリプロピレン樹脂が挙げられる。
酸変性フッ素樹脂としては、エチレン成分を共重合させた酸変性フッ素樹脂が融点が低いため使用しやすい。
特に好ましいのは、柔軟性を有する低密度ポリエチレンや、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)を主成分とする酸変性ポリエチレン樹脂や、ランダム又はブロックポリプロピレンを主成分とする酸変性ポリプロピレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を酸変性した酸変性ETFE、酸変性PFAである。
【0030】
これらの熱可塑性熱接着樹脂の融点は250℃以下60℃以上であることがラミネート加工性の点と金属箔との接着性に点で好ましい。また、熱可塑性熱接着樹脂はメルトフローレート(MFR)で示される樹脂流動性として、0.1g/10min以上20g/10min以下であることが、融点と同様にラミネート加工と接着性の点で好ましい。
ここで、融点及びMFRは、後掲の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
【0031】
なお、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)とは、エチレンと炭素数4~20程度のα-オレフィンとの共重合体を意味し、α-オレフィンで構成される分岐側鎖の具体例としては、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1、テトラセン-1、オクタデセン-1等の各種コモノマーの1種又は2種以上が挙げられる。
【0032】
熱可塑性熱接着樹脂としての酸変性ポリオレフィン樹脂として酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい理由は以下の通りである。
ポリエチレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂より融点は低いが、熱が繰り返し加えられることにより分子が架橋するポリマーであり、80~90℃というような過酷な高温環境下での長時間暴露に対し、分子切断しにくく、ポリプロピレン樹脂より長期耐熱性が優れている。
更にポリエチレン樹脂は、溶融張力も高く、柔軟性があり、あらゆる形状の鋼材に貼り合わせ加工される場合の変形に対しても強く、変形時に白化もしにくく、耐寒性にも優れる。また、ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂より密度が高く、外部からの水分、紫外線への耐性も強い。
このようなポリエチレン樹脂を酸変性させた樹脂は、金属箔を構成する例えばアルミニウム箔との接着性にも優れ、アルミニウム箔に環境汚染を引き起こすクロム系化成処理や、リン系の化成処理を施さなくても、強固な接着力を得ることができる。
【0033】
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン樹脂、酸変性フッ素樹脂は、少なくとも一部が酸変性されていればよい。酸変性ポリオレフィン樹脂、酸変性フッ素樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂を不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を用いてグラフト重合により変性することで製造することができる。
【0034】
変性に用いる不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等のジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水メサコン酸等のジカルボン酸の無水物やアミド、イミド、エステルなどの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いるのが好ましく、特に無水マレイン酸が好適である。
【0035】
ポリオレフィン樹脂の変性方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂を有機溶媒に溶解させ、これをラジカル発生剤の存在下に酸(無水マレイン酸など)と反応させる溶液法、これらの樹脂を加熱溶融させ、これをラジカル発生剤の存在下に酸(無水マレイン酸など)と反応させる溶融法等が挙げられる。
【0036】
なお、酸変性に供するポリオレフィン樹脂としては、主成分として好適な直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)であってもよいし、これと併用することのできる他のポリエチレン樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、或いはポリプロピレン樹脂、例えばランダムポリプロピレン(RPP)であってもよい。ここで低密度ポリエチレン(LDPE)とは、前記の直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)は含まず、通常、高圧法低密度ポリエチレンと呼ばれるものが挙げられる。
【0037】
また、酸変性されたポリオレフィン樹脂と、酸変性されていないポリレフィン樹脂とを適宜配合して用いることもできる。酸変性ポリオレフィンと共に他のポリオレフィン樹脂を併用する場合においては、これらのポリオレフィン樹脂を混合または共存させた状態で酸変性してもよいし、少なくとも何れかのポリオレフィン樹脂を予め酸変性しておき、これと、酸変性されていない他のポリオレフィン樹脂とを混合して用いてもよい。
【0038】
酸変性ポリオレフィン樹脂の変性率(酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸基の含有量)は、少な過ぎると酸変性したことによる接着性の向上効果を十分に得ることができない場合があり、多過ぎると酸変性ポリオレフィン樹脂の耐熱性が低下する傾向にあるため、0.05重量%以上10重量%以下、特に0.2重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
ここで、酸変性ポリオレフィン樹脂の変性率は、例えば、赤外吸収スペクトル分析(IR)や、滴定法などの手段で確認することができる。
なお、酸変性されたポリオレフィン樹脂と、酸変性されていないポリオレフィン樹脂とを配合して用いる場合においては、当該変性率とは、酸変性されていないポリオレフィン樹脂を含む全ポリオレフィン樹脂中における変性率を意味するものとする。
【0039】
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、三菱ケミカル社製、モディック(商品名)シリーズや、三井化学社製、アドマー(商品名)等の中から、上記に該当するものを適宜選択して使用することができる。
【0040】
接着層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂は限定されないが、例えば、グリシジルメタクリレート樹脂、ビニルアセテート樹脂、メチルアクリレート樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体や、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のエチレンとα-オレフィン以外のコモノマーとを共重合したエチレン系樹脂;プロピレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。なお、接着層として、酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を多量に含有する場合には、前記した酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることによる効果を損なう場合があるため、これらの樹脂は、接着層中に、20重量%以下、好ましくは15重量%以下の範囲で用いることが好ましい。
更に、接着層は、上記のような酸変性ポリオレフィン樹脂に対して、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-ジエン共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のオレフィン系エラストマーを、2種以上の場合はその合計で、接着層中の含有量として、5重量%以上30重量%以下、特に7重量%以上25重量%以下配合された層であっても良い。
接着層がこれらのオレフィン系エラストマーを含有することで、熱ラミネーションでの貼り合わせ時に、これらのエラストマー成分が厚み方向に配向して、金属箔に酸変性ポリオレフィン樹脂のくさびを打ち込む効果と接着層の酸変性ポリオレフィン樹脂の結晶化を促進させる効果とを奏し、長期耐水性、耐候性に優れた防食用ラミネートフィルムを得ることができる。
【0041】
一方、酸変性フッ素樹脂としては、ETFEを酸変性させたもの、PFAを酸変性させたもの等が挙げられ、市販の熱可塑性フッ素樹脂を酸変性させたものであってもよく特に制限はない。
【0042】
特にフッ素樹脂は本来耐候性が優れており、可塑剤のブリード物も極めて少なく、また密度も高く耐水性にも優ており好ましく、そのため樹脂のグレード特性による制約は少なく、金属箔に直接接着させることができれば金属箔の長期耐食性を飛躍的に向上させることができるため好ましい。
加工性、扱いやすさ、接着性の観点より、酸変性フッ素樹脂としては、融点230℃以下のものを用いることが好ましい。
【0043】
酸変性フッ素樹脂の変性率(酸変性フッ素樹脂中の酸基の含有量)は、少な過ぎると酸変性したことによる接着性の向上効果を十分に得ることができない場合があり、多過ぎると酸変性フッ素樹脂の耐熱性が低下する傾向にあるため、0.05重量%以上10重量%以下、特に0.2重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
ここで、酸変性フッ素樹脂の変性率は、例えば、赤外吸収スペクトル分析(IR)や、滴定法などの手段で確認することができる。
なお、酸変性されたフッ素樹脂と、酸変性されていないフッ素樹脂とを配合して用いる場合においては、当該変性率とは、酸変性されていないフッ素樹脂を含む全フッ素樹脂中における変性率を意味するものとする。
【0044】
酸変性フッ素樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、ダイキン社製、ネオフロン(商品名)、AGC社製、フルオン(商品名)等の中から、上記に該当するものを適宜選択して使用することができる。
【0045】
接着層には、このような酸変性樹脂の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0046】
接着層にはまた、酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、紫外線反射材、ラジカルトラップ材、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
例えば、接着層は、後述の光安定剤として好ましく用いられる高分子型ヒンダードアミン系光安定剤を後述の好適な含有率で含有していてもよい。
【0047】
接着層は、MFR0.1g/10min以上25g/10min以下であることが好ましい。
接着層のMFRが、25g/10minより大きいと、分子量が小さくなり、長期の耐水性、耐候性が劣る傾向がある。接着層のより好ましいMFRは20g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。接着層のMFRの下限は、インフレーション成形法で製膜する場合において、製膜性に問題が無いレベルであることが好ましいため0.1g/10min以上であることが好ましく、特に0.3g/10min以上であれば、インフレーション成形における高速成形性と高シール強度を維持できるため好ましい。
【0048】
また、接着層の密度としては、ポリオレフィン系であれば0.88g/cm3以上が好ましい。これより密度が小さいと、外部からの水分を遮断する耐水性を高めるためにも、接着層の密度は高い方がよく、好ましい密度の下限は0.91g/cm3以上であり、特に好ましくは0.92g/cm3以上である。接着層の密度の上限は、ポリオレフィン樹脂の柔軟性を損なわなければ特に制限されるものではないが、密度の上限は通常0.96g/cm3以下であり、金属箔との接着性、施工工事時の変形による耐白化性を考慮すると、好ましくは0.95g/cm3以下である。
接着層の密度を上記範囲とするための手段は限定されないが、酸変性に用いるポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の最適化、変性率の最適化のほか、前記の通り、酸変性されていないポリオレフィン樹脂やポリオレフィン樹脂以外の樹脂等を併用し、それら配合比率を最適化することなどが挙げられる。
また、フッ素系であれば通常密度は1g/cm3を超えている。また、フッ素樹脂自体が耐候性や耐水性に優れており特に問題となることはなく、他の成分との共重合や他材料とのアロイなどを考慮すると、フッ素樹脂系の密度としては1.5g/cm3以上であれば好ましく、1.7g/cm3以上2.2g/cm3以下であれば金属箔との接着性、耐水性の観点において、フッ素樹脂の効果が発現されるため、特に好ましい。
【0049】
また、接着層の引張弾性率は、柔軟性を付与しすぎると変形等の外力が作用した時に材料破壊を引き起こしやすくなるため100MPa以上であることが好ましく、反対に硬くなりすぎると脆くなりやすく金属箔との界面で剥離しやすくなるため2000MPa以下であることが好ましい。接着層の引張弾性率はより好ましくは130MPa以上800MPa以下、特に好ましくは180MPa以上600MPa以下である。
【0050】
また、接着層の融点は、70℃以上230℃以下が好ましく、特に90℃以上200℃以下が好ましい。上記の温度以上の融点を有する熱可塑性熱接着樹脂を使用すると、配合する光安定剤や酸化防止剤などが押出加工時の加熱温度により分解し、分子量が低下してブリードアウトし消失する問題や、酸変性樹脂の熱劣化を発生させるため好ましい。
【0051】
なお、前述のMFR、密度、引張弾性率、融点の値は、接着層を構成する熱可塑性熱接着樹脂の特性を意味し、複数の樹脂を併用する場合や、樹脂以外を含有する場合においては、樹脂組成物としての値を意味するものである。
また、これらの物性値の測定方法は後掲の実施例の項に示す通りである。
【0052】
本発明において、接着層として、熱可塑性熱接着樹脂を環状ダイから押し出すインフレーション成形法によりフィルム化されたものを使用すると、縦横の引張り強度や伸び等の物性に差のない、均質な接着用フィルムを得ることができ、更に保護層として、後述の高弾性樹脂層や低弾性樹脂層を積層する場合、保護層としてTダイ成形法等などの縦、横方向に機械強度の差がある1軸、2軸延伸フィルムあるいは無延伸フィルムを用いたとしても、ケース状に加工した際の縦、横の方向による欠陥が出にくくなり、保護層として使用可能なフィルムの選択肢が増えるため好ましい。
【0053】
なお、本発明の防食用ラミネートフィルムにおいて、接着層は、金属箔の少なくとも一方の面に設けられるものであり、金属箔の両面に設けられてもよい。
また、後述の保護層としての高弾性樹脂層や低弾性樹脂層を設ける場合、これらの保護層と金属箔との間、或いは保護層同士の間に介在するように設けられてもよい。
接着層は本発明の防食用ラミネートフィルムの最表層を形成するものであってもよい。
いずれの場合においても、金属箔の外表面側、即ち、鋼材等の防食すべき被保護材に対して本発明の防食用ラミネートフィルムを設ける場合において、該被保護材とは金属箔を介して反対側の面に少なくとも接着層を有する方が保護層としての効果もあるため好ましい。
【0054】
金属箔の外表面側に設けられる接着層にあっては、耐光性、耐候性を高める観点から、光安定剤を含むことが好ましい。
【0055】
接着層の厚みは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上50μm以下、特に好ましくは8μm以上40μm以下である。接着層の厚みが上記範囲よりも薄いと、金属箔との接着に十分な接着強度を得ることができない場合があり、上記範囲よりも厚いと、柔軟性が損なわれ施工性に問題が発生する場合がある。
なお、ここで、接着層の厚みとは、接着層1つ当たり(1ヶ所当たり)の厚みをさす。ここで、1つの接着層とは、後述の保護層等を含まない層、例えば金属箔又は後述の保護層に隣接する層であり、1つの接着層が複数層の積層構造であれば、その合計の厚みに該当する。
【0056】
[金属箔]
金属箔は、外部からの水分が内部に浸入することを防止(バリア)するための層であり、ピンホールが無いこと、防食用ラミネートフィルムとしての高い引張強度を有していること、外力による変形および伸びに対する耐クラック性を有していること等が要求される。
【0057】
金属箔としては、耐腐食性を有しかつ安価なアルミニウムやその合金、SUSステンレスなどが用いられる。また耐クラック性の面から、純度99%以上の純Al(アルミニウム)、Al-Cu-Mg系合金、Al-Mn系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Mg-Si系合金、Al-Zn-Mg系合金、Al-Fe系合金等が使用可能である。なお、Al合金中のアルミニウム含有量は95重量%以上であることが好ましい。
【0058】
これらの中でも、金属箔としては伸び性に優れたアルミニウム箔が好ましく、鉄を0.1重量%以上3.0重量%以下含有するアルミニウム箔(合金番号8000番台)や、純度99%以上の純アルミニウム(合金番号1000番台)が好ましい。上記の鉄を0.1重量%以上、3.0重量%以下含有するアルミニウム箔において、鉄の含有量がこの範囲より少ないと伸びが十分でない傾向にあり、この範囲より多い場合には、金属箔が腐食しやすい問題が発生する傾向にある。鉄含有アルミニウム箔の好ましい鉄含有量は0.2重量%以上1.7重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以上1.7重量%以下である。
また、アルミニウム箔には、硬質アルミニウム箔と軟質アルミニウム箔とが存在するが、焼鈍処理を施してある軟質アルミニウム箔が柔軟性を有しているため好ましい。
【0059】
アルミニウム箔等の金属箔の厚みは、6μm以上100μm以下、特に9μm以上25μm以下であることが、薄膜化とバリア性を両立させる上で好ましい。
【0060】
<アルミニウム箔の表面処理>
本発明における金属箔として好適なアルミニウム箔の表面は、耐腐食性を付与するための表面処理を施したものであってもよい。ただし、本発明において、アルミニウム箔の表面処理は必ずしも必要とされない。
【0061】
アルミニウム箔に表面処理を行う場合、表面処理としては公知の処理が用いられる。例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸-クロム酸塩処理、クロム酸塩処理、アルカリクロム酸塩処理、塗布型クロメート処理等のクロム系化成処理、あるいは、ジルコニウム、チタン、リン酸亜鉛等の塗布型ノンクロム系処理や、ベーマイト処理、陽極酸化処理等が挙げられる。これらの処理以外にも、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理又はプライマー処理等のアルミニウム箔表面に極性基を付与する処理を行って熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層との接着性を高めることにより耐腐食性を付与してもよい。また、これらの処理を2つ以上組み合わせて行ってもよい。ただし、クロム系化成処理については、環境保護の観点から行わないことが好ましい。
【0062】
[保護層]
本発明の防食用ラミネートフィルムは、耐候性等を向上させるために、更に保護層として高弾性樹脂層や低弾性樹脂層を有していてもよい。保護層は、通常接着層を介して金属箔に積層して設けられる。或いは保護層同士が接着層を介して積層して設けられる。
【0063】
<高弾性樹脂層>
本発明における高弾性樹脂層は、突き刺し等による外部からの力による金属箔の破損を防ぐこと、金属箔を補強すると共に、外部からの物理的応力に対するフィルム自体の破損を防止するための層であり、単層フィルムであっても2層フィルム以上の積層フィルムであってもよい。
【0064】
高弾性樹脂層は、機械的強度、金属箔の保護性に優れ、バリア性を有することが要求され、ある程度引張弾性率の高い樹脂フィルムよりなることが、フィルム厚みを薄くすることができる点で好ましい。
【0065】
高弾性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリアミド(PAまたはNy)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(Par)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリアルキレンテレフタレート(PAT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンオキシド(PPE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリオキシベンジレン(POB)、ポリイミド(PI)、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリビスアミドトリアゾール、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等、或いはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
その中でも、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリアルキレンテレフタレート(PAT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアミド(PAまたはNy)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)よりなるものが好ましい。
【0066】
高弾性樹脂層としては無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよいが、機械的強度および耐熱性の観点から、高弾性樹脂層は延伸フィルムよりなることが好ましく、中でも二軸延伸フィルムであることが好ましい。特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、または二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムからなるものは、引張弾性率が適度に高く、安価であり好ましい。
【0067】
これらの中でも二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリブテレンテレフタレートフィルムは、適度な柔軟性も持ち合わせている点においてより好ましい。
さらには、フィルムの方向(長手方向、幅方向)による異方性が少ない点において、チューブラー法で製膜された二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリブテレンテレフタレートフィルムが特に好ましく、二軸延伸ポリアミドフィルムが特に好ましい。
【0068】
高弾性樹脂層は、外部からの突き刺し等の変形による金属箔のピンホールや亀裂発生を阻止するための役割も必要となり、施工時の防食用ラミネートフィルムの破損を防止するための役割を担うために、ある程度の弾性率と厚みが必要である。
この観点から、高弾性樹脂層の引張弾性率は、フィルムの面内の最大値(通常、フィルムの押出方向(長手方向)または幅方向のどちらか一方となる)が、1500MPa以上、特に1700MPa以上であり、とりわけ2000MPa以上であることが好ましい。
高弾性樹脂層の引張弾性率が1500MPaより小さいと金属箔を補強する効果が低くなる傾向があり、外的応力によりピンホールや亀裂が発生しやすくなる傾向がある。
【0069】
高弾性樹脂層の引張弾性率の上限には特に制限はないが、フィルム面内の最大値が6500MPa以下であることが好ましい。引張弾性率がこれより大きいと本発明の防食用ラミネートフィルムが硬くなりすぎ、柔軟性が損なわれるため厚みを薄くする必要があり、耐ピンホール性、耐突き刺し性が悪化することがある。また施工時に鋼材への貼り付けが困難になるとともに角部などに防食用ラミネートフィルムを曲げながら貼り合わせた際に、時間の経過で戻る力が強くなり、剥離が生じる場合がある。
高弾性樹脂層の引張弾性率の上限は5000MPa以下であることがより好ましく、4500MPa以下であることが特に好ましい。
【0070】
また、高弾性樹脂層の厚みは、好ましくは5μm以上50μm以下である。高弾性樹脂層の厚みが50μmよりも厚いと、本発明の防食用ラミネートフィルムの剛性が高くなりすぎ、曲げにくく、鋼材の角部への貼り付けが困難になり、施工しにくくなるばかりか、面密度が大きくなり軽量化が図れなくなる傾向にある。一方、高弾性樹脂層の厚みが5μmより薄いと耐突き刺し性に影響が出る場合がある。高弾性樹脂層の厚みは特に8μm以上30μm以下であることが好ましい。
なお、ここで、高弾性樹脂層の厚みとは、高弾性樹脂層1つ当たり(1ヶ所当たり)の厚みをさす。ここで、1つの高弾性樹脂層とは、接着層を含まない層、例えば接着層と接着層との間の層であり、1つの高弾性樹脂層が複数層の積層構造であれば、その合計の厚みに該当する。
【0071】
高弾性樹脂層は、特に、防食用ラミネートフィルムの突き刺し性を向上させる場合には、これを金属箔の表面側、即ち、金属箔を介して被保護材とは反対側に設けることが好ましい。
【0072】
<低弾性樹脂層>
本発明の防食用ラミネートフィルムは、柔軟性や、塗料や接着剤を塗布することを想定した耐溶剤性を重視する場合は、さらにポリオレフィン等の引張弾性率の低い柔軟な低弾性樹脂層を積層して設けてもよい。
【0073】
例えば、
図1に示すように、金属箔の両面に耐溶剤性を有する低弾性樹脂層1a,1bを積層することによって、或いは
図2に示すように、引張弾性率の高い高弾性樹脂層4を表面側に介した上で、複数の低弾性樹脂層1a,1b,1cを積層することにより、柔軟性を付与することができ、ハンドリング等の施工性が良化し、また、溶剤を含む塗料や接着剤に対する耐性が向上し、好ましい。また、図示はしないが、金属箔の被保護材側にのみ低弾性樹脂層を設けた場合には、柔軟性の付与で施工性の向上を図ることができる。
【0074】
低弾性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロックまたはランダム共重合体等のポリオレフィンおよびその酸変性体、ゴムまたはラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリフッ素化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ素化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体、塩化ビニル樹脂等の1種またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0075】
特に、高弾性樹脂層を衝撃や外部環境から保護する耐衝撃性、耐候性付与を目的として、また、鋼材等の被保護材への貼り合わせの際の粘着剤に含まれる溶剤による劣化防止を目的として必要に応じて用いられる低弾性樹脂層としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロックまたはランダム共重合体等のポリオレフィンおよびその酸変性体、ゴムまたはラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレンよりなるものが好ましい。
【0076】
本発明において、低弾性樹脂層には、ポリエチレン樹脂、即ち、高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とするもの、ランダムまたはブロックポリプロピレンを主成分とするポリオレフィン樹脂や、酸やシランで変性したポリオレフィン樹脂を適宜選択できる。これらの中で好ましいものは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンを主成分とするポリエチレン樹脂層を含む単層、または積層構造でありブロックポリプロピレン(BPP)やランダムポリプロピレン(RPP)を主成分とする樹脂層を含む単層または積層構造のものも好ましい。
【0077】
なお、本発明において、上記の条件を満たすものであれば、低弾性樹脂層にはポリエチレン樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0078】
ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂より融点は低いが、熱が繰り返し加えられることにより分子が架橋するポリマーであり、屋外炎天下で鋼材の温度が40~80℃に上昇した場合における高温環境下での長時間暴露に対し、分子が切断しにくく、ポリプロピレン樹脂より長期耐熱性が優れている。
更にポリエチレン樹脂は、溶融張力も高く、柔軟性があり、変形に対しても強く、変形時の白化もしにくく、耐寒性にも優れる。また、ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂より密度が高く、外部からの水分や粘着剤に含まれる極性溶媒への耐性も強い。
【0079】
本発明において直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)とは、エチレンと炭素数4~20程度のα-オレフィンとの共重合体を意味し、α-オレフィンで構成される分岐側鎖の具体例としては、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1、テトラセン-1、オクタデセン-1等の各種コモノマーが挙げられる。これらのα-オレフィンは2種以上を併用してもよい。また、炭素数4~20程度のα-オレフィンをコモノマーとして用いていれば、さらにプロピレンをコモノマーとしてもよい。
【0080】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)としては、MFR、密度および引張弾性率を後述の好適範囲とすることができるものであれば、いずれも用いることができる。その中でも特に、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1のうち少なくとも何れかの側鎖がついた直鎖状低密度ポリエチレンが適度な柔軟性を有するため好ましく、特にヘキセン-1、オクテン-1は耐溶剤性に優れているため好ましい。
【0081】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)の製造方法は限定されず、ポリオレフィン樹脂を製造する公知の方法を採用することができるが、通常、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等によって製造することが好ましい。
【0082】
本発明におけるポリエチレン樹脂には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)以外のポリエチレン樹脂も配合することができる。直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)以外のポリエチレン樹脂は限定されないが、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。ここで低密度ポリエチレン(LDPE)とは、前記の直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)は含まず、通常、高圧法低密度ポリエチレンと呼ばれるものが挙げられる。高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)の製造方法は限定されず、公知の方法を採用することができるが、通常、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等によって製造することが好ましい。
【0083】
更に、低弾性樹脂層には、高弾性樹脂層の吸湿性や紫外線劣化を防ぐために、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等のオレフィン系エラストマーや、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の各種エラストマー成分、酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0084】
本発明における低弾性樹脂層は、メルトフローレート(MFR)0.1g/10min以上20g/10min以下、密度0.88g/cm3以上0.960g/cm3以下、引張弾性率100MPa以上2000MPa以下であることが好ましい。なお、低弾性樹脂層のMFR、密度、引張弾性率は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
【0085】
低弾性樹脂層のMFRが、20g/10minより大きいと、高分子の分子量が低くなり、耐溶剤性が低下し、また、耐候性が劣る場合がある。好ましいMFRは10g/10min、より好ましくは5g/10min以下、さらに好ましくは3g/10min以下である。MFRの下限は、インフレーション成形法で製膜する場合において、製膜性に問題が無いレベルである必要があるため0.1g/10min以上であり、特に0.3g/10min以上であれば、インフレーション成形における高速成形性を維持できるため好ましい。
【0086】
また、低弾性樹脂層の密度が0.88g/cm3より小さいと、耐溶剤性、耐防水性が悪化するおそれがある。外部からの水分を遮断し、溶剤に対する耐性を高めるためにも、低弾性樹脂層の密度はある程度高い方がよく、好ましい密度の下限は0.918g/cm3以上、より好ましくは0.920g/cm3以上であり、特に好ましくは0.923g/cm3以上である。密度の上限は、柔軟性を損なわない範囲として0.960g/cm3以下、特に0.950g/cm3以下であり、耐白化性を考慮すると、密度の上限はより好ましくは0.945g/cm3以下である。
低弾性樹脂層の密度を上記範囲とするための手段は限定されないが、例えば、低弾性樹脂層に用いるポリエチレン樹脂の最適化、前記の通り、ポリエチレン樹脂やポリエチレン樹脂以外の樹脂等を併用し、それらの配合比率を最適化することなどが挙げられる。
【0087】
低弾性樹脂層の引張弾性率は、柔軟性を付与しすぎると変形等の外力が作用した時に材料破壊を引き起こしやすくなるため100MPa以上であり、反対に硬くなりすぎると脆くなりやすく、接着層を介して接する金属箔との間で剥離しやすくなるため、1500MPa未満であることが好ましく、1300MPa以下であることがより好ましい。低弾性樹脂層の引張弾性率は特に好ましくは130MPa以上1000MPa以下、とりわけ好ましくは180MPa以上900MPa以下である。
【0088】
なお、前述のMFR、密度、引張弾性率の値は、低弾性樹脂層を構成する樹脂の特性を意味し、ポリエチレン樹脂として複数のポリエチレン樹脂を併用する場合や、ポリエチレン樹脂以外の樹脂を含有する場合においては、樹脂組成物としての値を意味するものである。
【0089】
本発明では、特に低弾性樹脂層を直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層とし、高弾性樹脂層や金属箔との貼り合わせ側となる接着層に、前述の好適な引張弾性率、密度、MFR、融点を有する酸変性ポリエチレン樹脂層を使用することで、より高強度かつ耐防水性を高めることもできる。
【0090】
また、低弾性樹脂層を多層構造とし、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層と、ランダムポリプロピレン層またはブロックポリプロピレン層との積層構造、或いは、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層と中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンを主成分とする層との積層構造としてもよく、更に3~5層程度の多層積層構造としてもよい。
【0091】
低弾性樹脂層の厚みは、3μm以上80μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上70μm以下、特に好ましくは12μm以上60μm以下である。低弾性樹脂層の厚みが上記下限よりも薄いと、耐水性が不足し、防食性が低下することがある。また柔軟性が不足し施工性が劣る場合がある。一方、上記上限よりも厚いと、ハンドリング性が悪化する場合がある。
なお、ここで、低弾性樹脂層の厚みとは、低弾性樹脂層1つ当たり(1ヶ所当たり)の厚みをさす。ここで、1つの低弾性樹脂層とは、接着層を含まない層、例えば接着層に隣接する層であり、1つの低弾性樹脂層が複数層の積層構造であれば、その合計の厚みに該当する。
【0092】
低弾性樹脂層は、鋼材等の被保護材に貼る際の粘着剤や、高弾性樹脂層と貼り合わせる際の接着剤との接着性を高めるために、表面に凹凸を付与することが好ましい。この場合、凹凸付与面の表面粗さRaは、0.1~1.2μm、特に0.2~0.8μm程度であることが好ましい。
また、低弾性樹脂層の片面または両面にコロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコート処理等の粘着剤や接着剤への接着性、塗装を施す場合の塗装性を高める処理を行ってもよい。この場合、処理面の水との接触角は50°~95°が好ましく、特に好ましくは55°~90°である。
【0093】
[光安定剤]
本発明の防食用ラミネートフィルムは、耐光性、耐候性を高めるために光安定剤を含有する層を有することが好ましい。光安定剤は、接着層に含有されていてもよく、保護層に含有されていてもよく、これらの両方に含有されていてもよい。特に、光安定剤は、金属箔の表面側、即ち、金属箔を介して被保護材とは反対側に設けられる層に含有されていることが好ましい。
【0094】
光安定剤としては特に制限はないが、ヒンダードアミン系光安定剤(一般的にHALSとも表記する)が好ましく、特に高分子型ヒンダードアミン系光安定剤が耐ブリード性に優れることから好ましい。接着層や保護層に酸変性PE系樹脂やPE樹脂、PP樹脂を使用する場合においては、高分子型ヒンダードアミン系光安定剤の中でも、エチレンと共重合させた高分子型ヒンダードアミン系光安定剤が長期耐候性を顕著に高めることができ、好ましい。
【0095】
保護層又は接着層に光安定剤を配合する場合、その配合量は特に制限はないが、保護層又は接着層中の含有量として0.01重量%以上10重量%以下とすることが耐候性、防食用ラミネートフィルムとしての防水・防食性の観点から好ましい。
また光安定剤とともに、公知の紫外線吸収剤を併用配合しても良い。
なお、光安定剤としては、市販品を用いることができ、例えば、BASF社製、Tinuvin Chimassorb(商品名)シリーズ、ADEKA社、アデカスタブ(商品名)シリーズ等、上記に該当するものを適宜選択して使用することができる。
【0096】
[防食用ラミネートフィルムの層構成]
本発明の防食用ラミネートフィルムは、金属箔と、該金属箔の片面又は両面に熱可塑性熱接着樹脂なる接着層を積層したことを特徴とするものであり、その構成であれば他の層の構成には特に制限はないが、例えば
図1に示すように、金属箔3の両面にそれぞれ接着層2(2a,2b)を介して低弾性樹脂層1(1a,1b)を積層して防食用ラミネートフィルム10(10A)としても良い。
【0097】
また、
図2に示すように、金属箔3の両面にそれぞれ接着層2(2a,2b)を介して高弾性樹脂層4と低弾性樹脂層1(1a)を積層し防食用ラミネートフィルムとしても良いし、更にその外側にそれぞれ接着層2(2c,2d)を介して低弾性樹脂層1(1b,1c)を積層して一体化した柔軟性防食用ラミネートフィルムとして使用しても良い。
【0098】
更に、
図3に示すように、金属箔3の一方の面にのみ接着層2を貼った防食用ラミネートフィルム10(10C)であってもよい。
【0099】
いずれの場合においても、金属箔4の少なくとも被保護材への貼着面とは反対側の面である表面側に、少なくとも一層の接着層2を有した方が、長期耐久性、耐候性の点から好ましいが、被保護材への貼着面側に接着層2を貼り合わせてもよい。
【0100】
本発明の防食用ラミネートフィルムにおいて、接着層、金属箔、高弾性樹脂層、低弾性樹脂層が、それぞれ前述の好適な厚み範囲であればよく、その総厚みについては特に制限はないが、各層の必要な厚みを確保してそれぞれの機能を有効に得る上で、本発明の防食用ラミネートフィルムの総厚みの下限は30μm以上であることが好ましく、45μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが破れにくくなるため特に好ましい。
一方、防食用ラミネートフィルムが過度に厚膜となって、高剛性となり、施工性等が損なわれることを防止する観点から、本発明の防食用ラミネートフィルムの総厚みの上限は250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0101】
[その他の処理]
防食用ラミネートフィルムの外表面側面(鋼材貼着面とは反対側の面)には、防食効果を高めるための塗装(図示せず)やコーティングを施してもよい。例えば、耐水性や耐候性を向上させるために、耐候性コーティング層を形成してもよい。
また、塗装や鋼材等の被保護材への貼り付けのための粘着剤や接着剤に対する濡れ性を高めるために、水との接触角が50゜以上100゜以下となるような表面処理を施してもよい。
【0102】
更に、防食用ラミネートフィルムの外側に塗料を吹き付ける場合や、内側に接着剤を塗布する場合には、耐溶剤性が必要になるため、耐溶剤性の優れた疎水性の低弾性樹脂層を設けることが好ましいが、濡れ性の良い表面性も重要となる。そのためプライマーを塗布したり、前述の通り、低弾性樹脂層表面に凹凸を付与したり、防食用ラミネートフィルムの外側表面にコロナ放電処理やプラズマ処理や火炎処理等の表面処理をするなどして接着剤、塗料との接着性を向上させる処理を施してもよい。
【0103】
一方、表面の濡れ性より、表面に程度な凹凸を付けた方が、表面の塗料やコーティング、粘着剤との接着性を付与するための各種コロナ処理やプラズマ処理後のフィルム同士の粘着によるブロッキングと呼ばれる現象を抑えることができ、工事施工性や粘着剤、接着剤、塗料との接着性のため好ましい場合もある。
【0104】
本発明の防食用ラミネートフィルムの好ましい表面粗さはRaで0.03以上1.2μm以下であり、特に好ましいのは0.12以上0.8以下である。
適度な濡れ性と適度な凹凸とを適切に組み合せて共有させることもできる。
【0105】
[防食性ラミネートフィルムの製造方法]
本発明の防食用ラミネートフィルムの製造方法としては特に制限はないが、少なくとも金属箔と接着層のラミネートについては、予め接着層をTダイ成形法かインフレーション成形法で製膜化し、その後、サーマルラミネーション法で金属箔と製膜化した接着層を加熱し貼り合わせる方法や、接着層を押出ラミネーション法により金属箔に直接貼り付ける方法や、保護層のフィルムと金属箔との間に加熱溶融した接着層を押出して積層化するサンドラミネーション法により、直接金属箔に加熱溶融させ貼り合わせる方法などが好ましい。
【0106】
〔防食テープ〕
本発明の防食性ラミネートフィルムに粘着剤または接着剤を塗布し防食テープとしたり、または、本発明の防食用ラミネートフィルムにフィルムないしシート状物に粘着剤を含浸させた所謂両面テープを貼り合わせて防食テープとして用いることができる。このような構成により、防食性テープとしての長期耐水性、耐久性、施工性の向上を図ることができる。
【0107】
この場合、特に貼り合わせ初期の接着力が適度に低く、湿度による硬化後、接着力が向上するような特性を有する粘着剤を防食性のテープとして防食基材である本発明の防食用ラミネートフィルムに貼り合わせることが好ましい。
また、鋼材などの被保護材の凹凸面を吸収し、かつ貼り合わせ時に加わる応力や外的衝撃からの応力を緩和し防食用ラミネートフィルムの破損を長期にわたり防ぐために、適度な弾力性と厚みを有する必要がある。
このような観点から、紙、不織布、綿布、ポリエチレンまたはアクリルフォームの基材にアクリル系の粘着剤を含浸させた両面テープを防食用ラミネートフィルムに貼り、防食テープとして使用することが好ましい。
【0108】
図1~3では、湿度硬化型粘着剤による粘着層(両面テープであってもよい。)5を用いて離型紙または離型フィルム6を防食用ラミネートフィルム10(10A,10B,10C)にそれぞれ貼着して防食テープ20(20A,20B,20C)としたものが示されている。
【0109】
好ましい粘着層5または両面テープの厚みは、0.1mm以上2mm以下であり、これより厚いと柔軟性が損なわれ、施工性が悪化することがある。一方、これより薄いと被着体の凹凸追従性が悪化し、また接着強度も不足することがある。より好ましい粘着層5または両面テープの厚みは0.15mm以上1.5mm以下で、0.20mm以上1.2mm以下が特に好ましい。
【0110】
また、粘着層5または両面テープの弾性率も適度に低い方がよく、引張弾性率として100MPa以下のアクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸させた粘着性両面テープを使用することが好ましい。
【実施例0111】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0112】
[評価方法]
以下の実施例および比較例で用いた材料、製造された防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの評価方法は以下の通りである。
【0113】
<水との接触角>
試料表面の水との接触角は、協和界面科学株式会社製 商品名DROPMASTER自動接触角計を用いて測定し、5点の測定値の平均値を採用した。
【0114】
<表面粗さ>
キーエンス社製超深度形状測定顕微鏡商品名「VK8500」を用い、レンズ100倍、ピッチ0.01μm、シャッタースピードAUTO、ゲイン835の測定条件にて40μm×40μmのエリアの表面粗さRaを4点測定し、その平均値を表面粗さの測定値とした。
【0115】
<引張弾性率>
樹脂または樹脂組成物の引張弾性率は、ISO1184-1970に基づき、15mm幅の短冊状のサンプルを、チャック間距離100mmでテンシロン型引張り試験機にて1mm/minで測定した値である。
【0116】
<MFR(メルトフローレート)>
PEについてはJISK 7210A法に基づき、190℃、2.16kgf荷重にて測定した値である。
PPについては、JISK 7210法に基づき、230℃、2.16kgf荷重にて測定した値である。
ETFEについては、ASTMD-1238法に基づいた測定値である。
【0117】
<密度>
密度は酸変性LLPE,RPP、LLPE,LDPEについてはJIS K7112A法(水中置換法)により求めた。酸変性ETFEについてはASTMD792法により求めた。
【0118】
<融点>
DSC(示差走査熱量)測定による。
セイコー電子工業(株)製SSC-5200(商品名)を使用し、試料を昇温速度10℃/minにて昇温させたときの結晶融解ピーク温度を融点とした。
【0119】
<金属箔と接着層との接着強度>
防食用ラミネートフィルムを15mm×50mmに切り出し、金属箔と接着層を予め20mm剥離させ試験片とした。イマダ社製引張試験機を用い、引張速度50mm/minで金属箔と接着層との界面を30mmの長さ剥離させ、最小値を接着強度の測定値とした。3サンプルの最小値の平均を測定結果とした。
【0120】
<突き刺し強度>
防食用ラミネートフィルムを50mm×100mmに切り出して試験片とした。イマダ社製引張試験機を用い、中央に直径20mmの開口部を有する押さえ板と台の間に試験片を固定し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円径の針を、突き刺し速度50mm/minで突き刺し、針が貫通する時の破断点荷重を測定した。3サンプルの平均値を測定結果とした。
【0121】
<耐熱水加速試験>
防食用ラミネートフィルムの耐湿度性の加速試験として、プレッシャークッカー試験を行った。
試験槽内に高温かつ高密度な水蒸気環境を作り、防食用ラミネートフィルムを120℃、100%で、240hr放置し(40℃、90%の15年暴露に相当する)、その後フィルムを取り出した。この耐熱水加速試験後に突き刺し強度を測定し、耐熱水加速試験前の測定値と比較することにより、長期耐水性を判断した。
【0122】
<耐候性加速試験>
スーパーキセノンウェザーメーターを使用し、防食用ラミネートフィルムを180W/m2、200hr照射後(約6か月屋外暴露に相当する)、フィルムを取り出した。この耐候性加速試験後に突き刺し強度を測定し、耐候性加速試験前の測定値と比較することにより、長期耐候性を判断した。
【0123】
<総合評価>
防食用ラミネートフィルムとしても総合評価は、以下の基準で判断した。
○:耐熱水加速試験後の突き刺し強度と耐候性加速試験後の突き刺し強度の何れもが、3N以上である。
△:耐熱水加速試験後の突き刺し強度と耐候性加速試験後の突き刺し強度の何れもが2N以上3N未満である。
×:耐熱水加速試験後の突き刺し強度と耐候性加速試験後の突き刺し強度が2N未満である。
【0124】
<防食テープの総合評価(剥離強度)>
防食テープとしての総合評価は、上記の防食フィルムでの総合評価に、防食テープの剥離強度を加えて評価する。
防食テープの剥離方法は、厚み1mmのSUS430板に防食テープを貼り合わせ、23℃、50%で24時間放置後(初期)のサンプルと、45℃、75%で20時間状態調整後、23℃、50%で48時間放置後(湿度硬化後)のサンプルについて、それぞれT型ピール強度試験法による剥離強度を測定し、湿度硬化性を評価した。
具体的には、それぞれのサンプルから15mm幅の短冊状に切り出した試験片を用い、SUS板と防食テープとの接着側との界面を、オリエンテック社製引張試験機「STA1225」を用いて50mm/minの引張り速度の条件で1cm間剥離させながら測定し、この剥離時の最大荷重を剥離強度とした。
防食テープとしての剥離強度は、初期剥離強度と湿度硬化後の剥離強度の測定値から、以下の基準で判断した。
〇:湿度硬化後剥離強度を初期剥離強度で除した値が1.2倍を超える
×:上記を満たさない
【0125】
[樹脂の物性]
実施例および比較例において、接着層、高弾性樹脂層、低弾性樹脂層に用いた樹脂の特性は以下の表-1の通りである。
【0126】
【0127】
[各層の構成材料]
実施例および比較例で防食用ラミネートフィルムおよび防食テープの製造に用いた各層の構成材料は以下の通りである。
【0128】
<高弾性樹脂層>
Ny-15:チューブラー方式により製膜した二軸延伸ポリアミド(Ny)フィルム(厚み:15μm、引張弾性率:2300MPa、表面粗さRa:0.04μm、両面コロナ処理品)
Ny-25:チューブラー方式により製膜した二軸延伸ポリアミド(Ny)フィルム(厚み:25μm、引張弾性率:2300MPa、表面粗さRa:0.04μm、両面コロナ処理品)
【0129】
<光安定剤>
エチレンと共重合させた高分子型ヒンダードアミン系光安定剤
【0130】
<耐候性コート剤>
高分子型ヒンダードアミン系光安定剤を1重量%配合した耐候性アクリル系コート剤
【0131】
<接着剤>
ドライ接着剤4:芳香族ポリエステルとポリイソシアネートとの2液混合系ドライラミ用接着剤を厚み4μmに塗付して乾燥させた層
【0132】
<金属箔>
AL-40:厚み40μmのJIS A8079H-O材(鉄を1.0重量%含む軟質アルミニウム箔)の両面にベーマイト処理を施したもの
ベーマイト処理は、脱イオン水にトリエタノールアミンを0.5重量%の濃度で添加した95℃のベーマイト処理水に、上記のアルミニウム箔を1分間浸漬させることにより行い、厚さ0.25μmのベーマイトの針状結晶皮膜を形成した。その皮膜面の水との接触角は15°であった。
AL-25:厚み25μmのJIS 1N30H-O材(鉄を0.4重量%含む軟質アルミニウム箔)の未処理品。その未処理面の水との接触角は90°であった。
AL-9:厚み9μmのJIS 8021H-O材(鉄を1.3重量%含む軟質アルミニウム箔)の未処理品。その未処理面の水との接触角は90°であった。
SUS-10:厚み10μmのSUS304未処理品
【0133】
<両面テープ>
両面テープA:厚み0.25mmのアクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸させた両面テープ(スリーエム製VHBテープ 製品名Y4914、引張弾性率:10MPa以下)
両面テープB:厚み0.4mmのアクリルフォームにアクリル系粘着剤を含浸させた両面テープ(スリーエム製VHBテープ 製品名Y4920、引張弾性率:10MPa以下
【0134】
[実施例1]
<表面側貼り合わせ用フィルムの作製>
酸変性LLPE100重量部に光安定剤の濃度が1重量%となるように配合しドライブレンドした材料(接着層用)と、LLPE95重量部とLDPE5重量部に更に光安定剤の濃度が1重量%となるように配合しドライブレンドした材料(低弾性樹脂層用)とを共押出インフレーション成形により製膜して以下のような2層フィルムI-Aを得た。
総厚み:80μm
酸変性LLPE層(接着層)厚み:20μm
LLPE層(低弾性樹脂層用)厚み:60μm
表面粗さRa:0.3μm
【0135】
<被保護材側貼り合わせ用フィルムの作製>
光安定剤を配合していない酸変性LLPE(接着層用)と、LLPE95重量部とLDPE5重量部とをドライブレンドした材料(低弾性樹脂層用)とを共押出インフレーション成形により製膜して以下のような2層フィルムI-Bを得た。
総厚み:50μm
酸変性LLPE層(接着層)厚み:12μm
LLPE層(低弾性樹脂層用)厚み:38μm
表面粗さRa:0.3μm
【0136】
<防食用ラミネートフィルムの作製>
AL-40の両面に酸変性LLPE層側がAL-40面側になるように、2層フィルムI-AとI-Bをそれぞれ熱ラミネーション法により貼り合わせ、合計厚み170μmの5層の積層フィルムを得た。
この積層フィルムの表面粗さは両面ともRa0.45μmになるように熱ラミネーション時のロールと離型フィルムの表面粗さを調整した。
この積層フィルムの両面にプラズマ処理を施し、表面のLLPE層側のプラズマ処理面の水との接触角:80゜、表面粗さRa:0.45μmの防食用ラミネートフィルムを作製した。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔と接着層の接着強度は、表面側貼り合わせ面では13N/15mm、被保護材側貼り合わせ面では11N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
【0137】
またこの防食ラミネートフィルムに両面テープAを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0138】
[実施例2]
<表面側及び被保護材側貼り合わせ用フィルムの作製>
酸変性LLPE100重量部に光安定剤の濃度が1重量%となるように配合しドライブレンドした材料(接着層用)と、LLPE95重量部とLDPE5重量部に更に光安定剤の濃度が1重量%となるように配合しドライブレンドした材料(低弾性樹脂層用)とを共押出インフレーション成形により製膜して以下のような2層フィルムIIを得た。
総厚み:50μm
酸変性LLPE層(接着層)厚み:12μm
LLPE層(低弾性樹脂層用)厚み:38μm
表面粗さRa:0.3μm
【0139】
<防食用ラミネートフィルムの作製>
AL-25の両面に酸変性LLPE層側がAL-25面側になるように、2層フィルムIIをそれぞれ熱ラミネーション法により貼り合わせ、合計厚み125μmの5層の積層フィルムを得た。
この積層フィルムの表面粗さは両面ともRa0.4μmになるように熱ラミネーション時のロールと離型フィルムの表面粗さを調整した。
この積層フィルムの両面にプラズマ処理を施し、表面のLLPE層側のプラズマ処理面の水との接触角:80゜、表面粗さRa:0.4μmの防食用ラミネートフィルムを作製した。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔と接着層の接着強度は、表面側貼り合わせ面、被保護材側貼り合わせ面の何れも11N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
【0140】
またこの防食ラミネートフィルムに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0141】
[実施例3]
接着層用フィルムとして、酸変性ETFEを用いてTダイ成形法により厚さ50μmの酸変性ETFEフィルムを作製した。
次にAL-25の片面(表面側貼り合わせ面)に酸変性ETFEフィルムを熱ラミネーション法により貼り合わせ、合計厚み75μmの防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの酸変性ETFE側の面の表面粗さはRa0.15μmになるように熱ラミネーション時のロールと離型フィルムの表面粗さを調整した。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔と接着層の接着強度は、6N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
またこの防食ラミネートフィルムの被保護材側貼り合わせ面に両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0142】
[実施例4]
<基材フィルムの作製>
接着層用フィルムとして厚み30μmの酸変性LLPEの単層インフレーション成形フィルムを用い、保護層用フィルムとしてNy-15を用い、Ny-15/酸変性LLPEフィルム/AL-9/酸変性LLPEフィルム/Ny-15の積層構成となるように熱ラミネーション法により貼り合わせ、基材フィルムとした。
【0143】
<外層用フィルムの作製>
酸変性LLPE(接着層用)と、LLPE95重量部とLDPE5重量部をドライブレンドした材料(低弾性樹脂層用)とを共押出インフレーション成形により製膜して以下のような外層用フィルムを作製した。
総厚み:30μm
酸変性LLPE層(接着層)厚み:10μm
LLPE層(低弾性樹脂層用)厚み:20μm
【0144】
<防食用ラミネートフィルムの作製>
基材フィルムの両面に、外層用フィルムをそれぞれ酸変性LLPE層側が内側となるように熱ラミネーション法により貼り合わせ合計厚み159μmの9層の積層フィルムを得た。
この積層フィルムの表面粗さは両面ともRa0.4μmになるように熱ラミネーション時のロールと離型フィルムの表面粗さを調整した。
この積層フィルムの両面にプラズマ処理を施し、LLPE層側のプラズマ処理面の水との接触角:80゜、表面粗さRa:0.4μmとした。
次に表面側となるLLPE層に、耐候性コート剤を10μmの厚さに塗布して総厚み169μmの防食用ラミネートフィルムとした。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔と接着層の接着強度は、表面側貼り合わせ面、被保護材側貼り合わせ面の何れも12N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
またこの防食ラミネートフィルムに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0145】
[実施例5]
接着層用樹脂として酸変性RPPを用い、保護層用フィルムとして未延伸のPPフィルム(厚み25μm)を用い、AL-25の両面にそれぞれサンドラミ製造法により酸変性RPPを押出してPPフィルムを貼り合わせ、以下のような5層の積層フィルムを得た。
各酸変性RPP層(接着層)厚み:20μm
各PP層(低弾性樹脂層用)厚み:25μm
総厚み:115μm
この積層フィルムの表面粗さは両面ともRa0.25μmになるようにPPフィルムを選定した。
この積層フィルムの両面にプラズマ処理を施し、PP層側のプラズマ処理面の水との接触角:90゜、表面粗さRa:0.25μmとした。
更に、表面側となるPP層に、耐候性コート剤を10μmの厚さに塗布し、総厚み125μmの防食用ラミネートフィルムとした。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔と接着層の接着強度は、表面側貼り合わせ面、被保護材側貼り合わせ面の何れも8N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
またこの防食ラミネートフィルムに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0146】
[実施例6]
AL-25の代わりにSUS-10を使用したこと以外は、実施例2と同様に貼り合わせ、合計厚み110μmの防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔と接着層の接着強度は、表面側貼り合わせ面、被保護材側貼り合わせ面の何れも11N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
またこの防食ラミネートフィルムに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0147】
[実施例7]
高弾性樹脂層用フィルムとしてNy-25を用い、ドライラミネーション法によりドライ接着剤4を介してAL-40の一方の面(表面側貼り合わせ面)にNy-25を貼り合わせた。
実施例1の被保護材側貼り合わせ用フィルムと同様にして作製した2層フィルムI-Bを、AL-40の他方の面(被保護材側貼り合わせ面)に酸変性LLPE側がAL-40面となるように熱ラミネーション法により貼り合わせ、合計厚み119μmの5層の積層ラミネートフィルムを得た。
この積層フィルムの表面粗がさRa:0.45μmとなるように熱ラミネーション時のロールと離型フィルムの表面粗さを調整した。
この積層フィルムの被保護材側貼り合わせ面のLLPE層側のプラズマ処理を施し、水との接触角:80゜、表面粗さRa:0.45μmの防食用ラミネートフィルムを作製した。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔と接着層との接着強度は、表面側貼り合わせ面では2.5N/15mm、被保護材側貼り合わせ面では11N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
またこの防食ラミネートフィルムに両面テープBを貼って防食テープとし、湿度硬化性を評価した。
これらの結果を表-2に示す。
【0148】
[比較例1]
LLPE95重量部とLDPE5重量部とをドライブレンドした材料を用いて単層インフレーション成形により製膜して厚み30μmの単層フィルムを得た。
このフィルムの両面にプラズマ処理を施し、水との接触角:80゜、表面粗さRa:0.25μmとなる低弾性樹脂層用フィルムを作製した。
この低弾性樹脂層用フィルムを、ドライラミネーション法により、ドライ接着剤4を介して、AL-25の両面にそれぞれに貼り合わせて5層の積層フィルム(総厚み:93μm)である防食用ラミネートフィルムを得た。
この防食用ラミネートフィルムの金属箔とドライ接着剤との接着強度は、表面側貼り合わせ面、被保護材側貼り合わせ面の何れも2.5N/15mmであった。
この防食用ラミネートフィルムに耐熱水加速試験と耐候性加速試験を行い、試験前後の突き刺し強度を測定した。
またこの防食ラミネートフィルムに両面テープBを貼って防食テープとした。
これらの結果を表-2に示す。
【0149】
【0150】
[考察]
表-2より、次のことが分かる。
実施例1~6では、熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層を金属箔の少なくとも外表面側(被保護材と反対側の面)に貼り付けることにより、耐熱水加速試験と耐候性加速試験に耐え得る防食ラミネートフィルムが得られている。
また、実施例1、2、4、5、6では、ポリオレフィン系の材料を使用しているものの光安定剤を少なくとも1層に配合しているため、より耐熱水加速試験と耐候性加速試験に耐え得る防食ラミネートフィルムが得られている。
【0151】
実施例3では、接着層の熱可塑性熱接着樹脂として酸変性ETFEを用いることにより、光安定剤を配合せずとも耐熱水加速試験と耐候性加速試験に耐え得る防食ラミネートフィルムが得られている。
【0152】
さらに実施例1、2、3、5、6に見られるように、試験前の突き刺し強度より、耐熱水加速試験後の突き突き刺し強度が向上する例がみられるが、熱が接着層に加わることにより、更に強固に金属箔と熱接着すること、また熱可塑性熱接着樹脂に含まれるエチレン成分が、熱、水分による結晶化や架橋が進行し剛性が向上するためと推察でき、本発明による熱可塑性熱接着樹脂を接着層として使用する効果と考えられる。
実施例4では、試験前の突き刺し強度より、耐熱水加速試験後の突き突き刺し強度が低下しているが、これはNy樹脂の加水分解が原因と考えられる。しかしながら熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層を金属箔に貼り合わせているため、耐熱水試験に耐え得るものが得られている。
【0153】
また、実施例7は、金属箔の表面側に、熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層を貼り合わせていないが、被保護材側の面の金属箔に熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層を貼り合わせているため被保護材面側に樹脂が残存し、フィルムが耐熱水加速試験や耐候性加速試験にある程度耐えることができ、長期耐久性には若干劣るものの高温高湿の過酷な条件下での使用でなければ使用可能なレベルと考えられる。
【0154】
これに対して、比較例1は、金属箔に、熱可塑性熱接着樹脂よりなる接着層を貼り合わせていないため、フィルムが耐熱水加速試験や耐候性加速試験に耐えることができず、試験後の突き刺し強度の低下が大きく、著しく長期耐久性に劣る。