(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133063
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】消毒組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220906BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220906BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220906BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20220906BHJP
A61K 8/30 20060101ALI20220906BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220906BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220906BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220906BHJP
A61K 33/18 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/02 20060101ALI20220906BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220906BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220906BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220906BHJP
A01N 59/12 20060101ALI20220906BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220906BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220906BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220906BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61K45/00
A61Q11/00
A61Q19/00
A61K8/20
A61K8/30
A61K8/81
A61K8/73
A61P17/00 101
A61K33/18
A61K31/02
A61K47/38
A61K9/10
A61K47/32
A01N59/12
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/02
A01N25/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031893
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】304040072
【氏名又は名称】丸住製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日浅 祥
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C086
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC31
4C076EE16
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4C076FF17
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4C083AC811
4C083AD071
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4C083BB48
4C083CC02
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD39
4C083EE01
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4C084AA17
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4C084MA63
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4C084ZA901
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4C086MA05
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4C206AA01
4C206BA07
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4C206MA05
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4C206MA83
4C206NA03
4C206ZA90
4H011AA01
4H011AA04
4H011BA01
4H011BA04
4H011BB02
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA13
4H011DG16
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】消毒成分を含み、低いpH帯であっても、分散安定性に優れた、消毒組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 消毒成分と水とセルロース系増粘剤としてスルホ基を導入して得られたスルホン化微細セルロース繊維を含む組成物とすることで、本発明の完成に至った。前記スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基の導入量が0.1mmol/g~3.0mmol/gであり、前記消毒成分はヨウ素系消毒成分であり、分散安定性に優れた消毒組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、消毒成分と、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維と、を含む組成物であり、
前記スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基の導入量が0.1mmol/g~3.0mmol/gであり、
前記消毒成分が、ヨウ素系消毒成分である、
ことを特徴とする消毒組成物。
【請求項2】
前記組成物は、
B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpm、3分で測定したB型粘度が100mPa・s以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の消毒組成物。
【請求項3】
前記ヨウ素系消毒成分が、
ヨードフォアもしくはヨウ素、トリヨードメタンのうち少なくとも1以上の消毒成分であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の消毒組成物。
【請求項4】
前記ヨードフォアが、
ポビドンヨードであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の消毒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化微細セルロース繊維を含有する消毒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス感染症が世界中で広がっており、消毒剤の需要が高まっている。消毒剤としては、アルコール系、界面活性剤系、ヨウ素系等様々なものがあり、特に、ヨウ素系消毒剤は、その刺激性の低さや各種細菌、真菌、ウイルスなど広範囲の微生物対し効果を発揮することから、手術部位の皮膚や皮膚の創傷部位の殺菌・消毒や、口中や喉の粘膜の殺菌・消毒用のうがい薬等として使用されている。使用に際して、消毒液として液体で使用されるされ場合には、液が垂れ落ちる等の不具合を解消するために、特許文献1のように高分子系増粘剤として水溶性セルロースを含ませることで粘性を付与した消毒剤も知られている。
セルロースは自然界に豊富に存在するバイオマス資源であり、グルコースがβ1-4結合して構成される高分子である。近年セルロース繊維を微細化したセルロースナノファイバー(CNF)が注目されている。CNFは高強度、高粘性、優れた生分解性と様々な特徴を有しているため、いろいろな分野への利用が期待されており、従来からよく知られた高分子系増粘剤の代わりにカルボキシメチルセルロース(CMC)のような水溶性セルロースやCNFといったセルロース系増粘剤を使用することで、塗料や化粧品に対して増粘効果を付与する例が知られている。
しかし、一方では高分子系増粘剤共通の課題である、低いpH帯の溶液中や高塩濃度な溶液中といった環境下において高分子同士が凝集し沈殿してしまい、所望の粘性が得られなくなる耐酸性の問題や耐塩性の問題があることが知られており、セルロース系増粘剤も例外ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/086760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ポビドンヨードを消毒の有効成分とし、ヒプロメロースをセルロース系増粘剤として含有する消毒用組成物が開示されている。しかし、強酸性領域のpH帯では検証がされておらず、消毒剤としての有効成分であるポビドンヨードの含有量が少なく、また、ポビドンヨードが塩として作用してしまいセルロース同士が凝集してしまうセルロース系増粘剤の耐塩性の問題は解決されていない。また、セルロース系増粘剤による粘性が十分に得られていない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、有効成分である消毒成分を含み、低いpH帯であっても、セルロース系増粘剤が安定に分散した消毒組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、消毒成分と水とセルロース系増粘剤としてスルホ基を導入して得られたスルホン化微細セルロース繊維を含む組成物とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明の消毒組成物は、水と、消毒成分と、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維と、を含む組成物であり、前記スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基の導入量が0.1mmol/g~3.0mmol/gであり、前記消毒成分が、ヨウ素系消毒成分である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有効成分濃度が高く、低いpH帯でありながらも、微細セルロース繊維が沈殿することなく所望の粘性が付与された消毒組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態の消毒組成物は、スルホン化微細セルロース繊維を含有することにより、低いpHであり、高い濃度の消毒成分を含む場合であっても、安定して分散できるようにしたことに特徴を有している。
【0011】
(本実施形態の消毒組成物)
本実施形態の消毒組成物は、水と、ヨウ素系消毒成分と、スルホン化微細セルロース繊維を含む組成物である。
【0012】
本実施形態の消毒組成物の水は、とくに限定されない。例えば、一般的な水道水のほか、蒸留水やイオン交換水である純水や超純水、滅菌精製水などを用いることができる。
【0013】
本実施形態の消毒組成物のヨウ素系消毒成分は、ヨウ素を含む化合物を有効成分とし、グラム陽性菌やグラム陰性菌、真菌等の細菌やウイルスといった微生物に対する殺菌作用を有するものであれば、特に限定されない。なお、本明細書中において、該殺菌作用や、一般的に病原菌などを殺し感染を防止等する場合に使用される消毒という概念を共に消毒と表現する。
【0014】
(消毒成分の含有量)
本実施形態の消毒組成物におけるヨウ素系消毒成分の含有量は、上述の微生物と消毒成分が接触した際に消毒される濃度に調整されていれば、特に限定されない。
【0015】
例えば、本実施形態のヨウ素系消毒成分の含有量は、本実施形態の消毒組成物を100質量%として、0.1質量%以上20質量%以下であるように調整されており、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
【0016】
また、本実施形態のヨウ素系消毒成分の有効ヨウ素としては、0.01質量%以上であればよく、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上である。
【0017】
(ヨウ素系消毒成分)
本実施形態の消毒組成物のヨウ素系消毒成分は、特に限定されない。例えば、ヨードフォアの一種でありうがい薬や手術部位の皮膚や粘膜の消毒に使用されるポビドンヨードや、ヨードチンキやルゴール液や歯科用ヨード・グリセリンとして知られている消毒剤の有効成分であるヨウ素、ヨードホルムとして知られるトリヨードメタンを挙げることができる。水に溶けやすく取扱性に優れる観点から、ポビドンヨードが好ましい。
【0018】
本実施形態の消毒組成物の溶媒は、上述したような水以外にも、水と混ざり合う性質を有する水溶性溶剤が含まれていてもよい。
本実施形態の消毒組成物の水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールのほか、エチレングリコール、酢酸、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、エチルメチルケトン、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルスルホキシドなどやこれらの誘導体などを挙げることができるが、これらの化合物に限定されない。
なお、本実施形態の消毒組成物の水溶性溶剤としては、これらの化合物を単独または2種以上を含んでいてもよい。
【0019】
(消毒組成物のpH)
本実施形態の消毒組成物は、ヨウ素系消毒成分であるため、消毒成分が効果を失わない酸性であることが望ましく、そのpHが1.0以上、5.0以下に調整されている。より好ましくはpH1.5以上4.0以下、さらに好ましくはpH1.5以上3.5以下である。
pHの測定は、後述の実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0020】
(消毒組成物の分散安定性)
本実施形態の消毒組成物は、分散安定性を有することが好ましい。分散安定性は、後述の沈殿がないことを確認できる場合、もしくは所定の粘度特性を有することができる場合の、少なくともいずれかが確認できる場合に、分散安定性を有するといえる。本実施形態の消毒組成物が所定の分散安定性を有していれば、使用時における取り扱い性を向上させることができる。例えば、使用の際に、内容物の分散状態が不均一な場合に必要となる事前の攪拌が不要となったり、消毒成分が均一に存在しやすいため消毒成分が均一に作用できたり、粘性に起因して消毒成分がとどまりやすくなったりすることから消毒効果が高くなることが期待できる。
【0021】
(消毒組成物の沈殿)
沈殿とは、本実施形態の消毒組成物を調製後に、消毒組成物中にダマといわれる場合もある繊維状や粒子状の凝集物である。沈殿の評価には、調整後の消毒組成物中を、目視にて繊維状や粒子状の沈殿物を確認したり、遠心分離後の沈殿物の量を測定したり、などの方法で評価できる。
本実施形態の消毒組成物中のスルホン化微細セルロース繊維やポビドンヨードが凝集した場合には、繊維や分子のネットワークが少なくなるため、粘度が低下する場合がある。つまりこの場合には、粘度が低下した場合には分散安定性がないといえ、粘度が発現し粘度特性がある場合は、分散安定性を有するといえる。
【0022】
(消毒組成物の粘度特性)
本実施形態の消毒組成物は、所定の粘度特性を有するものが好ましい。本実施形態の消毒組成物が所定の粘度特性を有していれば、使用時における取り扱い性を向上させることができる。例えば、本実施形態の消毒組成物を接触させた際に、本実施形態の消毒組成物が垂れ落ちすることを抑制することができる。さらには、垂れ落ちを抑制できるため、消毒組成物の接触時間が長くなり、消毒効果をより高めることができる。
この垂れ落ちとは、皮膚や粘膜などの塗布する対象物に傾斜がある場合等に、塗布物の全部または一部が重力に従って滑落する状態のことをいう。
【0023】
本実施形態の消毒組成物の粘度特性は、粘度やチキソトロピー性で評価することができる。
【0024】
(消毒組成物の粘度)
例えば、本実施形態の消毒組成物は、粘性において、B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpm、3分の条件下で測定した粘度が、100mPa・s以上35,000mPa・s以下である。
上記粘度の上限値は、好ましくは20,000mPa・s以下であり、より好ましくは10,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは5,000mPa・s以下である。
一方、粘度の下限値は、好ましくは120mPa・s以上であり、より好ましくは200mPa・s以上であり、さらに好ましくは500mPa・s以上、さらにより好ましくは1,000mPa・s以上である。
【0025】
(消毒組成物のチキソトロピー性指数(TI値))
また例えば、本実施形態の消毒組成物は、チキソトロピー性指数(TI値)において、B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpmと回転数60rpm、で測定を行い、各々の粘度を算出し、各粘度比(回転数6rpmでの粘度/回転数60rpmでの粘度)から算出することができる。使用時の流動性を向上させながらも、粘性の効果が得られるようにする取扱性の観点から、下限値としては、チキソトロピー性指数(TI値)が、1.0以上である。好ましくはチキソトロピー性指数(TI値)が2.0以上であり、より好ましくは3.0以上であり、さらに好ましくは5.0以上である。上限値としては、チキソトロピー指数(TI値)が20.0以下であり、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下である。
【0026】
(スルホン化微細セルロース繊維)
本実施形態の消毒組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維である。
このスルホン化微細セルロース繊維には、さらに微細なセルロース繊維(以下、ユニット繊維という)を複数含んでいる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維は、複数のユニット繊維が連結して形成された繊維である。
このユニット繊維は、かかる繊維を構成するセルロース(D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子)の水酸基(-OH基)の少なくとも一部が下記式(1)で示されるスルホ基で硫酸化されたものである。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、微細セルロース繊維の水酸基の一部が、スルホ基で置換されたものである。
【0027】
(-SO3-)r・Zr+ (1)
(ここで、rは、独立した1~3の自然数であり、Zr+は、r=1のとき、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、r=2または3のとき、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基以外の他の官能基が微細セルロース繊維の水酸基の一部に結合していてもよく、とくに、スルホ基以外に硫黄を含む官能基(置換基)を含んでいてもよい。
以下の説明では、スルホン化微細セルロース繊維を構成するセルロース繊維の水酸基にスルホ基だけを導入した場合を代表として説明する。
【0028】
スルホン化微細セルロース繊維のスルホ基の導入量は、スルホ基に起因する硫黄量で表すことができる。
スルホ基の導入量は、とくに限定されない。例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりのスルホ基の導入量は、0.4mmol/g~5.0mmol/gである。より好ましくは、0.4mmol/g以上、3.0mmol/g以下であり、さらに好ましくは1.0mmol/g以上、3.0mmol/g以下である。
【0029】
スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりのスルホ基の導入量が0.4mmol/gよりも低い場合には、繊維間の水素結合が強固なため分散性が低下する傾向にある。その逆に、スルホ基の導入量が0.4mmol/g以上にすることによって分散性が向上させやすくなり、1.0mmol/g以上とすれば電子的反発性をより強くさせることができるので、分散した状態を安定して維持させやすくなる。
つまり、本実施形態の消毒組成物中において、均質に分散させる上では、スルホ基の導入量が0.4mmol/g以上であり、より好ましくは1.0mmol/g以上とするのがよい。一方、かかる硫黄導入量が9.9mmol/gに近づくほど結晶性の低下が懸念され、しかも硫黄を導入する際のコストも増加する傾向にある。
【0030】
スルホン化微細セルロース繊維に対するスルホ基の導入量は、直接的にスルホ基を測定することで評価する方法を選択することができ、スルホ基に起因する硫黄導入量で評価する方法も選択することができる。
前者の測定方法としては、例えば、スルホン化微細セルロース繊維をイオン交換樹脂で処理した後に水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら電気伝導度を測定して得られた値に基づいて算出することができる。
後者の測定方法としては、例えば、スルホン化微細セルロース繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定して得られた値に基づいて算出することができる。
【0031】
なお、スルホ基中の硫黄の原子数は1であるので、硫黄導入量:スルホ基導入量=1:1である。例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりの硫黄導入が0.4mmol/gの場合には、スルホ基の導入量も当然に0.4mmol/gとなる。
【0032】
前者の測定方法をより具体的に説明すると、まず、0.2質量%のナノセルロース繊維含有スラリーに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間以上振とう処理を行う(イオン交換樹脂による処理)。ついで、目開き90μm~200μm程度のメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離する。その後のアルカリを用いた滴定では、イオン交換樹脂による処理後のスルホン化微細セルロース繊維含有スラリーに、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、電気伝導度の値の変化を計測する。得られた計測データは、縦軸に電気伝導度、横軸に水酸化ナトリウム滴定量としてプロットすると曲線が得られ、変曲点が確認できる。この変曲点での水酸化ナトリウム滴定量がスルホ基量に相当し、この変曲点の水酸化ナトリウム量を測定に供したスルホン化微細セルロース繊維固形分量で除することで、スルホ基の導入量を求めることができる。
【0033】
なお、後述するように化学処理したスルホン化パルプを微細化処理してスルホン化微細セルロース繊維を調製する場合には、微細化前のスルホン化パルプにおける硫黄導入量から求めてもよい。
【0034】
スルホン化微細セルロース繊維は、上述したようにセルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維であり、その繊維は非常に細くなっている。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡で観察した際に、1nm~500nmとなるように調製されているのが好ましくい。より好ましくは2nm以上、100nm以下である。さらに好ましくは2nm以上、30nm以下である。
【0035】
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が、30nmよりも大きくなるとアスペクト比が低下する傾向にあり、その結果繊維同士のからみあいが減少する傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、粘性を向上させる上では、2nm~30nmである。好ましくは2nm以上、20nm以下であり、より好ましくは2nm以上、10nm以下である。
【0036】
また、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が、30nmよりも大きくなると可視光の波長の1/10に近づき、マトリックス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折及び散乱が生じ易く、可視光の散乱が生じる傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、透明性の観点では、20nm以下である。好ましくは10nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。
【0037】
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、公知の技術を用いて測定することができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維を純水等の溶媒に分散させて、所定の質量%となるように混合溶液を調整する。そしてこの混合溶液を、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行い、このシリカ基盤上のスルホン化微細セルロース繊維を観察する。
観察方法としては、例えば、走査型プローブ顕微鏡(例えば、島津製作所製;SPM-9700)を用いることができる。得られた観察画像中のスルホン化微細セルロース繊維をランダムに20本選び、各繊維幅を測定し平均化すればスルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅を求めることができる。
【0038】
スルホン化微細セルロース繊維は、イオン交換水や蒸留水のような純水を溶媒として固形分濃度が0.2~1.0質量%となるように調製した分散液が、透明性を有することが望ましい。測定には、全光線透過率や可視光透過率、ヘイズ値を測定する方法があげられる。例えば、JIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて全光線透過率・ヘイズ値を測定する方法があげられる。
【0039】
スルホン化微細セルロース繊維分散液の全光線透過率は、0.2質量%~1.0質量%となるように調製された場合には、70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。スルホン化微細セルロース繊維分散液のヘイズ値は、30%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
なお、スルホン化微細セルロース分散液が、上記の全光線透過率やヘイズ値になっていれば透明性を有しているといえ、逆に言えば、スルホン化微細セルロース繊維分散液が透明性を有していればスルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、細くなっていると考えられる。
【0040】
以下、本実施形態の消毒組成物の各構成を詳細に説明する。
【0041】
本実施形態の消毒組成物は、上記のごとく、水と水溶性溶媒が混合した水溶液中において、スルホン化微細セルロース繊維を含有させることにより、水に対する溶解度が低いヨウ素系消毒成分を均質な状態に維持させることができる。
【0042】
(スルホン化微細セルロース繊維の含有量)
本実施形態の消毒組成物におけるスルホン化微細セルロース繊維の含有量は、ヨウ素系消毒成分が均質な状態に維持できる量となるように調整されていればよい。
例えば、本実施形態の消毒組成物中のスルホン化微細セルロース繊維の含有量は、所望の粘性を発揮させる観点から、本実施形態の消毒組成物中に含まれるヨウ素系消毒成分100質量部に対して、1質量部~200質量部である。好ましくは1質量部以上、100質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上、50質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以上、30質量部以下であり、さらにより好ましくは3質量部以上、10質量部以下である。
【0043】
(スルホン化微細セルロース繊維の製造方法)
本実施形態の消毒組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、以下に示す製法(スルホン化パルプ製法)により製造されたスルホン化パルプを微細化処理することにより製造することができるが、かかる製法に限定されない。
【0044】
このスルホン化パルプ製法の概略は、セルロースを含む繊維原料(例えば木材パルプなど)を化学処理工程に供することによって本実施形態の消毒組成物の原料となるスルホン化パルプ(以下、単にスルホン化パルプという)を製造する方法である。
【0045】
この化学処理工程は、供給された繊維原料を反応液に接触(接触工程)させた後、加熱反応(反応工程)に供してセルロースの水酸基をスルホン化させるという方法である。
【0046】
本明細書において、繊維原料とは、セルロース分子を含む繊維状のパルプなどをいう。パルプとは、複数のセルロース繊維が集合した繊維状の部材である。このセルロース繊維は、複数の微細繊維(例えば、ミクロフィブリル等)が集合したものである。そして、この微細繊維とは、D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子であるセルロース分子(以下、単にセルロースということもある)が複数集合したものである。
【0047】
なお、用いられる繊維原料は、事前に洗浄することが好ましい。例えば、200メッシュもしくは235メッシュのふるい上で水を使ってろ過脱水することで、微細繊維やゴミをふるい落とすことができ、製造時の取扱性が向上するため望ましい。言い換えれば、200メッシュや235メッシュの残渣となり得るサイズのセルロース繊維が集合した繊維がパルプである。繊維原料については詳細を後述する。
【0048】
化学処理工程は、上述したようにパルプ等のセルロースを含む繊維原料のセルロース繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤であるスルファミン酸と尿素を接触させる接触工程と、この接触工程後のパルプに含まれるセルロース繊維の水酸基の少なくとも一部にスルホ基を置換導入する反応工程とを含んでいる。以下、各工程を順に説明する。
【0049】
(接触工程)
接触工程は、セルロースを含む繊維原料に対してスルファミン酸と尿素を接触させる工程である。この接触工程は、上記接触を起こさせることができる方法であれば、とくに限定されない。
例えば、スルファミン酸と尿素を溶媒に溶解させた反応液に繊維原料(例えば、木材パルプ)を浸漬等して反応液を繊維原料に含浸させてもよいし、繊維原料に対してかかる反応液を塗布してもよいし、繊維原料に対してスルファミン酸と尿素をそれぞれ別々に塗布したり、含浸させたり、スプレー噴霧してもよい。例えば、反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に反応液を含浸させる方法を採用すれば、均質にスルファミン酸と尿素を繊維原料に対して接触させ易いという利点が得られる。
【0050】
なお、スルファミン酸と尿素を溶解させる溶媒は特に限定されない。例えば、水(イオン交換水や蒸留水等の純水はもちろんのこと水道水等を含む)のみの場合のほか、エタノールやメタノール、酢酸、ギ酸、2‐プロパノール、ニトロメタン、アンモニア水のようなプロトン性極性溶媒や、アセトンや、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の非プロトン性極性溶媒や、ジエチルエーテルや、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、クロロホルム、1,4-ジオキサン等の非極性溶媒などを挙げることができ、これらを単体で使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用してもよい。特に、スルファミン酸と尿素を溶かしやすい観点から、水が好ましい。
【0051】
(反応液の混合比)
反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に対して反応液を含浸させる方法を採用する場合、反応液に含まれるスルファミン酸と尿素の混合比は、とくに限定されない。例えば、後述する実施例に記載の混合比にすることができる。
例えば、スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体は、濃度比(g/L)において、4:1(1:0.25)、2:1(1:0.5)、1:1、2:3(1:1.5)、1:2.5となるように調整することができる。
【0052】
(反応液の接触量)
繊維原料に接触させる反応液の量は、繊維原料に対して反応液中のスルファミン酸と尿素が所定の割合となるように接触させる。
例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態において、反応液に含まれるスルホン化剤が、繊維原料の乾燥質量100質量部に対して、1質量部~20,000質量部であり、反応液に含まれる尿素または/およびその誘導体が、繊維原料の乾燥質量100質量部に対して、1質量部~100,000質量部となるように調製することができる。
【0053】
次工程の反応工程に供する際の反応液を含浸させた繊維原料は、例えば、反応液を含浸させたそのままの状態つまり繊維原料と反応液を接触させた状態のままで積極的な水分除去を行わない状態のものや、繊維原料と反応液を接触させた状態のものから水分を積極的に除去した状態のもの、などを挙げることができる。
後者の方法としては、例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態から繊維原料を取り出して風乾等により自然乾燥させて調製したものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを脱水ろ過して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに風乾して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに循環送風式の乾燥機を用いて乾燥し調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを循環送風式の乾燥機や加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、などを含むことを意味する。
次工程の反応工程に供する際の反応液を含浸させた繊維原料は、上述した積極的な水分除去を行わない状態のものや、積極的な水分除去を行ってある程度の水分を除去した状態のままであってよい。また、乾燥により水分を除去する場合には、乾燥後の水分率が1%程度であってもとくに問題がない。
【0054】
(反応工程)
上記のごとく接触工程で調製された反応液を含浸させた繊維原料は、次工程の反応工程へ供給される。
この反応工程は、接触工程から供給された繊維原料に含まれるセルロース繊維と、スルファミン酸と、尿素とを反応させて、セルロース繊維中のセルロース水酸基に対してスルファミン酸のスルホ基を置換させて、繊維原料に含まれるセルロース繊維にスルホ基を導入する工程である。つまり、この反応工程は、反応液を含浸した繊維原料に含まれるセルロース繊維中のセルロース水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応を行う工程である。
【0055】
この反応工程は、上記繊維原料中のセルロース繊維の水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応が可能な方法であれば、とくに限定されない。例えば、上記繊維原料を加熱することによりスルホン化反応を促進させる方法を採用することができる。以下、この加熱方法により、スルホン化反応を行う場合を代表として説明する。
【0056】
(反応工程における反応温度)
反応工程における反応温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロース繊維にスルホ基を導入できる温度であれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程に供給した上記繊維原料の雰囲気温度が100℃以上200℃以下となるように調整する。好ましくは雰囲気温度が120℃以上200℃以下である。加熱時における雰囲気温度が200℃よりも高くなると、繊維の熱分解が起こったり、繊維の変色の進行が早くなったりする。一方、反応温度が100℃よりも低くなると、得られるスルホン化パルプの透明性が低下する傾向にある。
したがって、得られるスルホン化パルプの透明性の観点では、反応工程における反応温度(具体的には雰囲気温度)は、100℃以上200℃以下であり、好ましくは120℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上160℃以下である。
【0057】
なお、反応工程に用いられる加熱器などは、接触工程後の上記繊維原料を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであれば、とくに限定されない。
例えば、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置、熱プレス機(例えば、アズワン(株)製、AH―2003C)を用いたホットプレス法等を採用することができる。とくに、操作性の観点では、反応工程でガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
【0058】
(反応工程における反応時間)
反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間(つまり反応時間)は、上述したようにセルロース繊維にスルホ基を適切に導入することができれば、とくに限定されない。例えば、反応工程における反応時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整する。好ましくは、5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは15分以上である。
反応時間が1分よりも短い場合は、セルロース繊維の水酸基に対するスルホ基の置換反応がほとんど進行していないと推察される。一方、加熱時間をあまり長くしてもスルホ基の導入量の向上が期待できない傾向にある。
したがって、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の反応時間は、とくに限定されないが、反応時間や操作性の観点から、5分以上300分以内が好ましく、より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
【0059】
(繊維原料)
スルホン化パルプ製法に用いられる繊維原料は、上述したようにセルロースを含むものであれば、とくに限定されない。例えば、一般的にパルプといわれるものを用いてもよいし、ホヤや海藻などから単離されるセルロースなどを含むものを繊維原料として採用することができるが、セルロース分子で構成されたものであれば、どのようなものであってもよい。
上記パルプとしては、例えば、木材系のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わらや、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプが繊維原料として採用しやすい。
【0060】
この木材パルプには、様々な種類が存在するが、使用に際してとくに限定されない。例えば、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプなどを挙げることができる。なお、繊維原料として、上記パルプを使用する場合に上述した種類のパルプ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
(反応工程の後の洗浄工程)
化学処理工程における反応工程の後に、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプを洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
スルホ基を導入した後のスルホン化パルプは、スルホン化剤の影響により表面が酸性になっている。また、未反応の反応液も存在した状態となっている。このため、反応を確実に終了させ、余分な反応液を除去して中性状態にする洗浄工程を設ければ、取り扱い性を向上させることができるようなる。
【0062】
この洗浄工程は、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプがほぼ中性になるようにできれば、とくに限定されない。
例えば、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプが中性になるまで純水等で洗浄するという方法を採用することができる。また、アルカリ等を用いた中和洗浄を行ってもよい。かかる中和洗浄を行う場合、アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物としては、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物などを挙げることができる。そして、無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を挙げることができる。有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物、複素環式化合物の水酸化物などを挙げることができる。
【0063】
つぎに、上記のごとくスルホン化パルプ製法を用いて調製されたスルホン化パルプを微細化処理工程に供給し、微細化することによってスルホン化微細セルロース繊維が得られる。
なお、微細化処理工程に供給する前にスルホン化パルプは、水分率(%)が平衡状態になるまで乾燥する。
【0064】
(微細化処理工程)
微細化処理工程は、スルホン化パルプを微細化して所定の大きさの(例えば、ナノレベル)微細繊維にする工程である。
この微細化処理工程に用いられる処理装置は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。
例えば、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものはない。
これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
【0065】
微細化処理工程において、高圧ホモジナイザーを用いる場合、上述した製法で得られたスルホン化パルプを水と水溶性溶剤の混合溶液に分散させた状態で供給する。なお、この混合溶液にスルホン化パルプを分散させた状態のものをスラリーという。
【0066】
このスラリーのスルホン化パルプの固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、このスラリーのスルホン化パルプの固形分濃度が、0.1質量%~20質量%となるように調整した溶液を高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給すればよい。
例えば、スルホン化パルプの固形分濃度が0.5質量%となるように調整したスラリーを高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給した場合、同じ固形分濃度のスルホン化微細セルロース繊維が混合溶液に分散した状態の分散体を得ることができる。
【0067】
なお、上記例では、スルホン化パルプを水に分散させたスラリーを微細化処理する場合について説明したが、水以外に他の溶剤等を混合してもよい。
例えば、微細化処理工程において、上記スルホン化パルプのスラリーに水溶性溶剤を混合したものを微細化処理してもよい。具体的には、水溶性溶剤とスルホン化パルプと水を所定の割合で混合した状態のスラリーを処理装置に供給して微細化処理を行ってもよい。この場合、微細化処理後に得られる分散体中の水と水溶性溶剤とスルホン化微細セルロース繊維の配合割合は、処理装置に供給した水と水溶性溶剤とスルホン化パルプの配合割合と同様となる。つまり、微細化処理と同時に水と水溶性溶剤とスルホン化微細セルロース繊維が所定の割合で混合した分散体を得ることができる。
【実施例0068】
つぎに、実施例によりさらに詳細に本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によってなんら制限を受けるものではない。
【0069】
<スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製>
まず、本発明の消毒組成物(実施例)に使用するスルホン化微細セルロース繊維分散液A1を以下のとおり調製した。
【0070】
繊維原料として、丸住製紙製の針葉樹クラフトパルプ(NBKP)(平均繊維長
が2.6mm)を乾燥させることなく使用した。以下では、実験に供したNBKP
を単にパルプとして説明する。
【0071】
(化学処理工程)
供給されたパルプを以下のように調製した反応液に加え、薬液を含浸し、スラリー状に
した。
【0072】
(反応液の調製)
スルホン化剤と尿素および/またはその誘導体が以下の濃度となるように調製した。
実験ではスルホン化剤として、スルファミン酸(純度98.5%、扶桑化学工業製)を
使用し、尿素またはその誘導体として、尿素(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級
試薬)を使用した。
【0073】
反応液の調製方法の一例を以下に示す。
両者の混合比は、濃度比(g/L)において、1:2.5となるように混合して純水溶
液を調製した。
容器に純水100mlを加え、この容器にスルファミン酸20g、尿素50gを加えて
、スルファミン酸と尿素が、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=20
0/500の反応液を調製した。この反応液には、尿素が、スルファミン酸100質量部
に対して250質量部となるように混合されている。
【0074】
(反応液とパルプの接触方法)
調製した反応液に対してパルプ(固形分質量)を加えた。このとき、反応液中の薬品と
パルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:1.5となるようにスラリーを調整した。
【0075】
実験では、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/500の反
応液の場合、パルプ1.0gに対して、反応液を約3.6g加え、薬品を含浸させた。
反応液にパルプを添加して調製したスラリーを30分間手でもみほぐし、パルプに反応
液を均一に含浸させた。その後、乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR-115)に入れた。乾燥機の恒温槽の温度は、70℃に設定した。このパルプは、水分率が平衡状態になるまで乾燥した。そして、この加熱反応の前に乾燥処理を行った状態のパルプを次工程の加熱反応の工程に供給した。
【0076】
加熱反応の工程へ供給する際の反応液を接触させたパルプの水分率は、下記式を用いて
算出した。
【0077】
また、「水分率が平衡状態」は、以下のようにして評価した。
まず、恒温槽の温度を105℃に設定した上記乾燥機で2時間乾燥した。その後、連続
して測定した2回の質量の変化量が乾燥開始時の質量に対して10%以内となった状態を
平衡状態にあるとした(ただし、2回目の質量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以
上とした)。
水分率(%)=100-(パルプの固形分質量(g)/反応液に接触させた後の水分率測
定時におけるパルプ質量(g))×100
パルプの固形分質量(g)とは、測定対象のパルプ自体の固形分質量をいい、本実験で
は実験に供した乾燥パルプ2gが相当する。
本実験では、加熱反応へ供給する前に乾燥機を用いて乾燥させた乾燥後のパルプ質量が
、反応液に接触させた後の水分率測定時におけるパルプ質量(g)に相当する。
【0078】
実験では、乾燥後のパルプの水分率は、数%~10%程度(乾燥温度70℃)であっ
た。つまり、本実験では、この乾燥工程において、乾燥後のパルプの水分率が1%以下(
いわゆる絶乾状態)にならないように調製した。
上記の反応液を含浸させたパルプを乾燥させる工程が、本実施形態のスルホン化微細セ
ルロース繊維の製造方法の化学処理工程における乾燥工程に相当する。
【0079】
(加熱反応)
ついで、この反応液を含浸させたパルプを乾燥させた乾燥パルプを、次工程の加熱反応
の工程に供して加熱反応を行った。
加熱反応には、乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR―115)を用いた。
加熱反応の反応条件は以下の通りとした。
恒温槽の温度:120℃、加熱時間:25分
上記の加熱反応が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理
工程における反応工程に相当する。
上記の加熱反応における反応条件の温度が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊
維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応温度に相当する。
上記の加熱反応における反応条件の加熱時間が、本実施形態のスルホン化微細セルロー
ス繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応時間に相当する。
【0080】
加熱反応後、反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄して、スルファミン酸/尿
素処理パルプを調製した。その後大量の飽和した炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄後、最後に大量の純水で洗浄した。
【0081】
上記の反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄する工程が、本実施形態のスルホ
ン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における洗浄工程に相当する。
【0082】
(微細化処理工程)
ついで、化学処理工程により調製したスルファミン酸/尿素処理パルプを次工程の微細
化処理工程に供し、微細セルロース繊維(図中ではCNFと記載)を調製した。
微細化処理工程では、スルファミン酸/尿素処理パルプのパルプスラリーを高圧ホモジ
ナイザー(NanoVater、吉田機械興業製、L-ES008-D10)に供して、
スルホ基を導入した微細セルロース繊維(実験結果図では単にCNFで表す)を含有する
分散液(スルホン化微細セルロース繊維分散液A1)を調製した。
処理条件:設定圧力60MPa、パス数5回
【0083】
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A1)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製方法を以下に示す。
微細化処理工程において、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水を混合して、スルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度が1.0質量%にした調整したパルプスラリーを調製した。つまり、パルプスラリーが、組成比において、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が99.0質量部となるように調整した。
【0084】
ついで、このパルプスラリーを高圧ホモジナイザー(上記条件下)に供して、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1を調製した。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1は、スルホン化微細セルロース繊維と純水の組成比が、スルホン化微細セルロース繊維1.0質量部に対して純水が99.0質量部である。つまり、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1は、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が1.0質量%の分散液である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1中のスルホン化微細セルロース繊維のスルホ基導入量は、1.0mmol/gであった。
【0085】
(スルホ基導入量の測定)
スルホ基導入量は、調製された微細セルロース繊維をイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液による滴定によって測定した。
イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の微細セルロース繊維含有スラリー100mLに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き200μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。
【0086】
アルカリを用いた滴定では、イオン交換樹脂による処理後の微細セルロース繊維含有スラリーに、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を10μL~50μLずつ加えながら、電気伝導度の値の変化を計測し、縦軸に電気伝導度、横軸に水酸化ナトリウム滴定量としてプロットし曲線を得て、得られた曲線から変曲点を確認した。
この変曲点での水酸化ナトリウム滴定量がスルホ基量に相当する。このため、この変曲点の水酸化ナトリウム量を測定に供した微細セルロース繊維含固形分量で除することで、微細セルロース繊維中のスルホ基量すなわちスルホ基に起因する硫黄導入量を測定した。
【0087】
(SPMを用いた繊維形態の観察および繊維幅の測定)
高圧ホモジナイザー処理後の微細セルロース繊維を純水で固形分濃度0.001~0.005質量%に調製し、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行った。
このシリカ基盤上の微細セルロース繊維の観察を、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、型番;SPM―9700)を用いて行った。
繊維幅および繊維長の測定は、観察画像中の繊維をランダムに20本選び測定した。繊維幅は20nm以下であった。
【0088】
<スルホン化微細セルロース繊維分散液A2の調製>
まず、本発明の消毒組成物に使用するスルホン化微細セルロース繊維分散液A2を以下のとおり調製した。
実施例1において、反応工程におけるスルホン化反応液中のスルファミン酸と尿素の濃度比(g/L)を、1:1.5とにした以外は、実施例1のスルホン化微細セルロース繊維A1と同様にして、実施した。
スルホ基同流量は、1.3mmol/gであった。
【0089】
(実施例1)
<消毒組成物の調製>
つぎに、調製したスルホン化微細セルロース繊維分散液A1を使用して、消毒成分(ポビドンヨード)を含有する本発明の消毒組成物を以下のとおり調製した。
実験では消毒成分として、ポビドンヨード溶液(福地製薬株式会社製、販売名:ポビドンGうがい薬、製造番号:1L7A0、(成分/1mLあたり)ポビドンヨード70mg)を使用した。
消毒組成物は、ポビドンヨード0.7質量部、スルホン化微細セルロース繊維A1が0.2質量部となるように、ポビドンヨード溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A1と純水を混合して全体を100質量部となるように混合後、5分間強く撹拌することで、消毒組成物を得た。
【0090】
(消毒組成物の粘度測定)
調製した測定用スラリーを、それぞれ密閉し24時間室温で静置した。静置後、50gをスクリュー管瓶(アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶 110mL)へ分取して、B型粘度計(英弘精機(株)製、LVDV-I prime)を用いて粘度を測定した。粘度測定の測定条件は、以下のとおりとした。
測定条件:回転数6rpmおよび60rpm、測定温度25℃、測定時間3分、スピンドルはスピンドル No.62
【0091】
(消毒組成物のTI値の測定)
チキソトロピー性指数(TI値)は、以下のように測定した。
TI値の算出は、上述のB型粘度計を用いて、回転数6rpmと60rpmで測定を行い、各々の粘度を下記式より算出した。その他条件は上述のとおりとした。
TI値=(回転数6rpmでの粘度)/(回転数60rpmでの粘度)
【0092】
(消毒組成物の沈殿特性の確認)
消毒組成物を調製後、溶液内に凝集物の沈殿(ダマ)がないか目視にて確認し、〇をダマがほとんどない、△をダマがある、×をダマが多い、として評価した。
【0093】
(比較例1)
比較例1はスルホン化微細セルロース繊維のリン酸化微細セルロース繊維B1とした以外、実施例1と、同様にして実施した。
【0094】
<リン酸化微細セルロース繊維分散液B1の調製>
リン酸化微細セルロース繊維を含有したリン酸化微細セルロース繊維分散液B1は、以下のように調製した。
リン酸化剤として、リン酸二水素アンモニウム(和光特級、和光純薬株式会社製)を使用した。
反応液の調製方法の一例を以下に示す。
リン酸二水素アンモニウムと尿素は、次のように混合した。
リン酸二水素アンモニウム/尿素比((g/L)/(g/L))=140/375
容器に純水100mlを加えた。ついで、この容器にリン酸二水素アンモニウム14g、尿素37.5gを加えて、反応液を調製した。つまり、尿素は、リン酸二水素アンモニウム100質量部に対して約267質量部となるように加えた。
この調製した反応液に対してパルプ(固形分質量)を加えた。このとき、反応液中の薬品とパルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:2となるようにスラリーを調整した。
【0095】
実験では、リン酸二水素アンモニウム/尿素比((g/L)/(g/L))が140/375の反応液の場合、パルプ1gに対して、反応液を約5.9g加え、薬品を含浸させた。
反応液にパルプを添加して調製したスラリーを30分間手でもみほぐし、パルプに反応液を均一に含浸させた。この反応液を含浸させパルプを、吸引ろ過器し、水滴が落ちなくなるまで、余剰の薬液を除去した。その後、乾燥し、次工程の加熱反応の工程に供給した。加熱反応は、恒温槽の温度を140℃にし、加熱時間を15分にした。加熱反応後のパルプを洗浄し、リン酸化パルプを調製した。調製したリン酸化パルプを微細化処理工程に供した。
【0096】
リン酸化微細セルロース繊維分散液B1は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様に調製した。
微細化処理工程において、リン酸化パルプと純水を混合して、リン酸化パルプの固形分濃度が1.0質量%にした調整したパルプスラリーを調製した。つまり、パルプスラリーが、組成比において、リン酸化パルプの1.0質量部に対して、純水が99.0質量部となるように調整した。
このパルプスラリーを高圧ホモジナイザーに供した。高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B1中のリン酸化微細セルロース繊維のリン酸基導入量は、1.0mmol/gであった。
【0097】
(比較例2)
比較例2は、消毒組成物を調製する際に、スルホン化微細セルロース繊維にかえて、カルボキシメチルセルロース(CMC)を使用した以外、実施例1と同様にして実施した。
カルボキシメチルセルロースは、市販のカルボキシメチルセルロースナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製化学用)を純水に溶かし、1質量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液としてから、使用した。
【0098】
(結果)
図1に消毒組成物の分散安定性を示す。増粘剤が均一に分散しているかは粘性と沈殿(ダマ)の有無から判断した。スルホン化微細セルロース繊維、リン酸化微細セルロース繊維の官能基がそれぞれ同一導入量であるとき、消毒組成物中で、スルホン化微細セルロース繊維のダマは見られず、均一に分散していた。一方で、リン酸化微細セルロース繊維の場合ではダマが見られた。また、本発明の消毒組成物は、スルホン化微細セルロース繊維であれば増粘効果およびチキソ性をポビドンヨード溶液に付与可能であることが分かった。CMCを用いた場合では、ダマは見られなかったが、ほとんど増粘効果がなかった。
これらのことから、本発明の消毒組成物は、スルホン化微細セルロース繊維を含有させることにより、消毒成分としてポビドンヨードを含有する溶液中においても沈殿を形成せず増粘効果を得られたことから分散安定性(
図1では分散性と表記)に優れることが明らかになった。
【0099】
(実施例2)
消毒組成物を、ポビドンヨード0.7質量部、スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ポビドンヨード溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例1と同様にして実施した。
【0100】
(pHの測定)
pHの測定は、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(株式会社堀場製作所製、型式:D-74)を用いて実施した。
【0101】
(実施例3)
消毒組成物を、ポビドンヨード1.8質量部スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ポビドンヨード溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例2と同様にして実施した。
【0102】
(実施例4)
消毒組成物を、ポビドンヨード4.2質量部スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ポビドンヨード溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例2と同様にして実施した。
【0103】
(実施例5)
消毒組成物を、ポビドンヨード4.9質量部スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ポビドンヨード溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例2と同様にして実施した。
【0104】
(比較例3)
消毒組成物を、ポビドンヨード5.6質量部スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ポビドンヨード溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例2と同様にして実施した。
【0105】
(結果考察)
図2に消毒組成物におけるポビドンヨード濃度毎の分散安定性(
図2においては分散性と表記)について示す。
比較例3は、沈殿(ダマ)が多く形成され、純水と同程度の流動性を有していたため、粘度は測定しなかった。これは、この条件下でスルホン化微細セルロース繊維が凝集したためと思われる。
一方、本発明の消毒組成物であれば、ポビドンヨード溶液濃度が5%以下であれば、消毒組成物中に沈殿(ダマ)は見られず、高い濃度のポビドンヨードを含む溶液中であっても、増粘効果が確認され、スルホン化微細セルロース繊維が安定に分散していることが確認できた。
また、本発明の消毒組成物は、pHが約2.1である酸性の溶液でありながら、沈殿(ダマ)が形成されにくく、酸性の消毒組成物においても、スルホン化微細セルロース繊維は安定に分散することが示唆された。
【0106】
(実施例6)
消毒組成物を、消毒成分であるポビドンヨード中の有効ヨウ素が0.1質量部となるように調整した以外、実施例2と同様にして実施した。
具体的には、消毒組成物を、ポビドンヨード1質量部スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ポビドンヨード溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例2と同様にして実施した。
【0107】
(比較例4)
消毒成分を、ベンザルコニウム塩化物使用した以外、実施例6と同様にして実施した。
具体的には、ベンザルコニウム塩化物溶液(健栄製薬株式会社製、ザルコニン液P、500mL、10w/v %)を、ベンザルコニウム塩化物が0.1質量部、スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ベンザルコニウム塩化物溶液とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例6と同様にして実施した。
【0108】
(比較例5)
消毒成分を、ベンゼトニウムクロリドとした以外、実施例6と同様にして実施した。
具体的には、ベンゼトニウムクロリドが0.1質量部、スルホン化微細セルロース繊維A2が0.2質量部となるように、ベンゼトニウムクロリド溶液(塩化ベンゼトニウム、富士フイルム和光純薬株式会社製社製、和光1級)とスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と純水を混合して、全体を100質量部となるようにして調製した以外、実施例2と同様にして実施した。
【0109】
(結果考察)
図3に消毒成分を変えた場合の、消毒組成物の分散性について示す。各種消毒成分の濃度が消毒効果を有する濃度(0.1質量%)であるとき、消毒成分がポビドンヨードの場合は、沈殿(ダマ)は形成されず、増粘効果を示した。一方で、ベンザルコニウムおよびベンゼトニウムクロリドの場合ではダマが多くみられた。
スルホン化微細セルロース繊維はポビドンヨードが消毒効果を有する濃度中であっても、沈殿が生じず、粘性を発揮するレベルで分散安定性を有することが示唆された。一方で、ベンザルコニウムおよびベンゼトニウムクロリドの場合には、分散安定性を有しなかった。
本発明の消毒組成物は、口中や喉の消毒のためのうがい薬や、手術部位の皮膚や手術部位の粘膜の消毒、皮膚創傷部位の消毒、粘膜の創傷部位の消毒、熱傷皮膚面の消毒、感染皮膚面の消毒に適している。