(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133069
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220906BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220906BHJP
【FI】
A63B53/04 C
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031905
(22)【出願日】2021-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売代理店に出荷するとともに、ウェブサイトに掲載した。(出荷日・掲載日:令和2年10月14日)
(71)【出願人】
【識別番号】513163487
【氏名又は名称】株式会社 ロア・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇一郎
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002KK06
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】ゴルフクラブヘッドにおいて、打球時の飛距離を向上させる。
【解決手段】ゴルフクラブヘッドSは、中空の空間を有するゴルフクラブヘッドSであって、空間に接するフェース部1が、インパクトエリアに設けられた中央フェース部材11と、インパクトエリアの外側に設けられた外側フェース部材12と、を有し、外側フェース部材12の引張強度が中央フェース部材11の引張強度よりも大きく、外側フェース部材12の降伏強度が中央フェース部材11の降伏強度よりも大きく、中央フェース部材11の硬度が、外側フェース部材12の硬度よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の空間を有するゴルフクラブヘッドであって、
前記空間に接するフェース部が、
インパクトエリアに設けられた中央フェース部材と、
前記インパクトエリアの外側に設けられた外側フェース部材と、
を有し、
前記外側フェース部材の引張強度が前記中央フェース部材の引張強度よりも大きく、前記外側フェース部材の降伏強度が前記中央フェース部材の降伏強度よりも大きく、
前記中央フェース部材の硬度が、前記外側フェース部材の硬度よりも小さい、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記中央フェース部材における前記空間側の面に、くの字の形の凸部が形成されている、
請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記中央フェース部材の厚みよりも前記外側フェース部材の厚みの方が小さい、
請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース部は、
前記フェース部における右端を含む右側領域に設けられた第1外側フェース部材と、前記フェース部の左端を含む左側領域に設けられた第2外側フェース部材とを、前記外側フェース部材として有し、
前記中央フェース部材は、前記第1外側フェース部材と、前記第2外側フェース部材とに挟まれている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記中央フェース部材の外周に沿って、前記空間側に突出した凸部が形成されており、
前記外側フェース部材は、前記中央フェース部材を収容する開口を有しており、前記開口の外周に沿って、前記中央フェース部材の凸部が結合する凹部が形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同一の素材から構成されたフェース部を有するゴルフクラブヘッドが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフクラブヘッドにおいて、フェース部の強度を向上させるためには、硬度を大きくするのが望ましいが、硬度を大きくすると撓みづらくなるため、飛距離を向上させづらいという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、打球の飛距離を向上させるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、中空の空間を有するゴルフクラブヘッドであって、前記空間に接するフェース部が、インパクトエリアに設けられた中央フェース部材と、前記インパクトエリアの外側に設けられた外側フェース部材と、を有し、前記外側フェース部材の引張強度が前記中央フェース部材の引張強度よりも大きく、前記外側フェース部材の降伏強度が前記中央フェース部材の降伏強度よりも大きく、前記中央フェース部材の硬度が、前記外側フェース部材の硬度よりも小さい、ゴルフクラブヘッドを提供する。
【0007】
また、前記中央フェース部材における前記空間側の面に、くの字の形の凸部が形成されていてもよい。また、前記中央フェース部材の厚みよりも前記外側フェース部材の厚みの方が小さくてもよい。
【0008】
また、前記フェース部は、前記フェース部における右端を含む右側領域に設けられた第1外側フェース部材と、前記フェース部の左端を含む左側領域に設けられた第2外側フェース部材とを、前記外側フェース部材として有し、前記中央フェース部材は、前記第1外側フェース部材と、前記第2外側フェース部材とに挟まれていてもよい。
【0009】
また、前記中央フェース部材の外周に沿って、前記空間側に突出した凸部が形成されており、前記外側フェース部材は、前記中央フェース部材を収容する開口を有しており、前記開口の外周に沿って、前記中央フェース部材の凸部が結合する凹部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴルフクラブヘッドにおいて、打球の飛距離を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの構成を示す。
【
図3】フェース部をゴルフクラブヘッドの後方側から見た構造を示す。
【
図4】打球時のフェース部の形状の変化状態を示す模式図である。
【
図5】ゴルフクラブヘッドによる試打試験の結果を示す。
【
図6】第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの構成を示す。
【
図7】第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドから中央フェース部材が取り外された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
[ゴルフクラブヘッドSの概要]
図1は、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSの構成を示す図である。
ゴルフクラブヘッドSは、ゴルフクラブの下端に設けられており、ゴルフクラブにおけるゴルフボールを当てる部分である。ゴルフクラブヘッドSは、中空の空間を有する。ゴルフクラブヘッドSは、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、及びホーゼル部4を有する。
【0013】
フェース部1は、ゴルフクラブヘッドSにおける前面を形成する板状の部位である。フェース部1は、滑らかな湾曲面を有する。フェース部1は、ゴルフクラブヘッドSが有する中空の空間に接する。フェース部1の後端は、後述するクラウン部2の前端の縁及びソール部3の前端の縁に接続されている。フェース部1の詳細は後述する。クラウン部2は、ゴルフクラブヘッドSにおける上面を形成する板状の部位である。クラウン部2は、滑らかな湾曲面を有する。
【0014】
ソール部3は、ゴルフクラブヘッドSにおける底面を形成する板状の部位である。ソール部3は、下方に向かって凸形状になった湾曲面を有する。ホーゼル部4は、ゴルフクラブヘッドSにシャフト(不図示)を結合するための部位である。ホーゼル部4は、例えば円筒形状である。
【0015】
[フェース部1の構造]
図2は、中央フェース部材11の構造を示す図である。
図3は、フェース部1をゴルフクラブヘッドSの後方側から見た構造を示す図である。なお、
図3は、フェース部1をゴルフクラブヘッドSの内側の空間側から見た構造を示す図である。
【0016】
フェース部1は、中央フェース部材11、及び外側フェース部材12を有する。中央フェース部材11は、インパクトエリアと同一又はインパクトエリアを含みインパクトエリアよりも広いエリアに設けられている。インパクトエリアは、フェース部1におけるゴルフボールとの衝突が意図された領域であり、ゴルフ用具規則で定められている。インパクトエリアは、例えば、フェース部1の左右方向の中心を通り42.67ミリメートルの幅を有する帯状のエリアである。
【0017】
図1及び
図2に示すように、中央フェース部材11は、滑らかな湾曲面を有し、ゴルフクラブヘッドSの高さ方向における上端及び下端にゴルフクラブヘッドSの後方に向かって延伸する領域がそれぞれ形成されている。中央フェース部材11は、第1引張強度、第1降伏強度、及び第1硬度を有する。中央フェース部材11は、マレージング鋼、チタン、ステンレス、タングステン又はモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される。中央フェース部材11は、後述する外側フェース部材12と溶接されている。
【0018】
外側フェース部材12は、インパクトエリアの外側に設けられている。外側フェース部材12は、第2引張強度、第2降伏強度、及び第2硬度を有する。第2引張強度は、第1引張強度よりも大きい。第2降伏強度は、第1降伏強度よりも大きい。第2硬度は、第1硬度よりも大きい。外側フェース部材12は、例えばチタン、ステンレス、タングステン又はモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される。
【0019】
ゴルフクラブヘッドSにおいては、このようにフェース部1がインパクトエリアに設けられた中央フェース部材11と、インパクトエリアの外側に設けられた外側フェース部材12と、を有する。外側フェース部材12の引張強度は、中央フェース部材11の引張強度よりも大きい。外側フェース部材12の降伏強度は、中央フェース部材11の降伏強度よりも大きい。中央フェース部材11の硬度は、外側フェース部材12の硬度よりも小さい。
【0020】
したがって、ゴルフクラブヘッドSにおいては、中央フェース部材11よりも外側フェース部材12が撓み易いため、打球時に中央フェース部材11がゴルフボールに接触すると、外側フェース部材12が撓むことで中央フェース部材11が後方に移動し易くなる。また、中央フェース部材11は外側フェース部材12よりも柔らかいので、インパクトの瞬間に中央フェース部材11が変形しやすく、反発力が大きくなる。これらの作用により、ゴルフクラブヘッドSは飛距離性能が向上する。
【0021】
図4は、打球時のフェース部1の形状の変化状態を示す模式図である。
図4(a)は、外側フェース部材12が撓んでいない状態を示す図である。
図4(b)は、外側フェース部材12が撓んでいる状態を示す図である。
図4(b)に示すように、外側フェース部材12が撓んで中央フェース部材11が後方に移動すると、撓んだ外側フェース部材12が元の形状に戻ろうとする復元力が発生する。その結果、ゴルフクラブヘッドSにおいては、撓んだ外側フェース部材12が元の形状に戻る際に生じる復元力を利用してゴルフボールUを前方に向かって押し出すことができる。よって、ゴルフクラブヘッドSにおいては、打球時の飛距離を向上させることができる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、中央フェース部材11は、凸部111を有する。凸部111は、中央フェース部材11におけるゴルフクラブヘッドSが有する中空の空間側の面に形成されている。凸部111は、くの字の形状(V字形状)である。
【0023】
中央フェース部材11には、凸部111として、凸部111R、及び凸部111Lが設けられている。凸部111Rは、中央フェース部材11の左右方向における中心よりも右側に設けられている凸部である。凸部111Rは、第1領域112R、及び第2領域113Rを有する。第1領域112Rは、中央フェース部材11の高さ方向における上方に向かうにつれて中央フェース部材11の左右方向における中心に近づくように延在している直線状の領域である。第2領域113Rは、中央フェース部材11の高さ方向における下方に向かうにつれて中央フェース部材11の左右方向における中心に近づくように延在している直線状の領域である。第2領域113Rの上端は、第1領域112Rの下端と接続されている。
【0024】
第1領域112Rと第2領域113Rは、中央フェース部材11の高さ方向において、第1領域112Rの下端と第2領域113Rの上端との接続点を中心として対称である。
【0025】
凸部111Lは、中央フェース部材11の左右方向における中心よりも左側に設けられている凸部である。凸部111Lは、第1領域112L、及び第2領域113Lを有する。第1領域112Lは、中央フェース部材11の高さ方向における上方に向かうにつれて中央フェース部材11の左右方向における中心に近づくように延在している直線状の領域である。第2領域113Lは、中央フェース部材11の高さ方向における下方に向かうにつれて中央フェース部材11の左右方向における中心に近づくように延在している直線状の領域である。第2領域113Lの上端は、第1領域112Lの下端と接続されている。
【0026】
第1領域112Lと第2領域113Lは、中央フェース部材11の高さ方向において、第1領域112Lの下端と第2領域113Lの上端との接続点を中心として対称である。
【0027】
凸部111Rと凸部111Lは、中央フェース部材11の左右方向における中心線を挟んで対称である。また、凸部111Rにおける第1領域112Rの下端と第2領域113Rの上端との接続点、及び凸部111Lにおける第1領域112Lの下端と第2領域113Lの上端との接続点は、中央フェース部材11の高さ方向における中心に位置する。
【0028】
ゴルフクラブヘッドSにおいては、このように中央フェース部材11におけるゴルフクラブヘッドSが有する中空の空間側の面に、くの字の形の凸部111が形成されていることで、打球時に中央フェース部材11が撓んでしまうのを防ぐことができる。その結果、ゴルフクラブヘッドSにおいては、打球時に中央フェース部材11からゴルフボールに伝わる力が、例えばゴルフクラブヘッドSの左右方向に逃げるのを防ぐことができる。また、ゴルフクラブヘッドSにおいては、このように中央フェース部材11の左右方向における外側に向かって突出するくの字の形の凸部111が形成されていることで、中央フェース部材11の強度を十分に確保するとともに、中央フェース部材11における肉厚の小さい中心の領域の面積を大きくすることができる。
【0029】
一例として、外側フェース部材12の厚みは、中央フェース部材11の厚みよりも小さい。この場合、外側フェース部材12は、中央フェース部材11よりも撓み易い。その結果、ゴルフクラブヘッドSにおいては、このように中央フェース部材11の厚みよりも外側フェース部材12の厚みの方が小さいことで、打球時にゴルフクラブヘッドSにおけるインパクトエリアから外れた位置にゴルフボールが当たっても飛距離を確保し易くすることができる。
【0030】
フェース部1は、外側フェース部材12として、第1外側フェース部材121Rと、第2外側フェース部材121Lとを有する。第1外側フェース部材121Rは、フェース部1における右端を含む右側領域に設けられている。第2外側フェース部材121Lは、フェース部1の左端を含む左側領域に設けられている。中央フェース部材11は、第1外側フェース部材121Rと、第2外側フェース部材121Lとに挟まれている。中央フェース部材11の右端は、第1外側フェース部材121Rの左端と接続されている。中央フェース部材11の左端は、第2外側フェース部材121Lの右端と接続されている。
【0031】
ゴルフクラブヘッドSにおいては、このように中央フェース部材11が、第1外側フェース部材121Rと、第2外側フェース部材121Lとに挟まれている。したがって、ゴルフクラブヘッドSにおいては、打球時にゴルフクラブヘッドSの左右方向のねじれを抑制し易くすることができる。また、ゴルフクラブヘッドSにおいては、中央フェース部材11よりも撓み易い外側フェース部材12が設けられている状態で、中央フェース部材11の高さ方向における領域を大きくすることができる。
【0032】
[第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSによる試打試験]
次に、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSによる試打試験の結果を示す。試打試験においては、中央フェース部材11の材質と外側フェース部材12の材質をそれぞれ変更して16個のゴルフクラブヘッドSを準備した。試打試験においては、異なるゴルフクラブヘッドSにより試打を行い、打球時の飛距離を測定した。
【0033】
図5は、ゴルフクラブヘッドSによる試打試験の結果を示す図である。
図5における硬度は、ロックウェル硬さを示している。
【0034】
実施例1及び実施例2は、フェース部1が材質Eの中央フェース部材11と材質Eの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例1及び実施例2では、外側フェース部材12の引張強度(102kgf/mm2)及び降伏強度(92kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(102kgf/mm2)及び降伏強度(92kgf/mm2)と同じである。また、実施例1では、中央フェース部材11の硬度(31.5)は、外側フェース部材12の硬度(35)よりも小さく、実施例2では、中央フェース部材11の硬度(35)は、外側フェース部材12の硬度(31.5)よりも大きい。実施例1では、打球時の飛距離は269yardであった。実施例2では、打球時の飛距離は265yardであった。
【0035】
実施例3は、フェース部1が材質Hの中央フェース部材11と材質Eの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例3では、外側フェース部材12の引張強度(102kgf/mm2)及び降伏強度(92kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(125kgf/mm2)及び降伏強度(117kgf/mm2)よりも小さい。また、実施例3では、中央フェース部材11の硬度(35)は、外側フェース部材12の硬度(31.5)よりも大きい。実施例3では、打球時の飛距離は267yardであった。
【0036】
実施例4及び実施例5は、フェース部1が材質Hの中央フェース部材11と材質Aの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例4及び実施例5では、外側フェース部材12の引張強度(136kgf/mm2)及び降伏強度(126kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(125kgf/mm2)及び降伏強度(117kgf/mm2)よりも大きい。また、実施例4では、中央フェース部材11の硬度(40)は、外側フェース部材12の硬度(40)と同じであり、実施例5では、中央フェース部材11の硬度(35)は、外側フェース部材12の硬度(40)よりも小さい。実施例4では、打球時の飛距離は268yardであった。実施例5では、打球時の飛距離は275yardであった。
【0037】
実施例6は、フェース部1が材質Hの中央フェース部材11と材質Fの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例6では、外側フェース部材12の引張強度(130kgf/mm2)及び降伏強度(120kkgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(125kgf/mm2)及び降伏強度(117kgf/mm2)よりも大きい。また、実施例6では、中央フェース部材11の硬度(40)は、外側フェース部材12の硬度(35)よりも大きい。実施例6では、打球時の飛距離は271yardであった。
【0038】
実施例7は、フェース部1が材質Dの中央フェース部材11と材質Eの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例7では、外側フェース部材12の引張強度(102kgf/mm2)及び降伏強度(92kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(130kgf/mm2)及び降伏強度(117kgf/mm2)よりも小さい。また、実施例7では、中央フェース部材11の硬度(42)は、外側フェース部材12の硬度(31.5)よりも大きい。実施例7では、打球時の飛距離は270yardであった。
【0039】
実施例8は、フェース部1が材質Dの中央フェース部材11と材質Fの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例8では、外側フェース部材12の引張強度(130kgf/mm2)は、中央フェース部材11の引張強度(130kgf/mm2)と同じであり、外側フェース部材12の降伏強度(120kgf/mm2)は、中央フェース部材11の降伏強度(117kgf/mm2)よりも大きい。また、実施例8では、中央フェース部材11の硬度(42)は、外側フェース部材12の硬度(35)よりも大きい。実施例8では、打球時の飛距離は271yardであった。
【0040】
実施例9~実施例12は、フェース部1が材質Gの中央フェース部材11と材質Gの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例9~実施例12では、外側フェース部材12の引張強度(126.5kgf/mm2)及び降伏強度(118.5kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(126.5kgf/mm2)及び降伏強度(118.5kgf/mm2)と同じである。
【0041】
また、実施例9では、中央フェース部材11の硬度(35)は、外側フェース部材12の硬度(35)と同じである。実施例10では、中央フェース部材11の硬度(40)は、外側フェース部材12の硬度(40)と同じである。実施例11では、中央フェース部材11の硬度(35)は、外側フェース部材12の硬度(40)よりも小さく、実施例12では、中央フェース部材11の硬度(40)は、外側フェース部材12の硬度(35)よりも大きい。実施例9では、打球時の飛距離は269yardであった。実施例10では、打球時の飛距離は272yardであった。実施例11では、打球時の飛距離は275yardであった。実施例12では、打球時の飛距離は274yardであった。
【0042】
実施例13は、フェース部1が材質Gの中央フェース部材11と材質Fの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例13では、外側フェース部材12の引張強度(130kgf/mm2)及び降伏強度(120kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(126.5kgf/mm2)及び降伏強度(118.5kgf/mm2)よりも大きい。また、実施例13では、中央フェース部材11の硬度(35)は、外側フェース部材12の硬度(35)と同じである。実施例13では、打球時の飛距離は271yardであった。
【0043】
実施例14は、フェース部1が材質Gの中央フェース部材11と材質Iの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例14では、外側フェース部材12の引張強度(149kgf/mm2)は、中央フェース部材11の引張強度(126.5kgf/mm2)よりも大きく、外側フェース部材12の降伏強度(110kgf/mm2)は、中央フェース部材11の降伏強度(118.5kgf/mm2)よりも小さい。また、実施例14では、中央フェース部材11の硬度(40)は、外側フェース部材12の硬度(36)よりも大きい。実施例14では、打球時の飛距離は272yardであった。
【0044】
実施例15は、フェース部1が材質Gの中央フェース部材11と材質Fの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例15では、外側フェース部材12の引張強度(130kgf/mm2)及び降伏強度(120kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(126.5kgf/mm2)及び降伏強度(118.5kgf/mm2)よりも大きい。また、実施例15では、中央フェース部材11の硬度(35)は、外側フェース部材12の硬度(40)よりも小さい。実施例15では、打球時の飛距離は278yardであった。
【0045】
実施例16は、フェース部1が材質Gの中央フェース部材11と材質Pの外側フェース部材12とを有するゴルフクラブヘッドSの試験結果である。実施例16では、外側フェース部材12の引張強度(281.3kgf/mm2)及び降伏強度(278.8kgf/mm2)は、それぞれ中央フェース部材11の引張強度(126.5kgf/mm2)及び降伏強度(118.5kgf/mm2)よりも大きい。また、実施例16では、中央フェース部材11の硬度(40)は、外側フェース部材12の硬度(53)よりも小さい。実施例16では、打球時の飛距離は277yardであった。
【0046】
(試験結果の分析)
比較的飛距離が大きい実施例5、実施例15、及び実施例16では、外側フェース部材12の引張強度が中央フェース部材11の引張強度よりも大きく、外側フェース部材12の降伏強度が中央フェース部材11の降伏強度よりも大きく、中央フェース部材11の硬度が、外側フェース部材12の硬度よりも小さい。このことから、外側フェース部材12の引張強度が中央フェース部材11の引張強度よりも大きく、外側フェース部材12の降伏強度が中央フェース部材11の降伏強度よりも大きく、中央フェース部材11の硬度が外側フェース部材12の硬度よりも小さいことにより、飛距離性能が向上することを確認できた。
【0047】
また、実施例5と実施例4を比べると、中央フェース部材11の硬度のみが異なる。実施例5における中央フェース部材11の硬度は、実施例4における中央フェース部材11の硬度よりも小さく、実施例5における打球時の飛距離は、実施例4における打球時の飛距離よりも大きい。このことから、中央フェース部材11の硬度が小さいことにより、飛距離性能が向上することを確認できた。
【0048】
また、実施例15と実施例13を比べると、外側フェース部材12の硬度のみが異なる。実施例15における外側フェース部材12の硬度は、実施例13における外側フェース部材12の硬度よりも大きく、実施例15における打球時の飛距離は、実施例13における打球時の飛距離よりも大きい。このことからも、中央フェース部材11の硬度が小さいことにより、飛距離性能が向上することを確認できた。
【0049】
また、実施例15と実施例11を比べると、外側フェース部材12の引張強度及び降伏強度のみが異なる。実施例15における外側フェース部材12の引張強度及び降伏強度は、それぞれ実施例11における外側フェース部材12の引張強度及び降伏強度よりも大きく、実施例15における打球時の飛距離は、実施例11における打球時の飛距離よりも大きい。このことから、外側フェース部材12の引張強度及び降伏強度が中央フェース部材11の引張強度及び降伏強度よりも大きいことにより、飛距離性能が向上することを確認できた。
【0050】
[変形例]
上記実施形態においては、フェース部1が中央フェース部材11と外側フェース部材12とを有する例を示したが、これに限定されない。中央フェース部材11と外側フェース部材12は一体に形成されていてもよい。
【0051】
[第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSによる効果]
第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSは、中空の空間を有するゴルフクラブヘッドSであって、空間に接するフェース部1が、インパクトエリアに設けられた中央フェース部材11と、インパクトエリアの外側に設けられた外側フェース部材12と、を有し、外側フェース部材12の引張強度が中央フェース部材11の引張強度よりも大きく、外側フェース部材12の降伏強度が中央フェース部材11の降伏強度よりも大きく、中央フェース部材11の硬度が、外側フェース部材12の硬度よりも小さい。
【0052】
ゴルフクラブヘッドSにおいては、このようにフェース部1がインパクトエリアに設けられた中央フェース部材11と、インパクトエリアの外側に設けられた外側フェース部材12と、を有し、外側フェース部材12の引張強度が中央フェース部材11の引張強度よりも大きく、外側フェース部材12の降伏強度が中央フェース部材11の降伏強度よりも大きく、中央フェース部材11の硬度が、外側フェース部材12の硬度よりも小さい。したがって、ゴルフクラブヘッドSにおいては、中央フェース部材11よりも外側フェース部材12が撓み易いため、打球時に中央フェース部材11がゴルフボールに接触すると、外側フェース部材12が撓むことで中央フェース部材11が後方に移動し易くなる。その結果、ゴルフクラブヘッドSにおいては、撓んだ外側フェース部材12が元の形状に戻る際に生じる復元力を利用してゴルフボールを前方に向かって押し出すことができる。よって、ゴルフクラブヘッドSにおいては、打球時の飛距離を向上させることができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSaの構成を示す図である。
図6(a)は、ゴルフクラブヘッドSaを前方側から見た構造を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)のX-X線断面図である。
図7は、第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSaから中央フェース部材11aが取り外された状態を示す図である。
図7(a)は、ゴルフクラブヘッドSaから中央フェース部材11aが取り外された状態を前方側から見た構造を示す図である。
図7(b)は、
図7(a)のY-Y線断面図である。
図8は、凸部114a及び凹部123a付近の断面図である。なお、
図8は、
図6(b)における領域Aの拡大図に相当する。
【0054】
第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSaは、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドSと比べて、中央フェース部材11、及び外側フェース部材12の代わりに、中央フェース部材11a、及び外側フェース部材12aを有する点で異なる。
【0055】
ゴルフクラブヘッドSaは、ゴルフクラブヘッドSと同様に、中空の空間を有する。ゴルフクラブヘッドSaは、フェース部1a、クラウン部2、ソール部3、及びホーゼル部4を有する。フェース部1aは、フェース部1と同様に、ゴルフクラブヘッドSaにおける前面を形成する板状の部位である。フェース部1aは、フェース部1と同様に、ゴルフクラブヘッドSaが有する中空の空間に接する。フェース部1aの後端は、フェース部1と同様に、クラウン部2の前端の縁及びソール部3の前端の縁に接続されている。
【0056】
フェース部1aは、中央フェース部材11a、及び外側フェース部材12aを有する。中央フェース部材11aは、中央フェース部材11と同様に、インパクトエリアに設けられている。中央フェース部材11aは、中央フェース部材11と同様に、第1引張強度、第1降伏強度、及び第1硬度を有する。中央フェース部材11aは、中央フェース部材11と同様に、マレージング鋼、チタン、ステンレス、タングステン又はモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される。中央フェース部材11aは、後述する外側フェース部材12aの開口122aに収容されている。中央フェース部材11aは、凸部114aを有する。凸部114aは、ゴルフクラブヘッドSaが有する中空の空間側に突出している。凸部114aは、中央フェース部材11aの外周に沿って形成されている。
【0057】
外側フェース部材12aは、外側フェース部材12と同様に、インパクトエリアの外側に設けられている。外側フェース部材12aは、外側フェース部材12と同様に、第2引張強度、第2降伏強度、及び第2硬度を有する。外側フェース部材12aは、外側フェース部材12と同様に、例えばチタン、ステンレス、タングステン又はモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される。外側フェース部材12aの上端及び下端にはそれぞれ後方に向かって延伸する領域が形成されている。外側フェース部材12aの後端は、クラウン部2の前端の縁及びソール部3の前端の縁に接続されている。
【0058】
外側フェース部材12aは、開口122a、及び凹部123aを有する。開口122aは、中央フェース部材11aを収容する。凹部123aは、中央フェース部材11aの凸部114aが結合する凹部である。凹部123aは、ゴルフクラブヘッドSaが有する中空の空間側に向かって窪んでいる。凹部123aは、開口122aの外周に沿って形成されている。凹部123aには、凸部114aの端部が挿入された状態で溶接されて固定されている。
【0059】
ゴルフクラブヘッドSaにおいては、このようにフェース部1aは、凸部114aが形成されている中央フェース部材11aと、凸部114aが結合する凹部123aが形成されている外側フェース部材12aとを有する。そして、凸部114aは、中央フェース部材11aの外周に沿って形成されており、凹部123aは、中央フェース部材11aが収容される開口122aの外周に沿って形成されている。
【0060】
したがって、ゴルフクラブヘッドSaにおいては、中央フェース部材11aと外側フェース部材12aとの結合強度を向上させることができる。また、ゴルフクラブヘッドSaにおいては、フェース部1aが中央フェース部材11aの外周に沿って形成されている2枚の板が重ねられている領域を有するようにすることができる。その結果、ゴルフクラブヘッドSaにおいては、フェース部1aの強度を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0062】
S、Sa・・・ゴルフクラブヘッド
1、1a・・・フェース部
11、11a・・・中央フェース部材
111、111R、111L・・・凸部
112R、112L・・・第1領域
113R、113L・・・第2領域
114a・・・凸部
12、12a・・・外側フェース部材
121R・・・第1外側フェース部材
121L・・・第2外側フェース部材
122a・・・開口
123a・・・凹部
2・・・クラウン部
3・・・ソール部
4・・・ホーゼル部
U・・・ゴルフボール