(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133093
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】含水含気チョコレート類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/52 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A23G1/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031956
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永岡 良規
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GE05
4B014GG07
4B014GG14
4B014GK03
4B014GL10
4B014GP02
4B014GP12
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、チョコレートの風味を最大限生かした日持ちの良い含水含気チョコレート類及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】
ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類50~80質量%、液状油脂10~33質量%、及び水飴3~18質量%を含み、比重が0.7~1.0であることを特徴とする、含水含気チョコレート類とする。また、ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類をテンパリングし、これに液状油脂を混合してから水飴を混合し、ホイップすることを特徴とする、含水含気チョコレート類の製造方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類50~80質量%、液状油脂10~33質量%、及び水飴3~18質量%を含み、比重が0.7~1.0であることを特徴とする、含水含気チョコレート類。
【請求項2】
前記液状油脂が前記水飴よりも多く含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の含水含気チョコレート類。
【請求項3】
さらに、風味成分を0.1~10質量%含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の含水含気チョコレート類。
【請求項4】
ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類をテンパリングし、これに液状油脂を混合してから水飴を混合し、ホイップすることを特徴とする、含水含気チョコレート類の製造方法。
【請求項5】
ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類に、液状油脂を混合し、テンパリングしてから水飴を混合し、ホイップすることを特徴とする、含水含気チョコレート類の製造方法。
【請求項6】
前記チョコレート類が50~80質量%、前記液状油脂が10~33質量%、前記水飴が3~18質量%であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水含気チョコレート類及びその製造方法に関するものである。より詳細には、チョコレートを高配合し、チョコレートの風味を最大限生かした日持ちの良い含水含気チョコレート類及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、新しいチョコレートクリーム類を得るため、チョコレート類をホイップして含気させる試みがなされてきているが、チョコレートクリーム類に含気させるとぼそぼそとなり、食感が悪くなるという欠点があった。そこで、特許文献1にあるように、ぼそつき感がなく、みずみずしくなめらかな軽い食感を有し気泡の安定性にも優れた含水含気チョコレート類を製造する方法が開発されている(特許文献1)。しかし、この方法ではチョコレートの風味が若干弱く感じられ、また、水分が比較的多いために日持ちがしにくいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、チョコレートの風味を最大限生かした日持ちの良い含水含気チョコレート類及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に対して、鋭意検討した結果、チョコレートを高配合し、さらに適量の液状油脂および水飴を添加することで、チョコレートの風味を最大限生かした日持ちの良い含水含気チョコレート類が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明の第1の発明は、ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類50~80質量%、液状油脂10~33質量%、及び水飴3~18質量%を含み、比重が0.7~1.0であることを特徴とする、含水含気チョコレート類である。
本発明の第2の発明は、前記液状油脂が前記水飴よりも多く含有されていることを特徴とする、第1の発明に記載の含水含気チョコレート類である。
本発明の第3の発明は、さらに、風味成分を0.1~10質量%有することを特徴とする、第1の発明又は第2の発明に記載の含水含気チョコレート類である。
本発明の第4の発明は、ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類をテンパリングし、これに液状油脂を混合してから水飴を混合し、ホイップすることを特徴とする、含水含気チョコレート類の製造方法である。
本発明の第5の発明は、ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類に、液状油脂を混合し、テンパリングしてから水飴を混合し、ホイップすることを特徴とする、含水含気チョコレート類の製造方法である。
本発明の第6の発明は、前記チョコレート類が50~80質量%、前記液状油脂が10~33質量%、前記水飴が3~18質量%であることを特徴とする、第4の発明又は第5の発明に記載の方法である。
【発明の効果】
【0007】
チョコレートの風味を最大限生かした日持ちの良い含水含気チョコレート類及びその製造方法を提供することができる。特に液状油脂を加えることで、これまでの含水含気チョコレート類よりも食感が軟らかくなり、乳化しやすい状態となって口どけが良くなるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における「ココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類」としては、例えば、スイートチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート等の通常のチョコレート生地が挙げられる。本発明では、特にホワイトチョコレートが好ましい。ここで、「ココアバター」とは、カカオ豆の油脂であり、「ココアバター代用油脂」とは、ココアバターの代わりに用いられる植物性油脂であり、製造方法と構成成分によって、ココアバター類似脂(CBE)、ココアバター代替脂(CBR)、ココアバター代用脂(CBS)が挙げられる。また、「30質量%以上」とは、前記チョコレート類を100質量%としたときのココアバター及び/又はココアバター代用油脂の割合を示している。本発明におけるチョコレート類中のココアバター及び/又はココアバター代用油脂の割合は、30質量%以上が好ましく、30~50質量%がより好ましく、30~45質量%がさらに好ましく、30~40質量%がさらに最も好ましい。
これらのチョコレート生地の成分は、通常、チョコレートに使用されている成分が含まれており、例えば、カカオ分、乳固形分、糖類、油脂が挙げられる。本発明においては、これらの成分を含むチョコレート生地であればよく、特にチョコレート規格としての法規性の制約を受けるものではない。本発明の「含水含気チョコレート類」に含まれる、該チョコレート類の含有量は、含水含気チョコレート類を100質量%とした場合に50~80質量%が好ましく、52~78質量%がより好ましく、55~75質量%がさらに好ましい。ここで、該チョコレート類の含有量が50質量%よりも少ないとチョコレートの風味が弱くなる可能性がある。逆に80質量%よりも多いと、含水した効果が弱くなり、軟らかく、口どけの良い食感を損なう可能性がある。なお、該チョコレート類としては、ノンテンパリング型、テンパリング型のいずれもが用いられるが、テンパリング型が好ましい。
【0009】
本発明における液状油脂は、常温(25℃)で液状である食用油脂であれば特に制限されない。例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、コーン油、米油、ゴマ油、オリーブ油、えごま油、亜麻仁油、落花生油、ぶどう種子油、ヤシ油、パーム核油、パーム油等の植物油脂、乳脂、ラード等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成油を単独で、あるいは混合して用いることができる。本発明においては、菜種油、大豆油、米油及びゴマ油からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
本発明における液状油脂の使用量は、水飴の量にも影響を受けるが、含水含気チョコレート類を100質量%としたとき、10~33質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、12~28質量%がさらに好ましく、13~27質量%が最も好ましい。なお、食感を良くする観点から、液状油脂を水飴よりも多く含有することが好ましい。
【0010】
本発明における水飴は、デンプンを酸や糖化酵素で糖化して作られた粘液状の甘味料であり、一般にブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、デキストリン、異性化糖などの混合物であるが、本発明においては特定の成分含有量を高めたものも含むものとし、また水飴を還元処理した還元水飴も含むものとする。本発明の水飴としては、市販のものを用いることができ、例えば、(株)林原製の「ハローデックス(登録商標)」を用いることができる。
本発明において好適に用いられる水飴を選択するにあたり、水飴の中に含まれている水分含量は重要である。例えば、水分含量が10~40質量%であるものが好ましく、15~35質量%がより好ましく、25~30質量%がさらに好ましい。
本発明における水飴の使用量は、水飴の中に含まれている水分にも影響を受けるが、含水含気チョコレート類を100質量%としたとき、3~18質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、7~14質量%がさらに好ましく、8~12質量%が最も好ましい。3質量%以上であると口どけの良い食感・風味が損なわれることはない。また18質量%以下であれば、粘度が上昇し作業性が低下することはなく、クリーム本来の軟らかさが得られる。なお、食感を良くする観点から、水飴が液状油脂よりも少なく含有されていることが好ましい。
【0011】
本発明における含水含気チョコレート類に添加されるその他成分として、風味成分が挙げられる。本発明の風味成分としては、含水含気チョコレート類に風味を加えられるようなものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、ココアパウダー、抹茶パウダー、バニラパウダー、ストロベリーパウダー、バナナパウダー、マンゴーパウダー、コーヒーパウダー、粉乳(全脂、脱脂、調整等)、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。特に、本発明においては、抹茶パウダー、ストロベリーパウダー、バナナパウダー、マンゴーパウダー、コーヒーパウダー及び粉乳からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
本発明の風味成分の含有量は、含水含気チョコレート類を100質量%とした場合、0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~8質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。風味成分を入れすぎると、チョコレートの風味を最大限生かすことができなくなるので注意が必要である。
【0012】
本発明における含水含気チョコレート類の比重は、0.7~1.0が好ましく、0.7~0.9より好ましくは、0.7~0.8がさらに好ましい。0.7未満ではチョコレートの風味が弱くなり食感も滑らかさがなくなる。他方、1.0を超えると軽い食感という点でホイップしていない通常のチョコレートと差がなくなってしまう。
上記のように比重を達成する手段としては、通常、ホイッパーが用いられる。しかし、含水含気チョコレート類の原料を混ぜ合わせた段階で硬い場合は、最初にビーター等で軟らかくなるまで立てて、その後、ホイッパーを用いて、空気を入れながら立てていく方法が挙げられる。
【0013】
本発明における含水含気チョコレート類の水分活性値は、0.46~0.65が好ましく、0.48~0.63より好ましくは、0.50~0.60がさらに好ましい。水分活性値が前記範囲であると、日持ちの良いチョコレートになる。
【0014】
本発明における含水含気チョコレート類としては、上記チョコレート類を溶融したもののほかに、さらに、水、クリーム類、牛乳、濃縮乳又は生クリーム等と混合したものを用いてもよい。このようにすることで、チョコレート感の優れた含水含気チョコレート類を得ることができる。また、本発明の含水含気チョコレート類としては、油中水型(W/O型)の乳化物であることが好ましい。この場合、連続層が油相なので、水中油型よりも日持ちを良くする効果が期待できる。
【0015】
本発明の含水含気チョコレート類においては、任意に乳化剤、香料、着色料、酸化防止剤、保存剤等のその他成分を加えてもよい。例えば、乳化剤としては、親油性乳化剤を添加するのが好ましい。親油性乳化剤としてはHLBが1~3のショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。親油性乳化剤の割合は0.05~5質量%、好ましくは0.1~1.5質量%がよく、0.05質量%より少なくなると、含水含気チョコレート類にボテが生じ易くなる。逆に5質量%を越えると油っぽくなり風味も悪くなる。
【0016】
本発明の含水含気チョコレート類の製造法としては、上述したココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類をテンパリングし、これに液状油脂を混合してから水飴を混合し、ホイップする方法が好ましい。前記チョコレート類をテンパリングする温度としては、シード剤を使用して29~31℃で行うことが好ましい。そして、液状油脂を先に入れて、その後、水飴を混合することが好ましい。これは、油であるチョコレート類には水飴よりも液状油脂が混ざりやすいからである。その後、すぐにホイップしてもよいが、ホイップの前にテンパリング後に結晶を安定化させる工程を加えることが好ましい。18~22℃の温度で生地を寝かすことにより、生地がホイップしやすくなる。この後はホイッパーで生地をホイップすることになるが、この時点で生地が硬い場合は、まずビーター等でいったん軟らかくなるまで立てて、その後、ホイッパーでホイップする方が好ましい。ビーター、ホイッパーはアタッチメントを変えるだけで変換可能であり、このようなミキサーとしては、例えば、(株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPROが挙げられる。
また、本発明の含水含気チョコレート類の製造法としては、上述したココアバターまたはココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類に、液状油脂を混合してからテンパリングし、水飴を混合してからホイップする方法も好ましい。前記チョコレート類をテンパリングする温度などの諸条件は上述と同じである。
【0017】
本発明の含水含気チョコレート類の製造法において、使用されるココアバター及び/又はココアバター代用油脂を30質量%以上含むチョコレート類、液状油脂、水飴の量は、上述した含水含気チョコレート類の使用量と同じであり、例えば、チョコレート類が50~80質量%、前記液状油脂が10~33質量%、前記水飴が3~18質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明の含水含気チョコレート類は、好ましくはチョコレートクリーム類である。なお、本発明でチョコレートクリーム類とは、25℃での性状がクリーム状で可塑性を有するチョコレートのことである。
【実施例0019】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「%」及び「部」は、いずれも質量基準を意味する。
【0020】
<原料>
〔チョコレート類A〕:大東カカオ(株)製、商品名:スペリオールソワブラン(ココアバターの含有量:35%)
〔チョコレート類B〕:大東カカオ(株)製、商品名:ホワイトCE-LP(ココアバター及びココアバター代用油脂の合計含有量:34%)
〔液状油脂A〕:日清オイリオグループ(株)製、商品名:日清キャノーラ油
〔液状油脂B〕:日清オイリオグループ(株)製、商品名:日清サラダ油(大豆油)
〔液状油脂C〕:竹本油脂(株)製、商品名:マルホン太白ごま油
〔水飴A〕:(株)林原製、商品名:ハローデックス(登録商標)(水分28%以下)
〔水飴B〕:日本食品化工(株)製、商品名:日食ハイマルトースシラップ MC-45(水分30%以下)
〔風味成分A〕:(株)丸久小山園製、商品名:抹茶すいせん
〔風味成分B〕:(株)明治フードマテリア製、商品名:FDイチゴパウダーA13
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
<実施例1>
表1の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A75質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.79であり、水分活性値は0.56であった。このものはチョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0027】
<実施例2>
表1の配合表に従い、チョコレートA類300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A56.2質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A18.8質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.82であり、水分活性値は0.51であった。このものもチョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0028】
<実施例3>
表1の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして風味成分A30質量部を加えてかき混ぜ、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A180質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A90質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.77であり、水分活性値は0.63であった。このものはチョコレートの風味を最大限生かしながら、口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0029】
<実施例4>
表2の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂B75質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.79であり、水分活性値は0.57であった。このものは実施例1と同じく、チョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0030】
<実施例5>
表2の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂C75質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.80であり、水分活性値は0.58であった。このものも実施例1と同じく、チョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0031】
<実施例6>
表2の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして風味成分A0.5質量部を加えてかき混ぜ、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A75質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.76であり、水分活性値は0.60であった。このものは風味成分の風味を生かしながら、チョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0032】
<実施例7>
表3の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして風味成分A22質量部を加えてかき混ぜ、さらに液状油脂A75質量部を加えてかき混ぜ、シード剤(大東カカオ(株)テンパシードDC)を用いてテンパリング後、約29℃に調温した。次に水飴A45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.80であり、水分活性値は0.56であった。このものは風味成分の風味を最大限生かしながら、チョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0033】
<実施例8>
表3の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして風味成分B22質量部を加えてかき混ぜ、テンパリング後、約29℃に調温した。さらに液状油脂A75質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.75であり、水分活性値は0.52であった。このものも風味成分の風味を最大限生かしながら、チョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0034】
<実施例9>
表3の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A75質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴B45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.76であり、水分活性値は0.52であった。このものもチョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0035】
<実施例10>
表4の配合表に従い、チョコレート類B300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A75質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A45質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.84であり、水分活性値は0.57であった。このものもチョコレートの風味を最大限に生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類であった。
【0036】
<比較例1>
表4の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A19質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A56質量部を少しずつ加えて分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れたが、液状油脂の含量が少ないため、この時の状態は硬くてぼそつき、ビーターで柔らかくなるまで立てようとしたが、柔らかくならなかった。前記含水含気チョコレート類の水分活性値は0.0.62であった。チョコレートの風味はするが、チョコレートのような滑らかな口どけではなかった。
【0037】
<比較例2>
表4の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A210質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A90質量部を少しずつ加え分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出したが、流動性のある液状だったためホイップできる状態ではなかった。そのため5℃の冷蔵庫にこれを入れて、ホイップができる状態まで冷やし固め、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.61であり、水分活性値は0.61であった。このものは液状油脂の含量が多いため、最初の口どけは軽く良いが口の中に油性感が長く残り、チョコレートの風味が弱いものであった。
【0038】
<比較例3>
表5の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに液状油脂A42.9質量部を加えてかき混ぜ、次に水飴A85.8質量部を少しずつ加え分散させ、乳化させようとしたが、水飴の含量(水分含量)が多いため、ぼろぼろとしてまとまらなかった。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、ミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れて、ビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含気チョコレート類の比重は0.77であり、水分活性値は0.67であった。このものはチョコレートの風味はするが、口どけが悪くて滑らかさのない食感で、水分活性値はやや高いものであった。
【0039】
<比較例4>
表5の配合表に従い、チョコレート類A300質量部を溶かして、テンパリング後、約29℃に調温した。これに水飴A45質量部を加えてかき混ぜ、次に液状油脂A75質量部を少しずつ加え分散させた。これを20℃の保管庫で25℃になるよう調温し、およそ1時間保管した後、保管庫から取り出して、3cm角程度の塊に砕いてミキサー((株)愛工舎製、卓上型ミキサー ケンミックス アイコー シェフPRO)のボウルの中に入れた。これをビーターで柔らかくなるまで立てた後、アタッチメントをホイッパーに変更して、空気を入れながら立てて、含水含気チョコレート類を製造した。前記含水含気チョコレート類の比重は0.74であり、水分活性値は0.51であった。液状油脂よりも水飴を先に入れて製造したものは、ぼそついた食感が感じられ、実施例1のような、チョコレートの風味を最大限生かした口どけと日持ちの良い含水含気チョコレート類ではなかった。
【0040】
<官能評価>
製造した含水含気チョコレート類を食した時の風味及び口どけを3名のパネルで0~3点の4段階で総合的に評価した。風味評価は、点数が高いほどチョコレート風味が強く、2点以上を合格とした。口どけ評価は、点数が高いほど口どけが良く、滑らかなであり、2点以上を合格とした。それぞれの評価結果を表6、7に示した。
・風味評価:20℃保管した状態を評価
3点:チョコレートの風味を強く感じる
2点:チョコレートの風味を感じる
1点:チョコレートの風味を弱く感じる
0点:チョコレートの風味がしない
・口どけ評価:20℃保管した状態を評価
3点:非常に口どけが良い
2点:口どけが良い
1点:どちらでもない
0点:口どけが悪い
【0041】
【0042】
【0043】
以上に示すように、特定量の油分と水分を含有する含水チョコレートをホイップすることにより、チョコレートの風味を最大限生かした、口どけの良い食感を呈する含水含気チョコレート類及びその製造方法を提供することが可能となる。