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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133128
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】医療用液体加温装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/44 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A61M5/44 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032023
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000138037
【氏名又は名称】株式会社メテク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】星野 正格
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 憲昭
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066LL05
(57)【要約】
【課題】加温部において血液製剤を目標温度に到達させるための血液製剤の最大流量を把握することができる輸液装置を提供する。
【解決手段】輸液装置1は、血液製剤が流れる流路50、25~29と、ヒータ51により加温流路50の血液製剤を加温する加温部21と、流路50、25~29の血液製剤を送液する第1のポンプ23及び第2のポンプ24と、ヒータ51に給電される実力電力を検出する電力計32と、電力計32により検出された実力電力に基づいて、加温部21の流路出口61の血液製剤がヒータ51の発熱により目標温度に到達するための、加温部21の血液製剤の最大流量を算出する流量算出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる流路と、
給電により発熱するヒータを有し、当該ヒータにより前記流路の液体を加温する加温部と、
前記流路の液体を送液する送液部と、
前記ヒータに給電される実力電力を検出する実力電力検出部と、
前記実力電力検出部により検出された実力電力に基づいて、前記加温部の流路出口の液体が前記ヒータの発熱により目標温度に到達するための、前記加温部の流路の液体の最大流量を算出する流量算出部と、を備える、医療用液体加温装置。
【請求項2】
前記実力電力検出部は、電力計である、請求項1に記載の医療用液体加温装置。
【請求項3】
前記ヒータに接続され、前記ヒータに給電する電源部を有し、
前記実力電力検出部は、前記電源部と前記ヒータとの間の配線に設けられている、請求項2に記載の医療用液体加温装置。
【請求項4】
前記実力電力検出部により検出された実力電力に基づいて、前記加温部の流路出口の液体の温度を推定する温度推定部と、
前記温度推定部により推定された温度が所定の閾値をより低い場合に警告を報知する報知部とを、さらに備える、請求項2又は3に記載の医療用液体加温装置。
【請求項5】
前記実力電力検出部は、
前記加温部の流路出口と流路入口の液体の温度差を検出するための温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記加温部の流路出口と流路入口の液体の温度差と、前記加温部の流路の液体の流量に基づいて、実力電力を算出する実力電力算出部と、を有する、請求項1に記載の医療用液体加温装置。
【請求項6】
前記加温部の流路出口の液体の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサにより測定された温度が所定の閾値をより低い場合に警告を報知する報知部とを、さらに備える、請求項1~3、5のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
【請求項7】
ヒータに給電する電源部において、前記加温部の流路出口の液体の温度が所定の閾値より低くなる低電圧を検知する低電圧検知回路と、
前記低電圧検知回路により低電圧が検知された場合に警告を報知する報知部とを、さらに備える、請求項1~3又は5に記載の医療用液体加温装置。
【請求項8】
前記流量算出部により算出された前記最大流量を表示する表示部を、さらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
【請求項9】
前記加温部の流路の液体の設定流量を前記最大流量に変更するか否かを選択するための選択部を、さらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
【請求項10】
前記加温部の流路の液体の流量が前記最大流量になるように前記送液部を制御する制御部を、さらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用液体加温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院では患者に輸液する血液製剤の品質を維持するため、血液製剤を冷蔵保管している。血液製剤を患者に輸液する際には、患者の負担を軽減するため、血液製剤を適切な温度まで加温して輸液する必要がある。特に大量または危機的出血が発生した場合には、血液製剤を短時間で大量に輸液する必要があり、この際には低体温症を防止するため、血液製剤を患者体温まで急速に加温する必要がある。
【0003】
従来から、上述の大量または危機的出血が発生した患者の治療には、血液製剤を加温しながら患者に輸液する輸液装置が用いられている。輸液装置には、所定長さの加温流路を流れる血液製剤をヒータにより加温する加温部があり、そのヒータの発熱能力に応じて血液製剤の流量を設定することで、血液製剤を目標温度(体温相当の温度)まで加温している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-187606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような輸液装置では、時に商用電源が用いられ、例えばこの場合商用電源から輸液装置の装置電源までと、装置電源からヒータまでが配線で繋がれることになる。そして、装置電源は、ポンプなどの多数の機器にも配線で繋がっており、各機器に電力を供給している。
【0006】
しかしながら、輸液装置において、たこ足配線などの複雑な配線があると、配線に大電流が流れ、電圧が降下することがある。この場合、輸液装置の上述の加温部の加温流路において、ヒータに十分な電力が供給されず、血液製剤が目標温度(体温相当)に到達しないことが起こり得る。
【0007】
かかる場合、より少ない電力供給で血液製剤を目標温度まで到達させるために、加温部の加温流路における血液製剤の流量を減らして調整する必要があるが、ユーザには、加温部における血液製剤の流量をどのように調整すべきか分からない。
【0008】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、加温部において血液製剤などの液体を目標温度に到達させるための液体の最大流量を把握することができる、輸液装置などの医療用液体加温装置を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、医療用液体加温装置が、ヒータに給電される実力電力を検出する実力電力検出部と、加温部の流路出口の液体がヒータの発熱により目標温度に到達するための加温部の流路の液体の最大流量を算出する流量算出部を備えることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
(1)液体が流れる流路と、給電により発熱するヒータを有し、当該ヒータにより前記流路の液体を加温する加温部と、前記流路の液体を送液する送液部と、前記ヒータに給電される実力電力を検出する実力電力検出部と、前記実力電力検出部により検出された実力電力に基づいて、前記加温部の流路出口の液体が前記ヒータの発熱により目標温度に到達するための、前記加温部の流路の液体の最大流量を算出する流量算出部と、を備える、医療用液体加温装置。
(2)前記実力電力検出部は、電力計である、(1)に記載の医療用液体加温装置。
(3)前記ヒータに接続され、前記ヒータに給電する電源部を有し、前記実力電力検出部は、前記電源部と前記ヒータとの間の配線に設けられている、(2)に記載の医療用液体加温装置。
(4)前記実力電力検出部により検出された実力電力に基づいて、前記加温部の流路出口の液体の温度を推定する温度推定部と、前記温度推定部により推定された温度が所定の閾値をより低い場合に警告を報知する報知部とを、さらに備える、(2)又は(3)に記載の医療用液体加温装置。
(5)前記実力電力検出部は、前記加温部の流路出口と流路入口の液体の温度差を検出するための温度センサと、前記温度センサにより検出された前記加温部の流路出口と流路入口の液体の温度差と、前記加温部の流路の液体の流量に基づいて、実力電力を算出する実力電力算出部と、を有する、(1)に記載の医療用液体加温装置。
(6)前記加温部の流路出口の液体の温度を測定する温度センサと、前記温度センサにより測定された温度が所定の閾値をより低い場合に警告を報知する報知部とを、さらに備える、(1)~(3)、(5)のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
(7)ヒータに給電する電源部において、前記加温部の流路出口の液体の温度が所定の閾値より低くなる低電圧を検知する低電圧検知回路と、前記低電圧検知回路により低電圧が検知された場合に警告を報知する報知部とを、さらに備える、(1)~(3)又は(5)のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
(8)前記流量算出部により算出された前記最大流量を表示する表示部を、さらに備える、(1)~(7)のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
(9)前記加温部の流路の液体の設定流量を前記最大流量に変更するか否かを選択するための選択部を、さらに備える、(1)~(8)のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
(10)前記加温部の流路の液体の流量が前記最大流量になるように前記送液部を制御する制御部を、さらに備える、(1)~(9)のいずれか一項に記載の医療用液体加温装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加温部において液体を目標温度に到達させるための液体の最大流量を把握することができる医療用液体加温装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態における輸液装置の構成を示す模式図である。
図2】制御部のブロック図である。
図3】ディスプレイの表示例を示す説明図である。
図4】制御部のブロック図である。
図5】警告を報知する際のディスプレイの表示例を示す説明図である。
図6】温度センサを有する輸液装置の構成を示す模式図である。
図7】第2の実施の形態における輸液装置の構成を示す模式図である。
図8】低電圧検知回路を有する輸液装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る医療用液体加温装置としての輸液装置1の構成の概略の一例を示す模式図である。輸液装置1は、例えば、液体としての血液製剤を収容する液体収容部20と、加温部21と、ドリップチャンバー22と、送液部としての第1のポンプ23と、第2のポンプ24と、第1の流路25と、第2の流路26と、第3の流路27と、第4の流路28と、第5の流路29と、電源部30と、配線31と、実力電力検出部としての電力計32と、制御部33と、を有している。
【0015】
液体収容部20は、例えば軟質の樹脂製であり、例えば0.5L以上の容量を有している。液体収容部20の軟質材には、例えばPCV(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、ABS樹脂などが用いられている。
【0016】
加温部21は、血液製剤が流れる加温流路50と、加温流路50に接触して加温するヒータ51を有している。加温流路50は、流路入口60と流路出口61を有し、流路入口60から流路出口61向かって蛇行している。ヒータ51は、例えば給電により発熱する電熱線であり、熱板面内に所定のパターンで配設されている。
【0017】
第1の流路25は、血液製剤バッグ70と液体収容部20を接続するためのものであり、上流側が血液製剤バッグ70に接続可能になっており、下流側が液体収容部20に接続されている。
【0018】
第2の流路26は、液体収容部20と加温部21を接続するものであり、上流側が液体収容部20の下部に接続され、下流側が加温部21の加温流路50の流路入口60に接続されている。
【0019】
第3の流路27は、加温部21とドリップチャンバー22を接続するものであり、上流側が加温部21の加温流路50の流路出口61に接続され、下流側がドリップチャンバー22の上部に接続されている。
【0020】
第4の流路28は、ドリップチャンバー22と患者を接続するためのものであり、上流側がドリップチャンバー22の下部に接続され、下流側が、患者に接続するための穿刺部80に接続されている。
【0021】
第5の流路29は、ドリップチャンバー22と液体収容部20を接続するものであり、上流側がドリップチャンバー22の上部に接続され、下流側が液体収容部20の上部に接続されている。
【0022】
第1乃至第5の流路25~29は、軟質のチューブである。
【0023】
第1のポンプ23は、第2の流路26に設けられている。第1のポンプ23は、例えば第2の流路26のチューブを扱いてチューブ内の液体を圧送するチューブポンプである。第1のポンプ23は、第2の流路26に接続された加温流路50を流れる血液製剤の流量を調整することができる。
【0024】
第2のポンプ24は、第4の流路28に設けられている。第2のポンプ24は、例えば第4の流路28のチューブを扱いてチューブ内の液体を圧送するチューブポンプである。第2のポンプ24は、患者に供給される血液製剤の流量を調整することができる。
【0025】
電源部30は、輸液装置1の各種機器に給電するものであり、配線31を通じて例えば加温部21のヒータ51、第1のポンプ23及び第2のポンプ24に給電する。電源部30は、例えば商用電源に接続可能であり、商用電源から電力を得ることができる。
【0026】
配線31は、電源部30から加温部21のヒータ51、第1のポンプ23及び第2のポンプ24等に接続されている。
【0027】
電力計32は、例えば配線31の電源部30と加温部21のヒータ51との間に接続されている。電力計32は、ヒータ51に給電される実力電力(実際の電力)を測定することができる。
【0028】
制御部33は、例えば汎用コンピュータであり、メモリに記録されたプログラムをCPUで実行することにより、電源部30、電力計32、加温部21のヒータ51、第1のポンプ23、第2のポンプ24等を制御して、輸液装置1における輸液プロセスを実行できる。制御部33は、例えば電源部30を制御し電源部30からヒータ51に所定量の電力を供給しヒータ51を所定の発熱量で発熱させることで、加温部21の加温流路50を流れる所定流量の血液製剤を所定の目標温度まで加温することができる。
【0029】
また制御部33は、図2に示すように例えば、電力計32により検出された実力電力に基づいて、加温部21の流路出口61の血液製剤がヒータ51の発熱により目標温度に到達するための、加温流路50の血液製剤の最大流量Qmを算出する流量算出部100と、流量算出部100により算出された血液製剤の最大流量Qmを表示する表示部101と、加温部21の加温流路50の血液製剤の設定流量を最大流量Qmに変更するか否かを選択するための選択部102とを有している。
【0030】
流量算出部100は、電力計32により検出された実力電力Pdに基づいて一般式、例えば次式1により血液製剤の最大流量Qmを算出する機能を有している。
(Tout-Tin)×(Qm/60)×D=Pd・・・(式1)
Toutは、加温部21の流路出口61における血液製剤の目標温度、Tinは、加温部21の流路入口60における血液製剤の温度(血液製剤の加温前の温度)、Dは、血液製剤の比熱である。
【0031】
表示部101は、例えば図3に示すような制御部33のディスプレイ110において、目標温度Toutと、実力電力Pdを用いて目標温度Toutを達成可能な血液製剤の最大流量Qmを表示させる機能を有している。
【0032】
選択部102は、例えば制御部33のディスプレイ110において、加温部21の加温流路50の血液製剤の設定流量Qを最大流量Qmに変更するか否かを選択する選択ボタン111を表示させる機能を有している。
【0033】
次に、以上のように構成された輸液装置1の動作について説明する。輸液が行われる際には、例えば制御部33において、用意された血液製剤の温度(例えば4℃程度)と、患者に供給される加温後の血液製剤の目標温度(例えば体温相当の37℃)と、第1のポンプ23及び第2のポンプ24の設定流量Qが入力され、設定される。
【0034】
また、図1に示すように、用意された血液製剤の入った血液製剤バッグ70が第1の流路25に接続され、血液製剤バッグ70の血液製剤が、第1の流路25を通って重力により落下し、液体収容部20に収容される。そして、輸液が開始されると、第1のポンプ23と第2のポンプ24が作動し、液体収容部20の血液製剤が、第1のポンプ23により第2の流路26を通って加温部21に送られる。加温部21において、血液製剤は、加温流路50を通過し、その通過の際にヒータ51により、血液製剤が体温相当の目標温度まで加温される。
【0035】
加温部21において目標温度まで加温された血液製剤は、第3の流路27を通過し、ドリップチャンバー22に流入する。その後、血液製剤は、第2のポンプ24により第4の流路28を通過し、穿刺部80から患者に供給される。
【0036】
また、加温部21において血液製剤中に生じた気泡は、ドリップチャンバー22で捕捉される。ドリップチャンバー22内の一部の血液製剤と気体は、第5の流路29を通って液体収容部20に戻される。
【0037】
そして、電力計32では、電源部30からヒータ51に供給される実力電力Pdが測定され、当該実力電力Pdが制御部33に出力される。この実力電力Pdの測定及び出力は、常時継続的に行われてもよいし、複数回断続的に行われてもよいし、輸液プロセスにおいて1回行われてもよい。次に、流量算出部100により、電力計32により検出された実力電力Pdに基づいて、加温部21の流路出口61の血液製剤がヒータ51の発熱により目標温度に到達するための血液製剤の最大流量Qmが算出される。
【0038】
そして表示部101の機能により、図3に示すように制御部33のディスプレイ110に、流量算出部100により算出された血液製剤の最大流量Qmが表示される。さらに選択部102の機能により、制御部33のディスプレイ110に、加温流路50の血液製剤の設定流量Qを最大流量Qmに変更するか否かを選択する選択ボタン111が表示される。そして、ユーザが「変更」を選択した場合には、制御部33における血液製剤の設定流量Qが最大流量Qmに変更され、その後、制御部33は、加温流路50の血液製剤の流量が最大流量Qmになるように第1のポンプ23を制御する。
【0039】
本実施の形態によれば、輸液装置1が、ヒータ51に給電される実力電力を検出する実力電力検出部である電力計32と、電力計32により検出された実力電力に基づいて、加温部21の流路出口61の血液製剤が目標温度に到達するための血液製剤の最大流量Qmを算出する流量算出部100を備えている。これにより、加温部21において血液製剤を目標温度に到達させるための血液製剤の最大流量を把握することができる。この結果、輸液装置1において、ヒータ51に通じる配線に大電流が流れヒータ51の電圧降下が生じた場合であっても、例えばユーザが、加温部21における血液製剤の流量を減らし血液製剤を目標温度まで到達させることが可能となる。この結果、患者が低体温症になることを防止することができる。
【0040】
実力電力検出部が電力計32であるので、ヒータ51に給電される実力電力を確実に正確に把握することができる。
【0041】
電力計32が電源部30とヒータ51との間の配線31に設けられているので、ヒータ51に近い位置で実力電力を検出することができ、この結果、ヒータ51に給電される実力電力を正確に把握することができる。
【0042】
輸液装置1が、流量算出部100により算出された最大流量Qmを表示する表示部101を備えるので、ユーザは、最大流量Qmを簡単かつ迅速に把握することができる。
【0043】
輸液装置1が、加温部21の加温流路50の設定流量Qを最大流量Qmに変更するか否かを選択するための選択部102を備えるので、この設定流量の変更をユーザが簡単に行うことができる。
【0044】
本実施の形態において、輸液装置1は、例えば図4に示すように、電力計32により検出された実力電力Pdに基づいて、加温部21の流路出口61の血液製剤の温度を推定する温度推定部120と、温度推定部120により推定された温度が所定の閾値をより低い場合に警告を報知する報知部121をさらに備えていてもよい。温度推定部120と報知部121は、例えば制御部33で実現される。
【0045】
温度推定部120は、例えば次式2により、加温部21の流路出口61の血液製剤の温度(出口温度)Td(out)を推定する機能を有している。
(Td(out)-Tin)×(Q/60)×D=Pd・・・(式2)
Tinは、加温部21の流路入口60における血液製剤の温度(血液製剤の加温前の温度)、Dは、血液製剤の比熱、Qは、加温部21の加温流路50の設定流量である。なお、流路入口60のTinは、温度センサにより検出したものを使用してもよい。
【0046】
報知部121は、出口温度Td(out)が所定の閾値Eよりも低い(Td(out)<E)場合に、例えば図5に示すような制御部33のディスプレイ110に出口温度Td(out)及び警告を表示する機能や、制御部33の図示しないスピーカーを用いて警告音を出力する機能を有している。所定の閾値Eは、特に限定されるものでないが、目標温度Toutや、目標温度Toutよりも低い温度が設定される。
【0047】
かかる例によれば、加温部21の血液製剤の出口温度Td(out)が目標温度Toutに到達しないことをユーザに確実に知らせることができる。
【0048】
また、前記例において、輸液装置1が、例えば図6に示すように、加温部21の流路出口61の血液製剤の温度Td(out)を測定する温度センサ130を有し、報知部121は、温度センサ130により測定された出口温度Td(out)が所定の閾値Eをより低い場合に、例えば図5に示したように警告を報知するようにしてもよい。この場合、加温部21の血液製剤の出口温度Td(out)が目標温度Toutに到達しないことをユーザに正確かつ確実に知らせることができ、患者の低体温症を予防できる。
【0049】
なお、本実施の形態において、電力計32は、電源部30と商用電源との間の配線に設けられていてもよい。電力計32は、加温部21に設けられていてもよく、電源部30の筐体内に設けられていてもよい。また、例えば表示部101と選択部102はなくてもよい。
【0050】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、実力電力検出部として電力計32を用いていたが、図7に示すように、実力電力検出部150は、加温部21の流路出口61と流路入口60の血液製剤の温度差を検出するための温度センサ151、152と、温度センサ151、152により検出された加温部21の流路出口61と流路入口60の血液製剤の温度差と、加温部21の加温流路50の血液製剤の流量Qに基づいて、実力電力を算出する実力電力算出部153を有するものであってもよい。温度センサ151は、加温部21の流路入口60に設けられ、温度センサ152は、加温部21の流路出口61に設けられる。実力電力算出部153は、例えば制御部33で実現される。なお、輸液装置1の他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0051】
実力電力算出部153は、例えば次式3により、電源部30からヒータ51に供給される実力電力Pdを算出する機能を有している。
(Td(out)-Td(in))×(Q/60)×D=Pd・・・(式3)
Td(in)は、温度センサ151により検出される加温部21の流路入口60の血液製剤の温度、Td(out)は、温度センサ152により検出される加温部21の流路出口61の血液製剤の温度、Dは、血液製剤の比熱、Qは、加温部21の加温流路50の設定流量である。
【0052】
そして、輸液装置1で輸液プロセスが行われる際に、温度センサ151、152により、加温部21の流路出口61と流路入口60の血液製剤の温度差が検出され、実力電力算出部153により、当該温度差に基づいて、電源部30からヒータ51に供給される実力電力Pdが算出される。この実力電力Pdの算出は、常時継続的に行われてもよいし、複数回断続的に行われてもよいし、輸液プロセスにおいて1回行われてもよい。
【0053】
次に、第1の実施の形態と同様に、流量算出部100により、実力電力Pdに基づいて、加温部21の流路出口61の血液製剤がヒータ51の発熱により目標温度に到達するための加温流路50の血液製剤の最大流量Qmが算出される。すなわち、次式1により血液製剤の最大流量Qmが算出される。このとき、Tinには、温度センサ151により検出されたTd(in)を用いてもよい。
(Tout-Tin)×(Qm/60)×D=Pd・・・(式1)
Toutは、加温部21の流路出口61における血液製剤の目標温度、Tinは、加温部21の流路入口60における血液製剤の温度(血液製剤の加温前の温度)、Dは、血液製剤の比熱である。
【0054】
そして表示部101の機能により、例えば図3に示したように制御部33のディスプレイ110に、流量算出部100により算出された血液製剤の最大流量Qmが表示される。さらに選択部102の機能により、制御部33のディスプレイ110に、加温部21の加温流路50の血液製剤の設定流量Qを最大流量Qmに変更するか否かを選択する選択ボタン111が表示される。そして、ユーザが「変更」を選択した場合には、制御部33における血液製剤の設定流量Qが最大流量Qmに変更され、その後、制御部33は、加温流路50の血液製剤の流量が最大流量Qmになるように第1のポンプ23を制御する。
【0055】
本実施の形態によれば、加温部21において血液製剤を目標温度に到達させるための血液製剤の最大流量Qmを把握することができる。また、実力電力検出部150が温度センサ151、152及び実力電力算出部153を有するものであり、ヒータ51に供給される実力電力を簡単に算出することができる。
【0056】
なお、本実施の形態において、加温部21の加温流路50の血液製剤の流量Qは、設定流量でもよいし、流量計で測定したものであってもよい。また、例えば表示部101と選択部102はなくてもよい。さらに、温度センサは、加温部21の流路出口61と流路入口60の血液製剤の温度差を検出できるものであれば、他の態様でもよい。
【0057】
また本実施の形態において、第1の実施の形態と同様に、輸液装置1が、加温部21の血液製剤の出口温度Td(out)を検出する温度センサ152に加え、報知部121を有し、報知部121が、温度センサ152により測定された出口温度Td(out)が所定の閾値Eをより低い場合に、例えば図5に示したように出口温度Td(out)と警告を報知するようにしてもよい。この場合、加温部21の血液製剤の出口温度Td(out)が目標温度Toutに到達しないことをユーザに正確かつ確実に知らせることができる。この結果、患者が低体温症になることを防止することができる。
【0058】
以上の第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、制御部33は、最大流量Qmが算出された後、自動で、加温部21の加温流路50の血液製剤の流量Qが最大流量Qmになるように第1のポンプ23を制御してもよい。
【0059】
さらに、以上の第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、輸液装置1が、例えば図8に示すように、ヒータ51に給電する電源部30において、加温部21の流路出口61の血液製剤の温度Td(out)が所定の閾値Eより低くなる低電圧を検知する低電圧検知回路180を有し、報知部121は、低電圧検知回路180により低電圧が検知された場合に警告を報知するようにしてもよい。かかる場合、低電圧検知回路180は、電源部30の電圧をモニタリングし、加温部21の流路出口61の血液製剤の温度Td(out)が所定の閾値Eより低くなる低電圧を検知する。ここで、上述の式1等から、血液製剤の温度Td(out)が所定の閾値Eに達するために必要な電力値がわかり、その電力値が分かれば、ヒータ51の抵抗値などが既知であることから、必要な電圧値がわかる。低電圧検知回路180には、この電圧値を低電圧として予め設定しておき、低電圧検知回路180は、電源部30の電圧値が低電圧になったことを検知する。具体的には、平常電圧の交流成分を全波もしくは半波にし、それを分圧抵抗などで分圧し、その分圧された電圧と、予め設定された閾値(低電圧)とを比較し、分圧された電圧が閾値よりも大きければ「1」、そうでなければ「0」を出力する。例えばコンパレータICを用いて実現するならば、そのICの入力電圧値が、最大定格電圧以内になるように分圧すればよい。そして、常に出力が「0」の場合に、低電圧を検知したことになり、報知部121が警告を報知する。この場合も、加温部21の血液製剤の出口温度Td(out)が目標温度Toutに到達しないことをユーザに正確かつ確実に知らせることができ、患者の低体温症を予防できる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば以上の実施の形態における輸液装置1の流路等の構成、加温部21等の構成は、本実施の形態のものに限られない。また、輸液装置1で送液される輸液用の液体は血液製剤であったが、これに限られず、例えば新鮮凍結血漿(FFP)、アルブミン、細胞外液であってもよい。本発明は、輸液装置以外の透析装置、血液浄化装置、体外循環装置、体温管理装置などの他の医療用液体加温装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、加温部において液体を目標温度に到達させるための液体の最大流量を把握することができる医療用液体加温装置を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 輸液装置
21 加温部
23 第1のポンプ
24 第2のポンプ
25 第1の流路
26 第2の流路
27 第3の流路
28 第4の流路
29 第5の流路
30 電源部
31 配線
32 電力計
33 制御部
50 加温流路
51 ヒータ
60 流路入口
61 流路出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8