(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133141
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】面取り装置
(51)【国際特許分類】
B23C 3/12 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B23C3/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032052
(22)【出願日】2021-03-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】721001890
【氏名又は名称】富永 佳道
(72)【発明者】
【氏名】富永 佳道
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022DD08
3C022DD11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】操作が簡単で、鉄・ステンレス・アルミ・樹脂等ワークの材質に関係なく、ワークに傷をつけず二次カエリも生じない面取り機を提供する。
【解決手段】水平面を上面として有するテーブル3と、テーブル上面に対して垂直な基準面を有する基準バー5と、水平面に対してX°に傾斜した刃物(エンドミル)13を有する刃物部20を備え、基準バー5は、テーブル3の縁部よりも外側、かつ、テーブル上面よりも上に位置し、基準バー5の長手方向はテーブル3の縁部と平行になり、テーブル3の縁部と向かい合う長手方向の側面が基準面であり、ワークがテーブル上面に置かれ、基準バー5の基準面に押し当てられテーブル上面の縁部と基準バー5の基準面下縁部から突出した上記ワークの稜線部を、基準バー5の長手方向に刃物部20をスライドさせ、刃物部20に設置された刃物(エンドミル)13の外周刃によって削り取ることを特徴とする面取り装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面を上面として有するテーブルと、
テーブル上面に対して垂直な基準面を有する基準バーと、
水平面に対してX°に傾斜した刃物(エンドミル)を有する刃物部を備え、
基準バーは、上記テーブルの縁部よりも外側、かつ、テーブル上面よりも上に位置し、基準バーの長手方向は上記テーブルの縁部と平行になり、テーブルの縁部と向かい合う長手方向の側面が基準面であり、
ワークが上記テーブル上面に置かれ、基準バーの基準面に押し当てられテーブル上面の縁部と基準バーの基準面下縁部から突出した上記ワークの稜線部を、基準バーの長手方向に刃物部をスライドさせ、刃物部に設置された刃物(エンドミル)の外周刃によって削り取ることを特徴とする面取り装置。
【請求項2】
上記X°は30°以上60°以下であることを特徴とする請求項1に記載の面取り装置。
【請求項3】
上記テーブルには、水平面に対してX°の刃物の逃げ加工がなされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の面取り装置。
【請求項4】
上記基準バーには、水平面に対してX°の刃物の逃げ加工がなされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の面取り装置。
【請求項5】
上記刃物部は、
スライダー部、
スライダー部に設置されるスピンドルホルダー部、
スピンドルホルダー部に設置され刃物(エンドミル)を有するスピンドル部、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の面取り装置。
【請求項6】
上記スライダー部は、設置されるスピンホルダー部の位置を水平方向に変更できる往復移動手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の面取り装置。
【請求項7】
上記スピンドルホルダー部は、スピンドル部を水平面に対してX°の傾斜角で保持し、かつ、その角度を保持したまま上下方向に位置を変更できる往復移動手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の面取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製または合成樹脂のブロックを面取り加工する面取り機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製または合成樹脂のブロック(以下ワークという)は、フライス盤による切削、電動カッター等による切断などによって製造される。しかし、このようにして得られたワークは、稜線部分が先鋭化し、また、加工時に形成されたバリが残留しており、取扱上危険であるほか、後の工程の支障となる。そのため、通常は、稜線部分を削り、バリを取る面取り加工がおこなわれる。
【0003】
従来、面取り加工は、鉄工ヤスリを用いたヤスリ掛け、円柱状のヤスリを電動で回転させる電動ヤスリを用いたヤスリ掛け、旋削チップや面取りカッター等の刃物を用いたカッター式面取り機で行われるのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄工ヤスリ・電動ヤスリを用いたヤスリ掛けは技能を必要とするため、作業者によって加工精度にばらつきが生じてしまう。また、ヤスリ掛けによって、ワークの稜線部分に二次カエリが出る場合が多く、それを削る作業が追加で発生してしまう。以上の理由により、大量のワークを加工する場合、作業者の負担が大きく、時間もかかる。
【0005】
従来のカッター式面取り機では、固定された場所で旋削チップや面取りカッター等の刃物が回転し、そこへワークをスライドさせて面取りを行う。ワークをスライドさせるだけで面取りができるため、ヤスリ掛けよりも短時間で多くのワークを加工できる。しかし、ワークをスライドさせるため、ワークの稜線部に加わる力を一定にすることが難しい。その結果、面取り量にばらつきが発生しやすく、面取り面を綺麗にすることも難しい。また、ワークをスライドさせる際に、ワークにすり傷がつくことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は下記の構成となっている。
【0007】
請求項1に係る発明は、
水平面を上面として有するテーブルと、
テーブル上面に対して垂直な基準面を有する基準バーと、
水平面に対してX°に傾斜した刃物(エンドミル)を有する刃物部を備え、
基準バーは、上記テーブルの縁部よりも外側、かつ、テーブル上面よりも上に位置し、基準バーの長手方向は上記テーブルの縁部と平行になり、テーブルの縁部と向かい合う長手方向の側面が基準面であり、
ワークが上記テーブル上面に置かれ、基準バーの基準面に押し当てられテーブル上面の縁部と基準バーの基準面下縁部から突出した上記ワークの稜線部を、基準バーの長手方向に刃物部をスライドさせ、刃物部に設置された刃物(エンドミル)の外周刃によって削り取ることを特徴とする面取り装置に関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記X°は30°以上60°以下であることを特徴とする請求項1に記載の面取り装置に関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記テーブルには、水平面に対してX°の刃物の逃げ加工がなされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の面取り装置に関する。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記基準バーには、水平面に対してX°の刃物の逃げ加工がなされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の面取り装置に関する。
【0011】
請求項5に係る発明は、
上記刃物部は、
スライダー部、
スライダー部に設置されるスピンドルホルダー部、
スピンドルホルダー部に設置され刃物(エンドミル)を有するスピンドル部、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の面取り装置に関する。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記スライダー部は、設置されるスピンホルダー部の位置を水平方向に変更できる往復移動手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の面取り装置に関する。
【0013】
請求項7に係る発明は、上記スピンドルホルダー部は、スピンドル部を水平面に対してX°の傾斜角で保持し、かつ、その角度を保持したまま上下方向に位置を変更できる往復移動手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の面取り装置に関する。
【0014】
基準バーの長手方向と平行に設置されるガイドレールがあり、上記刃物部は、このガイドレールに設置される。請求項6に係る発明に記しているように、スピンホルダー部の位置は水平方向に移動可能であり、任意の位置で固定することで、面取り量の調整ができる。
【0015】
ワークを、ワークストッパーと基準バーの基準面に押し当てた状態でテーブルに置く。その際、ワークは手、または、エアシリンダなどで固定する。こうして、ワークをワークストッパーと基準面によって二面拘束する。そして、ガイドレールに設置された刃物部を、基準バーの長手方向にスライドさせ、テーブル上面の縁部と基準バーの基準面下縁部から突出したワーク稜線部の面取りを行う。
【発明の効果】
【0016】
従来の面取り機とは異なり、基準面を用いてワークを固定し、かつ、任意の位置で固定した刃物部をスライドさせて面取りを行うため、面取り量のばらつきが発生せず、面取り量の調整も正確かつ容易になる。また、ワークではなく刃物(エンドミル)を移動させるため、面取りの際にワークにすり傷がつくこともなくなり、同時に、装置をコンパクトにできる。さらに、作業が単純で特別な技能を必要としないため、作業者による面取り精度のばらつきが発生せず、短時間で多数のワークの面取りが可能となる。
【0017】
モーターで回転させた刃物(エンドミル)で面取りを行うが、刃物(エンドミル)の底刃ではなく外周刃で切削するため、鉄・ステンレス・アルミ・樹脂等の材質に関係なく、かつ、二次カエリの出ない綺麗な面取りができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】基準バーの等角図(5_1), 平面図(5_2), 正面図(5_3), 側面図(5_4)
【
図6】基準バー・支柱・スペーサーの関係図(側面視)
【
図7】テーブル・ワーク・基準バー・刃物の関係図 (側面視)
【
図9】テーブル・基準バー・ワークの関係図(側面視)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の面取り機の形態を説明する。
【0020】
図1・
図2・
図3を参照し、基盤(1)・テーブル支持板(2)・テーブル(3)・ワークストッパー(4)の形態を説明する。
図1で示しているように、基盤(1)の上に、2枚のテーブル支持板(2)に支えられたテーブル(3)があり、そのテーブル(3)には、ワークストッパー(4)が設置されている。
図2で示しているように、ワークストッパー(4)は、テーブル(3)の上面に垂直になる。
図3で示しているように、テーブル(3)は、水平面を上面(3a)・底面(3c)として有し、かつ、縁部には水平面に対してX°の傾斜(図面では45°)で刃物の逃げ(3b)加工がなされている。
【0021】
X°は45°が最も好ましいが、45°に限定されない。X°の最小値としては30°が好ましく、40°がさらに好ましく、最大値としては60°が好ましく、50°がさらに好ましい。
【0022】
図4・
図1・
図3・
図5を参照し、基準バー(5)の形態を説明する。
図4で示しているように、基準バー(5)は、テーブル(3)の縁部よりも外側、かつ、テーブル(3)の上面よりも上に位置になるように、2本の支柱(6)に支えられて設置されている。
図1で示しているように、基準バー(5)の長手方向はテーブル(3)の縁部と平行になる。
図3で示しているように、テーブル(3)の縁部と向かい合う長手方向の側面が基準面(5a)となり、その基準面(5a)は、テーブル上面(3a)に対して垂直になる。また、
図3・
図5の5_1(一部切り欠き等角図)で示しているように、基準バー(5)には、水平面に対してX°の傾斜(図面では45°)で刃物の逃げ(5b)加工がなされている。
【0023】
図6を参照し、支柱(6)の形態を説明する。支柱(6)にはスペーサー用座ぐり(6a)加工がなされており、厚みの異なるスペーサー(15)を設置することで、基準バー(5)とテーブル上面(3a)の隙間の高さを変えることが可能となる。スペーサー(15)を薄くして基準バー(5)を下げると上記の隙間が小さくなり(16a)、薄いワークの面取りが可能となる。逆に、スペーサー(15)を厚くして基準バー(5)を上げると上記の隙間が大きくなり(16b)、ワーク稜線部(14a)の面積が大きいワークでも面取りが可能となる。
【0024】
図1を参照し、カイドレール(7)・刃物部(20)の形態を説明する。基盤(1)の上に、基準バー(5)の長手方向と平行、かつ、水平面と垂直になるようにカイドレール(7)が設置されており、ガイドレール(7)には、刃物部(20)が設置されている。刃物部(20)は、カイドレール(7)に案内されてA方向にスライドする。
【0025】
図1を参照し、刃物部(20)の形態を説明する。
刃物部(20)は、
スライダー部(8)、
スライダー部(8)に設置されるスピンドルホルダー部(9)、
スピンドルホルダー部(9)に設置されるスピンドル部(10)を備えている。
【0026】
スライダー部(8)はガイドレール(7)に設置される。
【0027】
図1・
図4・
図7を参照し、スライダー部(8)とスピンドルホルダー部(9)の形態を説明する。
図1で示しているように、スライダー部(8)とスピンドルホルダー部(9)は、アリ溝によるはめあい加工がなされおり、
図4で示しているように、面取り量調整用ツマミ(11)を回すことで、スピンドルホルダー部(9)をB方向に移動させることができる。そして、それによって、
図7で示しているように、刃物切削部(13a)がワーク稜線部(14a)に当たる面積を調整でき、面取り量を調整することが可能となる。
【0028】
図1・
図4・
図7を参照し、スピンドルホルダー部(9)とスピンドル部(10)の形態を説明する。
図1で示しているように、スピンドルホルダー部(9)とスピンドル部(10)は、アリ溝によるはめあい加工がなされており、かつ、
図4で示しているように、スピンドルホルダー部(9)はスピンドル部(10)をX°の傾斜角(図面では45°)で保持している。また、
図4で示しているように、スピンドル部スライド用ツマミ(12)を回すことで、スピンドル部(10)を、X°の傾斜角(図面では45°)を保持した状態でC方向に移動させることができる。そして、それによって、
図7で示しているように、刃物切削部(13a)を任意の位置に変更することが可能になる。現在の刃物切削部(13a)の切れ味が悪くなっても、別の個所を刃物切削部(13a)にできるため、刃物の交換期間が長くなり、経済的な負担を軽くできる。
【0029】
図4・
図7・
図8を参照し、スピンドル部(10)の形態を説明する。
図4で示しているように、スピンドル部(10)は、刃物(エンドミル)(13)とモーター(10a)を保持しており、そのモーター(10a)によって刃物(エンドミル)(13)を回転させる。エンドミルを刃物として使用するため、鉄・ステンレス・アルミ・樹脂など様々な材質のワーク(14)の面取りが可能となる。同時に、特注の刃物ではなく、市販のエンドミルを使用するため、経済的な負担を軽くできる。また、
図7・
図8で示しているように、刃物(エンドミル)(13)の底刃ではなく外周刃(13a)でワーク稜線部(14a)を削り取るため、二次カエリが発生せず、きれいな面取りが可能となる。
【0030】
図3を参照し、テーブル_刃物の逃げ(3b)・基準バー_刃物の逃げ(5b)・刃物(エンドミル)(13)の形態を説明する。テーブル_刃物の逃げ(3b)・基準バー_刃物の逃げ(5b)・刃物(エンドミル)(13)は、テーブル底面(3c)に対してX°の傾斜(図面では45°)になる。スピンドル部スライド用ツマミ(12)を回すとスピンドル部(10)がC方向にスライドするが、その際もX°の傾斜(図面では45°)でスライドするため、刃物(エンドミル)(13)の傾斜角X°(図面では45°)はきちんと保持される。テーブル_刃物の逃げ(3b)・基準バー_刃物の逃げ(5b)・刃物(エンドミル)(13)の傾斜角を同じX°(図面では45°)とすることによって、刃物(エンドミル)(13)をテーブル_刃物の逃げ(3b)と基準バー_刃物の逃げ(5b)のぎりぎりまで移動させることができる。そして、それによって、ワーク稜線部(14a)の面積が小さな薄いワーク(14)であっても、面取りすることが可能になる。
【実施例0031】
ワーク(14)をワークストッパー(4)と基準バーの基準面(5a)に押し当てた状態でテーブル上面(3a)に置く。その際、ワーク(14)は手、または、エアシリンダなどで固定する。このとき、
図9で示しているように、テーブル上面(3a)の縁部と基準バーの基準面(5a)下縁部の隙間からワーク稜線部(14a)が突き出る形になる。ワーク(14)を基準面(5a)に押し当てて固定することによって、面取り量のばらつきをなくし、面取り量の調整も正確かつ容易にできるようになる。
【0032】
ガイドレール(7)に設置された刃物部(20)をA方向(
図1)にスライドさせて面取りを行うが、刃物(エンドミル)(13)とワーク(14)の関係は
図7・
図8で示したようになる。刃物(エンドミル)(13)の外周刃に位置する刃物切削部(13a)がワーク稜線部(14a)に当たり面取りを行っていく。
上記スピンドルホルダー部は、スピンドル部を水平面に対してX°の傾斜角で保持し、かつ、その角度を保持したまま上下方向に位置を変更できる往復移動手段を有することを特徴とする請求項5乃至請求項6に記載の面取り装置。
請求項7に係る発明は、上記スピンドルホルダー部は、スピンドル部を水平面に対してX°の傾斜角で保持し、かつ、その角度を保持したまま上下方向に位置を変更できる往復移動手段を有することを特徴とする請求項5乃至請求項6に記載の面取り装置に関する。