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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133194
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】杭頭処理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
E02D5/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032160
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515331853
【氏名又は名称】株式会社グロースパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】湊 太郎
(72)【発明者】
【氏名】落合 裕正
(72)【発明者】
【氏名】村田 康平
(72)【発明者】
【氏名】岡 流聖
(72)【発明者】
【氏名】牛島 栄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 成厚
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA37
2D041CA01
2D041CB01
2D041DA03
2D041EA02
(57)【要約】
【課題】余盛部の除去を簡便にする。
【解決手段】鉄筋カゴが設置された杭孔内にコンクリート杭を形成する打設工程と、前記コンクリート杭における余盛部の硬化前に、当該余盛部に吸水材を混練する混練工程と、前記余盛部を硬化後に除去する除去工程とを含み、前記吸水材は、繊維状物質、無機物質および吸水性ポリマーの少なくとも1種を含み、前記混練工程においては、前記吸水材が繊維状物質を80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して8.5質量%以上30質量%以下になるように当該吸水材を混練し、前記吸水材が無機物質を80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して15質量%以上50質量%以下になるように当該吸水材を混練し、前記吸水材が吸水性ポリマーを80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して0.1質量%以上30質量%以下になるように当該吸水材を混練する杭頭処理方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート杭における余盛部を処理する杭頭処理方法であって、
鉄筋カゴが設置された杭孔内にコンクリート杭を形成する打設工程と、
前記コンクリート杭における余盛部の硬化前に、当該余盛部に吸水材を混練する混練工程と、
前記余盛部を硬化後に除去する除去工程とを含み、
前記吸水材は、繊維状物質、無機物質および吸水性ポリマーの少なくとも1種を含み、
前記混練工程においては、
前記吸水材が繊維状物質を80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して8.5質量%以上30質量%以下になるように当該吸水材を混練し、
前記吸水材が無機物質を80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して15質量%以上50質量%以下になるように当該吸水材を混練し、
前記吸水材が吸水性ポリマーを80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して0.1質量%以上30質量%以下になるように当該吸水材を混練する
杭頭処理方法。
【請求項2】
前記吸水材を混練せずに硬化させた余盛部の圧縮強度を100%とすると、前記混練工程後に硬化させた余盛部の圧縮強度は80%以下である
請求項1の杭頭処理方法。
【請求項3】
前記混練工程においては、
前記吸水材を噴射する複数のノズルを、前記鉄筋カゴ内における前記余盛部の内部に配置し、当該複数のノズルから噴射された吸水材が前記余盛部に混練される
請求項1または請求項2の杭頭処理方法。
【請求項4】
前記複数のノズルは、前記杭孔の径方向に沿って配列する
請求項3の杭頭処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート杭の杭頭を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築物の基礎となるコンクリート杭(いわゆる場所打ちコンクリート)が従来から提案されている。コンクリート杭は、鉄筋カゴが設置された杭孔にコンクリートを打設することにより形成される。コンクリート杭の上部(杭頭部)には土屑等の不純物が混在し、コンクリート杭の品質低下を招く。したがって、コンクリート杭は、予定する高さよりも余分に高く形成(すなわち余盛コンクリートを形成)した後に、余盛コンクリート部分を除去する杭頭処理を行うことが一般的である。
【0003】
例えば、余盛コンクリートが硬化した後に除去する杭頭処理方法が提案されている。特許文献1には、硬化後の余盛コンクリートを油圧粉砕機により分割した後に除去する方法が開示されている。特許文献2には、硬化後の余盛コンクリートをパワーショベルにより破壊して除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002‐105952号公報
【特許文献2】実開平07‐008446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特許文献1および特許文献2の技術では、硬化後の余盛コンクリートを重機等により小割する作業が必要であった。したがって、硬化後の余盛コンクリートの除去に手間がかかるという問題があった。以上の事情を考慮して、本発明では、余盛部の除去を簡便にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な態様に係る杭頭処理方法は、鉄筋カゴが設置された杭孔内にコンクリート杭を形成する打設工程と、前記コンクリート杭における余盛部の硬化前に、当該余盛部に吸水材を混練する混練工程と、前記余盛部を硬化後に除去する除去工程とを含み、前記吸水材は、繊維状物質、無機物質および吸水性ポリマーの少なくとも1種を含み、前記混練工程においては、前記吸水材が繊維状物質を80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して8.5質量%以上30質量%以下になるように当該吸水材を混練し、前記吸水材が無機物質を80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して15質量%以上50質量%以下になるように当該吸水材を混練し、前記吸水材が吸水性ポリマーを80質量%以上含む場合には、前記余盛部におけるセメント系固化材の質量に対して0.1質量%以上30質量%以下になるように当該吸水材を混練する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の好適な態様に係る杭頭処理方法によれば、余盛部の除去を簡便にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】杭頭処理方法の工程を説明する説明図である。
図2】杭頭処理方法の工程を説明する説明図である。
図3】杭頭処理方法の工程を説明する説明図である。
図4】繊維状物質を含む吸水材を相異なる量でコンクリートに混練した場合の圧縮強度比を表すグラフである。
図5】繊維状物質を含む吸水材を相異なる量でコンクリートに混練した場合の圧縮強度比を表すグラフである。
図6】無機物質を含む吸水材を相異なる量でコンクリートに混練した場合の圧縮強度比を表すグラフである。
図7】吸水性ポリマーを含む吸水材を相異なる量でコンクリートに混練した場合の圧縮強度比を表すグラフである。
図8】第1実施形態に係る混練装置の平面図である。
図9】第1実施形態に係る混練装置の側面図である。
図10】第1実施形態に係る混練装置の側面図である。
図11】第2実施形態に係る混練装置の平面図である。
図12】第3実施形態に係る混練装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図面における各部の寸法および縮尺は、実際の構成の寸法および縮尺とは適宜に相違する。以下に記載する実施の形態は、技術的に好適な種々の限定を含む。本発明の範囲は、以下に例示する実施形態には限定されない。
【0010】
[杭頭処理方法]
第1実施形態の杭頭処理方法は、コンクリート杭Pにおける余盛コンクリート部分(以下「余盛部」という)Paの除去するための方法である。余盛部Paは、コンクリート杭Pの予定する高さ(すなわち設計上の高さ)よりも上方の部分である。すなわち、コンクリート杭Pの上端部が余盛部Paである。
【0011】
図1から図3は、実施形態に係る杭頭処理方法の工程を説明する説明図である。
第1実施形態の杭頭処理方法は、工程1から工程3を含む。工程1→工程2→工程3の順番で実行される。
【0012】
以下の説明では、コンクリート杭Pの高さ方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をX方向と表記し、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向と表記する。なお、鉛直方向がZ方向であり、水平面内において相互に直交する方向がX方向(「第1方向」の例示)およびY方向(「第2方向」の例示)であるとも換言できる。
【0013】
図1の工程1(「打設工程」の例示)は、鉄筋カゴが設置された杭孔M内にコンクリート杭Pを形成する工程である。具体的には、工程1では、地盤Eを掘削することで形成された杭孔M内に鉄筋カゴRを設置した後に、杭孔Mにコンクリートを打設することでコンクリート杭Pを形成する。なお、杭孔M内には掘削面の崩壊を防ぐための鋼製のケーシングKが挿入され、ケーシングKの内側に鉄筋カゴRが設置される。鉄筋カゴRは、複数の鉄筋を杭孔Mの内周面に沿うように組み立てた構造物である。例えば、鉄筋カゴRは、杭孔Mの鉛直方向に延在する複数の鉄筋と、杭孔Mの周方向にわたり延在する複数の鉄筋とで構成される。図1から図3では、便宜的に、鉄筋カゴRを構成する一部の鉄筋を省略して図示する。
【0014】
杭孔M内にコンクリートを打設する方法には、公知の任意の技術が採用される。例えば、トレミー管Tによりコンクリートが打設される。コンクリート杭Pに使用されるコンクリートの材料には、例えば、セメント系固化材(C)、砂等の細骨材(S)、砕石等の粗骨材(G)、水(W)、および、その他の任意の材料が使用される。
【0015】
コンクリート杭Pに使用されるコンクリートに配合されるセメント系固化材は、特には限定されるものではないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、超速硬ポルトランドセメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、自硬性セメント、石灰スラグセメント、高炉セメント、高硫酸塩スラグセメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント、ポゾランセメント、アルミナセメント、ローマセメント、白セメント、マグネシアセメント、水滓セメント、カルシウムアルミネート、シリカセメント、シリカフュームセメント、ジェットセメント、エコセメント、石膏若しくは半水石膏、高炉スラグ等の潜在水硬性物質等が挙げられる。これらセメント類は、一種単独で、又はこれらから選ばれる一種又は二種以上を混合して使用することができる。
【0016】
コンクリート杭Pに使用されるコンクリートに配合される骨材は、特には限定されるものではなく、例えば、土木又は建築の分野において汎用の粗骨材若しくは細骨材又はこれらの混合物を使用することができる。細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、高炉スラグ細骨材等が挙げられる。粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、海砂利、砕石、高炉スラグ粗骨材等が挙げられる。
【0017】
コンクリート杭Pに使用されるコンクリートに配合される水は、特に限定されるものではないが、例えば、上水道水、工業用水、地下水、河川水、雨水、蒸留水、化学分析用の高純度水(超純水、純水、イオン交換水)等が挙げられる。なお、水は、セメント組成物の水和反応に悪影響を及ぼす塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の不純物を含有しないことが好ましい。
【0018】
コンクリート杭Pに使用されるコンクリートは、土木又は建築の分野において汎用のその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、例えば、AE剤、減水剤(好ましくはAE減水剤、特に高性能AE減水剤)、防水剤、耐水剤、消泡剤、養生剤、離型剤、収縮低減剤、表面美観向上剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、セルフレベリング剤、塗料、表面補修材、増粘剤、膨張剤、防錆材、無機繊維、有機繊維、有機高分子、シリカヒューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、等の各種の成分を挙げることができる。
【0019】
図2の工程2(「混練工程」の例示)は、コンクリート杭Pの余盛部Paに吸水材を混練する工程である。工程1の後、コンクリート杭Pの硬化前に工程2が実行される。吸水材は、コンクリート中の水分を吸収する物質である。吸水材の種類および添加量については後述する。具体的には、工程2では、余盛部Paへの吸水材の噴射および攪拌を実行することで、余盛部Paに吸水材を混練する。余盛部Paに吸水材の混練する方法は任意である。図2では、混練装置100が吸水材の混練に使用される。混練装置100については後述する。工程2の後にケーシングKは杭孔から抜去される。
【0020】
ここで、余盛部Paのコンクリート中に含まれる水分が吸水材に吸収されることで、例えば、以下の(1)~(3)の状態が発生する。その結果、硬化後の余盛部Paを脆弱化させることが可能である。
(1)コンクリート中のセメント系固化材の水和反応に必要な単位水量が低減することで、セメント系固化材の水和反応が抑制された状態になる。
(2)セメント系固化材の粒子の分散性が低下することで、セメント系固化材の粒子が互いに凝集する。そして、余盛コンクリートの均質性が阻害された状態になる。
(3)セメント系固化材の粒子の分散性が低下することで、セメント系固化材の粒子が互いに凝集する。そして、凝集した粒子が、粒径の大きい砂利や砂の表面に吸着する。したがって、余盛コンクリートの内部が疎な状態になる。
【0021】
工程2により吸水材が混練された余盛部Paは、硬化後に脆弱化される。具体的には、吸水材を混練せずに硬化させた余盛部の圧縮強度を100%とすると、工程2の後に硬化させた余盛部Paの圧縮強度(以下「圧縮強度比」という)は80%以下であり、好適には50%以下であり、さらに好適には20%以下である。圧縮強度比が80%以下であると、重機等を使用しなくても余盛部Paを粉砕することができる。なお、圧縮強度比の下限値は、例えば0%以上である。ただし、余盛部Paをある程度の強度まで硬化させ除去をしやすくする観点からは、1%以上が好適であり、2%以上がさらに好適である。
【0022】
なお、圧縮強度は、林齢が1日のコンクリート杭Pにおける圧縮強度である。圧縮強度の測定方法は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠する。
【0023】
図3の工程3(「除去工程」の例示)は、余盛部Paを除去する工程である。工程2の後に余盛部Paが硬化してから工程3が実行される。すなわち、工程3では、脆弱化した余盛部Pa(圧縮強度比が80%以下である余盛部Pa)が除去される。具体的には、工程3では、例えば、作業員による手作業(例えばシャベル等を利用)、または、高圧洗浄機等による高圧噴射で余盛部Paを除去する。図3では、高圧洗浄機90による高圧噴射で余盛部Paを除去する場合を例示する。すなわち、重機等を使用して小割にすることなく、余盛部Paを除去することが可能である。なお、余盛部Paを除去する方法は、作業員による手作業および高圧噴射には限定されない。
【0024】
[吸水材]
以下の説明では、工程2において余盛部Paに混練する吸水材について詳述する。第1実施形態における吸水材は、繊維状物質、無機物質および吸水性ポリマーの少なくとも1種を含む。以下の説明では、繊維状物質を含む吸水材を「繊維系吸水材」と表記し、無機物質を含む吸水材を「無機系吸水材」と表記し、吸水性ポリマーを含む吸水材を「ポリマー系吸水材」と表記する。
【0025】
(1)繊維系吸水材
繊維系吸水材に含まれる繊維状物質は、例えば自重の0.4~4倍の水分を吸水する。具体的には、繊維状物質は、例えば、ヤシ屑、リサイクル紙、古紙、もみ殻、稲藁および木屑等の天然系の繊維質を多く含む物質、または、これらの加工物である。これらの物質を粉末状にしたものが繊維状物質として好適に使用される。なお、複数種の繊維状物質を組み合わせて繊維系吸水材として使用してもよい。
【0026】
工程2では、繊維系吸水材が繊維状物質を80質量%以上含む場合には、余盛部Paにおけるセメント系固化材の質量に対して、8.5質量%以上30質量%以下、好適には9.0質量%以上20質量%以下、さらに好適には10質量%以上15質量%以下になるように繊維系吸水材を混練する。以上の配合量で繊維系吸水材を混練することで、圧縮強度比を80%以下にすることができる。
【0027】
なお、工程1で打設するコンクリートにおいて、セメント系固化材の質量に対する水の質量は、例えば、30質量%以上70質量%以下であり、好適には50質量%以上60質量%以下である。
【0028】
(2)無機系吸水材
無機系吸水材に含まれる無機物質は、例えば自重の0.4~4倍の水分を吸水する。具体的には、無機物質は、例えば、ゼオライト、フライアッシュ、焼却灰(例えばペーパースラッジ焼却灰)、パーライト、珪藻土、多層粘土鉱物の焼成物、または、半水石膏等である。これらの物質を粉末状にしたものが無機物質として好適に使用される。なお、複数種の無機物質を組み合わせて無機系吸水材として使用してもよい。
【0029】
工程2では、無機系吸水材が無機物質を80質量%以上含む場合には、余盛部Paにおけるセメント系固化材の質量に対して、15質量%以上50質量%以下、好適には18質量%以上50質量%以下、さらに好適には20質量%以上50質量%以下になるように無機系吸水材を混練する。以上の配合量で無機系吸水材を混練することで、圧縮強度比を80%以下にすることができる。
【0030】
なお、工程1で打設するコンクリートにおいて、セメント系固化材の質量に対する水の質量は、例えば、30質量%以上70質量%以下であり、好適には50質量%以上60質量%以下である。
【0031】
(3)ポリマー系吸水材
ポリマー系吸水材に含まれる吸水性ポリマーは、例えば自重の50~500倍の水分を吸水する。例えば、デンプン系、セルロース系、ポリアクリル酸系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、または、ポリオキシエチレン系等の各種のポリマーが吸水性ポリマーとして利用される。具体的には、吸水性ポリマーは、例えば、アクリル酸塩系重合体架橋物、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、デンプン-アクリル酸塩グラフト共重合体架橋物、または、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコール架橋物等である。なお、複数種の吸水性ポリマーを組み合わせてポリマー系吸水材として使用してもよい。
【0032】
工程2では、ポリマー系吸水材が吸水性ポリマーを80質量%以上含む場合には、余盛部Paにおけるセメント系固化材の質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下、好適には0.1質量%以上10質量%以下、さらに好適には1質量%以上10質量%以下になるようにポリマー系吸水材を混練する。以上の配合量でポリマー系吸水材を混練することで、圧縮強度比を80%以下にすることができる。
【0033】
なお、工程1で打設するコンクリートにおいて、セメント系固化材の質量に対する水の質量は、例えば、30質量%以上70質量%以下であり、好適には50質量%以上60質量%以下である。
【0034】
以上の説明から理解される通り、吸水材を所定の範囲内で混練させることで、余盛部を脆弱化させることが可能である。ここで、吸水材を混練せずに余盛部を除去する方法(以下「従来例1」という)では、余盛部を重機等で小割にしてから除去する必要がある。すなわち、余盛部の除去に手間がかかるという問題がある。それに対して、第1実施形態の杭頭処理方法によれば、従来例1と比較して、重機等を使用しなくても粉砕できる程度まで余盛部を脆弱化させることが可能である。したがって、作業員の手作業または高圧ジェットによる噴射で余盛部Paを除去することができる。すなわち、簡便な方法で余盛部の除去が可能になる。
【0035】
また、従来例1では、余盛部を重機等で小割にする作業の際に、振動や騒音が大きく、粉塵も発生するという問題もある。それに対して、第1実施形態によれば、重機等により小割にする作業が不要であるから、振動、騒音および粉塵を低減できるという利点もある。
【0036】
硬化前の余盛コンクリートをバキュームにより吸引して除去する方法(以下「従来例2」という)では、硬化前のコンクリートが飛散し、飛散したコンクリートの除去に手間がかかるという問題がある。それに対して、第1実施形態では、従来例2(例えば特開2003‐064670号公報)と比較して、コンクリートが飛散することもないから、余盛部の除去が簡便になる。
【0037】
ここで、コンクリートの硬化を遅延させる硬化遅延剤を余盛部に注入して、硬化後に余盛部を除去する方法(以下「従来例3」)が提案されている。従来例3(例えば特開平8-199564号公報)では、コンクリートの硬化を遅延させることで、余盛部が脆弱化され低強度層となる。しかし、従来例3では、密なコンクリート層が維持されるため、余盛部を小割する工程が別途必要となるという問題がある。具体的には、格子状の仕切り板を貫入する作業や、解体用の楔を打ち込むことで、余盛部を小割にする。それに対して、第1実施形態の杭頭処理方法によれば、上述した通り、吸水材を余盛部に混練することでセメント系固化剤が表面に付着した細骨材や粗骨材が互いに連結しただけの疎な構造体となるため、余盛部を小割する必要が無いという利点がある。すなわち、従来例3と比較して、簡便な方法で余盛部の除去が可能になる。
【0038】
また、未硬化の状態の余盛部を水で洗い流す方法(以下「従来例4」という)も提案されている。従来例4(例えば特開1983‐146621号公報)では、この場合にはセメント系固化材と骨材が分離され、所謂セメント泥水が生成される。セメント泥水は高アルカリ水であるため、そのまま公共水域に配水することが出来ず、水処理の工程が必要となるという問題がある。それに対して、第1実施形態の杭頭処理方法によれば、セメント系固化材と骨材は互いに硬結しているため、高圧噴射水などで洗った場合も、セメント系固化材と骨材が分離することない。したがって、高アルカリのセメント泥水が発生しない。ひいては、水処理の工程が不要である。すなわち、従来例4と比較して、簡便な方法で余盛部の除去が可能になる。
【実施例0039】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例は、以下の通りである。
【0040】
<材料>
セメント系固化材(C):高炉セメントB種(太平洋セメント社製)
細骨材(S):山砂(掛川産)
粗骨材(G):砕石(岩瀬産)
吸水材(X):表1の通り
水(W)
混和剤:AE減水剤・標準形(フローリック社製)
【0041】
【表1】
【0042】
<コンクリートの調整>
上記の各材料が表2~表6の配合になるようにコンクリートを調整した。具体的には、セメント系固化材(C)、細骨材(S)、粗骨材(G)、吸水材(X)、水(W)および混和剤(液体)の各質量を計量した後、まず、セメント系固化材(C)、細骨材(S)、粗骨材(G)を強制2軸ミキサーに投入して空練りを行う。その後、セメント系固化材(C)と細骨材(S)および粗骨材(G)を含む空練り物に対して、水(X)および混和剤を添加し、すべてを強制二軸ミキサーで90秒混練することでコンクリートを作製する。そして、作製したコンクリートに対し、吸水材(X)を加えて手練りする。なお、表2~表6におけるW/CおよびX/Cは、質量分率である。
【0043】
<圧縮強度の測定方法>
林齢が1日のコンクリートにおける圧縮強度を測定した。圧縮強度の測定方法は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠する。表2~表6における実施例の圧縮強度比は、各表における比較例に係る圧縮強度を100としたときの強度比(1日林齢同士の強度比)である。なお、各表における比較例は、吸水材が配合されないこと以外は、当該表内の実施例と同様の条件で製造された。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
図4は、表3における実施例および比較例の圧縮強度比を表すグラフであり、図5は、表4における実施例および比較例の圧縮強度比を表すグラフである。表2~表4および図4,図5から把握される通り、吸水材(X)が繊維状物質を80質量%以上含む繊維系吸水材である場合には、吸水材(X)の配合量がセメント系固化材(C)の質量に対して8.5質量%以上30質量%以下の範囲内にあると、圧縮強度比が80%以下になる。すなわち、コンクリートが重機等を使用しなくても粉砕できる程度まで脆弱化されたことが確認できた。
【0050】
図6は、表5における実施例および比較例の圧縮強度比を表すグラフである。表2,表5および図6から把握される通り、吸水材(X)が無機物質を80質量%以上含む無機系吸水材である場合には、吸水材(X)の配合量が15質量%以上50質量%以下の範囲内にあると、圧縮強度比が80%以下になる。すなわち、コンクリートが重機等を使用しなくても粉砕できる程度まで脆弱化されたことが確認できた。
【0051】
図7は、表6における実施例および比較例の圧縮強度比を表すグラフである。表2,表6および図7から把握される通り、吸水材(X)が吸水性ポリマーを80質量%以上含むポリマー系吸水材である場合には、吸水材(X)の配合量が0.1質量%以上30質量%以下の範囲内にあると、圧縮強度比が80%以下になる。すなわち、コンクリートが重機等を使用しなくても粉砕できる程度まで脆弱化されたことが確認できた。
【0052】
[混練装置]
以下の説明では、工程2で使用される混練装置100の一例について詳述する
【0053】

図2には、第1実施形態に係る混練装置100を例示する概略図が図示されている。混練装置100は、建築物の基礎となるコンクリート杭P(硬化前)に添加材を混練するための装置である。コンクリート杭Pは、例えば、地盤Eを掘削することで形成された杭孔M内に鉄筋カゴRを設置した後に、杭孔Mにコンクリートを打設することで形成される。なお、杭孔M内には掘削面の崩壊を防ぐための鋼製のケーシングKが挿入され、ケーシングKの内側に鉄筋カゴRが設置される。鉄筋カゴRは、複数の鉄筋を杭孔Mの内周面に沿うように組み立てた構造物である。例えば、鉄筋カゴRは、杭孔Mの鉛直方向に延在する複数の鉄筋と、杭孔Mの周方向にわたり延在する複数の鉄筋とで構成される。なお、図1では、便宜的に、鉄筋カゴRを構成する一部の鉄筋を省略して図示する。
【0054】
第1実施形態では、コンクリート杭Pにおける余盛コンクリート部分(以下「余盛部」という)Paの除去を容易にするために、硬化前の余盛部Paに添加材を混練する場合を例示する。余盛部Paは、コンクリート杭Pの予定する高さ(すなわち設計上の高さ)よりも上方の部分である。すなわち、コンクリート杭Pの上端部が余盛部Paである。
【0055】
以下の説明では、コンクリート杭Pの高さ方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をX方向と表記し、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向と表記する。なお、鉛直方向がZ方向であり、水平面内において相互に直交する方向がX方向(「第1方向」の例示)およびY方向(「第2方向」の例示)であるとも換言できる。
【0056】
図1に例示される通り、第1実施形態の混練装置100は、回転軸20と噴射部材30と攪拌機構40と駆動装置50とを具備する。噴射部材30と攪拌機構40とが硬化前の余盛部Pa内に配置された状態で混練装置100は使用される。
【0057】
図8は、Z方向の正側(上方)からみたときの混練装置100の平面図であり、図9はY方向の正側からみたときの混練装置100の側面図であり、図10はX方向の正側からみたときの混練装置100の側面図である。なお、図8から図10では、制御機構の図示は便宜的に省略する。
【0058】
図8から図10に例示される通り、回転軸20は、Z方向に沿って延在する長尺状の部材である。回転軸20には、噴射部材30と攪拌機構40とが接続される。回転軸20は、駆動装置50(例えばモーター)により回転する。したがって、回転軸20に接続された噴射部材30および攪拌機構40が回転軸20を中心に回転する。
【0059】
回転軸20は、例えば筒状の部材であり、内部に供給路21を有する。供給路21は、添加材を供給するための流路である。具体的には、供給路21は、回転軸20におけるZ方向の正側の端部(上端)から噴射部材30が接続される位置にかけて形成される。例えば、供給路21の上端にチューブ(図示略)を連結し、ポンプ等を使用して当該チューブから供給路21に添加材を送出する。
【0060】
噴射部材30は、供給路21を介して供給された添加材を余盛部Paに噴射するための部材である。具体的には、噴射部材30は、X方向に沿って延在する長尺状の部材である。第1実施形態では、混練装置100が2個の噴射部材30を具備する。2個の噴射部材30は、回転軸20を挟んで相互に反対側に位置する。すなわち、2個の噴射部材30が直線状に位置する。一方の攪拌機構40を回転軸20を中心に180度回転させると他方の攪拌機構40に重なるとも換言できる。回転軸20のうち供給路21の下端(Z方向の負側の端部)に対応する位置に噴射部材30が接続される。噴射部材30における一端が回転軸20に接続される。
【0061】
図8および図9に例示される通り、噴射部材30は、例えば筒状の部材であり、内部に分岐路31を有する。分岐路31は、供給路21に連通する流路である。具体的には、分岐路31は、噴射部材30における回転軸20側の一端から他端に向かい形成される。
【0062】
また、噴射部材30は、分岐路31から供給された添加材を噴射する複数のノズル32を有する。各ノズル32は、供給路21から噴射部材30の表面にかけて形成される。複数のノズル32は、X方向(すなわち噴射部材30が延在する方向)に沿って所定の間隔で形成される。複数のノズル32が杭孔Mの径方向に沿って配列するとも換言できる。ノズル32が形成される間隔(相互に隣り合う2つのノズル32の中心軸間の距離)T1は、例えば15mm以上30mm以下である。ノズル径(直径)は、例えば1mm以上10mm以下である。なお、図8および図9では、6個のノズル32が形成される構成を例示したが、ノズル32の個数は以上の例示に限定されない。
【0063】
第1実施形態では、各ノズル32の中心軸が相互に平行になるように複数のノズル32が形成される。具体的には、各ノズル32は、中心軸がXY平面(すなわち水平面)に平行な方向に沿うように配置される。すなわち、複数のノズル32は、水平面に平行な方向に添加材を噴射する。攪拌機構40が回転する方向に沿うように各ノズル32が添加材を噴射するとも換言できる。
【0064】
図8に例示される通り、一方の噴射部材30と他方の噴射部材30とでは、ノズル32の噴射する方向が相互に反対側である。図8では、ノズル32の噴射する方向が、回転軸20が回転する方向(すなわち噴射部材30が移動する方向)とは反対側の場合を例示する。ただし、ノズル32の噴射する方向が、回転軸20が回転する方向と同じ方向でもよい。
【0065】
図8から図10に例示される通り、攪拌機構40は、噴射部材30が噴射する添加材を余盛部Paに攪拌するための機構である。第1実施形態では、混練装置100が2個の攪拌機構40を具備する。2個の攪拌機構40は、回転軸20を挟んで相互に反対側に位置する。すなわち、2個の攪拌機構40が直線状に位置する。一方の攪拌機構40を回転軸20を中心に180度回転させると他方の攪拌機構40に重なるとも換言できる。各攪拌機構40は、支持部材41と複数の攪拌翼42とを具備する。第1実施形態では、各攪拌機構40が3個の攪拌翼42を具備する構成を例示する。だたし、攪拌機構40が具備する攪拌翼42の個数は任意である。
【0066】
図8および図10に例示される通り、支持部材41は、複数の攪拌翼42を支持するための部材である。具体的には、支持部材41は、Y方向に沿って延在する長尺状の部材である。支持部材41における一端が回転軸20に接続される。図10に例示される通り、第1実施形態の支持部材41は、第1支持部材41aと第2支持部材41bとを含む。第1支持部材41aと第2支持部材41bとは、回転軸20におけるZ方向における相異なる位置に接続される。具体的には、第1支持部材41aと第2支持部材41bとは、Z方向において噴射部材30を挟んで相互に反対側に位置する。すなわち、回転軸20における第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間に噴射部材30が位置する。
【0067】
攪拌翼42は、Z方向を含む面(すなわち鉛直面)に平行な板状の部材である。攪拌翼42の一端(Z方向における正側の端部)が第1支持部材41aに接続され、攪拌翼42の他端(Z方向における負側の端部)が第2支持部材41bに接続される。すなわち、第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間にわたり攪拌翼42が延在する。
【0068】
図8に例示される通り、各攪拌機構40における複数の攪拌翼42は、所定の間隔T2で支持部材41に設けられる。攪拌翼42が設けられる間隔T2(相互に隣り合う2つの攪拌翼42における対抗する面の間の最短距離)は、例えば20mm以上40mm以下である。以上の説明から理解される通り、杭孔Mの径方向にわたり間隔を開けて攪拌翼42が設けられる。
【0069】
攪拌翼42は、Z方向からみて、Y方向(すなわち支持部材41が延在する方向)に対して角度θをなすように支持部材41に設けられる。角度θは、攪拌翼42における支持部材41に交差する面と、Y方向とがなす角度である。第1実施形態の角度θは、90度以外の角度である。角度θは、例えば60度以上80度以下である。なお、一方の攪拌機構40の攪拌翼42と他方の攪拌機構40の攪拌翼42とは相互に平行になるように設けられる。
【0070】
以上の説明から理解される通り、工程2においては、吸水材を噴射する複数のノズル32を、鉄筋カゴR内における余盛部Paの内部に配置し、当該複数のノズル32から噴射された吸水材が余盛部Paに混練される。
【0071】
以上に説明した混練装置100において、回転軸20が回転すると、噴射部材30による添加材の添加と攪拌機構40による攪拌とが並行して行われる。その結果、余盛部Paに添加材が混練される。なお、回転軸20と噴射部材30と攪拌機構40との大きさは、杭孔Mの大きさに応じて適宜に変更し得る。
【0072】
吸水材が混練された余盛部Paは、硬化後に脆弱化するからで、除去する処理が容易になる。例えば、余盛部Paが脆弱化されていない場合は、重機等を利用して余盛部Paを小割にした後に除去する必要がある。一方で、吸水材が混練された余盛部Paは、小割にすることなく除去が可能である。例えば、作業員の手作業や高圧ジェットで破砕するだけで余盛部Paの除去ができる。
【0073】
ここで、回転軸から杭孔Mの径方向にわたり連続して延在する1つの攪拌翼を混練装置が具備する構成(以下「比較例」という)を想定する。比較例では、攪拌機構が回転すると、コンクリート中に含まれる粗骨材が攪拌翼に衝突して、周囲に飛散する。その結果、粗骨材が鉄筋カゴRに衝突して、鉄筋カゴRが破損する恐れがある。鉄筋カゴRが破損するとコンクリート杭Pの強度の低下を招く。
【0074】
それに対して、第1実施形態では、杭孔Mの径方向にわたり間隔を開けて攪拌翼42が設けられるから、攪拌機構40が回転しても、コンクリート中の粗骨材が攪拌翼42の間隔を通過する。したがって、比較例と比較して、粗骨材が攪拌翼42に衝突して飛散する可能性を低減することができる。ひいては、鉄筋カゴRの損傷によるコンクリート杭Pの強度低下を防止することができる。
【0075】
また、比較例では、攪拌翼に粗骨材が接触することで攪拌機構の攪拌が阻害されるという問題もある。一方で、第1実施形態によれば、攪拌翼42の間隔T2から粗骨材が通過するから、粗骨材により攪拌機構40の攪拌が阻害されることを防止することができる。ひいては、添加材をコンクリート杭Pに十分に攪拌することができる。第1実施形態では、特に、複数の攪拌翼42が設けられる間隔T2が20mm以上40mm以下であるから、20mmより大きく40mmより小さい粗骨材を間隔T2から通過させることができる。
【0076】
さらには、比較例では、コンクリートに接触する面積が大きく(すなわちコンクリートによる抵抗が大きく)、攪拌機構の回転がコンクリートにより妨げられる。それに対して、複数の攪拌翼42が間隔をあけて設けられる第1実施形態の構成によれば、比較例と比較して、コンクリートに接触する面積が小さいから(コンクリートによる抵抗が小さいから)、攪拌機構40が円滑に回転する。すなわち、添加材をコンクリートに効率的に混練することができる。
【0077】
第1実施形態では、攪拌翼42がY方向(支持部材41が延在する方向)に対して60度以上80度以下の角度θをなすように支持部材41が設けられるから、例えば角度θが90度である構成(攪拌翼42が支持部材41に直交する構成)や角度θが0度である構成(攪拌翼42が支持部材41に平行な構成)と比較して、コンクリートを杭孔Mの中心から外側に向けて流動させることが可能になる。したがって、余盛部Paにおける径方向の全体にわたり均一に添加材を混練することが可能になる。特に、余盛部Paのうち攪拌翼42が届かない鉄筋カゴRの外側にも添加材を混練することができるという利点がある。ただし、本発明において攪拌翼42の角度θは60度以上80度以下の角度には限定されない。
【0078】
回転軸20における第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間に噴射部材30が位置する第1実施形態の構成によれば、例えば第1支持部材41aよりも上方や第2支持部材41bよりも下方に噴射部材30が位置する構成と比較して、噴射部材30により噴射された添加材を効率的にコンクリートに攪拌することができる。ただし、本発明には、第1支持部材41aよりも上方や第2支持部材41bよりも下方に噴射部材30が位置する構成も包含される。
【0079】
第1実施形態では、複数のノズル32がX方向(すなわち杭孔Mの径方向)に沿って所定の間隔T1で形成されるから、余盛部Paの径方向にわたり添加材を均一に噴射することができる。ただし、本発明において複数のノズル32がX方向に沿って所定の間隔T1で形成されることは必須ではない。
【0080】
また、各ノズル32が水平面に平行な方向に添加材を噴射する第1実施形態の構成によれば、例えば、ノズル32が鉛直面に平行な方向(Z方向の正側または負側)に添加材を噴射する構成と比較して、余盛部Paの周方向に沿って添加材を効率的に噴射することができる。ただし、本発明には、ノズル32が鉛直面に平行な方向(Z方向の正側または負側)に添加材を噴射する構成も包含される。
【0081】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0082】
杭孔Mの径の大きさは、建築物の種類や大きさ等に応じて適宜に変更し得る。そこで、第2実施形態では、杭孔Mの径の大きさに応じて噴射部材30および攪拌機構40の大きさ(杭孔Mの径方向における長さ)を調整できる構成を例示する。
【0083】
図11は、第2実施形態に係る混練装置100の平面図である。図11に例示される通り、各噴射部材30は、第1部分301と第2部分302とに区分される。第1部分301は、噴射部材30のうち回転軸20に接続される部分である。一方で、第2部分302は、噴射部材30のうち第1部分301における回転軸20とは反対側の端部に接続される部分である。第2部分302は、第1部分301に着脱可能に接続される。第2部分302は、杭孔Mの径の大きさに応じて適宜に取り外しまたは取り付けがされる。以上の説明から理解される通り、噴射部材30は伸縮可能である。
【0084】
なお、第2部分302を第1部分301に着脱するための構成は任意である。例えば、第1部分301における端部の外周と、第2部分302における端部の内周とに相互に嵌合するネジ溝を設けてもよい。また、第1部分301と第2部分302とをジョイント等の接続部材を使用して接続してもよい。
【0085】
各攪拌機構40は、第1部分401と第2部分402とに区分される。第1部分401は、攪拌機構40のうち回転軸20に接続される部分である。一方で、第2部分402は、攪拌機構40のうち第1部分401における回転軸20とは反対側の端部に接続される部分である。第2部分402は、第1部分401に着脱可能に接続される。第2部分402は、杭孔Mの径の大きさに応じて適宜に取り外しまたは取り付けがされる。以上の説明から理解される通り、攪拌機構40は伸縮可能である。
【0086】
なお、第2部分402を第1部分401に着脱するための構成は任意である。例えば、第1部分401のうち支持部材41(第1支持部材41aおよび第2支持部材41b)における端部の外周と、第2部分302のうち支持部材41(第1支持部材41aおよび第2支持部材41b)における端部の内周とに相互に嵌合するネジ溝を設けてもよい。また、第1部分401の支持部材41と第2部分402の支持部材41とをジョイント等の接続部材を使用して接続してもよい。
【0087】
以上の説明から理解される通り、第2実施形態では、噴射部材30および攪拌機構40が杭孔Mの径方向において伸縮可能である。したがって、杭孔Mの径の大きさに応じて、噴射機構および攪拌機構40の大きさを適切に調整できるという利点がある。
【0088】
なお、第2実施形態では、噴射部材30および攪拌機構40の双方が伸縮可能な構成を例示したが、噴射部材30および攪拌機構40の少なくとも一方が伸縮可能であればよい。また、噴射部材30の第2部分302の個数および長さと、攪拌機構40における第2部分402の個数および長さとは任意である。
【0089】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態に係る混練装置100の側面図(Y方向の正側からみたときの側面図)である。図12に例示される通り、第3実施形態の混練装置100は、回転軸20の相互に相異なる位置に噴射部材30を具備する。
【0090】
具体的には、回転軸20における第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間の3つの異なる場所(以下「設置位置」という)に噴射部材30が接続される。各設置位置はZ方向における位置が相違する。回転軸20の各設置位置において当該回転軸20を挟んで相互に反対側に2個の噴射部材30が接続される。すなわち、図12では、6個の噴射部材30が回転軸20に接続される。
【0091】
以上の説明から理解される通り、第3実施形態では、回転軸20におけるZ方向の異なる位置に噴射部材30が設けられるから、余盛部Paの高さ方向に沿って添加材を噴射することが可能になる。ひいては、余盛部Paの高さ方向においても添加材を均一に混練することができる。
【0092】
なお、図12では、6つの噴射部材30がX方向に沿うように設けられる構成を例示したが、例えば、設置位置毎に噴射部材30が延在する方向を相違させてもよい。また、図12では、3つの設置位置を設ける構成を例示したが、設置位置は3つに限定されない。例えば、設置位置は、2つでも4つ以上でもよい。なお、第1実施形態および第2実施形態は設置位置が1つの構成である。
【0093】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0094】
(1)前述の各形態では、各噴射部材30における複数のノズル32が直線状に位置する構成(すなわち噴射方向が同じである構成)を例示したが構成を例示したが、各噴射部材30において複数のノズル32が直線状に位置することは必須ではない。例えば、Z方向からの平面視において、噴射部材30の複数のノズル32が交互に反対側に位置するよう構成も採用され得る。
【0095】
(2)前述の各形態では、噴射部材30と支持部材41とが相互に直交する方向(X方向およびY方向)に延在する構成を例示したが、噴射部材30と支持部材41とは水平面内において相互に交差する方向に延在すれば直交する方向に延在しなくてもよい。例えば、噴射部材30が延在する方向(第1方向の例示)に対して70度をなす方向(第2方向の例示)に支持部材41が延在するように配置してもよい。また、噴射部材30と支持部材41とが相互に同じ方向に延在する構成(第1方向と第2方向とが同じである構成)も想定される。具体的には、回転軸20を挟んで噴射部材30と支持部材41とが反対側に位置する。なお、第1方向は噴射部材30が延在する方向であり、第2方向は支持部材41が延在する方向である。
【0096】
(3)前述の各形態では、攪拌機構40の複数の攪拌翼42おいて角度θを同じ角度に設定したが、攪拌機構40の各攪拌翼42における角度θを相違させてもよい。また、前述の各形態では、角度θを90度以外に設定したが、本発明において角度θが90度である構成は除外されない。
【0097】
(4)前述の各形態では、攪拌機構40の支持部材41が第1支持部材41aと第2支持部材41bとを含む構成を例示したが、支持部材41の構成は以上の例示に限定されない。例えば、1つの支持部材41で複数の攪拌翼42を支持する構成も採用され得る。
【0098】
(5)前述の各形態では、混練装置100が2個の攪拌機構40を具備する構成を例示したが、混練装置100が具備する攪拌機構40の個数は以上の例示に限定されない。同様に、混練装置100が2個以上の噴射部材30を具備する構成を例示したが、混練装置100が具備する噴射部材30の個数は以上の例示に限定されない。
【0099】
(6)前述の各形態では、2個の攪拌機構40が回転軸20を挟んで相互に反対側に位置する構成(2個の攪拌機構がなす角度が180度である構成)を例示したが、2個の攪拌機構40がなす角度は180度には限定されない。また、複数の攪拌機構40においてZ方向の位置を相違させて回転軸20に接続してもよい。同様に、2個の噴射部材30がなす角度も180度には限定されない。また、複数の噴射部材30においてZ方向の位置を相違させて回転軸20に接続してもよい。
【0100】
(7)前述の各形態では、添加材として吸水材を例示したが、添加材は吸水材に例示されない。例えば、コンクリートの固化を遅延する遅延剤、コンクリートの強度が発現するのを抑止する抑止剤、または、起泡剤や発泡剤を添加材として使用してもよい。すなわち、打設したコンクリート杭に混練するための各種の物質が添加材として例示される。
【0101】
(8)前述の各形態では、硬化前の余盛部Paに添加材を混練する場合を例示したが、本発明における混練装置100は、硬化前のコンクリート杭Pにおける任意の位置に添加材を混練する場合に使用され得る。
【符号の説明】
【0102】
100 :混練装置
20 :回転軸
21 :供給路
30 :噴射部材
31 :分岐路
32 :ノズル
40 :攪拌機構
41 :支持部材
41a :第1支持部材
41b :第2支持部材
42 :攪拌翼
50 :駆動装置
K :ケーシング
M :杭孔
P :コンクリート杭
Pa :余盛部
R :鉄筋カゴ
T :トレミー管



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12