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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133195
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】混練装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
E02D5/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032161
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】湊 太郎
(72)【発明者】
【氏名】落合 裕正
(72)【発明者】
【氏名】村田 康平
(72)【発明者】
【氏名】岡 流聖
(72)【発明者】
【氏名】牛島 栄
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA37
2D041CA01
2D041CB01
2D041DA03
2D041EA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化前のコンクリート杭に添加材を混練する際に、粗骨材が攪拌翼に衝突して飛散する可能性を低減する。
【解決手段】硬化前のコンクリート杭に添加材を混練するための混練装置100であって、鉛直方向に沿って延在し、添加材を供給するための供給路を有する回転軸20と、一端が回転軸20に接続され、水平面内における第1方向に沿って延在する部材であって、前記供給路に連通する分岐路と、当該分岐路から供給された添加材を噴射する複数のノズルとを有する1以上の噴射部材30と、一端が回転軸20に接続され、水平面内における第2方向に沿って延在する支持部材と、前記第2方向に沿って所定の間隔で前記支持部材に設けられる板状の複数の攪拌翼とを含む1以上の攪拌機構40とを具備する混練装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化前のコンクリート杭に添加材を混練するための混練装置であって、
鉛直方向に沿って延在し、添加材を供給するための供給路を有する回転軸と、
一端が前記回転軸に接続され、水平面内における第1方向に沿って延在する部材であって、前記供給路に連通する分岐路と、当該分岐路から供給された添加材を噴射する複数のノズルとを有する1以上の噴射部材と、
一端が前記回転軸に接続され、水平面内における第2方向に沿って延在する支持部材と、前記第2方向に沿って所定の間隔で前記支持部材に設けられる板状の複数の攪拌翼とを含む1以上の攪拌機構と
を具備する混練装置。
【請求項2】
前記複数の攪拌翼の各々は、鉛直方向からみて、前記第2方向に対して60度以上80度以下の角度をなすように、前記支持部材に設けられる
請求項1の混練装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記回転軸において鉛直方向における相異なる位置に接続される第1支持部材および第2支持部材を含み、
前記攪拌翼における一端が前記第1支持部材に接続され、当該攪拌翼における他端が前記第2支持部材に接続される
請求項1または請求項2の混練装置。
【請求項4】
前記噴射部材は、前記回転軸における前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に位置する
請求項3の混練装置。
【請求項5】
前記複数の攪拌翼が設けられる間隔は、20mm以上40mm以下である
請求項1から請求項4の混練装置。
【請求項6】
前記複数のノズルは、前記第1方向に沿って所定の間隔で形成される
請求項1から請求項5の何れかの混練装置。
【請求項7】
前記複数のノズルは、水平面に平行な方向に前記添加材を噴射する
請求項1から請求項6の何れかの混練装置。
【請求項8】
前記回転軸を挟んで相互に反対側に位置する2個の前記噴射部材を含み、
前記回転軸を挟んで相互に反対側に位置する2個の前記攪拌機構を含む
請求項1から請求項7の何れかの混練装置。
【請求項9】
前記第2方向は、前記第1方向に直交する方向である
請求項8の混練装置。
【請求項10】
前記噴射部材および前記攪拌機構の少なくとも一方は、伸縮可能である
請求項1から請求項9の何れかの混練装置。
【請求項11】
前記添加材は、吸水材である
請求項1から請求項10の何れかの混練装置。
【請求項12】
前記回転軸を回転させる駆動装置を具備する
請求項1から請求項11の何れかの混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化前のコンクリート杭に添加材を混練する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築物の基礎となるコンクリート杭(いわゆる場所打ちコンクリート)が従来から提案されている。コンクリート杭は、鉄筋カゴが設置された杭孔にコンクリートを打設することにより形成される。コンクリート杭の上部(杭頭部)には土屑等の不純物が混在し、コンクリート杭の品質低下を招く。したがって、コンクリート杭は、予定する高さよりも余分に高く形成(すなわち余盛コンクリートを形成)した後に、余盛コンクリート部分を除去する杭頭処理を行うことが一般的である。
【0003】
例えば、余盛コンクリートが硬化した後に除去する杭頭処理方法が提案されている。特許文献1には、硬化後の余盛コンクリートを油圧粉砕機により分割した後に除去する方法が開示されている。また、特許文献2には、硬化後の余盛コンクリートをパワーショベルにより破壊して除去する方法が開示されている。しかし、特許文献1および特許文献2の技術では、振動や騒音が大きく、粉塵も発生するという問題があった。
【0004】
一方で、余盛コンクリートが硬化する前に除去する杭頭処理方法も提案されている。例えば、特許文献3には、硬化前の余盛コンクリートをバキュームにより吸引して除去する方法が開示されている。しかし、特許文献3の技術では、振動、騒音および粉塵を低減できるものの、硬化前のコンクリートが飛散し、飛散したコンクリートの除去に手間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、余盛コンクリートにおける強度を低下させることで除去を容易にする杭頭処理方法が提案されている。例えば、特許文献4には、コンクリート杭の打設後に余盛コンクリートにセメントの強度を低下させる処理剤を注入し、硬化後に余盛コンクリートを除去する。具体的には、処理剤を噴出する1個のノズルと攪拌用の複数の羽根とを具備する攪拌機により余盛コンクリートに処理剤が注入される。各羽根は、余盛コンクリートの径方向にわたり連続する板状の1つの部材で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-105952号公報
【特許文献2】実開平07-008446号公報
【特許文献3】特開2003-064670号公報
【特許文献4】特開平11-193524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献4の技術では、攪拌用の羽根が回転すると、コンクリート中に含まれる砕石等の粗骨材が羽根に衝突する。羽根に衝突した粗骨材は、周囲に飛散し、鉄筋カゴに接触する恐れがある。その結果、鉄筋カゴを構成する鉄筋が破損し、コンクリート杭の強度の低下を招く恐れがある。以上の事情を考慮して、本発明では、硬化前のコンクリート杭に添加材を混練する際に、粗骨材が攪拌翼に衝突して飛散する可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の好適な態様に係る混練装置は、硬化前のコンクリート杭に添加材を混練するための混練装置であって、鉛直方向に沿って延在し、添加材を供給するための供給路を有する回転軸と、一端が前記回転軸に接続され、水平面内における第1方向に沿って延在する部材であって、前記供給路に連通する分岐路と、当該分岐路から供給された添加材を噴射する複数のノズルとを有する1以上の噴射部材と、一端が前記回転軸に接続され、水平面内における第2方向に沿って延在する支持部材と、前記第2方向に沿って所定の間隔で前記支持部材に設けられる板状の複数の攪拌翼とを含む1以上の攪拌機構とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の好適な態様に係る混練装置によれば、硬化前のコンクリート杭に添加材を混練する際に、粗骨材が攪拌翼に衝突して飛散する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る混練装置の概略図である。
図2】混練装置の平面図である。
図3】混練装置の側面図である。
図4】混練装置の側面図である。
図5】第2実施形態に係る混練装置の平面図である。
図6】第3実施形態に係る混練装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図面における各部の寸法および縮尺は、実際の構成の寸法および縮尺とは適宜に相違する。以下に記載する実施の形態は、技術的に好適な種々の限定を含む。本発明の範囲は、以下に例示する実施形態には限定されない。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る混練装置100を例示する概略図である。混練装置100は、建築物の基礎となるコンクリート杭P(硬化前)に添加材を混練するための装置である。コンクリート杭Pは、例えば、地盤Eを掘削することで形成された杭孔M内に鉄筋カゴRを設置した後に、杭孔Mにコンクリートを打設することで形成される。なお、杭孔M内には掘削面の崩壊を防ぐための鋼製のケーシングKが挿入され、ケーシングKの内側に鉄筋カゴRが設置される。鉄筋カゴRは、複数の鉄筋を杭孔Mの内周面に沿うように組み立てた構造物である。例えば、鉄筋カゴRは、杭孔Mの鉛直方向に延在する複数の鉄筋と、杭孔Mの周方向にわたり延在する複数の鉄筋とで構成される。なお、図1では、便宜的に、鉄筋カゴRを構成する一部の鉄筋を省略して図示する。
【0013】
第1実施形態では、コンクリート杭Pにおける余盛コンクリート部分(以下「余盛部」という)Paの除去を容易にするために、硬化前の余盛部Paに添加材を混練する場合を例示する。余盛部Paは、コンクリート杭Pの予定する高さ(すなわち設計上の高さ)よりも上方の部分である。すなわち、コンクリート杭Pの上端部が余盛部Paである。
【0014】
以下の説明では、コンクリート杭Pの高さ方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をX方向と表記し、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向と表記する。なお、鉛直方向がZ方向であり、水平面内において相互に直交する方向がX方向(「第1方向」の例示)およびY方向(「第2方向」の例示)であるとも換言できる。
【0015】
図1に例示される通り、第1実施形態の混練装置100は、回転軸20と噴射部材30と攪拌機構40と駆動装置50とを具備する。噴射部材30と攪拌機構40とが硬化前の余盛部Pa内に配置された状態で混練装置100は使用される。
【0016】
図2は、Z方向の正側(上方)からみたときの混練装置100の平面図であり、図3はY方向の正側からみたときの混練装置100の側面図であり、図4はX方向の正側からみたときの混練装置100の側面図である。なお、図2から図4では、制御機構の図示は便宜的に省略する。
【0017】
図2から図4に例示される通り、回転軸20は、Z方向に沿って延在する長尺状の部材である。回転軸20には、噴射部材30と攪拌機構40とが接続される。回転軸20は、駆動装置50(例えばモーター)により回転する。したがって、回転軸20に接続された噴射部材30および攪拌機構40が回転軸20を中心に回転する。
【0018】
回転軸20は、例えば筒状の部材であり、内部に供給路21を有する。供給路21は、添加材を供給するための流路である。具体的には、供給路21は、回転軸20におけるZ方向の正側の端部(上端)から噴射部材30が接続される位置にかけて形成される。例えば、供給路21の上端にチューブ(図示略)を連結し、ポンプ等を使用して当該チューブから供給路21に添加材を送出する。
【0019】
噴射部材30は、供給路21を介して供給された添加材を余盛部Paに噴射するための部材である。具体的には、噴射部材30は、X方向に沿って延在する長尺状の部材である。第1実施形態では、混練装置100が2個の噴射部材30を具備する。2個の噴射部材30は、回転軸20を挟んで相互に反対側に位置する。すなわち、2個の噴射部材30が直線状に位置する。一方の攪拌機構40を回転軸20を中心に180度回転させると他方の攪拌機構40に重なるとも換言できる。回転軸20のうち供給路21の下端(Z方向の負側の端部)に対応する位置に噴射部材30が接続される。噴射部材30における一端が回転軸20に接続される。
【0020】
図2および図3に例示される通り、噴射部材30は、例えば筒状の部材であり、内部に分岐路31を有する。分岐路31は、供給路21に連通する流路である。具体的には、分岐路31は、噴射部材30における回転軸20側の一端から他端に向かい形成される。
【0021】
また、噴射部材30は、分岐路31から供給された添加材を噴射する複数のノズル32を有する。各ノズル32は、供給路21から噴射部材30の表面にかけて形成される。複数のノズル32は、X方向(すなわち噴射部材30が延在する方向)に沿って所定の間隔で形成される。複数のノズル32が杭孔Mの径方向に沿って配列するとも換言できる。ノズル32が形成される間隔(相互に隣り合う2つのノズル32の中心軸間の距離)T1は、例えば15mm以上30mm以下である。ノズル径(直径)は、例えば1mm以上10mm以下である。なお、図2および図3では、6個のノズル32が形成される構成を例示したが、ノズル32の個数は以上の例示に限定されない。
【0022】
第1実施形態では、各ノズル32の中心軸が相互に平行になるように複数のノズル32が形成される。具体的には、各ノズル32は、中心軸がXY平面(すなわち水平面)に平行な方向に沿うように配置される。すなわち、複数のノズル32は、水平面に平行な方向に添加材を噴射する。攪拌機構40が回転する方向に沿うように各ノズル32が添加材を噴射するとも換言できる。
【0023】
図2に例示される通り、一方の噴射部材30と他方の噴射部材30とでは、ノズル32の噴射する方向が相互に反対側である。図2では、ノズル32の噴射する方向が、回転軸20が回転する方向(すなわち噴射部材30が移動する方向)とは反対側の場合を例示する。ただし、ノズル32の噴射する方向が、回転軸20が回転する方向と同じ方向でもよい。
【0024】
図2から図4に例示される通り、攪拌機構40は、噴射部材30が噴射する添加材を余盛部Paに攪拌するための機構である。第1実施形態では、混練装置100が2個の攪拌機構40を具備する。2個の攪拌機構40は、回転軸20を挟んで相互に反対側に位置する。すなわち、2個の攪拌機構40が直線状に位置する。一方の攪拌機構40を回転軸20を中心に180度回転させると他方の攪拌機構40に重なるとも換言できる。各攪拌機構40は、支持部材41と複数の攪拌翼42とを具備する。第1実施形態では、各攪拌機構40が3個の攪拌翼42を具備する構成を例示する。だたし、攪拌機構40が具備する攪拌翼42の個数は任意である。
【0025】
図2および図4に例示される通り、支持部材41は、複数の攪拌翼42を支持するための部材である。具体的には、支持部材41は、Y方向に沿って延在する長尺状の部材である。支持部材41における一端が回転軸20に接続される。図4に例示される通り、第1実施形態の支持部材41は、第1支持部材41aと第2支持部材41bとを含む。第1支持部材41aと第2支持部材41bとは、回転軸20におけるZ方向における相異なる位置に接続される。具体的には、第1支持部材41aと第2支持部材41bとは、Z方向において噴射部材30を挟んで相互に反対側に位置する。すなわち、回転軸20における第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間に噴射部材30が位置する。
【0026】
攪拌翼42は、Z方向を含む面(すなわち鉛直面)に平行な板状の部材である。攪拌翼42の一端(Z方向における正側の端部)が第1支持部材41aに接続され、攪拌翼42の他端(Z方向における負側の端部)が第2支持部材41bに接続される。すなわち、第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間にわたり攪拌翼42が延在する。
【0027】
図2に例示される通り、各攪拌機構40における複数の攪拌翼42は、所定の間隔T2で支持部材41に設けられる。攪拌翼42が設けられる間隔T2(相互に隣り合う2つの攪拌翼42における対抗する面の間の最短距離)は、例えば20mm以上40mm以下である。以上の説明から理解される通り、杭孔Mの径方向にわたり間隔を開けて攪拌翼42が設けられる。
【0028】
攪拌翼42は、Z方向からみて、Y方向(すなわち支持部材41が延在する方向)に対して角度θをなすように支持部材41に設けられる。角度θは、攪拌翼42における支持部材41に交差する面と、Y方向とがなす角度である。第1実施形態の角度θは、90度以外の角度である。角度θは、例えば60度以上80度以下である。なお、一方の攪拌機構40の攪拌翼42と他方の攪拌機構40の攪拌翼42とは相互に平行になるように設けられる。
【0029】
以上に説明した混練装置100において、回転軸20が回転すると、噴射部材30による添加材の添加と攪拌機構40による攪拌とが並行して行われる。その結果、余盛部Paに添加材が混練される。なお、回転軸20と噴射部材30と攪拌機構40との大きさは、杭孔Mの大きさに応じて適宜に変更し得る。
【0030】
ここで、添加材は、例えば吸水材である。吸水材は、コンクリート中の水分を吸収する粉状物である。コンクリート中に含まれる水分が吸水材に吸収されることで、例えば、以下の(1)~(3)の状態が発生する。その結果、硬化後の余盛部Paを脆弱化させることが可能である。
(1)コンクリート中のセメント系固化材の水和反応に必要な単位水量が低減することで、セメント系固化材の水和反応が抑制された状態になる。
(2)セメント系固化材の粒子の分散性が低下することで、セメント系固化材の粒子が互いに凝集する。そして、余盛コンクリートの均質性が阻害された状態になる。
(3)セメント系固化材の粒子の分散性が低下することで、セメント系固化材の粒子が互いに凝集する。そして、凝集した粒子が、粒径の大きい砂利や砂の表面に吸着する。したがって、余盛コンクリートの内部が疎な状態になる。
【0031】
吸水材が混練された余盛部Paは、硬化後に脆弱化するからで、除去する処理が容易になる。例えば、余盛部Paが脆弱化されていない場合は、重機等を利用して余盛部Paを小割にした後に除去する必要がある。一方で、吸水材が混練された余盛部Paは、小割にすることなく除去が可能である。例えば、作業員の手作業や高圧ジェットで破砕するだけで余盛部Paの除去ができる。
【0032】
ここで、回転軸から杭孔Mの径方向にわたり連続して延在する1つの攪拌翼を混練装置が具備する構成(以下「比較例」という)を想定する。比較例では、攪拌機構が回転すると、コンクリート中に含まれる粗骨材が攪拌翼に衝突して、周囲に飛散する。その結果、粗骨材が鉄筋カゴRに衝突して、鉄筋カゴRが破損する恐れがある。鉄筋カゴRが破損するとコンクリート杭Pの強度の低下を招く。
【0033】
それに対して、第1実施形態では、杭孔Mの径方向にわたり間隔を開けて攪拌翼42が設けられるから、攪拌機構40が回転しても、コンクリート中の粗骨材が攪拌翼42の間隔を通過する。したがって、比較例と比較して、粗骨材が攪拌翼42に衝突して飛散する可能性を低減することができる。ひいては、鉄筋カゴRの損傷によるコンクリート杭Pの強度低下を防止することができる。
【0034】
また、比較例では、攪拌翼に粗骨材が接触することで攪拌機構の攪拌が阻害されるという問題もある。一方で、第1実施形態によれば、攪拌翼42の間隔T2から粗骨材が通過するから、粗骨材により攪拌機構40の攪拌が阻害されることを防止することができる。ひいては、添加材をコンクリート杭Pに十分に攪拌することができる。第1実施形態では、特に、複数の攪拌翼42が設けられる間隔T2が20mm以上40mm以下であるから、20mmより大きく40mmより小さい粗骨材を間隔T2から通過させることができる。
【0035】
さらには、比較例では、コンクリートに接触する面積が大きく(すなわちコンクリートによる抵抗が大きく)、攪拌機構の回転がコンクリートにより妨げられる。それに対して、複数の攪拌翼42が間隔をあけて設けられる第1実施形態の構成によれば、比較例と比較して、コンクリートに接触する面積が小さいから(コンクリートによる抵抗が小さいから)、攪拌機構40が円滑に回転する。すなわち、添加材をコンクリートに効率的に混練することができる。
【0036】
第1実施形態では、攪拌翼42がY方向(支持部材41が延在する方向)に対して60度以上80度以下の角度θをなすように支持部材41が設けられるから、例えば角度θが90度である構成(攪拌翼42が支持部材41に直交する構成)や角度θが0度である構成(攪拌翼42が支持部材41に平行な構成)と比較して、コンクリートを杭孔Mの中心から外側に向けて流動させることが可能になる。したがって、余盛部Paにおける径方向の全体にわたり均一に添加材を混練することが可能になる。特に、余盛部Paのうち攪拌翼42が届かない鉄筋カゴRの外側にも添加材を混練することができるという利点がある。ただし、本発明において攪拌翼42の角度θは60度以上80度以下の角度には限定されない。
【0037】
回転軸20における第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間に噴射部材30が位置する第1実施形態の構成によれば、例えば第1支持部材41aよりも上方や第2支持部材41bよりも下方に噴射部材30が位置する構成と比較して、噴射部材30により噴射された添加材を効率的にコンクリートに攪拌することができる。ただし、本発明には、第1支持部材41aよりも上方や第2支持部材41bよりも下方に噴射部材30が位置する構成も包含される。
【0038】
第1実施形態では、複数のノズル32がX方向(すなわち杭孔Mの径方向)に沿って所定の間隔T1で形成されるから、余盛部Paの径方向にわたり添加材を均一に噴射することができる。ただし、本発明において複数のノズル32がX方向に沿って所定の間隔T1で形成されることは必須ではない。
【0039】
また、各ノズル32が水平面に平行な方向に添加材を噴射する第1実施形態の構成によれば、例えば、ノズル32が鉛直面に平行な方向(Z方向の正側または負側)に添加材を噴射する構成と比較して、余盛部Paの周方向に沿って添加材を効率的に噴射することができる。ただし、本発明には、ノズル32が鉛直面に平行な方向(Z方向の正側または負側)に添加材を噴射する構成も包含される。
【0040】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0041】
杭孔Mの径の大きさは、建築物の種類や大きさ等に応じて適宜に変更し得る。そこで、第2実施形態では、杭孔Mの径の大きさに応じて噴射部材30および攪拌機構40の大きさ(杭孔Mの径方向における長さ)を調整できる構成を例示する。
【0042】
図5は、第2実施形態に係る混練装置100の平面図である。図5に例示される通り、各噴射部材30は、第1部分301と第2部分302とに区分される。第1部分301は、噴射部材30のうち回転軸20に接続される部分である。一方で、第2部分302は、噴射部材30のうち第1部分301における回転軸20とは反対側の端部に接続される部分である。第2部分302は、第1部分301に着脱可能に接続される。第2部分302は、杭孔Mの径の大きさに応じて適宜に取り外しまたは取り付けがされる。以上の説明から理解される通り、噴射部材30は伸縮可能である。
【0043】
なお、第2部分302を第1部分301に着脱するための構成は任意である。例えば、第1部分301における端部の外周と、第2部分302における端部の内周とに相互に嵌合するネジ溝を設けてもよい。また、第1部分301と第2部分302とをジョイント等の接続部材を使用して接続してもよい。
【0044】
各攪拌機構40は、第1部分401と第2部分402とに区分される。第1部分401は、攪拌機構40のうち回転軸20に接続される部分である。一方で、第2部分402は、攪拌機構40のうち第1部分401における回転軸20とは反対側の端部に接続される部分である。第2部分402は、第1部分401に着脱可能に接続される。第2部分402は、杭孔Mの径の大きさに応じて適宜に取り外しまたは取り付けがされる。以上の説明から理解される通り、攪拌機構40は伸縮可能である。
【0045】
なお、第2部分402を第1部分401に着脱するための構成は任意である。例えば、第1部分401のうち支持部材41(第1支持部材41aおよび第2支持部材41b)における端部の外周と、第2部分302のうち支持部材41(第1支持部材41aおよび第2支持部材41b)における端部の内周とに相互に嵌合するネジ溝を設けてもよい。また、第1部分401の支持部材41と第2部分402の支持部材41とをジョイント等の接続部材を使用して接続してもよい。
【0046】
以上の説明から理解される通り、第2実施形態では、噴射部材30および攪拌機構40が杭孔Mの径方向において伸縮可能である。したがって、杭孔Mの径の大きさに応じて、噴射機構および攪拌機構40の大きさを適切に調整できるという利点がある。
【0047】
なお、第2実施形態では、噴射部材30および攪拌機構40の双方が伸縮可能な構成を例示したが、噴射部材30および攪拌機構40の少なくとも一方が伸縮可能であればよい。また、噴射部材30の第2部分302の個数および長さと、攪拌機構40における第2部分402の個数および長さとは任意である。
【0048】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る混練装置100の側面図(Y方向の正側からみたときの側面図)である。図6に例示される通り、第3実施形態の混練装置100は、回転軸20の相互に相異なる位置に噴射部材30を具備する。
【0049】
具体的には、回転軸20における第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間の3つの異なる場所(以下「設置位置」という)に噴射部材30が接続される。各設置位置はZ方向における位置が相違する。回転軸20の各設置位置において当該回転軸20を挟んで相互に反対側に2個の噴射部材30が接続される。すなわち、図6では、6個の噴射部材30が回転軸20に接続される。
【0050】
以上の説明から理解される通り、第3実施形態では、回転軸20におけるZ方向の異なる位置に噴射部材30が設けられるから、余盛部Paの高さ方向に沿って添加材を噴射することが可能になる。ひいては、余盛部Paの高さ方向においても添加材を均一に混練することができる。
【0051】
なお、図6では、6つの噴射部材30がX方向に沿うように設けられる構成を例示したが、例えば、設置位置毎に噴射部材30が延在する方向を相違させてもよい。また、図6では、3つの設置位置を設ける構成を例示したが、設置位置は3つに限定されない。例えば、設置位置は、2つでも4つ以上でもよい。なお、第1実施形態および第2実施形態は設置位置が1つの構成である。
【0052】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0053】
(1)前述の各形態では、各噴射部材30における複数のノズル32が直線状に位置する構成(すなわち噴射方向が同じである構成)を例示したが構成を例示したが、各噴射部材30において複数のノズル32が直線状に位置することは必須ではない。例えば、Z方向からの平面視において、噴射部材30の複数のノズル32が交互に反対側に位置するよう構成も採用され得る。
【0054】
(2)前述の各形態では、噴射部材30と支持部材41とが相互に直交する方向(X方向およびY方向)に延在する構成を例示したが、噴射部材30と支持部材41とは水平面内において相互に交差する方向に延在すれば直交する方向に延在しなくてもよい。例えば、噴射部材30が延在する方向(第1方向の例示)に対して70度をなす方向(第2方向の例示)に支持部材41が延在するように配置してもよい。また、噴射部材30と支持部材41とが相互に同じ方向に延在する構成(第1方向と第2方向とが同じである構成)も想定される。具体的には、回転軸20を挟んで噴射部材30と支持部材41とが反対側に位置する。なお、第1方向は噴射部材30が延在する方向であり、第2方向は支持部材41が延在する方向である。
【0055】
(3)前述の各形態では、攪拌機構40の複数の攪拌翼42おいて角度θを同じ角度に設定したが、攪拌機構40の各攪拌翼42における角度θを相違させてもよい。また、前述の各形態では、角度θを90度以外に設定したが、本発明において角度θが90度である構成は除外されない。
【0056】
(4)前述の各形態では、攪拌機構40の支持部材41が第1支持部材41aと第2支持部材41bとを含む構成を例示したが、支持部材41の構成は以上の例示に限定されない。例えば、1つの支持部材41で複数の攪拌翼42を支持する構成も採用され得る。
【0057】
(5)前述の各形態では、混練装置100が2個の攪拌機構40を具備する構成を例示したが、混練装置100が具備する攪拌機構40の個数は以上の例示に限定されない。同様に、混練装置100が2個以上の噴射部材30を具備する構成を例示したが、混練装置100が具備する噴射部材30の個数は以上の例示に限定されない。
【0058】
(6)前述の各形態では、2個の攪拌機構40が回転軸20を挟んで相互に反対側に位置する構成(2個の攪拌機構がなす角度が180度である構成)を例示したが、2個の攪拌機構40がなす角度は180度には限定されない。また、複数の攪拌機構40においてZ方向の位置を相違させて回転軸20に接続してもよい。同様に、2個の噴射部材30がなす角度も180度には限定されない。また、複数の噴射部材30においてZ方向の位置を相違させて回転軸20に接続してもよい。
【0059】
(7)前述の各形態では、添加材として吸水材を例示したが、添加材は吸水材に例示されない。例えば、コンクリートの固化を遅延する遅延剤、コンクリートの強度が発現するのを抑止する抑止剤、または、起泡剤や発泡剤を添加材として使用してもよい。すなわち、打設したコンクリート杭に混練するための各種の物質が添加材として例示される。
【0060】
(8)前述の各形態では、硬化前の余盛部Paに添加材を混練する場合を例示したが、本発明における混練装置100は、硬化前のコンクリート杭Pにおける任意の位置に添加材を混練する場合に使用され得る。
【符号の説明】
【0061】
100 :混練装置
20 :回転軸
21 :供給路
30 :噴射部材
31 :分岐路
32 :ノズル
40 :攪拌機構
41 :支持部材
41a :第1支持部材
41b :第2支持部材
42 :攪拌翼
50 :駆動装置
K :ケーシング
M :杭孔
P :コンクリート杭
Pa :余盛部
R :鉄筋カゴ



図1
図2
図3
図4
図5
図6