(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133308
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】キメラアロ抗原受容体T細胞の組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220906BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220906BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220906BHJP
C07K 14/755 20060101ALI20220906BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220906BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20220906BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220906BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220906BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220906BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220906BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20220906BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C07K19/00
C07K14/755
C07K14/705
C07K14/725
C12N5/10
C12N5/0783
A61P43/00 105
A61P7/04
A61K35/17 Z
A61K35/15 Z
【審査請求】有
【請求項の数】45
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096329
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2018553980の分割
【原出願日】2017-04-14
(31)【優先権主張番号】62/322,937
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ミローヌ マイケル シー.
(72)【発明者】
【氏名】アルーダ ヴァルダー
(72)【発明者】
【氏名】リッチマン サラ
(72)【発明者】
【氏名】サメルソン-ジョーンズ ベンジャミン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】FVIII補充療法の成功に大きな障壁となる阻害抗体を有効に減らすための新規戦略を提供する。
【解決手段】本発明は、アロ抗体に特異的な少なくとも1つのキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含む組成物、それを含むベクター、ウイルス粒子にパッケージングされたCALLARベクターを含む組成物、および、CALLARを含む組換えT細胞を含む。本発明はまた、CALLARを発現する遺伝子改変T細胞を作製する方法も含み、ここで、発現したCALLARは、細胞外ドメインに第VIII因子またはその断片を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と、CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、前記単離された核酸配列。
【請求項2】
キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列と、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、前記単離された核酸配列。
【請求項3】
前記アロ抗原が、第VIII因子またはその断片である、請求項1に記載の単離された核酸配列。
【請求項4】
前記第VIII因子またはその断片が、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の単離された核酸配列。
【請求項5】
前記第VIII因子の断片が、第VIII因子のA2サブユニットまたはC2サブユニットからなる群より選択される、請求項3に記載の単離された核酸配列。
【請求項6】
前記膜貫通ドメインの核酸配列が、CD8α鎖ヒンジおよび膜貫通ドメインをコードする、請求項1または2のいずれか一項に記載の単離された核酸配列。
【請求項7】
前記CD8α鎖ヒンジが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、かつ前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の単離された核酸配列。
【請求項8】
前記共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列が、4-1BBシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む、請求項2に記載の単離された核酸配列。
【請求項9】
前記4-1BB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む、請求項1または8のいずれか一項に記載の単離された核酸配列。
【請求項10】
前記細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列が、CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む、請求項2に記載の単離された核酸配列。
【請求項11】
前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む、請求項1または10のいずれか一項に記載の単離された核酸配列。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された核酸配列を含む、ベクター。
【請求項13】
レンチウイルスベクターである、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
RNAベクターである、請求項12に記載のベクター。
【請求項15】
アロ抗原またはその断片を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、4-1BBの細胞内ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)。
【請求項16】
第VIII因子のA2サブユニットを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子の細胞内ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)。
【請求項17】
前記アロ抗原が、第VIII因子またはその断片である、請求項15に記載の単離されたCALLAR。
【請求項18】
前記第VIII因子またはその断片が、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の単離されたCALLAR。
【請求項19】
前記第VIII因子の断片が、第VIII因子のA2断片およびC2断片からなる群より選択される、請求項17に記載の単離されたCALLAR。
【請求項20】
前記膜貫通ドメインが、CD8α鎖ヒンジおよび膜貫通ドメインを含む、請求項15または16のいずれか一項に記載の単離されたCALLAR。
【請求項21】
前記CD8α鎖ヒンジが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、かつ前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の単離されたCALLAR。
【請求項22】
前記共刺激分子の細胞内ドメインが、4-1BB細胞内ドメインを含む、請求項16に記載の単離されたCALLAR。
【請求項23】
前記4-1BB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:10を含む、請求項15または22のいずれか一項に記載の単離されたCALLAR。
【請求項24】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、請求項16に記載の単離されたCALLAR。
【請求項25】
前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む、請求項15または24のいずれか一項に記載の単離されたCALLAR。
【請求項26】
請求項15~25のいずれか一項に記載のCALLARを含む、遺伝子改変細胞。
【請求項27】
CALLARを発現し、かつ、B細胞上に発現した抗体に対して高い親和性を有する、請求項26に記載の細胞。
【請求項28】
CALLARを発現し、かつ、抗体を発現するB細胞の死滅を誘導する、請求項26に記載の細胞。
【請求項29】
CALLARを発現し、かつ、健常細胞に対する限定された毒性を有する、請求項26に記載の細胞。
【請求項30】
ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、サイトカイン誘導性キラー細胞、それらの細胞株、および他のエフェクター細胞からなる群より選択される、請求項26に記載の細胞。
【請求項31】
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を該対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列が、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列、およびCD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。
【請求項32】
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を該対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列が、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列、および細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである、請求項31または32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記改変T細胞が、第VIII因子抗体に対して高い親和性を有する、請求項31または32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記改変T細胞が、第VIII因子抗体を発現するB細胞を標的とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
(a)第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットと、リンカーと、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片とを含む、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)、ならびに
(b)DAP12
を含む、単離されたKIR/DAP12受容体複合体。
【請求項37】
前記KIRが、KIRS2またはKIR2DS2である、請求項36に記載の単離されたKIR/DAP12受容体複合体。
【請求項38】
前記リンカーが、短いグリシン-セリンリンカーである、請求項36に記載の単離されたKIR/DAP12受容体複合体。
【請求項39】
請求項36~38のいずれか一項に記載の単離されたKIR/DAP12受容体複合体を含む、遺伝子改変細胞。
【請求項40】
単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)とDAP12とを含む遺伝子改変細胞であって、該CALLARが、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットを含む細胞外ドメイン、リンカー、およびKIRの断片を含み、該KIRが、膜貫通領域および細胞質ドメインを含む、前記遺伝子改変細胞。
【請求項41】
前記KIRが、KIRS2またはKIR2DS2である、請求項40に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項42】
前記リンカーが、短いグリシン-セリンリンカーである、請求項40または41のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項43】
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、
第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットをコードする核酸配列と、リンカーをコードする核酸配列と、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片をコードする核酸配列とを含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含み、かつ、DAP12をコードする核酸配列をさらに含む、遺伝子改変T細胞の有効量
を該対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。
【請求項44】
前記リンカーが、短いグリシン-セリンリンカーである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、
第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットと、リンカーと、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片とを含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含み、かつ、DAP12をさらに含む、遺伝子改変T細胞の有効量
を該対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月15日に提出された米国特許仮出願第62/322,937号の優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血友病Aは、第VIII因子(FVIII)の欠乏によって引き起こされる遺伝性X連鎖疾患であり、重篤なかつ命を脅かす出血障害である。血友病Aは、頭蓋内出血による1年あたり約1%の死のリスクに加えて、患者に対して有意な病的状態を引き起こす頻繁な関節血症および関節症と関連している。組換えヒトFVIII(rhFVIII)を用いた因子補充療法が、血友病Aを有する患者にとっての標準治療である。不幸なことに、血友病を有する患者の10~40%が、血漿由来または組換えのヒトFVIIIタンパク質濃縮物に対して、FVIII機能を阻害する抗体を発生する。これらの阻害抗体の存在は、低い力価では、それらの影響に打ち勝つためのFVIIIの増加を必要とし、療法の費用の顕著な増加を結果としてもたらす。これらの阻害抗体は、高い力価では、因子補充療法を無益にする可能性があり、患者を、関節血症および破局的な頭蓋内出血の有意に増加したリスクに置き、迂回作用物質の使用を必要とする。
【0003】
現在、FVIII阻害物質の排除のための、FDAに認可された療法は無い。シクロホスファミド、IVIg、リツキシマブ(抗CD20)、および血漿交換を含む免疫介入が、免疫寛容誘導によりそれらを排除する試みとともに、これらの阻害FVIII抗体のレベルを低下させると評定されている。これらのアプローチは、限定された数の患者において成功しているが、一般に、阻害抗体力価の一過性低下のみをもたらす。
【0004】
したがって、FVIII補充療法の成功に大きな障壁となる阻害抗体を有効に減らすための新規の戦略が、必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と、CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、単離された核酸配列を含む。
【0006】
さらに、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列と、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、単離された核酸配列が含まれる。
【0007】
いくつかの態様において、アロ抗原は、第VIII因子またはその断片であり、第VIII因子の断片は、第VIII因子のA2サブユニットまたはC2サブユニットからなる群より選択される。他の態様において、第VIII因子またはその断片は、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。さらに追加的な態様において、膜貫通ドメインの核酸配列は、CD8α鎖ヒンジおよび膜貫通ドメインをコードする。さらなる態様において、CD8α鎖ヒンジは、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む。さらに他の態様において、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列は、4-1BBシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む。さらなる態様において、4-1BB細胞内ドメインは、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む。さらに他の態様において、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む。追加的な態様において、CD3ζシグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む。
【0008】
本発明は、追加的に、本発明の単離された核酸配列を含むベクターを含み、ある態様において、該ベクターは、RNAベクター、例えば、レンチウイルスベクターである。
【0009】
また、アロ抗原またはその断片を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、4-1BBの細胞内ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)も含まれる。
【0010】
1つの局面において、第VIII因子のA2サブユニットを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子の細胞内ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)が提供される。
【0011】
また、本発明のCALLARを含む遺伝子改変細胞も含まれる。いくつかの態様において、細胞は、CALLARを発現し、かつ、B細胞上に発現した抗体に対して高い親和性を有する。他の態様において、細胞は、CALLARを発現し、かつ、抗体を発現するB細胞の死滅を誘導する。追加的な態様において、細胞は、CALLARを発現し、かつ、健常細胞に対する限定された毒性を有する。他の態様において、細胞は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、サイトカイン誘導性キラー細胞、それらの細胞株、および他のエフェクター細胞からなる群より選択される。
【0012】
本発明はまた、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を該対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列が、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列、およびCD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する方法も含む。
【0013】
追加的に、本発明は、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を該対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列が、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列、および細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する方法を含む。
【0014】
いくつかの態様において、対象はヒトである。他の態様において、改変T細胞は、第VIII因子抗体に対して高い親和性を有する。他の態様において、改変T細胞は、第VIII因子抗体を発現するB細胞を標的とする。
【0015】
また、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットと、リンカーと、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片とを含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)ならびにDAP12を含む、単離されたKIR/DAP12受容体複合体も本発明に含まれる。
【0016】
いくつかの態様において、KIRは、KIRS2またはKIR2DS2である。他の態様において、リンカーは、短いグリシン-セリンリンカーである。
【0017】
また、単離されたKIR/DAP12受容体複合体を含む、遺伝子改変細胞も含まれる。
【0018】
さらに、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)とDAP12とを含む遺伝子改変細胞であって、該CALLARが、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットを含む細胞外ドメイン、リンカー、およびKIRの断片を含み、該KIRが、膜貫通領域および細胞質ドメインを含む、遺伝子改変細胞が含まれる。いくつかの態様において、KIRは、KIRS2またはKIR2DS2である。他の態様において、リンカーは、短いグリシン-セリンリンカーである。
【0019】
また、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法も含まれる。方法は、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットをコードする核酸配列と、リンカーをコードする核酸配列と、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片をコードする核酸配列とを含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含み、かつ、DAP12をコードする核酸配列をさらに含む遺伝子改変T細胞の有効量を、対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する。
【0020】
いくつかの態様において、リンカーは、短いグリシン-セリンリンカーである。
【0021】
さらに、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法が含まれる。方法は、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニット、リンカー、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片を含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含み、かつ、DAP12をさらに含む遺伝子改変T細胞の有効量を、対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読んだ場合に、より良く理解されるであろう。本発明を実例で説明するために、現時点で好ましい態様を図面において示している。しかし、本発明は、図面中に示されている態様の厳密な配置および手段には限定されないことが理解されるべきである。
【0023】
【
図1】FVIIIキメラアロ抗原受容体(CALLAR)の図解である。
【
図2】
図1と比較した場合の、代替的なシグナル伝達ドメインまたは細胞外ヒンジを持つ例示的なCALLAR構築物の図解である。図の左側のデザインは、第VIII因子のA2サブユニットまたはC2サブユニット、膜貫通ドメイン(CD8)、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)の図解に相当する。図の中央のデザインは、第VIII因子のA2サブユニットまたはC2サブユニット、リンカー(短いグリシン-セリンリンカー(gs))、膜貫通ドメイン(CD8)、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)の図解に相当する。図の右側のデザインは、第VIII因子(FVIII)のA2ドメインまたはC2ドメインが、KIRS2の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに、FVIIIドメインとKIR配列との間の短いグリシン-セリンリンカーで融合している、KIR2DS2ベースのキメラ免疫受容体の図解に相当する。このキメラ受容体は、DAP12アダプタータンパク質とともに発現されて、キメラKIR/DAP12受容体複合体を生じる。
【
図3】ヒトT細胞上のA2 CALLARおよびC2 CALLARの表面発現を示す、グラフのパネルである。T細胞を、CD3/28ビーズで24時間活性化し、その後、4-1BBシグナル伝達ドメインおよびζシグナル伝達ドメインを利用するA2-CALLARまたはC2-CALLAR(それぞれ、A2bbzおよびC2bbz)のレンチウイルス形質導入を行った。A2-CALLAR構築物またはC2-CALLAR構築物(A2bbz-mChまたはC2bbz-mCh)を発現するレンチウイルスベクターもまた、生成して形質導入に用いた。FMC63bbz CAR(抗CD19 CAR)を、対照として用いた。T細胞を、形質導入後5日目に、示されたようにA2特異的抗体またはC2特異的抗体のいずれかで染色して、A2含有CALLARおよびC2含有CALLARの発現を検出した。プロテインLを用いて、FMC63bbz CARについて染色した。フローサイトメトリーを用いて、初代T細胞上のA2ベースのCARおよびC2ベースのCARを分析した。健常ドナーから新しく単離したヒトT細胞に、以下のCAR:FMC63-bbz、A2-bbz、およびC2-bbzをコードするレンチウイルスベクター上清で形質導入した。A2bbz-mChおよびC2bbz-mChは、別々のタンパク質としてのそれぞれのCARおよびmCherryの発現のためのバイシストロン性構築物をコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたT細胞に相当する。CAR発現を、フローサイトメリーによって評定した。簡潔に言うと、T細胞を、10% FBSを含むRPMI 1640培地において培養し、抗CD3/抗CD28 Dynabeads(invitrogen)で刺激した。刺激の24時間後、T細胞に、CARレンチウイルスベクター上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入の6~8日後に、T細胞を、示されたように、ビオチン化プロテインL抗体およびその後のストレプトアビジンPE(BD Biosciences)、抗A2およびその後のヤギ抗マウス-FITC(Jackson ImmunoResearch)、または抗C2およびその後のヤギ抗マウス-FITC(Jackson ImmunoResearch)で染色した。CAR発現を、フローサイトメトリー(LSR-II、BD)によって評定した。フローサイトメトリー分析は、Flowjo(Tree Star Inc)を用いることによって実施した。形質導入後、A2ドメインベースのCARおよびC2ドメインベースのCARが、形質導入されたT細胞の細胞表面上に効率的に発現したことが観察された。
【
図4】固定化された抗A2抗体または抗C2抗体による、A2 CALLAR改変T細胞およびC2 CALLAR改変T細胞の活性化を示すグラフである。示されたCARまたはCALLARが形質導入されたT細胞を、OKT3(ポリクローナルT細胞活性化のため)、抗A2、または抗C2でコーティングしたマイクロウェル上にプレーティングした。上清を24時間で収集し、IFN-yをELISAによって測定した。結果により、すべてのT細胞が、抗CD3抗体による活性化後にIFNγを産生できることが示される。A2-BBz形質導入T細胞のみが、A2特異的抗体に応答してIFNγを産生する。C2-BBz形質導入T細胞のみが、C2特異的抗体に応答してIFNγを産生する。
【
図5】抗原特異的B細胞についてのCALLARモデルシステムを示すグラフである。CD19+ Nalm6細胞を、FVIII特異的キメラ免疫グロブリンを発現するように操作した。ヒト末梢血T細胞に、A2-FVIII-CALLARs(A2-CALLARs)、C2-FVIII-CALLARs(C2-CALLARs)、Dsg3-CAAR、もしくはCD19-CAR(対照)を形質導入したか、または非形質導入T細胞(NTD)とした。T細胞を、FVIIIのA2ドメインに特異的な表面免疫グロブリンを発現するように操作されたNalm6細胞と、さまざまなエフェクター対標的(E:T)比で混合した。特異的溶解パーセントを、16時間で51Cr放出アッセイによって測定した。
【
図6】CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(CALLAR)またはC2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(CALLAR)を用いた、抗体特異的細胞傷害性を示すグラフのセットである。T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(cd8)BBz)、または同じCD8スペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(cd8)BBz)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞に対して細胞傷害性を示す。A2(cd8)BBz形質導入T細胞のみが、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。C2(cd8)BBz形質導入T細胞のみが、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。
【
図7】(Gly)
4-Ser細胞外スペーサーまたはリンカーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体またはC2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体を用いた、抗体特異的細胞傷害性を示すグラフのセットである。T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、合成(Gly)
4-Ser細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)BBz)、または同じ(Gly)
4-Serスペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)BBz)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞に対して細胞傷害性を示す。A2(gs)BBz形質導入T細胞のみが、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。C2(gs)BBz形質導入T細胞のみが、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。
【
図8】KIR/DAP12ベースのシグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体またはC2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体を用いた、抗体特異的細胞傷害性を示すグラフのセットである。T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、KIR/DAP12シグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)KIRS2)、または同じKIR/DAP12シグナル伝達を有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)KIRS2)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞に対して細胞傷害性を示す。A2(gs)KIRS2形質導入T細胞のみが、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。C2(gs)KIRS2形質導入T細胞のみが、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。
【
図9-1】
図9は、細胞表面上の抗体に応答したサイトカイン産生を示すグラフのセットである。T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)KIRS2)、または、同じCD8スペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)KIRS2)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞またはCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。A2(cd8)BBz T細胞、A2(gs)BBz T細胞、およびA2(gs)KIRS2 T細胞は、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。C2(cd8)BBz T細胞、C2(gs)BBz T細胞、およびC2(gs)KIRS2 T細胞は、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。
【
図9-2】
図9は、細胞表面上の抗体に応答したサイトカイン産生を示すグラフのセットである。T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)KIRS2)、または、同じCD8スペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)KIRS2)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞またはCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。A2(cd8)BBz T細胞、A2(gs)BBz T細胞、およびA2(gs)KIRS2 T細胞は、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。C2(cd8)BBz T細胞、C2(gs)BBz T細胞、およびC2(gs)KIRS2 T細胞は、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。
【
図9-3】
図9は、細胞表面上の抗体に応答したサイトカイン産生を示すグラフのセットである。T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)KIRS2)、または、同じCD8スペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)KIRS2)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞またはCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。A2(cd8)BBz T細胞、A2(gs)BBz T細胞、およびA2(gs)KIRS2 T細胞は、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。C2(cd8)BBz T細胞、C2(gs)BBz T細胞、およびC2(gs)KIRS2 T細胞は、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。
【
図9-4】
図9は、細胞表面上の抗体に応答したサイトカイン産生を示すグラフのセットである。T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)KIRS2)、または、同じCD8スペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)KIRS2)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞またはCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。A2(cd8)BBz T細胞、A2(gs)BBz T細胞、およびA2(gs)KIRS2 T細胞は、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。C2(cd8)BBz T細胞、C2(gs)BBz T細胞、およびC2(gs)KIRS2 T細胞は、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明は、アロ抗体に特異的なキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を使用する組成物および方法であって、発現したCALLARが、細胞外ドメインに第VIII因子またはその断片を含む、組成物および方法を含む。
【0025】
定義
別に定める場合を除き、本明細書で用いる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されたものと同様または同等な任意の方法および材料を本発明の試験の実地におよび/または本発明の試験のための実地に用いることができるが、本明細書では好ましい材料および方法について説明する。本発明の説明および特許請求を行う上では、以下の専門用語を、その定義方法、定義が提供されている箇所に従って用いる。
【0026】
また、本明細書中で用いる専門用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定的であることは意図しないことも理解される必要がある。
【0027】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指して用いられる。一例として、「1つの要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0028】
量、時間的長さなどの測定可能な値に言及する場合に本明細書で用いる「約」は、特定された値からの±20%または±10%、場合によっては±5%、場合によっては±1%、場合によっては±0.1%のばらつきを包含するものとするが、これはそのようなばらつきが、開示された方法を実施する上で妥当なためである。
【0029】
「抗体」という用語は、抗原と結合する免疫グロブリン分子のことを指す。抗体は、天然供給源または組換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであってもよく、無傷の免疫グロブリンの免疫応答部分であってもよい。抗体は典型的には、免疫グロブリン分子のテトラマーである。本発明における抗体は、例えば、単一ドメイン抗体断片(sdAb)、一本鎖抗体(scFv)およびヒト化抗体を含む、連続ポリペプチド鎖の一部として抗体が発現される種々の形態で存在しうる(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0030】
本明細書で用いる「高親和性」という用語は、標的分子に対する1つの分子の結合または相互作用または引力における高い特異性のことを指す。
【0031】
本明細書で用いる「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特異的免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれうる。当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役を果たしうることを理解するであろう。その上、抗原が組換えDNAまたはゲノムDNAに由来してもよい。当業者は、免疫応答を惹起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それ故に、本明細書中でその用語が用いられる通りの「抗原」をコードすることを理解するであろう。その上、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことも理解するであろう。本発明が複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を非限定的に含むこと、およびこれらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を惹起するポリペプチドをコードするさまざまな組み合わせで並べられていることは直ちに明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことも理解するであろう。抗原を合成して作製することもでき、または生物試料から得ることもできることは直ちに明らかである。そのような生物試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液が非限定的に含まれうる。
【0032】
「アロ抗原」とは、種のいくつかの個体(特定の血液型など)においてのみ存在し、アロ抗原が欠如する個体によるアロ抗体の産生を誘導することができる抗原を意味する。
【0033】
本明細書で用いる「限定された毒性」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで、健常細胞、非腫瘍細胞、非罹患細胞、非標的細胞、またはそのような細胞の集団に対する実質的に負の生物学的作用、抗腫瘍作用、または実質的に負の生理的症状の欠如を表す、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、および/または抗体のことを指す。
【0034】
「アロ抗体」とは、アロ抗原に特異的なB細胞によって産生される抗体のことを指す。
【0035】
本明細書で用いる場合、「自己由来」という用語は、後にその個体中に再導入される、同じ個体に由来する任意の材料のことを指すものとする。
【0036】
「同種」とは、同じ種の異なる動物に由来する移植片のことを指す。
【0037】
「異種」とは、異なる種の動物に由来する移植片のことを指す。
【0038】
「キメラアロ抗原受容体」または「CALLAR」とは、細胞媒介性細胞傷害が可能であるT細胞または任意の他のエフェクター細胞タイプ上で発現される、操作された受容体のことを指す。CALLARは、アロ抗体に特異的なアロ抗原またはその断片を含む。CALLARはまた、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインも含む。
【0039】
本明細書で用いる場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に有意に影響することもそれを有意に変化させることもないアミノ酸改変を指すことを意図している。そのような保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。改変は、当技術分野において公知の標準的な手法、例えば、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発によって、本発明の抗体中に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基によって置き換えられるもののことである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において明確に定められている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、例えば、本発明のCALLARの細胞外領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、類似の側鎖または電荷を有する他のアミノ酸残基によって置き換えることができ、変化したCALLARを、本明細書に記載された機能アッセイを用いて、自己抗体に結合する能力について試験することができる。
【0040】
「共刺激リガンド」には、この用語が本明細書で用いられる場合、T細胞上のコグネイト共刺激分子と特異的に結合し、それにより、例えば、ペプチドが負荷されたMHC分子のTCR/CD3複合体への結合によって与えられる一次シグナルに加えて、増殖、活性化、分化などを非限定的に含むT細胞応答を媒介するシグナルも与えることのできる、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上の分子が含まれる。
【0041】
「共刺激分子」とは、共刺激リガンドに特異的に結合し、それにより、これに限定されるわけではないが増殖などの、T細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上のコグネイト結合パートナーのことを指す。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が非限定的に含まれる。
【0042】
「コードする」とは、所定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または所定のアミノ酸配列のいずれか、およびそれに起因する生物学的特性を有する、生物過程において他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性のことを指す。すなわち、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、そのタンパク質をコードする。mRNA配列と同一であって通常は配列表として提示されるヌクレオチド配列を有するコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして用いられる非コード鎖の両方を、タンパク質、またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると称することができる。
【0043】
別に指定する場合を除き、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互に縮重型であって、かつ同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列が、イントロンを含んでもよい。
【0044】
「有効量」または「治療的有効量」は、本明細書において互換的に用いられ、特定の生物学的結果を達成するのに有効な本明細書に記載の化合物、製剤、材料、または組成物の量のことを指す。そのような結果には、当技術分野で適切な任意の手段によって決定されるウイルス感染の阻止が含まれ得るが、これに限定されない。
【0045】
「エフェクター機能」という用語は、細胞の特化した機能のことを指す。
【0046】
本明細書で用いる場合、「内因性」とは、生物体、細胞、組織もしくは系に由来するか、またはその内部で産生される任意の材料のことを指す。
【0047】
本明細書で用いる場合、「外因性」という用語は、生物体、細胞、組織もしくは系に導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の材料のことを指す。
【0048】
本明細書で用いる「発現」という用語は、プロモーターによって作動する特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0049】
「発現ベクター」とは、発現させようとするヌクレオチド配列と機能的に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターのことを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用エレメントを含む;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されうる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み入れたコスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソーム中に含まれるもの)、レトロトランスポゾン(例えば、ピギーバッグ(piggyback)、スリーピングビューティー(sleeping beauty))、およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)といった、当技術分野において公知であるすべてのものが含まれる。
【0050】
「第VIII因子」という用語は、抗血友病因子としても公知である、血液凝固タンパク質のことを指す。第VIII因子は、ヒトにおいてF8遺伝子によってコードされており、2つの選択的スプライシング転写物を産生する。第VIII因子は、第IXa因子の補因子であり、第X因子を活性型のXaに変換する複合体を形成する。第VIII因子は、重鎖(A1-A2-Bサブユニット)および軽鎖(A3-C1-C2サブユニット)から構成される非共有結合性ヘテロ二量体であり、フォン・ウィルブランド因子との複合体において不活性のプロ補因子(procofactor)として循環する。
【0051】
「第VIII因子抗体」という用語は、FVIII血液凝固タンパク質に特異的に結合する抗体のことを指す。FVIII抗体には、FVIIIに特異的なアロ抗体および自己抗体が含まれる。
【0052】
「血友病」という用語は、血液凝固障害のことを指す。血友病Aとは、機能的な第VIII因子が欠如する個体における、劣性X連鎖遺伝障害のことを指す。血友病Bとは、機能的な第IX因子が欠如する個体における、劣性X連鎖遺伝障害のことを指す。
【0053】
本明細書で用いる「相同な」とは、2つのポリマー分子の間、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子などの2つの核酸分子の間、または2つのポリペプチド分子の間の、サブユニット配列同一性のことを指す。2つの分子の両方においてあるサブユニット位置が、同じ単量体サブユニットによって占められている場合;例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおいてある位置がアデニンによって占められているならば、それらはその位置で相同である。2つの配列間の相同性は、一致するかまたは相同な位置の数の直接的な関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さが10サブユニットであるポリマーにおける5つの位置)が相同であるならば、2つの配列は50%相同である;位置の90%(例えば、10のうち9)が一致するかまたは相同であるならば、2つの配列は90%相同である。
【0054】
本明細書で用いる「同一性」とは、2つのポリマー分子の間、特に、2つのポリペプチド分子の間などの2つのアミノ酸分子の間の、サブユニット配列同一性のことを指す。2つのアミノ酸配列が、同じ位置で同じ残基を有する場合;例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれにおいてある位置がアルギニンによって占められているならば、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列がアラインメントにおいて同じ位置で同じ残基を有する同一性または程度は、しばしばパーセンテージとして表現される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致するかまたは同一の位置の数の直接的な関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さが10アミノ酸であるポリマーにおける5つの位置)が同一であるならば、2つの配列は50%同一である;位置の90%(例えば、10のうち9)が一致するかまたは同一であるならば、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0055】
本明細書で用いる「免疫学的有効量」、「抗アロ抗体有効量」、または「治療量」という語句は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染症または転移の程度、および状態の個々の違いを考慮して、研究者または医師によって決定される、投与されるべき本発明の組成物の量のことを指す。
【0056】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達して、細胞が特化した機能を果たすように方向づける、タンパク質の一部分のことを指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内ドメインの任意の短縮部分を含む。
【0057】
本明細書で用いる場合、「説明資料(instructional material」には、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために用いうる、刊行物、記録、略図または他の任意の表現媒体が含まれる。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器に添付してもよく、または核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器と一緒に出荷してもよい。または、説明資料および化合物がレシピエントによって一体として用いられることを意図して、説明資料を容器と別に出荷してもよい。
【0058】
「細胞内ドメイン」とは、細胞の内部に存在する分子の一部分または領域のことを指す。
【0059】
「単離された」とは、天然の状態から変更されるかまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きた動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然の状態で共存する物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもでき、または例えば宿主細胞などの非天然の環境で存在することもできる。
【0060】
本発明に関連して、一般的に存在する核酸塩基に関しては以下の略語を用いる。「A」はアデノシンのことを指し、「C」はシトシンのことを指し、「G」はグアノシンのことを指し、「T」はチミジンのことを指し、「U」はウリジンのことを指す。
【0061】
別に指定する場合を除き、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互に縮重型であって、同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチドが含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部の型においてイントロンを含みうる限り、イントロンも含まれうる。
【0062】
本明細書で用いる「レンチウイルス」とは、レトロウイルス科(Retroviridae)ファミリーの属のことを指す。レンチウイルスは、非分裂細胞を感染させうるという点で、レトロウイルスの中でも独特である;それらはかなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNA中に送達することができるため、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIVおよびFIVはすべて、レンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボでかなり高いレベルの遺伝子移入を達成するための手段を与える。
【0063】
「機能的に連結した」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の、後者の発現を結果的にもたらす機能的連結のことを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列との機能的関係の下で配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能的に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼすならば、プロモーターはコード配列と機能的に連結している。一般に、機能的に連結したDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を接続することが必要な場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
【0064】
免疫原性組成物の「非経口的」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)または胸骨内の注射法または輸注法が含まれる。
【0065】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの連鎖と定義される。その上、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で用いる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらはモノマー性「ヌクレオチド」に加水分解されうるという一般知識を有する。モノマー性ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解されうる。本明細書で用いるポリヌクレオチドには、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCR(商標)などを用いて組換えライブラリーまたは細胞ゲノムから核酸配列をクローニングすること、および合成手段を非限定的に含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られる、すべての核酸配列が非限定的に含まれる。
【0066】
本明細書で用いる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に用いられ、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物のことを指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成しうるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互に結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で用いる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される短鎖、ならびに当技術分野において一般にタンパク質と称される長鎖の両方のことを指し、それらには多くの種類がある。「ポリペプチド」には、いくつか例を挙げると、例えば、生物学的活性断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0067】
「炎症誘発性サイトカイン」という用語は、炎症または炎症性応答を促進するサイトカインまたは因子のことを指す。炎症誘発性サイトカインの例には、ケモカイン(CCL、CXCL、CX3CL、XCL)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、およびIL-15)、インターフェロン(IFNγ)、ならびに腫瘍壊死因子(TNFαおよびTNFβ)が非限定的に含まれる。
【0068】
本明細書で用いる「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるために必要な、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列と定義される。
【0069】
本明細書で用いる場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列と機能的に連結した遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。ある場合には、この配列はコアプロモーター配列であってよく、また別の場合には、この配列が、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の制御エレメントをも含んでもよい。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現させるものであってもよい。
【0070】
「構成性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0071】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的にはそのプロモーターに対応する誘導物質が細胞内に存在する場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0072】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的には細胞がそのプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0073】
「シグナル伝達経路」とは、細胞の1つの部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝送において役割を果たす、種々のシグナル伝達分子間の生化学的関係のことを指す。「細胞表面受容体」という語句には、シグナルを受け取り、細胞の膜をまたいでシグナルを伝送することができる分子および分子の複合体が含まれる。
【0074】
「シグナル伝達ドメイン」とは、活性化シグナルに応答して、特異的タンパク質を動員し、それと相互作用する、分子の一部分または領域のことを指す。
【0075】
本明細書で用いる「特異的に結合する」という用語は、試料中に存在するコグネイト結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激分子および/または共刺激分子)タンパク質を認識してそれと結合するが、試料中の他の分子を実質的に認識しないかまたは結合しない、抗体またはリガンドを意味する。
【0076】
「対象」という用語は、免疫応答を惹起させることができる、生きている生物(例えば、哺乳動物)を含むことを意図している。
【0077】
本明細書で用いる場合、「実質的に精製された」細胞とは、他の細胞型を本質的に含まない細胞のことである。また、実質的に精製された細胞とは、その天然の状態に本来付随する他の細胞型から分離された細胞のことも指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団とは、均一な細胞集団のことを指す。また別の場合には、この用語は、単に、天然の状態において本来付随する細胞から分離された細胞のことを指す。いくつかの態様において、細胞はインビトロで培養される。他の態様において、細胞はインビトロでは培養されない。
【0078】
本明細書で用いる「治療的」という用語は、治療および/または予防のことを意味する。治療効果は、疾病状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0079】
本明細書で用いる「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞内に移入または導入される過程のことを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外因性核酸によってトランスフェクトされた、形質転換された、または形質導入されたもののことである。この細胞には初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
【0080】
「膜貫通ドメイン」とは、脂質二重膜にまたがる分子の一部分または領域のことを指す。
【0081】
本明細書で用いる「転写制御下」または「機能的に連結した」という語句は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するために正しい位置および向きにあることを意味する。
【0082】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、かつその単離された核酸を細胞の内部に送達するために用いうる組成物のことである。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを非限定的に含む数多くのベクターが、当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律複製性プラスミドまたはウイルスを含む。この用語は、例えばポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性の化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが非限定的に含まれる。
【0083】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がそのコグネイトリガンドと結合して、それにより、これに限定されるわけではないがTCR/CD3複合体を介するシグナル伝達などのシグナル伝達イベントを媒介することによって誘導される、一次応答のことを意味する。刺激は、TGF-βのダウンレギュレーション、および/または細胞骨格構造の再構築などのような、ある種の分子の発現の改変を媒介してもよい。
【0084】
「刺激分子」とは、この用語が本明細書で用いられる場合、抗原提示細胞上に存在するコグネイト刺激リガンドに特異的に結合する、T細胞上の分子のことを意味する。
【0085】
「刺激リガンド」とは、本明細書で用いる場合、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合に、T細胞上のコグネイト結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と称する)と特異的に結合して、それにより、活性化、免疫応答の開始、増殖などを非限定的に含む、T細胞による一次応答を媒介することのできるリガンドのことを意味する。刺激リガンドは当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0086】
範囲:本開示の全体を通じて、本発明のさまざまな局面を、範囲形式で提示することができる。範囲形式による記載は、単に便宜上かつ簡潔さのためであって、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定とみなされるべきではないことが理解される必要がある。したがって、ある範囲の記載は、その範囲内におけるすべての可能な部分的範囲とともに、個々の数値も具体的に開示されていると考慮されるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分的範囲とともに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6も、具体的に開示されていると考慮されるべきである。これは範囲の幅広さとは関係なく適用される。
【0087】
説明
正常なB細胞免疫を無傷の状態にしながらFVIII特異的B細胞を排除するための方法は、血友病を処置するのに最も望ましい治療アプローチである。なぜなら、抗CD20抗体および他の非特異的免疫抑制モダリティを用いた慢性の非特異的免疫抑制は、重篤な感染症のリスクの増加と関連するからである。キメラ抗原受容体(CAR)技術は、B細胞悪性腫瘍の処置について開発が成功している。B細胞特異的CAR(例えば、CD19 CAR)は、第VIII因子(FVIII)抗体を産生するメモリーB細胞を排除するのに有益でありうるが、抗FVIIIアロ抗体を分泌するように運命づけられたB細胞は、表面抗FVIII抗体を発現する。これらのアロ抗原特異的B細胞上の固有のかつ高度に制限されたマーカーのターゲティングにより、FVIII療法を干渉するFVIII特異的抗体を産生するB細胞を排除する治療機会が提供される。
【0088】
キメラアロ抗原受容体(CALLAR)
本発明は、キメラアロ抗原受容体を、FVIII補充処置に応答して産生されるアロ抗体を標的とするために使用することができるという発見に、一部基づく。アロ抗体は、そのFVIII欠乏症のための処置として組換えFVIIIまたは精製FVIIIを受ける、いくらかの個体において産生される。血友病を有する個体は、FVIIIが遺伝的に欠乏している。彼らは、FVIII遺伝子を破壊する遺伝的異常によりFVIIIを有さないため、FVIIIは彼らの免疫系にとって外来に見られ、彼らの細胞がFVIIIに対する抗体を作る。本発明は、アロ抗体に特異的なCALLARを含む組成物、それを含むベクター、ウイルス粒子にパッケージングされたCALLARベクターを含む組成物、および、CALLARを含む組換えT細胞または他のエフェクター細胞を含む。本発明はまた、CALLARを発現する遺伝子改変T細胞を作製する方法であって、発現したCALLARが、細胞外ドメインに第VIII因子またはその断片を含む方法も含む。
【0089】
血友病におけるFVIII補充処置などの、多くのアロ抗体媒介性疾患についての抗原が、記載されてきている。本発明は、アロ抗体媒介性疾患を処置するための技術を含む。特に、最終的に自己抗体およびアロ抗体を産生し、その細胞表面上に自己抗体およびアロ抗体を提示するB細胞を標的とする技術は、これらのB細胞を治療的介入のための疾患特異的標的として区分する。したがって、本発明は、自己抗体およびアロ抗体に特異的な(例えば、第VIII因子)キメラアロ抗原受容体(すなわちCALLAR)を用いることによって、病的B細胞を効率的に標的として、死滅させるための方法を含む。本発明の1つの態様において、特異的な抗自己抗体発現B細胞および抗アロ抗体発現B細胞のみが死滅し、したがって、感染症から防護する有益なB細胞および抗体は無傷の状態になる。
【0090】
本発明は、アロ抗原またはその断片、1つの局面において、ヒト第VIII因子またはその断片を含む細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む組換えDNA構築物であって、該アロ抗原またはその断片の配列が、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列に機能的に連結している、組換えDNA構築物を包含する。
【0091】
1つの局面において、本発明は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と、CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、単離された核酸配列を含む。
【0092】
別の局面において、本発明は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列と、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、単離された核酸配列を含む。
【0093】
さらに別の局面において、本発明は、アロ抗原またはその断片を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの細胞内ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含む。また別の局面において、本発明は、第VIII因子のA2サブユニットを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激分子の細胞内ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含む。
【0094】
アロ抗原部分
1つの局面において、本明細書に記載された構築物は、アロ抗原またはその断片を含む細胞外ドメインを含む、遺伝子操作されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含む。1つの態様において、アロ抗原は、第VIII因子またはその断片である。例示的な態様において、CALLARは、第VIII因子のA2サブユニットまたはC2サブユニットを含む。別の態様において、CALLARは、A1サブユニット、A2サブユニット、A3サブユニット、Bサブユニット、C1サブユニット、およびC2サブユニットからなる群より選択される、第VIII因子サブユニットを含む。
【0095】
1つの態様において、CALLARをコードする単離された核酸配列は、
を含む、第VIII因子A2サブユニットをコードする核酸配列を含む。
【0096】
別の態様において、第VIII因子A2サブユニットは、
を含むアミノ酸配列を含む。
【0097】
別の態様において、CALLARをコードする単離された核酸配列は、
を含む、第VIII因子C2サブユニットをコードする核酸配列を含む。
【0098】
別の態様において、第VIII因子C2サブユニットは、アミノ酸配列
を含む。
【0099】
さらに別の態様において、CALLARをコードする単離された核酸配列は、本明細書に記載されたいずれかの核酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性または相同性を有する核酸配列を含む。別の態様において、CALLARは、本明細書に記載されたいずれかのアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
さらなる態様において、本発明のCALLARは、別の言い方ではアロ抗原またはその断片と呼ばれる、アロ抗体結合ドメインを含む。本発明における使用のためのアロ抗原の選択は、標的とされる抗体のタイプに依存する。例えば、アロ抗原は、特定の疾患状態、例えば、血友病におけるFVIII補充療法と関連する、B細胞などの標的細胞上の抗体を認識するため、選択されてもよい。
【0101】
場合によっては、アロ抗体結合ドメインが、CALLARが最終的に用いられることになる同じ種に由来することが、有益である。例えば、ヒトにおける使用のためには、CALLARのアロ抗体結合ドメインが、アロ抗体またはその断片に結合するアロ抗原を含むことが、有益でありうる。したがって、1つの態様において、アロ抗体結合ドメイン部分は、アロ抗体に結合するアロ抗原のエピトープを含む。エピトープは、アロ抗体によって特異的に認識されるアロ抗原の一部である。
【0102】
リンカー
いくつかの態様において、CALLARは、短いグリシン-セリンリンカー(gs)を含む。いくつかの態様において、短いグリシン-セリンリンカーは、細胞外リンカーである。短いグリシン-セリンリンカーは、0~20個のリピート、例えば、1個のリピート、2個のリピートなどを有することができ、各リピートは、2~20アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、単一の短いグリシン-セリンリンカーリピートは、例えば、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(SEQ ID NO:29)の配列を有する。他の組み合わせのグリシンとセリンのリピートが、グリシン-セリンリンカーに用いられてもよい。
【0103】
膜貫通ドメイン
1つの態様において、CALLARは、膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、これに限定されるわけではないがヒトT細胞表面糖タンパク質CD8α鎖ヒンジおよび膜貫通ドメインなどの、ヒンジおよび膜貫通ドメインを含む。ヒトCD8鎖ヒンジおよび膜貫通ドメインは、キメラアロ抗原受容体の細胞表面提示を提供する。
【0104】
膜貫通ドメインに関して、さまざまな態様において、CALLARは、CALLARの細胞外ドメインに融合している膜貫通ドメインを含む。1つの態様において、CALLARは、CALLAR中のドメインのうちの1つと天然で会合している膜貫通ドメインを含む。場合によっては、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに対する結合を避けるように選択されるか、またはアミノ酸置換によって改変される。
【0105】
膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来しうる。供給源が天然である場合には、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来しうる。1つの態様において、膜貫通ドメインは、合成であってもよく、その場合、それは主として、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含むであろう。1つの局面において、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出されるであろう。任意で、長さが2~10アミノ酸の短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、CALLARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成しうる。グリシン-セリンダブレットは、特に適したリンカーを提供する。
【0106】
場合によっては、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジを含む種々のヒトヒンジを、同様に使用することができる。
【0107】
ヒンジおよび/または膜貫通ドメインの例には、T細胞受容体のα、β、もしくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD154、KIR、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、および/またはNKG2Cのヒンジおよび/または膜貫通ドメインが非限定的に含まれる。
【0108】
キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)には、すべてのKIR、例えば、KIR2およびKIR2DS2、刺激性キラー免疫グロブリン様受容体が含まれる。
【0109】
1つの態様において、膜貫通ドメインの核酸配列は、
を含むCD8α鎖ヒンジ、および
を含む膜貫通ドメインをコードする。
【0110】
別の態様において、膜貫通ドメインの核酸配列は、
を含むCD8α鎖ヒンジ、および
を含む膜貫通ドメインをコードする。
【0111】
さらに別の態様において、膜貫通ドメインは、CD8α鎖ヒンジおよび/または膜貫通ドメインを含む。
【0112】
細胞質ドメイン
細胞内シグナル伝達ドメイン、または別の言い方では細胞質ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。共刺激シグナル伝達ドメインとは、4-1BBなどの共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、CALLARの一部分のことを指す。共刺激分子には、効率的なT細胞活性化のために必要とされる細胞表面分子が含まれる。本発明のCALLARの細胞質ドメイン、または別の言い方では細胞内シグナル伝達ドメインは、CALLARがその中に配置されている免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化の原因となる。細胞内シグナル伝達ドメインとは、CD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインなどの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、CALLARの一部分のことを指す。
【0113】
T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性でありうる。細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合には、ドメイン全体を用いることは必要でない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分が用いられる範囲内において、そのような短縮部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、無傷のドメインの代わりに用いられてもよい。
【0114】
本発明のCALLARにおける使用のための細胞内シグナル伝達ドメインの例には、抗原受容体結合後にシグナル伝達を開始するように協力して作用する、T細胞受容体(TCR)および共受容体の細胞質部分、ならびに、これらのエレメントの任意の誘導体またはバリアント、および同じ機能的能力を有する任意の合成配列が非限定的に含まれる。
【0115】
TCRのみを通して生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化のためには不十分であること、および、二次シグナルまたは共刺激シグナルも必要とされることが、十分に認識されている。したがって、T細胞活性化は、2つの別個のクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを通して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)および抗原非依存性様式で作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると言うことができる。
【0116】
一次細胞質シグナル伝達配列は、刺激性様式または阻害性様式のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を調節する。刺激性様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン活性化モチーフまたはITAMとして公知である、シグナル伝達モチーフを含有しうる。
【0117】
細胞内シグナル伝達ドメインの例には、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD86、共通FcRγ、FcRβ(FcεR1b)、CD79a、CD79b、FcγRIIa、DAP10、DAP12(免疫チロシン活性化モチーフ(immunotyrosine-based activation motif)(ITAM)含有アダプター)、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83特異的結合リガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、任意のKIR、例えば、KIR2、KIR2DS2、本明細書に記載された他の共刺激分子、その任意の誘導体、バリアント、または断片、同じ機能的能力を有する共刺激分子の任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを非限定的に含む、1つまたは複数の分子または受容体由来の断片またはドメインが含まれる。
【0118】
1つの態様において、CALLARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを、それ自体で、または、本発明のCALLARの文脈において有用な1つまたは複数の望ましい細胞質ドメインと組み合わせて含む。例えば、CALLARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ鎖部分および4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインを含むことができる。共刺激シグナル伝達ドメインとは、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、CALLARの一部分のことを指す。共刺激分子とは、抗原に対するリンパ球の効率的な応答のために必要とされる、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子のことである。
【0119】
別の態様において、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの核酸配列は、
を含む4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む。別の態様において、4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインの核酸配列は、
を含むアミノ酸配列をコードする。
【0120】
別の態様において、シグナル伝達ドメインの核酸配列は、
を含むCD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む。別の態様において、CD3ζシグナル伝達ドメインの核酸配列は、
を含むアミノ酸配列をコードする。
【0121】
いくつかの態様において、単離されたKIR/DAP12受容体複合体は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む。単離された核酸配列は、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットをコードする核酸配列;リンカーをコードする核酸配列;KIRの膜貫通ドメイン(該KIRは、膜貫通領域および細胞質ドメインを含有する)ならびにDAP12をコードする核酸配列を含む。シグナル伝達は、機能的な受容体複合体を生じる、キメラKIR(KIR-CARまたはKIR-CALLAR)とDAP12とのアセンブルに由来する。いくつかの態様において、KIRは、KIRS2またはKIR2DS2である。
【0122】
いくつかの態様において、本発明は、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)とDAP12とを含む遺伝子改変細胞であって、該CALLARが、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットを含む細胞外ドメイン、リンカー、およびKIRの断片を含み、該KIRが、膜貫通領域および細胞質ドメインを含有する、遺伝子改変細胞を含む。
【0123】
いくつかの態様において、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法が提供される。方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットをコードする核酸配列;リンカーをコードする核酸配列;KIRの膜貫通ドメインをコードする核酸配列;KIRの断片をコードする核酸配列(該KIRは、膜貫通領域および細胞質ドメインを含有する)を含む、単離された核酸配列と、DAP12をコードする核酸配列とを含む遺伝子改変T細胞の有効量を対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する。
【0124】
いくつかの態様において、単離されたKIR/DAP12受容体複合体のKIRは、KIRS2またはKIR2DS2である。いくつかの態様において、リンカーは、短いグリシン-セリンリンカーである。いくつかの態様において、単離されたKIR/DAP12受容体複合体のリンカーは、短いグリシン-セリンリンカーである。
【0125】
いくつかの態様において、KIR/DAP12受容体複合体は、SEQ ID NO:21~24の配列のうちの1つまたは複数を含む。
【0126】
他のドメイン
CALLARおよびCALLARをコードする核酸は、シグナルペプチド、例えば、ヒトCD8α鎖シグナルペプチドをさらに含んでもよい。ヒトCD8αシグナルペプチドは、受容体のT細胞表面への移行の原因となる。1つの態様において、CALLARをコードする単離された核酸配列は、CD8α鎖シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む。別の態様において、CALLARは、CD8α鎖シグナルペプチドを含む。
【0127】
CALLARはまた、ペプチドリンカーを含んでもよい。1つの態様において、CALLARをコードする単離された核酸配列は、細胞外ドメインをコードする核酸配列と膜貫通ドメインをコードする核酸配列との間に、ペプチドリンカーをコードする核酸配列を含む。
【0128】
別の態様において、CALLARの細胞内ドメインは、ランダムな順序または指定された順序で互いに連結させることができる。任意で、例えば、長さが2~10アミノ酸の短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、ドメイン間の連結を形成しうる。グリシン-セリンダブレットが、特に適したリンカーである。
【0129】
CALLARの任意のドメインおよび/または断片、ベクター、ならびにプロモーターは、PCRまたは当技術分野において公知の任意の他の手段によって増幅されうる。
【0130】
CALLARを含むベクター
第VIII因子のA2サブユニットまたはC2サブユニットの細胞外部分を含む、本明細書に記載されたすべてのベクターは、任意の第VIII因子細胞外部分の使用に同等に適合性であると解釈されるべきである。そのように、本明細書に記載されたベクターの使用は、A2サブユニットまたはC2サブユニットの使用によって例証されるが、A1サブユニット、Bサブユニット、A3サブユニット、およびC1サブユニットの使用に関して同等に開示されると解釈されるべきである。
【0131】
特異性および機能性の概念実証のために、レンチウイルスベクタープラスミド(例えば、pELPS-hFVIII-A2-BBz-T2A-mCherry、pELPS-hFVIII-C2-BBz-T2A-mCherry、pTRPE-hFVIII-A2-BBz、およびpTRPE-hFVIII-C2-BBz)が有用であり、BBzは、4-1BB CD3ζを意味する。これは、宿主T細胞における安定な(永久の)発現を結果としてもたらす。代替アプローチとして、コードmRNAを、宿主細胞中にエレクトロポレーションすることができ、これは、ウイルスで形質導入されたT細胞と同じ治療効果を達成するであろうが、mRNAは細胞分裂に伴って薄まるため、永久ではないと考えられる。
【0132】
1つの局面において、本発明は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含むベクターであって、該単離された核酸配列が、アロ抗原またはその断片(第VIII因子サブユニットなど)を含む細胞外ドメインをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、共刺激分子(4-1BBなど)の細胞内ドメインをコードする核酸配列、および細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζなど)をコードする核酸配列を含む、ベクターを含む。1つの態様において、ベクターは、本明細書に記載されたようなCALLARをコードする単離された核酸配列のいずれかを含む。別の態様において、ベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター、レトロトランスポゾン(例えば、piggyback、sleeping beauty)、部位特異的挿入ベクター(例えば、CRISPR、Znフィンガーヌクレアーゼ、TALEN)、または自殺発現ベクター、または当技術分野において公知の他のベクターが含まれる。
【0133】
さまざまなアロ抗原およびその断片を含む本明細書に開示されたすべての構築物は、任意のレンチウイルスベクタープラスミド、他のウイルスベクター、またはヒト細胞における使用について認可されているRNA中に組み込むことができる。1つの態様において、ベクターは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターである。別の態様において、ベクターはRNAベクターである。
【0134】
CALLARの産生は、シークエンシングによって検証することができる。完全長CALLARタンパク質の発現は、免疫ブロット、免疫組織化学、フローサイトメトリー、または、当技術分野において周知の、かつ利用可能な他の技術を用いて検証されてもよい。
【0135】
本発明はまた、本発明のCALLARをコードするDNAが挿入されたベクターも提供する。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターを含むベクターは、長期的遺伝子移入を達成するための適したツールであるが、これはそれらが、導入遺伝子の長期的で安定的な組み込み、および娘細胞におけるその伝播を可能にするためである。レンチウイルスベクターは、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルスに由来するベクターを上回る利点を有するが、これはそれらが、肝細胞などの非増殖性細胞の形質導入も行うことができるためである。また、それらには、それらが導入される対象において結果として生じる免疫原性が低いという利点も加わっている。
【0136】
CALLARをコードする天然性または合成性の核酸の発現は、典型的には、CALLARポリペプチドまたはその部分をコードする核酸をプロモーターと機能的に連結させて、その構築物を発現ベクター中に組み入れることによって達成される。ベクターは、哺乳動物細胞において一般に複製可能で、かつ/または哺乳動物の細胞ゲノムへの組み込みも可能なものである。典型的なベクターは、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の調節のために有用なプロモーターを含有する。
【0137】
核酸は、いくつもの異なる種類のベクター中にクローニングすることができる。例えば、核酸を、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを非限定的に含むベクター中にクローニングすることができる。特に関心が持たれるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシングベクターが含まれる。
【0138】
発現ベクターを、ウイルスベクターの形態で細胞に与えることもできる。ウイルスベクター技術は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrookら、2012, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NY、ならびにウイルス学および分子生物学の他のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが非限定的に含まれる。一般に、適したベクターは、少なくとも1つの生物において機能する複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択可能なマーカーを含有する(例えば、WO 01/96584号;WO 01/29058号;および米国特許第6,326,193号を参照)。
【0139】
そのほかのプロモーターエレメント、例えばエンハンサーなどは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、数多くのプロモーターは、開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが最近示されている。多くの場合、プロモーターエレメント間の間隔には柔軟性があり、そのため、エレメントが互いに対して逆位になったり移動したりしてもプロモーター機能は保持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、反応性の低下を起こすことなく、プロモーターエレメント間の間隔を50bpまで隔てることができる。プロモーターによっては、個々のエレメントが協調的に、または独立して、転写を活性化しうるように思われる。
【0140】
プロモーターの例は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それと機能的に連結した任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を作動させることのできる、強力な構成性プロモーター配列である。しかし、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、伸長因子-1αプロモーター、ならびに、これらに限定されるわけではないがアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターを非限定的に含む、他の構成性プロモーター配列を用いることもできる。さらに、本発明は、構成性プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも本発明の一部として想定している。誘導性プロモーターの使用により、それと機能的に連結しているポリヌクレオチド配列の発現を、そのような発現が所望である場合には有効にし、発現が所望でない場合には発現を無効にすることができる、分子スイッチがもたらされる。誘導性プロモーターの例には、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターが非限定的に含まれる。
【0141】
CALLARポリペプチドまたはその部分の発現を評価する目的で、ウイルスベクターによってトランスフェクトまたは感染させようとする細胞の集団からの発現細胞の同定および選択を容易にするために、細胞に導入される発現ベクターに、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子またはその両方を含有させることもできる。他の局面において、選択マーカーを別個のDNA小片上に保有させて、同時トランスフェクション手順に用いることもできる。宿主細胞における発現を可能にするために、選択マーカー遺伝子およびレポーター遺伝子をいずれも、適切な調節配列に隣接させることができる。有用な選択マーカーには、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0142】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定するため、および調節配列の機能性を評価するために用いられる。一般に、レポーター遺伝子とは、レシピエント生物または組織に存在しないかまたはそれらによって発現されず、かつ、その発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって顕在化するポリペプチドをコードする、遺伝子のことである。レポーター遺伝子の発現は、そのDNAがレシピエント細胞に導入された後の適した時点で評価される。適したレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌性アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光性タンパク質の遺伝子が含まれうる(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479:79-82)。適した発現系は周知であり、公知の手法を用いて調製すること、または販売されているものを入手することができる。一般に、レポーター遺伝子の最も高レベルでの発現を示す最小限の5'フランキング領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域をレポーター遺伝子と連結させて、プロモーターにより作動する転写を作用物質がモジュレートする能力を評価するために用いることができる。
【0143】
細胞に遺伝子を導入して発現させる方法は、当技術分野において公知である。発現ベクターに関連して、ベクターは、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞または昆虫細胞に、当技術分野における任意の方法によって容易に導入することができる。例えば、発現ベクターを、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞に導入することができる。
【0144】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション、微粒子銃法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を作製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrookら、2012, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NYを参照されたい。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入のために好ましい方法の1つは、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0145】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が含まれる。RNAベクターは、RNAプロモーターおよび/またはRNA転写物の産生のための他の関連ドメインを有するベクターを含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来しうる。例えば、米国特許第5,350,674号および第5,585,362号を参照されたい。
【0146】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなど、ならびに、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。インビトロおよびインビボで送達媒体として用いるための例示的なコロイド系の1つは、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0147】
非ウイルス性送達系を利用する場合には、例示的な送達媒体の1つはリポソームである。脂質製剤の使用を、宿主細胞への核酸の導入のために想定している(インビトロ、エクスビボまたはインビボ)。別の局面において、核酸を脂質と結合させてもよい。脂質と結合した核酸をリポソームの水性内部の中に封入し、リポソームの脂質二重層の内部に配置させ、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と結合する連結分子を介してリポソームに付着させ、リポソーム内に封じ込め、リポソームと複合体化させ、脂質を含有する溶液中に分散させ、脂質と混合し、脂質と配合し、脂質中に懸濁物として含有させ、ミセル中に含有させるかもしくは複合体化させ、または他の様式で脂質と結合させることができる。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターが結合する組成物は、溶液中のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは二重層構造の中に、ミセルとして、または「崩壊した」構造として存在しうる。それらはまた、溶液中に単に点在していて、大きさも形状も均一でない凝集物を形成する可能性があってもよい。脂質とは、天然脂質または合成脂質であってよい脂肪性物質のことである。例えば、脂質には、細胞質中に天然に存在する脂肪小滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体を含む化合物のクラス、例えば脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドなどが含まれる。
【0148】
使用に適した脂質は、販売元から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma, St. Louis, MOから入手することができ;ジアセチルホスファート(「DCP」)はK & K Laboratories(Plainview, NY)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中にある脂質の貯蔵溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも容易に蒸発するので、それを唯一の溶媒として用いることが好ましい。「リポソーム」とは、閉じた脂質二重層または凝集物の生成によって形成される、種々の単層および多重層の脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜による小胞構造および内部の水性媒質を有するものとして特徴づけることができる。多重層リポソームは、水性媒質によって隔てられた複数の脂質層を有する。それらはリン脂質を過剰量の水性溶液中に懸濁させると自発的に形成される。脂質成分は自己再配列を起こし、その後に閉鎖構造の形成が起こり、水および溶解溶質を脂質二重層の間に封じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5:505-10)。しかし、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質がミセル構造をとってもよく、または単に脂質分子の不均一な凝集物として存在してもよい。また、リポフェクタミン-核酸複合体も想定している。
【0149】
CALLARを含む細胞
別の局面において、本発明は、本明細書に記載されたCALLARをコードする核酸を含む、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、サイトカイン誘導性キラー細胞、それらの細胞株、および他のエフェクター細胞などの、遺伝子改変細胞を含む。1つの態様において、遺伝子改変細胞は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含み、該単離された核酸配列は、アロ抗原またはその断片(第VIII因子サブユニット)を含む細胞外ドメインをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、共刺激分子(4-1BBなど)の細胞内ドメインをコードする核酸配列、および細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζなど)をコードする核酸配列を含む。
【0150】
別の態様において、遺伝子改変細胞は、アロ抗原またはその断片を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの細胞内ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含むCALLARを含む。別の態様において、遺伝子改変細胞は、第VIII因子のA2サブユニットを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激分子の細胞内ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むCALLARを含む。
【0151】
別の態様において、細胞はCALLARを発現する。この態様において、細胞は、B細胞上に発現したアロ抗体に対して高い親和性を有する。結果として、細胞は、アロ抗体を発現するB細胞の死滅を誘導する。
【0152】
別の態様において、遺伝子改変細胞は、T細胞である。この態様において、T細胞は、本明細書に記載されたCALLARを発現し、かつT細胞は、B細胞上に発現した第VIII因子アロ抗体に対して高い親和性を有する。結果として、T細胞は、第VIII因子アロ抗体を発現するB細胞の死滅を誘導する。
【0153】
T細胞が、健常細胞に対する限定された毒性、およびアロ抗体を発現する細胞に対する特異性を有することもまた、有用である。そのような特異性により、自己抗体に特異的ではない現在の療法において優勢であるオフターゲットの毒性が阻止されるか、または低下する。1つの態様において、T細胞は、健常細胞に対する限定された毒性を有する。
【0154】
本発明は、初代細胞などのT細胞、初代T細胞に由来する増大したT細胞、インビトロで分化した幹細胞に由来するT細胞、Jurkat細胞などのT細胞株、他の供給源のT細胞、それらの組み合わせ、および他のエフェクター細胞を含む。
【0155】
例えば、血友病であるがこれに限定されるわけではない、アロ抗体および血清に結合するCALLARの機能的能力は、Jurkatレポーター細胞株において評価されてもよく、自己抗体およびアロ抗体に結合することによるCALLARの活性化に依存することになる(それに応答して、活性化細胞は、その中に含有されているNFAT-GFPレポーター構築物により緑色の蛍光を発する)。そのような方法は、機能的結合能力についての有用なかつ信頼できる定性的測定法である。
【0156】
本明細書に記載されたCALLAR構築物は、VSV-Gシュードタイプ化HIV-1由来レンチウイルス粒子と適合性であり、レンチウイルス形質導入を用いて、健常ドナー由来の初代ヒトT細胞において永久に発現させることができる。死滅効力は、クロムベースの細胞溶解アッセイ、または当技術分野において公知の任意の類似のアッセイにおいて決定することができる。
【0157】
追加的な標的細胞株は、K562細胞の表面上でのヒトモノクローナル抗体の発現により、必要とされる際に生じさせることができる。
【0158】
T細胞の供給源
増大および遺伝子改変の前に、T細胞を対象から入手する。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。T細胞は、皮膚、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、数多くの供給源から入手することができる。本発明のある態様において、当技術分野において入手可能な任意のさまざまなT細胞株を用いることができる。本発明のある態様において、T細胞は、フィコール(商標)分離などの、当業者に公知の任意のさまざまな手法を用いて対象から収集された血液ユニットから得られる。1つの好ましい態様において、個体の流血由来の細胞はアフェレーシスによって入手される。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む。1つの態様においては、アフェレーシスによって収集された細胞を、血漿画分を除去するために洗浄した上で、その後の処理段階のために細胞を適切な緩衝液または培地中に配置することができる。本発明の1つの態様においては、これらの細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄する。1つの代替的な態様において、洗浄溶液はカルシウムを含まず、かつ、マグネシウムを含まないか、またはすべてではないものの多くの二価カチオンを含まない。この場合にも、驚くべきことに、カルシウム非存在下での最初の活性化段階により、活性化の増強がもたらされる。当業者は容易に理解するであろうが、洗浄段階は、半自動化された「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5など)を製造元の指示に従って用いることなどによって、当技術分野において公知の方法によって実現することができる。洗浄の後に、細胞を、例えば、Ca非含有、Mg非含有PBS、PlasmaLyte A、または緩衝剤を含むかもしくは含まない他の食塩液といった、種々の生体適合性緩衝液中に再懸濁させることができる。または、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去して、細胞を培養培地中に直接再懸濁させてもよい。
【0159】
別の態様においては、赤血球を溶解させた上で、例えばPERCOLL(商標)勾配での遠心分離によるか、または向流遠心分離溶出法によって単球を枯渇させることによって、T細胞を末梢血リンパ球から単離する。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、およびCD45RO+T細胞といったT細胞の特定の部分集団を、陽性選択法または陰性選択法によってさらに単離することができる。例えば、1つの好ましい態様において、T細胞は、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tなどの抗CD3/抗CD28(すなわち、3x28)結合ビーズとの、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間にわたるインキュベーションによって単離される。1つの態様において、この期間は約30分間である。1つのさらなる態様において、この期間は、30分間~36時間またはそれ以上、およびそれらの間の全ての整数値の範囲にわたる。1つのさらなる態様において、この期間は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間または6時間である。さらに別の好ましい態様において、この期間は10~24時間である。1つの好ましい態様において、インキュベーション期間は24時間である。白血病の患者からのT細胞の単離のためには、24時間といった比較的長いインキュベーション時間を用いることにより、細胞収量を増やすことができる。腫瘍組織または免疫機能低下個体から腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)を単離する際のように、他の細胞型と比較してT細胞がわずかしか存在しないあらゆる状況で、T細胞を単離するために比較的長いインキュベーション時間を用いることができる。さらに、比較的長いインキュベーション時間の使用により、CD8+ T細胞の捕捉効率を高めることもできる。したがって、この時間を短縮または延長させるだけでT細胞はCD3/CD28ビーズへ結合でき、かつ/または、T細胞に対するビーズの比を増加もしくは減少させることにより(本明細書でさらに説明するように)、T細胞の部分集団は、培養開始時もしくはこの過程の他の時点で、これについて優先的に選択もしくは除外されうる。加えて、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/または抗CD28抗体の比を増加または減少することにより、T細胞部分集団は、培養開始時もしくは他の望ましい時点で、これについてまたはこれに対して優先的に選択される。当業者は、本発明の状況において複数回の選択を使用することができることを認めると思われる。ある態様においては、この選択手順を実行し、活性化および増大の過程において「選択されない」細胞を使用することが望ましいことがある。「選択されない」細胞に、さらに選択を施すこともできる。
【0160】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞への独自の表面マーカーに対する抗体の組合せにより実行することができる。1つの方法は、陰性選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体カクテルを使用する、負磁気免疫接着またはフローサイトメトリーによる細胞ソーティングおよび/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するためのモノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。ある態様において、典型的にはCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、およびFoxP3+を発現する調節性T細胞を濃縮するかまたは陽性選択することが望ましいことがある。または、ある態様においては、抗C25結合ビーズまたは他の類似の選択方法によって、調節性T細胞を枯渇させる。
【0161】
陽性または陰性選択によって望ましい細胞集団を単離するために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。ある態様においては、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、ビーズおよび細胞が一緒に混合される容積の著しい減少(すなわち、細胞の濃度の増加)が望ましいことがある。例えば、1つの態様においては、細胞20億個/mlの濃度を用いる。1つの態様において、細胞10億個/mlの濃度を用いる。さらなる態様においては、細胞1億個/mlよりも高いものを用いる。さらなる態様においては、1000万個/ml、1500万個/ml、2000万個/ml、2500万個/ml、3000万個/ml、3500万個/ml、4000万個/ml、4500万個/mlまたは5000万個/mlの細胞濃度を用いる。さらに別の態様においては、7500万個/ml、8000万個/ml、8500万個/ml、9000万個/ml、9500万個/ml、または1億個/mlからの細胞濃度を用いる。さらなる態様においては、1億2500万個/mlまたは1億5000万個/mlの濃度を用いることができる。高濃度を用いることにより、増加した細胞収量、細胞活性化および細胞増大を生じることができる。さらに、高い細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞のような、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(すなわち、白血病血、腫瘍組織など)からの、関心のある標的抗原を弱く発現する細胞の捕捉効率を高めることができる。そのような細胞集団は、治療的価値があり、かつ得ることが望ましい。例えば、高い濃度の細胞の使用は、通常弱くCD28を発現するCD8+ T細胞をより効率的に選択することを可能にする。
【0162】
1つの関連した態様においては、より低い濃度の細胞を用いることが望ましいことがある。T細胞および表面(例えばビーズなどの粒子)の混合物の高度の希釈により、粒子と細胞間の相互作用は最小化される。これにより、これらの粒子と結合する所望の抗原を大量発現する細胞が選択される。例えば、CD4+ T細胞は、より高いレベルのCD28を発現し、希釈した濃度でCD8+ T細胞よりもより効率的に捕捉される。1つの態様において、用いられる細胞濃度は、5×106個/mlである。別の態様において、用いられる濃度は、約1×105個/ml~1×106個/ml、およびその間の任意の整数であることができる。
【0163】
他の態様において、細胞を、回転器にて、さまざまな時間にわたって、さまざまな速度で、2~10℃または室温のいずれかで、インキュベートすることもできる。
【0164】
また、刺激のためのT細胞を、洗浄段階の後に凍結することもできる。理論に拘束されることは望まないが、凍結段階およびそれに続く解凍段階は、細胞集団における顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な製剤を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄段階の後に、これらの細胞を凍結液中に懸濁させてもよい。多くの凍結液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、かつこの状況において有用であるが、1つの方法は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5% DMSO、または31.25% Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45% NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5% DMSO、または例えばHespanおよびPlasmaLyte Aを含有する他の適した細胞凍結培地の使用を伴い、続いてこれらの細胞は、1分間に1℃の速度で-80℃に凍結され、液体窒素貯蔵タンク内で気相中に貯蔵される。その他の制御された凍結法に加え、即時-20℃または液体窒素中の制御されない凍結を使用してもよい。
【0165】
ある態様においては、凍結保存細胞を本明細書に記載の通りに解凍および洗浄して、室温で1時間静置した後に、本発明の方法を用いる活性化を行う。
【0166】
また、本発明に関連して、本明細書に記載されたような増大された細胞が必要となる前の期間での、対象からの血液試料またはアフェレーシス産物の収集も想定している。そのために、増大させようとする細胞の供給源を、必要な任意の時点で収集し、T細胞などの所望の細胞を、本明細書に記載された説明されたもののような、T細胞療法による恩恵を受けると考えられる任意のさまざまな疾患または病状に対するT細胞療法に後に用いるために単離して凍結することができる。1つの態様においては、血液試料またはアフェレーシス物を、全般的に健常な対象から採取する。ある態様においては、血液試料またはアフェレーシス物を、疾患を発症するリスクがあるが、まだ疾患を発症していない全般的に健常な対象から採取し、関心対象の細胞を、後に用いるために単離して凍結する。ある態様においては、T細胞を増大させ、凍結して、後の時点で用いる。ある態様においては、本明細書に記載されたような特定の疾患の診断後間もなく、しかしいかなる治療も行わないうちに、患者から試料を収集する。1つのさらなる態様においては、細胞を、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス薬、化学療法、放射線療法、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレートおよびFK506などの免疫抑制剤、抗体、または他の免疫除去薬、例えばCAMPATH、抗CD3抗体、サイトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および照射などの作用因子による治療を非限定的に含む、任意のさまざまな妥当な治療様式の前の対象由来の血液試料またはアフェレーシス物から単離する。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子で誘導されるシグナル伝達にとって重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liu et al., Cell, 66:807-815,1991;Henderson et al., Immun., 73:316-321,1991;Bierer et al., Curr. Opin. Immun., 5:763-773,1993)。1つのさらなる態様においては、細胞を患者のために単離して、骨髄移植もしくは幹細胞移植、フルダラビンなどの化学療法薬、外部ビーム照射療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを用いるT細胞除去療法とともに(例えば、その前、同時またはその後に)、後に用いるために凍結する。別の態様においては、細胞を事前に単離した上で、例えばリツキサンなどによるB細胞除去療法後の治療のために後で用いるために凍結する。
【0167】
本発明の1つのさらなる態様においては、T細胞を、治療後に患者から直接入手する。これに関して、ある種の癌治療、特に免疫系を障害を及ぼす薬物による治療の後には、患者が通常であれば治療から回復中であると考えられる治療後間もない時点で、得られるT細胞の品質が、それらがエクスビボで増大する能力の点で最適であるか改善されていることが観察されている。同様に、本明細書に記載された方法を用いるエクスビボ操作の後にも、これらの細胞は生着およびインビボ増大の増強のために好ましい状態にある可能性がある。したがって、本発明に関連して、この回復相の間に、T細胞、樹状細胞、または造血系統の他の細胞を含む血液細胞を収集することを想定している。さらに、ある態様においては、動員(例えば、GM-CSFによる動員)レジメンおよび条件付けレジメンを用いて、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生および/または増大にとって有利に働く状態を、特に治療法の後のある規定された時間枠の間に、対象において作り出すことができる。例示的な細胞型には、T細胞、B細胞、樹状細胞および免疫系の他の細胞が含まれる。
【0168】
T細胞の活性化および増大
一般に、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681 号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;ならびに米国特許出願公開第20060121005号に記載された方法を用いて、T細胞を活性化して増大させることができる。
【0169】
一般に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質、およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドが付着した表面との接触によって増大させられる。特に、T細胞集団は、本明細書に記載されたように、例えば、表面上に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片または抗CD2抗体との接触によって、またはカルシウムイオノフォアを伴うプロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)との接触などによって、刺激することができる。T細胞の表面上のアクセサリー分子の同時刺激のためには、アクセサリー分子と結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞の集団を、T細胞の増殖を刺激するのに適した条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞のいずれかの増殖を刺激するためには、抗CD3抗体および抗CD28抗体。抗CD28抗体の例には、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France)が含まれ、当技術分野において一般に公知である他の方法と同様に用いることができる(Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998;Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9):13191328, 1999;Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999)。
【0170】
ある態様において、T細胞に対する一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、さまざまなプロトコールによって与えることができる。例えば、各シグナルを与える作用物質は、溶液中にあってもよく、または表面と結合させてもよい。表面と結合させる場合、これらの作用物質を同じ表面に結合させてもよく(すなわち、「シス」フォーメーション)、または別々の表面に結合させてもよい(すなわち、「トランス」フォーメーション)。または、一方の作用物質を溶液中の表面に結合させ、もう一方の作用物質が溶液中にあってもよい。1つの態様においては、共刺激シグナルを与える作用物質を細胞表面と結合させ、一次活性化シグナルを与える作用物質は溶液中にあるか、または表面と結合させる。ある態様においては、両方の作用物質が溶液中にあってもよい。別の態様において、これらの物質は可溶形態にあり、続いて、Fc受容体を発現する細胞または抗体またはこれらの物質と結合する他の結合物質などの表面と架橋結合することができる。これに関しては、例えば、本発明においてT細胞を活性化および増大させるために用いることを想定している人工抗原提示細胞(aAPC)についての、米国特許出願公開第20040101519号および第20060034810号を参照されたい。
【0171】
1つの態様においては、2種の作用物質を、同じビーズ上に、すなわち「シス」か、または別々のビーズ上に、すなわち「トランス」かのいずれかとして、ビーズ上に固定化する。一例として、一次活性化シグナルを与える作用物質は抗CD3抗体またはその抗原結合断片であり、共刺激シグナルを与える作用物質は抗CD28抗体またはその抗原結合断片である;そして、両方の作用物質を等モル量で同じビーズに同時固定化する。1つの態様においては、CD4+ T細胞の増大およびT細胞増殖のためにビーズと結合させる各抗体を1:1の比で用いる。本発明のある局面においては、ビーズと結合させる抗CD3:CD28抗体の比として、1:1の比を用いて観察される増大と比較してT細胞増大の増加が観察されるようなものを用いる。1つの特定の態様においては、1:1の比を用いて観察される増大と比較して約1~約3倍の増加が観察される。1つの態様においては、ビーズと結合させるCD3:CD28抗体の比は、100:1~1:100、およびそれらの間のすべての整数の範囲にある。本発明の1つの局面においては、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子と結合され、すなわちCD3:CD28の比は1未満である。本発明のある態様において、ビーズと結合させる抗CD28抗体と抗CD3抗体との比は、2:1よりも大きい。1つの特定の態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:100のCD3:CD28比を用いる。別の態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:75のCD3:CD28比を用いる。さらなる態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:50のCD3:CD28比を用いる。別の態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:30のCD3:CD28比を用いる。1つの好ましい態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:10のCD3:CD28比を用いる。別の態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:3のCD3:CD28比を用いる。さらに別の態様においては、ビーズと結合させる抗体に3:1のCD3:CD28比を用いる。
【0172】
T細胞または他の細胞標的を刺激するには、粒子と細胞との比として1:500~500:1およびその間の任意の整数値を用いることができる。当業者が容易に理解するように、粒子と細胞との比は、標的細胞に対する粒子サイズに依存しうる。例えば、小さいサイズのビーズは2、3個の細胞と結合しうるに過ぎないが、一方、より大きいビーズは多くと結合しうると考えられる。ある態様において、細胞と粒子との比は1:100~100:1およびその間の任意の整数値の範囲にあり、さらなる態様において、この比は1:9~9:1およびその間の任意の整数値を含み、これを同じくT細胞を刺激するために用いることができる。T細胞の刺激をもたらす、抗CD3が結合した粒子および抗CD28が結合した粒子とT細胞との比は、上述したようにさまざまでありうるが、いくつかの好ましい値には、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1および15:1が含まれ、ここで、T細胞1個あたり粒子少なくとも1:1が、1つの好ましい比である。1つの態様においては、1:1またはそれ未満である粒子と細胞との比を用いる。1つの特定の態様において、好ましい粒子:細胞比は1:5である。さらなる態様において、粒子と細胞との比は、刺激の日に応じて変化しうる。例えば、1つの態様において、粒子と細胞との比は第1日に1:1~10:1であり、その後最長10日間にわたって毎日または1日おきに追加の粒子を細胞に添加して、最終的な比が1:1~1:10となる(添加の日の細胞数に基づく)。1つの特定の態様において、粒子と細胞との比は刺激の1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目に1:5に調節される。別の態様において、粒子は毎日または1日おきに添加され、最終的な比は1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目には1:5である。別の態様において、粒子と細胞との比は刺激の1日目に2:1であり、刺激の3日目および5日目に1:10に調節される。別の態様において、粒子は毎日または1日おきに添加され、最終的な比は1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目には1:10である。当業者は、さまざまな他の比が、本発明における使用に適することを理解するであろう。特に、比は粒子サイズならびに細胞のサイズおよび型に応じて多様であると考えられる。
【0173】
本発明のさらなる態様においては、T細胞などの細胞を、作用物質でコーティングされたビーズと一緒にし、その後にビーズと細胞を分離した上で、続いて細胞を培養する。1つの代替的な態様においては、培養の前に、作用物質でコーティングされたビーズと細胞を分離せずに、一緒に培養する。1つのさらなる態様においては、ビーズおよび細胞を磁力などの力の印加によってまず濃縮して、細胞表面マーカーの連結を増加させて、それにより、細胞刺激を誘導する。
【0174】
例として、抗CD3および抗CD28が付着した常磁性ビーズ(3x28ビーズ)をT細胞と接触させることによって、細胞表面タンパク質を連結させることができる。1つの態様においては、細胞(例えば、104~109個のT細胞)およびビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ、1:1の比)を、緩衝液中、例えばPBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの二価カチオンを含まない)中で一緒にする。この場合も、当業者は、あらゆる細胞濃度を用いうることを容易に理解するであろう。例えば、標的細胞が試料中に非常に稀であって、試料のわずかに0.01%を構成してもよく、または試料の全体(すなわち、100%)が関心対象の標的細胞で構成されてもよい。したがって、あらゆる細胞数が本発明の状況の範囲に含まれる。ある態様においては、粒子と細胞を一緒にして混合する容積を著しく減らして(すなわち、細胞の濃度を高めて)、細胞と粒子の最大の接触を確実にすることが望ましいと考えられる。例えば、1つの態様においては、細胞約20億個/mlの濃度を用いる。別の態様においては、細胞1億個/ml超を用いる。1つのさらなる態様においては、1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個/mlの細胞濃度を用いる。さらに別の態様においては、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個または1億個/mlの細胞濃度を用いる。さらなる態様において、細胞1億2500万または1億5000万個/mlの濃度を用いることができる。高濃度を用いることにより、細胞収量、細胞活性化、および細胞増大の増加がもたらされうる。さらに、高い細胞濃度を用いることにより、CD28陰性T細胞のように関心対象の標的抗原を弱く発現する細胞のより効率的な捕捉が可能になる。ある態様においては、そのような細胞集団は治療的価値を有する可能性があり、入手することが望ましいと考えられる。例えば、高濃度の細胞を用いることにより、通常は比較的弱いCD28発現を有するCD8+ T細胞のより効率的な選択が可能にある。
【0175】
本発明の1つの態様においては、混合物を、数時間(約3時間)~約14日間、またはその間の任意の整数値単位の時間にわたって培養しうる。別の態様において、混合物を21日間培養しうる。本発明の1つの態様においては、ビーズとT細胞を約8日間一緒に培養する。別の態様においては、ビーズとT細胞は2~3日間一緒に培養する。数回の刺激サイクルも望ましく、その結果、T細胞の培養時間は60日間またはそれより長くなる。T細胞の培養に適した条件には、血清(例えばウシ胎仔血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβおよびTNF-α、または当業者に公知である細胞増殖のための他の添加物を含む、増殖および生存のために必要な因子を含みうる適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI Medium 1640または、X-vivo 15(Lonza))が含まれる。細胞の増殖のための他の添加剤には、界面活性剤、プラスマネート、および還元剤、例えばN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどが非限定的に含まれる。培地には、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンが添加された、血清非含有であるか、またはT細胞の増殖および増大のために十分な、適量の血清(または血漿)もしくは規定されたホルモンのセットおよび/もしくは一定量のサイトカインが加えられた、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20が含まれうる。ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの抗生物質は実験培養物のみに含められ、対象に輸注される細胞の培養物には含められない。標的細胞は、増殖を支えるために必要な条件下、例えば適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5% CO2)の下で維持される。
【0176】
多様な刺激時間にわたって曝露されたT細胞は、異なる特性を示しうる。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスを受けた末梢血単核細胞産物は、ヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を、細胞傷害性またはサプレッサーT細胞集団(TC、CD8+)よりも多く有する。CD3受容体およびCD28受容体を刺激することによるT細胞のエクスビボ増大では、約8~9日目より前には主としてTH細胞からなるT細胞集団が生じるが、約8~9日目以後、T細胞の集団はTC細胞の集団を次第に多く含むようになる。したがって、治療の目的によっては、主としてTH細胞で構成されるT細胞集団を対象に輸注することが有利な場合がある。同様に、TC細胞の抗原特異的サブセットが単離されている場合には、このサブセットをより高度に増大させることが有益な場合がある。
【0177】
さらに、CD4およびCD8マーカーのほかに、他の表現型マーカーも、細胞増大の過程で顕著に、しかし大部分は再現性を伴って変動する。このため、そのような再現性により、活性化T細胞製剤を特定の目的に合わせて作ることが可能になる。
【0178】
治療法
本発明はまた、第VIII因子抗体発現細胞(例えば、FVIII補充療法で処置された血友病を有する対象における抗FVIII抗体)と関連する障害を予防し、処置し、および/または管理するための方法も提供する。自己抗体発現細胞および/またはアロ抗体発現細胞と関連する障害の非限定的な例には、血友病および関連障害が含まれる。1つの態様において、対象はヒトである。
【0179】
1つの局面において、本発明は、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法を含む。方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列は、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列、およびCD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する対象において抗体を処置する。
【0180】
別の局面において、本発明は、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法を含む。方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列は、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列、および細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する対象におけるFVIII抗体と関連する障害を処置する。
【0181】
本発明の方法は、自己抗体発現細胞およびアロ抗体発現細胞に結合する本発明のCALLAR T細胞を、必要とする対象に投与する段階を含む。1つの態様において、対象は、対象の血清中の抗体を除去するかまたは減少させるために、血漿交換または別の臨床処置を受ける。自己抗体および/またはアロ抗体などの血清抗体を除去するかまたは減少させる方法には、当技術分野において公知の化学的方法または他の方法が含まれうる。処置法は、自己抗体および/もしくはアロ抗体に特異的であってもよく、または、任意の抗体について一般化されていてもよい。1つの態様において、対象はヒトである。自己抗体発現細胞およびアロ抗体発現細胞と関連する疾患の非限定的な例には、FVIII補充療法で処置された血友病を有する対象におけるFVIII抗体などが含まれる。
【0182】
本明細書に記載された処置の方法において、対象から単離されたT細胞を、適切なCALLARを発現するように改変し、エクスビボで増大させ、次いで、対象中に再び輸注することができる。改変T細胞は、第VIII因子特異的B細胞などの標的細胞を認識し、活性化されて、アロ免疫標的細胞の死滅を結果としてもたらす。
【0183】
インビトロ、インサイチュ、またはインビボでCALLAR発現細胞をモニタリングするために、CALLAR細胞は、検出可能なマーカーをさらに発現することができる。CALLARが標的に結合すると、検出可能なマーカーが活性化されて発現し、それを、フローサイトメトリーなどの当技術分野において公知のアッセイによって検出することができる。
【0184】
いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、CALLAR改変T細胞によって惹起される抗FVIII抗体免疫応答は、能動免疫応答または受動免疫応答でありうる。さらに別の態様において、改変T細胞は、B細胞を標的とする。例えば、標的抗体発現B細胞は、近くの抗体発現細胞に対して以前に反応したことがあるCALLAR再誘導T細胞による間接破壊を受けやすい可能性がある。
【0185】
1つの態様において、本発明の完全ヒトCALLAR遺伝子改変T細胞は、哺乳動物におけるエクスビボ免疫処置および/またはインビボ治療法のためのワクチンの一種として使用することができる。1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0186】
エクスビボ免疫処置に関しては、細胞を哺乳動物に投与する前に、以下のうちの1つをインビトロで行いうる:i)細胞の増大、ii)CALLARをコードする核酸を細胞に導入すること、またはiii)細胞の凍結保存。
【0187】
エクスビボ手順は当技術分野において周知であり、以下でより詳細に考察する。手短に述べると、細胞を哺乳動物(例えばヒト)から単離した上で、本明細書で開示されたCALLARを発現するベクターによって遺伝子改変する(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトを行う)。CALLAR改変細胞を哺乳動物レシピエントに投与することにより、治療的利益を得ることができる。哺乳動物レシピエントはヒトであってよく、CALLAR改変細胞はレシピエントに対して自己であることができる。または、細胞がレシピエントに対して同種、同系または異種であることもできる。
【0188】
本発明の細胞に適用することができる造血幹細胞および始原細胞のエクスビボ増大のための手順の一例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,199,942号に記載されている。他の適した方法は当技術分野において公知であり、このため、本発明は、エクスビボ細胞増大のいずれかの特定の方法に限定されると解釈されるべきではない。手短に述べると、T細胞のエクスビボ培養および増大は一般に以下を含む:(1)CD34+造血幹細胞および始原細胞を哺乳動物から、末梢血採取物または骨髄エクスプラントから収集すること;ならびに(2)そのような細胞をエクスビボ増大させること。米国特許第5,199,942号に記載された細胞増殖因子のほかに、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドなどの他の因子を、細胞の培養および増大のために用いることができる。
【0189】
エクスビボ免疫処置に関して細胞ベースのワクチンを用いることに加えて、本発明はまた、患者における抗原に向けての免疫応答を誘発するためのインビボ免疫処置のための組成物および方法も含む。
【0190】
一般に、本明細書に記載の細胞は、免疫機能が低下した個体において生じる疾患の治療および予防に利用することができる。特に、本発明のCALLAR改変T細胞は、抗体の発現と関連する疾患、障害、および状態の治療に用いられる。ある態様において、本発明の細胞は、抗体の発現と関連する疾患、障害、および状態を発症するリスクのある患者の治療に用いられる。したがって、本発明は、FVIII補充療法で処置された血友病を有する対象におけるFVIII抗体などの抗体の発現と関連する疾患、障害、および状態の治療または予防のための方法であって、それを必要とする対象に対して、本発明のCALLAR改変T細胞の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0191】
本発明のCALLAR改変T細胞は、単独で、または希釈剤および/またはIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の成分と組み合わせた薬学的組成物として投与することができる。手短に述べると、本発明の薬学的組成物は、本明細書に記載の標的細胞集団を、1つまたは複数の薬学的または生理的に許容される担体、希釈剤または添加剤と組み合わせて含みうる。そのような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液;ブドウ糖、マンノース、ショ糖またはデキストラン、マンニトールのような炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンのようなアミノ酸;酸化防止剤;EDTAまたはグルタチオンのようなキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);並びに保存剤を含有してもよい。本発明の組成物は、1つの態様において静脈内投与用に製剤化される。
【0192】
本発明の薬学的組成物は、治療(または予防)される疾患に適した方法で投与することができる。投与量および投与回数は、患者の状態、並びに患者の疾患の種類および重症度などの因子により決定されるが、適量は臨床試験により決定され得る。
【0193】
一般に、本明細書に記載のT細胞を含む薬学的組成物は、細胞104~109個/kg体重、場合によっては細胞105~106個/kg体重であって、これらの範囲内のすべての整数値を含む投与量で投与することができる。また、T細胞組成物をこれらの用量で多回投与することもできる。細胞は、免疫療法において一般的に公知である輸注手法を用いることによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照)。特定の患者に関する最適な投与量および治療レジメンは、疾患の徴候に関して患者をモニタリングして、それに応じて治療を調節することによって、医療の当業者によって容易に決定されうる。
【0194】
ある態様においては、活性化されたT細胞が対象に投与される。投与に続いて、血液を再び採取するか、またはアフェレーシスを行い、T細胞を本明細書に記載の方法を用いて活性化し、そこから増大させ、次いで患者に再び輸注する。この過程を2、3週毎に複数回行うことができる。ある態様において、T細胞は10cc~400ccの採取血から活性化させることができる。ある態様において、T細胞は20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90ccまたは100ccの採取血から再活性化される。理論に拘束されるわけではないが、この複数回の採血/複数回の再輸注プロトコールを用いて、T細胞のある特定の集団を選別することができる。
【0195】
本発明の細胞の投与は、エアゾール吸引、注射、経口摂取、輸液、植え付けまたは移植を含む、任意の好都合な手段を用いて実施することができる。本明細書に記載された組成物は、患者に対して、経動脈的、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与することができる。1つの態様において、本発明のT細胞組成物は、患者に対して、皮内注射または皮下注射によって投与される。別の態様において、本発明のT細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。T細胞の組成物を腫瘍内、リンパ節内または感染部位に直接注射してもよい。
【0196】
本発明のある態様においては、本明細書に記載の方法、またはT細胞を治療的レベルまで増大させることが当技術分野において公知である他の方法を用いて細胞を活性化および増大させ、MS患者に対する抗ウイルス療法、シドホビルおよびインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても公知)もしくはナタリズマブ治療、乾癬患者に対するエファリズマブ治療、またはPML患者に対する他の治療などの薬剤による治療を非限定的に含む、任意のさまざまな妥当な治療様式とともに(例えば、前に、同時に、または後に)患者に投与する。さらなる態様において、本発明のT細胞を、化学療法、放射線照射、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレートおよびFK506など、抗体、またはCAMPATHなどの他の免疫除去薬、抗CD3抗体または他の抗体療法、サイトキシン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および照射と組み合わせて用いてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存型ホスファターゼのカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子が誘導したシグナル伝達に重要であるp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)かのいずれかである(Liu et al., Cell, 66:807-815, 1991;Henderson et al., Immun., 73:316-321, 1991;Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)。1つのさらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法薬、外部ビーム照射(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを用いるT細胞除去療法と組み合わせて(例えば、その前、同時またはその後に)、患者に投与される。別の態様において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどによるB細胞除去療法の後に投与される。例えば、1つの態様において、対象は、高用量の化学療法薬に続いて末梢血幹細胞移植を行う標準治療を受けることができる。ある態様においては、移植後に、対象は本発明の増大された免疫細胞の輸注を受ける。1つの追加的な態様において、増大された細胞は、手術の前または後に投与される。
【0197】
患者に投与される上記の治療の投与量は、治療される病状および治療のレシピエントの正確な性質に応じて異なると考えられる。ヒトへの投与に関する投与量の増減は、当技術分野において許容される実践に従って行うことができる。例えば、CAMPATHの用量は、一般に成人患者について1~約100mgの範囲であり、通常は1~30日の期間にわたって毎日投与される。好ましい一日量は1~10mg/日であるが、場合によっては、最大40mg/日までのより多くの用量を用いることもできる(米国特許第6,120,766号に記載)。
【実施例0198】
実験例
ここで本発明を、以下の実験例を参照しながら説明する。これらの例は例示のみを目的として提供されるものであり、本発明はこれらの例に限定されるとは全くみなされるべきではなく、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意かつすべての変更も包含するとみなされるべきである。
【0199】
それ以上の説明がなくても、当業者は、前記の説明および以下の例示的な例を用いて、本発明の化合物を作成して利用し、請求される方法を実施することができる。以下の実施例は、このため、本発明の好ましい態様を具体的に指摘しており、本開示の残りを限定するものとは全くみなされるべきでない。
【0200】
本明細書に開示された実験の実行において用いた材料および方法を、次に説明する。
【0201】
A2 CALLARおよびC2 CALLARの検出
T細胞を、CD3/28ビーズで24時間活性化し、その後、4-1BBシグナル伝達ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを利用するA2-CALLARまたはC2-CALLAR(それぞれ、A2bbzおよびC2bbz)のレンチウイルス形質導入を行った。mCherryがζドメインのC末端に融合したA2-CALLAR構築物またはC2-CALLAR構築物(それぞれ、A2bbz-mChまたはC2bbz-mCh)を発現するレンチウイルスベクターもまた、生成して形質導入に用いた。FMC63bbz CAR(CD19 CAR)を、対照として用いた。T細胞を、形質導入後5日目に、示されたようにA2特異的抗体またはC2特異的抗体のいずれかで染色して、A2含有CALLARおよびC2含有CALLARの発現を検出した。プロテインLを用いて、FMC63bbz CARについて染色した。
【0202】
A2 CALLARおよびC2 CALLARの活性化
いくつかの態様において、示されたCARまたはCALLARが形質導入されたT細胞を、OKT3(ポリクローナルT細胞活性化のため)、抗A2、または抗C2でコーティングしたマイクロウェル上にプレーティングした。上清を24時間で収集し、IFN-yをELISAによって測定した。いくつかの態様において、T細胞を、さまざまなT細胞(エフェクター)対標的細胞比(E:T比)で混合して、標的細胞上に発現したコグネイトリガンドに対する、T細胞上に発現したCALLARまたはCARの結合時の、細胞傷害性およびサイトカイン産生を測定した。いくつかの実験において、Nalm-6 B細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株を、それぞれのドメインに対するマウスモノクローナル抗体に由来する可変ドメイン配列を用いて生成されたA2特異的表面免疫グロブリンまたはC2特異的表面免疫グロブリンのいずれかを発現するように操作した。
【0203】
実験の結果を、次に説明する。
【0204】
キメラ分子を、膜貫通ドメイン、およびT細胞を活性化してそれらの細胞傷害機能のきっかけとなる細胞質シグナル伝達ドメインに連結された、ヒトFVIIIに由来するFVIIIエピトープを発現するようにデザインした。可能なデザインの非限定的な実施例を、
図1および2に模式的に示す。キメラ分子を、受容体ターゲティングのためのscFvを用いる伝統的なキメラ抗原受容体すなわちCARから区別するために、CALLAR(キメラアロ抗原受容体(
Chimeric
ALLo
Antigen
Receptor))と命名する。最初のCALLARは、ヒトFVIII由来のA2ドメインおよびC2ドメインを組み込んでおり、それは、大抵の阻害抗体が、これらの2つのドメインのうちの1つにおけるエピトープに結合するためである。これらのCALLARを、遺伝子改変(例えば、レンチウイルスベクター)によってヒトT細胞中に導入した時に、これらのCALLAR改変T細胞は、活性化されて、FVIIIのA2ドメインまたはC2ドメインのいずれかに結合する表面免疫グロブリン(sIg)を発現するB細胞および形質細胞を死滅させた。改変T細胞は、インビボでFVIII特異的B細胞を排除して、FVIII阻害抗体の根絶をもたらすことが期待される。KIRベースのCALLAR(
図2、右側)は、DAP12とともにヒトT細胞中に導入された時に、インビトロで堅牢な抗原特異的増殖およびエフェクター機能のきっかけとなることができる。いくつかの態様において、T細胞は、DAP12と共発現される、FVIIIドメインをKIR、例えば、KIRS2、KIR2DS2の膜貫通ドメインおよび短い細胞質ドメインと融合させることによって生成されるキメラKIRを含むCALLARを含むように、遺伝子改変される。いくつかの態様において、CALLARは、CD8αに由来する細胞外ヒンジを介して接続される、FVIIIのA2ドメインまたはC2ドメインを含む。いくつかの態様において、CALLARは、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Serなどの細胞外ヒンジに由来するグリシン-セリンを介して接続される、FVIIIのA2ドメインまたはC2ドメインを含む。いくつかの態様において、遺伝子改変T細胞を、FVIII抗体を有する対象に投与する。本発明において有用なキメラ分子のいくつかの部分の配列を、SEQ ID NO:21~28として提供する。
【0205】
ヒトT細胞上のA2 CALLARおよびC2 CALLARの表面発現を分析した(
図3)。CD3/28活性化T細胞のレンチウイルスベクター形質導入により、A2特異的CALLARおよびC2特異的CALLARは両方とも、T細胞の表面上に発現したことが実証された。T細胞を、CD3/28ビーズで24時間活性化し、その後、4-1BBシグナル伝達ドメインおよびζシグナル伝達ドメインを利用するA2-CALLARまたはC2-CALLAR(それぞれ、A2bbzおよびC2bbz)のレンチウイルス形質導入を行った。A2-CALLAR構築物またはC2-CALLAR構築物(A2bbz-mChまたはC2bbz-mCh)を発現するレンチウイルスベクターもまた、生成して形質導入に用いた。FMC63bbz CAR(抗CD19 CAR)を、対照として用いた。T細胞を、形質導入後5日目に、示されたようにA2特異的抗体またはC2特異的抗体のいずれかで染色して、A2含有CALLARおよびC2含有CALLARの発現を検出した。プロテインLを用いて、FMC63bbz CARについて染色した。
フローサイトメトリーを用いて、初代T細胞上のA2ベースのCARおよびC2ベースのCARを分析した。健常ドナーから新しく単離したヒトT細胞に、以下のCAR:FMC63-bbz、A2-bbz、およびC2-bbzをコードするレンチウイルスベクター上清で形質導入した。A2bbz-mChおよびC2bbz-mChは、別々のタンパク質としてのそれぞれのCARおよびmCherryの発現のためのバイシストロン性構築物をコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたT細胞に相当する。CAR発現を、フローサイトメトリーによって評定した。簡潔に言うと、T細胞を、10% FBSを含むRPMI 1640培地において培養し、抗CD3/抗CD28 Dynabeads(invitrogen)で刺激した。刺激の24時間後、T細胞に、CARレンチウイルスベクター上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入の6~8日後に、T細胞を、示されたように、ビオチン化プロテインL抗体およびその後のストレプトアビジンPE(BD Biosciences)、抗A2およびその後のヤギ抗マウス-FITC(Jackson ImmunoResearch)、または抗C2およびその後のヤギ抗マウス-FITC(Jackson ImmunoResearch)で染色した。CAR発現を、フローサイトメトリー(LSR-II、BD)によって評定した。フローサイトメトリー分析は、Flowjo(Tree Star Inc)を用いることによって実施した。形質導入後、A2ドメインベースのCARおよびC2ドメインベースのCARが、形質導入されたT細胞の細胞表面上に効率的に発現したことが観察された。
【0206】
これらのCALLARを発現するT細胞は、IFN-γを分泌し、A2-CALLARは、抗A2抗体に応答して、抗C2抗体には応答しなかった。期待されたように、C2-CALLAR T細胞は、抗C2抗体に応答したが、抗A2抗体には応答しなかった。CD19特異的な標準CARを発現する対照T細胞は、抗A2または抗C2のいずれにも応答しなかった。しかし、すべてのCALLARまたはCAR T細胞は、OKT3でのポリクローナル刺激に応答した(
図4)。示されたCARまたはCALLARが形質導入されたT細胞を、OKT3(ポリクローナルT細胞活性化のため)、抗A2、または抗C2でコーティングしたマイクロウェル上にプレーティングした。上清を24時間で収集し、IFN-γをELISAによって測定した。T細胞に、抗CD19 CAR、A2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2-BBz)、またはC2ドメイン含有受容体(C2-BBz)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。培養の7~9日後に、T細胞を、CD3に対する抗体(クローンOKT3)、抗A2(Green Mountain Antibodies)、および抗C2(Green Mountain Antibodies)でプレコーティングしたポリスチレンマルチウェルプレートに移した。37℃での24時間インキュベーション後に、上清を、ELISAによるインターフェロン-γ(IFNγ)分析のために収集した。結果により、すべてのT細胞が、抗CD3抗体による活性化後にIFNγを産生できることが示される。A2-BBz形質導入T細胞のみが、A2特異的抗体に応答してIFNγを産生する。C2-BBz形質導入T細胞のみが、C2特異的抗体に応答してIFNγを産生する。
【0207】
CD19+ Nalm6細胞を、抗原特異的B細胞についてのCALLARモデルシステムにおいて、FVIII特異的キメラ免疫グロブリンを発現するように操作した(
図5)。ヒト末梢血T細胞に、A2-FVIII-CALLARs、C2-FVIII-CALLARs、Dsg3-CAAR、もしくはCD19-CAR(対照)を形質導入したか、または非形質導入T細胞(NTD)とした。T細胞を、FVIIIのA2ドメインに特異的な表面免疫グロブリンを発現するように操作されたNalm6細胞と、さまざまなエフェクター対標的(E:T)比で混合した。特異的溶解パーセントを、16時間で51Cr放出アッセイによって測定した。
【0208】
表面免疫グロブリンに応答するこれらのCALLARの能力を測定する研究は、本明細書の他所に記載する。いくつかの態様において、K562細胞は、CD79aとCD79bとを共発現しうる。
【0209】
T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(cd8)BBz)、または同じCD8スペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(cd8)BBz)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した(
図6)。培養の7~9日後に、形質導入T細胞の細胞傷害活性を、示されたように、CD19を発現するように操作されたK562標的細胞(K562-CD19)、A2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-A2)、またはC2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-C2)、およびさまざまなエフェクター対標的細胞比(E:T比)を用いて、4時間
51Cr放出アッセイによって評価した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞に対して細胞傷害性を示す。A2(cd8)BBz形質導入T細胞のみが、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。C2(cd8)BBz形質導入T細胞のみが、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。
【0210】
T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、合成(Gly)
4-Ser細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)BBz)、または同じ(Gly)
4-Serスペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)BBz)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した(
図7)。培養の7~9日後に、形質導入T細胞の細胞傷害活性を、示されたように、CD19を発現するように操作されたK562標的細胞(K562-CD19)、A2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-A2)、またはC2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-C2)、およびさまざまなエフェクター対標的細胞比(E:T比)を用いて、4時間
51Cr放出アッセイによって評価した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞に対して細胞傷害性を示す。A2(gs)BBz形質導入T細胞のみが、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。C2(gs)BBz形質導入T細胞のみが、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。
【0211】
T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、KIR/DAP12シグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)KIRS2)、または同じKIR/DAP12シグナル伝達を有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)KIRS2)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した(
図8)。培養の7~9日後に、形質導入T細胞の細胞傷害活性を、示されたように、CD19を発現するように操作されたK562標的細胞(K562-CD19)、A2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-A2)、またはC2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-C2)、およびさまざまなエフェクター対標的細胞比(E:T比)を用いて、4時間
51Cr放出アッセイによって評価した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞に対して細胞傷害性を示す。A2(gs)KIRS2形質導入T細胞のみが、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。C2(gs)KIRS2形質導入T細胞のみが、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞の溶解を媒介する。
【0212】
T細胞に、抗CD19 CAR(19BBz)、CD8細胞外スペーサーを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するA2ドメイン含有キメラアロ抗体受容体(A2(gs)KIRS2)、または、同じCD8スペーサーを有するC2ドメイン含有受容体(C2(cd8)BBz)、合成(Gly)
4-Serを有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)BBz)、もしくはKIR/DAP12シグナル伝達を有するC2ドメイン含有受容体(C2(gs)KIRS2)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した(
図9)。培養の7~9日後に、形質導入T細胞を、CD19を発現するように操作されたK562標的細胞(K562-CD19)、A2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-A2)、またはC2特異的表面免疫グロブリンを発現するように操作されたK562標的細胞(K562-C2)と、1:1比で混合した。抗CD3および抗CD28でコーティングされた刺激物質マイクロビーズ(CD3/28ビーズ、Dynal)または培地のみを、それぞれ、追加的な陽性対照および陰性対照として用いた。37℃での24時間インキュベーション後に、上清を、ELISAによるインターフェロン-γ(IFNγ)分析のために収集した。19BBz発現T細胞のみが、CD19+標的K562細胞またはCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。A2(cd8)BBz T細胞、A2(gs)BBz T細胞、およびA2(gs)KIRS2 T細胞は、抗A2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。C2(cd8)BBz T細胞、C2(gs)BBz T細胞、およびC2(gs)KIRS2 T細胞は、抗C2表面免疫グロブリンを発現するK562標的細胞または陽性対照のCD3/28ビーズに応答して、増強されたIFNγ産生を示す。
【0213】
追加的な研究には、A2およびC2について最適な構造を決定するために細胞外ヒンジドメインを検討することが含まれる。さらに、抗A2抗体および抗C2抗体による活性化の分析は、CALLARがいかに広く、さまざまなエピトープにわたる抗体に応答するかを決定することになる。A2およびC2は、フォン・ウィルブランド因子(vWF)、リン脂質、および血小板などの、無傷のFVIIIに対する結合パートナーと弱く相互作用する可能性を有しうる。
【0214】
いくつかの態様において、本システムは、血友病AにおけるFVIIIのような機能的に同種の酵素に対する寛容を作り出すようにB細胞および形質細胞を操るための、堅牢な方法を提供する。
【0215】
前記第VIII因子またはその断片が、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の単離された核酸。
前記CD8α鎖ヒンジが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、かつ前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の単離された核酸。
アロ抗原またはその断片を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、4-1BBの細胞内ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)。
第VIII因子のA2サブユニットを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子の細胞内ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)。
前記CD8α鎖ヒンジが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、かつ前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の単離されたCALLAR。
ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、サイトカイン誘導性キラー細胞、それらの細胞株、および他のエフェクター細胞からなる群より選択される、請求項26に記載の細胞。
(a)第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットと、リンカーと、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片とを含む、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)、ならびに
(b)DAP12
を含む、単離されたKIR/DAP12受容体複合体。
単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)とDAP12とを含む遺伝子改変細胞であって、該CALLARが、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットを含む細胞外ドメイン、リンカー、およびKIRの断片を含み、該KIRが、膜貫通領域および細胞質ドメインを含む、前記遺伝子改変細胞。
さらに、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法が含まれる。方法は、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニット、リンカー、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片を含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含み、かつ、DAP12をさらに含む遺伝子改変T細胞の有効量を、対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する。
[本発明1001]
キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と、CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、前記単離された核酸配列。
[本発明1002]
キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列であって、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列と、膜貫通ドメインをコードする核酸配列と、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列と、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列とを含む、前記単離された核酸配列。
[本発明1003]
前記アロ抗原が、第VIII因子またはその断片である、本発明1001の単離された核酸配列。
[本発明1004]
前記第VIII因子またはその断片が、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1003の単離された核酸配列。
[本発明1005]
前記第VIII因子の断片が、第VIII因子のA2サブユニットまたはC2サブユニットからなる群より選択される、本発明1003の単離された核酸配列。
[本発明1006]
前記膜貫通ドメインの核酸配列が、CD8α鎖ヒンジおよび膜貫通ドメインをコードする、本発明1001または1002のいずれかの単離された核酸配列。
[本発明1007]
前記CD8α鎖ヒンジが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、かつ前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、本発明1006の単離された核酸配列。
[本発明1008]
前記共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列が、4-1BBシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む、本発明1002の単離された核酸配列。
[本発明1009]
前記4-1BB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む、本発明1001または1008のいずれかの単離された核酸配列。
[本発明1010]
前記細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列が、CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む、本発明1002の単離された核酸配列。
[本発明1011]
前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む、本発明1001または1010のいずれかの単離された核酸配列。
[本発明1012]
本発明1001~1011のいずれかの単離された核酸配列を含む、ベクター。
[本発明1013]
レンチウイルスベクターである、本発明1012のベクター。
[本発明1014]
RNAベクターである、本発明1012のベクター。
[本発明1015]
アロ抗原またはその断片を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、4-1BBの細胞内ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)。
[本発明1016]
第VIII因子のA2サブユニットを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子の細胞内ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)。
[本発明1017]
前記アロ抗原が、第VIII因子またはその断片である、本発明1015の単離されたCALLAR。
[本発明1018]
前記第VIII因子またはその断片が、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1015の単離されたCALLAR。
[本発明1019]
前記第VIII因子の断片が、第VIII因子のA2断片およびC2断片からなる群より選択される、本発明1017の単離されたCALLAR。
[本発明1020]
前記膜貫通ドメインが、CD8α鎖ヒンジおよび膜貫通ドメインを含む、本発明1015または1016のいずれかの単離されたCALLAR。
[本発明1021]
前記CD8α鎖ヒンジが、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含み、かつ前記膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、本発明1020の単離されたCALLAR。
[本発明1022]
前記共刺激分子の細胞内ドメインが、4-1BB細胞内ドメインを含む、本発明1016の単離されたCALLAR。
[本発明1023]
前記4-1BB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:10を含む、本発明1015または1022のいずれかの単離されたCALLAR。
[本発明1024]
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、本発明1016の単離されたCALLAR。
[本発明1025]
前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む、本発明1015または1024のいずれかの単離されたCALLAR。
[本発明1026]
本発明1015~1025のいずれかのCALLARを含む、遺伝子改変細胞。
[本発明1027]
CALLARを発現し、かつ、B細胞上に発現した抗体に対して高い親和性を有する、本発明1026の細胞。
[本発明1028]
CALLARを発現し、かつ、抗体を発現するB細胞の死滅を誘導する、本発明1026の細胞。
[本発明1029]
CALLARを発現し、かつ、健常細胞に対する限定された毒性を有する、本発明1026の細胞。
[本発明1030]
ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、サイトカイン誘導性キラー細胞、それらの細胞株、および他のエフェクター細胞からなる群より選択される、本発明1026の細胞。
[本発明1031]
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を該対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列が、アロ抗原またはその断片をコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列、およびCD3ζシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。
[本発明1032]
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含む遺伝子改変T細胞の有効量を該対象に投与する段階を含み、該単離された核酸配列が、第VIII因子のA2サブユニットをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、共刺激分子の細胞内ドメインをコードする核酸配列、および細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。
[本発明1033]
前記対象がヒトである、本発明1031または1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
前記改変T細胞が、第VIII因子抗体に対して高い親和性を有する、本発明1031または1032のいずれかの方法。
[本発明1035]
前記改変T細胞が、第VIII因子抗体を発現するB細胞を標的とする、本発明1034の方法。
[本発明1036]
(a)第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットと、リンカーと、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片とを含む、キメラアロ抗原受容体(CALLAR)、ならびに
(b)DAP12
を含む、単離されたKIR/DAP12受容体複合体。
[本発明1037]
前記KIRが、KIRS2またはKIR2DS2である、本発明1036の単離されたKIR/DAP12受容体複合体。
[本発明1038]
前記リンカーが、短いグリシン-セリンリンカーである、本発明1036の単離されたKIR/DAP12受容体複合体。
[本発明1039]
本発明1036~1038のいずれかの単離されたKIR/DAP12受容体複合体を含む、遺伝子改変細胞。
[本発明1040]
単離されたキメラアロ抗原受容体(CALLAR)とDAP12とを含む遺伝子改変細胞であって、該CALLARが、第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットを含む細胞外ドメイン、リンカー、およびKIRの断片を含み、該KIRが、膜貫通領域および細胞質ドメインを含む、前記遺伝子改変細胞。
[本発明1041]
前記KIRが、KIRS2またはKIR2DS2である、本発明1040の遺伝子改変細胞。
[本発明1042]
前記リンカーが、短いグリシン-セリンリンカーである、本発明1040または1041のいずれかの遺伝子改変細胞。
[本発明1043]
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、
第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットをコードする核酸配列と、リンカーをコードする核酸配列と、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片をコードする核酸配列とを含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)をコードする単離された核酸配列を含み、かつ、DAP12をコードする核酸配列をさらに含む、遺伝子改変T細胞の有効量
を該対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。
[本発明1044]
前記リンカーが、短いグリシン-セリンリンカーである、本発明1043の方法。
[本発明1045]
血友病を有する対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置するための方法であって、該方法は、
第VIII因子のA2サブユニットまたは第VIII因子のC2サブユニットと、リンカーと、膜貫通領域および細胞質ドメインを含むKIRの断片とを含むキメラアロ抗原受容体(CALLAR)を含み、かつ、DAP12をさらに含む、遺伝子改変T細胞の有効量
を該対象に投与する段階を含み、それにより、血友病を有する該対象においてFVIII抗体と関連する障害を処置する、前記方法。