(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133317
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】異方導電性フィルム及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20220906BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220906BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220906BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220906BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220906BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20220906BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
H01B5/16
H01B1/22 B
C09J9/02
C09J7/30
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098047
(22)【出願日】2022-06-17
(62)【分割の表示】P 2020078370の分割
【原出願日】2014-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2013239180
(32)【優先日】2013-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014193168
(32)【優先日】2014-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠一郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】COG接続においても、異方導電性フィルムを用いて安定した接続信頼性を得られるようにする。
【解決手段】異方導電性フィルムにおいては、任意の導電粒子と隣接する導電粒子との中心間距離につき、最も短い距離を第1中心間距離とし、その次に短い距離を第2中心間距離とし、第1中心間距離及び第2中心間距離が、それぞれ導電粒子の粒子径の1.5~5倍であり、任意の導電粒子P
0と、第1中心間距離にある導電粒子P
1と、第1中心間距離又は第2中心間距離にある導電粒子P
2で形成される鋭角三角形について、導電粒子P
0、P
1を通る直線の方向を第1配列方向とし、導電粒子P
1、P
2を通る直線の方向を第2配列方向とし、導電粒子P
0、P
2を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に、第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に対して傾いている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に格子状に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、
任意の導電粒子と、該導電粒子に隣接する導電粒子との中心間距離につき、任意の導電粒子と最も短い距離を第1中心間距離とし、その次に短い距離を第2中心間距離とした場合に、
第1中心間距離及び第2中心間距離が、それぞれ導電粒子の粒子径の1.5~5倍であり、
任意の導電粒子P0と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離にある導電粒子P1と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離又は第2中心間距離にある導電粒子P2で形成される鋭角三角形について、導電粒子P0、P1を通る直線の方向を第1配列方向とし、導電粒子P1、P2を通る直線の方向を第2配列方向とし、導電粒子P0、P2を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に、第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向のうち、少なくとも2つの配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に対して傾いている異方導電性フィルム。
【請求項2】
第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向のうちの一つの配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に対して略平行である請求項1記載の異方導電性フィルム。
【請求項3】
前記絶縁接着剤層には絶縁性フィラーが絶縁性樹脂100質量部に対して3~40質量部配合されている請求項1又は2記載の異方導電性フィルム。
【請求項4】
絶縁接着剤層が、アクリレート化合物と光又は熱ラジカル重合開始剤とを含む光又は熱
ラジカル重合型樹脂層、又はエポキシ化合物と熱カチオン又は熱アニオン重合開始剤とを
含む熱カチオン又はアニオン重合型樹脂層である請求項1~3のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項5】
絶縁性フィラーが、シリカ微粒子、アルミナ又は水酸化アルミニウムを含有する請求項1~4のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項6】
第1中心間距離と第2中心間距離との差が導電粒子の粒子径の2倍未満である請求項1~5のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項7】
第1配列方向と異方導電性フィルムの長手方向とのなす角度が5~25°である請求項1~6のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項8】
導電粒子の密度が2000~250000個/mm2である請求項1~7のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項9】
異方性導電フィルムの長手方向に直交する方向の導電粒子Pの外接線が、該導電粒子Pに隣接する導電粒子を貫いている請求項1~8のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項10】
上記第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向のいずれかの配列軸において導電粒子の連続した欠落数が6個以下である請求項1~9のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項11】
第1配列方向及び第2配列方向のそれぞれについて、導電粒子の連続した欠落数が6個以下である請求項10記載の異方導電性フィルム。
【請求項12】
任意の導電粒子の配置位置から第1配列方向に連続して10個及び第2配列方向に連続して10個の領域を抜き出した場合に、その領域中の100個の配置位置中に75個以上の導電粒子を存在させる請求項1又は2記載の異方導電性フィルム。
【請求項13】
導電粒子が、金属粒子又は金属被覆樹脂粒子である請求項1~12のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項14】
導電粒子が、2種以上の導電粒子を併用したものである請求項1~13のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項15】
絶縁樹脂層が、複数の樹脂層から形成されている請求項1~14のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の異方導電性フィルムを用いて、第1電子部品の接続端子と第2電子部品の接続端子を異方導電性接続する接続方法。
【請求項17】
異方導電性フィルムの長手方向を第1電子部品又は第2電子部品の接続端子の短手方向に合わせる請求項16記載の接続方法。
【請求項18】
異方導電性フィルムの第1配列方向に略直交する方向を第1電子部品又は第2電子部品の接続端子の長手方向に合わせる請求項16又は17記載の接続方法。
【請求項19】
第1電子部品が、透明電極で接続端子が形成されたガラス基板であり、第2電子部品がICチップである請求項16~18のいずれかに記載の接続方法。
【請求項20】
接続端子の接続面の大きさが、幅8~60μm、長さ400μm以下である請求項16~19のいずれかに記載の接続方法。
【請求項21】
請求項1~15のいずれかに記載の異方導電性フィルムを介して第1電子部品の接続端子と第2電子部品の接続端子とが異方導電性接続されている接続構造体。
【請求項22】
異方導電性フィルムの長手方向が第1電子部品又は第2電子部品の接続端子の短手方向に合わせてある請求項21記載の接続構造体。
【請求項23】
請求項1~15のいずれかに記載の異方導電性フィルムを介して第1電子部品の接続端子と第2電子部品の接続端子とを異方導電性接続する、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム、異方導電性フィルムを用いる接続方法、及び異方導電性フィルムで接続された接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電性フィルムは、ICチップ等の電子部品を基板に実装する際に広く使用されている。近年では、携帯電話、ノートパソコン等の小型電子機器において配線の高密度化が求められており、この高密度化に異方導電性フィルムを対応させる手法として、異方導電性フィルムの絶縁接着剤層に導電粒子をマトリクス状に均等配置する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、導電粒子を均等配置しても接続抵抗がばらつくという問題が生じる。これは、端子の縁辺上に位置した導電粒子が絶縁性接着剤の溶融によりスペースに流れ出て、上下の端子で挟まれにくいためである。この問題に対しては、導電粒子の第1の配列方向を異方導電性フィルムの長手方向とし、第1の配列方向に交差する第2の配列方向を、異方導電性フィルムの長手方向に直交する方向に対して5°以上15°以下で傾斜させることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異方導電性フィルムで接続する電子部品のバンプサイズがさらに小さくなると、バンプで捕捉できる導電粒子の数もさらに少なくなり、特許文献1に記載の異方導電性フィルムでは導通信頼性を十分に得られない場合があった。特に、液晶画面等の制御用ICをガラス基板上の透明電極に接続する、所謂COG接続では、液晶画面の高精細化に伴う多端子化とICチップの小型化によりバンプサイズが小さくなり、バンプで捕捉できる導電粒子数を増加させて接続信頼性を高めることが課題となった。
【0006】
そこで、本発明は、COG接続においても、異方導電性フィルムを用いて安定した接続信頼性を得られるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、絶縁接着剤層上に導電粒子を格子状に配置した異方導電性フィルムにおいて、導電粒子の粒子間距離と配列方向に特定の関係をもたせると、高密度配線が必要とされるCOG接続においても、安定した接続信頼性で異方導電性接続を行えることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に格子状に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、
任意の導電粒子と、該導電粒子に隣接する導電粒子との中心間距離につき、任意の導電粒子と最も短い距離を第1中心間距離とし、その次に短い距離を第2中心間距離とした場合に、
第1中心間距離及び第2中心間距離が、それぞれ導電粒子の粒子径の1.5~5倍であり、
任意の導電粒子P0と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離にある導電粒子P1と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離又は第2中心間距離にある導電粒子P2で形成される鋭角三角形について、導電粒子P0、P1を通る直線の方向(以下、第1配列方向という)に対して直交する直線と、導電粒子P1、P2を通る直線の方向(以下、第2配列方向という)とがなす鋭角の角度α(以下、第2配列方向の傾斜角αともいう)が18~35°である異方導電性フィルムを提供する。
【0009】
また、本発明は、上述の異方導電性フィルムを用いて、第1電子部品の接続端子と第2電子部品の接続端子を異方導電性接続する接続方法であって、異方導電性フィルムの長手方向を第1電子部品又は第2電子部品の接続端子の短手方向に合わせる接続方法を提供し、特に異方導電性フィルムの第1配列方向に略直交する方向を第1電子部品又は第2電子部品の接続端子の長手方向に合わせる接続方法を提供する。
ここで、略直交するとは、第1配列方向に厳密に直交する方向だけでなく、異方導電性フィルムを用いて電子部品を実装する際に生じるずれの範囲を含む。通常、第1配列方向に直交する方向に対して、±3°が含まれる。
【0010】
加えて、本発明は、上述の接続方法で第1電子部品と第2電子部品が異方導電性接続されている接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の異方導電性フィルムによれば、隣接する導電粒子の中心間距離につき、最短の中心間距離である第1中心間距離と、その次に短い中心間距離である第2中心間距離が導電粒子の粒子径の1.5~5倍であるという高密度に導電粒子が配置され、かつ導電粒子が絶縁接着剤層に特定方向に格子状に配置されているため、隣接する端子間の短絡を抑制しつつ、高密度の配線を接続することができる。
【0012】
さらに、本発明の異方導電性フィルムにおいて、導電粒子の第1配列方向に対して直交する直線と、第2配列方向とがなす鋭角の角度(第2配列方向の傾斜角α)が18~35°であるため、異方導電性フィルムの第1配列方向に略直交する方向を接続端子の長手方向に合わせて異方導電性接続を行うことにより、接続端子で捕捉される導電粒子の数を増加させることが可能となり、本発明の異方導電性フィルムをCOG接続に使用する場合でも、安定した接続信頼性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置図である。
【
図2】
図2は、異方導電性フィルムにおける導電粒子の配列方向と、接続端子の長手方向との好ましい向きの説明図である。
【
図3】
図3は、他の実施例の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配列方向と、接続端子の長手方向との好ましい向きの説明図である。
【
図4】
図4は、実施例の異方導電性フィルムを用いた評価用接続物における導電粒子の配置の説明図である。
【
図5】
図5は、実施例及び比較例の異方導電性フィルムを用いた接続物におけるバンプ1個あたりの導電粒子捕捉数と頻度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の異方導電性フィルム1Aにおける導電粒子Pの配置図である。この異方導電性フィルム1Aは、絶縁接着剤層10と、絶縁接着剤層10に格子状の配置で固定された導電粒子Pを有する。
【0015】
この異方導電性フィルム1Aでは、任意の導電粒子P0と、該導電粒子P0に隣接する導電粒子との中心間距離につき、最も短い距離を第1中心間距離d1とし、その次に短い距離を第2中心間距離d2とした場合に、導電粒子P0と第1中心間距離d1にある導電粒子P1と、導電粒子P0と第2中心間距離にある導電粒子P2で形成される鋭角三角形P0P1P2について、導電粒子P0、P1とを通る第1配列方向L1に導電粒子がピッチd1で配列していると共に、導電粒子P1、P2を通る第2配列方向L2にも導電粒子が配列し、導電粒子P0、P2を通る第3配列方向L3には導電粒子がピッチd2で配列している。なお、本実施例では、第1配列方向L1における導電粒子のピッチd1よりも第3配列方向における導電粒子のピッチd2が大きいとしたが、これらのピッチは同じであってもよい。
【0016】
導電粒子Pの粒子径Dは、短絡防止と電極間接合の安定性の点から、好ましくは1~10μmである。
【0017】
第1中心間距離d1及び第2中心間距離d2は、それぞれ導電粒子の粒子径Dの1.5~5倍であり、好ましくは1.8~4.5倍、より好ましくは2~4倍である。第1中心間距離d1及び第2中心間距離d2が短すぎると異方導電性フィルムを用いて端子間を接続した場合に短絡が生じ易くなり、反対に長すぎると端子間に捕捉される導電粒子数が不十分となる。
【0018】
また、第1中心間距離d1と第2中心間距離d2との差は、好ましくは導電粒子Pの粒子径Dの2倍未満、より好ましくは1.5倍未満、更に好ましくは等倍以下である。この差が大きすぎると、異方導電性フィルム1Aを用いた異方導電性接続時のバンプへの捕捉性が悪化するためである。
【0019】
導電粒子Pの密度は、好ましくは2000~250000個/mm2である。この粒子密度は、導電粒子Pの粒子径と配置方向によって適宜調整される。
【0020】
導電粒子を所定の密度で格子状に配置した異方導電性フィルムを製造しようとしても、実際の製法上、格子位置から導電粒子が欠落する場合がある。導電粒子の格子位置からの欠落に関し、この異方導電性フィルム1Aでは、第1配列方向L1及び第2配列方向L2のそれぞれについて、特に各配列方向L1、L2、L3のそれぞれについて、連続した導電粒子Pの欠落数を、好ましくは6個以下、より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下とする。また、任意の導電粒子の配置位置から第1配列方向に連続して10個及び第2配列方向に連続して10個の領域、即ち10個×10個(計100個)の配置位置を抜き出した場合に、100個の配置位置中、導電粒子を、好ましくは75個以上、より好ましくは80個以上、さらに好ましくは90個以上、特に好ましくは94個以上存在させる。
【0021】
導電粒子の欠落をこのように抑制することにより、異方導電性フィルムを用いて方形のバンプを接続する際に、異方導電性フィルムのどの部分を使用しても、導通に十分な数の導電粒子をバンプに捕捉させやすくなり、ファインピッチの異方導電性接続に対応させることができる。
【0022】
なお、導電粒子の欠落をこのように抑制する方法としては、後述するように絶縁接着剤層10に導電粒子Pを配置する際に、型又は貫通孔を有する部材上で繰り返してワイプを行うことが好ましい。
【0023】
また、この異方導電性フィルム1Aにおいて、第2配列方向の傾斜角αは18~35°である。上述の粒子径Dとピッチd1、d2との関係において、第2配列方向の傾斜角αをこのように定めることにより、この異方導電性フィルム1Aで矩形の接続端子(バンプ)を異方導電性接続する場合に、その異方導電性接続に使用する矩形領域を異方導電性フィルム1Aのフィルム面内のどこで採っても、導通に寄与する導電粒子を十分な個数で確保することができる。
【0024】
一般に、電子機器の生産ラインにおける異方導電性接続では、通常、接続端子3の短手方向が、異方導電性フィルム1Aの長手方向に沿うように配置される。したがって、異方導電性フィルムの生産性の点からは、
図2に示すように、矩形の接続端子3の長手方向Ltと、第1配列方向L1に直交する方向L0とを合わせること(即ち、接続端子3の短手方向と第1配列方向L1とを合わせること)が好ましい。言い換えると、第1配列方向L1を、異方導電性フィルム1Aの長手方向Lfに略平行に形成すること、即ち、異方導電性フィルムの製造時に生じる導電粒子の配置のばらつきの範囲で導電粒子の第1配列方向L1を異方導電性フィルム1Aの長手方向Lfと平行に形成することが望ましい。
【0025】
一方、異方導電性接続時の接続端子における導電粒子の捕捉性を向上させる点からは、
図3に示す異方導電性フィルム1Bのように、導電粒子Pの第1配列方向L1、第2配列方向L2、第3配列方向L3のいずれもが異方導電性フィルム1Bの長手方向に対して傾いていることが好ましい。特に、第1配列方向L1と異方導電性フィルム1Bの長手方向Lfとのなす鋭角の角度β(以下、傾斜角βともいう)が5~25°であることが好ましい。
【0026】
なお、この異方導電性フィルム1Bは、導電粒子Pの第1配列方向L1が異方導電性フィルム1Bの長手方向Lfに対して傾いている以外は、前述の異方導電性フィルム1Aと同様に構成されている。
【0027】
ここで、異方導電性フィルムがよりファインピッチの端子接続に対応できるように導電粒子を密な状態に配置するため、後述する
図4に示すように、異方導電性フィルム1Bの長手方向Lfに直交する方向の、導電粒子Pの外接線(二点鎖線)が、その導電粒子Pに隣接する導電粒子Pc、Peを貫いてもよい。これにより、接続端子3の端子面に異方導電性フィルム1Bを重ねた平面図において、接続端子3の接続面に占める導電粒子の面積をより大きくすることができる。よって、異方導電性接続時に対向する接続端子3間で挟持されて接続端子3に押し込まれ、接続端子3間を導通させる導電粒子Pの数が不十分になることを防止することができる。
【0028】
本発明の異方導電性フィルムは、導電粒子の配置を上述のようにする限り、導電粒子P自体の構成や、絶縁接着剤層10の層構成又は構成樹脂については、種々の態様をとることができる。
【0029】
即ち、導電粒子Pとしては、公知の異方導電性フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。
【0030】
絶縁接着剤層10としては、公知の異方導電性フィルムで使用される絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂層等を使用することができる。また、これらの樹脂層は、必要に応じて、それぞれ重合したものとすることができる。また、絶縁接着剤層10を、複数の樹脂層から形成してもよい。
【0031】
さらに、絶縁接着剤層10には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミ等の絶縁性フィラーを加えても良い。絶縁性フィラーの配合量は、絶縁接着剤層を形成する樹脂100質量部に対して3~40質量部とすることが好ましい。これにより、異方導電性接続時に絶縁接着剤層10が溶融しても、溶融した樹脂で導電粒子2が不用に移動することを抑制することができる。
【0032】
絶縁接着剤層10に導電粒子Pを上述の配置で固定する方法としては、導電粒子Pの配置に対応した凹みを有する型を機械加工やレーザー加工、フォトリソグラフィなど公知の方法で作製し、その型に導電粒子を入れ、その上に絶縁接着剤層形成用組成物を充填し、硬化させ、型から取り出せばよい。このような型から、更に剛性の低い材質で型を作成しても良い。
【0033】
また、絶縁接着剤層10に導電粒子Pを上述の配置におくために、絶縁接着剤層形成組
成物層の上に、貫通孔が所定の配置で形成されている部材を設け、その上から導電粒子P
を供給し、貫通孔を通過させるなどの方法でもよい。
【0034】
本発明の異方導電性フィルム1A、1Bを用いて、フレキシブル基板、ガラス基板などの第1電子部品の接続端子と、ICチップ、ICモジュールなどの第2電子部品の接続端子を異方導電性接続する場合、
図2、
図3に示したように、異方導電性フィルム1A、1Bの長手方向Lfと、第1電子部品又は第2電子部品の接続端子3の短手方向を合わせる。これにより、本発明の異方導電性フィルム1A、1Bにおける導電粒子Pの配置を活かして、接続端子における導電粒子Pの捕捉数を十分に高めることができ、特に、導電粒子Pのいずれの配列方向も異方導電性フィルムの長手方向Lfに対して傾いている異方導電性フィルム1Bを用いる場合に、接続端子3における導電粒子Pの捕捉性を顕著に高めることができる。
【0035】
例えば、第1電子部品として、透明電極で接続端子が形成されたガラス基板等を使用し、第2電子部品として、ICチップ等を使用して高密度配線のCOG接続を行う場合、より具体的には、これらの接続端子の接続面の大きさが、幅8~60μm、長さ400μm以下(下限は幅と等倍)である場合、又は接続端子の接続面の短手方向の幅が導電粒子の粒子径の7倍未満である場合に、特に、従前の異方導電性接続に比して接続端子で捕捉できる導電粒子数が安定して増加し、接続信頼性を向上させることができる。なお、接続端子面の短手方向の幅がこれより小さいと接続不良が多発し、大きいとCOG接続で必要とされる高密度実装への対応が難しくなる。また、接続端子面の長さがこれより短いと安定した導通をとりにくくなり、長さがこれよりも長いと片当たりの要因となる。一方、接続端子間の最小距離は、接続端子の接続面の短手方向の幅に準じて定まり、例えば、8~30μmとすることができる。
【0036】
また本発明の異方導電性フィルムで接続可能なファインピッチの端子においては、互いに接続する対向する端子を含めた端子の並列方向において、間隙をあけて隣接する最小端子間距離(この距離は、異方性接続が可能な範囲で並列方向にずれていてもよい)を導電粒子径の4倍未満とすることができる。この場合、接続される端子の接続面の短手方向の幅は、導電粒子の粒子径の7倍未満とすることができる。
【0037】
本発明は、こうして異方導電性接続した第1電子部品と第2電子部品の接続構造体も包含する。
【実施例0038】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
【0039】
試験例1
異方導電性フィルムにおける導電粒子P(粒子径D=4μm)の配置について、第1中心間距離d1=第2中心間距離d2=10μmとし、表1に示すように傾斜角αを変えた場合に、電極サイズ15μm×100μmの狭小のバンプを異方導電性フィルムのパターンに重ねることによって、加熱加圧前のバンプが捕捉し得る導電粒子の最多粒子数と最少粒子数とを求めた。この場合、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。また、バンプの縁端部に対してその面積の50%以上が外れている粒子は、バンプが捕捉し得る導電粒子としてカウントしなかった。
この結果から、傾斜角αとバンプの粒子捕捉性の傾向をみることができる。結果を表1に示す。
【0040】
【0041】
表1から、傾斜角αが18~35°の場合に、バンプで捕捉される粒子数の最小数および最大数の差が少なく安定しており、狭いバンプに有効なことがわかる。
これに対し、傾斜角αが小さすぎると、捕捉数の差が大きくなる。これは傾斜角が小さすぎることにより、粒子配列の、バンプの端部へのかかり具合が捕捉数に直接影響するためである。逆に傾斜角αが大きすぎても同様な現象が生じ、バンプから外れる粒子が多くなる傾向がある。
【0042】
このように狭小のバンプに対して、導電性を安定に保つために捕捉効率を一定にする場合、傾斜角αを適切に保つことが必要になることが分かる。
【0043】
実施例1~8、比較例1~5
次に、導電粒子の粒子間の距離と傾斜角αとの関係を具体的に検証するために、表2に示す樹脂を使用し、導電粒子(積水化学工業(株)、AUL704、粒径4μm)が表2に示す配置となる異方導電性フィルムを次のようにして製造した。即ち、表2に示す組成で熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤を含む絶縁性樹脂の混合溶液を調製し、それを、フィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み20μmの粘着層を形成した。
【0044】
一方、表2に示す配置で凸部の配列パターンを有する金型を作成し、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で該金型に流し込み、冷やして固めることで、凹部が表2に示す配列パターンの樹脂型を形成した。この樹脂型の凹部に導電粒子を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂の粘着層を被せ、紫外線硬化により該絶縁性樹脂に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させた。そして、型から絶縁性樹脂を剥離し、各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを製造した。
【0045】
実施例9~13、比較例6、7
導電粒子を表3に示した配置とする以外は、上述の実施例及び比較例と同様にして実施例9~13、比較例6、7の異方導電性フィルムを製造した。
【0046】
ここで、比較例7は四方格子、実施例3、9~13は六方格子の形状となる。
なお、比較例1、比較例6では導電粒子を、低沸点溶媒に分散し噴霧してランダムに同一平面上に配置した。
【0047】
導電粒子の隣接粒子中心間距離d(第1中心間距離d1及び第2中心間距離d2)を、光学顕微鏡を用いて計測して確認した。この場合、第1配列方向又は第2配列方向にある100個50組を任意に計測し、その平均値を求め、所期の隣接粒子中心間距離dであることを確認した。結果を表2に示す。
一方、比較例1、6は任意に導電粒子100個を選択し、各導電粒子の最近接粒子中心間距離を計測した。
【0048】
評価
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムの(a)粒子捕捉数、(b)初期導通抵抗、(c)導通信頼性、(d)ショート発生率を、それぞれ次のように評価した。結果を表2、表3に示す。
【0049】
(a)粒子捕捉数
(a-1)平均数
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを用いて15×100μmのバンプ100個とガラス基板とを加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して接続物を得た。この場合、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。そして、各バンプにおける粒子捕捉数を計測し、バンプ1個当たりの平均粒子捕捉数を求めた。
【0050】
(a-2)最小数
(a-1)で計測した各バンプの粒子捕捉数のうち、最小数を求めた。
【0051】
(b)初期導通抵抗
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、初期導通および導通信頼性の評価用ICとガラス基板の間に挟み、加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して各評価用接続物を得た。この場合、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。そして、評価用接続物の導通抵抗を測定した。
ここで、この各評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。
【0052】
初期導通および導通信頼性の評価用IC
外径 0.7×20mm
厚み 0.2mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ12μm、サイズ15×100μm、バンプ間距離15μm
【0053】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0054】
(c)導通信頼性
(b)の評価用ICと各実施例及び比較例の異方導電性フィルムとの評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、(b)と同様に測定した。なお、この導通抵抗が5Ω以上であると、接続した電子部品の実用的な導通安定性の点から好ましくない。
【0055】
(d)ショート発生率
ショート発生率の評価用ICとして次のIC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))を用意した。
外径 1.5×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、ショート発生率の評価用ICと、該評価用ICに対応したパターンのガラス基板との間に挟み、(b)と同様の接続条件で加熱加圧して接続物を得、その接続物のショート発生率を求めた。ショート発生率は、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出される。ショート発生率が1ppm以上であると実用上の接続構造体を製造する点から好ましくない。
【0056】
【0057】
【0058】
表2から、導電粒子の傾斜角αが18~35°であると、初期導通抵抗が低く、導通信頼性も高く、ショート発生率も抑制されており、粒子径の4倍程度の端子幅の高密度配線に対応した異方導電性接続を行えることがわかる。
これに対し、比較例1では、粒子密度が過度に高いために絶縁性が悪く、また、比較例2~比較例5では、傾斜角αが18~35°の範囲を外れており、バンプにおける粒子捕捉数が少なく、導通信頼性に欠けることがわかる。
【0059】
また、表3から、導電粒子の各配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に傾いている実施例9~13も導通信頼性に優れ、ショート発生率が低減していることがわかる。これらの実施例9~13の異方導電性フィルムを用いて、初期導通及び導通信頼性の評価用ICとガラス基板とを接続した評価用接続物を観察したところ、
図4に示す導電粒子の配置のように、バンプ3の長手方向Ltの、導電粒子Pの外接線(二点鎖線)と、その導電粒子Pと隣接する導電粒子Pc、Peとがオーバーラップし、その外接線が導電粒子Pc、Peを貫いていた。これにより、バンプ3の幅がさらに狭くなっても、導通をとるのに十分な数の導電粒子を捕捉できることが確認できた。
【0060】
また、比較例7と実施例9~13の異方導電性フィルムを用いた評価用接続物の外観を比較すると、実施例9~13の異方導電性フィルムを用いた評価用接続物では、バンプ3の幅方向の中央部にある導電粒子Pcと、バンプ3の縁辺上にある導電粒子Peとの圧痕状態の差が、比較例7の異方導電性フィルムを用いた評価用接続物よりも少なかった。これにより、実施例の異方導電性フィルムを用いると、より均一な圧着を実現できることがわかる。なお、バンプ面積が狭いことにより、必ずしも、一つのバンプ3において縁辺上と幅方向の中央部の双方で導電粒子が捕捉されているとは限らないので、多数並列しているバンプのいずれかにおいて縁辺で捕捉されている導電粒子と幅方向の中央部で捕捉されている導電粒子を観察することにより上述の結果を得た。
【0061】
実施例14~19
実施例3、9~13において、導電粒子粒子径Dを4μmから3μmに変更し、隣接粒子間中心距離を6μm(即ち、(d-D)/D=1)、配置密度28000個/mm2として実施例14~19の異方導電性フィルムを製造し、同様に評価した。その結果、これらについても、実施例3及び9~13とほぼ同様の初期導通抵抗の低さと、導通信頼性の高さと、ショート発生率抑制効果が得られた。また、これらの評価用接続物におけるバンプの縁辺上にある導電粒子と、幅方向の中央部にある導電粒子の圧痕状態についても、実施例9~13と同様であった。
【0062】
さらに、実施例14と比較例1で作製した粒子個数密度60000個/mm
2の異方導電性フィルムについて、バンプ面積700μm
2(バンプサイズ14μm×50μm、バンプ間距離14μm)のバンプを持つICを使用し、実施例1の粒子捕捉数の計測の場合と同様に接続し、バンプ1個に捕捉される導電粒子の頻度を調べた。結果を
図5に示す。
【0063】
図5から、比較例1に対して実施例14ではバンプ1個あたりの導電粒子捕捉数が9個付近で急激に出現頻度が増えており、バンプ1個あたりの導電粒子捕捉数が安定することがわかる。
【0064】
実施例20~25
実施例3、9~13において、導電粒子粒子径Dを4μmのまま、隣接粒子間中心距離を7μm((d-D)/D=0.75、配置密度20000個/mm2)とした実施例20~25の異方導電性フィルムを製造し、同様に評価した。その結果、これらについても、実施例3、9~13とほぼ同様の初期導通抵抗の低さと、導通信頼性の高さと、ショート発生率の抑制効果が得られた。また、これらの評価用接続物におけるバンプの縁辺上にある導電粒子と、幅方向の中央部にある導電粒子の圧痕状態についても、実施例9~13と同様であった。
【0065】
実施例26~31
実施例3、9~13において、導電粒子粒子径Dを4μmのまま、隣接粒子間中心距離を16μm((d-D)/D=3、配置密度4000個/mm2)とした実施例26~31の異方導電性フィルムを製造し、同様に評価した。その結果、これらについては、実施例3、9~13よりも初期導通抵抗は高くなったが、実用上の問題はなかった。導通信頼性の高さとショート発生率の抑制効果は、実施例3、9~13と同様であった。これは、実施例26~31の異方導電性フィルムは、導電粒子の配置密度が低いためと考えられる。
評価用接続物におけるバンプの縁辺上にある導電粒子と、幅方向の中央部にある導電粒子の圧痕状態は、実施例9~13と同様であった。
【0066】
実施例32~33
実施例5、7において絶縁性樹脂100質量部にシリカ微粒子フィラー(シリカ微粒子、アエロジルRY200、日本アエロジル株式会社)20質量部を加え、実施例5、7と同様にして異方導電性フィルムを製造し、評価した。その結果、実施例5、7と同様の初期導通抵抗の低さと、導通信頼性の高さと、ショート発生率抑制効果が得られた。