(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133332
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】PTP包装機
(51)【国際特許分類】
B65B 15/04 20060101AFI20220906BHJP
A61J 1/03 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B65B15/04 C
A61J1/03 370
B65B15/04 K
B65B15/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102468
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2018164282の分割
【原出願日】2018-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚彦
(57)【要約】
【課題】印刷部における削れ等を防止して印刷内容が明瞭なPTPシートを得ることができるとともに、印刷部の設けられた錠剤をPTP包装以外の態様で包装すること等が可能となるPTP包装機を提供する。
【解決手段】PTP包装機は、容器フィルム3のポケット部2に錠剤5を充填する錠剤充填装置51を備えており、PTPシートを製造可能である。錠剤充填装置は51、錠剤5を吸着搬送するとともに、所定ポジションにて該錠剤5の吸着を解除することでポケット部2内へと該錠剤5を充填可能に第一吸着ベルト55と、第一吸着ベルト55により吸着搬送されている錠剤5に非接触で印刷を施す第一印刷装置58とを有する。また、PTP包装機は、容器フィルム3に代えて配置可能に構成され、第一吸着ベルト55による吸着が解除された錠剤5を受取可能な第二吸着ベルト72を具備する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造可能なPTP包装機であって、
搬送される帯状の前記容器フィルムに形成された前記ポケット部に対し錠剤を充填する充填手段と、
前記ポケット部に錠剤が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離手段とを備え、
前記充填手段は、
錠剤を吸着搬送するとともに、所定の充填ポジションにて該錠剤の吸着を解除することで、前記充填ポジションへと搬送されてきた前記容器フィルムの前記ポケット部内へと該錠剤を充填可能に構成された搬送手段と、
該搬送手段により吸着搬送されている錠剤に非接触で印刷を施す印刷手段とを有するものであり、
さらに、前記容器フィルムに代えて配置可能に構成され、前記搬送手段による吸着が解除された錠剤を該搬送手段から受取可能な受取手段を具備し、
該受取手段は、錠剤を貯留可能な容器であることを特徴とするPTP包装機。
【請求項2】
前記容器は、錠剤充填製品のボトルとなる容器であることを特徴とする請求項1に記載のPTP包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートを製造するためのPTP包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品等の分野において用いられるブリスタシートとしてPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤が収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。
【0003】
PTPシートを製造するためのPTP包装機は、搬送される帯状の容器フィルムに対しポケット部を形成するポケット部形成手段、該ポケット部に錠剤を充填する充填手段、ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対し帯状のカバーフィルムを取着する取着手段、容器フィルム及びカバーフィルムからなる帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に切離す切離手段などを備えている。
【0004】
近年では、文字や記号などの識別情報を印刷することにより印刷部の形成された錠剤が見受けられる。印刷部は、PTP包装機とは別に設けられた(つまりオフラインの)錠剤印刷装置を用いて印刷形成されることがある。このような錠剤印刷装置を用いた場合には、該装置によって印刷部が予め形成された錠剤をPTP包装機のホッパ(錠剤貯留部)へと投入することで、印刷部の形成された錠剤が充填されてなるPTPシートを得ることができる。尚、上記オフラインの錠剤印刷装置は、PTP包装機とは独立して設けられているため、錠剤の投入される包装機を変更しさえすれば、PTP包装のみならずボトル充填(瓶詰め)包装等の様々な包装態様に対応することができる。
【0005】
ところで、錠剤印刷装置を用いて事前に印刷部を形成した錠剤をPTP包装機へと投入してPTPシートを得る場合には、次のような不具合が生じ得る。すなわち、多数の錠剤をPTP包装機のホッパへ投入し、ここから順次、ポケット部に充填してPTPシートを製造していくと、例えばホッパ内や供給シュート内などにおいて、錠剤がポケット部に充填されるまでの間に他の錠剤やホッパ等と擦れ合うことで、印刷部が削れたり欠けたりして印刷内容が不明瞭になるおそれがある。特に口腔内崩壊錠のような脆い錠剤の場合には、このような不具合がより顕著となるおそれがある。
【0006】
これに対し、錠剤に印刷する機能を有するPTP包装機なども見受けられる(例えば、特許文献2参照)。このようなPTP包装機を用いた場合には、ポケット部に充填される直前に印刷が施されるので、印刷部における欠けや削れを抑制することができ、印刷内容の不明瞭化をより確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-223323号公報
【特許文献2】特開平3-148430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、錠剤に印刷する機能を有するPTP包装機は、印刷部の設けられた錠剤を搬送過程にある容器フィルムのポケット部へと充填する(受け渡す)ように構成されている。従って、このようなPTP包装機において、印刷部の設けられた錠剤を、例えばPTP包装以外の態様で包装すること等のために、ポケット部以外へと受け渡すといったことはできない。そのため、例えばボトル充填包装等のPTP包装以外の包装態様に対応するためには、別途オフラインの錠剤印刷装置を設けることが必要となってしまう。このように、PTP包装機自体に印刷機能が備わっているにも関わらず、別途の錠剤印刷装置を用いてボトル充填包装等に対応することは、コストや装置の設置スペースなどの面で好ましいとは言えない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷部における削れ等を防止して印刷内容が明瞭なPTPシートを得ることができるとともに、印刷部の設けられた錠剤をPTP包装以外の態様で包装すること等が可能となるPTP包装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造可能なPTP包装機であって、
搬送される帯状の前記容器フィルムに形成された前記ポケット部に対し錠剤を充填する充填手段と、
前記ポケット部に錠剤が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離手段とを備え、
前記充填手段は、
錠剤を吸着搬送するとともに、所定の充填ポジションにて該錠剤の吸着を解除することで、前記充填ポジションへと搬送されてきた前記容器フィルムの前記ポケット部内へと該錠剤を充填可能に構成された搬送手段と、
該搬送手段により吸着搬送されている錠剤に非接触で印刷を施す印刷手段とを有するものであり、
さらに、前記容器フィルムに代えて配置可能に構成され、前記搬送手段による吸着が解除された錠剤を該搬送手段から受取可能な受取手段を具備し、
該受取手段は、錠剤を貯留可能な容器であることを特徴とするPTP包装機。
手段2.前記容器は、錠剤充填製品のボトルとなる容器であることを特徴とする手段1に記載のPTP包装機。
【0012】
上記手段1によれば、PTPシートを製造する場合には、搬送手段によって錠剤を吸着した状態で該錠剤に対し非接触で印刷が施され(例えば、インクジェット印刷やレーザ印刷が施され)、その後、搬送手段による吸着が解除されることで、ポケット部へと錠剤が充填される。すなわち、吸着状態で印刷部の形成された錠剤は、吸着状態を維持したまま充填ポジション側へと搬送され、充填ポジションにて吸着解除されることで、ポケット部へと充填される。そのため、錠剤が他の錠剤やホッパ等と擦れ合うことがなくなり、印刷部が削れたり欠けたりして印刷内容が不明瞭となることをより確実に防止できる。これにより、印刷内容が明瞭なPTPシートをより確実に得ることができる。
【0013】
また、錠剤に非接触で印刷を施すため、印刷時に錠剤へと加わる負荷(力)を著しく減らすことができ、錠剤の破損をより確実に防止することができる。その結果、印刷内容が不明瞭となることをより確実に防止できることと相俟って、不良錠剤の発生を抑えることができ、PTPシートの製造に係るコストの低減を図ることができる。
【0014】
さらに、上記手段1のPTP包装機は、容器フィルムに代えて配置可能な受取手段を備えており、受取手段は、搬送手段から錠剤を受取ることが可能な容器となっている。つまり、搬送手段は、容器フィルム(ポケット部)のみならず、受取手段に対しても印刷部の形成された錠剤を受け渡すことが可能となっている。ここで、受取手段に受け渡された錠剤をPTP包装以外の包装態様(例えば、ボトル充填包装やストリップ包装など)に用いることとすれば、各包装態様に応じた包装を実現することができる。従って、上記手段1によれば、印刷手段を、PTPシートに充填される錠剤の印刷のみならず、例えばPTP包装以外の態様で包装される錠剤の印刷にも利用することができる。これにより、PTP包装以外の包装態様に対応するために別途の錠剤印刷装置を設けることなく、PTP包装機自体に備わっている印刷手段を利用して様々な包装態様に対応することができる。その結果、コストの削減や装置の設置に係る省スペース化などを図ることができる。
【0015】
また、上記手段1によれば、印刷部の設けられた錠剤を単に回収すること等も可能となる。従って、例えば装置の動作調整時や始動時などに錠剤を単に回収するといったことも容易に可能となり、利便性の向上を図ることができる。
【0016】
尚、前記容器フィルムの搬送経路に沿った前記搬送手段及び前記取着手段間に設けられ、前記ポケット部に充填された錠剤に非接触で印刷を施す第二印刷手段を備えることとしてもよい。
【0017】
この場合、第二印刷手段によって、ポケット部に充填された後の錠剤に非接触で印刷を施すことができる。そのため、第二印刷手段により形成された印刷部が他の錠剤と擦れ合うことはなく、この印刷部の印刷内容が不明瞭となることをより確実に防止できる。また、両印刷手段により形成された印刷部(例えば、錠剤の表裏両面に形成された印刷部)の内容が明瞭なPTPシートをより確実に得ることができる。
【0018】
また、前記搬送手段から錠剤を表裏反転した状態で受取って吸着搬送する第二搬送手段を備え、前記第二印刷手段は、前記ポケット部に充填された錠剤に対する印刷と、前記第二搬送手段により吸着搬送されている錠剤に対する印刷との双方において利用可能とされていることとしてもよい。
【0019】
この場合、搬送手段から第二搬送手段へと錠剤が表裏反転した状態で受け渡され、第二印刷手段によって、吸着された錠剤へと非接触で印刷を施すことができる。
【0020】
また、第二印刷手段を、ポケット部に充填された錠剤に対する印刷と、第二搬送手段により吸着搬送されている錠剤に対する印刷とで共通に利用することができる。すなわち、第二印刷手段を、PTPシートに充填される錠剤の印刷のみならず、PTP包装以外の態様で包装される錠剤の印刷にも利用することができる。その結果、設備コストの削減や装置の小型化(簡素化)などを図ることができる。
【0021】
また、前記容器フィルムの搬送経路に沿った前記第二印刷手段及び前記取着手段間に設けられ、前記第二印刷手段により形成された印刷部の検査を行う検査手段を備え、
該検査手段は、前記ポケット部に充填された錠剤に係る前記印刷部に対する検査と、前記第二搬送手段により吸着搬送されている錠剤に係る前記印刷部に対する検査との双方において利用可能とされていることとしてもよい。
【0022】
この場合、検査手段を、ポケット部に充填された錠剤に係る印刷部の検査と、第二搬送手段により吸着搬送されている錠剤に係る印刷部の検査とで共通に利用することができる。すなわち、検査手段を、PTPシートに充填される錠剤の検査のみならず、PTP包装以外の包装態様で包装される錠剤の検査にも利用することができる。従って、設備コストの削減や装置の小型化(簡素化)などを一層効果的に図ることができる。
【0023】
また、前記容器としては、前記検査手段により良判定された錠剤を前記第二搬送手段から受取って収納する良品収納部と、
前記検査手段により不良判定された錠剤を前記第二搬送手段から受取って収納する不良品収納部とを備えることとしてもよい。
【0024】
この場合、良判定された錠剤(良品錠剤)を良品収納部に収納し、一方、不良判定された錠剤(不良錠剤)を不良品収納部に収納することが自動的に可能となる。そして、良品収納部に収納された良品錠剤をPTP包装機以外の包装機へと投入することで、錠剤の印刷内容が明瞭な錠剤充填製品(例えば、錠剤の充填されたボトルなど)をより確実に得ることができる。これにより、錠剤充填製品の製造に関し、コストの低減や使い勝手の向上を図ることができる。
【0025】
また、錠剤における前記第二印刷手段による印刷対象となる面を撮像して画像データを得る撮像手段を有し、
前記第二印刷手段は、前記画像データに基づいて、錠剤に対する印刷位置が制御されるように構成されており、
前記撮像手段は、前記ポケット部に充填された錠剤の撮像と、前記第二搬送手段により吸着搬送されている錠剤の撮像との双方において利用可能とされていることとしてもよい。
【0026】
この場合、撮像手段により得られた画像データを基に、印刷前に印刷対象となる錠剤の位置や向きなどを把握することができ、第二印刷手段によって錠剤の位置や向きなどに合わせた適切な印刷を施すことができる。
【0027】
また、撮像手段を、ポケット部に充填された錠剤に対する印刷と、第二搬送手段により吸着搬送されている錠剤に対する印刷とで共通に利用することができる。すなわち、撮像手段を、PTPシートに充填される錠剤の撮像のみならず、PTP包装以外の態様で包装される錠剤の撮像にも利用することができる。その結果、設備コストの削減や装置の小型化(簡素化)などをより一層図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図5】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
【
図6】PTPシートの製造時における、錠剤供給印刷装置等の概略構成を示す部分断面模式図である。
【
図7】PTPシートの製造時における、第一吸着ベルト及び容器フィルムなどを示す斜視模式図である。
【
図8】錠剤の収納時における、錠剤供給印刷装置の概略構成を示す部分断面模式図である。
【
図9】錠剤の収納時における、第一吸着ベルト及び第二吸着ベルトなどを示す斜視模式図である。
【
図10】PTPシートの製造工程を示すフローチャートである。
【
図11】錠剤の収納工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まずPTPシートの構成について詳しく説明する。
【0030】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0031】
本実施形態における容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。勿論、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0032】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(
図4参照)がシート状に打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。
【0033】
本実施形態における錠剤5は、平面視円形状をなす円盤状の素錠であって、側面5Aと、該側面5Aを挟む表面5B及び裏面5Cとを有した構成となっている。また、表面5Bは、側面5Aとの境界部を面取りするテーパ部5Dを備え、裏面5Cは、側面5Aの境界部を面取りするテーパ部5Eを備えている。
【0034】
さらに、
図3に示すように、錠剤5の表面5Bには、該表面5Bの中心を通り直線状に延びる溝状の割線5Fが刻設されている。尚、割線5Fは、裏面5Cにも刻設されている。
【0035】
また、錠剤5の表面5B及び裏面5Cには、錠剤5に関する製品情報を示す文字や記号、数字、図形などがインクジェット印刷されてなる印刷部5Gが形成されている。印刷部5Gは、錠剤5における文字や数字等が印刷された部位である。
図3に示す例では、割線5Fを挟んで一方側の領域に「ABCDEF」の文字が印刷され、他方側の領域に「123456」の数字が印刷されている。尚、錠剤5に関する製品情報としては、「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。
【0036】
尚、本実施形態では、表面5B及び裏面5Cの両面において同一の内容が印刷されているが、これに限らず、表面5B及び裏面5Cにおいて異なる内容が印刷される構成としてもよい。但し、この場合においても、割線5Fの向きに合わせて印刷が行われる構成とすることが好ましい。
【0037】
次に、上記PTPシート1を製造可能なPTP包装機10の概略構成について
図5を参照して説明する。本実施形態において、PTP包装機10は、PTPシート1を製造する機能に加えて、印刷部5Gの設けられた錠剤5をポケット部2へと充填せずに後述する収納部73,74へと投入し、印刷部5Gの設けられた錠剤5を収納する機能をも備えている。
【0038】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0039】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0040】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0041】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、錠剤供給印刷装置21及び検査装置22が順に配設されている。
【0042】
錠剤供給印刷装置21は、PTPシート1を製造するとき、及び、PTPシート1を製造せず錠剤5を収納するときの双方において共通に利用される装置(符号「51」等)と、錠剤5を収納するときのみに利用される装置(符号「71」等)とを備えている。また、錠剤供給印刷装置21は、錠剤5を吸着保持しつつ該錠剤5へと印刷部5Gを形成する機能を有しており、PTPシート1の製造時には、印刷部5Gの形成された錠剤5をポケット部2へと充填する。一方、錠剤供給印刷装置21は、錠剤5の収納時には、印刷部5Gの形成された錠剤5を、容器フィルム3に代えて配置された後述する第二吸着ベルト72へと受け渡す。錠剤供給印刷装置21の詳細については後述する。
【0043】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5の異常の有無、ポケット部2への異物混入の有無など、主として錠剤不良に関する検査を行う。
【0044】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0045】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。フィルム受けロール20及び加熱ロール25により本実施形態における取着手段が構成される。
【0046】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0047】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0048】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する機能を有する。また、刻印装置34はPTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
【0049】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く機能を有する。シート打抜装置37により本実施形態における切離手段が構成される。
【0050】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される。但し、上記検査装置22並びにそれぞれ後述する第一印刷検査装置59及び第二印刷検査装置84のうちの少なくとも1つによって不良と判定されたPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0051】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。尚、連続送りロール36は従動ロールが圧接されており、不要フィルム部42を挟持しながら搬送動作を行う。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0052】
尚、上記各ロール14,20,28,31,32などは、そのロール表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、間欠送りロール14等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、ポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2が間欠送りロール14等の各凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0053】
次いで、錠剤供給印刷装置21の構成について詳しく説明する。
図6は、PTPシート1を製造する場合における、錠剤供給印刷装置21等の概略構成を示す部分断面模式図である。
図6に示すように、錠剤供給印刷装置21は、充填手段としての錠剤充填装置51、錠剤収納装置71、第二印刷システム81及び制御装置91を備えている。尚、錠剤供給印刷装置21の各機構部(錠剤充填装置51、錠剤収納装置71及び第二印刷システム81)は、制御装置91により動作制御される。
【0054】
まず、錠剤充填装置51について説明する。錠剤充填装置51は、PTPシート1の製造時及び錠剤5の収納時の双方において共通に利用される。錠剤充填装置51は、PTPシート1の製造時には各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填し、錠剤5の収納時には錠剤収納装置71(後述する第二吸着ベルト72)へと錠剤5を自動的に受け渡す機能を有する。
【0055】
錠剤充填装置51は、錠剤5の供給経路に沿って上流側より順に、貯留部52、供給シュート53、ロータリドラム54及び第一吸着ベルト55を備えている。また、錠剤充填装置51は、第一吸着ベルト55に対応して第一印刷システム56を備えている。本実施形態では、ロータリドラム54及び第一吸着ベルト55が搬送手段に相当する。
【0056】
貯留部52は、多数の錠剤5を貯留可能に構成されるとともに、ここから供給シュート53へ錠剤5が順次供給されるように構成されている。貯留部52に貯留される錠剤5は、割線5Fが既に形成させたものであるが、印刷部5Gは未形成である。
【0057】
供給シュート53は、水平搬送される容器フィルム3の幅方向(
図6の紙面奥行方向)における各ポケット部2の位置に対応して、それぞれ設けられている。つまり、本実施形態では、容器フィルム3の幅方向に沿って5本の供給シュート53が並設されている。各供給シュート53は、筒状をなし、錠剤5を横姿勢で鉛直方向に一列に積載できるよう構成されている。また、各供給シュート53は、その下側開口部がロータリドラム54の回転軸の真上に位置しロータリドラム54に近接するようにして配置されている。
【0058】
各供給シュート53の下側開口部の近傍には、該下側開口部を開閉可能なシャッタ53Aが設けられている。そして、シャッタ53Aが開閉動作を行うことにより、供給シュート53から錠剤5を1錠ずつ自然落下させ、ロータリドラム54へ供給することができるようになっている。尚、ロータリドラム54へと供給される錠剤5の表裏や割線5Fの向きは様々であり、一定ではない。
【0059】
ロータリドラム54は、所定の第一ポジションP1において供給シュート53から供給された錠剤5を受取った上で、該錠剤5を吸着保持しつつ、第一吸着ベルト55側へと搬送するものである。第一ポジションP1は、供給シュート53からの錠剤5の落下位置に相当するポジションである。
【0060】
ロータリドラム54は、
図6及び
図7に示すように、円筒形状をなすとともに回転可能に軸支されており、また、その回転軸が容器フィルム3の幅方向と平行となるように配置されている。さらに、ロータリドラム54は、図示しないモータ等の駆動手段に対し直接又は間接に連結されており、該モータによって回転駆動される。本実施形態では、
図6の紙面上において、ロータリドラム54は時計回り方向に連続回転する。
【0061】
さらに、ロータリドラム54の外周面には、錠剤5を吸着保持するための吸着部54Aが多数形成されている。各吸着部54Aは、ロータリドラム54の径方向に見た平面視で、略円形状をなし、錠剤5を収容可能な大きさを有している。
【0062】
また、吸着部54Aは、ロータリドラム54の周方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態では、容器フィルム3の幅方向における各ポケット部2の位置に対応して、ロータリドラム54の軸方向に等間隔で5つの吸着部54Aが設けられている。そして、この軸方向に並ぶ5つの吸着部54Aからなる列がロータリドラム54の周方向に等間隔で多数設けられている。さらに、ロータリドラム54の周方向に対する吸着部54Aの形成間隔(ピッチ)は、容器フィルム3の搬送方向(
図6の右向き方向)に対するポケット部2の形成間隔と同一間隔となっている。
【0063】
さらに、各吸着部54Aは、ロータリドラム54の回転に伴いロータリドラム54の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、所定の真空ポンプ(図示略)によって真空引きされた状態(負圧が供給された状態)となるように構成されている。これにより、各吸着部54Aは、ロータリドラム54の回転軸の真上から真下付近まで移動する間、錠剤5を吸着保持することができるようになっている。尚、錠剤5を吸着部54Aにより吸着保持した状態では、錠剤5の一部がロータリドラム54の外周面より突出するようになっている。
【0064】
一方、各吸着部54Aは、ロータリドラム54の回転に伴いロータリドラム54の回転軸の真下から真上付近まで移動する間、大気に開放された状態となるように構成されている。これにより、ロータリドラム54に吸着保持された錠剤5は、ロータリドラム54の回転軸の真下にて吸着が解除されるようになっている。
【0065】
尚、ロータリドラム54、第一吸着ベルト55及び後述する第二吸着ベルト72には、それぞれ図示しないエンコーダが設けられており、該エンコーダから前記制御装置91へ回転量(移動量)に関する信号が所定時間毎に出力される。これにより、前記制御装置91は、ロータリドラム54、第一吸着ベルト55及び第二吸着ベルト72の回転位置を把握可能であり、ひいては吸着搬送される錠剤5の位置を把握できるようになっている。
【0066】
第一吸着ベルト55は、所定の第二ポジションP2にてロータリドラム54から錠剤5を受取った上で、該錠剤5を吸着搬送し、最終的に容器フィルム3(ポケット部2)へと充填する又は錠剤収納装置71へと受け渡すものである。第二ポジションP2は、ロータリドラム54の回転軸の真下位置に相当するポジションである。
【0067】
第一吸着ベルト55は、一対のプーリ55A,55Bと、複数の保持板55Dをベルト状につなぎ合わせてなる搬送ベルト55Cと、吸引機構(不図示)とを有している。
【0068】
一対のプーリ55A,55Bは、容器フィルム3の搬送経路に沿って間隔をあけた状態で配置されており、それぞれ所定の駆動手段によってロータリドラム54の回転軸と平行な回転軸にて回転可能とされている。また、一対のプーリ55A,55Bのうち、容器フィルム3の搬送経路に沿った下流側に配置されるプーリ55Aは、ロータリドラム54の鉛直下方において該ロータリドラム54に近接した状態で配置されている。
【0069】
搬送ベルト55Cは、前記一対のプーリ55A,55Bに架け渡されており、プーリ55A,55Bの回転に伴い回転移動する。本実施形態では、
図6の紙面上において、搬送ベルト55Cは、反時計回り方向に回転移動する。また、搬送ベルト55Cのうちプーリ55Bからプーリ55Aへと移動する部位(つまり、搬送ベルト55Cのうち外周面が下側を向く部位)は、容器フィルム3の搬送経路に近接配置されており、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送速度と同一速度で連続移動するようになっている。
【0070】
さらに、各保持板55Dには、搬送ベルト55Cの幅方向に沿って等間隔に複数の吸着孔55Eが設けられている。本実施形態において、吸着孔55Eは、搬送ベルト55Cの幅方向に沿って5つ設けられており、前記幅方向に沿った各吸着孔55Eの間隔は、容器フィルム3の幅方向に沿ったポケット部2の形成間隔と同一とされている。
【0071】
また、前記吸引機構を作動させることによって各吸着孔55Eを真空引きした状態(負圧を供給した状態)とすることができるように構成されている。これにより、第一吸着ベルト55は、各吸着孔55Eの形成箇所において錠剤5を吸着保持可能となっている。
【0072】
加えて、第一吸着ベルト55の内部には、図示しないブロー機構が設けられている。当該ブロー機構は、吸着孔55Eに向けて加圧されたエアーを吹き付けることが可能である。ブロー機構がエアーを吹き付けることによって、吸着孔55Eに大気圧よりも高い圧力を生じさせることができ、その結果、第一吸着ベルト55による錠剤5の吸着を解除することができる。本実施形態では、前記ブロー機構として、次述する第六ポジションP6に対応するものと、後述する第7ポジションP7に対応するものとがそれぞれ設けられている。
【0073】
また、第一吸着ベルト55は、PTPシート1の製造時には、所定の第六ポジションP6に対応する前記ブロー機構の作動により、第六ポジションP6に搬送された錠剤5の吸着を解除することで、ポケット部2へと錠剤5を充填する。第六ポジションP6は、プーリ55Aの回転軸の真下位置にあたり、充填ポジションに相当する。尚、PTPシート1の製造時には、第六ポジションP6を、吸着ベルト55の吸着孔55Eが通過するタイミングと、容器フィルム3のポケット部2が通過するタイミングとが一致するように設定される。
【0074】
また、本実施形態において、第一吸着ベルト55の下方に位置する容器フィルム3の搬送経路は、図示しないガイドロールにより、上流側から下流側に向けて徐々に搬送ベルト55Cへと接近する経路に設定されている。これにより、PTPシート1の製造時には、第一吸着ベルト55により吸着搬送される錠剤5がポケット部2へと徐々に入り込んでいき、最終的に第六ポジションP6にて錠剤5の大部分がポケット部2へと入り込むことになる。そのため、錠剤5をポケット部2へとより確実に充填可能である。
【0075】
一方、第一吸着ベルト55は、錠剤5の収納時には、所定の第七ポジションP7(
図8参照)に対応する前記ブロー機構の作動により、第七ポジションP7に搬送された錠剤5の吸着を解除することで、後述する第二吸着ベルト72へと錠剤5を受け渡す。第七ポジションP7は、搬送ベルト55Cの移動方向に沿って第六ポジションP6よりも若干下流側のポジションである。
【0076】
尚、第一吸着ベルト55において前記ブロー機構を必ずしも複数設ける必要はなく、PTPシート1の製造時及び錠剤5の収納時で、前記ブロー機構の設定を異なるものとすることにより、PTPシート1の製造時及び錠剤5の収納時に対応するように構成してもよい。例えば、PTPシート1の製造時には、第六ポジションP6に位置する錠剤5の吸着が解除されるように前記ブロー機構の動作を設定し、錠剤5の収納時には、第七ポジションP7に位置する錠剤5の吸着が解除されるように前記ブロー機構の動作を設定することとしてもよい。
【0077】
次いで、第一印刷システム56について説明する。第一印刷システム56は、PTPシート1の製造時及び錠剤5の収納時の双方において共通に利用される。第一印刷システム56は、第一吸着ベルト55によって吸着搬送されている錠剤5に印刷を施すとともに、形成された印刷部5Gの良否を判定する機能を有する。第一印刷システム56は、第一吸着ベルト55による錠剤5の搬送経路に沿って、第一撮像装置57、第一印刷装置58及び第一印刷検査装置59をこの順序で備えている。本実施形態では、第一印刷装置58が印刷手段に相当する。
【0078】
第一撮像装置57は、例えばCCDカメラやCMOSカメラ等によって構成されており、プーリ55Aからプーリ55Bへと移動する搬送ベルト55Cの上方にあたる第三ポジションP3に対応して配置されている。第一撮像装置57は、その撮像範囲が搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着孔55E)を1回で撮像可能な範囲となっている。これに代えて、搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着孔55E)それぞれに対応してカメラを設けた構成としてもよい。
【0079】
また、第一撮像装置57は、第一吸着ベルト55により吸着搬送されて前記第三ポジションP3を通過する錠剤5を撮像する。第一撮像装置57では、第一吸着ベルト55により吸着された面とは反対の面(非吸着面)側を撮像する。例えば、第一吸着ベルト55によって錠剤5の表面5B側が吸着されている場合、第一撮像装置57は、錠剤5の裏面5C側を撮像する。第一撮像装置57により得られた画像データは、前記制御装置91に入力される。
【0080】
第一印刷装置58は、所定のインクジェット方式(例えばピエゾ方式やサーマル方式)の印刷ヘッドを用いて錠剤5に対し非接触で印刷を行うことのできる公知の錠剤印刷装置である。第一印刷装置58によれば、印刷ヘッドに設けられた複数の吐出ノズルから可食性インクの液滴を吐出し、錠剤5に対し文字や記号などの識別情報を印刷することができる。
【0081】
第一印刷装置58は、搬送ベルト55Cの移動経路に沿った前記第三ポジションP3よりも下流位置にあたる第四ポジションP4に対応して配置されている。第一印刷装置58は、搬送ベルト55Cの幅方向に並ぶ5つの吸着孔55E(錠剤5)に対応して5つの印刷ヘッドを有している。そして、第一印刷装置58は、第一吸着ベルト55により吸着搬送されて前記第四ポジションP4を通過する各錠剤5に向けて各印刷ヘッドからインクを吐出し、非接触で印刷を行う。
【0082】
第一印刷検査装置59は、第一印刷装置58によって形成された印刷部5Gの検査を行う。第一印刷検査装置59は、錠剤5を撮像するカメラと、該カメラによって得られた画像データに基づき印刷部5Gの良否を判定する良否判定部(それぞれ不図示)とを備えている。前記カメラは、搬送ベルト55Cの移動経路に沿った前記第四ポジションP4よりも下流位置にあたる第五ポジションP5に搬送された錠剤5のうち、第一吸着ベルト55によって吸着された面とは反対の面側(つまり、第一印刷装置58によって印刷部5Gの形成された面側)を撮像する。前記良否判定部は、例えば得られた画像データに二値化処理を施すことにより印刷部5Gの占める領域を抽出した上で、当該領域を予め記憶されていた所定の印刷パターンと比較すること等により、印刷部5Gの良否を判定する。良否判定結果は、制御装置91へと入力される。尚、印刷部5Gの良否判定手法は、上記以外の手法であってもよい。また、良否判定部に代えて、制御装置91が画像データに基づく印刷部5Gの良否判定を行うこととしてもよい。
【0083】
次いで、錠剤収納装置71について説明する。錠剤収納装置71は、PTPシート1の製造時には用いられず、錠剤5の収納時にのみ用いられる。
図8は、錠剤5を収納する場合における、錠剤供給印刷装置21等の概略構成を示す部分断面模式図である。
図8に示すように、錠剤収納装置71は、第二吸着ベルト72、良品収納部73及び不良品収納部74を備えている。第二吸着ベルト72により本実施形態における第二搬送手段が構成される。
【0084】
第二吸着ベルト72は、基本的には第一吸着ベルト55と同一の構成を有しており、
図8,9に示すように、一対のプーリ72A,72B、複数の保持板72Dをベルト状につなぎ合わせてなる搬送ベルト72C及び吸引機構(不図示)を有している。搬送ベルト72Cは、プーリ72A,72Bの回転に伴い回転移動する。本実施形態では、
図8の紙面上において、搬送ベルト72Cは、時計回り方向に回転移動可能である。尚、搬送ベルト72Cは、第一吸着ベルト55における前記搬送ベルト55Cの移動速度と同一速度で連続移動可能とされている。
【0085】
また、第一吸着ベルト55の保持板55Dと同様、各保持板72Dには、搬送ベルト72Cの幅方向に沿って等間隔に複数の吸着孔72Eが設けられている。第二吸着ベルト72は、前記吸引機構を作動させることによって、吸着孔72Eの形成箇所において錠剤5を吸着保持可能となっている。尚、
図9では、吸着孔72Eを示すべく、実際には存在する一列分の錠剤5を消去した状態としている。
【0086】
さらに、第一吸着ベルト55と同様、第二吸着ベルト72の内部にはブロー機構(不図示)が設けられており、当該ブロー機構によって第二吸着ベルト72による錠剤5の吸着を解除することができるようになっている。尚、第二吸着ベルト72において、前記ブロー機構は、良品収納部73に対応するものと不良品収納部74に対応するものとがそれぞれ設けられている。また、これらブロー機構は、搬送ベルト72Cの幅方向に並ぶ5つの吸着孔72Eの中から選択したものに向けてエアーを吹き付けることができるようになっている。そのため、一列に並ぶ5つの錠剤5のいずれかを選択的に吸着解除することが可能である。
【0087】
さらに、第二吸着ベルト72は、手動又は電動によりその配置位置を変更可能となっている。第二吸着ベルト72は、PTPシート1の製造時には、容器フィルム3の搬送やPTP包装機10の各装置の動作を妨げない位置に配置される(
図6参照)。
【0088】
一方、第二吸着ベルト72は、錠剤5の収納時には、前記ガイドロール19及び前記フィルム受けロール20に架け渡された容器フィルム3に代えて、第一吸着ベルト55に近接した位置に配置される(
図8参照)。より詳しくは、第二吸着ベルト72は、プーリ72Aのうちその回転軸の真上位置よりも搬送ベルト72Cの移動方向に沿って若干上流側にずれた位置が、第一吸着ベルト55における前記プーリ55Aのうちその回転軸の真下位置よりも前記搬送ベルト55Cの移動方向に沿って若干下流側にずれた位置に近接した状態で配置される。すなわち、第二吸着ベルト72は、搬送ベルト72Cが前記第七ポジションP7にて前記搬送ベルト55Cと最も接近した状態となるように配置される。また、第七ポジションP7を、第二吸着ベルト72の吸着孔72Eが通過するタイミングと、第一吸着ベルト55の吸着孔55Eが通過するタイミングとが一致するように設定される。
【0089】
上記のように配置された第二吸着ベルト72は、錠剤5の収納時には、前記第七ポジションP7において、第一吸着ベルト55から錠剤5を表裏判定させた状態で受取って吸着保持する。第二吸着ベルト72により吸着保持された錠剤5は、搬送ベルト72Cの移動により良品収納部73及び不良品収納部74側へと搬送される。
【0090】
良品収納部73は、第一印刷検査装置59及び後述する第二印刷検査装置84の双方において良判定された錠剤5を収納するための容器であり、第二吸着ベルト72とともに移動可能である。良品収納部73は、第二吸着ベルト72の下方において搬送ベルト72Cの移動経路に沿って配置されている。良品収納部73は、該良品収納部73に対応する前記ブロー機構の作動により吸着解除されて落下した錠剤5を、第二吸着ベルト72から受け取って収納する。尚、良品収納部73に収納された錠剤5を、PTP包装機10以外の包装機(例えば、ボトル充填包装機やストリップ包装機など)に投入することで、PTP包装以外の態様で包装することができる。
【0091】
不良品収納部74は、第一印刷検査装置59及び後述する第二印刷検査装置84の少なくとも一方において不良判定された錠剤5を収納するための容器であり、第二吸着ベルト72とともに移動可能である。不良品収納部74は、第二吸着ベルト72の下方において搬送ベルト72Cの移動経路に沿った良品収納部73よりも下流側に配置されている。不良品収納部74は、該不良品収納部74に対応する前記ブロー機構の作動により吸着解除されて落下した錠剤5を、第二吸着ベルト72から受け取って収納する。
【0092】
次いで、第二印刷システム81について説明する。第二印刷システム81は、PTPシート1の製造時及び錠剤5の収納時の双方において共通に利用される。第二印刷システム81は、PTPシート1の製造時にはポケット部2に充填された錠剤5へと印刷を施す一方、錠剤5の収納時には第二吸着ベルト72により搬送される錠剤5へと印刷を施し、また、形成した印刷部5Gの良否を判定する。第二印刷システム81は、容器フィルム3の搬送経路(第二吸着ベルト72の移動経路)に沿って、第二撮像装置82、第二印刷装置83及び第二印刷検査装置84をこの順序で備えている。
【0093】
尚、第二撮像装置82、第二印刷装置及び第二印刷検査装置84の基本構成は、上述した第一撮像装置57、第一印刷装置58及び第一印刷検査装置59と同様であるため、これらの基本構成についての説明は省略する。また、本実施形態では、第二撮像装置82が撮像手段に相当し、第二印刷装置83が第二印刷手段に相当し、第二印刷検査装置84が検査手段に相当する。
【0094】
第二撮像装置82は、容器フィルム3の搬送経路に沿った第一吸着ベルト55及び前記両ロール20,25間に設けられており、容器フィルム3の搬送又は第二吸着ベルト72による搬送に伴い所定の第八ポジションP8を通過する錠剤5を撮像する。すなわち、第二撮像装置82は、ポケット部2に充填された錠剤5の撮像と、第二吸着ベルト72により吸着搬送されている錠剤5の撮像との双方において利用可能とされている。第二撮像装置82では、錠剤5のうち、第一印刷装置58によって印刷部5Gの形成された面とは反対の面側が撮像される。例えば、第一印刷装置58によって錠剤5の表面5Bに印刷部5Gが形成された場合、第二撮像装置82は、錠剤5の裏面5C側を撮像する。第二撮像装置82により得られた画像データは、前記制御装置91に入力される。
【0095】
第二印刷装置83は、容器フィルム3の搬送経路に沿った第一吸着ベルト55及び前記両ロール20,25間であって、容器フィルム3の搬送経路に沿った前記第八ポジションP8よりも下流位置にあたる第九ポジションP9に対応して配置されている。第二印刷装置83は、容器フィルム3の搬送又は第二吸着ベルト72による搬送に伴い第九ポジションP9を通過する各錠剤5に向けて各印刷ヘッドからインクを吐出し、非接触で印刷を行う。すなわち、第二印刷装置83は、ポケット部2に充填された錠剤5に対する印刷と、第二吸着ベルト72により吸着搬送されている錠剤5に対する印刷との双方において利用可能である。
【0096】
第二印刷検査装置84は、第二印刷装置83により形成された印刷部5Gの検査を行う。第二印刷検査装置84は、容器フィルム3の搬送経路に沿った第二印刷装置83及び前記両ロール20,25間に設けられており、容器フィルム3の搬送経路に沿った前記第九ポジションP9よりも下流位置にあたる第十ポジションP10に対応して配置されている。
【0097】
第二印刷検査装置84は、自身のカメラによって、容器フィルム3の搬送又は第二吸着ベルト72による搬送に伴い前記第十ポジションP10を通過する錠剤5のうち、ポケット部2側を向く面又は第二吸着ベルト72に吸着された面とは反対の面側(つまり、第二印刷装置83により印刷部5Gの形成された面側)を撮像する。そして、第二印刷検査装置84は、自身の良否判定部によって、得られた画像データに基づき印刷部5Gの良否を判定する。すなわち、第二印刷検査装置84は、ポケット部2に充填された錠剤5に係る印刷部5Gに対する検査と、第二吸着ベルト72により吸着搬送されている錠剤5に係る印刷部5Gに対する検査との双方において利用可能とされている。第二印刷検査装置84による良否判定結果は、前記制御装置91へと入力される。
【0098】
尚、PTPシート1の製造時と錠剤5の収納時とで、第二印刷システム81の処理対象となる錠剤5の搬送経路が変化する場合には、その搬送経路の変化に合わせて、第二印刷システム81の配置位置を変化させたり、第二印刷システム81の動作設定を変更したりしてもよい。
【0099】
制御装置91は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、情報を長期記憶するための記憶媒体(例えばハードディスク等)などを備えている。制御装置91は、CPUが所定のプログラムを実行することによって、錠剤供給印刷装置21における各機構部に関する制御処理を実行する。
【0100】
制御装置91により行われる制御処理には、PTPシート1の製造時及び錠剤5の収納時の双方において共通に行われるものと、PTPシート1の製造時にのみ行われるものと、錠剤5の収納時にのみ行われるものとがある。以下、これら制御処理を順に説明する。
【0101】
まず、PTPシート1の製造時及び錠剤5の収納時の双方において共通に行われる制御処理について説明する。この制御処理には、撮像装置57,82の制御処理、印刷装置58,83の制御処理及び印刷検査装置59,84の制御処理などが含まれる。
【0102】
撮像装置57,82の制御処理は、前記第三ポジションP3又は前記第八ポジションP8を錠剤5が通過するタイミングで撮像装置57,82を動作させることにより行われる。尚、錠剤5の位置は、吸着ベルト55,72の前記エンコーダから制御装置91へと入力される信号に基づき把握可能である。
【0103】
印刷装置58,83の制御処理は、前記第四ポジションP4又は前記第九ポジションP9を錠剤5が通過するタイミングで印刷装置58,83を動作させることにより行われる。
【0104】
尚、印刷装置58,83は、制御装置91によって次のように動作制御される。すなわち、本実施形態において、制御装置91の前記記憶媒体には、例えば、文字や数字等の印刷パターンの向きを0度から359度の範囲で1度ずつ回転させた360通りの印刷データが登録されている。制御装置91は、撮像装置57,82により得られた画像データに基づき、割線5Fの位置及び向きに関する情報(「位置角度情報」と称す)を取得する。位置角度情報は、所定の基準位置に対する割線5FのX方向及びY方向に沿った位置ずれ量や、所定の基準線に対する割線5Fの傾斜角度などの情報を含む。その上で、制御装置91は、取得した位置角度情報に基づき、前記記憶媒体に登録された複数の印刷データの中から、得られた位置角度情報における傾斜角度に適合するものを選択する。例えば、傾斜角度が90度である場合、制御装置91は、複数の印刷データの中から、文字や数字等の印刷パターンの向きを90度回転させたものを選択する。また、制御装置91は、得られた位置角度情報における位置ずれ量から印刷位置を決定する。そして、制御装置91は、選択した印刷データ及び決定した印刷位置に基づき、印刷装置58,83の動作制御を行う。これにより、錠剤5における所定位置に印刷部5Gが正確に形成されることとなる。
【0105】
印刷検査装置59,84の制御処理は、前記第五ポジションP5又は前記第十ポジションP10を錠剤5が通過するタイミングで印刷検査装置59,84の前記カメラを動作させることにより行われる。尚、上記の通り、印刷部5Gの検査は印刷検査装置59,84の前記良否判定部により行われ、得られた判定結果が制御装置91へと入力される。
【0106】
次に、PTPシート1の製造時にのみ行われる制御処理について説明する。この制御処理には、第一吸着ベルト55に設けられた、前記第六ポジションP6に対応する前記ブロー機構の制御処理が含まれる。この制御処理は、第六ポジションP6を錠剤5が通過するタイミングで該ブロー機構を動作させることにより行われる。この制御処理により、第六ポジションP6にてポケット部2へと錠剤5が充填されることになる。
【0107】
次いで、錠剤5の収納時にのみ行われる制御処理について説明する。この制御処理には、第一吸着ベルト55に設けられた、前記第七ポジションP7に対応する前記ブロー機構の制御処理と、第二吸着ベルト72に設けられた前記ブロー機構の制御処理とが含まれる。前記第七ポジションP7に対応する前記ブロー機構の制御処理は、第七ポジションP7を錠剤5が通過するタイミングで該ブロー機構を動作させることにより行われる。この制御処理により、第七ポジションP7において、第一吸着ベルト55による錠剤5の吸着が解除され、その結果、第一吸着ベルト55から第二吸着ベルト72へと錠剤5が受け渡されることとなる。
【0108】
第二吸着ベルト72に設けられた前記ブロー機構の制御処理は、印刷検査装置59,84により得られた検査結果に基づき、良品収納部73に対応する前記ブロー機構と、不良品収納部74に対応する前記ブロー機構とを選択的に動作させることにより行われる。
【0109】
より詳しくは、印刷検査装置59,84の双方により良判定された錠剤5に関しては、該錠剤5が良品収納部73に対応する位置へと至ったタイミングで、該錠剤5を吸着する吸着孔72Eに向けてエアーを吹き付けるように、良品収納部73に対応する前記ブロー機構を動作させる。これにより、良判定された錠剤5は、吸着が解除されて落下し、良品収納部73へと収納される。
【0110】
一方、印刷検査装置59,84のうちの少なくとも一方により不良判定された錠剤5に関しては、該錠剤5が不良品収納部74に対応する位置へと至ったタイミングで、該錠剤5を吸着する吸着孔72Eに向けてエアーを吹き付けるように、不良品収納部74に対応する前記ブロー機構を動作させる。これにより、不良判定された錠剤5は、吸着が解除されて落下し、不良品収納部74へと収納される。
【0111】
次に、PTPシート1を製造するときの工程(PTPシート1の製造工程)、及び、錠剤5を収納するときの工程(錠剤5の収納工程)について説明する。まず、PTPシート1の製造工程について
図10のフローチャートを参照して説明する。尚、PTPシート1の製造時には、容器フィルム3などが所定位置に配置された状態とされ、錠剤収納装置71は、PTP包装機10の動作を阻害しない位置に配置される。(
図6参照)。また、制御装置91は、PTPシート1の製造時に係る制御処理を行うように設定される。
【0112】
まず、ステップS11のポケット部形成工程において、加熱装置15によって比較的柔軟になった容器フィルム3に対し、ポケット部形成装置16によってポケット部2を順次形成していく。
【0113】
次いで、ステップS12の充填工程において、形成されたポケット部2へと錠剤5を充填する。充填工程S12は、錠剤供給工程S121、第一撮像工程S122、第一印刷工程S123、第一印刷検査工程S124及び錠剤投入工程S125を含む。
【0114】
ステップS121の錠剤供給工程は、ロータリドラム54へと錠剤5を供給する工程である。錠剤供給工程S121では、まず、ロータリドラム54の回転に伴い移動する空の吸着部54Aが前記第一ポジションP1に到達する所定のタイミングで、シャッタ53Aを開閉動作させる。シャッタ53Aの開閉動作により、各供給シュート53から錠剤5が1つずつ落下し、第一ポジションP1へ移動してきた吸着部54Aに収容される。このとき、錠剤5を収容した吸着部54Aは真空引きされた状態となっているため、該錠剤5は吸着保持された状態となる。尚、供給シュート53においては、1つの錠剤5が落下すると、その上の錠剤5が下側開口部まで降下して、シャッタ53Aにより落下が阻止された状態となる。
【0115】
その後、ロータリドラム54の回転に伴い、錠剤5が前記第二ポジションP2に配置されると、該錠剤5は吸着解除されて第一吸着ベルト55へと受け渡される。このとき、吸着孔55Eは真空引きされた状態となっているため、錠剤5は第一吸着ベルト55によって吸着保持された状態となる。そして、搬送ベルト55Cの移動に伴い、錠剤5は、第一撮像装置57等の方へと搬送されていく。
【0116】
ステップS122の第一撮像工程は、第一撮像装置57によって、第一吸着ベルト55により吸着搬送されている錠剤5を撮像する工程である。第一撮像工程S122では、錠剤5が前記第三ポジションP3に到達する所定のタイミングで第一撮像装置57を作動させる。これにより、第一撮像装置57は、第一吸着ベルト55によって吸着搬送されて前記第三ポジションP3を通過する錠剤5の非吸着面(表面5B側又は裏面5C側の面)を撮像する。撮像により得られた画像データは、制御装置91へと入力される。
【0117】
次いで、ステップS123の第一印刷工程が行われる。すなわち、第一撮像工程S122を経た錠剤5が、搬送ベルト55Cの移動に伴い、さらに搬送され、前記第四ポジションP4に到達する所定のタイミングとなると、制御装置91により決定された印刷位置等に基づき、第一印刷装置58を作動させる。これにより、前記第四ポジションP4を通過する錠剤5の非吸着面側に印刷が施され、印刷部5Gが形成される。尚、このとき、制御装置91は、第一撮像装置57により得られた画像データに基づき印刷位置等を決定する。
【0118】
次いで、ステップS124の第一印刷検査工程が行われる。すなわち、搬送ベルト55Cの移動に伴い、錠剤5が前記第五ポジションP5に到達する所定のタイミングで、第一印刷検査装置59の前記カメラを作動させる。そして、前記カメラにより得られた画像データに基づき、第一印刷検査装置59の前記良否判定部によって印刷部5Gの良否が判定される。ここでは、第一印刷装置58により形成された印刷部5Gの良否が判定される。良否判定結果は、制御装置91へと入力される。
【0119】
その後、ステップS125の錠剤投入工程が行われる。すなわち、第一吸着ベルト55に吸着保持された錠剤5が前記第六ポジションP6に到達すると、該錠剤5が、該第六ポジションP6に位置する容器フィルム3のポケット部2内に入り込む。同時に、該錠剤5を吸着している吸着孔55Eに向けてエアーが吹き付けられるように前記ブロー機構を作動させることで、該錠剤5の吸着保持が解除される。これにより、第一吸着ベルト55から錠剤5がポケット部2へと落下し、ポケット部2へと錠剤5が充填されることとなる。尚、錠剤5は、印刷部5Gがポケット部2と対向する状態でポケット部2へと充填される。
【0120】
充填工程S12に続いて、第二撮像工程S13、第二印刷工程S14及び第二印刷検査工程S15が行われる。
【0121】
第二撮像工程S13では、容器フィルム3の搬送に伴い、ポケット部2に充填された錠剤5が前記第八ポジションP8に到達する所定のタイミングで第二撮像装置82を作動させる。これにより、第二撮像装置82は、第八ポジションP8を通過する錠剤5を撮像する。尚、第二撮像装置82による撮像対象は、第一印刷装置58によって印刷部5Gの形成された面とは反対側の面、すなわち、印刷部5Gが未形成の面となる。
【0122】
次いで、ステップS14の第二印刷工程が行われる。すなわち、錠剤5が、容器フィルム3の搬送に伴いさらに搬送され、前記第九ポジションP9に到達する所定のタイミングになると、制御装置91により決定された印刷位置等に基づき、第二印刷装置83を作動させる。これにより、錠剤5における印刷部5Gが未形成であった面に印刷部5Gが形成される。尚、このとき、制御装置91は、第二撮像装置82により得られた画像データに基づき印刷位置等を設定する。
【0123】
その後、ステップS15の第二印刷検査工程において、ポケット部2に充填された錠剤5が前記第十ポジションP10に到達する所定のタイミングで、第二印刷検査装置84の前記カメラを作動させる。そして、前記カメラにより得られた画像データに基づき、第二印刷検査装置84の前記良否判定部によって印刷部5Gの良否が判定される。ここでは、第二印刷装置83により形成された印刷部5Gの良否が判定される。良否判定結果は、制御装置91へと入力される。
【0124】
次いで、ステップS16の取着工程が行われる。取着工程S16では、前記両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれることで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、PTPフィルム6が得られる。
【0125】
そして、スリット形成装置33や刻印装置34による処理がPTPフィルム6に施された後、ステップS17の切離工程が行われることで、PTPシート1の製造工程が終了する。切離工程S17では、シート打抜装置37によりPTPフィルム6が打抜かれて、PTPフィルム6からPTPシート1が切離されることで、PTPシート1が製造される。
【0126】
次いで、錠剤5の収納工程について
図11のフローチャートを参照して説明する。尚、錠剤5の収納時には、容器フィルム3に代えて、錠剤収納装置71が所定位置に配置された状態となる(
図8参照)。また、制御装置91は、錠剤5の収納時に係る制御処理を行うように設定される。
【0127】
錠剤5の収納工程では、まず、錠剤供給工程S21、第一撮像工程S22、第一印刷工程S23及び第一印刷検査工程S24が行われる。これら工程は、上述した錠剤供給工程S121、第一撮像工程S122、第一印刷工程S123及び第一印刷検査工程S124と同一である。従って、これら工程についての説明を省略する。
【0128】
第一印刷検査工程S24に続いて、ステップS25の錠剤受渡工程が行われる。錠剤受渡工程S25では、第一吸着ベルト55により搬送された錠剤5が前記第七ポジションP7に至ると、該錠剤5を吸着する吸着孔55Eに向けてエアーが吹き付けられるように前記ブロー機構を作動させることで、該錠剤5の吸着保持が解除される。これにより、第一吸着ベルト55から第二吸着ベルト72へと錠剤5が受け渡される。このとき、第二吸着ベルト72の吸着孔72Eは真空引きされた状態となっているため、錠剤5は第二吸着ベルト72によって吸着保持された状態となる。そして、搬送ベルト72Cの移動に伴い、錠剤5は、第二撮像装置82等の方へと搬送されていく。
【0129】
その後、第二撮像工程S26、第二印刷工程S27及び第二印刷検査工程S28が行われる。これら工程は、上述した第二撮像工程S13、第二印刷工程S14及び第二印刷検査工程S15と同一である。従って、これら工程についての説明を省略する。
【0130】
第二印刷検査工程S28に続いて、ステップS29の錠剤収納工程が行われることで、錠剤5の収納工程が終了する。
【0131】
錠剤収納工程S29では、第一印刷検査装置59及び第二印刷検査装置84の双方において良判定された錠剤5が良品収納部73に対応する位置に到達すると、良品収納部73に対応する前記ブロー機構を作動させる。これにより、該錠剤5の吸着保持が解除されて、該錠剤5が第二吸着ベルト72から落下し、良品収納部73へと収納される。
【0132】
一方、第一印刷検査装置59及び第二印刷検査装置84のうちの少なくとも一方によって不良判定された錠剤5が、不良品収納部74に対応する位置に到達すると、不良品収納部74に対応する前記ブロー機構を作動させる。これにより、該錠剤5の吸着保持が解除されて、該錠剤5が第二吸着ベルト72から落下し、不良品収納部74へと収納される。このように錠剤収納工程S29では、印刷検査装置59,84の良否判定結果に応じて、錠剤5が良品収納部73及び不良品収納部74のいずれかへと振り分けられて収納される。
【0133】
以上詳述したように、本実施形態によれば、PTPシート1を製造する場合には、第一吸着ベルト55によって錠剤5を吸着した状態で該錠剤5に対し非接触で印刷が施され、その後、第一吸着ベルト55による吸着が解除されることで、ポケット部2へと錠剤5が充填される。すなわち、吸着状態で印刷部5Gの形成された錠剤5は、吸着状態を維持したまま第六ポジションP6側へと搬送され、該第六ポジションP6にて吸着解除されることで、ポケット部2へと充填される。そのため、錠剤5が他の錠剤やホッパ等と擦れ合うことがなくなり、印刷部5Gが削れたり欠けたりして印刷内容が不明瞭となることをより確実に防止できる。これにより、印刷内容が明瞭なPTPシート1をより確実に得ることができる。
【0134】
また、錠剤5に非接触で印刷を施すため、印刷時に錠剤5へと加わる負荷(力)を著しく減らすことができ、錠剤5の破損をより確実に防止することができる。その結果、印刷内容が不明瞭となることをより確実に防止できることと相俟って、不良錠剤の発生を抑えることができ、PTPシート1の製造に係るコストの低減を図ることができる。
【0135】
さらに、本実施形態におけるPTP包装機10は、容器フィルム3に代えて配置可能な第二吸着ベルト72を備えており、第二吸着ベルト72は、第一吸着ベルト55から錠剤5を受取ることが可能となっている。つまり、第一吸着ベルト55は、容器フィルム3(ポケット部2)のみならず、第二吸着ベルト72に対しても印刷部5Gの形成された錠剤5を受け渡すことが可能となっている。ここで、第二吸着ベルト72に受け渡された錠剤5(最終的に良品収納部73に収納された錠剤5)をPTP包装以外の包装態様(例えば、ボトル充填包装やストリップ包装など)に用いることとすれば、各包装態様に応じた包装を実現することができる。従って、第一印刷装置58を、PTPシート1に充填される錠剤5の印刷のみならず、例えばPTP包装以外の態様で包装される錠剤5の印刷にも利用することができる。これにより、PTP包装以外の包装態様に対応するために別途の錠剤印刷装置を設けることなく、PTP包装機10自体に備わっている第一印刷装置58を利用して様々な包装態様に対応することができる。その結果、コストの削減や装置の設置に係る省スペース化などを図ることができる。
【0136】
また、第二印刷装置83によって、ポケット部2に充填された後の錠剤5に非接触で印刷を施すことができる。そのため、第二印刷装置83により形成された印刷部5Gが他の錠剤5と擦れ合うことはなく、この印刷部5Gの印刷内容が不明瞭となることをより確実に防止できる。また、両印刷装置58,83により形成された印刷部5G(錠剤5の表裏両面に形成された印刷部5G)の内容が明瞭なPTPシート1をより確実に得ることができる。
【0137】
加えて、第一吸着ベルト55から第二吸着ベルト72へと錠剤5が表裏反転した状態で受け渡され、第二印刷装置83によって、吸着された錠剤5へと非接触で印刷を施すことができる。従って、PTP包装以外の包装態様で錠剤5を利用する場合に、錠剤5の片面印刷及び両面印刷の双方に対応することができる。これにより、錠剤充填製品(例えば、錠剤5の充填されたボトルなど)の製造に係る使い勝手を向上させることができる。
【0138】
また、第二印刷装置83を、PTPシート1に充填される錠剤5の印刷のみならず、PTP包装以外の態様で包装される錠剤5の印刷にも利用することができる。その結果、設備コストの削減や装置の小型化(簡素化)などを図ることができる。
【0139】
さらに、第二印刷検査装置84を、PTPシート1に充填される錠剤5の検査のみならず、PTP包装以外の包装態様で包装される錠剤5の検査にも利用することができる。従って、設備コストの削減や装置の小型化(簡素化)などを一層効果的に図ることができる。
【0140】
また、良判定された錠剤5(良品錠剤)を良品収納部73に収納し、一方、不良判定された錠剤5(不良錠剤)を不良品収納部74に収納することが自動的に可能となる。そして、良品収納部73に収納された良品錠剤をPTP包装機10以外の包装機へと投入することで、錠剤5の印刷内容が明瞭な錠剤充填製品をより確実に得ることができる。これにより、錠剤充填製品の製造に関し、コストの低減や使い勝手の向上を図ることができる。
【0141】
加えて、撮像装置57,82により得られた画像データを基に、印刷前に印刷対象となる錠剤5の位置や向きなどを把握することができ、印刷装置58,83によって錠剤5の位置や向きなどに合わせた適切な印刷を施すことができる。
【0142】
さらに、第二撮像装置82を、PTPシート1に充填される錠剤5の撮像のみならず、PTP包装以外の態様で包装される錠剤5の撮像にも利用することができる。その結果、設備コストの削減や装置の小型化(簡素化)などをより一層図ることができる。
【0143】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0144】
(a)上記実施形態では第二吸着ベルト72を用いることとしているが、第一吸着ベルト55から錠剤5を受取るものであればよく、第二吸着ベルト72に限られない。従って、例えば、容器フィルム3に代えて配置可能に構成され、錠剤5を貯留可能な容器によって受取手段を構成してもよい。勿論、この容器は、最終的に製品の一部(例えば、錠剤充填製品のボトル)となるものであってもよいし、単に錠剤5を貯留するものであってもよい。また、受取手段は、PTP包装機10(例えば錠剤充填装置51)の動作調整時や始動時に、第一吸着ベルト55から錠剤5を単に受取るものであってもよい。この場合には、錠剤5の回収が容易に可能となり、利便性の向上を図ることができる。
【0145】
(b)上記実施形態では、ロータリドラム54及び第一吸着ベルト55により搬送手段が構成されているが、搬送手段は、錠剤5を吸着搬送しつつ、吸着解除によりポケット部2へと錠剤5を充填する機能を有するものであればよい。従って、例えば、錠剤5を吸着搬送しつつ、吸着解除によりポケット部2へと錠剤5を充填可能な1のロータリドラムによって搬送手段を構成してもよい。勿論、複数のロータリドラムや吸着ベルトによって搬送手段を構成してもよい。
【0146】
また、上記実施形態において、第二搬送手段は、第二吸着ベルト72により構成されているが、これに限られず、搬送手段から錠剤5を受取って吸着搬送するものであればよい。従って、1のロータリドラムや複数の吸着ベルト等によって第二搬送手段を構成してもよい。
【0147】
(c)上記実施形態において、PTPシート1の製造時には、第六ポジションP6にて第一吸着ベルト55からポケット部2へと錠剤5が受け渡され(充填され)、錠剤5の収納時には、第七ポジションP7にて、第一吸着ベルト55から第二吸着ベルト72へと錠剤5が受け渡されるように構成されている。すなわち、第一吸着ベルト55からの錠剤5の受渡ポジションが、PTPシート1の製造時と錠剤5の収納時とで異なるものとされている。これに対し、第一吸着ベルト55からの錠剤5の受渡ポジションが、PTPシート1の製造時と錠剤5の収納時とで同一となるように構成してもよい。この場合には、第一吸着ベルト55における錠剤5の吸着解除に係る制御をより容易なものとすることができる。
【0148】
(d)上記実施形態では、錠剤5として、平面視円形状をなす円盤状の素錠(円盤形状の平錠)が例示されているが、錠剤の種別や形状等については、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば錠剤には、医薬のみならず、飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。また、錠剤には、素錠のみならず、糖衣錠やフィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠などが含まれるのは勿論のこと、硬カプセルや軟カプセルなどの各種カプセル錠なども含まれる。
【0149】
さらに、錠剤の形状に関しては、例えば平面視円形状のみならず、平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。加えて、錠剤5は、割線5Fを備えないものであってもよい。
【0150】
(e)PTPシート1におけるポケット部2の配列や個数に関しては、上記実施形態(2列、10個)に何ら限定されるものではなく、例えば3列12個のポケット部を有するタイプをはじめ、様々な配列、個数からなるPTPシートを採用することができる。
【0151】
また、上記実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って1シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、その幅方向に沿って複数シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成であってもよい。
【0152】
(f)上記実施形態において、印刷部5Gは、錠剤5の表面5B側及び裏面5C側の双方に設けられているが、表面5B側及び裏面5C側のうちの一方のみに印刷部を設けることとしてもよい。
【0153】
(g)上記実施形態において、第一印刷システム56は、第一吸着ベルト55に対応して設けられているが、第一印刷システム56をロータリドラム54に対応して設けることとしてもよい。
【0154】
(h)上記実施形態において、印刷装置58,83は、インクジェット印刷装置によって構成されているが、印刷装置58,83をレーザ印刷装置によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0155】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、10…PTP包装機、20…フィルム受けロール(取着手段)、25…加熱ロール(取着手段)、37…シート打抜装置(切離手段)、51…錠剤充填装置(充填手段)、54…ロータリドラム(搬送手段)、55…第一吸着ベルト(搬送手段)、58…第一印刷装置(印刷手段)、72…第二吸着ベルト(第二搬送手段)、73…良品収納部、74…不良品収納部、82…第二撮像装置(撮像手段)、83…第二印刷装置(第二印刷手段)、84…第二印刷検査装置(検査手段)、P6…第六ポジション(充填ポジション)。