(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133334
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】金属板用接合剤、プリント配線板用補強部材及びその製造方法、並びに、配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20220906BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220906BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220906BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220906BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C09J7/30
H05K1/03 650
C09J201/00
C09J9/02
C09J201/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102851
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2020169221の分割
【原出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 玲季
(72)【発明者】
【氏名】西之原 聡
(57)【要約】
【課題】接着力及びリフロー耐性に優れ、金属板などから剥がす際に糊残りが抑制される金属板用接合剤、当該接合剤を備えるプリント配線板用補強部材、及び、配線板を提供すること。
【解決手段】シート状の金属板用接合剤であって、前記金属板用接合剤の一方の表面の展開面積比Sdrが0.01~2.0である金属板用接合剤である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の金属板用接合剤であって、前記金属板用接合剤の一方の表面の展開面積比Sdrが0.01~2.0である、金属板用接合剤。
【請求項2】
前記金属板用接合剤が、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)と、バインダー(B)とを含有し、
前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径が5~20μmであり、
前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径が5~50μmである、請求項1に記載の金属板用接合剤。
【請求項3】
前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との合計質量が、前記金属板用接合剤の質量中の40~90質量%である、請求項2に記載の金属板用接合剤。
【請求項4】
前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との質量比が80:20~20:80である、請求項2または3に記載の金属板用接合剤。
【請求項5】
前記バインダー(B)が、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の金属板用接合剤。
【請求項6】
前記バインダー(B)が、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の金属板用接合剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属板用接合剤の展開面積比Sdrが0.01~2.0の表面に金属板が積層する、プリント配線板用補強部材。
【請求項8】
少なくとも一方の表面の展開面積比Sdrが0.01~2.0であるシート状の金属板用接合剤を準備し、当該表面に金属板を積層する、プリント配線板用補強部材の製造方法。
【請求項9】
前記金属板用接合剤の準備方法が、下記(1)~(3)のいずれかである、請求項8に記載のプリント配線板用補強部材の製造方法。
(1)剥離性基材上に、導電性成分とバインダー成分とを含有する接合剤組成物を塗工し、得られた塗膜を研磨する。
(2)展開面積比Sdrが0.01~2.0の剥離性基材上に、導電性成分とバインダー成分とを含有する接合剤組成物を塗工して凹凸を転写する。
(3)剥離性基材上に、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)と、バインダー(B)とを含有し、前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径が5~20μmであり、前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径が5~50μmである接合剤組成物を塗工し、乾燥する。
【請求項10】
請求項7のプリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板が積層し、前記金属板と前記プリント配線板が接合する、配線板。
【請求項11】
請求項7のプリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板を積層し、前記金属板と前記プリント配線板とを圧着して接合する、配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板用接合剤、プリント配線板用補強部材及びその製造方法、並びに、配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部に搭載されるプリント配線板は、柔軟性を有するが、コネクタ部などは部品間の接続を行う観点から、補強板を配置して変形を抑えることが知られている。従来、補強板としてはエポキシガラス等が用いられてきたが、電磁波ノイズの抑制機能を付与する点から金属板が用いられるようになってきている。プリント配線板と金属板の接続には、樹脂を主成分とする接合剤が使用されている。
【0003】
当該接合剤は、金属板とプリント配線板との間を導通する目的や、弾性率制御等の目的から、フィラーを添加することがある。
例えば特許文献1では、導体回路と補強版とを接合剤層を介して接続することが開示されており、前記接合剤層として、導電粒子と接着剤を含む導電性接着材を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィラーを含む接合剤は表面に凹凸が発生しやすく、当該接合剤表面上に金属板を配置した場合、接合剤と金属板との接触面積が低下する。この場合、はんだリフロー通過時などに金属板と接合剤との間で浮きが発生し、十分な導通が取れなくなる場合があった。
【0006】
金属板用接合剤は、しばしば人の手により金属板への積層がなされているが、当該工程において接合剤の積層位置を誤って積層する、あるいは積層時にシワを発生させてしまうなどの工程不具合が生じていた。当該不具合によって発生した不具合品は通常廃棄されるため、生産コストや環境への影響の観点での問題が存在していた。
【0007】
本発明は、接着力及びリフロー耐性に優れ、金属板などから剥がす際に糊残りが抑制される金属板用接合剤、当該接合剤を備えるプリント配線板用補強部材、及び、配線板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属板用接合剤は、シート状の金属板用接合剤であって、前記金属板用接合剤の一方の表面の展開面積比Sdrが0.01~2.0である。
【0009】
上記金属板用接合剤の一実施形態は、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)と、バインダー(B)とを含有し、
前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径が5~20μmであり、
前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径が5~50μmである。
【0010】
上記金属板用接合剤の一実施形態は、前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との合計質量が、前記金属板用接合剤の質量中の40~90質量%である。
【0011】
上記金属板用接合剤の一実施形態は、前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との質量比が80:20~20:80である。
【0012】
上記金属板用接合剤の一実施形態は、前記バインダー(B)が、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂を含む。
【0013】
上記金属板用接合剤の一実施形態は、前記バインダー(B)が、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂を含む。
【0014】
本発明に係るプリント配線板用補強部材は、前記金属板用接合剤の金属板用接合剤の展開面積比Sdrが0.01~2.0の表面に金属板が積層する。
【0015】
本発明に係るプリント配線板用補強部材の製造方法は、少なくとも一方の表面の展開面積比Sdrが0.01~2.0であるシート状の金属板用接合剤を準備し、当該表面に金属板を積層する。
【0016】
上記プリント配線板用補強部材の製造方法の一実施形態は、前記金属板用接合剤の準備方法が、下記(1)~(3)のいずれかである。
(1)剥離性基材上に、導電性成分とバインダー成分とを含有する接合剤組成物を塗工し、得られた塗膜を研磨する。
(2)展開面積比Sdrが0.01~2.0の剥離性基材上に、導電性成分とバインダー成分とを含有する接合剤組成物を塗工して凹凸を転写する。
(3)剥離性基材上に、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)と、バインダー(B)とを含有し、前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径が5~20μmであり、前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径が5~50μmである接合剤組成物を塗工し、乾燥する。
【0017】
本発明に係る配線板は、前記プリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板が積層し、前記金属板と前記プリント配線板が接合する。
【0018】
本発明に係る配線板の製造方法は、前記プリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板を積層し、前記金属板と前記プリント配線板とを圧着して接合する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、接着力及びリフロー耐性に優れ、金属板などから剥がす際に糊残りが抑制される金属板用接合剤、当該接合剤を備えるプリント配線板用補強部材、及び、配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本金属板用接合剤の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】本プリント配線板用補強部材の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】本配線板の一例を示す模式的な断面図である。
【
図4】本配線板の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る金属板用接合剤、プリント配線板用補強部材、及び、配線板について順に説明する。
なお、数値範囲を示す「~」は特に断りのない限りその下限値及び上限値を含むものとする。
また、説明を明確にするため、図面は、適宜、簡略化されている。また、説明のため図面中の各構成は縮尺が大きく異なることがある。特に接合剤表面の凹凸形状は誇張されている。
【0022】
[金属板用接合剤]
図1を参照して本発明の金属板用接合剤(以下、本金属板用接合剤ともいう)の構成を説明する。
図1(a)に示す本金属板用接合剤10は、シート状の金属板用接合剤であって、少なくとも一方の表面1が凹凸を有し、当該表面(界面)の展開面積比Sdrが0.01~2.0であることを特徴とする。以下、界面の展開面積比Sdrが0.01~2.0の表面を単に「表面1」ということがある。本金属板用接合剤10は、例えば、
図1(b)に示すように剥離性フィルム11上に設けられていてもよい。
【0023】
本金属板用接合剤は、少なくとも一方の面の界面の展開面積比Sdrを0.01~2.0とすることで、金属板との密着性が向上し、接着力及びはんだリフロー後の導電性に優れた接合剤とすることができる。また、当該表面1は金属板への糊残りを抑制することができ、例えば、金属板から接合剤を一旦剥がし、金属板を再利用することが可能となる。
接着力、リフロー耐性、及び再利用性の点から、展開面積比Sdrは0.1~1.5が好ましく、0.3~1.0がより好ましく、0.5~0.75が更に好ましい。
【0024】
界面の展開面積比Sdr(以下、単にSdrということがある)は、ISO 25178-2:2012において定義されるものであり、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表す指標である。なお、平坦面のSdrは0(ゼロ)である。
本発明において、展開面積比SdrはISO 25178-2:2012に準拠して測定された値を用いるものとする。具体的にはレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK-X100)を用いて測定データを取得し、取得した測定データを解析ソフトウェア(ISO 25178-2:2012表面性状計測モジュール「VK-H1XR」を備えた、解析アプリケーション「VK-H1XA」、ともにキーエンス社製)に取り込み、ISO 25178-2:2012表面性状計測を実行することで算出することができる。
【0025】
本金属板用接合剤は、例えば、後述する接合剤組成物を剥離性基材上に塗工し、乾燥し、更に必要に応じてBステージ硬化することで得ることができる。塗工方法は、公知の方法の中から、接合剤の膜厚等を考慮して適宜選択すればよい。塗工方法の具体例としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0026】
Bステージ硬化とは、接合剤組成物を所定の温度、時間で加熱することにより、含有する硬化剤の硬化反応を部分的に生じさせる方法である。Bステージ硬化を行うことにより、接合剤の接着力を維持しつつ、強度を高めることができる。
【0027】
本金属板用接合剤の表面の展開面積比Sdrの調整方法としては、当該表面のSdrを所望の値とできれば、いずれの方法も用いることができる。具体的には、(1)接合剤表面をバフ研磨など各種研磨法により研磨する方法;(2)展開面積比Sdrが0.01~2.0の剥離基材上に接合剤用組成物を塗工して凹凸を転写する方法;(3)剥離性基材上に特定の金属粉を含む接合剤用組成物を塗工して乾燥することで、表面の展開面積比Sdrが0.01~2.0の塗膜を形成する方法などが挙げられる。製造の容易性などの点から上記(3)の方法によりSdrを調整することが好ましい。
【0028】
本金属板用接合剤の厚みは、用途等に応じて適宜調整すればよい。接着力、リフロー耐性などの点からは、平均膜厚が5~200μmが好ましく、10~150μmがより好ましい。
【0029】
本金属板用接合剤を形成するための接合剤組成物は、密着性及び導電性の点から、少なくとも導電性成分とバインダー成分とを含有するものが好ましく、更に本発明の効果を奏する範囲で他の成分を含有してもよいものである。
【0030】
前記導電性成分は、本金属板用接合剤に導電性を付与するものであり、後述する特定の導電性成分を用いる場合には、更にSdrを特定の範囲に調整する機能を有する。
Sdrを研磨又は転写により調整する場合、導電性成分は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。導電性成分の具体例としては、導電性微粒子、導電性繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
Sdrを導電性成分により調整する場合には、D50粒子径が5~20μmのデンドライト状金属粉(A1)(単に金属粉(A1)ということがある)と、D50粒子径が5~50μmのフレーク状金属粉(A2)(単に金属粉(A2)ということがある)とを組み合わせることが好ましい。
【0032】
デンドライト状金属粉(A1)を用いることで、金属板用接合剤のSdrを大きくすることができる。デンドライト状とは、複数に枝分かれした樹枝状のような形状を意味する。金属粉(A1)の材質としては、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛または鉄などの導電性金属、及びこれらの合金が挙げられる。また金属粉(A1)は、核となる粒子に導電性金属の被覆層を備える多層構造であってもよい。この場合核となる粒子は導電性を有していても有していなくてもよく、例えば上記導電性金属のほか、金属酸化物や有機物等であってもよい。金属粉(A1)は導電性等の点から、中でも、銅粒子に銀が被覆した銀コート銅粉が好ましい。銀コート銅粉は、銀の被覆により銅の酸化を抑制しつつ、銀の割合を低減することでコスト上のメリットが得られる。銀コート銅粉中の銀の割合は、銀コート銅粉100質量%中、1~20質量%が好ましい。
【0033】
D50粒子径は、測定対象となる金属粉の粒度分布測定を行い得られた粒度分布曲線の積算50%における粒子径を表す。本発明において粒径はレーザー回折・散乱法により測定された値を用いるものとする。
金属粉(A1)のD50粒子径は、5~20μmが好ましく、5.5~15μmがより好ましく、6~10μmがさらに好ましい。金属粉(A1)のD50粒子径が5μm以上であることにより表面の凹凸が大きくなりやすく、展開面積比Sdrを大きくする方向に調整しやすくなる。
【0034】
金属粉(A1)のタップ密度は、導電性の点から0.5~7.0g/cm3が好ましい。タップ密度が0.5g/cm3以上であれば、接合剤中の金属粉(A1)が接触しやすく導電性が向上する。またタップ密度が7.0g/cm3以下であれば、十分な導電性を達成できる。タップ密度はJIS Z 2512「金属粉-タップ密度測定方法」に準拠する方法により測定できる。
【0035】
金属粉(A1)のBET比表面積は、導電性の点から0.5~1.5m2/gが好ましい。BET比表面積が0.5m2/g以上であれば、接合剤中の金属粉(A1)が接触しやすく導電性が向上する。またBET比表面積が1.5m2/g以下であれば、接合剤組成物の粘度の調整がしやすく取り扱い性が向上する。BET比表面積はJIS Z8830「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に基づき測定を行う。
【0036】
本金属板用接合剤は、上記デンドライト状金属粉(A1)とフレーク状金属粉(A2)を組み合わせることが好ましい。フレーク状金属粉(A2)を組み合わせることで、デンドライト状金属粉(A1)のみを用いた場合と比較してSdrの増大を抑えることができる。即ち、金属粉(A1)と金属粉(A2)とを組み合わせることで、Sdrを所望の範囲に調整しやすくなる。
【0037】
金属粉(A2)の材質としては、前記金属粉(A1)と同様のものが挙げられ、中でもコート銅粉が好ましい。金属粉(A2)において銀コート銅粉中の銀の割合は、銀コート銅粉100質量%中、1~20質量%が好ましい。
【0038】
金属粉(A2)のD50粒子径は、5~50μmが好ましく、5~40μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。金属粉(A2)のD50粒子径が5μm以上であることにより金属粉(A1)と組み合わせた際に、Sdrの増大が抑えられる。
【0039】
金属粉(A2)のタップ密度は、導電性の点から0.5~7.0g/cm3が好ましい。タップ密度が0.5g/cm3以上であれば、接合剤中の金属粉(A2)が接触しやすく導電性が向上する。またタップ密度が7.0g/cm3以下であれば、導電性は十分である。
【0040】
金属粉(A2)のBET比表面積は、導電性の点から0.1~1.0m2/gが好ましい。BET比表面積が0.1m2/g以上であれば、接合剤中の金属粉(A2)が接触しやすく導電性が向上する。またBET比表面積が1.0m2/g以下であれば、接合剤組成物の粘度の調整がしやすく取り扱い性が向上する。
【0041】
前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との質量比は、得られる本金属板用接合剤の展開面積比Sdrを0.01~2.0に調整しやすい点から、80:20~20:80が好ましい。
【0042】
また、前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との合計質量が、前記金属板用接合剤の質量中の40~90質量%であることが、Sdrを0.01~2.0に調整しやすく、導電性に優れる点から好ましい。
【0043】
バインダー(B)は、プリント配線板と金属板との接合性の点から、通常樹脂を含み、更に、硬化剤(C)等を含んでいてもよいものである。
【0044】
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂が好ましい。イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合は、結合中に含まれる窒素原子の非共有電子対が、被着体と相互作用することによって強固な接着力を実現することができる。
【0045】
また、樹脂がイミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することがより好ましい。樹脂がイミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することで、被着体への相互作用が多重化し、より強固な密着力を発現することが可能となる。イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂とは、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンウレア樹脂などである。
【0046】
前述の相互作用の多重化は、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂を2種類以上併用することでも発現可能であるため、これらの樹脂を2種類以上組み合わせることも好ましい。
【0047】
バインダー(B)は、更に硬化剤(C)を含んでいてもよい。硬化剤(C)は前記樹脂との組み合わせにより硬化性を発揮する公知の化合物の中から適宜選択すればよい。硬化剤(C)としては、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物、酸無水物などが挙げられる。
【0048】
前記バインダー(B)の含有割合は、前記金属板用接合剤の質量中の10~60質量%であることが、金属板及びプリント配線板との密着性に優れる点から好ましい。
【0049】
本金属板用接合剤は、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよい。含有してもよい成分としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等が挙げられる。
【0050】
[プリント配線板用補強部材]
図2を参照して本発明のプリント配線板用補強部材(以下、本プリント配線板用補強部材ともいう)の構成を説明する。本プリント配線板用補強部材40は、前記金属板用接合剤10の表面1上に金属板20が積層している。本プリント配線板用補強部材40は
図2の例に示すように剥離性フィルム11を有していてもよく、当該剥離性フィルム11は使用時に取り除かれる。
【0051】
金属板は、プリント配線板を補強する剛性を有していればよく、更に導電性を備えることが好ましい。金属板の材質としては、例えば、金、銀、銅、鉄や、ステンレスなどの合金が挙げられる。中でも強度、コストおよび化学的安定性の面から、ステンレスが好ましい。金属板の厚みは特に限定されないが、一般的に0.04~1mm程度である。
【0052】
金属板は、防錆や防汚の観点から表面をめっきするなどして被覆処理してもよい。金属板への被覆処理は、例えば、無電解ニッケルめっき、電気ニッケルめっき、亜鉛めっき、クロムめっき等の公知の処理が挙げられる。
【0053】
[配線板]
図3を参照して本発明の配線板(以下、本配線板ともいう)の構成を説明する。本配線板50は、前記プリント配線板用補強部材40の金属板用接合剤10側の面にプリント配線板30が積層し、前記金属板20と前記プリント配線板30が金属板用接合剤10を介して接合する。前記プリント配線板30は、
図3の例に示されるように、カバーレイ31、導体層32、基材層33を備える構成などが挙げられる。プリント配線板30は、プリント配線板用補強部材40との電気的接続のためにカバーレイ31がビア34を具備していてもよい。ビア34に金属板用接合剤10が充填されて、導体層32とプリント配線板用補強部材40との間の電気的接続が確保される。
【0054】
[配線板の製造方法]
本配線板の製造方法は、一例として、プリント配線板用の基板と、金属板用接合剤10と、金属板20とを積層し、これを圧着して接合し、次いで基板上に電子部品を実装する方法が挙げられる。
図4を参照して配線板の製造方法の一例を説明する。
【0055】
まず、剥離性フィルム11に接合剤組成物を塗工し、乾燥させて剥離性フィルム付金属板用接合剤10を準備し(工程a)、金属板用接合剤10の剥離性フィルム11と接する面と反対面(表面1)と金属板20とを接触させた状態で熱ラミネートを行い、金属板用接合剤10を金属板20に積層させる(工程b)。次いで、剥離性フィルム11を剥離し(工程c)、露出した金属板用接合剤10をプリント配線板30に接触させた状態で熱ラミネートを行い(工程d)、その後、熱プレスなどにより金属板用接合剤10を硬化させ、配線板を得る(工程e)。
【0056】
本金属板用接合剤が熱硬化性成分を含む場合には、硬化促進の点から、圧着時に加熱することが好ましい。例えば加熱温度は150~180℃程度とすることができ、圧着は、3~30kg/cm2程度の圧力をかけることが好ましい。圧着時間は、通常1分~2時間程度である。
【0057】
本配線板は、プリント配線板が用いられる従来公知のあらゆる製品に適用することができる。具体的には、携帯電話、スマートフォン、ノートPC、デジタルカメラ、液晶ディスプレイ等の電子機器や、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機器にも好適にも散ることができる。
【実施例0058】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。配合比に関しては、溶剤以外は固形分換算での値を示す。また、「部」は「質量部」を表す。
【0059】
<金属板用接合剤の作製>
各金属板用接合剤の作製に用いる接合剤組成物の各成分を以下に示す。
【0060】
・バインダー樹脂(B)
ポリウレタンウレア樹脂:酸価=11mgKOH/g(トーヨーケム製)
ポリアミドイミド樹脂:酸価=15mgKOH/g(トーヨーケム製)
ポリウレタン樹脂:酸価=12mgKOH/g(トーヨーケム製)
ポリエステル樹脂:酸価=13mgKOH/g(トーヨーケム製)
フェノール樹脂:酸価=10mgKOH/g(トーヨーケム製)
【0061】
・硬化剤(C)
エポキシ化合物:4官能グリシジルアミン化合物:エポキシ当量120g/eq(jER604、三菱化学製)
アジリジン化合物:ケミタイトPZ-33(エポキシ当量=144g/eq、日本触媒製)
【0062】
・金属粉(A)
[A1]デンドライト状金属粉
A1-1:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=7.4μm、核体:樹枝状(三井金属鉱業製)
A1-2:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=3.1μm(三井金属鉱業製)
A1-3:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=5.3μm(福田金属箔粉製)
A1-4:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=18μm(福田金属箔粉製)
A1-5:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=21μm(DOWA製)
[A2]フレーク状金属粉
A2-1:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=11.2μm(三井金属鉱業製)
A2-2:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=4.3μm(三井金属鉱業製)
A2-3:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=6.3μm(福田金属箔粉製)
A2-4:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=18μm(福田金属箔粉製)
A2-5:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=21μm(DOWA製)
【0063】
[実施例1]
バインダー樹脂としてポリウレタンウレア樹脂を100質量部、導電性物質として[A]デンドライト状金属粉(A1-1)214質量部、フレーク状金属粉(A2-1)71質量部を容器に仕込み、硬化剤としてエポキシ化合物45質量部、アジリジン化合物0.4質量部を加え、不揮発分濃度が45質量%となるようにMEKを加えて混合した。攪拌機により10分間攪拌して接合剤組成物を調製した。
【0064】
次に、上記調製した接合剤組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルム(基材の材質:発泡ポリエチレンテレフタレート、基材の厚み50μm、離型剤:アルキッド系離型剤)の剥離処理された一方の面上に塗工し、120℃の電気オーブンで2分間乾燥することで金属板用接合剤を得た。
【0065】
[実施例2~17]
配合する各成分の種類および配合量を表1~2に記載した通りとした以外は実施例1と同様に操作し、実施例2~17の金属板用接合剤を得た。
[実施例18]
バインダー樹脂としてポリウレタンウレア樹脂を100質量部、導電性物質として[A]デンドライト状金属粉(A1-1)214質量部、フレーク状金属粉(A2-1)71質量部を容器に仕込み、硬化剤としてエポキシ化合物45質量部、アジリジン化合物0.4質量部を加え、不揮発分濃度が45質量%となるようにMEKを加えて混合した。攪拌機により10分間攪拌して接合剤組成物を調製した。
【0066】
次に、上記調製した接合剤組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように凹凸転写用剥離性フィルム(基材の材質:発泡ポリエチレンテレフタレート、基材の厚み50μm、離型剤:アルキッド系離型剤、Sdr;0.05)の剥離処理された一方の面上に塗工し、120℃の電気オーブンで2分間乾燥した後、接合剤の凹凸転写用剥離性フィルムが接する面と反対面に微粘着剥離フィルムを貼り合わせ、凹凸転写用剥離性フィルムを剥離することで、所望のSdrを有する金属板用接合剤を得た。
【0067】
[実施例19]
配合する各成分の種類および配合量を表1に記載した通りとし、凹凸転写用剥離性フィルムをSdrが1.15のものに変更した以外は実施例18と同様に操作し、実施例19の金属板用接合剤を得た。
【0068】
[実施例20]
バインダー樹脂としてポリウレタンウレア樹脂を100質量部、導電性物質として[A]デンドライト状金属粉(A1-1)214質量部、フレーク状金属粉(A2-1)71質量部を容器に仕込み、硬化剤としてエポキシ化合物45質量部、アジリジン化合物0.4質量部を加え、不揮発分濃度が45質量%となるようにMEKを加えて混合した。攪拌機により10分間攪拌して接合剤組成物を調製した。
【0069】
次に、上記調製した接合剤組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルム(基材の材質:発泡ポリエチレンテレフタレート、基材の厚み50μm、離型剤:アルキッド系離型剤)の剥離処理された一方の面上に塗工し、120℃の電気オーブンで2分間乾燥した後、剥離性フィルムと反対面(表面1)にバフ研磨を行い、Sdrを0.07とすることにより、実施例20の金属板用接合剤を得た。
【0070】
[実施例21~26、比較例1~2]
配合する各成分の種類および配合量を表1に記載した通りとした以外は実施例20と同様に操作し、バフ研磨によって表面1のSdrを調整することにより、実施例21~26、比較例1~2の金属板用接合剤を得た。
【0071】
<展開面積比Sdrの測定方法>
金属板用接合剤の表面1の展開面積比Sdrは、以下の方法により測定した。
金属板用接合剤の表面1をレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK-X100)を使用し、測定データ取得を行った後、取得した測定データを解析ソフトウェア(ISO 25178-2:2012表面性状計測モジュール「VK-H1XR」を備えた、解析アプリケーション「VK-H1XA」、ともにキーエンス社製)に取り込み、ISO 25178-2:2012表面性状計測を実行した。(条件は、S‐フィルター;1μm、L‐フィルター;0.2mm)
【0072】
<評価>
得られた各接合剤(金属板用接合剤)について、接続抵抗値、半田リフロー耐性(外観/抵抗値)、再利用性、接着力を下記方法に従って評価した。その評価結果を表1~2に示す。
【0073】
[接続抵抗値]
各実施例および比較例にて作製した金属板用接合剤(幅25mm、長さ150mm)を用い、その接合剤が露出した面が幅25mm、長さ160mmのSUS板(厚さ0.1mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記金属板用接合剤を上記SUS板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm2、1m/minの条件下で、上記金属板用接合剤と上記SUS板とをロールラミネートして金属板用接合剤付SUS板を得た。
【0074】
次に、上記金属板用接合剤付SUS板における金属板用接合剤の剥離性フィルムを剥がして除去した後、打ち抜き加工機(型番:ハンドプレス機QCDタイプ、協栄プリント技研製)を用い、クリアランスが2.5μmの条件で幅5mm、長さ12mmの長方形に打ち抜き、接合剤付SUS板(以下、「接合剤付SUS板」と称する)を得た。次いで、別に作製したプリント配線板を用い、接合剤付SUS板の接合剤が露出した面(接合剤のSUS板と反対の面)をプリント配線板に重ね、ロールラミネーターを用いて130℃、3kgf/cm2、1m/minの条件下で、上記接合剤付SUS板と上記プリント配線板とを、プリント配線板の開口部と金属板用接合剤が重なるように貼り付けた。次いで、これらを170℃、2MPa、3分の条件下で熱圧着した後、これを電気オーブンを用いて160℃、60分間加熱することで評価用試料を得た。
なお、上述のプリント配線板は、厚み50μmのポリイミドフィルムの両面それぞれに厚み18μmの銅箔回路が形成され、銅箔回路上には、幅0.4mm、長さ1.2mmの長方形であって開口面積が0.48mm2の開口部を10点有する厚み37.5μmの接着剤付き絶縁性カバーフィルムが積層されている。また、プリント配線板が反らないように、ポリイミドフィルムに対して銅箔回路およびカバーフィルムを対称に配置してある。
【0075】
次に、抵抗計 RM3544(日置電機株式会社製)にピン型リード L2103(日置電機株式会社製)を接続し、評価用試料のSUS板と銅箔回路との間の電気抵抗(接続抵抗値)を測定し、この測定値を指標として下記評価基準に従い接続抵抗値を評価した。
◎:接続抵抗値が50mΩ/□未満である。(極めて良好である)
○:接続抵抗値が50mΩ/□以上100mΩ/□未満。(良好である)
△:接続抵抗値が100mΩ/□以上300mΩ/□未満。(実用可能である)
×:接続抵抗値が300mΩ/□以上(実用不可能である)
【0076】
[半田リフロー耐性]
接続抵抗値を評価した評価用試料(接合剤付SUS板付きプリント配線板)を用いてハンダリフロー耐性(外観/抵抗値)を評価した。評価用試料をマジックレジン(高耐熱特殊ガラスエポキシ材)に貼りつけ、200℃~360℃に加熱したリフロー装置 UNI-5016(ANTOM社製)に0.3M/minの速度で3回通した(半田リフロー)。半田リフロー後の評価用試料の接続抵抗値を半田リフロー前と同様に測定した。結果を+から+++またはNGで半田リフロー耐性(抵抗値)を段階付けた。
+++:接続抵抗値が100mΩ/□未満
++:接続抵抗値が100mΩ/□以上300mΩ/□未満
+:接続抵抗値が300mΩ/□以上1000mΩ/□未満
NG:接続抵抗値が1000mΩ/□以上
【0077】
次に、半田リフロー後の評価用試料を、各フレキシブルプリント基板の開口部の中心を通るように金属カッターを用いて接合剤付SUS板ごとそれぞれ切断した。切断面をサンドペーパー(FUJI STAR 耐水研磨紙 粒度400)を使用して1次研磨し、イオンミリング法(LEOL クロスセクションポリッシャーIB-09010CP)にて加速電圧5.0KV 8時間の条件で2次研磨し、断面観察用のサンプルを得た。露出した断面を20~1000倍の拡大鏡を用いて観察し、各層間に発砲による空域が発生していないか確認し、+またはNGで半田リフロー耐性(外観)を段階付けた。
+:発泡なし
NG:発泡あり
【0078】
上記の二項目の半田リフロー耐性の結果から、次の指標のとおりに半田リフロー耐性を評価した。
◎:接続抵抗値が+++で、外観が+である。(極めて良好である)
○:接続抵抗値が++で、外観が+である。(良好である)
△:接続抵抗値が+で、外観が+である。(実用可能である)
×:接続抵抗値および外観の少なくとも一方がNGである。(実用不可能である)
【0079】
[再利用性]
再利用性は、金属板に積層した接合剤の糊残り面積によって評価した。
各実施例および比較例にて作製した金属板用接合剤を用い、これを幅25mm、長さ150mmの大きさに切断し、その接合剤が露出した面が幅25mm、長さ200mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記金属板用接合剤を上記SUS板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm2、0.5m/minの条件下で、上記金属板用接合剤と上記SUS板とをロールラミネートした後、上記接合剤から剥離性フィルムを剥がし、接合剤付SUS板を得た。
次いで、露出した接合剤をクロスカットガイドを用いて面積が均等の100区画に分割し、接合剤を覆うように粘着テープ(ニチバン社製「CT1835」)を、粘着テープの端部を残して貼り合せ、粘着テープの端部から300mm/min.の速度で剥離を行い、金属板に残った区画(糊残り区画)数を測定し、以下の基準によって評価を行った。
◎:糊残り区画数が0~5個。(極めて良好である)
○:糊残り区画数が6~10個。(良好である)
△:糊残り区画数が11~25個。(実用可能である)
×:糊残り区画数が26個以上。(実用不可能である)
【0080】
[接着力]
各実施例および比較例にて作製した金属板用接合剤を用い、これを幅25mm、長さ100mmの大きさに切断し、その接合剤が露出した面が幅30mm、長さ150mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記金属板用接合剤を上記SUS板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm2、0.5m/minの条件下で、上記金属板用接合剤と上記SUS板とをロールラミネートした後、上記接合剤から剥離性フィルムを剥がし、接合剤付SUS板を得た。
【0081】
次に、接合剤付SUS板の接合剤が露出した面に、
(1)幅30mm、長さ200mmにカットしたCCL(銅張積層板、片面銅箔、もう一方はポリイミド基材)S’PERFLEX S524-38E21(住友金属鉱産株式会社製)のポリイミド基材面
(2)幅30mm、長さ200mmにカットした無電解金メッキシート(太洋工業株式会社製)の金メッキ面
を各々貼りあわせ、上記と同様の条件でロールラミネートした。次いで、これらを170℃、2MPa、3分の条件下でそれぞれ熱圧着した後、これを電気オーブンを用いて160℃、60分間加熱することで評価用試料を得た。
なお、SUS板は、長さ方向中心部に貼り付け基板及びメッキシートの長さ方向両端部から25mmにはSUS板が配置されていない。
【0082】
上記で得られた2種の評価用試料をそれぞれ引張試験機(小型卓上試験機 EZ-TEST、島津製作所製)を用い、SUS板が張り付けられていない部分を引張試験器に取り付け、引っ張り速度50mm/minの条件下で、180°ピール剥離試験における評価用試料のSUS面または無電解金メッキ面に対する接合剤の接着強度を測定し+から+++またはNGで結果を段階付けた。
・対SUS面(ポリイミド基材を用いた評価用試料を用いた)
+++:接着強度が10N/cm以上
++:接着強度が7N/cm以上10N/cm未満
+:接着強度が3N/cm以上7N/cm未満
NG:接着強度が3N/cm未満
・対無電解金メッキ面
+++:接着強度が6N/cm以上
++:接着強度が3N/cm以上6N/cm未満
+:接着強度が1N/cm以上3N/cm未満
NG:接着強度が1N/cm未満
【0083】
さらにそれぞれの結果を指標として、下記評価基準に従い接着力を評価した。
◎:対SUS面、対無電解金メッキ面共に接着力強度+++(非常に優れている)
〇:対SUS面、対無電解金メッキ面の接着力強度のどちらか一方が+++且つもう一方が++、もしくは両方が++(優れている)
△:対SUS面、対無電解金メッキ面の接着力強度のどちらかが+でNGがない(実用可能である)
×:対SUS面、対無電解金メッキ面のどちらかまたは両方の接着力強度がNG(実用不可能である)
【0084】
【0085】