(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133339
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】蒸気発生装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/53 20200101AFI20220906BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20220906BHJP
A24F 40/42 20200101ALI20220906BHJP
A24F 40/10 20200101ALI20220906BHJP
【FI】
A24F40/53
A24F40/46
A24F40/42
A24F40/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103253
(22)【出願日】2022-06-28
(62)【分割の表示】P 2020139103の分割
【原出願日】2014-07-30
(31)【優先権主張番号】13108916.9
(32)【優先日】2013-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
(71)【出願人】
【識別番号】516124616
【氏名又は名称】アルトリア クライアント サービシーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ロイ イング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】香り付き煙発生器の過熱を防止する蒸気発生装置を提供する。
【解決手段】本発明の蒸気発生装置400は、液体を貯蔵する液体リザーバ436と、前記液体リザーバ内に配置され、蒸気を発生させる為に液体を加熱するように構成された第1ヒータ450と、前記液体リザーバ内に配置され、蒸気を発生させる為に液体を加熱するように構成された第2ヒータ456と、前記第1及び第2ヒータ間の電気抵抗に基づいて前記液体リザーバ内の液体の減少量を検出するように構成された電子コントローラとを備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵するように構成された液体リザーバ(436)と、
前記液体リザーバ内に配置され、蒸気を発生させる為に液体を加熱するように構成された第1ヒータ(450)と、
前記液体リザーバ内に配置され、蒸気を発生させる為に液体を加熱するように構成された第2ヒータ(456)と、
前記第1及び第2ヒータ間の電気抵抗に基づいて前記液体リザーバ内の液体の減少量を検出するように構成された電子コントローラ(14,15,17)とを備えていることを特徴とする蒸気発生装置(400)。
【請求項2】
前記第1ヒータは電熱コイルを有し、
前記第2ヒータは導線を有していることを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記電子コントローラは、第1端子(T3,T4)を介して前記導線の端部に連結され、
前記電子コントローラは、第2端子(T1,T2)を介して前記電熱コイルの端部に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体の減少量に基づいて、蒸気を発生させる為の前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータへの電気出力を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
前記電子コントローラは、
前記第1ヒータ及び前記第2ヒータ間の電気抵抗に基づいて前記液体リザーバ内の液体量が動作しきい値か否か又は動作しきい値を越えているか否かを判断し、
前記液体リザーバ内の液体量が動作しきい値か否か又は動作しきい値を越えているか否かに基づいて前記液体リザーバ内の液体の減少量を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体量が動作しきい値か否か又は動作しきい値を越えているか否かに基づいて、蒸気を発生する為の前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータへの電気出力を制御するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の蒸気発生装置。
【請求項7】
前記液体は、プロピレングリコール(PG)、ベジタブルグリセリン(VG)、及び/若しくは、ポリエチレングリコール400(PEG400)、又は、グリコール若しくはグリセリンがベースの溶剤を含む他の有機ベース溶剤を含むことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の蒸気発生装置。
【請求項8】
前記液体リザーバ、前記第1ヒータ及び前記第2ヒータは、前記蒸気発生装置におけるカートマイザ(100)の一部を形成し、
前記電子コントローラは、前記蒸気発生装置における本体(12)の一部を形成し、
前記カートマイザは、前記本体に着脱可能に連結されるように構成されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の蒸気発生装置。
【請求項9】
前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体減少量に基づいて、定格出力又は標準動作速度で蒸気を発生する為の前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータを制御することを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の蒸気発生装置。
【請求項10】
前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体量の減少検出に応じて、前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータへの電気出力を低減させ、若しくは、警告信号を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の蒸気発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香り付き蒸気発生装置および電子喫煙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子タバコ等の電子喫煙装置は、徐々に人気を得ていて、従来の紙巻きタバコに代わるものとして受け入れられてきている。
【0003】
電子タバコは、典型的には、香り付き煙発生器と、細長い(又は長尺な)ハウジング内に収容される電子回路とを含む。細長いハウジングは、指で保持するように適合化されていて、香り付き煙発生器とユーザとを繋ぐ通気道を画定するマウスピースを備え、よって、ユーザによる吸引行動に応えて発生される煙の香り付き蒸気は、このマウスピースを介してユーザへと送出される。
【0004】
電子回路は、典型的には、香り付けされた液体で湿らされた媒体を加熱するように作動する電気ヒータを備える。この媒体は、通常、コットンまたはガラス繊維等の液体親和性媒体または液体保持媒体である。e-ジュースまたはe-リキッドとしても知られる香り付けされた液体は、通常、プロピレングリコール(PG)、ベジタブルグリセリン(VG)、濃縮フレーバと混合されたポリエチレングリコール400(PEG400)、ニコチン濃縮液またはこれらの混合物等の有機物質を含む溶液である。
【0005】
香り付き煙発生器は、典型的には、カートリッジと、噴霧機とを備える。カートリッジは、通常、香り付けされた液体を保持する液体リザーバおよびマウスピースの双方として機能するように適合化された、両端に開口を有するプラスチック製、ガラス製または金属製の小型容器である。噴霧機は、香り付けされた液体を気化させるために設けられ、よって、典型的には、小さいヒータフィラメントと、香り付けされた液体をカートリッジのリザーバから引き出してヒータフィラメントに接触させる、または近接させるウィッキング材とを含む。電子タバコが作動すると、ヒータフィラメントは、液体で湿らされたウィッキング材を加熱し、香り付きの煙が発生されてユーザへ運ばれる。
【0006】
カートリッジと噴霧機(アトマイザ)とが一体化される場合、結果的に生じるデバイスは、カートマイザ(cartomizer、「カトマイザ」ともいう)として知られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子タバコが作動する間、紙またはタバコが実際に燃えることはないが、香り付けされた液体が存在しない、または不十分である場合には、香り付き煙発生器の過熱が生じることがある。このような過熱は、有害であり、かついまだ解明されていない、またははっきりしていない健康への影響または合併症を引き起こす場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を貯蔵するように構成された液体リザーバと、前記液体リザーバ内に配置され、蒸気を発生させる為に液体を加熱するように構成された第1ヒータと、前記液体リザーバ内に配置され、蒸気を発生させる為に液体を加熱するように構成された第2ヒータと、前記第1及び第2ヒータ間の電気抵抗に基づいて前記液体リザーバ内の液体の減少量を検出するように構成された電子コントローラとを備えた蒸気発生装置を提供する。
【0009】
例えば、前記第1ヒータは電熱コイルを有し、前記第2ヒータは導線を有するものとされる。
【0010】
好ましくは、前記電子コントローラは、第1端子を介して前記導線の端部に連結され、前記電子コントローラは、第2端子を介して前記電熱コイルの端部に連結される。
【0011】
種々の構成において、前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体の減少量に基づいて、蒸気を発生させる為の前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータへの電気出力を制御するように構成される。
【0012】
種々の構成において、前記電子コントローラは、前記第1ヒータ及び前記第2ヒータ間の電気抵抗に基づいて前記液体リザーバ内の液体量が動作しきい値か否か又は動作しきい値を越えているか否かを判断し、前記液体リザーバ内の液体量が動作しきい値か否か又は動作しきい値を越えているか否かに基づいて前記液体リザーバ内の液体の減少量を検出するように構成される。
【0013】
好ましくは、前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体量が動作しきい値か否か又は動作しきい値を越えているか否かに基づいて、蒸気を発生する為の前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータへの電気出力を制御するように構成される。
【0014】
前記液体は、プロピレングリコール(PG)、ベジタブルグリセリン(VG)、及び/若しくは、ポリエチレングリコール400(PEG400)、又は、グリコール若しくはグリセリンがベースの溶剤を含む他の有機ベース溶剤を含むものとされる。
【0015】
一形態においては、前記液体リザーバ、前記第1ヒータ及び前記第2ヒータは、前記蒸気発生装置におけるカートマイザ(100)の一部を形成し、前記電子コントローラは、前記蒸気発生装置における本体(12)の一部を形成し、前記カートマイザは、前記本体に着脱可能に連結されるように構成される。
【0016】
種々の構成において、前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体減少量に基づいて、定格出力又は標準動作速度で蒸気を発生する為の前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータを制御するものとされ得る。
【0017】
種々の構成において、前記電子コントローラは、前記液体リザーバ内の液体量の減少検出に応じて、前記第1ヒータ及び/又は前記第2ヒータへの電気出力を低減させ、若しくは、警告信号を発生するように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示に従う香り付き蒸気発生器の一例を示す略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す香り付き蒸気発生器の液体保持媒体と電気ヒータとのアッセンブリを描いた略図である。
【
図3】
図3は、
図1の香り付き蒸気発生器を組み込んだ電子タバコの略図である。
【
図5】
図5は、香り付き蒸気発生器の一例の特徴を描いた略図である。
【
図6】
図6は、香り付き蒸気発生器の一例の特徴を描いた略図である。
【
図7】
図7は、香り付き蒸気発生器の一例の特徴を描いた略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の開示内容を添付の図面を参照し、非限定的な例によって説明する。
【0020】
図1に描かれている香り付き蒸気発生器100は、空気入口端110における空気入口と、香り付き蒸気出口端120における香り付き蒸気出口と、空気入口端110と香り付き蒸気出口端120とを相互接続する本体130と、を備える。本体130は、略円筒形であって、空気入口端110と香り付き蒸気出口端120との間を軸方向へ延びる剛性のハウジングを含む。本体上には、電線152を含む電気ヒータと、複数の液体保持ウィック155を備える露出した、または剥き出しの液体保持デバイス154と、濡れセンサ156とが支持される。本体は、空気入口端を画定するベース140へ付着される。本体の剛性ハウジングは、外周壁132と、外周壁132に包囲される内周壁134とを含む。外周壁と内周壁との間の空間は、香り付けされた液体の供給を保持するように適合化される第1の中空区画136を一括して画定する。この中空区画136は、露出した、または剥き出しの液体保持デバイスへ分配する一定量の香り付けされた液体を貯蔵するためのリザーバを画定する。
【0021】
内周壁134によって包囲される内部空間は、本体130内部に第2の中空区画138を画定する。この中空区画138は、ヒータの作動によって発生される香り付き蒸気が通って蒸気発生器100から出る中空の通過チャネルを画定する。内周壁および外周壁は、略円筒形であり、かつ、第1の中空区画が第2の中空区画を包囲する略円形のチャンバを形成するように同軸または同心である。
【0022】
露出される液体保持デバイス154は、リザーバ136の第1の側壁上の第1の液体出口と、第1の液体出口と対向する、リザーバ136の第2の側壁上の第2の液体出口との間を延びる。液体保持デバイス154は、第2の中空区画138に渡って突き出す複数のウィックを備える。ウィック(芯材)は、ガラス繊維糸等の繊維質液体保持材155の束から形成され、リザーバ内に貯蔵される香り付けされた液体は、第1および/または第2の液体出口からウィックに沿って移動し、第2の中空区画138内に露出されるように案内される。
【0023】
香り付き蒸気発生器の例100は、使い捨てカートリッジの形式でパッケージングされたカートマイザである。このカートリッジは、喫煙動作のシミュレーションを促進するために電子タバコの本体へ取り付けるように適合化されている。空気入口端は、電子タバコの本体へ連結するためのものであり、かつベース部分は、電子タバコの本体へ固定するための「スナップ式」端部またはねじ付き端部を含む。カートリッジの、香り付き蒸気出口端120に近い部分は、ユーザによる口唇接触用に適合化されたマウスピースに適合化されている。
【0024】
電気ヒータは、ウィックの、第2の中空区画138内で同区画全体に渡って露出される(ウィックの)部分へ連結される。
図2に描かれているように、電気ヒータは、複数の巻線に巻き上げられる電熱線152を含む。電熱線により形成される複数の巻線は、例示的な剥き出しの液体保持デバイス154を一括して画定するガラス繊維155の束へ付着される。この例示的な液体保持ウィックは、ガラス繊維の撚線(又は房)に捻り上げられる複数のガラス繊維を含む。ガラス繊維は、リザーバ136からの香り付けされた液体のウィッキングによって、香り付けされた液体で満たされる。巻かれた加熱用フィラメントおよびガラス繊維の撚線を含むアッセンブリは、本体上に支持され、かつ第2の中空区画を横断してブリッジ式に延びる。ガラス繊維の束および巻かれた加熱用フィラメントを含むアッセンブリは細長く(長尺で)、軸方向へ延びる。アッセンブリの軸方向の端は、第2の中空区画内へ貫入または突き出し、第2の中空区画内に形成される香り付けされた液体のリザーバ内で、反復動作のための香り付けされた液体の連続供給を保証するためのタブとなる。
【0025】
巻かれた加熱用フィラメントおよびガラス繊維の撚線を含むアッセンブリは、ベース140から突き出す剛性のワイヤフレームによって本体上に支持される。剛性のワイヤフレーム158は、銅メッキまたはニッケルメッキの鉄線等の剛性導線で作られる。この線は、ベースから突き出して第1の中空区画136内部を上へ延び、ベースより上の高度で直角に曲がり、内周壁を通過して第2の中空区画138に入り、第2の中空区画を略同一高度で横断して延び、再び内周壁を通過して、第1の中空区画を最初に出た位置とは直径方向に略正反対の位置で再び第1の中空区画136に入り、下へと直角に曲がってベースに至る。抵抗線の両端部分は、ベース140部分から突き出て、第2の中空区画から遠位であるベース140の側面からアクセス可能な接点端子T3、T4を画定する。短絡を回避し、かつ外的な端子接続を容易にするために、ベースは絶縁物質で製造されてもよく、または、抵抗線の両端部分が絶縁されてもよい。
【0026】
巻かれた加熱用フィラメントおよびガラス繊維の撚線を含むアッセンブリは、抵抗線の露出部分が繊維の撚線内部に埋め込まれ、よって、抵抗線の露出部分がヒータフィラメントから分離されるように配置される。ある例において、フィラメントは、ガラス繊維の撚線を中心にして複数の巻線に巻き上げられ、かつ抵抗線は、フィラメントの巻線により形成されるコイルの軸に位置決めされる。コイル内部における抵抗線の略中心への配置は、液体保持材内部のより一様な抵抗測定を促進して局所的なバラつきを低減する。ヒータフィラメントのこの部分は、ガラス繊維の撚線の周りに巻かれ、かつガラス繊維の撚線は、剛性ワイヤの第2の中空区画を横断して延びる部分上に保持されることから、剛性抵抗線の剛性フレームは、加熱用フィラメントの強度および信頼性を強化するためのサポートを提供する。また、電気ヒータの接点端子T1、T2も、ベース140の、接点端子T3、T4が存在する側と同じ側面からアクセス可能である。
【0027】
プロピレングリコール(PG)、ベジタブルグリセリン(VG)、濃縮フレーバと混合されたポリエチレングリコール400(PEG400)、ニコチン濃縮液またはこれらの混合物等の有機物質を含む溶液等の香り付けされた液体は、第1の中空区画の内部に貯蔵される。第1の中空区画の内部における香り付けされた液体の貯蔵は、第1の中空区画を、香り付けされた液体で湿らされたコットンまたは他の織物材等の液体吸収材で満たすことによって行われる。このような配置は、香り付けされた液体を連続的に供給する一方で、シーリング要件を緩和する。例えば、このような配置は、加熱用フィラメントおよびガラス繊維の撚線を含むアッセンブリが第1の中空区画に出入りする接合部における、香り付けされた液体の過剰な漏れを減らす。
【0028】
正常使用(通常の使用)の間、電気ヒータが作動して熱が発生すると、アッセンブリ内部に貯蔵される香り付けされた液体が気化される。気化の発生後、毛管効果または類似効果によってガラス繊維の撚線は香り付けされた液体を運び出し、かつ香り付けされた液体のリザーバから香り付けされた液体を補充する。このプロセスは、リザーバ内部の香り付けされた液体が枯渇するまで反復する。リザーバが枯渇したような状況においてアッセンブリがさらに加熱されると、アッセンブリは、かなりの高温まで加熱または過熱する場合がある。このような過熱は、有害であって、いまだ知られていない望ましくない副次的影響または厄介な問題を引き起こす場合がある。
【0029】
このような有害状況を減らすために、ガラス繊維の撚線の濡れ状態または湿り状態が監視される。リザーバまたは撚線が枯渇しているかどうかを判断するための情報を利用するために、ガラス繊維の撚線の濡れ状態または湿り状態を決定するスキームを考案するに当たっては、電気加熱によって喫煙をシミュレートするために一般的に使用される香り付けされた液体のタイプが油性またはオイルベースであるものの、ある程度の導電性が検出され得ることに留意する。本例において、濡れまたは湿り状態の監視は、巻かれたヒータフィラメントとガラス繊維の撚線内部に埋め込まれる剛性抵抗線の部分との間の抵抗を測定することによって行われる。
【0030】
Fluke(商標)189メータを用いて、ヒータ上の接点端子(T1およびT2の一方)と、センサ上の接点端子(T3およびT4の一方)との間の様々な端子の組合せに対して実行した抵抗測定の例を以下の表1に示す。
【0031】
【0032】
上掲の表1において、「OL」という記号は、限度超え(over limit)を意味し、指定された限度は、40MΩとされた。濡れ状態は、ガラス繊維の撚線がe-ジュースまたはe-リキッド等の香り付けされた液体で完全に湿らされていることを意味する。
【0033】
上記の観点で、センサ端子とヒータ端子との間の抵抗が、ガラス繊維の撚線が湿っているか乾燥しているかの示度(尺度)として使用され得ることに留意する。本文脈における「湿っている」または「乾燥している」という言い回しは、香り付けされた液体に関するもの、特に電気加熱によってシミュレートされた発煙効果を発生させるための香り付けされた液体に関するものであって、水による濡れとは無関係であることが認識されるであろう。
【0034】
この現象を利用するために、センサ端子とヒータ端子との間の抵抗のしきい値が、液体保持材の湿りまたは乾燥を示すものとして選択されてもよい。例えば、センサ端子とヒータ端子との間で測定される3MΩより上の抵抗値が、それを下回ればガラス繊維の撚線が動作可能であるに足る湿り具合であり、かつそれを超えればガラス繊維の撚線が乾燥して動作に適さないしきい値動作抵抗として選択されてもよい。
【0035】
より高い測定マージンが許容されるべきである場合、動作不能な乾燥を示すしきい値非動作抵抗は、ガラス繊維の撚線がe-ジュースの乾燥状態になると抵抗が急速に増大することに起因して、4MΩ、5MΩ、10MΩ、20MΩ、30MΩに、またはさらに高い値にまで設定されてもよい。
【0036】
一方で、動作に適する濡れレベルを示すしきい値動作抵抗は、一般性を失うことなく、6MΩ、5MΩ、4MΩ、3MΩまたは2.5MΩより低い値に設定されてもよい。
【0037】
図3に描かれている電子タバコの一例10は、第1の細長い(又は長尺な)本体12と、第1の細長い本体の一方の軸方向端へ付着された本開示のカートマイザカートリッジ100とを備える。第1の細長い本体および剛性ハウジングは、電子タバコが一体として見えるように、同じ外形および横寸法を有する。第1の細長い本体は、空気入口と、空気出口と、空気入口と空気出口とを相互接続する孔と、を画定する。第1の細長い本体の空気出口端は、カートマイザの空気入口端と機械的に連結するためのものであって、カートマイザの空気入口端上の手段と相補的な機械的カップリング手段を備える。細長い本体の内部には、制御回路14、バッテリ16、およびLEDインジケータ等の視覚的インジケータ18が設置される。第1の細長い本体の空気出口端上には、ヒータ端子T1、T2およびセンサ端子T3、T4と制御回路内部におけるこれらの相手方端子との接触を容易にするために、接点端子が配置される。制御回路は、電気ヒータを起動するための動作回路と、ガラス繊維の撚線における濡れまたは湿り状態が加熱動作に適さないことを検出した時点で電気ヒータへの電力供給を停止または制限するように配置される決定回路と、を含む。制御回路は、先に示したように、かつ一般性を失うことなく、この濡れまたは湿り状態が、センサ端子とヒータ端子との間で測定される抵抗に関連して動作に適するかどうかを決定してもよい。
【0038】
図5は、本開示による香り付き蒸気発生器の別の例200を示す。この香り付き蒸気発生器の例は、香り付き蒸気発生器の例100の修正版であって、非導電性または絶縁性のウィックが直に感知デバイスとして使用される。本例において、センサ254の出力端子は、ウィック255の長さ方向の端へ接続される。ウィックの抵抗性は、ウィックが香り付けされた液体で満たされているか否か、およびウィックが香り付けされた液体で完全に満たされているか、部分的に満たされているかに略依存して変わることから、このような抵抗特性に関する情報は、電子タバコの動作を決定するために使用されることが可能である。本例において、他の特徴は、香り付き蒸気発生器100の他の特徴と同じであり、よって、これらの他の特徴に関する記述は、100を加算された数字の参照によって開示に含まれる。
【0039】
図6は、本開示による香り付き蒸気発生器の別の例300を示す。この香り付き蒸気発生器の例は、香り付き蒸気発生器の例100の修正版であって、センサの感知デバイスを形成する導体が、香り付けされた液体を香り付き蒸気に変換するための第2の変換器として動作する。本例において、センサの感知デバイスを形成する導体356は、ウィックの周りに巻かれ、かつ並列変換器として動作することができる。本例において、他の特徴は、香り付き蒸気発生器100の他の特徴と同じであり、よって、これらの他の特徴に関する記述は、200を加算された数字の参照によって開示に含まれる。
【0040】
図7に描かれている香り付き蒸気発生器の別の例400は、香り付き蒸気発生器の別の例300の修正版である。本例では、ヒータ450およびセンサ456の双方がリザーバ436の内部に浸漬されている。ヒータ450およびセンサ456の双方がリザーバ436の内部に浸漬されることから、香り付けされた液体をリザーバから引き出すためのウィックは不要である。動作の間、リザーバ内部に貯蔵される香り付けされた液体は、加熱されて香り付き蒸気を発生し、中空の通過チャネルを通って香り付き蒸気出口へと至る。他の特徴は、香り付き蒸気発生器300の他の特徴と同じであり、よって、これらの他の特徴に関する記述は、100を加算された数字の参照によって開示に含まれる。センサヒータは、必要であれば変換器の動作電力を増大するように選択的に起動されてもよい。
【0041】
本明細書に開示する香り付き蒸気発生装置は、香り付けされた液体を保持するための繊維質液体保持材を備える液体保持デバイスと、香り付けされた液体を液体保持デバイスの繊維質液体保持材へ供給するための液体リザーバと、繊維質液体保持材上の香り付けされた液体を香り付き蒸気に変換するように電力により動作可能な変換器と、センサと、を備える。センサは、繊維質液体保持材上に保持されている香り付けされた液体の量または密度(もしくは濃度)に関する情報を提供するように配置される。
【0042】
実施形態によっては、液体保持デバイスおよび液体リザーバが合体または組み合わされて、繊維質液体保持材は不要にされ、かつ変換器およびセンサの双方が、香り付けされた液体の液槽内に浸漬される。このような実施形態において、香り付き蒸気発生装置は、香り付けされた液体を貯蔵するための液体リザーバでもある液体保持デバイスと、貯蔵される香り付けされた液体を香り付き蒸気に変換するように電力により動作可能な変換器と、センサと、を備え、センサおよび変換器は、貯蔵される香り付けされた液体の液槽内に浸漬される。このような実施形態において、センサおよび変換器は、液槽を介して電気接続される。変換器とセンサとの間の抵抗およびキャパシタンス等の電気的性質は、液槽のレベルまたは変換器およびセンサの相対的な浸漬の度合いに従って変化または変動する。香り付けされた液体を接続媒体とする変換器とセンサとの分離に起因する電気的性質を検出することにより、濡れ、または香り付けされた液体の残余レベルが最低しきい値まで降下しているかどうかに関する情報を入手し且つ利用することができる。抵抗の測定と組み合わせて、キャパシタンスが測定されるべきである場合、
図4の回路部17は、各々抵抗およびキャパシタンスを測定するための回路として、または一般性を失うことなく、キャパシタンスを測定するための回路として修正される。さらに、
図4の回路部15は、ヒータドライバと記述されているが、本回路は、適切な場合には、「変換器ドライバ」と称されてもよい。
【0043】
本明細書には、香り付き蒸気発生装置を備える電子喫煙装置が開示されていて、電子コントローラは、センサ出力を参照して煙の香り付き蒸気を発生すべく変換器の動作を制御する。
【0044】
また、電子喫煙装置に用いるための香り付き蒸気発生器も開示されている。香り付き蒸気発生器は、ハウジングと、香り付けされた液体で満たされ、湿らされ、または浸漬されかつ前記ハウジングの内部に受け入れられる液体保持材と、香り付き蒸気を発生させるために液体保持材を加熱するための電気ヒータと、液体保持材の湿りまたは濡れ状態を監視するためと、液体保持材の湿りまたは濡れ状態が前記液体保持材における前記香り付けされた液体の枯渇状態または枯渇に近い状態に相当するかどうかの判断を容易にすべく信号を提供するためのセンサと、を備える。
【0045】
さらに開示されている香り付き蒸気発生器において、前記ハウジングは、内部に前記香り付けされた液体が貯蔵される第1の中空区画と、空気入口、香り付き空気出口および空気入口と空気出口とを相互接続する空気通路を画定する第2の区画と、を画定し、前記液体保持材および前記電気ヒータを備えるアッセンブリは、前記空気出口における吸引に起因して前記空気入口から到来する空気が、前記香り付き空気出口に到達する前に前記アッセンブリに遭遇するように、前記第1の中空区画から前記空気通路内へ延びている。
【0046】
実施形態によっては、本装置は、電子喫煙装置の本体へ着脱式に取り付け可能なカートマイザであり、かつ、液体リザーバ内部に含まれる液体は、香り付き蒸気発生装置が電子喫煙装置の煙の香り付きソースとして動作することを容易にする。
【0047】
センサは、液体保持材の湿りまたは濡れ状態を監視するように、かつ液体保持材の湿りまたは濡れ状態が前記液体保持材における前記香り付けされた液体の枯渇状態または枯渇に近い状態に相当するかどうかの判断を容易にするための信号を提供するように適合化されてもよい。
【0048】
電子喫煙装置に用いるための濡れセンサを香り付き蒸気発生器内に包含することは、液体保持材における濡れまたは乾燥に関する情報を利用して電子タバコの動作制御を容易にすることができるという理由で効果的である。
【0049】
繊維質液体保持材は、ニコチン含有か否かに関わらずe-ジュースまたはe-リキッドとして知られる液体等の香り付けされた液体を運んで保持することができるコットン、ガラス繊維または他の織物材で製造されてもよい。
【0050】
繊維質液体保持材は、捻れの有無に関わらず、糸、編み糸または紐として形成されてもよい。
【0051】
香り付けされた液体は、油性物質であってもよく、かつセンサは、前記液体保持材の内部における電気抵抗状態を検出するためのプローブ(探針)を備える。香り付けされた液体は、主として、グリコールまたはグリセリンベース等の有機ベースであってもよく、かつ前記センサは、前記液体保持材の濡れまたは乾燥の決定を容易にするために、動作中の前記液体保持材の内部における、または前記液体保持材に渡る導電性または抵抗性等の電気的性質を監視する。
【0052】
オイルベースの香り付けされた液体は、概して非導電性であることが知られているが、それにも関わらず、その僅かな導電性は、電子喫煙の動作制御を容易にすべく単純で迅速かつ有益な濡れ測定の提供に有効である。
【0053】
電気ヒータは、前記液体保持材へ付着される、かつ前記香り付き蒸気を発生させるための接触加熱を容易にすべく前記液体保持材に接触して保持される加熱エレメントを備えてもよく、かつ前記センサは、前記液体保持材内部に埋め込まれるプローブワイヤ部分を備える。
【0054】
加熱エレメントは、前記液体保持材上に巻かれて複数の巻線を形成する加熱用フィラメントを備えてもよく、かつ前記プローブワイヤ部分は、前記巻線によって包囲されて前記巻線から離隔される。
【0055】
液体保持材は、ウィッキング方向を画定すべく第1の方向に一括して延びる吸液性の繊維または繊維撚線の束を備えてもよく、かつ前記加熱エレメントは、前記液体保持材を含む巻き芯を画定すべく前記第1の方向を中心として巻き付けられる。
【0056】
前記ハウジングは、金属製であってもよく、かつ内部に前記香り付けされた液体が貯蔵される第1の中空区画と、空気入口、香り付き空気出口および空気入口と空気出口とを相互接続する空気通路を画定する第2の区画と、を画定し、前記液体保持材および前記電気ヒータを備えるアッセンブリは、前記空気出口における吸引に起因して前記空気入口から到来する空気が、前記香り付き空気出口に到達する前に前記アッセンブリに遭遇するように、前記第1の中空区画から前記空気通路内へ延びる。
【0057】
実施形態によっては、第2の中空区画は、前記第1の中空区画に包囲され、かつ前記アッセンブリの両端は、前記第1の中空区画内に突き出して前記香り付けされた液体を前記液体保持材内へ運ぶ。
【0058】
アッセンブリは、第1の中空区画の反対の両側(相対向する両サイド)に吊り下げられて前記第2の中空区画を横切って延びるブリッジを形成してもよい。
【0059】
香り付けされた液体は、前記第2の中空区画内に貯蔵されてもよく、前記第2の中空区画内部の前記液体保持材へのウィッキング搬送(毛管搬送)のためにコットン等の吸液物質上に定在している。
【0060】
前記液体保持材と前記ヒータとのアッセンブリは、正常動作(又は通常動作)時の前記空気入口から前記香り付き蒸気出口への空気流方向を略横断する方向へ延びてもよい。
【0061】
発生器は、前記センサと前記電気ヒータとの間の、しきい値動作抵抗を下回る電気抵抗が、液体保持材の湿りまたは濡れ状態が動作に適するという状態を示すように配置されてもよい。
【0062】
しきい値動作抵抗は、5MΩ、4MΩ、3MΩ、2MΩまたはこれより低い値に設定されてもよい。
【0063】
発生器は、前記センサと前記電気ヒータとの間の、しきい値非動作抵抗を上回る電気抵抗が、液体保持材の湿りまたは濡れ状態が動作に適していないという状態を示すように配置されてもよい。
【0064】
しきい値非動作抵抗は、10MΩ、20MΩ、30MΩまたはこれより高い値に設定されてもよい。
【0065】
香り付き蒸気発生器は、カートリッジの形式であってもよく、電気ヒータへ給電するための電源端子および湿り状態情報を入手するためのセンサ端子は、ハウジングの外側からアクセス可能である。
【0066】
香り付き蒸気発生器は、カートマイザであってもよい。
【0067】
制御デバイスと香り付き蒸気発生器とを備える電子タバコを開示する。制御デバイスは、前記香り付き蒸気発生器が正常動作に適する濡れ状態または湿り状態にあるかどうかを決定した時点で、電気ヒータを作動させる。
【0068】
制御デバイスは、前記香り付き蒸気発生器の湿りまたは濡れ状態が、前記液体保持材における前記香り付けされた液体の枯渇状態または枯渇に近い状態に相当することを判断した時点で、前記電気ヒータを、香り付き蒸気発生器を加熱して香り付きの煙を発生すべく作動させないように配置されてもよい。
【0069】
制御デバイスは、前記センサと前記電気ヒータとの間の抵抗がしきい値非動作抵抗より高いことを決定した時点で、前記電気ヒータを、香り付き蒸気発生器を加熱して香り付きの煙を発生すべく作動させないように配置されてもよい。
【0070】
電子喫煙装置は、本発明に従った香り付き蒸気発生装置と、電子コントローラとを備え、電子コントローラは、センサ出力を参照して煙の香り付き蒸気を発生すべく変換器の動作を制御する。
【0071】
電気ヒータは、香り付けされた液体を香り付き蒸気に変換するための変換器の一例として提供されているが、変換器は、ヒータに限定されなくてもよく、一般性を失うことなく、超音波噴霧機等の他の噴霧デバイスであることが可能である。
【0072】
本明細書では、開示の原理および実施形態を例示するために例を提供しているが、例は、単に参照用であって、開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではないことは認識されるべきである。例えば、本明細書に開示しているカートマイザは、使い捨てカートリッジの形式であるが、カートマイザは、一般性を失うことなく、電子タバコと一体式に形成され得ることは認識されるべきである。例えば、本開示は、通常はプロピレングリコール(PG)、ベジタブルグリセリン(VG)、濃縮フレーバと混合されたポリエチレングリコール400(PEG400)、ニコチン濃縮液またはこれらの混合物等の有機物質を含む溶液であるe-ジュースまたはe-リキッドとして知られる例示的な香り付けされた液体を参照して説明されているが、使用されている例は、単なる例であって、電子タバコの動作に適するその時々に知られる他のタイプの液体が使用されてもよいことは認識されるべきである。
【符号の説明】
【0073】
12: 本体
14: 制御回路(電子コントローラ)
15: ヒータドライバ(電子コントローラ)
17: 回路(電子コントローラ)
100:カートマイザカートリッジ
400:蒸気発生器
450:ヒータ
456:センサヒータ