(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133361
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】仮ボンディングされた基板スタックを分離させるための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220906BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220906BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20220906BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/78 B
B23K26/57
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022105580
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2020512805の分割
【原出願日】2017-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリーザベト ブランドル
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ポヴァザイ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウーアマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板スタックができるだけ非破壊で、それでもなお効果的に分離されることを保証する方法及び装置を提供する。
【解決手段】装置(1)において、レーザ(5)から出力されるレーザビーム(16,16’)を基板スタック(23)の接続層(25)に印加することにより、仮ボンディングされた基板スタック(23)を分離させるための方法であって、レーザビーム(16,16’)を接続層(25)に印加している間に、仮ボンディングされた基板スタック(23)において反射及び/又は透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ(5)から出力されるレーザビーム(16,16’)を基板スタック(23)の接続層(25)に印加することにより、仮ボンディングされた基板スタック(23)を分離させるための方法であって、
前記レーザビーム(16,16’)を前記接続層(25)に印加している間に、前記仮ボンディングされた基板スタック(23)において反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記レーザビーム(16,16’)を前記接続層(25)に印加する前に、前記仮ボンディングされた基板スタック(23)または参照用基板スタックにおいて反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出する
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビーム(16,16’)のビーム形状および/または強度プロファイルを、検出された前記レーザビーム(16,16’,16r)によって制御する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記レーザビーム(16,16’)を前記接続層(25)に印加することを、走査しながら実施する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記検出されたレーザビーム(16,16’,16r)を評価し、当該方法を制御するために使用する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
仮ボンディングされた基板スタック(23)を分離させるための装置であって、
・レーザ(5)から出力されるレーザビーム(16,16’)を前記基板スタック(23)の接続層(25)に印加するための手段と、
・前記仮ボンディングされた基板スタック(23)および/または参照用基板スタックにおいて反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出するための検出手段と
を有する、装置。
【請求項7】
前記レーザビーム(16,16’)を前記接続層(25)に印加する前に、前記仮ボンディングされた基板スタック(23)または参照用基板スタックにおいて反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出するための検出手段が検出可能である、
請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記レーザビーム(16,16’)のビーム形状および/または強度プロファイルを、検出された前記レーザビーム(16,16’,16r)によって制御するための制御装置を有する、
請求項6または7記載の装置。
【請求項9】
・基部(2)と、
・枠部(3)と、
・前記レーザビーム(16,16’,16r)の前記ビーム形状および/またはビーム方向に対して影響を与えるための光学システム(26)と、
・前記基板スタック(23)を収容および固定するための基板ホルダ(22)であって、前記基板スタックは、前記レーザビーム(16,16’)に対して相対的に移動可能である、基板ホルダ(22)と
を有する、請求項6から8までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1記載の、仮ボンディングされた基板スタックを分離させるための方法と、請求項6記載の装置とに関する。
【0002】
従来技術では、基板同士を相互に接続させるために無数の方法が存在する。接続の意義および目的は、永続的または一時的な基板スタックである。基板同士を、とりわけボンディング層によって仮接続した場合には、これらの基板は、プロセスチェーンの別の時点で再び相互に分離される。この分離プロセスは、剥離(デボンディング)と呼ばれる。基板スタックを分離させるための最新かつ最重要の方法の1つが、レーザ剥離である。レーザ剥離では、規定された波長を有する高出力の集束されたレーザビームが2つの基板の間の基板スタック界面領域を走査し、ボンディング層への高エネルギ入力によって両方の基板の相互の剥離をもたらす。
【0003】
従来技術では、基板同士が相互に分離された後に、例えば光学検査によって剥離プロセスの評価が実施される。例えば、表面粗さと、表面性質とがチェックされる。
【0004】
従来技術における問題は、レーザビームを印加することによって基板の破壊、とりわけ基板の高価な機能的構成要素の破壊がもたらされる可能性があることである。
【0005】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を解決することであり、とりわけ、基板スタックができるだけ非破壊で、それでもなお効果的に分離されることを保証することである。
【0006】
上記の課題は、各独立請求項の対象と、以下に開示される発明の概念とによって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。明細書、特許請求の範囲、および/または図面に記載された特徴のうちの少なくとも2つの特徴のあらゆる組み合わせも、本発明の範囲内に含まれる。数値範囲が記載されている場合には、挙げられた限界の範囲内にある値も限界値として開示されるべきであり、任意の組み合わせで請求可能とすべきである。
【0007】
本発明は、とりわけ、基板スタックを分離させるための正しいレーザパラメータを分離中に評価することによって損傷を回避することが可能となり、しかもそれと同時に効果的な分離も可能であることを示すものである。一方では、仮ボンディング層(仮接続層)を少なくとも部分的に破壊するために導入されるレーザビームのエネルギは、効率的な分離を引き起こすために十分に強力でなければならない。他方では、導入されるレーザ出力は、とりわけ機能的構成要素が載置され得る基板表面を破壊するであろう出力を上回ってはならない。換言すれば、導入されるレーザビームのエネルギは、仮ボンディング層の接着強度の少なくとも部分的な弱化(好ましくは完全な低下)をもたらす。照射の結果として、ボンディング層における所期のエネルギ入力と、エネルギ変換とが実施されるので、機能的構成要素に対するとりわけ熱的および/または光熱的な負荷が最小限に抑えられる。正しいレーザパラメータを評価するために、本発明によれば、基板スタックの基板同士を相互に分離させるためにレーザビームを基板スタックに印加している間に、とりわけin-situで、基板スタックによって反射された、かつ/または基板スタックを通って透過されたレーザビームが検出される。
【0008】
本発明の核となる概念は、とりわけ、レーザパラメータの監視および/または適合、および/またはボンディング層の監視を、基板スタックのボンディング層に印加を実施している間に実施することができる装置および方法を示すことにある。
【0009】
本発明によれば、基板スタックの2つの基板は、少なくとも1つの接続層、とりわけ仮ボンディング層、好ましくはボンディング接着剤によって相互に接続されている。とりわけ、それぞれ異なる物理的特性および/または化学的特性を有する複数の接続層を使用することも考えられる。非常に特別な本発明による実施形態では、複数の異なる接続層は、レーザの光子に対して物理的および/または化学的にそれぞれ異なる感度で反応する。本発明によれば、接続層が、剥離層(英語:release layer)を有することが考えられる。剥離層に印加を実施することにより、この剥離層は、各基板間の接着性がとりわけ完全に低減されるように、化学的および/または物理的に変化される。
【0010】
本発明のさらなる重要な核となる概念は、とりわけ、大量生産(英語:High volume manufacturing,HVM)において、基板スタックを高スループットで、かつ最小限の管理コストでもって分離させることができるように、基板スタックの性質に関する正しいまたは最適なレーザパラメータを決定するための装置および方法を提供することである。
【0011】
レーザパラメータは、一連の測定の結果として、かつ/または制御変数のパラメータとして最適化される。換言すれば、レーザビーム強度、プロファイル形状、分離されたスタックの面均一性、レーザビームの均一性のような検出された測定値が、開ループ/閉ループ制御ユニット、とりわけコンピュータにおける、とりわけ自動的なフィードバックループによって併合および/または評価される。その後、最適化された制御変数が、さらなる剥離プロセスおよび/または一連の測定のために使用される。
【0012】
最適なレーザパラメータの上述した決定の他に残っている最小限の管理コストは、とりわけレーザビーム特性のin-situでの測定に関連するものであり、この場合、ビームは、少なくとも部分的および/または一時的に、基板スタックに向けられるのではなく直接的にレーザビームセンサに向けられている。これにより、とりわけ正しい設定、すなわち正しい経年劣化の兆候に基づいて、ビーム源のその都度の状態を管理することが可能となる。
【0013】
本発明の有利な実施形態によれば、レーザビーム(16,16’)を接続層(25)に印加することが、走査されながら実施される。
【0014】
レーザビームの、走査刻みでの走査移動は、以下の軌道および/または経路のうちの1つまたは複数を有する:
・x-yスキャン、または鋸歯状のライン走査。レーザビームは、座標方向に基板スタックを照射し、1つのラインが完成した後、次のラインが同じ方向に照射される。
・往復移動(蛇行移動)を伴ったx-yスキャン:レーザビームは、1つの方向に1つのラインを照射し、次のラインは、とりわけシームレスに反対方向に照射/走査され、以後も同様である。
・螺旋状のスキャン:走査移動は、螺旋に沿って同一のパルス周波数で、かつこれに結びついてそれぞれ異なる偏向速度で実施される。
・代替的な螺旋状のスキャン:走査移動は、螺旋に沿って可変のパルス周波数で、かつこれに結びついて同一のスキャナ偏向速度で実施される。
・円形のスキャン:走査移動によって、とりわけ閉じた完全な周状の円環形が形成される。
・位置制限を伴ったランダムスポットスキャン:走査移動は、乱数発生器のようなランダムプロセスに結びつけられており、1つのレーザパルスの後、5マイクロメートルより大きい間隔、好ましくは50マイクロメートルより大きい間隔、特に好ましくは500マイクロメートルより大きい間隔、特に好ましくは5mmより大きい間隔を空けて、ランダムに計算されたスポットにおいて、後続するレーザパルスが実施される。この場合、レーザパルスによって処理された面と、処理されていない面とが継続的に更新され、したがって、本装置は、処理されていない面の集合から次のスポットを、とりわけ独立してランダムに選択する。この方法の利点は、基板の局所的な熱負荷が低減されることである。
【0015】
1つの走査刻みは、とりわけ、レーザビームの移動のない、レーザビームの1つの照射面への照射に相当する。
【0016】
好ましくは、上述した全ての走査移動において、2つの連続する走査刻みの間の最小距離を設定することが可能である。最小距離は、とりわけ照射面の直径より大きく、好ましくは照射面の直径の少なくとも2倍大きい。さらなる実施形態では、基板スタックを走査する際に、レーザビームを指定された領域に衝突させることにより、最小限の制御コストを最小限に抑えることができ、この場合、上述したセンサによって透過性が検出され、レーザビームを測定するための追加的な技術手段、とりわけスキャナの移動が不要となる。
【0017】
本発明によれば、本装置は、好ましくは、レーザパラメータの監視および/または適合が実施されるだけでなく、それと同時に、レーザビームによるレーザ剥離を実施することもできるように構成される。したがって、本発明による検出手段を組み込むことにより、既存のレーザ剥離システムを、本発明による装置へと有利に拡張することができる。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明による測定装置ならびに制御装置および方法を既存の剥離装置に後付けして、既存の剥離装置を拡張することができる。これにより、従来技術による既存の装置に、本発明による機能を実装するための後付けセットが、独立した本発明として開示される。
【0019】
とりわけ、本発明は、剥離プロセス、とりわけレーザ剥離プロセスのin-situでの測定を可能にする装置および方法を説明するものである。本発明は、とりわけ、少なくとも1つのセンサ、好ましくはセンサフィールドによって、基板スタックに入射されたレーザビームの透過および/または反射された強度を測定し、とりわけ入力電力に対する規格化によって、ボンディング層への印加の品質に関する推測を得るという着想に基づいている。とりわけ、損失出力を特定することによって印加の品質が推定される。
【0020】
センサフィールドを使用することにより、ボンディング層全体の、空間分解されたマップを生成することができる。
【0021】
好ましくは、本装置および本方法は、透過モードにおいて使用される。なぜなら、光学システムとは反対に位置する側に検出器を配置するほうが、技術的により簡単に実施することができるからである。
【0022】
透過および/または反射されたレーザ出力を、とりわけ空間分解して、in-situで特定することができる。記録されたデータは、レーザがボンディング層に対して与える影響に関する推定を提供する。
【0023】
本発明による剥離層の厚さは、好ましくは0.0001μm~1000μmの間、好ましくは0.005μm~500μmの間、より好ましくは0.001μm~400μmの間、最も好ましくは0.05μm~300μmの間、最も非常に好ましくは0.01μm~200μmの間である。
【0024】
とりわけ剥離層を有する仮ボンディング層の厚さは、好ましくは0.001μm~1000μmの間、より好ましくは0.005μm~500μmの間、さらにより好ましくは0.01μm~400μmの間、最も好ましくは0.05μm~300μmの間、最も非常に好ましくは0.1μm~200μmの間である。
【0025】
とりわけレーザ剥離では、レーザによって仮ボンディング層の剥離層が溶解され、これによって分離、つまり剥離プロセスが実施される。とりわけ、レーザビームによって化学結合が解離され、その結果、接着性の低下がもたらされる。デボンダの好ましい実施形態では、とりわけ調整可能なレーザビームが、仮ボンディング層における直接的な光化学反応をトリガし、この光化学反応が、仮ボンディング層、とりわけ仮ボンディング層の剥離層の結合を、とりわけ不可逆的に直接的に変化させ、これによって層の接着強度が低下され、とりわけ除去される。直接的な光化学反応によって、実質的な加熱、とりわけ基板または基板スタックの加熱は発生しない。好ましくは、基板スタック全体の開始温度と比較した温度上昇は、100℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくは25℃未満、特に好ましくは15℃未満に制限される。仮ボンディング層について話題となっている場合には、これに代えて接続層が考えられる。
【0026】
デボンダのさらなる好ましい実施形態では、とりわけ調整可能なレーザビームが、仮ボンディング層における光熱反応をトリガし、この光熱反応が、仮ボンディング層、とりわけ仮ボンディング層の剥離層の結合を、とりわけ不可逆的に変化させ、これによって層の接着強度が低下され、とりわけ除去される。接着強度を低下させるために、十分に高い局所的な加熱が発生する。レーザスポットにおける局所的な加熱は、とりわけ2000℃未満、好ましくは1500℃未満、さらにより好ましくは1000℃未満、最も好ましくは500℃未満、最も非常に好ましくは250℃未満である。この場合、基板スタックは、大域的に100℃未満、より好ましくは50℃未満、特に好ましくは25℃未満だけ加熱される。
【0027】
本装置において基板で大域的に測定される反応温度は、とりわけ0℃~300℃の間、好ましくは10℃~200℃の間、特に好ましくは室温/大気温度~40℃の間である。
【0028】
デボンダのさらなる好ましい実施形態では、レーザビーム特性、とりわけ波長、パルス持続時間、均一性、ビーム断面、および/または光エネルギを、光化学反応または光熱反応または両方の種類の反応の混合形態が実施されるように調整することが可能である。
【0029】
とりわけ、有機材料の場合には、光化学反応および/または光熱反応が有機材料の完全な炭化をもたらす可能性がある。このことは、炭素を除いた全ての原子の化学的除去を意味する。炭化の反応生成物として層として形成される炭素は、とりわけ本発明による関連する波長範囲に対して高い吸光度を有する。したがって、好ましくは、炭化の発生ができるだけわずかになるように、好ましくは炭化が発生しないように、その結果、炭素を含有する不透明の層、とりわけ煤層が生成されないように、本発明によるパラメータを調整することが試みられる。
【0030】
本発明による装置は、とりわけ、光学システムを含み、この光学システムを用いて、レーザによって生成されたレーザビームを基板スタックに向けることができ、このレーザビームのパラメータ(とりわけレーザビームの出力)が、反射モードおよび/または透過モードで測定される。光学システムは、好ましくは枠部を介して静止状態で基部に接続されている。基板スタックは、基板ホルダ上に固定される。
【0031】
基板ホルダは、好ましくは固定手段を有する。固定手段は、基板を保持するために使用される。固定手段は、とりわけ以下の固定手段のうちの1つまたは複数から選択される:
●機械式の固定手段、とりわけクランプ、および/または
●とりわけ個別に制御可能であり、かつ/または相互接続された真空経路を有する、真空式の固定手段、および/または
●電気式の固定手段、とりわけ静電式の固定手段、および/または
●磁気式の固定手段、および/または
●接着性の固定手段、とりわけゲルパック固定手段、および/またはとりわけ制御可能な接着性の表面を有する固定手段。
【0032】
固定手段は、とりわけソフトウェアベースの制御ユニットによって電子的に制御可能である。真空式の固定手段は、好ましい種類の固定手段である。真空式の固定手段は、好ましくは、試料ホルダの表面に出口を有する複数の真空経路からなる。複数の真空経路は、好ましくは個別に制御可能である。技術的に比較的簡単に実現可能な適用例では、いくつかの真空経路を組み合わせて、個別に制御可能な真空経路セグメントが形成されている。これらの真空経路セグメントを、真空状態にすること、または充填することができる。それぞれの真空セグメントは、好ましくは、それぞれ他の真空セグメントから独立している。これらの真空セグメントは、好ましくはリング状に構成されている。これによって、内側から外側または外側から内側へと所期のように放射対称に、基板を試料ホルダに固定していくこと、または試料ホルダから基板を解除していくことが可能となる。
【0033】
一般的に、剥離装置は、装置パラメータ/方法パラメータを、チェックおよび/または保存および/または処理および/または出力および/または調整する、少なくとも1つの開ループおよび/または閉ループ制御ユニット、とりわけコンピュータを含むことができる。とりわけ、本発明による方法における全ての測定機器を、情報の取得または処理または保存または出力のために、開ループおよび/または閉ループ制御ユニットに接続させることができる。
【0034】
光学システムと基板ホルダとの間で、好ましくは相対移動を実施することができる。好ましくは、基板ホルダが移動し、その一方で、光学システムと、枠部と、基部とが静止状態で配置されている。
【0035】
特に好ましい実施形態では、基板スタックとレーザビームとの間の相対移動が、光学システムにおけるビームの偏向によって実施され、この場合、基板ホルダ上の基板と、本装置の他の部分とは相互に移動しない。
【0036】
基板スタックを装填するため、かつ照射された基板スタックまたは分離された基板を取り外すために、当業者には公知である装填または取り外しのシーケンスが実施される。
【0037】
本発明による装置によれば、基板スタックの一部である少なくとも2つの基板同士をレーザによって分離させると共に、それと並行して、それと同時に、または少なくとも部分的に重複する時間区分に、剥離プロセスに関する直接的な推定を可能にする、反射および/または透過されたレーザビームの特性/パラメータを特定することが可能となる。したがって、本発明によれば、分離プロセスを最適化するために、すなわち、できるだけ損傷なく効率的に分離させるために、分離の制御を分離中に実施することが可能である。
【0038】
本発明による第1の実施形態では、本装置は、好ましくは走査装置として構成されている。走査装置とは、基板スタックによって形成されるX-Y平面上で、光学システムに対して相対移動が実施されるような、とりわけ、基板スタックに対して法線方向にZ方向に方向決めされたレーザビームに対して相対移動が実施されるような、本発明による装置であると理解される。この場合には、レーザは、連続的な、とりわけ全面的な走査によって、基板スタックのボンディング層全体を照射することができる。好ましくは、少なくとも1つの検出器が、光学システムに対して静止状態で固定される。
【0039】
本発明による第2の実施形態では、本装置からレーザビームが出力され、とりわけレーザから出力されたこのレーザビームが光学系によって拡大されることにより、このレーザビームが、基板スタックを全面的に照射する。レーザビームの測定、とりわけレーザビームの出力の測定は、好ましくは、透過および/または反射されたレーザビームを位置に依存して測定する検出器のフィールドによって実施される。代替的に、透過および/または反射されたレーザビームを位置に依存して測定するために、少なくとも1つの検出器が、静止した基板スタックに対して相対的に相対移動される。
【0040】
連続的に基板に出力することができる光出力、とりわけビーム出力として測定されるレーザの出力は、とりわけ少なくとも5Wであり、好ましくは10Wより大きく、さらにより好ましくは15Wより大きく、最も好ましくは17Wより大きく、最も非常に好ましくは30Wより大きい。
【0041】
レーザの好ましい波長範囲は、100nm~10000nmの間、好ましくは250nm~1100nmの間、さらにより好ましくは270nm~430nmの間、最も好ましくは280nm~380nmの間、最も非常に好ましくは305nm~380nmの間である。
【0042】
特に好ましい実施形態では、レーザの波長を、周波数変換器、とりわけ音響光学変調器、とりわけブラッグセルを用いて調整および/またはフィルタリングすることが可能である。
【0043】
本装置のさらなる好ましい実施形態では、レーザビームは、1064nm、420nm、380nm、343nm、318nm、308nm、280nmの群からの少なくとも1つの波長を含む。
【0044】
とりわけ、ボンディング層において光化学プロセスと光熱プロセスとを組み合わせて引き起こすことができるようにするために、少なくとも2つの波長を有するレーザビームを使用することが特に有利である。
【0045】
本装置の特に好ましい実施形態では、ビーム源は、ダイオードレーザである。
【0046】
基板1つ当たりのレーザビームの総エネルギは、とりわけ0.01mJ~5000kJの間、好ましくは0.1mJ~4000kJの間、特に好ましくは100mJ~2000kJの間に調整される。
【0047】
レーザビームを、連続モードまたはパルスモードで動作させることができる。パルス周波数は、とりわけ0.1Hz~300MHzの間、好ましくは100Hz~500kHzの間、特に好ましくは10kHz~400kHzの間、非常に特に好ましくは100kHz~300kHzの間に調整される。
【0048】
基板スタック1つ当たりのパルスの数は、必要とされる総エネルギに応じて、好ましくは100万より多くのパルス、好ましくは300万より多くのパルス、特に好ましくは500万より多くのパルス、特に非常に好ましくは600万より多くのパルスである。
【0049】
照射パルス1つ当たりに基板スタックに衝突するエネルギは、とりわけ0.1nJ~1Jの間、好ましくは1nJ~900μJの間、特に好ましくは10nJ~500μJの間に調整される。
【0050】
パルス1つ当たりの照射面積は、とりわけ1μm2~100000μm2の間、好ましくは10000μm2~50000μm2の間、特に好ましくは1000μm2~40000μm2の間、非常に特に好ましくは2500μm2~26000μm2の間である。
【0051】
照射面積に対する同義語は、スポットサイズ、レーザスポット(英語:laser spot size)として当業者に知られている。
【0052】
照射面の形状は、とりわけ円形であり、他の好ましい実施形態では楕円形であり、特に好ましい実施形態では矩形である。
【0053】
本発明による第1の実施形態は、本文のさらなる過程および図面において説明および図示される。
【0054】
本明細書のさらなる過程において、光学システムとは、本発明による装置を構築するか、または本発明によるプロセスを実行するために使用される、全ての光学要素の集合であると理解される。本発明によれば、光学要素として、とりわけ以下のうちの1つまたは複数が選択される:
●鏡、とりわけ平面鏡、凸面鏡、または凹面鏡、
●レンズ、とりわけ
○凸レンズ、とりわけ両凸レンズ、平面凸レンズ、または凹凸レンズ、
○凹レンズ、とりわけ両凹レンズ、平面凹レンズ、または凸凹レンズ、
○フレネルレンズ、
●プリズム、
●回折素子、とりわけ回折格子、
●望遠鏡。
【0055】
望遠鏡とは、少なくとも2つの光学要素によってレーザビームの直径および/または焦点を変化させることができる光学システムであると理解される。
【0056】
光学要素を、単純なレンズから形成すること、および/またはアクロマートレンズおよび/またはアポクロマートレンズのような補正レンズから形成することができると共に、複数のレンズから構成された、とりわけ相互に調節可能であるレンズグループから形成することもできる。
【0057】
基板は、それぞれ任意の形状を有することができるが、好ましくは円形である。基板の直径は、とりわけ工業的に規格化されている。ウェハの場合、業界標準の直径は、1インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、12インチ、および18インチである。しかしながら、本発明による実施形態は、基板の直径に関係なく、基本的に任意の基板を扱うことができる。基板は、とりわけレーザに対して透明に構成されている。好ましくは、少なくとも一方の基板、より好ましくは両方の基板が、ガラス基板である。
【0058】
さらなる実施形態では、基板スタックは、レーザビームに対して透明な支持体基板と、とりわけ部分的に金属化された反射性の不透明な製品基板と、仮ボンディング層とからなる。この場合には、レーザビームによってまず始めに支持体基板が貫通照射される。
【0059】
さらなる実施形態では、レーザビームによってまず始めに支持体基板が貫通照射されるのではなく、まず始めに製品基板が貫通照射されるように、基板スタックを基板ホルダに固定することができる。
【0060】
使用されるレーザに関連して、少なくとも支持体基板を通って接続層へと至る光路における透過率は、好ましくは、本発明による基板または本発明による基板スタックに対して、5%より大きく、より好ましくは25%より大きく、さらにより好ましくは50%より大きく、さらにより好ましくは75%より大きく、最も非常に好ましくは90%より大きい。
【0061】
望遠鏡とは、とりわけ、非常に迅速にスイッチングすることができる望遠鏡であり、この場合には、とりわけ望遠鏡の焦点を非常に迅速に変化させることが可能である。2つの焦点の間で切り替えるためのスイッチング周波数は、とりわけ1Hzより大きく、好ましくは10Hzより大きく、さらにより好ましくは100Hzより大きく、最も好ましくは1000Hzより大きく、最も非常に好ましくは10000Hzより大きい。
【0062】
焦点を変化させることができる範囲の長さは、とりわけ0.1mmより大きく、好ましくは1mmより大きく、さらにより好ましくは5mmより大きく、最も好ましくは10mmより大きく、最も非常に好ましくは20mmより大きい。
【0063】
本発明による実施形態は、複数の望遠鏡、とりわけ1つより多くの望遠鏡、好ましくは2つより多くの望遠鏡、さらにより好ましくは3つより多くの望遠鏡、最も好ましくは4つより多くの望遠鏡、最も非常に好ましくは5つより多くの望遠鏡を有することができる。望遠鏡は、とりわけビーム形状、ひいてはアブレーション面または照射面を動的に拡大/縮小するために使用される。
【0064】
焦点を適合することにより、基板スタックの現在の曲率に応じて被写界深度を正しく位置決めすることが可能である。とりわけ、仮ボンディングされた基板スタックは、とりわけ製品基板がバックグラインドされた後、さもなければ処理された後、基板スタック全体の無視できない湾曲をもたらす極端な張力を有する可能性がある。基板スタックが湾曲している場合には、基板同士を相互に接続しているボンディング層も湾曲されている。そこで、本発明に即してボンディング層に沿った全ての点の走査を実施すれば、本発明に即して被写界深度が位置に応じて適合され、これによって最適な剥離結果が得られることとなる。
【0065】
ビームを、任意の数および任意の組み合わせの光学要素によって成形することができる。ビーム形状とは、ある1つの平面でレーザビームを切断したときに生じる幾何学的断面図である。とりわけ、ボンディング層でのビームの幾何学的断面図は、アブレーション面/照射面と同一である。考えられるビーム形状は、
●ライン形状
●矩形、とりわけ
○正方形
●六角形
●三角形
●楕円形、とりわけ円形
●とりわけアパーチャを有する、任意の他の形状、
である。
【0066】
光学要素によって、強度プロファイル、すなわちビーム形状を横断する方向に沿った強度の推移を、任意に調整することができる。好ましい強度プロファイルは、
●ガウスプロファイル
●矩形プロファイル
●三角形プロファイル
●楕円形プロファイル、とりわけ円形プロファイル
である。
【0067】
ビーム形状と強度プロファイルとを調整する選択肢は、とりわけ均一性を最適化するために使用される。例として、以下の理想的な例を挙げておく。辺の長さが1μmの正方形のビーム形状と、完全な矩形の強度プロファイルとを有するレーザビームであれば、x方向およびy方向に1μmの刻み幅で、平面を完全に走査すると、完全に均一なビームを生成するであろう。完全な正方形のビーム形状と、完全な矩形のビームプロファイルとを有するレーザビームを生成することは不可能なので、照射される平面の均一性は、他のビーム形状および/または他の強度プロファイルを重ね合わせることによって近似される。
【0068】
ビーム形状は、アブレーション面/照射面を画定する。
【0069】
アブレーション点とも呼ばれる小さな領域に制限される場合、アブレーション面は、レーザビームと、ボンディング層のうちの、レーザビームによって破壊される部分、および/またはとりわけ不可逆的に変化する部分との交点である。アブレーション面の形状および/またはサイズは、とりわけ、この面におけるレーザの出力密度に対して直接的な影響を有し、したがって、アブレーション面の形状および/またはサイズを利用して、アブレーションを所期のように制御することができる。
【0070】
アブレーション面のサイズを、とりわけ光学要素によって、好ましくは望遠鏡によって調整することができる。基板スタックに向けられたレーザが平行化されていない場合、すなわち収束的または発散的である場合には、基板スタックと、光学システムとの間の相対シフトも考えられる。とりわけ、アブレーション面のアフィン変換のため、とりわけスケーリングのために、第2の望遠鏡を使用することができる。アブレーション面のサイズおよび形状を調整することが可能であることにより、剥離プロセスを、とりわけ基板スタックの材料に、とりわけ界面層の材料に適用することができる。
【0071】
本発明による特別な実施形態では、ビーム形状および/または強度プロファイルを遠隔制御し、とりわけ自動的に調整し、開ループ制御することができ、別の実施形態では、とりわけ剥離プロセス中に、閉ループ制御することもできる。ビーム形状および/または強度プロファイルの変化によって、とりわけアブレーション点またはアブレーション面におけるレーザ出力密度が変化する。
【0072】
本発明による装置は、好ましくはレーザビーム形状センサ(英語:laser beam shape sensor,laser beam profiler)を有し、このレーザビーム形状センサを用いて、とりわけin-situで、すなわち本発明による剥離プロセス中に、レーザビームを検査することができる。レーザビーム形状センサに関する典型的な実施形態は、レーザビームプロファイルを検出するカメラである。センサによって、レーザビームの均一性を定量的に測定することができる。本発明による第1の実施形態では、レーザビーム形状センサは、試料ホルダの外側に配置される。レーザビームの一部は、光学要素によって分離されて、レーザビーム形状センサへと方向転換される。本発明によるさらなる実施形態では、レーザビーム形状センサは、試料ホルダ内に設置されており、とりわけ試料ホルダの保持面に、好ましくは面一に埋め込まれている。
【0073】
本発明による装置は、好ましくはレーザビームエネルギセンサ(英語:laser beam energy sensor)を有し、このレーザビームエネルギセンサを用いて、とりわけin-situで、すなわち本発明による剥離プロセス中に、レーザビームのエネルギを検査することができる。レーザビームエネルギセンサを、レーザ出力センサとして構成することができる。本発明による第1の実施形態では、レーザビームエネルギセンサは、試料ホルダの外側に配置される。レーザビームの一部は、光学要素によって分離されて、レーザビームエネルギセンサへと方向転換される。本発明によるさらなる実施形態では、レーザビームエネルギセンサは、試料ホルダ内に設置されており、とりわけ試料ホルダの保持面に、好ましくは面一に埋め込まれている。
【0074】
本発明による1つの実施形態では、レーザビーム形状センサおよび/またはレーザビームエネルギセンサは、レーザビームの一部が、基板スタックに侵入可能となる前に光学要素によって分離されて方向転換されるように、配置される。本発明によれば、この構成によって、レーザビームが基板スタックを貫通する前、またはレーザビームが基板スタックに印加される前に、このレーザビームを分析することが可能になる。測定値は、とりわけ基準値または参照値として使用される。
【0075】
さらに、第2のレーザビーム形状センサおよび/または第2のレーザビームエネルギセンサを、基板スタックの下方に、とりわけ試料ホルダ内に設置することができる。この場合には、透過された信号が分析される。
【0076】
本発明によるさらなる実施形態では、第2のレーザビーム形状センサおよび/または第2のレーザビームエネルギセンサは、基板スタックによって、とりわけ製品基板のボンディング層および/またはメタライゼーション層によって反射されたビームを測定するために、基板スタックの上方に配置される。この場合には、反射された信号が分析される。
【0077】
レーザビーム形状センサとレーザビームエネルギセンサとを1つのデバイス内に設置することも考えられる。
【0078】
レーザビーム形状センサおよびレーザビームエネルギセンサは、以後、レーザビームセンサという総称で呼ばれる。
【0079】
とりわけ、それぞれのレーザビームセンサは、各自のデータを制御システムに転送することができ、これによって、レーザビーム特性のin-situでの分析が実施される。その後、レーザビーム特性の分析結果を、レーザビームの適合のために使用することができる。レーザビームとレーザビームセンサとから、とりわけ制御ループが形成される。分析および制御は、とりわけハードウェアおよび/またはファームウェアおよび/またはソフトウェアによって実施される。
【0080】
基板ホルダの内部または下には1つまたは複数の凹部が設けられており、この凹部内に、感光性のデバイスが配置されている。本発明によれば、感光性のデバイスは、以下のデバイスのうちの1つまたは複数から選択される:
●感光性のセンサ、とりわけフォトダイオード、
●焦電センサ、
●熱センサ、とりわけ熱電対または熱電堆、
●カメラ、とりわけCCDカメラまたはCMOSカメラ。
【0081】
本発明による装置によって、とりわけ、以下の点のうちの1つまたは複数を決定することが可能となる:
●基板の透過率および/または経年劣化、
●仮ボンディング層を通過する透過率:
○理想的には、機能基板(Device Wafer)が無傷であることを保証するために、1回の衝撃における仮ボンディング層の透過率(T)は、ゼロであるか、または非常に低い(T<0.01%)。
○好ましくは、レーザビームの99.9%超が、仮ボンディング層に吸収される。
○分離されるべき基板スタックの同一のスポット上にレーザパルスが繰り返される場合には、線量に対する仮ボンディング層の時間的変化を測定することができる。この時間的挙動から、少なくとも、ウィリアムズ・ランデル・フェリーの式と同様にして、または別の時間温度重ね合わせの原理を用いて、仮ボンディング層の熱的挙動を推定することが可能である。
○さらに、1つのスポットに対して繰り返されるパルスの数から、公知の統計的アルゴリズムを用いて、製品基板を保護する最適化された線量のために必要な線量が決定される。
○それぞれ異なる厚さは、それぞれ異なる透過率を有するので、これによって、ランベルト・ベールの法則に従って吸光係数を決定することができる。
○ウェハの空測定に対する参照測定において炭化を特定することが可能となり、これにより、最適なプロセスパラメータによって、製品基板への望ましくない熱入力を引き起こし得る炭化が阻止される。
●レーザ出力を、時間分解して測定および表示することができる場合(時間分解能1ns以上)、ボンディング層の接着剤または他の材料と、レーザとの相互作用、
●レーザ書き込みフィールドの1つの場所または複数の隣接する場所で複数回の露光が実施される場合、ダイナミクスおよび均一性の測定値。
【0082】
本発明による改善形態によれば、本装置は、縁部洗浄モジュールを有する。縁部洗浄モジュールは、基板同士を仮接続させるために使用された余分な材料(例えば接着剤)を除去するために使用される。ボンディング層の余分な材料は、とりわけボンディングプロセスにより、基板の縁部の非常に近くで、または基板の縁部を越えて押し付けられ、これによって外側縁部の領域を汚染する可能性がある。
【0083】
好ましくは、材料は、基板の分離が開始される前に除去される。
【0084】
本発明による剥離方法の本発明による独立した使用では、とりわけ米国特許出願公開第2009/0218560号明細書に記載されているような特別なゾーンボンディング基板スタックを、相互に分離させることができるようにするために、レーザビームが、基板スタックのうちのもっぱら縁部ゾーンのみに適用される。
【0085】
とりわけ、本発明による実施形態を、完全な剥離が行われないように、ただし、いくつかの箇所では接着特性が維持されるように、適用することもできる。これにより、基板が即座に完全にばらばらになって相互に離れてしまう可能性が阻止される。これにより、基板スタックは、依然として搬送可能であるが、最小限の力を加えることによって基板同士を分離させることも可能となる。
【0086】
本発明による剥離方法および本発明による剥離装置の、本発明によるさらなる独立した使用では、仮ボンディング層を、限定された場所において弱化させることができ、基板スタックを、後々の時点に、とりわけ機械的に相互に分離させることが可能となる程度まで、とりわけ縁部領域における接着特性が維持される。
【0087】
本発明によるさらなる独立した使用では、対応する縁部層の除去を実施すべき場合に、とりわけ縁部領域における透過特性が測定される。とりわけ、仮ボンディングされる基板は、仮ボンディング層を有し、この仮ボンディング層は、スピンコーティングプロセス中に縁部に集まり、エッジビード(英語:edge bead)が形成される。このエッジビードは、経験によれば比較的厚く、とりわけ比較的高密度でもある。エッジビードが発生する領域を本発明に即して測定することにより、エッジビードを効率的に除去するための正確なパラメータを決定することができる。
【0088】
本方法のこの独立した使用は、仮留め(tacked)された基板の剥離と呼ばれる。
【0089】
本発明による方法の基本的な概念は、とりわけレーザ剥離プロセスを同時に実施することができる測定プロセス、とりわけ走査測定プロセスにある。
【0090】
本発明による全て方法において、界面またはボンディング層への照射を複数回実施することができる。このために、基板スタックのアブレーション面がレーザによって複数回照射されるように、走査プロセスが複数回実施される。したがって、アブレーション面への照射の回数は、とりわけ1回より多く、好ましくは2回より多く、さらにより好ましくは5回より多く、最も好ましくは10回より多く、最も非常に好ましくは15回より多い。
【0091】
レーザスポットのサイズおよび形状に応じて、剥離のために最大で1000万パルスを基板スタックに印加することができる。基板面積と、レーザスポットサイズと、基板全体に対するパルス数とから、アブレーション面のパルスの値を決定することができる。
【0092】
とりわけ、複数回照射を、それぞれ異なるレーザパラメータで複数回実施することができる。これによって、本発明によれば、より良好な均一化と、1回のサイクル当たりのビーム負荷の低減とを達成することが可能となる。ビーム負荷がより小さくなると、製品基板上に配置され得る構成要素が保護される。その場合、これらの構成要素が受ける熱的負荷も、より小さくなる。
【0093】
均一性を改善するためのさらなる選択肢は、アブレーション面のサイズパラメータの数分の1だけ、レーザビームの原点をシフト(英語:shift)させることによって実施することができる。このシフトは、とりわけ、アブレーション面のサイズパラメータの10倍未満、好ましくはアブレーション面のサイズパラメータの5倍未満、さらにより好ましくはアブレーション面のサイズパラメータの1倍未満、最も好ましくはアブレーション面のサイズパラメータの0.05倍未満、最も非常に好ましくはアブレーション面のサイズパラメータの0.01倍未満である。レーザビームが円形のアブレーション面を有する場合には、サイズパラメータは、例えば直径に相当する。
【0094】
換言すれば、レーザビームの原点のシフトによって、アブレーション面のオーバーラップが生成され、したがって、レーザビームの不均一性が、複数回照射によって平均化される。複数回照射は、アブレーション面におけるエネルギ線量の積分または加算として理解することができる。
【0095】
本発明による第1の方法は、基板スタックから少なくとも2つの基板を最適に剥離するための最適なレーザパラメータを決定することを含む。しかしながら、基板のレーザパラメータだけを検査することも考えられる。この場合には、基板スタックの代わりに基板だけが、基板ホルダに固定される。さらに、介在する仮ボンディング層および/または介在する剥離層を有さない2つの基板を検査することも考えられる。これによって、とりわけ基板スタックの透過率を特定することができる。基板スタックの特性が既知になると、同一の測定値から仮ボンディング層の特性を計算することが可能となる。
【0096】
さらに、1つの基板または1つの基板スタックの複数の異なる領域を、同一の仮ボンディング接着剤によってそれぞれ異なる材料厚さで被覆し、これによって、層の特性を決定するための一連の測定を、1つの基板上で実施可能にすることも考えられる。さらに、1つの基板上で、複数の異なる仮ボンディング接着剤、および/または複数の異なる材料厚さを使用することが可能である。これにより、1つまたは複数の仮ボンディング接着剤の迅速な特性評価または最適化が可能になる。
【0097】
最適な剥離とは、基板、とりわけ基板上の構成要素を破壊または損傷することなく、最短時間で基板の完全な分離が実施される分離プロセスであると理解される。このことは、製品基板ができるだけ最小限に照射されるようにパラメータを選択することによって保証される。これらの最適なレーザパラメータを決定するために、本発明によれば、とりわけレーザパラメータの集合が、とりわけリストまたはマトリクスの形態で、コンピュータに、好ましくはソフトウェアに作成および保存される。レーザパラメータ、例えばレーザ出力を、10ワット~1000ワットまでの10段階でリストに保存することが考えられる。本発明によれば、その後、スキャナによって10個の位置が巡回され、保存された10個の値のうちの1つに対応するレーザ出力で、界面が照射される。反射および/または透過されたレーザ出力を、本発明に即して同時に測定することにより、どのレーザ出力において界面の最適な破壊、ひいては最適な剥離プロセスが実施されるのかを推定することができる。リストの使用は、パラメータに基づいた本発明によるプロセスの最適化を表す。複数のパラメータを変更する必要がある場合には、これらのパラメータをn次元リストに保存する必要がある。n次元リストは、マトリクスとも呼ばれる。その場合、最適なパラメータの組み合わせは、とりわけ数学的最適化方法によって得られる。実験計画法のアプローチは、当業者には公知であるので、本発明による方法の一部である最適化の計算規則は、詳細には記載しない。本発明に即して検査可能であると考えられるレーザパラメータは、以下のうちの1つまたは複数である:
●レーザ出力
●露光時間
●X-Yオーバーラップ
●ビーム形状
●パルス形状
●繰り返し露光
●波長
【0098】
本発明によるさらなる第2の方法は、in-situでの均一性の定量化を可能にする。in-situでの均一性の定量化とは、剥離プロセス中に、とりわけ各基板間の界面における複数の異なる箇所において剥離の品質に関する情報を取得するためのプロセスであると理解される。剥離プロセスをとりわけ局所的に実施するために、レーザが界面に集束されている間に、それと同時に、反射および/または透過されたビームが測定される。ここから、対応する箇所における剥離の品質が特定される。剥離が完全には実施されていない場合には、剥離を完全に実施するために、その箇所を改めて、または後々の時点に露光させることができる。本発明によれば、剥離(分離プロセス)の品質および/または均一性は、とりわけ、レーザが印加された後ではなく、レーザを印加している最中に特定される。
【0099】
上述した本発明による方法は、とりわけ、以下の仮ボンディング材料のうちの1つまたは複数のために適している:
●HD3007(一重層)
●ブリューワーサイエンス社の二重層:UV活性層(剥離層)
●Brewer701
●BrewerBond305
●BrewerBond220
●JSR社のレーザ剥離材料の二重層(UV活性層+仮ボンディング層)
●信越社の有機平坦化層+仮ボンディング層
●3M社の二重層
●富士フィルム社の二重層
●その他の光化学的に励起可能な仮ボンディング接着剤
●その他の光熱的に励起可能な仮ボンディング接着剤
●ポリイミド
【0100】
本発明による第1の方法は、以下のステップのうちの1つまたは複数を含む:
・ビーム源および測定機器が自己較正される。このために、基板または基板スタックのない状態で、本装置の空測定が実施される。大気中でのレーザ源の強度および均一性が、センサにおいて検出される。自己較正は、温度、相対空気湿度、浮遊粒子数のような実験室条件を含む、方法に関連した全てのパラメータの現在の実際の状態を記録するために使用される。
・測定値が処理および保存される。
・ボンディングされていない積層された基板スタックが装置に装填される。
・任意選択的に、ボンディングされていない積層された基板スタックと、フィルム固定のため使用されるフィルムとを、装置に装填することができる。
・任意選択的に、基板スタックとして積層されているガラス基板、とりわけ透明なガラス基板を、フィルム固定を用いて、またはフィルム固定を用いずに装置に装填することができる。
・任意選択的に、基板スタックを形成しているガラス基板を、フィルム固定を用いずに装置に装填して、測定することができる。その後、別の、とりわけ同一のガラス基板を、フィルム固定を用いて装置に装填して、測定することができる。これによって、基板スタックのガラス基板の吸光度または透過率を、基板に接触することなく参照値を測定するために特定することができる。
・ボンディングされていない基板スタックを用いた較正測定が実施される。この場合、仮ボンディング接着剤を用いない基板スタックの透過率が測定される。
・測定値が処理および保存される。とりわけ、基板スタックの吸光度を計算することができる。
・ボンディングされていない基板スタックが装置から取り外される。
・任意選択的に、レーザパラメータが適合される。この適合は、パラメータセットとして制御装置のデータベースに保存された経験値および/または計算されたパラメータに基づいている。
・ボンディングされた、とりわけ仮ボンディングされた基板スタックが、装置に装填される。
・任意選択的に、既知の測定された透過率を有するガラス基板と、既知の厚さを有する仮ボンディング接着剤と、既知の測定された透過率を有する別のガラス基板とからなる仮ボンディングされた基板スタックを、(既知の透過率を有する)フィルム固定を用いて、またはフィルム固定を用いずに装置に装填することができる。
・剥離に並行して、in-situでの測定が実施される。
・任意選択的に、仮ボンディング接着剤の透過率を決定するためにin-situでの測定を実施することができ、このin-situでの測定は、パラメータを決定するため、好ましくは最適化するために使用される。
・分離された基板スタックが取り外される。
・測定値が処理および保存される。
・レーザパラメータが、改めて最適化される。
【0101】
パラメータのバリエーションのデータベースを形成するために、一連の測定を実施することができる。パラメータのバリエーションは、とりわけ、
・支持体基板の材料、
・支持体基板のコーティング、
・支持体基板の前処理、とりわけプラズマ処理、
・支持体基板の厚さ、
・固定フィルムの材料、
・固定フィルムの厚さ、
・固定フィルムのコーティング、
・仮ボンディング接着剤の材料、
・仮ボンディング接着剤の厚さ、
・仮ボンディング接着剤のフィラー、
・仮ボンディング接着剤の剥離層の厚さ、
・スプレー、スピンコーティング、キャスティング、スキージのような、仮ボンディング接着剤の塗布方法、
におけるバリエーションを含む。
【0102】
全てのバリエーションを有する全ての既知の入力変数と、全ての測定結果とを、本方法のデータベースに保存することができ、したがって、当業者に公知のアプローチを用いて迅速な最適化を実施することができる。
【0103】
とりわけ、一連の測定によって、剥離プロセス中に製品基板に衝突する線量を特定することができる。これによって、製品基板への損傷を阻止するために、レーザ出力、および/または仮ボンディング接着剤の層厚さ、および/またはレーザビームのスポットサイズを適合させることができる。
【0104】
製品基板の線量を特定するための個々の測定は、以下のことを含む:
・第1の基板、とりわけガラス基板、好ましくはガラス製の支持体基板の透過性を測定すること。ここから、支持体基板の透過率および/または吸光度が特定される。
・固定フィルムを用いて、または固定フィルムを用いずに、第2の基板、とりわけガラス基板の透過性を測定すること。ここから、第2の基板の透過率および/または吸光度が特定される。
・測定された第1のガラス基板、または同一の仕様を有するガラス基板と、塗布方法、供給量のような履歴、厚さ、および別のパラメータが既知である仮ボンディング接着剤と、既知のパラメータを有する第2のガラス基板と、任意選択的に、既知のパラメータを有する固定フィルムとからなる基板スタックの透過性を測定すること。
【0105】
これらの透過性の測定から、仮ボンディング接着剤の吸光度および/または透過率を特定することができる。
【0106】
基板スタックにおいて基板、とりわけ第2の基板を、製品基板と交換し、その他の基板およびその他のパラメータを、好ましくは非常に類似させ、好ましくは同一のままにした場合には、製品基板に衝突するであろう線量を計算することが可能である。結果的に生じる線量が、製品基板を損傷する線量よりも少ない場合には、この計算を評価することができる。結果的に生じる線量が、製品基板に損傷を与える場合には、基板スタックを効果的に損傷なく分離させることができるようにするために、計算に基づいてパラメータを適合させることができる。
【0107】
とりわけ、入力変数が制御および/または変更されている場合には、データベースを用いて最適な剥離パラメータを調整することができる。したがって、このようにして、レーザ源の経年劣化、仮ボンディング接着剤の厚さの変動、または仮ボンディング接着剤の経年劣化を識別し、相応に出力および返送された情報、および/または変更された特性量を用いて補償することができる。
【0108】
固定フィルム上の、分離されるべき基板スタックの透過率を特定するためには、レーザビームの50%より多く、好ましくは75%より多く、特に好ましくは95%より多く、非常に特に好ましくは99%より多く、最適な場合には99.9%より多く、理想的な場合には99.99%より多くが、仮ボンディング接着剤に吸収されることが前提とされる。
【0109】
全ての上述した本発明による実施形態およびプロセスを、相互に任意に組み合わせることができるが、個々に説明される。装置に関する特徴が、方法の特徴を示唆または記載している場合には、これらの特徴を、方法に関して開示されたものとみなされるべきであり、逆もまた同様である。
【0110】
本発明のさらなる利点、特徴、および実施形態は、以下の図面の説明および特許請求の範囲および添付された図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1a】第1のスキャナ位置における、本発明による装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図1b】第2のスキャナ位置における、
図1aによる第1の実施形態を示す図である。
【
図1c】第3のスキャナ位置における、
図1aによる第1の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による装置の第2の実施形態を示す図である。
【0112】
図面では、同じ構成要素、または同じ機能を有する構成要素には、同じ参照符号が付されている。
【0113】
図1aは、透過モードで、光学システム26から出力されたレーザビーム16を基板スタック23の接続層25に印加することにより、仮ボンディングされた基板スタック23を分離させるための本発明による装置1を示す。装置1は、枠部3と、光学システム26とを有する基部2からなる。光学システム26は、複数の構成要素、とりわけ複数の光学要素からなる。基部2と枠部3とを、相互に動かないように位置固定して接続させることができる。接続層25は、ボンディング層25とも呼ばれ、とりわけ仮ボンディング層として構成されている。
【0114】
光学要素は、好ましくはハウジング4内に収容されている。装置1は、レーザ5を有する。レーザ5によって生成されたレーザビーム16(または複数のレーザビーム16)は、ブリュースター窓20を介して出射され、光学要素を介して、とりわけミラー7を介して光学システム26に入射する。レーザビーム16が進行する経路に沿って、好ましくは、少なくとも1つの望遠鏡9、および/またはレーザビーム成形ユニット21、および/または少なくとも1つのアパーチャ10、および/または動的な集束ユニット13、および/またはレーザビーム16を分割および/または偏向させるための半透明のミラー7’、および/または光学的な位置センサ、とりわけPSD14、および/またはオートフォーカスユニット19、および/またはとりわけ動的に制御可能な偏向ユニット29、および/またはレンズ8を有する平坦化レンズユニット15が設けられている。
【0115】
レーザ5と、制御可能な偏向ユニット29との結合は、線路18によって表されている。測定機器および制御機器は、図示されていない制御コンピュータに接続されている。
【0116】
偏向ユニット29によって偏向されたレーザビーム16の第1の位置において、レーザビーム16の少なくとも一部が、ミラー7を介して方向転換されて、分離されたレーザビーム16rとなり、したがって、基板スタックの方向に残っているビーム経路16’から分離される。分離されたレーザビーム16rは、レーザビーム形状センサ11および/またはレーザビームエネルギセンサ17に送られる。したがって、分離されたレーザビーム16rは、レーザビーム16のうちの分離されていない残りの部分が基板スタック23に到達する前に、測定される。分離されたレーザビーム16rは、参照値または基準値を決定するために使用される。
【0117】
レーザビーム16の残りの部分は、ボンディング層25に到達し、基板スタック23を少なくとも部分的に分離させることができる。
【0118】
本発明によるそれぞれの装置1,1’において、基板表面24oおよび/またはボンディング層25を、視野領域12を有するカメラ6によって検査および測定することができる。カメラ6は、とりわけ赤外線カメラである。基板24が可視光に対して透明である場合には、カメラ6は、好ましくは、可視波長の範囲内で感度を有するカメラである。
【0119】
基板ホルダ22は、とりわけx方向および/またはy方向および/またはz方向に移動可能である。z方向の移動は、とりわけ被写界深度の位置を変化させるために使用することができ、かつ/または装置での装填および/または取り外しのシーケンスのために使用することができる。好ましくは、被写界深度は、レーザビームの集束を適合させることにより変化される。装填および/または取り外しを、とりわけ、基板ホルダ内に設置された装填ピンを用いて実施することもできる。
【0120】
本発明の第1の実施形態によれば、基板スタック23が、レーザビーム16’の焦点平面へと搬送され、剥離プロセスのために固定され、とりわけクランプされ、これによって基板スタック23は、基板ホルダ22上の指定された位置につき、この位置から変化しない。
【0121】
基板スタック23は、好ましくは支持体上において本発明による装置に運ばれる。この場合、支持体は、好ましくは基板スタック23の製品基板に接続される。
【0122】
非常に好ましい手順では、基板スタック23は、フレーム(英語:frame)に亘って張架されたフィルム(英語:tape)上に固定される。基板スタック23は、製品基板を介してフィルムに接続される。これによって、基板スタック23を容易に搬送することが可能となる。そのような固定方法を使用することにより、一般的に比較的薄い製品基板を、支持体基板が除去された後にフィルム上に残して、本発明によるシステムから問題なく除去することができる。
【0123】
支持体を有さない基板スタック23を、本発明による装置によって処理することも考えられる。しかしながらこの場合には、製品基板は、十分に形状安定的であるために十分な厚さ(剛性)を有しているべきである。
【0124】
支持体が使用されない実施形態によれば、基板ホルダは、とりわけ、基板スタックから支持体基板が除去された後、製品基板を十分に固定および安定させることができるように構成されている。本発明による装置のこのような実施形態では、とりわけ製品基板のために適合された固定手段により、剥離後の製品基板の巻き上がりが阻止される。とりわけ、このようにして固定された製品基板を、基板ホルダから除去する前に、支持体を交換(英語:carrier flip flop)することによって別の支持体の上に固定することが必要であろう。
【0125】
レーザビーム16’を基板スタック23に印加することは、ボンディング層25のとりわけ大部分、好ましくは全体を、走査移動によって走査することによって実施される。走査移動は、とりわけ、レーザビーム16’と基板スタック23との間の相対移動として偏向ユニット29によって実施される。
【0126】
代替的に(または追加的に)、望遠鏡9によって被写界深度の位置を変化させてもよい。
【0127】
さらなる実施形態では、相対移動によって、とりわけ基板ホルダ22を光学システム26に対して能動的に移動させることによって、走査を実施することができる。
【0128】
基板スタック23、とりわけ接続層25の少なくとも大部分、好ましくは全体に印加を実施すると同時に、損傷をできるだけ少なく抑えることを目的として、レーザビーム16’の走査移動は、上述した種々の軌道および/または経路を含むことができる。
【0129】
走査移動に関して、レーザビーム16’が走査を実施するのか、および/または基板スタック23が走査を実施するのか、および/または基板ホルダ22が走査を実施するのかどうかは重要ではないので、以下の実施形態が、本発明によるものとして開示されている:
●レーザビーム16’が静止していて、基板スタック23が移動する形態、または
●基板スタック23が静止していて、レーザビーム16’が移動する形態、または
●レーザビーム16’が移動し、基板スタック23も移動する形態。
【0130】
レーザビーム16’(またはレーザビームのグループ)が静止していて、かつ基板スタックも静止している形態もまた、印加中の移動がない1回限りの走査、すなわち全面的な走査として、本発明によるものとして開示される。
【0131】
本発明による装置1,1’の1つの実施形態では、レーザビームセンサ30を、仮ボンディング接着剤の平面上において基板スタック23によって覆うのではなく、基板に隣接して配置することができる。この実施形態は、図示されていない。
【0132】
概略的に図示されるような、本発明による装置1,1’の代替的な実施形態では、レーザビームセンサ30を、とりわけ基板ホルダ22の表面の一部として構成することができ、この場合には、(好ましくは)中央に配置すること、または非中央に配置することが可能である。
【0133】
レーザビームセンサ30の、とりわけ基板表面23oに対して平行かつ/または面一に配置されたセンサ表面は、基板ホルダ22の総面積の0.001%より大きく、好ましくは0.005%より大きく、特に好ましくは0.01%より大きく、より好ましくは0.05%より大きく、最も好ましくは0.1%より大きくてもよい。
【0134】
本発明による装置1,1’の図示されていない第3の実施形態では、1つより多く、好ましくは2つより多く、特に好ましくは5つより多くのレーザビームセンサ30を、とりわけ基板表面23oに分散されて配置されるように、基板ホルダ22に設置することができる。基板ホルダの総面積と、センサ面積との間のスケーリングは、第2の実施形態とは異なっていてもよい。
【0135】
本発明による装置1,1’の図示されていない第4の実施形態では、少なくとも1つのレーザビームセンサ30をエリアセンサとして構成することができ、これによって、基板スタック面積の50%より多く、好ましくは基板スタック面積の60%より多く、特に好ましくは基板スタック領域の80%より多く、非常に特に好ましくは基板スタック面積の99%より多くを、剥離中に、とりわけin-situで測定することができる。
【0136】
図1bは、
図1aの実施形態による本発明による装置1の一部を示す。偏向ユニット29は、レーザビーム16’を別のビーム位置に偏向している。このビーム位置では、レーザビーム16’は、基板スタック23を通ってレーザビームセンサ30に衝突している。レーザビームの残りの部分16’は、基板スタック23、とりわけボンディング層25で反射された後、かつ/または基板スタック23、とりわけボンディング層25を通って透過された後、とりわけレーザビームセンサ30によって測定され、この場合、レーザビームのエネルギおよびレーザビームの形状を測定するためには、レーザビームエネルギセンサ17、およびレーザビーム形状センサ11、および組み込みセンサが適している。したがって、本発明によるこの装置1は、透過測定のための装置1である。
【0137】
図1cは、
図1aにおいて説明したような、本発明による装置1の一部を示す。偏向ユニット29は、レーザビーム16’を別の図示されたビーム位置に偏向している。レーザビーム16’は、基板スタック23を通って基板ホルダ22に衝突している。これによって、ボンディング層25の全面的な走査が可能である。
【0138】
図2は、反射モードにおける本発明による装置1’、すなわち、透過測定に代えて、または透過測定に加えて反射測定を実施する本発明による装置1’を示す。装置1とは異なり、レーザビーム形状センサ(図示せず)および/またはレーザビームエネルギセンサ(図示せず)が、基板スタック23の上方に配置されており、ボンディング層25によって反射されたビームを測定する。
【0139】
本発明によるそれぞれの装置1,1’において、基板表面24oおよび/またはボンディング層25を、視野領域12を有するカメラ6によって検査および測定することができる。カメラ6は、とりわけ赤外線カメラであり、好ましくはIR光と可視光とを同時に検出することができるカメラである。カメラ6は、光学手段を用いて剥離プロセスを観察することができるように、基板スタック23の透明度と、使用されるレーザビームとに合わせて適合されている。
【0140】
基板ホルダ22は、とりわけx方向および/またはy方向および/またはz方向に移動可能である。z方向の移動は、とりわけ被写界深度の位置を変化させるために使用することができ、かつ/または装置での装填および/または取り外しのシーケンスのために使用することができる。
【0141】
本発明による第1の実施形態では、基板スタック23が、レーザビーム16’の焦点平面へと搬送され、剥離プロセスのためにクランプされ、これによって基板スタック23は、基板ホルダ22上の所定の位置につき、この位置から変化しない。走査移動は、とりわけ、レーザビーム16と基板スタックとの間の相対移動として偏向ユニット29によって実施される。
【0142】
代替的に(または追加的に)、望遠鏡9によって被写界深度の位置を変化させてもよい。相対移動によって、とりわけ基板ホルダ22を光学システム26に対して能動的に移動させることによって、ボンディング層25全体を走査することが可能となる。
【0143】
代替的に(または追加的に)、望遠鏡9によって被写界深度の位置を変化させてもよい。
【0144】
さらなる実施形態では、相対移動によって、とりわけ基板ホルダ22を光学システム26に対して能動的に移動させることによって、ボンディング層25全体を走査することが可能となる。
【0145】
本発明による装置1,1’の図示されていない実施形態では、装置1,1’が、反射測定のためレーザビームセンサ30を含むが、透過測定のためのレーザビームセンサ30は含まないようにすることが可能である。この装置1,1’は、不透明な製品基板を使用する場合に使用することができる。
【0146】
本発明による装置1,1’の
図2の図示では、レーザビーム16の3つの専用のビーム経路が同時に示されており、ここでは、2つの周縁ビームと、1つの中央ビームとが図示されている。このことは、本発明による第1の実施形態では、基板上の1つのスポットを同時に処理することができる単一のレーザビーム16の縁部位置を示すために使用されるに過ぎない。
【0147】
図示されていない本発明による装置1,1’のさらなる実施形態では、レーザビーム16と、偏向ユニット29とを相応に適合させること(ビームスプリッタ、複数のレーザ源)により、複数のレーザビームを同時に並行して、とりわけ剥離と非常に並行して使用することが可能である。
【0148】
図3は、2つの基板24と1つのボンディング層25とからなる基板スタック23の拡大断面図を示す。集束されたレーザビーム16は、それぞれのx-y位置においてz方向の有限の被写界深度28を有する。基板スタック23は、曲率半径27を有する若干の湾曲を有する。それぞれのx-y位置における被写界深度28を、正確にボンディング層25に位置合わせすることができるようにするために、被写界深度28のz位置は、好ましくは調節可能である。この調節は、少なくとも1つの光学要素によって実施され、好ましくは、レーザビーム16のビーム経路上に配置された少なくとも1つの望遠鏡9によって実施される。
図3は、望遠鏡9のうちの1つを、上流に接続された光学要素として例示的に示す。z方向における被写界深度28は、とりわけ基板スタック23よりも薄い。好ましくは、被写界深度は、接着剤の層厚さよりも小さく、特に好ましくは、接着剤の厚さの0.5倍未満である。
【符号の説明】
【0149】
1 装置
2 基部
3 枠部
4 ハウジング
5 レーザ
6 カメラ
7 ミラー
7’ 半透明のミラー
8 レンズ
9 望遠鏡
10 アパーチャ
11,11’ レーザビーム形状センサ
12 視野領域
13 動的な集束ユニット
14 PSD(position sensitive device)
15 平坦化レンズユニット(英語:field flattening unit)
16 レーザビーム
16’ レーザビーム
16r 分離されたレーザビーム
17,17’ レーザビームエネルギセンサ
18 線路
19 オートフォーカスユニット
20 ブリュースター窓
21 レーザビーム成形ユニット
22 基板ホルダ
23 基板スタック
24 基板
24o 基板表面
25 接続層/ボンディング層
26 光学システム
27 曲率半径
28 被写界深度
29 偏向ユニット
30 レーザビームセンサ
【手続補正書】
【提出日】2022-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮ボンディングされた基板スタック(23)を分離させるための方法であって、
レーザ(5)から出力されるレーザビーム(16,16’)を基板スタック(23)の接続層(25)に印加することと、
前記印加する間に、前記仮ボンディングされた基板スタック(23)において反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出することと、を含み、
前記レーザ(5)のパラメータの監視および/または適合を、前記接続層(25)に印加を実施している間に実施することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記レーザビーム(16,16’)を前記接続層(25)に印加する前に、前記仮ボンディングされた基板スタック(23)または参照用基板スタックにおいて前記反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出する
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビーム(16,16’)のビーム形状および/または強度プロファイルを、検出された前記レーザビーム(16,16’,16r)によって制御する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記レーザビーム(16,16’)を前記接続層(25)に印加することを、走査しながら実施する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記検出されたレーザビーム(16,16’,16r)を評価し、当該方法を制御するために使用する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
仮ボンディングされた基板スタック(23)を分離させるための装置であって、
・レーザ(5)から出力されるレーザビーム(16,16’)を前記基板スタック(23)の接続層(25)に印加するための印加手段と、
・前記仮ボンディングされた基板スタック(23)および/または参照用基板スタックにおいて反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出するための検出手段と
を有し、前記レーザ(5)のパラメータの監視および/または適合を、前記接続層(25)に印加を実施している間に実施可能である、装置。
【請求項7】
前記レーザビーム(16,16’)を前記接続層(25)に印加する前に、前記仮ボンディングされた基板スタック(23)または参照用基板スタックにおいて反射および/または透過された、前記レーザ(5)のレーザビーム(16,16’,16r)を検出するための検出手段が前記レーザビーム(16,16’)を検出可能である、
請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記レーザビーム(16,16’)のビーム形状および/または強度プロファイルを、検出された前記レーザビーム(16,16’,16r)によって制御するための制御装置を有する、
請求項6または7記載の装置。
【請求項9】
・基部(2)と、
・枠部(3)と、
・前記レーザビーム(16,16’,16r)の前記ビーム形状および/またはビーム方向に対して影響を与えるための光学システム(26)と、
・前記基板スタック(23)を収容および固定するための基板ホルダ(22)であって、前記基板スタックは、前記レーザビーム(16,16’)に対して相対的に移動可能である、基板ホルダ(22)と
を有する、請求項8記載の装置。
【外国語明細書】