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特開2022-133370吸収性製品用の化学発光性濡れ指示薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133370
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】吸収性製品用の化学発光性濡れ指示薬
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/42 20060101AFI20220906BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61F13/42 Z
A61F13/53 300
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022107036
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2020100913の分割
【原出願日】2015-10-01
(31)【優先権主張番号】14/516,255
(32)【優先日】2014-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504293447
【氏名又は名称】インターナショナル・ペーパー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン,ブレント・エイ
(72)【発明者】
【氏名】パーササーシー,ベンケタ・アール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】綿状パルプ組成物、綿状パルプ組成物を含む吸収性物品、および関連する方法を本明細書に開示する。
【解決手段】綿状パルプ組成物は、水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む。代表的な吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつおよび大人用失禁用品が含まれる。代表的な化学発光系としては、例えば、生物発光系が含まれる。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿状パルプおよび水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む、綿状パルプ組成物であって、該化学発光系が、ルシフェリンおよびルシフェラーゼから選択される少なくとも1つの成分を含む、綿状パルプ組成物。
【請求項2】
前記綿状パルプ組成物がルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項3】
前記綿状パルプ組成物が、セレンテラジン、渦鞭毛藻類ルシフェリン、バクテリアルシフェリン、真菌ルシフェリン、ホタルルシフェリンおよびワルグリンからなる群から選択されるルシフェリンを含む、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項4】
前記綿状パルプ組成物が、前記綿状パルプの0.01~2重量%の濃度でルシフェリンを含む、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項5】
前記綿状パルプ組成物が、Gaussiaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、渦鞭毛藻類ルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、真菌ルシフェラーゼ、バクテリアルシフェラーゼおよびウミホタルルシフェラーゼからなる群から選択されるルシフェラーゼを含む、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項6】
前記綿状パルプ組成物が、前記綿状パルプの0.1~20重量%の濃度でルシフェラーゼを含む、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項7】
前記化学発光系が、前記ルシフェリンとしてのセレンテラジンと、GaussiaまたはRenillaルシフェラーゼとを含む、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項8】
pH4.0~8.5において前記水性系の緩衝作用をもたらすように構成されたpH緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項9】
前記pH緩衝剤が、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、臭化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸マレイン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸二水素カリウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項10】
前記pH緩衝剤が、前記水性系との接触の際に前記可視光の持続時間を延長するように構成されている、請求項8に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項11】
前記化学発光系の化学発光波長範囲と重複するフォトルミネセンス吸収波長範囲を有するフォトルミネセンス化合物をさらに含み、該フォトルミネセンス化合物が該化学発光波長範囲とは異なるフォトルミネセンス発光波長範囲を有する、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項12】
前記フォトルミネセンス化合物が、蛍光性化合物および燐光性化合物からなる群から選択される、請求項11に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項13】
前記フォトルミネセンス化合物が、前記綿状パルプの0.01~2重量%の量で存在する、請求項11に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項14】
前記可視光の持続時間が0.5~6時間である、請求項1に記載の綿状パルプ組成物。
【請求項15】
液体透過性の表面シート、液体非透過性の背面シート、該表面シートと該背面シートとの間に配置された綿状パルプ、および水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含み、該化学発光系がルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む、吸収性物品。
【請求項16】
前記ルシフェリンおよび前記ルシフェラーゼがいずれも前記綿状パルプの中に配置されている、請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記ルシフェリンまたは前記ルシフェラーゼのうちの一方が前記綿状パルプの中に配置されており、他方が、前記表面シートに結合しており、かつ液体排泄物への曝露の際に該綿状パルプの中へ移動するように構成されている、請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項18】
pH4.0~8.5において前記水性系の緩衝作用をもたらすように構成されたpH緩衝剤をさらに含む、請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記化学発光系の化学発光波長範囲と重複するフォトルミネセンス吸収波長範囲を有するフォトルミネセンス化合物をさらに含み、該フォトルミネセンス化合物が該化学発光波長範囲とは異なるフォトルミネセンス発光波長範囲を有する、請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項20】
超吸収性ポリマーをさらに含む、請求項15に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、吸収性製品用の化学発光性濡れ指示薬、と題して2014年10月6日に出願された米国特許非仮出願番号14/516,255による優先権の利益を享受および主張するものであり、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、処理された綿状パルプ組成物に関し、詳しくは、綿状パルプ組成物および、綿状パルプ組成物の組み込まれている吸収性物品に関し、それは、流体排泄物などの水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系と一体化されている。
【背景技術】
【0003】
乳児用おむつ、大人用失禁パッドおよび女性用ケア製品などのパーソナルケア吸収性製品は通常、流体吸収性コアを含んでいる。多くの吸収性物品は、表面シートと背面シートとの間に配置された流体吸収性コアを含む。一般には表面シートは、液体排泄時などに吸収性コアへの流体の移動を促進するのに適した流体透過性材料から形成されており、大抵、表面シートによる流体保持を最小限に抑えている。吸収性コアには普通、南米松の綿状パルプが、通常は繊維マトリックスの形態で、時 に繊維マットリックス全体に分散させた超吸収性ポリマー(SAP)と共に、使用される。この綿状パルプは、綿状パルプの長い繊維長、繊維のきめの粗さ、および湿式抄造して乾燥させたパルプシートからエアレイドウェブへのその相対的な加工しやすさなどの要因に基づいて、吸収性製品用の好ましい繊維として世界的に認識されている。この種のセルロース綿状パルプの原料は南米松(例えば、ロブロリー松、Pinus taeda L.,)である。当該原料は再生可能であり、そのパルプは生分解が容易である。SAPに比べてこれらの繊維は、質量あたりの基準で安価であるが、保液単位あたりの基準ではより高価である。これらの綿状パルプは大抵、繊維間の間隙内に吸収をする。このため、繊維マトリックスは圧力が印加されると、捕捉した液体を速やかに放出する。捕捉した液体を放出する傾向は、セルロース繊維のみから形成されたコアを含む吸収性製品の使用中に皮膚の著しい濡れを生じさせることがある。また、そのような製品は、液体がそのような繊維状吸収性コアの中に効果的に保持されないために、捕捉した液体を漏出させる傾向がある。
【0004】
SAPは、水膨潤性で一般に非水溶性の、流体吸収能の高い吸収材料である。それらは、体液を吸収および保持するために赤ん坊用おむつまたは大人用失禁用品のような吸収性物品に使用される。SAPは、流体を吸収すると膨張して、それを上回る重量のそのような流体を保持するゲルになる。一般に使用されるSAPは大抵がアクリル酸に由来するものである。アクリル酸系ポリマーもまた、おむつおよび失禁パッドのコスト構造の意味深い部分を構成する。SAPは、(負荷下吸収性すなわちAULが高いことによって実証される)高いゲル強度を有するように設計される。現在使用されているSAP粒子の(膨張時の)高いゲル強度は、それらが粒子間にかなりの空隙空間を保持するのを助け、それは流体を迅速に取り込むのに役立つ。しかしながら同時に、この大きな「空隙容積」は飽和状態の製品にかなりの(粒子間)間隙液体をもたらす。間隙液体が存在する場合、吸収性製品の「再濡れ」値または「濡れ感」が悪化する。
【0005】
また、いくつかの吸収性物品、例えばおむつまたは大人用失禁パッドは、吸収性コアへの流体排泄からの流体を捕集し均一かつ適時に分散させるための捕捉分散層(ADL)を含む。ADLは普通、表面シートと吸収性コアとの間に配置され、通常は複合布地の形態をとっており、当該布地の上部3分の1は大概、排出速度が比較的大きいときでさえも与えられた流体を効果的に捕捉するために、比較的大きな空隙および大きな空隙容積を有して低密度(高デニール繊維)になっている。ADLの複合布地の中間部3分の1は通常、
空隙の小さい高密度(低デニール)繊維で作られており、その一方で当該布地の下部3分の1は、いっそう高い密度(より低くより小さいデニール)の繊維で作られており、その上より微細な空隙を有する。複合材の密度の高い部分ほど、より多くのより微細な毛細管を有し、それゆえより大きな毛細管圧を発達させ、したがってより多い量の流体を構造体の外側領域に移動させ、したがって均一に流体を適切に導き分散させることを可能にし、限られた時間内で全ての液体排泄物を吸収性コアに取り込ませ、吸収性コアの中のSAPが排泄物を遅すぎることも速すぎることもなく保持しかつゲル化させるのを可能にする。ADLは、より迅速な液体捕捉を提供し(標的ゾーンにおける溢れを最小限に抑え)、吸収性コアの中への流体のより迅速な移動および完全な分散を確実にする。
【0006】
上記のとおり、吸収性コアは流体を保持するのに適しており、それ自体が1つ以上の層、例えば流体を捕捉、分散および/または保存する層から構成されていてもよい。多くの場合、エアレイドパッドおよび/または不織ウェブの形態などのセルロース繊維のマトリックスが吸収性物品の吸収性コアに(または吸収性コアとして)使用される。いくつかの場合において、種々の層は、1つ以上の異なる種類のセルロース繊維、例えば架橋セルロース繊維から構成されていてもよい。また、吸収性コアは、繊維マトリックスの全体に亘って大抵は粒子として分散した、1つ以上の流体保持剤、例えば1つ以上のSAPを含んでいてもよい。
【0007】
背面シートは通常、保持した流体が漏れ出るのを防ぐ障壁を形成するために、流体非透過性材料から形成される。
【0008】
どのような構造であっても、吸収性物品が1つ以上の液体排泄によって濡れる場合、流体が皮膚に接触する可能性が大いに高まり、長時間取り替えずに放置されると乳児のおむつかぶれまたは大人の皮膚炎をもたらすことがあり、それにより皮膚の健康上の危険をもたらす。しかし一般には、おむつまたは失禁パッドが乾いているか濡れているかを知る唯一の方法は物理的にそれを調べることである。これは、日中は重大な問題をもたらさないかもしれない、というのも介護人は所望の回数でおむつまたは大人用失禁用品を確認できるからである。しかし夜間に調べることは、赤ん坊だけでなく大人にとっても彼らの睡眠が邪魔されて不快なものになる可能性がある。しかも、夜間に頻繁に、例えば一晩に数回調べることは着用者の睡眠パターンを壊す可能性があり、それは赤ん坊だけでなく大人の患者にも健康上の危険をもたらす。
【0009】
加えて、おむつまたは吸収性物品の上には衣類、例えばパンツ、パジャマおよび/または下着を着るのが普通である。したがって、たとえ様々な種類の濡れおよび/または水分指示薬の組み込まれた吸収性物品であっても、排泄を適時に発見することは難しい。
【0010】
その結果、排泄とその発見との間には通常、時間差がある。この時間が延びると、おむつかぶれ、皮膚刺激および/または皮膚剥離に発展する可能性がある。これらの症状は罹患者にとって非常に苦痛なものとなり得る。これは特に、赤ん坊および介護施設にいる大人に当てはまり、特に、吸収性物品を取り替えるまでの時間が長くなることのある夜間の排泄に当てはまる。
【0011】
吸収性物品の中に組み込まれる従来の水分指示薬は、濡れ探知の視覚的表示として色の変化を用いている。液体との接触に基づいて出現または消失するインクは、濡れ探知のための一般的な機構である。また、液体の存在下で蛍光を発する化合物を組み込むことなどによって、濡れ探知のために蛍光が用いられてきた。そのような指示薬の機構は概して、3つの大まかな分類に入る:(1)吸収性物品の積層体のうちの1つ以上に水分表示模様を刻み込むこと;(2)吸収性物品の層間に組み込まれた、水分を表示する不連続な細片または層;および(3)使用直前に吸収性物品の内部に取り付けられる、不連続な(つま
り吸収性物品の構成の一部ではない)表示細片。
【0012】
どのような機構であっても、これらの視覚的指示薬はいずれも弱光(例えば夜間)の状況下では不十分である。出現または消失するインクは、介護人が吸収性製品を見ることができるように、直接視覚的に探知されなければならない。弱光状況下では、これには光源(例えば頭上照明または懐中電灯)だけでなく、覆っている衣服(例えばパジャマまたは下着)を取り去ることも必要となり得る。蛍光性指示薬は、それらが蛍光性化合物の励起のための外部光源を必要とするという点で、同様の問題を抱えている。そのような励起は、通常は指示薬を(着用者および介護人に健康上の懸念を提起する)UV光に曝すことによってもたらされ、蛍光性化合物と光学的に直接連通していなければならず、しかもそれは、覆っている衣服、毛布などを取り去ることを必要とする。したがって、吸収性衣服の濡れを探知するために従来使用されている視覚的指示薬を使用することは、弱光状況下で多くの欠点を抱えており、それは、それら指示薬の表示機構の有用性を大きく低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
吸収性物品のための濡れ探知に対するこれらの解決策はいずれも、夜間の排泄探知の必要性には不十分である。概して、どの技術も確実には作用せず、たとえ作用する場合であっても探知のためには直接光を当てる視覚的調査を必要とする。
【0014】
したがって、現在の吸収性物品は、介護人に夜間および/または衣服の下で起こる排泄に対する注意を促す場合には不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様において、綿状パルプ組成物を提供する。一実施形態において、綿状パルプ組成物は、綿状パルプおよび、水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む。代表的な化学発光系としては、例えば、ルシフェリンとルシフェラーゼとの反応などの生物発光系が挙げられる。また、綿状パルプ組成物を製造する方法も提供する。
【0016】
別の態様では、吸収性物品、および吸収性物品を製造する方法を提供する。一実施形態において、吸収性物品は、液体透過性の表面シート、液体非透過性の背面シート、表面シートと背面シートとの間に配置された綿状パルプ、および水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む。
【0017】
代表的な吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつおよび大人用失禁用品が挙げられる。
【0018】
本発明の上記態様およびそれに付随する多くの利点は、添付の図面と併せて解釈した場合に以下の詳細な説明を参照することによってそれがよりよく理解されるにつれて、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図1B図1Bは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図1C図1Cは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図1D図1Dは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図1E図1Eは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図1F図1Fは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図1G図1Gは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図1H図1Hは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系において有用な代表的なルシフェリン化合物の化学構造である。
図2A図2Aは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系のスペクトル特性をグラフで示す。
図2B図2Bは、本明細書に開示する実施形態による化学発光系のスペクトル特性をグラフで示す。
図3図3は、本明細書に開示する実施形態による代表的なルシフェリンのスペクトル特性をグラフで示す。
図4A図4Aは、本明細書に開示する実施形態による(おむつ形の)吸収性物品の非限定的代表例を示す。
図4B図4Bは、本明細書に開示する実施形態による(おむつ形の)吸収性物品の非限定的代表例を示す。
図4C図4Cは、本明細書に開示する実施形態による(おむつ形の)吸収性物品の非限定的代表例を示す。
図4D図4Dは、本明細書に開示する実施形態による(おむつ形の)吸収性物品の非限定的代表例を示す。
図5図5は、本明細書に開示する実施形態による例としての吸収性物品を写真で描写する。
図6図6は、本明細書に開示する実施形態による例としての吸収性物品を写真で描写する。
図7図7は、本明細書に開示する実施形態による例としての吸収性物品を写真で描写する。
図8図8は、本明細書に開示する実施形態による例としての吸収性物品を写真で描写する。
図9A図9Aは、比較上の吸収性物品を写真で描写する。
図9B図9Bは、比較上の吸収性物品を写真で描写する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
綿状パルプ組成物、吸収性物品および関連する方法を本明細書に開示する。綿状パルプ組成物および吸収性物品は、水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む。代表的な吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつおよび大人用失禁用品が挙げられる。代表的な化学発光系としては、例えば生物発光系が挙げられる。特定の実施形態では、吸収性物品に綿状パルプ組成物が組み込まれている。
【0021】
化学発光は、光を生じさせる化学反応の結果として生じ、それゆえ、弱光下および/または光の非存在下で服を通して見ることのできる光る水分表示を与える。さらに化学発光は、フォトルミネセンス(例えば蛍光)指示薬が必要とするような外部励起光を必要としない。したがって、開示の実施形態は、水性系(例えば尿)との接触の際に可視光を発生させることにより、暗い条件下(例えば夜間)において排泄の発生を表示する吸収性物品の能力を大いに向上させる。しかも、被服を通して見ることのできる光を発生させることにより、介護人は、例えば睡眠中の乳児または大人のそのような吸収性物品の着用者を動かすかまたは起こす必要なく排泄の発生を確認でき得る。したがって、本明細書において
提供される組成物および物品は、夜間に服を通して排泄を表示する際立った利点を提供し得、それは、介護人が排泄を調べるために吸収性物品を着用している者の睡眠を(例えば、服を引き下ろしかつ/または光を当てることによって)邪魔する必要性を軽減し得、またはなくしさえし得る。さらに、可視光が本明細書に開示の化学発光系によって生じるため、排泄が起こったか否かを判断するために吸収性物品および/または着用者をUV光に曝す必要がなく、UV照射に関連する健康上の懸念を回避することを可能にする。
【0022】
開示される綿状パルプ組成物および吸収性物品の実施形態の弱光探知を図5に示すが、それは、化学発光性の綿状パルプ組成物の組み込まれた吸収性物品(おむつ)の写真である。図5では、擬似排泄物(生理食塩水)を塗布して、弱光条件下での容易な目視探知のためにおむつ背面シートと軽量綿布とを通して光っている化学発光を示す写真を撮った。図5は比較のための図9Bと対照をなしており、図9Bは、化学発光性ではなく蛍光性の綿状パルプを使用して形成された類似の吸収性物品である。比較上の吸収性物品は、外部光源による励起が遮断されるため、おむつ材料を通して機能しない。したがって、蛍光性濡れ指示薬の活性化には、排泄を目視探知するために被服の除去などおよび励起光(例えばUV光)の適用が必要である。化学発光は、被服の除去も励起光も必要としない。
【0023】
排泄を探知できる容易さの向上は、必要な妨害が減るために介護人がより頻繁に排泄を確認することを可能にする。より頻繁な確認は、排泄をより早く探知すること、および排泄のすぐ後に吸収性物品を交換することを可能にし、それによって、着用者の皮膚に排泄物が接触する時間量を減らすとともに、多数の排泄からの流体が着用者の皮膚に接触する可能性を低くする。流体が皮膚に接触する時間の長さが短くなると、着用者の皮膚の健康および全体的な快適さが向上する。
【0024】
一態様では、綿状パルプ組成物が提供される。一実施形態において、綿状パルプ組成物は、綿状パルプおよび、水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む。
【0025】
化学発光系
化学発光系は、水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成される。水性系は、光を生じさせるべく化学発光反応を開始させる。本明細書において用いられる用語「水性系」は、水または含水組成物を指す。本開示との関連において、そのような含水組成物は通常、尿、経血、糞便などの体液の形態である。本明細書では、体液の放出の発生(またはその流体自体)のことを「排泄(物)」または「液体排泄(物)」または「流体排泄(物)」と呼ぶ。したがって、本開示の化学発光系は、当該系の組み込まれた吸収性物品に関する排泄の際に可視光を生じさせる。
【0026】
水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成されることにおいて、化学発光系は、水性系に接触したときに発光する少なくとも1つの化合物または材料を含む。一実施形態において、水は、化学発光を開始させる水性系の成分である。
【0027】
一実施形態において、化学発光系は、水性系に接触したときに発光する2つ以上の材料を含む。この実施形態では、水性系の存在なしでは一緒に発光しない2つ以上の材料がある。2つ以上の材料を含む代表的な化学発光系としては、生物発光系、例えば、ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む系が挙げられる。
【0028】
生物発光は、特定の生物種の体内または分泌物中で起こる化学反応によって生じる光である。生物発光は、光生成反応に2種類の物質の組み合わせを含む。生物発光には、少なくとも2つの異なる化学物質:ルシフェリンおよびルシフェラーゼが必要である。ルシフェリンは、光を実際に生じさせる化合物である。ルシフェラーゼは、その反応を触媒する
酵素である。いくつかの事例において、ルシフェリンは発光タンパク質として知られるタンパク質であり、光生成プロセスは、反応を活性化させるのに荷電イオン(例えば、カルシウムなどのカチオン)が必要である。発光タンパク質は、発光に必要な因子(ルシフェリンおよび酸素を含む)が単一体として結び付いたルシフェラーゼの変異型である。多くの場合、生物発光プロセスは、酸化反応を開始させるのに酸素またはアデノシン三リン酸(ATP)などの物質の存在を必要とする。ルシフェリンの反応速度は、ルシフェラーゼまたは発光タンパク質によって制御される。また、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応は、不活性なオキシルシフェリンおよび水などの副生成物を作り出すことができる。
【0029】
ルシフェリンおよびルシフェラーゼは、固有物質というよりはむしろ一般名称である。例えば、ルシフェリンであるセレンテラジン(天然型)は海洋性生物発光によく見られるが、変異型を化学合成することができ、これらの様々な型をまとめてルシフェリンと呼ぶ。別の例において、光合成によって食物を得る渦鞭毛藻類(海洋性プランクトン)は、クロロフィル構造に類似したルシフェリンを使用している。
【0030】
化学反応による光生成の機構は、生物発光をその他の光学現象、例えば蛍光または燐光と区別する。
【0031】
例えば、蛍光分子はそれら自体の光を発しない。それらは、電子を高エネルギー状態に励起するのに外部光子源を必要とする。それらは高エネルギー状態からそれらの自然な基底状態への緩和時に、それらが獲得したエネルギーを光源として放出するが、普通は波長がより長くなる。励起および緩和は同時に起こるため、照射(励起)された時にしか蛍光は見られない。
【0032】
燐光という用語は、技術的には、励起状態から基底状態への緩和が蛍光とは違って即時ではない光励起型発光の特殊な事例を指し、光子放出は最初の励起の後に数秒~数分間持続する。
【0033】
生物発光と蛍光との技術的相違は、実際との関連において時として曖昧であるが、技術的にはそれらは2つの別個の現象である。大抵の場合、生物発光は自家蛍光であることがあるが、その逆は蛍光には当てはまらない。後者は、光を発するために励起のための光子をなおも必要とする。いくつかの事例において、生物発光性の刺胞動物または甲殻類または魚類は、緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タンパク質を含有していることがあり、生物発光によって発せられた光はGFPを励起する光子として作用するであろう。そうしてGFPは、緩和状態下で、それが光子として受け取った生物発光の光の波長とは異なる波長(最もあり得るのはより長い波長)の光を発するであろう。この例では、GFPは、生物発光によって発せられた青色光(波長470nm)によって励起され得るが、今度はその緩和状態下で緑色光(510nm~520nmの波長)を発するであろう。
【0034】
生物発光系は、所望の化学発光を生じさせるいかなる様式でも綿状パルプ組成物または吸収性物品の中に組み込まれることができる。
【0035】
一実施形態において、綿状パルプ組成物または吸収性製品は、セレンテラジン、渦鞭毛藻類ルシフェリン、バクテリアルシフェリン、真菌ルシフェリン、ホタルルシフェリンおよびワルグリン(vargulin)からなる群から選択されるルシフェリンを含む。セレンテラジンに関しては多くの変異型が存在し、そのいずれも綿状パルプ組成物に使用できる。本開示に合致するセレンテラジンの特定の実施形態は、天然型セレンテラジン、メチルセレンテラジン、セレンテラジン400a(2-2’(4-デヒドロキシ))セレンテラジン、セレンテラジンe、セレンテラジンf、セレンテラジンh、セレンテラジンi、セレンテラジンn、セレンテラジンcp、セレンテラジンip、セレンテラジンfcp
およびセレンテラジンhcpのうちの1つ以上を含む。さらなる例として、セレンテラジンは、天然型セレンテラジン、セレンテラジン400a、メチルセレンテラジン、セレンテラジンf、セレンテラジンcp、セレンテラジンfcpおよびセレンテラジンhcpのうちの1つ以上であってもよい。他のさらなる例として、セレンテラジンは、セレンテラジン400a、メチルセレンテラジンおよびセレンテラジンfcpのうちの1つ以上であってもよい。他のさらなる例として、セレンテラジンは、セレンテラジン400a、メチルセレンテラジンおよびセレンテラジンhcpのうちの1つ以上であってもよい。他のさらなる例として、セレンテラジンは、セレンテラジン400aおよびセレンテラジンhcpのうちの1つ以上であってもよい。
【0036】
一実施形態において、ルシフェリンの濃度は綿状パルプの0.01~2重量%である。一実施形態において、ルシフェリンの濃度は綿状パルプの0.05~1.5重量%である。一実施形態において、ルシフェリンの濃度は綿状パルプの0.1~1重量%である。
【0037】
一実施形態において、綿状パルプ組成物または吸収性製品は、Gaussiaルシフェラーゼ(GLuc)、Renillaルシフェラーゼ(RLuc)、渦鞭毛藻類ルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、真菌ルシフェラーゼ、バクテリアルシフェラーゼおよびウミホタルルシフェラーゼからなる群から選択されるルシフェラーゼを含む。本開示に合致するルシフェラーゼの特定の実施形態は、Gaussiaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、渦鞭毛藻類ルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼのうちの1つ以上を含む。さらなる例として、ルシフェラーゼは、Gaussiaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、渦鞭毛藻類ルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼのうちの1つ以上であってもよい。他のさらなる例として、ルシフェラーゼは、GaussiaルシフェラーゼおよびRenillaルシフェラーゼのうちの1つ以上であってもよい。
【0038】
一実施形態において、ルシフェラーゼの濃度は綿状パルプの0.1~20重量%である。一実施形態において、ルシフェラーゼの濃度は綿状パルプの0.5~15重量%である。一実施形態において、ルシフェラーゼの濃度は綿状パルプの1~10重量%である。
【0039】
一実施形態において、化学発光系は、ルシフェリンとしてのセレンテラジンと、GaussiaまたはRenillaルシフェラーゼとを含む。
【0040】
代表的なルシフェリンとしては、例えば、セレンテラジンファミリーのルシフェリンが挙げられる。セレンテラジンは、その天然型およびその類似体において、それらの構造部分の多様性ゆえに様々な発光特性を有する。セレンテラジンファミリーのなかでの構造的変異を考えると、いくつかはルシフェラーゼの良好な基質であるが、いくつかはそうでない。以下に天然型セレンテラジンおよび代表的な類似体について手短に説明する。
【0041】
図1Aに示すセレンテラジン(天然型)は、Renillaルシフェラーゼの発光酵素基質である。Renillaルシフェラーゼ/セレンテラジンは、生物発光共鳴移動(BRET)研究において生物発光ドナーとしても用いられてきた。
【0042】
図1Bに示すセレンテラジン400aは、セレンテラジンの誘導体でありRenilla(reniformis)ルシフェラーゼ(RLuc)の良好な基質であるが、Gaussiaルシフェラーゼ(GLuc)を用いる場合には十分に酸化されない。それはBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)のための好ましい基質である、というのも、その400nmにある最大発光はGFP発光との干渉が最小限であるからである。
【0043】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、BRET、共鳴エネルギー移動(RET)およ
び電子エネルギー移動(EET)は、2つの感光性分子(発色団)の間でのエネルギー移動を表現する機構であり、通常は発光化学物質が別の発光化学物質のエネルギー移動に対して干渉することを定義したものであり、この結果として、基底状態に戻るときに放出される緩和エネルギーの観点から重要な、当該別の発光化学物質がとることのできるエネルギー状態が低くなる。ドナー発色団は、まずその電子励起状態において無放射の双極子カップリングによってエネルギーをアクセプター発色団へ移動させ得る。このエネルギー移動の効率はドナーとアクセプターとの間の距離の6乗に反比例し、FRETは距離の小さな変化に対して極めて高感度である。FRET効率の測定は、2つの発蛍光団が互いにある距離内にあるか否かを判定するために用いることができる。そのような測定は、生物学および化学を含めた分野における研究ツールとして用いられる。
【0044】
例えば、reniformisルシフェラーゼ(RLuc)の存在下でのセレンテラジン400aによるBRETをセレンテラジン(天然型)と比べると、図2Aおよび2Bに示すように、GFP発光に対する干渉が最小限となることが明らかに示され、これらの図において「hRluc」はRenillaルシフェラーゼとセレンテラジンhとの生物発光系であり、「FLuc」はRenillaルシフェラーゼと天然型セレンテラジンとの系であり、「lucroron」は、hRLuc生物発光からの発光に起因して蛍光を発する光子受容体としてGFP2を用いた、ルシフェラーゼとルシフェリンとの系であり、「GFP2」は緑色蛍光タンパク質(第2世代)である。
【0045】
図1Cに示すセレンテラジンcpは、セレンテラジン-イクオリン複合体において、セレンテラジン(天然型)よりも15倍高い発光強度を生む。
【0046】
図1Dに示すセレンテラジンfは、発光強度(セレンテラジン-アポイクオリン複合体)が天然型セレンテラジンよりも20倍高い一方、その最大発光は天然型のそれよりも約8nm長い。
【0047】
図1Eに示すセレンテラジンfcpは、セレンテラジンf構造のエレンテラジン(elenterazine)部分のo-ベンゼン構造を環状ペンタンで置き換えた(セレンテラジンcpに類似する)類似体である。セレンテラジンfcpは、発光強度がセレンテラジン(天然型)よりも135倍高い。
【0048】
セレンテラジンfcpは、イクオリンと複合体化してセレンテラジンfcp-アポイクオリン複合体を形成し、イクオリンの基質としての相対発光強度が天然型セレンテラジンの135倍である。しかしながらセレンテラジンfcpはRenillaルシフェラーゼにとって好ましくない基質である。
【0049】
Renillaルシフェラーゼ酵素の基質としてのセレンテラジンのその他の代表的な類似体は、図1F、1Gおよび1Hにそれぞれ示すセレンテラジンe、hおよびnである。これら3つの類似体は、Renillaルシフェラーゼの良好~優良な基質である一方、アポイクオリンにとって好ましくない基質である。
【0050】
セレンテラジン類似体の発光特性は様々である。例えば、特定の類似体は、(ルーメンとして測定される)より弱い光を発するものの、より高い発光強度(ルーメン/ステラジアン)を有する。表1は、Renillaルシフェラーゼによるセレンテラジン(天然型)およびその類似体の発光特性を一覧で示す。発光強度を初期強度%として報告する。例えば、900%の初期強度を有する類似体は、45%の天然型セレンテラジンに比べて初期強度が20倍強い。
【0051】
【表1】
【0052】
(天然型セレンテラジンよりも20倍高い発光強度を有する)セレンテラジンe、および天然型セレンテラジンの(規格化された)発光スペクトルを図3に示す。図3において、セレンテラジンe(実線)および天然型セレンテラジン(点線)は組換えRenillaルシフェラーゼ(RLuc)の存在下で測定されている。セレンテラジンeには、一方が波長(λem)418nm、他方が475の2つの強度ピークがあることに注目されたい。
【0053】
化学発光系によって可視光が生じる。可視光は、暗闇の中で被服を通して介護人により目視探知されることが可能であり、そのようなものとして可視光は、必要な表示を与えるのに十分な波長、強度および持続時間を有する。化学発光系のこれらのスペクトル特性は、1つ以上の化学発光性化合物に基づいて調節できる。例えば、生物発光系において、ルシフェリンおよびルシフェラーゼは、所望の光特性を生じさせるように選択できる。用いる生物発光系に応じて様々なスペクトル特性が生じる可能性がある。スーパーオキサイドアニオンおよび/またはパーオキシニトリル化合物の存在下で、セレンテラジンは酵素(ルシフェラーゼ)酸化とは無関係に光を発することもでき、これは自家発光として知られるプロセスである。
【0054】
化学発光系は、特定の色の可視光を生じさせるように調節できる。上の表1に記すように、セレンテラジンファミリーのなかでさえ発光波長は約400nm(紫)~約475nm(緑がかった青)の範囲に亘ることがある。
【0055】
持続時間に関して、発せられる光の持続時間は、セレンテラジン(ルシフェリン)を天然型かその類似体かで選択すること、および酵素(ルシフェラーゼ)を例えばGaussiaかRenillaかで選択することよって制御され得る。使用するルシフェリンおよびルシフェラーゼの比率および濃度もまた、発光の持続時間を改変し得る。例示的かつ非限定的な例を挙げると、ルシフェリン類似体であるセレンテラジンeは、天然型セレンテラジンに比べて130%の全光および900%の初期強度(図3参照)を有する。セレンテラジンeおよびRenillaルシフェラーゼの濃度を賢明に選択することによって、発せられる可視光の持続時間を8~10時間も続かせることができる。
【0056】
一実施形態において、可視光の持続時間は0.5~6時間である。別の実施形態において、可視光の持続時間は1~4時間である。別の実施形態において、可視光の持続時間は2~3時間である。
【0057】
強度に関して、化学発光の量子効率は発光の色の強度、濃さおよび色相に寄与する。
量子効率(QE)は、発光化学物質を励起してそれをより高いエネルギー状態へと上げるために使用される光子流束の割合である。量子効率は、検出器の質を評価するために用いられる最も重要なパラメータのうちの1つであり、その波長依存性を反映してしばしば「分光感度」と呼ばれる。それは、入射光子1つあたり作り出されるシグナル電子の数として定義される。いくつかの事例において、それは100%を超えることがある(つまり、入射光子1つあたり1つ以上の電子が作り出される場合)。分光感度が100%を超える場合、発せられる色の強度および濃さは鮮明になるが、発光の持続時間は主要な電子の励起状態の相対位置に応じて決まるであろう(つまり、励起状態が高いほど、基底(通常)状態に戻るのに多くの時間が掛かる)。
【0058】
分光応答度は類似した測定であるが、それは異なる単位を有し、測定基準がアンペアまたはワット(すなわち、所与のエネルギーおよび波長の入射光子1つあたりどれだけ多くの電流が装置から出てくるか)である。
【0059】
量子効率および分光応答度はいずれも光子の波長の関数である。例えば、ルシフェリンであるセレンテラジンの場合、天然型とその類似体の1つであるセレンテラジンeとを比べると、後者は大きな光強度を有するだけでなく前者よりも30%多い光エネルギーを放出する、というのも、後者は所与の入射光子の量子(hν)による励起に際して2つの電子を生成し、最初の波長475の電子は、天然型セレンテラジンと同じ発光強度を有するものの、ルーメン強度が天然型生成物のそれよりも20倍大きい。したがって、励起セレンテラジン類似体が発する光は天然型よりも20倍明るくなるであろうものの、130%の全光エネルギーは天然型よりも長く続くことになる。
【0060】
発せられる可視光の色は波長によって決まる。
一実施形態において、綿状パルプ組成物はルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む。そのような綿状パルプは、水性系との接触の際に発光するのに必要な化学発光系の両構成要素を有する。しかし別の実施形態において、綿状パルプ組成物は、ルシフェリンおよびルシフェラーゼから選択される少なくとも1つの成分を含む。そのような実施形態において、綿状パルプ組成物はルシフェリンおよびルシフェラーゼのうちの一方のみを含んでもよい。そのような綿状パルプ組成物を、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのうちの他方が吸収性物品の表面シートまたはその他の層に配置され得るように吸収剤物品の中に組み込んで、2成分が液体排泄物(例えば、表面シートを通じて綿状パルプ組成物の中に進入する水性系からの水)によって運搬される場合にのみ混ざり合うようにしてもよい。一実施形態において、綿状パルプ組成物はルシフェリンを含むがルシフェラーゼを含まない。一実施形態において、綿状パルプ組成物はルシフェラーゼを含むがルシフェリンを含まない。
【0061】
フォトルミネセンス化合物
一実施形態において、化学発光系は、化学発光系の化学発光波長範囲と重複するフォトルミネセンス吸収波長範囲を有するフォトルミネセンス(例えば蛍光および/または燐光)化合物を含み、フォトルミネセンス化合物は化学発光波長範囲とは異なるフォトルミネセンス発光波長範囲を有する。フォトルミネセンス化合物を使用して化学発光系の発光波長を「シフト」させることができる。例えば、フォトルミネセンスを用いて可視光の色(またはスペクトルのその他の性質)を変えるかさもなければ調節することができる。
【0062】
化学発光系は可視光を生じさせるが、化学発光自体が必ずしも可視スペクトル域内にある必要はない。化学発光はある波長範囲の電磁波を生じさせるが、開示の実施形態は可視域での化学発光に限定されない。したがって、特定の実施形態において化学発光系は、可視波長範囲内にない化学発光を生じさせ得る。そのような実施形態では、フォトルミネセンス化合物を使用して発光スペクトルを可視域内にシフトさせてもよい。
【0063】
一実施形態において、フォトルミネセンス化合物は、蛍光性化合物および燐光性化合物からなる群から選択される。蛍光性化合物としては、限定はしないが、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシンおよびテキサスレッドなどの、キサンテン誘導体;インドカトボシアニン(indocatbocyanine)などのシアニン誘導体;ナフテン誘導体;クマリン誘導体;ピリジルオキサゾールなどのオキサジアゾール誘導体;アントラキノンなどのアントラセン誘導体;カスケードブルーなどのピレン誘導体;プロフラビン、アクリジンオレンジおよびアクリジンイエローなどの、アクリジン誘導体;オーラミン、クリスタルバイオレットおよびマラカイトグリーンなどのアリールメチン誘導体;ポルフィンなどのテトラピロール誘導体;ビリルビン;銀で活性化された硫化亜鉛およびドープされたアルミン酸ストロンチウムなどの燐光性化合物などを挙げることができる。
【0064】
一実施形態において、フォトルミネセンス化合物は、綿状パルプの0.01~2.0重量%の量で存在する。一実施形態において、フォトルミネセンス化合物は、綿状パルプの0.05~1.5重量%の量で存在する。一実施形態において、フォトルミネセンス化合物は、綿状パルプの0.1~1.0重量%の量で存在する。
【0065】
フォトルミネセンス化合物は、綿状パルプの中に配置することができ、または吸収性物品に組み込む場合には隣接する層(例えば表面シート)の中に配置することができる。重要なことは、(発光波長および励起波長において)フォトルミネセンス化合物が化学発光と光学的に連通していることである。したがって、フォトルミネセンス化合物を吸収性物品の背面シート上に配置することさえできる。
【0066】
pH緩衝剤
一実施形態では、pH緩衝剤を綿状パルプ組成物に添加する。pH緩衝剤は、化学発光系の強度などのスペクトル特性を改変するように構成することができる。例えば、pH制御を用いて化学発光の効率を向上させることができる。化学発光の効率を向上させる例としては、例えば、排泄を探知する所望の時間量を介護人に与えるべく発光の持続時間を延長するかさもなければ改変することが挙げられる。したがって、一実施形態においてpH緩衝剤は、水性系との接触の際に化学発光系からの可視光の効率を高めるように構成される。
【0067】
一実施形態において、pH緩衝剤は、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、臭化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸マレイン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムおよびリン酸二水素カリウムからなる群から選択される。カルシウム塩は、化学発光反応の効率を高める上で特に効果的である。
【0068】
一実施形態において、綿状パルプ組成物は、pH4.0~8.5において水性系の緩衝作用をもたらすように構成されたpH緩衝剤を含む。一実施形態において、綿状パルプ組成物は、pH5.0~7.5において水性系の緩衝作用をもたらすように構成されたpH緩衝剤を含む。一実施形態において、綿状パルプ組成物は、pH5.5~6.5において水性系の緩衝作用をもたらすように構成されたpH緩衝剤を含む。
【0069】
pH緩衝剤は、綿状パルプの中に配置することができ、または吸収性物品に組み込む場合には隣接する層(例えば表面シート)の中に配置することができる。重要なことは、排泄に際してpH緩衝剤が化学発光系に接触することである。したがって、pH緩衝剤が綿状パルプの中にない場合には、排泄に際してpH緩衝剤が(例えば綿状パルプの中の)化
学発光系と接触することになるようにpH緩衝剤を吸収性物品の中に配置する。
【0070】
綿状パルプ
綿状パルプ組成物の綿状パルプは、いかなるパルプからも形成させることができる。一実施形態において、綿状パルプは、リグノセルロース繊維に由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、木材から得られるリグノセルロース繊維に由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、化学的、機械的、化学機械的または熱機械的手段によって木材から得られるリグノセルロース繊維に由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、化学蒸解によって木材から得られるセルロース繊維に由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、アルコール蒸解、オルガノソルブ蒸解、酸性サルファイト蒸解、アルカリ性サルファイト蒸解、中性サルファイト蒸解、アルカリ性過酸化水素蒸解、クラフト蒸解、クラフト-AQ蒸解、ポリスルフィド蒸解またはポリスルフィド-AQ蒸解のいずれかによって木材の化学蒸解から得られるセルロース繊維に由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、吸収性物品(綿状パルプ)を作製するためにアルコール蒸解、オルガノソルブ蒸解、酸性サルファイト蒸解、アルカリ性サルファイト蒸解、中性サルファイト蒸解、アルカリ性過酸化水素蒸解、クラフト蒸解、クラフト-AQ蒸解、ポリスルフィド蒸解またはポリスルフィド-AQ蒸解のいずれかによって上記パルプからリグニンをさらに取り除くことによって木材の化学蒸解から得られるセルロース繊維に由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、クラフト蒸解から得られるセルロース綿状パルプに由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、クラフト蒸解から得られるセルロース晒綿状パルプに由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、針葉樹のクラフト蒸解から得られるセルロース晒綿状パルプに由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、南米針葉樹のクラフト蒸解から得られるセルロース晒綿状パルプに由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、南米松のクラフト蒸解から得られるセルロース晒綿状パルプに由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、南米針葉樹に由来するものである。一実施形態において、綿状パルプは、南米松に由来するものである。
【0071】
綿状パルプ組成物は、乾燥させて6%~11%の範囲の含水量を達成する湿式シートなどのいかなる形態のパルプからも製造できる。
【0072】
別の態様では、綿状パルプ組成物を作製する方法を提供する。綿状パルプ組成物は、綿状パルプの中に化学発光系を組み込むことによって作製される。これは、化学発光系の1つ以上の成分で綿状パルプを処理することを可能にする様々な方法を用いて成し遂げることができる。綿状パルプの化学処理における1つの難題は、時期尚早に、例えば後に液体排泄物に曝露される吸収性物品の中に処理済綿状パルプを組み込む前に、意図された化学発光反応が引き起こされない状態で、化学物質を維持することである。化学物質は通常、ウェットエンドを適用するために水と混ぜ合わせて一緒に付着させることができない。したがって実例では、湿式抄造プロセスの間にルシフェラーゼまたはルシフェリンのいずれかをマイクロカプセル化して導入し、非カプセル化成分については吸収性物品製造中にエアレイド作業の前に塗工、浸漬または噴霧もしくは印刷(またはそれらの組み合わせ)などの標準的方法によって非水環境中でシートに付着させてもよい。別の実例では、吸収性物品製造中にエアレイド作業の前に、一方にルシフェラーゼ、他方にルシフェリンを含む2枚シートシステムを作製してさらに加工してもよい。さらに他の例では、化学物質のうちの一方を湿式抄造プロセスの間に添加して、他方を次のパルプ加工中に添加してもよく;または、綿状形態のパルプに対して各成分の非水溶液によるすすぎおよび/もしくはその噴霧を行うことなどによって、パルプに2成分をエアレイドプロセスの間もしくは前に添加してもよい。
【0073】
開示の実施形態による綿状パルプ組成物の形成については、実施例で詳しく説明する。
吸収性物品
一実施形態において、綿状パルプ組成物を吸収性物品の中に組み込むことができる。代表的な吸収性物品としては、子供用オムツ、大人用オムツ、大人用失禁用品、女性用衛生用品、吸収性敷パッドおよび創傷保護用品が挙げられる。例えば、綿状パルプ組成物を吸収性物品の1つ以上の吸収層または部分に組み込んでもよい。
【0074】
別の態様において、吸収性物品が提供される。一実施形態において、吸収性物品は、液体透過性の表面シート、液体非透過性の背面シート、表面シートと背面シートとの間に配置された綿状パルプ、および水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む。
【0075】
代表的な吸収性物品を図4Aにおむつ100として示す。しかしながら、以下の説明はあらゆる種類の吸収性物品に等しく適用可能である。図4Bを参照して、平らにした形状でおむつ100を示す。おむつ100は、広い吸収性領域110と、排泄の予想される標的領域120とを含む。
【0076】
図4Cは、標的領域120を通る横断面200を示す。横断面200において、おむつ100は液体透過性の表面シート210、液体非透過性の背面シート230、および捕捉分散層(ADL)220を含む。ADL220は、綿状パルプから形成されるかまたはそれを組み込んでいる。化学発光系は、おむつ100の標的領域120が排泄物を受け入れる際に化学発光を生じさせるように表面シート210、ADL220および背面シート230のうちの1つ以上の中に組み込まれる。
【0077】
図4Dは、図4Cで示すものに類似したおむつ100の断面200’を示すが、この場合、(例えば超吸収性ポリマーを組み込んだ繊維マトリックスから形成される)吸収性コア240をさらに含んでいる。ここでもまた、化学発光系は表面シート210、ADL220、吸収性コア240および背面シート230の層のうちの1つ以上の中に組み込まれる。吸収性コア240は、化学発光系またはその成分を含み得る。
【0078】
吸収性物品の化学発光系は、本明細書に記載するとおりである。しかしながら、化学発光系が全体的または部分的に綿状パルプの中に配置されている必要はないということが明らかである。
【0079】
一実施形態において、化学発光系はルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む。一実施形態において、ルシフェリンおよびルシフェラーゼはいずれも綿状パルプの中に配置される。別の実施形態では、2成分が(例えば表面シートまたはADLを通って綿状パルプ組成物の中に入る)液体排泄物によって運搬された場合にのみ混ざり合うように、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのうちの一方が綿状パルプの中に配置され、他方が吸収性製品の別の層(例えば表面シートまたはADL)の中に配置される。一実施形態において、綿状パルプはルシフェリンを含むがルシフェラーゼを含まない。一実施形態において、綿状パルプはルシフェラーゼを含むがルシフェリンを含まない。
【0080】
さらに別の実施形態において、化学発光系は背面シートの内面に配置(例えば印刷)される。
【0081】
一実施形態において、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのうちの一方は綿状パルプの中に配置され、他方は、表面シートに結合しており、かつ液体排泄物への曝露の際に綿状パルプの中へ移動するように構成される。
【0082】
一実施形態において、吸収性物品はさらに、本明細書において開示されるpH緩衝剤を
含む。一実施形態において、pH緩衝剤は綿状パルプの中に配置される。
【0083】
一実施形態において、吸収性物品はさらに、本明細書において開示されるフォトルミネセンス化合物を含む。一実施形態において、フォトルミネセンス化合物は綿状パルプの中に配置される。
【0084】
一実施形態において、吸収性物品はさらに、本明細書において開示されるフォトルミネセンス化合物およびpH緩衝剤を含む。一実施形態において、フォトルミネセンス化合物およびpH緩衝剤は綿状パルプの中に配置される。
【0085】
一実施形態において、pH緩衝剤、フォトルミネセンス化合物、ルシフェリンおよびルシフェラーゼは綿状パルプの中に配置される。
【0086】
一実施形態において、pH緩衝剤、フォトルミネセンス化合物、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのうちの少なくとも1つは、綿状パルプの中に配置されない。
【0087】
一実施形態において、吸収性物品はさらに、超吸収性ポリマー(SAP)を吸収性コアの中に組み込むなどして含む。そのような実施形態では、排泄物からの流体が吸収性コアへと移動する際に化学発光が発生するように、化学発光系の少なくとも1つの成分がSAPの中に配置され得る。
【0088】
一実施形態において、化学発光系は完全に吸収性物品の吸収性コアの中に入っている。吸収性コアは多成分系であることがほとんど常であるため、化学発光系を吸収性コアの中に組み込むための1つ以上の手法が存在する。例えば、綿状パルプ繊維を化学発光系の担体とすることができよう。あるいは、吸収性物品に組み込む超吸収性粒子の中に化学発光系を含有することができよう。
【0089】
さらに、SAP粒子または繊維の一部のみが化学発光系化学を含んでいるならば、審美的に快い模様など、所望の模様を獲得することができる。
【0090】
化学発光系は、製造時、または最終製品組立から完全に離れている上流プロセスの間に、綿状パルプ繊維に添加することができる。上述したように、例えば、ハンマーミリングに先立って化学発光系を綿状パルプシート上に噴霧するかあるいはその中に組み込んでもよい。
【0091】
別の態様では、吸収性物品を製造する方法もまた提供される。吸収性物品は、吸収性物品の中に組み込むべき化学発光系を本明細書に開示の様式で組み込むことを可能にする当業者に既知の一般的技術に従って製造される。
【0092】
以下の実施例は、例示を意図するものであり、限定を加えるものではない。
【実施例0093】
以下の段落では、組み込まれた化学発光系を有する綿状パルプ組成物を製造および試験する様式の例についての記述を提供する。また、蛍光のみの濡れ指示薬に対する比較試験についても記述する。その結果は、暗闇の中で濡れを探知するのに化学発光系が有益であることを例証する。化学発光は、それを組み込んだ吸収性物品のみならず被服をも通して見ることができる。比較上の蛍光のみの系は、付加的な励起光源が必要であり、被服を通した表示を与えない。
【0094】
実例となる試料に関しては、南米針葉樹パルプ繊維、例えば、Weyerhaeuse
r(ワシントン州フェデラルウェイ)から入手可能なシート形態のPW416を綿状にした。パルプの平均バルク密度は0.522g/ccと測定された。
【0095】
1000mlのメタノール(実験用試薬、純度≧99.6%、CAS179957)に、中等度~強度の撹拌をしながら上清溶液が得られるまで0.1g~1gのL-アスコルビン酸(ACS試薬 純度≧99.0%、CAS255564)を添加した。溶けていないアスコルビン酸塩が混じらぬよう上清溶液を移して、アスコルビン酸の透明なアルコール溶液を得た。その溶液を100ccごとの分量に分けて種々の処理のために使用した。アスコルビン酸のメタノール溶液に5mg~20mgの範囲でセレンテラジン(純度93%)を添加し、撹拌して完全に溶解させた。
【0096】
綿状繊維(一部である約1000g)をセレンテラジン溶液中ですすぎ、溶液を絞り出し、真空乾燥させてアルコールを回収した。乾燥させた綿状パルプに、Renillaルシフェラーゼ、Gaussiaルシフェラーゼまたは、RenillaおよびGaussiaルシフェラーゼタンパク質の50:50混合物のいずれかを付着させた(ルシフェラーゼの純度は15~20%)。ルシフェリンに対するルシフェラーゼの割合は、ルシフェリン1mgに対してルシフェラーゼ10mg~20mgと定めた。蛍光剤、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)については、単独処理とする場合または生物発光剤と組み合わせる場合のいずれにおいても同様の手順に倣った。
【0097】
7gの処理済綿状繊維ならびに、等量のルシフェリン-ルシフェラーゼ処理済SAP(7g)および未処理SAPを、6インチのエアレイド成形型に入れることによって吸収性コア材料を作製した。ルシフェリン-ルシフェラーゼ処理済のSAPおよび綿状パルプ、ならびにSAPが未処理であるがルシフェリン-ルシフェラーゼ処理済の綿を含有する、吸収性コアを、赤ん坊用おむつの一構成要素として使用して、赤ん坊用おむつを製造した。(尿によるおむつの濡れを模して)100mlの生理食塩水でおむつを濡らし、夜間照明(暗闇)の条件下で濡れの生物発光作用を目視で観察した。図5に見て取れるように、生物発光系は夜間の条件下で軽量綿布を通しておむつの濡れを効果的に表示する。光の強度はよく維持され、常に覆いの下で暗闇の中で探知するのに十分なものであることが認められた。
【0098】
より多い量のルシフェラーゼは、強度を増大させる傾向にあるが化学発光の持続時間を延長せず、より少ない量のルシフェラーゼは作用の持続時間を延長する傾向にあるが強度を増大させない、ということが認められた。
【0099】
また、他のおむつ構成要素(例えば、ADLまたはその一部、(吸収性コアに面する)背面シートの表層/内層、吸収性コアの中に使用されるSAPなど)も、記載した処理に供した。背面シートについては、背面シート全体をすすぐ代わりに、フォトルミネセンス材料有り無しでの1インチ幅のルシフェリン-ルシフェラーゼの薄層皮膜を付着させ、必要な材料のほぼ1/10をその層に費やした。全ての実施例は吸収性コア試料と同様に機能し、おむつに化学発光性濡れ探知を生じさせた。
【0100】
図6は、乾燥させた湿式シートの中への本開示による化学発光系の組み込みを例示するものであり、シートの中への流体の毛管上昇によって引き起こされる化学発光を示す。
【0101】
図7および8は、濡れた後の典型的な赤ん坊用おむつで発せられた可視光の強度を示す。
【0102】
比較例として図9Aは、いかなる生物発光化学物質の存在もなく暗闇の中でUV光により励起した場合での、ポリビニルアルコール基剤(シグマアルドリッチ、ミズーリ州セン
トルイス)中のTinopal(Greenville ColorantsからのElcowhite TS、ニュージャージー州ジャージーシティ)とローダミン(Greenville Colorants)との蛍光性混合物で処理したパルプの発光を実証する。図9B図9Aと同じであるが、この場合は図5の実施例を覆っているものに類似する軽量綿布で覆われたパルプを使用してUV光の下に置いている。図9Bではパルプを見ることができず、光が隠されて探知されないことを実証している。これは、UV光が蛍光化学系を励起するためにはそれがまず綿布を透過しなければいけないからである。したがって、外部光源が遮断されれば蛍光剤を励起して光を放出させることができない。通常、赤ん坊および大人の患者は彼らのおむつおよび大人用失禁用品の上に衣服を着ているか、かつ/または睡眠中に覆いを使用しているかのいずれかであるため、これらの材料は蛍光化学物質の励起に必要な光源を遮断することになり、夜間探知ツールとしてのその使用を制限する。加えて、蛍光剤の機能性はさらに悩ましいものである、というのも、多くの家庭用洗剤は衣類の白さを向上させるための蛍光増白剤を含有しており、おむつまたは大人用失禁用品が衣服またはその他の覆いの下で着用または使用されているとき、これらの蛍光増白剤がUV光を吸収してその結果、蛍光化学物質が励起され可視光を発する機会が奪われるからである。しかも当然のことながら、弱まったUV光によって蛍光を発する光は、視認されるためには布を通って戻ってこなくてはならない。
【0103】
化学発光はそのような条件を必要としない。さらに、特定の実施形態において開示されるように生物発光と蛍光化学とを組み合わせた場合、蛍光化学物質の励起を引き起こす光源は、蛍光化学物質と光学的に連通している生物発光によって内部で供給される。この場合、たとえ外部光源が利用可能でないかまたは完全に遮断されていても蛍光化学は生物発光の存在ゆえになおも機能するであろう。
【0104】
例示的な実施形態を示し記載してきたが、その中で本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であることが理解されよう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿状パルプおよび水性系との接触の際に可視光を生じさせるように構成された化学発光系を含む、綿状パルプ組成物であって、該化学発光系が、ルシフェリンおよびルシフェラーゼから選択される少なくとも1つの成分を含む、綿状パルプ組成物。
【外国語明細書】