(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133458
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】脂肪およびその医学的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/35 20150101AFI20220906BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220906BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220906BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220906BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220906BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220906BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220906BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220906BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20220906BHJP
【FI】
A61K35/35
A61P31/04
A61P29/00
A61P37/06
A61P11/00
A61P13/12
A61P21/00
A61P25/28
A61P25/20
A61P25/18
A61P3/02
A61K35/28
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110421
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2018559219の分割
【原出願日】2017-05-12
(31)【優先権主張番号】102016000049360
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】512299978
【氏名又は名称】リポジェムズ インターナショナル ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】トレモラーダ,カルロ フェルディナンド マリア
(72)【発明者】
【氏名】ロシュトー,ピエール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】全身性疾患、好ましくは敗血症に関連するかまたは敗血症によって引き起こされる全身性疾患の処置において使用するための組成物を提供する。
【解決手段】全身性疾患/状態の処置において使用するため、または全身性疾患/状態に関連する健康への有害な影響を改善するための、微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物を提供する。微小断片化脂肪は軽度の機械力を用いて、かつ溶液、好ましくは生理食塩水の存在下で、脂肪組織サンプルを小さいクラスタに漸進的に縮小することによって得られる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身性疾患/状態の処置において使用するため、または全身性疾患/状態に関連する健
康への有害な影響を改善するための、微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物
であって、前記全身性疾患/状態が、好ましくは、敗血症に関連するかあるいは敗血症に
よって引き起こされる、微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物。
【請求項2】
前記疾患/状態が全身性疾患/状態、炎症性疾患/状態、免疫疾患/状態、または慢性
疾患/状態であり、前記疾患/状態が敗血症疾患/状態によって引き起こされることが意
図される、請求項1に記載の使用のための微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組
成物。
【請求項3】
前記疾患/状態がプロスタグランジン合成および/または非COX標的に関係している
、請求項1または2に記載の使用のための微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組
成物。
【請求項4】
敗血症が急性期または後期であり、前記急性期の健康への有害な影響が体温の変化、サ
イトカインストームおよびプロカルシトニン上昇から選択され、前記後期の有害な影響が
、急性肺損傷、ショック、腎不全、筋力低下、認知機能障害、好ましくは、不眠症、悪夢
、鮮明な幻覚およびパニック発作、極度の疲労、集中力低下、精神機能の低下、自尊心お
よび自信の喪失、ならびに多臓器不全症候群から選択される、請求項1~3のいずれか一
項に記載の使用のための微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物。
【請求項5】
前記微小断片化脂肪が非酵素的な微小断片化脂肪であり、好ましくは、軽度の機械力を
用いて、かつ溶液、好ましくは生理食塩水の存在下で、脂肪組織サンプルを小さいクラス
タに漸進的に縮小することによって得られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用
のための微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物。
【請求項6】
前記微小断片化脂肪が、50~5000μm、好ましくは100~3000μm、より
好ましくは200~2500μm、より好ましくは300~1500μm、より好ましく
は400~900μmの範囲のサイズを有する脂肪クラスタを含有する、請求項1~5の
いずれか一項に記載の使用のための微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物。
【請求項7】
前記微小断片化脂肪が、間葉系幹細胞(MSC)および/または周皮細胞および/また
は脂肪幹細胞を含む脂肪クラスタを含有し、前記細胞が、好ましくは、その天然/無傷の
間質血管ニッチを維持する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための微小断片
化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物。
【請求項8】
前記微小断片化脂肪が、ヒト脂肪組織、より好ましくは、個体の下腹部および/または
側腹部領域からのヒト脂肪組織、より好ましくは単離/吸引脂肪組織に由来する、請求項
1~7のいずれか一項に記載の使用のための微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む
組成物。
【請求項9】
前記敗血症状態/疾患が炎症促進性分子の誤制御を伴い、前記分子が、好ましくは、I
L-1a、IL-1b、IL-2、IL-5、IL-6、IL-12、IL-17、GM
-CSF、IFN-g、MIP-1a、MIP-1b、RANTES、プロカルシトニン
分子およびクレアチンキナーゼおよびTNF-aから選択される、請求項1~8のいずれ
か一項に記載の使用のための微小断片化脂肪または微小断片化脂肪を含む組成物。
【請求項10】
前記微小断片化脂肪が、腹腔内、筋肉内、肺胞性、経鼻、肺内、くも膜下腔内、篩板(
篩骨篩板)経由(好ましくは、鼻腔経路を用いる)、またはリンパ投与のためのものであ
る、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための微小断片化脂肪または微小断片化
脂肪を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身性疾患、好ましくは敗血症に関連するかあるいは敗血症によって引き起
こされる全身性疾患の処置において使用するための、微小断片化(micro-frag
mented)脂肪組織または微小断片化脂肪組織を含む組成物に関する。
さらに、微小断片化脂肪組織または微小断片化脂肪組織を含む組成物は、全身性疾患、
炎症性疾患、免疫疾患、または慢性疾患を処置するために使用され、前記疾患は、敗血症
疾患の結果であることが意図される。
好ましくは、微小断片化脂肪組織は、敗血症の急性期(初期)および後期の両方を処置
するために有用である。
【背景技術】
【0002】
敗血症、または全身性炎症反応症候群は、感染によって誘発される生理学的、病理学的
、および生化学的な異常の症候群であると定義され、血管漏出、組織損傷、多臓器障害に
つながる全身性の制御されない炎症反応をもたらす。さらに現在、利用可能な処置があま
り有効ではないため、敗血症は症例の30%~40%において死に至る。
米国では、敗血症は年間200,000人を超える人々の死亡原因であることが報告さ
れている。
従って、敗血症は医療の全体的なコストを著しく増大させる。
最近では、敗血症患者の管理は良くなってきているが、敗血症関連の罹患率は上昇して
いる。例えば、半数の症例において、生存患者の状態は後天性ニューロミオパチーにより
複雑化され、患者は、筋力低下および筋肉消耗、エネルギー障害、ならびにタンパク質分
解のために、長期間にわたる身体障害に直面することがある。
敗血症に関連する有害な影響は、部分的に、組織および臓器に損傷を与える制御されな
いサイトカインストームに起因する。さらに、炎症経路の広範な活性化は、多臓器不全、
循環系の崩壊に進行し、かつ最終的には死に至る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記で報告された事項を全て考慮して、特に敗血症に関するこれらの種類の全身性疾患
を処置するための新規/代替の治療法を開発する必要性が依然として強く感じられている
。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、好ましくは腹腔内経路で、微小断片化脂肪組織を使用/投与することにより
、上記で報告された必要性を解決する。
実際に、本出願人は、驚くことに、例えば、微小断片化脂肪組織により処置された敗血
症患者が、敗血症に関連するかあるいは敗血症によって引き起こされる有害な影響の大部
分の低減を示すことを見出した。より興味深いことに、微小断片化脂肪組織の使用/投与
は、敗血症の急性期および後期の両方に特有の機能障害を回復させた。
微小断片化脂肪組織の使用/投与は、特に、臓器不全および/または傷害、筋力低下ま
たは認知機能障害などの敗血症に関連する長期にわたる影響の救済において有効である。
【0005】
実際に、本出願人は、微小断片化脂肪組織で処置したマウスにおいて、生存率の改善お
よび敗血症スコアの持続的な低下を観察した。さらに、処置マウスは、体温および生物学
的パラメータの正常化、炎症促進性サイトカインレベルの低下、ならびに抗炎症性サイト
カインレベルの上昇を示した。さらに、処置マウスは、肝臓および肺における免疫細胞の
浸潤の低下も示した。最後に、微小断片化脂肪組織の投与は、敗血症の後期に関連するニ
ューロミオパチーおよび筋力低下/筋肉消耗の回復を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】Lipogems(微小断片化脂肪組織)または生理食塩水を注射したCLPマウスにおける敗血症スコア(A~B)、ならびにLipogems(微小断片化脂肪組織)を注射したまたは注射しないLPS処置マウスにおける敗血症スコアおよび生存率(C~D)を示す。
【
図2】生理食塩水またはLipogems(微小断片化脂肪組織)を注射したCLPマウスの生存率(A)および体温(B)を示す。
【
図3】生理食塩水またはLipogems(微小断片化脂肪組織)を注射したCLPマウスにおけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(AP)、クレアチンキナーゼ(CK)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の血漿レベル(A);白血球数(B~C)を示す。
【
図4】Lipogems(微小断片化脂肪組織)を注射したまたは注射しないCLPマウスにおける炎症促進性サイトカインレベルを示す。
【
図5】Lipogems(微小断片化脂肪組織)を注射したまたは注射しないCLPマウスの肝臓および腎臓中のF4/80+、B220+およびCD3+細胞の数を示す。
【
図6】Lipogems、Lipogems+インドメタシン、Lipogems+SC-560およびLipogems+LS-398(Lipogems=微小断片化脂肪組織)を注射したCLPマウスの炎症性スコア(A)、生存率(B)、白血球数(C)、および炎症促進性サイトカインレベル(D)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第1の態様は、全身性疾患または全身性状態、好ましくは敗血症に関連するか
あるいは敗血症によって引き起こされる全身性疾患または全身性状態の処置において使用
するための微小断片化脂肪組織または微小断片化脂肪組織を含む組成物に関する。
言い換えれば、本発明によると、微小断片化脂肪組織は、全身性疾患または全身性状態
、好ましくは敗血症に関連するかあるいは敗血症によって引き起こされる全身性疾患また
は全身性状態に関連する健康への有害な影響、好ましくは敗血症に関連するかあるいは敗
血症によって引き起こされる長期にわたる影響を改善する(回復させるおよび/または救
済する)ために有用である。
従って、本発明の第1の態様は、全身性状態または全身性疾患、好ましくは、敗血症に
関連するかあるいは敗血症によって引き起こされる疾患/状態を処置するための方法に関
し、前記方法は、それを必要としている個体に、有効量の微小断片化脂肪組織または微小
断片化脂肪組織を含む組成物を投与する少なくとも1つのステップを含む。
疾患または状態は、好ましくは、全身性疾患/状態、炎症性疾患/状態、免疫疾患/状
態、または慢性疾患/状態であり、前記疾患/状態は、敗血症疾患/状態によって引き起
こされることが意図される。
【0008】
好ましい実施形態によると、疾患または状態は、プロスタグランジン合成および/また
は非COX標的に関係している。従って、状態または疾患は、非COX標的に媒介される
。
言い換えれば、疾患または状態は、COX、好ましくはCOX-2経路に関与しない。
実際、これらの酵素の阻害薬は、本発明の治療効果を損なわない。
【0009】
これに関連して、全身性状態または全身性疾患は、いくつかの臓器および組織、あるい
は身体全体にも影響を与える状態または疾患であると定義される。
これに関連して、敗血症は全身性炎症反応症候群も意味する。
これに関連して、敗血症または全身性炎症反応症候群は、血管漏出、組織損傷および/
または多臓器障害につながる全身性の制御されない炎症反応をもたらす感染を意味する。
特に、敗血症の後期には、これらの影響は、敗血症患者のニューロミオパチー、筋力低下
、エネルギー障害、タンパク質分解、筋肉消耗、かつ最後には死さえも引き起こし得る。
これに関連して、敗血症に関係する健康への有害な影響は、好ましくは、ニューロミオ
パチー、エネルギー障害、タンパク質分解、筋肉消耗、急性の腎臓および肝臓傷害、多臓
器不全、ならびに恐らく死から選択される。
【0010】
好ましくは、急性期の損傷効果は、体温の変化、サイトカインストーム(大幅で急速な
増大)およびPCT(プロカルシトニン)の上昇から選択される。
後期の有害な影響(または長期にわたる敗血症の影響)は、好ましくは、臓器不全およ
び/または傷害、急性肺損傷、ショック、腎不全、筋力損失および/または低下、認知機
能障害(不眠症、悪夢、鮮明な幻覚およびパニック発作、極度の疲労、集中力低下、精神
機能の低下、自尊心および自信の喪失)、ならびに多臓器不全症候群(MODS)から選
択される。
好ましくは、微小断片化脂肪組織は、非酵素的な微小断片化脂肪組織である。言い換え
れば、本発明において使用/投与される脂肪は、どんな酵素処理も用いずに微小断片化さ
れている。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態によると、微小断片化脂肪組織、好ましくは、吸引脂
肪組織は、Lipogems(登録商標)デバイスを用いることにより、より好ましくは
特許出願の国際公開第2011/145075号パンフレットに完全に開示されているプ
ロセスに従って得られる。
好ましくは、単離された脂肪はLipogems(登録商標)デバイスに導入され、軽
度の機械力を用いて、かつ溶液、好ましくは生理食塩水の存在下で、小さい組織クラスタ
に漸進的に縮小(断片化)される。
好ましくは、微小断片化脂肪は、50~5000μm、好ましくは100~3000μ
m、より好ましくは200~2500μm、より好ましくは300~1500μm、より
好ましくは400~900μmの範囲のサイズを有する脂肪クラスタを含有する。
より好ましくは、これらの脂肪クラスタは、間葉系幹細胞(MSC)および/または周
皮細胞、好ましくは、周皮細胞関連MSCおよび/または脂肪幹細胞および/または内皮
細胞および/または線維芽細胞および/または脂肪細胞を含む。脂肪クラスタ内へのこれ
らの細胞はそのニッチを維持し、これは、細胞がその天然/無傷の間質血管ニッチを維持
することを意味する。従って、有利に、これらの細胞は、間質によって、栄養および/ま
たはシグナル伝達に関して支持される。さらに、これらは、移植の間に侵襲性環境から、
かつ任意の物理的および化学的な外部侵襲(例えば、機械的、酸素など)から保護される
。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、非微小断片化組織、すなわち本出願および特許出
願の国際公開第2011/145075号パンフレットに開示される微小断片化プロセス
を受けなかった脂肪組織、好ましくは吸引脂肪組織と比べて、微小断片化脂肪組織、好ま
しくは微小断片化吸引脂肪組織は、微小血管の含量がより高く、好ましくは、CD31+
細胞の含量がより高く、より好ましくは、CD31+細胞の含量が5~10倍高い。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施形態によると、非微小断片化組織、すなわち本出願および
特許出願の国際公開第2011/145075号パンフレットに開示される微小断片化プ
ロセスを受けなかった脂肪組織、好ましくは吸引脂肪組織と比べて、微小断片化脂肪組織
、好ましくは微小断片化吸引脂肪組織は、より大きい血管の含量および/または周皮細胞
、すなわちNG2陽性細胞の数がより多い。
【0014】
従って、本発明の微小断片化脂肪組織、好ましくは微小断片化吸引脂肪組織は、好まし
くは、
- 50~5000μmの範囲のサイズを有する組織のクラスタ;ならびに/または
- 間葉系幹細胞(MSC)および/もしくは周皮細胞、好ましくは周皮細胞関連MS
Cおよび/もしくは脂肪幹細胞および/もしくは内皮細胞および/もしくは線維芽細胞お
よび/もしくは脂肪細胞;ならびに/または
- 好ましくは、血液残渣および炎症促進性の油性物質が存在しないこと
を含む。
【0015】
これらの細胞、好ましくは脂肪間葉系幹細胞は、CD44、CD73、CD90、CD
105、CD146およびCD166から選択される少なくとも1つ、好ましくは全ての
マーカーを発現し、好ましくは、OCT4、SOX2、NANOG、b-チューブリンI
II NESTIN、NEUROD1、MUSASHI1、PAX6、およびSOX3か
ら選択される少なくとも1つのマーカー、より好ましくは全てのマーカーも発現する。よ
り好ましくは、これらの細胞は、ネスチン、b-チューブリンIII、GFAP、および
O4を同時発現する。
制御された脂肪断片化は、デバイス内に含有される1つまたは複数の断片化/脱凝集(
disaggregation)手段の使用によって可能にされる。
好ましくは、この手段は金属手段、より好ましくは金属ビーズであり、前記ビーズは、
好ましくは、0,1~30ミリメートル、好ましくは1~20mm、より好ましくは5~
10mm、より好ましくは7,5~8,5mmの範囲のサイズを有する。
デバイスの制御された振とうにより、脂肪組織全体を通る断片化/分離(disgre
gation)手段の緩やかな移動が可能になり、従って、穏やかな脂肪の断片化/分離
が可能になる。
好ましくは、断片化/分離は、流動する生理食塩水緩衝液中、より好ましくは、油およ
び血液残渣の除去を可能にする生理食塩水緩衝液の連続的な流れの中で実施される。
【0016】
脂肪の断片化/分離ステップは、好ましくは、15~20分を要する。従って、本発明
の微小断片化脂肪組織は、穏やかで無酵素、無菌の手術中の迅速な操作を用いることによ
り得られる。
本発明の脂肪組織は、好ましくは、ヒトに由来する。
好ましい実施形態によると、脂肪組織はヒト脂肪組織であり、より好ましくは、個体の
下腹部および/または側腹部領域からのヒト脂肪組織、より好ましくは単離/吸引脂肪組
織である。
しかしながら、前記脂肪組織は、任意の有用な身体領域から単離することもできる。
好ましくは、脂肪組織、好ましくは微小断片化脂肪組織は、自家性または異種性である
。
本発明の好ましい実施形態によると、敗血症を患っている個体は人間である。
本発明のさらに好ましい実施形態によると、敗血症は院内感染であるか、あるいは敗血
症は細菌、真菌またはウイルス感染に関連する。
【0017】
好ましくは、本発明に従う敗血症状態/疾患は炎症促進性分子の誤制御を伴い、前記分
子は、好ましくは、IL-1a、IL-1b、IL-2、IL-5、IL-6、IL-1
2、IL-17、GM-CSF、IFN-g、MIP-1a、MIP-1b、RANTE
S、プロカルシトニン(PCT)分子およびクレアチンキナーゼ(CK)およびTNF-
aから選択されるが、これらに限定されない。
好ましくは、本発明に従う敗血症状態/疾患は抗炎症性分子の誤制御を伴い、前記分子
は、好ましくは、IL-4、IL-10、IL-13およびG-CSFから選択されるが
、これらに限定されない。
実際に、敗血症患者における微小断片化脂肪投与の後、抗炎症性分子は上方制御され、
炎症促進性分子は下方制御される。
従って、微小断片化脂肪は、好ましくはIL-1a、IL-1b、IL-2、IL-5
、IL-6、IL-12、IL-17、GM-CSF、IFN-g、MIP-1a、MI
P-1b、RANTESから選択されるがこれらに限定されない炎症促進性分子を減少さ
せるため、かつ/あるいは好ましくはIL-4、IL-10、IL-13およびG-CS
Fから選択される抗炎症性分子を増加させるために使用/投与することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によると、全身性疾患または状態、好ましくは、敗血症また
は敗血症に関連する(によって引き起こされる)状態の処置において使用するための微小
断片化脂肪は、腹腔内、筋肉内、肺胞性、経鼻、肺内、くも膜下腔内、篩板(篩骨篩板(
lamina cribra))経由(好ましくは、鼻腔経路を用いる)、またはリンパ
投与のためのものである。最も好ましい投与経路は腹腔内経路である。好ましくは、微小
断片化脂肪組織または微小断片化脂肪組織を含む組成物はそれ自体で投与されるか、ある
いはさらなる分子、好ましくは抗炎症薬および/または抗菌薬と組み合わせて投与される
。
【0019】
好ましい実施形態によると、投与は、さらなる処置:
- 感染部位における手術;および/または
- 好ましくは電解質の注射による、血行動態の再平衡化;および/または
- 心臓作用性(Cardiotropes)および/または血管作用性(vasoa
ctives)(例えば、カテコールアミンなど)分子の投与、および/または
- 好ましくは低用量のコルチコ療法(corticotherapy);および/ま
たは
- 好ましくは換気により援助される、呼吸、;および/または
- 血液透析および/またはインスリン療法、および/または
- 輸血
に関連するか、あるいはこれらに従う。
好ましくは、使用/投与は、現在の臨床業務の投薬に従って敗血症症状が現れてから最
初の6時間(医学界ではゴールデンアワーと呼ばれる)以内に行われる。あるいは、使用
/投与は、敗血症症状が現れてから数日および/または数週間後に行われる。
【実施例0020】
マウスおよび収容条件
全てのプロトコルは、動物愛護に関するフランスおよびヨーロッパの法令、ならびに公
衆衛生サービスの推奨を順守するために監督当局のパスツール研究所により審査された。
使用したマウスは、6~10週齢のオスC57Bl/6RJRJであった。いずれかの
所与の時点の炎症性スコアが21よりも高ければ、あるいは呼吸数または品質に起因する
ポイントが322を超えて増大したら、マウスを安楽死させた。特定されない限り、実験
ごとに使用した動物の総数は、非CLP対照については5匹、実験点CLPについては7
匹、およびCLP+Lipogems(登録商標)群については7匹であった。実験は常
に、独立して2回繰り返した。LPS負荷については、対照としてn=4の動物、LPS
としてn=8の動物、およびLPS+Lipogems(登録商標)群としてn=8の動
物を使用した。12:12の明/暗サイクルにおいて、温度および湿度が制御された病原
体を含まない施設内にマウスを収容した。食物および飲料を自由に与えた。全体を通して
、良好な実践実験研究のためのARRIVEガイドラインに従った。
【0021】
盲腸結紮穿刺(CLP)およびリポ多糖(LPS)注射
本研究において2つの敗血症マウスモデルを使用した:
1.盲腸結紮穿刺20(CLP)モデル
これは、6~10週齢のオスC57Bl/6RJRJにおける炎症のモデルとしてCL
Pにより誘発される腹膜炎で構成された。CLPモデルは盲腸の穿孔からなり、糞便物質
が腹膜腔へ放出されるようになり、複数細菌感染により誘発される免疫応答の増悪が生じ
る。輸液蘇生と共にCLPを受けるマウスは、第1の(早期)高心拍出量段階を示し、や
がて第2の(後期)低心拍出量段階に進行する。手術の前に、ケタミン(Imalgen
e1000 100mg/Kg Merial)およびキシラジン(Rompun 2%
20mg/Kg Bayer)により動物を腹腔内で麻酔した。開腹手術の後、4.0
縫合糸により盲腸を第3遠位において(at the distal third)結紮
し、遠位部分を21ゲージ針で2回穿孔した。全てのマウス群に水分を補給し、手術後4
日間、鎮痛薬(ブプレノルフィン(Buprenorphin)Axience 0.3
mg/kg)で1日2回処置した。
2.LPS投与
マウスの体重に応じて補正される0.9%NaCl中に保存された10mg/mlの源
液から10mg/Kgに達するようにLPSを腹腔内に投与した。この群は、主目的(炎
症性スコアおよび生存率)に対するLipogems(登録商標)の効果のみを確認する
ために実施した。
【0022】
両方のモデルにおいて、対照動物は、同じ用量のケタミン(Imalgene1000
100mg/Kg Merial)およびキシラジン(Rompun2% 20mg/
Kg Bayer)により腹腔内で麻酔しただけであった。全ての外科的処置は、午前中
に無菌フード下で実行した。
【0023】
Lipogems(登録商標)の収集
各患者は、手術組織の調査のための使用に対する異議なしのインフォームドコンセント
に署名した(そうでない場合は、破壊することになる)。個人データ保護承認のためのフ
ランス国家当局(French National Authority for Pe
rsonal Data Protection approval)の後に設定された
、将来を見越して保持されるデータベース上に患者のデータを集めた(Commissi
on Nationale Informatique et liberte:CNI
L.https://www.cnil.fr.Registration numbe
r 1922081-02.02.2016)。
【0024】
-ヒト脂肪組織の収集
伝統的な外科的脂肪吸引から得られる技術を用いる脂肪組織収集のためのドナー部位と
して下腹部または側腹部領域を選択した。1×2mmの複数の楕円孔がそれに沿って配置
された鈍い13Gカニューレを、脂肪組織収集のために使用した。10ccのシリンジと
接続したこの使い捨てカニューレにより、数回のカニューレストロークで高速かつ非侵襲
的な脂肪組織の収集が可能になる。選択領域から生理食塩水および1:1000エピネフ
リンによるチューメセント(tumescent)浸潤の10分後に脂肪組織を収集した
。
【0025】
-Lipogems(登録商標)デバイスによる脂肪組織の処理
収集した脂肪組織をLipogems(登録商標)閉鎖系において直ちに処理した。微
小断片化、洗浄、およびろ過の機械的プロセスは生理溶液中に完全に浸漬された系で行わ
れ、体積の減少を可能にすると共に細胞生成物に対する任意の外傷性作用を最小限にする
ために空気の存在が回避される。得られた生成物は、無傷の間質血管ニッチ内に保持され
た周皮細胞/MSCを含有し、移植後にレシピエント組織とすぐに相互作用することがで
きる。精製Lipogems(登録商標)脂肪組織を60ccのシリンジ内に採取し、過
剰の生理食塩水を除去するために、重力により穏やかにデカントするように配置した。次
に、Lipogems(登録商標)生成物をいくつかの1ccシリンジに移し、レシピエ
ントマウスの腹腔内に再注入した。
【0026】
シクロオキシゲナーゼ阻害薬
マウスにシクロオキシゲナーゼ阻害薬の注射を受けさせた(Lipogems(登録商
標)を送達するときに腹腔内に注射した)。インドメタシン(10mg/kgで使用され
るCOX酵素の非選択的阻害薬;Sigma-Aldrich,I7378,USA)、
またはSC-560(6mg/kgで使用されるCOX1の選択的阻害薬;Sigma-
Aldrich,S2064,USA)、またはNS-398(6mg/Kgで使用され
るCOX2の選択的阻害薬;Sigma-Aldrich,N194、USA)のいずれ
かにより注射を実施した。注射は8時間ごとに24時間実施した。全ての注射は体重補正
され、0.9%NaCl中で注射前に新たに調製された10mg/ml溶液から開始され
た。対照群には同体積の0.9%NaClを注射した。この実験セットのために、n=8
の敗血症CLPマウス、n=8の敗血症CLP+Lipogems(登録商標)マウス、
およびn=5の対照(非敗血症の注射なしマウス)を使用した。独立した実験を2回繰り
返した。
【0027】
Luminex(登録商標)(マルチプレックスイムノアッセイ)
ヘパリンコートしたEppendorfチューブおよびシリンジ内に心臓内穿刺から血
液を採取した。血液を4℃で10分間、1500rpmで回転させ、上澄み(血漿)を採
取して凍結した。凍結血漿を解凍し、Luminex(登録商標)複合サイトカインおよ
びケモカイン分析(Bio-Plex(登録商標)ProTM Mouse Cytok
ine Standard 23-Plex,Group IおよびStandard
9-Plex,Group II)のために処理した。炎症性サイトカインの研究は、対
照マウス、敗血症(CLP)マウス、Lipogems(登録商標)を注射した敗血症マ
ウスにおいて行った。この実験セットのために、n=7の敗血症CLPマウス、n=7の
敗血症CLP+Lipogems(登録商標)マウスおよびn=5の対照(非敗血症の注
射なしマウス)を使用した。
【0028】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色および免疫組織化学的検査
H&E分析のために、臓器を4%ホルムアルデヒド中で2日間固定し、60℃でパラフ
ィン中に包埋した。次に組織を50μmの切片にし、一晩乾燥させた。切片をヘマトキシ
リン中に30秒間浸漬させた。アルコール酸およびアンモニア水で洗浄した後、エオシン
中に15秒間浸漬させた。各ステップの後、蒸留水で切片をすすいだ。次に、増大する濃
度(70%、80%、95%、および100%)のアルコールによる処理で、切片を脱水
した。最後に、切片をキシレンで処理し、ガラススリップで被覆した。
免疫染色のために、標準技術を使用して、凍結した連続の10μm切片を調製した。全
ての組織をパラホルムアルデヒド4%で15分間固定し、PBSで洗浄した。次に組織を
PBS中で0.5%TritonX100および3%BSA(ウシ血清アルブミン)と共
に30分間インキュベートした。徹底的に洗浄した後、一次抗体を37℃のPBS中で1
時間インキュベートした。次に切片をPBSで洗浄し、室温で50分間、二次抗体に曝露
した(Histofine、正しい宿主に向けられたシンプルステインMax POペル
オキシダーゼポリマー)。全ての免疫組織化学染色と同時に負の対照(一次抗体なしの染
色)を実施した。組織学カウントのために、n=4の対照、n=5の敗血症マウス(CL
P)、またはn=5の敗血症(CLP)+Lipogems(登録商標)注射を使用した
。カウントは二重盲検で手作業により行った。使用した抗体リストは、次の:抗CD3、
Dako#A0452;抗CD4 Pharmigen#550280;抗F4/80
Invitrogen♯RM2600;抗CD45R(B220)Invitrogen
#A14748;抗ビオチン化 Jackson#712065150であった。
【0029】
測定
主要エンドポイント
主要エンドポイントは、CLPの24時間後の炎症性スコアの評価であった(表1)。
比較および確認の目的で、このスコアは、10mg/kgの腹腔内LPS注射マウスにお
いても24時間後に計算した。
【0030】
二次エンドポイント
測定した二次エンドポイントには、炎症後21日目までの生存および体温、アスパラギ
ン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(AL
AT)、アルカリホスファターゼ(AP)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)およびクレ
アチンキナーゼ(CK)の血漿レベル、白血球数、ならびにCLP後24時間および21
日目までの炎症促進性および抗炎症性サイトカインの血漿レベル、CLPの6時間後の肝
臓および腎臓中のF4/80+、B220+およびCD3+細胞の数が含まれた。
【0031】
データ分析
サンプルサイズは、有意な結果を得るために、これまでの実験および最小n値を基準と
した。骨髄間葉系幹細胞の注射後に動物の死において変動性の低い重要な違いが以前に観
察された。高グレードCLPの誘発後に65%の死が生じ、骨髄間葉系幹細胞の注射後に
5%に降下した。α=5%および90%の検出力で、n値=7になった。脂肪由来の間葉
系幹細胞が骨髄由来の間葉系幹細胞よりも効率的であり得る証拠(研究室および文献に基
づいて、骨髄由来間葉系幹細胞に対して脂肪間葉系幹細胞で観察された、より高いサイト
カインの降下のように実験的な証拠)が得られている。従って、n=8で十分なはずある
。体温、サイトカイン量および白血球数(平均±SDで表される)を除いて、各条件につ
いてデータは中央値[IQR]で表される。*P<0.05;**P<0.01;***
P<0.001;ns、各対照と比べて統計的に非有意。
【0032】
一重盲検(敗血症スコア、体温、Luminex)または二重盲検(臨床生物学、組織
学的検査)のいずれかでデータ分析を実施した。GraphPad Prismソフトウ
ェアを使用し、適切な試験(指定されない限り、ノンパラメトリックMann-Whit
ney)および有意性のための最低95%の信頼区間を用いて統計分析を実施した;図面
に表示されるP値は<0.05(*)、<0.01(**)、および<0.001(**
*)である。図面は、試験した全ての動物の中央値±信頼区間を示すか、あるいは他の実
験について表示される通りである。全ての動物を分析に含めた。
【0033】
敗血症マウスにおける炎症反応に対するLipogems(登録商標)の効果
主要エンドポイント
第1に、CLPまたはLPSの腹腔内注射のいずれかの24時間後の炎症性スコアを調
べた。
Lipogems(登録商標)を注射したCLPマウスの敗血症スコア(9[8-12
];p=0.006)は、生理食塩水を注射したCLPマウス(17[14-20] 図
1A)と比べて、有意に低下することが観察された。生理食塩水を注射したCLPマウス
では、炎症性スコアは5日間高いままであり(約16)、敗血症の誘発後7日目と9日目
との間に急激に低下した。生理食塩水を注射した敗血症マウス群では、敗血症の誘発後2
1日目にスコアは7[5-9]に達した(
図1B)。敗血症の誘発の21日後に、Lip
ogems(登録商標)を注射した敗血症群の炎症性スコアは3[2-5]であり、敗血
症未処置対照群または生理食塩水を注射した敗血症群の5[3-6]よりも低かった(p
=0.03;
図1B)。
【0034】
第2に、LPS処置マウスにおける炎症の24時間後の炎症性スコアを調べた。LPS
注射の24時間後に、Lipogems(登録商標)を注射した炎症性マウスの10[9
-11]に対して、炎症性マウス(LPSのみを注射)の炎症性スコアは16[15-2
0]に達した(p=0.0006、
図1C)。LPS負荷されたマウスは2日以内に限界
(21の炎症性スコアを有すると定義される)に達した(生存期間中央値)(
図1C,D
)。
【0035】
二次エンドポイント
Lipogems(登録商標)を腹腔内注射したマウスの生存率は、生理食塩水を注射
した敗血症マウスと比べて統計的に有意に改善された(65%対25%の生存マウス、炎
症の誘発の60日後 p=0.03;
図2A)。Lipogems(登録商標)を注射し
たCLPマウスは、生理食塩水を注射した敗血症マウスと比べて、より高い体温およびそ
の体温のより小さい降下を有した(それぞれ、36.3±0.6℃対34.9±0.98
℃)炎症の誘発の24時間後、P=0.004、
図2B)。体温の差は、炎症後14日目
まで保持された。炎症後19日目に、両方の群の体温は正常値に戻った(CLPおよびL
ipogems(登録商標)を注射したCLPでは36.9±0.38℃であるのに対し
、対照では37.2±0.3℃、p=0.34、
図2B)。
炎症の48時間後のLipogems(登録商標)を注射したマウスの生存率は、生理
食塩水を注射したLPSマウスでは生存期間中央値がわずか2[1-3]日であるのに対
して、71%であった(7匹の動物のうち5匹、その生存期間中央値は5[3-6]日(
生存期間中央値)、
図1D)(p=0.009;
図1D)。
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、アラニンアミノトランスフェ
ラーゼ(ALAT)、アルカリホスファターゼ(AP)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH
)およびクレアチンキナーゼ(CK)の血漿レベルは、非炎症性対照群と比較して、CL
Pマウスにおいて炎症の24時間後に統計的に高かった(
図3A)。Lipogems(
登録商標)を注射した場合、CLPマウスは、対照に近い生物学的パラメータを示した(
図3A)。CLPの24時間後に、白血球数の初期降下が観察された。これは、CLPマ
ウスにLipogems(登録商標)を注射したときには観察されなかった(
図3B、p
=0.0722)。CLPの誘発後の後期の時点では任意の試験条件の群の間で、白血球
数の違いは検出されなかった(
図3C、p>0.05)。
【0036】
サイトカインストームおよび臓器免疫浸潤に対するLipogems(登録商標)の効果
敗血症CLPマウスの血漿中、全てのサイトカインレベルは穿刺の24時間後に上昇し
た(
図3、表I)。以下の炎症促進性サイトカインレベルは、未処置のCLPマウスと比
べて、Lipogems(登録商標)を注射したCLPマウスにおいて有意に低下した:
IL-1a、IL-1b、IL-2、IL-5、IL-6IL-12、IL-17、GM
-CSF、IFN-g、MIP-1a、MIP-1b、RANTES、TNF-a(
図4
、表I)。炎症促進性IL-6に注目すると、未処置のCLP敗血症マウスと比較して、
Lipogems(登録商標)を注射した敗血症マウスにおけるそのレベルの低下が観察
された(29628pg/μl±6166に対して、9139pg/μl±4307、p
=0.0079、
図4、表I)。反対に、以下の抗炎症性サイトカインは増大することが
分かった:IL-4、IL-10、G-CSF(
図4、表I)。抗炎症性IL-4に注目
すると、未処置のCLPマウスと比べて、Lipogems(登録商標)を注射したCL
Pマウスの血漿レベルの有意な増大が観察された(16.91pg/μl±1.6に対し
て、23.96pg/μl±3.6、p=0.008、
図4、表I)。敗血症の誘発の2
1日後に、未処置の敗血症マウスと、Lipogems(登録商標)を注射した敗血症マ
ウスとの間に差は見出されなかった。
【0037】
【0038】
敗血症の誘発の6日後に、対照マウスと比べて、炎症性CLPマウスの肝臓におけるF
4/80+、B220+およびCD3+細胞数の増大も観察された。Lipogems(
登録商標)の注射の後、未処置のCLPマウスと比較して、F4/80(
図5A、p=0
.033);B220(
図5B、p=0.024);CD3(
図5C;p=0.035)
の数の有意な減少が観察された。また腎臓も、Lipogems(登録商標)注射の後、
試験した全ての免疫細胞型の全体的な減少を示した:F4/80(
図5D、p=0.00
14);B220(
図5E p=0.05);CD3(
図5F、p=0.03)。対照と
炎症性動物とを比較すると、炎症後に検出可能なGr1陽性細胞は見出されず、従って、
これらのマーカーは我々の分析に含まれないことが決定された。
【0039】
CLPの24時間後のLipogems(登録商標)効果に対するシクロオキシゲナーゼ
阻害薬の効果
Lipogems(登録商標)効果がCOX経路により媒介されるかどうかを理解する
ために、選択されたCOX阻害薬を同時投与してこれまでのプロトコルを繰り返した。詳
細には、CLPにより炎症を誘発し、敗血症の誘発の2時間後にLipogems(登録
商標)を注射し、CLPの24時間後にマウスを屠殺した。Lipogems(登録商標
)+インドメタシンの注射またはLipogems(登録商標)+NS-398の注射の
24時間後(それぞれ、炎症性スコア=16.50[15-18];p=0.001およ
び16.00[12-19] p=0.001)に、炎症性スコアは未処置の敗血症マウ
スと比較して変化しないことが見出された(
図6A)。しかしながら、Lipogems
(登録商標)の効果は、SC-560との同時注射の後に影響を受けなかった(炎症性ス
コア:9[8-12]Lipogems(登録商標)単独に対して、10[8-15]L
ipogems(登録商標)+SC-560;p=0.65
図6A)。Lipogem
s(登録商標)を、インドメタシン(生存率中央値26[22-29]日;p=0.12
)またはNS-398(生存率中央値21[18-24]日;p=0.09)のいずれか
と同時注射すると、より低い生存率が観察された。Lipogems(登録商標)単独、
またはLipogems(登録商標)+SC-560を動物に注射したときに、統計的差
異は検出されなかった(生存率中央値60[55-67]日;p=0.04、
図6B)。
Lipogems(登録商標)+インドメタシン(3986±1172の白血球/ml;
p=0.02)またはNS-398(4068±551の白血球/ml、p=0.01)
のいずれかを同時注射すると、Lipogems(登録商標)注射単独の場合(6307
±516の白血球/ml、
図6C)と比較して白血球数はCLPの3日後に降下した。L
ipogems(登録商標)とSC-560(6025±597の白血球/ml、p=0
.095
図6C)を同時注射したとき、白血球数の差は観察されなかった。Lipog
ems(登録商標)単独の場合と比べて、敗血症(CLP)マウスにLipogems(
登録商標)+インドメタシンを注射すると炎症促進性サイトカインIL-1、IL-2、
IL-5、IL-6、IL-17、IFN-g、MIP-1、TNF-aの血漿レベルが
増強された(
図6D、表II)。例えば、IL-6レベルは、Lipogems(登録商
標)+インドメタシンを注射した炎症性マウスでは14225pg/μl±1078であ
ったのに対して、Lipogems(登録商標)を注射した炎症性マウスの血漿中では9
151pg/μl±897であった(p=0.028、
図6D、表II)。特定のシクロ
オキシゲナーゼ-1阻害薬SC-560を用いると、Lipogems(登録商標)のみ
を注射したCLPマウスと比べて、IL-17の血漿レベルだけが増大したが、他の炎症
促進性サイトカインは全て変化しなかった(表II)。例えば、IL-6は8548pg
/μl±971の濃度を有し、Lipogems(登録商標)注射された炎症性マウスの
9151pg/μl±897と差はなかった(p=0.48、表II)。
【0040】
Lipogems(登録商標)+NS-398選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害薬
を同時注射すると類似の結果が得られ、CLP後およびLipogems(登録商標)の
みを注射した群と比べて、CLPの24時間後にIL-1、IL-2、IL-6、IL-
17、TNF-aの血漿レベルが増大した(
図6D、表II)。IL-6に注目すると、
Lipogems(登録商標)およびNS-398をマウスに同時注射したとき、CLP
の24時間後に12464pg/μl±2346の血漿濃度が観察された。これは、CL
PおよびLipogems(登録商標)単独注射マウスよりも高かった(9151pg/
μl±897;p=0.028、
図6F)。Lipogems(登録商標)およびインド
メタシンを炎症性マウスに注射すると、CLPの24時間後にIL-4およびIL-10
およびIL-13の血漿レベルの低下が検出された(
図6D、表II)。同様に、CLP
およびLipogems(登録商標)注射マウスにインドメタシンを同時注射すると、I
L-10の血漿濃度は2364pg/μl±2100であった。これは、CLPおよびL
ipogems(登録商標)のみで観察された濃度(8839pg/μl±1442;p
=0.028、
図6D、表II)よりも低かった。SC-560の注射は抗炎症性サイト
カインのレベルを変化させなかった(IL-10の場合、8120pg/μl±952.
2、p=0.48、
図6D、表II)が、NS-398の注射は、抗炎症性サイトカイン
IL-4、IL-10、IL-13の血漿レベルを低下させた(IL-10の場合、20
52pg/μl±1158、p=0.03、
図6D、表II)。
【0041】
【0042】
結論
上記に例示されたデータは、微小断片化脂肪(Lipogems(登録商標))の腹腔
内投与が、敗血症、特に急性期の敗血症の有害な影響を効率的に低減することを示す。
実際、データは、微小断片化脂肪で処置した敗血症マウスの生存率の改善および敗血症
スコアの持続的な低下を実証する。加えて、マウスの体温は37℃に近く、炎症促進性サ
イトカインのレベルは低下するが、抗炎症性サイトカインのレベルは上昇する。吸引脂肪
組織の腹腔内投与などの敗血症マウスのさらなる処置は同じ結果を示さなかった。
さらに、上記に報告されたデータは、Lipogems(登録商標)微小断片化脂肪が
プロスタグランジン経路により作用することを実証する。特に、COX-2の酵素活性は
その抗炎症性効果に不可欠である。実際、インドメタシン(強力なプロスタグランジン合
成の抑制因子)の投与は、敗血症マウスにおけるLipogems(登録商標)微小断片
化脂肪の投与の効果を遮断する。従って、Lipogems(登録商標)微小断片化脂肪
は、プロスタグランジン合成および非COX標的に影響を与える。
【0043】
敗血症マウスへの微小断片化脂肪組織の注射の長期にわたる効果
Lipogems抽出による微小断片化脂肪は、敗血症の急性期の炎症を減少させるこ
とが示された。敗血症の長期にわたる影響の1つは、1)5年間持続し得る筋力低下、お
よび2)認知機能障害であり得る。敗血症の誘発の数日後にLipogems(微小断片
化脂肪組織)がマウスに注射されると、ミクログリア細胞(脳の免疫細胞)はあまり損な
われないことが実験的に実証された。特に、Lipogems注射は、敗血症マウスの前
頭皮質および海馬におけるミクログリア細胞の脱分岐(deramification)
を低減し、従って、敗血症の慢性期におけるLipogems注射はミクログリア細胞の
挙動を改善する。
結論として、微小断片化脂肪の注射は、敗血症に関連する/敗血症によって引き起こさ
れる認知機能障害を防止または改善/低減することが示された。
さらに、Pax7+細胞の数を測定し、Lipogemsの後期投与の後に敗血症マウ
スにおけるサテライト細胞の低減を見出した。
前記疾患/症状が、敗血症によって引き起こされる、全身性疾患/症状、炎症性疾患/症状、免疫疾患/症状または慢性疾患/症状である請求項1の微小断片化脂肪を含む組成物。
敗血症が急性期または後期であり、前記急性期の健康への有害な影響が、体温の変化、サイトカインストームおよびプロカルシトニン上昇から選択され、前記後期の有害な影響が、急性肺損傷、ショック、腎不全、筋力低下、認知機能障害、不眠症、悪夢、鮮明な幻覚およびパニック発作、極度の疲労、集中力低下、精神機能の低下、自尊心および自信の喪失、ならびに多臓器不全症候群から選択される請求項1~3のいずれか一項に記載の微小断片化脂肪を含む組成物。
前記微小断片化脂肪が、軽度の機械力を用いて、かつ溶液又は生理食塩水の存在下で、脂肪組織サンプルを小さいクラスタに漸進的に縮小することによって得られる請求項1~4のいずれか一項に記載の微小断片化脂肪を含む組成物。
前記微小断片化脂肪が、200~2500μm、300~1500μm、200~900μm又は400~900μmの範囲のサイズを有する脂肪クラスタを含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の微小断片化脂肪を含む組成物。
前記間葉系幹細胞(MSC)、周皮細胞および/または脂肪幹細胞は、その天然/無傷の間質血管ニッチを維持する請求項1~6のいずれか一項に記載の微小断片化脂肪を含む組成物。
前記微小断片化脂肪が、個体の下腹部および/または側腹部領域から単離/脂肪吸引されたヒト脂肪組織に由来する請求項1~7のいずれか一項に記載の微小断片化脂肪を含む組成物。
前記敗血症状態/疾患が炎症促進性分子の誤制御を伴い、前記分子が、IL-1a、IL-1b、IL-2、IL-5、IL-6、IL-12、IL-17、GM-CSF、IFN-g、MIP-1a、MIP-1b、RANTES、プロカルシトニン分子およびクレアチンキナーゼおよびTNF-aから選択される請求項1~8のいずれか一項に記載の微小断片化脂肪を含む組成物。
前記微小断片化脂肪が、腹腔内、筋肉内、肺胞性、経鼻、肺内、くも膜下腔内、篩板(篩骨篩板)経由、鼻腔経路を用いた経路、またはリンパ投与のためのものである請求項1~8のいずれか一項に記載の微小断片化脂肪を含む組成物。