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特開2022-133468金属と樹脂とを接着する接着剤、接着剤層及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133468
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】金属と樹脂とを接着する接着剤、接着剤層及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/06 20060101AFI20220906BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C09J183/06
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110857
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2020170555の分割
【原出願日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】108136690
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520392122
【氏名又は名称】才将科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CJ Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】7F,No.200,Sec.1,Wenhua 1st Rd.,Linkou Dist.,New Taipei City 24447,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】余則威
(72)【発明者】
【氏名】▲ファン▼▲ハオ▼瀚
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属と樹脂を接続する接着剤、および前記接着剤で構成されている接着剤層を提供する。
【解決手段】アミノシラン化合物と、架橋剤と有機金属化合物とを含む、金属と樹脂とを接着するための接着剤を提供する。前記接着剤の総重量に基づいて、前記アミノシラン化合物の重量百分率が0.0001~3重量%であり、前記架橋剤の重量百分率が0.0001~1重量%であり、前記有機金属化合物の重量百分率が0.0001~1重量%である。特に、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤で構成される接着剤層における金属原子比率が50%未満である場合、高度な半導体パッケージングプロセスなどのパッケージングプロセスで使用できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属と樹脂とを接着するための接着剤であって、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤は、アミノシラン化合物と、架橋剤と、有機金属化合物と、水又は溶媒とを含み、前記アミノシラン化合物は、化学式(1)で表れる化合物であり、Rアミン基を有する炭素数1~10のアルキル基であり、Rは炭素数1~3のアルキル基であり、
(NH-R)-Si-(O-R (1)

前記架橋剤は、N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-N,N-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン又はそれらの任意の組合であり、
前記有機金属化合物は、化学式(4)で表される化合物であり、Mは、チタン、ジルコニウム及びイットリウムのいずれか1つであり、R炭素数1~5の直鎖アルキル基及び炭素数1~5の分岐鎖アルキル基のいずれか1つであり、
M-(OR(4)
前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の総重量に基づいて、前記アミノシラン化合物の重量百分率が0.0001~3重量%であり、前記架橋剤の重量百分率が0.0001~1重量%であり、前記有機金属化合物の重量百分率が0.0001~1重量%であり、前記水の重量百分率が10~50重量%又は前記溶媒の重量百分率が50~90重量%である、ことを特徴とする金属と樹脂とを接着するための接着剤。
【請求項2】
前記化学式(1)で表される化合物は、(N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ジエタノールアミン又はそれらの任意の組合である、ことを特徴とする請求項1に記載の金属と樹脂とを接着するための接着剤。
【請求項3】
前記金属と樹脂とを接着するための接着剤は、熱安定性接着層又は配線層を形成することに使用され、前記熱安定性接着層の金属原子比率(atomic ratio)が50%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の金属と樹脂とを接着するための接着剤。
【請求項4】
接着層であって、請求項1に記載の金属と樹脂とを接着するための接着剤で形成され、前記接着層は、フーリエ変換赤外スペクトルにおいて、660~690 cm-1、900~1100 cm-1、1100~1380 cm-1、1400~1500 cm-1及び3200~3400 cm-1の範囲の特徴的なピークを有し、かつ前記接着層の金属原子比率(atomic ratio)が50%未満である、ことを特徴とする接着層。
【請求項5】
前記金属原子比率は、銅原子比率、アルミニウム原子比率、チタン原子比率、ジルコニウム原子比率又はイットリウム原子比率である、ことを特徴とする請求項4に記載の接着層。
【請求項6】
前記接着層は、半導体構造の一部、回路基板の一部、液晶パネルの一部、又は発光ダイオード構造の一部である、ことを特徴とする請求項4に記載の接着層。
【請求項7】
金属の酸化を防止する方法であって、前記方法は、請求項1に記載の金属と樹脂とを接着するための接着剤を用いて金属の表面に薄層を形成することを含む、ことを特徴とする金属の酸化を防止する方法。
【請求項8】
前記金属は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金、ジルコニウム、または上記の金属のいずれかで構成される合金である、ことを特徴とする請求項7に記載の金属の酸化を防止する方法。
【請求項9】
前記薄層は、樹脂を接着する接着剤層であり、前記樹脂は、ポリイミド、エポキシ、アクリレート、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾシクロブテンまたはそれらの任意の組合である、ことを特徴とする請求項7に記載の金属の酸化を防止する方法。
【請求項10】
配線層の製造過程に応用される、ことを特徴とする請求項7に記載の金属の酸化を防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属と樹脂とを接着する、アミノシラン化合物と架橋剤と有機金属化合物とを含む接着剤に関する。特に、金属と樹脂とを接着するための接着剤からなる接着剤層の金属原子比率は50%未満である。これは、様々な電子製品のパッケージングプロセス、特に高度な半導体パッケージングプロセスで広く使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信及びスマートウェアラブルデバイス産業では、新製品のサイズおよび薄型設計に対する需要が高まっており、従来の半導体パッケージングプロセスはそれらの需要を満たすことができない。半導体パッケージング業界の技術開発を支配するために、高度な半導体パッケージングプロセス(統合セクターウェーハレベルパッケージングテクノロジー(InFO WLP)やシリコン貫通ビアシリコンビアパッケージングテクノロジー(TSV)など)は不可欠である。
【0003】
TSVプロセス技術では、再分布層(redistribution layer、RDL)を使用して、チップの表面にはんだバンプを分散させることを採用している。典型的な再配線層は、サンドイッチ構造であり、金属層は2つのパッシベーション層(passivation layer)の間には配置されている。当該パッシベーション層は、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリベンゾオキサゾール(polybenzoxazole、PBO)、ベンゾシクロブテン(benzocylobutene、BCB)、アクリル樹脂、又はエポキシ樹脂で構成されている。このパッシベーション層を用いて、金属層を保護する効果を奏している。しかし、金属層とパッシベーション層の間の不十分な接着は、TSVプロセスまたはその他の高度な半導体プロセスによって克服されるべき技術的問題である。そうのち、金属層、特に銅金属層は、パッケージングプロセス中の高温のために酸化され、酸化銅を形成することが多く、その結果、再配線層のプロセス歩留まりが低い場合がある。
【0004】
上述したように、高度な半導体パッケージングプロセスの歩留まりを改善し、技術的問題を解決することは、現在の高度な半導体パッケージングプロセスで早急に開発および研究する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような本発明の背景に鑑み、本発明の第1の目的は、業界の要求に応えるため、金属と樹脂を接続する接着剤を提供することである。前記金属と樹脂とを接着するための接着剤は、アミノシラン化合物と架橋剤と有機金属化合物とを含み、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の総重量に基づいて、前記アミノシラン化合物の重量百分率が0.0001~3重量%であり、前記架橋剤の重量百分率が0.0001~1重量%であり、前記有機金属化合物の重量百分率が0.0001~1重量%である。
【0006】
好ましくは、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の組成物には、0.0005~95重量%の水又は有機溶媒を含む。
【0007】
本発明の金属と樹脂とを接着するための接着剤は、金属と樹脂との間に三次元網目構造を形成して接着強度を向上させることができる。また、有機金属化合物に由来する金属をドープすることにより、水分、酸素及び高温による接着剤層の構造への損傷を効果的に防ぐことができる。これによって、銅再配線層プロセスなどの高度な半導体パッケージング技術での応用に特に適している。
【0008】
本発明の第2の目的は、接着剤層を提供することである。前記接着剤層は、本発明の第1の目的の前記金属と樹脂とを接着するための接着剤で構成されている。特に、前記接着剤層の金属原子比率(atomic ratio)が50%未満である。
【0009】
具体的には、前記接着剤層のフーリエ変換赤外スペクトルにおいて、660~690cmー1、900~1100cmー1、1100~1380cmー1、1400~1500cmー1及び3200~3400cmー1の範囲の特徴的なピークを有する。好ましくは、1550~1650cmー1及び2800~3000cmー1の範囲の特徴的なピークを有する。
【0010】
900~1200cmー1の範囲の特徴的なピークは、前記接着剤層には、ケイ素、酸素及び金属の結合(SiーOーM)、及びケイ素と酸素との結合(SiーOーSi)での結合により形成された三次元網目構造を有することを示している。
【0011】
上述した接着剤層には三次元網目構造を有することで、接着又はパッケージングプロセスにおける微量水分、空気又は高温による前記接着剤層の構造への損傷を防ぐため、前記接着剤層は、電子製品の一部構造として特に適用する。具体的には、前記接着剤層は、半導体構造の一部、回路基板の一部、液晶パネルの一部、又は発光ダイオード構造の一部である。
【0012】
本発明の第3の目的は、金属の酸化を防止する方法を提供することである。前記方法は、本発明の第1の目的の前記金属と樹脂とを接着するための接着剤を用いて、金属表面に薄層を形成するステップを含む。これによって、金属の酸化を防止することができる。
【0013】
具体的には、前記金属は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金、ジルコニウム、または上記の金属のいずれかで構成される合金を含む。
【0014】
上述したように、本発明によって提供される金属と樹脂とを接着するための接着剤は、アミノシラン化合物と架橋剤と有機金属化合物とを含む革新的な組成を含む。前記接着剤で構成された接着剤層が三次元網目構造を有することで、接着力を効果的に改善し、湿気、酸素、又は製造工程の高温による前記接着剤層の構造への損傷を防ぐことができる。このため、さまざまな高度な電子製品パッケージングプロセスに広く使用されることができる。また、上述した接着剤では、金属基材(metal substrate)が加熱工程又は樹脂接着過程における微量水分、空気又は高温による酸化で生成した金属の酸化物の生成を防ぐことができる。同時に、前記金属基材の接着面に気孔欠陥が発生しにくい。また、形成された接着剤層には、三次元網目構を有することで、高分子又は樹脂間の接着強度を効果的に向上させることができる。構成された接着剤層は、優れる熱安定性を有するため、高温接着又はパッケージングプロセスにおいて、本発明の接着剤層構造は損傷されず、接着またはパッケージングプロセスの歩留まりを改善する目的を達成することができる。したがって、本発明の接着剤は、電子製品のパッケージング産業を含むがこれに限定されない、金属と樹脂を接続する必要がある様々な関連産業での用途に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の成分Dで構成された接着剤層のFTIRスペクトルである。
図2】本発明の成分Dで構成される接着剤層のTEM EDX Lineスキャンスペクトルである。
図3】本発明の成分Eで構成される接着剤層のTEM EDX Lineスキャンスペクトルである。
図4】本発明の成分D構成された接着剤層のDSCスペクトルである。
図5】本発明の基材酸化防止の試験結果を示すグラフである。
図6】本発明の接着剤層の熱安定性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の前述及び他の技術的な内容、特徴及び効果は、図面を参照して好ましい実施形態に関する以下の説明において明確に提示されている。本発明をより明確に理解するために、詳細な製造工程及びそれらの構成を以下の説明にて提示している。本発明の実施は、当業者によく知られている特定の詳細に限定されない。一方、本発明の不必要な制限を回避するために、周知の構成要素または工程は、詳細に説明されていない。本発明の好適な実施例について詳細に説明するが、本発明はこれらの詳細な説明に加えて、他の実施形態においても実施可能であり、本発明の範囲に記載されているものには、限定されない。
【0017】
本発明の実施例1によれば、本発明は、金属と樹脂とを接着するための接着剤を提供する。前記金属と樹脂とを接着するための接着剤は、アミノシラン化合物と架橋剤と有機金属化合物とを含む。前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の総重量に基づいて、前記アミノシラン化合物の重量百分率が0.0001~3重量%であり、前記架橋剤の重量百分率が0.0001~1重量%であり、前記有機金属化合物の重量百分率が0.0001~1重量%である。
【0018】
ある実施例において、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の総重量に基づいて、前記アミノシラン化合物の重量百分率が0.5~1重量%であり、前記架橋剤の重量百分率が0.1~0.5重量%であり、前記有機金属化合物の重量百分率が0.2~0.8重量%である。
【0019】
ある実施例において、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤では、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の総重量に基づいて、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の組成物に0.0005~95重量%の水を含有する。好ましくは、水の重量%が10~50%である。
【0020】
ある実施例において、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤では、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の総重量に基づいて、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤の組成物に0.0005~95重量%の溶媒を含有する。好ましくは、前記溶媒の重量%が50~90%である。
【0021】
ある実施例において、前記溶媒は、プロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒である。具体的には、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、アミン系溶媒(NMP)、硫化ジメチル(DMSO)又は1,3ージメチルー2ーイミダゾリン(1,3ーdimethylー2ーimidazoline)などが挙げられる。
【0022】
ある実施例において、前記アミノシラン化合物は、化学式(1)で表される化合物であり、R1は、炭素数1~10のアルキル基またはアミノ基を含む炭素数1~10のアルキル基であり、R2は、炭素数1~3のアルキル基である
【0023】
【化1】

ある実施例において、前記アミノシラン化合物は、(3ーアミノプロピル)トリメトキシシラン((3ーAminopropyl)trimethoxysilane)、Nー[3ー(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(Nー[3ー(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、Nー(3ートリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1ー(3ーTrimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、1ー[3ー(トリメトキシシリル)プロピル)尿素(1ー[3ー(Trimethoxysilyl)propyl]urea)、トリメトキシ[3ー(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3ー(methylamino)propyl]silane)、(N,Nージメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン((N,NーDimethylaminopropyl)trimethoxysilane)、Nー(3ートリエトキシシリルプロピル)ジエタノールアミン(Nー(3ーTriethoxysilylpropyl)diethanolamine)、トリエトキシー3ー(2ーイミダゾリン)プロピルシラン(Triethoxyー3ー(2ーimidazolinー1ーyl)propylsilane)、トリメトキシシリルプロピルで修飾されたポリエチレンイミン(TRIMETHOXYSILYLPROPYL MODIFIED (POLYETHYLENIMINE))又はそれらの任意の組合せである。
【0024】
ある実施例において、前記架橋剤は、化学式(2)で表される化合物であり、Rは、炭素数1~10のアルキル基又は複数の官能基を含む炭素数1~10のアルキル基から選択される。前記複数の官能基は、アミン基、ヒドロキシル基、カルボニル基、芳香環基、又はシロキサン基の1つまたはそれらの組合せから選択される
【0025】
【化2】

ある実施例において、前記架橋剤は、テトラエトキシシラン(TEOS;(tetraethoxysilane))、N,Nービス[3ー(トリエトキシシリル)プロピル]アミン(Bis[3ー(trimethoxysilyl)propyl]amine)、N,N'ービス[3ー(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N,N'ーBIS[(3ーTRIMETHOXYSILYL)PROPYL]ETHYLENEDIAMINE)、N,N'ービス[2-ヒドロキシエチル]ーN,N'ービス[3ー(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N,N'ーBIS(2ーHYDROXYETHYL)ーN,N'ーBIS(TRIMETHOXYSILYLPROPYL)ETHYLENEDIAMINE)、化学式(3)で表されるポリマー又はそれらの任意の組合せから選択される。
【0026】
化学式(3)で表すポリマーは、以下である
【0027】
【化3】

ある実施例において、前記有機金属化合物は、化学式(4)で表される化合物であり、Mは、アルミニウム、チタン、ジルコニウム又はイットリウムであり、Rは炭素数1~5の直鎖アルキル基又は炭素数1~5の分岐鎖アルキル基である。
【0028】
【化4】

ある実施例において、前記金属と樹脂とを接着するための接着剤は、金属原子比率50%未満の熱安定性接着剤層、又は(新たな)配線層を形成するために使用される。
【0029】
本発明の実施例2によれば、本発明は、接着剤層を提供しており、前記接着剤層は、実施例1によって提供される前記金属と樹脂とを接着するための接着剤で形成され、前記接着剤層における金属原子比率(atomic ratio)が50%未満である。
【0030】
好適な実施例では、前記接着剤層の金属原子比率は、(atomic ratio)20%未満である。
【0031】
ある実施例において、前記金属原子比率は、銅原子比率、アルミニウム原子比率、チタン原子比率、ジルコニウム原子比率、又はイットリウム原子比率である。
ある実施例において、上述した接着剤層は、フーリエ変換赤外スペクトルにおいて、以下の特徴的なピーク(cmー1)を含む。660~690cmー1、900~1100cmー1、1100~1380cmー1、1400~1500cmー1、及び3200~3400 cmー1。好ましくは、1550~1650cmー1及び2800~3000cmー1の特徴的なピークを含む。
特に、特徴波長範囲の900~1200cmー1における特徴的なピークより、前記接着剤層には、ケイ素、酸素及び金属の結合(950~980cmー1;SiーOーM)、及びケイ素と酸素との結合(1000~1165cmー1;SiーOーSi)での結合により形成された三次元網目構造を有することを示している。
【0032】
上述したFTIRスペクトルでは、本発明により提供される接着剤層は、化学式(5)に示される構造を含むSiーOーM及びSiーOーSiの結合により架橋される三次元網目構造であることが特定される。
【0033】
【化5】

前記Mは金属原子であり、Oは酸素原子であり、A、B、C、Dは、それぞれ、アミノシラン化合物(NHーR)ーSiー(OーR又は架橋剤Siー(OーRと、有機金属化合物Mー(ORとの縮合反応により形成されたSiーOーM結合であり、A、B、C、D間は、縮合反応によりSiーOーSi結合を形成する。
【0034】
ある実施例において、前記接着剤層は、半導体構造の一部、回路基板の一部、液晶パネルの一部、又は発光ダイオード構造の一部である。
【0035】
本発明の第3実施例によれば、本発明は、金属の酸化を防止する方法を提供しており、当該方法は、例えば、実施例1に記載の金属と樹脂とを接着するための接着剤で金属表面に薄層を形成することを含み、これによって、金属の酸化を防ぐことができる。
【0036】
ある実施例において、前記金属は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金、ジルコニウム、または上記の金属のいずれかで構成される合金を含む。
【0037】
ある実施例において、前記薄層は、樹脂を接着する接着剤層であり、前記樹脂は、ポリイミド、エポキシ、アクリレート、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾシクロブテンまたはそれらの任意の組合である。
【0038】
ある実施例において、前記金属の酸化を防止する方法は、新たな配線層を形成することに適用され、特に、半導体パッケージングプロセスで使用される銅配線層を形成することに適用される。
【0039】
以下の実施例は、上述した実施例に記載された内容に基づく評価測定を行い、本発明の詳細の説明として用いられている。
【0040】
・接着剤層を製造するためのステップ(共通)
本発明の接着剤は、浸漬法または噴霧法によって金属基板(銅ブロックなど)と樹脂(ポリイミド(PI))との間に注入されるか、又は、最初に金属基板上に塗布して、次に樹脂を接着するように使用しる。操作時間が1.5~5分であるが、形成する必要のある接着剤層又は塗布層の厚みによって操作時間を調整しても良い。操作終了後、乾燥法により接着剤中の溶媒を除去する。次に、形成された接着剤層又は塗布層の特性を分析・測定する。
【0041】
表1に示す接着剤成分の接着剤層をそれぞれ調整する。そのうち、成分A及びHは、有機金属化合物を添加していない比較例であり、成分Bは、架橋剤を添加していない比較例であり、他の実施例(実験例)である。
【0042】
表1に示すNー(3ートリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンは、以下の化学式(6)に示す構造を有する
【0043】
【化6】

表1に示すNー(3ートリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンは、以下の化学式(7)に示す構造を有する
【0044】
【化7】

表1に示すN,Nービス[3ー(トリエトキシシリル)プロピル]アミンは、以下の化学式(8)に示す構造を有する
【0045】
【化8】
【0046】
【表1】
【0047】
・接着剤層の構造分析(一):FTIR分析
フーリエ変換赤外スペクトル分析により、接着剤層の結合について、次の波数範囲に特徴的なピークが表れる:660~690cmー1(ーSiーOーSi bending)、900~1100cmー1(mixed network of SiーOーM (950ー980cmー1) and SiーOーSi (1000~1165cmー1)、1100~1380cmー1(SiーC, ーCーN, ーCーCー, CーH in SiーCH)、1400~1500cmー1(CH in SiーCH)、1550~1650cmー1(ーNH)、2800~3000cmー1(ーCH)及び3200~3400cmー1(ーOH,ーNH stretch)。
【0048】
ある実施例においては、成分Dで構成された接着剤層のFTIR分析スペクトル、及び官能基又は化学結合の同定は、図1に示されている。
【0049】
・接着剤層の構造分析(二):TEM分析
接着剤層の断面は、透過型電子顕微鏡を使用して分析され、それに含まれる元素の原子比率が測定された。そのうち、成分Dで構成された接着剤層のTEM EDX Lineスキャンスペクトルは、図2に示されている。そのジルコニウム原子比率が5%であり、成分Eで形成された接着剤層のTEM EDX Lineスキャンスペクトルは、図3に示されている。そのアルミニウム原子比率が30~40%である。
【0050】
・接着剤層の熱量分析:DSC分析
示差走査熱量測定(DSC)は、材料構造と熱エネルギー変化との関係を調べるための重要なツールであり、DSC分析は、熱に対する材料の感度を観測することができ、且つ例えば材料の融点や発熱化学反応の有無などの熱エネルギーによる材料の構造変化があるかどうかを理解できる。図4は、成分Dで構成された接着剤層のDSCスペクトルを示している。明らかに、1回目の25~350℃の加熱プロセス及び2回目の25~350℃加熱プロセスで放熱現象は観察されず、その構造は非常に安定しており、加熱又は高温によって構造が変化しない、又は、反応して反応熱を放出しないことを示している。これにより、本発明の接着剤層は、非常に優れた熱安定性を有する。
【0051】
・基材酸化の防止に関する実験
本実験で使用した基材はCu/Siである。測定条件は、空気中で直接フラットヒーターを用いて、上述した成分A、B、C及びDのそれぞれがCu/Siに形成された塗布層を150℃及び190℃に加熱し、10分間維持することである。その後、外観の色変化を観測する。未酸化の銅をレベル1(Level 1)とし、銅が酸化第1銅に酸化されると、色は真鍮から濃いオレンジ色に変化した場合をレベル2(Level 2)とし、さらに酸化されると、褐色の酸化銅となり、その酸化度をレベル3(Level 3)とし、最終的に緑色の塩基性炭酸銅または塩基性硫酸銅が生成した場合、その酸化度をレベル4(Level 4)とする。試験結果は表2及び図5に示されている。有機金属化合物を添加していない成分A、及び架橋剤を添加していない成分Bの塗布層の銅の酸化度は、レベル2以上に達していることは分かる。この結果は、上述した成分A及びBは、基材酸化の防止効果を有せず、成分を塗布していない基材の酸化度は4に達している。しかし、本発明の前記成分C及びDを使用する基材は、試験条件下で酸化度がレベル1を維持する。すなわち、基材が酸化されていないことは分かる。これによって、本発明の接着成分は、非常に優れる基材酸化防止の性能を有することは分かる。つまり、本発明の接着剤の組成は、金属基材の酸化防止効果に優れている
【0052】
【表2】
【0053】
・接着剤層の熱安定性試験
本試験は、浸漬塗布法(dip coating)により、金属基材とPI樹脂との間の接着剤層を形成する。硬化条件は、230℃で2時間であり、使用された成分は、上述した表1のC、D、E、F、G及びHであり、熱安定性試験の条件は、オーブンで260℃まで加熱され、1分間保持された後、常温に戻されることを1回のサイクルとみなされ、合計20回繰り返される。
【0054】
酸化度(Oxidation level)は、生成された酸化銅の厚さの尺度であり、ボイドレベル(Void level)は、銅基材とPI樹脂との間の培土の割合であり、そのボイドの生成原因は、熱応力緩和(thermal stress relaxation)で生成される。ボイドレベルが高いほど、接着剤層の構造が不安定になり、その接着強度は、加熱サイクルの回数に従って低下する。外観形態(Morphology)は、銅基材(銅ブロック;Cu bump)の形状を指す。ねじれた(twisted)形状を形成する理由は、接着剤層が銅とPI樹脂との熱膨張係数に起因する熱応力を効果的に吸収できないためである。試験結果は、表3及び図6に示されている。成分Dの気孔率が1%であり、外観形態が歪んでいない(Normal)。有機金属化合物を添加していないH成分で構成された接着剤層の気孔率が95%である。これによって、有機金属化合物を添加していないH成分で構成された接着剤層の熱安定性が最も悪く、有機金属化合物を添加した成分で構成された接着剤層は良好な熱安定性を維持できる。熱安定性として、有機ジルコニウム金属化合物を含有する成分Dで構成された接着剤層が特に好ましい
【0055】
【表3】
【0056】
以上、特定の実施例を用いて本発明を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の要旨から逸脱しない限り、当業者は、本発明の意図および範囲から逸脱することなく様々な変形又は変更がなされ得ることを留意されたい。また、要約書及び発明の名称は、関連技術を検索するためにのみ使用され、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6