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特開2022-133490電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133490
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/20 20210101AFI20220907BHJP
【FI】
H01M2/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019143425
(22)【出願日】2019-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山城 豪
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA18
5H040AS01
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC20
5H040CC34
5H040LL01
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で金属カラーを効果的に絶縁し、装置の絶縁抵抗を高く維持する。
【解決手段】電源装置は、複数の角形の電池セル1を積層してなる電池積層体10の中間に中間プレート3積層し、両端部に一対のエンドプレート4を配置し、エンドプレート4及び中間プレート3にバインドバー2を固定しており、中間プレート3の両側に設けた金属カラー31と、バインドバー2を中間プレート3に連結する固定具14と、中間プレート3の側面に固定した絶縁プレート15とを備えている。中間プレート3は、絶縁性のプラスチック成形体30で構成してなり、金属カラー31の周囲を囲む環状リブ32を側面に一体成形している。環状リブ32の開口縁に絶縁プレート15を固定して環状リブ32の開口部を閉塞し、環状リブ32と絶縁プレート15で、金属カラー31の外側を絶縁して、固定具14を絶縁プレート15に貫通して金属カラー31に連結している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角形の電池セルを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の中間に積層してなる中間プレートと、
前記電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記エンドプレート及び前記中間プレートの両側面に固定してなるバインドバーとを備える電源装置であって、
前記中間プレートの両側に設けてなる金属カラーと、
前記バインドバーを、前記金属カラーを介して前記中間プレートと連結する固定具と、
前記中間プレートの側面に固定してなる絶縁プレートとを備え、
前記中間プレートは、
両側部又は全体を絶縁性のプラスチック成形体で構成してなり、
前記プラスチック成形体は、
前記金属カラーの周囲を囲む環状リブを側面に一体的に成形して設けており、
前記環状リブの開口縁に前記絶縁プレートが固定されて、
前記絶縁プレートが、前記環状リブの開口部を閉塞して、
前記環状リブと前記絶縁プレートが、前記金属カラーの外側を絶縁しており、
前記固定具が前記絶縁プレートを貫通して前記金属カラーに連結されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記環状リブの開口縁が前記絶縁プレートの内面に密着されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記絶縁プレートが、前記環状リブの開口縁を嵌入する嵌合溝を内面に備えており、
前記環状リブの開口縁が前記嵌合溝に嵌合構造で連結されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載される電源装置であって、
前記金属カラーが前記中間プレートのプラスチック成形体にインサート成形して固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載される電源装置であって、
前記固定具が止ネジで、
前記金属カラーが前記止ネジがねじ込まれる雌ネジ孔を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかに記載される電源装置であって、
前記中間プレート全体がプラスチック成形体であることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれかに記載される電源装置であって、
前記金属カラーが貫通穴を有し、
前記固定具が、
前記中間プレートの両側に固定してなる前記金属カラーの貫通穴と、前記中間プレートとを通過して、
前記バインドバーに固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角形電池セルを積層している電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を用いた電源装置が車両の駆動用電源等の用途で利用されている。このような電源装置は、図15の分解斜視図に示すように、複数枚の電池セル901を積層している電池積層体910の端面にエンドプレート904を配置し、エンドプレート904を左右一対のバインドバー902で締結する構成が一般に採用されている。このような電源装置900において、出力を向上させるためには、電池セル901の数を増やすことが挙げられる。
【0003】
しかしながら、上記のようなエンドプレート904とバインドバー902を用いた構成においては、電池セル901の数が増加すると、電池積層体910が長くなり、これに応じて相応の剛性アップが要求される。例えば、図16A図16Bに示すように、電池積層体910の側面に外力が加えられると、一方のバインドバー902に負荷が掛かる。よって、これに対応するためにはバインドバー902の剛性を上げる必要が生じ、このためバインドバー902を構成する金属板を厚くしたり、より強固な材質を使用する等の対策が必要となり、重量が重くなったりコストが高くなるという問題が生じる。また、電池セル数が増すにつれて、中央に位置する電池セル901の位置ずれがより大きくなるという懸念も生じる。以上の弊害を防止するために、電池積層体の中間に中間プレートを配置して、中間プレートをバインドバーに固定する電源装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/017913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電源装置は、中間プレートをバインドバーに固定して電池セルを定位置に配置できるが、バインドバーを固定するために中間プレートの両側に設けている金属カラーの表面に付着する結露水が、装置の絶縁抵抗を低下させる原因となる。電源装置は、電位のある電極端子やこれに接続しているバスバーとグランドラインとの間の絶縁抵抗を高く、例えば数十MΩ以上に維持することが要求される。金属カラーは、金属製のバインドバーやエンドプレートを介してグランドラインに接続されるので、グランドラインに接続される金属カラーと電位のある電極端子やバスバーとの間の絶縁抵抗は高く維持することが要求される。金属カラーを両側面に固定している中間プレートは、両面に電池セルを積層して、この電池セルには電極端子にバスバーが接続されて、電極端子やバスバーが金属カラーの近傍に配置されるので、金属カラー近傍に付着する結露水は、金属カラーを電極端子やバスバーに導通して、絶縁抵抗を低下させる原因となる。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、極めて簡単な構造で金属カラーを効果的に絶縁し、装置の絶縁抵抗を高く維持できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る電源装置は、複数の角形の電池セル1を積層してなる電池積層体10と、電池積層体10の積層方向の中間に積層してなる中間プレート3と、電池積層体10の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレート4と、エンドプレート4及び中間プレート3の両側面に固定してなるバインドバー2とを備える電源装置であって、中間プレート3の両側に設けてなる金属カラー31と、バインドバー2を金属カラー31を介して中間プレート3と連結する固定具14と、中間プレート3の側面に固定してなる絶縁プレート15とを備えており、中間プレート3は、両側部又は全体を絶縁性のプラスチック成形体30で構成してなり、プラスチック成形体30は、金属カラー31の周囲を囲む環状リブ32を側面に一体的に成形して設けており、環状リブ32の開口縁に絶縁プレート15が固定されて、絶縁プレート15が、環状リブ32の開口部を閉塞して、環状リブ32と絶縁プレート15が、金属カラー31の外側を絶縁しており、固定具14が絶縁プレート15を貫通して金属カラー31に連結されている。
【0008】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置100と、電源装置100から電力供給される走行用のモータ93と、電源装置100及びモータ93を搭載してなる車両本体91と、モータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。
【0009】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置100と、電源装置100への充放電を制御する電源コントローラ88と備えて、電源コントローラ88でもって、外部からの電力により電池セル1への充電を可能とすると共に、電池セル1に対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0010】
以上の電源装置は、電池積層体に中間プレートを積層してバインドバーに連結しながら、中間プレートを設けることによる絶縁抵抗の低下を抑制することができる。とくに、簡単な構造で金属カラーを効果的に絶縁して、電源装置の絶縁抵抗を高く維持できる特長が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の斜視図である。
図2図1の電源装置の分解斜視図である。
図3図3A図1の電源装置の模式平面図であり、図3B図3Aの電源装置の側面に外力が加わった状態を示す模式平面図である。
図4図1の電源装置の模式側面図である。
図5】中間プレートの斜視図である。
図6図1に示す電源装置のVI-VI線断面図である。
図7図6に示す中間プレートの環状リブと絶縁プレートの連結状態を示す拡大断面図である。
図8】中間プレートの他の一例の環状リブと絶縁プレートの連結状態を示す拡大断面図である。
図9】中間プレートとバインドバーの連結構造を示す分解断面図である。
図10】中間プレートとバインドバーの連結構造の他の一例を示す断面図である。
図11図11Aは変形例に係るバインドバーにおける突出片の折曲前の状態を示す斜視図であり、図11B図11Aの突出片を折曲させた状態を示す斜視図である。
図12】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図13】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図14】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
図15図15は、従来の電源装置を示す分解斜視図である。
図16図16Aは中間ブラケットのない電源装置の模式平面図であり、図16B図16Aの電源装置の側面に外力が加わった状態を示す模式平面図である。
図17図17は、従来の電源装置を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0013】
本発明の第1の実施態様の電源装置は、複数の角形の電池セルを積層してなる電池積層体と、電池積層体の積層方向の中間に積層してなる中間プレートと、電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、エンドプレート及び中間プレートの両側面に固定してなるバインドバーとを備える電源装置であって、中間プレートの両側に設けてなる金属カラーと、バインドバーを金属カラーを介して中間プレートと連結する固定具と、中間プレートの側面に固定してなる絶縁プレートとを備え、中間プレートは、両側部又は全体を絶縁性のプラスチック成形体で構成してなり、プラスチック成形体は、金属カラーの周囲を囲む環状リブを側面に一体的に成形して設けており、環状リブの開口縁に絶縁プレートが固定されて、絶縁プレートが、環状リブの開口部を閉塞して、環状リブと絶縁プレートが、金属カラーの外側を絶縁しており、固定具が絶縁プレートを貫通して金属カラーに連結されている。
【0014】
以上の電源装置は、極めて簡単な構造としながら、金属カラーを効果的に絶縁して、装置の絶縁抵抗を高くできる特徴がある。それは、以上の電源装置が、中間プレートのプラスチック成形体に、金属カラーの周囲を囲む環状リブを一体的に成形して設けて、環状リブの開口縁を絶縁プレートで閉塞して、環状リブと絶縁プレートで金属カラーの外側を絶縁しているからである。とくに、以上の電源装置は、金属カラーの周囲を絶縁するために専用の部材を設けることなく、中間プレートを成形しているプラスチック成形体と環状リブを一体成形して設けているので、簡単かつ容易に、しかも専用部品を追加することなく、さらに環状リブを金属カラーに対して正確な位置に配置する工程も必要なく、さらにまた、長期間にわたって振動などを受ける厳しい使用環境においても、環状リブを位置ずれすることなく金属カラー周囲の正確な位置に配置して、常に金属カラーを理想的な状態で絶縁して、装置の絶縁抵抗を高く維持できる特長がある。
【0015】
さらに、以上の電源装置は、環状リブを絶縁プレートで閉塞して金属カラーの周囲を絶縁するので、環状リブと絶縁プレートの両方で、電極端子及びバインドバーと金属カラーとの間の沿面距離を長くして、結露水による絶縁抵抗の低下を効果的に抑制できる特長も実現する。
【0016】
本発明の第2の実施態様の電源装置は、環状リブの開口縁を絶縁プレートの内面に密着させている。
【0017】
本発明の第3の実施態様の電源装置は、絶縁プレートが、環状リブの開口縁を嵌入する嵌合溝を内面に備えており、環状リブの開口縁を嵌合溝に嵌合構造で連結している。
【0018】
本発明の第4の実施態様の電源装置は、金属カラーを中間プレートのプラスチック成形体にインサート成形して固定している。
【0019】
本発明の第5の実施態様の電源装置は、固定具が止ネジで、金属カラーが止ネジをねじ込む雌ネジ孔を備えている。
【0020】
本発明の第6の実施態様の電源装置は、中間プレート全体をプラスチック成形体としている。
【0021】
本発明の第7の実施態様の電源装置は、金属カラーが貫通穴を有し、固定具が、中間プレートの両側に固定してなる金属カラーの貫通穴と、中間プレートとを通過して、バインドバーに固定されている。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の一実施形態に係る電源装置100を、図1図2に示す。これらの図に示す電源装置100は、車載用の電源装置の例を示している。具体的には、この電源装置100は、主としてハイブリッド車や電気自動車等の電動車両に搭載されて、車両の走行モータに電力を供給して、車両を走行させる電源に使用される。ただ、本発明の電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車以外の電動車両に使用でき、また電動車両以外の大出力が要求される無停電電源などの用途にも使用できる。
【0023】
(電源装置100)
図1図2に示す電源装置100は、電池セル1を複数枚積層した電池積層体10と、電池積層体10の積層方向の中間に積層してなる中間プレート3と、電池積層体10の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレート4と、エンドプレート4に固定してなるバインドバー2とを備える。電池セル1は、外形を幅よりも厚さを薄くした板状としており、主面を矩形状として、複数枚を積層している。また、電池セル1同士の間をセパレータ12などの絶縁部材で絶縁している。さらに電池積層体10の中間には、中間プレート3を積層している。さらにまた、電池セル1をセパレータ12を介して交互に積層した状態で、電池積層体10の両側の端面をエンドプレート4で覆っている。この一対のエンドプレート4同士を、バインドバー2で固定して、エンドプレート4同士の間で電池積層体10を狭持する。
【0024】
(電池セル1)
電池セル1は、その外形を構成する外装缶を、幅よりも厚さを薄くした角形としている。外装缶は上方を開口した有底筒状に形成され、開口部分を封口板で閉塞している。外装缶には、電極組立体が収納される。封口板には正負の電極端子と、この電極端子の間にガス排出弁を設けている。電池セルは、外装缶の表面を熱収縮チューブなどの絶縁膜(図示せず)で被覆している。封口板の表面は、電極端子や排出弁を設けているので、絶縁膜では被覆されず露出している。電池セル1同士は、バスバー13等で電気的に接続される。バスバー13は、金属板を折曲して形成される。
【0025】
隣接する電池セル1同士の間には、樹脂製のセパレータ12等の絶縁部材が介在されて、これらの間を絶縁する。表面を絶縁膜で被覆している電池セルは、セパレータを介することなく積層することもできる。
【0026】
(セパレータ12)
セパレータ12は、図2の分解斜視図に示すように、隣接する電池セル1の、対向する主面同士の間に介在されてこれらを絶縁する。また、セパレータ12は、両端の電池セル1とエンドプレート4との間、及び、中間の電池セル1と中間プレート3との間にも配置される。このセパレータ12は、絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作される。図に示すセパレータ12は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状としており、このセパレータ12を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁している。なお、セパレータとして、隣接する電池セルの間に冷却気体の流路を形成する形状のセパレータを使用し、この流路に冷却気体を強制送風して電池セルを冷却することもできる。
【0027】
セパレータ12の材質は、絶縁性とする。例えばプラスチック等の樹脂製とすることで、軽量で安価に構成できる。また硬質の部材とする他、可撓性を有する部材としてもよい。特に、冷却隙間を設けない形態のセパレータ12は、シート状等の可撓性のある薄い材質とすることができる。シート状として片面に接着面を塗布したセパレータを使用すれば、電池セル1の主面や側面の一部といった絶縁が必要な領域に貼付することが容易となる。加えて、シート状とすることでセパレータの薄型化が容易となり、電池積層体10の厚さや重量が増すことも抑制できる。
【0028】
(エンドプレート4)
電池セル1とセパレータ12とを交互に積層した電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート4を配置して、一対のエンドプレート4で電池積層体10を締結している。エンドプレート4は、十分な強度を発揮する材質、例えば金属製とする。ただ、エンドプレートは、材質を樹脂製とすることや、さらに、この樹脂製のエンドプレートを金属製の材質からなる部材で補強して構成することもできる。図2の例では、エンドプレート4を、1枚の金属板で構成している。
【0029】
(バインドバー2)
バインドバー2は、図1図2に示すように、両端にエンドプレート4が積層された電池積層体10の両側面に配置され、端部を一対のエンドプレート4に固定されて電池積層体10を締結する。このバインドバー2は、電池積層体10の電池積層方向に延長された板状に形成される。具体的には、バインドバー2は、電池積層体10の側面を覆う平板状の締結主面25と、その端縁を折曲した折曲片として、第一折曲片21、第二折曲片22、第三折曲片23、第四折曲片24を有する。第一折曲片21は、締結主面25の長手方向に沿った端縁の内の一方、ここでは上端側を折曲した上端折曲片である。また、第二折曲片22は、締結主面25の長手方向に沿った他方側の端縁、ここでは下端側を折曲した下端折曲片である。さらに、第三折曲片23は、締結主面25の長手方向と交差する端縁、ここでは前方側を部分的に折曲したエンドプレート固定片である。最後に、第四折曲片24は、締結主面25の長手方向と交差する端縁の内、後方側を部分的に折曲したエンドプレート固定片である。このようにバインドバー2の各端縁を折曲したことで、長手方向に沿う断面形状と、長手方向と交差する断面形状のいずれも、コ字状として、剛性を高めることが可能となる。
【0030】
また、バインドバー2は、エンドプレート固定片でもってエンドプレート4にねじ止めなどにより固定される。また、上端折曲片で電池積層体10の上面の隅部を、下端折曲片で電池積層体10の下面の隅部を、それぞれ部分的に被覆して強度を増す。なお、下端折曲片を用いて、電源装置100を設置場所、例えば車両内部に螺合等により固定することもできる。
【0031】
このようなバインドバー2には、金属板を折曲加工したものが好適に利用される。またバインドバー2は、長期にわたって電池積層体10を狭持するよう、十分な強度を備える必要がある。このため、剛性及び熱伝導に優れた高張力鋼、一般鋼、ステンレス、アルミ合金、マグネシウム合金等あるいはその組み合わせが利用できる。図2の例では、例えば、Fe系の金属よりなる金属板を用いている。
【0032】
なお、バインドバーは、他の形状とすることもできる。例えば、帯状に延長された金属板の両端を断面視コ字状に折曲した形状としてもよい。また、バインドバーを設ける位置は、電池積層体の側面とする他、上下面とすることもできる。また、バインドバーをエンドプレートに固定する構造も、ねじ止めに限らず、リベットやかしめ、溶接、接着等、既知の固定構造が適宜利用できる。さらに、電池セル1同士の間に、冷却気体を送風できるよう、バインドバー2の締結主面25に開口領域25aを設けることもできる。図1図2の例では、電池セル1の側面を電池積層体10の側面に表出させるよう、バインドバー2の締結主面25に、複数の開口領域25aを設けている。また、開口領域25aを設けることで、バインドバー2の強度が低下することを抑制するため、バインドバー2は金属製とすることが好ましい。
【0033】
さらに、中間プレート3と連結するための中間プレート固定部27としてねじ穴を開口した部分には、開口領域を設けないことが好ましい。これにより、中間プレート3との固定部分でのバインドバー2の強度低下を避け、信頼性を向上できる。また、中間プレート3の部分には電池セル1が位置しないため、電池セル1の冷却のための冷却隙間もなく、よって開口領域を設ける必要もない。このように、強度が求められる部位においては開口領域を設けない、あるいは開口領域の面積を低減することで、電池セル1の冷却性能を確保しつつも、強度低下や剛性低下を回避できる。
【0034】
さらにまた、金属製のバインドバー2で電池積層体10の側面を覆うことにより、電池セル1の外装缶が意図せず短絡することを防止するため、バインドバー2と電池積層体10との間に絶縁構造を設けることもできる。図2の例では、金属製のバインドバー2と電池積層体10との間に、絶縁材9を介在させている。絶縁材9は、絶縁性の部材、例えば樹脂シートや紙等で構成される。また絶縁材9の形状は、バインドバー2とほぼ同様の形状として、電池積層体10の側面がバインドバー2と触れないようにする。さらに、開口領域25aを設けたバインドバー2に積層される絶縁材9においては、開口領域25aを閉塞しないように、絶縁材9にも開口領域9aが開口される。
【0035】
(中間プレート3)
また、電池積層体10の中間部分には、中間プレート3を介在させている。図1図4の電池積層体10は中央に1枚の中間プレート3を設けているが、必ずしも中央である必要はなく、電池積層体の積層方向の間に設けていればよい。すなわち、「電池積層体の積層方向の中間」という意味は、「電池積層体の積層方向の間」という意味である。さらに、長い電池積層体は中間に複数の中間プレートを設けることもできる。中間プレート3は、バインドバー2の長手方向の中間に固定されている。このためバインドバー2は、長手方向の中間において中間プレート3と固定するための中間プレート固定部27を有している。一方、中間プレート3は、図5及び図6に示すように、中間プレート固定部27と固定される金属カラー31を固定している。このように本実施形態では、電池積層体10の中間部分を中間プレート3でもって補強したことで、電池セル1の積層数が増えた場合でも剛性を維持できる利点が得られる。
【0036】
従来の電源装置900では、図15の分解斜視図に示すように、バインドバー902で両端面のエンドプレート904を締結する構成が採用されていた。この例では、薄い角形の電池セル901を18セル、セパレータ912を介して積層し、電池積層体910の端面にエンドプレート904を配置して、両側端面のエンドプレート904同士をバインドバー902で締結している。この構成では、エンドプレート904のみがバインドバー902に固定されているため、バインドバー902で狭持される電池セル901とセパレータ912の電池積層体910は、バインドバー902と固定されていない。このような構成では、図16A図16Bに示すように、側面から外力が加わると、片方のバインドバー902に負荷が集中してしまう。この状態でバインドバーが破断しないようにするには、各バインドバーの剛性を増す必要があり、例えばバインドバーを構成する金属板の厚さを厚くしたり、あるいは高剛性の金属板を使用する等の方法が考えられるが、いずれもコストアップに繋がる。特にバインドバーの厚さを増すと、重量が増すため、車載用途の電源装置には好ましくない。
【0037】
これに対し、本実施形態においては、バインドバー2の中間部分に中間プレート3を設けており、さらに一対のバインドバー2のそれぞれと固定している。いいかえると、一対のバインドバー2は中間プレート3を介して、中間部分で互いに固定されている。この結果、図3A図3Bに示すように、電源装置100の長手方向の一方の側面から外力が加えられても、一対のバインドバー2でもって外力を受けることができるため、図16A図16Bの構成と比べ、バインドバーの剛性を増す必要性をなくすことができ、より薄いバインドバーを用いて、低コスト化や軽量化を図ることが可能となる。
【0038】
さらに、図4図17に示すように、電池セル同士の厚さのばらつきを中間プレート3でもって抑制する効果も得られる。すなわち、積層する電池セルの数を増やす程、図17に示すように各電池セル901の厚さのばらつきが累積される。同様に、セパレータ912についても製造公差が発生するため、電池セル901数と同様、厚さのばらつきが累積される。これをバインドバー902で締結する際に、単純にエンドプレート904で狭持する構成では、図17に示すようにバインドバー902の長さが、電池セル901とセパレータ912の厚さのばらつきに対応した長さとなっていない場合、適切な狭持状態に維持することが困難となる。これに対して、図4に示すように中間に中間プレート3を配置することで、中間プレート3の一方の面と一方のエンドプレート4、及び中間プレート3の他方の面と他方のエンドプレート4のそれぞれの間で、電池積層体10を二分してそれぞれ狭持できるため、二分された電池積層体10の積層数を半減できる分、このような累積誤差を低減して、バインドバー2での締結を行い易くできる。いいかると、電源装置間でバインドバー2の締結状態のばらつきを抑制することができ、各電源装置の締結状態を一定に維持して信頼性を向上できることができる。
【0039】
バインドバー2に中間プレート3を配置する位置は、好ましくはバインドバー2の長手方向のほぼ中央とする。ただし、いずれか一方に若干偏心した位置に中間プレートを配置、固定することを妨げない。特に積層する電池セルの数が偶数の場合は、中央に中間プレートを配置することが可能であるが、奇数となる場合は、中間に中間プレートを配置することが困難となる。このような態様においても、本発明を好適に利用できる。さらに、複数の中間プレートを設ける場合、バインドバー2の長手方向に対して、複数の中間プレートを等間隔に配置することもが好適である。
【0040】
中間プレート3の斜視図を図5に示す。中間プレート3は、好ましくは絶縁性のプラスチック製とする。ただし、中間プレートは全体をプラスチック製とすることなく、たとえば、図示しないが、四角形の両側部分と上下部分、すなわち外周部と、両面をプラスチック製として他の部分を金属製とすることもできる。この中間プレートは、金属板をプラスチックにインサート成形して製造して、表面をプラスチックで絶縁する構造にできる。以上の中間プレート3は、両面に積層される電池セル1と確実に絶縁することができる。中間プレートを成形する樹脂材料としては、例えば結晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート等が使用できる。
【0041】
(金属カラー31)
中間プレート3は、バインドバー2を固定するために両側に金属カラー31を固定している。金属カラー31は、好ましくは中間プレート3にインサート成形して固定される。図6の断面図に示す金属カラー31は、中間プレート3に強固に固定するために、外周面にはリング状の溝部31bを設けている。金属カラーは、図示しないが、外周面に多数の突起を設けることもできる。インサート成形して固定された金属カラー31は、中間プレート3の正確な位置に強固に固定される。ただ、金属カラーは接着し、あるいは圧入して中間プレートに固定することもできる。プラスチック製の中間プレート3に金属カラー31をインサート成形して固定するハイブリット構造は、中間プレート3を軽量で成型が容易な樹脂性としつつ、強度や耐久性が求められるバインドバー2との固定部分を金属製として、信頼性を増すことが可能となる。以上の中間プレート3はプラスチック製で、金属カラー31をインサート成形して固定しているが、金属カラーは中間プレートと一体構造とすることもできる。この中間プレートは一部を金属製として金属カラーと一体構造とし、金属製の中間プレートの表面をプラスチック等で絶縁する構造とする。この中間プレートは、金属カラーと一体構造に成形する部分をアルミダイキャスト製として、表面をプラスチック等で絶縁する構造で実現できる。
【0042】
中間プレート3は、両側面の複数カ所に金属カラー31を固定して、バインドバー2を確実に固定する。図5図6の中間プレート3は、上下と中央部の3カ所に金属カラー31を固定している。中間プレート3に固定される金属カラー31の個数は特定されるものでないが、上下とその中間に固定されて、バインドバー2を確実に固定できる。
【0043】
金属カラー31は、中間プレート3の側面から突出して固定されて先端を平面状としている。さらに、金属カラー31は中央部に雌ネジ孔31aを設けている。雌ネジ孔31aは、バインドバー2を貫通する止ネジ14Aがねじ込まれて、バインドバー2を中間プレート3に連結する。金属カラー31は、金属製のバインドバー2を介してグランドラインに電気接続される。バインドバー2が、電源装置を設置するベース、車両にあってはシャシーに接続されるからである。グランドラインに電気接続される金属カラー31は、結露水などを介して電池セル1の電極端子やバスバーに接続されると絶縁抵抗が低下する。導電性の結露水が金属カラー31をグランドラインに電気接続するからである。
【0044】
また、左右の金属カラー31は、中間プレート3の両側面にそれぞれ、同一直線上に設けられている。ここで、金属カラーは、中間プレートを貫通するように構成することもでき、これによって強度を向上できる。ただ、この場合は、中間プレートの幅に相当する長い金属筒を用意する必要があり、金属部材が多くなる分だけ、重量が重くなり、また部品コストも高騰する。そこで、図6の構成では、金属カラー31を中間プレート3の両側面にそれぞれ、別部材として配置し、左右の金属カラー31を同一直線上に配置している。
【0045】
(環状リブ32)
電源装置100は、温度などの外的条件が変化する環境で使用されるので、表面に接触する空気が冷却されて過飽和な状態となると、空気中の水蒸気が液化して表面に結露水として付着する。結露水による金属カラー31の絶縁抵抗の低下を防止するために、中間プレート3は、金属カラー31の周囲を囲む環状リブ32を側面に一体的に成形して設けている。以上の中間プレート3は、全体をプラスチック製としているので、全体をプラスチック成形体30で構成している。環状リブ32は、プラスチック成形体30で一体的に成形して設けられる。全体をプラスチック成形体30とする中間プレート3は、環状リブ32の内側に金属カラー31を配置して、金属カラー31の周囲を環状リブ32で絶縁している。以上の中間プレート3は、全体をプラスチック成形体30で構成するが、中間プレートは必ずしも全体をプラスチック成形体とすることなく、たとえば、芯材を金属プレートとして、表面をプラスチック成形体とすることもできる。この中間プレートは、金属プレートをインサート成形して、プラスチック成形体に埋設する構造に製造される。環状リブ32はプラスチック成形体30に一体的に成形されるので、一部をプラスチック成形体30とする中間プレート3は、少なくとも両側部分をプラスチック成形体30で構成して環状リブ32を一体構造に成形する。
【0046】
(絶縁プレート15)
環状リブ32は、開口縁に絶縁プレート15が密着する状態に固定されて、絶縁プレート15で開口部が閉塞される。絶縁プレート15は、外側表面に配置されるバインドバー2で環状リブ32に押圧されて隙間なく密着する。図7の環状リブ32は、先端縁を次第に薄く尖らせて、押圧される絶縁プレート15で押し潰されて、より確実に隙間なく密着する。図8の環状リブ32は、開口縁を絶縁プレート15の内面に設けた嵌合溝15bに嵌合構造で案内して、絶縁プレート15に隙間なく密着する。絶縁プレート15は、これを貫通する止ネジ14Aを介して環状リブ32の開口縁に密着される。止ネジ14Aは、バインドバー2を中間プレート3に連結する固定具14である。絶縁プレート15は、固定具14の止ネジ14Aの貫通穴15aを設けて、ここに止ネジ14Aを挿通している。貫通穴15aの内径は、好ましくは止ネジ14Aの外径にほぼ等しくし、あるいはわずかに小さくして、止ネジ14Aを隙間なく挿入できる形状とする。止ネジ14Aの外径よりもわずかに小さい貫通穴15aは、挿入される止ネジ14Aで拡開されて止ネジ14Aの表面に密着する。この構造は、絶縁プレート15が環状リブ32の開口部を水密に密閉して、金属カラー31を理想的な状態で絶縁できる。ただ、貫通穴15aは、止ネジ14Aの外径よりも大きくして、止ネジ14Aを挿入する状態で隙間ができる構造とすることもできる。この絶縁プレート15は、環状リブ32の開口部を水密には密閉しないが、環状リブ32と絶縁プレート15が金属カラー31の外側を被覆して、沿面距離を長くして絶縁抵抗の低下を抑制する。
【0047】
環状リブ32の開口部を閉塞する絶縁プレート15は、図9に示すように、固定具14を介して中間プレート3に連結される。図に示す絶縁プレート15は、中間プレート3の側面と対向する板状に形成されており、中間プレート3の側面に設けた3つの環状リブ32を同時に閉塞する大きさと形状としている。この絶縁プレート15は、例えば、バインドバー2の内側面に連結される絶縁材9の中央部の定位置に固定することにより、バインドバー2に連結される絶縁材9を介してバインドバー2の内側面の定位置に配置される。この絶縁プレート15は、バインドバー2に設けた貫通孔である中間プレート固定部27と絶縁材9に設けた貫通孔9bとを貫通する止ネジ14Aが、貫通孔15aに挿通されて金属カラー31にねじ込まれることで、環状リブ32の開口縁を押圧する状態で密着して環状リブ32の開口部を閉塞する。
【0048】
以上の構造は、絶縁プレート15と絶縁材9とを別部材とすることで、絶縁プレート15を最適な材質や形状としながら安価に多量生産することができる。また、絶縁プレートを別部材とすることで、その扱いを簡単にして製造効率を向上できる。ただ、絶縁プレートは、絶縁材と一体構造とすることもできる。この絶縁プレートは、プレート状またはシート状に製造される絶縁材の一部として一体的に製造される。この絶縁プレートも、絶縁材がバインドバーの定位置に連結される状態で、中間プレートの側面に対して定位置に配置されて、環状リブの開口部を閉塞する。さらに、絶縁プレートは、各々の環状リブに対向する複数枚の板材として絶縁材の内面に固定することもできる。
【0049】
(中間プレート固定部27)
バインドバー2は、長手方向の中間において中間プレート3の金属カラー31と固定するための中間プレート固定部27を設けている。ここで、図7及び図8に示すように、中間プレート3とバインドバー2とを固定する固定具14の方向は、バインドバー2の主面に対して略垂直となるようにしている。このようにバインドバー2の延在方向に対して垂直な方向に軸力が働くように固定具14を設けたことで、バインドバー2にかかる負荷を低減することできる。
【0050】
(中間プレート及び固定具の他の実施例)
以上の中間プレート3は、雌ネジ孔31aを備える金属カラー31を両側面の対向する位置に一直線上に配置しており、各々の金属カラー31に固定具14である止ネジ14Aを両側からねじ込むことにより、バインドバー2を介して絶縁プレート15を両側面に固定する構造としている。ただ、中間プレートは、金属カラーに貫通穴を設けてこの貫通孔を通過する固定具を介して、中間プレートの両側に固定してなる金属カラーをバインドバーに固定することもできる。
【0051】
図8に示す中間プレート3は、金属カラー31を、貫通孔31cを設けた金属筒とすると共に、この金属カラー31を、中間プレート3を幅方向に貫通するようにプラスチック成形体30にインサート成形して製造している。図8に示す固定具14は、中間プレートの幅よりも長いネジ部を備えるボルト14Bと、このボルト14Bにねじ込まれるナット部材14Cとで構成している。この中間プレート3は、金属カラー31を貫通するボルトのネジ部の前端を反対側の側面から突出させて、絶縁プレート15とバインドバー2とに貫通させた状態で、先端部にナット部材14Cをねじ込んで中間プレート3の両側面にバインドバー2を固定する構造としている。ただ、中間プレートを貫通する固定具は、中間プレート3の幅よりも長いねじ棒と、このねじ棒の両端に連結されるナット部材とで構成することもできる。
【0052】
(締結部材側第二固定部28)
さらに、バインドバー2を中間プレート3に固定する固定構造は、複数設けることもできる。例えば第一折曲片21の中間に、締結部材側第二固定部28を設けてもよい。図1図2、及び図6に示すバインドバー2は、締結部材側第二固定部28として、第一折曲片21の中央から突出させた第一折曲片ねじ穴を形成している。このように、中間プレート固定部27と交差する部位に締結部材側第二固定部28を設けたことで、互いに交差する位置にてバインドバー2と中間プレート3とを固定することができ、異なる方向からのより強固な固定構造が実現される。また、中間プレート3の上面において、第一折曲片ねじ穴と対向する部位には、ブラケット側第二固定部38として、ブラケット側第二ねじ穴が開口されている。これにより、電池積層体10の上面から、ねじを第一折曲片ねじ穴とブラケット側第二ねじ穴に挿通して螺合できる。
【0053】
(締結部材側第三固定部29)
さらに、バインドバー2と中間プレート3との固定構造は、3以上設けてもよい。例えば図6の例では、締結部材側第三固定部29として、第二折曲片22の中間にも、第二折曲片ねじ穴を形成している。同様に、中間プレート3にも、締結部材側第三固定部29と対応する位置にブラケット側第三固定部39として、ブラケット側第三ねじ穴を設けている。
【0054】
また、図5に示す中間プレート3は、中間部分を開口させて樹脂使用量を低減している。また、中間プレートの両面に通気隙間を有するセパレータを配置する場合は、セパレータの形状、例えば冷却隙間の凹凸などと合致する形状に形成する。
【0055】
なお、図2の例では、電池セル1の側面にセパレータ12を被覆した状態で、中間プレート3と接合している。言い換えると、電池セル1と中間プレート3との間にはセパレータ12が介在されている。ただ、中間プレートに接する電池セルに関しては、セパレータを省略することもできる。この場合は、中間プレートの側面で電池セルの表面を被覆できるよう、上述した冷却隙間等を中間プレートの表面に形成してもよい。
【0056】
(変形例)
バインドバー2は、上述した図1及び図2に示すように締結主面25の端縁をそれぞれ折曲した構成とする他、さらに折曲して折曲片同士を固定することで、強度を向上させることもできる。このような例を変形例に係るバインドバー2Bとして、図11A図11Bの斜視図に示す。これらの図に示すバインドバー2Bは、第二折曲片22が、その長手方向の端縁を、締結主面25の端縁から突出させた突出片26を有する。この突出片26は、エンドプレート4と螺合するための突出片側ねじ孔26aを開口している。一方、第三折曲片23及び第四折曲片24は、それぞれ第三ねじ穴23aと第四ねじ穴24aを開口している。突出片26は、図11Aの状態から、図11Bに示すように、第二折曲片22と重なるように折曲される。この状態で、突出片側ねじ穴26aと第三ねじ穴23a及び第四ねじ穴24aとが芯合されて、共通のねじに螺合されてエンドプレート4に固定される。このような構成を採用することで、バインドバー2Bをエンドプレート4と螺合する面を、交差する面同士で三次元的に構成して、より強固な固定構造が実現される。
【0057】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築して搭載することもできる。
【0058】
(ハイブリッド車用電源装置)
図12は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0059】
(電気自動車用電源装置)
また、図13は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0060】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図14は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0061】
図14に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0062】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0063】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置は、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0065】
100…電源装置
1…電池セル
2、2B…バインドバー
3…中間プレート
4…エンドプレート
9…絶縁材
9a…開口領域
9b…貫通孔
10…電池積層体
12…セパレータ
13…バスバー
14…固定具
14A…止ネジ
14B…ボルト
14C…ナット部材
15…絶縁プレート
15a…貫通孔
15b…嵌合溝
21…第一折曲片
22…第二折曲片
23…第三折曲片
23a…第三ねじ穴
24…第四折曲片
24a…第四ねじ穴
25…締結主面
25a…開口領域
26…突出片
26a…突出片側ねじ孔
27…中間プレート固定部
28…締結部材側第二固定部
29…締結部材側第三固定部
30…プラスチック成形体
31…金属カラー
31a…雌ネジ孔
31b…溝部
31c…貫通孔
32…環状リブ
38…ブラケット側第二固定部
39…ブラケット側第三固定部
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
HV、EV…車両
900…電源装置
901…電池セル
902…バインドバー
904…エンドプレート
910…電池積層体
912…セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17