(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133502
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】吊り上げ装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/34 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B66C1/34 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032203
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】594069764
【氏名又は名称】三星工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇賀田 優
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004CD02
3F004CD08
3F004DA02
3F004DA08
(57)【要約】
【課題】製造ラインに導入が容易な簡易構成にしつつ、吊り上げ対象物にキズを付けることなく安全かつ確実に環状部材の取り付けおよび取り外しが可能な構成の吊り上げ装置を提供する。
【解決手段】吊り上げ装置1は、桁部2と桁部2の中央上部に連結されたフック部3とフック部3に掛けた環状部材21の外れを防ぐ外れ止め部4と外れ止め部4を回動可能に支持するシャフト部5とシャフト部5と連動し外れ止め部4を回動させて開くように作動させるモータ7と外れ止め部4が閉じるように回動可能に付勢するウエイト9を有し、モータ7に給電することでウエイト9に抗して外れ止め部4を開いた状態にし、かつ、モータ7への給電を停止することでウエイト9によって外れ止め部4を閉じた状態にする構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を吊るための桁部と前記桁部の中央上部に連結されたフック部と前記フック部に掛けた環状部材の外れを防ぐ外れ止め部と前記外れ止め部を回動可能に支持するシャフト部と前記シャフト部と連動し前記外れ止め部が開くように回動させるモータと前記モータに給電する給電部と前記外れ止め部が閉じるように回動可能に付勢するウエイトを有し、前記モータに給電することで前記ウエイトに抗して前記外れ止め部を開いた状態にし、かつ、前記モータへの給電を停止することで前記ウエイトによって前記外れ止め部を閉じた状態にする構成であること
を特徴とする吊り上げ装置。
【請求項2】
前記シャフト部はトルクリミッタが配されており、前記外れ止め部が開くと前記トルクリミッタによって前記モータが空転可能な構成であること
を特徴とする請求項1記載の吊り上げ装置。
【請求項3】
前記給電部は給電コードおよびマグネットプラグを有し、前記桁部が所定高さに上昇すると前記マグネットプラグがACアウトレットから抜けるように前記給電コードの長さまたは前記マグネットプラグの向きのいずれかないしは両方が設定されていること
を特徴とする請求項1または2記載の吊り上げ装置。
【請求項4】
前記フック部は表示灯が配されており、前記表示灯によって前記外れ止め部の開閉状態が表示されること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の吊り上げ装置。
【請求項5】
前記桁部の両端側に各々下向きで連結されたアーム部を有し、複数台で連動させて前記対象物としての車両を吊り上げ可能な構成であること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の吊り上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインなどでは、重量物を吊り上げる際に吊り上げ装置が用いられている。従来、ワイヤロープなどのフックからの外れ防止のためにフック先端カバーを設ける構成が提案されている(特許文献1:特開2015-020897号公報)。また、フックが高所にある場合は、フックから環状部材を外すことが難しいため、作業者が牽引ロープを下方向に引いて支持ピンを移動させる操作によって環状部材(吊掛部)を吊具から外す構成が提案されている(特許文献2:実開昭56-170182号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-020897号公報
【特許文献2】実開昭56-170182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成は高所では作業者が環状部材をフックから外すことが難しい。他方、特許文献2記載の構成は作業者が牽引ロープを操作する際に車両などの吊り上げ対象物に牽引ロープが当接しキズが付くなどの問題がある。海外メーカなどからはフックの外れ止めを自動で作動させる機構も提案されているが非常に高価な装置になるため既設ラインへの導入は難しいのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、製造ラインに導入が容易な簡易構成にしつつ、吊り上げ対象物にキズを付けることなく安全かつ確実に環状部材の取り付けおよび取り外しが可能な構成の吊り上げ装置を提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係る吊り上げ装置は、対象物を吊るための桁部と前記桁部の中央上部に連結されたフック部と前記フック部に掛けた環状部材の外れを防ぐ外れ止め部と前記外れ止め部を回動可能に支持するシャフト部と前記シャフト部と連動し前記外れ止め部が開くように回動させるモータと前記モータに給電する給電部と前記外れ止め部が閉じるように回動可能に付勢するウエイトを有し、前記モータに給電することで前記ウエイトに抗して前記外れ止め部を開いた状態にし、かつ、前記モータへの給電を停止することで前記ウエイトによって前記外れ止め部を閉じた状態にする構成であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、モータとウエイトを組み合わせた簡易構成にしつつ、吊り上げ対象物にキズを付けることなく安全かつ確実に環状部材の取り付けおよび取り外しができる。
【0009】
前記環状部材は、一例としてアロイリング、アロイメインリンク、その他既知の環状金具である。前記環状部材は、吊り下げ用フックに上側が掛けられて、フック部に下側が掛けられた状態で用いられる。
【0010】
前記モータは、一例として交流モータ、ユニバーサルモータ、誘導モータ、中空減速機付きモータ、その他既知の電動モータである。前記モータは、一例としてギヤ駆動、チェーン駆動、カム駆動、その他既知の駆動機構によって前記シャフト部と連動する構成である。前記モータの操作は、一例としてスイッチボックス、リモートコントローラ、その他既知の操作スイッチ機構で行う。
【0011】
前記シャフト部はトルクリミッタが配されており、前記外れ止め部が開くと前記トルクリミッタによって前記モータが空転可能な構成であることが好ましい。この構成によれば、モータをONにするだけの単純な操作で外れ止め部が開き、モータをOFFにするだけの単純な操作で外れ止め部が閉じる。前記ウエイトは、前記モータの空転トルクよりも自重が重くなるように設定され、かつ、前記モータの駆動トルクよりも自重が軽くなるように設定される。
【0012】
前記給電部は給電コードおよびマグネットプラグを有し、前記桁部が所定高さに上昇すると前記マグネットプラグがACアウトレットから抜けるように前記給電コードの長さまたは前記マグネットプラグの向きのいずれかないしは両方が設定されていることが好ましい。この構成によれば、所定高さ位置で強制的にモータがOFFになって外れ止め部が閉じるので、より安全かつ確実な玉掛け作業ができる。
【0013】
前記フック部は表示灯が配されており、前記表示灯によって前記外れ止め部の開閉状態が表示されることが好ましい。この構成によれば、高所における外れ止め部の開閉状態が地上から容易に視認できる。一例として、前記外れ止め部の開閉状態を検知するセンサを前記基部に取り付けて前記表示灯の発光色を異ならせることで前記外れ止め部の開閉状態を表示する構成である。
【0014】
一例として、前記桁部の両端側に各々下向きで連結されたアーム部を有する構成である。一例として、前記アーム部の下部に配された指部を前記対象物としての車両の底部に掛けて、桁部およびアーム部の組み合わせを複数台で連動させて前記対象物としての車両を吊り上げ可能な構成である。これにより、車両などの重量物を吊り上げる際に好適な構成にできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モータとウエイトを組み合わせた簡易構成で既設の製造ラインにも導入が容易な構成になり、吊り上げ対象物にキズを付けることなく安全かつ確実に環状部材の取り付けおよび取り外しが可能な構成の吊り上げ装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る吊り上げ装置の例を示す概略の斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示す吊り上げ装置におけるフック部の部分拡大図である。
【
図3】
図3は
図2における概略のIII-III線断面図である。
【
図4】
図4Aは本実施形態における吊り上げ方法の例を示す概略の図であってフック部に環状部材を掛ける直前の状態を示す図であり、
図4Bは
図4Aに続いてフック部に環状部材を掛けて吊り上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態の吊り上げ装置1は、製造ラインなどで、車両など重量物の吊り上げや吊り下げに用いられる。
図1は吊り上げ装置1の基本構成を示す概略の斜視図である(給電配線は不図示)。
図2は吊り上げ装置1におけるフック部3を正面側から視た部分拡大図であり、
図3はフック部3における上下方向の中央付近を上側から視た概略のIII-III線断面図である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
図1~
図3に示すように、吊り上げ装置1は、対象物を吊るために曲げ応力を担う梁状の桁部2と、桁部2の中央上部に連結されたフック部3と、フック部3に掛けた環状部材21の外れを防ぐためにシャフト部5に支持されて回動する外れ止め部4と、シャフト部5と連動し外れ止め部4を回動させて開くように作動させるモータ7と、外れ止め部4の先端側をフック部3における下側の基部3aから上側の欠け部3bに回動して閉じるように自重によって付勢するウエイト9とを有する。鉛直方向の軸線P1に沿って、上から順に、吊り下げ用フック22、環状部材21、フック部3、桁部2が配される。吊り下げ用フック22は、一例として先端が鈎形状のクレーンフックである。環状部材21は、一例としてアロイメインリンクである。フック部3は、先端が下向きになっており、吊り下げ用フック22と逆向きの形状である。吊り下げ用フック22を下向き形状とした場合、フック部3は上向き形状となる。ここで、外れ止め部4は、梯子形状を呈しており、回動しフック部3の欠け部3bに係止して閉じる構成である。
【0019】
図2と
図3に示すように、フック部3の基部3aには、軸線P1と直交方向で左右方向にシャフト部5が複数の軸受5aを介して配されている。フック部3には複数の平行キーが配されており、中空減速機付きモータ7とフック部3とが連動する構成である。シャフト部5にはトルクリミッタ6が連結されており、モータ7をONして駆動トルクによって外れ止め部4が開くとトルクリミッタ6によってモータ7が空転可能な構成である。ウエイト9は、シャフト部5の両側にそれぞれ連結しており、モータ7の空転トルクよりも自重が重くなるように設定され、かつ、モータ7の駆動トルクよりも自重が軽くなるように設定される。
【0020】
フック部3における基部3aの正面側には表示灯11が配されており、所定の色で点灯または点滅することによって外れ止め部4の開閉状態が表示される。この例では、外れ止め部4の開閉状態を検知する光電センサ13を基部3aに取り付けて、外れ止め部4が所定位置になったときに表示灯11の発光色を異ならせることで外れ止め部4の開閉状態を表示する構成である。
【0021】
図4Aはフック部3に環状部材21を掛ける直前の状態を示す図であり、
図4Bはフック部3に環状部材21を掛けて吊り上げた状態を示す図である。モータ7に給電すると、外れ止め部4はシャフト部5を軸心にして先端側がフック部3における上側の欠け部3bから下側の基部3aに回動して開く。次に、フック部3に環状部材21を掛けて吊り上げてモータ7の給電を停止すると、ウエイト9の自重によって外れ止め部4はシャフト部5を軸心にして先端側がフック部3における下側の基部3aから上側の欠け部3bに回動して閉じる。その後、フック部3から環状部材21を外すときは、
図4Aのように、モータ7に給電して外れ止め部4を開く。
【0022】
図5Aは吊り上げ装置1の使用態様の例を示す概略の正面図であり、
図5Bは
図5Aの概略の側面図である。ここで、吊り上げ対象物M1は破線で示しており、一例として機関車や客車などの鉄道車両である。吊り上げ装置1は、一例として対象物M1の前後に所定間隔で2台配されており、桁部2の長手方向の両端側に各々下向きで連結されたアーム部2aを有し、各アーム部2aの下部に配された指部2bを対象物M1である鉄道車両の底部に掛けて、2台を連動させて対象物M1を吊り上げる構成である。
【0023】
制御部12は、一例として桁部2の上部に配されており、制御部12を中継して給電部8とモータ7とが配線接続されている。制御部12は、装置を作動させる手元操作ボタン12aを有しており、手元操作ボタン12aはアーム部2aのうちの片方の下側に付いている。給電部8は、給電コード8aおよびマグネットプラグ8bから構成される。一例として、AC100[V]若しくはAC200[V]などの既知のACアウトレットから交流給電されてモータ7が作動する。マグネットプラグ8bは、磁石を筐体に内蔵しており、上下左右方向に給電コード8aを引っ張ると給電コード8aが外れる構成である。モータ7に給電することで桁部2を所定高さに上昇させて対象物M1が地上から吊り上がると、マグネットプラグ8bがACアウトレットから抜けて給電が停止されて外れ止め部4が閉じて環状部材21の外れ止めが機能する。給電コード8aの長さは、所望の高さで引き抜ける長さに設定されている。尚且つ、マグネットプラグ8bの差し込み方向は、所望の高さで抜けるように横向き若しくは斜め向きに設定されている。
【0024】
本実施形態によれば、鉄道車両などの重量物を吊り上げる際に好適な構成になり、モータ7とウエイト9を組み合わせた簡易構成で既設の製造ラインにも導入が容易な構成になり、吊り上げ対象物にキズを付けることなく安全かつ確実に環状部材21の取り付けおよび取り外しが可能な構成の吊り上げ装置1になる。
【0025】
上述の例では、梁状の桁部2に揺動可能に連結されたフック部3の組み合わせで説明したが、これに限定されず、桁部2はレール状や板状など対象物を吊るために曲げ応力を担う構造が広く適用できる。また、フック部3は桁部2に連結固定する場合がある。以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 吊り上げ装置
2 桁部、2a アーム部、2b 指部
3 フック部、3a 基部、3b 欠け部
4 外れ止め部
5 シャフト部、5a 軸受
6 トルクリミッタ
7 モータ
8 給電部、8a 給電コード、8b マグネットプラグ
9 ウエイト
11 表示灯
12 制御部
13 センサ
21 環状部材
22 吊り下げ用フック
M1 対象物(車両)
P1 軸線