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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133512
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/22 20120101AFI20220907BHJP
【FI】
G06Q20/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032221
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 賢吾
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】企業のサプライチェーン排出量における、温室効果ガスプロトコルが定めるスコープ3基準における排出量の導出を支援する情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システム10において、情報処理装置18は、クレジットカードの複数の加盟店について、各加盟店に関する単位売上金額あたりのGHG排出量である単位排出量を記憶し、クレジットカード会社装置16から、企業のコーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に係る決済データであって、商品またはサービスを販売した加盟店に関する情報と購買金額を含む決済データを取得し、決済データが示す加盟店に関する単位排出量と購買金額とに基づいて、購買に係るGHG排出量を導出し、購買に係るGHG排出量情報を企業装置12へ提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレジットカードの複数の加盟店について、各加盟店に関する単位売上金額あたりの温室効果ガス排出量である単位排出量を記憶する記憶部と、
クレジットカード会社の装置から、企業のコーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に係る決済データであって、前記商品またはサービスを販売した加盟店に関する情報と購買金額とを含む決済データを取得する第1取得部と、
前記記憶部に記憶された、前記決済データが示す加盟店に関する単位排出量と、前記決済データが示す購買金額とに基づいて、前記購買に係る温室効果ガス排出量を導出する導出部と、
前記購買に係る温室効果ガス排出量に関する情報を前記企業の装置へ提供する情報提供部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記記憶部は、業種ごとの単位排出量を記憶し、さらに、少なくとも一部の加盟店については当該加盟店自身の単位排出量を記憶し、
前記導出部は、前記決済データが示す加盟店自身の単位排出量が前記記憶部に記憶されている場合、その加盟店自身の単位排出量を使用し、前記決済データが示す加盟店自身の単位排出量が前記記憶部に記憶されていない場合、その加盟店が属する業種の単位排出量を使用して、前記購買に係る温室効果ガス排出量を導出する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
企業のコーポレートカードにより購買され得る複数の商品またはサービスについて、各商品または各サービスに関する単位購買金額あたりの温室効果ガス排出量である単位排出量を記憶する記憶部と、
前記コーポレートカードにより購買された商品またはサービスの識別情報と購買金額とを、前記商品またはサービスを販売した加盟店の装置またはクレジットカード会社の装置から取得する第1取得部と、
前記記憶部に記憶された、前記購買された商品またはサービスに関する単位排出量と、前記購買された商品またはサービスの購買金額とに基づいて、前記購買に係る温室効果ガス排出量を導出する導出部と、
前記購買に係る温室効果ガス排出量に関する情報を前記企業の装置へ提供する情報提供部と、
を備える情報処理システム。
【請求項4】
前記記憶部は、商品またはサービスのカテゴリごとの単位排出量を記憶し、さらに、少なくとも一部の商品またはサービスについては当該商品またはサービス自体の単位排出量を記憶し、
前記導出部は、前記購買された商品またはサービス自体の単位排出量が前記記憶部に記憶されている場合、その商品またはサービス自体の単位排出量を使用し、前記購買された商品またはサービス自体の単位排出量が前記記憶部に記憶されていない場合、その商品またはサービスのカテゴリの単位排出量を使用して、前記購買に係る温室効果ガス排出量を導出する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記コーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に関する前記企業の会計データを前記企業の装置から取得する第2取得部をさらに備え、
前記導出部は、前記第2取得部により取得された会計データに基づいて、前記購買に係る温室効果ガス排出量を、温室効果ガスプロトコルが定めるスコープ3基準における複数のカテゴリの中のいずれかのカテゴリに分類する、
請求項1から4のいずれかに記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理技術に関し、特に情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業の収益の大小だけでなく、どのようなプロセス(言い換えればビジネス)を経てその収益が生み出されたかを企業への投資の判断に含めるESG(Environment、Social、Governance)投資が重視されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-109936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、投資先となる企業の評価基準として、各企業のサプライチェーン排出量が重視されると考えられる。サプライチェーン排出量は、企業(事業者)自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量であり、つまり、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の流れ全体から発生する温室効果ガス(GreenHouse Gas、以下「GHG」とも呼ぶ。)の排出量である。
【0005】
サプライチェーン排出量は、スコープ1排出量と、スコープ2排出量と、スコープ3排出量の合計である。スコープ1は、企業(事業者)自らによるGHGの直接排出(例えば燃料の燃焼や工業プロセス)である。スコープ2は、他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出である。スコープ3は、スコープ1、スコープ2以外の間接排出であり、言い換えれば、企業(事業者)の活動に関連する他社の排出である。
【0006】
今後、各企業はサプライチェーン排出量を適正に開示することが求められるが、サプライチェーン排出量の中のスコープ3排出量は、スコープ1排出量およびスコープ2排出量に比べて計測が難しく、現時点ではスコープ3排出量を開示できていない企業も多い。
【0007】
本開示は、本発明者の上記課題認識に基づきなされたものであり、1つの目的は、企業のサプライチェーン排出量におけるスコープ3排出量の導出を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の情報処理システムは、クレジットカードの複数の加盟店について、各加盟店に関する単位売上金額あたりの温室効果ガス排出量である単位排出量を記憶する記憶部と、クレジットカード会社の装置から、企業のコーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に係る決済データであって、商品またはサービスを販売した加盟店に関する情報と購買金額とを含む決済データを取得する第1取得部と、記憶部に記憶された、決済データが示す加盟店に関する単位排出量と、決済データが示す購買金額とに基づいて、購買に係る温室効果ガス排出量を導出する導出部と、購買に係る温室効果ガス排出量に関する情報を企業へ提供する情報提供部とを備える。
【0009】
本開示の別の態様もまた、情報処理システムである。この情報処理システムは、企業のコーポレートカードにより購買され得る複数の商品またはサービスについて、各商品または各サービスに関する単位購買金額あたりの温室効果ガス排出量である単位排出量を記憶する記憶部と、コーポレートカードにより購買された商品またはサービスの識別情報と購買金額とを、商品またはサービスを販売した加盟店の装置またはクレジットカード会社の装置から取得する第1取得部と、記憶部に記憶された、購買された商品またはサービスに関する単位排出量と、購買された商品またはサービスの購買金額とに基づいて、購買に係る温室効果ガス排出量を導出する導出部と、購買に係る温室効果ガス排出量に関する情報を企業へ提供する情報提供部とを備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、装置、方法、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、企業のサプライチェーン排出量におけるスコープ3排出量の導出を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1(a)】GHGプロトコルで定められたスコープ3基準における複数のカテゴリを示す図である。
図1(b)】GHGプロトコルで定められたスコープ3基準における複数のカテゴリを示す図である。
図2】第1実施例の情報処理システムの構成を示す図である。
図3】決済データの構成を示す図である。
図4】第1実施例の情報処理装置が備える機能ブロックを示すブロック図である。
図5図5(a)は、加盟店マスタデータの構成を示す図であり、図5(b)は、単位排出量マスタデータの構成を示す図である。
図6】変形例の情報処理システムの構成を示す図である。
図7】変形例の情報処理装置が備える機能ブロックを示すブロック図である。
図8】第2実施例の情報処理システムの構成を示す図である。
図9】販売データの構成を示す図である。
図10】第2実施例の情報処理装置が備える機能ブロックを示すブロック図である。
図11図11(a)は、商品・サービスマスタデータの構成を示す図であり、図11(b)は、単位排出量マスタデータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがコンピュータプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、コンピュータプログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、コンピュータプログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC、LSI等)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的な記録媒体に記録される。コンピュータプログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0014】
実施例の概要を説明する。
今後、投資先となる企業の評価基準として、各企業のサプライチェーン排出量が重視されると考えられる。サプライチェーン排出量は、スコープ1排出量と、スコープ2排出量と、スコープ3排出量とを合計したものである。スコープ3排出量は、スコープ1排出量およびスコープ2排出量に比べて計測が難しく、現時点ではスコープ3排出量を開示できていない企業も多い。そこで実施例では、企業のサプライチェーン排出量におけるスコープ3排出量の導出を支援する技術を提案する。
【0015】
温室効果ガスプロトコル(GHGプロトコル)が定めるスコープ3基準では、スコープ3を15のカテゴリに分類している。図1(a)と図1(b)は、GHGプロトコルで定められたスコープ3基準における複数のカテゴリを示す。実施例の情報処理システムは、主に、スコープ3基準におけるカテゴリ1、カテゴリ6、カテゴリ7のGHG排出量の導出を支援する。カテゴリ1、カテゴリ6、カテゴリ7は、従業員の活動および購買によるGHG排出量とも言える。
【0016】
実施例の詳細を説明する。
<第1実施例>
図2は、第1実施例の情報処理システム10の構成を示す。第1実施例の情報処理システム10は、企業装置12、決済端末14、クレジットカード会社装置16、情報処理装置18を備える。これらの装置は、LAN・WAN・インターネット等の通信網を介して接続される。
【0017】
企業装置12は、コーポレートカード利用企業に設けられた情報処理装置である。この企業の従業員は、自社のコーポレートカードを利用してクレジットカードの加盟店から商品やサービスを購買する。コーポレートカードは、出張費や接待費等、社費決済に利用されるクレジットカードであり、企業の銀行口座が引き落とし先に指定されたクレジットカードである。
【0018】
決済端末14は、商品またはサービスを企業に販売するクレジットカードの加盟店に設けられたクレジットカード決済端末である。決済端末14は、CAT(Credit Authorization Terminal)またはCCT(Credit Center Terminal)であってもよい。加盟店は、クレジットカード会社と加盟店契約を結んだ小売店等である。クレジットカード会社装置16は、クレジットカード会社に設けられた情報処理装置である。
【0019】
加盟店の決済端末14は、コーポレートカードにより商品またはサービスが購入される際、その購買に係る決済データをクレジットカード会社装置16へ送信する。クレジットカード会社装置16は、決済端末14から送信された決済データを記憶し、また、決済データに基づく決済処理を実行する。なお、加盟店が通信販売業者の場合、通信販売サービスを企業装置12に提供する加盟店のサーバが、購買に係る決済データをクレジットカード会社装置16へ送信してもよい。情報処理装置18は、クレジットカード会社装置16から提供された決済データに基づいて、商品またはサービスの購買に係るGHG排出量を導出するサービスを企業に提供する。
【0020】
図3は、決済データの構成を示す。決済データは、複数の項目として、決済ID、日時、利用者、カード番号、加盟店ID、購買金額を含む。項目「決済ID」には、決済ごとにユニークなIDが設定される。決済IDは、商品やサービスの取引ごとにユニークなIDとも言える。項目「日時」には、商品またはサービスの購買が行われた日時が設定される。
【0021】
項目「利用者」には、コーポレートカードを使用して商品またはサービスを購入した利用者(図1では企業)の識別情報が設定される。項目「カード番号」には、購買に利用されたコーポレートカードのクレジットカード番号が設定される。項目「加盟店ID」には、加盟店ごとにユニークなIDが設定される。項目「購買金額」には、商品またはサービスの購買金額が設定される。
【0022】
図4は、第1実施例の情報処理装置18が備える機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。図4に示す複数のブロックの機能は、1台のコンピュータに実装されてもよく、複数台のコンピュータに分散して実装されてもよい。
【0023】
情報処理装置18は、制御部20、記憶部22、通信部24を備える。制御部20は、各種データ処理を実行する。記憶部22は、制御部20により参照または更新されるデータを記憶する。通信部24は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部20は、通信部24を介して、企業装置12およびクレジットカード会社装置16とデータを送受信する。
【0024】
記憶部22は、マスタデータ記憶部26を含む。マスタデータ記憶部26は、クレジットカードの複数の加盟店について、各加盟店に関する単位売上金額あたりのGHG排出量である単位排出量を記憶する。単位排出量は、例えば、GHG排出量10g/円というデータであってもよい。
【0025】
具体的には、マスタデータ記憶部26は、加盟店マスタデータと、単位排出量マスタデータを記憶する。図5(a)は、加盟店マスタデータの構成を示す。加盟店マスタデータは、複数の加盟店のIDと、各加盟店が属するセクタ(言い換えれば業種)の識別情報とを対応付けたデータである。加盟店セクタは、例えば、航空、鉄道、家電量販店等であってもよい。
【0026】
図5(b)は、単位排出量マスタデータの構成を示す。単位排出量マスタデータは、複数の加盟店セクタと、各加盟店セクタにおけるGHGの単位排出量とを対応付けたデータである。各加盟店セクタの単位排出量は、各加盟店セクタに属する複数の加盟店が公表しているGHG排出量の平均値を、それら複数の加盟店の売上高の平均値で除算することにより導出されてもよい。
【0027】
図4に戻り、制御部20は、決済データ取得部30、排出量導出部32、情報提供部34を含む。これら複数の機能ブロックの機能が実装されたコンピュータプログラムが記録媒体に格納され、その記録媒体を介して情報処理装置18のストレージにインストールされてもよい。または、上記コンピュータプログラムが、通信網を介してダウンロードされ、情報処理装置18のストレージにインストールされてもよい。情報処理装置18のCPUは、上記コンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、上記複数のブロックの機能を発揮してもよい。
【0028】
決済データ取得部30は、第1取得部として、クレジットカード会社装置16から、企業のコーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に係る決済データを取得する。図3に関連して既述したように、決済データは、商品またはサービスを販売した加盟店に関する情報と、商品またはサービスの購買金額とを含む。
【0029】
排出量導出部32は、マスタデータ記憶部26に記憶された、決済データが示す加盟店に関する単位排出量と、決済データが示す購買金額とに基づいて、企業の購買に係るGHG排出量を導出する。情報提供部34は、排出量導出部32により導出された企業の購買に係るGHG排出量に関する情報(以下「GHG排出量情報」とも呼ぶ。)を企業装置12へ提供する。
【0030】
以上の構成による第1実施例の情報処理システム10の動作を、図2を参照しつつ説明する。
企業の従業員は、自社のコーポレートカードを使用して、加盟店が販売する商品またはサービスを購買する。加盟店の決済端末14は、その購買に係る決済データをクレジットカード会社装置16へ送信する。クレジットカード会社装置16は、決済端末14から送信された決済データを蓄積する。情報処理装置18の決済データ取得部30は、予め定められたGHG排出量導出タイミングでクレジットカード会社装置16にアクセスし、企業の購買に係る決済データを取得する。例えば、決済データ取得部30は、月に1回、定期的に、クレジットカード会社装置16から或る月の購買に係る1つ以上の決済データを取得してもよい。
【0031】
情報処理装置18の排出量導出部32は、マスタデータ記憶部26の加盟店マスタデータを参照して、決済データ取得部30により取得された決済データが示す加盟店(ここでは「対象加盟店」とも呼ぶ。)のIDに対応付けられた加盟店セクタを識別する。排出量導出部32は、マスタデータ記憶部26の単位排出量マスタデータを参照して、識別した加盟店セクタに対応付けられた単位排出量を対象加盟店の単位排出量として識別する。排出量導出部32は、対象加盟店の単位排出量と、決済データが示す購買金額とを積算した結果を、決済データが示す購買に係るGHG排出量として導出する。
【0032】
決済データ取得部30により或る月の複数回の購買に関する複数の決済データが取得された場合、排出量導出部32は、決済データごとのGHG排出量を導出する。排出量導出部32は、決済データごとのGHG排出量を合計し、その合計値を、上記或る月の購買活動全体で生じたGHG排出量として導出する。GHG排出量は、例えば「○○t(トン)」という値であってもよい。
【0033】
情報処理装置18の情報提供部34は、排出量導出部32により導出されたGHG排出量を、GHGプロトコルにおけるスコープ3基準のGHG排出量として示すGHG排出量情報を企業装置12へ送信する。第1実施例の情報処理システム10によると、企業のコーポレートカードにより商品またはサービスが購買された実績に基づいて、企業のサプライチェーン排出量におけるスコープ3排出量を導出することを支援できる。例えば、企業が自社のスコープ3排出量を把握し、公表することを支援できる。
【0034】
以上、本開示を第1実施例をもとに説明した。第1実施例に記載の内容は例示であり、第1実施例の構成要素や処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0035】
第1実施例に関する変形例1-1、1-2、1-3を説明する。
変形例1-1:
第1実施例では、加盟店セクタ(言い換えれば業種)単位にGHGの単位排出量が定められたが、変形例として、複数の加盟店のうち少なくとも一部の加盟店については、加盟店単位にGHGの単位排出量が定められてもよい。この場合、情報処理装置18のマスタデータ記憶部26は、加盟店セクタごとの単位排出量を記憶し、さらに、少なくとも一部の加盟店については当該加盟店自身の単位排出量を記憶してもよい。例えば、マスタデータ記憶部26の加盟店マスタデータには、加盟店IDと対応づけて加盟店セクタと、オプションとして加盟店自身の単位排出量が記録されてもよい。加盟店自身の単位排出量は、当該加盟店が公表しているGHG排出量を当該加盟店の売上高で除算することにより導出されてもよい。
【0036】
情報処理装置18の排出量導出部32は、決済データが示す加盟店について、その加盟店自身の単位排出量が加盟店マスタデータに記録されている場合、その加盟店自身の単位排出量を使用して、決済データが示す購買に係るGHG排出量を導出してもよい。一方、決済データが示す加盟店について、その加盟店自身の単位排出量が加盟店マスタデータに記録されていない場合、排出量導出部32は、第1実施例で記載したように、その加盟店が属する加盟店セクタの単位排出量を使用して、決済データが示す購買に係るGHG排出量を導出してもよい。この態様によると、企業のサプライチェーン排出量におけるスコープ3排出量を一層精度よく導出することができる。また、加盟店に対して、企業から選択されるようにGHGの排出量を低減するインセンティブを与えることができる。
【0037】
変形例1-2:
図6は、変形例の情報処理システム10の構成を示す。本変形例の情報処理システム10では、コーポレートカード利用企業に保持される会計データに基づいて、購買に係る温室効果ガス排出量を、GHGプロトコルが定めるスコープ3基準における複数のカテゴリの中のいずれかのカテゴリに分類する。
【0038】
図7は、変形例の情報処理装置18が備える機能ブロックを示すブロック図である。変形例の情報処理装置18は、図4に示した機能ブロックに加えて、会計データ取得部38をさらに備える。会計データ取得部38は、第2取得部として、コーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に関する企業の会計データ(例えば管理会計データ)を企業装置12(例えば企業の会計システム)から取得する。
【0039】
例えば、会計データ取得部38は、コーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買を一意に特定可能なデータ(例えば決済ID、日時、カード番号、加盟店ID、購買金額の組み合わせ等)を決済データから抽出する。会計データ取得部38は、抽出したデータをキーとして、抽出したデータにより特定される購買に係る会計データを企業装置12に要求し、取得してもよい。会計データは、コーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に関する勘定科目名(例えば旅費交通費、通勤手当、工具器具備品等)を含むこととする。
【0040】
情報処理装置18の排出量導出部32は、会計データ取得部38により取得された会計データに基づいて、購買に係るGHG排出量を、GHGプロトコルが定めるスコープ3基準における複数のカテゴリ(図1(a)、図1(b)に示した15のカテゴリ)の中のいずれかのカテゴリに分類する。具体的には、排出量導出部32は、或る決済データが示す購買に係るGHG排出量を、その購買に係る会計データが示す勘定科目名に基づいて、スコープ3基準のいずれかのカテゴリに分類する。
【0041】
例えば、勘定科目名が「旅費交通値」の場合、購買に係るGHG排出量をカテゴリ6(出張)に分類してもよい。また、勘定科目名が「通勤手当」の場合、購買に係るGHG排出量をカテゴリ7(雇用者の通勤)に分類してもよい。また、勘定科目名が「旅費交通費」でなく、「通勤手当」でもない場合、購買に係るGHG排出量をカテゴリ1(購入した製品・サービス)に分類してもよい。
【0042】
情報処理装置18の情報提供部34は、排出量導出部32により導出された購買に係るGHG排出量と、排出量導出部32により分類されたスコープ3基準の特定のカテゴリとを対応付けたGHG排出量情報を企業装置12へ送信する。本変形例の情報処理システム10によると、購買に係るGHG排出量が属するスコープ3基準のカテゴリを企業に提示でき、企業におけるGHG排出量の管理を一層効果的に支援できる。
【0043】
なお、排出量導出部32は、複数の決済データのそれぞれに基づくGHG排出量を導出した場合、複数の決済データのそれぞれに基づくGHG排出量をカテゴリ単位で合計してもよい。例えば、排出量導出部32は、スコープ3基準のカテゴリ1、カテゴリ6、カテゴリ7のそれぞれについてのGHG排出量(合計値)を導出してもよい。情報提供部34は、スコープ3基準のカテゴリ1、カテゴリ6、カテゴリ7それぞれのGHG排出量(合計値)を示すGHG排出量情報を企業装置12へ送信してもよい。
【0044】
変形例1-3:
情報処理装置18のマスタデータ記憶部26は、加盟店単位のスコープ3基準のカテゴリ、および/または、加盟店セクタ単位のスコープ3基準のカテゴリを記憶してもよい。排出量導出部32は、或る加盟店での購買に係るGHG排出量を導出する際、加盟店単位のスコープ3基準の特定カテゴリが当該加盟店に対応付けられていれば、導出したGHG排出量を、当該加盟店に対応付けられたスコープ3基準の特定カテゴリに分類してもよい。一方、或る加盟店での購買に係るGHG排出量を導出する際、加盟店単位のスコープ3基準の特定カテゴリが当該加盟店に対応付けられていなければ、排出量導出部32は、導出したGHG排出量を、当該加盟店が属する加盟店セクタに対応付けられたスコープ3基準の特定カテゴリに分類してもよい。本変形例の情報処理システム10も、上記変形例1-2と同様の効果を奏する。
【0045】
<第2実施例>
本開示の第2実施例について、第1実施例と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。第2実施例の特徴は、第1実施例の特徴および変形例の特徴と任意の組合せが可能であることはもちろんである。第2実施例の構成要素のうち第1実施例の構成要素と同一または対応する構成要素には適宜、同一の符号を付して説明する。
【0046】
図8は、第2実施例の情報処理システム10の構成を示す。第2実施例の情報処理システム10は、第1実施例の情報処理システム10の構成に加えて、加盟店装置15を備える。加盟店装置15は、加盟店から企業に販売され、企業のコーポレートカードにより決済された商品またはサービスに関するデータ(以下「販売データ」とも呼ぶ。)を記憶する。
【0047】
図9は、販売データの構成を示す。販売データは、決済データにも含まれる決済IDと、販売された商品またはサービスに関する情報(以下「商品情報」または「サービス情報」とも呼ぶ。)とを含む。商品情報は、コーポレートカードにより購買された商品の識別情報を含み、サービス情報は、コーポレートカードにより購買されたサービスの識別情報を含む。
【0048】
図10は、第2実施例の情報処理装置18が備える機能ブロックを示す。第2実施例の情報処理装置18は、第1実施例の情報処理装置18が備える機能ブロックに加えて、販売データ取得部36をさらに備える。
【0049】
マスタデータ記憶部26は、企業のコーポレートカードにより購買され得る複数の商品またはサービスについて、各商品または各サービスに関する単位購買金額あたりのGHG排出量である単位排出量を記憶する。
【0050】
具体的には、マスタデータ記憶部26は、商品・サービスマスタデータと、単位排出量マスタデータを記憶する。図11(a)は、商品・サービスマスタデータの構成を示す。商品・サービスマスタデータは、複数の商品の識別情報と、各商品が属する商品カテゴリ(筆記用具、PC、書籍等)とを対応付けたデータである。また、商品・サービスマスタデータは、複数のサービスの識別情報と、各サービスが属するサービスカテゴリ(鉄道輸送サービス、航空輸送サービス、配送サービス等)とを対応付けたデータである。
【0051】
図11(b)は、単位排出量マスタデータの構成を示す。単位排出量マスタデータは、複数の商品カテゴリ・サービスカテゴリと、各カテゴリにおけるGHGの単位排出量とを対応付けたデータである。各カテゴリにおけるGHGの単位排出量は、所定の組織や機関(例えば政府機関)により公表されている値が設定されてもよい。例えば、環境省が公表する「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」において示される値が設定されてもよい。
【0052】
図10に戻り、決済データ取得部30と販売データ取得部36は、第1取得部として、コーポレートカードにより購買された商品またはサービスの識別情報と購買金額とを、商品またはサービスを販売した加盟店の装置またはクレジットカード会社の装置から取得する。
【0053】
排出量導出部32は、マスタデータ記憶部26に記憶された、購買された商品またはサービスに関する単位排出量と、購買された商品またはサービスの購買金額とに基づいて、購買に係るGHG排出量を導出する。情報提供部34は、購買に係るGHG排出量に関する情報を企業装置12へ提供する。
【0054】
以上の構成による第2実施例の情報処理システム10の動作を、図8を参照しつつ説明する。
情報処理装置18の決済データ取得部30は、第1実施例と同様に、決済IDと購買金額とを含む決済データをクレジットカード会社装置16から取得する。情報処理装置18の販売データ取得部36は、決済データが示す決済IDをキーとして、その決済IDに対応付けられた商品情報またはサービス情報を含む販売データを加盟店装置15から取得する。
【0055】
第2実施例では、商品またはサービスの購買金額は、クレジットカード会社装置16から取得された決済データから抽出される一方、購買された商品またはサービスの識別情報は、加盟店装置15から取得された販売情報から抽出される。変形例として、購買された商品またはサービスの識別情報と購買金額の両方が決済データに含まれる場合、購買された商品またはサービスの識別情報と購買金額の両方が決済データから抽出されてもよい。または、購買された商品またはサービスの識別情報と購買金額の両方が販売データに含まれる場合、購買された商品またはサービスの識別情報と購買金額の両方が販売データから抽出されてもよい。
【0056】
情報処理装置18の排出量導出部32は、マスタデータ記憶部26の商品・サービスマスタデータを参照して、販売情報が示す商品情報またはサービス情報に対応付けられた商品カテゴリまたはサービスカテゴリを識別する。排出量導出部32は、マスタデータ記憶部26の単位排出量マスタデータを参照して、識別した商品カテゴリまたはサービスカテゴリに対応付けられた単位排出量を識別する。排出量導出部32は、識別した単位排出量と、決済データが示す購買金額とを積算した結果を、決済データが示す購買に係るGHG排出量として導出する。
【0057】
情報処理装置18の情報提供部34は、第1実施例と同様に、排出量導出部32により導出されたGHG排出量を、GHGプロトコルにおけるスコープ3基準のGHG排出量として示すGHG排出量情報を企業装置12へ送信する。第2実施例の情報処理システム10によると、第1実施例の情報処理システム10と同様に、企業が商品またはサービスを購買した実績に基づいて、企業のサプライチェーン排出量におけるスコープ3排出量を導出することを支援できる。また、第2実施例の情報処理システム10では、購買された商品またはサービスに応じたGHGの単位排出量を用いるため、GHG排出量の推定精度を一層高めることができる。
【0058】
以上、本開示を第2実施例をもとに説明した。第2実施例に記載の内容は例示であり、第2実施例の構成要素や処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
第2実施例に関する変形例2-1、2-2、2-3を説明する。
変形例2-1:
第2実施例では、商品カテゴリ単位またはサービスカテゴリ単位にGHGの単位排出量が定められたが、変形例として、複数の商品またはサービスのうち少なくとも一部の商品またはサービスについては、商品またはサービス単位にGHGの単位排出量が定められてもよい。この場合、情報処理装置18のマスタデータ記憶部26は、商品カテゴリまたはサービスカテゴリごとの単位排出量を記憶し、さらに、少なくとも一部の商品またはサービスについては当該商品またはサービス自体の単位排出量を記憶してもよい。
【0060】
例えば、マスタデータ記憶部26の商品・サービスマスタデータには、商品情報と対応付けて商品カテゴリと、オプションとして当該商品自体の単位排出量が記録されてもよい。また、マスタデータ記憶部26の商品・サービスマスタデータには、サービス情報と対応付けてサービスカテゴリと、オプションとして当該サービス自体の単位排出量が記録されてもよい。マスタデータ記憶部26には、商品またはサービス自体の単位排出量として、加盟店、商品の製造者、またはサービスの提供者が公表している単位排出量(または商品またはサービスのGHG排出量を商品またはサービスの価格で除算した値)が記録されてもよい。
【0061】
情報処理装置18の排出量導出部32は、購買された商品またはサービス自体の単位排出量がマスタデータ記憶部26に記憶されている場合、その商品またはサービス自体の単位排出量を使用して、購買に係るGHG排出量を導出してもよい。一方、購買された商品またはサービス自体の単位排出量がマスタデータ記憶部26に記憶されていない場合、排出量導出部32は、第2実施例で記載したように、その商品またはサービスのカテゴリの単位排出量を使用して、購買に係るGHG排出量を導出してもよい。この態様によると、企業のサプライチェーン排出量におけるスコープ3排出量を一層精度よく導出することができる。また、商品の製造者やサービスの提供者に対して、企業から選択されるようにGHGの排出量を低減するインセンティブを与えることができる。
【0062】
変形例2-2:
上記の変形例1-2と同様に、本変形例の情報処理システム10では、コーポレートカード利用企業に保持される会計データに基づいて、購買に係る温室効果ガス排出量を、GHGプロトコルが定めるスコープ3基準における複数のカテゴリの中のいずれかのカテゴリに分類する。
【0063】
本変形例の情報処理装置18は、図10に示した機能ブロックに加えて、図7に示した会計データ取得部38をさらに備える。会計データ取得部38は、第2取得部として、コーポレートカードを用いた商品またはサービスの購買に関する企業の会計データ(例えば管理会計データ)を企業装置12(例えば企業の会計システム)から取得する。
【0064】
情報処理装置18の排出量導出部32は、会計データ取得部38により取得された会計データに基づいて、購買に係るGHG排出量を、GHGプロトコルが定めるスコープ3基準における複数のカテゴリ(図1(a)、図1(b)に示した15のカテゴリ)の中のいずれかのカテゴリに分類する。具体的には、排出量導出部32は、或る決済データが示す購買に係るGHG排出量を、その購買に係る会計データが示す勘定科目名に基づいて、スコープ3基準のいずれかのカテゴリに分類する。
【0065】
情報処理装置18の情報提供部34は、排出量導出部32により導出された購買に係るGHG排出量と、排出量導出部32により分類されたスコープ3基準の特定のカテゴリとを対応付けたGHG排出量情報を企業装置12へ送信する。本変形例の情報処理システム10によると、上記の変形例1-2と同様に、購買に係るGHG排出量が属するスコープ3基準のカテゴリを企業に提示でき、企業におけるGHG排出量の管理を一層効果的に支援できる。
【0066】
変形例2-3:
情報処理装置18のマスタデータ記憶部26は、商品・サービス単位のスコープ3基準のカテゴリ、および/または、商品カテゴリ・サービスカテゴリ単位のスコープ3基準のカテゴリを記憶してもよい。排出量導出部32は、或る商品・サービスの購買に係るGHG排出量を導出する際、商品・サービス単位のスコープ3基準の特定カテゴリが当該商品・サービスに対応付けられていれば、導出したGHG排出量を、当該商品・サービスに対応付けられたスコープ3基準の特定カテゴリに分類してもよい。一方、或る商品・サービスの購買に係るGHG排出量を導出する際、商品・サービス単位のスコープ3基準の特定カテゴリが当該商品・サービスに対応付けられていなければ、排出量導出部32は、導出したGHG排出量を、当該商品・サービスが属する商品カテゴリ・サービスカテゴリ単位のスコープ3基準の特定カテゴリに分類してもよい。本変形例の情報処理システム10も、上記変形例2-2と同様の効果を奏する。
【0067】
変形例3-1:
本変形例は、第1実施例の情報処理システム10と第2実施例の情報処理システム10との組み合わせに関する。本変形例の情報処理装置18は、マスタデータ記憶部26、決済データ取得部30、排出量導出部32、情報提供部34、販売データ取得部36、会計データ取得部38を備える。
【0068】
排出量導出部32は、購買された商品またはサービスのカテゴリが識別できた場合、例えば、販売データが示す商品情報が、商品・サービスマスタデータにおいて特定の商品カテゴリと対応づけられていた場合、識別した商品またはサービスのカテゴリに対応する単位排出量を用いて、購買に係るGHG排出量を導出する。一方、購買された商品またはサービスのカテゴリが識別できない場合、例えば、販売データが示す商品情報が、商品・サービスマスタデータに未記録の場合、決済データが示す加盟店に対応する単位排出量を用いて、購買に係るGHG排出量を導出する。
【0069】
本変形例によると、購買された商品またはサービスに基づいて単位排出量を特定できない場合でも、商品またはサービスを販売した加盟店に基づいて単位排出量を特定し、購買に係るGHG排出量を漏れなく導出することができる。なお、変形例3-1においても、排出量導出部32は、企業装置12から取得された企業の会計データを使用して、購買に係るGHG排出量を、スコープ3基準のいずれかのカテゴリに分類してもよい。
【0070】
変形例3-2:
本変形例は、第1実施例に関する変形例1-1と、第2実施例に関する変形例2-1との組み合わせに関する。本変形例の情報処理装置18は、マスタデータ記憶部26、決済データ取得部30、排出量導出部32、情報提供部34、販売データ取得部36、会計データ取得部38を備える。
【0071】
排出量導出部32は、以下の処理1~処理4のいずれかを、処理1~処理4の優先度で実行する。上位の処理を実行した場合、下位の処理はスキップする。
(処理1)排出量導出部32は、購買された商品またはサービス自体に単位排出量が定められている場合、商品またはサービス自体の単位排出量を用いて、購買に係るGHG排出量を導出する。
(処理2)排出量導出部32は、購買された商品またはサービス自体に単位排出量が定められていないが、購買された商品またはサービスのカテゴリが識別できた場合、識別した商品またはサービスのカテゴリに対応する単位排出量を用いて、購買に係るGHG排出量を導出する。
【0072】
(処理3)排出量導出部32は、購買された商品またはサービスのカテゴリが識別できず、かつ、決済データが示す加盟店自身の単位排出量が定められている場合、加盟店自身の単位排出量を用いて、購買に係るGHG排出量を導出する。
(処理4)排出量導出部32は、購買された商品またはサービスのカテゴリが識別できず、かつ、決済データが示す加盟店自身の単位排出量が定められていない場合、加盟店が属する加盟店セクタの単位排出量を用いて、購買に係るGHG排出量を導出する。
【0073】
本変形例によると、購買された商品またはサービス、または加盟店に関するGHG排出量の公表状況に応じて、購買に係るGHG排出量の導出精度を可及的に高めることができる。なお、変形例3-2においても、排出量導出部32は、企業装置12から取得された企業の会計データを使用して、購買に係るGHG排出量を、スコープ3基準のいずれかのカテゴリに分類してもよい。
【0074】
変形例3-3:
第1実施例の情報処理システム10と、第2実施例の情報処理システム10の両方に適用可能な変形例を説明する。情報処理システム10は、通信網を介して、カーボンクレジット会社の装置と接続されてもよい。情報処理装置18の制御部20は、オフセット部をさらに備えてもよい。オフセット部は、カーボンクレジット会社の装置と連携して、排出量導出部32により導出された購買に係るGHG排出量のオフセット処理を実行してもよい。オフセット処理は、カーボンクレジット会社にオフセット料金を支払うことにより、購買に係るGHG排出量に相当するカーボンクレジットをカーボンクレジット会社から取得する取引を実行する処理であってもよい。オフセット料金は、後日、企業から情報処理装置18を保持する組織へ支払われてもよい。この態様によると、企業は、情報処理装置18のサービスを利用することで、購買に係るGHG排出量をゼロにすることができる。
【0075】
変形例4:
ここまでの実施例では決済データから企業のGHG排出量の導出する方法を説明した。しかし、実際には、GHG排出による気候変動だけではなく、あらゆる天然資源(例えば、植物、動物、空気、水、土、鉱物等)の過剰消費による環境問題が生じている。そこで、天然資源を「自然資本」としてその消費量を把握・管理・開示することが求められてきている。これらの一部はあらゆる経済活動で消費されることから、GHGと同様に決済を起点にして把握することが可能である。例えば、地球上の水のうち、人間が利用可能な淡水資源は約0.01%しかなく、その使用量の増加により淡水資源の枯渇が懸念されている。一方で、様々な食品・工業製品・日用品の生産過程で使用される水の量は「ウォーターフットプリント」として把握可能である。また、国の輸入品と同様のモノを国内で精算した場合に必要とされる水資源の量を「バーチャル・ウォーター」として定量化することも可能である。
【0076】
例えば、上記のような背景から、特定の地域の経済活動における水資源の使用量を把握・管理・開示する場合に、情報処理装置18のマスタデータ記憶部26には、商品・サービス単位および/または商品カテゴリ・サービスカテゴリ単位の単位水資源使用量が記憶されてもよい。そして、情報処理装置18の排出量導出部32は、単位水資源使用量と、決済データが示す購買金額とを積算した結果を、決済データが示す購買に係る水資源使用量として導出してもよい。
【0077】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0078】
10 情報処理システム、 12 企業装置、 14 決済端末、 15 加盟店装置、 16 クレジットカード会社装置、 18 情報処理装置、 26 マスタデータ記憶部、 30 決済データ取得部、 32 排出量導出部、 34 情報提供部、 36 販売データ取得部、 38 会計データ取得部。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11