(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133516
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】振動補正装置、振動計測装置及び振動補正方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220907BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220907BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032231
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 駿
(72)【発明者】
【氏名】後藤 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】冨部 俊広
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC40
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】撮影画像に静止した領域が存在しない場合であっても、カメラの振動を好適に補正する。
【解決手段】計測対象物を撮像するカメラと、静止する固定部に設けられ、前記計測対象物にレーザ光を照射するレーザ照射装置と、前記カメラで撮像することにより取得した撮影画像に基づいて、前記カメラの振動を補正する処理部と、を備え、前記処理部は、前記計測対象物に照射される前記レーザ光の照射点を含む撮影画像を取得するステップと、前記撮影画像に対する前記照射点の位置の変位を取得するステップと、前記照射点の位置の変位に基づいて、前記カメラの振動補正を行うステップと、を実行する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物を撮像するカメラと、
静止する固定部に設けられ、前記計測対象物にレーザ光を照射するレーザ照射装置と、
前記カメラで撮像することにより取得した撮影画像に基づいて、前記カメラの振動を補正する処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記計測対象物に照射される前記レーザ光の照射点を含む撮影画像を取得するステップと、
前記撮影画像に対する前記照射点の位置の変位を取得するステップと、
前記照射点の位置の変位に基づいて、前記カメラの振動補正を行うステップと、を実行する振動補正装置。
【請求項2】
前記計測対象物に照射される前記レーザ光の被照射面は、前記レーザ光の照射方向に対して垂直となる垂直面となっている請求項1に記載の振動補正装置。
【請求項3】
前記カメラは、ステレオカメラである請求項1または2に記載の振動補正装置。
【請求項4】
前記レーザ照射装置は、複数設けられ、
前記計測対象物に照射される前記レーザ光の被照射面は、相互に異なる面となっており、
前記処理部は、
前記カメラの振動を補正するステップにおいて、複数の前記照射点の位置の変位から、三次元空間における前記カメラの変位を取得し、三次元空間における前記カメラの変位に基づく振動の補正を行う請求項1から3のいずれか1項に記載の振動補正装置。
【請求項5】
前記レーザ照射装置が3以上設けられる場合、
前記処理部は、三次元空間における前記カメラの変位に加えて、2つの前記照射点を結ぶ線を軸として、残りの1つの前記照射点の軸周りにおける3軸分の回転方向の前記カメラの変位を取得し、三次元空間における前記カメラの変位と、3軸分の回転方向の前記カメラの変位とに基づく振動の補正を行う請求項4に記載の振動補正装置。
【請求項6】
前記処理部は、
前記カメラの振動を補正するステップにおいて、複数の前記照射点の位置の変位に基づく回帰分析を実行して、回帰分析後の前記カメラの変位に基づく振動の補正を行う請求項4または5に記載の振動補正装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の振動補正装置により前記カメラの振動補正を行うと共に、前記カメラを用いて前記計測対象物の振動を計測する振動計測装置であって、
前記計測対象物の振動の計測では、前記計測対象物の表面に存在する特徴量を用いており、
前記処理部は、
前記撮影画像に対する前記特徴量の位置の変位を取得し、前記特徴量の変位に基づいて、前記計測対象物の振動を計測するステップと、を実行しており、
前記計測対象物の振動を計測するステップでは、
前記特徴量の位置の変位から、前記カメラの変位を除算することで、前記カメラの変位に基づく振動の補正を行う振動計測装置。
【請求項8】
静止する固定部に設けられたレーザ照射装置からのレーザ光が照射された計測対象物をカメラにより撮像して、前記計測対象物に照射される前記レーザ光の照射点を含む撮影画像を取得するステップと、
前記撮影画像に対する前記照射点の位置の変位を取得するステップと、
前記照射点の位置の変位に基づいて、前記カメラの振動補正を行うステップと、を備える振動補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動補正装置、振動計測装置及び振動補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラの振動ぶれを検出して補正するカメラ振動ぶれ検出補正装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この補正装置では、カメラで撮像された画像中の静止領域に基づいて、カメラの設置箇所の振動ぶれを推定して補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮像された画像中に静止領域が含まれない場合、カメラの振動を補正することが困難となってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、撮影画像に静止した領域が存在しない場合であっても、カメラの振動を好適に補正することができる振動補正装置、振動計測装置及び振動補正方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の振動補正装置は、計測対象物を撮像するカメラと、静止する固定部に設けられ、前記計測対象物にレーザ光を照射するレーザ照射装置と、前記カメラで撮像することにより取得した撮影画像に基づいて、前記カメラの振動を補正する処理部と、を備え、前記処理部は、前記計測対象物に照射される前記レーザ光の照射点を含む撮影画像を取得するステップと、前記撮影画像に対する前記照射点の位置の変位を取得するステップと、前記照射点の位置の変位に基づいて、前記カメラの振動補正を行うステップと、を実行する。
【0007】
本開示の振動計測装置は、上記の振動補正装置により前記カメラの振動補正を行うと共に、前記カメラを用いて前記計測対象物の振動を計測する振動計測装置であって、前記計測対象物の振動の計測では、前記計測対象物の表面に存在する特徴量を用いており、前記処理部は、前記撮影画像に対する前記特徴量の位置の変位を取得し、前記特徴量の変位に基づいて、前記計測対象物の振動を計測するステップと、を実行しており、前記計測対象物の振動を計測するステップでは、前記特徴量の位置の変位から、前記カメラの変位を除算することで、前記カメラの変位に基づく振動の補正を行う。
【0008】
本開示の振動補正方法は、静止する固定部に設けられたレーザ照射装置からのレーザ光が照射された計測対象物をカメラにより撮像して、前記計測対象物に照射される前記レーザ光の照射点を含む撮影画像を取得するステップと、前記撮影画像に対する前記照射点の位置の変位を取得するステップと、前記照射点の位置の変位に基づいて、前記カメラの振動補正を行うステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、撮影画像に静止した領域が存在しない場合であっても、カメラの振動を好適に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る振動計測装置の一部を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る振動計測装置の一部を示す説明図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る振動計測装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、照射点が1点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
【
図5】
図5は、照射点が2点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
【
図6】
図6は、照射点が3点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
【
図7】
図7は、照射点が3点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
【
図8】
図8は、照射点が4点以上となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る振動補正方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
[実施形態]
本実施形態に係る振動計測装置1は、振動計測に用いられるカメラ7の振動を補正しており、振動を補正したカメラ7で撮影した撮影画像Gに基づいて、計測対象物5の振動を計測している。つまり、振動計測装置1は、カメラ7の振動を補正する振動補正装置の機能を有しており、振動補正方法に関する処理を実行している。
【0013】
図1は、本実施形態に係る振動計測装置の一部を示す説明図である。
図2は、本実施形態に係る振動計測装置の一部を示す説明図である。
図3は、本実施形態に係る振動計測装置のブロック図である。
図4は、照射点が1点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
図5は、照射点が2点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
図6は、照射点が3点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
図7及び
図8は、照射点が3点となる場合のカメラの振動補正に関する説明図である。
図9は、本実施形態に係る振動補正方法に関するフローチャートである。
【0014】
(振動計測装置)
先ず、
図1から
図3を参照して、振動計測装置1について説明する。振動計測装置1は、振動計測の対象となる計測対象物5の振動を計測する装置となっている。計測対象物5は、振動するものであれば、特に限定されず、例えば、各種エンジン、機械等である。振動計測装置1は、カメラ7と、1以上のレーザ照射装置8と、処理部11と、記憶部12とを備えている。
【0015】
図1に示すように、カメラ7は、計測対象物5を撮影可能な位置に設けられている。カメラ7は、計測対象物5を撮影することで、計測対象物5を含む撮影画像Gを生成する。カメラ7は、例えば、ステレオカメラが適用されており、三次元的な撮影画像Gを生成している。つまり、撮影画像Gには、X方向、Y方向及びZ方向における位置情報が含まれている。
図1に示すように、計測対象物5は、振動しており、計測対象物5の設置面を介して、カメラ7に振動が伝搬することにより、カメラ7が振動する場合がある。
【0016】
図2に示すように、1以上のレーザ照射装置8は、計測対象物5へ向けてレーザ光を照射している。レーザ光が照射される計測対象物5の被照射面Tは、平面となっている。レーザ照射装置8は、レーザ光の照射方向に対して、計測対象物5の被照射面Tが垂直面となるように配置される。また、レーザ照射装置8は、静止する固定部となる静止面F上に設けられている。このため、計測対象物5に照射されたレーザ光の照射点Pは、基準点として機能する。
【0017】
図3に示すように、処理部11は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。処理部11は、記憶部12に記憶された各種プログラムを実行することで、各種処理を実行することが可能となる。
【0018】
記憶部12は、例えば、半導体記憶デバイス、及び磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスを含む。記憶部12は、処理部11の処理結果を一時的に記憶する作業領域として利用されたり、各種プログラム及び各種データを記憶したりしている。記憶部12は、例えば、各種プログラムとして、計測対象物5の振動を計測するプログラム等が記憶されている。また、記憶部12は、各種データとして、カメラ7により撮影した撮影画像Gの画像データ等を記憶している。
【0019】
処理部11は、計測対象物5の振動を計測するプログラムを実行することで、カメラ7の振動を補正し、振動を補正したカメラ7で撮影した撮影画像Gに基づいて、計測対象物5の振動を計測する処理を実行する。
【0020】
ここで、カメラ7の振動を補正すると共に、計測対象物5の振動を計測する処理について説明する。処理部11は、カメラ7を基準とするカメラ基準座標系において、撮影画像Gに対する照射点Pの変位を取得する。撮影画像Gに対する照射点Pの変位は、撮影画像Gにおける水平面内の一方向をX方向とし、水平面内においてX方向に直交する方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する鉛直方向をZ方向とすると、X方向の振動変位Δxb、Y方向の振動変位Δyb、Z方向の振動変位Δzbとなる。
【0021】
また、計測対象物5の振動の計測では、計測対象物5の表面に存在する特徴量を用いており、具体的に、特徴量として、計測対象物5の表面には、計測対象物5の振動を計測するための計測用マーカM(
図4参照)が設けられている。なお、特徴量としては、
図4に示す計測用マーカMに特に限定されず、何れのマーカであってもよいし、特徴的な表面形状であってもよい。処理部11は、カメラ7を基準とするカメラ基準座標系において、撮影画像Gに対する計測用マーカMの変位を取得する。撮影画像Gに対する計測用マーカMの変位は、X方向の振動変位Δx
raw、Y方向の振動変位Δy
raw、Z方向の振動変位Δz
rawとなる。
【0022】
そして、処理部11は、取得した撮影画像Gに対する計測用マーカMの変位(Δxraw,Δyraw,Δzraw)から、取得した撮影画像Gに対する照射点Pの変位(Δxb,Δyb,Δzb)を除算することで、計測対象物5の振動変位(Δx,Δy,Δz)を取得する。つまり、計測対象物5の振動変位(Δx,Δy,Δz)は、下記する(1)式によって表される。
【0023】
(Δx,Δy,Δz)=(Δxraw,Δyraw,Δzraw)-(Δxb,Δyb,Δzb) ・・・(1)
【0024】
ここで、
図4から
図8を参照して、照射点の個数に応じたカメラ7の振動補正の処理について説明する。
図4では、計測対象物5に照射されるレーザ光の照射点Pが1点となる場合のカメラの振動補正について図示している。
図4は、計測対象物5の被照射面Tに照射されたレーザ光の1点の照射点P1を含む撮影画像Gを示している。
図4に示す場合、処理部11は、カメラ基準座標系において、撮影画像Gに対する照射点P1の変位を取得する。
【0025】
カメラ基準座標系における撮影画像Gに対する照射点P1の変位を取得する場合、処理部11は、先ず、レーザ光の被照射面T上における照射座標系において、1点の照射点P1の変位を取得する。被照射面Tの所定の方向をX1方向とし、X1方向に直交する方向をY1方向とすると、処理部11は、照射座標系におけるX1方向の変位と、Y1方向の変位とを取得する。なお、カメラ基準座標系と照射座標系との座標関係は予め既知となっている。このため、処理部11は、照射座標系における変位を、座標関係に基づいてカメラ基準座標系に変換することで、カメラ基準座標系における撮影画像Gに対する照射点P1の変位を取得する。なお、レーザ光が被照射面Tに対して垂直となっていることから、照射座標系におけるX1方向及びY1方向に直交するZ1方向の変位による計測への影響を抑制している。つまり、レーザ光の照射点P1の変位において、計測対象物5のZ1方向の振動が影響することを抑制すべく、垂直面に対してレーザ光を照射している。このため、レーザ光の照射点P1が1点となる場合、照射座標系において、カメラの振動補正は、X1方向における成分、Y1方向における成分の2自由度分の補正となる。
【0026】
図5では、計測対象物5に照射されるレーザ光の照射点Pが2点となる場合のカメラの振動補正について図示している。
図5は、計測対象物5の被照射面Tに照射されたレーザ光の2点の照射点P1、P2を含む撮影画像Gを示している。レーザ光が照射された2点の照射点P1、P2に対応する2つの被照射面Tは、相互に異なる面となっている。つまり、2つの被照射面Tは、非平行な面となっている。
図5に示す場合、処理部11は、カメラ基準座標系において、撮影画像Gに対する2つの照射点P1、P2の変位を取得する。
【0027】
カメラ基準座標系における撮影画像Gに対する照射点P1、P2の変位を取得する場合、処理部11は、先ず、レーザ光の被照射面T上における照射座標系において、2点の照射点P1、P2の変位を取得する。1点の照射点P1においては、
図4と同様に、被照射面Tの所定の方向をX
1方向とし、X
1方向に直交する方向をY
1方向とすると、処理部11は、照射座標系におけるX
1方向の変位と、Y
1方向の変位とを取得する。他の1点の照射点P2においては、被照射面Tの所定の方向をX
2方向とし、X
2方向に直交する方向をY
2方向とすると、処理部11は、照射座標系におけるX
2方向の変位と、Y
2方向の変位とを取得する。なお、カメラ基準座標系と2つの照射点P1,P2の照射座標系との座標関係は予め既知となっている。このため、処理部11は、2つの照射座標系における変位を、座標関係に基づいてカメラ基準座標系に変換することで、カメラ基準座標系における撮影画像Gに対する2つの照射点P1、P2の変位を取得する。このとき、2つの照射点P1、P2を用いていることから、照射点P1の照射座標系におけるX
1方向及びY
1方向に直交するZ
1方向の変位、照射点P2の照射座標系におけるX
2方向及びY
2方向に直交するZ
1方向及びZ
2方向の変位を取得できる。このため、レーザ光の照射点Pが2点となる場合、カメラの振動補正は、X
1方向及びX
2方向における成分、Y
1方向及びY
2方向における成分、Z
1方向及びZ
2方向における成分の3自由度分の補正となる。
【0028】
図6では、計測対象物5に照射されるレーザ光の照射点Pが3点となる場合のカメラの振動補正について図示している。
図6は、計測対象物5の被照射面Tに照射されたレーザ光の3点の照射点P1、P2、P3を含む撮影画像Gを示している。レーザ光が照射された3点の照射点Pに対応する3つの被照射面は、相互に異なる面となっている。つまり、3つの被照射面は、非平行な面となっている。
図6に示す場合、処理部11は、カメラ基準座標系において、撮影画像に対する3つの照射点Pの変位を取得する。
【0029】
カメラ基準座標系における撮影画像Gに対する照射点P1、P2、P3の変位を取得する場合、処理部11は、先ず、レーザ光の被照射面T上における照射座標系において、3点の照射点P1、P2、P3の変位を取得する。1点の照射点P1においては、
図4及び
図5と同様に、被照射面Tの所定の方向をX
1方向とし、X
1方向に直交する方向をY
1方向とすると、処理部11は、照射座標系におけるX
1方向の変位と、Y
1方向の変位とを取得する。他の1点の照射点P2においては、
図5と同様に、被照射面Tの所定の方向をX
2方向とし、X
2方向に直交する方向をY
2方向とすると、処理部11は、照射座標系におけるX
2方向の変位と、Y
2方向の変位とを取得する。残りの1点の照射点P3においては、被照射面Tの所定の方向をX
3方向とし、X
3方向に直交する方向をY
3方向とすると、処理部11は、照射座標系におけるX
3方向の変位と、Y
3方向の変位とを取得する。なお、カメラ基準座標系と3つの照射点P1、P2、P3の照射座標系との座標関係は予め既知となっている。このため、処理部11は、3つの照射座標系における変位を、座標関係に基づいてカメラ基準座標系に変換することで、カメラ基準座標系における撮影画像Gに対する3つの照射点P1、P2、P3の変位を取得する。このとき、3つの照射点P1、P2、P3を用いていることから、照射点P1の照射座標系におけるX
1方向及びY
1方向に直交するZ
1方向の変位、照射点P2の照射座標系におけるX
2方向及びY
2方向に直交するZ
2方向の変位、照射点P3の照射座標系におけるX
3方向及びY
3方向に直交するZ
3方向の変位を取得できる。このため、レーザ光の照射点Pが3点となる場合、カメラの振動補正は、X
1方向からX
3方向における成分、Y
1方向からY
3方向における成分、Z
1方向からZ
3方向における成分の3自由度分の補正となる。また、レーザ光の照射点Pが3点となる場合、2点の照射点Pを結ぶ線を軸として、残りの1点の照射点Pの軸周りにおける回転方向の変位を3軸分取得できる。このため、レーザ光の照射点Pが3点となる場合、カメラの振動補正は、3軸分の回転方向における成分の3自由度分の補正となる。よって、レーザ光の照射点Pが3点となる場合、カメラ7の振動補正は、6自由度分の補正となる。
【0030】
ここで、
図7に示すように、例えば、カメラ7の撮影画像GのX方向を含む面内(XY面内、XZ面内)において回転角度θだけ回転した場合の、計測対象物5の振動変位Δxについて説明する。カメラ7と照射点P1との距離がr
1であり、カメラ7と照射点P2との距離がr
2となっている。この場合、照射点P1において、変位Δxは、r
1sinθを加算したものとなり、Δx+r
1sinθで表される。また、照射点P2において、変位Δxは、r
2sinθを加算したものとなり、Δx+r
2sinθで表される。
【0031】
次に、
図8を参照して、計測対象物5に照射されるレーザ光の照射点Pが4点以上となる場合のカメラの振動補正について説明する。レーザ光が照射された4点の照射点Pに対応する4つの被照射面Tは、相互に異なる面となっている。つまり、4つの被照射面Tは、非平行な面となっている。照射点Pが4点以上となる場合、
図6で説明したように、処理部11は、4点以上の照射点Pの照射座標系における変位を、座標関係に基づいてカメラ基準座標系に変換することで、カメラ基準座標系における撮影画像Gに対する4点以上の照射点Pの変位を取得する。つまり、処理部11は、撮影画像Gに対する各照射点Pの変位(Δx
b,Δy
b,Δz
b)を取得する。ここで、取得した変位(Δx
b,Δy
b,Δz
b)と、カメラ7と照射点Pとの距離とに基づいて、
図8に示すグラフが生成される。
図8は、その縦軸が変位Δx
bとなっており、その横軸がカメラ7と照射点P(レーザ基準点)との距離となっている。つまり、
図8は、変位Δx
bに関するグラフとなっている。なお、
図8は、変位Δx
bに関するグラフとなっているが、
図8の縦軸を、変位Δy
b及び変位Δz
bとすることで、変位Δy
b及び変位Δz
bに関するグラフとなる。また、
図8は、照射点Pが5つの場合のグラフとなっている。
【0032】
図8に示すように、処理部11は、変位Δx
bとカメラ7と照射点Pとの距離とに基づく回帰分析を行って、5つの照射点Pから、変位Δx
bに関する直線回帰式(点線)を導出している。処理部11は、例えば、最小二乗法によって直線回帰式を導出している。処理部11は、変位Δx
bに関する直線回帰式を導出すると、その縦軸の切片における変位Δx
bを、カメラ7のX方向の変位(撮影画像Gに対する照射点Pの変位)として取得する。また、処理部11は、変位Δx
bに関する直線回帰式の傾きを、カメラ7の撮影画像GのX方向を含む面内(XY面内、XZ面内)における回転角度θとして取得する。また、処理部11は、同様の手法で、縦軸の切片における変位Δy
b及び変位Δz
bを、カメラ7のY方向及びZ方向の変位(撮影画像Gに対する照射点Pの変位)として取得し、変位Δy
b及び変位Δz
bに関する直線回帰式の傾きを、カメラ7の撮影画像GのY方向及びZ方向を含む面内(XY面内、YZ面内及びXZ面内、YZ面内)における回転角度θとして取得する。
【0033】
図8では、照射点Pが増えるほど、直線回帰式を導出する参照点が増えるため、精度の高い直線回帰式が得られ、これにより、処理部11は、精度の高い6自由度分の変位を取得できる。
【0034】
(振動補正方法)
次に、
図9を参照して、振動計測装置1による振動補正方法について説明する。振動補正方法では、振動計測に関する処理の実行時において、カメラ7の振動補正を実行している。振動補正方法では、先ず、レーザ照射装置8からのレーザ光が照射された計測対象物5を、カメラ7により撮像して、処理部11が撮影画像Gを取得する(ステップS11)。つまり、ステップS11では、カメラ7による画像計測を実行する。続いて、処理部11は、取得した撮影画像Gにおいて、静止基準となる背景領域が存在するか否かを判定する(ステップS12)。処理部11は、静止基準となる背景領域が存在すると判定する(ステップS12:Yes)と、背景領域を基準とするカメラ7の振動補正を実行する(ステップS13)。なお、背景領域を基準とするカメラの振動補正については、例えば、先行技術文献の特開平10-290390号公報に記載された手法を用いて実行する。処理部11は、ステップS13の実行後、カメラ7の振動補正が実行された撮影画像Gから、計測用マーカMの変位の履歴を取得して、計測対象物5の振動モードを特定し(ステップS14)、振動計測に関する処理を終了する。
【0035】
一方で、処理部11は、ステップS12において、静止基準となる背景領域が存在しないと判定する(ステップS12:No)と、レーザ光の照射点Pを基準とするカメラ7の振動補正を実行して、計測対象物5の振動計測を実行する(ステップS15~S18)。処理部11は、ステップS15として、撮影画像Gに対するレーザ光の照射点P(レーザ基準点)の変位(Δxb,Δyb,Δzb)を取得する。続いて、処理部11は、取得結果に基づいて、照射点Pの変位(Δxb,Δyb,Δzb)があるか否かを判定する(ステップS16)。処理部11は、照射点Pの変位(Δxb,Δyb,Δzb)があると判定する(ステップS16:Yes)と、撮影画像Gに対する計測用マーカMの変位(Δxraw,Δyraw,Δzraw)を取得する(ステップS17)。そして、処理部11は、ステップS17において、上記の(1)式に基づき、取得した撮影画像Gに対する計測用マーカMの変位(Δxraw,Δyraw,Δzraw)から、取得した撮影画像Gに対する照射点Pの変位(Δxb,Δyb,Δzb)を除算する。これにより、処理部11は、カメラ7の振動補正が実行された計測用マーカMの変位を、つまり、カメラ7の振動を含まない計測用マーカMの変位を、計測対象物5の振動変位(Δx,Δy,Δz)として取得する(ステップS18)。一方で、処理部11は、照射点Pの変位(Δxb,Δyb,Δzb)がないと判定する(ステップS16:No)と、カメラ7が振動していないとして、ステップS17を実行せず、撮影画像Gに対する計測用マーカMの変位(Δxraw,Δyraw,Δzraw)を、つまり、カメラ7の振動を含まない計測用マーカMの変位を、計測対象物5の振動変位(Δx,Δy,Δz)として取得する(ステップS18)。そして、処理部11は、ステップS18の実行後、計測用マーカMの変位の履歴を取得して、計測対象物5の振動モードを特定し(ステップS14)、振動計測に関する処理を終了する。
【0036】
以上のように、本実施形態に記載の振動補正装置、振動計測装置1及び振動補正方法は、例えば、以下のように把握される。
【0037】
第1の態様に係る振動補正装置(の機能を有する振動計測装置1)は、計測対象物5を撮像するカメラ7と、静止する固定部(静止面F)に設けられ、前記計測対象物5にレーザ光を照射するレーザ照射装置8と、前記カメラ7で撮像することにより取得した撮影画像Gに基づいて、前記カメラ7の振動を補正する処理部11と、を備え、前記処理部11は、前記計測対象物5に照射される前記レーザ光の照射点Pを含む撮影画像Gを取得するステップS11と、前記撮影画像Gに対する前記照射点Pの位置の変位を取得するステップS15と、前記照射点Pの位置の変位に基づいて、前記カメラ7の振動補正を行うステップS17と、を実行する。
【0038】
この構成によれば、固定部に設けられたレーザ照射装置8から照射されるレーザ光の照射点Pを基準として、カメラ7の振動補正を行うことができる。このため、撮影画像Gに静止した領域が存在しない場合であっても、カメラ7の振動を好適に補正することができる。
【0039】
第2の態様として、前記計測対象物5に照射される前記レーザ光の被照射面は、前記レーザ光の照射方向に対して垂直となる垂直面となっている。
【0040】
この構成によれば、照射面上における照射点Pの変位を好適に取得することができる。
【0041】
第3の態様として、前記カメラは、ステレオカメラである。
【0042】
この構成によれば、ステレオカメラにより計測対象物5を撮影することで、三次元的な撮影画像を取得することができる。このため、撮影画像から、レーザ光の被照射面Tの傾きを取得することができ、照射面上における照射点Pの変位を容易に取得することができる。
【0043】
第4の態様として、前記レーザ照射装置8は、複数設けられ、前記計測対象物5に照射される前記レーザ光の被照射面Tは、相互に異なる面となっており、前記処理部11は、前記カメラ7の振動を補正するステップS17において、複数の前記照射点Pの位置の変位から、三次元空間における前記カメラ7の変位を取得し、三次元空間における前記カメラ7の変位に基づく振動の補正を行う。
【0044】
この構成によれば、被照射面Tに直交する法線方向における変位を取得することができるため、カメラ7の振動補正に係る自由度を増やすことができる。
【0045】
第5の態様として、前記レーザ照射装置8が3以上設けられる場合、前記処理部11は、三次元空間における前記カメラ7の変位に加えて、2つの前記照射点Pを結ぶ線を軸として、残りの1つの前記照射点Pの軸周りにおける3軸分の回転方向の前記カメラ7の変位を取得し、三次元空間における前記カメラ7の変位と、3軸分の回転方向の前記カメラ7の変位とに基づく振動の補正を行う。
【0046】
この構成によれば、3軸分の回転方向における変位を取得することができるため、カメラ7の振動補正に係る自由度をさらに増やすことができる。
【0047】
第6の態様として、前記処理部11は、前記カメラ7の振動を補正するステップS17において、複数の前記照射点Pの位置の変位に基づく回帰分析を実行して、回帰分析後の前記カメラ7の変位に基づく振動の補正を行う。
【0048】
この構成によれば、照射点Pの位置の変位に基づく回帰分析を実行することにより、照射点Pを増やすことで、回帰分析を行うための参照点を増やすことができ、カメラ7の変位を精度よく導出することができる。
【0049】
第7の態様に係る振動計測装置1は、上記の振動補正装置により前記カメラ7の振動補正を行うと共に、前記カメラ7を用いて前記計測対象物5の振動を計測する振動計測装置1であって、前記計測対象物5の振動の計測では、前記計測対象物5の表面に存在する特徴量を用いており、前記処理部11は、前記撮影画像に対する前記特徴量の位置の変位を取得し、前記特徴量の変位に基づいて、前記計測対象物5の振動を計測するステップS17と、を実行しており、前記計測対象物5の振動を計測するステップS17では、前記特徴量の位置の変位から、前記カメラ7の変位を除算することで、前記カメラ7の変位に基づく振動の補正を行う。
【0050】
この構成によれば、カメラ7の振動補正を実行することができるため、計測対象物5の振動を精度よく計測することができる。
【0051】
第8の態様に係る振動補正方法は、静止する固定部に設けられたレーザ照射装置8からのレーザ光が照射された計測対象物5をカメラ7により撮像して、前記計測対象物5に照射される前記レーザ光の照射点Pを含む撮影画像Gを取得するステップS11と、前記撮影画像Gに対する前記照射点Pの位置の変位を取得するステップS15と、前記照射点Pの位置の変位に基づいて、前記カメラ7の振動補正を行うステップS17と、を備える。
【0052】
この構成によれば、固定部に設けられたレーザ照射装置8から照射されるレーザ光の照射点Pを基準として、カメラ7の振動補正を行うことができる。このため、撮影画像Gに静止した領域が存在しない場合であっても、カメラ7の振動を好適に補正することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 振動計測装置
5 計測対象物
7 カメラ
8 レーザ照射装置
11 処理部
12 記憶部
G 撮影画像
F 静止面
T 被照射面
P 照射点
M 計測用マーカ