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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133517
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】リチウム硫黄固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20220907BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220907BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220907BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220907BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220907BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20220907BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20220907BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M10/0566
H01M10/052
H01M10/0568
H01M2/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032233
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】道畑 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】保原 夏朗
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H029AJ05
5H029AK11
5H029AL12
5H029AM07
5H029AM11
5H029BJ12
5H029HJ01
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA17
5H050CB12
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】サイクル特性が向上したリチウム硫黄固体電池を提供する。
【解決手段】硫黄正極11と、Li-Al合金負極12と、固体電解質13と、を備え、前記固体電解質は、前記硫黄正極と前記Li-Al合金負極との間に配置され、前記Li-Al合金負極におけるリチウムとアルミニウムのモル比が、95:5~55:45である、リチウム硫黄固体電池1。前記Li-Al合金負極と前記固体電解質との間に、電解液又は電解質ゲルを有していてもよい。前記電解液又は前記電解質ゲルがイオン液体を含んでいてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄正極と、Li-Al合金負極と、固体電解質と、を備え、
前記固体電解質は、前記硫黄正極と前記Li-Al合金負極との間に配置され、
前記Li-Al合金負極におけるリチウムとアルミニウムのモル比が、95:5~55:45である、リチウム硫黄固体電池。
【請求項2】
前記Li-Al合金負極と前記固体電解質との間に、電解液又は電解質ゲルを有する、請求項1に記載のリチウム硫黄固体電池。
【請求項3】
前記電解液又は前記電解質ゲルがイオン液体を含む、請求項2に記載のリチウム硫黄固体電池。
【請求項4】
前記Li-Al合金負極と前記固体電解質との間に、リチウムイオン伝導層がさらに配置されており、前記リチウムイオン伝導層は前記電解液又は前記電解質ゲルを含有する、請求項2又は3に記載のリチウム硫黄固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム硫黄固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や電気自動車等の電源として従来のリチウムイオン二次電池よりも大きなエネルギー密度を有する二次電池の開発が望まれているなか、理論容量密度が極めて高い硫黄を正極の構成材料とするリチウム硫黄固体電池が注目されている。例えば、特許文献1には固体電解質を備えたリチウム硫黄固体電池が開示されており、特許文献2にはその充電方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6578496号公報
【特許文献2】特開2019-140029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウム硫黄固体電池には、充放電を繰り返しているうちに内部で短絡する問題がある。この短絡は、樹状のリチウム金属が析出して成長し最終的に正極と負極とを導通させることによって生じる。この短絡が生じるまでの充放電の繰り返し回数(サイクル特性)の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、サイクル特性が向上したリチウム硫黄固体電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 硫黄正極と、Li-Al合金負極と、固体電解質と、を備え、前記固体電解質は、前記硫黄正極と前記Li-Al合金負極との間に配置され、前記Li-Al合金負極におけるリチウムとアルミニウムのモル比が、95:5~55:45である、リチウム硫黄固体電池。
[2] 前記Li-Al合金負極と前記固体電解質との間に、電解液又は電解質ゲルを有する、[1]に記載のリチウム硫黄固体電池。
[3] 前記電解液又は前記電解質ゲルがイオン液体を含む、[2]に記載のリチウム硫黄固体電池。
[4] 前記Li-Al合金負極と前記固体電解質との間に、リチウムイオン伝導層がさらに配置されており、前記リチウムイオン伝導層は前記電解液又は前記電解質ゲルを含有する、[2]又は[3]に記載のリチウム硫黄固体電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明のリチウム硫黄固体電池にあっては、サイクル特性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のリチウム硫黄固体電池の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明のリチウム硫黄固体電池の他の例を模式的に示す断面図である。
図3】実施例1~2、比較例1で作製したハーフセルについて、充放電が不能になるまでのサイクル数と、負極のLi/Alモル比との関係を示した棒グラフである。
図4】Li/Alモル比=90/10の負極の充放電後の表面をSEMで観察した画像である。
図5】Li/Alモル比=80/20の負極の充放電後の表面をSEMで観察した画像である。
図6】Li/Alモル比=100/0の負極の充放電後の表面をSEMで観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪リチウム硫黄固体電池≫
本発明の第一態様は、硫黄正極と、Li-Al合金負極と、固体電解質と、を備え、
前記固体電解質は、前記硫黄正極と前記Li-Al合金負極との間に配置され、
前記Li-Al合金負極におけるリチウムとアルミニウムのモル比が、95:5~55:45である、リチウム硫黄固体電池である。
【0010】
本態様のリチウム硫黄固体電池は、界面抵抗を低減する観点から、前記Li-Al合金負極と前記固体電解質との間に電解液又は電解質ゲルを有することが好ましい。
【0011】
以下、図面を参照して、リチウム硫黄固体電池の一実施形形態を説明する。各図は、説明の便宜上、部分的に拡大したり、縮小したりしている場合がある。
また、以下の説明では、特に明記しない限り、電解液は電解質ゲル(溶媒と電解質とを含むゲル状の電解質)であってもよい。
【0012】
[積層構造]
図1に示すリチウム硫黄固体電池1は、硫黄正極11と、Li-Al合金負極12と、固体電解質13と、リチウムイオン伝導層14とを備え、図示の順序で厚さ方向に積層されている。リチウムイオン伝導層14には、電解液15の一部又は全部が含浸されている。
【0013】
図1では便宜上、リチウムイオン伝導層14の両面に電解液15の層の存在を描いているが、電解液15は必ずしも層を形成している必要はなく、リチウムイオン伝導層14の表面に染み出した状態であればよい。したがって、固体電解質13の第2面13bとリチウムイオン伝導層14の第1面14aは、電解液15の層を介在して互いに接触しなくてもよいし、電解液15の層を介在せずに互いに接触していてもよい。同様に、リチウムイオン伝導層14の第2面14bと、Li-Al合金負極12の第1面12aは、互いに接触してもよいし、接触しなくてもよい。
【0014】
リチウム硫黄固体電池1の積層構造は、容器中に収納されて電解液15が保持されていることが好ましい。硫黄正極11及びLi-Al合金負極12には、図示しない外部回路への接続端子が設けられている。
【0015】
[硫黄正極11]
硫黄正極11は、硫黄を含有し、正極として機能するものであれば特に限定されず、公知のリチウム硫黄固体電池の硫黄正極を適用することができる。好ましい硫黄正極として、例えば、空隙部を多数有する導電性シートを備え、前記空隙部は、前記導電性シートの外部に対して開口しており、前記導電性シートは、前記空隙部に、硫黄及び電解液を含有したものが挙げられる。
【0016】
導電性シートとしては、例えば、カーボンフェルト、カーボンクロス等が挙げられる。
導電性シートの厚さは、例えば、50μm~30000μmとすることができる。硫黄正極の厚さも同様とすることができる。
【0017】
前記空隙部には、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素材料が導電助剤として含まれていてもよい。
前記空隙部には、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム等のバインダーが含まれていてもよい。
【0018】
[Li-Al合金負極12]
Li-Al合金負極12は、リチウムとアルミニウムの合金を含有し、負極として機能するものであれば特に制限されず、公知のLi-Al合金を適用することができる。Li-Al合金負極としては、Li-Al合金からなる負極が好ましく、Li-Al合金からなる平坦面又は曲面を有する負極がより好ましく、Li-Al合金箔がさらに好ましい。
【0019】
Li-Al合金負極の厚さは、例えば、10μm~2000μmとすることができ、100μm~1000μmが好ましい。
【0020】
前記負極を構成するLi-Al合金において、Li原子とAl原子のモル比は、Li:Al=95:5~55:45であり、95:5~70:30が好ましく、90:10~80:20がより好ましく、90:10~85:15がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様のリチウム硫黄固体電池のサイクル特性が向上する。上記範囲の上限値以下であると、本態様のリチウム硫黄固体電池の出力を高めることができる。ここで、出力とは、電池の電流密度または電圧をいう。負極を構成するLi-Al合金のAl含有量が前記モル比で50以上になると、Li含有量が低過ぎるために電池出力を高めることが困難になる。なお、Li-Al合金は充放電に伴う体積膨張と収縮の変化率が少ないので、この点でも固体電池に求められる性質(体積変化が小さいこと)を備えている。
【0021】
前記負極を構成するLi-Al合金の前記モル比は、前記Li-Al合金の全体積で均一であることが好ましいが、少なくとも、正極側に露出する表面において前記モル比の範囲であることが重要である。なぜならば、充放電サイクルにおいて前記表面においてLiの溶出及び吸収が繰り返される際に、前記表面が上述の所定範囲のモル比であると、Liが負極表面に不定形又は樹状に析出することを抑制できるからである。このメカニズムの詳細は未解明であるが、所定範囲のモル比であると、Liのマトリックス中にAlのネットワーク(枠組み)が形成されており、Liの溶出後にAlのネットワークが維持され、再びAlのネットワーク中に吸収されて元の状態に戻り易いことが要因の一つと推測される。
【0022】
前記負極の表面におけるLiとAlのモル比は、X線光電子分光法(XPS)又はエネルギー分散型X線分析(EDX,EDS)測定により、単位面積(例えばφ100μmの円形に含まれるLi原子とAl原子の個数比(含有比)として求められる。なお、負極表面において、充放電や大気暴露に伴う皮膜が形成される場合がある。上記のLiとAlのモル比を正確に求めるためには、この皮膜を測定前に除去するか又は皮膜の影響を考慮することが望ましい。
【0023】
[固体電解質13]
固体電解質13は、公知のリチウム硫黄固体電池の固体電解質を適用することができる。
固体電解質13は、結晶性材料、アモルファス材料及びガラス材料のいずれであってもよい。固体電解質13の構成材料として、例えば、硫化物を含まない酸化物系材料、少なくとも硫化物を含む硫化物系材料が挙げられる。
【0024】
酸化物系材料としては、例えば、LiLaZr12(略称:LLZ)、Li2.9PO3.30.46(略称:LIPON)、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、50LiSiO・50LiBO、Li3.6Si0.60.4、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等が挙げられる。LLZには、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ビスマス等の元素の1種以上がドープされていてもよい。
【0025】
硫化物系材料としては、例えば、Li10GeP12(略称:LGPS)、Li3.25Ge0.250.75、30LiS・26B・44LiI、63LiS・36SiS・1LiPO、57LiS・38SiS・5LiSiO、70LiS・30P(略称:LISPS)、50LiS・50GeS、Li11、Li3.250.95等が挙げられる。
【0026】
固体電解質13の構成材料は、大気中における安定性が高く、緻密性が高い固体電解質を作製できる点から、酸化物系材料であることが好ましい。
固体電解質13の構成材料の種類は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0027】
固体電解質13の厚さは、例えば、10μm~1200μmとすることができる。
【0028】
[リチウムイオン伝導層14]
リチウムイオン伝導層14の本体部は、第1面14aから第2面14bまで到達する空隙部(図示略)を多数有しており、空隙部には電解液15の一部又は全部が含浸されている。したがって、リチウムイオン伝導層14を介して、Li-Al合金負極12と固体電解質13との間で、リチウムイオンを含む電解液の移動が可能である。
【0029】
リチウムイオン伝導層14の本体部としては、例えば、多孔質体、又は、繊維状の材料が集合して層を構成してなる繊維集合体等が挙げられる。
本体部の具体的な構成材料は、従来のリチウム硫黄固体電池で使用されているものが適用でき、例えば、合成樹脂、ガラス、紙類等が挙げられる。合成樹脂としてはポリイミドが好ましい。前記構成材料は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0030】
リチウムイオン伝導層14の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下とすることができる。
リチウムイオン伝導層14を構成する本体部は1層でもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
複数層からなるリチウムイオン伝導層14の厚さは、複数層の合計の厚さを意味する。
【0031】
リチウムイオン伝導層14に含まれる電解液15の含有量は、特に限定されない。例えば、リチウムイオン伝導層14の本体部が有する空隙の体積の80~120%程度の量が目安として挙げられる。
【0032】
[電解液15]
電解液15は、溶媒と、リチウムイオン(Li)とを含む。リチウムイオンはカウンターイオンとともに塩として含まれていてもよい。
【0033】
電解液15に含まれるリチウムイオンは、電気化学反応の主体であり、その含有量は、従来のリチウム硫黄固体電池における含有量と同様でもよいし、より高い濃度であってもよい。従来のリチウム硫黄固体電池では、例えば、グライム-リチウム塩錯体からなる溶媒和イオン液体がリチウムイオンの移動媒体(キャリア)となっている。
【0034】
電解液15に含まれる溶媒は、リチウムイオンを溶解可能なものであれば特に制限されず、イオン液体を含むことが好ましい。
電解液15がイオン液体を含むことにより、リチウム硫黄固体電池1の電池特性がより向上する。電解液15が含むイオン液体は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0035】
イオン液体としては、従来のリチウム硫黄固体電池に使用されるイオン液体が適用できる。種々のイオン液体のなかでも、電池特性を向上させることができることから、グライム-リチウム塩錯体からなる溶媒和イオン液体であることが好ましい。
【0036】
グライム-リチウム塩錯体におけるリチウム塩としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SOF)、略称:LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF、略称:LiTFSI)等が挙げられる。
【0037】
グライム-リチウム塩錯体におけるグライムとしては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(略称:トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(略称:テトラグライム)等が挙げられる。
【0038】
好ましいグライム-リチウム塩錯体としては、例えば、トリグライム-LiFSI錯体、テトラグライム-LiFSI錯体、トリグライム-LiTFSI錯体、テトラグライム-LiTFSI錯体等が挙げられる。
【0039】
電解液15には、本発明の趣旨を損なわない限り、その他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤として、例えば、リチウムボロハイドライド(LiBH4)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)等が挙げられる。これらの添加剤は金属リチウムの析出を抑制し得る。
【0040】
<その他の実施形態>
図1のリチウム硫黄固体電池1のリチウムイオン伝導層14は任意の構成であり、省略が可能である。本態様のリチウム硫黄固体電池は、例えば、図2に示す積層構造を有していてもよい。図2における図1と同じ構成要素には、図1と同じ符号を付けている。
リチウム硫黄固体電池2の電解液15は、図示しない容器によって固体電解質13とLi-Al合金負極12の間に保持されている。
【0041】
<リチウム硫黄固体電池の製造方法>
本態様のリチウム硫黄固体電池は、負極としてLi-Al合金を用いる点を除いて、公知のリチウム硫黄固体電池と同様に製造することができる。
【実施例0042】
以下、実施例を説明するが、本発明は実施例だけに限定されるものではない。
【0043】
<ハーフセルの製造>
[実施例1]
電解液の調製は次のように行った。LiTFSIの1gとテトラグライムの0.774gを混合して溶媒和イオン液体1.774gを得た。電解液中のLiTFSI:テトラグライムのモル比は1:1とした。
上記で得た電解液80μLをポリイミド製シート(直径17mm、厚さ30μm)からなる本体部に充分に含浸させて、リチウムイオン伝導層を得た。
【0044】
Li-Al合金(Li:Alモル比=90:10)からなる負極(直径15mm、厚さ600μm)と、上記の電解液を含むリチウムイオン伝導層と、Li-Al合金(Li:Alモル比=90:10)からなる正極(直径15mm、厚さ600μm)と、をこの順に、これらの厚さ方向において同心状に積層し、コイン型のハーフセルを製造した。
【0045】
[実施例2]
正極および負極に用いたLi-Al合金のLi:Alモル比を80:20に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、コイン型のハーフセルを製造した。
【0046】
[比較例1]
Li-Al合金からなる負極の代わりに、リチウム箔からなるLi負極(Li:Alモル比=100:0)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、コイン型のハーフセルを製造した。
【0047】
<サイクル特性の評価>
実施例1~2、比較例1で製造したハーフセルを使用し、80℃の温度条件下で、放電レート2C、充電レート2Cの充放電を1サイクルとして、充放電サイクルを繰り返し行い、充電又は放電が不能になるまでのサイクルを計測した。その結果のグラフを図3に示す。
測定結果から、実施例1及び実施例2のLi-Al合金からなる負極を用いたハーフセルのサイクル特性は、Li箔からなる負極を用いた比較例1のハーフセルよりも優れていることが明らかである。
また、実施例1と実施例2を比較すると、実施例1のLi-Al合金からなる負極のLi含有量が高いので高出力が得られるうえに、サイクル特性もより一層優れることが確認された。
【0048】
<負極の表面状態の観察>
実施例1~2、比較例1と同様に新たに製造したハーフセルを使用し、80℃の温度条件下で、放電レート2C、充電レート2Cの充放電を1サイクルとして、充放電サイクルを繰り返し行い、90サイクルで充放電を終了し(すなわち、比較例1のハーフセルが短絡する直前に終了し)、各ハーフセルから負極を取り出した。
取り出した負極のリチウムイオン伝導層側に配置されていた表面をSEMで観察したところ、図6に示す様に、比較例1のLi負極の表面には金属リチウムが析出して形成されたと考えられる大きな凹凸が多数確認された。一方、図4図5に示すように、実施例1~2のLi-Al合金からなる負極の表面は、小さな凹凸模様が確認されるのみで比較例1よりも平滑であった。実施例1のLi-Al合金からなる負極の表面は、一部に凹凸が形成されているものの、大部分は実施例2及び比較例1の表面よりも平滑であった。この負極表面の状態は、サイクル特性を反映していると考えられる。
【0049】
以上の結果から、本発明のリチウム硫黄固体電池にあっては、特定のモル比のLi-Al合金を負極として用いたことにより、サイクル特性が向上していることが明らかである。
【0050】
なお、二次電池の試験においてハーフセルを使用することは一般的であり、上記で製造したハーフセルを用いた試験の結果は、本発明に係るリチウム硫黄固体電池を用いた試験においても同様に得られる結果である。
【符号の説明】
【0051】
1,2…リチウム硫黄固体電池、11…硫黄正極、12…Li-Al合金負極、
13…固体電解質、14…リチウムイオン伝導層、15…電解液又は電解質ゲル
図1
図2
図3
図4
図5
図6