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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133525
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
G01B11/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032246
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】北野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】多葉井 宏
(72)【発明者】
【氏名】海邊 輝
(72)【発明者】
【氏名】小原 貴之
(72)【発明者】
【氏名】三國 昌則
(72)【発明者】
【氏名】廣田 賢史
(72)【発明者】
【氏名】平 将次郎
(72)【発明者】
【氏名】須藤 寿文
(72)【発明者】
【氏名】大石 潤
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA30
2F065BB01
2F065BB28
2F065CC02
2F065CC14
2F065DD03
2F065DD06
2F065EE08
2F065FF04
2F065FF11
2F065FF61
2F065GG00
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ06
2F065QQ25
2F065QQ27
2F065QQ31
2F065QQ42
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】測定対象の厚さを測定する測定作業の効率化を図ることが可能となる、測定システムを提供すること。
【解決手段】測定システム1は、設置面2に複数設けられる測定用ピン10であり、当該測定用ピン10を構成する面部11であって設置面2側とは反対側に位置する面部11が測定対象3の材質と略同一の材質で形成される測定用ピン10と、複数の測定用ピン10によって形成される仮想基準面VPに基づいて、設置面2に設置される測定対象3の厚さを測定する測定手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に複数設けられる測定用ピンであり、当該測定用ピンを構成する面部であって前記設置面側とは反対側に位置する面部が測定対象の材質と略同一の材質で形成される測定用ピンと、
前記複数の測定用ピンによって形成される仮想基準面に基づいて、前記設置面に設置される前記測定対象の厚さを測定する測定手段と、
を備える測定システム。
【請求項2】
前記測定用ピンは、前記面部を前記設置面に対して支持する支持部を複数備える、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記複数の測定用ピンを、前記設置面において等間隔に配置する、
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記測定手段にて測定された前記測定対象の厚さを補正する補正手段を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項5】
前記測定手段にて測定された前記測定対象の厚さを示す測定画像を前記設置面に投影する投影手段を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の壁等に対して被覆材(例えば、発泡ウレタン等)を吹付ける吹付作業が行われる際には、作業者が専用の測定定規を用いて吹き付けられた被覆材の厚さを複数箇所測定し、当該測定した被覆材の厚さが設計通りの厚さであるか否かを確認することで、被覆材の品質管理を行っている。しかしながら、上述した方法では、複数箇所の被覆材の厚さを測定する作業に多大な労力及び時間を要することから、作業の効率化を図ることができる技術が要望されていた。
【0003】
そこで、位置計測手段を用いて被覆材の厚さを測定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術は、カッターブームの先端に設けられたカッターヘッドの位置を計測する位置計測手段を用いて被覆材の表面にカッターヘッドを接触させた状態でカッターヘッドの位置を計測し、計測された値と記憶部から読み出された壁面線との相対位置関係から被覆材の厚さを算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-044529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術においては、上述したように、位置計測手段を用いて被覆材の如き測定対象の表面にカッターヘッドを接触させた状態でカッターヘッドの位置を計測するので、計測箇所が多い場合には当該計測する作業に多大な労力及び時間を要することから、作業性の観点からは改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、測定対象の厚さを測定する測定作業の効率化を図ることが可能となる、測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の測定システムは、設置面に複数設けられる測定用ピンであり、当該測定用ピンを構成する面部であって前記設置面側とは反対側に位置する面部が測定対象の材質と略同一の材質で形成される測定用ピンと、前記複数の測定用ピンによって形成される仮想基準面に基づいて、前記設置面に設置される前記測定対象の厚さを測定する測定手段と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の測定システムは、請求項1に記載の測定システムにおいて、前記測定用ピンは、前記面部を前記設置面に対して支持する支持部を複数備える。
【0009】
請求項3に記載の測定システムは、請求項1又は2に記載の測定システムにおいて、前記複数の測定用ピンを、前記設置面において等間隔に配置する。
【0010】
請求項4に記載の測定システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定システムにおいて、前記測定手段にて測定された前記測定対象の厚さを補正する補正手段を備える。
【0011】
請求項5に記載の測定システムは、請求項1から4のいずれか一項に記載の測定システムにおいて、前記測定手段にて測定された前記測定対象の厚さを示す測定画像を前記設置面に投影する投影手段を備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の測定システムによれば、設置面に複数設けられる測定用ピンであり、当該測定用ピンを構成する面部であって設置面側とは反対側に位置する面部が測定対象の材質と略同一の材質で形成される測定用ピンと、複数の測定用ピンによって形成される仮想基準面に基づいて、設置面に設置される測定対象の厚さを測定する測定手段と、を備えるので、従来技術(測定定規や位置計測手段を用いて被覆材の厚さを測定する技術)に比べて、測定対象の厚さの測定作業を簡易且つ迅速に行うことができ、測定作業の効率化を図ることが可能となる。また、測定用ピンの面部が測定対象の材質と異なる場合に比べて、測定手段による測定用ピンの認識精度を高めることができる。よって、仮想基準面を正確に形成でき、測定対象の厚さの測定精度を高めることができる。
【0013】
請求項2に記載の測定システムによれば、測定用ピンは、面部を設置面に対して支持する支持部を複数備えるので、1つの支持部のみを備える場合に比べて、測定用ピンの設置精度を高めることができ、仮想基準面を正確に形成できる。
【0014】
請求項3に記載の測定システムによれば、複数の測定用ピンを、設置面において等間隔に配置するので、複数の測定用ピンを等間隔に配置しない場合に比べて、仮想基準面を正確に形成でき、測定対象の厚さの測定精度を一層高めることができる。
【0015】
請求項4に記載の測定システムによれば、測定手段にて測定された測定対象の厚さを補正する補正手段を備えるので、測定対象の厚さを補正でき、精度の高い測定対象の厚さを提示することが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の測定システムによれば、測定手段にて測定された測定対象の厚さを示す測定画像を設置面に投影する投影手段を備えるので、測定対象の厚さを可視化でき、設置面における測定対象の厚さが不足している部分が把握しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る測定システムを概念的に示す図である。
図2】測定用ピンを示す斜視図である。
図3】測定用ピンの設置状況を示す図である。
図4】制御ユニットの電気的構成を示したブロック図である。
図5】実施の形態に係る測定処理のフローチャートである。
図6】測定対象の厚さを測定する方法の概念を示す図である。
図7】測定画像を設置面に投影した状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る測定システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、設置面に設置される測定対象の厚さを測定する測定システムに関する。
【0020】
ここで、「設置面」とは、測定対象が設置される面を意味する。この「設置面」の具体的な種類は任意であるが、例えば、建築構造物又は土木構造物の壁材、柱材、床材、天井材、梁材、又はこれらを組み合わせたものの如き建設部材の外表面等が該当するが、実施の形態では、商業施設の如き建物の壁材の表面として説明する。
【0021】
また、「測定対象」とは、測定システムによって測定される対象を意味する。この「測定対象」の具体的な種類は任意であるが、例えば、設置面に吹き付けられる耐火被覆材、断熱被覆材、及びその他の吹付材(一例として、吹付コンクリート)や、設置面に敷設される土砂等が該当するが、実施の形態では、断熱被覆材である発泡ウレタンとして説明する。
【0022】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0023】
(構成)
最初に、実施の形態に係る測定システムの構成について説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る測定システムを概念的に示す図である。ここで、後述の図2のX方向を測定システムの左右方向又は幅方向(-X方向を測定システムの左方向、+X方向を測定システムの右方向)、図1のY方向を測定システムの前後方向(+Y方向を測定システムの前方向、-Y方向を測定システムの後方向)、図1のZ方向を測定システムの上下方向(+Z方向を測定システムの上方向、-Z方向を測定システムの下方向)と称する。
【0025】
測定システム1は、設置面2(具体的には、建物の壁材の表面)に設置される測定対象3(具体的には、発泡ウレタン)の厚さを測定するシステムである。この測定システム1は、図1に示すように、測定用ピン10、検出部20、投影部30、及び制御ユニット40を備えており、検出部20及び投影部30の各々と制御ユニット40とは配線4を介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
(構成-測定用ピン)
図2は、測定用ピン10を示す斜視図である。図3は、測定用ピン10の設置状況を示す図である。測定用ピン10は、測定対象3の厚さを測定する際に用いられる後述の仮想基準面VPを形成するためのピンである。この測定用ピン10は、図1に示すように、設置面2に複数(少なくとも3つ以上)設けられ、図2に示すように、面部11、収納部12、及び支持部13を備えて構成されている。
【0027】
(構成-測定用ピン-面部)
面部11は、測定用ピン10の基本構造体の一部であり、検出部20の検出対象となるものである。この面部11は、面状体で構成されており、図2に示すように、設置面2と間隔を隔てて設けられている(すなわち、設置面2側とは反対側)に設けられている。
【0028】
また、面部11の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では以下の通りに構成されている。
【0029】
すなわち、図2に示すように、面部11の形状については、略矩形状に設定している。ただし、これに限らず、例えば、略円形状又は略三角形状に設定してもよい。
【0030】
また、面部11の左右方向の長さについては50mm程度に設定しており、面部11の上下方向の長さについては50mm程度に設定しており、面部11の前後方向の長さ(厚さ)については20mm~40mm程度に設定している。ただし、これに限らず、上述した長さ以外の長さに設定してもよい。
【0031】
また、面部11の材質については、測定対象3の材質と略同一の材質で形成されている。
【0032】
ここで、上記面部11の材質で形成する理由については、以下の通りである。すなわち、検出部20から赤外線等の如き光を照射して距離を求める際に、上記面部11の材質と測定対象3の材質とが異なる場合には反射特性が異なるため、例えば面部11と測定対象3とが同じ距離にあっても測定値が異なるおそれがあることから、測定用ピン10の位置を正確に検出することが難しくなるという問題があった。そこで、このような問題を回避するために、上記面部11の材質で形成している。
【0033】
このような面部11の材質により、測定用ピン10の面部11が測定対象3の材質と異なる場合に比べて、後述の測定手段(具体的には、検出部20)による測定用ピン10の認識精度を高めることができる。よって、後述の仮想基準面VPを正確に形成でき、測定対象3の厚さの測定精度を高めることができる。
【0034】
(構成-測定用ピン-収納部)
収納部12は、面部11を収納するためのものである。この収納部12は、例えば開放面を有する鋼製の箱状体で構成されており、図2に示すように、面部11を収納するように設けられている。
【0035】
(構成-測定用ピン-支持部)
支持部13は、測定用ピン10の基本構造体の他の一部であり、面部11を設置面2に対して支持するためのものである。この支持部13は、例えば設置面2に対して着脱自在な公知の支持部材(一例として、ピン材)を用いて構成されており、図2に示すように、収納部12と設置面2との相互間において複数設けられており(図2では、設置面2側において4つ設けられている)、各支持部13が収納部12に対して接続されていると共に、設置面2に対して固定されている(具体的には、支持部13の先端と設置面2とが当接するように固定されている)。
【0036】
このような複数の支持部13により、1つの支持部13のみを備える場合に比べて、測定用ピン10の設置精度を高めることができ、後述の仮想基準面VPを正確に形成できる。
【0037】
(構成-測定用ピン-その他の構成)
測定用ピン10の設置方法については任意であるが、実施の形態では、複数の測定用ピン10を設置面2において等間隔に配置しており、具体的には、図3に示すように、左右方向及び上下方向に略沿って間隔(例えば、100mm程度の間隔等)を隔てて配置している。より具体的には、各測定用ピン10の面部11が設置面2に対して略平行となるように配置しているが、これに限らず、例えば、各測定用ピン10の面部11が後述の検出部20における撮像手段の撮像方向に略直交するように配置してもよい。このような設置により、複数の測定用ピン10を等間隔に配置しない場合に比べて、後述の仮想基準面VPを正確に形成でき、測定対象3の厚さの測定精度を高めることができる。
【0038】
(構成-検出部)
図1に戻り、検出部20は、測定対象3及び測定用ピン10の位置(具体的には、3次元座標位置)を検出するための検出手段である。この検出部20は、例えば撮像手段を備える公知の検出装置(一例として、Kinect(登録商標)等の如きタイムオブフライト方式の検出装置)を用いて構成されており、図1に示すように、設置面2の周辺において支持部材5を介して建物の床面上に設けられている。
【0039】
(構成-投影部)
投影部30は、後述の測定画像MIを設置面2に投影する投影手段である。この投影部30は、例えば公知の投影装置(一例として、2Dプロジェクター等)を用いて構成されており、図1に示すように、設置面2の周辺において支持部材5を介して建物の床面上に設けられている。
【0040】
(構成-制御ユニット)
図4は、制御ユニット40の電気的構成を示したブロック図である。制御ユニット40は、測定システム1の各構成要素を制御するユニットである。この制御ユニット40は、図1に示すように、設置面2の周辺に設けられており、図4に示すように、操作部41、通信部42、表示部43、電源部44、制御部45、及び記憶部46を備えている。
【0041】
(構成-制御ユニット-操作部、通信部、表示部、電源部)
操作部41は、制御ユニット40に対する操作入力を受け付ける操作手段である。通信部42は、検出部20及び投影部30の各々との相互間で通信するための通信手段である。表示部43は、制御部45の制御に基づいて各種の情報を表示する表示手段であり、例えば、公知の液晶ディスプレイの如きフラットパネルディスプレイ等を用いて構成されている。電源部44は、図示しない商用電源又は電池(例えば、バッテリ等)から供給された電力を、制御ユニット40の各部に供給すると共に、検出部20又は投影部30にも供給する電源手段である。
【0042】
(構成-制御ユニット-制御部)
制御部45は、制御ユニット40の各部、検出部20、及び投影部30を制御する制御手段であり、例えば内部メモリを備える公知のコンピュータを用いて構成されている。
【0043】
また、この制御部45は、図4に示すように、機能概念的に、測定部45a及び補正部45bを備えている。
【0044】
このうち、測定部45aは、後述の仮想基準面VPに基づいて、設置面2に設置される測定対象3の厚さを測定するものである。なお、「測定部45a」及び「検出部20」は、特許請求の範囲における「測定手段」に対応する。
【0045】
また、補正部45bは、測定手段にて測定された測定対象3の厚さを補正する補正手段である。
【0046】
(構成-制御ユニット-記憶部)
記憶部46は、制御ユニット40の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、書き換え可能な公知の記録媒体を用いて構成され、例えばフラッシュメモリの如き不揮発性記録媒体を用いて構成されている。
【0047】
(測定処理)
次に、上述のように構成された測定システム1における制御ユニット40の制御部45によって実行される測定処理について説明する。
【0048】
図5は、実施の形態に係る測定処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。図6は、測定対象3の厚さを測定する方法の概念を示す図である。図7は、測定画像MIを設置面2に投影した状況を示す図である。
【0049】
測定処理は、設置面2に設置される測定対象3の厚さを測定する処理である。この測定処理を実行するタイミングは任意であるが、実施の形態では、測定システム1(ただし、測定用ピン10は除く)に電源が投入された後に起動される。また、測定処理の前提については、実施の形態では、図1に示すように、測定対象3が設置されている複数の設置面2に測定用ピン10が設けられているものとする。
【0050】
測定処理が起動されると、図5に示すように、SA1において測定部45aは、測定対象3及び測定用ピン10の位置(具体的には、3次元座標位置)を取得する。
【0051】
この測定対象3及び測定用ピン10の位置を取得する方法については任意であるが、実施の形態では、公知の3次元座標位置特定方法(例えば、タイムオブフライト法等)を用いて取得する。
【0052】
具体的には、検出部20から照射された光が測定対象3及び測定用ピン10に当たってから反射した光が検出部20によって受信されるまでの時間等に基づいて特定される測定対象3及び測定用ピン10の3次元座標位置を、取得すべき位置として取得する。
【0053】
SA2において測定部45aは、複数の測定用ピン10によって形成される仮想基準面VPを特定する。ここで、「仮想基準面VP」とは、測定対象3の厚さを測定する際に基準となる仮想の面を意味する。
【0054】
この仮想基準面VPの特定方法については任意であるが、実施の形態では以下の通りに特定する。すなわち、まず、SA1にて取得された位置(3次元座標位置)の中から、深度(検出部20から測定対象3又は測定用ピン10に至る方向までの距離(図6では、Y方向の距離))が閾値未満である位置を抽出する。そして、図6に示すように、公知の方法を用いて、上記抽出した位置を結んでなる仮想面を形成し、当該形成した仮想面を仮想基準面VPとして特定する。
【0055】
図5に戻り、SA3において測定部45aは、測定対象3の厚さを測定する。
【0056】
この測定対象3の厚さを測定する方法については任意であるが、実施の形態では以下の通りに測定する。すなわち、まず、SA1にて取得された位置(3次元座標位置)の中から、SA2にて抽出されなかった位置(すなわち、仮想基準面VPを形成する際に用いられなかった位置)を抽出する。次に、上記抽出した各位置からSA2にて特定された仮想基準面VPのY方向の位置(具体的には、SA2にて抽出された位置(Y方向の位置)の平均値)をそれぞれ減算することにより、上記抽出した各位置からSA2にて特定された仮想基準面VPまでの距離D(図6を参照)をそれぞれ算出する。そして、記憶部46にあらかじめ記憶されている測定用ピン10の高さH(支持部13の下端から面部11の上端までの長さ)から上記算出した距離Dをそれぞれ減算し、当該減算した値を上記抽出した各位置に対応する測定対象3の厚さTとして特定(測定)する。
【0057】
SA4において補正部45bは、SA3にて測定された測定対象3の厚さを補正する。
【0058】
この測定対象3の厚さを補正する方法については任意であるが、例えば以下の通りに補正してもよい。
【0059】
すなわち、SA3にて測定された測定対象3の厚さに対して補正値をそれぞれ加算することにより、補正してもよい。ここで、補正値の設定方法については任意であるが、例えば、一定の値に設定してもよい。あるいは、検出部20の撮像手段のレンズの形状に伴って、当該撮像手段の画角中心から辺縁に向かうにしたがって検出部20から測定対象3に至る方向までの距離が遠くなる(つまり、当該距離が長くなる)傾向があることから、当該傾向を考慮して設定してもよい。一例として、各種のパラメータ(例えば、検出部20の撮像手段のレンズの形状や大きさ、測定対象3から検出部20までの距離)の影響を考慮しながら、上記撮像手段の画角中心位置以外の他の位置に対応する補正値が上記撮像手段の画角中心位置に対応する補正値よりも大きくなるように設定してもよい。特に、上記撮像手段の画角中心位置以外の他の位置に対応する補正値のうち、上記辺縁に対応する補正値が最も大きくなるように設定することが好ましい。
【0060】
あるいは、上記補正値を用いることなく、SA1において測定対象3及び測定用ピン10の位置を取得する際の検出部20の撮像手段の画角中心とは位置が異なる当該撮像手段の画角中心で取得した測定対象3及び測定用ピン10の位置を用いて、補正してもよい。一例として、SA1において測定対象3及び測定用ピン10の位置を取得する際の検出部20の撮像手段の画角中心が壁材の中央部である場合には、まず、検出部20の撮像手段の画角中心を壁材の端部(例えば、壁材の上端部、下端部、左端部、又は/及び右端部等)として、SA1の処理と略同様に測定対象3及び測定用ピン10の位置をそれぞれ取得する(この場合には、各測定用ピン10の面部11が検出部20における撮像手段の撮像方向に略直交するように配置することが望ましい)。次いで、SA2の処理と略同様に、仮想基準面VPを特定し、SA3の処理と略同様に、上記特定した仮想基準面VPを用いて測定対象3の厚さを測定する。そして、SA3にて測定された測定対象3の厚さのうち、検出部20における撮像手段の画角の辺縁及びその近傍に対応する測定対象3の厚さを、SA4にて補正された測定対象3の厚さのうち、検出部20における撮像手段の画角中心及びその近傍に対応する測定対象3の厚さに置き換えることにより、補正してもよい。
【0061】
このようなSA4の処理により、測定対象3の厚さを補正でき、精度の高い測定対象3の厚さを提示することが可能となる。
【0062】
図5に戻り、SA5において測定部45aは、測定画像MIを生成する。ここで、「測定画像MI」とは、測定手段(具体的には、測定部45a)にて測定された測定対象3の厚さを示す画像を意味する。
【0063】
具体的には、SA1にて取得された測定対象3の位置と、SA4にて補正された測定対象3の厚さとに基づいて、測定対象3の厚さの分布状況を示す2次元の測定画像MIを生成する。より具体的には、測定対象3の位置を「節点」として取り扱われ、隣接する「節点」同士を結ぶことでなる面を「要素」として取り扱われる場合には、まず、各要素の測定対象3の厚さについては、当該要素の節点に対応する測定対象3の厚さを平均化することによりそれぞれ算出する。そして、図7に示すように、上記算出した厚さが閾値TV(図6を参照)未満であるか否かに基づいて色分けし(例えば、閾値TV未満の場合には「赤色」とし(図7では、第1領域MI1が該当する)、閾値TV未満でない場合には「緑色」とする(図7では、第2領域MI2が該当する)等)、当該色分けに応じた色で各要素を表示するように、2次元の測定画像MIを生成する。ただし、これに限らず、例えば、各要素の測定対象3の厚さを複数の厚さ範囲毎に色分けし(例えば、1.0mm未満の場合には「赤色」とし、1.0mm~2.0mmの場合には「橙色」とし、2.0mm~3.0mmの場合には「黄色」とし、3.0mm~5.0mmの場合には「緑色」とし、5.0mm以上の場合には「青色」とする等)、当該色分けに応じた色で各要素を表示するように、2次元の測定画像MIを生成してもよい。
【0064】
図5に戻り、SA6において測定部45aは、SA5にて生成された測定画像MIを出力する。なお、実施の形態では、後述するSA7において後述の終了タイミングが到来したと判定されるまで、測定画像MIを継続して出力するものとする。
【0065】
この測定画像MIの出力方法については任意であるが、例えば以下の通りに出力してもよい。
【0066】
すなわち、図7に示すように、投影部30によって、SA5にて生成された測定画像MIを設置面2に投影(出力)してもよい。このような投影により、測定対象3の厚さを可視化でき、設置面2における測定対象3の厚さが不足している部分が把握しやすくなる。
【0067】
この場合において、例えば、SA1にて取得された位置に基づいて、SA5にて生成された測定画像MIの位置合わせを自動的に行ってもよく、又は、SA5にて生成された測定画像MIの位置合わせを手動で行ってもよい。また、上記測定画像MIが投影された測定対象3を他の撮像手段(図示省略)で撮像して、当該撮像した画像を検査のエビデンスとして記憶部46に記憶したり、又は/及び通信部42介して図示しない外部装置(例えば、管理棟にある管理サーバ等)に送信して保管してもよい。さらに、図示しない端末装置から外部装置にアクセスすることで、端末装置の表示部によって当該保管された上記撮像した画像を閲覧できるようにしてもよい。
【0068】
あるいは、表示部43によって、SA5にて生成された測定画像MIを表示(出力)してもよい。この場合において、設置面2における測定対象3の厚さが不足している部分が把握しやすくなるように、例えば、他の撮像手段(図示省略)で撮像された測定対象3の画像(例えば、RGBカメラ画像)にSA5にて生成された測定画像MIを重ね合わせて表示してもよい。また、上記表示される測定画像MIを検査のエビデンスとして記憶部46に記憶したり、又は/及び通信部42介して外部装置に送信して保管してもよい。さらに、図示しない端末装置から外部装置にアクセスすることで、端末装置の表示部によって当該保管された上記撮像した画像を閲覧できるようにしてもよい。
【0069】
図5に戻り、SA7において測定部45aは、測定処理を終了するタイミング(以下、「終了タイミング」と称する)が到来したか否かを判定する。例えば、操作部41を介して所定操作が受け付けられたか否かに基づいて判定し、上記所定操作が行われた場合には終了タイミングが到来したと判定し、上記所定操作が行われていない場合には終了タイミングが到来していないと判定する。
【0070】
そして、測定部45aは、終了タイミングが到来したと判定されるまで待機し(SA7、No)、終了タイミングが到来したと判定された場合(SA7、Yes)には測定処理を終了する。
【0071】
以上のような測定処理により、従来技術(測定定規や位置計測手段を用いて被覆材の厚さを測定する技術)に比べて、測定対象3の厚さの測定作業を簡易且つ迅速に行うことができ、測定作業の効率化を図ることが可能となる。
【0072】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、設置面2に複数設けられる測定用ピン10であり、当該測定用ピン10を構成する面部11であって設置面2側とは反対側に位置する面部11が測定対象3の材質と略同一の材質で形成される測定用ピン10と、複数の測定用ピン10によって形成される仮想基準面VPに基づいて、設置面2に設置される測定対象3の厚さを測定する測定手段と、を備えるので、従来技術(測定定規や位置計測手段を用いて被覆材の厚さを測定する技術)に比べて、測定対象3の厚さの測定作業を簡易且つ迅速に行うことができ、測定作業の効率化を図ることが可能となる。また、測定用ピン10の面部11が測定対象3の材質と異なる場合に比べて、測定手段による測定用ピン10の認識精度を高めることができる。よって、仮想基準面VPを正確に形成でき、測定対象3の厚さの測定精度を高めることができる。
【0073】
また、測定用ピン10は、面部11を設置面2に対して支持する支持部13を複数備えるので、1つの支持部13のみを備える場合に比べて、測定用ピン10の設置精度を高めることができ、仮想基準面VPを正確に形成できる。
【0074】
また、複数の測定用ピン10を、設置面2において等間隔に配置するので、複数の測定用ピン10を等間隔に配置しない場合に比べて、仮想基準面VPを正確に形成でき、測定対象3の厚さの測定精度を一層高めることができる。
【0075】
また、測定手段にて測定された測定対象3の厚さを補正する補正部45bを備えるので、測定対象3の厚さを補正でき、精度の高い測定対象3の厚さを提示することが可能となる。
【0076】
また、測定手段にて測定された測定対象3の厚さを示す測定画像MIを設置面2に投影する投影部30を備えるので、測定対象3の厚さを可視化でき、設置面2における測定対象3の厚さが不足している部分が把握しやすくなる。
【0077】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0078】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0079】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。また、本出願における「システム」とは、複数の装置によって構成されたものに限定されず、単一の装置によって構成されたものを含む。また、本出願における「装置」とは、単一の装置によって構成されたものに限定されず、複数の装置によって構成されたものを含む。また、上記実施の形態で説明した各情報については、そのデータ構造を任意に変更してもよい。例えば、制御ユニット40を、相互に通信可能に構成された複数の装置に分散して構成し、これら複数の装置の一部に制御部45を設けると共に、これら複数の装置の他の一部に記憶部46を設けてもよい。
【0080】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0081】
(測定用ピンについて)
上記実施の形態では、測定用ピン10の設置数が4つであると説明したが、これに限らず、例えば、4つ未満であってもよく、あるいは、5つ以上であってもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、複数の測定用ピン10を、設置面2において等間隔に配置すると説明したが、これに限らず、例えば、設置面2において不等間隔に配置してもよい。
【0083】
(検出部について)
上記実施の形態では、検出部20がKinectで構成されていると説明したが、これに限らず、例えば、測距センサで構成されてもよい。
【0084】
(測定画像について)
上記実施の形態では、測定画像MIが2次元の画像であると説明したが、これに限らず、例えば、3次元の画像であってもよい。この場合に、投影部30は、3Dプロジェクターを用いて構成されてもよい。また、測定処理において、建物の壁材の3次元の測定画像MIが生成され、且つ当該壁材と接続される建物の床材の3次元の測定画像MIが生成された場合には、公知の画像処理方法を用いて、これらの測定画像MIを合成することにより1つの測定画像MIが生成されてもよい。
【0085】
(測定処理について)
上記実施の形態では、SA4の処理が行われると説明したが、これに限らず、例えば、SA4の処理を省略してもよい。この場合には、補正部45bを省略してもよい。また、SA5においてSA1にて取得された測定対象3の位置と、SA3にて測定された測定対象3の厚さとに基づいて、測定対象3の厚さの分布状況を示す2次元の測定画像MIを生成してもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、SA5、SA6の処理が行われると説明したが、これに限らない。例えば、SA1にて取得された位置とSA4にて補正された測定対象3の厚さとを相互に関連づけて表示部43に表示させる場合には、SA5、SA6の処理を省略してもよい。この場合には、投影部30を省略してもよい。
【0087】
(付記)
付記1の測定システムは、設置面に複数設けられる測定用ピンであり、当該測定用ピンを構成する面部であって前記設置面側とは反対側に位置する面部が測定対象の材質と略同一の材質で形成される測定用ピンと、前記複数の測定用ピンによって形成される仮想基準面に基づいて、前記設置面に設置される前記測定対象の厚さを測定する測定手段と、を備える。
【0088】
付記2の測定システムは、付記1に記載の測定システムにおいて、前記測定用ピンは、前記面部を前記設置面に対して支持する支持部を複数備える。
【0089】
付記3の測定システムは、付記1又は2に記載の測定システムにおいて、前記複数の測定用ピンを、前記設置面において等間隔に配置する。
【0090】
付記4の測定システムは、付記1から3のいずれか一項に記載の測定システムにおいて、前記測定手段にて測定された前記測定対象の厚さを補正する補正手段を備える。
【0091】
付記5の測定システムは、付記1から4のいずれか一項に記載の測定システムにおいて、前記測定手段にて測定された前記測定対象の厚さを示す測定画像を前記設置面に投影する投影手段を備える。
【0092】
(付記の効果)
付記1に記載の測定システムによれば、設置面に複数設けられる測定用ピンであり、当該測定用ピンを構成する面部であって設置面側とは反対側に位置する面部が測定対象の材質と略同一の材質で形成される測定用ピンと、複数の測定用ピンによって形成される仮想基準面に基づいて、設置面に設置される測定対象の厚さを測定する測定手段と、を備えるので、従来技術(測定定規や位置計測手段を用いて被覆材の厚さを測定する技術)に比べて、測定対象の厚さの測定作業を簡易且つ迅速に行うことができ、測定作業の効率化を図ることが可能となる。また、測定用ピンの面部が測定対象の材質と異なる場合に比べて、測定手段による測定用ピンの認識精度を高めることができる。よって、仮想基準面を正確に形成でき、測定対象の厚さの測定精度を高めることができる。
【0093】
付記2に記載の測定システムによれば、測定用ピンは、面部を設置面に対して支持する支持部を複数備えるので、1つの支持部のみを備える場合に比べて、測定用ピンの設置精度を高めることができ、仮想基準面を正確に形成できる。
【0094】
付記3に記載の測定システムによれば、複数の測定用ピンを、設置面において等間隔に配置するので、複数の測定用ピンを等間隔に配置しない場合に比べて、仮想基準面を正確に形成でき、測定対象の厚さの測定精度を一層高めることができる。
【0095】
付記4に記載の測定システムによれば、測定手段にて測定された測定対象の厚さを補正する補正手段を備えるので、測定対象の厚さを補正でき、精度の高い測定対象の厚さを提示することが可能となる。
【0096】
付記5に記載の測定システムによれば、測定手段にて測定された測定対象の厚さを示す測定画像を設置面に投影する投影手段を備えるので、測定対象の厚さを可視化でき、設置面における測定対象の厚さが不足している部分が把握しやすくなる。
【符号の説明】
【0097】
1 測定システム
2 設置面
3 測定対象
4 配線
5 支持部材
10 測定用ピン
11 面部
12 収納部
13 支持部
20 検出部
30 投影部
40 制御ユニット
41 操作部
42 通信部
43 表示部
44 電源部
45 制御部
45a 測定部
45b 補正部
46 記憶部
D SA1にて取得された位置から仮想基準面までの距離
H 測定用ピンの高さ
MI 測定画像
MI1 第1領域
MI2 第2領域
T 測定対象の厚さ
TV 閾値
VP 仮想基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7